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1 QGIS の基本操作
2013/06/10
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第2部 QGISの機能の拡張とプラグイン
第2部
QGIS の機能の拡張と
プラグイン
1 QGIS を使ってみよう
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QGIS の大きな魅力の一つは、デフォルトではアクティブになっていないツールやダウ
ンロードして入手するプラグインにより QGIS の機能を拡張できることです。
QGIS1.8 では標準でインストールされているベクタとラスタの解析機能も以前のバー
ジョンではユーザーが独自で QGIS にプラグインとしてインストールしていました。
2013 年 5 月の時点では、期限切れのものも含めると 200 以上、公式には 148 に及ぶプラ
グインがプラグインインストーラからインストールできるようになっています。また、公
式には登録されていないプラグインのリポジトリ(プラグイン提供しているサイト)のも
のも含めると、QGIS にはさらに多くのプラグインがあります。その一方で、数多くの機
能拡張やプラグインの中から自分の目的にあったものを探すには、時間がかります。
そこでこの章では、QGIS でデフォルトで用意されているオプションの機能とコアプラ
グイン、そして筆者がおすすめするサードパーティプラグインを取り上げ、その機能と使
い方について説明します。QGIS のすべての機能とプラグインを紹介することはできませ
んが、QGIS のプラグインはインストールも削除も簡単なので、みなさんもぜひたくさん
のプラグインを試してみて下さい。
機能拡張とプラグインの紹介にあたっては、まずデフォルトで用意されている機能拡張
を紹介します。次いで、プラグインの管理とインストールの方法を解説し、最後にデフォ
ルトで用意されているコアプラグイン(http://docs.qgis.org/html/en/docs/user_manual/
plugins/core_plugins.html)の中から主なものと、筆者おすすめのサードパーティプラグ
インを紹介します。
第 1 章 デフォルトで用意されている機能拡張とプラグイン
機能拡張
デフォルトで用意されている様々な機能拡張は、パネルからアクティブにすることがで
きます。
ツールバーの空欄でマウスの右クリックをしてコンテクストメニューを表示させ、
機能を読み込むか、ビューメニューの「パネル」から必要な機能を選択します。
パネルからアクティブにできる機能のうち、初期状態でアクティブになっているの
は、
「レイヤ」だけです。この「レイヤ」は、読み込んだレイヤがリストされるパネルで、
QGIS を使う上で最も重要な機能の一つです。その他、読み込める機能としては、
・レイヤ順序
・全体図
・取り消し/再実行
・ブラウザ
・GPS 情報
・ログメッセージ
・座標入力
・最短経路
などが有ります。ここでは、これらのパネルから利用できる機能拡張を説明します。
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第1部 QGISの基本操作
レイヤ順序
通常、読み込んだレイヤは、レイヤパネルに上から順番にリストされ、重ね合わせの順
序もリストの一番上が一番上、一番下が一番下になります。読み込むレイヤの数が少ない
場合は、このレイヤリストでの順序と描かれるレイヤの重なりの順序が同じでも問題ない
のですが、多数のレイヤを読み込んだ場合、レイヤをグループ分けすると管理しやすくな
る場合があります。その際、レイヤパネル内のレイヤの構成と、地図ビュー上のレイヤの
表示順序が別々に設定できると便利で、そのための機能を提供するのが、「レイヤ順序」
パネルです。
全体図
1
地図ビューに表示されている範囲が、他のレイヤを含めた全域の中でどの範囲なのか表
示してくれます。逆に、
全体図内に表示されている赤枠を動かすことによって、
地図ビュー
の表示範囲を変更することもできます。
動作が不安定なことが有り、レイヤのリストから対象のレイヤを右クリックして「全体
図に表示」をチェックしても、全体図の中にレイヤが表示されない場合がありますが、そ
2
のときは、一旦レイヤの表示をオフにして再びオンにするとうまく表示されます。
第2部 QGISの機能の拡張とプラグイン
第3部 QGISによる自然環境情報解析
図 2-1-1 全体図の表示
取り消し/再実行
ベクタレイヤを編集する際に、編集操作の歴史を記録し、必要ならばある地点まで編集
の歴史を遡るために使う機能です。
第4部 付録
ブラウズ
以前は、
「ファイルブラウザー」としてプラグンとしてのみ提供されていた GIS データ
のブラウジング機能が、
デフォルトで用意されました。このパネルをアクティブにすると、
ユーザーのディレクトリ構造に沿って、ベクタとラスタのファイルを探し出し、ダブルク
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リックか、マウスの右クリックでコンテクストメニューの中から「レイヤの追加」で地図
ビューに読み込むことができます。
さらに、WMS、WFS、PostGIS などのレイヤにも対応しているため、レイヤの読み込
みが効率的に行えます。コンテクストメニューの「プロパティ」を選択するとレイヤのメ
タデータが閲覧出来ます。
GPS 情報
GPS デバイスをノートパソコンなどにつないで、直接 GPS のデータを QGIS に取り込
むための機能を提供します。自動的に GPS ポイントを連続的に保存するための機能もあ
るため、車で移動しながら位置情報を集めるときなどにも使えます。
ログメッセージ
一般情報とプラグインタブが有り、ファイルパスの設定やライブラリやプラグインの読
み込み状況など、QGIS の裏側で起きていることを見ることができます。
座標入力
プロジェクトの座標系と指定した座標系で、地図ビュー上の座標を取得することができ
ます。
最短経路
河川や道路などのネットワーク型のデータで、2 地点間の最短距離や移動時間などを計
算します。検索結果は最短距離をレイヤとして保存することができます。
プラグインの管理とインストール
QGIS に既にインストールされているプラグインを確認したり、使用・不使用状態の切
り替えを行うには、プラグインメニューの「プラグインの管理」で表示される、「QGIS
プラグインマネージャー」
(図 2-1-2)を使います。
プラグインの数が多く、目的の物が探しにくい場合は、プラグインマネージャーのフィ
ルタテキストボックスにプラグイン名の一部に該当する絞り込み文字を入力することで
検索が容易になります。インストールされたプラグインはリストとしてプラグインマネー
ジャーに表示され、プラグイン名、プラグインに関する短い解説、メニューバーのどのメ
ニューの下にプラグインが整理されたかなどが表示されます。
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第1部 QGISの基本操作
新しいプラグインのインストールと削除は、プラグインメニューの「Python プラグイ
ンを呼び出す」で、
「QGIS Python プラグインインストーラ」を呼び出し行います(図
2-1-3)
。
新しいプラグインのインストールは、プラグインインストーラに表示されている「未イ
2
ンストール」のプラグインのリストから、目的のものを探し出し、クリックして選択をア
クティブにした後、
「プラグインをインストール」ボタンをクリックします。プラグイン
のリストが表示される一番左列にある「状態」には、未インストール、インストール済み、
第2部 QGISの機能の拡張とプラグイン
1
図 2-1-2 プラグインの管理のためのプラグインマネージャー
アップグレード可能、があり、ユーザーのプラグインのインストール状態により、表示が
第3部 QGISによる自然環境情報解析
変化します。
また、プラグインのインストール状態により、プラグインリストの下にある「プラグイ
ンをインストール」と「プラグインのアンインストール」ボタンの機能も自動的に変化し
ます。ちなみに既にインストール済みのプラグインを削除したい場合は、目的のプラグイ
ンを選択した上で、
アクティブになった「プラグインのアンインストール」ボタンをクリッ
クし、同様の手順で、アップグレードのあるプラグインも簡単にアップグレードできます。
QGIS1.8 からは、
プラグインの管理がより洗練され、
QGIS の起動時後にステータスバー
に新しいプラグインや、アップデート可能なプラグインがある場合にはそのお知らせが表
示されるようになりました。
第4部 付録
図 2-1-3 プラグインをインストールまたは削除するための Python プラグインインストーラ
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プラグインインストーラの初期状態では、公式リポジトリのプラグインのみがリストに
表示されます。リポジトリとは、プログラムのコードが保管されている場所のことで、公
式リポジトリには動作の安定が確認されたプラグインが保管されていますが、プラグイン
インストーラの「オプション」タブの設定を変更することで、サードパーティ(公式では
ない)のプラグイン、実験的なプラグイン、期限が切れてしまったプラグインなどもイン
ストールすることができます。
公式リポジトリ以外からのプラグインは、その作動状況の確認が QGIS 開発者により
行われていないため、インストールは推奨されていませんが、様々な面白いプラグインが
あるため、QGIS の使い方に慣れてきたらそのようなプラグインにも挑戦してみましょう。
また、
プラグインインストーラで自動的にリストされるリポジトリ以外でも、
「リポジトリ」
タブのリポジトリの「追加」機能を利用すれば加えることができます。
インストールしたプラグインは、プラグインのインストールの設定により自動的にベク
タ、ラスタ、データベースなどの既存のメニューの下に置かれるもの、プラグインメニュー
の下に置かれるもの、そして新しく独自にメニューバーにメニューを作成するものに分か
れます。
自分のインストールしたプラグインがどこに配置されたのかわからない場合は、プラグ
インメニューの「プラグインの管理」でプラグインマネージャーを呼び出し、対象のプラ
グインを探しだして下さい。プラグインの説明の最後に、インストールされた場所が書か
れています。
また、多くの場合、インストールされたプラグインは、ツールバーを通して利用するこ
とができます。原則的には、インストールされたメニューに従ってツールバーにプラグイ
ンが配置されますが、例外もあるので、臨機応変に対応して下さい。
図 2-1-4 プラグインインストーラのオプション設定
許可されたプラグインのリストを、
「公式リポジトリ」および「期限切れ」を基準に選
択できる。
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第1部 QGISの基本操作
ベクタプラグイン
ベクタメニューのドロップダウンリストからは、ジオメトリツール、解析、調査、空間
演算、データマネージメントといったサブメニューがデフォルトで表示されますが、これ
らの機能は、fTools を始めとするプラグインにより実現されています。
この他にも設定によって GPS、座標入力、道路グラフ、等の機能も表示されるかもし
れませんが、これらもすべてプラグインにより機能拡張されています。ここではまず、
「ベ
クタ」メニューの花形である、fTools で提供される機能を解説し、その後、コアプラグイ
ンの内、広く使われるであろうベクタ関連のプラグインを紹介します。
fTools
1
fTools がインストールされていると「ベクタ」メニューのサブメニューとして、
「ジオ
メトリツール」
、
「データマネジメントツール」
、
「空間演算ツール」
、
「解析ツール」
、「調査
ツール」が表示されます。
ジオメトリツール
2
ジオメトリツールには、ジオメトリのエラーチェック、ジオメトリ情報の出力、ジオメ
トリタイプの変換をはじめ、ベクタの単一のレイヤに対して行われる様々なツールが用意
されています(図 2-1-5)
。
第2部 QGISの機能の拡張とプラグイン
第3部 QGISによる自然環境情報解析
図 2-1-5 ベクタメニューの 「ジオメトリツール」 で利用できる機能
ジオメトリの整合性をチェック
第4部 付録
このツールは、ジオメトリにエラーがあるかどうかをチェックします。代表的なポリゴ
ンのジオメトリエラーとしては自己交差と呼ばれるエラーがあり、図 2-1-6 の様にポリゴ
ンを構成する線分が自身のポリゴンを横切ってしまうような例です。このようなエラーを
含むジオメトリは、空間演算ツールなどで利用できない場合があるため、エラーを作業に
先立って修正する必要があります。
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このツールでは、エラーが発生している座標が表示されるので何が問題なのか探して、
自分の目で見ることができますが、その修正は他の方法で行う必要があります。
図 2-1-6 エラーを含んだポリゴンの例
ジオメトリが自己交差しているため、2つのポリゴンに見えるが、実際は一つのポリゴ
ン。
図 2-1-7 ジオメトリの整合性のチェックを図 2-1-6 のポリゴンに対して行った例
自己交差が起きている座標が表示され、エラーメッセージをクリックすると、その場所
に赤色の X が表示され、自動ズームされる。
ジオメトリカラムの出力 / 追加
このツールは、選択したレイヤのジオメトリ属性、つまり、点なら xy 座標、線なら線
分の長さ、ポリゴンならポリゴン外周長と面積を属性値として持つレイヤを新しく作りま
す。
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第1部 QGISの基本操作
ポリゴンの重心
いわゆるセントロイド、重心点を作成するツールです。ポリゴンの形によっては必ずし
もポリゴン内部にセントロイドが計算されないことに気をつけてください(図 2-1-8)
。
ドロネー三角形分割
複数の点で構成されるレイヤから、点間を最短距離で結んでできる最小の 3 角形で構
成されるポリゴンを発生します(図 2-1-9)
。
2
第2部 QGISの機能の拡張とプラグイン
1
図 2-1-8 ポリゴンとそのセントロイド (×マーク)
第3部 QGISによる自然環境情報解析
図 2-1-9 点群から発生させたドロネー三角形
ボロノイポリゴン
点レイヤからボロノイポリゴンを作成するツールです。点群から各点の縄張りを求める
ようなものと考えるといいかもしれません。バッファを設定すれば与えられた点から規定
される最小の立方体よりもより大きな範囲でボロノイポリゴンを発生させることができま
す。
第4部 付録
図 2-1-10 点群から発生させたボロノイポリゴン
10%のバッファ値設定で点群の最大・最小の座標値よりも大きめにポリゴンを発生さ
せている。
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ジオメトリを簡素化する
複雑なジオメトリを簡素化するために使います(図 2-1-11)。地物同士の関係が必ずし
も保存されるわけではないので、場合によっては元々つながっていた線分やポリゴンの繋
がりが切れてしまうようなことも起こります。ジオメトリが複雑な場合、様々な計算に時
間がかかるため、ジオメトリを簡素化して分析を行うことが有効な場合があります。
図 2-1-11 ジオメトリの簡素化の例
太めの線のジオメトリを簡素化した例が細い線。
ジオメトリの密度を高くする
ジオメトリを構成するノードといわれる点の密度を高めます。元々のジオメトリを変化
させるわけではないので、ジオメトリを簡素化したものに対して密度を高くしても、簡素
化されたジオメトリは回復されません。ノード間の線分上に、指定した点数のノードを発
生させます。
マルチパートをシングルパートにする
このツールは、1 つのジオメトリに複数のジオメトリが格納されているような場合(マ
ルチジオメトリ)
、それらを個別のジオメトリに変換するためのツールです。GIS に少し
慣れた方は、エクスプロード(爆発させる)と呼ぶこともあります。
次に示す「シングルパートをマルチパートにする」ツールのちょうど反対の機能を提供
します。例えば、飛び地となっているポリゴンが、元の市町村のポリゴンと同じジオメト
リとして扱われているものを、飛び地とその市町村ポリゴンを分けて取り扱いたいときな
どに使います。
シングルパートをマルチパートにする
このツールは、複数の独立したジオメトリを、属性テーブルのあるフィールドの値(ユ
ニーク ID フィールド)を使って一つのジオメトリにまとめるか、またはすべてのジオメ
トリをひとつにまとめるためのものです。
上の「マルチパートをシングルパートにする」の逆の機能で、同じ市町村の飛び地が、
別のポリゴンとして扱われているところを、同一のジオメトリとして扱いたい場合などに
この機能が使えます。この機能はジオメトリのデータの格納の仕方が例えば「シングルポ
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第1部 QGISの基本操作
リゴン」から「マルチポリゴン」に変化するだけなので、たとえ統合するポリゴンが隣接
していても、ポリゴンとしては融合されません。
ポリゴンをラインにする
このツールは名前が示すとおり、ポリゴンをラインに変換するために使われます。
ラインをポリゴンにする
このツールは、
「ポリゴンをラインにする」とちょうど逆の機能を提供します。ただし、
ようにポリゴンが作成されるので、場合によっては思わぬ結果を生みます。
1
ノードを展開する
ノードとは、線やポリゴンを構成する始点、線分の結節点、終点などの点のことです。
これらの点を線やポリゴンから取り出すためのツールがこれです。
2
データマネジメントツール
データマネージメントツールには、ベクタレイヤの投影法の定義、レイヤの属性やジオ
メトリの分割や結合を行うためのツールが揃っています。
第2部 QGISの機能の拡張とプラグイン
どの様な線データでも思ったようなポリゴンにできるわけではなく、始点と終点が繋がる
第3部 QGISによる自然環境情報解析
図 2-1-12 データマネージメントツール
現在の投影法を定義する
何らかの理由で、空間参照系が定義されていない、または間違った定義がされているレ
イヤに対し、空間参照系の定義ファイルをアップデートか新規作成します。既存のシェー
プファイルの場合、prj ファイルがアップデートされるか、新規作成されます。
QGIS の空間参照系定義ファイル、qpj がある場合は、そのファイルもアップデートさ
れます。prj、qpj を持たないベクタファイルフォーマットの場合、例えば KML 形式の場
合、新規に prj ファイルが作成されますが、KML 自体は、空間参照系の定義に prj を利
用しないので、あまり利用価値が無いかもしれません。
第4部 付録
場所で属性を結合する
2 つのベクタレイヤ間で、地物の位置関係に基づいて属性値を結合した新しいシェープ
ファイルを作成します。結合させたい情報を持つレイヤ(図 2-1-13、「ベクタレイヤを結
合する」ドロップダウンリスト)のすべての属性値を、元になるレイヤ(図 2-1-13、「対
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象ベクタレイヤ」ドロップダウンリスト)に結合させることもできますし、属性を集計す
ることもできます。前者が「最初に見つかった地物の属性を利用する」で、後者が「交差
するすべての地物の属性を総合して利用する」オプションです(図 2-1-13)。
「最初に見つかった地物の属性を利用する」を選択すると、一つのポリゴン上に複数の
点が重なる場合、最初に見つかった地物の属性値が結合されます。
「交差するすべての地
物の属性を総合して利用する」では、結合させたい情報を持つレイヤの属性テーブルのう
ち、交差する地物の数値が収められている列について、平均、最大、最小、合計、中央値、
交差する地物の数を計算します。
複数のポリゴンにまたがる線を集計する場合は、線がまたがるそれぞれのポリゴンで重
複して属性値が集計に利用されます。
図 2-1-13 2つのベクタレイヤ間の属性を結合するための 「場所で属性を結合する」 機能
ベクタレイヤの分割
複数の地物の属性値を元に分割して、同じ属性値を持つ地物毎に新しいシェープファイ
ルを作成します。シェープファイルは一括して指定のフォルダーに作成されます。
例えば 2 つのポリゴンが含まれるレイヤで、ユニーク ID 値としてそれぞれ 1、2 が割
り振られているとします。この機能を使うと、
「ユニーク ID フィールド」に属性値 1、2
が含まれるフィールドを指定すると、1 つのポリゴンを含む 2 つのシェープファイルが指
定したフォルダーに作成されます。
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第1部 QGISの基本操作
複数の Shape ファイルを 1 つに結合する
指定した複数の、またはフォルダー内すべてのシェープファイルを 1 つのシェープファ
イルとして結合します。結合する地物は同一のジオメトリタイプを持つ必要があります。
「ベクタレイヤの分割」と逆の機能です。
空間インデックスを作成する
空間検索を効率的に行うための quadtree spatial index ファイル(.qix)を作成します。
2 つのレイヤ間の集計・解析、属性テーブルの解析を行います。
1
2
第2部 QGISの機能の拡張とプラグイン
解析ツール
図 2-1-14 解析ツール
第3部 QGISによる自然環境情報解析
距離マトリックス
距離マトリックスは、複数の点間の直線距離を求めるためのツールです。このツールを
使えば、2つの点レイヤ間、または同一のレイヤ間で単純な距離行列を作成する以外に、
各点に他の点が及ぼす影響を距離によって重み付けして計算することなどもできます。
図 2-1-15 の例では単純な 5 点間の距離の組み合わせを距離マトリックスツールで計測
するために、2つの入力レイヤに同一のレイヤを指定しています。実際にツールを利用す
るには、
「距離マトリックスツール」を選択し(図 2-1-16)、ポイントレイヤ、対象ポイ
ントレイヤに同じ点レイヤを、ユニーク ID、対象ユニーク ID に同じ ID フィールドを選
択します。その上で「出力マトリックスタイプ」として「線形(N*k x 3)距離行列」を
選択し、出力ファイル名を指定した後「OK」をクリックします。
出力された CSV ファイルを開くとすべての点間組み合わせの距離が計算されているこ
とが確認できます。ほぼ同様の手順で「対象ポイントレイヤ」に他のレイヤを選択するこ
とで異なるレイヤ間の点間の距離も計算できます。
第4部 付録
「出力マトリックスタイプ」には、
先の例で上げた「線形(N*k x 3)距離行列」の他に「標
準 (N x T) 距離行列」
(図 2-1-17 左)
、
「距離統計行列(平均、標準偏差、最小、最大)」
(図
2-1-17 右)が用意されており「距離統計行列」ではさらにオプションとして最近傍の点
数を指定した上で統計が取れるようになっています。
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図 2-1-15 距離マトリックスの実行例
この例では、点1に着目し、他の4点への距離を求めている。同様に、各点について他
の点への距離を求めた表が出力される。
図 2-1-16 距離マトリックス
図 2-1-17 標準 (N x T) 距離行列 (左)、
距離統計行列 (平均、 標準偏差、 最小、 最大) (右) の出力例
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2 QGIS の機能の拡張とプラグイン
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第1部 QGISの基本操作
線長の合計
ポリゴン内に含まれる線の総延長を求めて新しいポリゴンレイヤとして出力します。例
えば河川が線レイヤ、市町村境界がポリゴンレイヤとして用意されている場合、市町村ご
との河川の総延長をこのツールを使って計算することができます。
ポリゴン内の点
ポリゴン内に含まれる点の総数を計算し、属性値として総点数を持つ新しいポリゴンレ
2
イヤとして出力します。
第2部 QGISの機能の拡張とプラグイン
1
図 2-1-18 線長の合計
第3部 QGISによる自然環境情報解析
図 2-1-19 ポリゴン内の点
ユニーク値のリスト、 基本統計、 最小近傍解析
これら 3 つのツールは、1 つのレイヤについていろいろな情報を得るために利用するこ
とができます。特に新しいレイヤを作るツールではないので、結果はクリップボードにコ
ピー&ペーストするか、出力された結果を見るだけです。
「ユニーク値のリスト」は、対
第4部 付録
象とするベクタレイヤの属性テーブルから一つのフィールド(列)を選んで、その中に含
まれるユニークな値をリストしてくれます。
例えば、
列の中にどの様な植生タイプが含まれているかを調べたいときに便利です。
「基
本統計」は「ユニーク値のリスト」と同様に一着のフィールドを対象に、そのフィールド
の平均値、標準偏差などの基本的な統計値を計算します。
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事前に対象とする地物を選択しておけば選ばれた地物だけの統計値を計算することがで
きます。
「最小近傍分析」は「点」に対して行われる分析で、点群がどの程度固まって分
布しているのか定量的に計算するためのツールです。
図 2-1-20 ユニーク値のリスト
属性テーブルの指定列を対象に、収められているデータのユニークな値のリストを作成
する。結果はクリップボードにコピーできる。
図 2-1-21 基本統計値の計算
属性テーブルの指定列を対象に、収められているデータの基本的な統計値を計算する。
結果はクリップボードにコピーできる。
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2 QGIS の機能の拡張とプラグイン
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第1部 QGISの基本操作
点群分布のかたまり方について統計値を計算する。
2
平均座標 (群)
このツールは、点、線、ポリゴンいずれかのレイヤの地物の座標から、地物の平均座標
を求めるためのツールです。ユニーク ID フィールドを指定することで、グループごとの
第2部 QGISの機能の拡張とプラグイン
1
図 2-1-22 最小近傍分析
平均座標を求めることも出来ます。また、各地物に対し重み付けをして、その上で平均座
第3部 QGISによる自然環境情報解析
標を求めることができます。
重み付けには、予めそのための属性値を用意しておく必要があります。下の例で示した
ように、重み付けをした場合、単純な平均座標よりも大きい重み付け(30)がされた右
側のポリゴンの方に平均座標がシフトしたことが示されています。
第4部 付録
図 2-1-23 2 つのポリゴンの平均座標点
1 デフォルトで用意されている機能拡張とプラグイン
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ラインの交差
このツールは、2つの異なる線レイヤ同士で、線分が交差する位置に点を発生させるた
めのツールです。ユニーク ID フィールドをそれぞれのレイヤに指定でき、指定された属
性値が新しく作成される点データに持ち越されます。
図 2-1-24 ラインの交差ツールを使った線レイヤ A と B の交点の抽出
空間演算ツール
様々なジオメトリの変更を伴う操作を行います。交差、統合、対象差分、クリップ、差
分は、それぞれ 2 つのレイヤ間で行う操作ですが、結果が大きく異なります。
図 2-1-25 空間演算ツール群
凸包
地物を構成する結節点の際外郭を結ぶポリゴンを発生させるツールです。方形で対象を
囲むバウンディングボックスと異なり、すべての地物が含まれる最小の凸型多角形が作ら
れます。フィールドにグループ番号などを入力しておくと、グループ毎の凸型多角形が作
られます。入力には、点、線、ポリゴンいずれも指定できます。
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1 QGIS の基本操作
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第1部 QGISの基本操作
バッファ
地物に指定した距離でバッファを発生させます。バッファを発生させる際の円のスムー
ズさを線分の数で指定したり、
バッファの結果を融合させるオプションを指定出来ます
(図
2-1-27)。
「選択地物のみを利用する」を利用すれば、属性値によりあらかじめ選択してお
2
いた地物にのみバッファを発生させることもできます。
第2部 QGISの機能の拡張とプラグイン
1
図 2-1-26 凸包の設定画面と 10 点から発生させた凸包の実行例
第3部 QGISによる自然環境情報解析
図 2-1-27 バッファ
第4部 付録
図 2-1-28 点に対しバッファを発生させた例
右の例では「融合 バッファの結果」オブションをオンにしてバッファを発生させた。
1 デフォルトで用意されている機能拡張とプラグイン
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交差、 統合、 対称差分、 クリップ、 差分
これらはいずれも2つのレイヤを対象に行うジオメトリの演算です。具体例を見ながら
それぞれの機能を解説します。
図 2-1-29 は、様々な操作を行う前の 2 つのレイヤ、2 つの多角形を持つレイヤと円が
融合した 3 つのポリゴンを持つレイヤを示しています。この 2 つのレイヤに対し「交差」
を行うと、2つのレイヤの重なる部分のジオメトリを新しいレイヤとして作成します(図
2-1-30)。
「交差」の結果作成される属性テーブルには、それぞれのレイヤからの属性値が収めら
れる点が、クリップと異なります。
「統合」は2つのレイヤのジオメトリを合わせたもの
がひとつのレイヤに統合されます(図 2-1-31)。
「対称差分」はレイヤの双方から見た差
分が新しいレイヤと属性テーブルになります(図 2-1-32)。
「クリップ」は最初のレイヤ
から次のレイヤと重なる部分を切り取ったジオメトリがレイヤとして作成されます(図
2-1-33)。
「差分」は最初のレイヤのうち、次のレイヤとの「差」となるものが新しいレイ
ヤとして作成されます(図 2-1-34)。
交差とクリップを実行しても結果のジオメトリに違いはありません。しかし、それぞれ
作成されたレイヤの属性テーブルを見ると、
「交差」では指定した双方のレイヤから属性
値が持ち込まれているのに対し、
「クリップ」では、クリップされるレイヤの属性値だけ
が新しいレイヤに持ち込まれます。結果から考えると、重なる部分で2つのレイヤの属性
値が両方とも必要な場合は「交差」を、切り取る対象とするレイヤの属性値だけが必要な
らば「クリップ」を使えばいいということになります。
差分ツールには、通常の差分と対称差分が用意されています。これらの違いは直感的に
わかりにくいのですが、
「差分」では、1 番目に指定したレイヤのジオメトリから 2 番目
に指定したジオメトリを単純に差し引いたもの、
「対称差分」では、1 番目と 2 番目のレ
イヤを統合したものから、2 つのレイヤの共通部分(「交差」で求められる部分)を除い
たものが結果となります。
図 2-1-29 ジオメトリの演算を行う以前の 2 つのレイヤ
多角形のレイヤと複数の円が融合したジオメトリを持つレイヤが示されている。
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2 QGIS の機能の拡張とプラグイン
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第1部 QGISの基本操作
2 つのレイヤの共通部分が新しいレイヤとして作成される。結果のジオメトリは、
「ク
リップ」と同じだが、交差する双方の属性値が保存される点が異なる。
2
第2部 QGISの機能の拡張とプラグイン
1
図 2-1-30 「交差」 を実行した結果
第3部 QGISによる自然環境情報解析
図 2-1-31 「統合」 を実行した結果
2 つのレイヤを合わせて 1 つのレイヤに統合される。
第4部 付録
図 2-1-32 「対称差分」 を実行した結果。
2 つのレイヤの双方から見て異なる部分を抽出する。
「差分」では、1 つのレイヤから
見て異なる部分が抽出される点が異なる。
1 デフォルトで用意されている機能拡張とプラグイン
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図 2-1-33 「クリップ」 を実行した結果
先に指定したレイヤから 2 番目に指定したレイヤと重なる部分を切り出す。交差と異
なり、先に指定したレイヤの属性値だけが持ち越される。
図 2-1-34 「差分」 を実行した結果
先に指定したレイヤのジオメトリから、2 番目に指定したレイヤのジオメトリを差し引
いた部分が新しいレイヤとして保存される。
融合
このツールでは指定したレイヤの重なりあう地物同士をひとつの地物として融合しま
す。融合に際し、属性値を指定できるので予めグループ番号などを入力しておくとグルー
プごとの融合が行えます。
「融合フィールド」ドロップダウンリストには、
「すべてを融合する」というオプション
がデフォルトで用意されているので、すべての地物を融合することも出来ます。
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2 QGIS の機能の拡張とプラグイン
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第1部 QGISの基本操作
2
第2部 QGISの機能の拡張とプラグイン
1
図 2-1-35 融合ツール
第3部 QGISによる自然環境情報解析
図 2-1-36 「融合」 ツールの実行例
左図の異なる ID を持つ 10 個の円を、ID を指定して融合した結果、6 のジオメトリに
融合された。
調査ツール
調査ツール群には、野外調査やデータ解析の際便利な様々な地物の選択方法や規則的、
またはランダムなジオメトリの発生に関するツールが揃っています。
第4部 付録
図 2-1-37 調査ツール群
1 デフォルトで用意されている機能拡張とプラグイン
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17:00:44
ランダム選択
複数の地物の中からランダムに指定した数、または指定した割合の地物をランダムに選
択します。選択するだけなので、新しいレイヤやファイルは作られません。
図 2-1-38 ランダム選択
サブセットのランダム選択
ランダム選択の一種ですが、サブセットを指定するための属性を指定できるため、複数
あるグループの中からそれぞれ指定した数、または指定した割合の地物をランダムに選択
することができます。
たとえば、GPS で収集した調査地 A 内の 1000 点、調査地 B 内の 500 点のデータがあ
る場合、
それぞれの調査地からランダムに、
例えば 25 点ずつ選択するときなどに使います。
図 2-1-39 サブセットのランダム選択
ランダム点群
指定したポリゴン内に指定した数の点をランダムに発生させるために利用します。
非階層化サンプリング法では、複数のポリゴンが存在したとしてもそれらすべてを一括
して取り扱いランダムな点を発生します。
階層化サンプリング法では、それぞれのポリゴン毎に指定した数、密度、または指定し
たフィールドの値を利用してそれぞれのポリゴン内にランダムに点を発生させます。調査
地を示すポリゴン内に、調査プロットを指定した数だけ配置するときなどに使えます。
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第1部 QGISの基本操作
規則的な点群
このツールは指定した範囲内に規則的な点群を発生させます。指定範囲としては既存の
2
点、線、ポリゴンレイヤまたはユーザーが指定する座標値が利用できます。
点の発生の仕方にはグリッドの間隔を指定して規則的に発生させる方法、利用ポイント
数を指定する方法があります。ポイント間の間隔をランダムにしたり、点が始まる位置を
第2部 QGISの機能の拡張とプラグイン
1
図 2-1-40 ランダム点群
オフセットしたりすることができます。
第3部 QGISによる自然環境情報解析
第4部 付録
図 2-1-41 規則的な点群とその実行例
範囲レイヤとしてポリゴンレイヤを指定し、指定した間隔で、差し込み位置の指定をせ
ずに実行。
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ベクタグリッド
指定した範囲内に、規則的なグリッドを線、または方形のポリゴンで発生させるための
機能。グリッドを発生させる範囲の指定には、指定したレイヤ、地図ビューの領域を利用
することができる。グリッドの間隔は、地図の単位により数値で指定し、出力にポリゴン
か線を指定できる。
図 2-1-42 ベクタグリッドと実行例
グリッドをポリゴンとして、キャンバスの領域を利用して発生させさせた。
場所による選択
2 つのレイヤ間の位置関係を使って地物を選択するためのツールです。
「交差」する地物の選択だけができるので、
「内包される」や「地物の重心が含まれる」
などの機能はありません。オプションとして、現在選択されている地物を使った選択や、
選択される地物の追加、削除などが用意されています。
図 2-1-43 場所による選択
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2 QGIS の機能の拡張とプラグイン
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第1部 QGISの基本操作
レイヤ領域ポリゴン
いわゆるバウンディングボックスと呼ばれる対象レイヤの地物をすべて含むような長方
形を発生させるツールです。点、線、ポリゴンのいずれにも用いることができます。
下の例では点レイヤから全ての点が含まれる領域ポリゴンを発生させました。解析範囲
を切り取るためのポリゴンが必要な場合に便利な機能です。
2
点群の座標の最大値と最小値による方形を発生させる。
GPS ツール
第2部 QGISの機能の拡張とプラグイン
1
図 2-1-44 レイヤ領域ポリゴンと実行例
GPS(Global Positioning System)データの QGIS への取り込み、GPS デバイスへの
第3部 QGISによる自然環境情報解析
データの出力、ウェイポイント、ルート、トラックデータ間の地物タイプ変換等を行いま
す。このツールの裏では、
GPSBabel(http://www.gpsbabel.org/)というフリーソフトウェ
アが動いており、様々な GPS ファイルフォーマットの取り込みや、GPS デバイスからの
直接のデータの取り込みが可能になっています。
デバイスからのデータの取り込みは、デフォルトではガーミン社(http://www.garmin.
co.jp/)のものが用意されていますが、
「GPS からダウンロード」タブの「デバイス編集
…」ボタンから利用できるウィンドウで、様々なデバイスからの取り込みにも対応出来ま
す。QGIS の GPS ツールに関するより詳しい解説は、以下のリンクも参考にして下さい。
http://docs.qgis.org/html/ja/docs/user_manual/working_with_gps/plugins_gps.html#
第4部 付録
図 2-1-45 GPS ツール
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座標入力
地図キャンバス上のポインターの位置情報を取得します。このツールの便利な点は、プ
ロジェクトで指定したマップキャンバスの空間参照系の他に、このツールで指定した空間
参照系による位置情報も同時に得られる点です。
例えば、WGS84 / UTM54N(EPSG:32654)でプロジェクトの空間参照系を指定し、
オンザフライで WGS84 / UTM54N のレイヤと WGS84(EPSG:4326)のレイヤを重ね
た場合、このツールを使うことで、両方の空間参照系での座標を地図キャンバス上で取得
することができます。
図 2-1-46 座標入力ツール
空間検索
2 つのベクタレイヤ間で、地物の位置関係に基づく検索を行う機能を提供します。調査
ツールの「場所による選択」と同様の機能を提供しますが、
選択結果を利用した再選択や、
交差、十字、接合しているか等、様々な地物間の関係を指定して検索することができます。
また、選択された地物が、結果の地物 ID リストに表示され、
「アイテムにズームする」
オプションを選択した後、リスト内のアイテムをクリックすると、自動的に選択した地物
にズームできるため、選択地物の確認にとても便利です。さらに、選択した地物を別のレ
イヤとして出力することもできるため、様々な条件で選択した地物を比較することも容易
に出来ます。
図 2-1-47 空間検索ツール
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第1部 QGISの基本操作
道路グラフ
線によって作られたネットワークにおける 2 点間の最短経路(図 2-1-48)を計算する
ためのプラグインです。
最初に設定ウィンドウで、
対象とする線レイヤを指定し(図 2-1-49)、
QGIS のツールバー
の空白部の右クリックで「最短経路」パネルを表示した上で(図 2-1-50)、計測を開始す
るスタート地点と検索の停止位置を地図ビュー上でインタラクティブに設定します(図
2-1-48)。
その上で、
「計算」ボタンをクリックすると、図 2-1-48 のように、ネットワーク上に赤
示されます(図 2-1-50)。詳しいオプションの設定などについては、プラグイン開発者の
1
ホームページを参考にして下さい(http://gis-lab.info/qa/road-graph-eng.html)
。
2
第2部 QGISの機能の拡張とプラグイン
いハイライトで最短経路が表示され、パネルには最短経路の距離と移動にかかる時間が表
第3部 QGISによる自然環境情報解析
図 2-1-48 最短経路の計算例
第4部 付録
図 2-1-49 最短経路を計算する道路グラフプラグインの設定画面
1 デフォルトで用意されている機能拡張とプラグイン
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図 2-1-50 実際に最短経路を計算するための最短経路パネル
ラスタプラグイン
ラスタ解析機能は QGIS1.8 ではいくつかのプラグインが標準で提供されており、QGIS
をインストールした際にラスタに関する機能を提供する GdalTools などが自動的に読み
込まれます。
ラスタメニューのドロップダウンリストを調べると、ラスタ計算機、Georeferencer、
地形解析、投影法、変換、推測、解析手法といったサブメニューがデフォルトで表示され
ます。これらのサブメニュー内の機能は、ユーザーによって種類が異なるかもしれません
が、プラグインメニューの「プラグインの管理」で、
「Raster menu / toolbar にインストー
ルされました」というメッセージのあるプラグインを選択することでその機能をアクティ
ブに出来ます。
ラスタのプラグインでは、まずコアとなる GdalTools の機能を解説し、その後、コア
プラグイン(http://docs.qgis.org/html/en/docs/user_manual/plugins/core_plugins.html)
のいくつかのプラグインを紹介します。
GdalTools
このプラグインは、多くのオープンソース GIS、さらに商用の GIS ソフトウェアでも
使われているラスタデータを取り扱うためのライブラリ、GDAL(http://gdal.org/)で利
用できる機能のユーザーインターフェースを提供し、コマンドラインで利用する GDAL
の様々なコマンドを使いやすくしています。
GdalTools プラグインで提供される機能は、投影法、変換、推測、解析手法、その他、
のサブメニューからアクセスできます(図 2-1-51)。
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第1部 QGISの基本操作
投影法
投影法に含まれる機能には、ラスタレイヤの空間参照系を変換するための機能、空間参
照系の定義を上書きしたりする機能が含まれます。
2
ワープ (再投影)
ワープは、対象のラスタレイヤを別の空間参照系に再投影します。
再投影されたレイヤは新しいラスタデータファイルとして保存されます。入出力のファ
第2部 QGISの機能の拡張とプラグイン
1
図 2-1-51 GdalTools プラグインメニュー
イルを指定した後、
ソース(入力)とターゲット(出力)の空間参照系(SRS)を指定します。
第3部 QGISによる自然環境情報解析
リサンプリングメソッドとしては、基本的には、カテゴリカルなデータなら「近似」、
数値データであれば、それ以外の手法を選択肢します。
オプションの「リサイズ」で解像度を変更したり、マスクレイヤを利用して目的とする
範囲だけを再投影することもできます。
第4部 付録
図 2-1-52 ワープ (再投影)
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投影法の割り当て
空間参照系が定義されていないラスタデータや、間違って定義されてしまったラスタ
データの空間参照系を指定して適切な空間参照系を持つ新しいラスタデータファイルを作
成します。
入力ファイルには GeoTiff 以外も指定できますが、
出力ファイルは自動的に GeoTiff ファ
イルとして作成されます。入力ファイルが GeoTiff の場合は、入力ファイルが空間参照系
を持つファイルとして上書きされます。
図 2-1-53 投影法の割り当て
投影法を推測する
この機能は、既に空間参照系が定義されているデータから、空間参照系を定義する .wld
または .prj ファイルを作成します。空間参照系が不明なデータの空間参照系の推定を行
うわけではありません。
変換
ベクタとラスタ間のデータ形式変換、
様々なファイルフォーマットの変換、
ラスタカラー
パレットの変換などの機能が収められています。
ラスタ化 (ベクタのラスタ化)
ベクタの属性値(数値)を元にラスタ化します。
GDAL のバージョン 1.8 より下のバージョンでは、ベクタのラスタ化の際、新しいファ
イルとしてラスタを作成する場合には、出力ファイルのサイズをピクセル数で指定する必
要がありました。
その名残として、
出力ファイルに存在しないファイル名を指定すると、
「新
しいサイズ」として、幅と高さを指定するように警告がでます。しかし一般にベクタをラ
スタ化する際には、
ラスタのセルサイズによって指定するのが現実的です。そのためには、
以下の手順に従って下さい。
1.「入力ファイル」と「属性フィールド」を指定
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2 QGIS の機能の拡張とプラグイン
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第1部 QGISの基本操作
2.「ラスタ化されたベクタ出力ファイル(ラスタ)
」に出力される新しいラスタファイ
ル名を指定
a.この際、
「出力ファイルは存在しません。それを作成するためには出力サイズを
指定する必要があります。
」という注意が出るので、
「OK」ボタンをクリック
3.
「新しいサイズ(出力ファイルが存在しない場合必要)
」が自動的にアクティブになっ
ているので、先ほどの注意を無視して、このチェックボックスをオフにする
4.ウィンドウのテキストボックスの右側にある鉛筆ボタンをクリックして、
「gdal_
rasterize ….」と書かれているテキストボックスを編集モードに切り替える。
い場合は、
「-tr 50 50」と書き加える。その結果、テキストは、
「gdal_rasterize –tr
1
50 50 –a …..」の様になる(図 2-1-54)
。
a.–tr は、ラスタ化の際の解像度を指定するオプションで、解像度の単位は、元に
なるベクタの空間参照系に依る
6.
「OK」ボタンをクリックして、命令を実行する
2
第2部 QGISの機能の拡張とプラグイン
5.テキストボックスの「gdal_rasterize」の後ろに、例えば 50x50m の解像度にした
第3部 QGISによる自然環境情報解析
図 2-1-54 ラスタ化 (ベクタのラスタ化)
第4部 付録
図 2-1-55 栃木県日光付近の植生図ポリゴン (左 ; 環境省データ) のラスタ化 (右)
1 デフォルトで用意されている機能拡張とプラグイン
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ポリゴン化 (ラスタのベクタ化)
ポリゴン化ツールは、ラスタ化ツールと逆に、ラスタレイヤまたはファイルからベクタ
ファイルを作成します。その際、ラスタの各セルの持つ値を収めるための属性値の列名を
指定することができます。また、マスクファイルを用いて、必要が部分だけをベクタ化す
ることもできます。
図 2-1-56 ポリゴン化 (ラスタのベクタ化)
図 2-1-57 ラスタ (左) のベクタ化 (右) の例
変換 (形式変換)
あるラスタデータを他のラスタデータフォーマットへ変換したい時にこのツールを
使います。例えば、GeoTiff から IMG ファイルを作成する時などです。このツールは、
GDAL が提供する gdal_translate というプログラムを使っていますが、このツールのウィ
ンドウから利用できるオプション以外も数多くのオプションが用意されており、テキスト
ボックスに表示されるコマンドを直接編集することでそれら多数のオプションを利用する
こともできます。詳しくは GDAL(http://gdal.org)のホームページを参照して下さい。
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2 QGIS の機能の拡張とプラグイン
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第1部 QGISの基本操作
2
第2部 QGISの機能の拡張とプラグイン
1
第3部 QGISによる自然環境情報解析
図 2-1-58 ファイルフォーマットの変換
RGB を PCT に変換する
カラー航空写真や衛星画像のように RGB の 3 バンドで構成されるラスタデータを、カ
ラーパレットを持つ 1 バンドのデータに変換します。3 バンドから作られる色に一番近い
ように色パレットが自動的に作られますが、色数をオプションとして指定することもでき
ます。
PCT を RGB に変換する
この機能は、RGB を PCT に変換する機能の逆で、カラーパレットを持つ 1 バンドデー
タから RGB の 3 バンドを持つデータに変換します。
推測
等高線を発生させる機能と、ラスタの必要部分を切り出すツールが用意されています。
第4部 付録
等高線
DEM や気温メッシュのようなラスタデータから等値線(等高線)をベクタとして発生
させます。等値線の間隔、値を収める属性列の名前を指定できます。
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図 2-1-59 等高線ツール
図 2-1-60 DEM をもとに等高線 (黒) を発生させた例
クリッパー
ラスタレイヤから任意の部分を切り出すための機能です。
クリッピングモードとして
「範
囲」を指定すれば、QGIS の地図ウィンドウ上をドラッグアンドドロップすることで切り
出したい範囲を指定できます。
マスクレイヤオプションのボタンをチェックすると、切り出す範囲を指定するマスクと
して、既に読み込んであるレイヤ、またはまだ読み込んでいないファイルを選択できます。
マスクレイヤオプションをチェックしたとき現れる「出力アルファバンドを作る」オプ
ションは、例えば円形のマスクを使った場合に、実際にはその円を囲むような方形でラス
タレイヤがクリップされるわけですが、その方形と円形の差分に当たる部分と実際の円形
の部分を区別する「アルファバンド」を 2 つ目のバンドとして実際の切りだしたレイヤ
とあわせて出力します。この円形による切り出しの例では、円形部分が 255、円と方形の
差分が 0 の値を持ちます。
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2 QGIS の機能の拡張とプラグイン
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第1部 QGISの基本操作
2
地図上の赤枠で示された場所の座標が取得され、ラスタの切り出しが行われる。
解析手法
第2部 QGISの機能の拡張とプラグイン
1
図 2-1-61 クリッパーの使用例
ラスタデータの精緻化、距離を示すラスタの発生、ベクタデータに基づく内挿、DEM
第3部 QGISによる自然環境情報解析
を使った様々な地形解析のツールが用意されています。
ふるい
ラスタデータのノイズや、セルの塊として小さいものをふるいにかけたように取り除く
ために使います。しきい値として何セル以上の塊を対象とするか、ピクセルの連結の値と
して、上下左右の 4 方向だけの連結でひとつの塊と見るか、斜め方向も入れて 8 方向で
セルの塊と見るか指定します。ふるいから落とされた後にはその塊に最も多く隣接するタ
イプのセルが埋め込まれます。
第4部 付録
図 2-1-62 ふるいツールで篩にかける前 (左) 後 (右) のラスタ
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黒補正
この機能は、航空写真のモザイク(複数の写真をつなぎあわせたもの)を作ったりす
る際に、データがない部分に本来ならデータなしを意味する 0、色で言えば黒が割り当て
られているはずなのに、データ処理の過程で 0 ではない値が混ざり込んでしまった際に、
本来 0 であるはずのセルを 0 に戻してやります。
この反対に「黒のピクセルではなくほとんど白(255)のピクセルを検索する(w)
」と
いうオプションをチェックすると、黒ではなく、白(255)の部分について黒と同様の作
業を行います。オプションとして 0 からどの程度離れていても 0 とみなすかということ
を距離として指定します。
Nodata で塗りつぶす
データがないことを意味する nodata のセルをその周囲のセルの値を使って内挿するた
めの機能。DEM のような数値が滑らかに変化するデータではこの機能はうまく働きま
すが、植生図のようなカテゴリカルなデータにこのツールを使うと内挿方法として IDW
(inverse distance weighting)が使われるため、内装された値に意味が無い場合があるの
で注意が必要です。
nodata のある点からどのくらいの距離のセルの値まで検索するか、
「検索距離」で設定
します。また内装した値をスムーズにするために使う 3 × 3 の平均フィルターを何回走
らせるか「スムーズな列挙」で指定することもできます。
図 2-1-63 Nodata で塗りつぶすツール
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2 QGIS の機能の拡張とプラグイン
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第1部 QGISの基本操作
Nodata で塗りつぶすツールを使って Nodata を埋めた後に作成した陰影図 (右)
プロキシミティ (ラスタ距離)
対象とするセルからの距離を示すラスタ近傍図を発生させます。「値」のオプションで
値をカンマで区切ることで対象とする値を複数指定できます。
「対象単位」は、定義され
2
た空間参照系の単位か、
ピクセル単位で指定ができます。
「最大距離」
は、
対象単位を
「GEO」
で指定した際には空間参照系の単位で、指定していない場合はピクセル数で最大距離の指
定を行います。
「指定されたバッファ値」は、指定距離内にある全てのセルに同一の値を
第2部 QGISの機能の拡張とプラグイン
1
図 2-1-64 Nodata がある DEM から作成した陰影図 (左) と、
割りつけるためのオプションです。
第3部 QGISによる自然環境情報解析
第4部 付録
図 2-1-65 プロキシミティ (ラスタ距離) ツール
1 デフォルトで用意されている機能拡張とプラグイン
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図 2-1-66 指定した赤いセルの塊から 3000 メートルを最大距離とした
プロキシミティラスタを発生させた例
距離が離れれば離れるほど白くなり、3000 メートル以上では「値なし」になる。
グリッド (補間)
まばらに分布する点データ(ベクタ)の数値属性を使って連続的な数値ラスタを作成し
ます。例えば、まばらなに分布する気象観測所からの気温データを使って気温分布を示す
ラスタを作成するときなどに使います。
デ ー タ の 内 挿 法 と し て、IDW (inverse distance weighting)、 移 動 平 均 法 (moving
average) 、最近接法 (nearest neighbor) などが選択でき、それぞれに多数のパラメター
を設定する必要があります。IDW では、元になる点から距離が離れるに従い急激にその
影響が減じるのに対し、再近接法では各セルに対し最も近い点の値が割り当てられます。
移動平均法は距離の影響がそれら 2 つの方法の中間に当たります
図 2-1-67 点 (ベクタ) の値を基に補間して作成したラスタ
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2 QGIS の機能の拡張とプラグイン
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第1部 QGISの基本操作
DEM (テリアンモデル)
DEM か ら 陰 影 図、 斜 面 傾 斜、 斜 面 方 位、 カ ラ ー レ リ ー フ( 色 彩 図 )、TRI( 地 形
ruggedness 指数)
、TPI(地形の位置指数)、粗度(地形の粗さ指数)等を計算します。
解析の種類(モード)によって指定するオプションは異なります。詳しいオプションの説
明、各種指数の計算方法などは、GDAL のホームページを参照して下さい。
陰影図の作成時は、とりあえず初期設定のまま実行し、その後オプションの数字をい
ろいろ変化させて適切な値を設定します。その他頻繁に用いられる斜面と斜面方位のオプ
ションは、角度の表現方法に関するオプションを変更できます。オプションで指定できる
対し、後者は変化の激しい地形に向いていると言われています。
1
2
図 2-1-68 DEM (左) からデフォルトの設定のまま陰影図を発生させた例 (右)
第2部 QGISの機能の拡張とプラグイン
Zevenbergen & Thorne と Horn の公式は、前者がよりスムーズな地形に向いているのに
その他
第3部 QGISによる自然環境情報解析
これまでの解析ツールグループに含まれないツールがまとめられています。
バーチャルラスタの構築(カタログ)
例えば複数の DEM がタイル(図葉)として用意されており、それらの DEM を一つの
ラスタデータとして結合(モザイク化)せず、図葉はそのままで、仮想的なモザイク、つ
まり VRT
(バーチャルデータセット)
を作る際にこの機能利用します。VRT 作成した後は、
通常のレイヤと同様に GDAL の様々な処理が行えます。
例えば、日本全国の DEM のタイルをモザイクを作らずに手早く表示させるときなどに
便利な機能です。入力指定には、書くラスタファイルの他、複数のラスタが収められてい
るディレクトリをまるごと指定したり、
更にあるディレクトリ以下のサブディレクトリ
(サ
ブディレクトリ)の中身もすべてまとめて処理することもできます。分割オプションを指
定すると、各入力ファイルがそれぞれ別のバンドとしてファイルに保存されます。
結合
複数の画像からモザイク画像を作成するためのツール。仮想ラスタの場合と異なり、複
第4部 付録
数のラスタがひとつのファイルとして結合されます。
オプションとして、
「データがない値」
でモザイクプロセス中にデータがない部分に出会った際に割りつける値を指定できます。
「レイヤスタック」オプションは、複数のレイヤをそれぞれ異なるバンドに分けてファ
イルを作成する場合にチェックします。
「交差領域を利用する」オプションをチェックし
た場合、各レイヤの重なった部分だけがモザイクの対象となります。
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情報
ラスタファイルを指定してそのメタデータを閲覧できます。
オーバービューの作成 (ピラミッド)
大きなラスタデータを扱う際、いちいちオリジナルのデータを表示させると時間がか
かってしまうので、一連のダウンサンプリングした画像(オーバービュー)を用意して
おくと、データの表示時間が画期的に短くなります。オーバーピューの作成ツールで
は、サンプリングの方法を指定したり(6 種類の方法から選択)、サンプリングのレベル
を 2,4,8,16,32,64,128 のように独自に設定することもできます。レベルを2と指定した場
合は、オーバービューの解像度がオリジナルの2分の1(オリジナルが 30m のセルなら
60m の解像度のオーバービュー)になります。
「クリーン」
オプションはオーバービューを削除するために使います。
「読み込み専用モー
ドで開く」オプションを選択すると、オーバービューが入力ファイルの一部としてではな
く、外部ファイルとして作られます。この他、効率的なオーバービューを作成するための
オプションが各種用意されています。デフォルトでは、再サンプリング方法として、最近
傍法、レベルとして、2, 4, 8, 16, 32 が指定されます。
タイルインデックス
このツールは、複数の入力ラスタデータから各ラスタの領域を示すポリゴンと、それに
付随した属性値として、各ラスタファイルのパスを含むシェープファイルを作成します。
この結果作成されるシェープファイルは、MapServer が利用するラスタのタイルインデッ
クスとして利用できます。
GdalTools 設定
QGIS をインストールした際、
GDAL も同時にインストールされ、
これまでに示した様々
な機能が使える状態になっています。ただし、GDAL はバージョンアップごとに様々な
機能を追加しているので、新しい GDAL を使いたい場合などにこの設定画面を通して行
うことができます。自分の使っている GDAL のバージョンを知りたい場合は、ラスタメ
ニューから「GDALTools について」を選んで下さい。
Georeferencer (ジオリファレンサー)
このプラグインは、GdalTools には含まれませんが、GdalTools と同様に GDAL ライ
ブラリを利用したジオリファレンシングのための機能を提供します。ジオリファレンシン
グとは、位置情報を持たない画像データに位置情報をもたせるための一連の作業です。ス
キャナなどで取り込んだデジタル画像を、既存の空間参照系を持つ GIS データとの位置
関係を確立することによってラスタデータとして画像変換(幾何補正)をします。
GIS によるデータ解析では、既存のデータが利用できる場合もありますが、自分でデー
タを作らなければならない場面に頻繁に遭遇します。ジオリファレンサーはそのような状
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第1部 QGISの基本操作
況下でデータを一から作成するために利用できます。想定される状況としては、既存の印
画紙上の航空写真を背景図として使いたい、印刷された地図から土地利用図のベクタデー
タを作りたい、現地調査で使った GPS のデータを使って地図を作りたいといった状況が
考えられます。また、この作業は、一旦ジオリファレンシングしたラスタデータを元にベ
クタデータを作るための入り口となる作業です。
ジオリファレンサーを利用してラスタデータを作成するためには大まかに以下のステッ
プに従います。
1.既存データのデジタル化(スキャニング)
a.グラウンドコントロールポイントの設定
1
b.幾何補正方法の選択
c.誤差の推定と幾何補正の実行
ここでは、上記のジオリファレンシング以降について Georeference プラグインの使い
方を基に解説するので、スキャニングについて学びたい方は、
「オープンソース GIS グ
ラスアプローチ 第 3 版 日本語版 Neteler and Mitasova 著 植村訳 開発社」を参
2
照して下さい。
グラウンドコントロールポイントの設定
第2部 QGISの機能の拡張とプラグイン
2.ジオリファレンシング
ジオリファレンシングでは通常、あらかじめ地理参照されている道路データの交差点や
第3部 QGISによる自然環境情報解析
航空写真のランドマークを目安とし、取り込んだ画像を参照元となる GIS データに重ね
あわせます。
対象とする画像と参照元になるデータの位置対応を表す点群がグラウンドコントロール
ポイント(GCP) と呼ばれ、ジオリファレンサープラグインがこの作業を大幅に効率化し
てくれます。GCP を設定する作業は、幾何補正の結果得られるラスタデータの誤差に大
きく影響しますので、GCP の設定作業には十分な注意を払って下さい。
具体的な手順としては、地理参照済みの画像の既知の場所、例えば交差点に GCP を最
初に設定し、続いて対象画像の対応する場所に GCP を設定します。この時点でプラグイ
ン上の表にそれぞれの画像に対応する座標の組みが表示されます。この作業を繰り返し、
十分な数の GCP を取得します。
必要な GCP の数は利用する幾何補正法(画像の変換方法)によって異なりますが、最
低でも 6 点ほどは必要となり、出来る限り空間的にまんべんなく多くの GCP を取得する
ことが勧められます。
第4部 付録
幾何補正方法の選択
十分な数の GCP を取得した後は、対象とする画像を参照元と重ね合わせるため、GCP
を元に画像を平行移動したり、回転させたり、あるいはひねったりして画像をできる限り
参照元の画像に重ね合わせる必要があります。この作業が幾何補正と呼ばれます。幾何補
正には様々な手法がありますが、QGIS は以下の 7 種類が用意されています。
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線形幾何補正が最もシンプルな方法でリストされる順により複雑な方法になります。複
雑な手法が常に良い幾何補正手法ということはなく、対象とする画像の持つ誤差、または
ある程度の試行錯誤と経験によって適切な幾何補正方法を選ぶ必要があります。また、複
雑な方法を用いる際には、より多くの GCP が必要とされることも注意する必要がありま
す。
また、幾何補正作業上、画像を引っ張ったり縮めたりする際にピクセル感に隙間が発生
したり、重複するピクセルが生じたりするため、ピクセルのサンプリング方法(再サンプ
リング手法)を指定する必要があります。QGIS では以下の 5 つの方法が用意されていま
す。
最近傍法は、最も近くのピクセルの値を使ってピクセルの補間を行う方法で、植生図な
どのカテゴリカルなデータを幾何補正する際に適しています。一方、標高データなどの連
続数を扱うラスタデータでは、最近傍法では補間される標高地が周囲に比べなめらかでな
くなるために、線形やキュービックといった周囲のピクセルの値を考慮した方法が用いら
れます。
誤差の推定と幾何補正の実行
GCP を取得し、幾何補正の方法を指定すると幾何補正の誤差が計算されます。この誤
差は RMS(root mean square)と呼ばれ、各 GCP の参照元の位置と変換後の位置の差
を 2 乗したものをすべての GCP ポイントにわたり平均を取ったものを、ルートに取って
求めます。
おおまかに言えば RMS は GCP 間の距離の差の平均です。誤差の範囲が許容範囲であ
ると思われた場合、最終的なステップとして、取り込んだ画像をラスタデータに変換する
ために幾何補正を実行します。
ジオリファレンシングの例 (手書き植生図のラスタデータ化)
実際にジオリファレンシングプラグインを使うと、ここまでで解説した大まかな作業の
流れだけではカバーしきれない設定項目や作業手順があるので、
以下では具体例を用いて、
ジオリファレンサーの使い方を解説します。この例では、現地調査において手書きで作成
した植生図をラスタデータにします。
データの準備
まず、手書きの植生図をスキャナを使ってデジタル化します。この植生図は最終的には
ベクタデータとしてデジタイジングを行うための下絵になる点、そして手描きであること
から、取り込みの解像度は、一番細い道路幅が判読できる程度としました(図 2-1-69)。
また、この手描き地図を地理参照するためのデータとしては、道路と土地区画の GIS レ
イヤを用意しました(図 2-1-70)。
スキャナで取り込んだ画像は、JPEG や TIFF 形式で保存すれば QGIS で開くことが
できます。ちなみに空間参照系を持たないこのような画像を QGIS に取り込んだ場合は、
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第1部 QGISの基本操作
画像の左上が原点(0, 0)となるように取り込まれるため、既に空間参照系を持つデータ
を取り込んだ場合、どこに画像がいったかわからなくなりますが、レイヤリストから対象
の画像を右クリックして「レイヤの領域にズーム」を選択することで画像を確認すること
ができます。
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第2部 QGISの機能の拡張とプラグイン
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図 2-1-69 スキャナにより取り込んだ現地調査により作成された植生図
第3部 QGISによる自然環境情報解析
図 2-1-70 ジオリファレンスを行うために準備した道路と土地区画の GIS レイヤ
太枠内が植生調査を行ったおおよその位置を示す。
第4部 付録
GCP (Ground Control Point) の取得
実際にジオリファレンシングを行うには、QGIS にあらかじめ空間参照系の定義された、
すなわち、スキャンした画像を重ね合わせるためのデータを読み込んでおきます。この参
照データを読み込む際に、その空間参照系を覚えておきます。
次に、ジオリファレンシングを始めるため、ラスタメニューから「Georeferencer」を
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選択して下さい。
「Georeferencer」がラスタメニューに見当たらない場合は、
「プラグイン」
メニューの「プラグインの管理」メニューから「GDAL ジオリファレンサー」プラグイ
ンをがチェックします。
ジオリファレンサーが立ち上がると、メニューやツールバー、ラスタレイヤ表示のため
のウィンドウなどが確認できます。まずはジオリファレンシングを行う画像をファイルメ
ニューの「ラスタを開く」で選択し、ジオリファレンサーに表示させます(図 2-1-71)。
図 2-1-71 ジオリファレンシングのユーザーインターフェース GCP(Ground Control Point)の取得を行う手順は、1)ジオリファレンサー上の地
図と参照先となる地図の対応がわかりやすい位置を探し、その場所をジオリファレンサー
と QGIS 両方で拡大し(図 2-1-72)、2)ジオリファレンサー上で参照元となる点を取得
する、3)参照先の対応地点を QGIS 上で取得する、という手順を取り、この作業を繰
り返し複数の GCP を取得します。
この際、ジオリファレンサーのツールバーから「ポイントの追加」ツールを選択して実
際に点を置きますが、点を置いた時点で「地図座標を入力」ウィンドウ(図 2-1-73)が
立ち上がり、対応する位置の座標を聞いてくるので、
「マップキャンバスより」ボタンを
クリックして、QGIS の地図ビュー上でインタラクティブに対応する位置の上に点を落と
して下さい(図 2-1-74)。
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図 2-1-72 ジオリファレンサーと地図ビュー上で GCP ポイントを取得する周辺を拡大した例
第3部 QGISによる自然環境情報解析
図 2-1-73 ジオリファレンサー上で GCP ポイントを追加した際に現れる地図座標入力用のウィンドウ
実際には、
「マップキャンバスより」ボタンを押して、インタラクティブに地図ビュー
上から対応する点の位置を取得する。
第4部 付録
図 2-1-74 GCP の取得とジオリファレンサー、 地図ビューの関係
図中の番号は、
手書きの植生図と地図ビューの同じ番号同士が対応していることを示す。
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幾何補正
十分な数の GCP を入力した後は、ジオリファレンシングの最終段階として幾何補正を
行うための手法とそのパラメターを決定します。そのためには、
ジオリファレンサーの
「設
定」メニューから「変換の設定」を選択しウィザードを開きます(図 2-1-75)。
先も述べたように幾何補正には 7 つの変換タイプ、5 つのサンプリング方法が用意され
ているので、目的あった手法を選択します。また、出力ラスタの解像度を変更したい場合
は、ここで指定しておきます。
「出力ラスタ」に適当なファイル名を入力し、
「OK」をクリッ
クします。
図 2-1-75 幾何補正時の変換の設定ウィンドウ
幾何補正のための変換タイプを「変換の設定」ウィンドウ(図 2-1-75)で指定すると、
GCP テーブルの dx[ ピクセル ]、dy[ ピクセル ]、residual[ ピクセル ] 列と、ジオリファ
レンサーのステータスバーに誤差に関する情報が表示されます。
residual は GCP の質を示す指標で、ある点の値が他の点に比べあまり大きい場合は
GCP からその点を除外することを考える必要があります。許容出来る範囲内で GCP ポ
イント及び変換タイプを設定が出来れば、実際に画像を幾何補正する準備ができたので、
ジオリファレンサーの「ファイル」メニューから「ジオリファレンシングの開始」を選択
し実際に画像レイヤの幾何補正を実行し、一連のジオファレンシング作業を終了します。
以上の一連の作業を通してジオリファレンシングされた画像は、以後ラスタデータとし
て扱うことができ、その後、必要に応じて背景図として利用したり、さらにベクタデータ
にデジタイジングを行ったりします。
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第1部 QGISの基本操作
ラスタ計算機
ラスタ計算機は、ラスタの各セルが持つ値を利用して、様々な計算を行う機能を提供し
ます。例えば、あるカテゴリだけを抽出したり、1 と 0 だけからなるいわゆるマスクを作
成し、対象ラスタに掛け合わせることで必要な情報だけを取り出すためにこの計算機能を
利用することができます。
具体例としては、標高 1000 メートル以上の植生だけを抽出したい場合は、「標高ラス
タ >=1000」として、1000m 以上の地域を 1、それ以外を 0 のもつマスクレイヤを作成し、
そのマスクレイヤをラスタ化された植生図にかけあわせます。
ラスタ計算の際とても役に立つ、IF のような条件文は用意されていません。IF 文を使い
1
たい場合は、GIS Lab から提供されている、RasterCalc プラグイン(http://gis-lab.info/
qa/rastercalc-eng.html)を利用します。
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第2部 QGISの機能の拡張とプラグイン
ラスタ演算子としては、四則演算、三角関数、各種理論演算子が用意されていますが、
第3部 QGISによる自然環境情報解析
図 2-1-76 ラスタ計算機
ラスタレイヤの値を利用して様々な計算が行える。計算結果は新しいラスタとして保存
される。
第4部 付録
1 デフォルトで用意されている機能拡張とプラグイン
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地形解析
このプラグインは、DEM から斜面傾斜、方位、陰影図、レリーフ、起伏指数を計算し
ます。GDALTools にある地形解析の機能とほぼ同じですが、プラグインのユーザーイン
ターフェースがとてもシンプルなので、はじめて DEM 解析を行う方は、こちらのプラグ
インのほうが使いやすいかもしれません。ちなみに、
レリーフをデフォルトで作成すると、
図 2-1-77 の様に陰影段彩図が手軽に作成出来ます。
図 2-1-77 地形解析ツールのレリーフ機能を利用して作成した陰影段彩図の例
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2 QGIS の機能の拡張とプラグイン
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Fly UP