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水系EPDを利用した金属への セラミックスコーティング技術の開発

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水系EPDを利用した金属への セラミックスコーティング技術の開発
Annual Report No.21 2007
水系EPDを利用した金属への
セラミックスコーティング技術の開発
Development of ceramics coating on metal
by electrophoretic deposition of aqueous suspension
A61149
代表研究者 森 隆 昌 名古屋大学 大学院工学研究科 物質制御工学専攻 助教
Takamasa Mori
Assistant Professor, Department of Molecular Design and Engineering,
Graduate School of Engineering, Nagoya University
共同研究者 椿 淳 一
Junichiro Tsubaki
郎
名古屋大学 大学院工学研究科 物質制御工学専攻 教授
Professor, Department of Molecular Design and Engineering,
Graduate School of Engineering, Nagoya University
Silica coatings were fabricated on a stainless steel substrate by electrophoretic deposition
(EPD) of aqueous slurries. An anodic deposition has been pointed out to have a critical
disadvantage : elution of metal ions of the anode material into slurries, therefore, an
cationic surfactant, polyethylenimine (PEI) was used for obtaining positively charged silica
particles and coating on the cathode. In order to prevent formation of cracks in coatings
on metal substrates during drying, polyvinyl alcohol (PVA) was added as a binder. Dilute
nitric acid was used to control pH of the slurry. The effects of the amount of PEI and PVA
on the properties of the silica coatings obtained from EPD was discussed.
The weight of the silica particles deposited on the cathode was maximized when the
content of PEI was 1.9 mass% and PVA was 2.0 mass%, respectively. As the amount of
PEI increased over the optimum content (1.9 mass%), the weight of the silica particles
deposited on the cathode decreased because of aggregation of silica particles and
inhomogeneous deposition. We could obtain crack free coatings after drying from the
slurry with the optimum amount of PVA (2.0 mass%), however, the weight of deposited
silica particles decreased when the amount of PVA increased over the optimum content.
After drying, the stainless steel substrate with deposited silica particles was tapped
20 times and weighed the particles left on the substrate. The weight of particles left on
substrate after tapping was decreased to almost 60%, therefore, further improvement
should be needed to enhance the adhesion of the particles by adding more effective binder.
い重金属類が含まれている場合が多く、法律
研究目的
で使用に規制がかけられている物質もある。
金属材料に耐熱性、耐摩耗性、耐腐食性な
このような環境負荷の問題から、メッキに変
どの機能を付与するためにメッキが行われる。
わってセラミックスコーティングが注目され
しかしながらメッキに用いるメッキ液には六
ている。とりわけセラミックス微粒子の溶媒
価クロム、鉛等に代表される環境負荷の大き
中での帯電を利用した電気泳動コーティング
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The Murata Science Foundation
(EPD)は、複雑形状品にも均一なコーティン
グに関する研究の大部分が、微粒子の分散の
グが可能で、比較的簡単で安価な設備でよい
容易さ、あるいは乾燥速度の点から分散媒に
ことから、実用化に向けてさまざまな研究が
有機溶媒を用いているが、これは環境負荷が
行われている。しかしながら、コーティング
大きいことや、作業環境の安全性の点から、
膜の密着性が悪いこと、乾燥等の後工程で膜
最近では分散媒に水を用いたEPDについても
がはがれたり、あるいは膜と基板との熱膨張
研究報告が増加しつつある。しかしながら水
係数の違いから、熱処理等で剥離が生じたり
系のEPDでは、粒子の分散状態を制御するこ
して問題となっている。さらに有機溶媒を用
とや乾燥時のコーティング膜の剥がれを抑制
いた研究が大部分で、仮に優れたコーティン
することなど、解決しなければならない課題が
グ膜が得られたとしても、作業環境の問題、
多い。そこで本研究では、水系のEPDプロセ
廃液処理のコストの問題が発生する。
スにおいて、乾燥時の膜の剥がれやクラック
そこで本研究では、環境負荷のより小さい
発生を抑制し、均一で緻密なコーティング膜
水系のスラリーを用いてEPDを行い、金属に
を金属板上に作製することを目的として、ス
セラミックス微粒子をコーティングするプロ
ラリーの調製条件及びコーティング方法の工
セスを確立することを目的とする。水系EPD
夫を検討した。
プロセスの確立に向けて、緻密で均質なコー
本研究ではモデル系として、市販の鋼板上
ティング膜を得るためのスラリー調製条件、
にナノメーターオーダーのシリカ粒子をコー
さらに乾燥時にコーティング膜の剥離がない
ティングすることとした。原料粉体として
スラリー調製条件を明らかにする。
は、アエロジルシリカ(平均粒子径12nm、密
度2.2g・c m -3)を、分散媒には蒸留水を用い
概 要
た。シリカ粒子は広範囲のpHでマイナスに帯
近年めっきに用いられる重金属イオンの環
電するため、通常のpH調整のみでは陽極側に
境への悪影響という懸念から、金属めっきに
膜が形成されるが、電気分解による陽極の溶
代わる技術としてセラミックスコーティング
出によって膜の形成に悪影響を与えることに
が注目されてきた。その中でも電気泳動堆積
なる。そこで本研究ではシリカ粒子を陰極に
法(Electrophoretic Deposition、以下EPDと
コーティングするためにカチオン性の界面活
略す)を用いてセラミックス微粒子を金属に
性剤であるポリエチレンイミン(以下PEIと略
コーティングする技術は、原理が単純で装置
す)を添加した。ナノ粒子の分散効果を考慮
が比較的簡単な構造ですむことや、非常に複
して使用するP E Iは比較的低分子量のものを
雑な形状の金属部品等にセラミックスをコー
使用した。結合剤としてポリビニールアルコー
ティングする場合でも、均一に電界をかける
ル(以下PVAと略す)を添加して、硝酸水溶
ことができれば、電極の形状によらず一定厚
液を用いてスラリーのpH調整をし、最終的な
みのコーティングを行うことができること、
コーティング用のスラリーとした。EPDの条
あるいは比較的コストがかからないプロセスで
件(電圧、電極間距離、コーティング時間)
あることなど多くの利点があり、実用化が期
を一定にして各スラリーで E P D を行い、電
待されている技術である。
流値の経時変化を測定するとともに、乾燥後
現在EPDを用いたセラミックスコーティン
の粒子付着量を測定した。また得られたコー
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Annual Report No.21 2007
ティング膜の様子を光学顕微鏡で観察した。
P E Iの添加量を変えてコーティングを行っ
た結果、PEIを添加しなかったスラリーにおい
ては、陰極ではなく陽極に粒子の付着があり、
錆の発生が観察された。PEI添加量55mgでは
陰極に付着が得られ錆の発生は抑制できたが、
膜と基板の密着性が不十分で乾燥後に膜が
剥がれ落ちた。これに対してPEI55mg、PVA
60mgを添加したスラリーでは、剥がれの無い
比較的均一な膜をEPDで作製することができ
た。以上の結果から、P E Iの分子量及び添加
量を適切に調節してスラリー調製を行えばシ
リカナノ粒子を陰極にコーティングできるこ
とがわかった。さらにPVA添加量を調整する
ことによって、乾燥時の膜の剥がれを抑制す
ることができた。しかしながら基板と膜の密
着性は十分とは言えないため、今後の研究に
おいて結合剤を工夫するなどして改善してい
く必要がある。
−本文 以下割愛−
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