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ツルマメとダイズの進化多様性

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ツルマメとダイズの進化多様性
2
20
01
13
3
((H
H2
25
5))年
年
1100 月
月 99 日
日
1
18
8号
号
□ツルマメとダイズの進化多様性
京都大学大学院 人間・環境学研究科 相関環境学専攻教授 瀬戸口浩彰先生
瀬戸口先生は、植物の系統分類学や系統地理学を基盤と
した進化多様性に関する研究、植物の保護に関する研究を
行っておられます。
講座部マイスターでは、5 年前から講座の講師として、
“琵
琶湖湖岸に生きる植物の由来”、“高山植物”、“渓流沿いの
植物”、“琉球列島の植物”と普通では聞けない貴重なお話
及びこれらに関係するフイールドでの学習で非常にお世話
になっています。
昨年は、今、現在、式年
遷宮で話題になっていま
す伊勢神宮の内宮の森”に
入らせて戴き、講座生全員が心より感謝いたしております。
今年は、5 年前に在籍していた講座生は、2 回目になりますが、
芦生の森~トロッコ道沿いの渓流コース~を予定しております。
本日の講座ですが、日頃、醤油、味噌、豆腐、納豆と日本人
になくてはならない食材ですが、先生からテーマを戴いたとき、
ダイズの花
大豆を知っているようで何も知らない植物であることを認識し
まして、今日のお話を楽しみにしております。
マメ科-ダイズ属-ダイズ種 大豆(黄大豆)、青大豆、黒大豆
←ツル豆(ノマメ)
ササダ属-アズキ種
小豆、大納言、白小豆
ソラマメ属-ソラマメ種
エンドウ属-エンドウ種
青エンドウ、赤エンドウ、
白エンドウ
他に
ツル豆の花
ラッカセイ属、インゲンマメ属、ヒヨコマメ属、ヒラマメ属
ミヤコグサとダイズ野生種は、光の質と量をセンシングする
ことによって、生育地の緯度に適した開花のタイミングを測っている。
研究課題:「ミヤコグサとダイズ野生種における環境適応に関わる遺伝子基盤の解析」
植物の花芽形成は、典型的な「複合的光応答」であることが知られている。植物は発芽した場
所から移動することが出来ないために、光の質と量をセンシングすることによって、生育地の緯
度に適した開花のタイミングを測っている。本研究は、野生集団の花芽形成が緯度によって顕著
な違いを呈することが知られているマメ科のミヤコグサとダイズの野生種:ツルマメを研究対象
に設定した。ミヤコグサは長日植物であり、同一条件下で育成すると播種から開花まで 46 日弱
(沖縄県)から 90 日(東北・北海道)までの幅を示す。また、
ダイズ・ツルマメは短日植物であるが、ミヤコグサと同様に幅広
い開花日数を示す。両種ともにモデル植物・重要な栽培植物とし
てゲノム基盤が整っている。2 年間の研究期間に、光受容体、慨
日時計機構、花成誘導に関連する遺伝子群を対象にして「光シグ
ナルによる複合的光応答」に関わる遺伝子を特定することを本研
究は目的とする。南北に長い日本列島を場にして、緯度傾度にと
もなう光環境傾度の中で、野生植物がどのような遺伝子(複合)
を適応させて制御しているのかを解明することが出来る。開花の
タイミングの「ずれ」は生殖的隔離をもたらすので、換言すると、
種分化を促進する遺伝子制御機構を解明する一端を担うことに
なる。(瀬戸口先生の[Lab Homepage]より)
短日植物の限界暗期は緯度によって異なるのか?
まず極端な例を考えてみましょう。夏の北極圏では
白夜が続くので、花生に一定時期の暗期を必要とする
短日植物は花を咲かせることができません。北極圏よ
り緯度がやや下がって、短時間ながら夜がある地域で
は、短日植物でも限界暗期が短いものなら花を咲かせ
ることができます。
このように考えると、短日植物では、高緯度に分布
するものほど限界暗期が短い(限界日長が長い)ほう
が花を咲かせやすく、次世代を種とし
て残せるという意味では、生存に有利
だと考えることができます。
ツルマメ
ダイズ
高緯度地方ほど夏の気温は低いう
えに、夏から秋にかけての気温の低下
が早くなります。そこで生長に都合の
悪い低温の季節が来る前に花を咲か
せて子孫を残すほうがよいので、限界
暗期は短い(限界日長が長い)ほうが
有利です。逆に低緯度地方では、気温
が高いために長く生長を続けること
ができます。この場合は、花を咲かせ
る時期を遅くするほど個体が大きくなり、その分だけ
花の数、種子の数を増やせると思われます。そこで限
界暗期は長い(限界日長が短い)ほうが有利になるわ
けです。
(日本植物生理学会編「これでナットク!植物
の謎 0PART2」(講談社)より)
一口メモ
1.ツルマメから生まれた大豆を環境により生育地を
それぞれに分けるアメリカの開発にはすごいと思っ
た。除草剤をまいて新品種を作りそれで牛が育ってい
ツルマメ
くことを考えると、アメリカの牛肉はやはり食べれな
い。
2.瀬戸口先生の話は毎回わかりやすく、興味が持て
るように話して頂くので理解が出来る。大豆の進化に
おいて人間が大きくかかわっている。
3.花が咲く仕組みを詳しく教えてもらった。すべて
の植物に通じる緯度や日長で開花時期が違うことなど
面白い。最後の福島の話が特に興味深かった。
4.今日の瀬戸口先生のツルマメと大豆の進化多様性
の講義とても面白かったです。アメリカの大豆・・・
日本の物に比べて小さいですね・・・。来年家庭菜園で大豆
育てて観察してみたいと思います。
5.大豆の種類の多さに驚いた。アメリカの国土を有効利用
して産業とする為の努力?執念?にも。日本も個人、地域に
任せないで国全体で組織化して研究を推進して行かないと、
輸入に頼るばかりになる。
6.ツルマメと大豆の講座、面白かったです。開花には日長
が重要なポイントであること、またアメリカの牛はやっぱり
食べるのはやめておこうと思いました。
7.植物が環境に順応して成長することが理解出来た。福島
の話も大変興味を持つことが出来ました。ブラジルが大豆の
生産世界一と知りませんでした。
8.大豆の品種改良を通じて、植物が環境に順じて、生き残る為に進化しているのが良くわかり
ました。またユーモアがあり、難しい内容が分かりやすく聞けました。
9.ペリーが来日して大豆を持ちかえったという話。鯨油から大豆へと油の供給源を求める国家
戦略と言うのがあったとはすごい話だ。「国家百年の計」は大事だ。
10.大豆の進化多様性、アメリカの農務省(USDA)、ペリーはたくさんのミッションを持ってや
ってきていた。遺伝子型の多様性が用意されている。まとまりませんが最初から最後まで、し
っかり受講出来て、大変満足な気持ちでいっぱ
いです。ありがとうございました。先生、ハマ
ダイコンのセシウム実験、無理をなさらないで
ください。
11.遺伝子の不思議さに興味を持った。でもやっ
ぱり、遺伝子組替え大豆はどこか変なのではな
いか。アメリカの USDA と言うのをはじめて知っ
て、すごいところだなあと感心した。
12.大豆について今まで知らなかったことがたく
さんあったのが分かり、ちょっと感動です。植
物は不思議がいっぱい。ペリーの頃からアメリ
カが大豆に取り組んでいたとはねー。アメリカ
の先取性に改めて関心、非常に面白い内容でし
た。
13.話の内容は半分も理解できなかったが、先生独特の
語りはそれだけで今日参加して良かったと思う。年間
数回に増やして頂きたいほどである。
14.植物としての「ダイズ」の話を聞き、緯度によって
異なり、開花に至る道のりは複雑な経路をたどってい
る事が判った。いろいろな遺伝子が突然変異としてお
こった多様性を認識した。
15.アメリカの大豆生産実態、13品種の話を聞き、ア
メリカの研究に掛けるスケールの大きさに改めて脱帽
です。
16.同じ植物でも気温、日照等の環境でずいぶん成長の
仕方が異なるのだなあ?
17.瀬戸口先生のお話はいつも楽しく、わかりやすく、
知らない世界に引き込まれます。ペリーの来日の頃か
ら歴史的な話はロマンを感じます。
18.ダイズが生育地の光によって開花時期が影
響を受けて、北米で13の品種、日本で7~
8種に分かれているとは知らなかった。
19.大豆の先祖がツルマメとのこと、現在もツ
ルマメは元気に生育している事が不思議な植
物と思われました。
20.お話がいろんなところに行っても、それが
又勉強になり、わかりやすく広い範囲の授業
だったと思います。
21.これからは大豆→アメリカンビーフを想像
したり、ペリー来航を思ったり、いろいろ考え
させられます。
22.瀬戸口先生による大豆の進化多様性について
勉強できてよかったです。
23.大豆の話はシーボルトからペリーの話、アメ
リカの牛のエサ、大豆ミールの話、開花の遺伝
子の話など、大変興味深く聴講しました。
24.ダイズは多様な用途のある有用植物であるが、
ツルマメから進化したダイズをこんなに多様
にしたアメリカは大したもんだ。
25.アメリカ農務省の息の長い取り組み感動した。
植物の環境への適用の為の進化を長い年月を
かけて行われてきたことが良くわかった。
26.いつも使っている大豆製品のルーツの一部が
わかりました。遺伝子組み換えとかけ合わせに
よる新品種の開発とどこで分別できるのだろ
うか?
27.身近で話題の多いダイズで、ツルマメの品種
改良の話も興味深かった。アメリカがいち早く
目をつけ戦略的にさらなる品種改良に成功し
ている話はすごいなあと思うが、油のとり方な
ど、聞くとやはり恐ろしいものを感じた。いつ
もむずかしいこともわかりやすい説明してく
ださるので毎回楽しみです。ハマダイコン、う
まくいくといいですね。
ダイズは,生育場所の緯度:光環境(日長や
光質)に応じて開花のタイミングを顕著に示す
典型的な作物です・・・
28.ツルマメが大豆の原種とははじめて知りまし
た。以前、山で枝豆のついた植物をみたことも
あり、それがツルマメということがわかりまし
た。実物を見る事が出来てよかったです。
29.大豆の歴史がわかりもっと好きになりました。
たんぱく質も油も多く、イソブラボンも摂取出
来て女性の見方ですね。先生が楽しそうに話し
てくださりありがとうございました。遺伝子は
すごい、アメリカもすごい。又、19 日楽しみ
にしています。
30.ツルマメ、はじめてです。昔から採集、研究
されていたことに驚きました。
31.野生のツルマメを見た事がなく、どういう環
境で育っているのか、興味があります。
32.やさしい語り口で本当に楽しそうに話される
先生の講義を聞いているとこちらまで気分が
良くなってきました。アメリカが東アジア原産
のダイズを、品種をかえて大量生産しなければ
ならないことと、遺伝子組み換えの問題をどう
考えたらいいのでしょうか?
33.いつも通り、植物に関して多様な知識を与え
て下さった講義に感謝しています。
34.「ダイズは光環境によって開花時期が大きく
影響を受ける」というのは植物だからそういう
ものだろうと思いつつ、しかし実感として知ら
なかった。知らないことってたくさんあると改
めて思う。
35.ダイズの原種がツルマメということを教えて
頂きました。今度、じっくり両者を観察してみ
ます。
1854 年 ミッションのひとつが、ダイズ・ツル
マメの収集
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