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平成15年度 - 秋田県総合食品研究センター

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平成15年度 - 秋田県総合食品研究センター
平成15年度
試験研究成果概要
秋田県総合食品研究所
目
次
(1) 県産農水産物の利用拡大に関する研究
県産水産資源及びジュンサイの有効利用技術の開発
−県産水産資源の有効利用技術の開発−・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
−ハタハタ卵巣のゼリー状物質解明と凍結保存技術の開発−・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
食材に由来する高齢疾患予防因子の機能性解析とその応用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5
−発酵食品と農水産物の複合的利用による生理機能性の向上−・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7
−味噌脂質類変動のNMRを用いた解析−・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9
−発酵食品と農水産物の複合的利用による生理機能性の向上−・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7
−味噌脂質類変動のNMRを用いた解析−・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9
−高齢疾患予防因子の探索と構造機能相関解析−・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
(2) 食品及び酒類の品質高度化に関する研究
特産野菜高付加価値加工技術の開発
−浅漬けの硝酸塩濃度−・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
−硝酸還元細菌の生育阻止−・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
秋田みその品質の高度化に関する研究
−高品質味噌の製造技術の開発と普及−・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
醸造食品の機能性香気成分の増加技術の開発∼味噌∼・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
醸造食品の機能性香気成分の増加技術の開発∼味噌∼(完了)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
県産米及び穀類の新規需要を開拓するための加工技術開発・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
−活性酸素消去機能−・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
−古米化とタンパク質の変化−・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
−無洗米米飯のこげに関する研究−・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
−低グルテリン米の利用に関する研究−・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
−生デンプン分解酵素利用−・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
−県産新形質米の酒造への有効利用−・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
小規模食品工場向けの高度加工技術の開発・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
−発芽玄米関連−・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
−ジュール加熱技術−・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
−米加工技術の開発−・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
高品質な米糀の製造方法の検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
高品質な米糀の製造方法の検討(完了)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
清酒のろ過技術に関する研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
清酒のろ過技術に関する研究(完了)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
13
15
17
19
21
23
25
27
29
31
32
35
37
39
41
43
45
47
49
51
(3) 微生物の利用技術に関する研究
温度感受性酵母の特性解明・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
温度感受性酵母の特性解明(完了)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
乳酸菌を用いた機能性食品の開発・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
担子菌類のタンパク質分解酵素の特性解明とその応用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
53
55
57
59
(4) 食品成分の分析と評価技術に関する研究
県産農水産物の新規分析評価技術の開発と応用
−地ビール−・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61
−市販塩−・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 63
県産農水産物の新規分析評価技術の開発と応用(完了)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 65
(5) 生物機能の解明と利用技術に関する研究
白神微生物バンクの構築とその有効活用に関する研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 67
−白神微生物の分離・選抜に関する基礎的研究−・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 69
−白神酵母の有効利用に関する研究−・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 71
(6) 食品の安全性と環境対策に関する研究
マンナン含有食品廃棄物からのマンノオリゴ糖生産技術の開発・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
植物性食品廃棄物からのゼロエミッションを目指した環境浄化技術の開発・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
食品製造過程における微生物の動態制御に関する研究(2)
−高品質、安全な食品製造−・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
食品製造過程における微生物の動態制御に関する研究(2)(完了)
−高品質、安全な食品製造−・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
食材・包材等に含まれる内分泌攪乱物質分析手法の確立及び低減、除去技術の検討・・・・・・・・・・・・・・・・
食材・包材等に含まれる内分泌攪乱物質分析手法の確立及び低減、除去技術の検討(完了)・・・・
73
75
77
79
81
83
(7) その他研究(共同研究)
「秋田酒こまち」ブランド確立促進事業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 85
男鹿沖海洋深層水から得た食塩の味噌への適用の可能性について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 87
秋田県産ブドウによる醸造適性試験・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 89
単年度試験研究成績
(作成
平成16年2月)
研究課題名 県産水産資源及びジュンサイの有効利用技術の開発
(県産水産資源の有効利用技術の開発−ハタハタの品質保持技術の開発−)
予算区分:国庫
担当研究室:食品加工担当
研究期間:継
担当者:塚本研一、戸枝一喜、戸松誠、
平15年度(平15∼19年度) 協力・分担関係:水産振興センター
1.目的
近年、国産の農水産物やそれを原料とした加工品に対しての消費者の期待と需要は大き
い。したがって県産農水産物においても資源の有効利用技術開発により農水産業および農
水産加工業を振興し、県産農水産物や加工品を消費者に供給していくことが重要である。
水産物では特に県民魚であるハタハタ資源は近年順調に回復しており価格もやや下降ぎみ
であることから、原料の品質保持によるシェルフライフの延長や新規加工品開発による高
付加価値化が課題である。したがって、ハタハタ等の品質保持技術と加工品開発やハタハ
タずし、しょっつるの酸味、塩分低減による需要拡大が主な目的である。さらには加工時
に発生する廃棄物の食品化技術の開発も合わせて検討し、その技術普及を全体の目的とし
た。
2.方法
1)ハタハタ流通実態調査
秋田県漁業協同組合北浦総括支所管内において平成14年に水揚げされた季節ハタハ
タについて漁協及び仲買人などからの聞き取り調査と漁協資料により分析した。
2)ハタハタの成分周年変動分析
平成15年3月∼12月(7、8月を除く)に水産振興センター漁業調査指導船千秋
丸で秋田県男鹿半島沖合において底びき網により漁獲した雄、雌のハタハタを凍結保存
したものを分析試料とした。
分析はハタハタ各5尾を3枚におろし、皮付きで魚肉部分を細かく刻んだものを分析
した。水分は常圧加熱乾燥法(105℃、3時間)、脂質含量はクロロホルム−メタノ
−ル混液改良抽出法により分析した。
3)品質保持技術の検討(活魚の検討)
平成15年12月11日に秋田県男鹿市北浦地先の定置網で漁獲された3歳の完熟雌
ハタハタ約150尾を水産振興センターの10m 3 水槽(円形FRP)に収容して濾過
海水を注水しながら約1カ月間無給餌で飼育し、1週毎に10尾を分析試料とした。
雌のハタハタの卵巣を採取し100mlの蒸留水を加えた後、攪拌しながら70℃ま
で加熱した。卵巣より分離したゼリー状物質と卵粒をそれぞれ真空凍結乾燥し重量を測
定した。
3.成果の概要
1)季節ハタハタの漁獲は短期集中型(図1)で漁獲量増加により価格低下の傾向があ
り、品質保持による市場供給調整が必要であることを把握した。
2)ハタハタ脂質は雄、雌ともに9月が最大であるが、漁獲が集中する12月は雌で特
に低くなることを把握した(図2)。
3)ハタハタ品質保持技術として無給餌飼育で2週間は可能であり、ゼリー状物質は変
化するが官能的には3∼5週間でも問題はなく、その実用化可能性も示唆された。
(図3)
4.今後の問題点と次年度以降の計画
今後はこれらの結果を再検討し品質保持技術の実用化にむけて進めて行く必要がある。
5.結果の発表、活用等
平成15年度高品質水産加工品技術開発事業成果報告会で報告した。さらに同事業報告
書として水産庁でまとめる予定である。
♀
♂
( %)
8
6
4
2
♂
0
4月
5月
6月
9月
10月
11月
12月
♀
図2 ハタハタ月別脂質含量
セ ゙リー 状固形分(g)
セ ゙リー 状固形分/卵固形分(%)
4
( %)
3
2
(g)
1
0
0 週 1週
2週
3週
4週
5週
図3 ハタハタ無給餌飼育による卵の変化
単年度試験研究成績
(作成
平成16年2月)
研究課題名
県産水産資源及びジュンサイの有効利用技術
ハタハタ卵巣のゼリー状物質解明と凍結保存技術の開発
予算区分:県単 国庫 委託
担当研究室:食品開発部門食品加工担当
研究期間:継・中
担当者:戸枝一喜、塚本研一、保苅美佳
平15年度(平15∼17年度)
高橋徹
協力・分担関係:水産振興センター
1.目的
鮮魚ハタハタやハタハタ卵の粘りを失わない品質保持技術の開発とハタハタ等の県産水
産物を利用した発酵食品や製造技術を開発し、実用化と普及を図る。
また、廃棄となる黒変ジュンサイの原因を解明し防止法等の品質向上技術の開発と新し
いジュンサイ加工品の開発のための貯蔵方法を検討する。
今年度はハタハタ卵の粘りを失わない品質保持技術の開発のために、ハタハタ卵巣の凝
固因子と卵巣ゼリー状物質の理化学的性質の解明を目的とした。
2.方法
供試魚は、2002年12月に秋田県男鹿市北浦地先の定置網で漁獲された3∼4歳の完熟メス
親魚である。分析には、卵巣から卵を除去して得られたゼリー状物質を用いた。
ゼリー状物質の分離法(温水処理法):採卵した卵巣を70℃の温水に浸漬することにより、
卵巣から卵が脱離し、ゼリー状物質を得た。
3.成果の概要
1)ハタハタ卵巣はNaCl以外のKCl、CaCl 2 、MgCl 2の水溶液でも凝固した(表1)。
2)ハタハタから得られたゼリー状物質の固形分はハタハタ卵巣固形分の2.5%であった。分
析の結果、ゼリー状物質は蛋白質(71.9%)、糖質(1.4%)、灰分(20.7%)からなってい
た(表2)。灰分はゼリー状物質を透析することにより殆ど除去されることから、卵巣のゼ
リー状物質の主成分は蛋白質であることが判明した。
3)ゼリー状物質の構成アミノ酸は特定のアミノ酸に偏ることは無かったが、アスパラギン
酸、グルタミン酸、チロシン、アルギニンが多く含まれていた(表3)。
4)ゼリー状物質の凍結乾燥物は熱水に溶解し、粘稠溶液となった。その他、室温ではNaOH
水溶液、1%SDS、8M尿素水溶液に溶解した。
5)ゼリー状物質をSDS-PAGEで分析した結果、1バンドのみであり、その分子量は43kDaで
あった(図1)。以上の結果からハタハタ卵巣のゼリー状物質は蛋白質から成り、1種類
の蛋白質から成ることが示唆された。また、本蛋白質のN末端アミノ酸配列を調べた結果、
新規な蛋白質であることが示唆された。
6)ゼリー状物質は熱に安定であった(図2)。
4.今後の問題点と次年度以降の計画
1)ゼリー状物質の粘性に及ぼす塩類等の影響
2)ゼリー状物質の物理的特性の解明
3)卵巣の凝固メカニズムの解明
5.残された問題点とその対応
1)特許出願済み
2)日本食品科学工学会大会にて発表済み
表1
塩類による卵巣の凝固
表2
塩
min
MgCl 2
++
+++
+++
5
10
30
CaCl 2
++
+++
+++
KCl
+
++
+++
ゼリー状物質の成分
成分
糖質
蛋白質
灰分
NaCl
+
++
+++
- : 凝固なし( 柔らかいま ま )
+: 凝固あり
++: 凝固し、 少し硬い
( %)
1 .3 8
7 1 .9
2 0 .7
+++: 凝固し、 硬い
表3
ハタハタ卵巣のゼリー状物質の構成アミノ酸
kDa
アミノ酸
94.0
組成比
14.77
67.0
トレオニン
6.03
43.0
セリン
6.52
アスパラギン酸
グルタミン酸
14.95
グリシン
6.43
アラニン
2.86
システイン
2.51
バリン
3.78
メチオニン
0.25
イソロイシン
2.61
ロイシン
3.51
チロシン
10.23
フェニルアラニン
4.99
ヒスチジン
0.88
リシン
5.39
アルギニン
8.84
プロリン
30.0
20.1
14.4
2.5
図1
ああ
1.4
0.8
0.5(μg) マーカー
ハタハタ卵巣のゼリー状物質の
SDS−PAGE
5.44
粘性率相対値[%]
100.00
100
80
60
40
ハタハタ卵粘質物
20
キ サンタンガム
0
0
10
20
30
加熱時間[ 分]
図2
ハタハタ卵巣ゼリー状物質の熱安定性
40
単年度試験研究成績
(作成
平成16年3月)
研究課題名:食材に由来する高齢疾患予防因子の機能解析とその応用 (全体)
予算区分:県単 国庫 委託
担当研究室:生物機能部門・応用発酵部門
研究期間:継・中
担当者:堀 一之、畠 恵司、樋渡一之、
高橋砂織、戸松 誠、渡辺隆幸
平15年度(平15∼19年度)
協力・分担関係:
1.目的
今日、高齢者特有の疾患あるいは症候群に対し、食生活を通じた予防的あるいは緩和で
継続的に病態の進行を遅延させる方向性が重要視されている。
本研究は生活習慣病(糖尿病合併症、高血圧症およびメラノーマ細胞による抗白髪等)
に評価を絞り、秋田の食材の中から新たな高齢疾患の予防・抑止に繋がる知見を得ようと
するものである。この課題解決のため小課題を掲げそれぞれ研究を行う。すなわち
①糖尿病合併症予防および抗腫瘍性因子の探索とその利用に関する研究
(戸松誠、渡辺隆幸、堀)
②発酵食品と農水産物の複合的利用による機能性の向上(渡辺隆幸、戸松誠、堀)
③高血圧予防因子の探索と食品への応用(高橋砂織、樋渡、堀)
④高齢予防因子の探索と構造機能活性相関(畠、樋渡、堀)
の4つである。
15年度は各小課題ごとに高齢者に特有の症候あるいは疾患に対する効果を評価する評
価系の確立を目指した基礎的な検討を行い、研究対象となる農水産物の絞り込み作業と関
与成分の化学構造解析、分析技術開発についても一部着手した。
2.方法
具体的方法については、次ページ以降の各小課題ごとの成績書を参照されたい。
3.成果の概要
①糖尿病合併症予防評価のスクリーニングにより、ホップ・トチュウなどへの展開がな
され、タラノキの抗腫瘍活性タンパク質aralinの機能解析も順調に進行した。
②味噌抽出物の抗変異原活性、DPPHラジカル捕捉活性の検討がなされた。そして活性に
は中性脂質トリグリセリド由来の脂肪酸エチルエステル類と密接な関係があることが
示唆され、熟成や機能性評価のためNMRを用いた味噌脂質分析手法の開発を行った。
③高血圧予防因子探索では、組換え型ヒトレニンの大腸菌での発現に成功した。また、
各種部位変異体解析で、ヌクレオチドとの結合に重要である残基の特定がなされた。
④高齢予防因子の探索と構造機能活性相関小課題の評価として色素細胞分化誘導因子に
着目しlupeolによるB16 2F2細胞樹状突起伸長メカニズムについての知見が得られた。
4.今後の問題点と次年度以降の計画
引き続き各担当において評価系の充実や機能解析に努める。また成分検討対象となる絞
り込みから、具体的な活性物質の探索を行う。
5.結果の発表、活用等
各種評価系の確立・評価実施と研究進展により、学会報告(発表・論文)につながるだ
けでなく新たな秋田の食材に機能性を付与し、情報発信や新商品開発の契機を作り出す様
に鋭意努めたい。
単年度試験研究成績
(作成
平成16年
3月)
研究課題名:食材に由来する高齢疾患予防因子の機能解析とその応用
1.糖尿病合併症予防および抗腫瘍性因子の探索と機能解析
予算区分:県単 国庫 委託
研究期間:継・中
平15年度(平15∼19年度)
担当研究室:応用発酵部門 素材開発担当
酒類部門 酒類第2担当
担 当 者: 戸松 誠、進藤 昌
協力・分担関係:東京理科大・総研・基礎工、
北里大・薬
1.目的
<試験研究期間を通じての目的>
本課題は、糖尿病合併症を予防する因子および抗腫瘍性因子を探索し、食品素材への応用と機
能解析を行うことを目的とし、高齢化社会への対応をはかるものである。すなわち、平成12∼
14年度実施した研究課題「機能性評価技術の開発と食品の開発」等において明らかになった糖
尿病合併症予防効果および抗腫瘍性に関する知見・成果を生かし、県民の福祉向上等を図るもの
である。
<当該年度に実施した目的>
これまで糖尿病合併症予防因子として、アルドース・リダクターゼ(AR)阻害活性を指標と
した酵素系での評価系で見いだされた、トチュウやホップ等については、企業による商品化のバ
ックアップを行う。この系でのスクリーニングも継続する。また、タラノキから見いだされた抗
腫瘍性蛋白質(aralin)については、その利用をはかる上で資源量に不安があるが、カルスから
生産できれば、この問題は解決できる。そこで、カルスが同タンパク質を生産するか確認した。
2.方法
<試験材料、方法および調査方法等の要旨>
昨年度までの成績書と同様である。タラノキのカルス誘導および培養は、東京理科大学総合研
究所にて行われた。
3.成果の概要
<当該年度の結果の概要及び考察の要約>
・県内企業にて、トチュウ・ホップ等を用いた飲料の試作品(PETボトル)数種の製造が行われ、
それらのAR阻害活性を確認した。また、本年度AR阻害活性をスクリーニングしたなかには、
有望なものはなかった。
・タラノキカルスも選択的致死活性タンパク質(ca-aralin)を生産することがわかり、単一にま
で精製した。そのSDS-PAGE上での分子量は、起源植物由来の抗腫瘍タンパク質(aralin)より
もわずかに小さかったものの、両者間にはN末配列に違いは認められなかった。また、
ca-aralinとaralinの形質転換細胞に対する選択的致死活性を比較した結果、ca-aralinの方が
選択性が増していることが認められた(図)。
<当該年度に得た結果の具体的数字、図表。方法、実施条件の細目等についての図表>
カルス由来
起源植物由来
120
120
J J
É
J
J
É
É
100
80
60
J
100
J J
É
É J
80
J
WI-38
É
J
J
É
WI-38
60
É
40
J
40
É
0
0.01
0.1
1
VA-13 É
J
VA-13 É
20
10
20
J
É É
100
0
0.01
Ca-aralin (ng/ml)
É
0.1
1
10
J
J
É É
100
Aralin (ng/ml)
図 抗腫瘍タンパク質のヒト培養細胞に対する致死活性の比較
WI-38: ヒト正常線維芽細胞
VA-13: SV-40で形質転換したWI-38
4.今後の問題点と次年度以降の計画
AR阻害活性のスクリーニングを継続していく。タラノキの抗腫瘍性については、大学との
共同研究を継続し、その機能解析等について検討していく。
5.結果の発表、活用等
<文献発表>
・「トチュウの糖尿病合併症予防成分」平成14年度実用化できる試験研究成果,(2003).
・「トチュウの新機能− 糖尿病合併症予防効果− 」農業秋田,54(12),13-15,(2003).
・Aralin, a new cytotoxic protein from Aralia elata, inducing apoptosis in human cancer
cells. Cancer Lett., 199, 19-25, (2003).
<学会発表>
・日本薬学会第123年会(2003)「タラノキカルスおよび植物体が生産する抗腫瘍タンパク質の活
性の比較」
・日本植物細胞分子生物学会香川大会(2003)「タラノキカルスおよび起源植物由来抗腫瘍タン
パク質の比較」
・日本生化学会大会(2003)「Analysis of apoptosis induced by a novel cytotoxic protein,
aralin, from Aralia elata」
<知的所有権の取得>
・特開2004-75676「新規抗腫瘍性蛋白質」
単年度試験研究成績
研究課題名
(作成
平成16年2月)
食材に由来する高齢疾患予防因子の機能解析と応用
2.発酵食品と農水産物の複合的利用による生理機能性の向上
予算区分: 県単
研究期間:
平15年度(平15∼19年度)
担当研究室:応用発酵部門、生物機能部門
担当者:渡辺隆幸、戸松誠、堀一之
協力・分担関係:
1.目的
味噌は主に味噌汁として食される食品であり、主に農水産物と組み合わされて食される
が、その複合的な生理機能性を調べた例は全国的にも極めて少ない。そこで味噌と食材を
組み合わせた場合の抗変異原活性、DPPHラジカル捕捉活性について研究を行い、最終的に
味噌の需要の喚起および新規食品開発のシードづくりに役立てる。
初年度である今年度は数種類の農水産物について味噌と組み合わせた場合の生理機能性
を調べ、基礎的なデーターを積み上げると共に試験方法の確立をめざす。
2.平成15年度の研究計画概要
味噌の代表的調理形態である味噌汁を想定し、味噌と食材を組み合わせた場合の抗変異
原活性、DPPHラジカル捕捉活性について調査を行う。
農水産物、味噌それぞれの熱水抽出物、メタノール抽出物について混合した場合と単独
の場合の抗変異原活性、DPPHラジカル捕捉活性について調査を行う。
2.方法
1)試料の調製
県産の農水産物、トマピー、アスパラガス、トマト、セリ、ネギ、ナス、ブロッコリー、
カボチャ、サトイモ、クリおよび味噌を生産者から入手または量販店で購入した。
味噌5gもしくは農水産物10gに対して80%メタノール50mlを加え、ホモジナイズ後の遠心
上清を試料とした。
2)抗変異原活性
Salmonella typhimurium TA98を用い、Trp-P-2を変異原として、コファクターS9を加え
たプレインキュベーション法により測定した。単独の試料では各100μ1、味噌と農水産
物混合の場合は各50μ1ずつ混合して試験に供した。
3)DPPHラジカル捕捉活性
試料では各200μ1に100mMトリス塩酸緩衝液800μ1を加え、混合、さらに500mM DPPH
(1,1-diphenyl-2-picryl-hydrazyl)1mlを加え混合、暗所20分放置後の517nmを測定した。
ブランクには80%メタノールを用い、試料の測定値S、ブランクの測定値Bとした場合の
(B-S)/B×100をDPPHラジカル捕捉活性とした。
3.成果の概要
今回、味噌と同等以上の抗変異原活性を示した農水産物を2点認めた。DPPHラジカル捕
捉活性はサンプル間の活性差が大きく、味噌よりも活性の高いサンプルを5点認めた。
どちらの活性も味噌と農水産物を混合した場合、双方の中間的な値をとる傾向が見られ
た。
4.今後の問題点と次年度以降の計画
今後さらに多くのサンプルについて調査する。
活性の高いサンプルについてDose responseを調べる。
5.結果の発表、活用等
未定
抗変異原活性
100
80
60
40
20
ナス+味噌
ブロッコリー
ブロッコリー+味噌
カボチャ
カボチャ+味噌
サトイモ
サトイモ+味噌
クリ
クリ+味噌
ナス+味噌
ブロッコリー
ブロッコリー+味噌
カボチャ
カボチャ+味噌
サトイモ
サトイモ+味噌
クリ
クリ+味噌
ナス
ネギ+味噌
ネギ
セリ+味噌
セリ
トマト+味噌
トマト
アスパラ+味噌
アスパラ
トマピー+味噌
トマピー
味噌
0
DPPHラジカル消去能
100
80
60
40
20
ナス
ネギ+味噌
ネギ
セリ+味噌
セリ
トマト+味噌
トマト
アスパラ+味噌
アスパラ
トマピー+味噌
トマピー
味噌
0
単年度試験研究成績
(作成
平成16年2月)
研究課題名:食材に由来する高齢疾患予防因子の機能解析と応用
【2.発酵食品と農水産物の複合的利用による機能性の向上】
2.味噌脂質類変動のNMRを用いた解析
予算区分:県単 国庫 委託
担当研究室:生物機能部門生物機能第二担当
応用発酵部門発酵食品、素材開発担当
研究期間:継・中
担 当 者:堀 一之、渡辺隆幸、戸松 誠
平15年度(平15∼19年度) 協力・分担関係:
1.目的
今日、高齢者特有の疾患あるいは症候群に対し、食生活を通じた予防的あるいは緩和で
継続的に病態の進行を遅延させる方向性が重要視されている。本研究では、秋田の食材の
中から新たな高齢疾患の予防・抑止に繋がる知見を得るとともに、その知見を活かした食
品の利用法・応用を目指すものである。さて、味噌において熟成香気の主成分として考え
られている脂肪酸エチルエステルは、抗変異原試験などでも強い関与が示唆されている。
そこで、味噌の熟成や機能性評価の評価手法の一環として先に担当者が開発した 13 C NMR
によるアシルグリセロール類位置異性測定法の適用とともに温度変化 1 H NMR法で把握可能
かを探った。
2.方法
NMR装置は Varian社製Unity plus 400型に5φ4核autoPFGプローブを装着し、グラジェ
ントシミングにより一定以上分解能を確保して測定した。味噌からの脂質抽出方法は、基
準みそ分析法と凍結乾燥で粉末状にしたものを用い、ティケータ社製全自動ソックスレー
抽出装置により、クロロホルム-メタノール混合溶媒系あるいはジエチルエーテルを抽出
溶媒として用いた。なお、標準物質としてはシグマ社、和光純薬製のトリパルミチン酸グ
リセリド、パルミチン酸エチル、グリセリンを用いた。
3.成果の概要
脂肪酸エチルエステルは、大豆に含まれるトリグリセリド(単純脂質)がリパーゼの作
用によって脱エステル化されグリセリンと遊離脂肪酸となり、酵母等が生産したエタノー
ルと反応して生成される。
これらの比率を把握したいのだが遊離脂肪酸を抽出することは困難である。また極性の
大きなグリセリンを抽出するクロロホルム-メタノール混合溶媒系では夾雑するブドウ糖
が混入する。その点、先に報告した〔 日食工 、 48 , 650-655 (2001)〕 13 C NMRを用いる方
法ではシグナルが重ならず有利である。ただ、新たに測定対象となったパルミチン酸エチ
ルの緩和時間測定から最低でも20秒の待ち時間が定量性確保のため必要なことから、1測
定には24時間程度のマシンタイムが必要となった。実際、試験醸造したものを2週間毎に
追跡したサンプルでは、時間経過とともにトリグリセリドの減少・エチルエステルの増加
現象が把握できた(図1)。
ただ、対象サンプルが市販品等に広がれば多数になることから、ブドウ糖が混じらない
低極性溶媒であるジエチルエーテル抽出サンプルを 1 H NMRで分析する方法を検討した。こ
の方法は数分程度で測定可能だが通常測定する35℃条件でエチルエステルのメチレンプロ
トンのシグナルがグリセリン1,3位プロトンシグナルと重なることが判明した。幸いこれ
ら成分のいずれも溶解できる溶媒として重ピリジンを用いていたので、温度変化でシグナ
ル分離が可能かを検討し80℃で分離できることを(ちなみにこの現象は400 MHzの装置に
よるものであって、これより小さい磁場装置では分離されず、逆に大きい磁場の装置では
より低温で分離がなされると予想される)見出し、短時間でトリグリセリドとエチルエス
テルの比(積分比は対応するプロトン数で除すればモル比となる)を求められることにな
った(図2、3)。
4.今後の問題点と次年度以降の
計画
手法の確立に目処がついたので、
各種市販味噌での測定や 1 H NMR法
での試験醸造味噌による熟成変化
について検討する。さらに抗変異
原性、DPPHラジカル消去活性など
の機能性評価や品評会出品味噌で
行われているアミノ酸、pH、食塩、
エタノール、カルボン酸等の分析
値や順位などとどのような相関が
あるのかを探り、高機能性味噌開
発につながる研究展開を図りたい。
5.結果の発表、活用等
13 C NMRの手法については
日本薬学会第123年会(長崎)〔同講演要旨集3-203p〕
日本食品科学工学会第50回大会(東京)〔同講演要旨集76p〕にて発表した。
1 H NMRの手法および味噌への応用については
日本食品科学工学会第51回大会(盛岡)平成16年秋開催予定での発表と学会誌
への投稿を行う予定である。
単年度試験研究成績
(作成
平成16年2月)
研究課題名:食材に由来する高齢疾患予防因子の機能解析とその応用
3・高血圧予防因子の探索と食品への応用
予算区分:県単
担当研究室:生物機能部門
研究期間:継
担当者:高橋砂織、樋渡一之、堀一之
平15年度(平15∼19年度) 協力・分担関係:
1.目的
高齢疾患には様々な病態があり、それぞれに予防法や治療手法が異なっている。秋田県
では、高血圧症の比率が高く社会問題となっている。秋田県における高血圧の最大の原因
は、食塩の過剰摂取と考えられる。それ以外に偏った食餌の摂取もあげられる。このよう
に食餌は高血圧に限らず健康維持に極めて重要である。これまでの食品関連血圧調節物質
としては、アンギオテンシン変換酵素をターゲットとしたものが主流であり、それに関連
した特定保健用食品なども開発されている。しかしながら、血圧調節の根幹をなすレニン、
レニン結合タンパク質やカリクレイン・キニン系に注目した食品由来調節物質の研究は行
われていない。そこで、本研究では、血圧調節の根幹を担う酵素類の特性を極めるととも
に、食品由来の制御物質を探索し、構造機能相関を明らかとする。さらに、食による血圧
制御の観点から、血圧管理と血圧調節機能を付与した食品の開発を目指す。本年度は、研
究開始年度であることから、ターゲット酵素であるヒト型レニンの発現系の構築及びレニ
ン結合タンパク質の特性解明を行った。
2.方法
組換え型ヒト型レニン発現ベクターの構築方法:酵母での発現と大腸菌での発現ベクター
を構築した。酵母での発現基本ベクターとしてはpAUR123を、また、大腸菌での発現基本ベ
クターとしてはpET32aを用いた。レニンの発現はウエスタンブロット法により確認した。
また、レニン活性は蛍光法により測定した。
レニン結合タンパク質の機能解析法:ヌクレオチド結合部位を特定する為に、変異プライ
マーを用いたPCR法により各種部位変異体を作成し、大腸菌での発現系を用いて解析し
た。
3.成果の概要
レニンの発現系構築:酵母での発現系においてはヒト型レニンの発現レベルが低く、また、
抗体の非特異的反応もあることから、明瞭な発現結果を得ることが出来なかった。一方、
大腸菌での発現系においては、チオレドキシン融合型プロレニンが封入体として大量に発
現が認められた。発現タンパク質量は、菌体1グラム当たり10ー20ミリグラムと見積
もられた。
レニン結合タンパク質の機能解析:各種部位変異体の解析により、ヌクレオチド結合に重
要であると考えられる残基が特定された。
4.今後の問題点と次年度以降の計画
レニンが、大腸菌での発現系で大量の融合タンパク質として回収されたことから、今後
は巻き戻しや活性化条件の検討を行う。また、バキュロウイルスでの発現系についても検
討する。一方、レニン結合タンパク質に関しては、レニンとの相互作用機構解明を目指す。
さらに、食品由来制御物質の探索法について検討を進める。
5.成果の発表、活用等
・高橋砂織他、「キチン・キトサン研究」 9, 138-139 (2003)
・高橋砂織「キチン・キトサンの開発と応用」分担執筆(株)シーエムシー出版、印刷中
他
単年度試験研究成績
(作成
平成16年 2月)
研究課題名:食材に由来する高齢疾患予防因子の機能解析とその応用
4.高齢疾患予防因子の探索と構造機能相関解析
-Lupeolによるメラニン色素産生メカニズム解明予算区分:県単
担当研究室:生物機能部門 生物機能第二担当
研究期間:継
担当者:畠 恵司
平15年度(平 15∼ 19年度) 協力・分担関係:堀 一之、樋渡 一之
1.目的
高齢社会の到来とともに、高齢者特有の疾患が増大してきている。近年食品の安全性
や生理機能性の解明に対するのニーズも増してきており、我々は当研究所開所以来、この
テーマに関して対応してきた。本課題ではこれまで単離した化合物の作用メカニズムを解
明するとともに、県内企業からの食品素材に生理機能を付与し、販路拡大に役立てること
を目的とした。特に、本年度の目的である、キク科植物に多く含まれる lupeolの色素細胞
活性化の分子機構解明は、県内企業と共同研究を行っている抗白髪剤の開発に繋がるもの
である。
2.方法
p38マ イ ト ジ ェ ン 活 性 化 プ ロ テ イ ン キ ナ ー ゼ (p38 MAPK)の 活 性 化 (リ ン 酸 化 )は
Western blottingにより確認した。細胞内アクチン繊維は蛍光ファロイジンを用いて染色
した。
3.成果の概要
Lupeolは B16 2F2細胞を始めとする色素細胞に対し、分化の指標であるメラニン産生
および樹状突起伸長両方を誘導する。しかしながら、各々のイベントにおけるシグナル伝
達経路は異なり、B16 2F2細胞メラニン産生促進作用については p38 MAPK阻害剤である
SB203580により完全に抑制され (図 1)、また、lupeol添加した B16 2F2細胞では p38
MAPK活性化が観察されることから (図 2)、cAMP-PKA系→ p38 MAPK経路を経ることが
確認された。一方、樹状突起伸長作用では、cAMP-PKA系の下流で Rhoカスケードの抑制
により、アクチン重合体であるストレスファイバーの脱重合を引き起こすためであると推
察され、メラニン産生とは異なり p38 MAPKの関与は認められなかった (図 3)。
4.今後の問題点と次年度以降の計画
① 試験研究推進上の残された問題点
特になし
② 必要な協力関係
アキノノゲシによるメラニン産生促進能に関する研究は企業との共同研究であり、事
業化にむけ、今後も共同で検討するべき課題である。さらに、癌の浸潤・転移の評価系は in
vitroならびに in vivoで確立されている。しかし、当研究所は動物飼育施設がないため、
他の研究機関との連携が不可欠である。
③ 次年度の具体的計画、及び当初継計画の変更等
次年度は、lupeolによる B16 2F2メラノーマ細胞株の運動性に対する影響を検討し、
癌細胞の転移抑制活性について検討する。また、B16 2F2メラノーマ細胞の浸潤・転移に
関わる酵素であるマトリクスメタロプロテアーゼ (MMP)の発現に及ぼす影響を検討し、分
化と MMP発現の関係を検討する。
細胞数 (x 105 cells/ml)
+ 10 µM Lupeol
8
30
6
20
4
10
2
メラニン含量 (µg/106 cells)
40
10
0
0
None
0
1
2
5
(µM)
SB203580
図 1. Lupeolによる B16 2F2細胞メラニン産生促進能に対する SB203580
(p38 MAPK阻害剤)の影響
10 µM lupeolの存在下で,種々の濃度の SB203580とともに B16 2F2細胞
を72時間培養し,細胞数 (
)およびメラニン含量 (
)を測定した.
a
0
30
60
120
180
240 (min)
P
A
p38 MAPK
B
p38 MAPK
図 2. Lupeolによる B16 2F2細胞内 p38 MAPK活性化
B16 2F2細胞を 10 µM lupeolとともに 0-240 分間培養し, p38 MAPKのリン酸化
を Western blottingにより検出した.
一次抗体として抗 phospho-p38 MAPK抗体 (A)および抗 p38 MAPK抗体 (B)を
使用した.
b
c
図 3. Lupeo 処理による B16 2F2 細胞ストレスファイバー消失
未処理 (a), 10 µM lupeol 12 時間処理 (b) あるいは 10 µM lupeol+ 5 µM SB203580 12 時間処理 (c) した B16 2F2 細胞内
ストレスファイバーを ,蛍光ファロイジン染色した (白矢印がストレスファイバー ).
5.残された問題点とその対応
(外部発表)
1) Hata K., Hori K., Ogasawara H., Takahashi S., Toxicol. Lett., 143, 1-7
(2003)
2) Hata K., Hori K., Takahashi S., J. Biochem., 134, 441-445 (2003)
3) 畠 恵司,堀 一之,高橋 砂織, 化学と生物 , 41, 776-777 (2003)
4) 畠 恵司,堀 一之,向山 俊之,坂本 賢二,高橋 砂織, Natural Medicines, 57, 238-241
(2003)
5) 日本生化学会第 76回大会 (横浜)
6) 日本薬学会第 124回大会 (大阪)
7) NHKニュース (6/18, 8/26), AKTニュース (6/18), ABSニュース (6/18), 魁新報
(8/27)
8) 「メラニン産生促進剤及びメラニン産生促進用組成物」特願 2003-136439
[㈱坂本バイオ社との共同出願]
本研究の一部は科学研究費補助金 (課題名:色素細胞分化誘導物質の探索ならびに作用
機構解明)により助成された。
単年度試験研究成績
研究課題名
予算区分:
研究期間:
(作成 平成16年2月)
特産野菜高付加価値加工技術の開発(浅漬けの硝酸塩)
県単 国補 ○依託
担当研究室:応用発酵部門素材開発担当
○継続・中
担当者:菅原久春、佐々木康子
平15年度(平15∼19年度) 協力・分担関係:
1.目的
浅漬け、キムチ等の市販漬物にどれくらいの硝酸塩が蓄積しているか硝酸塩濃度を調査する。
次に低硝酸塩原料野菜と、高硝酸塩原料野菜とで実際に漬物を製造し原料からの硝酸塩の推移・変
化について分析し比較検討を行う。
また、亜硝酸塩の生成には硝酸還元能を持つ大腸菌群などが関与する。そこで、電解次亜水、
電解微酸性水、除菌剤等により原料野菜からの除菌を実施することにより、漬物製造工程での硝酸
塩及び亜硝酸塩の推移を検討し、亜硝酸塩を生成しない新規な漬物製造法を構築する。
2.方法
1)試験材料
市販されている浅漬けタイプの漬物をスーパー等から購入し、41件体を分析に供した。
2)分析方法
主に可食部の圧搾液汁のpH(ガラス電極法)、食塩(モール法)、屈糖値(糖度計)、硝酸塩濃度
(イオンメータ、マイクロファン硝酸テスト法)を分析した。また、微生物については、一般生菌 数(ペト
リフィルム法35℃、48時間)、大腸菌・大腸菌群(ペトリフィルム法35℃、24時間)、乳 酸菌(BCP加プレートカ
ウントアガール培地30℃、48時間)について培養し結果を得た。
3.成果の概要
1) 浅漬け、キムチ等市販漬物を購入し41件体を分析に供した。原料原産地は国産が75%で他 は
中国、韓国、台湾、タイであった。品名別では、塩漬け、しょうゆ漬け、たくあん漬け 、 べった
ら漬け、酢漬け、こうじ漬けの順であった。また、キムチの場合は塩漬けとしょうゆ漬けの品名(名称)
に別れていた。
2) 原料別でみるとダイコンは90%近くが国産であった。一方、ハクサイになるとキムチ製品と して
として輸入されるので韓国産が目に付くようになっていた。ショウガやナスはそれぞれ中 国・台湾、
タイと表示されていた。
3) 硝酸塩濃度
ダイコンを原料とした漬物の平均は1,100ppmであった。概して米糀を用いたべったら漬け が
低い傾向にあり、たくあん漬けやしょうゆ漬けは一定していなかった。
ハクサイを原料とした漬物の平均は1,060ppmであった。商品名キムチの方がそうでない白 菜
漬け等より大きい傾向にあった。
今回分析した中では、梅漬けが4,000ppmと最も大きい濃度であった。また、キュウリ、カ ブ、
ショウガ、ナス、等を用いた漬物は平均300ppmとダイコン、ハクサイを原料とした漬物 の概ね1/3
以下の濃度であった。
4) その他
微生物検査の結果でも大腸菌はすべて陰性であった。また、大腸菌群についても1、2を除 き合
点のいく結果と思われた。さらに、乳酸菌で発酵状態の確認も可能と考えられた。
pHの平均が4.8、食塩は3.1%であった。1、2を除き適正な数値の中に収まっていると推察した。
表 1 総計 41 件体の品名(名称)による内訳
しょうゆ漬
10
塩 漬
17
たくあん漬
7
表3
平
最
最
均
大
小
pH
4.8
6.3
2.8
べったら漬
3
こうじ漬
1
表 2 野菜原料原産地の内訳
酢
漬
3
国産 秋田県産 北海道 中国 台湾 タイ
27
3
1
2
1
硝酸塩濃度及び微生物検査の結果
-
食塩(%) 屈糖値(%) 硝酸NO3 (ppm) 一般生菌数 大腸菌
3.1
13.8
932
5,741,748
0
9.2
24.0
4,000
150,000,000
0
1.1
6.0
220
0
0
表 4 ダイコン件体の品名(名称)による内訳
しょうゆ漬
5
塩 漬
3
たくあん漬
7
表6
平
最
最
均
大
小
pH
5.0
6.3
4.1
べったら漬
3
こうじ漬
0
平
最
最
均
大
小
べったら漬
0
こうじ漬
0
漬
平
最
最
均
大
小
1,774,348
14,000,000
0
0
韓国
3
ハクサイ件体の硝酸塩濃度及び微生物検査の結果
大腸菌群 乳酸菌
たくあん漬
0
表 12
pH
4.6
5.9
2.8
3
30
0
国産 秋田県産 北海道 中国 台湾 タイ
7
0
0
0
0
0
食塩(%) 屈糖値(%) 硝酸NO3 (ppm) 一般生菌数 大腸菌
2.5
10.7
1,061
21,365,270
0
3.5
14.8
1,600
150,000,000
0
2.1
6.0
440
6,000
0
塩 漬
6
韓国
0
表 8 ハクサイ原料原産地の内訳
酢
表 10 カブ等件体の品名(名称)による内訳
しょうゆ漬
3
11,667,700
400,000,000
0
ダイコン件体の硝酸塩濃度及び微生物検査の結果
大腸菌群 乳酸菌
たくあん漬
0
表9
pH
4.9
5.5
4.1
350
14,000
0
国産 秋田県産 北海道 中国 台湾 タイ
14
2
1
2
0
0
食塩(%) 屈糖値(%) 硝酸NO3 (ppm) 一般生菌数 大腸菌
3.4
17.4
1,112
756,222
0
6.2
24.0
2,200
9,800,000
0
1.5
11.6
500
0
0
塩 漬
8
大腸菌群 乳酸菌
表 5 ダイコン原料原産地の内訳
酢 漬
0
表 7 ハクサイ件体の品名(名称)による内訳
しょうゆ漬
2
韓国
3
べったら漬
0
こうじ漬
1
10
70
0
50,033,778
400,000,000
2,100
表 11 カブ等原料原産地の内訳
酢
漬
2
国産 秋田県産 北海道 中国 台湾 タイ
7
1
0
2
1
1
韓国
0
カブ等件体の硝酸塩濃度及び微生物検査の結果
大腸菌群 乳酸菌
食塩(%) 屈糖値(%) 硝酸NO3 (ppm) 一般生菌数 大腸菌
3.2
11.4
604
861,304
0
9.2
22.4
4,000
5,900,000
0
1.1
5.6
170
0
0
1,185
14,000
0
1,000,789
6,800,000
0
4.今後の問題点と次年度以降の計画
1) ダイコンを原料とした漬物でべったら漬けが、また、ハクサイでみると昆布等を用いたキム チ
でない漬物の方が硝酸塩濃度が低い傾向にあった。これについて件体数を多くしたり、ある いは
試作製造を行い製造条件で差があるかどうか比較検討する必要があるように思われた。
5.結果の発表、活用等
単年度試験研究成績
研究課題名
予算区分:
研究期間:
(作成
平成16年2月)
特産野菜高付加価値加工技術の開発(硝酸塩還元細菌の生育阻止)
県単 国補 ○依託
担当研究室:応用発酵部門素材開発担当
○継続・中
担当者:菅原久春、佐々木康子
平15年度(平15∼19年度) 協力・分担関係:
1.目的
同一程度の硝酸塩濃度の原料野菜を用いて漬物製造工程での硝酸塩濃度の推移・変化につい
て分析・調査をし品名(名称)の違いで硝酸塩の蓄積に相違が認められるか、また、次亜塩素酸水
や有機酸で硝酸還元細菌が生育阻害されるかどうか比較検討をする。最終局面では、原料野菜か
らの除菌を実施することにより、漬物製造工程での硝酸塩及び亜硝酸塩の推移を検討し、亜硝酸
塩を生成しない新規な漬物製造法を構築する。
2.方法
1)試験材料
市販されている漬物の素をスーパー等から購入し、分析に供した。また、ダイコン、ハクサ
イを漬け込み材料に供した。
供した微生物は主に大腸菌群に属する硝酸還元細菌を用いた。
2)分析方法
主に可食部の圧搾液汁のpH(ガラス電極法)、食塩(モール法)、屈糖値(糖度計)、硝酸塩濃度
(イオンメータ、マイクロファン硝酸テスト法)を分析した。また、微生物については、標準培地
(酵母エキス、ペプトン、グルコース)、EMB培地を用意しL型培養管(液体培地10ml)に初発
菌数が105cells/mlになるように調整しキトサン、グリシン、ナイシン、ビタミンB1・ラウリ
ル硫酸塩、ソルビン酸カリウム、アリルイソチオシアネート、ユッカ抽出物などを添加し、30
℃で振とう培養した。培養中の生育曲線はADVANTEC製TN-112D温度勾配バイオフォトレコーダを
使用した(O.D.660nm)。休眠期間は微生物が増殖を始めるまでの時間とし、660nmにおけるO.D.値
が0.025以上になった時間を増殖期の開始とした。それぞれについての微生物増殖抑制効果を総
合的に判断、評価した。
3.成果の概要
1)微生物の除菌、生育阻止
pHが酸性に傾くほど硝酸還元細菌は増殖ができなかった。
電解次亜水もアルカリ性側(pH8.2)も除菌の効果は認められるが、微酸性(pH5.2)側の方がより
除菌の効果があった。
今回供試した硝酸還元細菌(大腸菌群に属している微生物)の生育をナイシンでは阻止できなかっ
た。キトサン、グリシン、ソルビン酸カリウムが比較的に増殖を阻止し、アリルイソチオシアネ
ート、ビタミンB1・ラウリル硫酸塩が続いていた。
2)浅漬けの素の硝酸塩濃度
醤油ベースの液体浅漬けの素は500∼600ppm、ペースト状のキムチの素は1,000∼1,500ppm、
米麹を主体とした漬物の素は100ppm以下とそれぞれに相違が認められた。同じダイコン、ハクサ
イを漬け込んでもキムチの硝酸塩濃度が高く、それに比してこうじ漬けが低い傾向にあった。こ
のことは漬け床を低い硝酸塩濃度にすれば、比較的高い硝酸塩濃度のダイコン、ハクサイの場合、
硝酸塩濃度を低くすることが可能で、こうじ漬けが適していた。
表.1 供試微生物(硝酸還元細菌)
表.2 生菌数と増殖速度係数
Escherichia coli
IFO 3301
dB(t)/dt=b × B(t)
増殖速度
Seratia marcescens
IFO 3046
B(t)=B(M)× EXP(∫b×dt)
Bacillus cereus
IFO 13494
b:増殖速度係数
Bacillus lichenifornis
IFO 12200
B(t)=B(M)× EXP(b × t)
Bacillus subtillus
IAM 1069
b=LN {B(t)/B(M)}/t
Enterobacter aerogenes
IFO 13782
t=LN{B(t)/B(M)}/b
Enterobacter cloacae
IFO 13783
B(t):生菌数 , t:時間
Klebsiella pnemoniae
IFO 9614
B(M):対数増殖期生菌数初期値
Pseudomonas
fluoresens IFO 3329
τ=LN(2)/b (2 倍増殖世代時間)
表.3 食塩3%で増殖できるか(食塩0,0.9,3% 初発菌数100,000cells/ml)
pH
b
τ
増殖開始 t
Klebsiella pnemoniae 食塩 0.0%
6.9
0.513
1.350
8.08
0.9%
6.9
0.458
1.513
8.34
3.0%
6.3
0.229
3.027
12.51
Enterbacter aerogenes 食塩 0.0%
6.4
0.444
1.560
6.82
0.9%
6.9
0.444
1.560
6.82
3.0%
6.7
0.331
2.095
9.73
Enterbacter cloacae 食塩 0.0%
5.2
0.496
1.397
7.07
0.9%
5.1
0.522
1.327
6.82
3.0%
5.0
0.397
1.746
9.98
Pseudomonas fluresens 食塩 0.0%
7.7
0.089
7.823
14.65
0.9%
7.0
0.131
5.283
18.95
3.0%
6.7
表.4 何が増殖を阻止できるか増殖速度係数bで比較(食塩3%、初発菌数100,000cells/ml)
(%)
対照
グリシン
キトサン V・B1
ナイシン
グルコン酸亜鉛
1
2
0.025 0.025 0.1 0.05 0.025
0.3
Escherichia coli
0.318 0.058 0.0
0.0
0.0
0.298 0.298 0.281
0.222
Seratia marcescens
0.262 0.170 0.0
0.0
0.0
0.353 0.329 0.318
0.0
Bacillus cereus
0.383 0.246
0.0
0.0
0.554 0.462 0.485
0.0
Bacillus lichenifornis
0.346 0.207
0.0
0.339 0.388 0.323 0.323
0.339
Bacillus subtillus
0.251 0.0
0.0
0.0
0.0
0.318 0.228 0.242
0.0
Enterobacter aerogenes
0.363 0.313
0.0
0.307 0.350 0.317 0.350
0.298
Enterobacter cloacae
0.554 0.194
0.0
0.350 0.497 0.497 0.497
0.259
Klebsiella pnemoniae
0.292 0.0
0.0
0.0
0.229 0.271 0.259 0.248
0.238
表.5 硝酸塩濃度の推移(白菜こうじ漬けの例)
ハクサイ2,200ppm
→
590ppm(7日)
甘酒(屈糖値28.2%)
20ppm
→ 360ppm(2日)
(食塩1%,屈糖値18.8%)
4.今後の問題点と次年度以降の計画
漬け床の硝酸塩濃度を低く設定することで漬け物の硝酸塩濃度をある程度低くすることが、こう
じ漬けなどで可能なのでさらに明らかにしたい。最終年度は天然系抗菌剤等の活用で硝酸還元細菌
が生育できない新規の漬物製造法を開発する。
5.結果の発表、活用等
得られた成果について、学会等で発表することを検討している。
単年度試験研究成績
(作成
平成16年2月)
研究課題名
秋田みその品質の高度化に関する研究
(1)高品質味噌の製造技術の開発と普及
予算区分:県単 国庫 委託
担当研究室:応用発酵部門 発酵食品担当
研究期間: 継 ・中
担当者:尾張かおる、渡辺隆幸
平15年度(平15∼19年度) 協力・分担関係: 県・水田総合利用推進課
JA全農秋田、県農試
1.目的
県産大豆は、ここ数年の米の減反政策の影響で作付け量が増加し、価格も手ごろにな
ってきている。そのため味噌加工のための蒸煮試験を明らかにして欲しいという業界か
らの要望が強い。また、従来から味噌用に利用され、蒸煮条件が確立されている中国大
豆に比較して、色がぼけやすい、蒸煮後に硬さが残る、あるいは蒸煮後重量が増えない
と指摘を受けることもある。そこで数品種の県産大豆をターゲットにし、中国大豆や他
県の大豆を対照として性状を把握した後、蒸煮条件を検討し、秋田みその高品質化に繋
がる条件を開発することを目的とする。
2.方法
1. 試料大豆
県内JAから8点
リュウホウ上小阿仁・おおすず上小阿仁・H13リュウホウ・リュウホウ若美・リュ
ウホウやまもと・リュウホウおばこ・タチユタカ若美・おおすず湖東
県外から3点 中国・新潟エンレイ・北海道トヨマサリ
農試から8点
東北124号・東北135号・おおすず・リュウホウ・タチユタカ・エンレイ・
あきたみどり(緑大豆)・秋試緑1号(緑大豆)
2. 性状分析
岩崎らの方法 1 ) に従った。
3. 蒸煮試験
a:0.75 kgf/cm2・45 分
b:0.75 kgf/cm2・60 分
c:0.75 kgf/cm2・45 分→散湯→10 分
4. 小仕込み試験
abcの蒸煮方法で蒸煮した大豆を用い、小仕込み試験を行った。
3.成果の概要
1. 原料大豆の成分には、蒸煮大豆の性状に影響を与えるものは見つからなかった。品種
の差も関連がなかった。しかし生産地ごとの水分に差が見られた。
2. 浸漬重量増加比は a<b<c であった。
3. 蒸煮方法を変えると蒸煮後重量および水分も a<b<c であった。
4. 蒸煮大豆の硬さは a>b>c であった。以上のことからcの散湯処理は大豆処理に効
果があることが判明した。しかし味噌に仕込んだときには、散湯処理を行っても充分
柔らかいとは言えなかった。
5. 県産大豆の加工が困難であるのは、原料段階の水分調整の不具合により、浸漬による
水分吸収不足が原因の可能性がある。
4.今後の問題点と次年度以降の計画
平成14年産大豆は、収穫期における降雪の影響で収量がかなり減った。平成15年産に
関しても天候不順の影響で収量はさらに減っているらしい。そのような状態の大豆に関
しても高品質味噌に繋がる条件を検討する。
表-1
原料大豆水分
農試大豆
県内産
県外産
8.87
0.34
12.31
2.64
11.70
1.48
水分平均
標準偏差
倍
2.35
2.30
2.25
2.20
2.15
2.10
図-1
農試大豆
県内産 県外産
浸漬重量増加比
2.2
2.1
倍
2.0
散湯
60分
45分
図-2
産
外
内
県
農
県
試
大
産
豆
1.9
蒸煮後重量増加比
500
硬さ
400
300
200
100
45分
60分
散湯
図-3
産
外
県
内
県
農
試
大
産
豆
0
蒸煮大豆硬さ
5.残された問題点とその対応
農試および生産者との連帯・蒸煮条件のさらなる検討・高品質味噌醸造
文献
1)岩崎雅美他:味噌の科学と技術、49、238(2001)
単年度試験研究成績
(作成
平成16年2月)
研究課題名 醸造食品の機能性香気成分増加技術の開発∼味噌
予算区分: 県単 国庫 委託
担当研究室:応用発酵部門
研究期間:継・中
担当者:尾張 かおる
平15年度(平13∼15年度) 協力・分担関係:
発酵食品担当
1.目的
消費者の健康志向が高まり、多くの機能性食品が開発される中、醸造食品においては
香味の向上に加え強い抗酸化性や抗腫瘍性が認められているHEMFが注目を集めている。
しかし高級秋田みその現在の製法では充分量を作出することができないので、新たな製
造方法を確立し普及することを目的とする。
前年度までは、仕込時に酵母を大量に添加することによりHEMFが順調に生成すること
が判明し、味噌製造工場における中間規模での試験醸造でもHEMF15μg/g以上生成可能
であることを確認した。今年度は、実際の2工場で製造規模で確認することを目的とする。
2.方法
仕込み配合
麹歩合10、目標食塩12.5% 目標水分43%
D工場
E工場
麹歩合12、目標食塩12.3%、目標水分42%
仕込総量330kg
仕込総量180kg
大量添加(試験)区:酵母添加量
10 6
乳酸菌添加量
10 6
通常添加(対照)区:酵母添加量
10 5
乳酸菌添加量
10 6
3.成果の概要
D工場:平成15年6月19日仕込み
E工場:平成15年7月25日仕込み
熟成終了平成15年12月
熟成終了平成16年 2月
2工場は原料、仕込み総量、配合、熟成方法および熟成期間が異なったが、酵母を大量
添加することで、ともに目標である15μg/g以上のHEMFを生成できた。
大量添加法は、エタノールの増加を見てわかるように、酵母の働きが通常添加法に比
べ早い時期から機能していた。HEMFの前駆体が麹菌によって生成する時期に酵母が大量
に存在することでHEMF合成がスムーズに進むと思われる。
4.今後の問題点と次年度以降の計画
研究に関しては、平成15年から始めている「秋田みその品質の高度化に関する研究」
で引き続きメルクマールとして扱っていく予定である。
5.残された問題点とその対応
研究所報告
HEMF生成については予定どおりの成果を得たので、今後は各種研修・講習会などを通
じて広く業界に普及していきたい。
D工場 HEMF
HEM F μg / g
20
15
10
5
大量添加
通常添加
0
仕
込
時
切
り返
し時
製
品
D工場 ethanol
e t h an o l %
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
大量添加
通常添加
0.0
仕
込
時
切
図-1
り返
し時
製
品
D工場 HEMFとethanol生成量
HEM F μg / g
E工場 HEMF
30
25
20
15
10
5
0
仕
込
大量添加
通常添加
時
切
り返
し時
製
品
E工場 ethanol
e t h an o l μg / g
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
大量添加
通常添加
0.0
仕込
図-2
時
返
切り
し時
製品
E工場 HEMFとethanol生成量
20
HEMF μg/g
15
10
5
0
A
B
C
D
F
G
H
I
J
工 場
図-1
市販多麹味噌のHEMF
HEMF生成量
酵母生菌数
7
酵母生菌数(対数)
HEMF μg/g
30
20
10
104
105
106
6
5
4
0
0
図-2
60
90
仕込後日数
30
20
90
120
C工場 HEMF
20
10
5
0
15
H EMF μg/g
HEM F μg / g
15
15
10
5
大量添加法+乳酸菌
10
5
0
0
通常添加法+乳酸菌
通常添加法
酵母添加なし
大量添加法
大量添加法
中間規模仕込み試験のHEMF生成量
D工場 HEMF
E工場 HEMF
15
10
5
大量添加
通常添加
0
仕
込
時
切
り返
し時
製
品
企業規模仕込みのHEMF生成量
HEMF μg/g
HEMF μg/
g
20
図-4
60
B工場 HEMF
20
25
HEMF μg/ g
0
小仕込み試験HEMF生成量と酵母添加量
A工場 HEMF
図-3
3
120
30
20
10
大量添加
通常添加
0
仕
込
時
切
り返
し時
製
品
単年度試験研究成績
(作成
平成16年3月)
研究課題名 県産米及び穀類の新規需要を開拓するための加工技術の開発(全体)
予算区分:県単 国庫 委託
担当研究室:食品開発部門、酒類部門
研究期間:継・中
担当者:大久、秋山、大能、金子、高橋仁
平15年度
協力・分担関係:東北農業センター、
(平15から17年度)
県農業試験場、淡路製粉、
こまち生産者協会、大潟村増永、
1.目的
県産米の需要拡大を目指し、新形質米の利用、穀類の第3次機能の活用、超微粉化、新
規な加工法の開発(酵素利用、工程の短縮)などに取り組んでいる。第3次機能としては
米の活性酸素消去と発芽玄米のγアミノ酪酸に注目している。新形質米として有色米と低
グルテリン米を取り上げ、新規な酒類及び腎臓患者向けの包装米飯の開発に取り組む。
2.方法
<試験材料、方法および調査方法等>
発芽玄米の製品をJAこまち、M&M、さがわい食品、亀田製菓から入手した。玄米(あき
たこまち、キヨニシキ)のGABAも調査した。
米280種および大豆487種は東北農業センターから入手した。
低グルテリン米(春陽)は大潟村産(増永)を使用した。
紫黒米(小紫、秋田紫糯68号)、朝紫、低アミロース米(秋田半糯80号)、スノー
パール、香り米(秋田香85号)、多収米(秋田63号)は県農業試験場から入手した。
3.成果の概要
①活性酸素消去活性
米280種、大豆487種の活性酸素消去活性を測定した。大豆のイソフラボン含量を
測定し活性酸素消去活性との関係を調べた結果、やや強い正の相関が得られた。市販GABA
製品および米ぬか加工品と緑茶は活性酸素消去能の相乗効果を示した。
②無洗米関連
3種類の無洗米を調べた。サタケのTWR無洗米は18時間浸漬すると炊飯により焦げが生
じた。浸漬中にグルコース等の還元糖とアスパラギン酸等の遊離アミノ酸が増加し、アミ
ノカルボニル反応により焦げが生成することが示唆された。TWR無洗米は肌糠成分が他の
無洗米より多いと推定された。
③新形質米
低グルテリン米(春陽)の米飯テクスチャーはあきたこまちに比較して非常に硬く、粘
りはほぼ同じであったが、粘りを硬さで割ったバランス度は低くなった。アミロースが多
く硬いタンパク質であるプロラミンが多いことが原因で米飯テクスチャーが悪くなったと
推定している。
小紫を用いた新規タイプの清酒の製造にいて、総ポリフェノール及び水溶性リグニン含
量から機能性成分の可能性を検討中。
④生澱粉分解酵素
秋田県内製粉工場の活性汚泥より生澱粉資化性の高い菌株を分離した。本菌は16srDNAの相同性より Streptomyces 属と同定した。酵素を精製し諸性質を調べたところ、耐熱
性の酵素で澱粉を生のまま加水分解するアミラーゼであった。
4.今後の問題点と次年度以降の計画
各テーマに連関を持たせ相乗作用のでるように研究員間の情報交換を密にしたい。
5.結果の発表、活用等
XYZ系活性酸素消去発光研究会誌, Vol.2, No.1 (2003)
食品科学工学会誌, 50, 316 (2003)
食品科学工学会大会(東京), (2003)
日本食品科学工学会東北支部大会(仙台), (2003)
現代農業, 12月号 (2003)
特許出願:特願2003-388678(新規アミラーゼ、該アミラーゼ生産能を有する微生物
及びその製造方法)
単年度試験研究成績
(作成
平成16年3月)
研究課題名:県産米及び穀類の新規需要を開拓するための加工技術開発
(活性酸素消去機能)
予算区分:県単
担当研究室:食品開発部門 食品工学担当
研究期間:継・中
担当者:秋山美展、大久長範、
平15年度(平15∼19年度)
協力・分担関係:(独法)東北農業研究
センター 水田利用部
1.目的
近年の食品に係わる事件や事故によって、食品やその原料生産者に対する社会の目はま
すます厳しいものになってきている。その一方で、食と健康や美容との関係に対する関心
が高まっており、食によって健康の維持・増進をはかりたいとする人が増えてきている。
食品中の活性酸素消去成分が、がんや生活習慣病の予防に有効であることはすでに多く
の科学的データによって支えられている。米をはじめ雑穀等の穀類はいずれも活性酸素消
去成分を含むが、その活性は必ずしも高いものではない。しかしながら、穀類は大豆や茶
などのフラボノイドと共存することにより、その活性酸素消去活性が著しく高められる効
果(活性酸素消去相乗効果)のあることを見いだしており、この相乗効果を活用すること
により、既存食品の活性酸素消去活性を化学的な修飾なしに数倍程度まで高めることが可
能となる。
本研究の目的は、相乗効果を最大限に発揮させうる食品加工技術を開発し、生理機能性
の高い加工食品を開発することである。15年度は米および大豆の品種別活性酸素消去活性
を測定し、高い生理機能性を有する食品を製造する際の原料としての適性を評価する。さ
らに、相乗効果を発現する新たな組み合わせの探索を行う。
2.方法
1)米および大豆の品種別活性酸素消去活性および相乗効果の測定
a)東北農業研究センターが保有する米および大豆遺伝資源の活性酸素消去活性を
XYZ系活性酸素消去発光法(以下XYZ法)により測定する。
b)大豆のイソフラボン含量を測定し、活性酸素消去能との関係を明らかにする。
c)米及び大豆の特徴的な品種について相乗効果比を測定する。
2)相乗効果を発現する新たな組み合わせの探索
米および緑茶に対して相乗効果を示す食品(食品原料)を探索する。
3.成果の概要
1)米および大豆の品種別活性酸素消去活性の測定
・米280種、大豆487種の活性酸素消去活性を測定した。
・大豆のイソフラボン含量を測定し活性酸素消去活性との関係を調べた結果、やや強
い正相関が得られた。
・高い相乗効果比を示す大豆はイソフラボン含量も高いことが明らかになった。
2)相乗効果を発現する新たな組み合わせの探索
熱帯植物であるノニおよびシャカオが米に対して相乗効果を有していた。
市販ギャバ( γ -アミノ酪酸)製品および米ぬか加工品の活性酸素消去活性と
相乗効果を調べた結果、いずれも緑茶に対する相乗効果を有していた。
1)米および大豆の品種別活性酸素消去活性の測定(成果の詳細)
東北農業研究センターが保有する米280種、大豆478種の活性酸素消去活性を測定
した。消去活性は没食子酸(2 mM 200 µ lを100%とする)の活性に対する相対値(%)で
散布図 (Y比発光強度vsイソフラ含量)
示した(表1)。
800
表 1
米と大豆の活性酸素消去活性
700
(%)
600
最小
最大
標準偏差
米
26.3
9.2
42.7
9.3
大豆
18.3
4.0
36.8
8.9
500
イソフラボン含量
平均
400
300
200
100
0
-100
0
20
40
60
80
100
120
140
160
Y比発光強度
図1 イソフラボン含量と活性酸素
消去能 楕円は95%信頼領域
大豆 のイソフラボン含量と活性酸素消去活性の間にはやや強い正相関があった(図1)。
2)相乗効果を発現する新たな組み合わせの探索
表2 活性酸素消去活性と相乗効果比
消去活性(%)
相乗効果比
抽出液
粉体
対糠抽出液 対緑茶浸出液
ノニ葉(老葉)
15
1.9
0.6
ノニ葉(幼葉)
20
1.6
0.5
シャカオ葉
15
1.5
0.5
ギャバエキスHC-5 (オリザ油化)
22
1.2
ギャバジャームP (オリザ油化)
177
1.6
RICEO (築野食品)
33
2.5
コメヌカPF-60 (築野食品)
54
3.1
市販ギャバ加工品は緑茶に対する相乗効果を有するが強い効果ではない。米ぬか加工
品はかなり高い効果を示した。今後、相乗効果訴求製品を設計する際の基準値となる。
4.今後の問題点と次年度以降の計画
負の相乗効果発現のメカニズムを明らかにするとともに、組み合わせに関するデータの
蓄積を行う。動物実験の結果を踏まえて、ヒトへの有効性を検証する必要がある。
さらに、相乗効果を活用した新製品開発と普及を行う必要がある。
5.結果の発表、活用等
1)論文投稿:XYZ系活性酸素消去発光研究会誌、Vol.2 No.1 (2003)
2)学会発表:第3回XYZ系活性酸素消去発光研究会(2003)、日本食品科学工学会
東北支部大会(2003)
3)講演:9回豆類利用研究会(2003)、秋田応用微生物研究会(2003)、第2回フードファー
ラム北東北(2003)
4)新聞・雑誌掲載:米穀新聞(2004年1月8日版)、月刊食料ジャーナル、Vol.28(2003)
現代農業、12月号(2003)
5)TV放映:秋田テレビ(2003年5月13日)
単年度試験研究成績
(作成
平成16年3月)
研究課題名:県産米及び穀類の新規需要を開拓するための加工技術の開発
(古米化とタンパク質の変化)
予算区分:県単 国庫 委託
担当研究室:食品開発部門資源利用担当
研究期間:継・中
担当者:大能俊久
平15年度(平15∼19年度) 協力・分担関係:
1.目的
米を貯蔵すると、炊飯した際の米飯の硬さや粘りが変化してくる。古米は一般的に好ま
れないが、それは古米米飯が硬くて粘らないためである。この古米化によるテクスチャー
変化の原因については、1970年頃から①遊離脂肪酸の関与②細胞壁の架橋構造③タン
パク質の重合や変性、などの説が出ているが、詳しく分かっていない。今年度のような不
作の年には政府保管の備蓄米(古米)を食べなければならないが、古米のテクスチャーを
改良する安価で有用な方法も見つかっていないのが実状である。
平成14年度から古米に関わる研究を進めていく中で、古米米飯のテクスチャー変化に
タンパク質が関与していることを見いだした。これらの変化はタンパク質がSS結合を形
成することで起こると推察しているが、確証を得ていない。そこで、本年度は、古米化に
よるタンパク質の重合を明らかにすることを目的とした。
2.方法
1)新米と古米、還元剤、酸化剤と米飯テクスチャー
秋田県産あきたこまち普通精米(新米、古米)をそのまま1.6倍量の炊飯溶液に1時間
浸漬後、ナショナル電気炊飯器SR-W100で炊飯し、2時間後の米飯テクスチャーをテンシプレッサー
で測定した。炊飯溶液として蒸留水、8mMNa 2SO 3、5mMKIO 3、を用いた。
無洗米はSJ無洗米をそのまま、あるいは30℃で60日貯蔵(無洗米古米)して使用した。
2)研削した新米、古米の米飯テクスチャー
新米、古米を歩留まり95∼73%まで研削した精米について、1)と同様にテクスチャー
の測定を行った。
3)外層粉から抽出したタンパク質のSDSを用いたnative-PAGE
2)で研削した際の無洗米新米、古米の5%外層粉から、1%SDSを含む10mMNaOH水溶液で
タンパク質を1時間抽出した。その後、Laemmliの方法に準じてSDSを用いたnativePAGEにかけた。
3.成果の概要
還元剤、酸化剤溶液と米飯テクスチャーの関係を表1に示した。まず、蒸留水で炊飯した場
合は普通精米も無洗米も、古米でバランス度の低下が認められた。還元剤(Na 2SO 3)を加えるこ
とにより、特に古米の硬さが改良されて新米と差がなくなり、バランス度が上昇した。酸化剤
(KIO 3 ) を加えた場合は、逆に新米古米ともにバランス度がやや低下した。このことから、
タンパク質のSS重合が米飯の硬さに関係していると予想した。
また、新米、古米の外層を研削すると、両者のテクスチャーの差は小さくなった(表2)。
その中でも特に無洗米で5%外層を削るだけでバランス度の差が小さくなっていた。無洗米外層粉
の抽出タンパク質のnative-PAGEにおいて、古米はグルテリンの酸性サブユニット(37∼39
kDa)と塩基性サブユニット(22∼23kDa)が減少しており、両者の重合体(57kDa)のバンド
が増えていた(図1)。無洗米の古米では、このような酸化重合した外層のタンパク質の一
部が、米飯を硬くしていると推測している。
表1
精米
普通精米(新米)
〃
〃
普通精米(古米)
〃
〃
無洗米(新米)
無洗米(古米)
表2
精米
普通精米新米73%
普通精米古米73%
普通精米新米93%
普通精米古米93%
無洗米新米95%
無洗米古米95%
還元剤、酸化剤と米飯テクスチャー
炊飯溶液
硬さ(N) 粘り(N) バランス度
蒸留水
32.0
10.1
0.318
Na2SO 3
31.8
10.4
0.333
KIO 3
31.8
9.7
0.310
蒸留水
35.9
9.3
0.260
Na 2SO 3
31.9
9.4
0.299
KIO 3
37.0
8.8
0.240
蒸留水
27.6
9.3
0.343
蒸留水
35.1
9.8
0.283
研削した場合のテクスチャー
炊飯溶液
硬さ(N) 粘り(N) バランス度
蒸留水
24.4
8.3
0.343
蒸留水
24.9
8.5
0.343
蒸留水
28.9
9.2
0.324
蒸留水
31.7
9.1
0.289
蒸留水
28.4
9.8
0.350
蒸留水
29.7
9.4
0.323
A:無洗米新米外層粉
B:無洗米古米外層粉
glu:グルテリン
pro:プロラミン
57k
glu(重合)
glu(酸性サブユニット)
37∼39k
glu(塩基性サブユニット)
pro(重合)
pro
22∼23k
13k
A B
図1 外層粉に含まれるタンパク質のnative-PAGE
4.今後の問題点と次年度以降の計画
今回、1%SDSを含む10mMNaOH水溶液で抽出を行ったが、抽出時間に伴ってタンパク質が
変化していることが分かっている。変化を起こしにくいタンパク質の抽出方法やどのタン
パク質がテクスチャーを硬くするのか等について、引き続いて明らかにしていく。また、
古米のテクスチャー改良についても検討していきたい。
5.結果の発表、活用等
学会での発表を予定している。
単年度試験研究成績
(作成
平成16年2月)
研究課題名:県産米及び穀類の新規需要を開拓するための加工技術の開発
(無洗米米飯のこげに関する研究)
予算区分:県単 国庫 委託
担当研究室:食品開発部門資源利用担当
研究期間:継・中
担当者:大能俊久
平15年度(平15∼19年度) 協力・分担関係:聖霊女子短大
1.目的
無洗米の流通量は年々増加し、2002年には米の全流通量の約10%を占めるに至っている。
研ぎ汁を出さないなど環境に優しい商品である無洗米は、今後もその需要が増加すると考
えられる。
しかし、無洗米は研がずに炊飯することから、普通精米を水洗したものに比べて浸漬液
中に固形分が多くなることが指摘されており、このことから無洗米米飯ではこげができや
すいと予想される。そこで市販の主な無洗米、3種についてこげの出来具合を調べた。ま
た、浸漬液中のこげに関与すると考えられる成分の定量を行った。
2.方法
試料として2001年秋田県産あきたこまち3種類{BG無洗米、スーパージフライス(SJ)無
洗米、TWR無洗米、いずれも水洗をしないで使用}と普通精米あきたこまち(2.5倍量の蒸
留水を加えてさじで10回撹拌する水洗操作を5回行ったもの)を使用した。米100gに対し
て蒸留水160gを加えて、浸漬時間は1、または18時間とし、ナショナル電気炊飯器SR-W100
で炊飯した。
1)こげの数値化:こげの部分を採取してミノルタ色彩色差計CR-200でL * a * b * 値を測
定した。
2)浸漬液中の還元糖の定量:採取した浸漬液にエタノールを加えて80%エタノール溶
液となるようにした。その後減圧乾固して蒸留水に溶かし、ダイオネクス社製Dx500
クロマトグラフィーシステムで還元糖の分離と定量を行った。
3)浸漬液中の遊離アミノ酸の定量:上記減圧乾固品を0.02N塩酸溶液に溶かして日本電
子データム社製全自動アミノ酸分析機JLC-500/Vで遊離アミノ酸を定量した。
3.成果の概要
無洗米3種の中ではTWR無洗米を18時間浸漬した米飯のこげが多かった。それは、黄色
みを示すこげのb * 値の大きいことからも確認できた(表2)。
浸漬液中の還元糖はグルコースが主要成分であった。また、遊離アミノ酸はアスパラギ
ン酸やアスパラギン、グルタミン酸、アラニン、γ−アミノ酪酸、アンモニアなどが主要
成分であった。総還元糖量と総遊離アミノ酸量は、TWR無洗米を18時間浸漬したものが一
番多かった(図1、2)。これはこげの結果と一致しており、還元糖と遊離アミノ酸がア
ミノカルボニル反応を起こしてこげが生成していることを示唆している。
TWR無洗米はショ糖が多いことから肌糠成分が他の無洗米より多いと推測される。浸漬
時間が長くなると、肌糠由来の酵素により還元糖や遊離アミノ酸が増加して、こげができ
やすいと考えられた。
表1
BG無洗米
SJ無洗米
TWR無洗米
普通精米
各種無洗米の成分
水分
16.0
16.0
15.7
15.7
粗タンパク質 粗脂肪
5.3
0.5
5.8
0.4
5.6
0.5
6.1
0.7
表2
こげの状態
BG無洗米1時間
〃 18時間
SJ無洗米1時間
〃 18時間
TWR無洗米1時間
〃 18時間
普通精米水洗1時間
〃 18時間
灰分
0.2
0.2
0.3
0.4
目視
L*
a*
±
63.5
-2.5
+
59.6
-2.2
±
63.4
-2.6
+
59.4
-1.9
±
63.4
-2.4
++
58.0
1.3
±
62.8
-2.7
±
60.7
-2.2
±:こげがある
+:こげがやや多い、やや濃い
++:こげが多い、濃い
炭水化物
78.0
77.6
77.9
77.1
b*
5.1
5.3
4.6
7.9
7.3
18.5
0
6.9
600
TWR
SJ
400
BG
普通
水洗
200
1時間
18時間
図1 浸漬液中の遊離還元糖量の変化
アミノ酸 (μmol /100g)
還元糖 (μmol /100g)
800
300
TWR
SJ
200
BG
普通
水洗
100
0
1時間
18時間
図2 浸漬液中の遊離アミノ酸量の変化
4.今後の問題点と次年度以降の計画
特になし。
5.結果の発表、活用等
県内企業の指導で活用していく。また、日本食品科学工学会東北支部会で発表を行った。
今後学会誌への投稿を予定している。
単年度試験研究成績
(作成
平成16年3月)
研究課題名:県産米及び穀類の新規需要を開拓するための加工技術の開発
(低グルテリン米の利用に関する研究)
予算区分:県単 国庫 委託
担当研究室:食品開発部門資源利用担当
研究期間:継・中
担当者:大能俊久
平15年度(平15∼19年度) 協力・分担関係:
1.目的
腎臓疾患の患者はタンパク質の摂取を制限されるため、タンパク質の少ない米飯を主食
とすることが多い。新形質米として育成された低グルテリン米は、易消化性のグルテリン
が少なく難消化性のプロラミンが多く、従って消化されるタンパク質が少ないため腎臓疾
患患者に向いていると考えられる。県内での生産量も増えており、平成15年度は400トン
以上の生産が見込まれている。
しかし、低グルテリン米は米飯としての食味などに問題があると考えられる。そこで、
低グルテリン米の食味の改良とともに包装米飯などの商品化を目指すことを目的とする。
今年度は、低グルテリン米の成分や米飯テクスチャーなど、基本的な特徴について検討
した。
2.方法
1)試料
試料は低グルテリン米大潟村産春陽を使用した。対照として普通精米あきたこまち
を用いた。
2)成分分析
水分は135℃3時間乾燥法,粗タンパク質はケルダール法,粗脂肪は酸分解法,灰分
は550℃5時間直接灰化法,炭水化物は差し引き法とした.また、脱脂デンプンを調
整して、ヨウ素呈色比色法により、みかけのアミロース量を求めた。
3)タンパク質のSDS-PAGE
全粒粉から1.51%トリス、4%SDS、48%尿素、20%グリセリン、5%メルカプトエタノールを含むpH6.8の水
溶液でタンパク質を一晩抽出してSDS-PAGEを行った。
4)米飯テクスチャー
精米をそのまま、あるいは2.5倍量の蒸留水で5回水洗した後、1.6倍量の炊飯溶液に1
時間浸漬した。ナショナル電気炊飯器SR-W100で炊飯し、2時間後の米飯テクスチャーをテンシ
プレッサーで測定した。
3.成果の概要
低グルテリン米は、粗タンパク質と粗脂肪があきたこまちに比べて少なく、みかけのア
ミロース量が多かった(表1)。SDS-PAGEから、低グルテリン米でグルテリン関連のタン
パク質が減少してプロラミン関連のタンパク質が増加していることが分かった(図1)。
また、米飯テクスチャーは低グルテリン米があきたこまちに比べて非常に硬く、粘りはほ
とんど同じで、粘りを硬さで割ったバランス度は低い結果となった(表2)。
春陽は母:ニホンマサリ変異体、父:北陸153号であり、あきたこまちやコシヒカリな
どの良食味品種から作られたものではない。そのため、アミロース量が多かったのであろ
う。アミロース量が多いことと硬いタンパク質であるプロラミンが多いこと、が原因で低
グルテリン米は米飯テクスチャーが硬くなったと推察している。
あきたこまち
低グルテリン米
表1 低グルテリン米の成分
水分(%) 粗タンパク質(%) 粗脂肪(%) 灰分(%) 炭水化物(%) アミロース量(%)
15.7
6.1
0.7
0.4
77.1
14.5
15.7
5.6
0.5
0.4
77.8
21.5
glu:グルテリン
pro:プロラミン
94.0k
67.0k
43.0k
30.0k
glu(重合)
glu(酸性サブユニット)
glu(塩基性サブユニット)
20.1k
14.4k
pro
A:あきたこまち
G:低グルテリン米
A G
図1 低グルテリン米のSDS-PAGE
表2
あきたこまち
低グルテリン米
低グルテリン米
低グルテリン米の米飯テクスチャー
水洗の有無
硬さ(N) 粘り(N) バランス度
なし
32.0
10.1
0.318
なし
40.4
10.3
0.261
あり
41.0
10.5
0.263
4.今後の問題点と次年度以降の計画
日本では軟らかくて粘りが大きい米飯が好まれることから、低タンパク質米の米飯テク
スチャーを軟らかくする方法について検討していく。
5.結果の発表、活用等
県内企業の技術指導等で活用する。
単年度試験研究成績
(作成
平成16年3月)
研究課題名:県産米及び穀類の新規需要を開拓するための加工技術開発
――生澱粉分解酵素利用――
予算区分: 県単 国庫 委託
担当研究室:食品開発部門資源利用担当
研究期間: 継 ・中
担当者:金子隆宏
平15年度(平15∼19年度) 協力・分担関係:大久長範、秋山美展
大能俊久、高橋仁
1.目的
県産米等の新規需要開拓の為、生澱粉分解酵素(RSA)を用いて、米粉などをα化すること
なく酵素処理し、澱粉粒本来の特徴を残しつつ、糊化及び老化特性などを改変させる。ま
た澱粉粒を有孔化し、包接効果など種々の機能性を付与する。さらには、無蒸煮糖化によ
り、米粉中の熱感受性有用成分(蛋白成分、揮発性成分、香味ほか機能成分)の非加熱抽出
なども試みる。
本年度は生澱粉分解酵素生産菌の培養条件の検討、酵素の精製及び特性解析など行った。
2.方法及び成果の概要
秋田県内製粉工場の汚泥より生澱粉資化性の高い菌株を見出した。16S-rDNA約500bpの相
同性より本菌株は Streptomyces 属と思われた。本菌株の培養上清を澱粉吸着、DEAE-及びゲ
ル濾過処理 し、SDS-PAGE的に単一 の酵素蛋白 (比活性11.7U/g)を得 た。本酵素 は分子量 約
50kDa、反応至適温度50∼60 o C、至適pH6.0付近であった。本酵素は50 o C以下の加温処理で100%、
60 oCで50%、70 oCでほぼ0%の残存活性を示し(Ca 2+ 共存下pH5.0で30min処理)、各pHでの相対残
存活性は、pH4.0で13%、pH5.0で83%、pH6.0で100%、pH7.0で63%であった(Ca 2+共存下50 o C 1h
処理)。また本酵素はCa 2+ 、Co 2+ 、Mg 2+ などで促進され、Cu 2+ 、Ni 2+ 、Zn 2+(何れも塩化物)など
に阻害された。この傾向はα化澱粉より生澱粉に対して、より顕著であった。本酵素は澱
粉、glycogen、G4以上のマルトオリゴ糖に作用し、主にG2、次いでG3、G1など生成したが、
G1∼3、pullulan、CDsには作用しなかった。本酵素は小麦(100)に、次いで米(96.6)、餅米
(86.1)などの生澱粉によく作用したが、corn(52.7)、waxy corn(49.1)に対しては、芋類と
同等であった(馬鈴薯(56.1)、甘藷(40.8)、tapioca(49.9)、括弧内は相対活性、可溶性澱
粉(238.7))。
3.今後の問題点と次年度以降の計画
・酵素処理澱粉の調製、及び特性解析
・生澱粉資化性菌残り2株の解析
・酵素遺伝子のクローニング、シーケンス、及び枯草菌での発現
4.残された問題点とその対応
・結果の文献発表:投稿論文準備中
・研究会への報告:2004年度農化大会(広島)口頭発表予定(3/29午後)
・マスコミ等への発表:なし
・知的所有権の取得:平成15年11月19日付け特許出願済み(特願2003-388678)
「新規アミラーゼ、該アミラーゼ生産能を有する微生物及びその製造方法」
RAS処理コーンスターチ粒
RSAの精製
培養上清
澱粉吸着
DEAEゲル濾過
全活性 比活性 純度
(U)
(U/mg) (fold)
回収率
(%)
1.0
5.5x10 -3
0.18
32.7
2.09
380
11.7
2127
100
88.0
75.2
60.1
330
291
248
198
金属イオンがRSA活性に与える影響
酵素液(EDTA処理)、1%澱粉(10mM金属イオン、50mM MES pH5.5)、37 o C,1h反応
Metal
ions
Ca2+
Co2+
Mg2+
Mn2+
none
Relative activity
Raw (gelatinized)
313.8(189.5)
165.2(127.8)
134.0(109.1)
111.9(106.1)
100 (100 )
Fe2+
Zn2+
Ni2+
Cu2+
36.8(
31.0(
14.8(
7.5(
86.1)
65.6)
44.5)
27.8)
各種澱粉粒に対するRSA相対活性
1%各澱粉(10mM酢酸pH5.0、5mM塩化カルシウム)で37 o C,1h反応
Wheat
Rice
Waxy rice
Corn
Waxy corn
100
96.6
86.1
52.7
49.1
Potato
56.1
Sweet potato
40.8
Tapioca
49.9
ー
ー
S. starch* )
238.7
*)Soluble starch
単年度試験研究成績
(作成
平成16年2月)
研究課題名
県産米及び穀類の新規需要を開拓するための加工技術開発
−県産新形質米の酒造への有効利用―
予算区分:県単
担当研究室:酒類部門酒類第一担当
研究期間:継
担当者:高橋 仁
平15年度(平15∼19年度) 協力・分担関係:農業試験場
1.目的
農業試験場が育成した新形質米の有効利用のため、新タイプの清酒製造を検討する。
秋田農試が育種した新形質米の特徴的な成分を把握し、新タイプ清酒の醸造の可能性を
検討する。
また、第3期酒造好適米開発事業から引き継いだ育種中の次世代酒米品種候補の酒造特
性分析を行う。
2.方法
(1)新形質米の原料米分析
平成14年農試産試料
紫黒米
小紫(秋田紫糯68号) 対照 朝紫
低アミロース米 秋田半糯80号
対照 スノーパール
香り米
秋田香85号
多収米
秋田63号
(2)次世代酒米品種候補の酒造特性分析
試験系統21点(内拡大栽培可能系統13点)
対照品種 5点(美山錦、吟の精、秋田酒こまち、秋の精、美郷錦)
秋田県酒造組合収集試料 84点(兵庫県産山田錦含)
3.成果の概要
(1)新形質米の形質について
県産紫黒米「小紫」(秋田紫糯68号)を用いた新規タイプの清酒の製造について、総ポ
リフェノール及び水溶性リグニン含量から機能性成分の可能性を検討中。
その他の農試試料について、基本成分は分析中。
(2) 次世代酒米品種候補の酒造特性について
秋田県酒造組合が収集した秋田県産酒造原料米7品種79点及び兵庫県産山田錦5点の
原料米分析を行い、次世代酒米品種との比較データとする。農試試料は2月上旬に搬入し
ており、分析中。
平成15年産比較品種の分析結果(秋田県酒造組合収集8品種84点)
一般米品種は1等米比率は昨年より高いが、千粒重は小さく、吸水速度が速く、粗タン
パク質は高くなった。酒造好適米品種は県内産については一般米品種と同様千粒重が小さ
くなったほか、心白の発現が少なく、玄米粗タンパク質が高い傾向となった。美山錦は一
等米比率は上がるが精米でもろい傾向あり、吟の精は千粒重が昨年より小さく28∼29
g程度、心白は薄く小さく、一等米比率が昨年より高くなった。秋田酒こまちは、千粒重
が昨年より小さく26∼27g程度、外観の玄米品質は米厚が薄く、心白が小さく玄米横
断面では点状心白の発現が多く一等米比率が昨年より低い。山田錦(兵庫)は地区・等級
により品質のばらつきが見られ、千粒重は平年並みで、精米までの米質は良好であった。
平成15年秋田県産酒造原料米分析結果
秋田県総合食品研究所醸造試験場
秋田県酒造組合 掛米開発チーム
玄米千粒 玄米整粒
粗タンパク 白米千粒 見かけの 真精米歩 無効精米 白米整粒
玄米水分
砕粒歩合
重
歩合
質(乾物) 重
精米歩合 合
歩合
歩合
めんこいな
あきたこまち
たかねみのり
美山錦
吟の精
秋の精
秋田酒こまち
山田錦
県内6点の平均値
県内2点の平均値
県内3点の平均値
県内7点の平均値
県内2点の平均値
県内2点の平均値
県内59点の平均値
兵庫県産5点の平均値
22.3
20.8
21.4
26.2
28.8
26.1
27.4
27.0
白米水分
めんこいな
あきたこまち
たかねみのり
美山錦
吟の精
秋の精
秋田酒こまち
山田錦
県内6点の平均値
県内2点の平均値
県内3点の平均値
県内7点の平均値
県内2点の平均値
県内2点の平均値
県内59点の平均値
兵庫県産5点の平均値
13.5
13.5
13.5
13.5
13.5
13.5
13.5
13.5
93.8
95.7
92.5
91.7
95.6
92.0
92.0
92.7
16.3
16.2
15.9
16.4
16.2
15.9
16.4
15.3
白米粗タン 吸水性
パク質
20分値
5.0
5.0
5.8
4.9
5.1
5.1
4.5
4.6
27.6
27.0
26.9
28.9
30.4
29.6
27.7
30.3
8.5
8.7
9.3
8.0
8.3
8.1
8.0
7.8
15.9
14.7
15.0
18.6
21.7
19.5
19.2
19.6
70.2
69.8
70.1
69.8
70.1
69.8
70.0
70.1
71.3
70.4
70.1
71.1
75.2
74.5
70.5
72.4
1.1
0.7
0.0
1.3
5.1
4.7
0.5
2.4
78.5
77.5
83.4
75.1
50.5
56.2
81.1
85.0
21.5
22.5
16.6
24.9
49.5
43.8
18.9
15.0
吸水性 蒸米吸水 ブリックス糖
アミノ酸度
120分値 率
度
30.4
30.7
29.2
29.9
31.2
29.9
29.1
31.2
31.5
31.8
30.7
30.9
32.1
31.1
30.3
32.4
11.4
11.5
11.1
11.7
11.4
11.9
11.7
11.5
0.6
0.7
0.8
0.7
0.7
0.8
0.7
0.7
玄米・白米整粒は胴割粒含む
消化性のブランク値 Brix( 2.0)F-N( 0.4)
粗蛋白の分析方法 (近赤外分光法)
4.今後の問題点と次年度以降の計画
新形質米の原料米分析
秋田紫糯68号(小紫)の特徴成分を機能性の面から活用する。
清酒用掛米品種の開発では平成16年度から秋田県立大学との新規共同研究「春陽等、
構成タンパク質の異なる新形質米の加工用途開発」のなかで該当品種の原料米分析、小仕
込試験により酒造特性による利用の可能性を検討する。
5.残された問題点とその対応
単年度試験研究成績
(作成
平成16年3月)
研究課題名:小規模食品工場向けの高度加工技術の開発 (全体)
予算区分:県単
担当研究室:食品開発部門 食品工学担当
研究期間:継・中
担当者:秋山美展、高橋徹、大久長範
平15年度(平15∼17年度)
協力・分担関係:生物機能部門 木村貴一
県工業技術センター
秋田大学工学資源学部
1.目的
従来までの食品加工技術や装置の開発は、装置価格、処理量、操作技術などから見て、
中小零細メーカーを対象として開発されたものではなく大手中心のものであった。そのた
め、中小零細規模が大多数である県内食品メーカーにとっては新規技術や装置の導入が困
難な状況であった。この問題解決のためには、県内メーカーの実情に合わせた技術や装置
の開発が不可欠である。ジュール加熱装置は小型、安価であるため、中小零細メーカー向
きの装置であるが、更にプログラム加熱法(昇温中に任意の温度で昇温停止・保持を行い、
一定時間後再び昇温する方法)を組み合わせることにより、その機能をより高度にするこ
とができる。プログラム加熱法の実用化により、早炊き玄米、ゲル強度の高い豆腐、発酵
工程の合理化などが可能になると期待される。
本研究の目的は、プログラム加熱法を導入したジュール加熱技術を完成させ、中小零細
規模の食品製造業に最適な加工技術を普及することである。
平成15年度の目的は、ジュール加熱における発熱解析とプログラム加熱法の有効性の実
証を行う。
2.方法
1)プログラム加熱法の有効性検討
豆乳蒸煮工程と甘酒製造工程へプログラム加熱法を適用し、その有効性を検証した。
2)発芽玄米の高度加工法の開発
ウルチ玄米(あきたこまち)を供試米とした。液相での発芽工程中に用水(浸漬
水)を3時間ごとに交換して,一般生菌数および濁度を常法によって測定した。
3.成果の概要
1)プログラム加熱法の有効性検討
a豆乳蒸煮工程へのプログラム加熱法の適用。
豆乳をプログラム加熱することにより豆腐ゲル物性の改善が可能となった。
b甘酒製造工程へのプログラム加熱法の適用。
小型実用機レベルのプログラム加熱式甘酒製造装置を設計し実用化した。
2) 発芽玄米の高度加工法の開発
玄米の浸漬水に対する比率が増加すると一般生菌数の増加が確認された。また,脱籾直
後の玄米を用いた場合,発芽工程初期での微生物の増殖が緩やかな傾向を示した。次亜塩
素酸ナトリウム溶液による玄米の洗浄が浸漬水の初発菌数の低減に有効であった(図3)。
初期洗浄をせずに3時間ごとに浸漬水を交換した場合の初発菌数は多かったが,発芽工程
中の微生物の増殖は浸漬水を交換しない実験区よりも抑制された。したがって,初期洗浄
と浸漬水の交換の組み合わせでさらなる効果が期待される。発芽玄米の一般生菌数は浸漬
水を交換しても減少しなかった(表1)
成果の概要(詳細)
1)プログラム加熱法の有効性検討
豆乳蒸煮工程へのプログラム加熱法の適用しその有効性を確認した。
豆乳蒸煮工程で75℃8-10分の中間保持部を設けることにより、豆腐ゲル強度が増加し
た(図1)。また、変形率も増加し、食感としてより好ましい豆腐になった。
豆乳加熱条件と豆腐物性
− 破断応力とエネルギ −
破 断 応 力 (N / m 2 )
破 断 エネル ギ(N・m)
1 .2
8
7
4
0 .6
3
0 .4
2
0 .2
1
分
分
15
℃
90
80
℃
15
分
15
70
℃
10
℃
70
70
℃
5分
分
な
15
持
℃
60
保
分
0
し
0
中間保持条件
図1 プログラム加熱による豆腐物性
の改善
2) 発芽玄米の高度加工法の開発
図2
プログラム加熱式甘酒製造装置
0.2
菌数[CFU/ml]
8
6
4
0.1
吸光度
破 断 応 力 (N/m 2
0 .8
5
破 断 エネ ル ギ (N・m
1
6
2
0
0
0
10
20
30
40
浸漬時間[ h]
浸漬水交換
浸漬水交換
図3
無交換(初期洗浄)
無交換(初期洗浄)
発芽玄米浸漬水の微生物および濁度
表1
発芽玄米の一般生菌数
菌数[ CFU/ml ]
24h
33h
5
浸漬水交換
3.0x10
5.7x105
5
5
浸漬水無交換
6.8x10
3.3x10
4.今後の問題点と次年度以降の計画
複合系における発熱解析とプログラムジュール加熱の用途開発
5.結果の発表、活用等
1)学会発表:日本食品工学会2003大会(2003)、2003国際食品工業展アカデミックプラザ
(2003)、電気学会/電子・情報・システム部門大会(2003)
2)単行本:総合農業研究叢書(共著)農業技術研究機構(2003)
3)TV放映:米粉加工品の開発による米の利用拡大(NHK秋田支局,平成15年9月)
単年度試験研究成績
(作成
平成16年3月)
研究課題名
小規模食品工場向けの高度加工技術の開発
(発芽玄米関連)
予算区分:県単 国庫 委託
担当研究室:食品開発部門
研究期間:継・中
担当者:大久長範、秋山美展、高橋徹
平15年度(平15∼17年度) 協力・分担関係:JAこまち
1.目的
難消化性や賞味期限の長い高機能発芽玄米の開発を目的に研究を進めている。今年は籾
発芽と市販の玄米発芽のγ-アミノ酪酸(GABA)及び遊離アミノ酸含量を調査し、GABA含
量の高い発芽玄米の開発を目指す。また発芽玄米等の乾燥食品中の細菌を調べる方法につ
いても検討する。
2.方法
<試験材料、方法および調査方法等の要旨を記載する。>
発芽玄米の製品(JAこまち、M&M、さがわい食品、亀田製菓)、玄米(あきたこまち、
キヨニシキ)を使用した。発芽玄米又は玄米をコーヒーミルで粉砕後、0.1NHClにより遊
離アミノ酸等を抽出し、自動アミノ酸分析機(日本電子,JLC-500V)で分析した。
コロニー形成モデル:発芽玄米と玄米の懸濁液を3Mペトリフィルムに重層し、25℃
で培養した。培養の各時間で出現したコロニー数を計測し、服部の方法{Ln(N ∞ -N)=LnN ∞ λ(t-tr)}に従ってコロニー出現率(λ)を算出した。
3.成果の概要
<生産動向>
発芽玄米の市場は2001年70億円、02年100億円、03年150億円と拡大基調にある。県内で
はM&M、さがわい食品、JAこまちが生産販売していたが、本年から、あきたこまち生産
者協会がこの分野に参入した。発芽玄米を原料として乾めん、味噌、パン、菓子類、清酒
等の二次加工品の開発も盛んに行われている(県内でも中小企業団体中央会が機能性食品
研究会を組織)。
<本年度の結果の概要及び考察>
①玄米、発芽玄米及び籾発芽玄米の遊離アミノ酸含量とγ-アミノ酪酸(GABA)含量に
は正の相関(r=0.928)が認められた(図1)。
②市販の発芽玄米を調べた。あきたこまちを原料としたものはGABA含量が高く、ミルキ
ークイーンを原料とした試料はアラニン含量が高いという傾向があった(図2)。新鮮な
発芽玄米を50℃以上で加熱するとアラニンが増加することから、亀田製菓の製品は加熱さ
れていると考えられた。
③玄米と発芽玄米に付着している細菌。一日当たりのコロニー形成率(λ)は、培養時
間tに対してLn(N ∞ -N)をプロットすると直線になり(図3)、この傾きから求めた。発芽
玄米の場合はλは2.7、玄米の場合は1.4という値が得られ、両者の微生物フロラは異なる
ものと考えられた(玄米の主要な細菌はバチルスであった)。
4.今後の問題点と次年度以降の計画
発芽玄米のGABA含量を高める為にはM&Mのように芽と根が相当成長したものでなければ
難しい。生産能力と品質の兼ね合いで妥協点を見いださなければならない。衛生的な発芽
玄米の製品を得る方法は、実製造企業に合わせ、検討してゆきたい。
4.5
γ-アミノ酪酸 (μmol/g)
4
3.5
3
2.5
2
1.5
1
0.5
0
0
図1
5
10
15
遊離アミノ酸含量 (μmol/g)
20
発芽玄米の遊離アミノ酸とGABAの関係
3
アミノ酸含量(μmol/g)
2.5
2
1.5
Asp
Ser
Glu
Ala
Gaba
1
0.5
0
発芽玄米 (milky)
図2
発芽玄米(komachi) 籾発芽玄米(komachi)
籾発芽玄米と発芽玄米の主要遊離アミノ酸とGABA
3
Log(N∞−N)
2.5
2
1.5
1
0.5
0
0
30
60
90
120
培養時間
図3
発芽玄米と玄米の微生物のコロニー出現
5.結果の発表、活用等
食品科学工学会大会(東京), 2003,9月
食品科学工学会東北支部大会(仙台), 2003,11月
食品科学工学会誌、50, 316-318 (2003)、農業秋田2003, 8月号
150
単年度試験研究成績
(作成
平成16年2月)
研究課題名:小規模食品工場向けの高度加工技術の開発
予算区分:県単
担当研究室:食品開発部門 食品工学担当
研究期間:継・中
担当者:秋山美展、高橋徹、大久長範
平15年度(平15∼17年度)
協力・分担関係:生物機能部門 木村貴一
県工業技術センター
秋田大学工学資源学部
1.目的
従来までの食品加工技術や装置の開発は、装置価格、処理量、操作技術などから見て、
中小零細メーカーを対象として開発されたものではなく大手中心のものであった。そのた
め、中小零細規模が大多数である県内食品メーカーにとっては新規技術や装置の導入が困
難な状況であった。この問題解決のためには、県内メーカーの実情に合わせた技術や装置
の開発が不可欠である。ジュール加熱装置は小型、安価であるため、中小零細メーカー向
きの装置であるが、更にプログラム加熱法(昇温中に任意の温度で昇温停止・保持を行い、
一定時間後再び昇温する方法)を組み合わせることにより、その機能をより高度にするこ
とができる。プログラム加熱法の実用化により、早炊き玄米、ゲル強度の高い豆腐、発酵
工程の合理化などが可能になると期待される。
本研究の目的は、プログラム加熱法を導入したジュール加熱技術を完成させ、中小零細
規模の食品製造業に最適な加工技術を普及することである。
平成15年度の目的は、ジュール加熱における発熱解析とプログラム加熱法の有効性の実
証を行う。
2.方法
1)ジュール加熱における発熱解析
a発熱過程の可視化
b有限要素法による発熱過程のシミュレーション
2)プログラム加熱法の有効性検討
a豆乳蒸煮工程へのプログラム加熱法の適用。
b甘酒製造工程へのプログラム加熱法の適用。
3.成果の概要
1)ジュール加熱における発熱解析
a発熱過程の可視化
感温液晶を透明ゲルに分散させた発熱可視化ゲルを作製し、ジュール発熱過程を
連続的に画像として記録することが可能となった。
b有限要素法による発熱過程のシミュレーション
有限要素解析ソフト(FEMLAB)によるシミュレーションの結果は実験値とよく
一致していた。
2)プログラム加熱法の有効性検討
a豆乳蒸煮工程へのプログラム加熱法の適用。
豆乳をプログラム加熱することにより豆腐ゲル物性の改善が可能となった。
b甘酒製造工程へのプログラム加熱法の適用。
小型実用機レベルのプログラム加熱式甘酒製造装置を設計し実用化した。
成果の概要(詳細)
1)ジュール加熱における発熱解析
左:感温液晶による
温度分布の可視化
右:有限要素法による
温度分布シミュレー
ョンの結果
シ
2)プログラム加熱法の有効性検討
a豆乳蒸煮工程へのプログラム加熱法の適用。
豆乳蒸煮 工程で75℃8-10分の中間保持
部を設けることにより、豆腐ゲル強度
が 増 加 し た 。 ま た 、 変 形 率 も 増 加 し、
食感としてより好ましい豆腐になった。
豆乳加熱条件と豆腐物性
− 破断応力とエネルギ −
破 断 応 力 (N / m 2 )
破 断 エネ ル ギ(N・m)
1 .2
8
7
破 断 応 力 (N /m
0 .8
5
0 .6
4
3
0 .4
2
0 .2
1
分
分
15
分
℃
90
80
℃
15
15
℃
70
70
℃
10
5分
℃
70
し
15
な
℃
持
保
60
分
0
分
0
破 断 エ ネ ル ギ (N・m
1
6
中間保持条件
b甘酒製造工程へのプログラムジュール加熱法の適用。
温度(℃)時間(hr))
55
5
85
2
37
12
85
1
原料殺菌-糖化-失活-発酵-製品殺菌
の5工程を単一装置で連続的に行う。
プログラム加熱式甘酒製造装置
4.今後の問題点と次年度以降の計画
複合系における発熱解析とプログラムジュール加熱の用途開発
5.結果の発表、活用等
1)学会発表:日本食品工学会2003大会(2003)、2003国際食品工業展アカデミックプラザ
(2003)、電気学会/電子・情報・システム部門大会(2003)
2)単行本:総合農業研究叢書(共著)農業技術研究機構(2003)
単年度試験研究成績
(作成
平成16年3月)
研究課題名小規模工場向けの高度加工技術の開発(米加工技術の開発)
予算区分:県単
担当研究室:食品開発部門食品工学担当
研究期間:継
担当者:高橋徹,秋山美展,大久長範
平15年度(平15∼17年度) 協力・分担関係:
1.目的
発芽玄米はその機能性や市場性の高さなどから県内でも非常に期待されているが,製品
の微生物管理が充分にされていないことが多い。そこで,製品の殺菌ならびに発芽工程で
用いる水の微生物の増殖を抑制して,製品の清浄化に資することを目的とする。また,以
前から米粉の利用拡大が叫ばれているが,原料単価が小麦粉の3∼5倍と非常に高く,県内
の食品企業では広く利用されていない。そこで,清酒製造時の副産物である搗精粉(白糠)
の利用による米粉原料単価を抑えた菓子類の製造技術の開発を目的とする。
2.方法
①発芽玄米の高度加工法の開発
ウルチ玄米(あきたこまち)を供試米とした。液相での発芽工程中に用水(浸漬水)を3
時間ごとに交換して,一般生菌数および濁度を常法により測定した。玄米の初期洗浄には
200ppmの次亜塩素酸ナトリウム溶液を用いた。発芽工程の温度は30℃に設定した。
②搗精粉の加工食品への利用
粉体原料は薄力粉,ウルチ米粉(あきたこまち),搗精粉(秋田酒こまち),副原料に
全卵,油脂(バター)および水を用いた。粉体原料の配合量を変化させた場合は,シュー
の膨化が良好となるように加水量も変化させた。シューの容積,色特性を測定した。
3.成果の概要
①発芽玄米の高度加工法の開発
玄米の浸漬水に対する比率が増加すると一般生菌数の増加が確認された。なお,県内の
工場で採用されている玄米と浸漬水との比率は30:100程度である。また,脱籾直後の玄米
を用いた場合,発芽工程初期での微生物の増殖が緩やかな傾向を示した。次亜塩素酸ナト
リウム溶液による玄米の洗浄が浸漬水の初発菌数の低減に有効であった(図1)。初期洗浄
をせずに3時間ごとに浸漬水を交換した場合の初発菌数は多かったが,発芽工程中の微生物
の増殖は浸漬水を交換しない実験区よりも抑制された。したがって,初期洗浄と浸漬水の
交換の組み合わせでさらなる効果が期待される。発芽玄米の一般生菌数は浸漬水を交換し
ても減少しなかった(表1)。
②搗精粉の加工食品への利用
ウルチ米粉や搗精粉のみの配合でもシューの製造は可能であったが,ウルチ米粉のみの
配合はその容積は減少する傾向であった(図2,表2)。シューペーストの粘度を対照系と
同等にすることで米粉のみでのシューの製造は可能である。菓子(特に洋菓子)は油脂類,
卵などの副原料の配合が多いために米粉の配合量の増加が期待できる。米粉の配合はL * 値
(明度)の増加とa * 値(赤色度)の減少のために対照系よりも色付きが劣ったが,搗精粉の
配合は対照系の色特性に近似した(表2)。搗精粉の配合による糠臭は感じられなかった。
4.今後の問題点と次年度以降の計画
①発芽玄米の高度加工法の開発
浸漬水の循環・殺菌装置を試作する。浸漬水の清浄化として物理的方法および化学的方
法を検討する。さらに,加熱処理による製品の清浄化についても検討する。最終年度は,
発芽玄米製造装置の開発,製品の調理・加工適性を向上させるための加工方法を開発する。
②搗精粉の加工食品への利用
搗精粉の安定供給や保存性には若干の課題は残されているが,搗精粉を配合した菓子,
パン類の開発を継続する。
5.残された問題点とその対応
外部発表
・米粉加工品の開発による米の利用拡大(NHK秋田支局,平成15年9月)
・農業秋田 644号(2004)
発芽玄米の一般生菌数
菌数[CFU/ml]
6
0.1
4
吸光度
菌数[CFU/ml]
表1
0.2
8
浸漬水交換
浸漬水無交換
24h
3.0x10 5
6.8x10 5
33h
5.7x10 5
3.3x10 5
2
0
0
0
10
20
30
40
浸漬時間[h]
浸漬水交換
浸漬水交換
図1
①
無交換(初期洗浄)
無交換(初期洗浄)
発芽玄米浸漬水の微生物および濁度
②
表2
③
①
②
③
④
⑤
⑥
④
⑥
⑤
図2
シューの外観
シューの容積,色特性
容積
x10 -4[m 3]
1.25
1.15
1.25
1.05
1.06
1.12
L*
a*
b*
64.1
69.5
66.0
64.3
65.8
67.3
7.0
4.5
6.1
7.2
5.4
4.6
32.3
34.1
32.0
34.4
33.2
32.9
①対照(小麦粉のみ)
②ウルチ米粉のみ
③搗精粉のみ
④小麦50:ウルチ20:搗精30
⑤小麦40:ウルチ30:搗精30
⑥小麦30:ウルチ30:搗精40
単年度試験研究成績
研究課題名:高品質な米麹の製造方法の検討
予算区分: 県単 国庫 委託
研究期間: 継 ・中
平15年度(平13∼15年度)
(作成
平成16年3月)
担当研究室:応用発酵部門
担当者:佐々木康子、渡辺隆幸
協力・分担関係:秋田今野商店
1.目的
昔から、米の収穫量の多かった秋田では、米麹がよく作られてきた。米麹は、漬物、味噌、
水産加工品(例えば、はたはたずし)などの食品の原料となっているが、県内では、米麹を多
く使用するものが特に好まれ、秋田県の食品において、必要不可欠なものとなっている。米麹
を利用した食品においては、米麹そのものの品質が最終製品に大きな影響を与えており、特に
非加熱食品においては、米麹の微生物汚染の影響をそのまま受けてしまうことがある。しかし
ながら、これまでに行った市販米麹の微生物検査によって、県内業者により製造された米麹の
品質には、かなりの衛生的問題があることがわかった。その結果を県内の米麹製造業者で構成
されている任意団体である、製麹研究会で発表したところ、品質向上に意欲を示した製造業者
が数社あった。また、はたはたずしに大腸菌群が検出され、これが原料の米麹由来であること
がわかり、米麹を大腸菌群陰性にするにはどうしたらよいかという技術相談もあった。これら
の要望を受け、昨年度までは、工場の衛生管理技術のレベルアップによる米麹の品質向上と、
製麹時に乳酸菌を添加して混合培養することにより、米麹の微生物汚染を防止する方法につい
ての研究を行ってきた。また、米麹は前記のようなさまざまな用途があるが、用途別の米麹は
製造されていないのが現状であり、より用途に適合した高品質な米麹の製造も求められている。
それを受けて、今年度は、より用途に適合した米麹の製造について検討する。
2.方法
1) 種麹は、秋田今野商店から提供された同社市販品9種類(白麹1号菌、白麹2号菌、白麹3号菌、
白麹4号菌、白麹5号菌、新白麹菌、白麹雪こまち、白麹すずらん、白麹3号菌B)を用いた。
2) 米麹の製造方法
精米(めんこいな)を洗い、一晩浸浸し、1時間水切り後、70分間蒸して、蒸米を製造した。
蒸米を95℃で一晩乾燥させ、ふるいにかけ、破砕米や固まり状の米を取り除いた。滅菌水27.5ml
に上記の種麹17.5mgを懸濁させ、あらかじめ95℃、2時間乾燥させたα米50gに添加して混合し
た。35℃の恒温室に入れ、約19時間後、約25時間後に手入れを行い、約41時間後に出麹とした。
3) 米麹の酵素活性、麹菌量測定
α−アミラーゼ活性、糖化力、酸性カルボキシペプチダーゼ活性、麹菌量の測定には、キッ
コーマン社製の測定キットを用いた。プロテアーゼ活性測定は、アゾカゼイン法で行った。
4) 甘酒の試作
製造した米麹10gに水20mlを入れ、56℃で3時間糖化させて甘酒を試作し、Bx、pH、Lab測定、
官能検査を行った。
5) 大根麹漬の試作
製造した甘酒を用いて、大根麹漬を試作し、Brix、pH、Lab測定、官能検査を行った。
6) ナス麹漬の試作
製造した甘酒を用いて、ナス麹漬を試作し、Brix、pH、Lab測定、官能検査を行った。
3.成果の概要
1) α−アミラーゼ活性、糖化力が高かったのは、白麹3号菌B、白麹1号菌であった。酸性カル
ボキシペプチダーゼ活性、プロテアーゼ活性が高かったのは、白麹3号菌B、白麹1号菌、白麹3
号菌、白麹すずらんであった。10℃保存試験後の米麹のLab測定の結果、褐変性の高かった麹は、
白麹3号菌B、白麹1号菌であった。それ以外の麹は褐変しなかった。
2) 甘酒を試作し、官能試験を行った結果、最も評価が高かったのは、白麹1号菌であった。
3) 大根麹漬を試作し、官能試験を行った結果、最も評価が高かったのは、白麹雪こまちであっ
た。このとき、Brix 16.6、pH 6.3、塩分3.0%であった。
4) ナス麹漬を試作し、官能試験を行った結果、最も評価が高かったのは、白麹1号菌であった。
このとき、Brix 26.5、pH 4.3、塩分3.4%であった。
表1
米麹の麹菌量と酵素活性
麹菌量
(mg/g・乾燥麹)
α−アミラ
ーゼ活性
(U/g・麹)
糖化力
(U/g・麹)
酸性カルボ
キシペプチ
ダーゼ活性
(U/g・麹)
白麹1号菌
5.85
29.6
1.28
2.39
15.0
20.2
1.92
白麹2号菌
7.24
15.6
0.38
1.96
16.1
18.2
1.96
白麹3号菌
7.81
19.1
0.44
2.09
15.1
24.5
1.39
白麹4号菌
6.53
16.4
0.54
1.72
15.2
7.4
0.05
白麹5号菌
5.24
11.0
0.46
1.75
12.7
15.9
0.23
新白麹菌
7.33
18.6
0.44
1.88
13.1
16.3
0.85
白麹雪こまち
6.98
15.6
0.41
1.71
10.8
16.5
0
白麹すずらん
6.82
16.9
0.40
2.09
19.3
22.2
2.38
白麹3号菌 B
5.73
34.6
1.45
2.42
22.0
32.4
1.49
表2
甘酒のBrixとpH
Brix(%)
表3
pH
大根麹漬の配合
プロテアーゼ 活性
(U/g・麹)
pH3
表4
pH6
pH7.5
ナス麹漬の配合
甘酒
25.0g
甘酒
200.0g
白麹1号菌
20.9
5.9
食塩
3.5g
食塩
6.0g
白麹2号菌
17.5
5.3
焼酎
3.5g
焼酎
28.0g
白麹3号菌
19.5
5.6
砂糖
6.0g
砂糖
20.0g
白麹4号菌
20.3
5.6
大根
100.0g
白麹5号菌
20.3
4.8
新白麹菌
19.2
5.6
白麹雪こまち
19.8
5.6
白麹すずらん
19.7
5.7
白麹3号菌 B
21.2
6.2
ビタミンC
塩漬ナス(塩分 3.0%)
0.9g
200.0g
4.今後の問題点と次年度以降の計画
はたはたずしでの検討も行う必要がある。
5.残された問題点とその対応
白麹1号菌を使った米麹は、非常に褐変しやすく、冷蔵しても徐々に褐変していくので、小
売店で販売する売り麹には向かない。白麹1号菌を使用するには、製麹業者が直接販売する出
麹直後の米麹に限定される。また、その場合、使用上の注意点として、米麹はすぐに甘酒にす
るか、冷凍保存しなければならないという説明が販売時に必要である。これまでの結果を秋田
今野商店に報告し、種麹の販売時に役立ててもらう。さらに、今後も秋田今野商店と連携し、
種麹の選択改良を継続する予定である。その結果は、漬物研修での紹介や技術相談を通して、
県産漬物の高品質化・高付加価値化に生かしていく。
完了試験研究成績
研究課題名:高品質な米麹の製造方法の検討
予算区分: 県単 国庫 委託
研究期間:平成13∼15年
(作成
平成16年3月)
担当研究室:応用発酵部門
担当者:佐々木康子、渡辺隆幸、柴本憲夫
協力・分担関係:秋田今野商店
1.目的
昔から、米の収穫量の多かった秋田では、米麹がよく作られてきた。米麹は、漬物、味噌、
水産加工品(例えば、はたはたずし)などの食品の原料となっているが、県内では、米麹を多
く使用するものが特に好まれ、秋田県の食品において、必要不可欠なものとなっている。米麹
を利用した食品においては、米麹そのものの品質が最終製品に大きな影響を与えており、特に
非加熱食品においては、米麹の微生物汚染の影響をそのまま受けてしまうことがある。しかし
ながら、これまでに行った市販米麹の微生物検査によって、県内業者により製造された米麹の
品質には、かなりの衛生的問題があることがわかった。その結果を県内の米麹製造業者で構成
されている任意団体である、製麹研究会で発表したところ、品質向上に意欲を示した製造業者
が数社あった。また、はたはたずしに大腸菌群が検出され、これが原料の米麹由来であること
がわかり、米麹を大腸菌群陰性にするにはどうしたらよいかという技術相談もあった。これら
の要望を受け、工場の衛生管理技術のレベルアップによる米麹の品質向上と、製麹時に乳酸菌
を添加して混合培養することにより、米麹の微生物汚染を防止する方法について検討する。ま
た、米麹は前記のようなさまざまな用途があるが、用途別の米麹は製造されていないのが現状
であり、より用途に適合した高品質な米麹の製造も求められている。それを受けて、より用途
に適合した米麹の製造について検討する。
2.方法
1) 米麹製造工場 A 社の衛生管理
ふき取り検査は、2001 年(4/24,5/30,6/13,6/27,7/25,8/27,9/26,10/29,11/19,12/12)、2002
年(1/21,2/19) の計 12 回実施した。落下菌数は 、シャーレ(標準寒天培地;日水製薬社製)を
測定場所に 30 分間開放し、培養してカビと細菌の数を測定した。ふき取り検査は 、生理食塩水
1ml をしみこませた滅菌ガーゼで対象物の 10cm 四方をふき取り、9ml の滅菌生理食塩水に入れ
て試料とし、一般生菌数と大腸菌群・E. coli 数の測定を行った。米麹が汚染された工程を調べ
るため、工程毎の米麹の微生物検査を行った。ふきとり検査と米麹の微生物検査の培地は、一
般生菌数測定にはペトリフィルム(一般生菌数測定用;スリーエムヘルスケア社製)、大腸菌群・
E. coli 数測定にはペトリフィルム( E. coli 数測定用;スリーエムヘルスケア社製)を用いた。
2) 乳酸菌の混合培養による米麹の微生物汚染防止方法
乳酸菌は、県内の米麹から釣菌した 46 菌株、ぬか床由来の 21 菌株および赤ずし由来の 47 菌
株を用いた。 E. coli は、秋田県衛生研究所より譲渡された菌株を用いた。乳酸菌の前培養は、
GYP 液体培地で 30℃、24 時間行った。培養液を遠心後、菌体を滅菌水 5ml で 2 回洗浄し、滅菌
水 5ml に懸濁させ、希釈し、濁度 0.50(OD 550nm)に合わせた(菌数 6.0×10 8/ml)。 E. coli
の前培養は、普通寒天培地(日水製薬社製)に塗抹し、37℃で 24 時間行い、5ml の滅菌水に懸
濁させ、希釈して濁度 0.50 に合わせ、数段階希釈した。滅菌麹エキス培地(Brix 11.5)10ml
に、6.0×10 8 /ml の乳酸菌および 6.0×10 4 /ml の E. coli を各々0.1ml 加え、30℃で 24 時間培養
した。培養液 1ml を採取し、デゾキシコレート培地(日水製薬社製)を加えて混釈し、37℃で
24 時間培養してコロニー数をカウントした。さらに、 E. coli に対して増殖抑制効果のあった
乳酸菌をアピ 50CHL(日本ビオメリュー社製)で同定した。また、 Vibrio parahaemolyticus 、
Staphylococcus aureus 、 Bacillus subtilis で平板培地(普通寒天培地;日水製薬社製)を作
成し、カップ法で抗菌性試験を行った。乳酸菌は、滅菌麹エキス培地(Brix 11.5)で前培養し、
培養液を 100μl ずつカップに入れ、培養後、阻止円の直径を計測した。
3) 用途に適合した麹菌の選択
種麹は、秋田今野商店から提供された同社市販品9種類(白麹1号菌、白麹2号菌、白麹3号菌、
白麹4号菌、白麹5号菌、新白麹菌、白麹雪こまち、白麹すずらん、白麹3号菌B)を用いた。精
米(めんこいな)を洗い、一晩浸浸し、1時間水切り後、70分間蒸して、蒸米を製造した。蒸
米を95℃で一晩乾燥させ、ふるいにかけ、破砕米や固まり状の米を取り除き、α米を製造した。
滅菌水27.5mlに上記の種麹17.5mgを懸濁させ、あらかじめ95℃、2時間乾燥させたα米50gに添
加して混合した。35℃の恒温室に入れ、19時間後、25時間後に手入れを行い、41時間後に出麹
とした。甘酒は、製造した米麹10gに水20mlを入れ、56℃で3時間糖化させて試作し、Brix、pH、
Lab測定、官能検査を行った。大根麹漬は、大根100g、甘酒25g、食塩3.5g、焼酎3.5g、砂糖3.5g
の配合で試作した。ナス麹漬は、塩漬ナス(塩分3.0%)、甘酒200g、焼酎28g、砂糖20g、ビタ
ミンC 0.9gの配合で試作した。試作した麹漬のBrix、pH、Lab測定、官能検査を行った。
3.結果の概要
1) 米麹製造工場 A 社の衛生管理
製造工程毎の微生物検査を行ったところ、種付直後から製品まで、すべて大腸菌群が検出さ
れたので、工程の途中ではなくて、初めから汚染されていることがわかった。そこで、工場の
ふきとり検査を行い、微生物汚染対策を立てた。機械には、次亜塩素酸ソーダによる洗浄と使
用前後のアルコール噴霧を行い、器具・道具類には、煮沸殺菌、次亜塩素酸ソーダによる洗浄、
アルコール噴霧を行うことにより、ささら以外の大腸菌群数がほぼゼロになるまで減少し、製
品の大腸菌群数も 300 以下(CFU/g)まで減少した。
2) 乳酸菌の混合培養による米麹の微生物汚染防止方法
E. coli に対して、増殖抑制効果を示す乳酸菌のスクリーニングを行った結果、米麹および赤
ずし由来の乳酸菌 Leuconostoc citreum 、 Lactobacillus plantarum 、 Leuconostoc mesenteroi
des mesenteroides/dextranicum 1、Leuconostoc mesenteroides mesenteroides/dextranicum
2 が選択された。また、これらの乳酸菌は、 Vibrio parahaemolyticus 、 Staphylococcus aureu
s 、 Bacillus subtilis に対しても増殖抑制効果があった。従って、製麹時にこれらの乳酸菌を
添加することにより、微生物汚染の防止ができる可能性が示唆された。
3) 用途に適合した麹菌の選択
甘酒の官能試験を行った結果、最も評価が高かったのは、白麹1号菌であった。甘酒の分析値
は、Brix 20.9、pH 5.9であった。大根麹漬の官能試験を行った結果、最も評価が高かったのは、
白麹雪こまちであった。大根麹漬の分析値は、Brix 16.6、pH 6.3、塩分3.0%であった。ナス麹
漬の官能試験を行った結果、最も評価が高かったのは、白麹1号菌であった。ナス麹漬の分析値
は、Brix 26.5、pH 4.3、塩分3.4%であった。
4.成果の活用面と留意点
これまでの結果を秋田今野商店に報告し、種麹の販売時に役立ててもらう。さらに、今後も
秋田今野商店と連携し、種麹の選択改良を継続する予定である。その結果は、漬物研修での紹
介や技術相談を通して、県産漬物の高品質化・高付加価値化に生かしていく。
留意点であるが、製麹時に乳酸菌を添加することは、大腸菌群汚染対策には効果的であるが、
酸味が出ると困る食品など、米麹の用途によっては使用できない場合があるので、注意が必要
である。また、白麹1号菌を使った米麹は、非常に褐変しやすく、冷蔵しても徐々に褐変して
いくので、小売店で販売する売り麹には向かない。白麹1号菌を使用するには、製麹業者が直
接販売する出麹直後の米麹に限定される。また、その場合、使用上の注意点として、米麹はす
ぐに甘酒にするか、冷凍保存しなければならないという説明が販売時に必要である。
5.残された問題点とその対応
はたはたずしでの検討も行う必要がある。
単年度試験研究成績
研究課題名 清酒のろ過技術に関する研究
予算区分:県単 国庫 委託
研究期間:継・中
平15年度(平13∼15年度)
(作成
担当研究室:酒類部門
担当者:中田健美
協力・分担関係:
平成16年2月)
担当
1.目的
現在の清酒のろ過工程は、植物繊維・セライト・活性炭等ををろ過助剤とした濾過器で、
ろ過の目的も脱色を主体にした技術体系で、香味の調整を加味したろ過技術は未解明の部
分が残っている。本県のように原料米を吟味し、丁寧な醗酵管理を行い製造した清酒でも
出荷時のろ過操作により香味が損なわれている場合が多い。 また、香味の損失を防ぐた
めに、貯蔵前のろ過清澄を行なわない場合や、生貯蔵をし出荷する場合もあるが、これら
の場合、吟醸酒などの高級酒は、貯蔵により製品に生老香など香気の劣化やオリ等の沈殿
を招く場合が多く商品のイメージダウンが懸念されている。 普通酒の販売不振の中で、
吟醸酒や吟醸純米酒などの高級酒が順調な伸長している業界の現状にあって、県産高級酒
の品質向上のために香味の損失や劣化を防止する新しいろ過方法の開発が必要である。
本年度は、蛋白吸着が認められたκ−カラギナンを用いて生酒の処理条件を検討し、生
種の貯蔵の劣化防止を検討する。
2.方法
(1)吸着剤 κ−カラギーナン(試薬ロット違い2種)、エタノール及びアセトン洗
浄したκーカラギナン及びλ−カラギナンと比較のため醸造用活性炭を試験に供し
た。
(2)おり下げ方法 生酒100mlに各吸着剤50mgを2時間接触させてから、(10%コポロ
ック1ml+1%ゼラチン0.5ml)系でオリ下げを行いGC50の濾紙でろ過し分析に用いた。
(3)蛋白質はBio-RadのProtein Assayにより測定した。 香気成分は、ガスクロマト
グラフィーにより常法に従った。
3.成果の概要
前年度は、κ-カラギナンが用いた吸着剤の中では一番蛋白質を吸着したが、香気成
分の吸着も少ないが着色度の著しい増大が有った。いずれの吸着剤も、蛋白質、香気成
分の吸着が見られるがアミノ酸は吸着されないことが確認された。
今年度は、カラギナンの着色原因とカラギナンの処理条件の検討と処理後の酒質の検
討を行った。着色はもちいるカラギナンのロットで異なり(図1,2)、またエタノールの
洗浄処理で減少したことから、微細粉末のような膨潤しやすいカラギナンが清酒に溶出
しているものと考えられた。カラギナンの使用量は、清酒に200ppmの添加で蛋白除去量
が醸造用活性炭100ppm使用と同程度の除去効果がありしかも香気成分は活性炭素処理よ
り吸着が少ない結果であった(図4,5,6)。
4.今後の問題点と次年度以降の計画
κ-カラギーナンの着色の原因は微細粉末の清酒への溶解と考えられたので精製方法
を検討する必要がある。
また処理酒の貯蔵試験の酒質の検討が現在進行中でありその結果を踏まえて使用条件方
法に検討を加える必要がある。
5.結果の発表、活用等
所内発表、講習会での技術普及
蛋白(g/L BSA)
カラ ギ ナ ン
-EtOH
カラ ギ ナ ン
κ
カラ ギ ナ ン
-2
λ
κ
カラ ギ ナ ン
-1
カラ ギ ナ ン
κ
-Aceton
κ
5 0 m g活 性 炭
カラ ギ ナ ン
-
-
-
-
-
図1 カラギナンの違いによる着色度の差異
対 照 ︵折 り 下
げ ︶
λ
カラ ギ ナ ン
κ
-Aceton
カラ ギ ナ ン
κ
-EtOH
カラ ギ ナ ン
κ
-2
カラ ギ ナ ン
-1
κ
5 0 m g活 性 炭
対 照 ︵折 り 下
げ ︶
処理前原酒
0.000
-
0.010
-
OD430
0.020
-
0.030
-
0.040
処理前原酒
0.60
0.50
0.40
0.30
0.20
0.10
0.00
-
着色度
0.050
図2 カラギナンの違いによる蛋白吸着の差異
1 .2 0
EtO Ac
n - P rO H
i- Bu O H
i- AmO Ac
i- AmO H
EtO Cap
1 .0 0
0 .8 0
0 .6 0
0 .4 0
0 .2 0
着色度
蛋白
O D430
O D660
g/L B S A
6 :1
0 .0 4 9 0
0 .0 1 1 3
0 .4 0 9
7 :2
0 .0 3 6 7
0 .0 0 4 3
0 .3 9 8
8 :3
0 .0 3 1 4
0 .0 0 1 2
0 .3 8 3
1 0 :5
0 .0 2 8 5
0 .0 0 0 1
0 .3 6 9
清酒100mlに添加する10%コポロック300と
折り下げ条件
*
λ
カ ラ ギ ナ ン
-
カ ラ ギ ナ ン
- A c e t o n
-
カ ラ ギ ナ ン
- E t O H
κ
κ
カ ラ ギ ナ ン
-
-
- 2
-
- 1
カ ラ ギ ナ ン
κ
κ
5 0 m g活 性 炭
対 照 ︵折 り 下
げ ︶
処 理 前 原 酒
0 .0 0
表 1 折り下げ条件の検討
1%ゼラチン比
=比×100μl(6:1
600μl:100μl)
図3 カラギナンの違いによる香気成分吸着の差異
着色度
蛋白 (g/L BSA)
0.040
0.030
OD430
OD660
0.020
0.010
カラ ギ ナ ン
5 0 m g カラ ギ ナ ン
4 0 m g カラ ギ ナ ン
3 0 m g カラ ギ ナ ン
2 0 m g E tO A c
n - P rO H
i- B u O H
i- A m O A c
i- A m O H
E tO C ap
カラ ギ ナ ン
50mg
カラ ギ ナ ン
40mg
カラ ギ ナ ン
30mg
カラ ギ ナ ン
20mg
カラ ギ ナ ン
10mg
活性炭
10mg
対 照 ︵折 り 下
げ ︶
原 酒 ︵処 理
前 ︶
図6
0
0
0
0
カラ ギ ナ ン
1 0 m g 図5 カラギナン使用量による蛋白吸着の差異
1 .2 0
1 .0 0
0 .8 0
0 .6
0 .4
0 .2
0 .0
活性炭
10mg
︶
図4 カラギナン使用量による着色度の差異
対 照 ︵折 り 下
げ ︶
カ ラ ギ ナ ン
5 0 m g カ ラ ギ ナ ン
4 0 m g カ ラ ギ ナ ン
3 0 m g カ ラ ギ ナ ン
2 0 m g カ ラ ギ ナ ン
1 0 m g ︵折 り 下
︶
︵処 理 前
げ
活 性 炭
1 0 m g
対 照
原 酒
0.000
原 酒 ︵処 理
前 ︶
0.60
0.50
0.40
0.30
0.20
0.10
0.00
0.050
カラギナン使用量の違いによる蛋白吸着の差異
完了試験研究成績
研究課題名 清酒のろ過技術に関する研究
予算区分:県単 国庫 委託
研究期間:平成13∼15年
(作成
担当研究室:酒類部門
担当者:中田健美
協力・分担関係:
平成16年2月)
酒類第一担当
1.目的
現在の清酒のろ過工程は、植物繊維・セライト・活性炭等をろ過助剤としたろ過器で、
ろ過の目的も脱色を主体にした技術体系で、香味の調整を加味したろ過技術は未解明の部
分が残っている。本県のように原料米を吟味し、丁寧な醗酵管理を行ない製造した清酒で
も出荷時のろ過操作により香味が損なわれている場合が多い。 また、香味の損失を防ぐ
ために、貯蔵前のろ過清澄を行なわない場合や、生で貯蔵し出荷する場合もあるが、これ
らの場合、吟醸酒などの高級酒は、貯蔵により製品に生老香など香気の劣化やオリ等の沈
殿を招く場合が多く商品のイメージダウンが懸念されている。 普通酒の販売不振の中で、
吟醸酒や吟醸純米酒などの高級酒が順調な伸長している業界の現状にあって、県産高級酒
の品質向上のために香味の損失や劣化を防止する新しいろ過方法の開発が必要である。
2.方法
(1) 生酒の炭素ろ過試験
小仕込みで得られた5種類の生酒(1吟醸麹、2アルコール処理吟醸麹、3普通麹、
4アルコール処理普通麹および5酵素剤を使用したもの)について活性炭500ppm使用し
たものについて着色度( OD 4 3 0 )α−アミラーゼ活性、遊離脂肪酸およびアミノ酸組
成について測定した。
(2) 生酒の蛋白吸着試験
1) 吸着剤 セライト(白)、セライト(赤)、チタン酸カリ(商標テスモ)、キト
サン、κ−カラギーナン、イギス( Ceramium kondoi Yendoの凍結乾燥粉末)および
活性炭を試験に供した。
2) ろ過方法 生酒100mlに各吸着剤gを2時間接触させてから、(10%コポロック1ml+
1%ゼラチン0.5ml)系でオリ下げを行ない、GC50の濾紙でろ過し分析に用いた。
3)蛋白質はBio-RadのProtein Assayにより測定した。アミノ酸は、JLCアミノ酸アナラ
イザー、香気成分はガスクロマトグラフィーにより常法に従った。
3.成果の概要
1)
着色度は、処理前後で OD 430 の高いものほど炭素に吸着されやすい傾向があり、
α-アミラーゼ活性の低下、遊離脂肪酸も炭素処理により減少することが知られた
(図1,2)。
2) 遊離アミノ酸では、炭素処理前後で殆ど差が無いにも係わらず、加水分解によっ
て生ずるアミノ酸には差が認められ清酒中のペプタイドやタンパクが吸着されてい
ると推察された(表1)。
3) 蛋白吸着剤の中ではκ-カラギーナンが一番蛋白質を吸着した(図3)。 またκ-カ
ラギーナンは香気成分の吸着も少ないが着色度の著しい増大があった。いずれの吸
着剤も、蛋白質、香気成分の吸着が見られるがアミノ酸は吸着されない。
4) 清酒の着色はは用いるカラギナンのロットで異なり、またエタノールの洗浄処理で
減少したことから、微細粉末のような膨潤しやすいカラギナンが清酒に溶出している
ものと考えられた(図4)。カラギナンの使用量は、清酒に200ppmの添加で蛋白除去量
が醸造用活性炭100ppm使用と同程度の蛋白除去効果があり(図5)、しかも香気成分は
活性炭素処理より吸着が少ない結果であった。
4.成果の活用面と留意点
現場試験を踏まえており下げろ過の技術普及と所内発表
5.残された問題とその対応
κ-カラギーナンの着色の原因は微細粉末の清酒への溶解と考えられたので精製方法
を検討する必要がある。
また処理酒の貯蔵試験の酒質の検討が現在進行中でありその結果を踏まえて使用条件方
法に検討を加える必要がある。
u/ml
OD430 0.3
y = 0.4441x - 0.0035
炭
0.2
素
R2 = 0.9966
ろ
0.1
過
吟醸D
酵素
0
0
0.1
0.2
0.3
原酒
吟醸
0.4
OD430
図1
炭素吸着による着色度の相関
表1
炭素吸着によるアミノ酸の吸着
原酒遊離
吟
吟
普
普
酵
醸
醸
通
通
素
ろ過遊離
a
2 7 8 .0
2 4 1 .9
4 1 6 .8
2 9 8 .6
5 4 .6
麹
麹脱脂
麹
麹脱脂
剤
図2
ろ過分解
c
3 4 8 .7
3 8 2 .7
4 9 5 .5
4 5 4 .1
2 5 5 .8
y = 0.7822x + 0.8203
R2 = 0.9743
酵素
0
0.5
原酒分解
b
2 7 0 .8
2 3 5 .9
4 1 4 .9
3 0 9 .5
2 1 .6
25
20
15
10
5
0
d
3 1 2 .5
3 0 2 .1
4 3 0 .6
4 1 6 .5
2 4 4 .9
表2
5
セ ラ イ ト(白 )
セ ラ イ ト(赤 )
チ タン 酸 カ リウ ム
イギ ス
キ トサ ン
κ -カラギ ー ナン
活性炭
0
図3
0 .0 5
0 .1
0 .1 5
0 .2
0 .2 5
0 .3
g/ L BS A
20
25
30
u/ml
炭素吸着によるα-アミラーゼ活性の相関
ろ過 吸 着 遊 離 ア ミノ酸
(a - b )
7 .2
6 .0
1 .8
- 1 0 .8
3 3 .0
ろ過 吸 着 分 解 ア ミノ酸
(a - b )/ a %
2 .6
2 .5
0 .4
- 3 .6
6 0 .5
(c - d )
3 6 .2
8 0 .6
6 4 .9
3 7 .6
1 0 .9
(c - d )/ c %
1 0 .4
2 1 .1
1 3 .1
8 .3
4 .3
処理酒の香気成分
原酒
対照
10
15
原酒
原酒
対照
セライト(白)
セライト(赤)
チタン酸カリウム
イギス
キトサン
κ-カラギーナン
活性炭
EtOAc n-PrOH i-BuOH i-AmOAc i-AmOH EtOCap
50.7
66.0
19.3
1.7
232.9
5.6
50.0
51.4
19.1
1.7
220.0
5.2
45.5
53.1
18.5
1.6
212.9
4.5
49.6
51.7
18.1
1.7
227.9
4.9
48.1
59.0
18.0
1.6
225.0
4.5
47.2
50.9
17.6
1.6
225.1
4.3
45.0
58.7
18.4
1.4
221.1
3.8
47.8
62.8
17.5
1.7
226.1
4.7
47.9
50.7
18.2
1.4
228.6
3.0
処理酒の蛋白含量
蛋 白 ( g/ L B S A )
着色度
0 .0 5 0
0 .0 4 0
0 .0 3 0
O D4 3 0
O D6 6 0
0 .0 2 0
0 .0 1 0
カラ ギ ナ ン
5 0 m g カラ ギ ナ ン
4 0 m g カラ ギ ナ ン
3 0 m g カラ ギ ナ ン
2 0 m g カラ ギ ナ ン
1 0 m g 10mg
活性炭
カラ ギ ナ ン
対 照 ︵折 り 下
げ ︶
λ
カラ ギ ナ ン
-
-
-
-
-
図 4 カ ラ ギ ナン 使 用 量 の 違 い に よ る 吸 着 度 の 差 異
原 酒 ︵処 理
前 ︶
κ
-EtOH
カラ ギ ナ ン
-Aceton
κ
カラ ギ ナ ン
κ
-2
カラ ギ ナ ン
-1
κ
5 0 m g活 性 炭
対 照 ︵折 り 下
げ ︶
処理前原酒
0 .0 0 0
0 .6 0
0 .5 0
0 .4 0
0 .3 0
0 .2 0
0 .1 0
0 .0 0
図 5 カ ラ ギ ナ ン 使 用 量の 違 い に よ る 蛋 白 吸 着の 差 異
完了試験研究成績
研究課題名 温度感受性酵母の特性解明
予算区分:県単 国庫 委託
研究期間:平成14∼15年
(作成
平成16年2月)
担当研究室:生物機能部門生物機能第一担当
担当者:高橋慶太郎
協力・分担関係:
食品開発部門食品工学担当 秋山美展
応用発酵部門発酵食品担当 渡辺隆幸
(共同研究)小玉醸造株式会社
1.目的
味噌製造においては発酵終了後も醸造用酵母が生存しているため、そのまま製品化する
と酵母による炭酸ガス発生があり商品価値を著しく低下させる。そのため加熱による殺菌
処理・エチルアルコール等の薬剤による静菌処理が行われている。前者は加熱により品質
の劣化が激しく秋田味噌のような味噌では使用できない。また、後者では添加薬剤による
風味の変化や消費者より要望の高い無添加味噌では利用できないなど問題が多い。近年、
産業利用されている微生物においては環境・エネルギー対策として各種のストレスに対し
感受性の高い、あるいは低い(耐性の高い)微生物の育種が盛んとなっている。そこで、
既に取得した温度感受性自己消化味噌醸造用酵母 Zygosaccharomyces rouxii を対象とし、
この温度感受性機構を分子生物学的に解明する。また、常温流通可能な無添加味噌の商品
化を計り、さらに製品の高度利用を目的とした。さらに、取得酵母の広範囲な利用を検討
する。
2.方法
取得した温度感受性自己消化味噌醸造用酵母と国内の味噌醸造で広く使用されている酵
母の各種ストレス感受性をプレート法による生存率の比較等を行う。
3.成果の概要
熱ストレスに対する感受性は酵母のトレハロース含量と正の相関があるが、その他のス
トレスの影響も大きいことを第一年度までに報告した。第二年度は、そのストレスの一つ
として醸造現場で広く用いられているエチルアルコール添加について検討を行った。取得
した温度感受性自己消化株である588株と温度非感受性株Y7株,S96株の2週間保
持後の生存率は、図1−3に示したように588株では培養時間が短いとアルコールスト
レスにバラツキがあるが培養時間が長くなるに従ってストレス強度に関係なく一定の生存
率を示した。Y7株は菌体内トレハロース含量が高まる培養後期(図4)になる程ストレ
ス耐性が増強することが観察された。一方、Y7株と蓄積レベルは低いものの同様なトレ
ハロース蓄積を示すS96株は対数増殖期に特異的にストレス感受性が高まることが観察
された。このように、Y7とS96株は培養時間が異なるとエチルアルコール感受性は大
きく変動するが、588株は培養時間に関係なく比較的エチルアルコール感受性が一定で
あることより、温度感受性を利用したジュール加熱システムでの利用だけではなく、通常
のエチルアルコールの添加による静菌システム用株としても非常に有効であると考えられ
た。
4.成果の活用面と留意点
588株はジュールシステムとの併用のみならず従来のアルコール添加法による味噌の
保存性向上には非常に有効な酵母であるが温度感受性が高いので添加方法を確立する必要
がある。
5.残された問題点とその対応
10
生存率(%)
1
0.1 8h
16h
24h
48h
72h
0.01
0.001
0.0001
0.00001
4℃,
4℃,EtOH2%
4℃,EtOH3%
30℃,EtOH2%
30℃,EtOH3%
培養時間
図1.培養時間の違いによる588株のアルコール耐性変化(2週間保持)
10
1
生存率(%)
0.18h
16h
24h
48h
72h
0.01
0.001
0.0001
0.00001
0.000001
4℃,
4℃,EtOH2%
4℃,EtOH3%
30℃,EtOH2%
30℃,EtOH3%
0.0000001
0.00000001
培養時間
図2.培養時間の違いによるY7株のアルコール耐性変化(2週間保持)
生存率(%)
10
0.1 8h
16h
24h
48h
0.001
0.00001
0.0000001
72h
4℃,
4℃,EtOH2%
4℃,EtOH3%
30℃,EtOH2%
30℃,EtOH3%
0.000000001
培養時間
図3.培養時間の違いによるS96株のアルコール耐性変化(2週間保持)
6
Y7
5
4
3
2
1
0
588
24
48
72
96
120 144 168
Time (hr)
図4.トレハロース含量の変化
単年度試験研究成績
(作成
平成16年2月)
研究課題名 温度感受性酵母の特性解明
予算区分:県単 国庫 委託
担当研究室:生物機能部門生物機能第一担当
研究期間: 継 ・中
担当者:高橋慶太郎
平15年度(平14∼15年度) 協力・分担関係:
食品開発部門食品工学担当 秋山美展
応用発酵部門発酵食品担当 渡辺隆幸
(共同研究)小玉醸造株式会社
1.目的
味噌製造においては発酵終了後も醸造用酵母が生存しているため、そのまま製品化する
と酵母による炭酸ガス発生があり商品価値を著しく低下させる。そのため加熱による殺菌
処理・エチルアルコール等の薬剤による静菌処理が行われている。前者は加熱により品質
の劣化が激しく秋田味噌のような味噌では使用できない。また、後者では添加薬剤による
風味の変化や消費者より要望の高い無添加味噌では利用できないなど問題が多い。近年、
産業利用されている微生物においては環境・エネルギー対策として各種のストレスに対し
感受性の高い、あるいは低い(耐性の高い)微生物の育種が盛んとなっている。そこで、
既に取得した温度感受性自己消化味噌醸造用酵母 Zygosaccharomyces rouxii を対象とし、
この温度感受性機構を分子生物学的に解明する。それをもとに、常温流通可能な無添加味
噌の商品化を計り、さらに製品の高度利用を目的とした。
今年度は、取得株の広範囲な利用を考え、特別な装置を必要としないエチルアルコール
添加の影響を他の味噌用酵母と比較した。
2.方法
現在国内の味噌醸造で広く使用されている2株と取得した温度感受性自己消化酵母の培
養時間の違いによる、エチルアルコール耐性をプレート法による生存率で評価した。
3.成果の概要
熱ストレスに対する感受性は酵母のトレハロース含量と正の相関があるが、その他のス
トレスの影響も大きいことを昨年度までに報告した。今年度は、そのストレスの一つとし
て醸造現場で広く用いられているエチルアルコール添加について検討を行った。取得した
温度感受性自己消化株である588株と温度非感受性株Y7株,S96株の2週間保持後
の生存率は、図1−3に示したように588株では培養時間が短いとアルコールストレス
にバラツキがあるが培養時間が長くなるに従ってストレス強度に関係なく一定の生存率を
示した。Y7株は菌体内トレハロース含量が高まる培養後期になる程ストレス耐性が増強
することが観察された。一方、Y7株と蓄積レベルは低いものの同様なトレハロース蓄積
を示すS96株は対数増殖期に特異的にストレス感受性が高まることが観察された。この
ように、Y7とS96株は培養時間が異なるとエチルアルコール感受性は大きく変動する
が、588株は培養時間に関係なく比較的エチルアルコール感受性が一定であることより、
温度感受性を利用したジュール加熱システムでの利用だけではなく、通常のエチルアルコ
ールの添加による静菌システム用株としても非常に有効であると考えられた。
4.残された問題点とその対応
ジュール加熱システムを導入出来ない企業への588株の利用促進。
10
生存率(%)
1
0.1
8h
16h
24h
48h
72h
0.01
0.001
0.0001
4℃,
4℃,EtOH2%
4℃,EtOH3%
30℃,EtOH2%
30℃,EtOH3%
0.00001
培養時間
図1.培養時間の違いによる588株のアルコール耐性変化(2週間保持)
10
1
0.1 8h
16h
24h
48h
72h
生存率(%)
0.01
4℃,
4℃,EtOH2%
4℃,EtOH3%
30℃,EtOH2%
30℃,EtOH3%
0.001
0.0001
0.00001
0.000001
0.0000001
0.00000001
培養時間
図2.培養時間の違いによるY7株のアルコール耐性変化(2週間保持)
10
1
生存率(%)
0.1 8h
16h
24h
48h
72h
4℃,
4℃,EtOH2%
4℃,EtOH3%
30℃,EtOH2%
30℃,EtOH3%
0.01
0.001
0.0001
0.00001
0.000001
0.0000001
0.00000001
0.000000001
培養時間
図3.培養時間の違いによるS96株のアルコール耐性変化(2週間保持)
単年度試験研究成績
(作成
平成16年
3月)
研究課題名:乳酸菌を用いた機能性食品の開発
予算区分:※県単 国庫 委託
担当研究室:生物機能部門生物機能第一担当
研究期間:継
担当者:木村貴一、高橋慶太郎、高橋砂織
平15年度(平14∼ 16年度) 協力・分担関係:なし
1.目的
乳酸菌は、麹菌、酵母と同じく重要な発酵微生物であり、特に乳酸菌の持つ健康的意義
に強い関心が寄せられている。本研究では、乳酸菌由来の機能性に密接な関係がある糖質
関連酵素や蛋白質分解酵素に注目し、それら酵素類に特徴のある乳酸菌の分離を行う。
本年度は、a.研究所所有株の充実を目的とし、白神土壌をはじめとする自然界より乳酸
菌の分離を行った。b.前年度分離した抗菌活性を有する乳酸菌1527D株の性質解明を目的と
し、同定や諸性質の決定を行った。c.1527D株の実用化を検討した。
2.方法
a.乳酸菌分離培地:前年度と同様のMRS寒天培地を用意し、寒天中にクリアゾーンを形成
した菌体を単離した後、-80℃で保存した。今年度はアネロパック(三菱ガス化学社製)を用
いて嫌気培養も行った。
b.抗菌活性の検定:アガーウェル法で行い、抗菌活性は溶液を段階的に希釈し、ウェル
周辺部に2mmの阻止円を形成した最小濃度の希釈液を1unitとし、希釈率の逆数を抗菌活性
(AU; Arbitrary Unit)とした。
c.乳酸菌の同定:16S rDNA塩基配列の相同性比較、糖質資化性試験、標準菌株とのDNA-DNA
ハイブリダイゼーション法による微生物同定法の3つを行った。16S rDNA塩基配列の決定に
は、大腸菌16S rDNAより保存性の高い領域を選び出して設計したプライマーによりPCR増幅
を行い、ダイレクトシーケンス法により塩基配列を解析した。相同性比較はFASTAを用いた。
糖質資化性試験はAPI 50CH / CHL乳酸菌同定キットを用いた。DNA-DNAハイブリダイゼーシ
ョン法は(独)食品総合研究所・酵母研究室の指導の下にて、蛍光マイクロプレートリーダ
ー法を用いて行った。ポジティプコントロールに Lactococcus lactis ssp . lactis JCM 5805
株 (Type strain) 、 ネ ガ テ ィ ブ コ ン ト ロ ー ル に Enterococcus faecium JCM 5804 株 (Type
strain)、牛胸腺DNA、サケ精子DNAを用いた。
d.抗菌物質の同定:ナイシンに特異的なプライマーを作成し、PCRにより増幅し、ダイレ
クトシーケンス法にて解析した。
3.成果の概要
前年度までに、白神山地より採取した土壌2071点や市販食品から酸生産菌の分離を試み
たところ、白神土壌より116株、市販食品30点より110株の酸生産菌を得た。さらに白神土
壌由来の1株(1527株)、市販食品由来3株から抗菌活性が認められていた。
今年度は、新たに白神山地より土壌942点を採取し酸生産菌の分離を行った結果、1335株
の酸生産菌を分離し、白神土壌由来の所有株は合計1451株となった。
抗 菌 物 質 生 産 菌 1527Dに つ い て 詳 細 な 検 討 を 行 っ た 。 同 定 試 験 の 結 果 か ら 、 1527D株 は
Lactococcus lactis ssp. lactis に属する乳酸菌と決定した。
1527D株の生産する抗菌物質の同定を行ったところ、1527D株の抗菌物質は「ナイシンZ」
と 推 定 さ れ た 。 さ ら に 火 落 菌 ( Lactobacillus fructivorans ( 旧 heterohiochii ),
Lactobacillus homohiochii )に対して抗菌活性を示すことがわかった。
その他1527D株の諸性質は、従来のナイシン生産菌と比較して15℃以上で良好な生育を
示す(図1)、抗菌活性が2倍以上高い(図2)、生育速度が速い事がわかった。
以上の性質より、 Lactococcus lactis ssp . lactis KLC 1527D株として(独)産業技術総
合研究所 特許生物寄託センターに寄託し(受託番号 FERM P-19608)、特許出願を行った。
図1
生育比較
図2
抗菌活性
4.今後の問題点と次年度以降の計画
引き続き乳酸菌所有株の充実を目的に白神土壌をはじめとする自然界や市販食品から乳
酸菌の分離を行う。また、機能性評価法の確立を行い、機能性に関連ある特徴的な酵素類、
たとえばペプチダーゼなどについて検討する。
5.成果の発表、活用等
特許出願 1件
H15年度[発明の名称]低温で良好な生育を示し、ナイシンを高生産する糖質資化性に優れた
新規乳酸菌および酒類の火落ち防止技術等への利用
[概要] 従来のナイシン生産菌と比較して低温で良好な生育を示し、ナイシンを高生産す
る糖質資化性に優れた性質を持つ白神土壌由来の新規乳酸菌と、ナイシンによる火落菌防
止技術などについて。
マスコミなどへの対応:
2003年12月1日:前年度特許出願したバイオプリザベーションを活用したなた漬けの日持ち
延長技術が実用化され、秋田魁新報にて報道された。
2003年12月13日:KLC 1527D株が秋田魁新報にて報道された。
2003年12月14日:KLC 1527D株が読売新聞にて報道された。
2004年1月30日:KLC 1527D株が前年度特許出願したバイオプリザベーションを活用したな
た漬けの日持ち延長技術に応用され、河北新報社にて報道された。
2004年2月:農業秋田誌に掲載された。
単年度試験研究成績
(作成
平成16年2月)
研究課題名:担子菌類のタンパク質分解酵素の特性解明とその応用
予算区分:県単
担当研究室:生物機能部門
生物機能第二担当
研究期間:継
担当者:樋渡一之、堀一之、高橋砂織
平15年度(平14∼16年度) 協力・分担関係:秋田大学医学部
杉山俊博
1.目的
これまで食品加工に用いられてきたプロテアーゼは様々なものが知られているが、それ
らは微生物由来のものが中心である。しかし、同じ微生物でありながら担子菌類(キノコ
類)由来のプロテアーゼが食品産業で用いられた例は少ない。そこで本研究課題では、秋
田県内で生育・栽培される食習慣のある担子菌類から食品加工等に有用なプロテアーゼを
単離し、その特性を解明することを目的とする。また、その応用として、単離した新規酵
素類を用いて機能性食品等の開発を目指すものである。
今年度は、前年度のスクリーニング結果から強いプロリルアミノペプチダーゼ活性を持
つことが明らかになったマイタケ(Grifola frondosa)に注目し、そのプロリルアミノペプチダ
ーゼ(GfPAP)を精製してその酵素の諸性質について検討を行った。
2.方法
マ イ タ ケ 子 実 体 を ホ モ ジ ナ イ ズ し て 硫 安 濃 縮 し た 後 、 DEAE-Sepharose CL-6B 、
Butyl-Toyopearl 650M、Sephacryl S-100 HR、Mono-Qの4段階のカラムクロマトグラフィー
で精製した。精製した酵素標品を用いて酵素の特性を検討した。
3.成果の概要
昨年度は、秋田県内で生育・栽培されている食習慣のある担子菌類の各種プロテアーゼ
活性を測定した。その結果から、今年度はGfPAPの酵素化学的な性質について検討した。
GfPAPは、中性領域に比較的幅広い至適pHを持ち、高い反応至適温度と熱安定性を示した。
この反応至適温度は、これまでに知られているプロリルアミノペプチダーゼの中では最も
高い。分子量はゲル濾過で58 kDa、SDS-PAGEで33 kDa、質量分析で34 kDaと求められたこ
とから、本酵素は二量体と推定された。各種酵素阻害剤の影響を検討した結果、本酵素が
PCMBやヨード酢酸によって阻害されたことからチオールプロテアーゼであることが示唆
された(表1)。基質特異性について検討したところ、Pro-pNAに対して高い特異性を示し
た。Pro-pNAに対する相対活性が10%以上あったものについて反応速度論的な解析も行った
ところ、K m 値は2倍程度高いだけであったが、k cat 値は10倍から50倍以上高く、結果的 に
Pro-pNAは3倍以上効率よく分解されていた(表2)。
4.今後の問題点と次年度以降の計画
担子菌プロテアーゼの食品加工への応用について検討を行う。
表1 GfPAPの酵素化学的性質
至適pH
7.5
pH安定性*
4.5-9.5
至適温度
60℃
温度安定性**
65℃
分子量
ゲル濾過
58,000
SDS-PAGE
33,000
MALDI-TOF/MS
34,090
阻害剤
PCMB, IAA
*各pHで30分間、室温でインキュベートした場合の残存活性が
70%以上
**pH7.0で30分間、各温度でインキュベートした場合の残存活性が
50%以上
表2 GfPAPの基質特異性と反応動力学的定数
基質*
L- Pro-pNA
L- Ala-pNA
Gly-pNA
L- His-pNA
L- Met-pNA
L- Leu-pNA
L- Ile-pNA
L- Glu-pNA
L- Val-pNA
L- Asp-pNA
L- Lys-pNA
L- Arg-pNA
相対活性** (%) Km(mM) kcat(s-1 ) kcat/ Km (mM-1 s-1 )
100.0
31.4
14.1
11.4
8.5
3.4
3.2
2.8
1.8
1.5
1.5
1.4
*基質の最終濃度は2
0.73
0.34
0.22
0.24
160
28
7.8
6.5
220
84
36
28
mM
**L-Pro-pNAを100%としたときの相対活性
5.結果の発表、活用等
1)樋渡一之、加賀屋明良、井上俊三、高橋慶太郎、高橋砂織、マイタケ由来プロリルア
ミノペプチダーゼの精製と諸性質、日本農芸化学会2003年度大会講演要旨集、p. 256
(2003)
2)樋渡一之、加賀屋明良、井上俊三、高橋慶太郎、高橋砂織、マイタケプロテアーゼと
プロテアーゼフリーマイタケ−プロリルアミノペプチダーゼを中心に−、食品酵素化学
研究会第3回学術講演会講演要旨集、p. 5 (2003)
3)K. Hiwatashi, K. Hori, K. Takahashi, A. Kagaya, S. Inoue, T. Sugiyama, and S. Takahashi,
Purification and characterization of a novel prolyl aminopeptidase from Maitake (Grifola
frondosa)., Biosci. Biotechnol. Biochem., in press.
単年度試験研究成績
(作成
平成16年3月)
研究課題名
県産農水産物の新規分析評価技術の開発と応用(その1)
―近赤外分光法による地ビールの分析―
予算区分:県単
担当研究室:食品開発部門食品加工担当
研究期間:完
担当者:熊谷昌則
平15年度(平13∼15年度) 協力・分担関係:
酒類分門酒類第2担当 進藤昌
秋田大学工学資源学部 小川信明、高橋豊
1.目的
食品の品質向上や新規食品の開発を行うためには、その品質を正しく評価することが求
められる。そこで本研究では、県産農水産物の新規分析評価技術の開発と応用を行う。初
年度は農産一次産品である米や小麦粉、そば粉などの穀類に対する近赤外分光法の適用に
ついて検討し、昨年度からは加工品にも範囲を広げ、稲庭うどんの原料小麦粉の判別(原
料管理)や製品の水分測定など(工程、品質管理)に近赤外分光法が適用できることを示
した。今年度は近赤外分光法のビールへの適用について検討した。
2.方法
供試サンプルは、一般の小売店で購入した秋田県産地ビール15検体と大手ビール会社が
販売するビール12検体ならびに発泡酒10検体の計37検体である。サンプルの近赤外スペク
トルはポータブル型近赤外分光装置PlaScan-SH(オプト技研)により、0.5mmの石英セル
(藤原製作所)と白色セラミック板を用いた透過反射法により1200∼2400nmの領域を測定
した。サンプルの理化学分析値は、ビール酒造組合のビール分析法に基づき、苦味価、総
ポリフェノール、全窒素、pH、色度、外観エキス、エタノールをそれぞれ定量した。
3.成果の概要
サンプルの近赤外原スペクトル(図1)は、主に水OHの倍音または結合音に帰属される
1450、1940nm付近のバンドピーク、そして主としてCH 2 の結合音に帰属される2310nm付
近のバンドピークが重なり合った、やや単調な形状を示した。
サンプルの理化学分析値(図2)は、地ビール、ビール、発泡酒ではエタノール含量に
差は認められなかったものの、それ以外の分析項目では有意差が認められた。地ビールは
全窒素、外観エキスが高い傾向を示した。
近赤外原スペクトルのデータセットに主成分分析を適用したところ、図3に示すような
スコアプロットが得られ、地ビールがビール、発泡酒と識別されることが分かった。主成
分1は外観エキスと最も相関が高く、また主成分2は全窒素と最も相関が高かったことか
ら、近赤外スペクトルは理化学分析値の違いを良く反映していることが分かった。
近赤外スペクトルから総ポリフェノール量をPLS回帰分析によって推定(図4)したとこ
ろ実測値との相関係数は0.73であった。図5のPLS回帰係数プロットから、推定に関与する
のは主として1450、1940、2080、2280nm附近のOHの倍音や結合音に帰属される波長であ
り、ポリフェノールの化学構造との対応が示唆された。近赤外スペクトルは苦味価や全窒
素量とも相関が高かったものの、現状ではやや精度に問題があるので改良が必要である。
4.今後の問題点と次年度以降の計画
引き続き、ビールの理化学成分と近赤外スペクトルの関係を調べ、定性・定量的な新規
分析評価法の確立を目指す。
5.結果の発表、活用等
熊谷昌則, 高橋豊, 李華,進藤昌,小川信明, 日本素材物性学会(2004)で口頭発表の予定
単年度試験研究成績
(作成
平成16年3月)
研究課題名
県産農水産物の新規分析評価技術の開発と応用(その2)
―味覚センサによる市販塩の分析―
予算区分:県単
担当研究室:食品開発部門食品加工担当
研究期間:完
担当者:熊谷昌則
平15年度(平13∼15年度) 協力・分担関係:
秋田県立大学生物資源科学部 松永隆司
三浦幸子、石川匡子
1. 目的
昨年度までの研究で、市販塩の品質を評価するために味覚センサが有効な分析評価法で
あることが分かってきた。そこで本年度は、市販塩の製造方法の違いが味覚センサ応答パ
ターンに与える影響を調べることを目的とした。また、市販塩に含まれるCaイオンとMgイ
オンに対する味覚センサ感受性についても調べた。
2.方法
市販塩20種を用いて、味認識装置SA402(インテリジェントセンサテクノロジー製)に
より味覚センサ応答パターンを測定した。市販塩は105℃で4時間乾燥後、1.2%(W/W)溶液
として供試した。このとき、市販塩は製造法の違いによって、a群)輸入天日塩を地先の海水
で溶解して釜で煮詰めたり、にがりを添加するなどして再加工したもの5検体、b群)海水を
平釜焚きで煮詰めたもの6検体、c群)イオン交換膜製法塩ににがりを添加したもの5検体、d
群)グルタミン酸ナトリウムを添加したもの3検体、そして比較対照品である専売塩1検体に
それぞれ層別した。また、CaイオンとMgイオンに対する味覚センサ感受性を調べるために、
NaCl 0.5%(W/W)溶液に対してMgSO4 、CaSO 4 を所定量溶解させた試料について味覚セン
サ応答パターンを測定した。
3.成果の概要
味覚センサ応答パターンは、食塩の製造法の違いによりマイナス電極のセンサ1∼4にお
いて顕著な差が認められた(図1)。これにはNaイオン、Mgイオン、Caイオンなどの陽
イオンが関与していることが示唆され、イオン分析の結果からはCaイオンとSO 4 イオンの
関与が認められた。図2には、味覚センサ応答パターンのクラスター分析による樹状図を
示した。これにより、大別すると5つのクラスターに分類されており、製造法の違いによ
る味覚センサ応答パターンの類似性、非類似性が明らかになった。センサ1∼4においては
CaSO 4 のセンサ応答値のほうが高く、これはCa 2+ が膜に吸着したためと考えられるが、Ca 2+
とセンサ膜との相互作用については現在も検討中である。プラス電極では、MgSO 4 の濃度
の増加に対して、センサ5の応答値が上昇しているという点でCaSO 4と異なり、この理由と
しては、SO 4 2 ― のMg 2+ 、Ca 2+ への親和性の違いなどが考えられる。
4.今後の問題点と次年度以降の計画
味覚センサ応答パターンと官能評価値との関係は未解明な部分が多いので、成分分析値
とも合わせて味覚センサ応答パターンの化学的な解釈が必要である。
5.結果の発表、活用等
1)石川匡子, 熊谷昌則, 松永隆司, 日本海水学会誌, 58, 64-70 (2004).
2)熊谷昌則, 三浦幸子, 石川匡子, 松永隆司, 日本食品科学工学会第51会大会(2004)で口
頭発表の予定
完了試験研究成績
(作成
平成16年3月)
研究課題名 県産農水産物の新規分析評価技術の開発と応用
予算区分:県単
担当研究室:食品開発部門食品加工担当
研究期間:平成13∼15年
担当者:熊谷昌則
協力・分担関係:
秋田大学工学資源学部 小川信明
秋田県立大学生物資源科学部 松永隆司
1.目的
食品の品質向上や新規食品の開発を行うためには、その品質を正しく評価することが求
められる。そこで本研究では、県産農水産物の新規分析評価技術の開発と応用を行うため、
近赤外分光法ならびに味覚センサ応答パターンによる分析評価技術の検討を行った。
2.方法
新規に開発されたポータブル型近赤外分光装置PlaScan-SH(オプト技研)に対しては、
県産農水産物の一次産品として、コメ、ソバ粉、コムギ粉を、また加工品として稲庭うど
ん、地ビールを供試試料として用いた。また、味認識装置SA-402(インテリジェントセン
サテクノロジー)に対しては、市販食塩を供試試料として用いた。
3.成果の概要
そば粉には、割粉としてのつなぎ用小麦粉が混合されているものがある。そば粉と小麦
粉の近赤外スペクトルは非常によく似ているが、両者を判別することができることを示し
た(図1)。ここでは判別に係わる波長領域を特定するための波長寄与率スペクトルを新
たに考案し、近赤外スペクトルの化学的解釈に応用することができた(図2)。近赤外分
光法はそば粉や小麦粉の判別に用いることが可能で、製粉、製麺業者などの原料管理に役
立てることができる。稲庭うどんに関しては、麺状のままで近赤外スペクトルを測定する
ことにより一般化学成分(水分、たんぱく質、炭水化物、脂質、灰分)が、わずか数秒以
内で定量できることがわかった。また、製品中の水分と一般生菌数が比例することもわか
り、とりわけ水分がそのままで定量できるということは、乾燥工程をモニタリングするこ
とができるため、稲庭うどんの工程管理や品質安定化に大いに役立つものと考えられる。
次に、玄米中のカドミウム濃度レベルを判別するために近赤外スペクトルに対して正準判
別分析を適用したところ、0.4ppm以下の低汚染レベル、0.4−1.0ppmの準汚染レベル、1ppm
以上の汚染レベルに判別できることが分かった(図3)。正判別率は約85%であり、さらに
向上できれば汚染米選別のための一次スクリーニング法としての利用が期待される。一方、
地ビールについては近赤外分光法により、他のビール、発泡酒と識別されることが分かっ
た。近赤外スペクトルは、外観エキスや全窒素などの違いを良く反映されてビールの違い
を識別していることが分かった。
味覚センサによる市販食塩の評価については、供試試料の味覚センサ応答パターンに、
化学組成ならびに官能評価値を加えたデータセットに対して主成分分析を行い、図4に示
すような主成分スコアプロットを得た。図中には因子負荷量の大きさと方向を矢印で同時
に示した。主成分1は正側でSensor 1∼4ならびにCa 2+ 、Mg 2+ と関係があり、これらは苦
味や渋味に影響していることがわかった。逆に負側ではNa + 、Cl − と関係があり、これらは
塩味やまろやかさに影響している。主成分2については、Sensor 5,6,8と関係があるが、こ
れらは本実験で求めた化学組成や官能評価値だけではわからない味の違いを味覚センサが
とらえているものと考えられる。このように、味覚センサ応答パターンは、新たな観点か
ら市販塩の品質を細分化して評価できる可能性がある。
4.成果の活用面と留意点
1)Kumagai, M., Ohisa N., Amano T., and Ogawa N, Anal. Sci., 19, 1553-1555 (2003).
2)Kumagai, M., Karube, K., Sato, T., Ohisa N., Amano T., Kikuchi, R. and Ogawa N.,
Anal. Sci., 18, 1145-1150 (2002).
3)佐藤朋覚, 熊谷昌則, 天野敏男, 小川信明, 分析化学, 52, 653-660 (2003).
4)石川匡子, 熊谷昌則, 陳介余, 張函, 松永隆司, 日本海水学会誌, 56, 440-447 (2002).
5)石川匡子, 熊谷昌則, 松永隆司, 日本海水学会誌, 58, 64-70 (2004).
5.残された問題点とその対応
今後は、得られた成果を産業界に技術移管するための実証研究を実施する。
単年度試験研究成績
(作成
平成16年2月)
研究課題名:白神微生物バンクの構築とその有効活用に関する研究(全体)
予算区分:県単
担当研究室:生物機能部門
研究期間:継
担当者:高橋砂織、高橋慶太郎、堀 一之、小笠原博信、
畠 恵司、木村貴一、樋渡一之
平15年度(平15∼19年度) 協力・分担関係:
1.目的
微生物は、人々の生活に多大な恩恵を与えており、様々な有用微生物無くしては人間生
活が成り立たないと言っても過言でない。世界自然遺産に指定されている白神山地は、微
生物遺伝子資源の宝庫であり、その一例として「白神こだま酵母」の分離選抜があげられ
る。白神山地には酵母以外の微生物、例えば乳酸菌、糸状菌や放線菌などの有用微生物も
数多く生息しており、それらの微生物は無限の可能性を秘めている。そこで、白神山地よ
り出来るだけ多くの微生物を分離・選抜し、データベース化を進めるとともに、有効活用
を図る。平成15年度は研究初年度であり、微生物の分離とその特性解明の基礎構築を目
的とした。
2.方法
微生物源:保存土壌及び白神山地より採取した土壌を微生物の分離源として用いた。
微生物の分離:クロラムフェニコール含有YPD培地を用いて酵母類を選抜した。また、
放線菌は、アルギニン・グリセロール・塩類(AGS)培地や添加剤を加えた改良AGS
培地等を用いて分離した。耐熱性菌は、70℃、40分もしくは100℃、5分の熱処理
を行った土壌懸濁液を用いて標準寒天培地もしくは普通寒天培地にて選抜した。
酵母の発酵試験:ダーラム管を使用し、グルコース及びシュークロースを用いて30℃に
て発酵性を観察した。
抗菌活性:検定菌として、大腸菌 ( E.coli )、黄色ブドウ球菌 ( S.aureus Smith)、協会7
号酵母( S. cerevisiae )、麹菌 ( A. orizas )AOK-1株などを用いて、放線菌培養上清の抗菌
活性を検定した。
3.成果の概要
これまでに、白神土壌より、放線菌(約3000株)、酵母(約3500株)や耐熱性菌
(約400株)などを分離した。その一部については、特性解明を行った。分離酵母の発
酵性は、グルコースを発酵した2073株中786株で、そのうち545株が旺盛なガス
発生を示した。また、シュークロースを発酵した株は604株で447株で旺盛なガス発
生が観察された。放線菌に関しては、酵母に対する抗菌活性を示すものが多く見い出され、
その中で、S324株の生産する抗菌物質を精製し、構造解析を行った。S324株から得
られた主活性成分はシクロヘキシミドと同定された。耐熱性菌に関しては、納豆製造に有
望な1株を分離した。
4.今後の問題点と次年度以降の計画
白神土壌からの菌類の分離を継続するととともに、機能性成分の分離・同定、酵素類の
検索などを継続し、白神微生物バンクを充実させる。また、県内企業との共同研究を積極
的に推進し、白神微生物の実用化を目指す。
5.成果の発表、活用等
単年度試験研究成績
(作成
平成16年2月)
研究課題名:白神微生物バンクの構築とその有効活用に関する研究
1・白神微生物の分離・選抜に関する基礎的研究
予算区分:県単
担当研究室:生物機能部門
研究期間:継
担当者:高橋砂織、高橋慶太郎、小笠原博信、木村貴一
平15年度(平15∼19年度) 協力・分担関係:
1.目的
微生物は、人々の生活に多大な恩恵を与えており、様々な有用微生物無くしては人間
生活が成り立たないと言える。世界自然遺産に指定されている白神山地は、微生物遺伝子
資源の宝庫であり、その一例として「白神こだま酵母」の分離選抜があげられる。白神山
地には酵母以外の微生物、糸状菌、放線菌や細菌などの有用微生物も数多く生息しており、
それらの微生物は無限の可能性を秘めている。そこで、白神山地より出来るだけ多くの微
生物を分離・選抜し、データベース化を進めるとともに有効活用を図る。平成15年度は
研究初年度であり、白神微生物の分離・選抜を目的とした。
2.方法
微生物源:保存土壌及び白神山地より採取した土壌を微生物の分離源として用いた。
酵母の分離:クロラムフェニコール含有YPD培地を用いて酵母類を選抜した。
放線菌の分離:アルギニン・グリセロール・塩類(AGS)培地や添加剤を加えた改良A
GS培地等を用いて放線菌類を分離した。
耐熱性菌の分離:70℃、40分もしくは100℃、5分の熱処理を行った土壌懸濁液を
用いて標準寒天培地もしくは普通寒天培地にて耐熱性菌類を選抜した。
3.成果の概要
これまでに、白神土壌より、放線菌(約3000株)、酵母(約3500株)や耐熱性菌
(約400株)などを分離した。酵母に関してはその一部を発酵試験に供した。放線菌の
液体培養上清はそれぞれの目的に応じて、検定に付与した。
4.今後の問題点と次年度以降の計画
平成16年度も白神土壌の採取を継続し、白神微生物の分離作業を進める予定である。
しかしながら、作業人員が限られていることから分離菌数には限りがある。また、菌株保
存用の冷凍庫の導入が望まれる。
5.成果の発表、活用等
単年度試験研究成績
(作成
平成16年2月)
研究課題名
白神微生物バンクの構築とその有効利用に関する研究
[2.白神酵母の有効利用に関する研究 ]
予算区分:県単 国庫 委託
担当研究室:生物機能部門生物機能第一担当
研究期間: 継 ・中
担当者:高橋慶太郎 木村貴一
平15年度(平15∼19年度) 協力・分担関係:
1.目的
白神山地の土壌等より野生酵母を分離し、その特性を解明するとともに、有用酵母の選
抜を行い、これら酵母を使用した製品開発を目的とする。
15年度は前年度までに分離した酵母の基礎的な特性分析を進めるとともに特性分析の
終了した酵母について食品加工適性の検討を行い、白神こだま酵母−白神パンに続く白神
酵母の開発・利用を目的とする。また、白神こだま酵母の特性をさらに引き出し、本酵母
の高度利用を図る。
2.方法
既に白神山地の土壌より分離・保存している3505株の酵母の中から2073株につ
いてダーラム管を使用し、グルコース及びシュークロースの30℃での発酵性を観察した。
また、白神こだま酵母の製パン特性を引き出すため各種の製パン試験を行った。
3.成果の概要
分離・保存酵母の発酵性は、グルコースを発酵した株は2073株中786株(38%)
でそのうち545株が旺盛なガス発生を示した。また、シュークロースを発酵した株は6
04株(29%)で447株において旺盛なガス発生が観察された(30℃,2日間)。
この数字から判るように、シュークロースを発酵せずにグルコースだけを発酵する株が数
多く観察されたが、逆にグルコースを発酵せずにシュークロースを発酵する株が35株、
またシュークロースの方が発酵性の良い株が14株見いだされた。このような性質を持つ
酵母はTHE YEASTS(第4判)では Candida blankii 1種類だけであり、非常に興味が持た
れる。
白神こだま酵母の製パン特性を引き出し、国内産小麦を原料とする製パンの安定化のた
め、単糖・二糖・糖アルコール添加による発酵パターンの変化を観察したところ、図1に
示したようにシュークロースの添加量が多くなるに従い、ガス発生のピークが高く且つそ
れを維持している時間が長くなった。また、ナンブコムギのように遊離の発酵性糖類が少
ない小麦ではガス発生ピークは発酵性糖類の消費による第一ピークと発酵中に遊離する糖
類の消費による第二ピークが観察されるが、ピーク間の発酵ガス発生量の落ち込みはマル
トースとトレハロースの添加により緩和され、この添加により第二ピークも維持時間が延
長された(図2)。ソルビトールの添加によりガス発生は抑制されることが観察された(図
3)。これらの知見より白神こだま酵母の発酵ガス発生パターンを自在にコントロールす
ることが可能となった。
4.今後の問題点と次年度以降の計画
自在にコントロール可能となった白神こだま酵母の発酵ガス発生パターンを有効利用し
た製パン法の開発。
Control
Suc1%
Suc2%
Suc3%
Suc4%
Suc5%
14
12
ガス発生量(ml/min)
10
8
6
4
2
0
0
120
240
発酵時間(分)
360
480
600
図1. シュークロース添加量による発酵ガス発生パターンの変化(30℃,ナンブ)コムギ)
14
カメリア 12
ガス発生量(ml/min)
ナンブ Mal2+Tre2
ナンブ Mal2+Tre2+Glc2
10
ナンブ Mal2+Tre2+Fru2
8
ナンブ Mal2+Tre2+Suc2
ナンブ Mal2% Tre2% Glc0.5%
6
ナンブ Mal2% Tre2% Fru0.5%
ナンブ Mal2% Tre2% Suc0.5%
4
ナンブ Mal2% Tre2%
Control
2
0
0
120
240
360
発酵時間(分)
480
600
図2.糖の種類の発酵ガス発生パターンへの影響(30℃)
14
カメリア ソルビトール0%
カメリア ソルビトール2%
カメリア ソルビトール4%
カメリア ソルビトール6%
12
ガス発生量(ml/min)
10
8
6
4
2
0
0
100
200
300
発酵時間(分)
400
500
600
図3.発酵ガス発生へのソルビトールの影響(30℃)
単年度試験研究成績
(作成
平成16年3月)
研究課題名
食品廃棄物からの糖質等の有用物質の生産
<マンノオリゴ糖生産技術の開発>
予算区分:県単 国庫 委託
担当研究室:食品開発部門 食品加工担当
生物機能部門
研究期間:継・中
担当者:戸枝一喜、保苅美佳、
平15年度(平14∼16年度)
堀一之、畠恵司
1.目的
マンナンを含有する食品廃棄物として大豆種皮、山芋残渣を取り上げ、酵素等によりマ
ンノオリゴ糖生産法の開発を行う。また、その機能性について探索を行う。
今年度は1)大豆種皮、山芋残渣からの酵素糖化条件の検討、2)生成したマンノオリゴ糖
の構造を解析、3)機能性試験の構築を行う。
2.方法
1)マンノオリゴ糖、ガラクトマンノオリゴ糖の構造解析
(1)マンノオリゴ糖、ガラクトマンノオリゴ糖の構造解析
2)マンノオリゴ糖、ガラクトマンノオリゴ糖の機能性評価
(1)マンノオリゴ糖およびガラクトマンノオリゴ糖のザイモサン貪食活性
(2)骨芽細胞分化誘導試験
(3)ガラクトマンノオリゴ糖のビフィズス菌増殖活性試験
3.成果の概要
1)マンノオリゴ糖およびガラクトマンノオリゴ糖の構造解析
(1)タラガムから Bacillus polymyxa KT551マンナナーゼ処理によりガラクトマンノオリ
ゴ糖の構造
解析を行った結果、ガラクトマンノオリゴ糖(4糖)のUK1の構造
2
は6 -α-D-Galactosyl mannotriose(GalMan4)(図1)、5糖のUK2の構造は6 2-α
-D-Galactosyl mannotetraose ま た は 6 3 - α -D-Galactosyl mannotetraose
(GalMan5)であった。
(1) ガラクトマンノオリゴ糖の生産法の開発を検討した結果、タラガムを精製 KT551
マンナナーゼ処理により GalMan4 が 27.29%、GalMan5 が 12.96%生成した(表1)。
2)マンノオリゴ糖およびガラクトマンノオリゴ糖の機能性評価
(1)ガラクトマンノオリゴ糖のビフィズス菌増殖活性を検討した結果、GalMan4はビフ
ィズス菌4種( B. breve JCM 1192、 B. longum JCM 1217、 B. infantis JCM 1222、 B.
adolescentis JCM 7044)において大腸菌等の菌より高い増殖活性を示した。GalMan5
はGalMan4よりはビフィズス菌増殖活性が弱かった(表2)。
(2)マンノオリゴ糖およびガラクトマンノオリゴ糖のザイモサン貪食活性を検討した
結果、同時投与の場合、マンノビオース(M2)に濃度依存的に貪食活性を抑制す
る傾向が認められた。GalMan4及びGalMan5のいずれも濃度が高くなると貪食活性
が増強されていた。
(3)マンノオリゴ糖およびガラクトマンノオリゴ糖の骨芽細胞分化誘導試験を行った
結果、陽性対照として用いた retinoic acid以外は、いずれの場合も、MC3T3-E1
細胞増殖ならびに分化に対する影響は認められなかった。
4.今後の問題点と次年度以降の計画
1) 大豆種皮から得られるマンノース、マンノオリゴ糖含有飼料の動物実験および製品
化の検討
2) マンノオリゴ糖およびガラクトマンノオリゴ糖の効率的な精製法の確立
3) マンノオリゴ糖およびガラクトマンノオリゴ糖の抗腫瘍活性の評価
5.結果の発表、活用等
ガラクトマンノオリゴ糖の生産と構造について学会発表の予定
UK1
GalMan4
M2
HOH2C
GalMan5
HOH2C
HO
O
O
OH OH H,OH
OH
UK2
M1
OH2C
OH
O
O
OH OH
HOH2C
OO
OH OH
OH
図1
UK1(GalMan4)の構造
表1
図2
タラガムからのガラクトマンノオリゴ糖
ガラクトマンノオリゴ糖の生成
生成物
M1
M2
GalMan4
UK1
GalMan5
収率(%)
精製酵素 未精製酵素
3.12
7.16
8.19
3.06
27.29
28.51
25.61
23.87
12.96
15.01
表2 ガラクトマンノオリゴ糖のビフィズス菌増殖活性
pH
菌種
対照区
B. breve JCM 1192
B. longum JCM 1217
B. infantis JCM 1222
B. bifidum JCM 1254
B. adolescentis JCM 7044
E.coli IFO3301
S.typhimurium IFO12529
GalMan4
6.86
5.76
5.99
5.96
6.38
5.64
6.67
6.95
GalMan5
6.88
5.78
6.05
6.02
6.37
5.71
6.67
6.94
単年度試験研究成績
(作成
平成16年2月)
研究課題名:植物性食品廃棄物からのゼロエミッションを目指した環境浄化技術の開発
予算区分:国庫
担当研究室:
酒類部門酒類第2担当
研究期間: 継 ・中
担当者:進藤 昌
平15年度(平14∼16年度)
協力・分担関係:秋田県立大学、(独)産業技術総合研究所、㈱秋田今野商店
1.目的
秋田県では、米や麦、そば、大豆など多くの農産物を生産しており、その加工において
穀物の殻やおから等多くの植物性食品廃棄物が排出されている。これらのほとんどは、焼
却又は埋め立てにより廃棄されており、環境に対する負荷がかなり大きい。一方、環境保
全のための生分解性プラスチックが開発されているが、原料である乳酸の価格が高いため
広く使用されていない。仮に、食品廃棄物から低コストで乳酸を生産することが可能にな
れば生分解性プラスチックの広範囲にわたる実用化も期待されるであろう。秋田県におい
ては、農業用のビニールフィルムが大量に使用されているが、近年のダイオキシン問題で
焼却処分が出来ないため、その処理が大きな問題となっている。従ってこの方面への生分
解性ビニールの応用が急がれているところである。また、炭酸ガスの排出が規制され始め
ている現在、化石燃料に変わるエネルギー源が期待されている。そこで、食品廃棄物から
得られた産業用アルコールをエネルギー源として応用することが出来れば、炭酸ガスの排
出の規制に大きく寄与することができると期待される。
平成15年度は、爆砕可溶化液からの最適乳酸生産およびアルコール生産の確立を目指
した。
2.方法
モデル植物性食品廃棄物としてモルトフィードを用いた。廃棄物の爆砕処理は、耐圧
40kg/cm2、容量2Lの爆砕装置を用いて行った。また爆砕可溶化液の糖化は、市販の酵素剤
を用いて行った。全糖量はフェノール硫酸法、単糖の分析はDIONEX、D/L乳酸は酵素法を用
いて定量を行った。乳酸菌の固定化はガラスビーズ担体に吸着増殖させることにより調製
した。
3.成果の概要
前年度までの要約
モデル廃棄物のモルトフィードの物理的物質変換に関する検討
2
・モルトフィードを30kg/cm で1分間爆砕処理したときに最も可溶化率および糖の収率
が高かった。
・爆砕可溶化液をグルコアミラーゼとセルラーゼで処理したときが最も単糖生成率が高
かった。・ポリオレフィン製の担体に固定化された糸状菌糖化酵素により爆砕可溶化
液を単糖化することができた。
・爆砕可溶化液からの乳酸生産菌のスクリーニングを行ない、Lactobacillus rhamnosus
NBRC14710を得ることが出来た。
当該年度の結果の概要及び考察
モデル廃棄物モルトフィードの生物的物質変換に関する検討
・ 爆砕可溶化液の Lactobacillus rhamnosus NBRC14710による最適発酵温度は37℃であ
った。(図1)
・ 爆砕可溶化液にTween80を添加することにより発酵速度および生産量を上げることが
出来た(図2)。また、ガラスビーズに固定化した乳酸菌を用いて40日間にわたり安
定に繰り返しの連続生産を行なう事が出来た(図2、図3)。
100
L-lactic acid (g/l)
L-lactic acid productivity (%)
・流動層型リアクターを用いて固定化菌体を充填し、発酵液を上昇流による循環を行わ
せることにより、発酵速度を静置発酵の1.5倍高くすることができた。
・爆砕可溶化液から Sacchromyces cereviseae と Phica stipitis の2種類の酵母を使用
することによりエタノールを生産できることが判明した。
80
60
40
20
0
0
20
30
40
1
50
Te mpe r atu r e (℃)
2
3
Time (d)
4
5
Fig.2. Effect of additional Tween80 on production
of L-lactic acid. (●), added Tween80; (○)
no addition
Fig.1 . Effe c t o f t e mpe r atu r e o n pr o du c tio n o f
L - lac t ic
id
20
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
25
20
L-lactic acid (g/l)
L-lactic acid (g/l)
20
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
15
10
5
0
0
2
4
6
8
10
Time(d)
12
Fig.3.Repeated batch production with normal
liqufied malt feed
14
16
0
4
8
12 16 20 24 28
32 36 40
Time (d)
Fig.4 .R e pe ate d batc h pr o du c t io n with addit io n al
Twe e n 8 0
4.今後の問題点と次年度以降の計画
① 試験研究推進上の残された問題点、バイオリアクターによる長期連続生産
② 必要な協力関係:秋田県立大学、(独)産業技術総合研究所、㈱秋田今商店
③ 次年度の具体的計画:
5.残された問題点とその対応
・文献発表:Shindo S. et al. Production of L-lactic acid from malt feed, a by- product
of beer producttion Applied Biotechnology, Food Science and Policy 投稿中
・研究会への報告:平成15年度日本農芸化学会大会
平成15年度産学官連携促進事業推進員会(平成16年1月30日)
・知的所有権:特許願2003-046796「食品廃棄物からの乳酸の製造方法」
単年度試験研究成績
(作成
平成16年2月)
研究課題名
食品製造過程における微生物制御に関する研究(2)
ー高品質、安全な食品製造ー
予算区分:県単 国庫 委託
担当研究室: 応用発酵部門
研究期間:継・中
担当者:柴本憲夫、佐々木康子
平15年度(平14∼16年度) 協力・分担関係:
1.目的
県内食品企業がHACCP対応するため、その橋渡しをめざす。当面は安全な食品製
造を行うため、一般衛生管理確立にいたる2業種(水産加工(冷凍製品)と弁当製造
業)のマニュアルを作成する。同時にこれらの食品業の製品の安全面からの高付加価値
化をはかる。
2.方法
製品製造工場のより高度な自主衛生管理
1)現状の把握
聞き取り調査(製造工程、衛生管理、現在のクレーム状況、工場視察)
微生物検査(落下細菌、工場汚染検査、製品検査、記録簿の作成)
2)サンプル分析と衛生管理ポイント提案
汚染菌同定と対策
人、製品の動線の検討
製造工程の5S
ゾーニング、清潔区の保持技術
3)従業員への教育訓練
3.成果の概要
1)水産加工(冷凍製品)について
HACCPを導入したいとの相談を受け、我々としても初めての試みであり、取
り組みを始めた。冷凍食品は衛生面から厳しい規制が設けられているため、他の食
品製造業に比較すると衛生的には優れている。しかし、HACCPの前段階;一般
的衛生管理からは不十分なところが多々あった。1年で形ができたところで経営者
の交代が有り、方針変更のため、計画半ばで終了した。
2)弁当製造業の衛生管理
全国的にも有名な鶏飯弁当(駅弁)の企業が取引先の要求する賞味期限の保証で
きる製品を作りたいとの要望で従業員教育、工場内のゾーニング、衛生管理など検
討した。弁当は種々の食品を同一の容器に詰め合わせ、大量に製造し、さらに調理
後摂食されるまで相当の時間経過があるため、微生物制御が必要とされる。構成す
る食材の一つ一つの製法を検討し直し、安全な製品製造を目指した。伝統と、味で
決まるものとは思うが、本年度の駅弁全国一に選ばれた。品質の向上も一役かった
と考えている。
4.今後の問題点と次年度以降の計画
HACCPの取り組みが挫折し、やはり県内ニーズは簡易HACCPの構築にあ
ることを痛感した。取引先からの要求、取引条件などから県内の高品質、安全な食
品製造にたいする関心の高まりはおおきなものがあり、自社検査施設を作る企業が
多く、対応に苦慮している状態である。
また本年度の微生物研修受講者は例年の3倍に及び、4回の追加開催を行った。
簡易HACCPマニュアルも9業種で作成でき、研究年報形式でまとめた。
今後、もっと業種を拡大する必要があるとは考えるが各食品製造の本質は共通であ
るため、研究でなく、技術指導の中で実施できる故、本課題は今期をもって終了す
る。(計画では研究期間はマニュアル作成のため16年度までとしたが、前倒しし
て、完成することができた)
5.結果の発表、活用等
研修などに結果データを活用した。マニュアルが作成できたことにより、これを
技術指導に生かすことにより、県内の食品の高品質、安全な製造を行う。
それに伴って、県産食品の販路拡大を目指す。
完了試験研究成績
(作成
平成16年2月)
研究課題名
食品製造過程における微生物の動態制御に関する研究(2)
ー高品質、安全な食品製造ー
予算区分:県単 国庫 委託
担当研究室:応用発酵部門 担当
研究期間:平成14∼16年
担当者:柴本憲夫
協力・分担関係:佐々木康子
1.目的
近年、BSE、O−157、牛乳食中毒事件、異物混入など食の安全を脅かす問題
が発生している。このような中で、いかに食品を安全に製造するかが求められている。
有効な対策として知られているHACCPの手法を取り入れることを試みる。とくに
特有の県産品への実施について、細部の検討がこれまでなく、実施することにより、県
産製品が広域流通できる、高品質、安全な製品の製造工程の構築をめざす。
〈背景〉
きりたんぽ、いぶりダイコン漬け、鶏肉の薫製品、麹など秋田県特有の食品は流通
範囲が限られ、長期流通への安全性の取り組みが遅れていた。一方、これら製品が全国
に流通するものになり、流通業者の独自に作成した規格・基準に適合することが要求さ
れている。県産製品について高品質、安全な製品の製造のため、5S、一般衛生管理、
簡易HACCP構築が必要とされた。
2.方法
1)現状の把握:」現場視察、環境微生物測定
2)衛生管理ポイントの提案: ゾーニング、動線、重要管理点
3)標準衛生作業手順の作成
4)マニュアル作成
5)点検表の作成
6)衛生管理バックアップ(1年間)と自主検査の確立
3.成果の概要
米麹、いぶりダイコン漬け、きりたんぽ、比内鶏薫製品、切り餅、大型小売業のバッ
クヤード、菓子加工、水産加工の8業種で実施した。いずれの業種においても、ポイン
トを抑えた安全管理がおこなわれているとは言えなかった。一年間の共同研究終了時で
は企業のレベルに応じて、5Sから一般衛生管理まで到達度はさまざまであった。一方、
製品は高品質になり、全国流通可能となった。また、研究面においても各業種からいろ
いろなシードが見いだされた。それぞれの研究成果をまとめ研究年報形式でマニュアル
を作成した。
4.成果の活用面と留意点
上に記したように、実施した業界で活用できるばかりでなく、関連業界への技術移転
や研究所の食品加工研修(座学)で成果のデータを用い、普及を図った。
また、手法をマニュアルとして作成し、今後の技術指導に生かす。
研究としても研究所報告に下記の4報投稿した。
1)安全、高品質な食品の製造に関する研究 (第一報)
ー米麹の製造法についての検討
研究所報告
2003
2)安全、高品質な食品の製造に関する研究 (第二報)
ーいぶりダイコン漬けについての検討ー
研究所報告
2003
3)
ーきりたんぽ加工についての検討ー (第三報) 研究所報告 2004 予定
4)
ー比内鶏薫製品についての検討ー
(第四報) 研究所報告 2004 予定
5)
ー切り餅加工についての検討ー
(第五報)
以降、順次発表予定
6)
ー大型小売り店舗のバックヤードの食品製造についてー(第六報)
7)
ー菓子製造におけるカビ対策ー
(第七報)
8)
ー水産加工についての検討ー
(第八報)
9)
ー弁当製造についての検討
(第九報)
5.残された問題点とその対応
研究期間は平成16年までであるが、これは残り1年でマニュアル作成を行う計画で
あった。しかし早期に作成が完了したため、本年度で課題を終了する。担当者が退職の
時期にあり、できうる限り、次の人に技術、情報の移転をする。
単年度試験研究成績
(作成
平成16年3月)
食材・包材等に含まれる内分泌攪乱物質分析手法の確立
及び低減、除去技術の検討
予算区分:県単 国庫 委託
担当研究室:生物機能部門生物機能第二担当
研究期間:平15年度(平13∼15年度) 担当者:堀 一之
協力・分担関係:
研究課題名:
1.目的
内分泌攪乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)のうち、食品分野ではプラスチック系
包材の可塑剤成分であるフタル酸エステル類の汚染実態の把握とともに、それらの低減あ
るいは除去技術を検討することが求められている。本研究では、フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)(以
下DEHP)を主たる研究対象とし、容易かつコンタミネーションの少ない極微量分析手法について所有
するGC/MSで対応可能な方法を開発し、さらに一般的かつ比較的含量の多い場合に利用可
能なFID-GCを用いる分析条件への移行・確立を行う。さらに、各種包装材料や食品類での
フタル酸エステル類の存在量の実態を把握し、それらの低減・除去の可能性を検討する。
最 終 年 度 で あ る 15年 度 は 、 開 放 系 ブ ラ ン チ ン グ 条 件 ( 温 度 、 時 間 、 溶 質 の 種 類 ・ 有 無 な
ど)においてDEHPの低減あるいは除去が可能かについて検討した。
2.方法
分析はFID-GC(HP5890Ⅱ)を用い、試験に供するDEHP水溶液として300μg/lをスタート濃
度として用い、試料は放冷して室温に戻した後直接GCに注入した。すなわちスペルコ製ク
リンアップバイアル4 mlに、被験液2 mlを入れ、ホットプレートスラーラーにヒーティン
グバイアルブロックを装着した中で、一定速度で攪拌しながら加温した。温度調節はブラ
ンクとして蒸留水を入れたバイアルを準備し、温度センサーで加温コントロールを行った。
設定達温時から時間積算を行い、放冷時にはDEHPの再吸収を回避するため、ヘキサン洗浄
したテフロン製キャップで密栓した。
3.成果の概要
①開放系で加温すべき温度を把握するため、シリカゲル精製蒸留水に所定のDEHPを溶解
させた溶液について達温より10分の条件下で温度変化によるDEHPの残存量を測定した。
結果は50℃までDEHPの減少が認められないが、60℃以上では加温によって減少する傾
向が認められ、80℃以上に加温されれば一定量残存はするもののDEHPが除去されるこ
とが把握できた。(図1)
②次に、80℃においてDEHPを除去するのにどの程度の加温時間が必要かについて、①と
同じ溶液を用い時間変化によるDEHP残存量を測定した。その結果10分加温すれば充分
であることが判明した。(図2)
③以上の結果をもとに、液性を変化(pH 4.1, 6.9, 9.2)させた条件および、食塩、重
曹、クエン酸などの溶質を加えた場合、DEHP残存に影響するかを80℃、10分の条件で
測定した。その結果、液性が塩基性に傾くかあるいは食塩を加えるとDEHPの残存が少
なくなり、逆に酸が共存するとDEHPの揮発性が小さくなることが判明した。(図3)
以上の結果を総合し、山菜のあく抜きに使用する重曹や灰、あるいは野菜のおひたしな
どを作成する際に加える食塩は、DEHPの低減についてよい影響を与えていることを科学的
に裏付けることが出来た。
25 ℃
40 ℃
温 度
50 ℃
60 ℃
70 ℃
80 ℃
90 ℃
0
50
100
150
200
250
300
350
図1
加温温度によるDEHP
残存量
(達温後10分、n=10に
おける平均値と標準偏
差)
D E H P 含 有 量 ( µ g / l)
1分
2分
経過時間
5分
10分
(上 と 同 じ 条 件 で の 再 実 験 )
図2
80℃達温からの経過時
間によるDEHP残存量
(n=10における平均値
と標準偏差)
20分
30分
45分
60分
0
20
40
60
80
100
120
D E H P 含 有 量 ( µ g / l)
蒸留水
中 性 リン酸
緩 衝 液 (6 .9 )
塩基性ホウ酸
緩 衝 液 (9 .2 )
酸性フタル酸
緩 衝 液 (4 .0 )
図3
溶質によるDEHP残存量
(n=15における平均値
と標準偏差、80℃
達温10分)
3 % (w / v )
食塩溶液
1 % (w / v )
重曹溶液
1 % (w / v )
クエン酸溶液
0
10
20
30
40
50
60
70
80
D E H P 含 有 量 ( µ g/ l)
4.今後の問題点と次年度以降の計画
当該研究で得られたGC/MS、FID-GCなどによる微量成分分析手法は、今後の研究所基盤
技術の一つとして活用していきたい。
5.結果の発表、活用等
本研究の一部については平成16年3月大阪市で開催された日本薬学会第124回年会に
おいて発表を行った。
また、野菜・山菜のブランチングにおける食塩や重曹などの添加意義については、出前
講座をはじめとする啓蒙・普及活動および技術指導活動において活用していきたい。
完了試験研究成績
(作成
平成16年3月)
食材・包材等に含まれる内分泌攪乱物質分析手法の確立
及び低減、除去技術の検討
予算区分:県単 国庫 委託
担当研究室:生物機能部門生物機能第二担当
研究期間:平成13∼15年
担 当 者:堀 一之
協力・分担関係:
研究課題名
1.目的
内分泌撹乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)のうち、食品分野ではプラスチック系
包材の可塑剤成分であるフタル酸エステル類の汚染実態の把握とともに、それらの低減あ
るいは除去技術を検討することが求められている。本研究では、フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)(以
下DEHP)を主たる研究対象とし、容易かつコンタミネーションの少ない極微量分析手法について所有
するGC/MSで対応可能な方法を開発し、さらに一般的かつ比較的含量の多い場合に利用可
能なFID-GCを用いる分析条件への移行・確立を行う。さらに、各種包装材料や食品類での
フタル酸エステル類の存在量の実態を把握し、それらの低減・除去の可能性を検討する。
2.方法
分析装置は、GC/MSとして日本電子JMS-BU20型(GCmate)/HP5890ⅡをFID-GCとしてHP5890
Ⅱを使用した。また、フタル酸エステル類の標準試料としては、EPA 606フタル酸エステ
ル混合標準6種試料(Supelco 4-8223)と同社各単成分試薬、サロゲート物質にはDEHP-d4
(ISOTECH #182-12887)を用いた。また溶媒(キシレン・メタノール・ヘキサン等)はAldrichあるいはナカライテスクの精密分析用試薬を用い、希釈・洗浄などに使用した器具類
はこれら溶媒で洗浄後使用した。実施した実験項目は以下の通りである。
1)標準試料を用いたGC-MS分離条件(カラム選択・温度プロファイル、サロゲートに
よる回収、濃度範囲に合致したスキャン・SIM法定量条件)の検討
2)各種サンプリング方法(精油定量・SPME・固相抽出・溶媒抽出等)の検討
3)高濃度に対応したFID-GC法による分析条件の検討
4)包材あるいは野菜を対象にしたフタル酸エステル類定量分析
5)DEHP含有量の大きい包材における加熱殺菌モデルでの封入水への移行現象の把握
6)開放系におけるDEHP揮発条件(温度、時間、液性、溶質の有無)の検討
3.成果の概要
1 ) DEHPを は じ め と す る フ タ ル 酸 エ ス テ ル 類 に は 共 通 の 親 イ オ ン m/z 149が あ り ( 図
1) SIMとし て利用できることが判明した。また図2に示した昇温プロファイルを
用いればフロンティアラボ製 UA-5+(30 m, 0.25 μm)カラムで良好に分離され、ま
たDEHP-d4がサロゲートとして利用可能なことを確認した。
2)精油定量法のトラップとしてキシレンが最適であるが、含有量がかなり大量の場合
しか適用できないと判断された。そこで希薄サンプルの選択的濃縮方法を種々検討
しSPME(固相マイクロ抽出)法で7 μmPDMS化学結合型ファイバー70℃塩析を併用
した浸漬法を用いれば有効であることを確認した。
3)FID-GC(split)100 ppm∼GC/MS SIM法で1 ppbの濃度範囲の定量が可能となった。
4)素材に塩化ビニル系を用いている一部包材にDEHPの存在が確認された。また一部代
替可塑剤(ジ n-ブチル、ジ n-オクチル)の存在も確認した。
5)塩化ビニルを含有している包材を用い封入水を加熱し、SPME塩析サンプリングによ
るGC/MS定量分析を行った。その結果、加熱時間と温度によって封入水のDEHP含有
量が大きくなることが確認された。
6)開放系におけるDEHPの揮散には、80℃10分加温が有効であることを確認した。さら
に、液性が塩基性に傾くかあるいは食塩を加えるとDEHPの残存が少なくなり、逆に
酸が共存するとDEHPの揮発性が小さくなることが判明した。(図3)
蒸留水
中性リン酸
緩衝液(6.9)
塩基性ホウ酸
緩衝液(9.2)
酸性フタル酸
緩衝液(4.0)
3 %(w/v)
食塩溶液
1 %(w/v)
重曹溶液
1 %(w/v)
クエン酸溶液
0
10
20
30
40
50
60
70
80
µg/l,
n=15, 80 ℃, 10分)
DEHP含有量(µg/l)
図3 溶質によるDEHP残存量(初期濃度300
4.成果の活用面と留意点
本研究の一部については平成16年3月大阪市で開催された日本薬学会第124回年会に
おいて発表を行った。また、野菜・山菜のブランチングにおける食塩や重曹などの添加意
義については、出前講座をはじめとする啓蒙・普及活動および技術指導活動において活用
していきたい。
5.残された問題点とその対応
内分泌撹乱物質については、未だ研究途上で評価も定まっておらない。本研究における
一部データーの取扱についてはその点の配慮が必要である。
研究課題以外の試験研究成績(平成15年度)
(作成
担当者:酒類第一担当
区分:
平成16年2月)
高橋
仁、田口隆信
〈外部資金、新規課題予備的実験、共同研究等を記載〉
研究名:「秋田酒こまち」ブランド確立促進事業
研究開始年度:
研究期間:
平成15年度
平成15年∼19年
継続
協力・分担関係:農畜産振興課、農業試験場、秋田県酒造組合
【概
要】
〈目的・方法・成果等を簡潔に記載〉
目的
秋田県と県酒造組合、生産者が連携・協力し、酒造好適米新品種「秋田酒こまち」の原
料米の良質・安定生産体系の確立と、品種の特性を活かした醸造技術の高位平準化を促進
し、米と酒の両面における「秋田酒こまちブランド」の確立に寄与する。
この中で総合食品研究所の役割は、良質な「秋田酒こまち」の玄米・白米が供給される
ように栽培条件が酒造特性に与える影響を考慮しながら品質評価方法を確立することであ
る。また、酒造においては「秋田酒こまち」を使用した清酒の消費拡大をはかるため、全
国新酒鑑評会でのトップを目指した酒造技術の他、買い求めやすく高品質な純米酒の製造
技術を検討する。
方法
① 原料米分析:全国酒米研究会統一分析法
② 胴割粒:50%エタノールに1時間浸漬後透過光にて判定
③ 中規模吟醸酒製造試験:対照:山田錦
精米歩合:40%、総米:180kg の吟醸酒造り
成果等
① 原料米の品質評価
県内で生産された「秋田酒こまち」について60点(各農家1点)収集し、千粒重、形
態、胴割粒比率、心白型比率、粗タンパク質を分析。
平成15年産「秋田酒こまち」は低温低日照の影響を受け、千粒重が昨年より小さくな
り、心白の発現状況も昨年より腹白状心白粒の比率が少なく、玄米の粗タンパク質含量が
増加した。胴割粒は多いグループと少ないグループが明確に分かれており、どの時点で胴
割れが発生しているのか詳細な検討が必要。
55-60
千粒重のヒストグラム
25
0
25
20
10
15
010
0.
0
9.
5
29
.5
-3
9.
0
29
.0
-2
8.
5
28
.5
-2
8.
0
28
.0
-2
27
.5
-2
27
.0
-2
26
.5
-2
26
.0
-2
7.5
0
7.
0
5
0
6.5
5
25
.5
-2
H15
H14
10
10
-2
0
20
-3
0
30
-4
0
40
-5
0
50
-6
0
60
-7
0
70
-8
0
80
-9
0
90
-1
00
H15
H14
頻度
20
15
6.
0
頻度
0
アルコール浸漬法による胴割粒歩合のヒストグラム
胴割粒歩合(%)
千粒重(g)
玄米横断面心白型比率腹白粒歩合のヒストグラム
25
頻度
20
15
H15
H14
10
5
10
-1
5
15
-2
0
20
-2
5
25
-3
0
30
-3
5
35
-4
0
40
-4
5
45
-5
0
50
-5
5
510
0
玄米横断面の腹白粒歩合(%)
70%白米粗タンパク質のヒストグラム
12
40
35
30
25
20
15
10
5
0
10
H15
H14
6
4
2
8
0
2
4
6
8
0
2
3.
63.
3.
84.
4.
04.
4.
24.
4.
44.
4.
64.
4.8
-5
.
5.
05.
9.
09.
5
8.
59.0
8.
08.
5
7.
58.
0
7.
07.
5
6.
57.
0
0
粗タンパク質(%)
図
8
頻度
H15
H14
6.
06.5
頻度
玄米粗タンパク質のヒストグラム
粗タンパク質(%)
千粒重、胴割粒比率、心白型比率(腹白状心白粒)、粗タンパク質のヒストグラム
② 吟醸酒製造法の確立および普及
中間規模試験醸造において、「山田錦」を対照に「秋田酒こまち」に適した吟醸酒製造法
を検討中。3月上旬製成予定。
③ 純米酒製造法の確立および普及
精米歩合60%「秋田酒こまち」純米酒の上品な特徴を活かすためには、製成後の劣化
を防ぐことが最重要課題であり、酒造工場に対してこの点を中心に技術対応。
研究課題以外の試験研究成績(平成15年度)
(作成
担当者:尾張
区分:
平成16年
2月)
かおる
技術指導
研究名:
男鹿沖海洋深層水から得た食塩の味噌への適用の可能性について
研究開始年度:
研究期間:
平成15年度
終了
協力・分担関係:諸井醸造所
【概
要】
〈目的〉
男鹿入道崎沖 400mから汲み上げた海洋深層水があり、そこから得た食塩を入手した。
ミネラル含有量に差がある並塩、粗塩を対照に味噌醸造に利用したときの効果について
調べることを目的とした。
〈方法〉
1. 仕込み
仕込総量 10kg、麹歩合 10、目標食塩 11.5%、30℃温醸 2 か月後室温熟成 1 か月
使用大豆 H14 県産タチユタカ、使用米県産あきたこまち
使用食塩
1:海洋深層水塩
2:赤穂の塩
3:並塩
2. 分析
一般分析:定法
元素分析:ICP 分析
〈成果〉
1. 塩の元素分析値
Na
K
Mg
Ca
5895.5(44)
769.8(34)
383.8(68)
317.9(82)
1海洋深層水塩
306ppm
3.50ppm
11.69ppm
12.07ppm
2赤穂の塩
329ppm
1.52ppm
2.09ppm
1.37ppm
3並塩
331ppm
1.54ppm
0.43ppm
0.86ppm
]
2. 熟成終了時の分析値
水分
食塩
pH
エタノール
Y%
x
y
1海洋深層水塩
47.8
11.4
5.1
0.9
14.0
0.463
0.404
2赤穂の塩
50.1
11.4
5.2
1.1
13.0
0.468
0.404
3並塩
46.4
12.2
5.2
1.2
12.7
0.467
0.403
3. 味噌の元素分析値
Na
K
Mg
Ca
5895.5(44)
769.8(34)
383.8(68)
317.9(82)
1海洋深層水塩
768ppm
30.7ppm
21.8ppm
10.3ppm
2赤穂の塩
635ppm
17.5ppm
10.2ppm
7.7ppm
3並塩
702ppm
19.2ppm
7.5ppm
7.5ppm
4. 官能検査結果
コメント
1海洋深層水塩
色が一番明るくキレイ。味噌の組成がなめらかで弾力性に富む。
味まろやか。後味にわずかに苦みがあるが特に気にならない。
2赤穂の塩
旨味・甘み・塩辛さの味のバランスが最もよい。
3並塩
大豆の硬さが目立つ。痺れるような塩カドがきつく舌に残る。
〈考察〉
海洋深層水塩を利用した味噌は、初めに想像したより味がまろやかで色が明るく、な
めらかな組成が特徴的であり、塩の安定供給・価格等の問題を解決できれば充分実用的
であった。
しかし後味の苦さがわずかに残るので、ミネラル中の含有量を2赤穂の塩に近づける
のがよいかもしれない。
味噌にした場合、塩の状態に比べると K・Mg・Ca の差が少なくなっていた。1海洋
深層水塩みその組成のなめらかさは、塩の元素中 K・Mg・Ca が多かったせいであると
考えられるが、どの成分の作用であるかやその必要濃度については検討していない。
今後、秋田県産大豆の有効利用について研究していく上で、この点はさらに検討して
いきたい点である。
単年度試験研究成績
(作成
平成16年2月)
研究課題名:秋田県産ブドウによる醸造適性試験(共同研究)
予算区分:県単
担当研究室:酒類部門、酒類第2担当
研究期間:継・中
担当者:杉本勇人、進藤 昌
平15年度
協力・分担関係:果樹試験場天王分場
1.目的
ワインは原料ブドウの産地や品種により、その品質が大きく影響される酒類であり、こ
れがワインの大きな特徴の一つにもなっている。本県では果樹試験場天王分場で醸造用ブ
ドウの栽培を行っており、品種特性やワイン醸造による品質の把握が県産ワインの開発に
必要である。そこで昨年に引き続き、今年収穫された醸造用品種5種について試験醸造を
行った。
2.方法
(1)原料:シャルドネ、サンセミヨン、カベルネソーヴィニヨン、アムレンシス、甲斐ノ
ワール
(2)仕込み:酵母は Saccharomyces cerevisiae (LALVIN EC1118)を用い、糖度はBrixで24%
まで補糖し、仕込み温度は白16℃・赤24℃とし、もろみの発酵状態を見ながら温度管理を
行った。
(3)成分分析:一般分析は国税庁所定分析法、酸度は京都電子工業自動測定装置AT-410、
比重は京都電子工業振動密度計DA-310、アミノ酸は日本電子JLC-500、有機酸は東京理化
カルボン酸分析S-3000で測定した。
3.成果の概要
(1)果実の形態
果房重はアムレンシス、甲斐ノワールが小さい傾向にあり、果粒重はカベルネソーヴィ
ニヨン、アムレンシスが小さい傾向にあった。(Table 1)。
(2)果汁成分
今年の冷夏の影響もあり、糖度は20%を下回り、アムレンシス、甲斐ノワールは去年に
比べ酸度が3∼6 ml高かった。(Table 2)。
(3)ワイン醸造
発酵はほとんどの品種で順調に進行し、白は16日、赤は12日で主発酵が終了した。しか
し、サンセミヨンは収穫の段階で若干腐敗が進行していたためか、5日目からの発酵速度
が早く、11日で主発酵が終了した(Fig.1)。
(4)ワイン成分
アルコール11∼12%、エキス2∼4g/100mlのワインが生成された。全体的に昨年とほぼ同
様の結果を与えているが、サンセミヨンは総フェノール量、吸光度共に高い値を示してい
る(Table 3)。
(5)官能評価
シャルドネはアロマ、ブーケの香りが良く、酸味もさわやかで非常にバランスの取れた
ものに仕上がった。サンセミヨンは濁りと色が強く、香りに対し味は薄く、メタカリを若
干多く入れたため亜硫酸臭が感じられた。カベルネソーヴィニヨンは品種独特の香りを醸
し出していたが、渋味と酸味の中に薬品味が感じられた。アムレンシスはやや甘い香りを
持ち、さわやかな刺激味があり、バランス良く仕上がっていた。甲斐ノワールはコナ臭と
青臭みがやや感じられたが、強い渋味が全体のボディー感を作っていた(Table 4)。
Table 1 果実の形態比較
ブドウ品種
シャルドネ
サンセミヨン
カベルネソーヴィニヨン
アムレンシス
甲斐ノワール
果房重 (g)
平均 標準偏差
167.56
59.651
168.56
63.490
107.15
28.901
85.08
28.096
90.67
44.319
果粒重 (g)
平均 標準偏差
1.95
0.383
2.74
0.597
1.41
0.279
1.79
0.511
2.03
0.437
Table 2 果汁成分の比較
ブドウ品種
pH
Brix (%)
酸度 (ml)
比重
16.7
18.8
17.8
18.0
19.7
12.745 (13.729)
14.420 (13.784)
13.364 (17.462)
15.923 (13.067)
23.551 (17.267)
1.0685
1.0797
1.0743
1.0752
1.0839
シャルドネ
3.06
サンセミヨン
2.91
カベルネソーヴィニヨン
3.24
アムレンシス
3.12
甲斐ノワール
2.95
( ) の値は、昨年の測定値
Fig. 1 発酵経過
Brix (%)
30
25
シャルドネ
20
サンセミヨン
15
カベルネ
ソーヴィニヨン
アムレンシス
10
甲斐ノワール
5
0
0
5
10
15
20
時間 (日)
Table 3 ワイン成分の比較
ブドウ品種
pH
シャルドネ
3.18
サンセミヨン
2.90
カベルネソーヴィニヨン
3.45
アムレンシス
3.29
甲斐ノワール
3.20
*
**
白:420 nm 赤:530 nm
酸度 (ml)
比重
11.678
12.929
13.332
15.410
21.171
0.9993
1.0012
0.9931
0.9959
0.9975
アルコール エキス 総フェノール
吸光度
(%)
(g/100ml)
(ppm)
*
12.4
4.2
388
0.047
*
11.9
4.5
1184
0.193
**
12.3
2.6
1399
2.679
11.3
3.0
1172
3.479**
**
11.4
3.5
1888
9.849
Table 4 官能評価
ブドウ品種
短評
シャルドネ
バランス良い、品種香、酸味さわやか
サンセミヨン
濁り、黄色強い、酸味、亜硫酸臭
カベルネソーヴィニヨン
青臭い、薬品味、酸味、渋味
アムレンシス
やや甘い香り、バランス良し、やや刺激味
甲斐ノワール
ややコナ臭、青臭み、強い渋味
4.今後の問題点と次年度以降の計画
①試験研究推進上の残された問題点:ヴィンテージの見極めと考慮。
②必要な協力関係:果樹試験場天王分場
③次年度の具体的計画、及び当初計画の変更等:今後も試験醸造行い、特性を検討。
5.結果の発表、活用等
特になし
平成15年度 試験研究成果概要
発 行
平成16年6月
発行者
秋田県総合食品研究所
〒010-1623
秋田市新屋町字砂奴寄4-26
tel 018-888-2000㈹
fax 018-888-2008
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