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プロピレンイミン/Propyleneimine(75-55-8)

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プロピレンイミン/Propyleneimine(75-55-8)
急性曝露ガイドライン濃度 (AEGL)
Propyleneimine (75-55-8)
プロピレンイミン
Table
AEGL 設定値
Propyleneimine
75-55-8
(Final)
ppm
10 min
30 min
60 min
4 hr
8 hr
AEGL 1
NR
NR
NR
NR
NR
AEGL 2
83
25
12
2.5
1.2
AEGL 3
170
50
23
5.1
2.4
NR: データ不十分により推奨濃度設定不可
設定根拠(要約):
プロピレンイミンは、アジリジン化合物の一つであり、ラテックス表面塗装用樹脂を変性
させて粘着力を向上させるほか、織物や紙、染料の接着性を調整するために使用されてい
る。また、写真、製薬工業、ゼラチン、有機合成などにも使用されている。プロピレンイ
ミンは、無色の油状液体で、アンモニアに似た臭いがあり、可燃性で、爆発の危険性があ
る。エチレンイミンに類似の構造と毒性を有する。
プロピレンイミンのヒトにおける毒性や臭気検知閾値に関するデータは得られなかった。
ラットおよびモルモットを用いた時間-反応試験において、モルモットでは、500 ppmで60
分間曝露した場合6匹中1匹が死亡し、同じ濃度で30分間曝露した場合は6匹中1匹も死亡し
なかった。ラットでは、500 ppmで240分間曝露した場合6匹中5匹が死亡し、同じ濃度で120
分間曝露した場合は6匹中1匹も死亡しなかった。AEGL値を導出するための濃度反応データ
は、動物試験からは得られなかった。そのため、相対効力近似法(relative potency approach)
を用いて、プロピレンイミンおよびエチレンイミンの致死データに基づき、AEGL-2値を導
出した。プロピレンイミンは、エチレンイミンより毒性が弱く、動物種によるが、エチレ
ンイミンの8分の1~4分の1であった。例えばモルモットでは5分の1ないしは4分の1、ラッ
トでは8分の1であった。プロピレンイミンを28週間または60週間経口投与されたラットで
複数の部位に腫瘍の発生が認められていることから、国際がん研究機関(IARC)は、プロ
ピレンイミンをグループ2B(ヒトに対する発がん性が疑われる)に分類している。プロピ
レンイミンは、サルモネラ菌(Salmonella)とショウジョウバエ(Drosophila)に変異原性
を示す。
1
プロピレンイミンのAEGL-1値は、導出するためのデータが得られていないため、提言され
ない。AEGL-1値がないことが、AEGL-2値より低い曝露量では健康への有害な影響がない
ということを意味するわけではない。また、プロピレンイミンの特異的臭気認知濃度(level
of distinct odor awareness,LOA)を推定するためのデータも得られていない。
プロピレンイミンは、AEGL-2の評価項目に合致するデータが得られていないため、AEGL-2
値の導出は、プロピレンイミンの吸入毒性をエチレンイミンの吸入毒性と比較する相対毒
性強度近似法(relative toxicity approach)に基づいた。ラットおよびモルモットを同じ濃度・
期間で吸入曝露させた試験のデータから3つの相対毒性値を算出し、それらの幾何平均であ
る相対毒性強度係数5を、エチレンイミンのAEGL-2値に適用した。毒性学で、リスク評価
や他の比較毒性の表出に関連する値の平均を計算する場合は、幾何平均がよく使用される。
幾何平均は、極値(「外れ値」)に過剰な重みを加えないため、一般的に使用されている。
幾何平均は、外れ値を分布の中心に近づけて、外れ値の過度の影響に対するパラメータの
感度を低くする(Gad 2005)。エチレンイミンとプロピレンイミン間の相対毒性値は一定で
はないため(プロピレンイミンのエチレンイミンに対する相対毒性強度は、ラットを用い
た1件の試験では8分の1、モルモットを用いた2件の試験では、それぞれ4分の1と5分の1で
あった)、幾何平均を用いて、プロピレンイミンのAEGL-2値を導出した。モルモットの過
度の呼吸困難に関する無影響濃度(NOEL)に基づくと、エチレンイミンの10分、30分、1
時間、4時間、8時間の各AEGL-2値は、それぞれ、33、9.8、4.6、1.0、0.47 ppmであった。
加えて、プロピレンイミンのデータベースが不十分であることを考慮して、修正係数2を適
用した。その結果、プロピレンイミンの10分、30分、1時間、4時間、8時間の曝露期間につ
いての各AEGL値として、それぞれ、83、25、12、2.5、1.2 ppmという値が導出された。
モルモットにおけるプロピレンイミンの30分間単回曝露試験のデータから、致死に関する
無影響濃度(NOEL)は500 ppmとなるため、この濃度を、AEGL-3値を導出するための基準
値として使用した。致死性に関するNOELには、不確実係数10(種間の感受性変動について
3、種内変動について3)を適用した。プロピレンイミンは、反応性の高い、直接作用する
アルキル化剤であり、急性毒性の影響は気道に限局されると予想されるため、種間変動に
ついては不確実係数3を適用した。プロピレンイミンによって引き起こされた気道損傷は、
気道上皮にアルキル化剤の影響が直接及んだものであり、このメカニズムは、動物種間で
類似していると予想される。毒性作用は、非常に反応性の高いアルキル化剤であるプロピ
レンイミンが、眼や気道上皮に直接接触して引き起こされると思われ、集団内でそれほど
異ならないと予想されるため、種内変動については不確実係数3を適用した。DNA損傷は、
アルキル化剤への曝露後の細胞損傷に至る一連の事象の第一段階と考えられ、アルキル化
剤への吸入曝露後に呼吸器や全身の器官で長く続くことが、試験で示されている。このメ
カニズムは、母集団をなす個体間や動物種間で異ならないと予想される。 時間スケーリン
グは、Cn × t = kの式に基づいており、ここで、n = 0.91である。この値は、エチレンイミン
2
に曝露したモルモットのLC50のデータをプロビット解析して導出した。Tableに、導出した
AEGL値をまとめて示す。
また、参考として国際化学物質安全性カード(ICSC)を添付する。
3
国際化学物質安全性カード
ICSC番号:0322
プロピレンイミン
プロピレンイミン
PROPYLENEIMINE
2-Methylaziridine
Methylethylenimine
C3H7N
分子量:57.1
CAS登録番号:75-55-8
RTECS番号:CM8050000
ICSC番号:0322
国連番号:1921 (抑制剤入り)
EC番号:613-033-00-6
災害/
暴露のタイプ
火災
爆発
一次災害/
急性症状
引火性が高い。火災時に刺激 裸火禁止、火花禁止、禁煙。酸 水噴霧、水溶性液体用泡消火
性あるいは有毒なフュームや との接触禁止。
薬剤、粉末消火薬剤。二酸化
ガスを放出する。
炭素は不可。
蒸気/空気の混合気体は爆発
性である。酸、酸化剤と接触す
ると火災および爆発の危険性
がある。
皮膚
いずれの場合も医師に相談!
咳、咽頭痛、灼熱感、息切れ、 密閉系。
息苦しさ、吐き気、嘔吐、めま
い、頭痛。症状は遅れてあらわ
れることがある。
新鮮な空気、安静。半座位。医
療機関にただちに連絡する。
吸収される可能性あり!発赤。 保護手袋、保護衣。
他の症状については「吸入」参
照。
15分以上多量の水で洗い流し
た後、汚染された衣服を脱が
せ、再度洗い流す。医療機関
に連絡する。
発赤、痛み、かすみ眼。
数分間多量の水で洗い流し(で
きればコンタクトレンズをはずし
て)、医師に連れて行く。
眼
経口摂取
密閉系、換気、防爆型電気お 火災時:水を噴霧して容器類を
よび照明設備。充填、取り出
冷却する。安全な場所から消
し、取り扱い時に圧縮空気を使 火作業を行う。
用してはならない。防爆用工具
を使用する。
あらゆる接触を避ける!
身体への暴露
吸入
応急処置/
消火薬剤
予防
顔面シールドまたは眼用保護
具と呼吸用保護具の併用。
咽頭痛。
作業中は飲食、喫煙をしない。 口をすすぐ。吐かせない。医療
他の症状については「吸入」参
機関に連絡する。
照。
漏洩物処理
貯蔵
包装・表示
・個人用保護具:自給式呼吸器付完
全保護衣。
・危険区域から立ち退く!
・専門家に相談する!
・すべての発火源を取り除く。
・換気。
・漏れた液をふた付きの容器に集め
る。
・残留液を砂または不活性吸収剤に
吸収させて安全な場所に移す。
・耐火設備(条件)。
・酸、酸化剤、食品や飼料から離して
おく。
・涼しい場所。
・床面に沿って換気。
・元の容器に貯蔵する。
・安定化した状態でのみ貯蔵。
・気密。
・破損しない包装。破損しやすい包装
のものは密閉式の破損しない容器に
入れる。
・食品や飼料と一緒に輸送してはな
らない。
・EU分類
記号 : F, T+, N
R : 45-11-26/27/28-41-51/53
S : 53-45-61
Note : E
・国連危険物分類(UN Hazard
Class):3
・国連の副次的危険性による分類
(UN Subsidiary Risks):6.1
・国連包装等級(UN Packing Group):I
・GHS分類
注意喚起語:危険
シンボル:炎-どくろ-健康有害性
引火性の高い液体および蒸気
飲み込むと生命に危険
蒸気を吸入すると生命に危険
皮膚に接触すると生命に危険
皮膚刺激
強い眼刺激
発がんのおそれ
重要データは次ページ参照
Prepared in the context of cooperation between the International Programme on Chemical Safety & the
Commission of the European Communities © IPCS CEC 1993
ICSC番号:0322
国際化学物質安全性カード
プロピレンイミン
物理的状態; 外観:
刺激臭のある、無色、油状の発煙性液体。
重
要
デ
|
タ
ICSC番号:0322
暴露の経路:
体内への吸収経路:吸入および経皮、経口摂
取。
物理的危険性:
蒸気は空気より重い。地面あるいは床に沿っ 吸入の危険性:
て移動することがある。遠距離引火の可能性 20℃で気化すると、空気が汚染されてきわめ
がある。
て急速に有害濃度に達することがある。
化学的危険性:
酸の影響下で重合するすることがあり、火災
や爆発の危険を伴う。加熱すると分解し、窒素
酸化物を含む有毒なフュームを生じる。ある種
のプラスチック、被覆剤、ゴムを侵す。
短期暴露の影響:
重度に眼、皮膚および気道刺激する。吸入す
ると、肺水腫を引き起こすことがある(「注」参
照)。
医学的な経過観察が必要である。許容濃度を
はるかに超えると、死に至ることがある。
許容濃度:
TLV:0.2 ppm (TWA); 0.4 ppm (STEL); (皮膚); 長期または反復暴露の影響:
A3(動物実験では発がん性が確認されている 人で発がん性を示す可能性がある。
が、人との関連は不明な物質)(ACGIH 2010)。
MAK:皮膚吸収(H); 発がん性カテゴリー:2 ; 生
殖細胞変異原性グループ:3B(DFG 2009)。
物理的性質
・沸点:67℃
・融点:-63℃
・比重(水=1):0.8
・水への溶解性:混和する
・蒸気圧:14.9 kPa(20℃)
・相対蒸気密度(空気=1):2.0
・20℃での蒸気/空気混合気体の相対密度(空
気=1):1.21
・粘度:0.6 mm2/s(25℃)
・引火点:-18℃ (c.c.)
・log Pow (オクタノール/水分配係数):0.13
環境に関する
データ
注
・この物質は可燃性で引火点<61℃であるが、文献では爆発限界は不明である。
・二酸化炭素などの消火薬剤と激しく反応する。
・肺水腫の症状は 2~3 時間経過するまで現われない場合が多く、安静を保たないと悪化する。したがって、安静
と経過観察が不可欠である。
・類似物質のデータはこの物質の環境への影響があるかもしれないことを示している。
・添加された安定剤や抑制剤がこの物質の毒性に影響を与える可能性があるので、専門家に相談する。
・作業衣を家に持ち帰ってはならない。
付加情報
ICSC番号:0322
更新日2010.05
プロピレンイミン
© IPCS, CEC, 1993
国立医薬品食品衛生研究所
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