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アラブ諸国の環境問題の現状(その3)

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アラブ諸国の環境問題の現状(その3)
情報報告 ウイーン
●アラブ諸国の環境問題の現状(その3)
前月に引き続き、NGO で非営利事業団体である AFED によって編集されたアラブ諸国の
環境問題に関する報告書「ARAB ENVIRONMENT 2008」について AFED の許可を得た上で記載
する。今月は報告書内の「水資源」に関する章を取り上げる。
3. 水資源
3.1 はじめに
現在、世界中の淡水資源は減少しつつあり、需要は利用可能な供給量をはるかに上回っ
ている。世界の水供給量は、当面これと真剣に取り組める十分な量があるものの、消費量
が増加して持続不可能なものとなった時、それは急速に減少することになる。2025 年ま
でに、全ての利用可能な淡水の 90%が消費されると予測されている(Salem, 2003)
。ア
ラブや中東、北アフリカ諸国では、すでに乏しい水資源は人口増加や生活水準の向上で加
速された水需要の増加によってますます希少なものとなっているため、気候変動が水資源
に与える潜在的な負の影響は特に憂慮すべきものである。水問題は、アラブ諸国の成長に
対する唯一かつ最大の阻害要因とみなされている。
水資源は、各国間ないし一国内において不均等に配分されており、特にアラブ地域にお
いては一部で深刻な干ばつないし水不足に直面している。2001 年のベンチマーク報告書
「アラブ世界における環境行動の将来」
(M.K.Tolba その他)では、アラブ諸国における
国民 1 人あたりの年間平均利用可能水量を 2001 年で 977 立方メートルと評価し、これが
2023 年には 460 立方メートルにまで減少すると予測している。国連の定義によれば、国
民 1 人あたりの年間利用可能水量が 1,500 立方メートル未満の場合「水ストレス下にある
国」とされ、さらに同 1,000 立方メートル未満だと「水不足にある国」、同 500 立方メー
トル未満の場合は「深刻な水不足にある国」、と分類されている。2025 年において、イラ
クは「ストレスライン」の上、レバノン、シリアおよびエジプトは「深刻な水不足ライン」
の上、それ以外の全ての国は「深刻な水不足ライン」の下にくると予測されている。2004
年に、M.E.Osman は一部のアラブ諸国における水需給に関するデータをまとめ、2003 年と
2015 年、2025 年における水不足の状況について図 1 のように表している。
- 22 -
情報報告 ウイーン
図 1 アラブ諸国における、水ストレス(1,500 立方メートル/人・年)
、水不足(同
1,000)
、
深刻な水不足(同 500)の状況(棒グラフ左から、2003 年、2015 年、2025 年)
国連は、世界全体で約 11 億人の人々が清潔な水を利用できず、24 億人が適切な下水設
備が利用できていないと概算している(その大半は発展途上国である)
。加えて、世界人
口の 3 分の 1 は深刻な水不足問題に直面している。そして、その数は適切な対策が実施さ
れなかった場合、2025 年までに世界人口の 3 分の 2 まで増加する(McCarthy, 2003)
。こ
うした問題の悪化プロセスは、とりわけ第 3 世界諸国における人口増加、およびそれに付
随する汚染(水使用量と未処理排水の増加)を増加させる農業および産業活動の拡大によ
って加速され、気候変動という要素も加わり、これらすべてが組み合わさって世界の水供
給量の劇的な減少を引き起こすであろう(Rosegrant, 1995)。この危機に対する広範囲で
かつ具体的な根拠が存在しているにもかかわらず、そうした流れを逆転させるための、国
内あるいは地域的、国際的な政策的な公約および実施はほとんど行われていないか、あっ
たとしてもごく緩慢なものとなっている。
こうした状況は、アラブ諸国にとって妥当なものである。なぜなら、この地域には世界
全体の人口の 3%の人々が住み、同じく 10%の陸地を占めているが、世界全体の再生可能
水資源の 1.2%しか存在していないからである。この地域における多くの諸国は脆弱な発
展途上国であり、人口増加と経済成長政策のための産業および農業の発展を通じた重要増
加という、同時進行する人口学的および経済的緊張と闘っている。それと同時に、すでに
希少となっている彼らの水資源に対してさらに大きな圧力を加えていくであろう。
3.2 アラブ世界における利用可能な淡水と部門ごとの利用現状
アラブ地域は、非常に少ない降水によって特徴付けられ、それは時期と場所によってば
らつきが大きく、年毎の予測も不可能である。この地域における水を取り巻く環境は、
「不
安定である」と容易に表現することができる。人の一生に相当する間に、いわゆる「化
石」帯水層からのものを除いた、1 人あたりの年間平均再生可能水供給量は、1960 年の
- 23 -
情報報告 ウイーン
3,430 立方メートルから 2025 年の 667 立方メートルと約 80%減少するとみられている(世
界銀行、1994)
。こうしたレベルは、世界の他の主要地域の中でもはるかに低い。大半と
まではいわずとも、一部のアラブ諸国では、再生可能水は(上に言及した)国連の定義に
よるところの人間が必要とする持続的な需要をほとんど賄うことができないとみられてい
る。さらに、他の地域から流入する 10 を超える河川は、こうした再生可能水供給の約 35
%を担っており、上流の流域諸国による取水に対して全く無防備である(Tolba その他 ,
2001)
。表 1 に、1955 年と 1990 年、2000 年、2010 年、2015 年、2025 年、2050 年の各年
における、一部のアラブ諸国の再生可能な淡水資源について、国民 1 人あたりの年間の量
を立方メートルで示す。
国名
アルジェリア
バーレーン
エジプト
イラク
ヨルダン
1955
b
1990
b
1,770
689
672
179
2000 ª
2003
c
2010 ª
2015
c
2025 ª
2050
332
170
153
139
120
2,561
1,123
800
770
750
600
550
6,029
3,100
2,800
2,400
2,100
1,700
906
327
<500
900
300
89
18,441
クウェート
d
150
<500
130
121
<100
<100
<100
<100
900
800
800
510
100
レバノン
3,088
1,818
867
800
リビア
4,105
1,017
359
250
モロッコ
2,763
1,117
590
600
オマーン
4,240
1,266
500
500
450
450
410
カタール
1,427
117
<100
<100
<100
<100
68
サウジアラビア
1,266
306
<500
400
320
250
113
シリア
6,500
2,087
1,250
1,250
900
850
732
600
324
400
<500
<400
<300
<200
176
200
152
チュニジア
1,127
540
UAE
6,195
308
西岸およびガザ
1,229
461
<500
イエメン
1,098
445
<500
<500
300
250
264
出典:
a: Policies and institutions for coping with environmental aspects of water scarcity in western Asia, by
Hosni Khordagui Ph.D. Lebanon http://www.unwater.org/downloads/wwwKhordagui.pdf
b: ITT industries gueidebook to global water issues http://itt.com/waterbook/per_cap_country.asp
c: Economic and Social commision for Western Asia, UN 2003 -http://www.escwa.org.lb/information/
publications/edit/upload/sdpd-03-13.pdf
d: Water demand maangement in the Mediterranean, Hamdy A., http://www.idrc.org.sg/en/ev-42818-201-1-DO_
TOPIC.html
表 1 アラブ諸国における年間 1 人あたり利用可能な淡水量(1955 ~ 2050 年)
(単位:立方メートル/人・年)
上に示した数字は、国民 1 人あたりの利用可能な再生可能淡水が 1955 ~ 2025 年の間に
アラブ首長国連邦において 35 分の 1、オマーンとイラクで 10 分の 1、アルジェリアにお
いて 5 分の 1 に減少することを驚くほど明確に表している。イラクのみが、2025 年まで
において「水不足ライン(1,000 立方メートル)」の上に踏みとどまると予測されている。
水の死活的重要性は、いくら強調してもし過ぎることはない。大半のアラブ地域が位置
する乾燥地域においては、水が集落の形態を決定し、人間の文化と生活様式において重要
- 24 -
情報報告 ウイーン
な役割を担う。人々の健康と栄養摂取は、需要できるだけの品質をもつ水の利用可能性に
かかっており、特に村落部において、そうした水は大半の経済活動にとって不可欠な投入
資源である。一方で、これまでの歴史を通じて、アラブ諸国は灌漑農業に依存してきてお
り、各国政府は増加する人口を支える食糧確保のために灌漑プロジェクトに優先度を与え
てきた。そうした事例は、エジプト、ヨルダン、モロッコ、サウジアラビア、チュニジア
等に見られる。水部門への投資は、これらの国々にとって過去現在にわたり非常に重要な
ものであり、
典型的な事例としては、
表 2 に示されるとおり公的部門総投資額の 10 ~ 20%、
対 GNP 比で約 2 ~ 4%を占めている。
地下水枯渇による影響が
水に関する公費支出が占める GDP 割合(%)※
国名
アルジェリア
2001
モロッコ
イエメン
2004
1.7
1.7
1.5
-
-
3.6
3.3
2.4
1.3
3.6
3.6
3.6
3.6
0
-
1.7
-
-
-
a
-
-
-
1.2
-
-
3.5
-
1.4
サウジアラビア
チュニジア
2003
1.3
エジプト
b
2002
GNP に占める割合(%)
1.7
ヨルダン
2,1
備考:
a: 1997 ~ 2001 年の平均、b : 2001 ~ 2004 年の平均
※ World Bank 2004b, 2005b, 2006g; AW 2006
表 2 一部アラブ諸国における水部門の公費支出が占める GNP 割合(単位:%)
利用可能な水の供給に対して、圧倒的大部分が灌漑に利用されており、大半のアラブ諸
国の水利用総量における 80%以上がその目的に使われている(表 3 参照)。しかしながら、
利用可能な淡水利用の希少性の増大が予測される中で、生活の基本的必要性を満たすため
の人的消費に、より大きな優先度が置かれるようになってきている。こうした灌漑から家
庭用水使用への将来的な移行は、水部門の改善と発展(資源管理)および水収支の効率的
活用(需要管理)に影響を及ぼす、様々な要素についての慎重な分析を必要とする。
遺憾なことに、表 3 が示すとおり、多くのアラブ諸国における水利用効率は 40%超と
いう低レベルに留まっている。したがって、水の生産性(=水 1 単位あたりにおける商品
の生産量)を強調し、単位あたりの水の価値を引き上げるため、特に農業部門に焦点を当
てた戦略的計画が必要とされている。
- 25 -
情報報告 ウイーン
国名
年間 1 人あたりの再生可能資源量
1960
1990
2025
単位
立方メートル/人・年
全採取量
アルジェリア
バーレーン
エジプト
イラク
ヨルダン
レバノン
リビア
モロッコ
オマーン
カタール
サウジアラビア
シリア
チュニジア
UAE
イエメン
1,704
na
2,251
14,706
529
2,000
538
2,560
4,000
na
537
1,196
1,036
3,000
481
737
na
1,112
5,285
224
1,407
154
1,185
1,333
na
156
439
532
189
214
354
na
645
2,000
91
809
55
651
421
na
49
161
319
113
72
10 億立方
メートル
3
0.2
56.4
42.8
0.8
0.8
2.8
11
0.4
na
2.3
3.3
2.3
0.4
3.4
中東・北アフリカ
アフリカ
アジア
世界
3,430
14,884
6,290
13,471
1,436
6,516
3,368
7,685
667
2,620
2,134
4,783
177.2
144
1,531
3,240
国名
単位
アルジェリア
バーレーン
エジプト
イラク
ヨルダン
レバノン
リビア
モロッコ
オマーン
カタール
サウジアラビア
シリア
チュニジア
UAE
イエメン
全体に占める部門別割合(%)
家庭
産業
農業
%
%
%
22
4
74
60
36
4
7
5
88
3
5
92
29
6
65
11
4
85
15
10
75
6
3
91
3
3
94
36
26
38
45
51
4
7
10
83
13
7
80
11
9
80
5
2
93
再生可能資源全体に
占める割合(%)
16
na
97
43
87
16
404
37
22
174
106
61
53
140
136
51
3
15
8
農業部門における水利用効率
必要量
実際利用量
利用効率
10 億立方メートル
%
1.45
3.94
37
28.51
11.2
0.29
0.42
2.56
4.24
54
39.38
0.68
1.06
5.13
10.18
53
28
43
40
50
42
6.68
8.53
1.21
15.42
18.96
2.43
43
45
50
2.48
6.19
40
中東・北アフリカ
6
7
87
アフリカ
7
5
88
アジア
6
8
86
世界
8
23
69
出典:A strategy for Managing water in the Mena 1993
Aquastat Fao´s information System on Water and Agriculture 2001.
www.fao.org/ag/agl/aglw/aquastat/water_res/waterres_tab.htm
表 3 一部アラブ諸国における再生可能な淡水資源量と全採取量、部門別の割合
- 26 -
情報報告 ウイーン
アラブ諸国における年間平均再生可能水供給量は、アフリカが 4 兆 1,840 億立方メート
ル、アジアが 10 兆 4,850 億立方メートル、全世界で 40 兆 6,730 億立方メートルであるの
に対し、約 2,190 億立方メートルにしか過ぎない(World Resources Institute, 1992)。
その内、約 1,500 億立方メートルは他の地域から流入している(表 4 参照)。その内訳は、
ナイル川 560 億立方メートル、ユーフラテス川 280 億立方メートル、チグリス川ないしそ
の支流が 380 億立方メートルとなっている。こうした状況において、各国は自ら河川資源
を制御することができないため、外因性のショックに対してより敏感になってきている。
再生可能な表層水や地下水に加えて、再生不可能な地下水資源が大量に存在しており、ま
たアラブ地域諸国はそれぞれに異なるレベルで、将来の開発を視野に入れた汽水および無
限の海水に対する利用可能性を保有している。
表 3 では、各国における国民 1 人あたりの再生可能淡水資源と、世界の他地域における
その推定値とが比較されている。
国名
年間河川流量
年間あたりの再 年間あたりの利
生可能水量
用可能水量
国外からの流入
国外への流出
可能水資源量
アルジェリア
15
バーレーン
na
エジプト
58
イラク
75
66
ヨルダン
1
0.16
レバノン
4
3.90
na
0.86
3.94
リビア
1
-3.00
na
na
0.7
29
20.50
na
0.3
29.7
モロッコ
11.30
正味の年間再生
16.00
0.2
0.7
18.4
na
na
na
56.5
58.3
na
100
0.86
オマーン
na
2
カタール
na
0
na
2.2
サウジアラビア
シリア
チュニジア
2
26
24.50
27.9
30
5.5
4
1.50
0.6
na
4.35
na
na
0.3
UAE
イエメン
アラブ諸国
アフリカ
4
na
2.5
219
4,184
アジア
10,485
世界
40,673
出典: A strategy for Managing water in the MENA 1993
AquaSTAT FAO´s information System on water and agriculture 2001 www.fao.org/ag/agl/aglw/
aquastat.water_res/waterres?tab.htm
Margat, J., Domitille, V., 1999. Mediterranean Vision on Water, Population and the
Environment for the XXIst century.
Contribution to the world water council and the global water partnership prepared by the Blue
Plan in the framework of the MEDTAC/GWP
表 4 アラブ諸国における年間合計の再生可能水、河川流量、正味の再生可能水資源量(単
位:10 億立方メートル)
- 27 -
情報報告 ウイーン
多くのアラブ諸国は、自国の地下水の採取に力を注いできた。それは特に、湾岸諸国や
アルジェリア、ヨルダン、レバノン、パレスチナ、イエメンが該当している。エジプトも、
ヌビア砂岩帯水層から地下水を採取してきた。到達可能な地下水資源の採取は、河川水と
の相互作用で表層水供給に影響を及ぼし、地下水面レベルの低下が夏季における河川への
水流停止を引き起こし、その結果、沿岸地域における汽水および/もしくは海水からの塩
分浸入につながる可能性があるため、危険な行為となることがしばしばある。
こうした中で、非従来型水資源の重要性が増大してきている。この地域は全体で、また
とりわけ湾岸諸国において、世界中で生産されている海水からの淡水の 60%以上を生産
している。しかしながら、物理的な制約と淡水化に要する比較的高いコストのため、その
用途は産業用水と家庭用水としての利用に限られている。
水の利用可能性は、主として季節的ないし年毎の変化に依存している。再生可能淡水の
65%は降水に依存しており、アラブ地域の大半は半乾燥ないし乾燥気候であり、降水量は
年毎に、また場所ごとに異なっている。多くの地域において、降水は都合の悪い時期に、
都合の悪い場所で、さらに困った集中度で発生することが多く、1 年の中で非常に短い期
間となっている。レバノンの場合は、年間の降水日数は最大で 80 日であり、その大半は
海岸地方に限られている。年間降水量は、砂漠地域の取るに足らない量から、そのほとん
どが冬季に降る山間部での約 1,500mm まである。河川の流量は、降水パターンを反映して
年間を通して大きく変化する。したがって、水の利用可能性も著しく変動し、その平均は
およそ表 4 で示した程度となっている。例えば、チグリスおよびユーフラテス川における
低い流量値は年間平均流量値の 3 分の 1 以下であり、同様にヨルダン川では半分以下、リ
タニ川では 10 分の 1 以下が記録されている。
こうした水供給量の変動は、水管理における 3 つの重要な制約があることを意味してい
る。第 1 に、場所と時間が異なる流量を利用するための高価な貯蔵能力が必要となり、そ
れは貯蔵水の蒸発損失が発生する。アスワンにおけるナイル河川水の 14%が、貯水池か
らの蒸発および深部浸透損失分となっている。こうした損失の最小化対策として、地下水
の再注入や貯蔵は重要な役割を果たしうるが、それには、地下の貯蔵帯水層とその境界を
特定するための、高コストな地球物理学的調査が必要となってくる。第 2 に、そうした変
動は一定のリスク要因を持ち込むことになり、それは水の真の機会費用(=次善の経済的
利用におけるその価値)を評価することが極めて困難になることである。水の希少性が増
すに従って、その機会費用の部門間相互比較がさらに重要となってくるため関連がある。
そして第 3 に、こうした変動は総合的な緊急時対策を必要としてくる。
人間の生活を維持するのに必要とされる最低水量は、日量 25 リットル(年間で約 10 立
方メートル)とされている。また、健康を維持するために必要とされる妥当な供給量は、
1 人あたり日量 100 ~ 200 リットルであり、先進国、工業国においてはこれが 300 ~ 400
リットルを上回るレベルとなっている。一部のアラブ諸国では、再生可能水の供給が基本
人間必要量を上回っているものの、国連によって定義されている年間 1,000 立方メートル
という、良好な暮らし(食料および日常利用)を維持するのに必要とされるレベルにはな
お程遠い。表 5 および表 6 に、部門ごとすなわち家庭用と産業用、農業利用される水の量
について、異なる資料から抜粋されてまとめられている。
- 28 -
情報報告 ウイーン
従来型
国名
表層水
レバノン
オマーン
西岸およびガザ
イエメン
ヨルダン
バーレーン
サウジアラビア
カタール
UAE
イラク
シリア
エジプト
クウェート
地下水再注入
2,500
918
30
2,250
350
0.2
2,230
1.4
185
70,370
16,375
55,500
0.1
地下水利用
600
550
185
1,400
277
100
3,850
85
130
2,000
5,100
4,100
160
非従来型
排水および
海水淡水化
排液利用
240
1,644
200
2,200
486
258
14,430
185
900
513
3,500
4,850
405
2
23
2
52
61
17.7 (3)
131 (24)
28
108
1,500
1,447
3,800
30
51
0.5
9
2.5
75
795
131
455
7.4
2
6.6
388
備考:括弧内数字は、排液水の再利用を示す
`Shared groundwater resources in the ESCWA region; the need, potential benefits and
requirements for enhanced cooperation` paper presented at the Expert Group Meeting on Legal
Aspects of the Management of Shared Water resources, Sharm El-sheik, Egypt, June 2007-cited
„
in “Sectoral Water Allocation Policies in Selected ESCWA Countries , Economic and Social
Commissions for Western Asia of the United Nations. Nov 2003. 5
表 5 一部アラブ諸国における従来型再生可能と非従来型水資源
(単位:100 万立方メートル)
国名
アルジェリア
バーレーン
エジプト
ヨルダン
レバノン
リビア
モロッコ
シリア
チュニジア
国名
アルジェリア
バーレーン
エジプト
ヨルダン
レバノン
リビア
モロッコ
シリア
チュニジア
家庭
2010
2025
0.83
0.80
5.00
0.43
0.40
1.00
2.80
2.10
0.42
6.00
0.57
0.52
1.76
3.70
3.00
0.53
部門別水需要予測
農業
産業
2010
2025
2010
2025
1.90
1.90
0.2
0.3
家庭
2010
2025
0.50
0.60
75.00 95.00
10
14
1.75
2.40
0.13
0.2
0.92
1.10
0.1
0.14
9.00 11.90
0.24
0.57
1.10
1.40
6
8
17.60 25.20
0.3
0.37
3.37
4.23
0.16
0.26
持続可能な部門別水需要
農業
産業
2010
2025
2010
2025
1.00
1.30
0.15
0.20
4.00
0.34
0.40
0.90
1.20
1.00
0.40
60.00
1.30
0.78
5.85
0.80
17.20
2.50
5.00
0.50
0.48
1.50
1.80
1.26
0.50
65.00
2.00
0.82
8.70
0.80
20.70
2.05
8.60
0.12
0.10
0.20
5.00
0.30
0.12
11.4
0.20
0.14
0.50
5.00
0.47
0.17
エネルギー
2010
2025
10
0.1
12
0.1
エネルギー
2010
2025
0
0
0
0
0
0
8
0
0
0
0
0
0
8
0
0
合計
2010
2025
2.93
3
90
2.31
1.42
10.2
19.9
20.1
3.95
115
3.17
1.76
14.2
25.1
28.7
5.02
合計
2010
2025
1.65
2.10
72.60
1.76
1.28
6.95
15.00
18.50
3.02
81.40
2.70
1.44
10.70
15.30
22.40
2.72
表 6 一部アラブ諸国における部門別水需要(2010、2025 年、単位:10 億立方メートル)
- 29 -
情報報告 ウイーン
水需要は、都市部において最も急速に拡大している。この地域における大半の国々は、
中程度の所得レベルに分類されており、安全な飲料水を利用することができる都市住民の
比率は 100%に近づいている。それとは対照的に、村落部における安全な飲料水へのアク
セス可能性はわずか 66%に過ぎない。アラブ地域における人口増加率は、2000 年~ 2025
年にかけて鈍化して、2.5%程度になるものと予測されているが、それでも世界標準から
すればなお高い率である。この地域における総人口は、2025 年において 4 億 6,600 万人
に達すると予測されている。同様に、都市人口比率も 60%から 75%に増加すると予測さ
れており、これが家庭用水需要の劇的な増加につながり、それは余剰分を他部門に再配分
できるように農業用水の利用効率を引き上げなければならない。
取水量、または水の使用量は、大半のアラブ諸国においてすでに再生可能水の供給量を
上回っている。これは、リビアやサウジアラビア、湾岸諸国、イエメンが該当している。
イラクとレバノンのみが、人口に対して十分かつ問題なく供給できるだけの、再生可能水
資源を保有している。それにもかかわらず、これら 2 国においても水資源保護プロジェク
トは必要なのである。
信頼できる需給戦略の雛形作成は、需給に関するデータが変化しやすく困難かつ不確実
性を伴う。各部門はある程度の正確さで自らの水需要を予測し、その需要を満たすのに必
要となる投資を妥当に概算することができるものの、もし投資が財政的および/もしくは
物理的制約を受けたときには、需要に不足分が生じてしまう。最終的には、優れた計画と
管理によって、需給バランスが達成されなければならない。問題は、いかなるコストがか
かるかということである。
基本的な必要性や生産部門への投入資源としての役割に加え、水は土地、空気と並ぶ、
3 つの根本的な天然資源の 1 つでもある。水質に関する包括的データは、大半の国におい
て十分に利用することができない。塩水の利用可能性や使用に関するデータも利用不可能
である。処理排水や、先述した景観でのリサイクル利用に関しては入手可能なデータもあ
る。しかし、最近の世界銀行による調査では、水質の悪化は淡水の希少性に加えて多くの
国々で深刻な問題になりつつあると示唆している。水質の主要な汚染源には以下のものが
含まれる。
111 窒素といった肥料および農薬の浸潤および流出。
222 固体廃棄物の廃棄による埋立地からの浸潤。
333 未処理の都市排水。
444 都市下水システムもしくは直接水流に排出される未処理の産業排水。
こうした水質の低下は、水の希少性そのものに加え、最終的には人間の健康や水の生産
性、生活の質にまで影響を及ぼす別の次元の問題を生み出すことになる。水質の低下は、
有害性となると下流のユーザーにかかる清浄コストを増大させ、特定目的での使用が不適
当となる可能性も出てくる。
バーチャル・ウォーター(仮想水)
仮想水のコンセプトは、特定の商品に取り込まれている水の量、すなわち、その商品を
生産するために必要とされた水の量を問題としている。例えば、穀物の場合、それは一定
量の収穫を得るのに必要とされた水の量について言及している。仮想水の概念(ロンドン
- 30 -
情報報告 ウイーン
王立大学および東洋アフリカ研究所のジョン・アンソニー・アラン教授によって完成され
た概念)が意味するところは、アラブ世界の乾燥地域にあるような水の希少な諸国にとっ
て、仮想水量への意識は、それが商品の生産に対して考慮されたときに、その国の希少な
水資源利用をより持続可能性の高い手法に向かわせる力となる点である。そうして、貿易
理論を用いて、水の希少な国々にとって、自国での生産に大量の水を必要とする商品は輸
入によって賄い、それによって、国内で利用可能な水供給を他の使用目的のために節約す
ることを説明することができるだろう。
3.3 結論と提言
これまでに記述された水の希少性の問題は、その解決のために、複数の専門分野や複次
元的な統合された取り組みが必要である。その問題の解決に、水技術者および専門家の専
門知識だけがもはや必要とされない。それは、国家的な社会および経済計画内に組み込ま
れなければならない。経済学者、政策決定者、政府の法制および執行部署、産業資本家、
農学専門家、役人は、この水の危機に対する、説得力があり受容可能な解決策を打ち出す
ために、協力して様々な資源とエネルギーを投入する必要がある。
供給側の管理は、需要側の管理と平行して行われなければ不十分である。これら両部門
は、一致して対処しなければならない(つまり、片方を他方なしで対処することはできな
い)
。これは、再生可能水資源の大半がすでに利用され、新規の従来型水資源が希少であ
るアラブ地域において、特にあてはまっている。したがって、広範囲かつ包括的な政策を
伴った供給側の管理だけでは不十分である。需要側も厳密に管理されて、考慮される必要
がある。
需要側において最も必要とされている対策は、多次元的で、かつ方程式のあらゆる側面
(全ての需要および供給源)を考慮に入れた長期計画である。ここでは数多くの問題を考
慮しなければならない。
水の損失は減少させなければならない。そうした損失は、閉じられた導管や、開かれた
水路からの漏水によって生じる。水コストの低さは、消費の増加と浪費につながることが
明らかにされている。したがって、水を経済商品として捉え、外部性を考慮した値付けを
する、または、水道料金を引き上げることで、環境保護と自己管理が植え付けられ、結果
的に水の損失が減少することになるであろう。これは、水利用が電気と同様に徴収される
多くの欧州諸国において有効性が実証されている。複数の調査研究は、ユーザー間におけ
る効率改善や公平化の実施だけでなく、水道税や価格表示の導入によって、水の浪費が抑
えられ消費量が減少することを示している。これは、全ての部門に対して適用が可能であ
り、そうすべきである。産業部門においては、各産業に水使用における品質基準の運用を
課すべきである。これは、製造責任者に対して、結果的に水需要の大幅な削減につながる、
水プロセスの再循環を義務付けるものである。
さらに、産業に対して節水技術が導入されてより多くの水を必要とする古い機械を取り
替える必要がある。それは、短期的にはよりコストがかかるものの、水の節約と資源保護
の両面から、長い目で見ればそのコストは回収できるであろう。さらに、もし環境関連法
が適用されるならば、汚染は緩和され、淡水供給の利用可能性と現存する資源の持続可能
性が増大するであろう。農業部門においては、水の損失は排水システムを通じた再利用、
- 31 -
情報報告 ウイーン
または地下水を再注入するために水路を開くことで、全体の流域利用効率が引き上げられ
る。さらに、より生産性の高い地表灌漑のための自作農地の平坦化といったより効率的な
灌漑手法や、スプリンクラーや細流灌漑といったより効率的な技術の導入に向けて農業従
事者を促す必要がある。家庭部門においては、水は電力と同様に扱われ、より高い料金を
適用すべきで、それによって人々が倹約的になり、水の浪費と保護に対する意識を高める
方向に誘導し、結果として家庭部門における水需要を減少させることが必要である。海水
淡水化に全面的に依存している、一部湾岸諸国における家庭用水 1 人あたり消費量が世界
全体の平均を上回っている、という矛盾した現状を認識するとき、こうしたことはとりわ
け重要であることが分かる。
アラブ地域の希少な水資源に必要とされている持続可能性を達成するために、1 つの全
体論的かつ包括的アプローチが採用されなければならない。上に言及した解決策は、同時
に能力の形成や公的ないし技術的教育、公衆意識の向上を伴わなければ、全く意味をなさ
ない。
まとめると、アラブ地域諸国は水の希少性に関する数多くの難題に直面している。その
圧力を緩和し、十分かつ持続可能な形で社会経済的発展を遂げるため、彼らは長期戦略計
画立案に向けて以下の提案を採用するべきである。
1.3 部門(農業、工業、家庭)における水配分の最適化。
2.仮想水(Virtual Water)を通じた水の輸入につながる、最適な水生産戦略の実施。
3.水資源需給計画および管理に対する、全体論的、包括的取り組みの採用。
4.全ての利害関係者における能力の形成と技術的向上。
5.ユーザーから政策決定者まで全てのレベルにおける意識の向上。
6.上記の事項、現在ないし予測される水データおよび調査研究に基づく、持続可能な水
政策の策定と実施。
7.最適な取り組みの選択に向けた多くの解決シナリオへの展望が拓けるような、水資源
管理モデルの開発。
仮想水の話はこの地域にとって目新しいことではあるものの、世界中の多くの国々はこ
のテーマへの開発投資で成功を収めており、水不足と水浪費の緩和のための投資が行われ
ている。そのため、水の希少な国々にとって水を多く必要とする商品を自国で生産して、
貴重な利用可能水を失う代わりに、そうした商品を輸入することで資源を振り替えること
は、一定の価値を持つであろう(そうした変換は、より必要とされている他部門への水の
配分を生み出す)
。国際貿易理論に基づいて、各国は自国生産における比較劣位のある商
品は輸入し(すなわち、水の希少な国にとっての水集中型商品)
、比較経済的優位のある
商品を輸出するべきである。
3.4 参考資料
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