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「和顔愛語」の心を大切に

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「和顔愛語」の心を大切に
2015.7.30 渚の風 5号 13
■社会福祉法人 四天王寺福祉事業団
大阪市立 大畑山苑
介護長・生活相談員
西本ひと美さん(34)
介護長・ショートステイ担当
石井孝弘さん(38)
「和顔愛語」
の心を大切に
特別養護老人ホーム「大阪市立大畑山苑」
(大阪府八尾市)は、
河内平野を見下ろす大畑山の高台に建つ。1年中小鳥のさえずり
が聞こえる、緑豊かな環境が自慢だ。介護長である 30 歳代の2
人の職員が、若い介護士にメッセージを送った。
(文 和田依子/写真 陶器浩平)
Text by Yoriko WADA / Photo by Kohei TOKI
どんな相談にも答えたい
にこやかな笑顔。施設内を案内する石井さん
スホール。その一角に談話コーナーがあ
は、高齢者を抱える家族からさまざまな
る。ここで、西本さんはお年寄りを抱え
相談が持ちかけられる。
る家族からの相談を受けている。
たった今、電話で受けたのは、
「親名義
う内容。介護とは直接関係ないが、役所
レない。
育てる立場だ。
「ご家族からのどんな相談にも答えら
「やさしいだけではなく、行動力のあ
きらきらと大きな瞳で、仕事へのまっ
入所についての相談から、認知症に
る職員に育てたい。型通りの介護手順に
すぐな情熱を伝えてくれた。
なった親の資産の相談まで…。
「本当にいろいろなことを相談されるん
んだ。利用者さんの家族が面
とらわれず、新しい発想で仕事をしてほ
しい」と石井さん。
「会えてよかった」
と言われたい
「実習生や若い人の考えこそ、積極的
に取り入れ、企画に生かしたい」と西本
会に来た時は、いつでも気軽
石井孝弘さんは、とにかくよく笑う。
に相談してもらえるよう、自
いつも大らかな笑顔で利用者さんを和
さんは話す。
新しい発想が生かせる場面はたくさん
分から声をかけるよう心がけ
ませている。「職員心得」に書かれてい
ある。たとえば、利用者さんに喜びや生
るという。
る「和顔愛語」(注 = わげんあいご) の心
きがいを感じてもらえるイベント作りだ。
福祉の仕事を目指したの
苑では年に6回、カウンタースペース
を体現するかのようだ。
は、児童福祉司をしていた母
で会員制の「居酒屋」を開店している。
利用者さんに積極的に声をかけるの
親の影響が強かった。児童福
は、「遠慮して言えないこと」に気づき
焼き鳥を片手にビールを飲むと、ふだん
祉施設で虐待された児童の
たいから。慣れない集団生活の中で緊張
は無口な男性の利用者さんが、ぽろりと
助けになりたかった。だが、
し、ストレスを感じている利用者さんの
本音を話してくれる。
配属されたのは養護老人施
気持ちを気遣う。
また、週に 1 回開催する「マッサー
設。西本さんは家族と暮らせ
「介護技術よりも『気づき』
が大事です」
ジ&足湯」も好評で、数か月後まで予約
ない事情がある高齢者の心
と石井さん。
「かゆい所に手が届く介護」
が詰まっている。利用者さんは、家にい
に寄り添い、看取るうちに、
が目標だ。
る時と同じようにリラックスしたひとと
この仕事の奥深さを知った
かつて勤めていた施設で、ある利用者
という。
最初は、施設の「決まり事」
と「利用者さんにしてあげた
いこと」とのジレンマに悩ん
コラム
西本さんも石井さんも、今では後進を
れるよう、がんばります」
です…」と、西本さんは微笑
家族からの相談に応じる西本さん
積極的に行動できる介護士に
動します」と、仕事への軸は、決してブ
熱帯魚が優雅に泳ぐ明るいエントラン
生活相談員、西本ひと美さんのもとに
の空き家はどう処分すればいいのか」とい
ていいことをするのが一番だと思って行
の窓口に問いあわせ、解決策を示した。
だこともあった。
保守的な介護の現場に新しい風を呼び
たがここにいてくれて、よかったわ』と
込む、若い介護士の活躍が期待されてい
言われたことが今も心に残っている。
る。
施設で、出会えたのも何かのご縁。「会
えてよかった」と思われる介護士であり
「でも、利用者さんにとっ
きを過ごせる。
さんから、『ここに来てよかった。あん
たいと石井さんは語った。
(注)和顔愛語 ・・・ 人と人の関係を大切な
ものとし、いつでもどこでも誰にでも和や
かな顔と優しい言葉で接すること。
地域の祭りになっています
大阪市立「大畑山苑」を管理運
月に一度、
「太子講」という法要
る青少年野外活動センター「アク
営する、社会福祉法人四天王寺福
があり、過去にお亡くなりになっ
トランド YAO」で大規模に開催し
祉事業団は、1931(昭和6)年に
た方々を月ごとに供養しています。
ます。地域の業者に出店やボラン
設立。四天王寺開祖、聖徳太子が
また、講話を通じて利用者さんや
ティアの方々の出し物で大いに盛
帰依された仏教精神に基づき、人
職員に仏教の精神を伝えています。
り上がり、毎年 200 人を超える人
の幸せをよろこびとして、福祉社
会の実現を目指しています。
1400 年前、聖徳太子は「四ケ
でにぎわいます。
施設では行事を通じて、地域交
流を積極的に進めています。地域
今後は、利用者さんが地域の小
院制度」を実施し、福祉施設とし
の子どもたちへのプール開放、夏
学校を訪問したり、神社の祭りに
て悲田院を建設しました。施設で
祭り、ハロウィン、クリスマスの
参加するなど、外に積極的に出て
は太子の精神を受け継ぎ、利用者
4つの行事は今や地域に定着した
いくことで、地域交流の深化に努
さんが「健康で穏やかな毎日」を
行事になりました。
めていきます。
過ごせるよう支援しています。
中でもクリスマス会は、隣接す
苑内に設置した〝ちびっこプール〟で遊ぶ、
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