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レトロトランスポゾン LORE1 による
マメ科モデル植物ミヤコグサの遺伝子タギング集団
利用のしおり
20120401
レトロトランスポゾン LORE1 を利用したミヤコグサの遺伝子タギング集団
1. 背景
LORE1 (Lotus Retrotransposon 1)はミヤコグサ内在のレトロトランスポ
ゾンファミリーである(1)。LORE1 はミヤコグサゲノム中に 10 コピー程度存在す
る。ミヤコグサ Gifu B-129 系統においては、そのうちの 1 コピーを人為的に活
性化できる。活性化された LORE1 のコピーは配偶子で高頻度に転移し(2)、遺伝
子領域に挿入しやすい性質を持つ(3, 4)。これを利用して、日本の農業生物資源研
究所とデンマークのオーフス大学において、ミヤコグサの遺伝子タギング集団
が確立された(3, 4)。
今後、NBRP Legume Base において、日本の遺伝子タギング集団の種子
の増殖と配布が行われる予定である。提供される種子の世代は M2 以降であり、
新規挿入のホモ・ヘテロが混在している集団である(下図参照)。
2. 新規挿入位置情報の取得
か
ず
さ
DNA
研
究
所
の
miyakogusa.jp
(http://www.kazusa.or.jp/Lotus/index.html)から、興味がある遺伝子の LORE1 挿
入変異アリルを検索することができる。miyakogusa.jp では日本とデンマーク両
方の LORE1 挿入の情報が得られる。データベースサーチと挿入検出用のプライ
マー設計の詳細は、P5 以降を参照。
2
3. 種子の取得
今後、NBRP Legume Base から、農業生物資源研究所から寄託された遺
伝子タギング集団の種子が入手できる予定である。入手の手順は NBRP Legume
Base で提供される他の遺伝資源と同様である。
4. FAQ
(1) 提供された植物材料において LORE1 の転移は止まっているのか。LORE1
の転移が止まった系統を選抜する方法はあるか。
転移が止まっているとは限らない。M2 世代には、転移が止まっているも
のと転移し続けているものが混在している。ある特定の M2 個体において転移
が止まっているか否かは、その個体の自殖後代の M3 世代において、新規の
LORE1 挿入が検出されるか否かで判断できる。
(2) 一度タグされた遺伝子からの LORE1 の再転移による復帰変異体は生じるか。
生じない。LORE1 は RNA 型トランスポゾン(レトロトランスポゾン)
であり、コピー・アンド・ペースト型の転移様式を持つので、カット・アンド・
ペースト型の転移様式をもつ DNA トランスポゾンのように、再転移による復帰
変異体は生じない。
(3) タギング集団の植物は形質転換体か。
形質転換体ではない。LORE1 の活性化のために組織培養を行ったが、外
来 DNA 導入は行っていない。LORE1 はミヤコグサ内在のレトロトランスポゾ
ンであるので、形質転換体ではない。
5. 参考文献
変異体利用による成果を発表される際は、文献(3), (4)を引用して頂くよう
お願いいたします。
(1) LORE1, an active low-copy-number TY3-gypsy retrotransposon family in the model legume
Lotus japonicus.
Madsen LH, Fukai E, Radutoiu S, Yost CK, Sandal N, Schauser L, Stougaard J.
Plant J. 2005 Nov;44(3):372-381.
(2) Derepression of the plant Chromovirus LORE1 induces germline transposition in regenerated
plants.
Fukai E, Umehara Y, Sato S, Endo M, Kouchi H, Hayashi M, Stougaard J, Hirochika H.
PLoS Genet. 2010 Mar 5;6(3):e1000868.
3
(3) Establishment of a Lotus japonicus gene tagging population using the exon-targeting
endogenous retrotransposon LORE1.
Fukai E, Soyano T, Umehara Y, Nakayama S, Hirakawa H, Tabata S, Sato S, Hayashi M.
Plant J. 2012 Feb;69(4):720-730.
(4) Genome-wide LORE1 retrotransposon mutagenesis and high-throughput insertion detection
in Lotus japonicus.
Urbański DF, Małolepszy A, Stougaard J, Andersen SU.
Plant J. 2012 Feb;69(4):731-741.
4
LORE1 新規挿入位置情報と種子情報の取得、
挿入検出用プライマーのデザイン
1. 新規挿入位置情報と種子情報の取得
か
ず
さ
DNA
研
究
所
miyakogusa.jp
の
(http://www.kazusa.or.jp/Lotus/index.html)から、興味がある遺伝子の LORE1 挿
入変異の有無を調べる事ができる。miyakogusa.jp では日本とデンマーク両方の
LORE1 インサーションの情報が得られる。
遺 伝 子 名 に よ る 検 索 は 、 ト ッ プ ペ ー ジ
(http://www.kazusa.or.jp/Lotus/index.html)の "Lotus japonicus predicted gene
keyword
search" か ら 行 う 。 Blast
に よ る 検 索 は 、
http://www.kazusa.or.jp/Lotus/blast.html から行う。この際、Databse のプルダ
ウンメニューから"LORE1 insertion site (nucleotide)"を選択する。
以下に例として、NIN (Nodule inception protein, AJ238956)の挿入変異の
検索例を示す。
A. Lotus japonicus predicted gene keyword search による方法
A-1. Miyakogusa.jp のトップページの keyword search で、"Nodule inception
protein" または推定遺伝子のコード名 "chr2.CM0102.250.r2.m"で検索を行い、
遺
伝
子
情
報
が
掲
載
さ
れ
て
い
る
ペ
ー
ジ
(http://www.kazusa.or.jp/Lotus/predict/cgi-bin/orfinfo.cgi?db=clone&id=chr2.C
M0102.250.r2.m)にたどり着く。
A-2. "LORE1 insertion"をクリック。"LORE1 insertion (no data)"とある場合、そ
の遺伝子の LORE1 挿入変異はまだ見つかっていない事を示す。
A-3. 以下の表が表示される。
5
・position ID
挿入の ID。chr2_44270100_F_J のように、3つのアンダーバー(_)で区切
られた 4 つの情報を含んでいる。つまり、
染色体名
ex. chr2
染色体上の位置
ex. 44270100
挿入が染色体と同向き(F)か逆向き(R)か
ex. F
日本由来(J)かデンマーク由来(D)か
ex. J
chr2_44270100_F_J は、
「第 2 染色体の 44270100 塩基目の、染色体と同方向の
LORE1 挿入で、日本由来の系統」を意味する。
・plant line ID
position ID で示された LORE1 挿入をもつ植物系統の ID。クリックすると、
それぞれの植物系統の情報ページにリンクする。例えば、P0711 をクリックす
ると以下の画面にリンクする。
P0566 からは、chr2_44270042_R_J を含め、合計 3 つの挿入が同定されている
6
ことが分かる。"LegumeBase"をクリックすると、NBRP の LegumeBase のペ
ージにリンクする。以降、LegumeBase における種子の分譲依頼の手順に従う。
一方、かずさ DNA 研究所のデータベースにフランキング配列が登録されている
が、植物が死滅し、種子が入手不可能の場合、"No seeds available"が表示され
る。以下に例として、P0854 という系統のページを示す。
B. Blastn search による方法
B-1.
Miyakogusa.jp
の
Blast
サ
ー
チ
の
ペ
ー
ジ
(http://www.kazusa.or.jp/Lotus/blast.html)で、検索方法は blastn を、データベー
スは"LORE1 insertion (nucleotide)"を選択する。"LORE1 insertion (nucleotide)"
データベースは、LORE1 の挿入サイトの上流と下流 500 bp ずつの領域の配列
で構成されている。
B-2. NIN(AJ238956)の mRNA 配列をクエリに用い、検索を行うと、以下のよ
うに結果が表示される。
左端の列に、配列名として、position ID(A-3 参照)の末尾に u または d が付加
されたものが示される。u は挿入より上流側の配列である事を、d は挿入より下
7
流側の配列である事を示す。
*注:「上流」「下流」は染色体を基準としている。
例 1:chr2_44270100_F_J_u
「chr2_44270100_F_J という position ID で示される挿入の、染色体の上流
側 (u) のフランキング配列」
例 2:chr2_44270942_R_J_d
「chr2_44270100_F_J という position ID で示される挿入の、染色体の下流
側 (d) のフランキング配列」
position ID: chr2_44270100_F_J, chr2_44270942_R_J の 2 インサーションにつ
いて得られた情報を図示すると、以下のようになる。
B-3. position ID から plant ID にたどり着くには、gbrowse を利用する。以下
chr2_44270100_F_J
を 例 と し て 説 明 す る 。 ト ッ プ ペ ー ジ
8
(http://www.kazusa.or.jp/Lotus/index.html)に図示された染色体のうち、第 2 染色
体をクリックすると、Gbrowse の画面が表示される。"ランドマークまたは領域
"に Chr2:44270100..44270100 と入力すると、表示項目"LORE1 insertion"
に"P0711_1"が以下のように表示される。
"P0711_1"をクリックすると、P0711 のページにリンクする。
これにより、P0711 が chr2_44270100_F_J のインサーションを持つ事を確認す
る。
9
2. 挿入検出用プライマーのデザイン
挿入を挟む領域を増幅するプライマーA と B、さらに LORE1 の 5'上流
向きのプライマーLORE1 5' out の、3種のプライマーを使った PCR により、
挿入の有無を検出できる。
LORE1 5' out
5'-ACCTTGTTGCTTCAGCCATGG-3'
wt アリルからはプライマーA/B 間の産物が増幅される。一方インサーションア
リルからは、LORE1 の全長が 5041bp と長いため、プライマーA/B 間の増幅
は生じず、プライマーA と LORE1 5' out 間の産物のみが増幅される。A/B 間
の距離と、A/LORE1 5' out 間の距離の違いが生じるようにプライマーを設計
すると、インサーションホモ/ヘテロを検出する共優性マーカーとして利用で
きる。LORE1 の 5'末端から、LORE1 5' out までの長さは 279bp である。
トラブルシューティング
目的のインサーションが PCR で増幅できない場合、プライマーデザイン
等の実験上の問題以外では、以下の可能性が考えられる。
<1> Solo-LTR の可能性
LORE1 の 5'/3'両端には 100%一致の LTR (Long terminal repeat)があ
る。ある程度の頻度で、両 LTR 間で組換えが生じ、インサーションサイトに1
個の LTR だけが残っているケースが確認されている。
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この場合、前述の LORE1 5' out のように、LORE1 の LTR よりも内側にデザ
インしたプライマーはアニーリングできない。一方、プライマーA/B のペアで
は、インサーションアリルからは wt アリルよりも LTR の分(225 bp) + Target
site duplication (多くの場合 5bp)= 230 bp だけ長い産物が増幅される。
<2> FST (Flanking Sequence Tag)のマッピングが不正確である可能性
新規挿入位置の推定は、LORE1 の 5'側 FST の配列を取得し、それをミヤ
コグサのゲノム情報と比較・マッピングする事により行っている。FST が、ゲ
ノム中に複数箇所相同性が高い領域が見られるような配列である場合、現在推
定されている挿入位置が誤っている可能性がある。例えば、あるジーンファミ
リーの中の、特定の遺伝子の LORE1 挿入変異体がデータベース中に見つかった
場合に、その LORE1 の挿入位置が、ジーンファミリー内で高度に保存されてい
る領域である場合は、現在の推定挿入位置が誤っている可能性か考えられ、つ
まり、同じジーンファミリーに属する他の遺伝子への挿入の可能性がある。
<3> 遺伝しにくいインサーションである可能性
目的の LORE1 挿入が植物の生育に負の影響を与える場合、世代を経るご
とにその挿入アリルの存在頻度が低下する可能性がある。この場合、入手した
種子に目的の挿入を持つものが存在しない可能性がある。
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