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第6章 新エネルギーの利用可能性

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第6章 新エネルギーの利用可能性
第6章 新エネルギーの利用可能性
6―1 北見市で活用が期待される新エネルギー等
(1)北見市の賦存状況から見て活用が期待される新エネルギー・省エネルギー
北見市で賦存量が比較的多く、その有効活用が期待される新エネルギー(再生可能エネルギ
ー)
・省エネルギー(リサイクルエネルギー)を、以下に整理する。
○新エネルギー(再生可能エネルギー)
・日射量の多さを反映した“太陽エネルギー”
・内陸性の気候条件を反映した“雪氷熱エネルギー”
・農業地帯の特性を反映した家畜ふん尿・農業廃棄物等による“バイオガスエネルギー”
・地中熱・下水排熱を利用した“ヒートポンプ(温度差熱利用)
”
・し尿・浄化槽・下水汚泥による“バイオマスエネルギー”
○省エネルギー(リサイクルエネルギー)
・オホーツク圏の中核都市としての経済・社会活動の特性を反映した“ごみエネルギー
(焼却熱利用、暖房・給湯等)
”
表6-1-1 新エネルギー(再生可能エネルギー)
区分
①
太陽光
発電
②
太陽熱
利用
利用技術
エネルギー賦存量
エネルギー利用可能量
変換効率
年間発電量
太陽光発電
太陽エネルギー量
(日平均)
12.86MJ/m2日
変換効率
単位面積当たりの年間集熱量
ソーラーシステム
③
風力発電
風力発電
年平均風速
④
マイクロ水力発電
中小水力
最大落差(無加川)
留辺蘂-北光社間
2.125m/s
125m
⑤
バイオマス
木質バイオマス
農業廃棄物の直接
燃焼
厨芥ごみを原料とする
バイオ燃料の燃焼
乳用牛:
肉用牛:
養 豚:
採卵鶏:
廃木材発生量
(林地残材、製材所廃
材ほか)
農業廃棄物発生量
稲わら:
麦わら:
もみがら:
厨芥ごみ発生量
生活系厨芥類:
事業系厨芥類:
動物性残渣:
45% 従来の小規模な家庭用給湯の利用か
ら、事業用などの大規模な利用に発展
2.11×103MJ/㎡ する可能性もある。
風車効率
年間発電量
40%(半径30m) 北見市全域で年間を通じて風速が小さ
い。可能性があるのは山地の尾根、海
2.41×107MJ 洋上,一部の風況のよい場所など。
水車効率
発電効率
年間発電量
70% 装置の規模に対して発電量が小さいこ
85% とから、用途を十分に検討する必要が
3.01×10 MJ ある。
ふん尿発生量
家畜ふん尿のメタン発
酵によるガス燃焼
(バイオガスエネル
ギー)
摘要
北見市内では最大の賦存エネルギー
19% であり、今後はメガソーラーや集光太陽
9
9.31×10 MJ 光発電、複合電源・蓄電池との協調運
用が期待される。
4,289.73t
905.36t 発熱量
180.85t
868.70t
発熱量
4,866.81t
7
賦存量は他のエネルギー源と比べると
尐ないが、発電した電力をマイクログ
リッドを介して需要側に供給することが
5.70×106MJ できれば、クリーンで扱いやすい分散
電源になる。
循環型社会を構築する再生可能エネ
ルギーであり、産業や雇用の創出にも
4.87×107MJ 貢献できるが、原材料の安定的確保が
課題。
3,087.69t
1,795.20t 発熱量
291.03t
10,829.00t
発熱量
3,984.10t
668.46t
49
流通ルートを構築して、安定した供給
量を確保することができれば、クリーン
6.04×107MJ で扱いやすい分散電源になる。
賦存量が多く、流通ルートを構築してコ
1.19×108MJ -ジェネレーションあるいは暖房用熱源
としての利用が考えられる。
表6-1-1(続き) 新エネルギー(再生可能エネルギー)
区分
⑥
雪氷熱
利用
利用技術
エネルギー賦存量
雪氷熱利用貯蔵施設
地中熱ヒートポンプ
年間累積積雪深
エネルギー利用可能量
298㎝
雪密度
単位面積当たりの冷熱利用量
北見市全域にシステムを
宅地面積の30%に設置
設置した場合の採熱量
3.755×10 9MJ 年間採熱量
摘要
0.3t/㎥ 冷凍・冷蔵を要する漁業施設や、農産物
2.99×10 2MJ/㎡ の貯蔵施設への導入が期待される。
北見市の場合、補助暖房の設置が必要
2.07×10 8MJ であるが、戸建て住宅から大規模施設ま
で適応可能である。
⑦
温度差熱
利用
ヒートポンプによる
下水熱利用
⑧
し尿
・浄化槽
・下水汚泥
下水処理量
し尿・浄化槽・下水汚泥
(メタン発酵ガス利用、コ
年間汚泥発生量
ンポスト化)による発電・
暖房
58,428m3 下水ヒートポンプ熱回収
8,822㎘ 発熱量
1.01×10 9MJ
賦存量が多く、処理場の処理能力に影響
を与えない程度にヒートポンプの熱源とし
て利用できる。暖房、ロードヒーティングな
どに有効である。
発電用の燃料、もしくは暖房用の熱源とし
1.96×10 5MJ て利用も可能。
表6-1-2 省エネルギーの手法(リサイクルエネルギー)
区分
①
廃棄物
発電
利用技術
エネルギー賦存量
ごみ焼却熱による
発電、暖房・給湯、熱利 ごみの年間焼却量
用
エネルギー利用可能量
31,423t 再利用熱量
摘要
地域冷暖房や廃棄物発電の導入が期
2.40×108MJ 待される。
注)ごみ焼却熱の利用可能量には一部市外での発生ごみを含む
(2)北見市の地域条件等から見て今後検討すべき新エネルギー・省エネルギー
北見市の地域条件等から見て今後検討すべき新エネルギー(再生可能エネルギー)
・省エネル
ギー(リサイクルエネルギー)を、新エネ法施行令(平成 20 年改正後)に基づく分類表により、
次ページに概略的に整理する。
北見市に関しては、
①太陽光発電、太陽熱利用、木質バイオマス、雪氷熱利用、温度差熱利用(地中熱ヒート
ポンプ、下水排熱ヒートポンプ等)などの新エネルギー(再生可能エネルギー)
②都市の種々活動から発生する都市ごみやし尿・浄化槽・下水汚泥等を活用するリサイク
ルエネルギー
③燃料電池を含めたコージェネレーション等の従来型エネルギーの高効率利用技術
が有望な新エネルギーとして挙げられ、これらを組み合わせたハイブリッドシステム、さらに
は新エネルギーに蓄電技術や長期温・冷蓄熱システム等の技術を組み合わせた効率的で多様な
利用技術の展開が期待できるものと考えられる。
50
51
再
生
可
能
エ
ネ
ル
ギ
ー
○
大型・中型風力発電、小型・マイクロ風力発電
中小水力発電
風力発電
中小水力
(1,000KW以下)
家庭廃棄物
メタン発酵ガス利用、コンポスト化
家畜ふん尿
△
海洋温度差熱発電
○
○
○
○
△
メタン発酵ガス利用、コンポスト化、熱焼却熱利用
燃料利用
木質系
し尿・浄化槽
・下水汚泥
メタン発酵ガス利用、燃料化、コンポスト化
廃液系
○
○
○
○
○
○
波力発電
排泄物
メタン発酵ガス利用、コンポスト化
固形燃料化(RDF)、固形燃料発電・熱利用
厨芥
紙・木
ヒートポンプによる海水、地中熱、河川水、下水処理水利用
雪冷房・氷室、雪冷房・冷蔵システム、アイスシェルターシステム、人工凍土システ
ム
アルコール燃料利用、バイオガス利用、木質ペレット、チップ
バイオマス由来廃棄物 工場・事業
系廃棄物
のエネルギー利用
温度差熱利用
新 バイオマス熱利用
エ
ネ バイオマス燃料製造
ル
ギ 雪氷熱利用
ー
バイオマス発電
地熱
地熱発電、温泉水発電
(バイナリー発電に限る)
○
太陽熱温水器、ソーラーシステム、土壌蓄熱
太陽熱利用
○
○
新エネ法
対象
太陽光発電、メガソーラー発電
利用形態
太陽光発電
新エネ法施行令に基づく区分
(平成20年改正)
表6-1-3 新エネ法施行令の対象と北見市での可能性(1)
△
△
○
○
○
△
△
△
○
○
○
△
△
△
○
○
北見市にお
ける可能性
基礎研究が必要
事業化について検討が必要。
実用化に向けては、原材料の
安定的確保が課題。
エネルギー源となる廃棄物の
収集・分別・保管方法について
検討が必要
地中熱などが有望
事業化について検討が必要
事業化について検討が必要。
実用化に向けては、原材料の
安定的確保が課題。
メガソーラー発電所誘致の可
能性を検討すべき
より高度な太陽熱集熱器を検
討すべき
大型・中型風力発電の設置に
最適な高所が尐ない
基礎研究、及び利用可能河川
等の調査が必要
基礎研究、及び地下資源の蒸
気・熱水・温泉水の温度条件
(高温)の詳細調査が必要
備 考
52
省エネ
ルギー
手法
化石原料由来廃棄物発
電・熱利用・燃料製造
分 類
革新的なエネルギー高度利用
(新エネルギーから外れるが、政
策支援の重点投入・普及支援が
図られるもの)
分 類
変電所廃熱
ヒートポンプによる熱多目的利用
発電、熱多目的利用
工場・発電所
廃熱
工場・事業系
廃棄物(廃タイ
廃棄物利用
発電、廃プラスチック油化、その他
ヤ・廃プラス
チック系)
廃熱利用
ゴミ焼却発電、熱多目的利用
ゴミ焼却廃熱
×
×
×
○
△
△
○
北見市にお
ける可能性
新エネ法
対象
利用形態
×
○
○
蓄電、温冷熱、その他
○
○
○
システム
○
○
○
○
燃料電池発電、燃料電池コージェネレーション
石油コージェネレーション
○
新エネ対象で
北見市にお
はないが、政
ける可能性
策支援対象
クリーンエ
電気自動車、天然ガス自動車、メタノール自動車、ハイブリッド自
ネルギー自
動車、燃料電池自動車、その他
動車
燃料電池
コージェネ
レーション
天然ガスコージェネレーション
利用形態
表6-1-3 新エネ法施行令の対象と北見市での可能性(2)
事業化について検討が必要。
実用化に向けては、原材料の
安定的確保が課題。
熱利用の多目的化について基
礎研究が必要
工場・発電所・変電所個別ケー
スにおける事業可能性につい
て詳細調査が必要。また、熱利
用の多目的化について基礎研
究が必要
備 考
様々なエネルギーシステムが
対象となる
電気スタンドなど、インフラの整
備が検討課題
寒冷地仕様の検討を要する
発電と排熱回収を合わせた総
合効率が70~80%と高いもの
もあり、導入について検討が必
要。ただし、ランニングコスト面
で原油価格の高騰等の影響を
直接受けやすい
発電と排熱回収を合わせた総
合効率が70~80%と高いもの
もあり、導入について検討が必
要
備 考
6―2 導入が想定される新エネルギー等
6-2-1
直ちに導入可能な新エネルギー技術
(1)太陽光発電
①概要
太陽光発電システムは一般に導入時の初期費用が高額であるが、最近では国内外のメーカー
間の競争によって性能向上と低価格化、さらに施工技術の普及が進んでいる。
太陽光発電はクリーンエネルギーの代表であり、さらにシステムの運用および保守経費が安
価であるため、世界的に需要が拡大している。また、昼間の電力需要のピークを緩和する効果
もあり、低炭素社会の成長産業として期待されている。
一方、太陽光発電の発電コストは他の電源の数倍とも言われる。電力量あたりのコストでは
価格競争力が不足するため、現時点では普及促進に際して助成を要する。2011 年の世界市場で
の太陽電池セルメーカー上位 3 社のシェアは次の通りである。
1)サンテックパワー(中国)
、8.1%
2)ファーストソーラー(中国)
、7.9%
3)インリー社(中国)
、6.4%
出典:IMS Research
上位 5 企業のシェアの合計は 33.8%で、日本のシャープは 6 位である。
図6-2-1 住宅用太陽光発電システムのイメージ
53
②新しいシステムの可能性
発電した電力を蓄電池に貯めることで、外部送電網に接続しない独立タイプのシステムや、
夜間や悪天候時の発電量低下時も太陽光発電のみで電力を供給するシステムの開発が進んでい
る。
さらに、
最近ではホームコージェネレーションと組み合わせるシステムも販売されており、
民生部門での環境負荷の低減について大きく寄与する技術として期待されている。
③二酸化炭素排出量の削減効果
太陽光発電の住宅への導入により、国内の平均的な家庭で1年間に排出する CO2 量の 3 割以
上を削減できると考えられている。
④課題
年々増加する民生部門での CO2 排出量の低減に寄与する技術として期待されている。現在の
ところ設備費用が高く、助成金による補助や、平成 24 年 7 月 1 日に施行された、
『電気事業者
による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法』による、電力の全量買取制度がな
いとさらなる拡大は難しい。
54
⑤太陽熱発電システムの例
太陽光を集熱したり集光したりすることで,高密度のエネルギーを得る。これらの高密度エ
ネルギーを用いて蒸気を発生させて発電用タービンを運転する技術や,高効率で光-電気変換す
る技術が各国で実用レベルに至っている。今後は国内でも、これらの技術が急速に普及すると
予想されるが,設置スペースが確保しやすく日照時間が長いことから,北見市での導入の可能
性を調査する必要がある。
図6-2-2 日本、太陽熱発電システム
図6-2-3 ドイツ、太陽熱発電システム
55
図6-2-4 スペイン、太陽熱発電システム
図6-2-5 アメリカ、太陽熱発電システム
56
図6-2-6 アメリカ、集光型太陽電池
57
(2)メガソーラー発電(太陽光発電)
①概要
一般家庭や事業所の屋根や屋上などに取り付けられている太陽光発電は、おおむね 3kW から
5kW 程度の発電能力であるが、これを大規模にして、1 ヵ所で 1,000kW~20,000kW(1MW~20MW)
という発電能力を持つ発電所をメガソーラー発電と呼ぶ。
このように太陽光発電を 1 カ所に集約することで太陽光発電の普及が見込まれ、さらに補助
金を含めた経済効果により、企業や自治体による直営が広がる可能性がある。2020 年度までに
全国約 30 地点(電力会社 10 社合計)で約 14 万 kW のメガソーラー発電が計画されており(2011
年 10 月現在)
、今後さらに大きく増加する勢いである。
一般的な住宅の電力使用量は、平均で 0.4~0.8kW 程度である(冷暖房負荷、融雪などを除く)
が、最大時には 3kW を超えることもある。理論的には 1MW のメガソーラーを導入することで、
約 300 世帯の電力供給が可能となる。
②二酸化炭素排出量の削減効果
平成 21 年度に環境省から発表された電気事業者別二酸化炭素排出係数による、北海道電力の
CO2 排出係数は、423g-CO2/kWh である。1 住宅の 1 日での電力消費量は、平均して 10kWh ほど
であるので、年間では 3,650kWh とすると、1MW のメガソーラーを市内に導入した場合には、
年間で 550~650 トンの CO2 排出量の削減に貢献すると考えられる。
③商用運用の可能性
二酸化炭素排出権取引および電力会社による電力買取制度により、商用運用を実現できる可
能性がある。ただし、CO2 排出権の買取価格や電力会社の買取価格の設定により、事業の収支は
大きく影響を受ける。
④課題
メガソーラーの導入には送電網の設置を要する。
58
図6-2-7 メガソーラー発電
大規模電力供給用太陽光発電系統安定化等実証研究(稚内サイト、合計容量 5MW)
出典:NEDO ホームページ(写真提供:北海道電力(株))
図6-2-8 メガソーラー発電の実証研究例
59
表6-2-1 <参考>計画公表済のメガソーラー発電
<参考>計画公表済のメガソーラー発電所(2012年2月末現在、0.5千kW未満の計画を除く)
電力
北海道
東北
概算導入量
既運開量
運転開始
(千 kW)
(千 kW)
時期
1.0
1.0
2011 6月 伊達ソーラー発電所
5.0
5.0
2007 3月 稚内メガソーラー
1.5
1.5
2011 12月 八戸太陽光発電所
地点数
備考
2
3
2.0
2012 年度 仙台火力発電所構内に建設
(※1)
1.0
東京
中部
3
2013 年度 原町火力発電所構内に建設
7.0
7.0
2011 8月 浮島太陽光発電所
13.0
13.0
2011 12月 扇島太陽光発電所
10.0
10.0
2012 1月 米倉山太陽光発電所
7.5
7.5
2011 10月 メガソーラーたけとよ
1.0
1.0
2011 1月 メガソーラーいいだ
3
8.0
北陸
2014 年度 静岡県静岡市に建設(自社所有地)
1.0
1.0
2011 3月 志賀太陽光発電所
1.0
1.0
2011 4月 富山太陽光発電所
4
1.0
2012 年度
1.0
石川県珠洲市に建設
(自社所有地・珠洲市所有地)
2012 年度 福井県坂井市に建設(自社所有地)
(※2)
10.0
10.0
2011 9月 堺太陽光発電所
18.0
関西
0.5
2013 年度 福井県大飯郡おおい町に建設
0.5
2014 年度 福井県大飯郡高浜町に建設(調整中)
3.0
2011 12月 福山太陽光発電所
2
3.0
四国
1
九州
2
(※3)
2014 年度 山口県宇部市に建設
4.3
2.0
2010 12月 松山太陽光発電所の一部が運転開始
3.0
3.0
2010 11月 メガソーラー大牟田発電所
3.0
4.0
沖縄
2013 年度 長崎県大村市に建設(発電所跡地)
4.0
2010 10月 宮古島メガソーラー実証研究設備
2
1.0
計
(※4)
大阪府堺市に建設(シャープとJV)
4
3.0
中国
未定
26
111.3
2011 年度 沖縄県名護市に建設(名護市所有地)
70.0
※1:平成22年度供給計画記載。東日本大震災の影響により見直し検討中。
※2:2010年10月に一部運転開始。
※3:2020年度までに4.3千kW全て運転開始予定。
※4:「JV」~共同企業体
出典:電気事業連合会 計画公表済のメガソーラー発電(2010.10.31)を一部加筆修正
60
(3)風力発電・ウインドファーム
①概要
風力発電は風の力を利用した発電方式のことで、再生可能エネルギーのひとつである。この
発電方式は、地球環境の保全、安定的なエネルギー供給の確保、国産エネルギーとして有力な
だけではなく、国内だけでも膨大な資源量を有する。最近では多数の風力発電装置を同じ地域
に設置する集合型風力発電が増加しており、このようなタイプの風力発電のことをウインドフ
ァームという。
北見市の場合には山の尾根部と海岸線で比較的強い風が得られるが、沖合の海上では平均
7~8m/s 年の風が得られる。流氷の対策を要するものの、海上でのウインドファーム(洋上風
力発電所)については実現の可能性が高い。風速の変化によって電力出力が大きく変化するこ
とが、商用電力系統との連系時の大きな課題である。
しかしながら風力発電は以下のような新たな展開も予想されている。
1)水電解による水素・酸素ガスの製造装置としての利用(発生したガスは、燃料電池や水
素添加エンジンなどの燃料とする)
2)蓄電による電力出力の安定化
3)風力発電以外の再生可能エネルギーや新エネルギーとの連携によるローカルな分散電源
4)規模の小さなマイクロ風力発電による、住宅や施設、設備用の電源の開発
②二酸化炭素排出量の削減効果
風力発電での CO2 排出はほとんどが装置の製造時に生じるものである。
風力発電による発電量当たりの温室効果ガス排出量は、小から中規模の装置 で 25~
34g-CO2/kWh、大型の装置では 10g-CO2/kWh 程度とされている。平成 21 年度に環境省から発表
された電気事業者別二酸化炭素排出係数による、北海道電力の CO2 排出係数は 423g-CO2/kWh で
あるので、風力発電の導入により 1/12~1/42 の CO2 排出量となる。
③課題
一方、風力発電の普及に伴って、
1)出力変動を伴うために商用電力系統との連系が難しくなる
2)落雷や強風によるブレード(回転羽根)などの破損
3)ブレードに鳥が衝突して死亡するケース(バードストライク)
4)用地の確保
5)景観を損なう
6)リサイクル技術が未開拓
という課題が明らかになっている。さらに、風況によっては、見込み通りの発電量を得ること
が難しい場合もある。
61
図6-2-9 プロペラ式風力発電施設のイメージ
62
引用:全国湾岸風況マップ
図6-2-10 年平均風速分布図
63
(4)中小水力
①概要
概ね数百 kW 以下の水力発電システムを、マイクロ水力発電または小水力発電と呼ぶ。
中小河川、農業用水路、砂防ダム、浄水場、下水処理場、工場排水、高層建築物の水系、さ
らにはトイレの洗浄水等、多様な水流から電力を作り出すことができる。現在の日本国内では
大型のダムに適する用地は、そのほとんどが既に開発されており、今後は上で述べた小容量の
発電システムの開発がクリーン電源として期待されている。200kW 未満の発電設備については、
保安規定、主任技術者、工事計画届出などの一部または全てが不要となっている(平成 23 年 3
月 14 日改正 電気事業法)
。マイクロ水力発電は、このように小さな水源で比較的簡単な工事
で導入できる。北見市には、山間部での中小河川、農業用水路、上下水道施設、ビル施設など
があるため、これらを開拓すると電力を作り出すことができる。
システムを設置する水源の水量が予測できれば、比較的安定したエネルギーとなる。多数の
システムを市内に設置して、一括して管理する事業所があれば導入できる可能性が高い。ただ
しマイクロ水力発電に用いる水車や発電機には様々なものがあり、水源ごとに適したシステム
を設計する必要がある。
②二酸化炭素排出量の削減効果
マイクロ水力発電での CO2 排出は、ほとんどが装置の製造時に生じるものである。
河川、用水路などの水の
流れや落差から生じる水
力を利用して
小容量の発電を行う。
図6-2-11 マイクロ水力発電一例(上掛け水車)
③課題
送電網の設置や設備費、
維持費などを考慮すると、採算性や経済性は低いものと予想される。
64
(5)地熱発電
①概要
地熱発電は再生可能エネルギーの一種で、主に火山活動による地熱を熱源とする発電方式で
ある。
地熱により生成された水蒸気や熱水を取り出して、その蒸気を蒸気タービンに供給すること
で発電機を駆動する。通常、非常に安定した出力が得られ、発電時の温室効果ガス排出量はほ
ぼゼロである。
地熱が得られる地域は国定公園や国立公園内に多くあることから、法改正などにより資源開
発の検討が行われている。
北見市では、端野自治区、留辺蘂自治区、常呂自治区などに温泉地があり、今後、これらの
場所などでの導入の可能性調査・研究の対象とする。
②発電方式の種類
適切な場所をボーリングすると、高圧蒸気や高圧熱水が得られる。ただし、ボーリングする
場所によって蒸気に含まれる熱水の量が異なるため、以下のような地熱発電の方法がある。
1)熱水しか得られない場合
○バイナリーサイクル
水よりも沸点の低い熱媒体を、熱水により沸騰させタービンを回す方式。
2)得られた蒸気に多くの熱水が含まれる場合
○フラッシュサイクル
地下から得られた蒸気に多くの熱水が含まれている場合には、熱水を除いて蒸気のみ
をタービンに供給する。このような方式をシングルフラッシュサイクルと呼び、日本の
地熱発電所での主流の方式である。さらに、蒸気を分離した後の熱水からさらに蒸気を
得て、この蒸気をさらにタービンに供給する方式をダブルフラッシュサイクルという。
このシステムの設備は複雑化するが、シングルフラッシュサイクルに比べて地熱の有効
利用となる。シングルフラッシュサイクルは、道内の森発電所で採用されている。
3)得られた蒸気にほとんど熱水が含まれない場合
○ドライスチーム
得られた蒸気にほとんど熱水を含まない場合には、簡単な湿度制御を行った後に蒸気
をタービンに供給することで発電を行う。
65
③発電方法の概要
1)一般的な地熱発電方式
出典:独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
「地熱開発の現状」2008.11 を加筆修正
図6-2-12 一般的な地熱発電方式について
ⅰ)生産井
・地中深くの地熱貯留層にある地熱流体(熱水や蒸気、その混合物)を地表に導き噴出させるた
めの井戸。
・深さは、地熱貯留層の分布により左右されるため、1 本 1 本異なるが、我が国で最も深い井戸
は森発電所の 3,250mであり、
最も浅い井戸は葛根田 2 号機や鬼首地熱発電所の 350mである。
ⅱ)還元井
・気水分離器で抽出された熱水及び冷却塔にて液体に戻された蒸気を地下深くに還元する井戸。
地熱貯留層を枯渇させないため、また、熱水中に含まれる有毒成分を地上へ排出させないため
に設置される。
・深さは、生産井への還元を念頭に掘削されるため、1 本 1 本異なるが、我が国で最も深い井戸
は滝上発電所(大分県九重町)の 2,811mであり、最も浅い井戸は八丈島地熱発電所の 82mであ
る。
66
ⅲ)気水分離器
・生産井から噴出した熱水と蒸気を分離する円筒形の設備。蒸気はタービンへ、熱水は還元
井に送られる。設備の高さは 10~15m程度。
・各生産基地において 1 箇所ずつ設置されることが多い。
ⅳ)復水器
・タービンを通過した蒸気を冷却水を用いて温度を下げて凝縮し、温水へと変える。
・発電所建屋内の蒸気タービンに接続され、屋外に設置される。
ⅴ)冷却塔
・復水器から送られてくる温水を施設内部の上部から散布し、空気と接触させることで温度
を下げ、冷却水とする設備。
・屋上にファンが設置され、冷却の過程で蒸発した水蒸気は、蒸気に含まれるガス成分(硫
化水素等)とともに大気中へ上方拡散される。
・出力 25,000kW級の発電所の例では、縦横約 17×54m、高さ約 19m(屋上のファンを含む)
の施設規模である。
2)バイナリ―サイクル方式
②
蒸発器
変圧器
<気化>
タービン
①
生産井
発電機
④
凝縮器
③
還元井
<液化>
水または空気
P
低沸点媒体
(ペンタンなど)
⑤
出典:独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
「地熱開発の現状」2008.11 を加筆修正
図6-2-13 バイナリ―サイクル方式について
67
ⅰ)生産井
・地下から熱水を地表に導くための井戸。
・我が国の発電所で実用化されているのは八丁原発電所(2,000kW、大分県九重町)のみであ
り、井戸の深さは 1,700mである。
(霧島国際ホテルにも実験施設があり、220kWの発電がな
されている。鹿児島県牧園町)
ⅱ)蒸発器
・熱水により間接的にペンタンなどの低沸点媒体を加熱し、蒸発させるための機器。
・気化した媒体はタービンに送られ、発電機を回して発電する。
ⅲ)還元井
・媒体へ熱を伝え終わった熱水を地下へ戻すための井戸。
ⅳ)凝縮器
・タービンを通過した蒸気を、水または空気に間接的に接触させることで液化させる。
ⅴ)循環ポンプ
・液化した媒体を循環させ、蒸発器へ送る。
④我が国の地熱発電所
・現在、我が国においては、事業用 13 発電所、自家用 5 発電所の計 18 箇所に発電所が存在し、
その多くは、主に蒸気の生産や還元を行う蒸気供給事業者と主に発電を行う発電事業者の共
同で運営されている。
・事業用としての認可出力の最大は八丁原発電所の 112,000kW、最小は八丈島地熱発電所(東
京都八丈島)の 3,300kWである。認可出力の合計は約 54 万 kWである。
・最も運転開始年が新しいのは八丈島地熱発電所であり、今から 13 年前の平成 11 年 3 月であ
る。
⑤課題
安定した熱源の探索とそのコストに大きなリスクを要する。また、温泉地のそばに設置す
る場合は、既存の事業者への影響を回避する必要がある。
68
表6-2-2 地熱発電所一覧
<地熱発電所一覧>
発電所名
所在地
森
北海道森町
きよかわ
秋田県鹿角町
澄川
発電部門
蒸気供給部門
認可出力
北海道電力㈱
方式
運転開始
自然公園との関係
50,000 kW
DF
昭和 57. 11
50,000 kW
SF
平成
坑口は公園外だが十和田八幡
東北電力㈱
7.
3 平国立公園の地下部へ傾斜掘
三菱マテリアル㈱
松川
岩手県松尾村
くず ね た
岩手県雫石町
葛根田
うえ
たい
上の岱
―
削
東北水力地熱㈱
23,500 kW
DS
昭和 41. 10 十和田八幡平国立公園内
東北電力㈱
50,000 kW
SF
昭和 50.
3
東北水力地熱㈱
30,000 kW
SF
平成
8.
3
28,800 kW
SF
平成
6.
3 栗駒国定公園内
15,000 kW
SF
昭和 50.
3 栗駒国定公園内
65,000 kW
SF
平成
7.
5 只見柳津県立自然公園内
十和田八幡平国立公園内
東北電力㈱
秋田県湯沢市
東北水力地熱㈱
おにこうべ
宮城県鳴子町
やないづにしやま
柳津西山
福島県柳津町
八丈島
東京都八丈島
東京電力㈱
3,300 kW
DF
平成 11.
3 富士箱根伊豆国立公園内
おおたけ
大分県九重町
九州電力㈱
12,500 kW
SF
昭和 42.
8 阿蘇くじゅう国立公園内
55,000 kW
DF
昭和 52.
6
55,000 kW
DF
平成
6 阿蘇くじゅう国立公園内
2,000 kW
B
27,500 kW
SF
平成
8. 11
30,000 kW
SF
平成
8.
3 霧島屋久国立公園内
30,000 kW
SF
平成
7.
3
鬼首
大岳
はっち ょうばる
八丁原
たきがみ
滝上
電源開発㈱
東北電力㈱
奥会津地熱㈱
大分県九重町
九州電力㈱
2.
平成 18.
4
九州電力㈱
大分県九重町
―
出光大分地熱㈱
おおぎり
大霧
九州電力㈱
鹿児島県霧島市
日鉄鹿児島地熱㈱
やまかわ
山川
鹿児島県指宿市
九州電力㈱
事業用 計 13 発電所
527,600 kW
―
―
大沼
秋田県鹿角市
三菱マテリアル(株)
9,500 kW
SF
昭和 49.
6 十和田八幡平国立公園内
杉乃井ホテル
大分県別府市
(株)杉乃井ホテル
1,900 kW
SF
平成 18.
4
九重観光ホテル
大分県九重町
(合)九重観光ホテル
990 kW
SF
平成 10.
4 阿蘇くじゅう国立公園内
たけ
熊本県小国町
廣瀬商事(株)
(休止中) 50 kW
SF
平成
100 kW
B
ゆ
岳の湯
霧島国際
ホテル
鹿児島県牧園町
富士電機システムズ(株)
大和紡観光(株)
自家用 計
―
3. 10
平成 18.
―
8 霧島屋久国立公園内
5 発電所
12,540 kW
―
合計 18 発電所
540,140 kW
―
*発電方式 DS…ドライスチーム、SF…シングルフラッシュ、DF…ダブルフラッシュ、B…バイナリー
引用:環境省
69
我が国の地熱発電の概要(H23.6)
引用:環境省
我が国の地熱発電の概要(H23.6)
図6-2-14 地熱発電所の位置
70
(6)バイオマスエネルギー
①概要
バイオマスは生物量を意味するが、最近では、地球温暖化対策や循環型社会の構築に寄与す
るエネルギー源として脚光を浴びている。
バイオマスエネルギーは、従来から薪や炭として広く使われてきたものの、現在ではバイオ
エタノールやバイオディーゼル、ペレット燃料などとして加工された燃料も利用されている。
バイオマスは有機物であるため、燃焼させると CO2 が排出される。しかしながら、この排出
ガス中の炭素は、そのバイオマスが成長する際に光合成で大気中から吸収した CO2 に由来する。
このためにバイオマスの使用では、全体として大気中の CO2 を循環させており、増加はしない
と考えられる(カーボンニュートラルという考え方)
。また、バイオマスエネルギーの元を辿る
と、
植物に取り込まれた太陽エネルギーであるため、
一般に再生可能エネルギーとされている。
②バイオマスの種類
エネルギー利用が可能なバイオマスの種類は非常に多いが、採算性の点で優位性が不明確な
ものも多い。エネルギーを取り出そうと考えられている主なバイオマスとしては、ゴミや生ゴ
ミ(紙くず、建設廃材、食品廃材)
、家畜糞尿、黒液、し尿・浄化槽・下水汚泥、植物廃棄物(稲
わら、麦わら、籾殻など)
、林地残材(間伐材や被害木など)
、資源作物、飼料作物、デンプン
系作物などがある。
③利用方法
ガス化(バイオガスなど)
、液化(バイオアルコールなど)、固形化(ペレットなど)して、
発電や暖房用の燃料とする方法や、直接燃焼した際に出てくる熱を発電や暖房に利用する方法
などがある。
一般的に知られている利用方法としては、家畜等糞尿によるメタンの精製、木質廃材などの
セルロース系からエタノールを抽出、廃食用油などによる自動車用燃料、廃棄物固形燃料や木
質ペレットなどの直接燃焼、木質バイオマスによる発電、木質バイオマスのガス化による水素・
合成ガス・メタノールの生成、 製紙パルプ製造工程で出てくる黒液による発電などである。道
東地域では、木質ペレット式ボイラー、チップボイラー、木質バイオマス発電、バイオガスの
製造、家畜等糞尿によるメタンの精製などがすでに行われている。
④課題
年間を通して供給量と需要量のバランスが安定していること。また、経済性を考慮したバイ
オマス燃料の利用方法を研究する必要がある。
71
図6-2-15 バイオマス資源の活用
図6-2-16 国産木質ペレットストーブ一例紹介
72
(7)雪氷熱エネルギー
①概要
貯雪氷庫に天然の雪氷を貯蔵することで、冷蔵や冷房を行う際の冷熱源を雪氷熱エネルギー
という。また、寒冷な外気を取り入れて製氷し、その冷熱を利用するものもある。
雪氷熱エネルギーは新エネルギーとして位置づけられており、公共施設や農業施設をはじめ
として、各種の施設への導入が進んでいる。雪や氷の冷熱エネルギーは、農作物などの保存に
適した温度(0~5℃)が容易に得られ、さらに雪は適度な湿度を持っているので、農作物を乾
燥させずに保存することができる。
雪氷熱エネルギーを用いたエネルギープラントは、大量の雪から冷水を取水して熱交換器で
冷房エネルギーに変換するなど(多様なシステムがある)、比較的安価で容易に導入できると考
えられている。一方で、貯雪氷庫の設置に伴うコストの高さが課題となる。
また、最近では、苫小牧から東京に就航するフェリーの貨物室の空き(年間 32 万トン)
を利用して、夏季に大量の冷熱を必要とする首都圏に、雪氷熱エネルギーを供給する試
みもされている。
冬
夏
冬期に雪氷を貯蔵することで
冷熱エネルギーを 保存する
夏季の野菜の貯蔵や冷房等に
冷熱エネルギーを 活用することができる
図6-2-17 雪氷熱エネルギーの利用について
73
②北見工業大学における雪氷熱エネルギーの研究事例
74
③課題
すでに多くの実績があり、技術的な課題よりも経済的に見合うかどうかを調査する必要がある。
資料:経済産業省北海道経済産業局
COOL ENERGY 4
(雪氷熱エネルギー活用事例集 4)(増補版)(平成 22 年 6 月)を一部修正
図6-2-18 雪氷熱エネルギー活用施設 導入状況
75
表6-2-3 雪氷熱エネルギー導入事例(北海道)
雪氷熱エネルギー導入事例(北海道)
№
1
2
市町村
稚内市
北海道大学
4
沼田町 沼田町
沼田町米穀低温貯留乾燥調製施設
(スノークールライスファクトリー)
利雪型低温籾貯蔵施設
(利雪庫2号)
生涯学習センター
(併設:雪の科学館)
沼田町 沼田町
種類
風 水 然
ン
循 循 対
数
自然冷熱利用貯蔵庫
沼田町 沼田町
沼田町 沼田町
5
施設名
事業主体
3
冷 冷 自
ト
設置者・
養護老人ホーム「和風園」
雪氷
環 環 流
80 ○
設
置
№
市町村
2005
34
札幌市
セイコーエプソン株式会社
札幌ソフトセンター
雪
1500
○
1996
35 赤井川村 有限会社どさんこ農産センター
雪
1000
○
1998
36 ニセコ町
雪
419
2001
雪
○ ○
497
2002
○
施設名
事業主体
年
冷 冷 自
ト
設置者・
種類
風 水 然
ン
循 循 対
数
雪冷房システム
雪
雪氷室貯蔵施設
雪
環 環 流
70 ○ ○
340
設
置
年
2001
○
1996
牧野工業株式会社
コンテナ式貯蔵庫(J-BOX)
雪氷
336 ○
2000
37 ニセコ町
牧野工業株式会社
パイプアーチ型雪氷利用貯蔵庫
雪氷
256 ○
2002
38
東京空港局新千歳空港事務所・
雪山方式冷熱供給システム
雪
120000
○
2009
冷水循環式雪冷房
雪
327
○
2009
1788
○
2008
千歳市
セントラルリーシングシステム㈱
6
沼田町 個人住宅
7
沼田町 個人店舗
8
M邸
西尾生花店
沼田町 沼田町
沼田式雪山センター
沼田町 沼田町
沼田町就農支援実習
農場椎茸発生棟
10
美唄市 美唄市農業協同組合
米殻零温貯蔵施設
「雪蔵工房」
11
美唄市 美唄市農業協同組合
氷室貯蔵試験研究所
9
12
美唄市 美唄市農業協同組合
利雪型予冷庫
事務所兼個人住宅
雪
6
○ ○
2002
39
千歳市
雪
6
○
2005
40
平取町
予冷庫併設製氷設備
氷
2007
41 苫小牧市 トヨタ自動車
北海道(株)
冷房施設
雪
42 洞爺湖町
潜熱利用型野菜貯蔵実験
施設
雪
雪
1202 ○
雪
雪
10000
86
平取町農業協同組合
洞爺氷室研究会
750 ○
2006
70
○
1993
○
2008
2000
43 洞爺湖町 洞爺湖町
雪蔵野菜貯蔵施設利雪型
貯蔵庫
1999
44 洞爺湖町
洞爺湖佐々木ファーム・アイスシェルター
氷
170 ○
2006
2008
45 せたな町 三洋技研工業
株式会社
自然エネルギー開発研究場
北檜山アイスシェルター実験棟
氷
80 ○
2000
○
2000
46
安平町 (株)北海道マエタ
雪冷房実験研究施設
氷
90 ○
2000
300 ○ ○
1999
47
名寄市
道北なよろ農業
協同組合
雪室型もち米低温貯蔵施設
「ゆきわらべ雪中蔵」
雪
1300
○
2002
100
1999
48
名寄市
道北なよろ農業
協同組合
農産物出荷調整理雪施設
雪
1160
○
2003
3600
雪
2007
○
株式会社デンソークレクトロニクス
○
75
雪
48
雪
15
○
○
個人施設
13
美唄市 有限会社中川空調
14
美唄市 社会福祉法人南静会
介護老人保健施設
「コミュニティホーム美唄」
15
美唄市
賃貸マンション
「ウエストパレス」
16
美唄市 美唄市
老人福祉施設ケアハウス・ハーモニー
雪
121 ○
2002
49
清水町
十勝清水町農業協同組合
自然エネルギー利用施設(氷室)
雪
300
○
1993
17
美唄市 美唄市
美唄市交流拠点施設
ピパの湯ゆ~りん館雪
雪
306 ○ ○
2003
50
厚真町
とまこまい広域農業協同組合厚真支所
農産物貯蔵施設
氷
25
○
1988
18
美唄市 有限会社貞広農場
玄米貯蔵コンテナ
冷水循環保冷施設
雪
2008
51
厚真町
共和山菜組合
農産物貯蔵施設
氷
18
○
1990
19
愛別町 株式会社土谷特殊
農機具製作所
アイスシェルター
氷
1988
52
厚真町
厚真町アスパラガス生産振興会
農産物貯蔵施設
氷
25
○
1990
20
浦臼町 有限会社神内ファーム二十一
植物生産工場
氷
2000 ○ ○
2001
53 むかわ町
とまこまい広域農業
協同組合穂別支所
野菜貯蔵施設
雪
486
○
1991
21
旭川市 北海道
北方建築総合研究所
雪氷 雪70 ○ ○
氷100
2002
54 むかわ町
とまこまい広域農業
協同組合穂別支所
玄米低温貯蔵施設
雪
920
22
旭川市
国策建設株式会社
宮脇書店旭川豊岡店
雪
390
2004
55
帯広市
帯広畜産大学
ヒートパイプシステム
23
旭川市
旭川市科学館
サイパル
雪
660
2005
56
帯広市 株式会社土谷特殊農機具製作所
有限会社永桶
雪冷房実験施設
雪
85
滝川市
株式会社サークル鉄工
零温倉庫アイスタワー
氷
16
25
士別市
士別市農畜産加工株式会社
共同貯蔵施設
雪
450
畜産冷房施設「雪鶏」
雪
13
27 岩見沢市 岩見沢市
岩見沢市高齢者福祉センター
○
160 ○
24
26 岩見沢市 北海道岩見沢農業高等学校
○
雪
○
○
○
○
○
2000
57
帯広市 株式会社土谷特殊農機具製作所
1996
58
帯広市
2001
59
池田町 十勝池田町農業協同組合
2004
○ ○
60
網走市
農業生産法人
テクノ・ファーム
モナリスクアイスシェルター
カールプレックスおびひろ・
アイスシェルター
HP型実用凍土低温貯蔵庫
小豆の氷熱利用貯蔵
凍土
氷
氷
網走市
網走寒冷エネルギー利用
システム
凍土
氷
石狩市 株式会社大果
氷室式低温貯蔵施設
雪
302
○
1994
61
網走市
網走市
自然氷利用長期野菜貯蔵
施設
29
札幌市 北海道大学
氷利用農産物長期貯蔵
実験施設
氷
67
○
2001
62
別海町
別海町森林組合
苗木低温貯蔵庫
雪
30
札幌市 清水建設株式会社北海道支店 単身・独身寮
「アミティエ宮の森」
雪
40
○
1997
63
釧路市 釧路食糧備蓄基地研究会
氷冷熱エネルギー貯蔵実験施設
氷
○
2003
64 倶知安町 倶知安町
しゃっこい野菜蔵
65 倶知安町 倶知安町
六郷馬鈴薯倉庫
28
31
札幌市 札幌市
ガラスのピラミッド
雪
1580
32
札幌市 札幌市
都心北融雪槽活用雪冷熱
エネルギー供給システム
雪
1000
○
2002
33
札幌市 札幌市
山口斎場
雪
2500
○
2006
―
○
48 ○
雪氷 雪75
氷200
凍土
1996
○
2000
2007
○
―
500
―
○
2006
○
2006
○
1989
68 ○
―
1987
1989
○
1988
1990
12 ○
2003
雪氷
1.5
2003
雪
270
○
○
2003
資料:経済産業省北海道経済産業局 COOL ENERGY 4(雪氷熱エネルギー活用事例集4)(増補版)(平成22年6月)より、北海道についてのみ抜粋
76
(8)温度差熱利用
①地中熱ヒートポンプシステム
1)概要
ヒートポンプは、温度の低い方から高い方へと熱を運びあげる機器の総称である。ちょう
ど水を低い所から高い所に押し上げるポンプのように、熱を低温から高温へ移動させるとこ
ろから、このような名前で呼ばれている。
この際にポンプの役割をする部品が圧縮機であり、圧縮機は電動モーターで運転する必要
がある。ただし電動モーターの消費電力を 1.0 とすると、ヒートポンプから得られる熱は、
高いものでは 4.0 を超える。即ちヒートポンプを導入すると、電気ヒーターで得られる熱の
4 倍もの熱を得ることができる。また、エアコンに見られるように、運転モードを切り替え
ることでヒートポンプでは温熱だけでなく冷熱も得ることができる。
2)熱源
ヒートポンプを高い効率(COP:成績係数)で運転するには、できるだけ利用温度に近い温
度の熱源を探す必要がある。
一般的なエアコンでは室外機を建物の外に置くことで、外気を熱源としている。しかしな
がら、北見市での冬季の外気温が-15℃で、エアコン(ヒートポンプ)を設置している部屋を
25℃に維持しようとすると、25℃-(-15℃)=40℃もの温度差に対して熱を移動させる必要があ
る。一方、年間を通してほぼ一定温度(例えば 5℃)の地中の熱を熱源として使うと、25℃
-(5℃)=20℃の温度差に対して熱を移動させると良い。即ち地中の熱を使うと、圧縮機の運転
に要する電動モーターの電気消費量が大きく低減する。
上で述べた例のようにヒートポンプの導入効果については、適切な熱源の有無が大きく影
響する。北見市での冬季の利用を考えると、できるだけ高い温度(0℃以上)の熱源を開拓で
きたなら、空気熱源に比べて大きな経済的メリットと環境負荷の低減が見込まれる。
3)二酸化炭素排出量の削減効果
灯油燃料やガス燃料による給湯、暖房、融雪に比べて、ヒートポンプによる熱供給は一般
的にクリーンである。灯油燃料やガス燃料の課題は、排出ガスに含まれる温室効果ガスや有
害物質をそのまま大気に放出することである。一方、電動式ヒートポンプの場合は、火力、
水力、原子力から得られた電力を混合して使用するため、CO2 の排出量は化石燃料を直接燃や
す場合に比べて低いものとなる。また、蓄熱槽と組み合わせるとさらに経済性が向上する。
4)課題
適切なヒートポンプの熱源を利用することができるか。
77
図6-2-19 ヒートポンプの原理
78
②有機ランキンサイクル方式による発電
太陽光集器や温泉熱、低温排熱などによる比較的低温の熱を用いて、蒸気タービン(膨張器)
による発電を行うことができる。
汽力(蒸気)火力発電所では化石燃料を燃やした熱で蒸気を作り、これをタービンに供給す
ることで発電を行う。一方、太陽光集器や温泉熱、低温排熱などによる比較的低温の熱では、
水から大量の蒸気を発生するだけの温度差を得られないことがある。そこで水から蒸気を発生
させるのではなく、沸点の低い流体(有機媒体、アンモニアなど)を水の代わりに使うことで、
大量に蒸気を発生させる。この蒸気をタービンに供給することで電力を得る方法である。
クリーンな地熱発電および太陽光の集光集熱による発電に使われる技術であるので、今後広
い普及が予想される。
③課題
安定した熱源の確保と、高い効率を維持するためのシステムの運用方法の検討。
図6-2-20 太陽光の集光集熱、低温排熱、
温泉熱などによる有機ランキンサイクルの例
79
(9)ホームコージェネレーション
①概要
これまでは主に大規模な工場や建物に導入されていた天然ガスコージェネレーションシステ
ムを家庭用に応用したもので、
「マイホーム発電」の 1 つである。
ホームコージェネレーションには、燃料電池方式の「エネファーム」とガスエンジン方式の
「エコウィル」の 2 種類がある。ここでコージェネレーションとは、電力と熱の 2 つのエネル
ギーを需要者に供給するシステムを意味し、火力発電では利用できない排熱を、ホームコージ
ェネレーションでは給湯や暖房などに利用することができる。このためエネルギー効率が非常
に高く、火力発電では平均でおよそ 41%(最新機種は 60%)なのに対して、ホームコージェネ
レーションでは 80~90%に達する。
②二酸化炭素排出量の削減効果
1)家庭用ガスエンジン給湯・暖房機システム「エコウィル」
2006 年から各ガス会社より発売されており、ガスエンジンを搭載した発電ユニットとその
排熱を回収してお湯をつくる貯湯ユニットで構成される。従来システム(火力発電と給湯機)
と比べ、一次エネルギー消費量(化石燃料)を 28%、CO2 排出量を 39%削減できる。
2)家庭用燃料電池コージェネレーションシステム「エネファーム」
2009 年から一般販売が開始され、家庭での地球温暖化対策の切り札として期待されている。
このシステムで得られる発電量(0.75kWh)と熱回収量(0.94kWh)を従来型のシステムでま
かなった場合と比較すると、一次エネルギー消費量を 35%、CO2 の排出を 48%削減すること
ができる。
ホームコージェネレーション
図6-2-21 ホームコージェネレーション
③課題
最近では太陽光発電と組み合わせるシステムも販売されており、民生部門での環境負荷の低
減について大きく寄与する技術である。しかしながら現在のところ設備費用が高く、助成金に
よる補助がないと大きな普及は難しい。
80
6-2-2
導入に時間を要すると思われる新エネルギー技術
(1)マイクログリッド(小規模な分散電力網)
①概要
複数の分散型電源や電力貯蔵システムなどを組み合わせてエネルギーネットワークを構成し、
需要状況に合わせてシステムの出力を制御することで、電力(および熱)の自給自足を可能と
する小規模の電力供給網をマイクログリッドという。
既存の大規模発電所からの送電電力に全く依存しない独立タイプやほとんど依存しないタイ
プ、連系するタイプなどがある。
電力供給源としては既存の分散型電源(太陽光発電、風力発電、バイオマス発電、コージェネ
レーションなど)があるが、今後はさらに燃料電池、小型エンジン、その他の新エネルギー機器
の導入についても十分に可能性がある。
北見市などの寒冷地では、電力供給だけではなく熱供給についても考慮する必要がある。そ
こで分散電源の排熱を、温水網などを介して需要者へ供給する方式を検討すべきである。この
場合、電力と排熱を利用することから、システム全体のエネルギー効率は非常に高くなる。
②マイクログリッドと情報通信技術
マイクログリッドでは、エネルギー需要側(住宅、オフィス、学校など)と供給側(電力側)の
バランスが常にとれるように、情報通信技術を利用して管理する。
エネルギー需給バランスを高い信頼度で達成するには、蓄電装置や蓄熱装置の導入が有効で
ある。この際には、エネルギー需要特性の予測や気象予測情報を活用することで、温室効果ガ
ス排出量の削減やエネルギーコストの低減を最大に達成することができる。
③マイクログリッドの導入目的
マイクログリッド技術の導入目的は、既存の電力網に対して以下のように考えられている。
1)供給信頼度や電力品質の維持(停電時間や頻度などの低減)
2)建設コストや建設期間の短縮(特に人口密度の低い地域)
3)燃料コストの低減
4)環境負荷の低減
5)災害時のエネルギーの確保
④マイクログリッド技術の今後
国内では発電、送電、配電の電力事業は、地域の電力会社が独占して実施することになって
いる。そのためマイクログリッド技術は、海外での普及が先行すると予想される。しかしなが
ら、原子力発電の見直しや、エネルギーの地産地消への期待、自然エネルギーの拡大、雇用創
出などの点から、国内法制度の見直しがなされる可能性がある。
81
図6-2-22 マイクログリッドの概要図
82
(2)水素エネルギー利用
①概要
水素を燃やすと、熱エネルギーと水のほかには有害ガスを一切発生しないことから、将来の
クリーンエネルギーとして期待されている。
水素は単独ではほとんど地球上に存在せず、水や有機化合物(化石燃料の石炭、石油、天然ガ
ス、アルコールなど)の形で存在している。水素をエネルギーとして利用する方法としては、水
素エンジンで燃焼させるほか、燃料電池により酸素と反応させて電気を得る方法がある。現在
では、燃料電池自動車用の水素ステーションが、首都圏、関西地区、九州地区などに合計十数
カ所設置されている。
②自然エネルギーによる水素生成技術
水や有機化合物から水素を得る際には、通常大きなエネルギーを要する。水素をどのように
して安く大量に製造するかが問題であり、二酸化炭素を排出せずにクリーンに生成しようとす
るならば、太陽エネルギーなどの自然エネルギーの利用が適切であると考えられる。
太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーも出力は常に変動するものの、水の電気分解に
これらを用いることでいったん水素を製造したなら、極めて安定なエネルギーとして使えるよ
うになる。そこで、水素生成のエネルギーを再生可能エネルギー(藻類や光触媒も含む)によ
って賄う技術が調査・研究されている。さらに、運転中に温室効果ガスの排出量が尐ない、原
子力発電の余剰電力による水素製造も検討されている。
③水素エネルギーの課題と将来性
水素は大変に軽いガスであることから、輸送コストの増加や設備の大型化が課題となる。そ
こで現在では、水素の輸送および貯蔵の技術開発が広く実施されている。特に燃料電池自動車
用の高圧車載タンクや、季節間貯蔵用の有機ハイドライド技術などが実用化に向けて開発され
ている。水素エネルギーが高密度で貯蔵できるようになると、蓄電池に代わるエネルギー貯蔵
方法となる可能性もある。
図6-2-23 燃料電池を利用したコージェネレーションのイメージ
83
(3)潮流発電・潮汐発電・波力発電
①概要
潮流・潮汐発電では、潮汐による潮高差などから生じる海水の流れを電力に変える発電方法
である。
潮汐は地球、月、太陽の位置関係などからその大きさが決まるため、潮流・潮汐発電は比較
的正確に予想することのできる安定した自然エネルギーである。一方、波力発電は開発が十分
に進んでいない。
潮流・潮汐発電では水の密度が大きいために、風力発電と比べると小さな装置で大きなエネ
ルギーを得ることができる。国内では黒潮や海岸部の湖口での高速潮流などが見られることか
ら、有力な地産地消エネルギーとして利用できる可能性がある。潮流・潮汐発電は発電の際に
二酸化炭素を出さないクリーンエネルギーである。
②導入例
潮流発電はイギリスや米国での例が多く、さらにスコットランドでは 400MW の大規模な潮流
発電所 MeyGen の建設が計画されており、2013 年までに 5MW、2014 年までに 15MW が建設され
る。韓国の済州島(さいしゅうとう)では大規模な再生可能エネルギーの導入を行っており、2012
年完成予定の 500kW 級の波力発電と大型潮流タービンによる潮力発電施設を建設している。
日本では鳴門海峡、津軽海峡、関門海峡などで水平型水車による試験が行われており、北九
州市などでは 2011 年度から関門海峡で実証実験を開始している。
③課題
貝の付着や機材の塩害対策等に維持管理費がかかり、耐用年数も短いことが予想される。ま
た、漁業権や航路などの制約から、設置場所を慎重に選ぶ必要がある。
図6-2-24 カナダ ファンディ湾での 20MW 潮汐発電
(Fergal O Rourke etc. ,Tidal Energy Update 2009 , Applied Energy より引用)
84
図6-2-25 発電用タービンの例
図6-2-26 発電用タービンの例
(Fergal O Rourke etc. ,Tidal Energy Update 2009 , Applied Energy より引用)
85
(4)バイオマスエンジン発電機(例:スターリングエンジン)
①概要
間伐材や廃材などの生物資源(バイオマス)を細かく粉砕するなどして、これを直接燃焼す
ることで高温の燃焼ガスを得る。その燃焼ガスをスターリングエンジンに供給することで、発
電機を運転させることができる。このため、バイオマスをガス化させて燃焼させる必要がなく、
設備の簡素化に伴う設備コストの低減ができる。
バイオマスの利用については、一般に生産地と消費地の距離が離れていると、経済性が悪化
すると考えられている。しかしながら、バイオマスエンジン発電機をバイオマスの生産地付近
に導入して、電力網を介して送電することができたならこの問題はなくなる。
②二酸化炭素排出量の削減効果
バイオマスはカーボンニュートラル(燃焼で排出した CO2 は木や植物に吸収されるため、CO2
は循環するだけで排出量には含まれないという考え方)であるため、環境負荷の影響が非常に
小さい。送電網の問題が解消されたなら、山間部の多い北見市では有効な分散電源となると予
想される。
③商用運用の可能性
100kW 以下の比較的小・中規模のシステムが開発されている。
二酸化炭素排出権取引および電力会社による電力買取制度により、商用運用を実現できる可
能性がある。ただし、CO2 排出権の買い取り価格や電力会社の買取価格の設定により、事業の
収支は大きく影響を受ける。また、北見市での商用運用については、別途、事例検討を行う必
要がある。
④課題
送電網の設置を要する。
燃料ホッパー
煙突
空気吸入口
ドライブシャフト
発電機
冷却シリンダー
燃焼炉
図6-2-27 スターリングエンジンの基本構成
86
写真引用:中部電力「バイオマス利用スターリングエンジン」の試験運転開始
~バイオマス直噴燃焼式小型発電システム55kWの開発~(平成 18 年 6 月 21 日)
図6-2-28 バイオマス利用スターリングエンジン
⑤技術開発の状況
1)2004~2006 年度、
「バイオマス直噴燃焼式小型発電システム55kWの開発」
、中部電力、豊
橋技術科学大学、名古屋大学、NEDO など
2)2011 年度「東京都あきる野市瀬音の湯」、定格出力 35kW(50Hz)、デンマークスターリングエ
ンジン社
3)2005~2010 年度 「里山倶楽部共同研究事業」
、発電出力 0.8kW、NEDO
4)宮崎県では宮崎県木質バイオマス活用ビジョン(平成 16 年度)を策定し、さらに現在では「宮
崎県木質バイオマス活用普及指針」へと発展している。
( http://www.pref.miyazaki.lg.jp/contents/org/kankyo/mokuzai/biomas_vision/page000
60.html)
5)欧州(主に英国)では、1kW 程度の家庭用スターリングエンジンを既に商用生産している。
87
(5)未利用エネルギー
①概要
未利用エネルギーとは自然に存在するもので、これまでにその利用がなされていなかった自
然エネルギーと、生活や生産の結果として生じてほとんど回収されることなく環境中に放出さ
れている熱エネルギーである。
未利用エネルギーの種類としては、1)生活排水や中・下水の熱、2)清掃工事の排熱、3)変電
所や送電線からの排熱、4)河川水や海水の熱、5)工場の排熱、6)地下の冷暖房排熱などがある。
また、利用されていないエネルギーを広く含むことから、自然エネルギーとリサイクルエネ
ルギー(ごみ焼却熱、下水熱、工場等の排熱)を総称したものともいえる。下記で述べるよう
な課題はあるが地産地消エネルギーとして今後様々な取組が行われると予想される。
②未利用エネルギーの課題
未利用エネルギーは一般に、1)広く薄く分布する(低エネルギー密度)、2)時間的変動が大き
いことがある、3)需要地との距離が離れていることが多いなどの課題を持つ。したがって、未
利用エネルギーを有効に活用するには、複数の未利用エネルギー機器をネットワーク化するな
どして、この課題に対応する必要がある。
③期待される北見市での未利用エネルギーの活用例
1)廃止となったトンネル
廃止されたトンネル内では年間を通じて一定の温度に保たれている。そこでこの環境を利
用することで、農作物の貯蔵、ヒートポンプの運転、夏季の冷房用雪氷の季節間貯蔵などが
実現する可能性がある。トンネル内の湿度や設備の維持、輸送コストなどの問題はあるもの
の、経済性をシミュレーションすることで実用化するものと考えられる。
2)低温排熱
住宅や工場、事業所、施設などから排出される概ね 200℃以下の排熱を低温排熱という。
低温排熱は、いたる所から排出されており、その回収方法が大きな課題である。しかしなが
ら、例えば集合住宅やビルなどの業務用空調機の室外機の排気や、高気密高断熱住宅の排気、
ゴミ処理場や下水処理施設の排熱などについては、比較的回収が容易であると考えられる。
低温排熱を潜熱蓄熱材に貯蔵して、需要者へ供給するシステムは古くから検討されていたも
のの、化石燃料や電力により熱を作り出す方法に比べて経済的に不利であったことから、こ
れまでのところ実用は広まっていない。
3)課題
個々の未利用エネルギー技術については、これまで経済的に成立するか否かで決まってい
た。今後もその流れは大きく変わらないと考えられるが、さらに温室効果ガス排出量の低減
効果をコスト計算に考慮する必要がある。
北見市に適応可能な未利用エネルギー技術としては、上で述べた技術のほかにもヒートポ
ンプ、バイオマスエネルギー、熱電発電、河川・海洋エネルギー、雪氷エネルギーなど広く
存在する。
88
6―3 想定した新エネルギー等の評価
(1)評価の視点
前ページまでに挙げた新エネルギー等について、次の3つの視点から北見市における評価を整
理する。
■新エネルギー等導入の3つの視点
①導入可能性
当市の地域特性及びエネルギー需給構造(需要側)
、新エネルギー賦存量(供給側)の調
査結果を踏まえ、導入可能性を評価する。
②経済性
導入コスト、および現時点で考えられるランニングコスト等を踏まえた初期費用の償却
可能性や費用対効果などを評価する。
③波及効果
新エネルギー等の普及にあたって、意識啓発、子供達の環境教育の面から、新エネルギ
ーがもたらす波及効果を評価する。
(2)評価結果
上記の視点に基づく各新エネルギー等の評価結果を、次ページからの表に整理する。
89
90
太陽熱
利用
太陽光
発電
種類
想定される
導入モデル
導入可能性
評
価
経済性
評価項目
【評価の基本的な考え方】 ○:良い(+3点)、△:普通(+1点)、×困難:(±0点)
評
価
波及効果
公共施設への太陽光発電
システム導入(5~10kW)
メガソーラー発電所の誘致
(1,000kW~)
・多くの市民が利用する公共施設におけるPR効
果や、学校等の教育施設での環境意識・環境教
育効果は大きい。
・公共施設等における率先導入は一般世帯・事 ○
業者の普及促進につながる。
・電力会社の電線の有無に関わらず単独で設置
・普及型で設置価格(工事込み)が100万円以下の
・多くの市民が目にする場所の街灯等で利用す
が可能。
ものも増えてきた。コストとしても十分に実用化レ
ることのPR効果は大きく、公共空間における率
・蓄電池を搭載し、充電することにより、曇天・雨 ○ ベルにある。
○ 先導入は一般世帯・事業者の普及促進につなが ○
天日が5日間程度続いても点灯が可能(100%蓄
る。
電時)。
・市内には旧北見競馬場跡地や常呂森林公園な
・再生可能エネルギー全量買取制度等の政府方
・設置に際し、地元企業を積極活用することで、
ど、市街地の比較的近くで大面積の土地利用が
針の動向によっては、経済性の確保が期待でき
地場産業の活性化に寄与する。
可能な市有地がある。
る。
・北見工業大学の知見・ノウハウを活用し、メガ
○ ソーラーの活用研究にも貢献できる。
○
・安定した地盤で、整備された土地状態であるた ○
め、土地造成・基盤整備等の工事期間とコストを
大幅に削減することができる。
・国の補助制度の活用により、導入時の経済性が
向上できる。
・太陽光発電余剰電力が発生した場合には、電力
会社への売電が期待できる。
○
公共施設への太陽熱利用
⑥
ソーラーシステム導入
・施設の熱需要・温水需要とのバランス調整が必
要。
・業務用などの比較的規模の大きい建物への導入
・施設の熱需要・温水需要とのバランスを考慮し
も期待される。
て費用対効果を検討する必要がある。
△ ・熱需要・温水需要の尐ない施設に導入した場合 △
は初期費用の償却に長期間を要する。
△
・太陽熱利用システムは、給水を直接加熱して温
・日本製の太陽熱温水器の設置価格は自然循環
・太陽光発電システムの普及が主流となっている
水にする太陽熱温水器(自然循環式)と、強制循
式で約30~50万円、ソーラーシステムは約100万
なかで、一般的な一戸建て住宅では架設重量等
環する熱媒・蓄熱層等により高度な熱利用が可
円となっているが、近年、低価格の輸入品の販売
を考慮すると太陽光発電システムとの併設は難
能となるソーラーシステムに大別される。
も増加している。
しい。
・家庭用に関してはコストは十分に実用化レベルに
・業務用・産業用施設においては、熱需要・温水
一般世帯、事業者への太陽 ・熱変換効率は50~55%と高く、技術的には一般
⑤ 熱利用ソーラーシステム導 家庭の給湯需要の大半をまかなうまでに達してい ○ ある。
○ 需要とのバランスを考慮して費用対効果を検討 △
る(日射量や設置条件等によって太陽熱によって
・集合住宅や業務用および産業用などの比較的規
する必要がある。
入
つくることができる温水の温度は、冬場で40℃、
模の大きい建物への導入も期待される(近年、建
夏場で60℃を超える)。
材一体型の太陽熱温水器や集合住宅の各住戸の
バルコニーの手摺りに設置可能な太陽熱温水器
も商品化されている)。
④
街灯等への小型太陽光発
③ 電照明灯導入(80~250W
程度)
②
・国の補助制度の活用により導入しやすさが向上
できる。
・発電効率等は個々の敷地条件・立地条件に左
右されるが、太陽光発電余剰電力が発生した場 ○
合には電力会社への売電が期待できる。
3
7
9
9
9
9
総合
評 評価
価 (点)
・市では平成14年度住宅用太陽光発電システム
・一般的に住宅用太陽光パネル3~4kWで約200
・生活に密着した取組であり、市・国の補助金制
導入費補助金制度を創設し、平成21年からの国
万円。
度や余剰電力買取制度(初期費用の償却期間
補助金の再開により、設置が増加傾向にある。
・余剰電力買取制度により、初期費用は10年間ほ
の短縮に効果有り)等の適確な情報提供により、
どで償却可能。
さらなる設置の普及・拡大が期待できるとともに、
一般世帯、事業者への太陽 ・発電効率等は個々の敷地条件・立地条件に左
① 光発電システム導入(3~4 右されるが、平成21年から電力会社による住宅用 ○ ・発電コストは43円/kWhと平成7年に比べ約1/3に ○ 設置拡大により地球温室効果ガスの削減効果に ○
太陽光発電余剰電力買取制度が導入され、設置
低下しているが、火力発電コスト(約7円/kWh)と
寄与する。
kW)
数が増加している。
比較すると、依然として高い。太陽電池パネルの
みならず周辺機器や設置工事・建設費用のさらな
るコスト低下が期待される。
〈新エネルギー〉
■想定される導入モデルとその評価
91
バイオマス
中小水力
風力発電
・現在では風速2m/s程度から発電可能な小型発
・定格出力1kW程度の小型発電機で約200万円、
・環境教育、意識啓発の面で視覚的な効果が期
大型風力発電所(ウインド
ファーム)
○
・山間部であるため市民へのPR効果は小さい
が、道内市町村で中小水力発電を行っていると
△ ころは尐ないため、市外に対するPR効果は高
い。
・装置の規模に対して発電量が小さいことから、
用途を十分に考慮する必要がある。
・冬期間の河川凍結の影響がある。
・自然河川の場合、魚類への影響が大きい。
・設置規模・コストは地点によって大きく異なる。
・一般的には建設コストは160万円/kW程度と、大
△ 規模な水力発電設備に比べ高い。
○
農業廃棄物の直接燃焼利
用
厨芥ごみを原料とするバイ
⑭ オ燃料(メタノール発酵)の
燃焼利用
⑬
残材・廃材・剪定材の直接
⑫
燃焼利用
⑪ 木質バイオマス
・稲わら・麦わら・もみがらの収集方法・運搬コスト
・農業廃棄物等をエネルギー源として利用するこ
が課題。また、それらを保存しておく保管施設等の
とで、市民への循環型社会に対する意識啓発が
△ 確保が課題。
△ 期待できる。
○
・流通ルートを構築して、安定した供給量を確保
することができれば、クリーンで扱いやすい分散
電源となる。
・季節による原料調達の変動が大きく、保管施設
等の整備が必要。
・北見市における賦存量が多く、流通ルートを構
・メタノール発酵を行うため、その施設整備のコスト
・これまで煩わしいものとされてきた厨芥ごみを
築して暖房用熱源やコージェネレーションの熱源
が高額。
エネルギー源として利用することで、市民への循
として利用が可能。
○ ・生活系・事業系の厨芥ごみ、動物性残滓の収集 × 環型社会に対する意識啓発が期待できる。
○
方法・運搬コストが課題。また、それらを保存して
おく保管施設等の確保が課題。
・残材・廃材・剪定材の収集方法・運搬コストが課
・産業廃棄物である残材・廃材等をエネルギー源
題。また、それらを保存しておく保管施設等の確保
として利用することで、市民への循環型社会に対
△
△
○
が課題。
する意識啓発が期待できる。
・産業廃棄物である残材・廃材等をエネルギー源
として利用することで、市民への循環型社会に対
△ する意識啓発が期待できる。
○
・流通ルートを構築して、安定した供給量を確保
することができれば、クリーンで扱いやすい分散
電源となる。
・循環型社会を構築する再生可能エネルギーで
・ボイラー装置・ストーブなど初期投資が高価。
あり、産業や雇用の創出にも貢献できるが、原材
・間伐材・剪定材、残材・廃材の収集方法・運搬コ
料の安定的確保が課題。
○ ストが課題。また、それらを保存しておく保管施設
・ペレット利用で、住宅用ペレットストーブ(製品)
等の確保が課題。
を個人でも導入・利用可能となる。
・北見市における賦存量は他のエネルギー源と比
・バイオガスプラントの設置コストが高額。
・発電した電力をマイクログリッドを介して需要側
べると尐ない。また、実際に収集・確保できる量が
・家畜ふん尿は地域に広く点在・分布しているため
に供給することができれば、クリーンで扱いやす
尐ない。
収集方法・運搬コストが課題。
い分散電源になる。
家畜ふん尿のメタン発酵利 ・環境問題と抱き合わせて効果を実証する必要が
⑩
× ・発酵施設の場合、メタンガスなどを抽出しても残 × ・これまで煩わしいものとされてきた家畜ふん尿 ○
用によるガス燃焼利用
ある。
滓が残り、その処理費用がかかる。
をエネルギー源として利用することで、市民への
意識啓発が期待できる。
・発酵残滓を堆肥として利用することも可能。
無加川(最大落差)へのマ
⑨
イクロ水力発電導入
⑧
・環境教育、意識啓発の面で視覚的な効果が期
待できる。
・設置に際し、地元企業を積極活用することで、
地場産業の活性化に寄与する。
○
・市全域では年間を通じて風速が小さい。
・海岸部で既設道路・既設送電線活用や土地造成
・大型風力発電は年間平均風速が6m/s以上な
が最小限度で済む場合、経済性を確保できる可能
いと経済的に成立しないといわれている。平均風
性がある。
速が比較的大きいのは山尾根部と海岸線で比較
・海上ウインドファーム整備の場合は海上への大
的強い風が吹く一部の場所のみである。海岸部
型風車・送電線・周辺施設設置、流氷対策等の費
や海上ウインドファーム(洋上風力発電所)で送
用負担が大きく、経済性について慎重に検討する
△
電線・関連施設等の整備による自然破壊・野生生 ○ 必要がある。
物への影響が尐なく、地域産業(漁業等)との共
・山尾根部は自然豊かな場所であり道路等もほと
存が可能な場合には導入が可能となってくる。
んどなく、大型風車設置のための道路整備、土地
造成、送電線・関連施設等の整備費用の負担が
大きく、経済性について慎重に検討する必要があ
る。
の償却は難しい。
400W程度のマイクロ発電機で約30万円である。発
待できる。
公共施設への小型発電、マ 電機・マイクロ発電機も実用化され、公共施設・街
⑦
○ 電容量に対して装置費用が高額であり、初期費用 ×
灯等への導入が可能となっている。
イクロ発電の導入
6
5
5
7
3
5
7
6
92
下水熱利用のヒートポンプ
利用
⑱
⑲
○
公共施設への地中熱ヒート
ポンプ導入
・詳細が不明(データや実施例が尐ない)
・発電用の燃料もしくは暖房用の熱源として利用可
△ 同上
△
廃棄物
発電
種類
想定される
導入モデル
導入可能性
評
価
経済性
評価項目
【評価の基本的な考え方】 ○:良い(+3点)、△:普通(+1点)、×困難:(±0点)
・ヨーロッパ・アジアで普及が進んでいる。
・地下設備が主で人目にふれにくいことから、視
覚的な環境教育・意識啓発の効果は期待できな
い。
×
○
△
○
○
評
価
波及効果
5
1
4
3
9
9
7
5
総合
評 評価
価 (点)
・これまで煩わしいものとされてきたし尿・浄化
槽・下水汚泥をエネルギー源として利用すること
△ で、市民への循環型社会に対する意識啓発が期 ○
待できる。
× 不明
×
△
○
により、さらなる設置の普及・拡大が期待できる。
・生活に密着した取組であり、費用対効果や地球
○ 温室効果ガスの削減効果等の適確な情報提供
・エネルギー源としての利用場所がごみ焼却場周
・地域冷暖房や廃棄物発電の熱源として利用可能
・これまで煩わしいものとされてきたごみをエネル
辺に限られる。
であるが、経済性の十分な検討が必要である。
ギー源として利用することで、市民への循環型社
ごみ焼却熱による発電、暖 ・直接熱を利用する方法と、温水プールや温室の
会に対する意識啓発が期待できる。
①
△
△
○
熱源として利用することが可能。
房・給湯、熱利用
・分散電源用の発電燃料として利用可能。
〈省エネルギー〉
能であるが、経済性の十分な検討が必要である。
し尿
し尿・浄化槽・下水汚泥(メ コンポストを大量に運搬するコストを考慮すると、
・浄化槽 ㉑ タン発酵ガス利用、コンポス 利用場所が下水処理場周辺に限られる。
△
・下水汚泥
ト化)による発電・暖房
・メタン発酵ガスを有効利用できる範囲(エリア)や
同上
・基礎研究が必要。特に経済性と導入場所の検
中~大規模の安定した自然
討を要する。
エネルギー電源
・賦存量が多く、処理場の処理能力に影響を与え
・暖房・ロードヒーティングなどに有効であるが、熱
ない程度にヒートポンプの熱源として利用が可
交換器の汚れの問題と経済性の十分な検討が必
能。
要である。
・利用可能場所が下水処理場周辺に限られる。 △
源と比べて経済的メリットと環境負荷の低減が期
待できる。
⑰
・年間を通してほぼ一定程度の高い温度(0℃以
○ 上)の熱源として利用できる場合、空気(外気)熱
・安定した暖房を行えるが、北見市の場合はさら
一般世帯、事業者への地中 に補助暖房を要することが多い。
熱ヒートポンプ導入
⑯
⑮ 雪氷熱利用貯蔵施設
海洋温度差
⑳ 同上
発電
波力発電
温度差熱
利用
雪氷熱
利用
・農産物を適度な湿度をもって低温で貯蔵する利
・貯雪氷庫の設置や、雪氷熱の温度・湿度を常に
・これまで冬季の煩わしいものとされてきた雪・極
用や、冷蔵を要する漁業施設として利用が可能。
一定に保つための設備の設置コストは安くはな
寒をエネルギー源として利用することで、市民へ
施設整備環境・事業環境が整うと導入可能。
い。
の循環型社会に対する意識啓発が期待できる。
・業務用施設や公共施設の夏期の冷房源として
・農産物・水産物等の食品貯蔵の冷熱源とする場
利用可能であるが、北見市において冷房を必要と
合、貯雪氷庫の微・異臭発生を防止するための融
する期間は短いため、費用対効果を検討する必 ○ 雪・解氷後の清掃・消毒等の費用が高額になる
△
○
要がある。
ケースがある。
・首都圏の冷房利用に雪氷を供給する方法が試
みられているが、道内各地に競争相手が非常に
多い。
(3)評価結果のまとめ
総合評価(点)が7~9点の新エネルギーを「北見市において活用が期待できる新エネルギ
ー」として位置づけ、推進プラン及び導入プロジェクトを抽出する。
①北見市において活用が期待できる新エネルギー[総合評価7~9点]
■導入の可能性が高い新エネルギー[総合評価9点]
●太 陽 光 発 電:
・一般世帯、事業者への太陽光発電システム導入(3~4kW)
・公共施設への太陽光発電システム導入(5~10kW)
・街灯等への小型太陽光発電照明灯導入(80~250W)
・メガソーラー発電所の誘致(1,000kW~)
●温度差熱利用: ・一般世帯、事業者への地中熱ヒートポンプ導入
・公共施設への地中熱ヒートポンプ導入
■導入を推進していく新エネルギー[総合評価7点]
●バ イ オ マ ス:
・木質バイオマス
■条件によっては導入が可能な新エネルギー[総合評価7点]
●太 陽 熱 利 用:
・一般世帯、事業者への太陽熱利用ソーラーシステム導入
●風 力 発 電:
・大型風力発電所(ウインドファーム)
●雪 氷 熱 利 用:
・雪氷熱利用貯蔵施設
★太陽光発電、温度差熱利用(地中熱ヒートポンプ)、太陽熱利用、風力発電、雪氷熱利用に
よる新エネルギーの普及を図るための推進プラン及び導入プロジェクトを設定する。
②活用に課題がある新エネルギー・省エネルギー[総合評価3~6点]
●太
陽
熱
利
用:
・公共施設への太陽熱利用ソーラーシステム導入
●風
力
発
電:
・公共施設への小型発電、マイクロ発電の導入
●中
小
水
力:
・無加川(最大落差)へのマイクロ水力発電導入
ス:
・家畜ふん尿のメタン発酵利用によるガス燃焼利用
●バ
イ
オ
マ
・残材・廃材・剪定材の直接燃焼利用
・農業廃棄物の直接燃焼利用
・厨芥ごみを原料とするバイオ燃料(メタノール発酵)の燃焼利用
●温
度
差
利
用:
・下水熱利用のヒートポンプ利用
●廃
棄
物
発
電:
・ごみ焼却熱による発電、暖房・給湯、熱利用
●し 尿 ・ 浄 化 槽 ・ 下 水 汚 泥:
・し尿・浄化槽・下水汚泥
(メタン発酵ガス利用、コンポスト化)による発電・暖房
●波
力
発
電:
・中~大規模の安定した海洋エネルギーを電源として活用
★活用に課題がある新エネルギー・省エネルギーについては、今後の技術開発や政府方針
等を注視し、NEDO などの助成金の活用や、市の財政状況を踏まえながら、実証レベルから
の導入を目指す。
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