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ビジネスの継続性が企業価値の基準となる 止まらない

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ビジネスの継続性が企業価値の基準となる 止まらない
止まらない、という絶対価値
ビジネスの継続性が
企業価値の基準となる
Contents
ビジネスの継続性が
企業価値の基準となる
止まらない、という絶対価値
第 1回
無停止性を追求し、ビジネスのゼロ・ダウンタイムを実現するシステムとは
page3
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0703/29/news002.html
第2回
ビジネスの継続性を保証する“止まらないシステム”
とは?
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0704/13/news002.html
page6
第3回
事業を継続し、企業価値を高めるシステムとは
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0705/30/news001.html
page9
第4回
四半世紀もの間「止めない」運用に取り組んだ経験者が語る
「匠を育てるプラットフォ−ム」
page12
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0706/22/news001.html
第5回
もはや「待ったなし」の次世代 EDI を実現するシステムとは
page16
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0707/05/news002.html
本冊子はITmedia エンタープライズ(http://www.itmedia.co.jp/enterprise/)へ2007年3月29日〜8月5日に掲載された記事を再構成したものです。
02
止まらない、という絶対価値
ビジネスの継続性が企業価値の基準となる
止まらない、という絶対価値
無停止性を追求し、ビジネスの
ゼロ・ダウンタイムを実現するシステムとは
企業のビジネス基盤を確固としたものにするためにとりわけ重要なのが、BCP という考え方
である。いまや IT は、われわれが身近に利用する社会インフラの根幹となっており、災害や
障害によりシステムがダウンした場合、経営に大きなダメージを負うからだ。では、BCP を実
現できる IT 基盤とは、どのようなものなのだろうか?
“動いて当たり前”の IT 基盤
——停止するとどうなる?
BCP の現実解として
社会インフラを支えてきたサーバ
●
●
地震や火事、漏電や停電、そして人為的なトラブ
「現代は、いろいろな業種が連携し複合化してい
ル。現代社会の各種サービスを支える IT 基盤は、
ます。例えば携帯電話とクレジットカード会社が結
様々なリスクに囲まれている。だが、あなたの会社
びついたり、Suica や Edy のような電子マネーも鉄
のシステムは、こういった不慮のトラブルに対応で
道だけでなく、量販店、コンビニなどでも使えるよ
きるだろうか?
うになったりしています。そうした状況の中で、例え
言うまでもないことだが、現在の IT システムは
ば、決済のサービスを提供している会社のシステム
「サーバが停まってごめんなさい」では済まされな
がダウンして復旧に 5 分かかったとすると、それに
い。それはなぜか。今やインターネットやモバイル
連携している会社の業務にまで連鎖して、そのトラ
などの普及で、24 時間 365 日眠らない社会が当
ブルがさらに拡大してしまうのです。NonStop サー
たり前となっており、もはや IT システムは、水道や
バは、そのような高いミッションクリティカル性を
ガスなどと同じユーティリティ、つまり社会基盤と
求められる分野で、
力を発揮してきました」
(浅野氏)
なっているからだ。
浅 野 氏 によれば、NonStop サーバ の 原 型は、
企業にとっては、もしシステムがダウンした場合、
短期的な損失に加え、長期的な信用の失墜や、ビ
ジネス規模の縮退など、巨大なリスクがある。した
がって、通信や金融そして流通といった社会インフ
ラを提供するサービス事業者は、自社の IT システ
ムに対し、無停電電源の調達やネットワークの冗長
化、あるいはディザスタリカバリ体制の構築など、
様々な対策を講じている。
近年 IT 分野において、こういった対策が BCP
(Business Continuity Plan)として注目を集めて
いる。また政府も「事業継続ガイドライン」として
BCP の策定に乗り出しているが、この分野で 30
年前から市場を牽引してきたサーバ製品が、HP の
NonStop サーバであるという。今回、企業が BCP
を実現する基盤となっている、同サーバについて、
日本ヒューレット・パッカード株式会社 エンタープ
ライズストレージ・サーバ統括本部 NonStop サー
バ製品本部 本部長 浅野勉氏に話を聞いた 。
日本ヒューレット・パッカード株式会社
エンタープライズストレージ・サーバ統括本部
NonStop サーバ製品本部 本部長
浅野勉
氏
03
1975 年に開発された世界初の商用フォールト・ト
タ製品や HA システムでは、ミドルウェアなどを使っ
レラント(ft)システム「NonStop System」である
て人が工夫をして二重化をすることにより耐障害性
とのこと。その一号機はシティバンクに納入され、
を実現しています。しかし、NonStop サーバでは、
その後 OLTP の無停止型システムとして、可用性や
設計コンセプトが違うのでハードウェアと OS を含
信頼性を備えたリアルタイム処理やデータの保全性
めた耐障害性をもともと実現しており、真の無停止
を望んでいた金融、証券、クレジットカードなどの
型環境を提供できます」
(浅野氏)
業種に相次いで導入されたという。
例えば、クラスタ製品は、計画外停止のうち、ハー
その後、4,080CPU までの拡張性、高速性を備
ドウェア故障や電源異常などシステム障害にしか対
え、OLTP 用途のみならずデータベースなどアプリ
応しない。しかしこれは統計上、計画外停止の約
ケーション型のシステムとして発展してきた。1995
20%にすぎない。またアプリケーション障害や操
年にはそれまでの並列アーキテクチャを踏襲しなが
作ミスがそれぞれ 40%ほどを占め、これには対応
ら、独自の OS「NonStop Kernel」を採用した超
できない。同サーバなら、アプリケーション障害の
並列サーバ「NonStop Himalaya」を発表、Java、
ほぼ半分、そして操作ミスにも一部対応できる。ま
CORBA、XML、Web サービスなどのオープン技
たクラスタ製品では、計画内停止がほとんど考慮さ
術にも積極的に対応を進めたとのことだ。
れていない。
(図 1 参照)
とはいえ1990 年代前半までは、同サーバには
「特
しかし、浅野氏によれば、同サーバは計画内停
殊なサーバ」という印象が強かったのも事実。だが
止の発生要因に対して 95%以上も対応しており、
1990 年代後半に、タンデムコンピューターズがコ
業務を止めずにメンテナンスやデータベースの再編
ンパック、さらにディジタルイクイップメント(DEC)
成ができるのだという。
と合併、さらにそのコンパックが米ヒューレット・パッ
どうやら、本当の無停止型、真の BCP を実現す
カードと合併するという再編劇の中で、マーケット
るには、一般的な HA システムやクラスタ・システム
の中心に登場する。
ではなく、NonStop サーバが必 要といっても、過
そして 2002 年の米ヒューレット・パッカード、
言ではないようである。
コンパックの合併に伴い、NonStop Himalaya とい
同サーバの利点はまだあるという。それは、TCO
う名称が、
「HP NonStop サーバ」に変更される。
の削減効果だ。
さらに 2005 年には、インテル ® Itanium ® 2 を採用
「クラスタ製品はミドルウェアや RDBMS、アプ
した「HP Integrity NonStop サーバ」も投入。こ
リケーションによって工夫をして、障害が起きた場
れにより、コストパフォーマンスが一気に倍以上に
合どのようにリカバリするかというシステムを、実際
引き上げられたという。
に作らないといけません。しかし NonStop サーバ
「NonStop サーバの基 本的な設 計コンセプトは
は TP モニター、RDBMS などをすべて OS にバン
創業以来変わっておらず、歴史的にもその価値を認
ドルしており、クラスタ機能そのものも OS の標準
められております。その設計コンセプトをベースにし
機能として提供しています。そのため、無停止型、
つつ、時代に合わせてその時々の最新技術を取り
高可用性のシステムを構築する場合も特別な費用が
入れています。例えば、Perl や Apache、Tomcat
発生しません。サーバをリカバリするコストを考え
などのオープンソースは 300 種類以上に対応して
おりさらに成長を続けています」
(浅野氏)
たときも、TCO の削減効果が期待できるのです」
(浅野氏)
ビジネス継続性を高めるにあたり、効果が高く、
High Availability(以下 HA)
システムともクラスタとも違う、
究極の“無停止”を実現
●
浅野氏によると、一口に無停止型といっても、そ
の考え方は 2 つあるという。
「 止まらないシステム」
04
コストも抑える。これが、同サーバが市場に支持さ
れてきた要因といえるのではないだろうか。
社会インフラを支えてきた
豊富な実績
●
ということと、
「止めなくてもよいシステム」だ。
浅野氏によると、現在、NonStop サーバは金融、
前者は、いわゆる計画外停止であり、どんなトラ
証券、通信の 3 分野を中心に、幅広い業種で採用
ブルが発生してもシステムを停止せずに処理を継続
されている。例えば、
金融分野では、
ATM やクレジッ
するという機能とのこと。そして後者は、システム
トカード業務処理など世界の 500 以上の金融サー
のメンテナンスやデータベースの再編成などで発生
ビスで 使われ、 高 額 の 電 子 決 済ネットワークの
する、計画内停止を指すのだという。
80%およびほとんどのクレジットカード決 済が、
「“止まらないシステム”を実現する場合、クラス
NonStop サーバで処理されているそうだ。
ビジネスの継続性が企業価値の基準となる
止まらない、という絶対価値
図1■サーバ停止時におけるNonStopサーバのカバー領域(HP自社調べ)
NonStop サーバのカバー領域
施設
10%
バックアップ/
2%
リカバリー
13%
ハードウェア、
ネットワーク、OS、
システムソフトウェア
アプリケーションと
バッチ処理
データベース
10%
65%
システム障害
HW故障、
電源異常等
20%
人的ミス
(10%)
原因不明(30%)
アプリケーション
障害
操作ミス等
40%
40%
ソフトウェアの問題(20%)
ネットワークの問題(15%)
セキュリティ違反等(5%)
計画外停止の原因内訳
計画内停止
また、ニューヨーク証券取引所(NYSE)などを
だという。導入の背景には同サーバの持つ絶対的
始めとする世界の主要証券取引所のほとんどが同
な信頼性や高可用性のほか、直線的な拡張性も大
サーバを採 用し、 トラン ザクション 数としては
きな要因となったとのことだ。
NYSE の倍以上の取引高を誇る CME(シカゴ商品
流通業界では某大手コンビニエンスストアチェー
取引所)もユーザーという。
ンの事例も挙げられるという。1 日何度も発注のあ
国内でも、多様な業種で数多くのシステムが稼働
るものをリアルタイムで受発注処理し、販売機会の
しているという。一般にはあまり知られてはいない
損失を防止。また地域災害対策も考慮し、2 拠点
が、NonStop サーバは、私達の何気ない日々の生
にそれぞれ NonStop サーバを配置し、データのリ
活をささえるところで利用されているようである。
プリケーションが行われているそうだ。
例えば、マルイの EPOS カードのような日本国内
これらの例以外にも、全世界の 200 以上の病
で流通しているほとんどのカードの各種決済サービ
院やヘルスケア、そして旅行業やレジャー産業、国
スが NonStop サーバ上で運用されている。時差が
防、警察、消防を含む政 府機関、450 以上の製
ある海外、インターネット等でカードが使用でき、
造業、400 以上のデパート、小売り、卸売りが導
また、カードのみならず為替決済にも多く利用され
入しているとのレポートを、浅野氏は紹介してくれた。
ており、24 時間・365 日の処理が必要となる絶対
無停止型超並列サーバというと、一般にはなじみが
的な信頼性が求められる分野で、利用されているそ
ないが、快適で便利な日々の生活を通して、実はわ
うだ。
れわれは知らず知らずに NonStop サーバの恩恵を
通信 業 界においては、KDDI は携 帯 電 話「au」
受けていたようだ。
のメールサービス「au マルチメディアメッセージ」の
止まらないという絶対価値、まさに企業の、そし
サーバとして NonStop サーバを導入しており、その
て社会の“継続性”を支えるサーバだといえよう。
CPU 数は三桁を越え、世界有数の大規模ユーザー
図2■一般的なリカバリタイムとコストの関係
一般的なリカバリタイムとコストの関係
フォールト・
トレラント
コスト
クラスタ
ホットスタンバイ
標準リカバリ
日
障害回復時間
時間
分
秒
ゼロ
本記事は、ITmedia エンタープライズ(http://www.itmedia.co.jp/enterprise/)に2007年3月29日~7月23日の期間に掲載されたものです。
05
止まらない、という絶対価値
ビジネスの継続性を保証する
“止まらないシステム”
とは?
金融や通信、運輸、流通など、社会インフラとなるサービスを提供する企業にとっては、止ま
らないシステムの構築こそが、絶対価値となる。では、企業の、そして我々の生活の“継続性”
を支えるサーバとは、どのようなものだろうか。
ビジネス継続性を保証する
アーキテクチャとは
●
06
アドバンスド・アーキテクチャ(NSAA)
」を採用し
ているとのこと。現在同サーバは、マイクロプロセッ
サを二重化したデュアル(DMR)モデルおよび、オ
プションとして三重化したトリプル(TMR)モデル
の構成をとることができ、従来のモデルと比べて可
企業が BCP(Business Continuity Plan)を実
用性、拡張性、データ整合性を格段に高めている
施し、ビジネスの継続性を高めるには、
“止まらな
そうだ。
いシステム”が必須である。前回の取材から、社会
NSAA を簡単に説明すると、例えば基本となる
インフラを支えるサーバに HP Integrity NonStop
4CPU/DMR モデルは、4 つのマイクロプロセッサ
サーバ(以下、NonStop サーバ)が、使われている
が搭載された CPU ブレード 2 つと論理同期ユニッ
ことが分かった。とはいえ NonStop サーバはなぜ
ト(LSU:Logical Synchronization Unit)、I/O モ
止まらないのか。そして、なぜ多数の企業に支持さ
ジュール、ストレージなどで構成され、CPU ブレー
れ、選ばれているのだろうか。今回は、同サーバの
ド は、 光 フ ァ イバ ー に よ る 独 自 の 高 速 バ ス
アーキテクチャについて、技術的な面から、取材を
「ServerNet」で結ばれるという。
処理はCPUブレー
実施した。
ドをまたがって行われ、例えばブレード A とブレー
今回取材に応じてくれた日本ヒューレット・パッ
ド B の 1 つ目のマイクロプロセッサ同士が、同じ処
カード株式会社 テクニカルセールスサポート統括
理を行う。その際、外部から見ると単一論理 CPU
本部 シェアードサービス本部 NonStop 技 術 部、
として見え、論理 4CPU モデルとして、それぞれの
原敏光部長によると、
「NonStop サーバのアーキテ
CPU が異なる処理を行うという。
クチャを簡潔に表現すれば、
“疎結合のマルチ CPU・
内部 的にはマイクロプロセッサの 処 理 結 果を
システム”と“ハードウェアとソフトウェアの耐障害性
LSU、つまり論理同期回路で“ 常に突き合わせ”
機能が密に組み合わされている”
ということです」
(原
を行っているそうだ。ここでデータの整合性、つま
氏)とのこと。各 CPU は、メモリ、ディスク、I/O
りデータ・インテグリティを実現するとともに、障
を所有する非共有方式(シェアード・ナッシング方
害や異常を検知して自動通報するという形が基本
式)を採用し、オペレーティング・システム(NonStop
設計となっている。
Kernel)がそれぞれの CPU 上で動作しているそう
例えば、障害時の動きについてみてみると、基本
だ。
となる 4CPU/DMR モデルでは片方の CPU ブレード
NonStop サーバでは、このメッセージ・ベースの
上の 1 つのマイクロプロセッサがダウンしても、論理
オペレーティング・システムが、最大 4,080CPU ま
CPU は残った片系で動作し続ける。また、メモリ /
で拡張可能であり、全てのリソースは単一システム
メモリコントローラ障害が発生した場合にも、論理
イメージでアクセス可能である。また、共有リソー
CPU は残った片系で動作し続け、ソフトウェア環境
スのない疎結合アーキテクチャにより、同サーバの
を保護する。これにより、クラスタ環境を超えるビジ
拡張性は直線的であり、トランザクションの増加に
ネスの継続性が保証されるという。
(図 3 参照)
対応するリソース追加の計画に対しても、柔軟な
また原氏の説明によると、オプションで提供され
キャパシティ・プランニングを提供できる。
る TMR モデルでは、3 つの CPU ブレード上のマイ
また原氏によると、NonStop サーバは「NonStop
クロプロセッサが同じ処理を行い、LSU が計算結
止まらない、という絶対価値
ビジネスの継続性が企業価値の基準となる
果を判断し、値が違うものを多数決方式で切り離し
のように述べてくれた。
ていくそうだ。
「マイクロプロセッサは電気回路であり、可能性
NSAA では、CPU ブレードが別々のモジュール
として“出力がぐらつく”ということが考えられます。
として 1 つのラックに搭載され、システムの高速バ
データを突き合わせた上で不整合があれば、その部
スである ServerNet や I/O コントローラ、ストレー
分を切り離してデータ破壊を防止した上で稼働し続
ジなども二重化して搭載するとのこと。つまり、多
けます。更に多数決方式が使用できない状況の場
重化された同サーバは、必ずモジュールをまたがる
合には、その論理 CPU は自ら停止し、そこで稼動
構成となる。
(図 4 参照)
していた処理を他の論理 CPU に引き継ぎます。つ
「二重化、三重化というとき、1 枚のボードの中
まり、二重化、三重化構成というのは耐障害性と
でマイクロプロセッサを二重化してあったり、1 つの
いう意味と、電気回路がぐらついても間違ったデー
筐体の中に 2 つの部品が入っていたりするという話
タを外に出さないという、2 つの意味があるのです。
がよくあるのですが、NonStop サーバの場合は、必
これによって、信頼性を実現しているわけです。こ
ずこのようにモジュールをまたがるよう、多重化構
れまで 30 年の歴史の中で、NonStop サーバがハー
造をとっています。不慮の障害でモジュール全体が
ドウェア障害によって、いわゆる“データ化け”を
落ちてしまっても、同サーバは構造的にシステムを
起こしたことは、一度もありません」
(原氏)
止めずに対応できるということです。またメンテナ
原氏によると、現在では止まらないのみならず、
ンスする際にも、モジュール全体をオンライン中に
データの信頼性を求められる企業が多く、出荷され
取り替えられます」
(原氏)
る同サーバの半数以上が TMR モデルとなっている
また、原氏はデータ・インテグリティについて次
という。
日本ヒューレット・
パッカード株式会社
テクニカルセールス
サポート統括本部
シェアードサービス本部
NonStop 技術部 部長
原敏光
氏
図3■4CPU/DMRモデル
(2つのブレードエレメント)
での障害発生時の動作
Memory reintegration link
CPU0
1
Blade
A
CPU1
Blade
B
2
CPU2
CPU3
memory
LSU
LSU
LSU
LSU
0
1
2
3
ServerNet
ServerNet
ServerNet
ServerNet
図4■4CPU/TMRモデル
(3つのブレードエレメント)
での障害発生時の動作
Memory reintegration link
CPU0
Blade
A
CPU1
Blade
B
Blade
C
CPU2
CPU3
演算結果
=1
LSU
LSU
LSU
0
1
2
3
ServerNet
ServerNet
ServerNet
ServerNet
memory
演算結果
=2
演算結果
=3
LSU
07
インテグリティ、ft、
スケーラビリティを核としたサーバ
●
ここが、NonStop サーバの“NonStop”たるゆ
えんだ。Windows や UNIX では、急に電源を落と
すと、次回正常にシステムを起動できず、データが
消滅するケースがある。しかし同サーバの OS は、
ダウン後に再開しても、データは確実に保護されて
ここで原氏は、NonStop サーバのファンダメンタ
いるのである。
ルは大きく 3 点あると話してくれた。その 1 つは、
「突発的な事故によりビジネス情報を損失すると、
“データ・インテグリティ”だ。
企業が立ち直れなくなることも考えられます。しか
NonStop サーバでは、データ・インテグリティに
し NonStop サーバでは、
“予想外のことが起こって
より、厳密なチェックとデータの破壊防止を保証し、
も大丈夫”なアーキテクチャを備えているのです」
極めて高い信頼性を提供している。
「TMR モデルは、特に通信や金融といった産業
で、採用が進んでいます。これは 3 つのマイクロプ
ロセッサが同じ演算を行い、その計算結果を判断、
多数決で正しい値を導き出していくという、データ・
最強のミッション
クリティカル・システムとして
●
インテグリティに優れた点が評価されたものだと思
います。厳密なデータチェックやデータ破壊防止が
HP に統合される前の NonStop サーバは、ソフ
求められる業種で、特に支持されています」
(原氏)
トウェア・フォールト・トレラントによってテイクオー
NonStop サーバでは、データの整合性が取れな
バー処理を行い、耐障害性を実現していた。CPU
かった場合、自らシステムを停止し、データを保護
障害やプライマリプロセスに異常が発生した場合
するそうだ。金融機関において“数字が合わない”
は、OS の機能によって自動的にバックアッププロ
というのは一大事であり、もともと銀行の ATM な
セスがプライマリプロセスに昇格し、その処理をそ
どで使われていた同サーバの開発コンセプトが、こ
の時点から継続するのである。しかし原氏によると、
うしたところにも息づいているのであろう。
現在の同サーバでは、事情がやや異なるという。
2 つ目のファンダメンタルは、
“フォールト・トレラ
「NonStop サーバでは、プライマリ側は実際の処
ント(ft)”とのこと。NonStop サーバでは単にハー
理を行って CPU パワーを使いますが、バックアップ
ドウェアの多重化だけでなく、ソフトウェアとも一
側は情報の保持だけですから、メモリを少々使うだ
体となって、アプリケーションの連続稼働を実現し
けです。そのため、CPU パワーを二重に消費して
ているそうだ。
いるということにはなりません。さらに、NonStop
そして 3 つ目は、
“リニア・スケーラビリティ”
。原
サーバはハードウェア ft 機能も実装していますので、
氏は、 同サーバは超 並 列サーバであり、 並 列に
ハードウェア ft とソフトウェア ft の組み合わせとい
CPU を足していくことによって直線的に性能の拡
う、考えられる最高レベルの ft 機能をすでに実装し
張性が図れるという、リニアな拡張性を備えている
ているわけです」
(原氏)
と語る。携帯電話や ATM、クレジットカードなど、
日々変化を続け、将来のシステム設計が容易でな
原氏の言葉通り、NonStop サーバは「耐障害性」
「計画停止の削減」
「データ整合性の保障」を兼ね
い業種分野でも、必要なときに必要な CPU パワー
備えた、究極の高信頼サーバであると言える。また、
を、無停止で増設できるとのことだ。
直線的なシステムの拡張性はもとより、アプリケー
ション構成の制約もなく、またチューニングが容易
“NonStop”だからこそ
データは確実に保護
●
であるなど、スケーラビリティに優れている。
もちろん、システム管理の視点から考えても、シ
ングルシステムイメージでの運用が可能であったり、
OS と統合されたミドルウェアが実装されていたり
と、運用効率も高い。
とはいえ、サーバそのものをいくら多重化構成に
さらに同サーバは、例えば Java アプリケーショ
しても、天災などにより電源障害が発生すれば、シ
ンがそのままで稼働するといったオープンな環境ま
ステム全体がダウンする。これはサーバの問題を越
でも 実 現してい る。 原 氏 によれ ば、 イン テル ®
えた、ファシリティの問題である。
Itanium ® 2 プロセッサを搭載したことで、コスト・
これに対し原氏は、
「このような場合でも絶対に
パフォーマンスも劇的に改善されたという。
ファイルを壊すことはありません。つまり、
アプリケー
ここまで見てきたように、NonStop サーバであれ
ションから書き込みがあると、基本的にシステムの
ば、大規模かつ最強のミッションクリティカル・シ
再開に必要なデータは、性能を犠牲にしてもディス
ステムをシンプルに構築できる。
「無停止の水準が
クに書き込みに行きます」と自信を持って答える。
違う」と言っても、過言ではないだろう。
※本記事は、ITmedia エンタープライズ(http://www.itmedia.co.jp/enterprise/)に2007年4月13日~7月23日の期間に掲載されたものです。
08
止まらない、という絶対価値
ビジネスの継続性が企業価値の基準となる
止まらない、という絶対価値
事業を継続し、
企業価値を高めるシステムとは
止まらないシステムを実現するHP Integrity NonStop サーバ。そこに込められているのは、
「事
業継続性を向上させることが企業価値を高めることにつながる」という HP のメッセージだ。
これまでの取材を通じて、30 年ものあいだ、企
して、最適解となると考えています。
業の事業 継 続 性を HP Integrity NonStop サーバ
(以下、NonStop サーバ)が、支えてきたことを知っ
ITmedia 昨今の業績が好調なのは、そのような
た。多様な製品ポートフォリオを提供する HP にお
企業価値向上への取り組みがお客様から評価されて
いて、NonStop サーバはどのように位置付けられ、
いるからでしょうか。
どのような意義が込められているのか。日本ヒュー
レット・パッカード株式会社 常務執行役員テクノロ
屋代 NonStop サーバによる事業継続性への取り
ジーソリューション営業統括の屋代喜久氏に聞い
組みの例でも分かる通り、HP には長年にわたり、
た。
お客様の企業価値の向上に貢献してきた経験があ
ります。また、HP は常に市場ニーズにあった商品
ビジネスを止めないシステム
だからこそ、企業価値を向上させる
●
を提供してきました。例えば、Itanium ® プロセッサ
はハイパフォーマンスが求められる分野に最適な
CPU で すが、 私 達 はいち 早く Intel 社と共 同 で
Itanium の開発に取り組みました。加えて、HP は
業界で最高レベルの製品をお客様の要望にあわせ
ITmedia NonStop サーバといえば、文字通り「止
て提供することができます。
まらない IT インフラ」の要となる製品です。その
そもそも、HP は 4 社のコンピュータベンダーが
NonStop サーバが、HP 製品群の主要な一角を占
統合されて現在の姿になっています。元になった 4
めていることには、どのような意義があるのでしょ
社、つまり HP、コンパック、ディジタルイクイップ
うか。
メント(DEC)
、そしてタンデムコンピューターズは、
日本ヒューレット・
パッカード株式会社
常務執行役員
テクノロジー
ソリューション営業統括
屋代喜久
氏
いずれも優れたテクノロジーカンパニーでした。現
屋代 今回、読者の皆様にお伝えしたいのは、単
在の HP は、その 4 社の良いところを合わせた形
に経理や事務のオペレーションを IT 化してコスト削
で幅広い製品ポートフォリオを持っています。また、
減をするといった従来型のメリットだけでなく、お
それらの製品を用いたシステム構築技術や、維持管
客様の企業価値を高めていくような IT の使い方を
理運用するサービスも含め、全体のバランスが取れ
追及し、提案していきたいという HP の考え方です。
ていると言えるでしょう。この特徴をさらに伸ばす
現在は、IT とビジネスの結びつきが一層進み、IT
ために、旧 4 社の持つ技術を組み合わせ、シナジー
のリスクがそのまま企業のビジネスリスクに直結して
効果を出していく取り組みを続けていきます。
います。システムダウンなどを理由にビジネスを止め
このように、お客様の企業価値向上に貢献して
ることは、企業にとっては財務面での損失はもとよ
きた HP のこれまでの経験、ニーズにあった高いレ
り、企業としての社会的信頼を失い、企業価値を
ベルの製品・サービスを提供してきたことが、お客
毀損することになります。つまり、企業にはあらゆ
様からの支持につながり、結果として 2006 年度
るリスクを想定して、事業を継続させるための取り
の業績においては「世界 No.1 の IT ベンダー」と評
組みが求められているわけであり、そうした取り組
価いただけるほどの成長を遂げられた理由だと考え
みを行っている企業だけが自らの価値を高めていけ
ています。
るのだと思います。 NonStop サーバは、企業価値
を向上させる“事業継続性“のための IT インフラと
ITmedia 統合・合併によって、より優れた製品群
09
ができあがったわけですね。では、その製品ポート
という言葉だけで表現するのは、的確とは言えなく
フォリオに関して、ご説明下さい。
なってきます。そこで、IT に変わる、新しい情報シ
ステムの捉え方として、HP が提唱しているのが、
屋代 HP のサーバラインアップの中では、まず普
「B.T.(Business Technology)
」というコンセプトで
及機の HP ProLiant サーバがあり、その上にはマ
ルチ OS サーバの HP Integrity サーバが中~大規
す。これは、
IT を
「ビジネステクノロジー」と捉え、
「IT
模に位置し、そしてミッションクリティカル分野の
いう観点から、情報システムのあり方を考えるアプ
最上位機種として NonStop サーバが位置づけられ
ローチです。IT の指標も企業が継続的成長を続け
ています。さらに今年の四月に、大規模なデータウ
がビジネスを動かすドライバーの機能を果たす」と
るのに必要な 3 つの指標、
「低コスト」
「リスク軽減」
エアハウスに特化したサーバとして HP Neoview プ
「ビジネスの成長・加速」にどのように貢献できるか
ラットフォームを正式に発売しています。HP は間違
で判断されるべきである、というのが我々 HP の見
いなく、業界屈指の製品群を揃えている IT メーカー
解です。
だと確信しています。
その中でも、ビジネス変化への対応とリスクの軽
米国 HP のテクノロジーソリューションズグループ
減は依然として重要な位置付けを占めています。IT
担当上級副社長、アン・リバモアは、
「IT インフラ
の障害によるビジネスへの影響を最小化すること
のマネジメントと変革を支援する、世界でベストの
で、いかに「ビジネスリスクの大幅な軽減」を達成す
テクノロジ・プロバイダになる」ことを目指すと語っ
るかという課題に対し、NonStop サーバは事業継
ています。日本 HP としても、国内の社会/企業 IT
続という観点から、ビジネスリスクの大幅な軽減に
インフラの No.1 ベンダーを目指し、エントリーレベ
大きな役割を果たすことができると考えています。
ル の HP ProLiant サ ー バ か ら ハ イ エ ン ド の
NonStop サーバまで幅広い製品を提供して、引き
ITmedia 事業継続という点では、NonStop サーバ
続きお客様や日本社会に貢献していきたいと考えて
に対するニーズは非常に大きいと言えそうですね。
います。
屋代 はい。NonStop サーバは、金融や通信、グ
企業の継続的成長を支える
NonStop サーバ
●
ローバルに展開している製造業など、24 時間 365
日のサービスが求められている企業で、大規模な
バックボーンなどに使われています。
製造業でいえば、コモディティ商品を大量に販売
するようになってきています。またマーケットが先進
ITmedia 今、IT 部門にとって重要なのは何だとお
国から発展途上国まで拡大し、取引が増えることに
考えですか?
より、急激にトランザクションが伸びてきています。
例えばインドなどでは、従来では富裕層のみがイン
屋代 米国の HP では、定期的に各国のユーザー
ターネットを利用していていましたが、この裾野が
企業の CIO や COO に集まっていただき、関心事
広がりつつあり、今後どこまでトランザクションが
などをヒアリングしています。その中で「情報システ
伸びるか分かりません。ですから、そのバックボー
ム部門が今後、優先すべき項目」という質問の答え
ンには、ボトルネック解消のために「止めずに拡張
で上位を占めたのは、
「ビジネスと IT の整合」
「収
できる」ことが求められているのです。
益性」
「競争 優 位性 」
「事業拡大」
「投資収 益 率
また、NonStop サーバは、オペレーション上も、
(ROI)の向上」といった内容でした。情報システ
複数のトランザクション、OLTP やバッチを同時に
ム部門がビジネスで担う役割、責任範囲がより拡大
使えますから、例えばデータベース再構築中でもス
し、それに伴い IT 投資の評価軸が「ビジネス成果
トレスなくトランザクションできるなど、メンテナン
にどのぐらい貢献しているか?」へとシフトしている
ス時間も止めずに済みます。他社では、Windows
状況が、調査結果からは伺われます。企業の情報
などでフォールト・トレラント(ft)サーバを作り、
「止
システム部門の使命は、これまでの「予算内でのプ
まらない」ことをセールスポイントとしていますが、
ロジェクトの完成」や「不具合のないシステム構築」
ミッションクリティカル度としてはレベルが全く違い
といった「サポート面」に止まらず、
「ビジネスへの
ます。
具体的な貢献」へと大きく移行しており、
「IT のパ
ラダイムシフト」が世の中全体の流れとして進みつ
ITmedia 汎用機などのハイエンドサーバ市場が縮
つあることが見て取れます。
小する中で、NonStop サーバが伸びていると聞いて
このように、IT の役割がビジネスに直結し、企業
います。
の価値向上や変革さえリードするようになると、情
報システム技 術を「IT(Information Technology)
」
10
屋代 日本国内で言えば、2002 年以降の NonStop
止まらない、という絶対価値
ビジネスの継続性が企業価値の基準となる
サーバの売上は年率平均で 2 桁以上成長しています。
サーバは統合が進められているため、全体的に市場
規模は鈍化しつつありますが、その中での年率成長
2 桁ですから、NonStop サーバが多くのお客様から
「事業継続性の大切さを
広めていきたい」
●
支持されていることの証明だと思っております。
日本国内において、事業継続性への理解が進ん
ITmedia まだまだ将来性があり、その価値を伸ば
できているというのも、NonStop サーバの売上成
していこうとしている NonStop サーバですが、その
長の背景にあるかと思います。とはいえ、一方で、
販売施策はどのように進めるお考えでしょうか。
2006 年に発表されたインターリスク総研の調査で
は、BCP を策定していない企業が 70%となってい
屋代 今まで私どもが実施してきたことをお客様に
ます。経済産業省が日本の企業を対象に行ったア
もっと、お伝えしていきたいですね。そして、事業
ンケートなどを見ても、リスクマネジメントに全く取
継続への取り組みに対して足踏みをしているお客様
り組んでいない企業が半数以上、56.5%です。日
に、もう一度提案していきたいと考えています。
本企業の事業継続への本格な取り組みは、これか
BCP に関しては、多くの企業では、まず計画を
らが本番です。このような状況ですから、今後もさ
作る段階からコンサルティングを行っていく必要が
らに NonStop サーバが伸びる余 地はありますし、
あるでしょう。そこは、我々には 30 年の経験があ
私達 HP としても、
「 お客様のビジネスを止めないシ
ります。その実体験をもとに HP もユーザーの立場
ステム」として、NonStop サーバをお客様に提供し
として、また、同じように弊社の一部のお客様や、
続けていきます。
またパートナー様にもノウハウの蓄積があるので、
それらをベースとし、きちんとしたやり方を示してい
NonStop サーバ自体にも
将来への継続性がある
●
きます。
事業継続性を高めることは、企業価値を高める
ことにつながるのです。BCP の必要性を、そう思っ
てもらえるといいですね。企業はどこで収益を得て、
どこに投資をしていくのか。会社を経営していく中で、
ITmedia 今後、NonStop サーバはどのような発
IT はどういうところに置かれているのか。それらを
展をしていくのでしょう?
認識した上で、より企業価値が高まるようにするに
は、やはり事業継続性の向上は非常に重要な要素
屋代 タンデムコンピューターズ時代からの独自技
のはずです。
術は、もちろんそのまま伸ばしていきます。例えば、
以前から NonStop サーバをご利用いただいてお
アプリケーションのポータビリティが 高いことも
りますユーザー様は、Itanium をはじめとする新し
NonStop サーバの特徴となっているのです。OS 自
いテクノロジーを導入した NonStop サーバが登場
体が C 言語に近い高級言語で書かれていて、過去
してからも、継続してお使いいただいています。そ
のアプリケーション資産を新しいハードウェア、OS
の事実も、事業継続性の重要さと、NonStop サー
にそのまま乗せて使えるのです。普通の業務アプリ
バの価値を示していると考えています。
ケーションなら、まずそのまま使えます。
一方で、標準的なパーツに関しては、CPU やソ
フトウェアなどの最新テクノロジーに追随しながら、
より高い性能や機能を実現していきます。例えば、
これまでの NonStop サーバは筐体も独自サイズで
したが、NS16000 は 19 インチの標準ラックに収
図5■着実な成長を遂げるHP NonStopサーバ
■Low
■Middle
■High
2002年度以降、
年平均2桁の売上成長
まる 5U サイズのボックスとなっています。
国内のハイエンドサーバ市場が縮小している中
ハイエンド
サーバが
90%を占める
で、NonStop サーバが伸びているという事実は、
こういった価値のおかげなのだと考えています。
NonStop サーバは、今後の長期のロードマップ
もしっかり作ってあります。また、ご使用いただい
90.0%
ている製品のバージョンが販売終了となっても最低
5 年間はサポートを継続しますから、アプリケーショ
ンの上位互換とあわせて長期に渡り安心してご利用
いただけるという点も、継続性として価値を感じて
いただけると思います。
2002 2003 2004 2005 2006
NonStopサーバの売上及びサーバクラス構成比推移
※本記事は、ITmedia エンタープライズ(http://www.itmedia.co.jp/enterprise/)に2007年5月30日~7月23日の期間に掲載されたものです。
11
止まらない、という絶対価値
四半世紀もの間「止めない」運用に
取り組んだ経験者が語る
「匠を育てるプラットフォーム」
HP Integrity NonStop サーバは、多くのクレジットカードの 24 時間取引を支えてきた。そ
の歴史は実に 25 年近くにも及ぶ。日本総研ソリューションズ執行役員 CTO の森陽一氏は、
「約四半世紀の間、NonStop サーバと共に無停止サービスを実現するシステム課題に取り組
んだからこそ、自身の技術者としての成長があった」と話す。
24 時間 365 日のサービスが要求される金融業
ITmedia 昭和 57 年と言えば、およそ 25 年前で
界では、システムの可用性が経営に直結する。株
あり、メインフレームが全盛の時代だったはずです。
式会社日本総合研究所及び株 式会社日本総研ソ
メインフレームではなく NonStop サーバを採用した
リューションズは、様々な企業の基幹系システムを
のは、どのような理由からでしょうか。
手掛けている国内屈指のインテグレーターだ。今回
は NonStop サーバの特性を活かし、24 時間のク
森 当時は、日本人の海外旅行者が増加している
レジットカード取引のシステムインフラ設計の第一人
時代でもありました。海外のあらゆる国でカードが
者であった株式会社日本総研ソリューションズ社の
使われるようになると、クレジットカード会社には、
執行役員 CTO の森陽一氏と日本ヒューレット・パッ
24 時間のサービス提供が求められるようになりまし
カード株式会社 取締役 専務執行役員 吉田雅彦氏
た。このような状況に対応するためには、24 時間
に、NonStop サーバとクレジットカード業界の関係、
365 日稼働できるシステムが必要になります。ハー
そして事業継続の重要性を語ってもらった。
ドウェアの耐障害性をいくら高めても、例えば OS
が ダ ウ ン して し ま って は 意 味 が あ り ま せ ん。
株式会社日本総研
ソリューションズ
執行役員 CTO
森陽一
氏
※ 1 オ ーソ リと は、
クレジットカードの 与
信 処 理という意 味で、
販売店側がカード会社
に対し、
その顧客のカー
ド利用を認めても良い
か の 承 認を得ること。
利用カードの有効性や
取引金 額( 購 入金 額 )
分の与信枠の空きがあ
るかを確認。空きがあ
る場合、当該金額相当
分を確保し、承認する。
※ 2 疎結合について
は、6 ページの第 2 回
記事「ビジネスの継 続
性を保 証する“ 止まら
ないシステム”とは?」
を参照。
12
NonStop サーバは「止まらない、止めなくていい」
四半世紀に渡るパートナーシップで
培われた信頼感とは
●
というコンセプトで作られたサーバであり、24 時間
のサービス提供を実現するために必要なサーバでし
た。
※2
また、NonStop サーバはシステム全体が疎結合
ITmedia NonStop サーバとの関係はいつ頃から
となっています。当時、国内のクレジットカード決済
のものなのでしょうか?
ネットワークのインフラ整備が進み、我々はこのクレ
ジット決済ネットワークと通信接続するシステム課題
森 昭和 57(1982)年、当時の日本情報サービ
を抱えていました。そもそも、ネットワーク同士を接
ス株式会社(現在の株式会社日本総合研究所。な
続することは双方を疎結合で結ぶことであると考えて
お、日本総研ソリューションズは 2006 年に株式
いたので、
「自身のアーキテクチャが疎結合である
会社日本総合研究所を分社化して設立された)で、
NonStop サーバを使えば相性が良いのでは?」とい
NonStop Ⅱというサーバをクレジットカード会社向
う思いもありました。実際、後にクレジットカード業
けのオーソリゼーション処理(与信、信用照会など、
界 向けのパッケージソリューション「TOURNET/
以下オーソリ )システムとして構築する際に採用
CARD」を開発した際にも NonStop サーバを基盤と
したのが最初です。ちょうどクレジットカード加盟
して採用しまして、複雑なカード決済ネットワーク間
店が増えてきて、またリアルタイムで与信ができる
の相互接続も容易に実現できました。
今ではクレジッ
端末が登場、通信環境も整いはじめ、オーソリも
トカード会社 20 社ほどにご利用いただいています。
※1
24 時間のサービスが求められるようになってきた時
代でした。
吉田 当時、NonStop サーバを提供していた日本
止まらない、という絶対価値
ビジネスの継続性が企業価値の基準となる
タンデムコンピューターズにとっては、
クレジットカー
NonStop のアーキテクチャが、30 年たった今も陳
ド業界での採用は大きな成果でした。というのも、
腐化しないどころか、いまだに他の誰の追随も許さ
リアルタイム処理で 24 時間サービスが可能という
ず、先進性を発揮していることに驚かされます。
NonStop サーバの特徴がフルに生かせるマーケット
だからです。
森 とはいえ、開発者にはオープン系の技術を持つ
今やクレジット業 界では毎日使われているクレ
人が増えてきています。だからこそ NonStop サーバ
ジットカードの約 70%が NonStop サーバで処理さ
でも、オープン系プロダクトが使えるようになってき
れています。
オーソリだけでなく、
カード会社間のネッ
ていますよね。
トワークにも NonStop サーバが広く用いられ、ま
さに社会インフラとなっています。
吉田 NonStop サーバにとっては HP と合併したこ
とが大きな天恵でした。開発環境におけるユーザー
オープンシステムを凌駕する可用性
●
インターフェースのオープン化はもちろん、
CPU チッ
®
プも業界標準のインテル社の Itanium 2 プロセッ
サ(64 Bit)が採用され、且つ、数百に及ぶオープ
ンソースの移植がすでに実施されています。いまや、
ITmedia Windows や Linux など、オープンシステ
オープン環 境で育った技術 者の方々がぞくぞくと
ムの採用を検討したことはありますか?
NonStop サーバのシステム担当として参加いただい
日本ヒューレット・
パッカード株式会社
取締役 専務執行役員
吉田雅彦
氏
ております。この流れは今後ともますます加速され
森 オープンシステムにもメリットはありますが、シ
ていくことは間違いありません。
ビアな環境での稼働確認が大変困難な作業である
と考えています。
「様々なプラットフォームで動作し
ます」
「最適な技術を組み合わせて選んでください」
というのがオープン系の売り文句ですが、そのため
に、全ての組み合わせを網羅する突き詰めた検証は
四半世紀の経験で培われた
事業継続のノウハウ
●
できません。テストで検証できていない技術の組み
合わせがあれば、世界で初めての障害が発生してし
ITmedia 四 半 世 紀 に 渡って NonStop サーバを
まうかもしれません。
使ってきた中で、印象に残るエピソードなどはあり
一方、NonStop サーバは一気通貫でサービスを
ますか?
提供されていますから、その点で大きく異なります。
しかも、どのユーザーも停止させずに運用させ続け、
森 NonStop サーバをオーソリ処理に使うために
良い意味で技術を枯れさせていますから、より一層
は、オーソリ以外の業務処理が稼働するメインフ
の信頼感があります。
レームの基幹システムと連携処理を行う必要があり
ました。ここで課題となったのは、メインフレーム
吉田 ベンダーとして言えば、コンピュータシステ
と NonStop サーバのデータベース同期の実現方法
ムというものはそもそも、ハードウェアとソフトウェ
です。異なる機種間のデータベースの同期を確実に
アの同時設計が前提になっています。NonStop サー
実現させる方法は外部のトランザクションを受信し
バも、無停止運用のために両方を同時に設計開発
た時刻通りにシリアライズして処理することです。
しています。それに対しオープンシステムでは、止め
しかし、それでは、パフォーマンスが出ませんでした。
ない運用のために後付けで追加技術を投入してい
バッチでデータを吸い出すことも考えましたが、せっ
るのです。これは、例えて言えば、潜水艦を空に飛
かく NonStop サーバを利用しているのにバッチ処
ばそうと努力するようなもので、相当無理が出てし
理を行うのは本末転倒であると考え直しました。
まいますし、結果としていろいろな齟齬が出てしま
思考錯誤の結果、
「仕掛かりキー」という仕組み
います。
を作って対応しました。全てのトランザクションを受
90 年代後半には、オープン系システムでのクラス
信時刻でシリアライズするのではなくて、シリアラ
タによる継続運用が盛んにアピールされた時代があ
イズさせたいキーを設定し、その単位でシリアライ
りました。しかしユーザーの方々はその後の 10 年
ズをして、キー値が異なれば並行処理を行う方法を
あまりの経験を通して、その難しさや限界を、はっ
考えつきました。例えば、カード会員ごとに CPU
きり認識されたのではないでしょうか。
を割り当てて対応し、複数 CPU で複数のカード会
そのような背景からと思われますが、オープン系
員の処理を並行して行うという仕組みです。
の高可用性システムで大きな障害を経験したユー
ザーが、最近になって NonStop サーバに切り替え
吉田 その 仕組みに役 立っているのが NonStop
ようとする動 きがかなりでてきています。 この
SQLですね。NonStop SQL は ANSI 準拠のリレー
13
図6■クレジットカード業界・オーソリシステム概要図
海外
カード会社
信用照会端末
オーソリシステム概要図(FEP系)
対外接続
制御系
カード決済
ネットワーク
(海外)
オーソリ
ゼーション
アプリ
ホスト
コンピュータ
接続制御系
クレジット
基幹業務
システム
ATM
カード会社
信用照会端末
カード決済
ネットワーク
(国内)
無用検知
ATM
対外接続
ログファイル
オーソリ
データベース
与信業務端末
ショナルデータベースですから、API から見れば他
吉田 ノンストップ性の保証というのは、製品だけ
社の RDB と違いはありません。もともと、RDB に
でなく、システムの設計から構築、開発、運用まで
はパフォーマンス上の限界があったのを、NonStop
全てのフェーズにわたり支える体制があってこそだと
SQL ではパラレルな OLTP を可能にしたことで、そ
思います。ですから HP では、ユーザーが実運用中
の制約を越えることができました。他社の RDB で
の NonStop サーバが片系状態になったりしたら、
パラレル処理を実現したのは最近のことですから、
すぐに関係者全員にノーティス情報が飛び、復旧作
15 年は先取りしていることになります。
業に取り掛かかれる体制を構築しています。製品か
ら保守サービスまで、米国本社の開発元まで巻き
森 障害耐久テストでも新たな発見がありました。
込んでのお客様の事業継続を支える万全の仕組み
CPU やディスクを停止させ、模擬的に障害を発生
があるのです。
させてシステムの動作を確認するという内容です。
わざわざ、そのテストのためのコマンドが用意されて
いるのも止まらない NonStop サーバならではでしょ
うね。オープン系のシステムでは、このようなテスト
はほとんど実施しないでしょう。
事業継続が重要な今こそ求められる
NonStop サーバ
●
障害耐久テストでは、しばしばシステムテスト段
階で見つからなかったアプリケーションのバグが出
ITmedia 事業継続という言葉が出たので、最後に
てくるので、
「本番で出なくて良かった」と言いつつ
そちらの話題をお願いしたいと思います。事業継続
修正しました。このようなテストに対する拘りはこ
には、どのような取り組みが有効だとお考えでしょ
の機械に向かい合う技術者の使命として、テストに
うか。
対する拘りの文化を築きました。この文化は今も
脈々と受け継がれております。また、二重化された
森 我々の場合、例えば、通常のシステムとバック
ディスクの一方を落として、片系から復旧させるとい
アップのシステムを用意しておき、OS アップデート
う作業は、運用担当者にとっても良い経験になって
や予防保守などの際に切り替えて使うといった運用
います。ちなみに、NonStop サーバは、ディスクが
も行っています。 基 本 的 には「 止めなくていい」
片系になると、リトライ回数を増やすように作られて
NonStop サーバですが、それを止めるときのことも
います。厳しい状況になっても頑張るシステムとい
考えておくというわけです。
うのは、なかなか感心します。
吉田 計画停止も重要な要素です。
「何かあったと
14
止まらない、という絶対価値
ビジネスの継続性が企業価値の基準となる
きに止まらない」だけでなく、
「何かをするときにも
てこれるので、まさに「匠を育てるプラットフォーム」
止めなくていい」のが NonStop サーバの大きな特
だとも考えています。
徴です。例えばハードウェアの構成変更やデータ
ベースの再編成などは、オンライン処理を止めずに
吉田 私は、
タンデム時代から18 年、
NonStop サー
行うことができます。実際、某大手家電会社では、
バと付き合ってきました。その経験の中でも、特に
基幹システムの数百の全ディスクドライブの入れ替
HP との合併は大きな意義を持っていると思います。
えを全く停止させずに行いました。
HP が NonStop サーバを開 発・販 売することで、
HP は他社が絶対に保有できない「市場において唯
森 従来、計画停止を行う場合は、データ量の少
一無二」の存在であるプラットフォーム製品を品揃
ない深夜の時間帯を使っていましたが、インターネッ
えできました。世の中の多くの製品は相対的な価値
トや海外取引のデータ量が増加するに従い、深夜
で測られる存在ですが、NonStop サーバは絶対的
の時間帯であっても計画停止を行うことが困難に
な価値をお客様に提供できる製品であると信じてい
なってきています。今後、この傾向は加速度的に高
ます。
まっていくでしょうから、いまや「止めなくてもいい」
システムでないと社会的なインフラに成りえなくなっ
森 NonStop サーバは、私が出会った頃から独自
ていると言っても過言ではなく、NonStop のアーキ
の技術をもつ、ユニークな製品でした。HP との合
テクチャの重要性がますます高まっているわけです。
併で、オープン系の要素も取り入れ更に進化を続け
また、運用サイドでも、止めない運用には神経を
ているのですね。先頃発表された大規模なデータウ
使います。単純なミスをなくすことも必要なのです。
エアハウスに特化した
「HP Neoview プラットフォー
ですから、管理基準を厳しくしたり、運用担当者の
ム」もアーキテクチャ的には NonStop サーバを引
マインドを高めたりといった点も重要です。
き継 いだ 存 在と聞 いております。HP 社の 中で、
NonStop サーバのアーキテクチャが評価されている
吉田 NonStop サーバには、事業継続を担当され
証なのでしょう。私としても、
今後とも NonStop サー
る開発や運用サイドの方々の負担を軽減する仕組
バの更なる機能拡大と技術の大いなる進化に期待
みも用意されています。例えば 15 年ほどの歴史を
しております。
持つミドルウェア「NonStop RDF」
(Remote Data
Facility)は、遠隔地に置かれた 2 つのデータセン
ター間でデータの同期を行うものですが、アプリ
ケーション側で全く意識することなく、トランザク
ション単位での同期を可能にしています。ユーザー
である某都市銀行様では、
「NonStop RDF」を使
い、1 日あたり数十兆円規模の取引きを支えていま
す。大手銀行のようないわば究極のディザスタトレ
ラントが求められるところで、
「NonStop RDF」が
役に立っているのです。このようなことをオープン系
で行おうとしたら、開発や運用がどれだけ大変なこ
とになるか、想像もできません。
森 NonStop サーバは耐 障 害 性を売り物にした
ハードウェア・プラットフォームであるが故に、問題
の解決には正面から立ち向かって来ました。困難な
いくつかのシステム課題に対しても疎結合のアーキ
テクチャの利点を極力引き出す解決策を徹底して考
え抜きました。例えば、システムに唯一存在しない
タスクを持たない設計思想を貫き、同じ処理を並行
して稼働させることで徹底したリスク分散とトランザ
クション増加に耐えられるアーキテクチャとしまし
た。 使 い 方 次 第 で、 必 ず 課 題 を 解 決 で き る
NonStop サーバは、たとえ障害が起きても解決策
があり迷宮いりすることがない。過去も今もこの解
決策がある安心感が、機械の良さを最大限に引き
出そうというところまで、技術者としての意識を持っ
※本記事は、ITmedia エンタープライズ(http://www.itmedia.co.jp/enterprise/)に2007年6月22日~7月23日の期間に掲載されたものです。
15
止まらない、という絶対価値
もはや「待ったなし」
の
次世代EDIを実現するシステムとは
今後の EDI に求められる要件は、24 時間 365 日の稼 働と、リアルタイム処 理だ。特に
流通業界などでは、次世代 EDI 標準への対応が大きな流れとなっている。HP Integrity
NonStop サーバは、この EDI の分野でも重要な役割を果たす存在だ。
電子データによる効率的な受発注を実現し、い
処理が基本であり、1 日に 1 回から、多くて数回の
まや企業間の取引に不可欠な存在となっている EDI
一括処理で済んでいたという。
(Electronic Data Interchange)。多くの業界で営
「しかし、コンビニエンスストアに代表されるよう
業時間の拡大やビジネスのグローバル 化に伴い、
に、今は 24 時間営業で大量の商品が流通する時
最近では EDI システムにも 24 時間 365 日の稼働、
代、バッチ処理では間に合いません。もはや、EDI
そして高い可用性が求められるようになってきた。
のシステムは『止められない』のです。そこで、ここ
数年では、新しい形の EDI 標準を確立することが、
未だに残る時代遅れの仕様
流通をはじめ各業界での緊急課題となっています」
(藤野氏)
●
急激に変わりつつある
流通業の EDI 環境
株式会社データ・アプリケーション ACMS 統括
本部 上級コンサルタントの藤野裕司氏には、約四
半世紀もの期間に渡って EDI ソリューションを手掛
株式会社データ・
アプリケーション
ACMS 統括本部
上級コンサルタント
藤野裕司
16
氏
●
けてきた経歴がある。
その藤野氏は、現在の日本の EDI には大きな課
EDI の仕様に関して、特に大きな動きがあるのは
題があると指摘する。
流通業界。他の業界よりも新規格への移行が大幅
「日本の EDI では、1980 年頃にスタートした当
に遅れてしまったことが最大の原因だと藤野氏は言
時からの古い標準、
『全銀手順』
『JCA 手順』といっ
う。
たプロトコルがいまだに使われています。データの
「流通業界では、2000 年問題への対応が一段
仕様が各業界などの都合でいくつも枝分かれしてお
落したところで『消費税総額表示』への対応に追わ
り、細かく分類すれば流通業界だけを見ても 3000
れ、EDI の新しい規格を考えている余裕がなかった
種あまりになっているという状況です。しかも、そ
のです」
れらの手順に対応した通信機器はすでに販売終了
新たな EDI 標準策定のため、旗振りを始めたの
となり、故障したらどうしようもありません」
が経済産業省だ。2003 年から「流通 SCM 事業」
長い歴史を経て、EDI を取り巻く環境は大きく変
をスタート、総合スーパーや食品スーパーなどでの
わった。通信事情だけをみても、今ではインターネッ
取引の流れを研究し、インターネット経由による実
トが広く普及しているが、JCA 手順などは公衆回線
証実験を行った。
網を前提に作られたものだ。また、EDI の使われ方
も変わってきており、単なる企業間の商取引に限ら
「この事 業は 2005 年までの 3 カ年で完 了し、
続く 2006 ~ 2008 年は 2 期目となる『流通シス
ず、企業内を含めた広い意味でのデータ交換という
テム標準化事業』として、いよいよ本番に向けた標
位置付けになってきている。もはや、従 来の EDI
準化と共同実証、普及・拡大に取り組んでいるとこ
方式では、この時代の変化に対応しきれなくなった
ろです。2006 年度には、量販店 4 社、卸売 9 社
と言える。
が参加する共同実証も終え、グロッサリー商材では
藤野氏によれば、JCA 手順などが登場した頃、
ほぼ実稼働のめども立ちました。今年度からは、商
コンピュータシステムはメインフレームによるバッチ
材を生鮮やアパレルに拡大、業態を百貨店へ広げよ
ビジネスの継続性が企業価値の基準となる
止まらない、という絶対価値
うとしています」
(藤野氏)
るというのが実状です。製造業といっても、単一の
通信基盤はインターネット、通信手順は、
「ebMS
業界とはいえないのです。扱っている商品も違えば、
※1
」
「AS2
※2
」という 2 つの世界標準に加え、日
本独自の「JX 手順
※3
取引形態も違っており、製造業全体での業界標準
」も選択できるようになってい
策定は難しいと言わざるを得ません。
また、
ASP サー
る。国内専用規格の採用は、中小規模企業が多い
ビス自体がどれだけ安価に提供できるかも大きな課
日本の商環境に対応したものだという。
題となっています」
(藤野氏)
データ形式は XML で、企業識別や商品識別の
コード体系も国際標準に準拠したものとなった。こ
の共同実証を起点として、いよいよ本格的に日本の
流通業における EDI 改革が進むと藤野氏は期待し
ている。
次世代 EDI 標準に対応する
「ACMS」
●
「今後、大手量販店が動きだせば、そこに納品す
る卸売り各 社や直取引を行っているっているメー
これまで紹介してきたように、EDI 標準は時代に
カーはすべて関係してきます。さらには、そこにつ
応じて新しい仕様が次々に作られてきている。これ
ながる取引先へと、水面に広がる波紋のようにどん
ら次世代 EDI 標準では、基本的にインターネット
どん広まっていくことでしょう」
(藤野氏)
という低コスト・高速の通信回線を活用し、データ
形式も柔軟性の高い XML を採用している。そして、
バッチでなくリアルタイムの処理を行い、ビジネス
製造業の EDI は
業界ごとの標準規格へ
の迅速化を図っているという点が、今の EDI システ
ムに大きく影響を及ぼす。
日本ヒューレット・
パッカード株式会社
テクニカルセールス
サポート統括本部
NonStop ビジネス推進部
シニアコンサルタント
篠原哲也
氏
「用途も、単なる受発注情報にとどまらず、在庫
●
状況や配送状況といった状態の把握などに用いら
製造業では、最終的な商品の分野ごとに業界が
れるようになってきており、より頻繁なデータのや
分かれて、それぞれの EDI 標準を作っている。さら
り取りが発生します。そういう意味では、まさに止
に国ごとの事情があり、様相は複雑だ。
められないコンピューティングが必要になってくると
例えば電子機器業界では、多くが JEITA
※4
(旧
言えるでしょう」
(藤野氏)
EIAJ)による国内の EDI 標準を使っており、最近
データ・アプリケーションの EDI 用ソリューショ
ではそれに加えて「ECALGA
ン「ACMS」 シリーズ は、1993 年 の 発 売 以 来、
※5
」という規格が登
場している。世界 標準として「RosettaNet
※6
」が
常に改 良を続けて発 展してきた製 品だ。日本の
存在しているが、日本独特の取引に合わせにくい部
EDI 市場においてシェア 38.3%(富士キメラ総研
分もあり、国内ではそれほど多くは採用されていな
『2007 パッケージソリューション・マーケティング
い。ただ、最近になって海外のメーカーが日本の部
便覧』
)と、2 位の倍近い売上実績で首位を誇る。
品メーカーに直接 RosettaNet による取引を要請す
ちなみに、先に紹介した経産省の「流通システム標
るケースもでてきている。これにより、海外とは国
準化事業」では、量販店 4 社中 1 社と卸売 9 社
際標準、国内では日本標準で EDI を行うなど、標
中 4 社が ACMS を採用しているとのこと。
準をうまく使い分けるテクニックもこれからは求めら
このシェアの高さは、単に古くからの実績という
れるようになるだろう。
安心感だけによるものではない。サポート規格の幅
それに対し、自動車業 界では、
「ANX(米国)」
広さも大きな要因だ。多様な標準に 1 つの製品で
「JNX(日本)」といった、閉じた IP 網上でデータ
対応できるということは、複数の標準にそれぞれの
交換を行うセキュアなネットワークが構築され、業
システムで対応するよりずっと効率的だ。EDI に関
界のサプライチェーンを支える基盤となっている。
連するシステムを単純化でき、インテグレーション
完成車メーカーが業界をリードしやすいことから、
も運用もシンプルにできる。また、ACMS は多様
標準も決まりやすいということのようだ。
なメッセージング処理に対応し、メインフレームと
「製造業界」という大きな枠組みでの EDI 標準
のデータ連携を行うアダプターも用意されているた
策定の動きもある。それが「COXEC:コゼック」だ。
め、
EDI のみならず EAI にも利用できるのが特徴だ。
データ形式は XML、メッセージングにはプッシュ
最近では企業間の取引だけでなく、企業内でも部
型だけでなくプル 型にも対応した最 新の「ebMS
門間でデータ連携が必要になってきているが、そう
3.0」を用いており、大企業から中小規模まで幅広
いったデータ変換・中継を一元化することが可能に
く利用できるのが特徴だ。インターネット上に複数
なる。
の共通 ASP サーバを置き、そこへ各社がアクセス
「そのときどきの日本の世の中に求められるもの、
するという仕組みだ。
標準などを全て取り込んできて、今に至ります。通
「しかし、現時点ではまだ盛り上がりに欠けてい
信プロトコルからシンタックスルール(データフォー
※ 1 ebMS:EDI の
国際標準 ebXML の通
信プロトコル部分。イ
ンターネット上で高 速
安 全 高 度 な EDl 環 境
を構築することが可能
※ 2 AS2:lETF が
制定したインターネット
EDI の国際標準。ウォ
ルマートを中心に欧米
での普及が始まってい
る。ebMS より規格は
シンプル
※ 3 JX 手 順:ebMS
や AS2 などのサーバタ
イプを利用できない小
規模な企業向けに開発
された日本独自仕様ク
ライアントタイプの通
信プロトコル
※ 4 JEITA:電 子 情
報技術産業協会
※ 5 E C A L G A:
ECALGA(Electronic
Commerce ALliance for
Global Business
Activity)は、JEITA/EC
センターが標準化、実
用化を推進している次世
代 EC 標準の総称
※ 6 R o s et ta N et:
PC 業界や電子部品業
界が中心となった企業
間電子商取引の標準化
団体
17
図7■2006年実績調査に基づいたACMSの製品市場占有率
単位:100万円.%
金額
年度
2006
(実績)
メーカー
2007(見込)
比率
(%)
データ・アプリケーション
比率(%)
1,380
38.3
1,500
39.0
A社
700
19.4
770
20.0
B社
700
19.4
770
20.0
C社
350
9.7
370
9.6
その他
470
13.1
440
11.4
3,600
100.0
3,850
100.0
合計
出展:株式会社富士キメラ総研『2007パッケージソリューション・マーケティング便覧』
マット形式)、文字コードなどあらゆる EDI 標準を
ACMS に統合していくことを検討しています」
全てサポートしているのは ACMS だけですね」とい
この ACMS と NonStop サーバの組み合わせは、
う藤野氏の言葉には、長年に渡って ACMS を育て
非常に相性が良いのだと篠原氏は言う。
てきた DAL の自負が伺える。
「ACMS は分散処理に対応した設計となっており、
NonStop サーバはシェアードナッシングの疎結合
ACMS と NonStop サーバの
密接な関係
●
ACMS はマルチプラットフォームをサポートしてお
アーキテクチャですから、各タスクを異なった CPU
上に分散配置することができます。ACMS はピュア
Java で組まれており、NonStop サーバも Java VM
を持っていますから、そのままでも動作しますが、
高可用性かつ、効率的な動作のためにコンポーネン
トを追加し、最適化を図っています」
り、製品ファミリー全体では、クライアント版 OS
からエンタープライズサーバまで、さまざまなプラッ
トフォーム 上で 稼 働 する。 そして、HP Integrity
NonStop サーバ(以 下、NonStop サーバ)にも、
次世代 EDI はすぐそこに
●
もちろん対応している。企業の規模を問わず使える
18
製品という点も大きな特徴だ。
「日本では、まだまだメインフレーム上でのデータ
日本ヒューレット・パッカード株式会社 テクニカ
交換が相当数使われているのが実状です」と藤野
ルセールスサポート統括本部 エンタープライズ スト
氏は言い、それらのユーザーに対して警鐘を鳴らし
レージ・サーバ推進本部 シニアコンサルタントの篠
ている。
原哲也氏は、NonStop サーバでの EDI について、
「あるベンダーのメインフレーム用データ交換エ
次のように語っている。
ンジンだけでも、まだ 1000 社以上で使われている
「24 時間 365 日の稼働や、高い拡張性などのメ
とも言われています。こうした企業のうちの相当数
リットが評価され、旧世代の EDI 標準だった時代
が、近い将来には次世代 EDI への対応を迫られて
から、流通業・製造業、また ASP サービス等の大
くるでしょう。業界内にいて感じるのですが、ここ 1
規模 EDI システムに NonStop サーバが用いられて
年ほどで、大きく風向きが変わってきました。業界
きました。次世代 EDI での採用はこれから本格化
全体が一気に次世代 EDI へ移行するとしたら、一
する段階ですが、すでにいくつかの先駆的なプロ
体、何社のシステムインテグレーターが動かねばな
ジェクトが動き出しており、もうすぐ本番稼働開始
らないでしょうか。自分の判断で動かせるうちに、
というものもあります。また、ある企業では、これ
早めに移行した方が良いのではないでしょうか」
まで複数(汎用機も含む)プラットフォームで稼動
NonStop サーバはメインフレームにも接続できる
して い た EDI シス テムを NonStop サ ー バ 上 の
ため、メインフレームからオープン系への段階的な
止まらない、という絶対価値
ビジネスの継続性が企業価値の基準となる
移行も容易に行える。まず通信部分を ACMS に置
バ上の ACMS への移行というパスは、多くのメリッ
き換えて次世代 EDI への迅速な対応を行い、その
トを提供できると思います」
(篠原氏)
後はアプリケーション資産を徐々にオープン系へ移
流通業や製造業を中心として、いよいよ次世代
行していくことができる。
EDI への対応は「待ったなし」の状況になってきた。
「NonStop サーバの信頼性、可用性は、他のオー
しかも、業界全体の動きであるから、企業規模に
プン系サーバにはないものです。また、EDI 以外の
関係なく対応が不可欠と言える。NonStop サーバ
部分でも、NonStop サーバはメインフレームと組み
と ACMS の組み合わせは、こうした次世代 EDI 対
合わせて使うのに適した機能を数多く備えています。
応はもちろん、さらに多くのメリットをもたらすソ
メインフレームでのデータ交換から、NonStop サー
リューションと言えよう。
※本記事は、ITmedia エンタープライズ(http://www.itmedia.co.jp/enterprise/)に2007年7月5日~8月5日の期間に掲載されたものです。
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お問い合わせはカスタマー・インフォメーションセンターへ
03 -6416 -6512 月∼金 9:00∼19:00 土 10:00∼17:00(日、祝祭日、年末年始および5/1を除く)
HP Integrity NonStop サーバ製品に関する情報は http://www.hp.com/jp/nonstop
記載されている会社名および商品名は、
各社の商標または登録商標です。
本カタログに記載された内容は、予告なく変更されることがあります。
本コンテンツは、ITmedia エンタープライズ
(http://www.itmedia.co.jp/enterprise/)
へ、
2007年3月29日∼8月5日に掲載された記事を再構成したものです。
記載事項は2007年3月現在のものです。
日本ヒューレット・パッカード株式会社
〒102-0076 東京都千代田区五番町7番地
JXX07214-01
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