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獨協医科大学神経内科 脳卒中診断・治療指針

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獨協医科大学神経内科 脳卒中診断・治療指針
獨協医科大学神経内科 脳卒中診断・治療指針
獨協医科大学 神経内科 脳卒中部門
竹川英宏(部門長)
新島悠子,小川知宏,大門康寿,江幡敦子,横田隆子
獨協医科大学 神経内科
国分則人(講師,病棟医長),平田幸一(教授)
作成:2007 年 12 月
注 意
本指針は,主に脳卒中治療ガイドライン 2004 に準じて作成した,獨協医科大学病院
での診断・治療指針となっており,主に脳梗塞について記載しております.
主に,臨床研修医ならびに脳卒中診療に携わり間もない医師を対象としております.
本指針が全ての症例に当てはまるものではありません.
必ず参考図書に記載したような正書にも目を通すようにしてください.
(縮小コピーでポケット内に入れていただけると幸いです)
1
目 次
参考資料 脳血管障害の分類・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
1.脳梗塞 超急性期治療・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5
2.入院時検査項目・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5
3.重症度評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5
4.入院後検査項目・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
5.塞栓源検査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
6.脳血栓症の治療・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7
・ラクナ梗塞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
・アテローム血栓性梗塞,動脈原性塞栓症,BAD・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9
・血行力学性梗塞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
7.慢性期抗血小板剤使用(脳血栓症)の選択・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
8.心原性脳塞栓症の治療・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
9.心原性脳塞栓症におけるワルファリンコントロール目標・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
10.心原性脳塞栓症の一次予防・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
11.奇異性脳塞栓症の診断と治療・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13
12.脳血栓と心原性脳塞栓症鑑別困難例における治療・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14
13.一過性脳虚血発作の治療・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14
14.若年性脳梗塞の鑑別・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
15.脳動脈解離の診断・治療・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16
16.抗リン脂質抗体症候群の診断・治療・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17
17.その他の特殊脳梗塞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
・片頭痛・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18
・全身性エリマトーデス(SLE)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18
・高安病・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18
・結節性多発動脈炎(PN)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18
・側頭動脈炎・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19
・線維筋形成不全(FMD)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19
・Protein C 欠乏症,Protein S 欠乏症・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19
・高ホモシステイン血症・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20
・妊 娠・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20
18.脳梗塞一般治療・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21
・安静度(重症例)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21
・急性期血圧管理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21
2
・抗浮腫療法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21
・脳保護療法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22
・糖尿病・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22
・平温療法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22
・血液レジオロジー因子改善療法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22
・アスピリン潰瘍予防・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22
19.脳梗塞特殊治療・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23
20.慢性期治療・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24
・高血圧(慢性期血圧管理)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24
・降圧剤の選択・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24
・糖尿病・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24
・高脂血症・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25
21.脳内出血の治療・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26
22.脳静脈洞血栓症の治療・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28
23.脳卒中再発防止のため:IC 用資料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29
24.脳卒中発症後の注意点および合併症の確認事項・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30
参考図書・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31
問い合わせ先・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31
3
脳血管障害の分類(参考資料)
4
1.脳梗塞 超急性期治療
血栓溶解療法(t-PA)治療(下記を参照)
http://www.dokkyomed.ac.jp/dep-m/neuro/neuro06_06.html
2.入院時検査項目
・頭部単純 CT
・心電図,胸腹部単純レントゲン
・一般採血
(肝腎機能,尿酸,血糖値,HbA1c,CRP,血算)
・凝固系採血 (D-dimer,PT,APTT,フィブリノーゲン)
・特殊採血
(TAT,β-TG,PF4)・・・駆血帯使用下での採血は禁止
・単純 MRI
(T2WI,DWI,FLAIR,MRA,頸部 MRA)
・エコー検査(頸部血管エコー図・胸壁心エコー図)
*奇異性塞栓が疑われる場合には
下肢静脈エコー図および頸動脈または経頭蓋エコー図(シャント診断)
3.重症度評価
・National Institute of Health Stroke Scale(下記を参照)
http://www.dokkyomed.ac.jp/dep-m/neuro/neuro06_06.html
・modified Rankin Scale(退院時にも評価)
5
4.入院後検査項目
・採血
(空腹時血糖,T-Cho,TG,LDL,Lp(a))
・24 時間血圧計(ABPM)および心電図モニター
・脳血流シンチグラム
(奇異性塞栓疑い時は肺換気血流シンチを優先:肺塞栓合併鑑別)
・血液凝固系検査の経時的観察
5.塞栓源検査
・Holter ECG および心電図モニター(発作性心房細動等の検出)
・胸壁心エコー図および経食道心エコー図
奇異性塞栓が疑われる場合(別項目も参照)
・下肢静脈エコー図(深部静脈血栓症の検出)
・胸部単純・造影CT(肺塞栓合併鑑別)
・血液ガス分析(肺塞栓合併鑑別)
・肺血流・下肢静脈シンチグラム(肺塞栓合併鑑別)
・コントラスト法,Valsalva 負荷を用いた
経食道心エコー図・経頭蓋エコー図・頸動脈エコー図(シャント診断)
6
6.脳血栓症の治療(獨協医科大学病院でのお勧め)
7
ラクナ梗塞
ここでは主幹動脈に 50%以上の狭窄がなく,穿通枝領域の 15mm 未満の梗
塞で,ラクナ症候群を呈するものと定義する.
症例により,ラクナ症候群を呈さないものもあるが,責任血管における 50%
以上の狭窄を認めず,皮質領域ではないことが重要である.
・オザグレルナトリウム(80mg)×2 回(12 時間毎)を 1 回 2 時間で点滴静注
(保険上最大 2 週間投与可能)
・入院時よりシロスタゾール 200mg/2×内服(点滴と併用)
*副作用の問題で投与不可能な場合,アスピリン 200~300mg/1×を 2 日間
投与後,アスピリン 100mg/1×を投与開始(点滴と併用)
・基本的に高張グリセロールの投与は必要ない
・エダラボンの投与は推奨される(別項目参照)
・危険因子のコントロール
(特に高血圧→慢性期に ABPM で血圧変動パターンを確認)
再発例
・抗血症板剤内服継続し,オザグレルナトリウムを併用
・抗血小板剤内服(-)またはアスピリン内服の場合にはシロスタゾールを追加投与
・イコサペント酸エチル 1800mg/2~3×+スタチンの追加投与
・ケタスなどの抗血小板作用を有する脳代謝改善剤の併用
8
アテローム血栓性梗塞,動脈原性塞栓症,BAD
・アルガトロバンまたはオザグレルナトリウムの点滴静注射
(*アルガトロバンは保険上発症 48 時間以降には適応なし)
(*オザグレルナトリウムの使用はラクナ梗塞を参照)
・アルガトロバン 60mg(6A)/日(24 時間持続点滴)を 2 日間投与後,40mg/日(24 時
間持続点滴)を 2 日間施行し,以後 10mg(1 回 2~3 時間)を 2 回点滴静注
(*保険上での使用は,アルガトロバン 60mg(6A)/日(24 時間持続点滴)を 2 日間投
与後,以後 10mg を 1 日 2 回(1 回 2~3 時間,12 時間毎)5 日間点滴静注.)
・アスピリンを入院時から 160~300mg/1×を 2 日間投与後,アスピリン 100mg/1×
(朝)またはクロピドグレル 75mg/1×(朝)を点滴と併用.
(入院時よりクロピドグレルを使用するときは 300mg を入院時に,以後 75mg/1×
:本投与は脳梗塞には保険適応なし.急性心筋梗塞の使用指針)
出血性梗塞合併時(出血の程度により,以下を施行)
・抗凝固剤,抗血小板剤の一時中止,1 週間後より抗血小板剤の投与開始
・適時脳単純 CT で出血拡大の有無を確認
・止血剤や,一般加療以上の血圧コントロールは原則必要としない
再発例
・アスピリン使用時は,アスピリンを中止しクロピドグレル使用に準ず
・チクロピジン,クロピドグレル使用時はさらにアスピリン 100mg 追加
・抗血小板剤の併用は,急性期から 3 ヶ月以内に下記を選択
1.チクロピジン 100mg の場合,200mg へ増量
2.アスピリンおよびクロピドグレルの併用
3.シロスタゾール併用(クロピドグレル,チエノピリジンの場合は副作用に注意)
4.スタチン+イコサペント酸エチル 1800mg/2~3×の追加
進行例
・定義:局所神経症候が発症後 72 時間以後も進行
・原因:脳浮腫,低血圧,低灌流,再発性塞栓,動脈内血栓の進展,出血性梗塞
・対処: 他の抗血小板剤併用,
乳酸リンゲル液(デキストラン 40 加)500ml/8 時間 3 日間追加投与
ヘパリン少量(5,000~10,000 単位)追加
(著明な低血圧を認める場合は昇圧剤(DOB)投与も考慮)
血管内治療の考慮
9
血行力学性梗塞
・原則的に原疾患の治療(心不全など)
・基本的にアテローム性血栓梗塞に準じる
・著明な低血圧を認める場合には昇圧剤(DOB)の投与を考慮
・デキストラン,アルブミン製剤の投与を考慮
7.慢性期抗血小板剤使用(脳血栓症)の選択
(獨協医科大学病院でのお勧め)
(Essen Stroke Risk Score)
上記にて 3~6 点となる場合には,アスピリンよりもクロピドグレルが望まれる.
10
8.心原性脳塞栓症の治療(獨協医科大学病院でのお勧め)
・発症 24 時間後の脳 CT で出血性梗塞がないことを確認し,血腫を形成するような大
きな出血がなければ,ヘパリン 1 万単位/日持続点滴を開始
(2 日ごとにAPTTの高度延長がないか確認)
(軽症例で大きな梗塞でない場合には,入院時よりヘパリン投与開始)
・ヘパリンと同時にワルファリン 5mg/1×を 2 日間投与し,以後 2mg から PT-INR を確
認しつつコントロールする.
(2 日毎に PT-INR を確認し,INR 1.6 以上でヘパリンを中止)
*下肢静脈血栓(+)で,主幹動脈閉塞でなければ,入院時より治療開始する
(肺塞栓の危険性があるため)
出血性梗塞(出血の程度により,以下を施行)
・出血性梗塞確認後,2~3 日後の CT で出血の拡大がなければ治療再開
・治療中に出血性梗塞を認めた場合は,ヘパリンは中止(ワルファリンは継続)
・適時頭部 CT で出血拡大の有無を確認
・血圧を 180/90mmHg 前後でコントロール
80 歳以上例(原則ワルファリン使用)
・高度痴呆,内服コンプライアンス不良,本人・家族のワルファリン内服拒否,全身的
な出血の危険性等を認める場合,以下で治療
・発症 24 時間後の脳 CT で出血性梗塞がないことを確認
・出血がなければ,ヘパリン 1 万単位/日持続点滴,
(2 日ごとにAPTTの高度延長がないか確認)
・ヘパリンを 7 日間使用
・ヘパリン終了 2 日前より,アスピリン 100mg等の抗血小板剤を服用開始
再発例
・基本的に急性期治療に準ずるが,PT-INR でのコントロールをより厳密に施行する
(入院時にワルファリンを中止する必要はない)
11
9.心原性脳塞栓症におけるワルファリンコントロール目標
(獨協医科大学病院でのお勧め)
ワルファリン投与時の注意項目
・痛風治療剤 :作用増強(コルヒチンは相互作用なし)
・クロレラ
:作用減弱
・納 豆
:作用減弱
・アルコール
:作用減弱
・便 秘
:作用増強
10.心原性脳塞栓症の一次予防(獨協医科大学病院でのお勧め)
CHADS score
2 点以上はワルファリンの導入が推奨される
12
11.奇異性脳塞栓症の診断と治療(獨協医科大学病院でのお勧め)
・ヘパリン持続静注
・ワルファリン内服
10,000~15,000 単位/日
PT-INR 目標:1.6~2.8 程度
*主幹動脈閉塞でなければ,肺塞栓症の危険があるため,すぐにヘパリン,ワルファ
リンを投与開始
*再発性の深部静脈血栓,high risk 症例,抗凝固療法禁忌例,反復性の肺塞栓症
合併例では IVC フィルターも考慮
13
12.脳血栓と心原性脳塞栓症鑑別困難例における治療
(獨協医科大学病院でのお勧め)
・アテローム性血栓脳梗塞(アルガトロバン)に準じて加療
・速やかな鑑別精査
心電図モニター,Holter 心電図で不整脈の確認
頸部血管エコー図,胸壁心エコー図,経食道心エコー図 等
13.一過性脳虚血発作の治療(獨協医科大学病院でのお勧め)
・原因により,アテローム血栓性梗塞,心原性脳塞栓症に準じて治療
・鑑別困難な場合は,アテローム性血栓梗塞に準じて加療開始
・高張グリセロールの投与は必要ないが,エダラボンの投与は考慮してもよい
14
14.若年性脳梗塞の鑑別(獨協医科大学病院でのお勧め)
定義:50 歳未満の脳梗塞
・脳卒中患者の 1.8%/年を占める
・出血の再発率が,脳梗塞再発率に比べて高値である
原因疾患
・高血圧,高脂血症,高 Lp(a)血症
・高ホモシスチン血症・尿症
・プロテイン C 欠乏症,プロテイン S 欠乏症, AT-Ⅲ欠乏症
・抗リン脂質抗体症候群
・DIC(播種性血管内凝固),Trousseau 症候群
・赤血球異常(赤血球増多症,真性多血症)
・骨髄増殖性疾患(白血病など)
・原発性血小板異常
(TTP,血小板増多症,ヘパリン誘発性血小板減少症・血栓症症候群 等)
・マクログロブリン血症,クリオグロブリン血症,骨髄腫 等
・経口避妊薬(エストロゲン・プロゲステロン製剤)
・脳動脈解離,線維筋形成不全(FMD),妊娠,産褥 等
15
15.脳動脈解離の診断・治療(獨協医科大学病院でのお勧め)
・40 歳台に発症のピークがある
・若年性脳梗塞の 4%を占める
・原因は特発性,FMD,Marfan 症候群,高血圧,のう胞性中膜壊死,外傷 等がある
・頭痛の訴えが 68%にある(脳梗塞発症 2~3 日前が 72%,同時発症が 28%)
・頭蓋外解離では脳梗塞が 89%を占める
・頭蓋内解離では脳梗塞が 60%,くも膜下出血での発症が 39%
・総頸動脈・内頸動脈系に 17%,椎骨動脈系に 83%といわれている.
検 査
・頸部血管エコー図(intimal flap の直接観察)
・頭部 MRI(T2WI,Gd-T1WI-axial)
・頭部 MRA(造影剤を使用した,MRA の元画像)
・3D-CT Angiography
・脳血管撮影 等
治 療
・原則として,脳梗塞は脳血栓に準じて加療する
・動脈解離部は経時的に変化するため,最初の 3 ヶ月は 1 ヶ月毎に MRI,エコーなど
で確認
・のう状拡大を認めた場合は,抗血小板剤などは中止し,外科治療の適応判断
16
16.抗リン脂質抗体症候群の診断・治療
(獨協医科大学病院でのお勧め)
・閉経前の若年女性,再発性かつ多発性脳梗塞を呈する
・基礎疾患として SLE が多い
・動脈血栓(脳梗塞,眼,末梢,心肺,腸間膜)
・静脈血栓(下肢静脈,肝臓,脳,網膜)
・その他 (習慣性流産)
検 査
・血液・凝固系検査
APTT の延長,ループスアンチコアグラント陽性,
抗カルジオリピン抗体陽性(IgG)
抗カルジオリピンβ2 グリコプロテインⅠ抗体
血清梅毒反応生物学的偽陽性
(ガラス板法陽性,TPHA 陰性,FTA-ABS 陰性)
治 療
・急性期治療は一般的加療と同様(アルガトロバン>ヘパリン)
・慢性期再発予防 ワーファリン(PT-INR:2.0~3.0)
副腎皮質ステロイド(ただし SLE 合併例)
*再発例では PT-INR3.0 以上が望まれる
*抗血小板剤の効果も示唆されており,経頭蓋エコー図での微小栓子シグナルでの
評価が望まれる.
17
17.その他の特殊脳梗塞(明確なエビデンスがはっきりしていない)
(注意点などについて記載)
片頭痛
・卵円孔開存や動脈解離の合併が多いといわれている.
全身性エリマトーデス(SLE)
・活動性の高い時期に脳血管障害を来たし易い
・大量のステロイド剤,あるいは免疫抑制剤の併用
(活動性に応じてステロイドの増量・パルス療法)
・アルガトロバンの点滴
高安病
・HLA-B52 と関連,頸動脈エコーでマカロニサインが見られる
・炎症所見がある場合には,プレドニゾロン 30~40mg/日を数ヶ月かけて漸減
・ステロイド離脱困難例では免疫抑制剤を考慮
・炎症消退期での予防は抗血小板剤
・脳循環閉塞高度例,血行再建術後ではワルファリン(INR1.5~2.5)の投与を考慮
結節性多発動脈炎(PN)
・顕微鏡的 PN:MPO-ANCA 上昇(古典的 PN では認めない)
・高血圧,大量ステロイドは動脈硬化を促進させる可能性がある
・脳血管障害(脳梗塞>脳出血)は進行した病期でみられやすい
(末梢神経障害などがより早期に出現しやすい)
・脳血管障害発症予防は急性期にステロイドパルス療法施行し,以後プレドニゾロン
60mg/日以上を 8 週間投与.その後 8 週かけて減量し 5~10mg/日を 2 年間
(減量は赤沈,CRP,臨床所見を参考に行なう)
・シクロフォスファミド投与を施行する場合は 48~96 週間
・脳梗塞発症時はアルガトロバンやオザグレルナトリウムでの加療および再発予防と
して抗血小板剤を投与
18
側頭動脈炎
・55 歳以上の高齢者に多い
・側頭部限局の拍動性頭痛(65~95%)
・浅側頭動脈の発赤・腫脹・怒張・圧痛・拍動の減弱
・脳血管障害はまれだが椎骨脳底動脈系に多い
・赤沈上昇
・側頭動脈エコー図で血管壁の dark hallo(浮腫状の変化)がみられることもある
・赤沈を参考に,プレドニゾロン 50~60mg を投与,症状を見ながら漸減する
(少なくとも 1 年程度は少量のプレドニゾロンを継続)
・重症型(発症直後に視力障害・冠・脳動脈虚血症状)ではプレドニゾロン 60~100mg
またはステロイドパルス療法
・ステロイド抵抗性では免疫抑制剤の使用を検討
線維筋形成不全(FMD)
・腎動脈や頭頸部動脈など,全身の中小動脈に起こる非動脈硬化性,非炎症性の狭
窄性アンギオパチーである
・男性よりも女性におおい
・腎動脈狭窄が 58%,頭頸部動脈 32%(内頸動脈は椎骨動脈の 5.5 倍)といわれる
・頭頸部では頭蓋外内頸動脈に多く,両側性が 86%といわれている
・頭蓋内狭窄例では 40 歳以下に多いとされる
・脳血管撮影では string of beads(念珠様)が 90%と高頻度であり,動脈瘤形成は内
頸動脈・中大脳動脈に多い
・抗血小板剤の内服が発症予防とされる
Protein C 欠乏症,Protein S 欠乏症
・脳梗塞の発症直後および発症慢性期いずれも異常値をしめす
・家族内にこれらの蛋白質欠乏ないし著しい低値者が存在する
*Protein C は播種性血管内凝固(DIC),悪性腫瘍,肝疾患,敗血症でも欠乏状態
となる
・確立した治療法はないが,ワルファリン療法(PT-INR:2.0~3.0)が推奨されている
19
高ホモシステイン血症
・葉酸を使用することを考慮してもよい
・血中ホモシステインが 10μmol/l 以上の場合は,総合ビタミン剤の連日投与を考慮
してもよい
妊 娠
・高リスク群(凝固異常など)では妊娠期間を通じて APTT のモニタリングをしながらヘ
パリン投与(静脈内投与・皮下注射)を考慮する
・低リスク群では妊娠第 1 期(全妊娠期間の 1/3)にヘパリン投与,以後出産時までア
スピリン 100mg を内服
20
18.脳梗塞一般治療(獨協医科大学病院でのお勧め)
安静度(重症例)
・基本的に発症直後は絶対安静(頭部挙上も不可)
・発症 2~3 日後より挙上(30°,60°,90°,車椅子と 1 日毎にあげていく)
・高齢,主幹動脈閉塞:慎重な血圧管理のもとにリハビリを開始
・ベッドサイドリハビリは入院初日より開始する
急性期血圧管理
・原則脳梗塞では降圧を必要としない
・目標:入院時血圧の 85~90% or 185~220/105~120mmHg
・収縮期血圧 220mmHg 以上または平均血圧(=拡張期血圧+脈圧/3)130mmHg 以
上が 20 分以上の間隔で 2 回ともみられた場合,降圧剤の内服またはニトロ製剤の貼
布,Ca 拮抗剤の微量持続点滴を考慮する
・拡張期血圧 140mmHg 以上が 5 分以上の間隔で 2 回ともみられた場合,Ca 拮抗剤
の微量持続点滴を考慮する
・左心不全,心筋梗塞,腎不全,大動脈瘤などの合併があり,これらの疾患の増悪が
懸念される場合には,185/105mmHg 以下を目標とする
・多量の降圧剤を内服している場合には,薬剤中止による心不全合併などを考慮し,
入院前の内服の半量継続なども施行も考慮する
・心原性脳塞栓症(大梗塞)では 180/100mmHg 以下を目標とする
・純粋なラクナ梗塞では 130/85mmHg 以下にコントロールする
(アテローム血栓の要素が強いときは,一般的コントロールが望まれる)
抗浮腫療法
・高張グリセロール 200ml~1000ml(1 回 200ml を 30 分~1 時間で投与)
神経症候安定したら,2~3 日ごとに 200mlずつ減量
・浮腫による増悪が著明な場合,フロセマイド 40mg 単回投与の考慮
21
脳保護療法(エダラボン;最大 14 日間投与可能)
・腎障害(高齢者では Cre 1.0 以上)がある例では使用しない(透析患者は禁忌)
・慎重投与:肝機能障害,心疾患
・副作用:急性腎不全,肝機能障害,血小板減少,DIC
・併用注意:
グリセオール,βラクタム系,ニューマクロライド,アミノグリコシド系,
グリコペプチド系,ニューキノロン系,アンフォテリシン B,β遮断薬,
ACE 阻害剤,AⅡ受容体拮抗剤
・最低でも,投与翌日,3 日後,7 日後は採血検査施行
・急性腎不全時には DOA 少量,充分な補液,利尿剤で改善を図る
糖尿病
・高血糖は速やかに改善する
平温療法(明確なエビデンスはありません)
・発症 7 日以内の体温が 37.0℃以上の場合,積極的クーリング療法を施行.
・37.6℃以上の場合,クーリングおよび解熱鎮痛剤の併用
血液レジオロジー因子改善療法(明確なエビデンスはありません)
・Hct 45%以上の場合,乳酸リンゲル液(デキストラン 40 加)の投与を行っても良い
(保険適応外,使用しても 3 日間,急性循環不全)
アスピリン潰瘍予防(明確なエビデンスはありません)
・高齢者,潰瘍の既往がある場合にはプロトンポンプ阻害剤投与が望まれる.
*H. pylori 感染,喫煙,飲酒でも潰瘍の危険率は上昇する
22
19.脳梗塞特殊治療(獨協医科大学病院でのお勧め)
内膜剥離術(CEA)の適応
・同側性高度頸動脈狭窄(70%以上)
・周術期死亡・合併症発症率<6%
・男性・75 歳以上・直近の虚血イベントから 2 週間以内
・狭窄率 50~69%:症例により検討
・狭窄率 50%未満:適応なし
頸動脈ステント留置術(CAS)の適応
・高度頸動脈病変(70%以上):CEA と同等
・外科的アクセスが困難な場合
・CAS 施行前は少なくとも抗血小板剤を 2 剤併用する
・CAS 後 1~2 ヶ月で抗血小板剤は1剤に減量してもよいが,High risk 群は 2 剤を継
続する
EC/IC バイパス術
・症候性頸動脈閉塞においては欧米では推奨されていない
23
20.慢性期治療(獨協医科大学病院でのお勧め)
高血圧(慢性期血圧管理)
・発症約 1 ヶ月後よりコントロールを開始する
・一次目標(2~3 ヶ月かけてコントロール)は 150~170/95mmHg 未満とする
・二次目標(発症数ヶ月かけて)は 140/90mmHg 以下とする
・発症後 1 年後には,高度狭窄がない場合,130/85mmHg 以下とする
降圧剤の選択
・AⅡ阻害剤(+利尿剤)
・ACE 阻害剤+利尿薬
・Ca 拮抗剤
・AⅡ阻害剤+利尿剤+Ca 拮抗剤
*糖尿病ある場合は第一選択として AⅡ阻害剤または ACE 阻害剤から開始
*難治性早朝高血圧にはα拮抗剤の就前投与を検討
*non-dipper や inverted dipper タイプの血圧は,日中や早朝における脳循環不全
症状の有無に注意する
糖尿病
・HbA1c 5.8 未満,空腹時血糖が 110mg/dl 未満が望まれる
・HbA1c 6.5 以上では不十分である
・日本糖尿病学会:科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン(南江堂)を参照
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高脂血症
・脳卒中発症後は,LDL120mg/dl 未満,HDL40mg/dl 以上,TG150mg/dl 未満にコント
ロール
・冠動脈疾患がある場合には,LDL100mg/dl 未満にコントロール
*欧米での報告では,血管障害の既往がない例では,LDL を 70mg/dl 以下にコントロ
ールを行なっても出血性合併症は増加しないといわれている
*脳出血の場合は,欧米の報告をみると,LDL を 70mg/dl 以下にコントロールするこ
とにより出血性合併症が増加する可能性が残されている
*スタチンの投与は脳卒中発症予防に役立つ可能性が示唆されている
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21.脳内出血の治療(獨協医科大学病院でのお勧め)
原 因
・高血圧
・脳アミロイドアンギオパチー
・脳血管奇形
・頭部外傷 ・血管炎(PN,SLE など)
・脳感染症
・脳腫瘍
・Wills 動脈輪閉塞症
・出血性素因
白血病,再生不良性貧血,血小板減少性紫斑病,血友病,肝硬変,抗凝固剤
分 類
・被殻出血(高血圧性出血)
Ⅰ
:内包外に限局(死亡率 4%)
Ⅱ
:内包前脚へ進展(死亡率 7~16%)
Ⅲa :内包後脚へ進展,脳室穿破なし(死亡率 6%)
Ⅲb :内包後脚へ進展,脳室穿破あり(死亡率 21%)
Ⅳa :内包前,後脚へ進展脳室穿破なし(死亡率 26%)
Ⅳb :内包前,後脚へ進展脳室穿破あり(死亡率 74%)
Ⅴ
:視床,視床下部へ進展(死亡率 54~92%)
・視床出血(高血圧性出血)
Ⅰa :視床に限局,脳室穿破なし
Ⅰb :視床に限局,脳室穿破あり
Ⅱa :内包へ進展,脳室穿破なし
Ⅱb :内包へ進展,脳室穿破あり
Ⅲa :視床下部または中脳への進展,脳室穿破なし
Ⅲb :視床下部または中脳への進展,脳室穿破あり
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治 療
血圧管理
・血腫増大は発症 6 時間以内に多いため,この期間は 140~160/80~90mmHg 程度
にコントロールする
・血圧低下による penumbra 領域での虚血性障害予防のため,発症 24 時間以後は収
縮期血圧を 180mmHg 以下にコントロールする
・血圧コントロールは Ca 拮抗剤の持続静脈内投与(内服の併用も可)
*脳主幹動脈狭窄の有無を必ず確認する
抗浮腫療法(高張グリセロール 200~1000ml)
・発症 6 時間後の脳 CT で血腫拡大がないことを確認し使用
・脳幹出血などで,生命の危機がある場合はすぐに使用
(前述の使用方法を参照)
止血剤
・アドレノクロム 100mg を持続点滴静注
・Vitamin C:50~2000mg(血管壁の強化を期待)
・FFP 輸血(肝硬変などで,凝固因子が不足例で使用を検討)
安静度・リハビリテーション
・出血拡大がなく,神経症候安定したらベッドサイドよりリハビリテーションを開始
脳内出血後の抗血栓剤使用(血栓の危険が高い例)
・出血発症後 1~2 週間は抗血栓療法を施行しない
・ワルファリンの場合,投与開始前にヘパリンを使用し,3~4 週間後に,PT-INR の厳
重なコントロール下で下限値に調節する
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22.脳静脈洞血栓症の治療(獨協医科大学病院でのお勧め)
症 状
・頭痛:最も早期に出現,70~90%に見られる
通常片側持続性が多いが,前頭部,側頭部限局もある
・意識障害:頭蓋内圧亢進に伴い出現,30~60%
・痙攣発作:40~60%に出現
・運動障害,感覚障害,精神機能障害
原 因
・感染症一般(頭蓋内・外感染,敗血症,心内膜炎,など)
・脳腫瘍,脳梗塞,脳出血
・妊娠,産褥,経口避妊薬(エストロゲン,プロゲステロン)
・悪性腫瘍
・多血症,出血後貧血,鎌状赤血球,PNH,血小板減少症
・ATⅢ欠乏,PC 欠乏,PS 欠乏,DIC
・代謝性(激しい脱水,甲状腺機能亢進症,ネフローゼなど)
・膠原病(SLE,側頭動脈炎,Wegener 肉芽腫,サルコイドーシス等)
・右心不全
治 療
・ヘパリン 3000 単位を静注(iv),以後 15,000~65,000 単位を持続点滴
・APTT は入院時の約 2 倍にコントロールする
・出血を認めても基本的に治療を中止する必要はない
・ヘパリン後のワルファリン投与は心原性脳塞栓症に準じる
・発症後 3~6 ヶ月までワルファリンを使用後,抗血小板剤に切り替える
(血液凝固異常の基礎疾患がある場合はワルファリン継続)
・浮腫の程度により高張グリセロールの併用を検討
・AT-Ⅲ欠乏,DIC などに対しては AT-Ⅲ製剤投与
・原疾患の治療
・局所ウロキナーゼ投与の検討
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23.脳卒中再発防止のため:IC 用資料
①家庭血圧の測定(起床時,日中安静時,就寝前):血圧変動パターンの確認
②減塩(高血圧時は 6g/日)
③BMI の測定(22 を目標,最低でも 25 を超えないように)
(BMI;Body Mass Index:体重 Kg/身長 m/身長 m)
④運動療法
有酸素運動 :早歩き,ジョギング,サイクリング,水泳
(自覚的にややきつい程度,運動中に会話ができる程度)
(1 回 30 分,連日)
歩行
:成人男性;9,200 歩/日
(高齢者では 6,700 歩)
:成人女性;8,300 歩/日
:高齢者 ; 6,700 歩/日
⑤禁煙(40 本/日で脳梗塞発症は約 2 倍,20 本/日で約 1.5 倍,間接喫煙にも注意)
⑥アルコール制限(多量のアルコールは脳出血のリスク)
男性:20~30ml/日以下 女性:10~20ml 以下(エタノール量)
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24.脳卒中発症後の注意点および合併症の確認事項
①腎障害
②慢性閉塞性動脈硬化症
③大動脈瘤(総頸動脈の径が 10mm 以上ではより注意が必要)
④心筋梗塞
⑤痙攣発作
代表的薬剤と代表的副作用
・カルバマゼピン
眠気,ふらつき,肝機能障害,汎血球減少,皮膚粘膜眼症候群
・バルプロ酸ナトリウム
肝機能障害,高アンモニア血症 等
・フェニトイン
不整脈,肝機能障害など
発症頻度
・Late onset Seizure(発症後 2 週間以降での発現)
:3.5%
・Early Seizure(発症 2 週間以内での発現)
:3.1%
・Early on set Seizure(脳卒中発症とほぼ同時に発現)
:1.8%
⑥めまい:イブジラスト(脳梗塞後めまいに保険適応あり)
⑦うつ
⑧認知症
⑨血管性パーキンソン症候群
抗パーキンソン病薬は基本的に効果が期待できない
⑩脱水:嚥下障害(肺炎)や経管栄養管理患者の利尿剤内服では注意すべき
⑪深部静脈血栓症(肺塞栓症)
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参考図書(日本語のみ抜粋)
・脳卒中治療ガイドライン 2004,協和企画,2004
・若年性脳卒中診療の手引き,国立循環器病センター 内科脳血管部門,2003
・高血圧治療ガイドライン 2004,ライフサイエンス出版,2004
・脳血管障害のすべて(神経内科特別増刊号),科学評論社,2003
・インターベンション時代の脳卒中学(改訂第 2 版)上(日本臨床増刊号),日本臨床社,2006
・インターベンション時代の脳卒中学(改訂第 2 版)下(日本臨床増刊号),日本臨床社,2006
・“Uncommon”脳卒中学~見落とせない発症要因~,西村書店,2004
・動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2007 年度版,協和企画,2007
・国際頭痛分類第 2 版日本語版(日本頭痛学会誌),杏林社,2004
問い合わせ先
獨協医科大学 神経内科
脳卒中部門
竹川 英宏
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