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フランス判例法における表見所有権について

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フランス判例法における表見所有権について
不動産取引における第三者保護の法理ー
井
長
久
フランス判例法における表見所有権について
問題の所在
目 次
結語
上
る当該不動産上に有する権利を全く主張しえなくなるのか、それとも、相続分の割合で自己の持分権を主張できるの
らこれを長く放任していたとすれぽ、その第三者に対して、民法九四条二項の類推適用により父親の相続財産に属す
をこの事情を知らない善意の第三者に売却してしまった場合、共同相続人の長男が、右の虚偽登記の事実を知りなが
一 父親が生前に、他人から買った不動産を次男名義で虚偽登記をしたまま死亡した。その後、次男が当該不動産
一 問題の所在
まとめと若干の問題
共通的錯誤論の展開
仮装行為論の展開
表見所有権の構成
六五四三ニー
●
フランス判例法における表見所有権について
101
律
叢
102
論
●
法
であろうか。これを一般的にみれば、実体関係をともなわない登記簿上の名義人にすぎない表見所有者が他人の不動
産を処分した場合、この者は本来は無権利者であるが、この老を真正権利者と信じ取引に及んだ善意の第三取得老を
保護するために、真正権利者から処分を受けたのと同様に物権を完全に取得せしめる効果を与え、かつ、真正権利者
にも、対抗できるのではないか、という問題を前提として、表見所有者からの善意の第三取得者と不動産の真正所有
者との間の利害の衝突という形で生ずる問題である。ところで、表見所有者からの処分で相手方たる第三取得者が保
護されるのは、第三取得者が単に登記を信頼したというだけでは、わが国では登記に公信力がないので救われないか
ら、むしろ、その背後にひそむ表見所有者をして真正所有者と信じさせたこと、そして第三取得者がこれを信じたこ
とに基礎があるといえるであろう。このような結果、表見所有者に認められる真正所有者と同様の一定の効果ないし
地位を一般に表見所有権と呼ぶことができるであろう。また、これは、真実よりも表見状態に優位を置く現象であ
り、しかも、所有権の社会功利的見地からの制限の一つとして真正所有者個人の利益の絶対的尊重の原則を修正し、
不動産の購入、抵当信用など取引の安全を優位にみる近代取引法の一断面に属する。そもそも、この両者の対立は、
動産における即時取得制度︵民法一九二条︶のような不動産に対する善意取得の立法的措置を定めなかったことにも
よるであろう。これまで、農地、山林、宅地、または、建物などの不動産取引は、主として当事者間の人的信頼関係
を中心に進められてきたので、表見上の所有者からの処分の問題は、立法論として登記に公信力が賦与されるべきで
あるか、という観点から議論されてはいたものの、実際上、それほど重視されていなかったといえる︵−︶。近時におい
ても、一般的にこのような不動産の取引慣行は失われていないが、ただ特に、大都市およびその周辺では、宅地、建
物が市民の投機の対象として、または、資金調達のための担保の基礎として作用し︵、︶、転々流通する不動産の調査が
すこぶる困難な状況にある場合も生じてきているので、不動産の現在の権利老であると一応推定できる登記、証書な
どの表見状態への一定の信頼を保護するという、物的関係をも加味した不動産取引法理の形成が必要となってきてい
る。
二 ところで、最近のわが国においても、かかる不動産表見所有者からの処分の問題に対して、真正所有者の犠牲
の下に善意の第三取得者を保護する傾向が強まっているといえる。その現れは、主として、仮装登記名義人の処分と
民法九四条二項の類推適用に関する問題である。このところ、最高裁は立て続けに、θ不動産登記簿上の名義貸与の
事例について︵3︶、または、㈲印鑑等無断で使用され不実登記がされたのに真正所有老においてこれを知りながら放
置していた事例に対し︵4︶、いずれもこれらの仮装登記を信頼して取引に及んだ善意の第三取得老を保護するために
民法九四条二項の類推適用を認めており、また、◎不動産売買または売買予約がないのにあるかのように偽って架空
登記をなし、これに基づき架空登記名義人が︵,︶、または、⇔この者からさらに移転した第三登記名義人が︵6︶、真正
所有者が委任した代理権の範囲を輸越した処分をなす事例に対し、いずれも善意無過失の第三取得者につき民法九四
条二項、 一一〇条の法意に照し外観尊重および取引安全の見地から保護される、との判断を積み重ねてきた。しか
も、これらωの⇔の事例を考え合わせてみるとき、やむをえない放置、または、単なる不知による放置の場合でも不
賃借権設定登記をした場合、この登記のみから従来の賃借人の賃借権が消滅したと信じた建物競落人について民法九
年二月二四日判決では、登記簿の記載を真実の権利関係に合致させるために仮装の転借権設定登記を抹消し、新たに
を見定めなけれぽならない。そして、この点を再考させられる判例も最近出されており、最高裁第一小法廷昭和四七
しい傾向ではないであろう。したがって、この傾向に対し一定の歯止めを設けて真正所有者が負担すべき責任の限度
づけられるまでに進展してきている。しかし、これでは、真正所有者の不測の損害を増大させるぼかりで決して好ま
実登記を創造した原因において、真正所有者が何らかの参加をしておれぽこの老に責任を帰せしめられるとさえ結論
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叢
fima
払
律
法
四条二項の類推適用を認めないで、真正権利者である賃借人の建物に対する占有継続に優位を置いて賃借人を保護し
た︵7︶。
これに対し、共同相続人のうちの一人が相続財産を構成する不動産について単独所有名義で登記している場合、こ
れを信頼して取引に及んだ第三者の保護の問題については、最高裁第二小法廷昭和三八年二月二二日判決は、他の共
同相続人は自己の持分権について、登記なくして単独名義人および第三者に対抗できるとした︵8︶。すなわち、これ
を第三老の側からみれぽ、単独名義人が他の共同相続人に無断で不動産を譲渡したときはいつでも、第三取得者は単
独名義人の持分権の範囲においてのみ保護されることを意味している。しかし、このような場合でも他の共同相続人
において単独名義の登記がなされていることを黙認しているとか、または、長期間放任してきたとかの場合も考えら
れるであろう。この場合には、もはや単独名義人の持分にとどまらず、上述の仮装登記と民法九四条二項の類推適用
の場合と同様に考えられるであろうから、他の共同相続人の持分権を含めた全体の所有権が第三取得老に移転してし
まうとの構成が期待できるであろう︵9︶。
三 本稿は、このような問題意識の下に、不動産取引においてひとり登記に限らず、譲渡証書、権利︵登記済︶証
など証書上などの、実体関係をともなわない、単なる名義人にすぎない表見所有者からの他人の不動産の処分につい
て、かかる表見状態を信頼した第三取得者を保護するために、いかに法律構成をなすべきであるか、を検討する序説
である。ところで、本稿ではこの問題をフランス民法において、主として一九世紀後半から出現してきた、いわゆる
表見所有権︵苫o℃臣∩涼①勺℃胃8已︵皿︶を素材にして、フランスにおける表見所有権に包含される種々の問題の処理状
況を分析し、それを通してわが国における現代的問題の解釈の位置づけ、および、指針を探ってみようと試みるもの
である。このことは、わが民法の不動産物権に関する意思主義︵一七六条︶、登記の対抗要件主義︵一七七条︶の原
則がフランス民法典を承継していることから、フランスにおける同種の問題を比較検討することが必要であること、
それに、最近における最高裁の本問題を解決するための苦心が、フランス破穀院を中心に展開されてきた表見所有権
に含まれる問題に対する経験に相応した現象であると思えることなどから、十分考察に値するものと思われるからで
ある。
これ以上立ち入らないことにする。
信力がないことを前提として、解釈論として表見所有権的構成の可能性を追求するものであるから、本稿では前の点について
る。しかし、本稿は直接には立法論としての登記の公信力賦与の可否自体を論ずる意図のものではないので、むしろ登記に公
論としての公信力を論じている近時の有力説として、篠塚昭次﹁物権法﹂民法セミナー丑 ︵二分冊︶九五頁以下、などがあ
公信力を賦与すべきか﹂ジュリスト三〇〇号学説展望一三二頁、それに、登記の公信力に準ずる﹁公信力説﹂について、解釈
八頁以下︶、同.注釈民法㈲三六五頁以下、の対立がある。また、これらの学説を整理するものに、原島重義﹁不動産登記に
頁、理論的にも必要がないとするもの、山田晟﹁土地の動化について﹂田中叩田速暦記念商法の基本問題四一三頁以下︵特に四二
信義誠実の原則三七頁以下所収、これに対し、実際界における必要性が薄いとするもの、川島武宜・所有権法の理論三一七
の相対的公信主義を提唱するもの、鳩山秀夫﹁不動産物権の得喪変更に関する公信主義及び公示主義を論ず﹂債権法における
動産登記法三八二頁、登記の誤謬原因が権利者の無能力、強迫、錯誤、代理権臆越による無権代理による場合に認められると
代通﹁不動産登記と公信力﹂名大法政論集三巻一号一頁以下、同﹁不動産登記と公信力﹂私法一三号七五頁以下、同・新版不
︵1︶ 不動産登記に公信力を認めるべきか否かの問題について、わが国の立法論として、即時採用論を展開するものとして、幾
そして、最後に、以上の、五 まとめと若干の問題を考察し、六 結語に及んでいくことにする。
有権︶、つぎにその第二の場合としての、四 共通的錯誤の場合について同様の方法で分析する︵狭義の表見所有権︶。
て、表見所有権が認められる第一の場合としての、三 仮装行為の場合について判例を中心に分析し︵広義の表見所
四 そこで、次章以下において、まず、ニ フランスにおける表見所有権の法律構成を概観し、ついで具体論とし
一
フランス判例法における表見所有権について
t
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猿
−律
論
法
︵2︶ 川島・前掲書三一四頁。
︵3︶ 最判昭和二九年八月二〇日民集八巻八号一五〇五頁、最判昭和三七年九月一四日民集一六巻九号一九三五頁、最判昭和四
一年三月一八日民集二〇巻三号四五一頁、最判昭和四四年五月二七日民集二三巻六号九九八頁、最判昭和四五年四月一六日民
集二四巻四号二六六頁、最判昭和四五年七月二四日民集二四巻七号=一六頁。
︵5︶ 最判昭和四三年一〇月一七日民集二二巻一〇号一二八八頁、最判昭和四七年一一月二八日民集二六巻九号一七一五頁。
︵4︶ 最判昭和四五年九月二二日民集二四巻一〇号一四二四頁。
︵6︶ 最判昭和四五年六月二日民集二四巻六号四六五頁。
︵7︶ 民集二六巻一号一四六頁。なお、同旨、田中実・判例評論一六三号一二六頁、また、民法九四条二項の類推適用の範囲ま
たはその限界などを考察するものとして、鈴木重信﹁登記と外観理論﹂東洋法学一三巻三.四号三三頁、吉田真澄﹁仮装登記
と民法九四条二項﹂判例タイムズニ七六号二六頁、藤原弘道﹁不動産の善意取得を保護するための民法九四条二項の類推ない
︵8︶ 民集一七巻一号二三五頁。
し拡張の限界﹂判例タイムズニ八一号頁。
︵9︶ この点について、吉田・前掲四〇頁、高木多喜男﹁遺産分割・相続放棄と登記﹂別冊ジュリスト三九号一五六頁、も同様
の趣旨を述べている。
︵10︶ フランスにおける表見所有権、ないし、表見所有者の理論を簡単に紹介しているものとして、川島.前掲書二九六頁註二
〇五︶、関口晃他﹁不動産登記制度改正の問題点﹂ ︵フランス︶私法九号六三頁、星野英一 ﹁フランスにおける不動産物権公
示制度の沿革の概観﹂民法論集二巻三二、三三頁註︵一︶、原島・前掲二三二頁など、また、その内の表見相続人について詳
下所収、さらには、右地亨﹁相続回復請求﹂判例演習親族相続法︵増補︶一八二頁がある。なお、国吟.。吟.。日日=5一ψ夢。⋮こ二、
細に論ずるものとして、中川善之助﹁表見相続人の譲渡行為と。昌自8日日已ロ⋮−,討.詳冒−,の適用﹂相続法の諸問題一二七頁以
六〇号七四頁、高橋三知雄﹁表見代理における信頼の保護﹂法学論集︵関大︶二二巻四.五.六合併号八五頁、などがある。
の法諺と表見代理の関係を述べているものとして、浜上則雄﹁表見代理不法行為説﹂阪大法学︵石本.大阪谷退官号︶五九.
フランス判例法における表見所有権について
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二 表見所有権の構成
一 表見所有権の意義
フランスにおいても一八三〇年代に移り、資本主義の発展にともない、土地・家屋の売買、賃貸借、質権ないし抵
当権設定などにより不動産の支配状態にも変化が生じ、不動産取引が重要視されてきていたことは、確からしい。こ
れに呼応して一八五二年二月二八日デクレによりフランス国営の不動産︵信用︶銀行︵○は庄[国o出○隅鮎o国.昌06︶
が設立され、市民などに対し不動産を担保に金銭を貸付けるなど不動産信用制度を整備した。さらに、これに刺激さ
れてか不動産登︵謄︶記制度についても、一八五五年三月二一二日法は、それまで革命期の共和暦七年霧月一一日法︵−︶
以前に後退したとして改正すべきであるとの声が高かった民法典上の登記制度を補充した。他方、このような機運の
下で、かかる不動産取引にともなう危険も次第に増加する傾向が生じ、表見所有権が問題となる事件もこの頃から生
じてきたといえるのである︵2︶。
表見所有老︵隅o苫﹂含法8①廿言苔臣叶︶は、一般第三者から、実際には他人に属している財産の所有権者であると
外見上みなされる者であるといえる。その他人を真正所有者︵廿8℃臣含巳苫く含ピρ亘一ρo已﹃⇔。一︶、その所有権を真
正所有権︵宮oロユ∩涼く含[S三ρo⊆苫9と称し、これに対して、表見所有者の特殊的状態ないし地位を表見所有権
︵苫o勺5∩まe℃勺曽65エと称する。そして、この表見所有権の法的性質は、身分関係における身分占有︵喝。。。。。。。。。。一。目
匹。09︹︶の概念を持ち込み、いわば、真正所有者の身分占有であると解されるのが一般である︵3︶。ともかく、表見
所有権の制度は、このように表見所有者は、無権利者であり、したがって、処分権︵ロぴ已゜・5︶がないにもかかわら
法
108
叢
≡A
fine
律
ず、一般人︵℃已窪。︶においてこれがあると誤信するほどの外︵表︶見︵①℃℃ρ苫58︶を備えている場合、この外見
の作出に対し真正所有老が関与している場合はもちろん、関与していないときでも一定の場合には真正所有者の犠牲
の下に、この外見を信頼した善意の第三取得者を保護するのが公平であろう、という趣旨である。
ところで、表見所有権の問題は、第三取得者の利益を尊重するために、表見所有者の処分︵権︶が真正所有老の所
有権に勝るか、という両権利の衝突の形で出現する問題であり、これを動的にながめれば、表見所有者からの善意の
第三取得者に対する処分行為︵証書︶ ︵ρ20︶の効力如何、という問題として提起される。一般にこの問題を解決す
るために、表見所有者を真実の所有者と誤信せしめる外見の創造に対し真正所有者がどのようにかかわっているかに
焦点をあわせて、その外見が真正所有者の仮装行為︵。・声目己ρ江8︶による場合とそうでない場合を区別して考え、前
老は真正所有者に外見から生ずる責任を負わせるのが適当であるに反し、後者はそれを負わぜるのは酷であるとされ
ている。したがって、後者については、さらに、第三取得者を含め一般人が共通的錯誤︵O㌣﹃O已﹃ 60b口出口已づ⑦︶に陥っ
ている場合と、そうでない場合とに区別して、前の場合には、共通的錯誤の被害者を救済するために真正所有老に不
利益を負わせている︵4︶。
一一不動産所有権の取得と公示制度
表見所有権の問題は、無権利である表見所有者からこの者を権利者であると信じて不動産を取得した者︵第三取得
者︶を保護するための法技術に関するものであり、このために無権利の表見所有者からの処分行為によって第三取得
者が権利を取得しうるとする不動産所有権取得の特殊的形態に属する事柄であるといえるであろう。ところで、この
問題に入る前段階として、まず、フランス民法における不動産物権変動の一般的理論の概略をしておくことにする。
︵i︶意思主義の原則 フランス民法典が物権変動に関し意思主義をとっていることは周知のとおりであるが、わが民
法一七六条ほど明確な形で規定されてはいない。
‘
七一一条は合意︵OO5<6﹃F口O⇒︶による所有権の移転の現代的原理を示し、財産の所有権は﹁債務の効果として︵廿騨.
一㎡印再江。°。oぴ=σq9ま5︶﹂取得されかつ移転されるとなす。すなわち、このほかに所有権取得に関し特段の方式を要
求する規定もないので、本条にいう所有権移転原因としての﹁債務の効果﹂としての取得とは、正確には契約当事者
間の一致した﹁合意の効果﹂として取得されることであるといえる。この趣旨は、さらに一二二八条のこれに関する
一般的原則により明白となる。すなわち、 ﹁物を引渡す債務は合意当事者の一方の承諾によって完成する。その債務
は、いまだ交付されていなくとも、それが引渡されるべき時より、債権者を所有権者とし、かつ、その物をこの者の
ために、制定当初から、不動産の生前贈与︵九三九条︶、先取特権および抵当権 ︵二一四六条︶に対し登︵謄︶記に
︵亘︶証書の公示 民法典は、不動産物権変動に関しては、上述の意思主義に内在する欠点を補い第三者の保護を図る
有者となるとしている︵一一四二条︶。 . ’
らかの外からみれる外形を結合させる必要がある。ちなみに、動産物権変動に関しては、事実上の占有をなす者が所
状態に置かれることになるであろう︵7︶。したがって、当事者間の物権変動を第三者に対抗するためには、合立日心に何
ると、第三者にとっては、この当事者間の何ら外形をともなわない物権変動を知るのが容易ではなく、非常に危険な
動が契約当事者間においては、単純かつ敏速に行える利益があるが、当事者以外の者にも当然にこの効果が及ぶとな
院旨。︶に移行したことは疑いがないとされている︵6︶。しかし、この制度は、なるほど所有権およびその他の物権変
式主義︵げ﹃日①一一〇力日O︶を排し、それを極端に単純化した形での何らかの形式をも必要としない立臼⇔思主義︵6。⇒°。。目゜。⊆聾,
よび贈与に適用している︵5︶。 これらの民法典上の一連の規定から、 フランス民法は、 ローマ法上の所有権移転の形
危険に置く。⋮⋮﹂、とする。そして、一五八三条および九三八条は、この一般原則をより明確な表現を用いて売買お
フランス判例法における表見所有権について
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よる公示制度を採用してきた。その後、 一八五五年三月二一二日法は民法典に散在するそれらの規定を補足し、第一
に、生前の、不動産所有権または抵当権の目的となりうる物権︵n用益物権︶に関する移転証書︵p68言§°・冨露︶お
よび判決、これらの放棄証書︵同法一条︶、第二に、不動産質権、地役権、使用権︵已。・ρσq。︶、住居権︵げρ臣S江o口︶
に関する設定証書︵ρ。[①8昌゜。法巨5および判決、これらの放棄証書、または長期の賃貸借など︵同法二条︶を中心
に謄記すべき事項を拡大した。そして、一九三五年一一月三〇日デクレ一条は、第一に、不動産所有権およびその他
の物権の確認証書︵g甘江∩⊆g9ば︶および判決、第二に、死亡による単独受遺者または単独相続人に対する不動産
物権の移転を確認する公証人による証明書︵◎[[O切⇔ρ己05む力 已O[①吋﹂ひ6Q力︶の謄記を加え、第三に、上述一八五五年法一条
にいう﹁生前の﹂の語を削除した︵同条一号︶。そして、近時の一九五五年一月四日デクレによる不動産公示制度の全
五年デクレニ条︵一八五五年法二条二項追加︶により、公正証書または私署証書で、署名後三月以内に公証人の正本
条︶は公証人による公正証書の方式を要求していた。その後、これぼかりか、その他の物権変動についても、一九三
これには重大な例外があり、民法典上のものとしては、不動産贈与︵九三一条︶および合意による抵当権︵二一二七
しかも、これら登記の前提となる証書の種類は、以前は、原則として自由であり私署証書でもかまわなかったが、
たがって、証書・判決上の名義人は、即登記簿上の名義人とみてよいであろう︵9︶。
ではなくして、直接的には、かかる物権の変動原因となった証書・判決そのものの公示︵編綴︶であるといえる。し
このように、フランスにおける登記︵謄記.公示︶の方式は、一般的に、不動産を対象とする物権そのものの公示
拡大されている︵同デクレニ八条三号、二九条︶︵8︶。
えて、一九三五年デクレで採用された相続.遺贈を確認する公証人の証明書の公示は、共同受遺者、共同相続人にも
面的改正を経たのである。本改正においても、前述してきた謄記事項はおおよそその公示が必要とされているし、加
110
叢
≡ム
∂間
律
法
編綴簿に寄託したもの、および、確定した判決だけが謄記されるとしていた。ところが、一九五五年一月四日デクレ
四条一項は、この例外現象をさらに押し進めて、 ﹁抵当権保存所において公示される全ての証書は公正︵証書︶の形
式をとらなけれぽならない。﹂と定めるに至った。このように公正証書前置主義によって、公示の真正さをできるか
ぎり担保するために不動産取引のプロセスの中に公証人の介入を採用したのである。したがって、証書の公示の面か
らみれぽ、フランスにおける不動産取引は当事老および第三者と公証人との人的信用関係の上に成り立っているとい
香j公示の効力 θ対抗力 民法典および上述のこれを補充する特別法は一貫して、原則として、公示ないし登︵謄︶
えるのではないだろうかと考えられる︵−o︶。
フランス判例法における表見所有権について
111
されてきたが、一九五五年一月四日デクレ三〇条一款四項で、特に、解除、撤回、無効および取消条項︵o冨已゜。o︶は
いるようである︵21︶。したがって、原則として、同一の前主による特定承継人間の衝突の他には対抗力が及ぼないと
存するとか、詐害︵等9已匹o︶が存するとか、または、第一の売買を知っているとの単なる悪意者もこれに含めてきて
これに対し、公示の欠訣を主張しえない第三者は、二重譲渡において第一の売・。貝を知らないことに過失︵日葺⑦︶が
うる第三者は、同一前主より同一不動産上の互に相容れない物権を取得し、かつ、先に公示している者としている。
この点に関しては一八五五年法および一九五五年一月デクレを通じて一貫している。すなわち、公示の欠訣を主張し
れない権利を同一の前主︵9自8已﹃︶からそれぞれ取得した特定承継人の間の衝突を解決するためのメカニズムであり、
第三者に対してその有効を主張しえないことをいう︵H︶。ところで、 このような公示の対抗力は同一不動産上に相容
主義を宴言している。対抗できない︵ぎo廿廿o蟹ひ巨ま︶というのは、ある行為︵証書︶が当事老間で有効であっても、
五年三月二一二日法条一項、 一九五五年一月四日デクレ三〇条一号︶、との表現をとっており、公示の第三者対抗要件
記の欠候は、全ての利害関係人に対抗される︵民法典九四一条︶、または、第三者に対抗することができない︵一八五
(…
112
ロ冊
叢
≡ム
律
法
公示されていなけれぽ対抗できない、と規定するに至っている。
@相続・遺贈による確認証書の公示の欠訣は損害賠償原因となる︵一九五五年一月四日デクレ三〇条四款︶︵B︶。
◎公信力 公示に公信力がないことは一般に承認されている︵14︶。
三 表見所有権の法律構成
表見所有者による不動産の譲渡、または、抵当権設定などの処分行為︵証書︶を有効とするための法律構成は、不動
産物権変動に表見理論︵庄∩○ユo巳巳.◎℃廿胃昌60︶を適用することによって可能となるであろう。このことは、結局、
外見︵ρ廿]℃9﹃6]P60︶が本来は無権利者にょる債権的にも物権的にも無効な行為に有効の効果を与えることになるとみて
いる︵15︶。しかし、真実︵蒜巴ごo︶と異なる外見が全て保護されるというものではなく、また、外見の効果の点にお
いても、原則として、真正権利者と表見権利老の内的関係では、外見に拘束されないし、対第三者についても特別の
事情のないかぎり拘束されるものではない。表見所有権の問題は、まさにこの例外の場合に属し、不動産取引におけ
る第三者の利益保護という特別の要請から外見の拘束を正当化しようとするものである。そして、表見所有権の場合
は、単なる外見ではあきたらず、外見の作出、および、信頼にかかわる真正権利者、第三取得者の行為の態様を問う
ものである。これには、一般的に学説・判例上、一に、表見理論と結合した民法典一三二一条後段に定める仮装行為
と、二に、主として判例法上発展を遂げてきた共通的錯誤の理論が主張されている︵16︶。なお、これらの他に、民法
の領域で表見理論を引用して解決している問題として次のようなものを拾うことができる。まず、民法典に規定され
ているものとして、一二四〇条は、債権証書︵ へ6﹃6Pβ60︶の所持人に善意でなした弁済︵で趨。日⑦巨︶を有効とし、二
〇〇八条および二〇〇九条からは、表見受任老︵日ρ昌匹讐巳苫ρ廿勺胃6日︶の行為を有効としていること、などが挙げ
られる。また、判例上のものでは、事実上別居している夫が妻の財産を自己のものとして処分した場合の夫の独身性
フランス判例法における表見所有権について
113
につき、あるいは、内縁の夫婦︵OO⇒O已ぴ﹂昌o◎︶に家族代表権を与えることなどにも引用されているようである︵口︶。
ところで、表見所有権を基礎づけるこれらの両理論の意義内容、適用状況などの具体的考察は章を改め次章以下で
それぞれなすとして、ここでは、民法典の下で表見所有権が承認されることができる下地を、民法典の定める規則、
ないし、原理との抵触が許されるか、との観点から探ってみよう。けだし、表見所有権を振り回し無権利者の処分を
有効と認めれぽ、次のような条文を侵害することになるからである。
︵i︶他人の物の売買の無効
一五九九条 ﹁他人の物の売買は無効である。買主がその物が他人に属することを知らないときは、それは損害賠
償を生じさせることができる。﹂
本条は、︿Z。日o巳巳ρ已o匹50⇒甘。・。庁oぴ9∨︵何人も自己の有せざる物を譲与できない︶の原理を宜言したもの
である。他人の物の売買を禁じた理由は、主に、民法典起草者の意識の中で、他人の物の売買の効果と売買にょる所
有権の移転性︵o胃ρ9警6坤蚕⇒。・討[間︶とが密接に結合していたことによるとされる。すなわち、ローマ法や、少なく
ともフランス旧法では、周知のように売買契約は債務関係を発生させる契約であるにすぎず、所有権移転は特別な行
為、たとえぽ、握取行為︵日き声oも暮5︶や、引渡︵言9庄江o︶によっていた。 売主は、売買契約によって買主に追奪
担保︵σQ弩§甘崇く声合8︶の債務を約束するだけであった。ところが、現民法典では、売買はそれ自体で所有権を
移転させることであり︵一二二八条、一五八三条︶、したがって、売主に属さない物の所有権は実際上移転できないの
であるから、他人の物の売買は不能の目的︵忌g旨O。。⋮﹂工⑦︶として無効であると結論づけられていたようである。
このことは、理論的に他人の物の売買の無効は絶対的無効︵5已一一一[ひ①ぴooO]已O︶の性格に導くのが自然だからであると
される︵18︶。 ただ、本条は売買により即刻、所有権が移転することを目的とする契約に適用されるだけで、期限
114
︵9﹃日O︶附売買、鍾物︵σQ。巨.。︶売買などは・れに従わないとされている⋮。しかし奈ら、本委絶対的無効と
解しては、取引の便宜.安全の利益をそこなわせ、また、契約当事間で有効な契約の全ての効果を奪ってしまうこと
になるなどの点から、本条を柔軟に解釈していこうとするのが一般的傾向である。すなわち、本条の趣旨は、真正所
有者の所有権回復請求による混乱を未然に防ぎ、買主にかかる売買の無効請求権を与えたものと位虫具つけ、もはや、
公の秩序による無効の性質を失わしめている。したがって、この無効は、売主の所有権取得後の、または、真正所有
j他人の不動産上の抵当権の無効
者の追認による暇疵の治癒を許す相対的無効︵出已巨涼﹃巳葺﹂﹃︶の意味に解されている︵20︶。
( P1
条件、または、取消しうべき抵当権でなければ設定することができない。﹂
売買と異り、設定者︵債務者︶が後に所有権を得て追認することが許されず、公の秩序による絶対的無効としてい
ことを見出すのは容易なことであろう︵22︶。 ただ他人の不動産上に設定した抵当権の無効の性格は、上述他人の物の
﹃。。。。︸<ピ已﹃﹂=。。①。6一甘。口蔚∨︵与えた者の権利が解消するときは、受けた者の権利も解消する︶の原則を貫いている
︵何人も自己が有する以上の権利を他人に移転することができない︶の原則⋮、ないし、合竃ξ§エ§°・∨
、﹂れらの条文から、民法典の下においても、︿Z。日旦互巨・富昌日・§・﹃﹄§ξ§﹂勺乙・°﹃巾O
ある。⋮⋮⋮﹂
二一八二条二項 ﹁売主は、その売り渡した物の上に有する所有権およびその他の権利を取得者に移転するだけで
㍗<⑦巳﹃︶は抵当権を設定されない。﹂
一二三〇条一項︵一九五五年一月四日デクレによる本条改正u旧一二二九条二項︶﹁将来取得しうるべき財産︵ひ﹂9
ロ田
二一二五条一項 ﹁不動産上に停止条件および解除条件附権利、または、取消しうべき権利を有する者は、同一の
叢
言ム
律
一法
フランス判例法における表見所有権について
115
る。したがって、全ての利害関係人はこの無効を引用することができることになる︵Ω︶。
表見所有老による他人の不動産の譲渡および抵当権設定などの処分は、まさに、これらの原理.条文に従えぽ、他
人の物の売買であり、または、他人の不動産上の抵当権設定であることは間違いない。したがって、表見所有老の処
分は普通法上は本来的には無効になる。しかし、これでは表見所有者と取引をした第三老の不利益は大きいので、破
殿院はじめ下級裁判所も、当初は民法典のこれらの原則を弱めることに躊躇していたが、後に大担にも不動産取引の
安全、社会的利益の保護の見地から、立法老が定めた崇高な民法典を侵害し、または、その下の原則を緩和させて、
この間の問題に終 止 符 を 打 っ た の で あ る ︵ 4 2 ︶ 。
四 表見所有権が成立する場合
表見所有権が真正所有者の権利に優先してその成立が認められるためには、まず、表見所有者を信頼して取引に至
った第三取得者の側において、この者の利益が保護されてしかるべき十分なる事由がなけれぽならないだけでなく、
他方、真正所有老の側においても、第三取得老の利益を考慮すれば自己の真実に基づく利益を犠牲にされてもやむを
えないと思われるだけの事由がなけれぽならない。この間の利益調節の判断基準は、具体的には次章以下で考察する
判例の集積から引き出すことができるであろうが、本項では次章以下の仮装行為および共通的錯誤の場合を通じて表
見所有権が認められるために必要な次の三要因について概観して置くのが便宜であろうと思われる︵52︶。
︵i︶内的要因真正所有者に真実の所有権が存し、表見所有老たる譲渡人または抵当債務者に処分権がない場合で、
かつ、真正所有者において、表見所有者を真実の所有権者と誤信させる外見の作出に対し何らかの責任を負わせるの
が妥当な場合であること。両老間に合意による仮装行為があるとか、真正所有者の一方的仮装表示がある場合には、
真正所有老に対しその仮装表示から生ずる不利益︵責任︶を負わせるのは容易であるが、このような事由のない場合
は困難な問題となる。たとえば、真正所有老が表見所有者の外見を黙認しているとか、長期間放置してきたという場
合には、仮装行為に準じた責任を真正所有老に負わせることも可能となってくるであろう。後述共通的錯誤はこの辺
のことを扱う問題といえる。
g︶外的要因表見所有者に真実、所有権がないにもかかわらず、それがあるかのような、いわゆる虚偽の外見が存
香j心理的要因 表見所有者からの第三取得者が善意︵ひ8昌。置︶であること。ただし、仮装行為として民法典二二
い場合とにも区別できるが、あまり重要でない。
章の共通的錯誤の対象となる法現象である。なお、外的要因の創造に対し表見所有者が加担している場合とそうでな
担した場合と、そうでない場合とが区別される。総じて、前老が第二章で述べる仮装行為の対象となり、後者が第三
ているとか、がこれに該当する。この場合、前にも少し触れたように真正所有者が外的要因の創造に対し積極的に加
わち、その旨の私署、公正証書が存し、しかも、公示事項とされている証書・判決などが登︵謄︶記ないし公示され
すること。たとえば、表見所有者が現実に不動産を占有してきたとか、真正所有者である旨の権限証書︵ゴ障O︶すな
(…
った表見所有者自身も、自己が真正所有者なりとの善意が認められる場合でなけれぽならないのではないのか、との
なお、共通的錯誤の支配下では、共通的錯誤は全ての一般人の誤謬といえるので、当然、他人の不動産の処分に至
る外見を信頼した者を保護するとの観点から保護する必要がなくなる︵26︶。
においても、第三取得者が真正所有者の存在を知っているなどの悪意︵白ρρ自く騨一〇力O ︷ぴ声︶である場合は、表見理論によ
っ、共通の不可避的錯誤に陥っている場合でなければならないとされている。また、これに対し、前のいずれの場合・
の存在を知らないことだけで十分であると解されているが、共通的錯誤の支配下においては、第三取得者が善意、か
二一条を適用する場合は、第三取得者は単に善意、すなわち、外見の虚偽たることを知らない、または、真正所有者
(…
116
μ昭
叢
≡ム
律
法
疑問も当初あ・たようであるが、近時では、共通的錯誤纏然たる表見理論の嘉とみられているので、外見を利用
する表見所有老の心理状態を重視しないのが一般の見解であり、このことは判例上にも、しぼしば掲げられていると
ころである。
五 表見所有権の適用範囲と効果
表見所有権は不動産を対象とする。動産については、民法典の立法者は、﹁占有は権限︵ゴ貫巾︶に値する。﹂ ︵二二
七九条一項︶と規定していることから、善意の第三者は占有により即時に動産所有権を取得すると解釈されている。
したがって、動産に対して表見所有権の概念を持ち込む必要がないとするのが一般である。また、表見所有権は表見
所有者の第三者に対する有償行為︵証書︶ ︵p99呼法苫8含巾⊆×︶を対象とする。これは、無償行為︵①6[6鋭庄﹃。
するといわれている。このことは単なる表見所有者の真正な権利老らしい公示または占有だけでは所有権は認められ
解されている。第二に、真正所有者と第三取得老の関係については問題となる。一般に外見は権利を創造︵ 、 ・6﹃①騨↑﹃﹂06︶
であれぽその代価で現在有する額を、悪意であれぽ損害とともに物の現在価額を返還しなけれぽならないであろうと
のなら、それを真正所有者に返還すれぽよい。もし、表見所有老がそれをすでに移転しているときは、この老が圭暑心
としているので、この両老の内部関係は表見理論とは関連がない。したがって、表見所有老が現に物を所持している
る。第一に、真正所有老と表見所有老との関係についてである。表見理論は元来、第三取得老を保護することを主眼
つぎに、表見所有権を認めることによって生ずる効果については、次の二つの関係に区別して考えることができ
所有権移転と抵当権設定が主たるものとなった︵82︶。
らである︵27︶。しかも、本稿ではこれまで表見所有権が承認されてきた事例との関連から、考察の対象は売買による
箋亘の場菖もはや第三取得老を保護するよりも真実の所有老の権利が優先して保護されるべきであるとみるか
フラソス判例法における表見所有権について
117
@ないが、この者の外見を信用してこの者と取引した者︵第三取得老︶には真正所有者に優先して効力が与えられるこ
律
法
︵1︶ これ以前すでに旧法下において、生前贈与に対する登記︵ぎ切﹂巨良8︶制度が行われていた。これは動産も不動産も登記
事項とされており、結局、第三者に対し贈与の事実の公示には役立ったが、もっぱら家産︵言g旨o日6°・品目言奏︶の保持を
主眼としていた。この登記の欠敏は、贈与当事者間において有効な贈与があったと主張できないのと同時に、第三家族の者に
もそれを対抗できないものとされていた︵○﹃江。日き8合≦﹃02[・・。二こ。・g二口゜。ぷ⇔二゜︶。これに対し、抵当権に
この登記は抵当権保存吏が用立日心した登記簿に証書を編綴する方式である。そして、共和暦七年︵一七九八年︶の抵当信用法は
対する登記︵5。・日宮[8︶制度は革命期の共和暦三年収穫月九日︵一七九五年六月二七日︶の抵当法九条以下に定められた。
抵当債権者の保護の必要から、さらに、所有権および抵当権の目的となりうる物権︵いわゆる不動産用益物権︶の移転証書の
すべてを保存吏が謄記簿に転写︵60勺一⑦︶していく方式での謄記︵冨p目。臥でま5︶制度を定めた。と同時に、この頃すでに、謄
│隷吾一㊤⊂。吉5。㊤一ρO一ご]≦p﹃ρ。吟戸ρ苫p自AO8#庄く芦[“。。“一くor一㊤ご“昌。Oc。ドO。。。。°なお、星野・前掲民法論
記がなけれぽ第三者に対抗できないとの文言が存していた。Oo言20ロ豆訂葺“Oo⊆窃伽一ひ日㊦日巴8匹。号o#巳く︷一玲呂留グ
メv二。i’巨齢①ロ㊨①︷ω・三蕊ド白。§ご也昌巳g担廿象“吋曇ま廿巨ξ・合△日辞・↑・自言鳶畳件゜c。﹄gひ帥゜3官﹃ζ゜
でふ。。⇔白。旦戸・06§ぬ已6・吋﹃。ぼ匹⋮。gσq昌。目窪σq伽ま邑二゜一二罵・。三。o◎叉旦い゜冒切§5匹、○°§△°合゜=
︵3︶男。・,。﹃江6p。・.・①5唄・言﹂・.ー6一p・。・力2﹃。巳こ告。︽亡。。∨三。。。N;三戸。σ・。二§p国ξ。①言く日§ぴ↑こ葦
また、民法典の変遷を論ずるものにつき、野田良之﹁フランス民法典の一五〇年の歩み﹂法協七二巻四号三三三頁参照。
の社会.経済の変遷につき、高橋康之﹁フランスにおける資本主義の発展と抵当制度の変遷﹂法律時報二八巻一一号二六頁、
︵2︶ ○。試5巾[○竜詳③問ひ。卓。一戸︹ポ出。一㌣呂曽q2戸陣着き辞゜で゜6芦︷°c。二く。一こ口。U。。9なお、フランス一九世紀前半
集二巻六頁以下参照。
〔
は見ることができなかった。後日、補充する予定である。たとえζ=一︷6︹ピp勺8百ひ涼。勺℃自㊦巳P各含P勺弩ぴ、一⇔O廿ζo﹃日
。[。。.⋮ζ。﹃マ㊥[戸知ぺ。四已P。U・ひ言け・押N<。ポ一㊤Oぷ5。ま9。・・この他、表見所有権を扱う論文もあるようであるが、直接に
曳。。﹃鼻一8ド=。怒・。⋮出・F・。こ・呂・§a﹄§g号合。↑け。︷<芦吟゜ドN<。てcd8・°・、廿曽窓゜旨σq﹃︹蒙吾]8ぷp。一さN
6{
叢
とを意味している。したがって、第三取得者は表見所有者との取引から所有権を原始取得することになるであろう。
ー
18
論
フランス判例法における表見所有権について
119
﹃°・ひ8円ま△9。£艮苫已臣餌㊦げ。目。宣。二6ω穿巳丙ひ昔く登g亘。苫o苫﹂含。﹂器音5一6。・障昌。・p註oロ。・旨日。昆芭2夢騨P
o℃°6汽戸c 。 “ 苫 吟 口 。 胃 臼 g ͡ o ︵ 一 ︶ ︶ 。
喝昌3一8廿団゜国8s日①Mい聾肩o宮声伽ま唱勺自。巨。2冨自完﹂[蒜。r[已。。。“==P一〇一ρ卑切゜︵6箒⇔已也§邑g巴唱2f
なお、ここで身分の占有というのは、夫婦の婚姻の挙式証書の形式的不備などの補充のために ︵民法典一九六条、 一九五
みれる。たとえば、嫡出子の親子関係は、通常、身分登録簿に登簿された出生証書により証明されるが ︵民法典三一九条︶、
条︶、または、嫡出子の親子関係を証明するために認められている民法典上の制度を応用して所有権に使用されているものと
これがない場合は、継続的な身分占有、とくに、その者が父の氏を称し、父が子として扱い、しかも、社会、家族においても
子として承認されていれば、それにより立証される︵民法典三二一条︶。したがって、本論に即していえば、表見所有者が真
正所有者の名義を使用し、しかも、世間からも真正所有者と扱われているものといえる場合は、表見所有者に表見所有権があ
るものとして、この者による処分を有効とされる。いわば、表見所有者に不動産の処分権限を認めたと同様の結果を生じるこ
しかし、物を所持︵江∩[05[一〇]]︶する意味での占有︵O。胡。。。邑8︶と表見所有権、すなわち、表見所有者の占有とは区別しなけ
とになるであろう。
ればならない。表見所有権は第三取得者の信頼︵O﹃O望P560︶を基礎として認められるものであり、物に対する表見所有者の行
動︵8日廿o詳6日6葺︶に基づくものではない。表見所有者は一般人からその者が所有者と信じられる者であるが、占有者は所有
︵ま。ピ6︶に対するものだからである。また、表見所有権の効果は第三者の利益に帰する。法は外見によって錯誤に陥ったた
老として行動する者である。したがって、表見所有者は決して真正所有者になりえないのである。外見はあくまでも、真実
めに第三者を保護するのである。決して表見所有者の利益になるのではない。これに対し、占有老は占有の効果の受益者であ
る︵ロ゜﹄°・こ゜ζ・§巳“。や6言長N<。て冨こ已㎎汀ひ昌。≡一⋮ζ・旨g男昌8鼻。頃。一吟・吟・ドN<。て巨・。・︶。
うものではなく、いわば、表見所有老が真正所有者の資格︵ρg=ま︶で財産を平穏︵弓p邑互6︶、公然︵廿已ひ誉︶、かつ、周知に
さらに、表見所有権と真正所有権の相互関係については、表見所有者が真正所有権の全部または一部分を奪ってしまうとい
︵白O︷O旨O︶に占有しているだけである。しかし、第三者が生じてくると、結果的には真正所有権を奪ったことになるのであろ
う︵﹄ξ破6一p。。。・。ξ9<=“p告一冶ρづ。一♪一Sは、同趣旨を表見相続人について述べている︶。
︵5︶ 売買に関して、一五八三条﹁それ︵売買︶は、物がいまだ引渡されず代価も支配われていなくとも、物および代価が決め
︵4︶呂・旨2㌘さ巨吾。喝゜・﹂;N三く。ポロ.品弓一①己巳2控o呉。℃°9°[°・。三R穿費匹三.N克ピ6・・§σQ三喝・・﹂坤﹄.・。・。・
られた時に当事老間で完成し、かつ、所有権は売主に対して買主に当然に取得される。﹂、贈与に関して、九三八条﹁適法に受
転する。﹂
諾された贈与は当事者の承諾だけによって完成される。かつ贈与された目的の所有権は別段の交付を必要とせずに受贈者に移
モヤ︷・“昌δc。⋮︹8﹂。・○は日。子o巴①<巴巨ま江。碧§g8日勺房冨﹃一ゴひ巨■2①毛呂6芸戸6<二﹃﹂目゜昔口く﹂o一〇°℃°
︵6︶ =§巨9日℃。芸o℃°2°乙“冨﹃コ8己”ロ。⑦一G。⋮窓弩マ9男ロ春e辞o喝゜・﹂r&“一く。一こロ8㏄︽⋮○昌ぴ8巳㊦♪Oき=
がある。なお、これを比較法的見地から扱ったものとしては、関口晃﹁登記制度の比較法的研究・フランス﹂法律時報二四巻
比較法研究一六号三五頁以下、星野英一﹁フランスにおける一九五五年以降の不動産物権公示制度の改正﹂民法論集二巻所
た、一九五五年デクレによる改正を扱ったものとしては、伊藤道保﹁一九五五年、フランス不動産登記制度の改正について﹂
義である︵目o﹂匹已一。屑さ巨一㊤N♪Oo匡昌20①嘗け騨夢吋§ぼも胃絃o日a一含ρ昌。Oc。O︸窓自受9ズ☆苫碧倉oやn一[°昌8c。O°︶。
たアルサス.ロレーヌ ︵﹀一切ρ60 0[ 一ド◎﹃﹃P■]口巾︶地方は、ドイツ法の下で登記簿が整備されており、権利そのものを公示する主
︵9︶ ○。990ぜ言ロで﹃﹃①﹂涼晋脅。津庄く■︷・N“勺9窓。田且一酵P一8ぷ5。O⊂。Nただし、一九一八年、ドイツから復帰し
である。
囲の拡大、必要的︵o巨品p8﹂苫日6巨︶公示事項︵二八条一項︶、物的編成による不動産票箱︵か6臣巽一日日oぴ巨。﹃︶の併設など
げられてきた。一九五五年一月四日デクレもこの欠陥を相当補充してきているとみれる。たとえば、公示されるべき権利の範
なお、従来からフランス公示制度の三欠陥として、公示の範囲︵対象︶の不充分性、公示の任意性、登記簿の不備などが挙
♂56↑含。Sρ恒一㊤口P匹08ロ。一品O°
一いご穿日⑦旦巨四款♂﹃日60⑦一p言臣。蒙♂g﹂呼ρΩpN°寄巨一〇8三。︹こやc。Oい邑日庁㌣︹音ρ[pは8﹃目6牛。冨言96ぼ
一昆合c。o。。8甘・届c。ぷ]︶出﹂8否。宮こo﹂⋮戸。σQ6﹃2否﹃c・。♪冒騨穗♂﹃日㊦江・言u旨まま甘§戸含pO°o力゜一8⑨6汀こ喝゜
いて教課書以外で参考にしえたフランス文献としては次のとおりである。﹄。胡。。。日且“ピ釦障p9日官﹂§<已巾⇔胃p<∩暴8鰍自6叶−
三号一四頁以下、同﹁不動産登記制度改正の問題点・フランス﹂私法九号四五頁以下がある。これに対し、これらの改正にっ
収、浦野雄幸﹁フランスの不動産物権公示制度における公示︽市已ぴ一一。↑ま︾の効力について﹂民事月報一八巻九号二六頁以下
「
︵8︶ これらのフランスにおける不動産物権公示制度の改正を通史的に扱ったものとしては、星野英一・前掲論文がある。ま
︵7︶P伽日6子。廿゜9°ヤ・。Oい○忠げ。§﹂。さ。℃°9°㍍、ロ。・。O°
U㊤窪切’
6←
叢
120
≡A
酉冊
律
法
フランス判例法における表見所有権について
一
121
なお、フランスの登記手続の概略を素描すれば少々複雑ではあるが次のように分類できる。まず、登記申請者︵.。ρ已伽..ロ[︶
︵δO目oQ6﹃<③吟6⊆﹃︶が登記簿︵苫ぬ宮冨︶に受付ける手順であるが、差出す書類の種類・数に、または、登簿方法について、謄記、
がその財産所在地の抵当権保存所 ︵ひ⊆。ξ巳。85g<昌8匹6ω旦U。夢且已。。・︶に登記に必要な書類を差出し、これを保存吏
マ950喚n吟 喝已05︶、登記︵巨・臥宮日5︶および一九五五年デクレによる公示 ︵勺⊆窪8ま。︶の差異が存する。第一に生前贈与の
︵12︶§ξg因還8鼻。や。=°[°・・︾一・。ポ・。。。。u・三ρΩ8ぎc・g戸吋。づ亀6﹃こ已﹃⋮甲ひ一①・。胡。c﹃。一く芦①﹃二蓑㍗
の効果を生ずると述ぺている。
お、後者のプラニオルとリペールはこの現象を仮装行為になぞらえて、あたかも秘匿証書︵①口[O ω而∩﹃巾吟︶がなかったのと同様
︵u︶国゜“︹・こ゜§§昆三廿゜・﹂;M三・。ポ§旨σq9三。§虚穿昆g苔㊦﹃・三で・6⋮;・。三旬﹃世69﹃辞5。①ふ⇔な
頁、 六一二頁。
︵10︶ この点を指摘するものとして、川島・前掲書二九一頁、関口・前掲﹁比較法的研究﹂ 一八頁、同.前掲﹁問題点﹂四七
礎があるようにも思われてならない。
し、関口教授の引用される登記内容適法性の原理は、公証人制度に担保されながらも、証書の登記という登記の対象にその基
二九一頁、関口・前掲論文一五頁、星野・前掲書︵民法論集二︶一五六頁など︶、本稿では詳細に述べることをしない。しか
項、一九三五年一一月三〇日デクレによる一八五五年三月二三日法二条二項追加︶すでに指摘されているので︵川島.前掲書
また、登︵謄︶ないし公示の前提として、証書の公証が要求されてきた点については二九五五年一月四日デクレ四条一
年法︶・新︵一九五五年デクン︶二一四八条二項︶。
6ざ×︶二通を添えて差出し、証書と明細書の一通を返却し他の明細書を編綴するものである︵旧二一四八条、改正︵一九二六
る。最後に、先取特権・抵当権の登記の方式は、公正証書・判決の謄本・抄本、私署証書の原本、ならびに明細書︵ぴ。.臼。.,
一九五五年デクレ三四条︶が、その方式は第二を受継いでいる。結局、内容的には第一の謄記が第二の方式に移行したとみれ
一三条、民法典二二〇〇条︶。そして、これら第一と第二の謄記は、一九五五年デクレにより公示に改められた︵新九三九条、
・判決の全く一致した謄本または抄本二通を差出し、一通を返却、他を登記簿に編綴して製本する︵一八五五年三月二三日法
当初は各物権変動原因の証書・判決を第一の方式と同様に行われていたが、一九一二年七月二四日法により、謄記すべき証書
へ転写するものである ︵旧九三九条︶。第二に所有権およびその他の物権の謄記の方式は、この謄記が認められた一八五五年
謄記の方式は、受贈者が贈与およびこの受諾証書、受諾が別証書であれば受諾通知をなし、保存吏がこの証書を全く右から左
(け
律
叢
122
三△、
tima
法
巴NP一〇ご∨⑰+、ヒ。・なお、第三者の悪意ないし害意につき、星野・前掲民法論集二巻六四頁註︵六︶、および、最近の判例・
学説を詳細に論じている研究として、浜上則雄﹁フランス法における不動産の二重譲渡の際の第三者の悪意﹂阪大法学五一頁
一゜±ドき甘﹂°冨①N。①昆︶。
以下、がある。その後、第二の譲受人の単純な過失の事例についても判決がでてきている。︵○器・。・鴬日弩。。一㊤Oc。、O・。力・一〇⑦。。・
︵13︶ 一九三五年デクレにより謄記事項として追加された前述の確認証書および判決、または、相続、遺贈の死亡を原因とする
クレが解決したものであるとみれる。08お90﹃目げ篇“[6。。6鴫∩雷“①一。6鴇己合切白芭靭ユ。冨吟毒口。。∩ユ勺=op●2日葺良自。。
移転謄記の第三者に対する効力に関し、かかる謄記がなくとも対抗できるかの点で解釈上争われていた問題を、一九五五年デ
冒﹁段。ひ。.2合ωR§8]轟。∋9ロ崇庁田江亘男。<°旦日号゜6⋮︿°一㊤お﹀℃°c。OP
︵14︶ この点について、関口教授は、 ﹁表見的所有権の理論により公謹文書そのものに公信力が付興されたと同様の結果を生じ
︵15︶出こ巨9﹄°ζ③N。S倉。U°6帥仲゜吟゜心N<○ポ冨﹃旨σq冨叶ひ白。軍Oド
ている﹂と、指摘しておられる︵前掲﹁問題点﹂六三頁︶。
︵16︶ 出こP。͡Sζ日。昌吾名゜6﹂け二゜ドN<o︼こ℃R旨σq古﹃ひ昌。・‘軍Oド軍Oc。⋮ζ自口⇔吟戸昌白ざ吾o⑰合◆[°ドN<o庁、5。C“
︵17︶ ﹀°︾已阜蒜田四白B已。阜ロo︷⑦①⊆Q力゜一㊤O全一゜ご出こ巨゜⑦[﹄°ζ図N9=辞o勺゜巳庁仲ふ“N<o “勺胃﹄已σQ冨芸p⇔一︽8⋮い①ξ9ひ
戸゜Z6臣o戸国gぺ゜O巴合N“<。勺δ唱宗艮白。冶2ω゜⋮■①巳巳g戸■2﹃o廿゜。声ひ吟靭勺胃コ6胃荘=。。,N+庁ぱc。°
⇒09①¢]︶°一〇c◎一゜一゜︽“°⑦け゜。°
︵18︶ 里oぼ。Ω已巨P目2①。需ω巳。象。・廿o。・↑江oo。・ξ訂6庁o・・oエ。騨仁障巳“戸㊦<°旦日゜合゜o︷<°一㊤U古廿二P昌。︼c。れ巨o己巳9戸■o詳“
oで゜ひ一[°二P廿2﹄.出ω日。r一〇口℃昌。C“で゜ま゜
︵20︶ Ω己プPo廿・合・昌。一ご也①巳巳9戸■・芸oや∩一↑◆叶二P勺曽田ρ日魯5。+c。・ この点に関して紹介しているものとして、末
︵19︶ Ω巳プPo恒合゜目。一冷口騨昆巳魯家℃。芸oで.合゜古゜一PU胃国騨日。r白R900=⇒20巷声S旦゜o勺◆6︷[°吟゜“ロ゜±ρ
川博﹁他人の権利の売買﹂末川法律論文集皿債権二四七頁、柚木馨−−高木多喜男・注釈民法一四巻二二三負など。
典一〇二一条﹁遺言老が他人の物を遺贈したときは、遣言者がそれが自己に属さないことを知っていてもいなくても遺贈は無
これとは別に、やはり﹁他人の物の処分﹂の領域に属するが、しかし、直接には本稿の問題と関連しない原則として、民法
効である。﹂、との規定がある。しかしながら、近時の判例・学説の一般的傾向としては、本条は遺言者自身で直接に受遺老に
遺贈する場合にだけ適用され、その他の場合、他人の物の遺贈は相続人など他の者に対し、その他人の物の移転を遺言者に代
フランス判例法における表見所有権について
一
123
ているようである︵Ω已芸Po⑰ひぎやNぶ白。し。黛﹄已富−。冨。。。・oξ巳く■自㍗一〇巴“目。c。袖︶。
って移転する負担を課したものであると解し、遺言自由︵=ひgま︷9S日o葺p障o︶の原則から有効に解釈し無効の場合を制限し
︵21︶o﹄P50。合・菖・・σ・・言︷已巨・昆⇔旦ぱ原田慶吉﹁ρ≦ど・。メN︵N§︶とρ≦口Nぷ。︵o合6一⑦︷∼①巨−’︶﹂
︵22︶ ︿°○艮目尉逐oや6㌣勺込P±⋮﹄°ζ960已ρ白09①⊆SO°甲 一㊤O十N・一c。OO悼⋮国ロ巳巳2戸■o吟︹o卓6苦古・o。・
法協五八巻九号一頁。
勺㌣P﹃工>50博卓や゜
︵24︶出゜§§且訂§・ぎ。︽・・§8日ξ募9ご⊆・.︾戸・<・[オ三⋮[・二。ぱで・㊤口・。三㊤己。一⑦;■。﹃で。勺・。﹂戸
︵23︶ 也pユ巳9戸■2戸oやo︷□ひ一“廿2切06ρ¢∩目。・,“NP+NごH≦ぼマ2戸陣町oo已吾o℃・∩F芦し心w一くo]こ5。一㊦co・
再﹂押勺製﹃出06ρ已否口oやN①⋮﹀已ひ﹃︿9男①’O﹃o=豆く匡守知己嶋p言戸oow勺四号国゜edp耳︷予㊦伽匹こ●N⑦①・
︵25︶ この分類は○巴昌−①己自の区分によるところが大きい。﹄。昌○巳昌占巳。子穿ψρ一・・ξ言8[⋮。5匹。唱廿p﹃窪86ロ合。詳
︵26︶ 勺冨臣巳9男■2せoOn吉﹃古O①﹃ζ国已﹃∨9︿5匡08P白ocoOご
OO日ヨ6﹃6﹂①一﹀け庁Φ゜。Pζ05’唱O=声Oさ一㊤O円
︵27︶ 出゜>PgSH≦①No①已辞oで゜息戸⇔“ドN<oポ喝曽﹄已σq言詳>5。=O辞芭p己巳o⇔男ゼ280勺・oFけ・♪喝胃窓ρ已日2︿︷p
㊦吟Oロ﹀ロOco心一◆
︵28︶ 管理行為の制限を越えた期間の賃貸借︵亘9[一︶につき賃借人の善意、かつ、共通的錯誤の支配する下では、その賃貸借は
︵29︶ 出こ︹°9﹄°呂oN6①已白o廿゜ひ︷︹戸ドN︿oて℃①﹃]已σq訂耳﹀昌o=O∨・
有効であり真正所有者に対抗できるとする判決もある。○竃゜巳く°Nコo<°お呂゜﹄°○°旭一㊤OPNニホ◎白。[巾国。。日①﹄P
三 仮装行為論の展開
1 表見と仮装行為
表見所有者が権利者であるかのような外見を備えるにつき、真正所有老が仮装行為により積極的にこれに関与して
律
124
叢
論
法
いる場合には、真正所有者にこの外見から生ずる責任を負担させ、もってこの外見を信頼して取引に及んだ善意の第
三者を保護するのが公平である。 フランス民法典は仮装行為︵。・﹂日巳9日づ︶の一般的規定として、その一三二]条
に、反対証書︵OO昌古﹃O‘一〇͡け﹃巾︶は当事老間において効力を有するが、 ﹁第三老に対して効力が生じない﹂、と定めて
いる。すなわち、立法者はその後段で、仮装行為に表見理論を適用し、仮装行為から生ずる外見に対して第三者を保
護することを意図したのであるとされている。反対証書とは、当事者の真実の意思を偽装した外部的徴表たる外見証
書︵①○︷⑦ O◎力︷050力﹂ひ一6︶ないし表見証書︵③︹8①勺廿曽。巳︶に対して、真実の意思を表した秘匿証書︵◎96°・o自6[︶で
ある。そして、反対証書が表見証書を修正、または、,変更することを反対証書が効力を有するといい、かつ、この場
合に仮装行為があるという︵−︶。
反対証書により仮装行為をなす当事者の目的は種々である。あるときは法を欺くために行なわれる。あるいは祖税
法を、たとえぽ、譲渡︵贈与︶税︵腎o﹂↑。・餌6目巳巴合ロ︶の減額支払を目的に、実際上の価額より低い額を売買の表
見証書に記載するとか、現実には贈与の形式であるのに売買契約による表見証書を作成するとか、また、あるいは民
法を、たとえぽ、内縁関係︵OO⇒O已ひ一口⑦︶を維持するためには公の秩序から無効とされている贈与を回避するため
に、または、内縁の妻に遺産のうち遺留分を差引いた任意分︵ρ已o↑﹂涼島む・ロo巳ひ一〇︶を越えて贈与し、この減殺を免
れるために売買の外見をつくろうとか、脱法する場合である。それに、あるときは単に有効である証書︵行為︶を公
然と知られることを回避するだけの目的でも行われる。たとえば、小売商人は競争相手の商人に自己の取引を知られ
ないこと、慈善者は自己の贈与が公に知れないことに利益がある。また、第三者を欺くためにも利用せられる。たと
えぽ、債権者の差押えを免れるために債務者が仮装売買を行うなどである︵三。
このように仮装行為による経済的、社会的目的がいずれにせよ、反対証書は、行為の当事者間においては意思自治
フランス判例法における表見所有権について
125
の個人思想から真実の意思を尊重して、有効とされる。ところが、この反対証書の存在を知らずに表見証書を信頼す
る第三者がかかわってくると、これを保護するために、いわゆるにせ︵づ05 0◎O﹃ ⑦⊆ooO︶の立目⇔思の表現である表見証書
を尊重して反対証書の効力を奪うことが必要となる︵,︶。
つぎに、表見証書もまた、行為当事者間の経済、社会的目的に従い種々の外見を作出する作用を営むが、主に次の
三つに分類できる。第一に、当事者間で契約︵法律行為︶がないのにあったかのような錯覚を作出する場A口である。
この表見証書は全くの架空のものであるから、架空証書︵襲O[Oめ6汗一﹁︶または絶対的仮装行為︵乙。﹂目己聾民。白Pぴ゜。。ξ。︶
と称される。たとえぽ、当事者間で現実には売買がないのにあるかのような証書を作成する場合などである。第二
に、当事老間で真に意図した契約とは異なる他の契約による外見を作出する場合である。これは証書︵行為︶の性質
を偽装しているので偽装証書︵ρo甘象σq巳。。ひ︶と呼ぼれており、たとえぽ、売買の形式を利用して贈与する場合など
がこれに該当する。第三に、当事老間で真実の受益者を隠す目的で第三老の表見的な仲介︵戸5吟①﹃<65吟﹂O⇒︶を利用する
場合である。これは、たとえぽ、人格のない集団のために人格を有する第三者に対して外見的に贈与する場合に該当
し、名義貸与︵巳8壱o。・三〇5巳o廿⑦あ05⇒o°・︶といわれる︵4︶。そして、後の二者を総称して相対的仮装行為︵・。一目已,
一巴﹂O巨苫す江く O ︶ と い う ︵ 5 ︶ 。
しかし、表見証書のほかに真実の権利が存するかのような虚偽の外見を作出する手段として、不動産登︵謄︶記な
いし公示も重要な役割を果すことは疑いがない。ただし、フランスの場合、わが国にみられるような原因証書と切断
された仮装登記だけを信用した場合に通謀虚偽表示の規定を類推適用していく関係はみられないようである。このこ
とは、前述のごとく原因証書を編綴する公示方法の特色などから理解できるであろう。したがって、表見証書の公示
︵登記︶の信頼と表見証書自体の信頼とを区別して考える必要がなくなるといえそうである。これに対し、仮装当事
叢
126
論
律
法
者が反対証書を公示︵登記︶している場合は、議論が分かれているが、一般には当事者は公示していてもその反対証
書の効力を第三老に対抗できないものであると理解されている︵6︶。これは第三老が誤信する危険のある表見証書か
らまず、取り除くべきであるとの趣旨であろうか。
ところで、反対証書︵秘匿証書︶は第三老に対して効力を生じない、とは、当事老においてこの存在を第三者に主
張できないことで、反対証書がないのと同じに扱われる。まず、反対証書の効力を対抗しえない﹁第三者﹂の範囲如
何について考察する。第三者とは、反対証書の当事者よびその包括承継人︵妾§ロ6ξ。・。已巳くo臣o一゜・︶または包括名
義︵法器已巳くo臣色の承継人以外の老であって︵7︶、その外見たる表見証書を取り違える危険性から保護すること
が必要な者をいう。したがって、反対証書の当事者とは全く法律関係をもたない第三老たる︽℃o巨εω6×胃ρロo ︾は
この第三者から除外される。そうして、保護の必要な第三者としては、特定承継人︵pぺ芦雷6p已。・oでp注。巳声。旦と
普通︵一般的︶債権者︵自合昌巳自゜。合≒○σq日勺け巴誘゜・︶を区別することができる。前者として、たとえば、表見証書を
あてにして表見所有者から物権を取得した第三者の場合がその典型であるが、これらの特定承継人が民法典一三二一
条の意味する第三者に含まれることは異論がない。後者は、単に表見所有者の一般債権者ばかりでなく真正所有者の
一般債権者も仮装行為の当事者たる債務者が秘匿証書によって生ぜしめている法律状態に利害関係を有するので外見
保護の必要性が生じ、この第三老に含まれる︵8︶。しかも、この第三者は仮装行為の当事者の一方と取引をする際に、
この仮装行為の存在およびその内容を知らない善意者でなけれぽならない。仮装行為といえども悪意の第三者を保護
する必要がないからである︵9︶。
つぎに、反対証書は第三老に﹁対抗﹂できない、というのは、当事者が第三老に対し反対証書でもって表見証書を
修正または変更することが認められないということであり、第三者からみれば、当事老間の表見証書の裏に隠れた真
フランス判例法における表見所有権について
127
実の合意の効力を回避することが許されることを意味する。すなわち、第三者は反対証書の存在を無視して表見証書
に基づく権利関係を主張することができる。と同時に、民法典一三二一条後段の趣旨は専ら表見証書を信頼した第三
者の利益を保護することにあるので、第三老は自己の利益に従い反対証書を尊重して隠された当事者の合意に基づく
権利関係を主張することもできる。したがって、これから結局、第三者はそれらの選択権︵o℃口8︶を有しているこ
とになる︵−o︶。
ところが、この選択は第三者間で衝突が起きる。一方の第三者は反対証書を引用することが利益であり、他方の第
三者は表見証書が利益である場合である。たとえぽ、仮装譲渡の場合、仮装売主の債権者は、自己の債権のために外
見上譲渡された財産を保持または差押えの対象として、反対証書を採用するが、仮装買主の抵当債権者は、外見上財
産の所有老となった者による抵当権の有効性を確保するために表見証書を引用するであろう︵11︶。
旨ρN。き●。u°2°一゜ド一く。r言吟旨σq巨fま吾一㊤①P己。・。c。Oぺ゜c。oc。⋮o。日。窒p司巨[ひ合ψ。9σq芦。自8σq合伽﹃芦吟﹂“.
︵1︶ 巴自巨2家勺6芸。勺゜9﹂°否廿自穿日⑦旦昌。c。Uc。]呂駕ぐ2男趨ロざ吾。で゜合二゜ド一く。ポコ。雪c。⋮出こピ・9﹄・
司蚕ま霞∩日8庄苫匹。巳﹃o=ひ﹂︿匡匹、﹀宮窪冨↑日ま合田昌﹂oポ吟““一〇Uメ5品。。9﹄°O°⇔コ苫匹日戸③日2e2切ξ一ρ89£・
一8c。“ロ。一9田﹄9°・。田a“冒窪日o巨6°。音5一2碧[。°・]已巨e9晋合o⋮[苫一く少一8。。“昌。切一忠百;⋮家廿。詳20。已§σq6で
ま己甘臣象ρ9晋一、騨6甘巴日巳∩男伶く・巳日・エ押巳く・一旨ぷ㍗ま一2。・・なお、わが国におけるフランス法上の仮装行為の
︵2︶ 出こ巨.9﹄◆ζ曽N。ξPo唱゜9°け゜ド一く。ポ冨﹃旨σq冨芸ロ。。。8°
研究として、ごく最近出されたものに、稲本洋之助・注釈民法㈲総則③一五二頁以下参照。
︵4︶ 名義貸与は証書︵行為︶の当事者に関する仮装であるが、名義人 ︵℃み言−=。日︶の合意と区別しなけれぽならない。名義
︵3︶O。日。σq已P。や9◆二“ロ。宗o°
義人の合意は委任契約の性質を有し、契約当事老の一方による仮装である点で異なる。したがって、名義人は受任者として契
人の合意も名義貸与の特殊型といえるが、名義貸与は契約当事者間の一致した合意による表見証書の作出であるのに対し、名
律
128
叢
二∠L
6冊
法
約締結の当事者となることができる。しかも、その効果は名義人に帰属するにすぎない。しかし、判例上においてもこれらが
gS呂①N6§合。やひ﹂叶゜︷°心一<。r言・旨σq冨芸p。c。Oご﹄e・呂江︷日。廿・庄[・p。ぷ唱﹄⑦。。・︶。
混同して使用されている。また、代表︵苫宮①。。⑦巨葺8ロ︶は代表委任契約に基づくから、名義人とは区別されている︵出こ□
︵5︶o‖。σ・・。、。廿゜・﹂三゜一三⇔9⋮戸で。こ・§§喜β合鼻一・。ポ言弓﹄邑曽︹﹃︼]。・。。∨こ・o﹄ら。合岡・・。廿・ひ﹂戸亨
︵6︶四ρ巳巳g控駕芸。廿.・﹂[°吟゜否苫・穿§日旨。・。・。メ勺・☆肯﹀旨02男S>○。ξ合△﹃。=。声く匡守p自①一・う・[・ぷ勺①吟
N①口゜
国゜ed§日ぼ画こ巳まひ︷︵−“き甘一ご日邑6♪き言。¢。。﹂。。㊤。。°一゜鴬oー○。昌①︰o昌。湾◎。⑰警・こ・コ。一〇♪ロ・霧。。・
なお、O。日o撃。は、 ﹁反対証書が公示されれば、その秘匿的証書の性質を喪失する。したがって、この真実状態は全ての老
の意味であると思われる。この立場を支持する判例として、破穀院民事部一八九七年五月一八日判決︵〇四。。。。°。︷<﹂。。目③二。。“ρ
から全ての老に対し主張できうる⇒﹂という。すなわち、公示された反対証書は、その公示後に生じた第三者に対抗できると
O°一c。口S一・OO⑨8甘勺・巳6︹o春3。力・一。。Oc。﹂・焙押問。g司彦目︶がある。事例は、公正証書上、一年内に遺産分割を行
うことを停止条件として用益権を譲渡するとしていながら、他方、私署証書において右譲渡の効力はその条件の成就にかから
しめないとの合意があった。ところが、その公正証書を信用し、かつ、条件不成就の結果などから第三者は、元の用益権老か
ら新たに用益権を譲り受け私署証書を作成した。この場合、両私署証書の謄記は、同日であるが前の私署証書の数時間後に後
の私署証書の謄記がなされていた。この判例に対し、前記学説は反対している。また、反対証書の公示は、第三者の利益を詐
8需N⋮﹄已募−巳自゜。6ξ6宣r曽丁一。。Nポ白。。。一・︶。
害︵含知已匹o︶することにもなるのであろうとの意見もみられる︵<°■☆己巳9家O㊦芸o廿゜n汽︷°◎勺騨弓国・。日。帥5、昌。c心c。∨“
︵8︶属こ↑°。こ゜ζ・§喜。廿゜。巨ぷ一・。て冨こ⊆孤訂□づ。・。c。二g芸空き↑巳g担唱・・一・。℃・∩巨吟・℃勺陣﹃団・。日。﹂ロ三。
︵7︶ 包括承継人には、たとえば、相続人、遺言者の財産の全体を一人または数人で受げる包括受贈者︵民法典一〇〇三条︶が
あるが、包括名義の承継人とは財産の一定部分の遺贈を受ける包括名義の受贈者︵民法典一〇一〇条︶などを指す。
c。c。ご﹂旨⋮ω−包諺8已。己一“曽﹃一c。竺、一〇ま“5。。⑦Ng・。・
︵9︶弓9。;言9。で三:°o§ロ監p・。・。・。w⋮o・§σ・5。唱・・︷︹三・ご・。§⋮﹀昌﹃ぺ6叶男旬子。叉6三・∨三騨﹃
︵−o︶罫[“。こ“ζR8鼻。で゜・吉艮一く。ポ冨こ這ρ芸コ。。。田こ巨・・−。言ω。ξ・匡・⑪﹃[﹂・。三一8切三。ベ一⋮窓①﹃蔓
d⇔昌酔⋮見●謡Oぴグや博9°
2戸9春8吾。℃・9・㍍“一く。ポ⇒。陪∨⋮口○名ぎ昌r9堕σq日且聰四隅合合一ρピ﹃苫﹃昆撃8口︿︷Toぴ吾冨﹃﹀°≦。声=卑
︵11︶ 前者の場合、仮装売主の債権者から仮装宣告の訴え︵自︹ま5。已念6冨日亘。昌エ。。。ぎ己怠8コ︶を起すことになる。
問゜吋⑦旨魯一㊤∨Pで゜c。Oc。°
判例における仮装行為による表見所有権の展開
い。そのうち、本節においては破殿院判決の主要なものを以下に掲げた。この判例の排列は、原則として判決日の先
適用できるかどうかをめぐって争われた事例は、これまでフランス判例のうえに現われたかぎりでは、そう多くはな
表見所有者の処分行為によって不動産を取得した善意の第三者を保護するために、仮装行為に関する=一=二条を
2
した。この抵当権の効力についてA・XらとYとが争った。
の名で︵i−O已ーー ︼0 50︻5︶これを取得していた。ところが、これを奇貨としてBは債権老Yのために当該不動産に抵当権を設定
︹事案︺ 父Aは自分のために︵。・8で8唱。8日宮。︶本件不動産を買受けたが、債権者Xらの目をごまかすために、息子B
︹1・1︺ 破殿院審理部一八四七年一月二五日判決︵露贈再昭.蕊㌔弓ピN︶
一 真正所有者の一般債権者または抵当債権老と表見所有者からの善意の第三取得者との関係
二の問題から検討していくことにする。
の関係によって若干事情を異にしているように思えるので、これを分けて分析するが、判例上に現れた順序に従い第
意の第三取得者、第二に、真正所有者の一般債権者または抵当債権者、対、表見所有者からの善意の第三取得者、と
後に従ったが、本章の問題を実質的にながめれば、訴訟の当事老が、第一に、真正所有者、対、表見所有者からの善
フランス判例法における表見所有権について
129
130
律
︹判旨︺ Xら債権者は、AがXらの権利を詐害する︵牛窪匹。︶ためにした行為であるときには、これを攻撃する︵胃9口⊆2︶
ことができる︵民法典一六七条、債権者取消権︶と前置きした上で次のようにいう。 ﹁Xらは、AがB名義で取得しているこ
とを仮装行為として攻撃する権利ないし資格を有する。しかも、Xらは、Yに対し、∧﹃6。・巳三。言苫江g巨亘⋮﹀の一般原理
からBによるYの抵当権の無効を引用できる。ただし、この原理を緩和して、これに対し、Yから、 八6隅6ξ8日日日§6
ぎく日亀望。﹀︵後述参照︶に基づく善意を引用することもできるが、本件はこの要件を満たしていない。﹂
理由として、二=一五条の精神であるく器゜。o巨8さ器鮎ρ葺﹂苛・・∨の原則を固守し、この侵害を許さないことを挙げ
得者たるYは=二一二条後段の第三老に含まれないこと、すなわち、同条の適用が排除されていることである。この
示を攻撃し︵無効にし︶、真実の状態に戻すことを主張する仮装宣告の訴えができることである。第二に、善意の転
べき点が三つある。第一に、一般債権老たるXらも=三二条後段の第三老に属することを前提に、AB間の仮装表
ものと思われる。本判旨は、その前半でXらの債権者取消権を述べ、後半で仮装行為の関係を論じているが、注目す
右判決は、おそらく表見所有権と仮装行為の事例に関し破殿院の審理部および民事部を通じて判断を下した最初の
叢一
iA
tiva
︹事案︺ ぷ︵夫︶為︵妻︶は自分らの家を建てる目的で本件土地を買ったが、ぷはちに勝手にYに名義を移転し、
これ
︹1・2︺ 破殿院民事部一九一二年一一月一三日判決︵◎9撰﹁腸び声㌔56ピ鎚詩㊦♂S、巴靱、パ゜詑.蝋日而己“詩ぱ。φ.︶
に対し、仮装行為理論を適用することに消極的見解を示している点が注目すべきものといえる︵−︶。
を明確にしていることである。結局、本判旨は、表見所有権をめぐる一般債権者と善意の第三取得老との衝突の問題
ている。第三に、仮装行為理論の適用はないが、後述三で考察するo隅6ξ8目日⊆⇒。の理論の適用が可能であること
一法
フランス判例法における表見所有権について
に従って、Yは右家屋建設請負代金に充てるために、善意のZから六千フラン借入れ、この担保として右土地上に抵当権を設
定した。ところが、これより先に瓦逓の離婚がととのい、ちから税への共有持分権および子供養育費請求権が生じてお
り、この担保として右土地上に法定抵当権︵旦Oo合A已③試σq巴・︶が生じている︵民法典二一二一条︶。したがって、YZ間の
抵当権設定契約の効力について璃現とZとの間で争いが生じた。これに対し、セーヌ裁判所︵一審︶は、Yは無権利老で
あるからZに対し抵当権を設定することができないとしてその無効を判旨した。
︹一一審判旨︺ パリ控訴院は一審判決を支持し、不動産所有権を他人︵Y︶に授与する契約が仮装行為のために無効であると
きは、︵YによるZの︶本件不動産上の抵当権の無効をきたす。この場合、抵当債権老︵Z︶の善意は何ら保護されないとし
た。Zから上告。
︹上告審判旨︺ 表見所有老︵Y︶によって設定された抵当権の順位に従って、 ﹁Zに貸金債権および利益、費用の総額にっ
いて優先弁済︵OO一一〇〇①↑︷O昌︶を拒絶することは、民法典二一二五条の適用に違法がある。﹂として原判決を破穀し、オルレアン
控訴院に移送した。
右判決は、真正所有者︵X︶および法定抵当権者︵ぷ︶と表見所有者からの善意の第三老たる約定抵当権者︵Z︶
との衝突の事例について、一審と原審は、一二二五条を貫く原理を守って仮装行為に対する善意の第三者の保護を拒
否する態度を示しているが、破殿院民事部では、仮装行為を信頼した約定抵当権者を保護するために一三二一条後段
︹事案︺ 父AはX息子とY娘を残し一九二三年死亡したが、それ以前、Aは本件不動産をそっくりYに残そうと企み仲介者
︹1・3︺ 破殿院民事部一九三九年四月二五日判決︵oO∩常.甑ゴ㌔竃田ゼ↑。㎎ビ︶
の適用の可能性を述べているとみれる。この民事部の判断理由を支持する判例解説が一般である︵2︶。
一
131
法
律
132
ffua
叢
==△s
Bをだきこみ、本件不動産をA←B←Yに転売したように仮装して、この二個の売買の公謹証書︵①6︷6ω 白O︷P﹃声600︶を作成し謄
記もした。しかし、この実質は、正にBに対する生前贈与である。その結果、Xは、遺留分相続人︵庁︵⋮吟一斤﹂O吟 市ひoりO﹃<四͡ρ声﹁O︶と
しての権利が侵害されたとして、まず、A←B←Y間の二個の売買契約はいずれも偽装贈与︵巳。昌ロま目Q侭巳。・合。・︶であり、
しかも、これはYにおいて相続財産の任意分︵一一亘︷⋮﹃騨一﹂[∩︶を越えた処分を受ける能力を欠いているので無効である︵民法典九
一一条︶と訴えた。これに対し、アルジェ︵≧頓2︶控訴院は、Xの訴えを容れて右二個の売買の全部無効を宣言した︵3︶。と
ころが、この間にさらに、Yは右仮装証書に基づき債権者Zのために本件不動産上に抵当権を設定していたので、今度は、X
は、Zを相手どり表見所有者にすぎないYは他人の物の上に抵当権を設定したとしてこの無効を請求した。これに対し、アル
ジェ控訴院は、抵当債権者Zは善意であるので当該抵当権は存続し、かつ、Xに対抗できると判決した。Xから上告。
︹判旨︺ 棄却。 ﹁本件不動産贈与においてZとXとは同一の条件で、一三二一条に定める第三者としての資格を有している
ので、それぞれ自分の利益に従い、︵売買︶契約当事者が背後に真意︵<①苔p三⑲くo一8涼︶を偽装した外見証書︵表見証書︶に
よることを求めることもできるし、反対に、契約当事者によって秘密にされた真意︵秘匿証書︶によることを主張すよことも
できる。かかる状況の下では、事実審裁判官︵言σQ。。。巨♂a︶は、両者︵ZとX︶互いに一三一二条に定める第三者の効力に
対する選択権能を行使することになるので、物的担保権の設定者たる借主︵Y︶の平穏かつ継続的占有︵で。霧9︷。田でρ芭圧。
9肩o]8σQ合︶を信頼したかのようにみえるところの外見的権限証書︵叶一[﹃O Oo◎[6︼P硲一ぴ一〇︶の価値および確実性︵・・。一﹂象3 を尊
重して、貸主︵Z︶の内心における、かかる外見に対する非回避力︵8湾6ぎく日口互。△霧自℃勺胃966。。︶から生ずる錯誤︵窪需ξ︶
を考慮して、抵当債権者︵Z︶に優先弁済権を与えることができる。L
右判決は、遺留分相続人と善意の第三抵当債権老との衝突の事例について、=二一二条後段の適用を前提とし、か
かる衝突があるときは仮装行為を信頼した第三抵当債権者が優先するとの態度を明確にしたものとみれる。なお、遺
留分相続人も一般に真正所有者の包括承継人として、一三二一条にいう当事者に該当するが、本間のような事例に対
して、本判旨にもみられるように第三者としての地位を有する場合もあることは学説上も指摘されている︵4︶。
二 真正所有老と表見所有者からの善意の第三取得者との関係
︹1.4︺ 破殿院審理部一九一〇年七月二〇日判決︵おO謡パ.早蛤.鮎%暗ギ︶
︹事案︺ 。。陣巨−江亨○。N匹の滝︵O庁已[6匹ΨOP已︶とこれに隣接する切自器望という土地︵↑28ぎ︶は、S鉱山会社︵。。。江価90霧
目日6・・︶の所有するものであるのに、本件の受領証書︵98嵩窒︶および謄記簿上はY個人︵ただし、YのS会社に対する関係
は明らかではない。︶の名義で所持していることになっている。この適式な権限証書︵法嵩嵩σq己一旦を信じ、債権者Zは表見
所有者にすぎないYから右土地上に抵当権の設定を受けた。したがって、S会社の清算人Xは、YおよびZを相手どり抵当権
設定契約の無効を訴求した。これに対し、ニーム ︵Z⋮日①︶控訴院は、ZがたとえS会社の株主で、かつ、その後の株主総会
︵︾。日ひ9σqg6邑6︶ に出席していたとしても、これだけでは悪意とは断定できないので、Zは善意であるとして抵当権を
有効と判断した。
︹判旨︺ 原判決を正当と認め次の如くいう。民法典二一二四条および二一二五条の違反について、 ﹁適式な権限証書に従い
不動産表見所有者︵Y︶により設定された抵当権は、善意の債権老︵Z︶のために真正所有者︵S11X︶に対し有効で、かつ、
その効力を保持する。﹂
適用することができるとの積極説を示した最初の破殿院判断ではないかと思われる︵5︶。しかも、審理部の積極的見
右判決は、表見所有者の処分行為により不動産︵物権︶を取得した善意の第三老の事例について二二二一条後段を
フランス判例法における表見所有権について
1 解として、本節の排列上事例の分類は異るが、前掲︹1・1︺の審理部の消極的態度を改めたものとみることができ
33
@る。そして、それが適用される要件は、第三者の取得行為が、 適式な権限証書に従って、かつ、仮装表示の事実につ
律
のといえる︵6︶。
右判旨は、前掲
(
︵2︶ 勺・江⑦巨。∨コ。。。・5。8p⊆O・国︼q⊃O。。・ド一c。ご出08碧O・担⑦一も。・一・おc。⋮6白。。・なお、これより先に、同種の妻の法定
廿①﹃宕σq一騨﹃ひ白。c。ぱ⋮ζ☆言g寮さ巨倉。喝・。﹂戸︷°ド一く。一こコ。Nc。一⋮9艮§丁・勺゜2°廿曽乏。巳2□8か℃°c。8°
本間の積極説を主張するもの、也③臥2魯男■窪80廿゜︹一ひ[°◎唱胃穿日∩﹂P白。c。﹂。㊤⋮匡・“︹・9]・ζ爵⑦9已白o廿・9再・庁ド
︵。﹂涼Up﹃弓・エ。廿。壱。。。“⇒o甘§O・勺・一㊤O。。・N一c。一・︶、これに対し、近時のように表見証書を引用する第三者を勝たせる、
見状態よりも真実に優位を認める立場から消極説を主張するもの、目ロξ6葺、勺臥on■2江。エ︹。詳江く自中§留亘[﹂⑦・5。お㊤・
︵1︶ この問題は、以前、学説上相当議論された点である。反対証書︵秘匿証書︶の適用を主張する第三者に、換言すれば、表
︹1.4︺の審理部判決をそのまま引用したものであり、本間に対する審理部の態度は確定したも
y︶保護のために真正所有者︵X︶に対して有効、かつ、効力を保持する。﹂
︹判旨︺ 原判決を支持。 ﹁適式な権限証書を信頼して不動産表見所有者 ︵Y︶ により合意された抵当権は、善意の債権者
力を第三者に対抗できないとしてZの抵当権を有効と認めた。
Xと善意の転得者の間で争いが生じた。これに対し、パリ控訴院︵原審︶は、二二一二条により仮装行為の当事者は、その効
の適式な権限証書を利用して、債権者Zのために右不動産上に抵当権を設定した。この抵当権の効力について真正所有者たる
︹事案︺ Xは自分の不動産をYに仮装譲渡し、この旨の証書を作成し、かつ、謄記もすませた。ところが、さらに、Yはこ
︹1.5︺ 破殿院審理部一九三九年五月一日判決︵お○瀦パ.砕嘩恒島ぱ゜︶
いて善意であれぽ十分であることを示している。
1 34
戸間
叢一
一:・ts
法
抵当権と善意の第三転得者との関係について下級裁判所で積極的見解を示しているものもある。それは、オルレアン控訴院一
八四六年五月=ハ日判決︵一︶° ㊥゜ 一co︽Φ゜ N. 一⑩㊤︶で﹁財産分離︵別産制︶をした妻は、証書上は夫の所有に属するとされており、
しかも、第三者によって外見︵証書︶により取得された不動産に対して、自分の法定抵当権を行使することは許されない。﹂、と。
︵3︶ この点について、九一一条を適用して全部無効とする判旨に批判的見解があり、本件贈与も任±日心分の限度で有効であるか
ら減殺︵﹃∩匹已O[﹂O目︶請求によるべきだとされる︵ρ巨こ旨。↑。曽已O°甲一〇+O°一゜一N︶。
︵4︶戸目゜・こ゜§§亘。喝・9二・冨こ亀①﹃・三。。。葺
︵6︶z°三§・§﹄一・:・二塁。﹄﹄+:・琴その後、同類の事例に対し同様の蓮部判決もみられる。
︵5︶○﹄°三。・・き。°勺﹂㊤+:・三国﹄・3艮旨。・6③已﹄・ρこ㊤。二・≡ま.
○諺゜。°苫ρ゜芯穗く﹂Oや吉g。°一路二一゜Oc。°また、同様の積極説に立つ下級裁判所の判決として、巨日。σq③。。“文。。ひ一㊤一⇔O、㊥.
至二゜c・㊤し・﹄°こ◆§餌5°ご2旨翻宗§二§︵匹・巨§亘v。・喝﹂§三・⑦。。・5。・。o・o曽ひ。己。・などがある。
四 共通的錯誤論の展開
表見と共通的錯誤
て不可避的表見︵牡勺℃胃6昌oo芦く日9巨6︶の優先性を導いている。ここに至りo°P⑦ご゜の適用領域は、本来、国゜。°︹]°
P臼声゜︶∨︵共通的かつ不可避的錯誤︶として常用語をな七ている︵−︶。他方、このような9ρ⑦二゜は表見理論と結合し
ぎくぎo戸窪6︶でなけれぽならないとされており、 フランス判例法上、一般に、︿o隅o胃60日日已⇒⑦6古ぎく日。声琶6︵。°
は、それと同時に、錯誤者および通常人においてかかる錯誤を避けることができない性質の、不可避的錯誤︵6.﹃。已.
︵共通的錯誤は権利を成す︶の法諺に由来するとされ、元来、多数人の陥る性格の錯誤の立日心味であったが、現在で
共通的錯誤︵o胃oξoo目日已50︵o°p︶︶は、一般に、ローマ法における︿国﹃﹃o﹃8日目已巳゜。冒。声二已゜。︵国゜。°ご゜︶﹀
1
一
フランス判例法における表見所有権について
135
136
fiva
叢
−△、
律
法
が予定していた公的色彩のついた行為、たとえば、戸籍吏などの行為にかぎらず、私法上のあらゆる行為へとその適
用の可能性を拡大してきた。
元来、国“6と゜の原則、ないし、6°P9一゜は、裁判所によって、法律の欠歓を補充し、または、制定法規を適用し
ては当事者間の公平を図ることができないときにこの法規違反を認める超法規的原理であり、他面では、これによっ
て、制定法規に従えぽ理論的に勝つ者とか、真実の権利主張者とかを犠牲にして認められる法理である。いわぽ、個
人の私的利益を犠牲にして公的利益の保護を優先する思想の現われであるといえるであろう︵2︶。
ところで、PPが表見所有権に適用されるときは、必然的に真正所有老に不利益の犠牲を強いることになるので、
このためには相当厳格な要件が予定されている。まず、現行民法典の立法者は、所有者と善意の取得者の相克する利
益を考慮して、動産と不動産の取得形態を分離した。動産については、この起源を正すことは不可能に近いことであ
るので、取得者が善意であれぽ即時に︵﹂出Pb山ぴ江声ρけ6bρ6旨け︶この所有権を取得する︵民法典二二七九条一項︶。これに対
し、不動産については、この譲渡行為などの取引が性質上急になされるものではなく、また、公示制度が設置されて
いることなどから、取得者が善意でも取得時効︵5ξ唱8豆苫⑦。。o昌℃已o⇒gρ⊆。。巨くo︶によって一〇年または二〇年
の長期間これを占有 ︵廿o。。。。o。。曽05︶していなけれぽ所有権者となれないとされる︵民法典二二六五、 二六二八条︶。
ところが、PPに基づく表見所有権論の適用によってその時効の期間で与えていた保障を真正所有者から奪うことに
なる。すなわち、これは取得者が現実に占有していなくとも表見所有者との契約の締結だけで即座に真正所有者を裸
にしてしまうことになる︵3︶。
錯誤︵6﹃﹃O已﹃︶は、通常、真実なものを虚偽と信じ、または、虚偽なものを真実と信じる人の内心の心理的状態を
いい、法はこの心理的状態を一定の要件の下に保護する趣旨である︵、︶。この保護の方法として、民法典は、錯誤に
フランス判例法における表見所有権について
137
よる意思の表示は当事者が契約を締結するにあたり、錯誤が合意の実質的性質︵ρ已芦涼 乙・已ひ留昌江色一6︶に関すると
きは合意の暇疵︵<一〇① 匹O OOβむ力6︼山︷巳PO昌[︶を生じさせるので、錯誤者から裁判上の無効を主張することができる︵相
対的無効白已巨涼需言己く6︶、と規定している︵民法典=一〇条︶。これは契約などにおいて錯誤に陥った者個人を保
護するために認められている制度であり、同時にいわぽ﹁無効の錯誤﹂といえる。しかし、民法の領域においても錯
誤はこれだけではない。この他に判例法上、例えぽ、法規違背により無効と定められている行為でもこの無効につい
て錯誤があるとき、その行為を有効と扱い、いわば﹁有効の錯誤﹂として効力を保持するのが、むしろ錯誤者の利益
であるとする場合がある。これが、6°Pの理論である。ρPは、このように元来、有効でない行為を有効とするため
に錯誤者をはじめ一般第三者も同様の状態の下では同様の誤謬を犯すことが避けられなかったであろうとの場合に認
められる純粋に客観的な錯誤といえるであろう。すなわち、詳述すれぽ、このような錯誤が有効とされる根拠は、一
般多数人が同様の錯誤を現に共有し︵℃自Sσq6門︶、または、その共有の可能性がある場合、個別的にこの行為を無効
として効力を破壊しては公の秩序に反するということにある。
また、ρo°は、最低限度、錯誤者︵第三取得老︶が善意︵ひoロ⇒pま﹂︶ であることを要求している。民法典は、善
意に対し種々の効力を与えており、前述の取得時効、果実の取得︵◎n口已宣口oロ巳9時已誘︶ ︵民法典五四九、五五〇
条︶、債権者への弁済の効力︵民法典一二四〇条︶に創設的効力︵6津[2合冨ξ︶を認めている︵5︶。しかし、①゜p
は、単なる善意だけでは不十分であり、取得老に堅固な用心︵勺ま6芦萬8︶を義務づけ、 この用心を払ってもきき
めがないときに限って真正所有者の利益を奪う場合である︵6︶。つぎに、前仮説からρpは第三者たる錯誤老が悪意
︵目芦く巴。・巨︶であるときは保護されない。ただし、表見所有者︵仲介者︶が悪意であってもかまわない。この点に
ついて、当初裁判所は仲介者が善意であることをも要求し、6°o°を双方錯誤︵表見所有者と第三取得老︶なりとの類
@型を想像していたようであるが、.現在ではこの要件が緩和され、表見理論の見地から専ら第三取得者の心理的要因だ
叢
6岡
勝ちがたい錯誤﹂を説明されるので︵前掲九三頁︶、一見、6“pが。°﹂°に変じたかに受け取れるが、現在の判例上において
教授は﹁判例は以前には世間共通の錯誤P6°という言葉を使用していたが、言葉の内容は同じである﹂とされ、。﹂・﹁打ち
︵前掲二九七頁︶、星野教授はコ般的なかつ打ちかちがたい誤謬﹂︵前掲民法論集二巻三二頁︶と訳されている。なお、浜上
頁、なお、春木叩頃遠暦祝賀論文集二七六頁では﹁共通的﹂と訳される。︶、川島教授は﹁普通で且つ打ちかち難い性質の⋮錯誤﹂
れ、。・6・6︹↑・の常用語については、中川︵善︶教授はコ般的 ︵共通的︶なると共にまた不可避的⋮過失﹂︵前掲・一四九
なお、。・。・。二・の訳語は必ずしも一定していない。PPについては、杉山教授は﹁一般の誤信﹂︵仏蘭西法諺一七頁︶、木
村︵亀︶教授は﹁一般人が陥った錯誤﹂﹁︵フランス刑法における法律の錯誤﹂法学新報七二巻一一・一二号四八頁︶と訳さ
上則雄﹁表見代理不法行為説﹂阪大法学︵石本・大阪谷退官記念号︶五九・六〇号七四頁。
存在ないし作用をひととおり触れているものとして、川島・前掲二九六頁註︵一〇五︶、星野・前掲民法論集二巻三二頁、浜
続人の譲渡行為と6..。.。○日日⊆己。。日6一こ巨の適用﹂相続法の諸問題一二七頁以下所収、また、この法諺およびρ6・2一・の
わが国にこの法諺のフランス法における意義を紹介し、わが民法への適用可能性を論ずるものとして、中川善之助﹁表見相、
︹守こ一8+° で ゜ 8 ㊤ 2 切 ゜
≧×二〇〇ど06目。・Q⊆。・。ロ・。[寸こ三。・。ぼ①g・・一出・ζ嵩8其罫日・×ぎ。∧e§6§ξ緩霧ご5y図゜<°巳日﹂﹃°
㌘<・6﹃﹂且自。二。。。ρ℃・・。P>﹄。昌一。§逗冒巳・・已二。・。︼。・。§こ。訂§×ぎ・∧印§・§日巨゜・罫#]5y辞︸茜゜・p
った論稿として、まず、利用しえた文献を次に掲げておく。国゜<巴pげみσq已PO。一p日国巴日㊦∧国湾o﹃8日∋巨硫ひ6⋮こ5>“
︵1︶ フランスにおいて、この法諺を引用している文献は少なくはないが、特に、この法諺の沿革・意義などの全面を詳細に扱
み、つぎに、現行民法典の下で判例上確立されてきているPo°の意義を概括的に検討していくことにする。
素描し、6°6°⑦桿一゜への発展過程を探ることが不可欠な仕事となる。以下において、まず、国゜Pご゜の史的展開を試
6.6°⑦二゜のフランス判例における適用状況を分析する前段階として、われわれはローマ法以来の国゜6°ご゜の原則を
けを問えぽ足りるとの見解が支配的である。
ー⊥
38
≡A
律
法
も両者が併存して使用されている。
︵2︶ 国゜忌RS已吾oや6﹂戸∨ONO⋮<巴oひ乱σq已Poで゜口戸廿゜∨U°
︵4︶﹄°Ω古2日罫8口8匹。§。ξ合旨8昏○=弓。切﹂法99。ポ巳oc。三㌔c。N°
︵3︶団こピ゜6こ゜冨9N。S仔○℃°2二ふ三く9廿9旨σQ巨ひ昌。軍O+
︵5︶ O・日oσq已Po廿◆9°古﹂“己。巴c。⋮国.呂騨N6ρ已Poヤ6﹂吟も﹄c。O°なお、創設的効力というのは、権利関係を創設する効力
︵6︶ すでに、わが国においては、P6・⑦二・の意義について、中川︵善︶教授は、 ﹁善意無過失なるの謂に約されようか。﹂と
という意味であると思われる。
の内容が相当に限定され且つ厳格となっているが﹂、わが国の善意無過失ということばに﹁ほぼ近いであろう﹂と述べておら
述べておられ︵前掲相続法の諸問題一四九頁︶、また、川島教授も同様の意味を与えながらも、PP9︷°における﹁﹁過失﹂
に善意にとどまらず、善意であるにつき何人にも共通の、かつ、避けることのできない錯誤︵誤謬︶だからであり、この点を
れる︵前掲二九七頁註一〇五︶。私の考えも後説に近い。それは、9P2一・は、錯誤者の善意を当然の前提としながら、単
わが国のことばで無過失と呼ぶかどうかの問題が残るだけである。したがって、⇔・P。二・は、われわれの無過失以上のもの
を要求しているとみるのが正当であろう。しかし、。・P6二・の下における善意は、表見理論とかかわり合っているので、取
得時効などのように単純に個人に認められる善意ではなくして、集団︵60 。n︷↑<ぼ︶的な善意といえる。この点で、個人的善
団゜o°こ゜の史的展開
〆
白o臣o旨工巾ひooコo宮㍗戸6<°[臥日゜号゜o﹂<°一㊤や⇔℃°一〇〇“完臼︶。
意︵ひo出5⇔♂声日合く庄⊆o=o︶と異なった効力が生じうる︵06日oσq已Po廿・ひ汽巨⇔巴c。]○・巨望o亨096♪O。一.ひく。ξ亘05住。訂
2
求めるのが一般であるが、この原則の内容ないしこれが適用される対象たる事件の範囲について、ローマ法ないしそ
現在フランス判例法上使用されている6°Po͡﹂°の原形である団゜ρ巳゜の法諺は、この起源をローマ法のテキストに
フランス判例法における表見所有権について
1 の承継をしたフランス旧法下の場合と現在の場合とを比較して相当変化してきていることが窺える。
39
叢
律
三ム
一 ローマ法の下では、■b°ご゜の法諺は、おそらく公平︵o口已9︶の観念から、 ケルスス︵06ぱ霧︶の定義を借
りれぽ︿﹄52§ひ8﹂6;且已﹀︵法は善と公平の術である︶に類似した意味に受けとられていたというのが一
般の理解である︵−︶。
ローマ法のテキストの内、中。と゜の根拠としてもっとも知られているのは巨ヒ目自ひ駕芦゜・勺巨匡℃で⊆②︵2︶である。
奴隷の身であるヒd曽ひ胃ξ゜・勺廿巨廿℃霧は誰れも自分の身分を怪しまなかったので自由な市民︵げo目o]ま隅︶として
司法長官の職︵℃﹃∩后苫︶に昇進でき、その在任中、数々の司法に関する証書を作成したという事件である。この
にせの、いわぽ無資格者たる長官の作成にかかる証書の有効性について争いが生じ、ポンポニウス︵勺o日勺8巳゜・︶に
ついで、ウルパン︵已℃芦︶はこの問題に取り組みこれを有効とすべきことを主張した。法律顧問︵己募ooロ゜。巳↑o︶
はこれに対し公平を顧慮し、︿出ooo艮日“合[−芦げ已日§﹂易9[﹀との観点から当該証書が有効であると宣言した︵3︶。
また、別のテキストとして、裁判官︵旨①σq じカロpけ︶から仲裁人︵胃臣貫。︶に選任された老が実は奴隷で仲裁人として
の資格がない、これを隠してその者が就任中なした判断は、はたして既判力︵芦8法∩江而言否げo。。oピσq∩o︶がある
のかについて争われた事件において、結局、これに既判力を認めたこと︵4︶、さらに、一奴隷が遺言の証人︵涼日oぎ
[⑦゜。[曽日o葺騨一﹃6︶である場合の遺言の効力についてこの有効を論じていること︵5︶、などが引きあいに出される。しか
し、以上のいずれにおいてもそれらの背後に団゜Pら⊆の精神はあっても、この原則を明確にはテキストの内に表わさ
れていたとはいえない︵6︶。
二 つぎに、フランス旧法下における国゜Pご゜の取扱いはどうであろうか。
最高法院︵勺①吟一。日6巨︶はローマ法の取扱いを尊重して、今度は国゜ρご゜の原則を明確に判旨している。デイジョ
ン ︵O⊂8︶最]口向法院判決一六五六年二月三日は、遺言の立会人が実は流罪の判決を受けているのでこの資格がな
、
140
百冊
法
フランス判例法における表見所有権について
ユ41
い、この者の参加した遺言の効力如何という事件に対し、たとえ遺言作成者がその判決を知らなかったとしても当該
遺言が無効となるものではない、と判旨した。これを補足して、]≦。庄口は裁判所附属吏︵日日邑含o巳。o蔀。㌣臣℃已亨
匡6°。︶︵7︶が無能力老であることが一般に知られていないときは、これらの老によって作成された証書に関しては、錯
誤︵O﹃﹃6已﹃︶が一般的であるだけでは不十分であって、さらに、法苫ooざ蒜、すなわち、裁判所附属吏の正当な職務
権限上において交付された権限証書、でなけれぽならないという︵8︶。
また、フランドル︵国昌脅①︶最高法院一七五一年の判決では、債権者が債務者の土地︵か隅︶に対する差押判決
を受け、これに基づいて執行吏 ︵庁⊆﹂°。°。一⑦﹃︶が差押を行ったが、この執行吏は実はその職務を遂行する資格がないこ
とが後で判明したので、当該差押の無効を債務者が請求した事案について、 PP はかかる行為を有効にしなけれぽ
ならない、と判旨している︵9︶。
三 現行民法典の起草者は、旧法下でこのように最高法院によって明確にされた国゜P︹いの法諺に直面したが、ロ
ーマの法律顧問にならって真正面からこれを表明することを避け、何か逆説的な、立法者に屈辱的なこの法諺の形式
について沈黙する態度に出たのである。しかし、共和暦一二年風月三〇日 ︵⊆。O<o巳宮o§×自︶ ︵一八〇四年三
月二一日︶の法律七条に定める﹁ローマ法、王令、一般的または地方的慣習、政令および規則は、現行法典を構成す
る法規の対象となる事件では一般的、特殊的効力を停止する﹂との規定の解釈をめぐって、国゜ρ工゜はすでに排除さ
れているのではないかとの疑問が生じた。これに対しては、前述のように起草者はこの法諺を積極的に排斥する意思
はどこにもなく、裁判所も他の法諺を判決理由中に引用していることから、共和暦一二年の法律が当該法諺だけを除
外していたとはとうてい考えられない︵01︶。加えて、国務院 ︵Oo曇o肖巳.国宮︹︶は、一八〇七年七月二日、共和暦八
年霜月二二日︵博N 守一ゴPρ一弓O 旬5 〆\一H一︶憲法の解釈上の勧告︵ρ己゜。︶として、国゜ρご゜の原則がなお有効に適用され
’
叢
142
論
律
法
うることを明らかにしている。それは以下のような事件を契機としている。市長の書記官︵ へ じ゜。OO﹃O[9﹂︹O︶は自分の真
正な職務として身分登録の抄本︵O×言騨 桿︶を交付した。ところが、この権能は、共和暦八年憲法下の書記官と異なり
新法下では身分吏︵。昂。﹂2合一。9自○<芭 に属し書記官にはない。この事案に対し国務院はこの抄本を真正に交
付されたものと認めた。その理由として、﹁いつの時代でも、どこの国の立法でも、いわゆる⑦゜Pおよび善意は行為
︵証書︶に際し、または、裁判において、両当事者が予測︵苫⑦<o﹂﹃︶できないような、しかも、避ける ︵⇔日鳳6古窪
ことができないような違法をかぽうのに十分である。﹂と述べている︵11︶。 この積極的傾向に対し、 ド①ξ6葺のよう
に法の厳格性︵﹃﹂σq已oξ匹已脅o﹂桿︶の失墜、または、法律違反の容認の危具を理由に法典の欠歓を認めず反対する少
数説もあるが︵21︶、多数の学説はこの結論を支持している︵B︶。
︵1︶ 出゜]≦①N⑦きρoや9°ヤOc。。。°
︵2︶︹°・。二︶°O。。ぽ゜買。。叶こ吉゜r吟﹂⇔﹂古
︵4︶日・ジ○。巳﹂。けo:。三。巨・。二・§ポ9メけ一斤゜主く・9藷・p。℃﹄︷[ら三c・°
︵3︶<恥9碁8。℃・・﹂吟ら三N⋮冒8﹂。5逗。や9勺﹂・。]出゜§§鼻。℃°。﹂︷σ℃°§°
︵5︶巨二〇。江︷・︹・o。嚢・§き匡豆芦⇔[︷吟﹄・。三eひ屠・ρ。℃°・一戸勺三c・°
︵7︶ たとえば、書記︵σQ苫田2︶、執行吏︵ゲ庄。。切[2︶などを指す。、
︵6︶ 國・ζ四N⑦§吾o℃・△苦℃・㊤。。c。・なお、この点について、中川︵善︶・前掲相続法の諸問頴二四六頁参照。
︵8︶ ζ6菅6“戸■こ一。。一醤ぐ。]σqロo§5。ρ“”5。O・なお、この判決のほかに、パリ最高法院判決一六〇四年一二月三〇日は、
二五才以下の老が事務官︵60日日芭として受領した遣言を有効とし、また、同法院判決一六〇八年六月三〇日は、領土外に
おいても、権限のある者が作成した遺言附属書︵OO鮎↑6自一〇︶は有効であるとしているものもある。︵<巴菩礼σqロP。廿・合も・c。Φ・︶。
︵10︶ 国゜ζ嵩。§吾o㊥゜。口℃°㊤c心七。︼8声
︵9︶系言p窓℃・ぐ。]σ・8・§・ρ吻N三.㊤⋮﹀巴身⇔σ・・p唱。㌣勺゜c。u°
●
フランス判例法における表見所有権について
143
︵12︶ 男ζξ6⇒せ印ぎ。甘2エ。告。#9ぐ芸否﹂c。°一。。c。∨“昌。mNc。一9・・⋮﹀巴旬宮☆已5。亨合・喝・c。c。2。。・
︵11︶ <巴①ぴ﹃品已Poや9°や+N⋮口ζRΦざ吾。℃°。﹂巨喝゜Oc。+°
︵13︶﹀巳Og戸餌∼08臣匹。合。詳2巳ぎぶ勢二゜メ一c。已●自⇔勺゜ロ一6;∴Ω・o。日巳。日甘p円邑9匹窪匹。口昌。5
言を危険︵=。。口⊆6︶概念または権利濫用︵gぴ¢切匹信奇。﹂[︶の観念に結びつけて理解すべきことを提唱している。真正所有者に
6白時o−<旨卑匹oひ需。。9日⑦巨♂﹃U︵Ooc臣匹oOo江oZ●℃o宗oP芦NN吉出。−。NNO9。。∴また、]≦o臥ロは、国゜P︹﹂°
所有者︶による自己の財産の譲渡を尊重する義務があり、または、個人は社会に対し信用取引︵6艮象古︶を邪魔しない義務があ
おいては、自己の財産の返還を主張することの不行使が帰責事由としての危険を作出することになるので、表見相続人︵表見
。⑰合・やホSに引用されている︶︶。この理論は、真正所有者と第三取得者との間に存する原因関係︵一﹂6口 匹O Oρ已ooP一一吟ひ︶を
る。﹂、と述べている︵忌oユP>宮o℃o。。6餌o冨目①×声日o︰285>昌P△0司騨6βま。。匹。﹀﹂×・͡・心昌。一・で・賠9。,・︵O。日oσq⊆P
追求し、そこに責任の基礎を求めている点で︵﹀°Ωひ目。F。⑰。︷︹勺゜刈。。°gg︶注目すべきであるが、もし、第三取得者の
状態︵善・悪意︶を問うことなしに真正所有者の利益を一方的、義務的に奪うのであれば、両者間の公平を欠く場合も出てく
一五二頁︶。
ることになりはしないか。その後、○蒜目片已もこの理論に従っていることは中川︵善︶教授によって紹介されている ︵前掲
共通的錯誤の現代的意義
れにより多数人が錯誤に陥り、または、陥る可能性がなけれぽならない。したがって、おのずから、Pρの支配する
だけでは問題とならず、不特定多数人が錯誤︵6︹﹃6已﹃︶に陥る表見的状態︵°・一ヨp江o昌☆℃勺弩。巨o︶が存し、しかもこ
OPの支配する下でなされた068︵行為、証書︶といえるためには、単に行為者個人の内心的出来事としての善意
与えているのかの法的概念を検討することが重要となる。
が適用される要件を吟味すること、すなわち、現在のフランス判例および学説がPPに対してどのような意義づけを
以上から国゜ρご゜の原則が現行民法典の下においても承認されていることが明らかになったが、 つぎに、国6°門﹂°
3
口問
下でなされた行為の効力については、単に個人の利益の衝突を解決するためではなく、あくまでも社会的利益ないし
公の秩序の観点から問題となる︵−︶。 ・
錯誤︵⑦﹃﹃⑦已㌣︶が共通的︵6。日日自⇒o︶でなけれぽならないとはどういうことかについて、客観的なoo目日⊆白oを主
眼とするか、主観的に6﹃﹃6⊆弓に重点を置くかによって、民法典が制定されてからこれまでの学説・判例を、以下の
ように整理することができる。
一 客観説
。°6°は非常に多数の︵辞﹃伽゜。σq﹃§エ50§ぴ苫︶ないし大多数の︵℃一已廿自[︶者が共有する錯誤であるとして、錯誤者
の人数︵50日甘o︶ に焦点をあわせて考える立場である。これは主として現行民法典の解釈を主としていた注釈学派
潤B。σQ︼o。。。。葺o自傷︶の主張にかかる。
らず、また、なんら内容的に合理性もないような法規違反を一律に有効としなけれぽならないような危険がある︵3︶。
この立場からでは、ある外形を信じることにつき、まったくつまらない︵°。巨廿庄o︶錯誤までも全て保護しなければな
の適用領域は現在では官吏の職務上の行為︵証書︶に限られていないのでこれ以外の解決に不適切である。しかも、
しかし、 忌。﹃=昌の立場については、公法的行為の暇疵の解決については確かに真理なものを含んでいるが、OP
ことになるというのである。
したがって、権限証書︵法﹃o︶の形式︵苦﹃日⑦︶および職務執行老の能力についての暇疵はo°Pによって補完される
て、公的職務執行者にその権限ないし資格がなくとも職務上行った行為の効力には影響がない旨をうたっている︵2︶。
は全て正当な権限が授権されていると一般多数人が信じるのも無理がないことであるから、たとえ個々的事件におい
その内最も著名なζ。.匡口は前述のようにく法苫60♂品∨の理論を提唱している。すなわち、公的職務を行う者
(】
144
叢一
三△
律
法
フランス判例法における表見所有権について
145
したがって必ずしも満足な説とはいえないのではなかろうかと思われる。
また、初期の判例は、この学説の立場にならっており、いな、むしろ学説よりもpρをより緩和して認めていたと
いえる。破殿院以下の裁判所は、旧法下の最高法院の態度を踏襲してか、一般に遺言の立会人︵涼日oぎ芦゜。言已日6日−
獣器︶が無能力者であるとか、外国人であるとか︵無資格者︶の場合でも遺言証書は有効であるとの判旨の論拠とし
て、このんでppを適用している︵4︶。しかし、後に同種の事案に対して、破殿院一八七四年五月一六日の判決は、
Pρは行為︵証書︶または裁判において、当事者が予測できない、かつ、回避できないような違法︵写まσq巳駕﹂涼︶を
補完するに十分である、と判旨したのが注目される︵5︶。本判旨は前述の一八〇七年の国務院の勧告とほぼ類似して
いるが、⑦゜ρの要件として当事老の情況を問うているだけで、客観説が主張する多数人の錯誤を要求していないとみ
れる点でこれを緩和している。その反面、φPの要件に予測かつ回避可能性を入れてきている点で、つぎに述べる主
観的意義に推移する判例理論の萌芽をみることができる。
二 主観説ないし折衷説
これに対し、o°Pは単に錯誤に陥った者の人数の問題でなく、実質的に錯誤者が錯誤に陥った特殊的な性質︵5㌣
㌔﹃6︶および原因︵6ρ已oo⑦︶に着目してこれをとらえなけれぽならないとの立場から、理性的な者︵匡o日日o器。・8〒
①互o︶でもなおかつ犯さざるをえない錯誤である、換言すれば、錯誤者がいわぽ良家父 ︵ひo己℃含⑦△o口目巨㊦︶︵6︶
として行動する場合になお許されうる︵⑦×8。・旬芭6︶錯誤でなけれぽならない、とする︵7︶。
そして、近時ではこの立場にたちながらも、﹀巴pゲ礼ぬ己o以下の学者が主張するように前述の客観説の立論も入れ
て両者の折衷的立場を展開するのが一般である。すなわち、PPであるためには、錯誤が一般的︵σQ①艮旦︶でなけれ
ぽならないのと同時に、少なくともほとんど不可避的︵﹂口く︷⇒6一ひ一6︶に生ずるものでなけれぽならないという︵8︶。さ
法
律
146
らに、この理論を発展させて、出゜]≦①No陣已エは客観説のいうように大多数ないし集団︵目9乙・而︶の意見にだけ最大の
価値を与えるものではないが、錯誤が普遍的に︵已5一く6﹃oo6=O 出⑦昌汗︶土ハ有される場合は回避不可能︵ぎ含#己①︶である
とする仮説に対しては、なお真理の面が残されている、と前置きし、このような事実が存在する下では、不可避性の
推定︵廿﹃含o日℃寓8江。日くぎ巳ひ巨涼︶がはたらくので、錯誤者がo°Pを主張するためには錯誤が一般的であることだけ
を証明すれば、団゜ρ○の原則ないし6°Pの理論を援用することができる。したがって、反対にこれを打ち破るため
には、相手方︵真正所有者︶から、かかるPo°は不可避なことではないということを証明しなけれぽならない。他
℃p8日︶︵21︶の根拠としても挙げられていることは周知のとおりであり、このことは本間とも密接な関連もないではな
なお、最近とみに、PPの理論は本稿で扱う表見所有権論において引用されているほか、表見代理︵日§△葺①℃−
しており、この証明がつけぽ錯誤により暇疵を生じた行為︵証書︶が補完され完全に有効なものとなる。
し、近時の判例法上用いられているところである。そして、PP9一書の挙証責任は全てこれを主張する錯誤老に存
る︵11︶。これがいわゆる︿ぎくぎ巳窪①﹀な場合であり、この点を強調してこのような錯誤を総合してPPo二゜と称
︵①×6合6日甘§S巨e・・︶としてー心理的に錯誤に陥ることを回避できない場合でなければならない、ことにな
けれぽならないと判旨している︵01︶。結局、より慎重で、かつ、より注意深い ︵陪く﹂綜︶老がー1いわぽ優秀な良家父
ず、しかも、錯誤者が予測かつ予防できない場合、あるいは、一般人の慎重さでもってしても予防できない場合でな
に許されうる︵O×O已o唖①ひ一〇︶だけではなく、義務的 ︵oひ﹂σQ巴o#⑦︶ で、かつ、必然的︵艮69°。ぽ需︶でなくてはなら
他方、その後の多くの判例も、この折衷説の立場から相当厳格な態度をとってきている。o°o°の下での錯誤は、単
性を証明しなけれぽならないという︵9︶。これは最も妥当な解釈と思われる。
方、このような一般性をそなえていない6°Pも認められるから、この場合は錯誤老たるρPの主張者において不可避
叢一
論
に対する第三者の信頼が、合法的であり、︵冨卯↑江目。︶、かつ、この性質が、四周の事情から第三者に当該自称代理人の権限を
動産を善意のYに売却した。これに対し、破殻院は、 ﹁ある者が表見委任︵代理︶に基づいて合意できる場合は、自称代理人
動産の売買などの処分行為は業務執行人︵σqo毒巨︶の権限から除外する旨をうたっていた。ところが、業務執行人が会社の不
︵12︶ たとえば、○胃゜巳く゜冶2己一80、O°。力﹂O∨⇔鵠“﹄°○°戸一〇㊦O°ド一8這゜iX不動産会社は、定款︵切9三︶で、不
︵11︶ c力。ぎP一〇甘ぎ一㊤OぷO総゜弓①庁一㊤8°N°=旦出゜ζ98已倉。U°昆゜廿・Oc。c。・
︵10︶○胃゜器ρ゜+置﹃﹂c。口Pロカ゜一c。oo﹂◆一e。o⋮○羨゜。罫c。﹂已=°.一c。ぷO﹂。。w刈﹂°やNo・
︵9︶甲ζ①N。き倉。巾ひ﹂﹃で゜㊤c。。。°
︵8︶<eぴ糀σq⊆5。や6客゜喝.⑦・。“昌。u・。°
︵7︶日。巳。5逗。や9°勺﹂Oc。⋮国゜呂砂N⇔巨荘。℃°庄桿゜ヤOO∨°
︵6︶ 慎重で、かつ、注意深い状態をいう。
でなかった事例に対する判決である。
︵5︶ 09。。﹂⑦日法一c。∨古。力・一c。翠﹂・ミ一、O﹂c。忘・一・“∨ドなお、本件は公正証書遺言の作成に際して立会人がフランス人
︵g8器。,℃oo已o⊆×︶による通知をする証人︵涼∋。巨︶に資格がない婚姻事件、 [苫Pc。﹂已﹂P一。。O①・O・一〇c。メN・Oc。・
。力﹂c。c。や・一・O・ロ。9↑pげひ●O・一c。c。全一・98甘Ocoqδ£・末成年老の婚姻に際し父母の同意を得られないときの尊敬証書
。■ざ×︶にその資格がない場合のこの証書の有効性につき。°Pを適用したζ8言。已oq。婚姻事件、○旬。・。・°庄く°∨8聲一。。。。c心“
一〇〇P<⇔2苫⊆びやOc。ぷ問。c。O。二・︶このほかに、町村役場への婚姻証書の届出を受領した参与町村議員︵89窪一。臣日ロ巳−
︵4︶9°・°・﹄ご巳=﹂c。・。o“。。﹂80°一.⑦足○嵩゜Nc。隷︿﹃﹂。。三﹀艮。3Nごcぎ完・。c。︵<・戸∩廿・σq合・≧℃99・二・Nρ
されている︶︶。
していることを想起せねばならない︵吋巨涼エn言唱目§8目●巨巳PN勺①己o昌。Nc。・︵06日om⊆Po勺・6﹂[・℃・︽口やに引用
︵3︶ 出・窓嵩。§荘o℃・。吉勺・Oc。Sまた、ここで、弔。仔﹂2もPPは公衆︵苫9。︶が正当と信ずる場合であるとコメント
︵2︶ 呂旦日ρ戸曾゜<。国隅。ξ“巨。℃<。一〇q5。日9♪●N“昌。ぷく。﹃ひ日。日筥。。[巨日6昆法日●ド毛c。・
︵1︶ 出゜]≦爵0ロ倉o勺゜6︷戸℃◆㊤c。9
いが、本稿は表見所有権の問題に焦点をあわせたので割愛した。
一
フランス判例法における表見所有権について
一
147
148
確めないことが正当視される場合でなければならない。﹂と判旨し、定款に対し、ppないし。昌6ξ末餌臣日。を認めない。
]ρ5<°︼㊤∨P﹄°○°恒一雪Cド︼①Nc。も。°ーA所有の土地の一部分をAの義兄弟にあたるXから、Aの代理権ありと信じて買受け
このように表見代理の領域では、。・6・は⑲㌣︹①ξ宗σq一己目6に発展している︵廿慕6ぼ“⇒o甘○巴①﹂。・−﹀巳。司︶。○諺。。°巳く°一・♂U
判例における共通的錯誤による表見所有権の展開
た事案で、AとXとの家族関係を理由としても表見代理は認められないとして、前述の一九六九年四月二九日の判決と同一の
判旨を掲げている。
4
されてきた事件によりつつ、その排列は歴史的発生順序に従い類型的にとらえていくことにする。
しているのか、を具体的に見極めなければならない。その方法論として、原則として、破穀院判例上にo°Pが引用
不動産の表見所有者からの処分によってこれを取得した第三者の保護のための手段として、 。.Pをどのように適用
前の二節によって、われわれはo°ρの理論の概括をすることができたのであるから、つぎに、フランス判例法上、
叢一
論
律
に基く回復訴権を行使することが許されるだろうが、これを無制限に許しては第三者の保護に著しく欠ける場合が生
この上に抵当権を設定することが起りうる。⊂の場合、真正相続人は第三者に対し相続により取得した個々の財産権
一条︶。ところが、そのような真正相続人でない外見上の相続人が相続財産を勝手に第三老に対し譲渡し、または、
人の死亡により開始し︵民法典七一八条︶、相続財産は法律に定める順位に従い一定の相続人に帰属する︵民典七三
人︵匹。︹己=°。︶の相続財産の真実の所持人 ︵く含︷S互。日昌貫①︶と誤信するに足る状態にある者をいう︵1︶。相続は
表見相続人︵け。﹃﹄江。﹃陣で℃p苫葺︶は相続財産︵°・已662む・﹂05︶を占有し︵廿9°・完2︶、かつ、誰れからみても被相続
一 表見相続人︵および表見受遺者︶
一法
じてくる。この第三者を保護するために公平の観点から6°P の理論が引用されてくる。この種の関係は、表見受遺
はその他の物権の負担について動産と同様に考えていくことが可能であろうか︵、︶。この問題は、結局、真正相続人
第三取得老は取得した動産の追奪をまぬがれる。不動産の場合も、表見相続人︵表見所有老︶による所有権譲渡また
述したように事実上の動産の占有は権限︵[旨o︶を有する︵民法典二二七九条︶との即時取得制度によって、善意の
が、はたして有効であるかの一般論に到達しなけれぽならない。この財産の譲渡が動産を目的としているときは、上
つぎに、これらの場合以外で、表見相続人が相続財産を構成する財産を譲渡ないしこれに抵当権を負担すること
定代理︵日§合二∩σq巳︶の観念によって説明するのが一般である︵3︶。
共同相続人または次順位相続人はそれぞれ生死不明老または相続放棄者の法定代理人として行為したのであるとの法
て取得した第三者の権利を妨げることができない︵民法典七九〇条︶︵,︶。以上の二例の場合の理論構成として、他の
続財産を処分した後に、相続放棄が無効︵昌巳一声ま︶とされ、または取消︵は隅ρ9巴ざ昌︶されても、この処分によっ
をした者の相続分は他の共同相続人または次順位相続人に帰属するので ︵民法典七八六条︶、これらの者が善意で相
産をこの老に回復するだけでたりる︵民法典二二二条︶。そして、第二に、相続放棄︵苫⇒oロ巳卑江8牛o。・已oo①・・切ざ5︶
なした善意者の行為は有効である、したがって、譲渡した物の代価またはその代価を利用したことによって生じた財
相続人に排他的に︵6×O一已oΩ一く⑦日O⇒↑︶帰属するので︵民法典二二六条︶、後になってこの者が帰来しても、この間に
したが真正相続人が生死不明︵sひ゜・o口8︶であるとき、この者の相続分︵廿ぼけ︶は法律上他の共同相続人または次順位
まず、このような第三取得老を保護するために民法典は次の二点について明文を置いている。第一に、相続が開始
場合に準じて考えていってよいであろう。
者︵宗加ρSピ6gロ喝胃。暮︶と真実の法定相続人または真正受遺者との間にも起りうる。これらの場合も表見相続人の
フランス判例法における表見所有権について
149
150
の真正な相纏を保護するか、逆に、表見相続人のなした行為を有効として、第三者の取得を保護し・よ・て取引信
用の覆を図るかの問題に帰着する。民法典は生死不明者の項にではあるが、真正相続人の相続権を保護するために
表見相続人を相手として相続回復訴権︵§8・・廿§8撒邑亘を靭恥めており︵一三七条︶・しかも・判例
.学説上も.、れ霜続の効力とし三般的に確立されている・,・。真正相続人から自己の相続権の存在を前提に・こ
れか皇ずる個々の権利に基づく財産回復請求を第三取得者に対し認められるかは争いがある・すなわち・相続回復
訴禁かかる表見相続人から相続財産を取得した第三者に対しても及ぶかの問題である。近時の判例♀説は・真正
したのは、破殿院一八四三年一月一六日の三つの判決であった。しかも、この判決は表見相続人の処分は他人の物を
︷涼︶は、現に相続順位に従って要求できる者にだけ承認されているというものではないという︵9︶。この理論を確認
。⇒桿。。︶は共同的に︵oo箒6江くo日⑦日︶遺産占有を有することができるとする。したがって、相続人の相続権︵ま品午
嫡出相続人︵g﹃﹂[一6.・.ξぎ⑦・。︶が享・。L・8・、の規定の解釈として、相続しうる親等にある全ての援︵§
ζン法における家族の共同所有の観套基礎にして、旧仏民法七二四条に、﹁遺産占有籍続開始とともに当然に
位を与える方法に苦慮したあげく、璽院は共同遺産占有︵・・菖。・。蛋量理論旨をつけた・戸﹂の理論は・ゲ
いては、表見相続人の処分を有効とする.﹂とができないとしていたようである⋮。その後・第三取得者の利益に優
上述の民法典;三条、七九〇条、または、取得時効、即時取得などの特別の理由により法律が認めたその例外を除
初期の多数の判決は、一般的原則、すなわち、前述の、含゜・。]§言。﹃量・−﹀の原理の厳正な適用により・
ある︵6︶。しかし、この理論に到達するまでには、若干の変遷がみられた。
効とする理論を承認し、.、の範囲で、真正相続人の相続回復訴権の効果を制限ないし排除しているとみるのが一般で
相続人の利益よりも董.心の第三取得者の利益を優先さ芸讐⋮から、厳格な要件を附して表見相続人による処分を有
叢一
論
律
一法
処分したとはいえないとさえ述べている︵ω︶。しかし、この理論は次の二点から一般的には承認されなかった。それ
は、第一に、民法典七二四条の解釈に無理があることである。すなわち、これは、フランスでも家族の共同所有形態
は一般的方法では認められていないぼかりか、七二四条の起草老の意図も、遺産占有は法律上の相続順位により決定
された相続人にのみ属し、全ての血族に同時的に属するものではないからである。第二に、この理論が表見相続人の
地位を中心に組立てられたものであるから、第三取得者の善意、および、真正相続人の状態などを不問にしているの
で両者の利益調節が図れないのではないか、との疑問からである︵n︶。
したがって、破殿院はこの理論に代えて、今度は表見理論に着眼して、国゜6と゜の法諺を引用するに及んだ。以下
において、表見相続人、または、表見受遺者などのなした相続財産の処分行為の効力に関し裁判所が、。°。°の理論を
適用した主要な事例を挙げることにする。
︹2・1︺ 破殿院民事部一八九七年一月二六日判決︵oO闘ノ紅警68西ロ㌍露ドξ︶
︹事案︺ ﹀巳o一嘗。号冨ロ。5。・ぎ⋮含。は一八八〇年に公正証書遺言︵§9日。5[四葺冨コ且已㊦︶によって切芯。5を包括受遺者
︵宗σq葺巳苫已己く。臣旦に、一定の不動産の特定遺贈を[。σqσq。父子に︵不動産の用益権︵已・。已守巳[︶を父に、虚有所有権︵出已。,
肩。肩↑含ひ︶を子に︶指定した後、遺留分を右する相続人もなく一八八五年二月一〇日に死亡した。同時にロ.伽。5は相続財産
を占有し︵民法典一〇〇六条︶、他方、[。°qoq6父子に特定遺贈とされた不動産を引渡した。ところが、 一八八六年、切。頂.∩裁
の内容はジュネーブにいる国匹。旨a匹。㌃弱。ε旨誹﹃6︵故人﹀江。甘庁。と兄弟︶を包括受遺者に指定するものであった。後に
判所の裁判長は一八八五年一月一三日および一四日付けの﹀巳。言古。の自筆証書遺言︵[。.⇔①日。5吟。一。唄.ロ客。︶を受取った。こ
U°。詠裁判所、﹀白σq。臣控訴院および破殿院審理部はともに、この自筆証書遣言を真正に作成されたものと認め、団住。已①.匹が
ロカ
フランス判例法における表見所有権について
151
152
巨岡
叢
≡∠L
律
ロ艮。口と巨6°つσq。父子を相手どり提起した相続財産についての所有権回復請求を容認した。
したものであるとして、公証人に一〇年の禁鋼重労働︵吟ぴO一⊆1ー一〇5︶を科した。これに対応して、o力。σq品裁判所および﹀白σq窪。。
今度は、一八九二年五月二四日セース重罪法院︵OO=弓工w口切iー﹂iー⑦ー1餌O 一ρ m⋮O﹂口O︶は、右自筆証書遺言による証書は公証人が偽造
控訴院は以前の判決を取消し︵︹6︷吟P6叶O吟︶、国匹o§aの相続回復請求を却下した︵亙92︶︵12︶。しかし、この間に国臼o§aは
零8頃らの者に前記特定遺贈に含まれた不動産などを売却しており、さらに、呂⑦庁⊆×らの者に対しては一〇万フランの借金
の担保として前記特定遺贈に含まれていない不動産の上に抵当権を設定している。
第一の訴訟ー頃呂。ロと↑。σqσq。らは弓8用らに対し右不動産または不動産上の権利の委棄︵餌巴巴切ω6日02︶を請求した。窓。㌣
一ぽ×裁判所、戸6昌昌9控訴院はともに曽臥。已らを所有権者と認め、この請求を容れた。弓8用らから上告。
︹判旨︺ ﹁6・P⑦二・が証明されれば、表見相続人によって合意された譲渡は真正相続人から起された全ての回復訴権
︵ρO[﹂05 6︼ρ ﹃∩ωO一已︷声O口︶を排除してしまう。﹂として原判決を破殿︵。ぽ・。。︶し、かつ、○①㊦ロ控訴院に移送︵8問く巳︶した。
第二の訴訟−出撤8はζ。8=図らに対し右抵当権設定契約の取消し︵日巴巳6穗6︶と抵当証書による謄記抹消︵苫庄①↑﹂。ロ︶
を求めた。これに対し、○庁曽8⊆σq。巨毎裁判所はこれを認めたが、﹀ロσq6諺控訴院は右抵当権設定契約を有効とした。民事部
は、第一の訴訟の判旨と同様の理由によって原判決を維持した。
だ善意の第三者の権利を保護する必要性が増大したものといえる。なお、本判決以前において、パリ控訴院判決一八
筆証書を真正なものとして権利関係を確定した判決が一枚加わっている点において、この判決を信頼して取引に及ん
分行為に対して、68°卑一゜の理論により有効として善意の第三者を保護したものとみれる。本件は、偽造された自
たので、公正証書遺言が真正なものと認められたが、その間に、自筆証書遺言による表見受遺者によってなされた処
て、実体上の権利関係が進行してきたが、後日になって、自筆証書遺言の偽造が発覚し裁判所も以前の判決を取消し
右判決は、後に作成された自筆証書遺言を真正なものと認め、それにより先の公正証書遺言が撤回されたものとし
一法
フランス判例法における表見所有権について
六六年三月一六日は、偽造された遺言︵吟Ooo吟P日O口[齢已×︶を信頼し抵当権の設定を受けた第三者はたとえ善意であっ
ても保護されないとして表見相続を認めていない︵31︶。また、偽造の事例ではないが、ごく最近のモンペリエ控訴院
判決一九五〇年五月二〇日の事例として、遺言証書が発見される前にこれがあることを知らずに法定相続人の間で相
続財産を適式に分割し、その結果取得した本件不動産をさっそく売却してしまった場合、第三者が善意、かつ、⑦゜P
を述べて、原判決を維持した。一
い点で、なお善意といえる場合であることからみて、表見相続人による譲渡行為︵証書︶は無効となることはない。﹂との趣旨
︵Y︶ が表見相続人の資格︵迫§己ひ︶について6°Pに陥り、かつ、真正相続人の存在は知っていてもその老の資格を知らな
人︵Z︶が権利を明白にかつ不争のものと認める公謹証書︵碧言晋88﹃聾ひ︶によって行なわれているとか、⇔第三取得者
︹判旨︺ ﹁本件は、原審が確認した事実、特に⇔真正相続人︵A・B︶の権利の不行使の事由とか、⇔当該売買が表見相続
めた。
において当該売買の無効を求めた。これに対し、巨日oσq9控訴院は第三者︵Y︶の善意かつρ﹂・を引用して売買を有効と認
相続財産に含まれる本件不動産をこのような事情を知らない善意の第三者Yに譲渡したので、XはA・Bの法定代理人の資格
供がおり右相続財産はA・Bが直系卑属として自己の権利で ︵江O i−O︻’ 6庁O﹁︶、Zに優先して相続していた︵16︶。その後、Zは
上、相続財産は変則相続人︵。・已8霧8こぼσq⊆]︷q︶たる夫の妻Zの所持の下にあった︵15︶。ところが、XにはA・B二人の子
︹事案︺ 夫の死亡により相続が開始したが、正則相続人︵9﹃庄2︶たる夫の母および妹Xともに相続を放棄したので、事実
︹2.2︺ 破殿院審理部一九三〇年一月六日判決︵お○醜唖工郎ρ㌔㌔口巳。賠牝師[︶
の影響下で相続財産を組成する不動産を表見相続人から譲受けた行為は有効であると判旨している︵14︶。
一
153
@ 右判決は、真正相続人と劣後順位にある変則相続人の地位にある表見相続人からの第三取得者との衝突の事例に対
律
叢
研il
より合意された売買を無効とするに十分である。﹂として原判決を支持し、上告を棄却した。
いて第三者の悪意が確証されていれば、これだけでP6・も、その他の原因の状況も追求、考慮する必要はなく表見所有老に
引をなすことを要する。r第三者の善意は推定されるが、逆に、。・Pは第三者から証明しなければならない。事実審裁判官にお
︹判旨︺ ﹁第三者が相続不動産を表見相続人から有効に取得するためには、第三者が善意であり、かつ、①・P の影響下で取
しEの共有持分︵で曽二区竺゜・。︶の範囲について売買の無効を宣言した。Y・Zから上告。
の売買は有効であるとしてEの請求を斥けた。逆に、第二審のパリ控訴院はA家族と親密な間柄にあるY︵Z︶の悪意を認定
れたのが本件である。これに対し、セーヌ裁判所は、Y・Zの善意を認定し、表見所有者Aから善意の第三者に対する不動産
A夫婦、Y、Zを相手どり右の二つの売買契約の無効を請求した。A夫婦の処分の有効性とY・Zの善意、悪意について争わ
有となった。これにもかかわらず、A夫婦は本件不動産を勝手にYに譲渡し、さらにYはZに転売した。したがって、Eは、
はなんら代襲相続権を主張しなかった。そして、今度はDも死亡するに至り、最終的には、本件不動産はA夫婦とE・Fの共
番目の娘DとBの代襲相続人であるE・Fとの共有となった。ところが、実際は本件不動産は全てDの支配下にあり、E・F
の所有老である二番目の娘Cが死亡し、同時に相続が開始した。しかし、.A夫婦はこの相続を放棄し、結局、本件不動産は三
︹事案︺ A夫婦には三人の娘B・C・Dがあり、一番上の娘Bは二人の息子E・Fを残して死亡した。その後、本件不動産
︹2・3︺ 破殿院審理部一九三五年五月二〇日判決︵露⑭㌶舗’oゴ蜷コ05い匙賠か㌻男︶
保護したものとみることができる。
し、直系卑属たる真正相続人の権利の放置に帰責事由を求め、この事由を知らない善意の第三者をPP9一゜によって
1 54
[
二&
法
右判決は、共有の相続財産を共同相続人のうちの一人が他の相続人の同意をえずに勝手に第三者に譲渡した場合
で、前掲︹2・2︺の無権利老による処分の場合と異り、自己の権限を輸越した処分に関する事案である。しかし、
本判旨も破殿院審理部の判決として前掲の判旨と同趣旨を宣したものとみてよいであろう。ただ、本件は、第三者が
、
悪意であることが証明されたので、PP2一゜はその前提において要件を欠くから適用される余地がないとしたもので
ある。
︹2・4︺ 破殿院審理部一九四〇年一一月一四日判決︵ω○⇔齪゜パ担↑合。6[.、。昏。、︶
︹事案︺ 事実はあまり明確とはいえないが、およそ次のようであろう。実は共有財産である本件不動産について、相続人の
一人が単独で自分に所有権があるものと誤信して、この上に第三債権者のために抵当権を設定していた。 これに対し、≧σq。.
控訴院は、表見所有者が二二年間もあらゆる人々︵一〇=[ ︸0 5ロO白江O︶および他の共同相続人によって右抵当権の目的となった
不動産の正当な帰属老︵まく己巳菖。款σq巳目︶として承認され、争われなかったのであるから当該抵当権は有効とみなされな
けれぽならない、とした。
︹判旨︺ ﹁表見所有者により設定された抵当権が有効となるためには、第三者が善意で、かつ6・Pの支配下において取引を
したことを要する。いわば⑦・ρは、あらゆる人々により表見所有者が真正所有者であると信じられている状況である。﹂とし
て原判決を正当とした。
田じている善意の第三者に抵当瑳馨してしま三ので・他の共同相続人と第=一者との間に衝突が起きた藁に対
右判決は、共同相続人の一人が自己の単独相続だと誤信して相続財産に属する不動産をこれまた単独相続人だと信
フランス判例法における表見所有権について
律
156
し、他の共同相続人が単独相続の状態を争わず、しかも、長期間放置していたことを重視しその者に責任を負わせつ
つ、第三者の善意かつPPを認めたものである。ただ、本案で目につくところは、前掲︹2・3︺と異なり、表見相
続人も第三者とともに善意である点である。これについてはすでに前にも述べたが、表見権利者の善意・悪意は①ヂo°
の適用上あまり重要ではないことであり、本判旨の傍論にも少し触れているところである。
以上にみてきた表見相続人に関する判例を総合してみると、Pρ9﹂°の支配下の処分行為といえるためには、第三
者の善意のうえに、表見相続人と誤信する外的要因として、判決︹2・1︺、公正証書による取引︹2・2︺、真正相
︵3︶o§巳。9①三邑[二・:§28・・“ぷ08二。○。口・ze。﹂∩。三二玲昌⇔駕三゜§2°・°⋮○穗目・已“。㊥゜。﹂[日゜茎
ある。破殿院審理部は民法典七九〇条を適用し善意の第三者による抵当権の合意は有効であると判旨している。
を設定した。ところが、末弟が相続放棄を取消した︵﹃O︹﹃①6͡6﹃︶ために、当該分割の無効と抵当権の効力如何、という事案で
ウ
続を放棄したので、他の二兄弟で相続財産を分割した結果、上の兄が前件不動産を取得し、さっそく、第三老のために抵当権
︵2︶ この点が問題となった判例として、たとえぽ、○自。・°苫ρ﹂c。ヨ四二c。∨ρo力・一c。WP一・し。ゆO・ 本件は三人兄弟の末弟が相
一㊤這⋮廿βg。・O。§a﹂2△。<四ぴ§“写。・③︹§晋一。9邑目e苫器芸戸6<°旦目“△□9<°一㊤⇔軍し。°。⑦゜
く。○艮目︷⑦子。喝・6ぎやc。口。吟。・∴Ω8お⇔。・ロカ§讐。ψβO。冨く①臣ま窪霧①6§壁一ロ冨二、巨含三自唱で昌6日“各Φ゜・p霊︹亘
なお、フランスにおける表見相続人に関する研究はかなり盛んであり、以下にその主なもので、利用しえた文献を掲げてお
になる。以上の個々的な点は、上述第二章の二で触れておいた。
らの登記が存する場合、登記は表見所有者の外見創造にくみすることになるので、登記も第三者の誤信の原因にも加わること
できないというものではなく、後に、損害賠償原因となる場合もあるとされた︵一九五五年デクレ三〇条四号︶。ただ、これ
を受けていたといえるが、確認書および遺言証書を提出する方式でなされていた。しかし、その登記の欠歓は、第三者に対抗
︵1︶ 前述のように、相続・遺贈など死亡を原因とする物権変動の登記︵公示︶は、不動産登記の大改正が行われるたびに改正
続人の権利の不行使の放置︹2・2︺︹2・4︺などが外見創造に重要なファクターとなっているといえるであろう。
叢一
論
一法
フランス判例法における表見所有権について
157
芭§巨窪巴廿。芸。や6一︷°諺666目。5↑°♪苫﹃呂き亘2≦邑㊦8p這口①︼β。・U心ド﹂。︽。。°
︵4︶P⑱邑。∼。廿.合゜廿゜やS
︵5︶﹀旨亘魯戸①∼。℃°6﹂[二﹂P言﹃団・・日。ダO寧“おo玲①三空p巨巳2巴勺。芸。℃“6↑吟゜吟゜庁唇﹃忌p已乏g≦辞=⑦8日
昌。c◎c。∨°
︵6︶<;。S日日6そ9・⋮°苫ρ“・。言Fおぷ]︶﹂。。∨∨°一゜鳶ぷo力﹂。。刈。。﹂°。。c。⋮○§°苫ρ﹂・。目p声﹂。。ぺぷ〇二c。c。O﹂°○。。“
⇔プ伽Oユρ已OOけ廿﹃ρ己ρ已O匹O巳﹃O片巳く巳>c◎臥巳こ吟゜一、OO白。。.⊆66①臣︷OO︼出O㊤coO⋮﹂O。。。。6吟①口匹、OO⊆冨匹O江﹃O=庄く障廿Oi−=宗字①づ㊨知匿、 古N“
。力﹂c。鐸一゜。。8⋮﹀昌02戸ρ5。廿゜合゜戸c。“冨﹃■°曽弓[﹂p㊦完こ鷲Φ9し。品いΩ゜切§合㌣e$巨日6﹃﹂6g>°≦昌r円邑涼
袖完こ口。宗8い四昌︷。ご[戸■。芸。℃“9二︸言﹃ζき蔓g≦邑Φ8見己c。串O。二こ6ニニド冨﹃零6ρ已伽昌。鳶O°
︵7︶ 真正相続人の生死不明などの場合、表見相続人による善意の第三者に対する売買などは有効であり、かつ、真正相続人に
よって攻撃ないし対抗されない、とした判例・学説として、○§・苫孕c。①o旨一c。一ぷQ力・一c。富︵U <o﹁° 一刈㊤一1一m一coO 、︶°一゜。。。。⋮
田量口2﹃二。。隅。力﹂。。鵠︵∨<or一刈㊤三。。c。O︶“N二8⋮5曇言目p二c。・。O“。力﹂。。c。O︵㊤<。ポ一冶=。。。。O︶ふ゜お⑦“ζ。〒
O恥co⋮切O⊆﹃哨Oぷ 一⑦﹂已一昌 一〇〇⊂◎メo力゜一〇〇c◎oo“N博O一い男O已05>NO日自声 一cocoρo力゜一〇〇g◎O°N心O一゜O[貿 90ユ一己︾OCO玲゜江O匙﹃
号色﹂。5一こ昌︿﹂。。。。P。力﹂。。。。O°ドC合吋。巳gω。、口日§品・。。。、。カニ。。。。・。三し一⑦]=日。ぬ2賠まp品・。c。“。。°品。。+N
抗される、としたものとして、勺。庄。亘一〇p<﹃﹂c。c。心。力・一。。c。Nドc。∨P。。。a。p已ぷ一“p<﹃﹂。。c。ドo力・一。。し。NNOO一︰ロ。aβ二×・
出含庄。♂吻c。°9°。°︵6一[伽辞已o力゜ 一〇〇co㊤゜ N“ 十ロ一︶°これに対し、かかる売買は無効であり、かつ、真正相続人によって攻撃・対
撃鰍。二c。・。古。。﹂。。c。ぷドNまれ9ま呂ぷ雪日曽二c。・。⑦、。力゜一。。c。Oふ﹄。。旦ζ8G巴一︷6□O日騨二。。c。。。“。力﹂c。・。c。wN°ぱド戸6亨
コヌロ2﹃二。。‡Ψ。力﹂。。や心﹄°ホP戸nき。♂ぱ宣一[完c。+°○帥N“5で完。。∈N°お曾。二゜ 吋。已≡。さ︻‘。︹ぎ=息く芦[°ρ
廿゜⑰︽一⋮O二﹃◎昌[O⊃︼OO已臣︼͡﹂°50⑰⑦U°O吟幹 ︵○⋮↑ひ O己﹁ c力. 一舳Wco㊤゜ 心゜ やU一︶ <°一↑°oり問﹃﹃已ひ20[O知已一︶°一㊤OP 一゜cO﹂心 ︹2・−︺⋮
︵8︶ なお、遺産の当然占有者について、民法典七二四条の原始規定︵一八〇四年︶では嫡出相続人だけ規定されていたが、一
Ω伽目6F。廿゜︹﹂庁勺㌫ご勺言己。ご[空廿。芸B°江[°庁古言﹃ζ§く2≦p=68♪5。c。ホ卓お9
八九六年三月二五日法の改正により、私生︵自然︶相続人︵ま﹃庄6臣§ε吟静︶がこれに含まれ、さらに、一九五八年二一月二
︵9︶ N碧ゴ巳ρ5口涼U①叶︾已ひ﹃︿2戸①子o卓昆ひ︷“◎一c。㊤o。“廿゜c。Oc。﹀●⑦OPづ09NU⋮○品ヨ︷o痴o唱゜庄ひ℃°口ローO⑦゜この場合の
三日オルドナンス︵一三〇七号︶の改正で、生存配偶者︵8且o︷巳。・ξ<︷<①巳︶を含まれるに至った。
表見相続人の地位は、いわば、すべての相続財産の所有権の名義︵ゴ障O︶の法定占有老といえるようである︵<°Op。・。・°∩ぎ宗
158
叢
≡△
fima
律
法
㌃ばく°一c。☆“N㊦曽器け︹註︵10︶︺︶。
︵10︶ 09ζ−°。言一①宣p≦一c。+c。︵c心曽穗︷°・γ]し一。。Oc心﹂°お“。力゜一〇。+c。°一゜OW二日9︹°忌゜06<: 第一番目の事案は、公正証
書遺言により包括受遺者となった者が、遺留分を有する相続人もいないと思い相続財産を善意の第三者に譲渡した。ところ
われた。原審︵Ooξ﹃。養甘匹。ζooゼ。一箒さO目江一。。c。c。“。力゜一c。c。c。・ド+ON︶は、表見相続人、または、第三取得者の善意か
が、被相続人の父方の直系尊属に遺留分相続人がいた︵民法典九一四条︶場合に、当該譲渡が有効であるかどうかについて争
ら引き出される例外を退けていた。ー第二番目の事案は、包括受遣老に指定された者が、被相続人の直系血族の相続人がい
者に財産を売却したものである。これに対する原審︵Ooξ目く巴①匹。戸o二。昌︶は、前述の民法典七七五条などの適用により
ないので全ての相続財産を権限により占有しているのに、遺留分のない被相続人の夫が自分が真正相続人であると称して第三
遺者に指定された者が存することなどさらさら知らず、相続財産をこれまた善意の第三者に売却したものである。原審︵○。ξ
表見相続人による善意の第三取得老への譲渡を有効とした。1第三番目の事案は、真正相続人が自筆証書遺言により包括受
吟自巴。ユ。勺o︷⇔︷2切︶は、前述の民法典一五九九条などから売買の無効を結論づけている。なお、第一の破殿院判決の理由中
︵11︶ ○款目儒Fo勺・。片喝・口Φ・なお、この点について、中川・前掲一四四頁参照。
に、傍論的なものであるが、。°Pの要件もみられるのが注目される。
︵12︶ 遺留分権を有する相続人は、直系尊属、または、直系卑属に限られている︵民法典九二二条、九一四条︶ので、兄弟姉妹
︵13︶ 勺四旨、宗日☆臣一c。①P。力・一c。①O・N。心心心ぷO・勺﹂。。○①・N⇔S これに対し、適法な方式を欠く遣言を信頼した第三老につ
はこれに属さない。したがって、団江o§己︵兄弟姉妹︶には減殺請求権による方法もない。
一・c。・1事案は、公正証書遺言に指定された遺言執行者︵O×O△已吟OF吟 ’㊦o力[P巳PO=吟騨 ﹃O︶が遺言者の葬祭費用などに使用する資金
いては、前述の初期の判例以来、表見相続の理論が適用されやすいといえる。たとえば、〇四。・。・・苫ρ・+9津一c。謡“。力・一。。∨⑦・
のために、遺産の内、家屋を第三者に売却した。ところが、その一四年も後になって、遺言者の真正相続人は、当該遺言は立
会人の立会により作成したとの記載がなく︵民法典九七一条︶無効であるとして、第三者に右家屋の委棄︵匹巴☆熔6日6巨︶請求
行者の表見代理の問題にもかかわらず、なお表見相続人による処分としてppの適用を認めた。
を起した。これに対し、一審︵司民ひ゜﹀冨8日︶は真正相続人の請求を容れたが、原審︵㏄舘[一p︶および審理部は本件が遺言執
︵15︶ 民法典七二三条の原始規定︵一八〇四年︶は、相続人を嫡出相続人︵ゲ舎昆2・。宗σq巨目。。・︶とその他の相続人として、被相
︵14︶ ζ8壱6巨8N日巳一綜Pいρ旭一80°+°℃﹂否。。°
フランス判例法における表見所有権について
159
続人の私生子︵O口厨口雷 口☆↑仁﹃O一〇‘︶、死亡した私生子の父母兄弟姉妹、生存配偶老、国などとに分けて、前者がいないとき後者
日。8日ぴPoや書・。・ξ8。・。・一〇口。・二・“昌。+︶。しかし、一八九六年三月二五日法の改正で私生相続人も、一九五八年一二月二三日
が補充的に相続人となる効力を与えていた。そこで、前老を正則相続人、後者を変則相続人といったことに由来する︵<・O。,
オルドナンス一三〇七号の改正で生存配偶者も前者に属するに至った。
︵16︶ フランス民法においては、代襲相続︵需宮合。昆昌。ロ︶は被代襲者が死亡した場合にのみ許され、生存者を代襲することは
ない ︵民法典七四四条一項︶、とされているので、被代襲者に該当する相続人が放棄しても子に代襲されることがない ︵民法
には、子は自己の固有の地位で、かつ、頭分によって︵でR径巾︶相続する。﹂︵民法典七八七条後段︶。
典七八七条前段︶。しかし、﹁放棄者がその親等の唯一相続人であるとか、または、その全ての共同相続人が放棄している場合
二 法人格なき教団︵および表見会社︶
法人格なき教団︵修道院︶︵合白σq慕σqρ江858℃。冨05ρ法∩︶は、それに関する法律︵一2︶または国務院︵○。ロ。・。 匹。■↑9︶のデクレ︵念o器[︶による、許可︵p暮o﹃后⇔江o旨︶または法的承認︵器60目口巳。・㏄駕8宗σq巴。︶を受けていな
い宗教団体である。このような法人格なき教団は、教団名義で財産を所有することができないので、これが取得した
財産は名義上すべて、一人のまたは多数人の教団員︵68σq﹃。σq§巨2︶の単独または共有の形式で、または、教団員
ないし教団の後援者︵苫o甘68ξ。。︶で組成する民事上の組合︵°・o巳含書巳くま゜・︶ の形式で所有していた︵−︶。しか
も、このような名義上σ表見所有老が、かかる財産を処分することが通常行われていた。
ところで、一九〇一年七月一日の法律は﹁非営利社団 ︵90力o力OO戸辞[声05︶ の契約について﹂全般的に規定し、その
内、第三章に宗教教団の契約について規定している。その一八条によって、法人格が認められない教団は、当然解散
し︵合゜・°・○后江o昌︶かつ清算︵目ρ乱江巴合旨︶を受けなけれぽならないとしている。したがって、この教団が事実上存在
し始めた時から解散の時までに、教団︵修道︶長などの教団代表老とか、教団財産の名義人︵勺誌︹。、5。目︶が本来教
律
叢
160
=△
稲
法
団に所属する不動産を譲渡ないし抵当権設定をしてしまっていた場合、後に解散および清算を受ける教団は、遡及的
に法人格がなかったのだとして、この処分行為までも無効となるのかの問題が生じ、善意の第三取得老と教団の清算
人との対立が起きる。かかる法人格なき教団の代表老または財産上の名義人たる表見所有者からの処分を有効として
保持できないか、が表見所有者の問題である。 ・
ところで、一九〇一年以前においても、法律またはデクレによって、宗教教団は政府︵Ωo⊆<o日6日o巳︶による承
認を受けれぽ、法的人格が与えられていたようであるが︵2︶、この手続きを経ないために法的人格が賦与されない教
団も後をたたず生じ、教団の代表老および財産上の名義人による教団財産の処分の効力をめぐって真正所有者︵法人
格なき教団11全教団員︶と第三取得者との間に紛争がたびたびならず生じていた。そこで、裁判所は、このような法
人格なき教団を、その構成者等で組成する事実上の組合︵社団︶ ︵。・o巳∩涼匹o日一[︶としてとらえ、その事実上の存
在を尊重して、教団財産の真正所有者たる教団員は、その指導者︵牛戸﹃①O汗O⊆﹃︶または長︵°・已唱含﹂oξ︶による行為に
ついての責任を負うと判断してきた︵3︶。すなわち、行為の効力を論外におき、行為の責任を誰れが負担するべきか
の点から処理したといえる。
このような背景の下で、一九〇一年法が施行され、この問題を立法的に解決しようとしたのである。直接これに関
連する規定はつぎのとおりである。
一三条一項 ﹁いかなる宗教教団も、その運用条項を定めた法律に示された許可がなければ成立しえない。﹂ 二
項 ﹁それ︵宗教教団︶は、国務院の発するデクレによらなければいかなる新規の施設︵含①ぴ法む・⑳日⑦暮︶も設立しえ
ない。﹂ 三項 ﹁教団の解散またはあらゆる施設の閉鎖は、閣議︵OO昌o◎O已 匹Ooo 5口︷﹃[一白◎[﹃Ooo︶の発するデクレによっ
て宣告されることができる。﹂
︵
フランス判例法における表見所有権について
161
一四条一項 ﹁何人も、許可なき宗教教団に属する場合、その者が直接にまたは仲介者によって、宣教︵05。・oぽ56−
目6ぼ︶の、現在するどんな施設も管理しえないし、また、宣教を与えることもできない。﹂⋮⋮
一六条一項 ﹁許可なしに創設されたすべての教団は、違法と宣告される。﹂ 二項 ﹁それに参加した者は八条
二項に定めた罰金に処せられる。﹂
このように二二条の根本的原則と法人格︵許可︶なき教団にかかわる教団員の活動の禁止および制裁を規定し具体
的に二二条を担保しているほか、次に法人格なき教団の解散と清算規定がある。その主なものとして、
一八条一項﹁本法の公布の時に存し、かつ、以前に許可が与えられておらず、または、承認されていない教団は三
月の期間内に、この規定に適合させるために必要な申告︵鮎巨⑳窪06︶をしたことを証明しなけれぽならない。﹂二項
﹁この証明がない場合は、それ︵教団︶は当然解散したるものとみなす。このことは、教団に許可が拒絶された場合
も同様である。﹂三項﹁このような者が所有していた財産の清算は、裁判上行なわれる。裁判所は検察官︵日日﹂°・吟含6
廿已臣﹂6︶の要求によって手続の過程で清算人︵=口巳エロ甘ξ︶を選任する。清算人は清算手続の期間中はいつでも、す
べての管理者の管理権能を有する。﹂
これらの規定から推察できるように、もはや以前とは異なり、法人格なき宗教教団を絶対、放置しておかない主義
に立っていることは疑いないといえる。
しかし、経過的に一九〇一年の公布以前において、または以後においても、これまでの慣習に従い、かかる教団の
資金などを得るために、教団︵修道︶長などの教団の代表老、または、教団財産の名義人が、個人に対し、または、
不動産銀行︵6﹃∩江﹂↑ ︷○]PO]O﹃︶に対し、教団財産に属する不動産を譲渡または抵当権を設定することが多く行なわれ
た。依然としてこのような表見所有者にすぎない者による教団所属財産の処分は教団の行為として善意の債権者のた
律
162
めにその有効を教団の清算人に対抗できるか、についての争いは解消されなかった︵4︶。
この問題に対して、当初から地方裁判所および控訴院は、以下にみるように幅広い解決を示していたが、破殿院は
厳格に解釈していた。しかし]九〇七年に至り公平の観点から善意の第三債権者の保護の必要を重んじ理論的にも前
述の民法典一=二五条、一五九九条、二一二四条を超越して団゜Pご゜の法諺を適用することによりかかる抵当権の有
効性を承認した。
なお、立法においても変遷があり、前述の宗教教団に関する規定の内、一九四〇年九月三日法により一四条が削除
︵i︶教団財産の名義人からの場合
問題として表見会社の場合を最後に触れることにする。
団財産の名義人からの処分の場合を挙げ、第二に、数団の代表老の場合に移る。そして、つぎに、これとの延長上の
者と教団︵真正所有者︶の清算人との衝突の事例を具体的に考察する。その際、まず、事例の発生順に、第一に、教
それでは、以下において、法人格なき教団の代表者または財産名義人などの表見所有者からの処分による第三取得
々に宗教教団の法的存在の要件が緩和されてきているとみれるであろう。
けれぽ宣告されない。﹂とされ、同時にまた、一六条も削除されるなどされている。結局、これらの改正により、序
デクレにより法的承認を取得できる。﹂三項﹁教団の解散または全ての施設の閉鎖は国務院の発するデクレによらな
た意見に基づいて発するデクレにより法的承認を取得できる。⋮⋮﹂二項﹁全ての新規の教団施設は国務院の発する
され、また、一九四二年四月八日法では、=二条が改正され、すなわち、一項﹁全ての宗教教団は、国務院の一致し
叢一
≡A
fiwa
法
フランス判例法における表見所有権について
163
︹2.5︺ パリ控訴院一九〇六年一月二五日判決︵細器訓☆巽.声↑°。°。ぽ.馳㌦。恒ビび雛﹂⇔自↑旨︶
︹事案︺ 甲教団は、一八六〇年に多数の教団員で創設され、本件不動産を取得していた。一八九六年、Aらの教団員は自分
達が右不動産の所有者であると自称し、六万フランの借金の担保として債権者Yらのためにこの上に抵当権を設定、かつ、こ
の証書も公証人に公証され、かつ、登記された。その後、一九〇四年、甲教団は一九〇一年法に従い設立のための許可が認め
られないことに決定され、解散、清算に入ったので、Yらは抵当権による差押命令を求めた。他方、甲教団の清算人Xは、甲
教団はもとから法的人格がないので表見所有者たるAらが合意した抵当権と差押命令の請求は無効であると主張した。これに
対し、セーヌ裁判所は、日一九〇一年法の公布以前にせよ、以後にせよ、または、法的人格のないことが明示されている場合
にせよ、仲介者がこれを隠ぺいしている場合にせよ、原則として許可なき教団は法的存在がないので、かかる教団による契約
は絶対無効ないし不存在をきたす。Oただし、Yらの抵当権が、教団の名義人︵唱含。−50日︶によって表見上︵6自p廿廿自自9︶
与えられた場合は有効に取得することができる。⇔国・p吟⊆は事実の錯誤︵6開㊦弓牛n冒5を対象としており、本件のように
法人格なき教団も契約締結能力があると誤信したような法律の錯誤︵O一.内6⊆﹃ 工O 匹﹃O一■︶・には適用されない、としてXの請求を
認容した。
︹判旨︺ ﹁甲教団は民事上の組合にすぎないが本件不動産を公然と占有し、かつ、以前にも不動産銀行に有効な抵当権を何
回となく設定してきた事実があった。したがって、YらはAら︵表見所有者︶の資格・能力につきPP6二・に陥っているとい
える。その際、錯誤が事実に関するか法律に関するかについてはそう重要でない。﹂一審判決を破殿。
右判決は、表見所有者たる財産上の名義人が教団のために教団財産を処分した場合、その第三取得老と真正所有者
たる法人格なき教団︵民事上の組合︶の清算人との衝突に対し、Pρ⑦二゜の理論を引用して善意の第三者を保護した
注目される控訴院の判断といえる︵5︶。また、 ◎ρ9一゜ないし国ら゜己゜の原則が法律の錯誤に適用されないとする本
件一審のセーヌ裁判所、および、別に一九〇五年五月四日セーヌ裁判所における同様の︵6︶、判断を非難して、法律
@の錯誤に対しても事実の錯誤と同様に適用されるとする控訴院の判旨には賛成すべきであろう。けだし、近時におけ
の後、破殿院民事部一九〇九年七月一二日判決によって同様の判旨が重ねられている︵9︶。
をはじめ控訴院などによって示されていた態度を支持するものとして重要な意義を有するものである︵8︶。また、こ
ることは疑いないであろう。しかも、これは一九〇一年法公布後の破殴院︵民事部︶の判断として、前掲︹2・5︺
右判決は、教団財産の名義人が表見所有者である場合の事例に対して背後に、ρρ。二゜の適用を認める趣旨であ
当権についても同様である。﹂
を譲渡目的物の真実の所持者と信じるにつき善意であることの両要件の下に、清算︵人︶に対抗することができる。これは抵
者が、性質上真正所有権者︵A教団︶の責任により作成された表見的権限証書︵巳苫壱冨苫巨︶に従い、かつ、名義人︵B︶
︹判旨︺ 上告棄却。コ九〇一年法以前において教団の︵財産上の︶名義人︵B︶により合意された譲渡は、その第三取得
として控訴、上告した。
求めた。一審ではX敗訴。そこで、検察官︵日忌∂①言ひ︼︷6︶は一九〇一年法一七条に従い主たる当事者︵苫己。唱日。■巴㊦︶
〇一年法によりA教団に法的人格が許可されず、解散・清算に入り、清算人Xは、右名義人による売買、抵当権設定の無効を
︹事案︺ A教団の数個の不動産をその名義人にすぎないBが、Yらに売却および抵当権を設定した。ところが、後に、一九
︹2・6︺ 破殿院民事部一九〇七年七月一七日判決︵m。弗甑♂託含法゜声口23°即吋乱︰担︶
る法規の絶対数の増加、それとともに多発する法規の誤解、判決の誤りなどを想起することができるからである︵7︶。
ー
64
「 法律論叢
一フランス判例法における表見所有権について
165
︵■−︶教団の代表者からの場合
︹2・7︺ リヨン控訴院一九〇六年六月二二日判決︵鰻↓8。㌔、N諾自声り。。∨
︹事案︺ 一九〇一年五月に甲教団の総長︵・・已烹﹃答ξσq8含9は、甲教団のために教団に所属する不動産上に債権者Yに対
し抵当権を設定した。その二月後、一九〇一年法により甲教団には設立のための許可が認められず、解散と同時に清算が開始
し、清算人Xは総長には本件不動産を処分する権限がないので右抵当権の合意は無効であると訴えた。これに対し、2§巳g
裁判所は、PP6こ・を適用して抵当権を有効とした。その理由として、本件は非常に注意深い者であれば総長の能力について
の誤信を回避できたであろうが、比較的慎重かつ注意深い者でも、総長が自分の計算で教団財産を処分する合意ができると信
じるのも無理がないことなどをあげている。
︹判旨︺ ﹁実際上、法的人格なき教団に属する財産の表見所有者により合意された抵当権は、善意の第三老が通常の慎重さ
で回避できないような錯誤を被った場合であれば、有効とされることができる。﹂として一審判決を支持。
右判決は、前掲二例の教団財産の名義人による処分とは異なり、事実上の組合としての教団の代表老である総長が
教団財産を処分する場合の事案に対するものであるが、控訴院はなんら区別することなく、教団の名で教団のために
︵℃o已二⑦oo日冥o江o冨ooづσq苫σq但江05︶表見所有老が行為する場合には、 PP6二.の適用が問題となるとしている。
︹2・8︺ 破殿院審理部一九〇九年七月七日判決︵oO瑞ノひ玲,ぺ↑託﹂一.声。。p︶
︹事案︺ 前述の一九〇一年法が効力を生じた後に、すでに法人格が承認されているB教団の代表者が、A教団に属する本件
不動産をA教団の総長から買い入れた。ところが、その後、A教団は設立許可が下りず、解散・清算に至った。そこで、A教
叢
ではB教団の 敗 訴 に 終 っ た 。 B 教 団 か ら 上 告 。
団の清算人から右売買はもとから法的人格のないA教団との契約であるから、無効であると争った。これに対し、パリ控訴院
存在または無能力を知ることが不可能であるとの事実状態でなければ、6・P9一・の影響下にあったと主張することができな
︹判旨︺ 上告棄却。﹁清算開始前に法人格なき教団と取引に及んだ第三取得者︵B教団︶は、当該教団︵A教団︶の法的不
い。ところで、本件譲渡行為は一九〇一年法の公布後のものであるから、B教団は、A教団の法的不存在または無能力を知ら
ないはずがない。﹂
右判決は、前掲リヨン控訴院判決︹2.7︺と同類の事案に対しPρ㊦二゜の適用の可能性を承認しながらも、一九
〇一年法公布以降の事件であるからその適用が認められないとする審理部の判決である。これと同趣旨の判決理由
は、すでに民事部一九〇七年七月一七日判決︹2・6︺の中にみることができるし、本判決の後、審理部一九〇九年
七月八日判決︵−o︶、および、民事部一九〇九年三月二一二日と二四日の判決︵u︶、の中において繰り返えされている。し
かし、この破殿院の態度に反対する有力説もある。それは、一九〇一年の法律公布の事実だけから本間のような第三
取得者の悪意を一方的に認定するのは擬制のきらいがあり、なお、かかる立法にもかかわらず、第三者は不動産の表
見所有者たる民事上の組合ないしその代表老または名義人が、法人格なき教団を仮装しているのかどうかを知る方法
は依然ないのではないか、との理由に基づいている︵21︶。
香j表見会社
からの処分を有効なものとしていく傾向に対し、破殿院民事部は公的秩序の名の下にo°Pの適用の限界を画している
しかし、以上のように法人格なき教団をあたかも法人格があるかのように取扱い、これに属する財産の表見所有者
(…
166
二△、
亘i田
律
法
フランス判例法における表見所有権について
167
ようである。すなわち、善意の第三者でも表見所有者の権限証書︵ゴ貫6︶が公的秩序により絶対的無効︵昌⊆巨まρひ,
寞垂U︶である場合には、もはや6°o°の理論を引用できないのではないか、ということである︵B︶。これに対し、審理
ぐり会社を設立する契約は、公的秩序に反し無効である。﹂として原判決を破殿し﹀巨。当。。控訴院に移送した。
その不動産上にA呈思された抵当権は無効となる。﹂との観点から、﹁贈与者︵X︶らが有償契約の外見をよそおって法の網をく
︹判旨︺ ﹁不動産所有権を移転する契約が公的秩序に反し無効である場合には、必然的帰結として︵この有効を前提として︶
を作り出していることから、Xの請求を棄却した。
に設定された抵当権は不動産の真正所有者︵X︶に対抗できない、しかし、XはA会社設立に参加し土地所有権の虚偽の外見
はA会社の清算人および不動産銀行に対し自己の不動産の返還を請求した。これに対し、パリ控訴院は、原則としてこのよう
けられたものである。したがって、この法律の適用によりA会社は法人格が否定され設立無効を宣告された︵14︶。そこで、X
た。ところが、実はA会社は専ら甲宗教教団のために設立した虚構会社︵切OO⋮伽け伽 含ひ[一くO︶であり、一九〇一年法を回避して設
ミ日。︶を設立し、二度にわたり不動産銀行から総額一五万フランの貸借契約を結び、同時に右不動産上に抵当権を設定し
︹事案︺ 一八九〇年、Xら他一二名は有償契約をよそおって各自の不動産を持寄り︵実は贈与︶A株式会社︵・。。。一伽ま卸コ。,
︹2・9︺ 破殿院民事部一九三八年三月一日判決︵oO冷鞠,蕊門5。ボ訂ロ﹃ω声、、。。、︶
、
きた法人格なき教団の問題の延長上のものとしてとらえることができる。
設立された後、設立無効を生ずる、いわゆる表見会社︵°。06ま涼pO℃自6暮︶の事例であるが、なお、以上に考察して
部は公的秩序に反する場合でも、OPの理論を適用することにやぶさかでない。以下において、いずれも株式会社が
°・
律
168
叢
ユ
百隔
法
︹2.10︺ 破殴院審理部一九四六年三月一九日判決︵SO謡評.雛巴。。目鱒バ.別認欝ぺn旭︶
︹事案︺ A株式会社は社債︵。9σq呂。5︶を、将来の償還のための担保として会社所有の不動産に抵当権を附して、募集し
た。ところが、後に、A会社は資本金の払込み︵<6臣6日6巨巳已6①U↑吟巴。。o。芭︶の欠如が原因で既判力のある裁判上の決定
︵︹一伽6﹂②﹂05︶により設立無効と確定した。そこで、株主︵碧︷合目①﹂﹃㊦。・︶は一八六七年七月二四日法律七条および四一条にいう、
制定法規不遵守による株式会社の無効は株主から第三老に対抗できるとの規定を引用して当該抵当権の無効を求めた。他方、
社債権者団体︵﹀、、。6﹂①ま白匙209σq自巳器切︶はPPを引用して抵当権の有効を主張して争った。これに対し、2旨⑦。・商事裁
判所、ζ。巨零巨2控訴院もともに、PPを適用して抵当権を有効と認めた。
︹判旨︺ ﹁制定法規違背を理由とする株式会社の設立無効は、社債権者が善意かつ。・Pである場合、これらの者のために担
保した不動産の表見所有者たるA株式会社によって予め設定された抵当権は効力を変ぜず。﹂として原判決を維持。
︵1︶ ﹀“≦、四庁丁昌。↑。“戸。≦吟臥目゜号゜6﹂ぐこ一〇〇。。“廿゜一袖9なお、 フランスにおける民事上の組合が法人格を有するのかについ
一c。OポO・恒一c。O︼﹂・c心c。\。。・一c。鶏・一・逗・︶。この点を詳細に研究している論文として、山本桂一﹁フランスにおける組合法
ては、学説.判例が分れていることは周知のとおりであるが、肯定説を支持する判決もかなりあるようである ︵○舘切・鵠冷く・
人論﹂、同﹁フランスにおける営利組合と非営利社団﹂フランス企業法序説所収。また、フラソスの公益法人全般にっいて、
林寿二﹁フランスの公益法人について﹂国学院法学八巻三号一四頁以下、一九〇一年法の翻訳として、森泉章﹁フランス一九
︵2︶ 男子修道院については、↑。一N㌃ロ<﹂c。一∨︵︿°﹀苔含勺p吟弓巽亘c。碧ら一〇〇c。“O°勺゜一〇一P一゜ω這︶“女子修道院について
〇一年七月一日法﹂青山法学論集一四巻三号一六一頁以下。
は、↑。一NO目◎一冨N靭O尽6︹窪c。一㌃白く・品紹∨O尽自9NO目①臣冨O。O︵<°O°おOご+°一〇∨︶右なお、8昌頓はσq①民○ロの変遷に
︵3︶○目゜2°c。o念6二。。ロメ゜力﹂°。oc。.一゜鴬9
ついて、山本︵桂︶・前掲企業法序税八一頁註︵七︶参照。
︵4︶也国巳巳2因骨芸。℃°。﹂戸[°・。三曽烈n騨具白。NS°
︵5︶ すでにこれより先に出されたこれと同類の事案として、¶肖グ一Nご﹂F一〇〇ぷ◎。°一〇〇SNNc心弁lA教団︵法的人格のあ
フランス判例法における表見所有権について
169
る︶がB教団︵法的人格のない︶の名義人としてB教団の不動産上に抵当権を合意した事件に対し、
則を適用している。このほかにも同趣旨の下級裁判所の判決は多数出されている。
︵6︶叶き゜。力6﹂昌P︽日旬二〇〇ぶ○①N°5ゲ這8°N=O°
︵8︶ ﹀°≦ゴ江o勺゜。﹂︹℃°一田巾[切∴2050°町゜一8c。°一◆一一゜
︵7︶口ζ飴8己。勺右9°廿゜軍r
︵10︶ ○ぽ。。°器ρ゜e。﹂巳F一〇〇〇°O迫゜一〇一P一゜c。這゜
︵9︶○︾°庄く﹂ご昆=㊤OぷO°弓﹂集。5一゜c。刈N
︵11︶ 09。・°∩︷<°鵠9ぱ日自゜。一〇〇PO迫.一㊤一〇°一゜ご全
︵13︶ 也p巳巳9担駕芸oヤ。一︷°件゜一ド官吟㌣6ρ已ρ勺゜+O⊂心゜
︵12︶ P≦−浮 o勺゜9°勺右冨N°
ないし国゜Pご.の原
6°6°
︵14︶ ただ、最近、一九六六年六月二四日の会社法の改正︵法律五三七号︶によって、その三六八条前段に﹁会社も社員も善意
の第三者に対して無効を主張することができない。﹂と定められているので、会社の設立無効もこの条文に含まれると解すれ
ぽ、無効による遡及効が制限されるので、PP9﹂・を適用するまでもなく条文上解決されたとみるべきであろうか。
三 表見買受人
︹2・11︺ 破殿院民事部一九五九年四月二〇日判決︵部◎ぷユ﹃↑㍍玉賠黙㌍烏。.﹄,n勺.︶
︹事案︺ 本件不動産は、一九一七年に謄記された公正証書上、Yが自己名義で売買により取得した旨記入されていたのでこれ
を信用し、Rは、一九三二年八月、Yより債権担保のために本件不動産に抵当権設定を受け、登記も終えた。一九四七年に至
り、この抵当権附債権はRからZに譲渡され、同時に抵当権変更登記︵﹃6巳P仇6﹃一﹃O︶が行われた。しかし、これより先、一九四
二年一〇月にYは死亡しており、相続人不存在のまま後者の登記が行われた。これらに対し、実は、Y名義の本件不動産は、
代理人YがXのために買い受けたことが一九一八年に作成された私署証書上、明らかとなり、 一九五〇年に至りXの相続人
律
170
fiwa
叢
≡△.
法
は、この証書を公証人に寄託し謄記された。したがって、Xの相続人は、Zの抵当権に基づく差押の解除︵合哺,障芦[︶を求め
た。これに対し、切自旨控訴院は、第一に、Xは私署証書上、本件不動産の真正所有者であり、Yは単なる名義人にすぎな
い、第二に、Rの抵当権に関する登記は、一〇年の失権時効︵廿含⑦日苫♂5ま8目巴。︶によって︵旧二一五四条︶消滅するの
に改新されていない︵−︶、第三に、Zの抵当権変更登記は、Yの相続人不存在の間の新たな登記として何ら効力がない ︵旧二
一四六条二項︶、などを理由としてXの請求を容れた。
︹判旨︺ ﹁不動産表見所有者︵Y︶によって善意の債権者に対して合意した抵当権は、真正所有者︵X︶に対抗できる。⋮⋮
しかも、上告人Zは、当該抵当権は表見所有者 ︵Y︶から善意の債権者 ︵R︶ に設定されたことを立証しているのに、原審
は、何らこれに答えていない。﹂として、原審判決を破殿し、≧×控訴院に移送した。
右判決は、もともと、当該不動産の買い方を依頼された代理人︵Y︶が、本人︵X︶に背いて自己名義を使用し公
正証書、謄記をすませたが、XとYとの真実の権利関係を証した私署証書が発見されないのでそのままとおっていた
もので、さらに、これに加えて、Rの抵当権登記も、Zの抵当権の変更登記も、いずれも民法上効力のないものとな
っていたという複雑な事例である。破殿院は、債権者︵R︶の善意を考慮していない原審の判断を破殿移送したが、
はたして、一三二一条後段を適用することを念頭においていたのか、Pρoご゜によるのであるのかは明らかでない。
︵1︶ この点について、関口・前掲論文一八頁参照。
四 表見受贈者
︹2・12︺ 破殿院民事部一九六三年四月三日判決︵閉。恒ωぶ碍巴ピ㌍誠賠゜躍、一.oo乱。許㌧㌦。駅銘.ヅ鵠≡ω霞“鰻↑㌔、。。心.︶
︹事案︺ 父Aは自分の姦生息子︵巴゜。o匹巳叶含巨︶︵−︶X名義で一九二三年と二五年の二度にわたり数個の不動産を買入れ、
この権限︵o零蚕[5白︶の有効性を争うものもなく、全く適式な外見︵昌霧需59鮎6言はσQ=冨﹃﹂ま︶を呈していた。さらに、こ
この旨の公証証書および謄記をすませた。しかも、Xは長期間にわたりこれら不動産を公然と占有し、本件訴訟になるまでは
の間にXは借財の担保として債権老Yのために当該不動産上に抵当権を設定した。ところが、もともとXは姦生子であり扶養
料を請求することができる以外に全く受贈能力︵︹9廿06ま巳。駕8<巳﹃︶を欠く︵旧九〇八条三項、旧七六二条︶ので右不動産
に対し何ら権利を有しない。そこで、故人Aの相続人Z︵嫡出子︶は、AのXに対する仮装贈与︵匹o§[︷。5念σq巳。・合︶の無効
と真正所有者でない老が設定した抵当権の無効を訴求した。これに対し、第一審︵吋ユぴ゜○日゜・°・o︶は、右の事情を知らない善
意の債権者Yの主張する国・P︹Sの原則の適用を退け、かつ、表見所有老Xの権限証書︵口言O︶は公的秩序から無効︵5己︶で
あるとして、Zの主張を容れた。しかし、二審︵OO⊆﹃江∨﹀﹂×.051勺吟O<O白∩O︶は、逆に公的秩序ないし一般的利益︵﹂昆含含σq合含9
を顧慮し、国・P︹]・を引用して一審判決を破殿した。Zから上告。
︹判旨︺ 上告棄却。﹁OPの支配する下で行う善意の第三者は、表見所有者の権利も真正所有者の権利も持たない。それは
法の効力︵6津n叶餌〇一◎一〇一︶にかかっている。表見権限証書︵法苫昌廿2。葺︶の無効は、これが公的秩序によるにせよ、無効
の原因が存続し、かつ、全ての者のこの不知︵品50﹃o︶が存する場合には、その︵表見所有︶者によって合意された譲渡また
は抵当権の有効性に何らの影響も及ぼさない。﹂
ける能力を欠くので公の秩序に反し無効であるのに、さらに、表見所有老たる姦生子により当該不動産が処分された
右判決は、不動産の真正所有者による自己の姦生子に対する仮装贈与が、姦生子は本来、生前贈与または遣贈を受
フラソス判例法における表見所有権について
1 ので、この善意の第三取得者と真正所有者の相続人との衝突が起き、結局、ppの理論を優先的に適用して第三者を
71
172
叢
fiee
弘
律
法
保護することを明確にしたものである。これは、前掲︹2・9︺ ︹2・10︺に示された、ρρ9一゜は公の秩序に反し
絶対的無効である場合には適用できないのではないか、との民事部と審理部の見解の対立に終止符を打ち、Po°臼一゜
は何にも制限されない原理であるとする審理部の見解に組みする民事部の注目すべき判決であるといえる︵2︶。なお、
このほかに、表見受贈老についても贈与証書の偽造、方式の欠歓の場合が考えられる。偽造については、表見相続と
同様に単純な偽造に対してはPP9﹂°の適用がないと解してよいと思われるが、方式違背については、たとえぽ、
贈与証書の原本︵日 昌已[O︶の外形上の方式が欠けているとか、単に私署証書︵°・o已゜・む・。ぎσq買﹂<伽︶上贈与が確認され
ているだけで公証人の面前で作成された証書によらない︵民法典九三一条︶、などについては表見受贈者とはいえず、
したがって、その場合にはpp⑦二゜の適用が否定される︵3︶。けだし、その場合の権限証書︵[]茸o︶が無効であるこ
とは第三者において気付くべきだからであろう。
︵1︶ 姦生子︵①コ日昌富註巳芯巳9︶は、姦通によって生れた子で、いわゆる不義の子と称される。これと区別されるものに近親
相姦子︵05討コ叶oカ一問OOo管吟OC×︶がある。最近まで、両方とも、単なる婚姻外の子としての単純私生子︵窪厨巳。。う巴ξ6后。・日芭6・。︶に
比較して、相続権が認められず、また扶養料︵巴ぎ⑦5芭以外の生前贈与または遺言を受けることができない ︵旧九〇八条、
旧七六二条等︶など低い扱いを受けていたが、一九七二年一月三日法三号の親子関係の改正によって、単純私生子の地位にま
︵2︶ <・SζpNo≧P95唱款6﹂まSρ㊥゜一8︽°N一c。8N
で引き上げられた︵新七五九条、新九〇八条等︶。
︵3︶○︾°・声くふ①季二。。①∨“°力﹂c。①S一二⑦r
フランス判例法における表見所有権について
ユ73
五 まとめと若干の問題
最後に、これまで叙述してきたフランス民法の下での不動産取引における第三取得老保護のための法的構成として
の表見所有権の理論を要約しながら、その判例の傾向、および、判例において、実際上どのような要因が持込まれて
いるか、しかも、その要因をどのように評価するのが妥当であるか、などを観察して置こう。
これまでのところを一般的にながめれぽ、表見所有権ないしこれに含まれる種々の理論は、不動産物権変動におけ
る意思主義、登記︵公示︶の対抗要件主義および非公信力主義、公証人の人的信用主義など、フランス不動産取引法
を形成する諸特質の中で、主として個人の所有権絶対の思想を修正し、取引における相手方第三者の保護を図る手段
として考え出された歴史的所産であるといえる。そして、この内でも、特に、対抗力の厳格なまでに制限的な解釈
と、公証人の手になる証書による取引方式が、表見所有権の理論の土壌をなしているといっても過言ではないであろ
う。 .
一 仮装行為の問題点
︵i︶第三章で挙げた仮装行為に関する判例を表見所有権の成立要因の観点から諸要素を抜粋すれぽ次のように図式化
することができるであろう。
6日
内 的 要 因
外 見 状 態
外 的 要 因
第三取得者の善悪
心理的要因
悪意
加
味
係
︵法器まσq已目︶
゜誤+
適式な権限証書
︵善意︶
善意
善意
も
真正所右者と表見所有者の関
︵罐者の2いつわ。た︶
適式な権限証書
売買の公正証書および
その謄記
受領証書上の名義人、
る。
かつ、その謄記も有す
証書およびその謄記
る錯
名義貸与
夫婦共有名義の貸与−夫の名
の仮装と夫による妻の名義の
無断貸与
↑
離婚による妻の法定抵当権
︵実質は生前贈与︶
仮装売買
遺留分相続人
↑
名義貸与
︵清算人︶
S会社←個人名義
仮装譲渡
し共善
否定
後段の適用
二三二条
第 二 の 行 為
種 類
抵当権設定
抵当権設定
肯定
肯定
︵肯定︶
抵当権設定
肯定
抵当権設定
抵当権設定
の善意は推定されるであろうから、これを争うためには仮装行為の当事者︵原告︶の側から第三者の悪意を証明しな
ても善意であるかぎり第三取得者は保護されることになる。つぎに、注目すべき点が三つある。第一に、第三取得者
見を作出する場合、この外見が適式︵適法︶な権限証書であれば、その証書上の名義を信用し真実の所有者と誤信し
︵n︶右の表を概括的にみれぽ、つぎのようなことがいえるであろう。まず、真正所有者の仮装行為によって虚偽の外
て通 意
い的
〔1・1〕
〔1・2〕
〔1・3〕
〔1・4〕
〔1・5〕
174
叢
ニム
律
法
フランス判例法における表見所有権について
175
けれぽならない︵︹1・4︺の原審参照︶ことである。そして、第二は、表見所有者から第三者への第二の行為の種
類についてである。本稿で引用した判例は右図も示すごとく、いずれも抵当権が問題となっているが、仮装行為の場
合も前述第四章の共通的錯誤と同様に、有償行為でなければ第三者は保護されないものであろうか。第三に、真正所
有者の特定承継人と表見所有者からの第三取得老との衝突の場合も、真正所有者と第三取得者の衝突の場合と何ら異
った扱いをせず、一貫して第三取得者の保護を図っていることは注目に値する。
香j最後に、民法典改正委員会︵Oo日日旨8⇒巳⑦は8﹃目o△①Oo匹①Ω邑︶︵−︶が仮装行為による善意の第三者保護に
の法律関係に区別を設けなかったと説明されている。しかし、相当疑問のある委員会の方向づけであると思われる。
らの反対意見も強いものがあったようであるが、契約当事者の真実の意思を尊重するとの観点から第三者と当事老間
れ自身によって、意図された真実行為の有効を妨げることがない。﹂との態度に固った︵4︶。これに対し、出゜]≦嵩⑦9已巳
経て、全体委員会︵Oo日日︷°・。・︷8廿尿巳障⑦︶で採択された条文の草案︵零巳9△。9答9︶六条で、 ﹁仮装行為はそ
条文が削除されてしまった︵2︶。結局、小委員会は、法律行為の条文の予備草案︵﹀<§ひ苫&魯匹6↑o×9。・︶五条を
五月一六日の法律行為に関する小委員会︵O力OdFo力1︵OOB目一〇乃◎カ一〇⇒︶の会議録六条で、前の会議録の後半﹁ただし﹂以降の
いて、仮装行為を知らない者に対抗できない。﹂として、第三者保護の規定が残されていた。ところが、 一九四七年
りその効力を生ずる。ただし、これ︵真実行為︶はその者あるいはその他方の老の包括承継人または包括名義人を除
表意者によって意図された真実の行為を仮装しているときは、後老の行為はその有効要件が備わっているときにかぎ
および、一九四六年三月一三日の会議録︵印069−<2ひ巴昌巳≦﹂ρ⊆o︶の段階においては、 ﹁表見的法律行為がその
ついてどのような方向づけをしているかを考察して置こう。國o巳5が起草した予備草案︵﹀<き3旦2︶一九条、
(…
貢田
二 共通的錯誤の問題点
外見状態
種類
効力
第 二 の 行 為
第三取得者
外的要因 心理的要因
︵i︶第四章で挙げた共通的錯誤に関する判例を表見所有権の成立要因の観点から諸要素を抜粋すれば、次のように図
表見所有者
善意かつ共通的錯
の譲渡
売江ロ貝による所有権
よる。
売買による所有権
譲渡
十
公正証書の方式に
①売買による所有
権譲渡
②抵当権設定
る。←悪音心
①共同相続人らと
知己の間柄によ
る。
②善意は推定され
者が負う。
立証責任は第三
③共通的錯誤の
無効
有効
有有
効効
式化することができるであろう。
真正所有者
相続財産の単独占
相続財産の占有
す 書
る 遺
言
内 的 要 因
真正な公正証書にょ
偽造の自筆証書に
よる受遺者
る受遺者
↑
宣証
判そ 偽
決の 造
真 の
正 自
を+筆
有。
と格いの 通の
゜をて存 的資
判決による接断
次順位相続人
︵被相続人の妻︶
優先順位にある相続
人︵代襲相続人︶の
権利不行使の状態の
放置
共同相続人の内の
他の一人
︵二人の代襲相続人︶
同順位の共同相続人
の放置
の権利不行使の状態
こ資て人共人
誤
③ ②①
知も知真錯格表善
ら’を正誤に見意
なぞ知相 つ相
いのっ続 き続
叢
律
法
〔2・1〕
〔2・2〕
〔2・3〕
176
三加
フランス判例法における表見所有権について
177
同順位共同相続人の
黙認
↑
法人格なき教団の構
成員
清算人
法人格なき教団の構
成員
↑
他の一人、なお、
共同相続人の内の
本件は表見相続人
も、自己の単独相
続を誤信していた
︵表見相続人の善
意︶。
︵苫含6占o日︶
教団財産の名義人
教団財産の名義人
抵当権設定
有効
た。
︵法器竜言﹁。葺︶
↓
真正権利者による
虚偽の外見作出
の存位
株式会社の事実上
善意かつ共通的錯
有効
相続財産の独占有
公正証書による抵
当権設定および登
有効
i二二年間、他の
表見所有者︵名義
人︶の資格、能力
につきo°p6二◆
①売買による所有
権譲渡
②抵当権設定
有効
共同相続人および
一般第三老に正当
な帰属者として不
争、承認されてき
善意
↑
一三二一条を意識
したのであろう。
抵当権の設定
無効
株式会社
善意
抵当権設定
記。
教団の民事上の組
合としての存位
善意かつ共通的錯
譲渡
売買による所有権
不動産贈与者
↑
設立無効︵公の秩
↑
虚構会社︵°・ 。 ︹ ︷ 含 ひ
している。
無効
有効
表見的権限証書
悪意
ム宣6ξσq8含e
教団ないしその総
゜め団と実
誤
誤
教団ないしその総
↓
一九〇一年法後の
取引だから。
にの総上
行名長の
為での組
教団の事実上の組
合としての存在と
総長の資格
とた教格事
序に反する無効︶
‘
この1性の
清算人
法人格なき教団の構
成員
↑
清算人
法人格なき教団の構
成員
↑
す教資合教
る団格的団
帥息く6︶設立に参加
清算人
長
(。。
長
〔2・4〕
〔2・5〕
〔2・6〕
〔2・7〕
〔2・8〕
〔2・9〕
律
( ↑
の存立
株式会社の事実上
.正証書とその謄記−
仮装かつ無効な公
第二の行為の時に
存する謄記は形式
的に無効なもの
公正証書、しかも、
謄記された虚偽の
株式会社
設立無効
竃
長期間の不動産の
公然占有
社債権者団体の善
意かつ共通的錯誤
︵善意かつ共通的
錯誤︶
善意かつ共通的錯
誤
定人上虚
承)の偽
継お名の
人よ義公
株主
無る
正
そ(
゜び人
の代証
特理書
抵当権設定
抵当権設定
抵当権設定
有効
︵破殿・
移送︶
有効
など各々の個別的な諸特質により、右の表からも判然としないように、各々を貫く共通の要因を拾い上げることは相
延長上の問題として位置づけることができるものの、表見相続人、法人格なき教団、表見買受人、および表見受贈老
P1︶つぎに、これらの共通的錯誤を理論的基礎とする表見所有権に含まれる問題は、沿革的には表見相続人の理論の
贈姦 仮真
与生 装正
の子 行所
絶に 為有
対対+ 老
的す
〔2・10〕
〔2・11〕
〔2・12〕
真正の私署証書上の
名義人︵本人︶およ
びその包括承継人の
権利不行使の継続
交
の
鍾1
)
効生
前
178
ロ田
法
≡ム
叢
いるとか、かかる外見の排除を怠り長期間放置してきた場合、さらに、真正所有者の上記の事由の継続からその包括
る場合はもちろん、このように積極的参加がなくとも他人により作出された虚偽の外見の存在を知りながら黙認して
が、おおよそ次のような結論に落着くであろう。真正所有者が直接にしろ間接にしろ虚偽の外見の創造に参加してい
合が相当薄れ、必ずしもかかる外見の存在に対する責任を真正所有者に負担させることを適当としない状態もある
第一に、共通的錯誤の下では、前述の仮装行為の場合と異り、作出された虚偽の外見に対し真正所有者の関与の度
当困難である。しかし、少くとも以下のようなことがいえると思われる。
一
フランス判例法における表見所有権について
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承継人において上記の事由の存在の不知が加担され、結局、長期間の放置をきたした場合にも、真正所有者およびそ
の包括継承人は第三取得者に対抗され、その処分の無効を主張しえないことになるであろう。
第二に、第三者が共通的錯誤に陥る外見状態にも触れなけれぽならない。遺贈の場合、表見買受人、表見受贈者の
場合、あるいは、法人格なき教団の場合でも、それぞれ虚偽の私署、公署︵正︶証書があれば、この証書が外見を構
成する有力な要因となることは疑いがない。しかし、この証書が全くの無権限者によって作成された偽造のものにす
ぎないのであれば、もはや誤信した第三者は救われないといえる︹2・1︺ ︹2・11︺。これらの証書がない場合に
は、財産の事実上の占有が外見の重要な目安となるともいえるであろう。
第三に、善意かつ共通的錯誤を被った第三取得者の証明︵廿苫已く6︶責任についてである。 ︹2.3︺の判決からみ
れるように、第三取得老の善意は推定されるとしているので、当事者︵原告︶が第三取得老の悪意を証明すれぽ、仮
装行為と同じく、共通的錯誤の適用自体問題にならなくなり、その適用を免れる。ところがこれに対し、第三取得者
の共通的錯誤までも推定されないので、当該取引が共通的錯誤の状態の下でなされたといえるためには、第三取得者
︵被告︶の側で共通的錯誤を証明しなけれぽならない。
香j最後に、共通的錯誤に基づく表見所有権に含まれる個々的問題について考案を加える。
と誤信するとこが回避できないので、善意の第三取得者により真正相続人にその有効を対抗できると結論づけられる
とかの事由の存在、かつ、表見相続人による相続財産の平穏、公然の単独占有があれぽ、第三者からみて表見相続人
右の表から、相続財産に属する不動産の売買および抵当権設定は、遺言の無効とか、他の共同相続人の黙認、放置
の中へ入れてきているかを追求して、今後の表見相続人の理論の動向を探ることである。
第一に、判例法上確立されてきた表見相続人の理論について、民法典改正委員会がどのようにその草案ないし条文
(…
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であろう︵、︶。このような判例法上の原理は、民法典改正委員会でも討議されている。表見相続人の問題に関して、
委員会は、第一に、真正相続人に対する表見相続人の責任の面と、第二に、相続財産上に設定される行為の種類を定
めることに焦点をしぼっている。そして、一九五三年五月三〇日および六月一三日の会議︵o。09出600。︶において、予め
提案されていた上記二点についての草案を討議し条文化するに至っている。これらの点については、委員会にょり採
択された条文、およびその後に提出された予備草案︵﹀§旱℃且2︶第二編第一章﹁無遺言相続︵匹9・・自。69。・合ロpぴ
芦冨じ・宮[︶﹂の第四節﹁積極のまたは消極の相続財産の移転﹂の内に規定されている︵5︶。
七八六条︵旧三九条︶ ﹁表見相続人は、資格が承認されている相続人に、相続財産を構成する全ての財産を返還
しなけれぽならない。
その者は、占有者のために定められた要件において、真正相続人にその財産から生じた損害を賠償しなければなら
ない。または、その者は、同一の要件でその支出した費用の返還を請求する権利を有する。
れぽ、訴訟の日までで現在する果実を︹返還︺する。﹂
その者が悪意であれぽ、その者は相続人によって生じた果実の全てを返﹀・速しなけれぽならない。その老が善意であ
七八七条︵旧四〇条︶ ﹁二二七九条および一二四〇条︵民法典︶の規定の適用を妨げることなく、表見相続人の
相続財産に関する管理行為ならびにその財産の有償名義による処分行為は、善意のおよび共通的錯誤の被害を受けた
第三者のために真正相続人に対抗できる。
善意の表見相続人は、真正相続人にその譲渡から得た価額、または、その価額でもって取得した財産を返還する必
要がない。悪意の表見相続人は、真正相続人に、もしもの時には全ての損害賠償を妨げないが、判決の日に譲渡した
財産の価格を︹返還︺せねぽならない。﹂
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すなわち、七八六条は、相続財産が表見相続人の手元にある場合、言い換えれぽ、いまだ譲渡されていない場合に
おける表見相続人と真正相続人の権利義務を定めたものである。これに対し、後者の七八七条は、表見相続人が相続
財産を構成する財産をすでに処分してしまった後の第三者、真正相続人、および表見相続人の権利関係を定めたもの
である。本条では次の二点が問題となる。第一に、表見相続人による処分が、管理行為および有償名義の処分行為に
限っていることである。これは、前掲の表見相続、ひいては表見所有一般の判例の理論を容れたものであることは疑
いのないところである。第二に、委員会のコメントにもあるように、表見相続人の真正相続人に対する責任がその者
の善意、悪意により明確に区別したことである。このように今後、フランスにおいても表見相続の理論がさらに注目
をあびていく傾向は予想することが可能であろう。
第二に、法人格なき教団、および設立無効の会社︵表見会社︶の問題についても触れておかねぽならない。各々の
問題点については第四章の項で一応触れたが、重複をいとわないで要約すれぽ、いまだ国務院の許可を得ていない教
団が事実上活動し、許可︵法人格︶が認められないと確定するまでの間に、または、一応成立している会社がその設
立無効の判決が下されるまでの間に、それらの団体から第三者が団体の財産の処分を受けた場合、非法人格または設
立無効の効果が遡及するにもかかわらず、第三老の善意かつ共通的錯誤の支配下ではこの遡及効が制限されてきたと
いえる。ところが、法人格なき教団の場合、判例︹2・8︺によれば一九〇一年法施行後の取引は、第三老において
法人格なき教団が存在しえないことにつき善意とはいえないので共通的錯誤が問題にならないとされるに至った。こ
れに対し、設立無効の株式会社の場合、 ︹2・9︺によれぽ公の秩序に反する無効は共通的錯誤が働かないとしてい
るが、近時の商法改正ではこの場合でも一律に遡及効を制限し第三者を保護しているようである。
第三に、表見買受人および表見受贈老の場合がまさに表見所有者の典型的事例であるといえる。これらは、理論的
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には表見相続人の理論と異ならないが、ただ、外的要因として、単なる不動産の占有だけでは不十分で、
渡証書または贈与証書などの証書の存在とその謄記が重要となるであろう。
さらに、譲
︵1︶民法典改正委員会については、エル・ウーアン・山本桂一訳﹁フランス民法典改正委員会の事業﹂ジュリスト八一号三九
頁以下参照。
︵3︶司日く琶ぷ﹀§ひ。δS−ロ︽。。も・㊤P5乙・。P・。︽o・
︵2︶弓§き×△。言○。ヨ邑⋮ぎ△。は甘§。穿○。匹6Ω吾﹀目臥。§ごま・。;・NN
︵4︶﹄巨゜・己塁6ξ6才﹂r彗﹂8帥三。㌫︵c。二⇔o。。︶・
︵5︶弓毒く巨ד>8婁蒙。。−§︽6二。口亡。日廿二〇∨二〇ぷ台。。⋮﹀毒コξ﹄。[合○。号Ω三日・N二㊤焙“℃二P5・
六 結 語
実の権利関係の尊重にとらわれた理解のためであると思われる。しかし、重要なのは、虚偽の外見の背後に潜む内的
て表見権利者の帯有する虚偽の外見を信頼した第三取得者を保護すること、すなわち、外見の優越に徹しきれず、真
持分の限度で保護されるにすぎなくなり、両者に帰一の結論が生じなくなる。これは、わが民法の下では、依然とし
類推適用されれば全部的に保護されるであろうが、もし前述の最高裁昭和三八年判決を固守していけば表見相続人の
まず、冒頭に掲げた事例では、表見相続人︵次男︶から処分を受けた第三取得者の利益は、もし民法九四条二項が
たのであるから、最後に、冒頭に挙げた例を中心にわが民法の問題との関連を簡単に考察してみたい。
して破殴院判決の具体例を通じて考察をすすめてきた。これはもとより不充分たるは免れないにせよ一応の落着をみ
以上において、不動産取引における第三老保護の法理としてのフランスにおける表見所有権の理論について、主と
〆
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な表見相続人の権利状態ではない、むしろ、外的な外見に対する第三者の信頼であり、また、真正相続人による外見
作出に対する帰責事由の存否の点である。かくて、わが民法においても、フランスにおける表見所有権、特に表見相
続人の理論を参考にして、虚偽の外見に対する真正相続人の黙認、長期間放任などの事由があれば、真正相続人に全
部的な不利益を負わせて第三取得者の保護を厚くする構成も充分理由があるものとなるであろう。
つぎに、フランスにおける共通的錯誤の証明責任は、第三取得老に負担させているということに注目して、前述の
ごとくわが民法九四条二項の類推適用および外観尊重の法理の適用に対する歯止めとして、特に外観尊重の法理適用
上については、無過失の挙証・立証責任を第三者が負うとする構成も正当と考えられるのではないだろうか。なお、
わが国でも虚偽表示︵仮装行為︶については第三者の悪意を証明する責任は、当事者︵原告︶が負うとされているこ
とは周知のとおりである。
最後に、一般的に、表見所有老に表見所有権を認め、この者の処分によって真正所有老の所有権が制限または排除
されてしまうとの表見所有権的構成は、わが民法の下でも採り入れられる下地があるように思われるが、今後の研究
に期したいと思っている。
なお、本稿は、わが国の不動産取引における第三者保護の法理を総合的に研究しようとするわたくしの最初の試み
である。しかし、わたくしの力不足で外国法の紹介が思うにまかせず、不正確な表現、資料の消化不良があるやも知
れない。御叱正をえて補正していきたいと思う。
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