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平成 23 年度 海外主要国の研究開発税制に関する実態を

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平成 23 年度 海外主要国の研究開発税制に関する実態を
平成 23 年度
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた
国内事業環境整備等調査
調査報告書
平成 23 年 12 月
経済産業省 産業技術環境局
技術振興課
委託先 KPMG 税理士法人
目次
第1章
調査概要 .....................................................................................................................................2
第1節
調査目的 ................................................................................................................................2
第2節
調査範囲 ................................................................................................................................2
第1款
調査対象国........................................................................................................................2
第2款
調査対象項目 ...................................................................................................................2
第3節
調査方法 ................................................................................................................................3
第4節
調査前提条件........................................................................................................................4
第1款
適用法令 ............................................................................................................................4
第2款
調査対象 ............................................................................................................................4
第2章
調査結果 .....................................................................................................................................5
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果 .......................................................................................5
第1款
調査結果概要 ...................................................................................................................5
第2款
米国 .....................................................................................................................................8
第3款
カナダ................................................................................................................................15
第4款
フランス .............................................................................................................................19
第5款
英国 ...................................................................................................................................26
第6款
スペイン ............................................................................................................................33
第7款
韓国 ...................................................................................................................................40
第8款
中国 ...................................................................................................................................49
第9款
オーストラリア ...................................................................................................................54
第 2 節 研究開発税制に関する個別確認事項に係る調査結果 ..............................................63
第1款
米国 / エネルギー研究コンソーシアム特例に係る詳細調査 ...............................63
第2款
韓国 / 新分野及び新技術の研究開発に係る特例に関する実体調査..............68
付録 1
研究開発税制概要に係る各国比較表
付録 2
適格研究開発費及び適格研究開発活動の取り扱いに係る各国比較表
1
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 1 章 調査概要
第1章
調査概要
第1節
調査目的
我が国全体の研究開発投資総額の約7割を占める民間企業の研究開発費は 2009 年度
に約 12 兆円(対前年度比▲12.1%)と大幅に減少しており、我が国の産業競争力を中長期
的に弱体化させる要因となると同時に、短期的なマクロ経済の悪化に直結することとなる。
民間企業の研究開発投資は、公共投資に匹敵する経済の重要な柱となっているため、そ
の減少や中断は、我が国の産業競争力を中長期的に弱体化させる要因となると同時に、短
期的なマクロ経済の悪化に直結することとなる。
本調査は、我が国と海外主要国の研究開発税制に係る制度内容等を調査し、それを踏ま
えた国内の事業環境の在り方について調査分析の実施を行い、平成 24 年度税制改正に向
けた検討に役立てることを目的として行われたものである。
第2節
調査範囲
本調査においては、以下の事項につき調査を行う。
第1款
調査対象国
米国、カナダ、フランス、英国、スペイン、韓国、中国、オーストラリア (計8ヶ国)
第2款
調査対象項目
海外主要国における研究開発税制の最新動向に関する実態把握調査の実施
我が国との比較が有効であると考えられる米国、カナダ、フランス、英国、スペイン、韓国、
中国、オーストラリアの8カ国における研究開発税制の制度概要、最新動向及び当該税制の
効果等の調査を行う。主な調査項目は以下のとおりである。
1. 制度の概要(対象となる研究開発の定義を含む)
2. 最近の動き(改正の動向含む)
3. 税額控除率と計算式(中小企業に関する特例含む)
4. 控除限度額
5. 繰越し及び繰戻し
6. 税収(減収)効果
2
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 1 章 調査概要
第3節
調査方法
本調査は、文献調査を中心に、必要に応じて KPMG 海外事務所等から聴取を行うことに
より実施される。具体的な調査方法は以下のとおりである。
1. 調査項目の選定
先ず、KPMG 税理士法人(以下「東京事務所」)において、各国の研究開発税制に係る優
遇税制に関し、具体的な調査項目の選定を行う。
2. 基礎調査(文献調査)の実施
上記調査項目に関し、各調査対象国の KPMG 事務所(以下「海外事務所」)に対して作業
を依頼するにあたり、より効果的な作業指示書を作成するために、東京事務所において文献
調査を中心とする基礎調査を行う。基礎調査においては、the International Bureau of Fiscal
Documentation(IBFD)のデータ・文献等、国際的にも広く認められた情報源を活用する。
3. 作業指示書の作成
上記調査項目について、東京事務所にて各調査対象国の海外事務所へ依頼する作業内
容を取りまとめた作業指示書を作成する。
4. 海外事務所へ資料送付
上記作業指示書及びその他作業に際して必要とされる資料を各海外事務所へ送付する。
また、他に必要な情報がある場合は、追加でデータ・資料等を提供する。
5. 各調査対象国において資料作成
上記作業指示書に従い、各海外事務所において調査及び資料の作成を行う。
6. 東京事務所へ資料送付
各海外事務所で作成した資料を東京事務所へ送付する。
7. 東京事務所にて分析・報告書作成
東京事務所において、上記の基礎調査及び各国の調査資料を取りまとめ、報告書を作成
する。調査内容に際して不備・不明点等がある場合は、適宜、海外事務所へ照会する。また、
我が国の研究開発税制に係る優遇税制に関する分析・報告書の作成を行う。
なお、KPMG では東京事務所・海外事務所のいずれにおいても、資料を作成する際には、
一般にアソシエイトがドラフトを作成し、マネジャーがチェックした後、ディレクター及びパート
ナーが最終確認を行う、という手順を経る。
3
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 1 章 調査概要
第4節
調査前提条件
第1款
適用法令
本調査の対象とする適用法令等は、原則として平成 23 年 7 月 1 日時点施行のものとする。
第2款
調査対象
本調査においては、我が国における研究開発税制に関する見直しを見据え、海外主要国
における研究開発税制に係る取扱いを調査対象とする。
4
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 1 款 調査結果概要
第2章
調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第1款
調査結果概要
1.各国における研究開発税制の特色
今回の調査対象国(8 カ国)において、研究開発税制の仕組みで大別すると、企業が支出
した研究開発費に対して、一定の率を乗じて法人税額の控除税額を算出する「税額控除型」
と、研究開発費の支出に対して割増した金額を損金算入することができる「損金算入型」と2
つに大別することができる。なお、我が国の研究開発制度は「税額控除型」となっており、各
国をこの制度の仕組みで区別すると以下のとおりである。
「税額控除型」
: 日本、米国、カナダ、フランス、スペイン、韓国、オーストラリア
「損金算入型」
: 英国、中国
ただし、オーストラリアは、2011 年 7 月より、「損金算入型」から「税額控除型」へ大幅に制
度改正を行った。
「税額控除型」を更に区別すると、我が国の試験研究費の総額に係る税額控除制度のよう
な、研究開発費に総額に一定の率を乗じる「総額型」と、前年以前等、ベースとなる金額を超
えた部分についてのみ一定率を乗じて税額控除金額を算出する「増加型」とがある。各国の
税額控除制度が「総額型」又は「増加型」であるかは以下のとおりである。
「総額型」
: カナダ、フランス、オーストラリア
「増加型」
: 米国
「総額型」又は「増加型」
: スペイン、韓国
スペイン及び韓国については、研究開発分野、内容等に応じ、控除率及び計算方法が異
なる。これは、特定の研究開発分野、内容等に対して、税制上の恩典を与えるために施策さ
れているためである。
また、各国の研究開発税制は定期的に見直され、改正されている。昨年の調査報告時か
ら、制度が改正された国及び本年改正が予定されている国は、本調査対象国(8 カ国)中、5
ヶ国であった。改正された及び改正が予定されている国は、フランス、英国、スペイン、韓国、
オーストラリアである。フランスを除く 4 カ国は、制度を拡充する方向への改正であるが、フラ
ンスにおいては、従来までの制度の法人税収に対する減収額が大きく、歳出抑制の一環で
制度縮小の方向へ改正された。
5
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 1 款 調査結果概要
「制度拡充」
: 英国、スペイン、韓国、オーストラリア
「制度縮小」
: フランス
中でも、オーストラリアは従来の「損金算入型」の制度から、「税額控除型」へ大きく改正す
る予定であり、ある一定規模の法人(売上高 2,000 万豪ドル)に対しては、一般法人よりも優
遇控除率を適用し、かつ未使用の税額控除が発生した場合には還付することができる、いわ
ゆる 2 層式の税額控除制度に変更される予定である。オーストラリアの従来の制度は、「総額
型」及び「増加型」を組み合わせた「損金算入型」の制度であったが、一部の制度が複雑であ
り、企業の研究開発活動の促進へ寄与していないとされており、制度をより充実及び簡素化
するために制度変更を行うものとされている。また、従来の研究開発税制に比べ適用対象と
なる法人が拡大しており、特にオーストラリアに恒久的施設を持つ外国法人に対しても、国内
法人との差別なく利用することができる。これは、外国法人の研究活動をオーストラリアにより
誘致するために有効に作用すると考えられている(現行の研究開発税制では、無形資産を
オーストラリア国外に所有する法人は対象外とされていた)。
2.我が国の研究開発税制の在り方
産業構造審議会の「中長期的な研究開発政策のあり方」において、我が国は、先進国の
中でも例のない急激な少子高齢化社会を迎えており、こうした人口減少社会の下で、活力の
ある経済社会を構築するため、知的・人的資源による国富の図る必要があると述べられてい
る。また、地球規模・地域規模での環境問題に対処するため、資源・エネルギーの利用効率
が高く、環境負荷の低いモデルに転換しなければならないと述べられている。こうした課題に
対して、科学技術が果たす役割は大きいものと考えられる。
我が国の研究開発税制は、これまで企業や経済の成長に寄与してきたことは言うまでもな
いが、我が国の抱える「少子高齢下での繁栄の維持」「知的・人的資源による国富の確保」と
いう観点では、よりいっそうその重要性は増すものと考えられる。
今後の中長期的な研究開発政策に照らせば、その目的に沿ったものとすることが考えられ
る。スペインや韓国でも導入されているように、特定の分野の研究開発に対して、税制上の
恩典を与えることにより、その研究開発の促進を図ることは、一定の効果が見込まれる可能性
もあると思われる。「資源・エネルギー・環境制約の克服」を図るためにも、これに関連する研
究開発に対して、研究開発税制の恩典を上積みすることも考えられる。
我が国の研究開発税制は、原則として、法人が支出する試験研究費及び他の者に対して
支払う委託研究費の全てを対象としており、これらの研究が行われる場所は特定されていな
いため、政策効果としては、曖昧な部分があるようにも思われる。試験研究費を支出する法
6
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 1 款 調査結果概要
人が海外の研究施設や外国の法人に対して支払うものまで、制度の対象とされているため、
研究施設を我が国の国内に設置する、又は、留まらせるという効果を有していない。また、外
国法人も制度の対象とされているため、内国法人の競争力確保という観点でも、政策目的が
曖昧になっているのではないかと思われる。内外無差別の観点から、内国法人に限定した租
税特別措置を講じることは難しいと思われることから、政策目的及び政策効果を明確にする
という点では、制度の対象となる試験研究費及び委託研究費の支払先を我が国の国内に限
定することも考えられるのではないかと思われる。これによって、研究開発拠点を我が国の国
内に設置する、又は、留まらせる効果が期待できるのではないかと思われる。
また、我が国の研究開発税制は、「税額控除型」を採用しているが、税額控除型では、控
除限度額の計算を要するため、制度適用による効果は、投資時点でははっきりせず、事業
年度が終了するまで、確定しない。政策目的として、研究開発の促進を図るという点では、投
資時点で、その効果が明らかである制度とすることも必要と思われる。諸外国の研究開発税
制を例に挙げれば、フランスの研究開発税制は、未使用の税額控除額は、3 年間の繰越後
に税額還付を受けることができることとされており、研究開発投資時点で、その効果を把握す
ることができるものと考えられる。研究開発投資を行う際に、その効果を把握することができる
とすれば、その効果を享受することを目的に、より積極的な研究開発投資を行うインセンティ
ブになるのではないかと考えられる。
7
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 2 款 米国
第2款
米国
1. 制度の概要(対象となる研究開発の定義を含む)
連邦法人所得税法における研究開発税額控除制度は時限立法であり、2011 年 12 月 31 日
までに支出又は発生した費用について適用される1。
連邦法人所得税において、一定のベース金額を超過した適格研究費に一定割合を乗じた
金額につき、研究開発税額控除が認められる。
原則として、課税年度における適格研究費がそのベース金額を超過した場合には、超過部
分の 20%相当額を税額控除額として使用することができる。なお、過去 3 課税年度における平
均適格研究費の 50%相当額をベース金額として、そのベース金額を超過した適格研究費の
14%相当額を税額控除額とする簡便法も認められている。
1.1. 適格研究の定義
本制度上における適格研究は、連邦法人税法及び規則の中で明確に定義されている:

納税者の事業に関連する活動であり、試験及び実験に用いられる研究開発費用の発生
が伴うもので、原則として、製品の開発及び改良のために行われる活動。

物理学、生物学、機械工学及びコンピューターサイエンスの原理を基にする実験プロセス
(Process of Experimentation)2を活用し、本質的な技術に関わる情報を得ることを目的とし
て行われる活動。

納税者の事業コンポーネント(Business component)3を新たに開発、又は向上させるために
有用な情報を得ることを目的として行われる活動。現存の知識では、事業コンポーネントを
開発するための機能並びに手法、又は事業コンポーネントの適切な設計を確立できない
ことが原因で生じている不確実性を取り除くことを目的として行われる研究(知識発見)もこ
れに該当する。
1
2009 年 12 月 31 日に適用期限切れとなったが、2010 年 12 月 17 日に時限立法延長のための法律が施行され、
2 年間の延長が決定された(2010 年1月1日から施行日までに係る期間について遡及適用される)。
2
実験プロセス(Process of Experimentation)とは、研究活動の初期段階において、その研究結果を得るために必要
な機能並びに手法、又は適切な設計が確実なものとなっていない状況において、研究結果を得るために複数の
代替案を試みるプロセスを指す。
3
ここでいう事業コンポーネント(Business component)とは、自社の事業において販売、賃借、又は使用される製品、
プロセス、コンピューターソフトウェア、技術、フォーミュラ及び発明を指す。
8
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 2 款 米国

実質的に全ての研究活動が適格目的4のための実験プロセスを構成する活動であること。
また、下記に係る活動は、適格研究とはみなされないとされる:

米国(プエルトリコ及び米国領域を含む。)外において行われた研究。

他社により拠出された資金にて行っている受託研究。

事業コンポーネントが既に上市できる状況にある、又は事業コンポーネントの販売や利用
に係る基礎機能並びに経済上の条件を満たした後に行われる研究。

既存事業コンポーネントの特定顧客のニーズへの適用。

既存事業コンポーネントの重複的試験研究。

日常的に行われる品質管理試験及び検査(管理調査、市場調査等)。

社会科学、美術及び人間科学の研究。
ソフトウェア開発活動は適格研究とされるが、自社の利用のために開発されたソフトウェアに
関わる活動については、イノベーションの有無、経済的リスクの有無及び市販の代用商品の有
無などの追加的なテストの対象となり、その結果により適格研究か否かの判断がなされる。
1.2. 適格研究費の定義5
本制度上における適格研究費は、下記のとおり定義されている:

適格研究活動に従事している(直接従事している又はその活動を直接的にサポートしてい
る)従業員の人件費67。
4
適格目的は、新しい又は改良された機能、性能、信頼性及び品質に関連するものであり、スタイル、嗜好、装飾
及び季節的なデザインなどの要素には関連しないものである。
5
適格研究費であるかどうかについては議論が起こることが一般的であり、特別規則及び解釈の差異が多く存在する
ため、その全てについては本レポートに記載しない。
6
適格研究費としてみなされる人件費は、従業員の研究開発活動割合に応じる。ただし、80%以上が研究開発活
動によるものである場合に、その従業員に係る賃金の全額が対象となる。
7
我が国の試験研究費税額控除制度の対象となる試験研究費に含まれる人件費については、「専門的知識をもっ
て当該試験研究の業務に専ら従事する者に係るものに限る」とされているが、「専門的知識をもって当該試験研究
の業務に専ら従事する者」とは、試験研究部門に属している者や研究者としての肩書を有する者等の試験研究を
専属業務とする者や、研究プロジェクトの全期間中従事する者のほか、次のすべてを満たす者もこれに該当するも
のとして取り扱われている(平成 15 年 12 月 25 日:課法 2-27、課審 5-25 通知)。
① 試験研究のために組織されたプロジェクトチームに参加する者が、研究プロジェクトの全期間にわたり研究プロ
ジェクトの業務に従事するわけではないが、研究プロジェクト計画における設計、試作、開発、評価、分析、デー
タ収集等の業務(フェーズ)のうち、その者が専門的知識をもって担当する業務(以下「担当業務」という。)に、当
該担当業務が行われる期間、専属的に従事する場合であること。
② 担当業務が試験研究のプロセスの中で欠かせないものであり、かつ、当該者の専門的知識が当該担当業務
に不可欠であること。
9
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 2 款 米国

適格研究に使用される物品(有形資産)に係る費用。
適格研究費として認められるためには、原則として、費用が実際の事業活動を通じて支出及
び発生しなくてはならず、まだ起こっていない将来の事業活動を予期した費用は適格研究費と
して認められない。しかし、将来の事業活動に使用されることを主目的として支出及び発生した
物品の費用及び研究者に係る人件費は、適格研究費として認められる場合もある。
1.2.1. 外部委託者へ支払う研究費用
適格研究の外部委託者へ支払う費用について、支払費用の 65%相当額は、適格研究費と
して認められる。これには、納税者の代わりに行われる適格研究に係る費用、及び適格研究活
動に従事する自社の従業員以外の者に対する支払いも含まれる。なお、委託者から受領した
委託料については控除しなくてはならないため、実質的に受託側者で発生する費用について
は研究開発税制の対象とならない。ただし、一定の支配関係8があり、かつ委託者が委託費に
つき研究開発税制の適用を受けない場合、受託者は受領した委託料を適格研究費から控除
する必要がないとされている。
1.2.2. 同一支配下にあるメンバー間において生じた研究費用
研究開発税額控除の適用上、支配関係にある全ての事業体(原則として、支配者が米国居
住者であるかどうかに関わらず、同一の者による 50%超の支配関係がある法人、パートナーシ
ップ、遺産財団、信託財団、個人事業)を単一の納税者として取扱う。したがって、この支配関
係にある事業体間で生じた研究費用については、適格研究費が支払費用の 65%相当額に制
限される上記 1.2.1.の規則は適用されない。また、同一の者に支配されている他の事業体によ
って負担された研究費は、適格の研究費として認められる。
③ その従事する実態が、おおむね研究プロジェクト計画に沿って行われるものであり、従事期間がトータルとして
相当期間(おおむね 1 ヶ月(実働 20 日程度)以上)あること。この際、連続した期間従事する場合のみでなく、担
当業務の特殊性等から、当該者の担当業務が期間内に間隔を置きながら行われる場合についても、当該担当
業務が行われる時期において当該者が専属的に従事しているときは、該当するものとし、それらの期間をトータ
ルするものとする。
④ 当該者の担当業務への従事状況が明確に区分され、当該担当業務に係る人件費が適正に計算されているこ
と。
8
原則として、50%超の支配関係にあるか、50%超の株式を保有する共通の親会社に直接又は間接に保有されて
いる場合をいう。
10
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 2 款 米国
2. 最近の動き(改正の動向含む)
2.1. 直近の制度変更
研究開発税額控除に係る制度は、1981 年に導入されてから恒久法として制定されたことはな
く、時限立法の失効、復活を幾度となく繰り返してきた。制度が成立しなかった年は 1995 年及
び 1996 年のみである。なお、本制度は 2009 年 12 月 31 日に適用期限切れとなったが、2010
年 12 月 17 日に施行となった税制改正により時限立法の期限が 2011 年 12 月 31 日に延長さ
れている(2010 年1月1日から施行日までに係る期間について遡及適用される)。
2010 年 12 月の研究開発税制の延長法案の成立から、特に制度変更は行われていない。
2.2. 今後の制度変更
議会は、本制度の 2011 年以降の再延長に向けて積極的な姿勢は見せていないが、これま
での経緯から、特段の理由等がない限り、時限立法の延長は認められるものと見込まれる。
2011 年 2 月、オバマ大統領は、2012 年予算教書(Budget Proposal)の中で、従来と変わらず、
研究開発税制を維持する方針を示した。また、併せて、制度をより魅力的なものにするため、簡
便法による控除率を 14%から 17%に拡大する提案9を行った。しかし、本予算教書に対して、
議会は今のところアクションを起こしておらず、法案等の起案もなされていない。したがって、時
限立法の期限(2011 年末まで)を延長するかどうか、現在のところ、議会ではまだ議論されてい
ないとされている。
3. 税額控除率と計算式(中小企業に関する特例含む)
3.1. 原則法
課税年度における適格研究費の額がそのベース金額10を超過した場合には、超過部分の
20%相当額を税額控除することができる。なお、ベース金額が課税年度における適格研究費
額の 50%を下回る場合、当該適格研究費の 50%相当額がベース金額となる。
9
2012 年度(2011 年 10 月 1 日より適用)を提案した。
ベース金額とは、課税年度の直前過去 4 課税年度の総収入の平均金額に固定比率を乗じた金額であり、固定
比率とは、1984 年から 1988 年までの総収入に対する総適格研究費の割合である。固定比率は 16%が最高比率と
なっている。1984 年以降に初めて、総収入及び適格研究費を計上する会社(新設される会社も含まれる)につい
ては、原則として、当初 5 課税年度は、固定比率として 3%が適用される。6 年目から 10 年目までは、過年度(対象
課税年度により毎年変化する。)の総収入と適格研究費の割合を用いて固定比率が算定され、11 年目以降につ
いては、5 年目から 10 年目までの 6 課税年度から 5 課税年度を選択肢、その期間における総収入に対する総適
格研究費の割合が固定比率となる。
10
11
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 2 款 米国
3.2. 簡便法
簡便法として、前 3 課税年度における適格研究費の平均値の 50%相当額をベース金額とし
て、課税年度における適格研究費の額がそのベース金額を超過した場合には、超過部分の
14%相当額を税額控除する方法が認められる。なお、前 3 課税年度において、適格研究費の
発生がなかった課税期間がある場合には、上記に代わり、課税年度における適格研究費の
6%相当額を税額控除することができる。
3.3. 税額控除額の調整
研究開発に係る税額控除の適用を受ける場合には、下記のいずれかの方法により、税額控
除額に関する一定の調整を受けなければならない。これにより、ほとんどの場合において、税額
控除額は、上記原則法又は簡便法により算出された金額の 65%相当額が限度とされることとな
る。

納税者の課税所得の計算上、税額控除額を損金算入する研究開発費から差し引く

税額控除額の 35%相当額を税額控除額から差し引く
3.4. 中小企業に関する特例
2010 年 9 月 27 日に The Small Business Jobs Act of 2010, Public Law No. 111-240 が施行さ
れ、小企業11について、研究開発税額控除制度の適用が優遇されることとなる。小企業は、次
項で述べる控除限度額の要件が緩和され、通常の法人所得税の約 75%相当額のみが控除
限度額となった。また、繰戻し期間が通常の 1 年間から 5 年間に延長された。この新しい特例
は、2010 年に開始する最初の事業年度のみに適用される。
4. 控除限度額
その年度において控除対象税額とされた金額について、課税年度における納税額の全額と
相殺することはできない。原則として、通常の法人所得税の約 75%相当額、又は通常の法人
税額から暫定ミニマム税額(Tentative Minimum Tax)を差し引いた差額のいずれか小さい額が
控除限度額とされる。
11
小企業とは、前 3 課税年度における年間平均総収入が 5,000 万米ドル未満の非上場法人、パートナーシップ又
は個人企業をいう。
12
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 2 款 米国
5. 繰越し及び繰戻し
未使用の税額控除額の 1 年間の繰戻し及び 20 年間の繰越しが認められているが、還付請
求することは認められていない。
6. 税収(減収)効果
2010 年度の税収額及び研究開発控除の減収影響額は以下のとおり12:
1,914 億米ドル : 2010 年度の法人所得税の総収入から損失繰越還付額を除した額
57 億米ドル : 2010 年度の研究開発税額控除の影響額
毎年、両院税制委員会(Joint Committee on Taxation)及び財務省が、研究開発税制の減収
効果の予測値(税制が恒久措置となった場合を仮定)を発表している。
2010 年初めに発表された、両院税制委員会による 10 年間(2020 年 9 月 30 日までの期間)
の減収効果予測値は、705 億米ドルであり、一方で、財務省の予測値は 826 億米ドルであった。
同じく、2011 年初めに発表された、両院税制委員会による 10 年間(2021 年 9 月 30 日まで
の期間)の減収効果予測値は、876 億米ドルであり、一方で、財務省の予測値は 1,063 億米ド
ルであった。なお、この予測結果は、予算教書で提案された簡便法の適用控除率の引き上げ
(2011 年 10 月 1 日から 14%から 17%に引き上げ)を織り込んでいるとされる。
また、2008 年度における研究開発税制利用企業の統計は、以下のとおり:
制度利用社数
製造業
コンピュータ・電機
電気機器・装置
機械
化学製品
情報通信
科学・技術サービス
卸・小売
その他
合計
5,420社
1,319社
555社
651社
291社
1,132社
3,392社
865社
1,927社
12,736社
12
減収額
5,760百万米ドル
1,800百万米ドル
218百万米ドル
1,489百万米ドル
1,180百万米ドル
944百万米ドル
788百万米ドル
430百万米ドル
378百万米ドル
8,300百万米ドル
出典:U.S. Office of Management and Budget, Fiscal Year 2012 Analytical Perspectives - Budget of the U.S.
Government (February 2011)
13
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 2 款 米国
7. 政策評価等のレポートによる情報13
現行の研究開発税額控除制度に対する最も大きな批判は、制度が時限立法であるということ
である(それゆえに、税制調査会発行のレポートでは、研究開発税額控除制度の恒久化が提
案されている。)。研究活動は何年にもわたって行われることが多く、納税者が研究開発活動の
増加を検討する場合において、将来、税額控除が適用できるかどうかが不透明な状況は、研
究費用の財務上のリスクを増加させることになる。
ベース金額以上の適格研究費用に対してのみ税額控除が適用されるという手法も、近年多く
の企業の適格研究費用がベース金額に達しておらず研究開発税額控除の適用を受けられな
い状況にあることから、優遇措置になっていないという指摘もある。
ベース金額が課税年度における適格研究費額の 50%を下回る場合、当該適格研究費の
50%相当額がベース金額となるため、企業が多額の研究開発費用の追加支出を行った場合で
あっても、実効控除率は、原則法に基づく法定控除率 20%の半分にしかならない。1992 年に
税制調査会が発表した調査報告書では、企業の実効控除率は法定控除率の 20%に対して
25~40%ほど低いとされている(つまり、実効控除率が 12~15%とされている。)。また、ベース
金額の算定にあたり考慮される売上金額について、長期にわたる売上げの伸びは、必ずしも研
究開発の成果に起因するものではないことから、各企業のベース金額は、企業のその時におけ
る実際の適格研究費用とかけ離れたものになってしまう恐れがある。
研究開発税額控除制度に係る管理上及び手続上の負担について、当レポートの中で政府
監査院(Govenment Accountability Office)により発行されたレポートを引用し、研究開発税額控
除の適用可否の判断に当たり、内国歳入庁が企業の研究活動が製品及びプロセスのイノベー
ションに寄与しているかの技術的判断は困難であるとしている。さらに、税額控除の適用方法は、
簡便法を含め複数あるため、納税者にとても負担になっていると報告している。
13
2010 年度予算案に向けて両院税制委員会が発行した「Description of revenue provisions contained in the
President’s fiscal year 2010 budget proposal」(2009 年 9 月発行)から一部抜粋したものである。
14
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 3 款 カナダ
第3款
カナダ
1. 制度の概要(対象となる研究開発の定義を含む)
一定の研究開発活動に係る税額控除制度があり、適格費用の 20%相当額につき研究開発
税額控除制度の適用を受けることができる。
1.1. 適格研究の定義
科学研究及び実験開発(Scientific Research and Experimental Development)に係る活動が研
究開発税額控除の適用対象とされ、広範囲の研究開発活動が科学研究及び実験開発活動に
該当する。
1.2. 研究開発費用
カナダ国内における科学研究及び実験開発活動に伴い生じた費用のみが税額控除の対象
となる。税額控除の対象となる費用(適格費用)は、法人所得税法で定義されており、原則とし
て下記の費用は、適格費用に含まれるとされる:

人件費14

活動中に消費された、破棄された、又は無価値となった材料に係る費用

税額控除対象となる適格科学研究及び実験開発活動を行う委託契約者に対する支払い

企業に代わり科学研究及び実験開発を行う大学及び適格研究機関に対する支払い
(ただし、その科学研究及び実験開発が、企業の事業と関連性があり、かつその研究開発
の結果を有効活用する権利を与えられている場合に限る。)

科学研究及び実験開発に係る装置のリース料及び賃借料

事業に供した年から最初の 2 年間において、少なくとも 50%が科学研究及び実験開発を
目的として購入及び使用される設備(その購入原価の 50%が適格費用の対象となる)

科学研究及び実験開発に使用する目的のみに購入された設備(その購入原価の全額が
適格費用の対象となる。)

一定の間接費
14
適格研究費としてみなされる人件費は、従業員の研究開発活動割合に応じて計算される。ただし、90%以上が
研究開発活動によるものである場合には、その従業員に係る賃金の全額が対象となる。
15
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 3 款 カナダ
1.3. 外部委託者へ支払う研究費用
税額控除対象となる適格科学研究及び実験開発活動を行う委託契約者に対する支払いは
適格費用として認められる。なお、委託者から受領した委託料については、適格費用から控除
しなくてはならないため、実質的に受託側者で発生する費用については研究開発税制の対象
とならない。ただし、当事者間契約が委託契約の形式を取っていない場合には、受託側で研究
開発税制の対象となる可能性もあるが、その場合は委託側で対象とならない。一方で、カナダ
国内からの委託ではなく、海外から委託された研究開発に係る費用については、海外での取
扱いに関わらず、カナダ国内の受託者において研究開発税制の適用が可能とされている。
2. 最近の動き(改正の動向含む)
2.1. 直近の制度変更
研究開発税額控除の新しい申告書(T661)が 2008 年に発表されたのち、諮問を通して協議
された改善案を反映させた申告書及びガイダンスが 2010 年 6 月に発表された。これらは、申
告書及びガイダンスのみの変更であり、研究開発税額控除制度自体の変更ではない。
2.2. 今後の制度変更
税務当局は、研究開発活動及びその費用に係る適切な文書化をより求めていく傾向にある。
なお、今後の制度変更は、特に予定されていない。
3. 税額控除率と計算式(中小企業に関する特例含む)
3.1. 税額控除率と計算式
適格費用の 20%相当額について、税額控除として使用することができる15。
3.2. 中小企業に対する特例
株主の 50%以上がカナダ人である中小企業16は、適格費用の 35%相当額を法人所得税額
から控除することができる。中小企業に納付税額があるか否かに関わらず、税額控除額は全額
15
地方税については、多くの州において、その州内で発生した費用について、上記の税額控除に加え、追加の税額
控除を適用することができる。追加税額控除の率は、州により、4.5%から 17.5%に及ぶ。中小企業の場合には、追加税
額控除の率は、州により 14.5%から 37%に及ぶ。これらの税額控除額は還付できるものものあれば、納付税額と相殺の
みができるものもある。
16
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 3 款 カナダ
還付することができる(資本的支出については、一部が還付可能とされる。)。納付税額がある
場合は、税額控除額を相殺し、余った控除額については還付される。
4. 控除限度額
通常の 20%の税額控除については、控除限度額が設定されていない。一方で、中小企業に
係る 35%の税額控除については、1 年間の控除限度額は、最大で 105 万加ドル17とされている。
つまり、適格費用の 300 万加ドル18を限度として、35%の優遇控除率を適用でき、それを超える
費用に関しては通常の 20%の税額控除率が適用される。
5. 繰越し及び繰戻し
研究開発に係る税額控除額は、課税年度における法人税額と相殺することができ、未使用
分については 3 年間の繰戻し、及び 20 年間の繰越しが認められている。
6. 税収(減収)効果19
2010 年の法人税収は、304 億加ドルであった。2010 年度の研究開発税制による減収効果
(予測)は 40 億加ドルと推定されており、現在のところ実際の減収額は発表されていない。
7. 政策評価等のレポートによる情報20
7.1. 科学研究及び実験開発に係る税額控除に係る経済効果及び経済的利益
財務省が最近公表した調査書上にて、科学研究及び実験開発に関する税額控除に係る経
済効果分析、及びその結果創出されたカナダにおける経済的利益について報告している。
16
研究開発税制に係る中小企業とは、前課税年度の課税所得が 80 万加ドル以下、及び資本に調整を加えた金
額(Taxable Capital Employed)が 5,000 万加ドル未満の法人とされる。
17
中小企業は、適格費用のうち最大で 300 万加ドルを限度として、優遇控除率 35%が適用される(適格控除限度
額 300 万加ドル x 35% = 105 万加ドル)。それを超えた費用は通常控除率 20%が適用され、還付対象とはされない。
前課税年度の課税所得が 50 万加ドル及び資本金等の額が 1,000 万加ドルの場合には、適格費用に係る限度額
は、最大額の 300 万加ドルとされるが、前課税年度の課税所得が 50 万加ドル以上、又は資本金等の額が 1,000
万加ドル以上となる場合には、超えた割合により適格費用限度額が縮減される。適格費用限度額の算出式は、以
下のとおり:
適格費用限度額 = (800 万加ドル – (10 x 課税所得額) ) x (4,000 万加ドル - (資本額 - 1,000 万加ドル) /4000 万
加ドル)
18
脚注 16 を参照
19
出典:2011 年カナダ政府発行「The Budget Plan (June 6, 2011)」 http://www.budget.gc.ca/2011/plan/toc-tdmeng.html
20
最近の諮問文書「科学研究及び実験開発の優遇税制」(2007 年 10 月カナダ財務省により発行)の一部から抜粋
したものである。
17
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 3 款 カナダ
この調査によれば、科学研究及び実験開発に係る税額控除から得られる恩恵は、その対象
企業を超えて他の企業や経済全体に及ぶ経済的恩恵を生み出していると報告している。その
波及効果の額は 1 加ドルの税額につき 46 セントに及び、税額控除として相殺された額(1 加ド
ルの税額につき 36 加セント)よりも大きいとされる。したがって、科学研究及び実験開発に係る
税額控除は、控除額 1 加ドルに対して 1.11 加ドルの経済的総利益を創出し、また、控除額 1
加ドルに対して 0.11 加ドルの経済的純利益を生み出している。この評価は、調査書に記載さ
れた前提により変動するものの、合理的な前提のもと科学研究及び実験開発に係る税額控除
が経済的便益を生み出していることを示している。
18
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 4 款 フランス
第4款
フランス
1. 制度の概要(対象となる研究開発の定義を含む)
1.1. 概要
一定の研究開発活動により生じた費用について、その発生費用の額に応じて 30%(100 百
万ユーロ以下)、及び 5%(100 百万ユーロ超)を乗じた金額の税額控除が認められている。ま
た、新設法人、又は研究開発に係る税額控除の適用を一定期間受けていない法人について
は、当初 2 年間について優遇税額控除率が適用される。
1.2. 研究開発税制の対象となる活動21
研究開発税制の対象となる活動は、“科学技術”に関する調査活動で、基礎調査、応用研究、
試験研究等の活動である。
企業が研究開発税制の適用を受けるにあたり、研究開発活動により創出される無形資産を
保有することは、特に要件として規定されていない。
1.3. 研究開発税制の対象となる研究開発費
研究開発税制の対象となる研究開発費は、基本的に研究開発業務に配分された人的・物的
資源、研究開発外部委託、技術的な考察、特許権及び特許権の保護に関する費用とされる。
研究開発税制の対象となる研究開発費には、下記のものが含まれる:
(1) 自ら創出した又は新たに取得した資産に係る減価償却費で、研究開発活動にのみ直接
的に使用されたもの。なお、ここでいう減価償却費は、税務上、損金算入が可能とされるも
のに限られる。
(2) 研究開発業務に直接従事した研究者及び研究技術者に係る人件費22。
(3) 業務費(人件費の 50%、及び研究開発に用いた資産に係る減価償却費の 75%相当額23。
研究開発活動に係る諸経費が人件費及び研究開発資産の減価償却費に固定率を乗し
て計算される)。
21
研究開発税制の対象となる研究開発の定義を明確にするため、現在、ガイドラインが作られようとしている。
適格研究費としてみなされる人件費は、従業員の研究開発活動割合に応じて計算される。
23
2011 年より業務費の対象及び比率が変更された。
22
19
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 4 款 フランス
(4) 公的な調査機関・大学又は民間の公認調査機関・公認専門家のいずれかに対する研究
開発委託費。
(5) 特許権(デザイン、モデル、商標を除く)又は植物品種保護証の登録・更新・保護に係る費
用。
(6) 特許権及び植物品種保護証に関する訴訟に備えるための支払保険料(6 万ユーロを限度
とする。)。
(7) 特許権及び植物品種保護証の償却費。
(8) 製品の公式な標準化学会への参加費用。
(9) 繊維・衣服・皮革産業に関する特定の費用。
(10) イノベーション技術の動向の調査費用(毎年 6 万ユーロを限度とする。)。
1.4 外部委託費
1.4.1. 外部委託費の額
外部委託費とは、公的な調査機関・大学、又は民間の公認調査機関・公認専門家のいずれ
かに対して委託される研究に係る費用とされる。また、公的な調査機関・大学に対して委託され
る研究費用については、その企業と役務を提供する組織との間で支配関係がない場合には、
実際の費用の額の 2 倍相当額が外部委託費として考慮される。
民間組織に対して外部委託した研究開発費用は、その受託会社(公的団体を除く。)が関連
当局(Ministry for Research)から特別な承認を受けた場合にのみ適用対象とされる。
1.4.2. 外部委託費の対象限度額
民間組織に対する外部委託費は、企業と役務の提供をする組織との間で支配関係がない場
合には、毎年全体として 10 百万ユーロが研究開発税制の対象となる外部委託費の限度額とさ
れる。支配関係が存在する場合には、限度額が 2 百万ユーロに減額される。2011 年より、研究
開発税制の対象となる民間組織に対する外部委託費は、その他の研究開発費の 3 倍を限度と
する新たな上限が追加された。この限度額は、上記限度額(10 百万ユーロ、又は 2 百万ユー
ロ)に到達する前であっても適用される。
公的な研究機関又は大学に対する外部委託に係る研究開発費については、上限額が 2 百
万ユーロ増加して、12 百万ユーロとなる。
20
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 4 款 フランス
なお、2011 年より、第三者から提供されるアドバイザリーサービスに係る費用について制限が
設けられた。アドバイザリーサービスへの対価が、研究開発税額控除を得ることを目的として支
払われるものであった場合、以下のいずれかの方法にて、研究開発税額控除の計算上、研究
開発費から除かなければならないとされる:

法人が取得する研究開発税額控除額の割合に応じてアドバイザリーサービスへの対価が
支払われる成功報酬型の場合は、その全額

以下のいずれか高い金額
- 15,000 ユーロ(税引前金額)
- 適格研究開発費の 5%相当額から補助金収入額を除した額
外部委託費がフランス企業の外国に所在する恒久的施設に配賦されることなく、フランス企
業にのみ帰属する場合には、外部委託を引受ける者は、欧州共同体内に所在する者又はその
他の欧州経済地域に加盟しており、フランスとの間で租税回避等に対抗するための行政支援
条項を含む租税条約を締結している国(アイスランド及びノルウェー)に所在する者でもよいとさ
れる。
また、委託者が次のいずれかに該当する場合には、受託側で生じる委託費用につき、研究
開発税制の適用を行うことができるとされている。

委託者が本制度を適用しない。

法人税の非課税法人である。

税務上のフランス居住者でない。
したがって、企業は EU 国内で発生した外部委託費について、斯かる費用が受託者の所在
する国において損金算入され、受託者の所在する国における研究開発税制の適用を受けてい
る場合であっても、フランスにおいて研究開発税制の適用を受けることができると考えられる。
2. 最近の動き(改正の動向含む)
2.1. 直近の制度変更
フランス政府は、2008 年に研究開発税制の改正を行った。具体的には、控除額の計算方法
を従来の「増加型」+「総額型」24から、「総額型」に一元化し、かつ控除割合が従来の 10%から
大幅に引き上げられた。それにより税額控除制度は、単純化され、より効果的かつ魅力的なも
のとなった。さらに、税額控除の適用対象限度額が拡大され、16 百万ユーロの限度額が撤廃さ
24
改正前において、研究開発税制に基づく税額控除額は、(i)その事業年度に生じた研究開発費の 10%相当額と
(ii)その事業年度の試験研究費と過去 2 年の試験研究費の平均値との差額(増加額)の 40%相当額の合計額とな
っていた。
21
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 4 款 フランス
れて、その適用対象限度額は、法人の研究開発費の 100%とされた。そして、研究開発を行う
全ての企業を支援するために、新制度は研究開発費の額に基づいて計算されることとなり、研
究開発費の 100 百万ユーロ以下の部分に対しては 30%の控除率(適用当初は、初年度は
50%、次年度は 40%が適用される。)が適用され、100 百万ユーロを超える部分に対しては、
5%の控除率が適用されることとなった。
また、2011 年の税制改正において、以下の項目が変更された:

新設法人等への優遇税額控除率の引き下げ(初年度:50%⇒40%、次年度:40%⇒
35%)

営業費用の対象及び比率の変更(人件費:75%⇒人件費:50%及び研究開発に係る資
産の減価償却費:75%)

外注委託費の制限(民間に対する研究開発委託費は、その他の研究開発費の 3 倍を限
度額に設定)

アドバイザリーサービスに係る成功報酬費の制限
2.2. 今後の制度変更
フランス政府は、歳出抑制の一環で、2011 年度の改正において、新設法人等への優遇控除
率の引き下げや、適格研究開発費となる営業費用の計算方法の変更、外注委託費及びアドバ
イザリーサービスに係る成功報酬費の制限の導入等、研究開発税額控除制度の縮小化を行っ
た。今後の改正については、2011 年 5 月に発行された 2009 年研究開発税制評価報告書
(2009 R&D tax credit evaluation report)によると、研究開発税制は 2013 年までは現状のままで
維持される見込みと報告されており、現時点で大幅な変更は予定されていない25。
なお、研究開発税制の対象となる研究開発の定義を明確にするため、現在、ガイドラインが
作られようとしている。
3. 税額控除率と計算式(中小企業に関する特例含む)3.1. 税額控除率
研究開発係る税額控除の額は、研究開発費が 100 百万ユーロ以下の部分には、研究開発
費に 30%を乗じて計算した金額とされる。研究開発費が、100 百万ユーロを超える場合には、
その超える部分について 5%を乗じて計算した金額とされる。
新設法人及び直前の過去 5 年間において研究開発に係る税額控除の適用を受けていない
法人の場合には、適用開始の当初 2 年間については、優遇税額控除率(初年度は 40%、次
25
本評価報告書は 2009 年時のデータを基にして作成されている。
22
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 4 款 フランス
年度は 35%)が適用される。ただし、当優遇税額控除率は、対象となる新設法人を 25%超保
有する株主が、同期間において、研究開発税制の適用を受けており、かつ現時点では事業を
行っていない他の法人株式の 25%以上を保有する、又は保有していた場合には適用されない。
3.2. 税額控除(中小企業26の場合)
中小企業は、一定の条件の下、2006 年 1 月 1 日から 2009 年 1 月 1 日に開始する事業年
度について直ちに還付請求することができたが、現在は中小企業に対する優遇措置はない。
4.
控除限度額
2008 年以降、課税年度の法人所得税を限度とする他は、研究開発税制の控除限度額は規
定されていない。
5. 繰越し及び繰戻し
未使用の税額控除額については 3 年間の繰越しが認められている。3 年間の繰越し後、税
額控除繰越額の残高がある場合には、税額還付を受けることが可能とされる。
なお、未還付法人税は、銀行や金融機関等に対して譲渡することができる。
6. 税収(減収)効果
2011 年度の法人税収は、443 億ユーロであることが見込まれている。また、研究開発税制に
よる減収は 21 億ユーロと見込まれている27。
2009 年度の産業毎の適格研究開発費の支出割合、及び研究開発税額控除を利用している
企業の割合は以下のとおりである28:
26
研究開発税制上の 中小企業とは下記の全てを満たす法人をいう。
(1) フランスの法人所得税が課税されていること
(2) 従業員数が 20 人以上、かつ 250 人未満であること
(3) 年の売上総利益の額が 50 百万ユーロを超えず、又は貸借対照表の合計額が 43 百万ユーロを超えないこと
(4) 25%以上の株式を下記のいずれかの企業に保有されていないこと
1. 中小企業の要件に該当しない企業
2. 自己の株式を他の法人に保有される中小企業に該当する企業
27
出典:2011 年財政法案の添付資料 (The Finance Act Valuation of ways and means” (Evaluation des voies et
moyens) – volume II – tax expenses)
28
出典:2011 年 4 月発行「Report to the French Parliament regarding the 2010 RTC」
23
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 4 款 フランス
適格研究開発費
の支出割合
製造業
医薬
電気・電子
自動車
造船・鉄道・航空
化学・ゴム・プラスティック
機械エンジニアリング
繊維 ・服飾
その他製造業
持株会社等
サービス業
IT 関連
建設エンジニアリング
通信サービス
銀行・保険
研究開発機関
その他サービス
その他業種
合計
70,1 %
15,7 %
16,1 %
10,4 %
7,4 %
5,3 %
3,6 %
2,5 %
9,1 %
0%
28,1 %
9,6 %
8,3 %
1,3 %
1,2 %
0,4 %
7,3 %
1,9 %
100%
制度利用企業の
割合
65,7 %
13,1 %
17,2 %
6,7 %
6,5 %
5,8 %
4,1 %
2,6 %
9,7 %
0%
32,3 %
11,3 %
9,3 %
1,2 %
1,4 %
0,5 %
8,8 %
2,1 %
100%
7. 政策評価等のレポートによる情報
研究開発税制は、研究開発の推進を図るフランス政府にとって最も重要なツールである。実
際、フランスの税制予算の観点上、研究開発に係る税額控除制度により 2009 年において約
62 億ユーロの負担が生じており、2010 年については 45 億ユーロ、2011 年については 21 億ユ
ーロ29の負担が見込まれている。
最近の調査によると、主にこの制度の恩恵を受けているのは、従来から研究開発活動を行っ
ている大企業であるとされており、本税制がフランスにおける研究開発活動の活性化に寄与す
る影響は、限定的なものとなっている可能性も示唆されている30。
フランス国会財政委員会(French National Assembly Finance committee )は、研究開発税額控
除制度に係る調査報告書において、昨今の金融危機によるマイナス影響を認めつつも、2008
年改正時の目標に対して、2009 年の研究開発費が増加したことを明らかにした。また、研究開
29
税制優遇によるフランスの予算への影響を記した「the annex to the 2011 finance bill for 2011, called “voies et
moyens”」の情報に基づいている。
30
フランスの研究開発税制の改善策への取組みを記す「 the Council’s report on compulsory contributions, dated
October 2010」の情報に基づいている。
24
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 4 款 フランス
発分野の雇用増加については、満足な結果が得られたことが報告されている。現在のところ、
2010 年のデータは開示されていない。
25
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 5 款 英国
第5款
英国
1. 制度の概要(対象となる研究開発の定義を含む)
英国にて研究開発を行う企業は、適格研究開発費用の 30%相当額(一定の要件を満たす
中小企業については 100%相当額)を追加の損金算入として所得から控除することが可能とさ
れる。
ただし、当該制度の適用を受けるには、課税年度における 12 カ月間の適格研究開発に係る
支出の総額が 10,000 ポンド以上でなくてはならない31。
1.1. 研究開発の定義
研究開発税制上の研究開発とは、科学技術の発展を目的として実施する事業に伴う活動と
されている。未知なる科学技術を解明することで科学技術の発展に直接的に貢献する活動は
研究開発とみなされ、間接的な活動であっても研究開発活動として認められることもある。
科学技術の発展とは、科学技術の分野における全体の知識及び技能が向上することを意味
する(単一の企業の知識や技能のみに起こりうるものではない。)。これは、科学技術を発展さ
せるために、方法論が確立していない科学技術の他の分野から知識や技能を応用することも
含まれる。
なお、研究開発活動に係る費用としては、従業員の人件費、外部委託者の人件費、消耗品、
光熱費、ソフトウェア、臨床試験参加者への支払い、再委託費用及び資本的支出などがある。
1.2. 適格研究開発費用

直接人件費32
直接人件費とは、研究開発税制の対象となる研究開発に直接的、かつ積極的に従事してい
る経営陣や従業員の人件費とされる。なお、ここでいう人件費には、給与、賞与、雇用者による
国民保険(Class 1 National Insurance)及び年金の負担、並びに経費の払戻しが含まれる。
31
本要件は 2012 年財政法案(Finance Bill)にて撤廃が提案されると予想されている。
適格研究費としてみなされる人件費は、従業員の研究開発活動割合に応じて計算される。通常は、勤怠表等で
管理する必要があるが、勤怠表ない場合は、最良推定による算出も可能であるとされている。
32
26
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 5 款 英国

外部委託者(以下、「EPWs」)に係る費用
EPWs(Externally provided workers)の定義に該当する派遣社員が、研究開発税制の対象と
なる研究開発に直接的、かつ積極的に従事している場合、当該派遣社員に係る費用(人材派
遣費用)は、外部委託者に係る費用として適格研究開発費用としてみなされる。外部委託者の
手配は、必ず人材派遣業者、外部委託者及び派遣先企業の三者間で行われなければならな
いとされる。また、外部委託者は派遣先企業の管理監督下にて作業を行わなければならない。
人材派遣業者が非関連会社の場合、人材派遣業者へ支払われた人材派遣費用の 65%相
当額が適格研究開発費用として取扱われる。一方で、人材派遣業者が関連会社である場合に
は、下記に述べる金額のいずれか小さい額が適格研究開発費用として取扱われる。
-
人材派遣業者に支払われる EPWsに係る適格な人材派遣費用
-
人材派遣業者が EPWsに対して支払った適格な人件費

委託研究開発費用
他の企業に研究開発を委託する場合に発生する委託研究開発費用についても、委託を行う
企業にて、適格研究開発費用として取扱うことが可能とされる。
中小企業においては、委託費用に関して、研究開発税制を適用する際に、上限が課される。
非関連者間における再委託の場合、適格研究開発費とみなされる委託費用は、その費用の
65%相当額が限度とされる。一方で、関連者間での再委託については、上述の EPWs に係る
費用と類似するルールが適用される。
なお、大企業においては、委託費用に関して、研究開発税制の適用は、原則的に認められ
ていない。しかし、その費用が研究開発に関連しており、かつ下記に挙げる者に直接的に引受
けられる委託契約を締結する場合には、適格費用として認められる;
-
英国法によって認められている特定の機関(慈善団体、大学、研究機関等)
-
個人
-
構成員が個人のみのパートナーシップ
したがって、委託者が大企業の場合には、上記に該当する機関、個人等に対して委託を行う
場合を除いて、受託側で生じる研究開発費用については、受託側者側で研究開発税制の対
象となる(中小企業が委託者の場合、委託側で対象となる)。なお、中小企業が受託者の場合
には 130%損金算入の適用を受けることは可能であるが、中小企業向け優遇措置(200%損金算
入)の適用は認められないとされる。
27
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 5 款 英国

消耗品費
研究開発のために直接的に使用される材料及び製品については、広範囲にわたり適格研究
開発費として認められている。

光熱費
研究開発のために直接的に使用される電気、水道、及び燃料は、適格研究開発費として認
められている。なお、光熱費がその他の事業等にも使用されている場合、研究開発に関連する
金額を算定する必要がある(費用配賦の計算方法は定められておらず、各企業の合理的判断
により行われる。)。

ソフトウェア
研究開発のために直接的に使用されるソフトウェアに係る費用は、全て適格研究開発費とし
て認められる(ただし、資本的支出を除く。)。ただし、研究開発に一部のみ使用されるソフトウェ
アについては、その使用に係る割合を計算し、その部分のみが本制度の対象となる。

臨床試験参加者への支払い
臨床試験への参加の見返りとして参加者に対して支払う謝礼金は、適格研究開発費として認
められている。医療の処置や手順の開発に係る人体の調査が臨床試験として定義されている。

適格間接活動(QIAs)
適格間接活動とは、研究開発事業に関連しているものの、研究開発者に対する最も重要な
サポート活動(つまり間接的活動)に限定されており、例として以下の活動が挙げられている:
-
研究開発に関連する間接的なサポート業務に係る活動。例えば、メンテナンス、セキュリ
ティー、管理や事務業務、財務や人事業務など。
-
新しい科学技術の実験、研究及び試験手法を考案するための調査活動(必要なデータ
収集を含む。)のうち、それ自体が研究開発とは認められないもの。
-
特定の研究開発活動の方向性を判断するための実現可能性検証に係る活動。
研究開発に供する活動である限りにおいて、適格間接活動に係る費用は追加損金算入の対
象となる適格研究開発費として認められる33。
33
適格間接活動については、どの範囲まで適格間接活動費として認められるかが不明瞭であり、納税者が適切な
適格間接活動費用を判断するために、非常に時間及びコストがかかっていると考えられている。こういった現状を
踏まえ、英国当局は税制改正に向けたコンサルテーションの中で、適格間接活動費に対する納税者の意見募集
を行っている。
28
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 5 款 英国
1.3. 資本的支出
資本的支出に関しては、一般的に、税務上即時損金算入することができず、税務上の減価
償却(Capital allowance)として損金算入が認められる場合がある(Capital Allowances Act 2001
に規定)。ただし、適格研究開発資産に係る資本的支出については、課税年度に発生した全
額を一括で損金算入することが可能とされる34。
1.4. 適用期限
研究開発費用の優遇措置の適用申請は、原則として、当該費用が発生した事業年度末から
2 年以内に行わなければならない。
2. 最近の動き(改正の動向含む)
2.1. 直近の制度変更
2008 年 8 月 1 日より、中小企業の定義が変更となり、従業員数が 500 名未満(従来は 250
名)で、下記のいずれかを満たす企業とされている:
(1) 年間売上高が 1 億ユーロ以下(従来は 5,000 万ユーロ)
(2) 貸借対照表上の総資産の額が 8,600 万ユーロ以下(従来は 4,300 万ユーロ)
大企業に対する研究開発費用の優遇税制については 2008 年 4 月 1 日に変更となり、追加
の損金算入額は研究開発費用の 30%相当額(従来は 25%)となっている。
中小企業に対する研究開発費用の優遇税制については 2008 年 8 月 1 日に変更となり、追
加の損金算入額は研究開発費用の 75%相当額(従来は 50%)となっている。その後、更に改
正され、2011 年 4 月 1 日以降は研究開発費用の 100%相当額、2012 年 4 月 1 日以降は研究
開発費用の 125%相当額につき、追加損金算入を行うことができるとされている35。
34
Research and Development Allowances と呼ばれる。
本法案は 2010 年 12 月 9 日に発表された 2011 年財政法案(Finance Bill)にて発表され、2011 年 7 月 19 日に
国王裁可(Royal Assent)を経て成立したが、欧州連合承認(State aid approval)を待っている状況にある。欧州連合承
認は、まだ下りていないが、特に問題なく承認されるものと予想されている。
35
29
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 5 款 英国
2.2. 今後の制度変更
上記変更に加え、現在、研究開発税制に係るコンサルテーションが行われており、英国は本
制度の改正につき、積極的な姿勢を示している。しかし、本年末までに、今後の改正に係る内
容については具体的に言及されないと予想されており、次回の改正は早くとも 2012 年以降に
なるのではないかと予想されている。
3. 税額控除率と計算式(中小企業に関する特例含む)
3.1. 税額控除率
大企業は適格研究開発費用の 30%相当額を追加の損金算入として所得から控除すること
ができる。
ただし、当該制度の適用を受けるには、課税年度における 12 カ月間の適格研究開発に係る
支出の総額は 10,000 ポンド以上でなくてはならない。なお、研究開発に係る支出が発生した課
税期間が 12 カ月に満たない場合、本制度の適用を受ける際の研究開発支出の最低限度額
は、日割計算により算出した金額に置き換えられる。
3.2. 税額控除率(中小企業の場合)
中小企業は、現行法上、適格研究開発費用の 100%相当額を追加の損金算入として所得か
ら控除することができる。更に、2012 年 4 月 1 日以降は、研究開発費用の追加損金算入額が
125%相当額に変更される予定である。
ただし、当該制度の適用を受けるには、課税年度における 12 カ月間の適格研究開発に係る
支出の総額は 10,000 ポンド以上でなくてはならない。なお、研究開発に係る支出が発生した課
税期間が 12 カ月に満たない場合、本制度の適用を受ける際の研究開発支出の最低限度額
は、日割計算により算出した金額に置き換えられる。
研究開発費を相殺する課税所得がない場合には、追加損金算入額を含む研究開発費の損
金算入を放棄する代わりに、追加損金算入前の研究開発費に対して 25%相当額の税額還付
(Payable Tax Credit)を選択することができる36。ただし、中小企業に適用される税額還付額は、
36
例えば、100 の研究開発費が発生した場合、追加損金算入額(100%)を含め、200 の研究開発費を放棄する代わ
りに、25 の税額還付を選択することができる。なお、追加損金算入割合が 125%に増えた場合には、24.75%が税額
還付割合になるとされている(225 の研究開発費に対して 24.75 の税額還付となる。)。
30
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 5 款 英国
課税年度における従業員の個人所得税に係る源泉税(以下、「PAYE」)及び国民保険の拠出
額との合計額が限度とされている37。
なお、中小企業には、下記を含む追加のルールが適用される:
(1) 中小企業は、研究開発費用に対し優遇税制を適用する際に、当該研究開発に関連する
知的財産を所有しなければならなかったが、このルールについては 2009 年 12 月 9 日以
降に終了する会計年度については適用が廃止された(つまり、現在は、知的財産保有に
係る要件は必要とされない)。
(2) 中小企業が研究開発を受託した場合において、中小企業が研究開発の受託者として支
出した研究開発費用については、原則として、追加損金算入の適用対象とはされない。た
だし、状況により、中小企業が研究開発受託に関して発生した費用について、研究開発
税制度に基づいて、追加損金算入の対象として認められる場合がある。
4. 控除限度額
欧州の保護政策規則に従い、中小企業の 1 つのプロジェクトに対する優遇税制の適用上限
額は、研究開発費用の金額が 750 万ユーロに達するまでと定められている。
中小企業において税額還付が選択された場合には、税額還付が可能とされる金額は PAYE
及び国民保険の拠出額との合計額が限度とされる。
5. 繰越し及び繰戻し
適格研究開発費用に対する研究開発優遇措置における繰越し及び繰戻しは定められてい
ない。研究開発優遇措置により損失が発生する場合には、通常の法人所得損失としてその損
失を 1 年繰戻し、無制限での繰越し、又は関連者間にて相殺38することができる。
6. 税収(減収)効果
2010-2011 年度の税額控除後の法人所得税の税収は 420.1 億ポンドであり、2008-2009 年
度の研究開発税制の減収効果は 9.4 億ポンドであった(2008-2009 年度の税額控除後の法人
37
税額還付額の制限は 2012 年財政法案(Finance Bill)にて撤廃が提案されると予想されている。
英国では、グループリリーフ制度に基づき、一定の要件を満たす場合には、利益及び損失をグループ企業間で
相殺できることとされている。
38
31
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 5 款 英国
所得税の税収は 430.7 億ポンドであった)。これらは利用可能な最新統計データから入手した
情報である39。
39
出典:英国歳入関税庁(HM Revenue and Customs)ウェブサイト
http://www.hmrc.gov.uk/stats/corporate_tax/table11_1.pdf 及び http://www.hmrc.gov.uk/stats/corporate_tax/rdreceiptsbasis.pdf
32
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 6 款 スペイン
第6款
スペイン
1. 制度の概要(対象となる研究開発の定義を含む)
1.1. 研究開発税制
研究開発活動及びイノベーション技術活動のうち、一定の条件を満たすものは、法人所得税
法上、税額控除制度の適用を受けることができる。
スペインにおける研究開発税制・イノベーション技術税制は、プロジェクト単位で適用され、適
格研究開発プロジェクトで生じる費用は、直接に関連する費用、かつ、他のプロジェクト費用と
明確に区分して管理・記録されている必要があるとされている。
なお、研究開発税制の対象となる適格研究開発プロジェクトは、研究開発活動又はイノベー
ション技術活動のいずれかに該当した場合には、他方に該当することがないとされているため、
制度を併用することはできないとされている。
1.1.1. 研究開発の定義
研究開発税制の対象となる研究、開発及び研究開発活動とは、下記のものとされる:
(1) 新たな知識を探求する調査活動や科学・技術分野の知見を深めるための調査活動(研
究)。
(2) 研究結果の活用や、新たな材料や製品の製造、又は新たなプロセスや生産システム設計
に用いられるあらゆる科学的知見の活用(既知の材料・製品・プロセス・システムを実質的
に改良するために用いられる知識を含む。)(開発)。
(3) ある計画や設計中の新たな製品やプロセスを具体化させる活動や、販売用でないプロトタ
イプの製造、実証確認や試験確認に関わる活動(研究開発活動)。
ただし、それらは産業利用又は商業目的の宣伝活動に使用又は転用されないものとする。
(4) 新製品開発を進めるためのサンプルの収集やデザイン設計及び最新ソフトウェアの構想
設計(研究開発活動)。ただし、それらは新たな定理やアルゴリズムの開発、新言語やオペ
レーションシステムの構築を経た、重要な科学的若しくは技術的進展を伴わなければなら
ない。習慣的、日常的なソフトウェアに関わる活動は含まれない。
33
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 6 款 スペイン
1.1.2. 税額控除額の計算基礎となる研究開発費
研究開発費は、適格研究開発プロジェクトに直接に関連するものであり、実際に使用され、プ
ロジェクト毎に明確に区分して記録しておく必要があるとされている。
税額控除額の計算ベースとなる研究開発費は、課税年度における研究開発費用(人件費40、
原材料費、委託費等)及び研究開発活動に使用された有形固定資産や無形資産への投資の
額(不動産や土地への投資は除く。)とされる41。
納税者において生じた費用(研究開発活動に使用された資産の減価償却費用を含む。)は、
その費用が研究開発に直接的に関連しており、実際にその活動に充てられ、プロジェクトごとに
明確に、かつ他と区分して記録されていれば、研究開発費用としてみなされる。
本制度の対象となる研究開発費用は、スペイン国内、欧州連合の加盟国又は欧州経済領域
内において行われた活動に係るものでなければならない。
また、納税者からの申請によりスペイン国内、欧州連合の加盟国又は欧州経済領域内にて
行われた活動に関して支払われた費用は、納税者により単独で行われたのものであれ、他の
企業と共同で行われたものであれ、研究開発費用とみなされる。
ただし、研究開発活動を奨励するための補助金で同じ課税年度において収益として計上さ
れるものは、税額控除額の計算上、その 65%相当額が、研究開発費用から除かれる。
1.2. イノベーション技術税制
1.2.1. イノベーション技術の定義
イノベーション技術税制の対象となるイノベーション活動とは、新製品又は新たな製造プロセ
ス、並びに既存製品又はプロセスに相当の改善をもたらす技術的発展に寄与する全ての活動
をいう。技術的観点から、それまでの実在する製品やプロセスとは実質的に異なるものであれ
ば、それらは新製品又は新たな製造プロセスとみなされる。
40
適格研究開発費としてみなされる人件費は、従業員の研究開発活動割合に応じる。なお、人事部、IT 部門等の
間接人件費の一部を対象とすることができるとされているが、その配賦割合について妥当性を証明する必要がある。
41
なお、一部の間接費も適格研究開発費として認められる可能性もあるが、その配賦割合について妥当性を証明
する必要があるとされている。
34
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 6 款 スペイン
イノベーション活動には、計画中の新製品又は新たなプロセス、設計等を具体化させる活動
や、販売用でない最初のプロトタイプの製造、実証確認や試験確認に関わる活動が含まれる。
ただし、それらは産業利用又は商業目的の宣伝活動に使用又は転用されないものでなければ
ならない。
1.2.2. 税額控除額の計算基礎となるイノベーション技術費用
イノベーション技術費用は、適格研究開発プロジェクトに直接に関連するものであり、実際に
使用され、プロジェクト毎に明確に区分して記録しておく必要があるとされている。
税額控除額の計算基礎となるイノベーション技術費用は、下記に記載するようなイノベーショ
ン活動のために生じた費用とされる。
(1) 先進技術による問題解決の識別や定義、方向付けを目的とした技術的診断活動(その活
動結果の成否は問われない。)のために生じた費用。
(2) 製品の製造・試験・設置・使用のために必要な記述的要素や技術的な仕様、動作特性な
どを定義することを目的とした計画や図面、メディアの構想を含んだ工業デザインや製造
プロセスエンジニアリングに係る活動のために生じた費用。
(3) パテント、ライセンス、ノウハウやデザインの先進技術の取得に係る活動のために生じた費
用。
納税者の関連者や関係企業に支払われたものに関しては税額控除の対象とならない。
ただし、この項目に係る対象費用は 100 万ユーロを超えないものとする。
(4) ISO 9000 や GMP といったような品質保証規格の遵守証明の獲得に係る活動のために生
じた費用。
ただし、それら規格の導入に係る費用については除く。
納税者により生じた費用(人件費42、原材料費、委託費等)は、その費用がイノベーション活動
に直接的に関連しており、実際にその活動に充てられ、プロジェクトごとに明確に、かつ他と区
分して記録されている場合には、イノベーション技術費用としてみなされる43。
42
適格イノベーション技術費用としてみなされる人件費は、従業員の研究開発活動割合に応じて計算される。なお、
人事部、IT 部門等の間接人件費の一部を対象とすることができるとされているが、その配賦割合について妥当性
を証明する必要がある。
43
なお、一部の間接費も適格研究開発費として認められる可能性もあるが、その配賦割合について妥当性を証明
する必要があるとされている。
35
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第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 6 款 スペイン
イノベーション活動は、スペイン国内又は欧州連合の加盟国内、若しくは欧州経済領域内に
て行われたものでなければならない。さらに、納税者の要求に応じてスペイン国内か欧州連合
の加盟国、若しくは欧州経済領域内にて行われた活動に関して支払われた費用は、単独のも
のであれ、他の企業と共同で行われたものであれ、イノベーション活動の開発とみなされる。
ただし、イノベーション活動を奨励するための補助金で同じ課税年度において収益として計
上されるものについて、その 65%相当額が、税額控除額の計算上、イノベーション技術費用か
ら除かれる。
1.3. 除外規定
下記の活動は、研究開発活動又はイノベーション技術活動としてはみなされず、納税者は税
額控除の適用を受けことはできない。
(1) 重要な科学的又は技術的な斬新さを伴わない活動。特に、日々の活動における製品やプ
ロセスの品質向上、顧客や特定の要求や一時的、季節的変動のために既在の製品やプ
ロセスをそれに適応させること、既在の製品を類似のものから差別化するための外観の変
更やマイナーな変更に係る活動。
(2) 工業生産又は商品及びサービスの提供に係る活動。
(3) 原油やガス、鉱物資源の調査、掘削及び探査活動。
1.4. 外部委託業者へ支払う研究開発費及びイノベーション技術費用
研究開発そのものが外部委託業者に行われるのではなく、調査費用等が第三者に支払われ
る場合には、その費用については適格研究開発費及び適格イノベーション技術費用として取り
扱われる。また、委託者が税務上のスペイン非居住者に該当する場合には、受託側で生じる費
用についても適格研究開発費及び適格イノベーション技術費用として取り扱われるとされてい
る。
36
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 6 款 スペイン
2. 最近の動き(改正の動向含む)
2.1. 直近の制度変更
Royal Decree Law35 (2006)において、2008 年 1 月 1 日以降に開始する課税年度について適
用される研究開発税額控除率が 30%から 25%に、平均値を超えた部分の控除率が 50%から
42%にそれぞれ引き下げられた。また、イノベーション技術税額控除率は 10%から 8%に引き
下げられた。
この法によると、2012 年 1 月 1 日以降に開始する課税年度については研究開発税額控除
の適用を廃止することとしていたが、Royal Decree Law3 (2009)により、廃止されないこととなった。
2011 年 3 月 4 日に施行された経済安定維持法(Sustainability of the economy Law)2/2011
により、イノベーション技術税額控除率が 8%から 12%に引き上げられた。また、研究開発及び
イノベーション技術税額控除の額が、法人所得税額の 10%相当額を超える場合の控除限度
額が 50%から 60%に引き上げられた。
2.2. 今後の制度変更
上記改正後、特に制度変更は予定されていない。
3. 税額控除率と計算式(中小企業に関する特例含む)
3.1. 研究開発税額控除
課税年度において生じた研究開発費用について、25%の率で税額控除が適用される。課税
年度において生じた研究開発に係る費用が前二課税年度の研究開発費用の平均値よりも高
い場合には、その平均値を超える部分の費用の額に関しては 42%の税額控除率が適用され
る。
上記に加え、研究開発活動に専任で従事する適格研究者に係る人件費についても、17%
相当額を税額控除することができる。
研究開発活動のみに使用されることを前提として、不動産を除く有形固定資産と無形資産へ
の投資については、その 8%相当額を税額控除することができる。
37
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 6 款 スペイン
3.2. 技術革新税額控除
1.2.の定義を満たすイノベーション活動は 12%の税額控除率が適用される44。
3.3. 中小企業に関する特例
中小企業に関する特例は特にない。
4. 控除限度額
研究開発及びイノベーション技術税額控除に係る控除限度額は、他の税額控除金額45と合
計した金額が、課税年度において総法人所得税額(所得税額控除及び外国税額控除の額を
考慮した額)の 35%相当額を超えない金額とされる。
ただし、課税年度において発生した研究開発及びイノベーション技術税額控除の額が、上記
の総法人所得税額の 10%相当額を超える場合には、その控除限度額は 60%に引き上げられ
る46。
5. 繰越し及び繰戻し
未使用の控除額については 15 年の繰越しが可能である。
6. 税収(減収)効果47
2008 年度の法人所得税の総税収額は 463 億ユーロ、法人所得税の純税収額(税額控除適
用後税収額)は 311 億ユーロ、及び研究開発税制の減収効果は 3.3 億ユーロあった。また、
2008 年度の法人所得税申告者 502,164 社に対して、研究開発及びイノベーション技術税額控
除を適用した法人は 3,150 社(約 0.6%)であった。
44
2011 年 3 月 4 日に施行された経済安定維持法(Sustainability of the economy Law)2/2011 により、従来 8%だった
控除率が 12%に引き上げられた。
45
法人税法第四章に規定されるその他の税額控除の合計額
46
2011 年 3 月 4 日に施行された経済安定維持法(Sustainability of the economy Law)2/2011 により、従来 50%だっ
た控除限度額が 60%に引き上げられた。
47
索引:経済財務省(Ministry of Economy and Finance) 「Collection and Statistical Study of the Spanish Tax System
1999-2009"(Recaudación y Estadísticas del Sistema Tributario Español 1999-2009)」
38
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 6 款 スペイン
7. その他
納税者は、研究開発及びイノベーション技術税額控除の適用を受けるために、研究開発及
びイノベーション活動の適格性に係る証明書を科学イノベーション省(the Ministry of Science
and Innovation)に求めることができる。
納税者は、研究開発及びイノベーション技術税額控除制度の解釈と適用について、税務当
局からルーリングを取得することができる。
納税者は、研究開発及びイノベーション活動に関連する費用の査定について、事前価格確
認制度の適用を税務当局に申請することができる。
税額控除の対象となる研究開発及びイノベーション技術費用に係る文書並びにその費用と
活動の関連性を証明するための文書は、適切に保管しなければならない。
39
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 7 款 韓国
第7款
韓国
1. 制度の概要(対象となる研究開発の定義を含む)
1.1. 概要
内国法人が各課税年度において研究・人材開発費を支出した場合には、その研究・人材
開発費の一定割合の金額を法人税額から控除することが認められている48。
1.2. 研究・人材開発費の定義
研究・人材開発費とは、研究開発活動及び人材開発活動に伴い発生した費用である。ここ
でいう研究開発活動は、科学的又は技術的な進展のための活動、人材開発活動は内国法
人に所属する役員49又は従業員を教育・訓練する活動とされ、その具体的な範囲は租特法
施行令別表 6 で別途規定している。
研究・人材開発費は、(1)新成長動力研究開発費・源泉技術研究開発費、及び(2)一般研
究・人材開発費に区分され、それぞれの範囲は以下のとおりとされる。
(1) 新成長動力研究開発費源泉技術研究開発費
新成長動力研究開発費源泉技術研究開発費とは、研究・人材開発費のうち、下記のいず
れかに該当する費用(自社技術開発費用のみ該当する)をいう。
① 専任部署で新成長動力産業研究開発業務・源泉技術研究開発業務に従事する研究
員、及びその研究開発業務を直接的に支援する人員に対する人件費
② 新成長動力産業研究開発業務・源泉技術研究開発業務のために使用する見本品、部
品、原材料及び試薬類の購入費
48
韓国租税特例制限法第 10 条(研究・人材開発費に対する税額控除)
対象法人の株主で、法人税法における支配株主及び総発行株式の 100 分の 10 を超過して所有する役員に係
る人材開発費は研究・人材開発費の税額控除対象に該当しない。
49
40
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 7 款 韓国
新成長動力産業及び源泉技術対象技術に該当する分野は以下のとおりである。
区分
分野
LED、グリーン輸送システム、ロボット応用、バイオ製薬医療機器、新再
新成長動力産業
生エネルギー、コンテンツ-SW、新素材ナノ融合、炭素低減エネルギ
研究開発業務
ー、高付加価値食品産業、高度水処理産業等、IT 融合等、11 分野の
62 技術
金属、生産基盤、繊維、エネルギー効率向上、温室ガス、資源、電力、
源泉技術
原子力、知識情報保安、清浄基盤、化学工程、電子タグ・ユビキタスセ
研究開発業務
ンサーネットワーク、 U-コンピューティング、化合物医薬品、宇宙、ディ
スプレー、半導体、造船等、18 分野 48 技術
新成長動力産業及び源泉技術対象技術に係る税額控除は、2012 年 12 月 31 日を適用
期限とする暫定措置として定められている。
(2) 一般研究・人材開発費
一般研究・人材開発費とは、新成長動力研究開発費・源泉技術研究開発費に該当しない
研究・人材開発費、又は新成長動力研究開発費・源泉技術研究開発費に該当する研究・人
材開発費で、新成長動力研究開発費・源泉技術研究開発費に係る税額控除制度の適用を
選択していないものをいう。
一般研究・人材開発費 に係る税額控除は、適用期限は規定されておらず、恒久措置とし
て定められている。
1.3. 第三者、又はグループ内会社に支払った研究開発費用の税額控除の可否
(1) 第三者に支払った研究開発費用
内国法人が第三者に一般研究・人材開発活動を委託して支出した費用のうち、下記に該当
する費用(受託先が租特法施行令別表 6 に定める機関の場合)は、租特法上、適格な研究・
人材開発費として、税額控除の適用を受けることができるとされる。ただし、全社的企業資源
管理設備等、システム開発のための委託費用は除かれる。 なお、新成長動力産業及び源
泉技術対象技術に該当する活動については、委託は認められていない。また、委託側にお
いて、条件を満たす場合に限り適格研究・人材開発の税額控除の適用対象となるため、受
託者側ではその委託に係る適格研究・人材開発の税額控除の適用は認められていない。
41
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 7 款 韓国
区分
費用

以下の機関、及び個人に研究開発役務を委託することによる費用
 高等教育法による大学又は専門大学
 国・公立研究機関及び政府出資研究機関
 科学技術分野を研究する国内外の非営利法人
研究開発
 産業技術研究組合、韓国デザイン振興院等
 高等教育法による大学又は専門大学に所属する個人

職務発明補償金として支出した金額

その他

国内外の専門研究機関、又は大学等への委託訓練費

勤労者職業能力開発法、又は雇用保険法による社内職業能力開発訓
練に伴う費用
人材開発

国家技術資格法による資格検定の受験費用

中小企業に対する人材開発、及び技術指導のための費用

生産性向上のための人材開発費として企画財政部令が定める費用

その他
(2) グループ内会社に支払った研究開発費用
内国法人が、グループ会社に対して支払う研究開発費用を適格研究開発費として税額控
除の適用を受けるためには、内国法人がグループ会社と無形資産を共同で開発、又は保有
するための契約を事前に締結しなければならない。なお、契約書上において、原価費用、及
びリスク分担に係る規定が明記されていることが必要であり、同契約により内国法人が実質的
に負担した金額が、研究・人材開発費の税額控除対象とされる研究開発費用に該当する。
ただし、韓国の国際租税調整に関する法律50第 6 条の 2(正常原価分担額等による課税調
整)により、独立企業間取引における分担額を超過する原価負担額は、税額控除対象金額
から除外される。
2. 最近の動き(改正の動向含む)
2.1. 直近の制度変更
2010 年 1 月 1 日に韓国の租税特例制限法(以下、「租特法」)が改正され、第 10 条に一
般研究・人材開発費に対する税額控除規定に加え、新成長動力研究開発費及び源泉技術
50
国際租税調整に関する法律は国家間の二重課税及び租税回避を防止し、円滑な租税協力を図る目的で制定
された法律である(いわゆる移転価格税制)。
42
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 7 款 韓国
研究開発費(以下、「特定研究開発費」)に対する税額控除規定が新たに追加され、2010 年
2 月 18 日には租特法施行令別表 7 及び別表 8(租特法施行令第 9 条と関連)を新設し、税
額控除対象となる技術が具体的に規定された。
さらに、2010 年 12 月 27 日に改正され、中小企業が成長し大企業になった場合において、
一般研究・人材開発費に係る税額控除率を段階的に引下げる経過措置が導入された。また、
合併、分割、事業譲受渡、現物出資等が発生した法人に係る一般研究・人材開発費の算定
規定などが追加された。
また、2011 年 6 月 3 日、韓国の研究・人材開発費の税額控除に関する規定は、グリーンレ
ース(Green Race)における市場競争力を強化し、グリーンレースを推進する案の一環として、
風力・地熱エネルギー、立体映像、IT 融合等、16 の技術を新成長動力産業分野の対象技
術に追加し、また、次世代新工程ディスプレー製作技術等、3 つの技術を源泉技術分野の
対象技術に追加するよう改正された。
2.2. 今後の制度変更
2011 年 4 月 14 日、大統領主導のもと開催された「新成長動力強化戦略報告大会」におい
て、新成長動力産業における成果の可視化を促進するため、10 の戦略プロジェクトを選定し、
集中支援するという意見が述べられた。同戦略プロジェクトは、第 4 世代移動通信システム、
IT 融合病院、洋上風力発電等、マーケットが急成長することが見込まれる分野を中心に選
定され、2011 年 9 月までに確定される予定である。ただし、同戦略プロジェクトに対する追加
的な優遇税制等が議論されているわけでないため、現時点で同戦略プロジェクトの研究開発
税制への影響は未知数である。
3. 税額控除率と計算式(中小企業に関する特例含む)
3.1. 税額控除(中小企業以外の場合)
(1) 新成長動力研究開発費源泉技術研究開発費
新成長動力研究開発費源泉技術研究開発費の総額 × 20%
(2) 一般研究・人材開発費
下記①又は②のいずれか大きい金額とされる。
① 一般研究・人材開発費に対して下記のうちいずれか小さい割合を乗じた金額
a. 6%
b. 3% + 一般研究・人材開発費/売上高51 × 50%
51
法人における総売上高の額とされる。
43
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 7 款 韓国
② 増加一般研究・人材開発費の額52 × 40%
3.2. 税額控除(中小企業53の場合)
(1) 新成長動力研究開発費源泉技術研究開発費
新成長動力研究開発費源泉技術研究開発費の総額 × 30%
(2) 一般研究・人材開発費
下記①又は②のいずれか大きい金額とされる。
① 一般研究・人材開発費に対して 25%を乗じた金額
② 増加一般研究・人材開発費の額54 × 50%
事業の拡大等により中小企業が大企業になった場合、中小企業向けの優遇税率は適用
できなくなるが、(2)①については、控除比率を段階的に引き下げる経過措置が採られている。
段階措置では、大企業認定を受けた後、初年度から 3 年度目までは「一般研究・人材開発
費に対して 15%を乗じた金額」、4 年度目及び 5 年度目については「一般研究・人材開発費
に対して 10%を乗じた金額」をそれぞれ(2)①として税額控除額を算定することが認められて
いる。
なお、中小企業に該当するかどうかの判断は、年度末基準で行われるが、中小企業猶予
期間規定に基づき、大企業の判定を受けた課税年度のその後 3 課税年度までは、中小企
業としての取扱いを受けることが認められている。例えば 2010 年末に中小企業であった企
業が 2011 年末に大企業との判定を受けた場合には、中小企業猶予期間により 2014 年まで
は中小企業に該当することとなる。したがって、本制度上、大企業として取り扱われる課税年
度は 2015 年となり、2015 年から 2017 年までは 15%、2018 年から 2019 年までは 10%の控
除率が適用される。
4. 控除限度額
研究・人材開発費に係る税額控除は、その課税年度における法人税を限度とする他には、
特に控除を制限する規定はない。
52
増加一般研究・人材開発費の額とは下記の金額をいう。
当期における一般研究・人材開発費の額 -(過去 4 年間の一般研究・人材開発費の総額/4)×月/12
上記の月数は、課税年度が 12 カ月の法人の場合には 12 とされる。
53
ここでいう中小企業とは、租税特例制限法施行令第 2 条に定義される中小企業とされる。なお、中小企業に該
当するか否かは、業種、従業員の数、資本金又は売上高及び実質的な独立性等によって異なることとされる。
54
脚注 50 に同じ。
44
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 7 款 韓国
5. 繰越し及び繰戻し
研究・人材開発費に係る税額控除は、その課税年度の法人税の額を限度とするため、控
除しきれない金額については、5 年間にわたり繰越しすることができる。
6. 税収(減収)効果55
公開されている直近のデータによると、韓国の 2010 年度における法人税収は 34.8 兆ウォ
ンに対し、研究開発税制による減収効果は 1.5 兆ウォンであった。研究開発税制による減収
効果の内訳としては、中小企業以外が 9,195 億ウォンであり、中小企業が 6,250 億ウォンで
あった。
7. その他
上記の研究開発活動に係る税額控除制度の他に、韓国における研究及び人材開発に対
する租税特別措置は、次の制度が設けられている。
租税特別措置
適用期限
概要
研究・人材開発準
備金の損金算入
2013.12.31
研究開発及び人材開発費用に引き当てる準
備金の損金算入を認める制度
研究開発に関連す
る補助金等の課税
特例
研究開発等を目的として補助金を受ける場
2012.12.31 合、区分経理する限りにおいて、当該補助金
を益金不算入とする制度
研究及び人材開発
のための設備投資
に対する税額控除
研究及び人材開発のための施設等に投資
2012.12.31 する場合は投資金額の 10%相当額を税額控
除として認める制度
中小企業が内国法人から特許権等を取得し
2012.12.31 た場合、取得金額の 7%相当額を税額控除と
して認める制度
技術取得金額に対
する税額控除
研究開発特区に入
居する先端技術企
業等に対する法人
税減免
55
-
研究開発特区に入居して一定の事業を営む
場合は、一定期間、法人税を減免する制度
出典:国税庁発行“2010 国税統計年報”
45
備考
但し、2012.12.31
までに先端技術
企業の指定を受
ける企業に限る
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 7 款 韓国
(参考資料)
韓国の税法上、「中小企業」の定義は租税特例制限法施行令第 2 条で規定しており、そ
の内容を簡略に説明すると以下のとおりとされる。
1. 概要
中小企業とは、製造業・鉱業などの中小企業に該当する事業を主な事業として営み(業種
基準)、従業員数・資本金又は売上高範囲基準(規模基準)と所有及び経営の実質的な独
立性(独立性基準)を全て満たす企業をいう。
2. 業種基準
作物栽培業、畜産業、漁業、鉱業、製造業(OEM 方式を含む)、下水・廃棄物処理・原料再
生環境復元業、建設業、卸売及び小売業、旅客運送業、飲食店業、出版業、映像・オーディ
オ記録物製作及び配給業、放送業、電気通信業、コンピュータプログラミング・システム統合
及び管理業、情報サービス業、研究開発業、放送業、広告業、その他科学技術サービス業、
包装及び充填業、専門デザイン業、展示及び行事代行業、創作及び芸術関連サービス業、
職業技術分野学院、エンジニアリング事業、物流事業、受託生産業、船舶管理業、自動車
整備工場を運営する事業、医療機関を運営する事業、観光事業、老人福祉施設運営事業
及び展示事業などが該当するとされる。
3. 規模基準
中小企業として該当する事業を主な事業として営む企業は、常時使用する従業員数、資
本金又は売上高が、中小企業基本法施行令別表 1 において規定される業種別に定められ
た規模基準を満たさなければならない。ただし、常時使用する従業員数が 1,000 人以上、自
己資本が 1 千億ウォン以上、売上高が 1 千億ウォン以上又は資産総額が 5 千億ウォン以上
の場合には中小企業とはみなさないとされる。
46
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 7 款 韓国
▣ 中小企業基本法施行令別表 1
該当業種
規模基準
常時使用する従業員数 300 名未満
製造業
又は
資本金 80 億ウォン以下
鉱業
建設業
運輸業
出版, 映像, 放送通信及び情報サービス業
事業施設管理及び事業支援サービス業
保健及び社会福祉事業
常時使用する従業員数 300 名未満
又は
資本金 30 億ウォン以下
常時使用する従業員数 300 名未満
又は
売上高 300 億ウォン以下
農業, 林業及び漁業
電気, ガス, 蒸気及び水道事業
卸売及び小売業
飲食店業
金融及び保険業
常時使用する従業員数 200 名未満
又は
売上高 200 億ウォン以下
専門, 科学及び技術サービス業
芸術, スポーツ及び余暇関連産業
下水処理, 廃棄物処理及び環境復元業
教育サービス業
修理及びその他サービス業
常時使用する従業員数 100 名未満
又は
売上高 100 億ウォン以下
常時使用する従業員数 50 名未満、
不動産業及び賃貸業
又は
売上高 50 億ウォン以下
47
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 7 款 韓国
4. 独立性基準
中小企業は以下に定める所有及び経営の実質的な独立性要件を全て満たさなければな
らない。

独占規制及び公正取引に関する法律第 14 条第 1 項による相互出資制限企業集団に
属しない会社であること。

直前の事業年度末日現在、貸借対照表に表示されている資産総額が 5 千億ウォン以
上である法人により発行株式総数の 30%以上を直接又は間接的に所有されている企
業ではないこと。
48
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 8 款 中国
第8款
中国
1. 制度の概要(対象となる研究開発の定義を含む)
中国税法上、研究開発費用に係る特別損金算入制度及び先進技術・新技術を有する企
業の研究開発費用に関する優遇税制が設けられている。なお、これらの優遇税制は、それ
ぞれの適用要件を満たす場合には、併用して適用することが認められている。
1.1. 研究開発費用に係る特別損金算入制度
新技術、新製品及び技術プロセスの開発などの研究開発に関して、実際に発生した研究
開発支出に一定割合を乗じた金額を追加で損金算入することが認められている56。
これらの追加損金算入額は、実際に発生した費用の 50%相当額となる(ただし、研究開発
費用を無形資産として資産計上しない場合に限る。)。
なお、無形資産として資産計上をしなければならない研究開発支出については、資産計
上した額の 50%相当額を加算した金額(つまり支出額の 150%相当額)について、10 年以
上の期間にわたり減価償却することが認めらている。
1.1.1. 研究開発費用の定義
国税発[2008]No.116 は、国家重点支援の対象となる先進的技術・新技術の一覧リスト(以
下、「Catalogue」)、及び重点項目高度技術産業開発のガイダンス[2007](以下、「Guide」)に
規定されている要件を満たす研究開発活動を行う企業に対して、追加損金算入の対象とな
る費用について、下記のとおり規定している:

研究開発活動に直接結び付く新製品の設計費用、新技術手順の策定費用、技術書籍
や材料の費用、材料転換の費用

研究開発活動に直接的に使用される材料、燃料、電力の費用

研究開発活動に専任で従事する開発者の人件費57(給与、賃金、賞与、手当、補助金
等)

研究開発活動のみに使用される機械装置や設備の減価償却費用やリース料58
56
新企業所得税法 30 条及び企業所得税法実施条例 95 条
原則的には、専任研究員のみが対象となるが、実務上、他の従業員が合理的に研究活動に寄与していることが
証明できれば、認められる場合もある。ただし、当局のケースバイケースによる判断とされている。
58
原則的には、研究開発活動のみに使用される機械装置及び設備の減価償却費用のみが対象となる。
57
49
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 8 款 中国

研究開発活動のみに使用されるソフトウェア、特許、特許が取得されていない技術など
の無形資産の減価償却費用

製品の中間実験や試験製造のみに使用される金型や技術装置の開発や製造に係る
費用

試掘や開発技術の現地調査に係る費用

研究開発結果の論証、評価、レビュー、承認検査に係る費用
1.1.2. 共同研究開発事業及びグループ間での研究開発事業
共同研究開発事業において、事業参加者は、それぞれの割り当てに応じた研究開発費用
について追加損金算入することができる。また、開発事業を外部へ委託している場合には、
上述の条件を満たす費用につき、委託者は研究開発費用の追加損金算入を行うことができ
るが、一方で受託者は追加損金算入を行うことが認められていない。
グループ間企業にて集約して行った研究開発事業については、発生した研究開発費が上
述の条件を満たす費用である前提の下、研究開発事業を実質的に担っているグループ会社
間で、合理的な方法を用いて開発費を按分し、算出された配賦額につき追加損金算入する
ことができる。
1.1.3. その他
研究開発費用に係る追加損金算入の適用に際し、納税者は、該当する研究開発費用の
妥当性等につき、適切な説明ができる状況にあることが求められる。また、それらの費用は、
特別な詳細勘定にてプロジェクト毎に計上されなければならない。研究開発部門が独立した
部門ではない場合や、研究開発部門が生産活動も併せて行っているような場合には、研究
開発費用は正確に、かつ合理的に算出できるように研究開発費用と生産コストは区分されて
計上されなければならない。もし適切な処理がなされていない場合は、追加の損金算入は認
められない。
研究開発費用の追加損金算入は、年に一回の法人所得税申告の際にのみ使用すること
が認められており、四半期毎の申告においては、当該追加損金算入額を考慮しない金額
(すなわち、実際に発生した研究開発費の金額)を使用する必要がある。なお、中国税務当
局は、研究開発費用及び研究開発費用の追加損金算入額について修正を加える権限があ
り、対象となる研究開発事業に疑念が生じた場合には、研究開発費用の損金算入を適用し
ている企業に対して、科学技術局(the Science & Technology authority)によって発行された
評価書の提出を求めることがある。
50
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 8 款 中国
1.2. 先進的技術・新技術を有する企業(Advanced and New Technology Enterprise)の研究開
発費用に関する優遇税制
国家重点支援対象の適格先進的技術・新技術を有する企業については、法人所得税率
が 15%に軽減される59。
1.2.1. 適用対象企業
国家重点支援対象の適格先進的技術・新技術を有する企業とは、核となる独自の知的所
有権を有している企業で一定の条件を満たすものをいう。その条件には、全従業員に対する
研究開発者の割合が規定された割合を下回ってはならない、売上収入に対する研究開発費
用の割合が規定された割合を下回ってはならない等が含まれる。
その具体的な条件については、国税函[2008]No.172 において、課税年度における適格先
進的技術・新技術を有する企業の全従業員のうち、短期大学以上の学位を持つ技術者が占
める割合は 30%以上でなければならず、かつ研究開発人員が占める割合は 10%以上でな
ければならないと規定されている。また、科学技術の新知識を独創的な方法で使用するため、
又は製品やサービスの抜本的なイノベーションを行うために、科学的・技術的(人類学と社会
科学を除く。)な新知識を会得すること目的とした継続的な研究開発活動を行うことも条件とさ
れている。さらに、直近の 3 課税年度における総売上収入に対する総研究開発費用の割合
は、以下の基準を満たさなければならない:
(1) 企業の直近の年間売上収入が 5,000 万元未満の場合
総売上収入に対する総研究開発費用の割合は 6%以上
(2) 企業の直近の年間売上収入が 5,000 万元以上、2 億元未満の場合
総売上収入に対する総研究開発費用の割合は 4%以上
(3) 企業の直近の年間売上収入が 2 億元以上の場合
総売上収入に対する総研究開発費用の割合は 3%以上
ただし、上述した研究開発費用に関して、総研究開発費用のうち中国国内で発生した費
用が 60%未満となってはならない。また、企業が登記、設立をしてから 3 年未満の場合、上
記の割合は、実際の事業期間における累計数値に基づいて算定される。
59
新企業所得税法 28 条及び企業所得税法実施条例 93 条
51
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 8 款 中国
1.3 研究開発費用の共同負担
非居住者が受領する中国源泉のロイヤルティは、新企業所得税法と企業所得税法実施条
例に基づき、原則として、その総額に対して 10%の源泉税が課される。しかし、グループ企
業による共同研究開発事業において、費用の共同負担に関する合意(以下、「Cost sharing
agreement」)に基づいて行われる中国企業から外国関連企業への研究開発費用の支払い
については、10%の源泉税の対象とはならないとされる。
国税発[2008]No.116 において、研究開発事業に高度な技術、巨額の投資、グループによ
る集約的な開発が必要となる場合には、集約して行った研究開発事業により利益を得るグル
ープ企業において、発生した研究開発費用を合理的な方法に基づき配賦することができると
規定されている。この配賦方法については、Cost sharing agreement に関する法人所得税の
ルーリングの内容に沿ったものでなければならない。
新企業所得税法 41 条と企業所得税法実施条例 112 条において、企業が独立企業間価
格の原則に基づき、関連会社との費用負担を按分する Cost sharing agreement を締結するこ
とが可能であると規定している。費用が企業とその関連会社とで共同負担される場合には、
費用と予測される便益との関連性について明確にされなければならない。
特別税額調整法(the Measure of Special tax Adjustment)65 条により、企業は、無形資産を
共同開発するため、又は保有するために関連会社と Cost sharing agreement を締結する場
合、Cost sharing agreement に関わる全ての関連者は、開発又は譲渡される無形資産の受益
権を有しており、かつ独立企業間価格の原則に基づく適切な費用に対して責任を負うことと
されている。Cost sharing agreement の下で開発、又は取得した無形資産については、その
使用に関して、どの関連者もロイヤルティを支払う必要はない。しかし、ロイヤルティの発生を
避けるために負担費用を平等化しなければならないかについては現在のところ不明瞭である。
上記を踏まえると、多国籍グループが研究開発事業についてクロスボーダーの Cost
sharing agreement を締結する場合、開発された技術に対する知的所有権は、関連企業間に
て共同所有されることになる。開発された技術のライセンス使用に係るロイヤルティを支払う
必要がないという点において、全ての関連者はこの Cost sharing agreement によるアレンジメ
ントから恩恵を受けることができる。
Cost sharing agreement に基づく研究開発活動に係る中国関連企業から海外関連企業へ
費用負担の支払いは、ロイヤルティとしては取り扱われないため、中国の源泉税の対象とは
ならない。
52
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 8 款 中国
研究開発の費用共同負担に係る優遇税制を適用するためには、中国関連企業は定めら
れた書類を国家税務管理局(the State Administration Bureau of Taxation)に提出し、事前承
認を得る必要がある。
2. 最近の動き(改正の動向含む)
2.1. 直近の制度変更
本制度は、2008 年に改正され、追加損金算入の対象となる研究開発費として新たに 8 項
目が追加された。その後の改正は行われていない。
2.2. 今後の制度変更
今後の制度変更は、現時点では特に予定されていない。
3. 税額控除率と計算式(中小企業に関する特例含む)
追加損金算入額は、適格研究開発費用の 50%に相当する額とされる。
国家重点支援対象の適格先進的技術・新技術を有する企業については、法人所得税率
が 15%に軽減される。
4. 控除限度額
特になし。
5. 繰越し及び繰戻し
課税年度において 50%の追加損金算入額が課税所得を超過する場合には、損失を認識
することができ、その損失額は通常の欠損金の繰越しと同様に 5 年間繰り越すことができる。
6. 税収(減収)効果
入手可能な公開データはない。
53
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 9 款 オーストラリア
第9款
オーストラリア
1. 制度の概要(対象となる研究開発の定義を含む)
2011年 7 月より新たに導入された研究開発税制(還付付き税額控除制度)において、適格法
人は、研究開発費の 125%及び 175%といった追加的な損金算入ではなく60、適格研究開発費
用に一定割合を乗じた金額につき、税額控除の適用を受けることができるとされている。還付付
き税額控除制度では、法人の規模に応じて、次のいずれかの税額控除の適用を受けることが
できる。

売上高が 2,000 万豪ドル未満の適格法人に対しては、適格研究費用に 45%を乗じた金
額を税額控除することができる。法人が税務上所得が欠損である場合には、税額の還付
請求をすることが可能であり、45%税額控除の効果は、追加損金算入制度における 150%
の追加損金算入に相当する61。還付額に制限はなく、2013 年からは四半期毎の還付請求
が可能とされている。

上記以外の適格法人に対しては、適格研究費用に 40%を乗じた金額を税額控除すること
ができる。なお、これらの適格法人は、税額の還付請求はできないとされる。40%税額控
除の効果は、追加損金算入制度における 133%の追加損金算入に相当する。
1.1. 研究開発税制の対象となる適格法人(Eligible entities)
新研究開発税額控除制度の適用を受けることができる適格法人は、次の法人とされている。
(1) オーストラリア法人
(2) 税務上のオーストラリア居住法人
(3) オーストラリアと租税条約を締結している国の居住者である外国法人で、オーストラリアの
恒久的施設を通じて研究開発活動を行っている法人
(4) 法人を受託者とする上場事業信託(Trading trusts)
従来の研究開発税制に比べて適用対象となる法人が拡大している。特に、オーストラリアに
恒久的施設を持つ外国法人に対しても、国内法人との差別なく利用することができる。これは、
外国法人の研究活動をオーストラリアにより誘致するために有効に作用すると考えられている。
60
還付付き税額控除による研究開発税制が導入される以前は、適格研究開発費の 25%相当額を追加損金算入
する損金算入型の研究開発税制が適用されていた(過去 3 年間の平均研究開発費を上回る部分について、50%
相当額の追加損金算入が認められている増加型の制度も併用されていた)。
61
税額控除制度:45% - 30%(オーストラリア法人税率) = 15%
損金算入型税額控除: 50%(追加損金算入額) x 30%(オーストラリア法人税率) = 15%
54
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 9 款 オーストラリア
1.2. 適格研究開発活動
新制度では、研究開発活動を「コア活動(Core activities)」と「補助活動(Supporting activities)」
に分類する必要があるとされている。
(1) 「コア活動」は次のとおりである。

既存の知識、情報及び経験では知り得ることのできない成果物を求める実験活動であ
り、確立した科学原理を基にした作業、及び仮説検証から実験、観察、評価を行うこと
で論理的結論を導くための作業を体系的に発達させることで成果物を得る実験活動

新しい知識(新しい(又は改良された)材料、製品、機器、プロセス又はサービスを含
む)の獲得を目的として行われる実験活動
(2) 「補助活動」は、「コア活動」に直接関連する活動である。
(3) 例外リストに記載のある活動は、「コア活動」としては認められず、「コア活動」のサポートが
主たる目的として行われる場合のみ「補助活動」に含むことができる。
(4) 製品の生産及び役務提供に関連する活動は、「コア活動」のサポートが主たる目的として
行われる場合に限り、「補助活動」に含めることができる。
(5) 自社利用を目的とするソフトウェアに係る研究開発活動は、本制度の適用対象外となる。
(6) 供給原料に係るルールは、現行の研究開発税制に定められているルールと同様である。
(7) 新研究開発税額控除制度においては、研究開発活動に係る無形資産がオーストラリア国
内にあるかは考慮されず、どこで、誰のために研究開発が行われ、その法人がどこで設立
された法人であるかが考慮される。
1.3. 研究開発税制の対象となる研究開発費の定義
適格及び非適格研究開発費は、ガイドラインおいて下記のとおり定義されている。
適格研究費としてみなされる費用については、以下の費用が挙げられている:
(1) 適格研究開発活動のために支出される、人件費(直接及び間接)、光熱費(電気及びガス
等)等の適格間接費、適格材料費(試算品を含む)、委託に係る費用(研究開発税制の適
用を行う法人が知的所有権及び経済的なリスクを有している必要がある)
(2) 研究開発活動に用いられる償却資産の減価償却費
(3) 業務関係者に対する費用で、前年度に発生したが、当年度に支払ったもの(制限あり)
(4) 適格研究開発活動を行う研究開発パートナーシップが支払った費用で、そのパートナー
持分に応じて負担するもの
(5) 共同開発センタープログラム(Cooperative Research Centre Program)に対する金銭出資
55
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 9 款 オーストラリア
適格研究開発費としてみなされない費用については、以下の費用が挙げられている:
(1) 建物の取得費用及び建設費用(建物の一部、建物の拡張・改造・改良を含む)
(2) 有形償却資産の取得費用
(3) 支払利子
(4) コア技術の獲得費用
(5) リスクを伴わない費用(契約及び補償により研究開発に対する報酬が保証されている場合
等)
以下の各項目の詳細情報は、主にオーストラリア課税当局から発行されている研究開発費に
係るガイド(“Guide to the R&D Tax Concession Part C – Expenditure on Research and
Development (June 2008)”)から引用・抜粋したものである。
1.3.1. 委託契約に基づく費用
委託契約に基づく費用とは、公認調査機関(“Registered Research Agency”、以下「RRA」)とし
て認証された組織が、法人に代わり研究開発活動を行った場合において、法人が公認調査機
関に対して支払った費用をいう。
委託契約に基づく費用が、適格研究開発に関連するものであり、かつその他の要件を満た
す場合には、2 万豪ドルの最低支出基準の適用を受けず、自動的に割増控除の適用が認めら
れる。
委託に係る研究開発活動は、委託契約に基づく費用を負担している法人が運営している又
は運営することを予定している事業に直接関連するものであり、その研究開発活動の結果につ
いて、委託法人が、有効に活用することができる、又は有効に活用することが計画されているも
のでなければならない。
ただし、法人は、研究開発活動の委託先が RRA に限られているわけではなく、研究開発活
動の一部又は全部を RRA ではない個人、法人、又はその他の団体に委託することができる。
しかし、その委託先が RRA に該当しない場合には、委託に係る発生費用は、この項目で定義
されている“委託契約に基づく費用”ではなく、下記の 1.2.3“その他の費用”として取扱われる。
RRA に該当しない機関への研究開発に係る委託・外注については、下記 1.3.で詳しく説明し
ている。
56
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 9 款 オーストラリア
1.3.2. 人件費
人件費は、適格研究開発に直接要した費用で、研究開発に従事している下記の従業員に係
る給与、報酬、職務手当、賞与・時間外/休日/深夜勤務手当、年次有給休暇、病欠又は長期
休業手当、退職年金への拠出金、給与税、並びに社会保険料等である。

新知識又は新製品の考案・創出に従事する研究者

記録管理、チャート及びグラフの作成、機械装置の操作、コンピュータープログラムの入力
等の研究開発活動をサポートする技術職に従事する従業員

研究者及び技術職の従業員の監督者
1.3.3. その他の費用
研究開発税制における“その他の費用”は、次に掲げる“研究開発活動に直接関連する費
用”に限られる。“研究開発活動に直接係る費用”として認められるかどうかについては、個々の
事実関係に基づき、個別の判定を要する。
次に掲げる管理費及び経費は、研究開発活動に“直接関連する費用とされる。

適格研究開発活動に対してその費用の全部又は一部が寄与していると認められるもの。

その費用支出を行わない場合、適格研究開発活動に著しい支障を来すと認められるもの。
下記の費用は、一般的な取扱いとして、適格研究開発事業に関連するものとされる。

清掃費

消耗品費(研究開発活動に使用されるオイル、グリース(潤滑油)、生地等)

水道光熱費

研究開発活動に係る支払保険料(ただし、収益保証、製品損害賠償責任保証、又は完成
済の製品に係る保険は、適格研究開発活動に関連する費用とされない。)

事務用設備のリース料

人件費

郵送料

印刷費及び事務用品費

固定資産税

人員採用費

研究開発のために使用される建物の支払賃借料
57
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 9 款 オーストラリア

研究開発のために使用される建物の修繕費

清掃員、タイピスト、監督者等の適格研究開発のサポート業務を行う従業員の給与及び関
連費用

警備費

事務用品費

業界誌及び技術専門誌の定期購読料

通信料

トレーニング費用
非適格研究開発費は、適格研究開発活動に直接関連しない費用で、具体的には次の費用が
含まれる。

製品等の広告宣伝費

監査費用

貸倒損失

会社の設立費、及び会社の運営に関する会社法上のその他の費用

税務申告書の作成費用

償却資産の減損

役員報酬

販売促進費

寄附金

福利厚生費(飲食・レクリエーション等)

交際費

製造間接費

土地及び庭園の維持費用

収益保証や製品損害賠償責任保証等の研究開発に関連しない支払保険料

適格研究開発の調査プロジェクトに関連しない弁護士費用(以前のプロジェクトに関する
特許権の調査又はプロジェクト遂行後の特許権の取得等に係る弁護士費用)

新製品又は新技術、研究開発活動のマーケティングに係る特許権及び商標権等

研究開発に関連しない不動産に係る支払賃借料

研究開発に関連しないサポート業務を行う従業員の給与、及び物流、販売、マーケティン
グ、及び債権回収等の業務に従事する従業員の給与

賠償金
58
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 9 款 オーストラリア
1.4. 納税者が研究開発活動を第三者又は関連会社に委託・外注した場合の研究開発費の
取扱い
上記 1.2.1.のとおり、研究開発活動の一部又は全部を個人、法人、又はその他の団体に委
託した場合においても、“on own behalf”の要件を満たした場合には、研究開発税制の適用を受
けることができる。
“on own behalf”の要件とは、オーストラリア課税当局により研究開発税制の適用の重複を防ぐ
ために創設された。この要件がない場合、同一の研究開発プロジェクトについて、研究開発活
動を委託する法人と受託する法人の両法人が、それぞれ研究開発税制の適用を受ける可能
性が出てきてしまう。
“on own behalf”の要件を満たすためには、研究開発を委託する法人は下記の要件を満たす
必要がある。

研究開発プロジェクトに関する経済的なリスクを負担すること。

研究開発プロジェクトの管理をすること。

研究開発プロジェクトの結果を実質的に保有すること。
上記における管理、経済的リスク及び所有権について、実質的に欠落があるアレンジメントに
ついては、委託法人の代わりに研究開発が行われなかったものとされる。
“on own behalf”の要件は、形式的ではなく、実質的に満たすことが必要となる。法人の研究
開発活動が自己又は委託先にて代理で行われたか否か、及び当該法人が他者の代理で研究
開発研究開発を行うことにより支出が発生しているか否かについて、事実関係に基づいて判断
がなされる。その結果は、実態に基づく個別の状況に応じることとなり、特定の個別事例の結果
は、他の事例において常に準用することはできない。したがって、事例は個々の状況に応じて
最終的に判定していくことになる。
2. 最近の動き(改正の動向含む)
2.1. Review of the National Innovation System
2008 年に実施された Review of the National Innovation System は、次に掲げる提言について
述べている。
59
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 9 款 オーストラリア

現在の研究開発税制をより簡易的に、かつ、より予測可能なサポート構造とすることにより、
現在の研究開発税制(追加損金算入型)を 2 層形式の税額控除制度に変更し、事業上の
研究開発費の額を増加させること。

研究開発の結果に係る知的財産がオーストラリアで保有されるか否かに関わらず、オース
トラリアにおける全ての適格研究開発に対して研究開発税制(税額控除)の適用を認める
こと。研究開発のグローバル性、及び多国籍企業が技術、能力及び市場シェアの獲得の
ため国境をに関係なくグローバルに活動していることを鑑みれば、適格性の要件とされて
いる知的財産の保有は、適当でないと考えられる。

175%プレミアム優遇措置は、時間をかけて研究開発費用の支出を増加させている法人を
優遇する意図にも関わらず、制度が複雑なため、潜在的な便益の試算が困難で、研究開
発費の増進に対して影響を与えていない。
2.2. National Innovation Review に対するオーストラリア政府の見解と新研究開発税額控除制
度の導入
オーストラリア政府は、これらの提案事項のいくつかを受け入れ、研究開発に係る新しい税額
控除制度に係る法案を提出した。法案は、2011 年 8 月 24 日に可決され、新しい研究開発制
度である還付付き税額控除制度(オーストラリアでは R&D Tax Incentive と呼ばれている)は、
2011 年 7 月 1 日に遡及して適用されることとなった。
2.3. 制度変更による潜在的影響
オーストラリア政府によると、新研究開発税額控除制度は、現在の制度に比べ、簡素で平等、
かつより利用しやすい制度になることを見込んでいる。本制度の重要なポイントは以下のとおり:

売上規模が小さい法人については、新研究開発税制が導入されることにより大きなメリット
があるとされ、特に欠損法人については、研究開発費の 45%相当額が、還付制限なく還
付されるため、非常に大きなメリットがある。

現行の研究開発税制の対象外の法人である無形資産をオーストラリア国外に所有する法
人、及びオーストラリア国内で研究開発活動を行う外国法人についても、新制度の適用対
象に含まれる。

適格研究開発活動に該当するかどうかが不明瞭な場合、Innovation Australia62が既に調査
した事例であればそれを参照することで、該当可否の判断の確実性を高めることが可能と
される。
62
オーストラリア政府による、産業イノベーションを援助するためのイノベーション及びベンチャーキャピタル制度の
管理をサポートするために設立された独立機関
60
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 9 款 オーストラリア

製品の製造及び役務提供に係る「補助活動」について、多額の支出を行うことで、現行の
研究開発税制の恩恵を享受しているような大企業は、制度変更により、得られる恩恵が減
少する可能性がある(例、試掘活動等の「補助活動」を行っている鉱業業界、及び建設業
界などは制度変更により、従来より恩恵が減ってしまう可能性がある。)。

研究開発税額控除の整合性を維持・確認するため、税務当局による税務調査が増える可
能性がある。

従来にも増して、文書化及び証拠書類の完備が求められるとされる。特に 45%の還付付
き税額控除を利用する法人、及び(又は)研究開発費が多い法人は留意が必要である。
3. 税額控除率と計算式(中小企業に関する特例含む)
3.1. 税額控除率
中小企業以外の適格法人に対しては、40%の税額控除制度が適用される。税額の還付請
求はできないとされる。40%税額控除の効果は、追加損金算入制度における 133%の追加損
金算入に相当する。
オーストラリア法人税(30%)を考慮すると、40% - 30% = 10%相当額が、実質的に優遇される税額
控除額となる。
3.2. 税額控除率(中小企業の場合)
売上高が 2,000 万豪ドル未満の適格法人に対しては、45%の税額控除制度を適用する。法
人が税務上所得が欠損である場合には、税額の還付請求をすることが可能であり、45%税額
控除の効果は、追加損金算入制度における 150%の追加損金算入に相当する。還付額に制
限はなく、2013 年からは四半期毎の還付請求が可能とされている。
オーストラリア法人税(30%)を考慮すると、45% - 30% = 15%相当額が、実質的に優遇される税額
控除額となる。還付の場合は、45%相当額が還付される。
4. 控除限度額
研究開発税制に関する控除限度額はない。
5. 繰越し及び繰戻し
税務上所得が欠損である場合には、未使用の税額控除額を無期限に繰り越すことができる。
また、中小企業に対する優遇措置により、45%の税額控除制度を適用する中小企業は未使用
61
海外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 1 節 研究開発税制に関する調査結果
第 9 款 オーストラリア
の税額控除額を還付することができるとされている。ただし、中小企業以外の法人については、
還付は認められていない。
6. 税収(減収)効果63
2011 年度の法人税の税収予想額は 579 億豪ドルであり、同年度における研究開発税制に
よる減収効果予想額は 16.5 億豪ドルである。2012 年度の法人税の税収予想額は 746 億豪ド
ルとされ、同年度における新研究開発税額控除制度による減収効果予想額は 17.1 億豪ドルと
見込まれている。
63
出典:税収額は「Federal Budget Papars/Table 2012」、減収予想額は「2012 Government Budget Table (Special
appropriations and other measures)」
62
外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 2 節 研究開発税制に関する個別確認事項に係る調査結果
第 1 款 米国 / エネルギー研究コンソーシアム特例に係る詳細調査
第 2 節 研究開発税制に関する個別確認事項に係る調査結果
第1款
米国 / エネルギー研究コンソーシアム特例に係る詳細調査
1. 概要
エネルギー技術開発インセンティブ強化のため、米国研究開発税額控除制度の一部として
規定されている「エネルギー研究コンソーシアムに対する支出費に係る取り扱い(内国歳入法
(以下「IRC」)41 条(f) (6)に規定)」につき、貴省からの個別調査依頼事項に基づき調査を行い、
回答を以下のとおりまとめた64。
2. 質疑事項に対する回答
IRC41 条(f)
(6) エネルギー研究コンソーシアム
(A) (税制)適格とされるエネルギー研究コンソーシアムの要件:
(i)
当該研究コンソーシアムは、専ら(primarily)エネルギー研究を行うために組織され、運営され
る IRC501(c)(3)に基づく非課税団体、
又は、専ら(IRC501(c)(3)の範囲内の)公益に基づくエネルギー研究を行うため組織され、運
営される団体
-------------------------------------------------------------------------------2.1.
前者65は、告示等により明らかにされているのか、明らかにされている場合、そのリスト
IRC41 条(f)(6)(A)(i)(I)に定めらているエネルギー研究コンソーシアムについて、一般公開さ
れているリストはないとされる。IRC 501 条(c)(3)によって定められている非課税団体について
はリストが公開されている(下記 URL 参照)が、このリストではどの非課税団体がエネルギー
研究を行っているか、又は IRC41 条(f)(6)(A)(i)(I)の対象となる団体であるかは明記されていな
い。http://www.irs.gov/charities/article/0,,id=96136,00.html
64
制度概要に係る日本語訳及び質問事項については貴省から受領した原文を流用しており、特に修正等は行っ
ていない。
65
IRC41 条(f)(6)(A)(i)(I)に規定される「専ら(primarily)エネルギー研究を行うために組織され、運営される
IRC501(c)(3)に基づく非課税団体」
63
外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 2 節 研究開発税制に関する個別確認事項に係る調査結果
第 1 款 米国 / エネルギー研究コンソーシアム特例に係る詳細調査
2.2.
後者66の「(IRC501(c)(3)の範囲内の)公益」の意味するところは具体的に何か。また、具体的
組織が明らかにされている場合、そのリスト
IRC501 条(c)(3)において、下記条件のいずれかを満たす研究は、公益に基づく研究とみな
される:

その研究結果(知的財産を含む)が一般に公開され、誰でも利用可能であること

その研究が、米国、米国政府系機関、州及びその他の地方自治体のために行われる
研究であること

公衆に直接的に恩恵を与える研究であること。例として、本条件を満たす科学研究は、
以下のとおりである:
-
大学における科学教育をサポートする目的で行われる研究
-
論文、業界誌又はそれ以外の一般に開示される媒体を通して、研究成果を公表
することを目的として行われる研究
-
産業誘致又は既存産業の維持、発展により、地域を活性化させること目的として
行われる研究
反対に、以下の例は、公益に基づく研究とはみなされないとされる:

直接間接問わず、その団体の設立者であり、かつ IRC501 条(c)(3)に規定されている非
課税団体に該当しないもののために行う研究

直接又は間接を問わず、研究の結果から得られた知的財産の所有及び管理を実質的
に継続しており、その知的財産を一般に公開せず、誰でも利用可能な状態にしていな
い場合。ただし、仮にその知的財産の使用権をある一者にのみ提供した場合であって
も、それが公益のために利用される唯一の手段である場合には、公益に基づく研究とみ
なされる
IRC41 条(f)(6)(A)(i)(I)と同様に、IRC41 条(f)(6)(A)(i)(II)についても、特に一般に公開されてい
るリスト等はないとされている。
66
IRC41 条(f)(6)(A)(i)(II)に規定される「専ら(IRC501 条(c)(3))の範囲内の)公益に基づくエネルギー研究を行うため
組織され、運営される団体」
64
外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 2 節 研究開発税制に関する個別確認事項に係る調査結果
第 1 款 米国 / エネルギー研究コンソーシアム特例に係る詳細調査
2.3.
前者の場合の非課税団体認定、又は後者に該当するという団体認定は、具体的には、何れ
の行政機関が、何れの法令に基づいて行うのか
原則として、IRC501 条(c)(3)に基づく非課税団体であるかどうかは、内国歳入局(Internal
Revenue Service「以下、当局」)によって判断される。非課税団体として認められるには、様式
102367を当局に提出して申請する必要がある。一方で、IRC41 条(f)(6)(A)(i)(II)に基づく団体に
ついては、特に定められた提出様式はないが、ルーリングにより対象団体かどうかの確認を
行うことができる。IRC501 条(c)(3)に基づく非課税団体及び IRC41 条(f)(6)(A)(i)(II)に基づく団
体については、いずれも税法上に定義される団体であるため、IRC 及び Income Tax
Regulations に基づき当局が判断するものとされる。
-------------------------------------------------------------------------------IRC41 条(f)
(6) エネルギー研究コンソーシアム
(A) (税制)適格とされるエネルギー研究コンソーシアムの要件:
(ii)
営利基金(private foundation)ではないこと
-------------------------------------------------------------------------------2.4.
private foundation の定義、IRC その他法令に定義付けされているか
IRC509 条(a)によって定義されており、IRC501 条(c)(3)に基づく非課税団体で、以下に該当
しない団体が private foundation であるとされている。

IRC170 条(b)(1)(A)(i)-(vi)に該当する団体。例えば、公共団体(教会、学校、病院等)及
び、公的支援を受けている団体(その運営基金の 1/3 以上を公衆からの寄付、補助金
等で成り立っている団体)等がこれに含まれる。

上述した公共団体及び公的支援を受けている団体等をサポートする目的で設立、運営
された組織68で、一人又は複数の非適格個人69に直接又は間接に支配されている組織

67
公共安全管理を評価する組織
Application for Recognition of Exemption Under Section 501(c)(3) of the Internal Revenue Code
68
上述する団体の機能を担う、団体の目的沿って行動する、又は団体の便益のためだけに設立・運営される組織
を指すとされている。
69
IRC 4969 に定義
65
外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 2 節 研究開発税制に関する個別確認事項に係る調査結果
第 1 款 米国 / エネルギー研究コンソーシアム特例に係る詳細調査
2.5.
Cコーポレーションは、一般的に、private foundation であるのか
IRC501 条(c)(3)で規定されている法人以外は、原則的には private fuondation には該当し
ない。
2.6.
SEMATEC70は、private foundation なのか否か
SEMATEC は、IRC501 条(c)(6)に規定されている非課税取引団体に該当する。しかし、IRC
501 条(c)(3)に該当する組織ではないため、Private foundation には該当しない。
-----------------------------------------------------------------------------IRC41 条(f)
(6) エネルギー研究コンソーシアム
(A) (税制)適格とされるエネルギー研究コンソーシアムの要件:
(iii)
当該組織の一課税期間中において、利害関係のない者が、最低 5 人資金拠出(paid、
incurred、contribution)していること
-----------------------------------------------------------------------------2.7.
「利害関係のない者」の定義
一般的に、一方の事業体(法人、パートナーシップ、信託、遺産財団)が他方の事業体の
議決権株式の総数又は株式総価値の 50%超を有している場合には、その 2 者は米国税法
上の関連者とみなされる。また、共通の親会社により、ある事業体の持分の 50%超が所有さ
れており、当該共通親会社又はその他の関連者により 50%超を直接又は間接に保有される
事業体により構成されるグループ会社も、関連者とみなされる。その他に、5 以下の共通の個
人、信託、又は財団法人により 80%以上所有されるグループ会社も、関連者とみなされる。
これらの関連者の定義に該当しない、非関連者(又は利害関係のない者)として取り扱われ
る。
70
正式名称は SEMATEC Inc. 。半導体製造技術の研究を行うコンソーシアム
66
外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 2 節 研究開発税制に関する個別確認事項に係る調査結果
第 1 款 米国 / エネルギー研究コンソーシアム特例に係る詳細調査
2.8.
paid、incurred、contribution の会計的相違如何。我が国技術研究組合法における組合員か
ら組合に対する賦課金と同一のものはあるか
税務上の観点では、実際に金銭等を支払った場合(paid)、金銭は支払っていないが支払
い義務等が生じている場合(incurred)又は出資を行った場合(contribution)に分けられる。上
記の規定は、税務上の取扱いに関わらず、コンソーシアムが受領する全ての金銭及び出資
等を含むことを意図していると考えられる。したがって、基本的には賦課金の概念に全て内
包されるものと考えられる。
-----------------------------------------------------------------------------IRC41 条(a)
一般規則
エネルギー研究税額控除額の計算においては、増加型或いは基礎研究税額控除の計算と
は別に行う。
-----------------------------------------------------------------------------2.9.
税額控除限度額はないという理解でよいか。
エネルギー研究コンソーシアムに対する支出についても同様に税額控除限度額があり、下記
のいずれか小さい金額が限度額となる。
①法人税額の 75%
②法人税額から暫定ミニマム税額(Tentative Minimum Tax)を差し引いた金額
なお、上記税額控除制限は、IRC41 条で規定されている研究開発税額控除だけでなく、
IRC38 条で規定される一般税額控除と合算した控除額に適用される。
67
外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 2 節 研究開発税制に関する個別確認事項に係る調査結果
第 2 款 韓国 / 新分野及び新技術の研究開発に係る特例に関する実体調査
第2款
韓国 / 新分野及び新技術の研究開発に係る特例に関する実体調査
1. 概要
2010 年 1 月 1 日に韓国の租税特例制限法(以下、租特法)が改正され、第 10 条に一般研
究・人材開発費に対する税額控除規定に加え、新成長動力研究開発費及び源泉技術研究開
発費(以下、特定研究開発費)に対する税額控除規定が新たに追加され、2010 年 2 月 18 日
には租特法施行令別表 7 及び別表 8(租特法施行令第 9 条と関連)を新設し、税額控除対象
となる技術が具体的に規定された。その後、2011 年 6 月 3 日、租特法施行令別表 7 及び別表
8 に 税額控除対象となる技術が追加されている。特定研究開発費に対する概括的な内容は、
以下のとおりである。
(1) 適用期間:2010.1.1~2012.12.31
(2) 適用対象

新成長動力産業分野別の対象技術(11 分野、62 技術)

源泉技術分野別対象技術(18 分野、48 技術)
(3) 控除率:当該年度の発生金額×20%(中小企業の場合は 30%)
2. 質疑事項に対する回答
2.1.
分野、技術の設定主体(企画財政部と教育科学技術部、知識経済部等関係省庁との協議で
大統領令施行令で規定されているのか。右協議プロセス・方法は法定されているのか否か。)
について
韓国政府は、2008 年のグローバル金融危機以降、先進国への跳躍を目指した新しい経済ビ
ジョンの提示のために、民間中心で論議した上、2009 年 1 月 13 日、大統領主導のもと開催さ
れた国家科学技術委員会と未来企画委員会の合同会議で 3 大分野 17 の新成長動力を確
定・発表した。確定された 3 大分野 17 の新成長動力は下記のとおりである。
3 大分野
グリーン技術産業(6)
先端融合産業(6)
17 の新成長動力
新再生エネルギー、炭素低減エネルギー、高度水処理、LED 応用、グリ
ーン輸送システム、先端グリーン都市
放送通信融合、IT 融合システム、ロボット応用、新素材・ナノ融合、バイ
オ製薬・医療機器、高付加価値食品
68
外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 2 節 研究開発税制に関する個別確認事項に係る調査結果
第 2 款 韓国 / 新分野及び新技術の研究開発に係る特例に関する実体調査
3 大分野
17 の新成長動力
高 付 加 価 値 サ ー ビ ス グローバルヘルスケア、グローバル教育サービス、グリーン金融、コンテ
産業(5)
ンツ・ソフトウェア、 MICE71・観光
一方、将来の成長動力の拡充を目的として、研究開発投資に対する税制支援を大幅に拡大
するために、2009 年 8 月 26 日、新成長動力産業及び源泉技術分野に係る研究開発費に対
する税額控除率の拡大が立法予告された。その後、実質的に韓国の税法規定を制度化してい
る企画財政部は、知識経済部、教育科学技術部、農林水産食品部、保健福祉部、環境部等の
関係省庁との協議、及び民間専門家約 40 名で構成された専門家会議を経て、2010 年 2 月、
最終的に税制支援の対象となる技術を選定した。企画財政部は、関係省庁との協議において、
新成長動力産業分野については知識経済部、源泉技術分野については教育科学技術部と税
制支援対象として選定された対象技術リスト及び特定研究開発費との区分方法等について重
点的に話し合い、上記の内容が 2010 年 2 月 18 日の租特法施行令改正時に反映され、租特
法施行令別表 7 及び別表 8(租特法施行令第 9 条と関連)を新設し、税額控除対象となる技
術が具体的に規定された。また、同様のプロセスを経て、2011 年 6 月 3 日に対象となる技術が
追加された。
なお、租特法施行令別表 7 及び別表 8 には、関係省庁との協議を経て選定された対象技術
を細分化した詳細内容を規定しているが、対象技術選定の具体的なプロセス、方法について
は、現行法令上、規定されていない。
2.2.
分野、技術の設定方法(審議会等を活用しているのか否か)・基準について。対象分野の選定
基準は、波及効果が大きいが不確実性が高く、税制支援が必要な技術分野であって、高度技
術の中から優先順位の高い技術を選定しているとされている様であるが、より具体的な内容
政府の新成長動力産業の選定基準は、市場性と波及効果を主な選定基準とする一方で、グ
リーン成長との関連性を補助的な基準としているものとされている。したがって、該当産業の現
在の市場規模のみならず、今後の市場潜在力、川上・川下産業への波及効果、他分野との融
合化に係る可能性、及び雇用創出の可能性を総合的に考慮し、該当産業が生活の質を向上
させる高付加価値があるか、及び環境にやさしい産業であるか等も勘案し、これらを新成長動
力産業として選定した。
71
Meeting, Incentive, Convention, Exhibition
69
外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 2 節 研究開発税制に関する個別確認事項に係る調査結果
第 2 款 韓国 / 新分野及び新技術の研究開発に係る特例に関する実体調査
市場性に関しては、競争国と比較した韓国の技術水準、潜在力、及び人的要件等、将来の
韓国の市場占有率も総合的に考慮したものとされている。また、波及効果に関しては、関連す
る川上・川下産業の成長、世界的なトレンドである融合技術に係る技術力、雇用創出等の問題
解決の可能性、及び教育、金融、IT、バイオ技術、ナノテクノロジー等の他産業の革新的な基
盤となる分野への影響も考慮したという調査結果が出されている。また、補助的な判断基準で
ある「グリーン成長」の概念を、環境、エネルギー等の特定の分野に限定せず、主力製造業、サ
ービス業を含めた「生活の質を向上させる高付加価値を創出する環境配慮型経済」の概念に
拡張することにより、環境にやさしい産業、高付加価値融合産業、知識サービス業等を重点的
に選定した。
上記の新成長動力産業のうち、企画財政部は知識経済部等の関係省庁との協議を通じて、
税制支援の必要性が高いとされるコア技術を中心に、11 の新成長動力産業分野を税制支援
対象技術として選定した。1.で記述したとおり、企画財政部は税制対象技術の選定において新
成長動力産業分野の全技術(17 種)を税制支援対象に選定せず、関係省庁及び民間専門家
で構成された審議会を経て、最終的な税制支援対象技術を選定したとされている。最終的な
税制支援対象技術の選定に係る定量的な評価指標、及びその他詳細な評価要素、並びにそ
の評価指標と評価要素に基づいた各産業別の審議手続について、本調査では具体的な内容
を把握することはできなかった。
ただし、各関係省庁が新成長動力産業を選定する際のガイドラインを提供することを目的とし
て、2009 年 12 月、知識経済部と韓国産業技術振興院が共同発刊した「新成長動力業種及び
品目分類(案)」によると、新成長動力産業分野の選定において、それぞれの産業分野別の評
価時、加点対象企業、及び産業育成政策に連携している優遇企業を考慮する事項が規定され
ているため、企画財政部が最終税制支援対象として選定する際にも、上記の事項が考慮され
たと考えられている。
なお、源泉技術については、企画財政部は国家科学技術委員会が定義した源泉技術の概
念 に基づいて、不確実性が高く、影響力の大きい技術のうち、国家のレベルでの支援が必要
な分野を中心に研究開発税制の支援対象となる技術を選定した。源泉技術分野の対象となる
技術に係る選定手続についても、上記の新成長動力産業分野の 対象となる技術の選定過程
と、基本的には同様であるとされる。
70
外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 2 節 研究開発税制に関する個別確認事項に係る調査結果
第 2 款 韓国 / 新分野及び新技術の研究開発に係る特例に関する実体調査
2.3.
設定主体と課税庁との関係について(分野、技術を設定する際に、どの程度課税庁が関与して
いるのか。設定主体と課税庁はどのような関係性があるのか。)
現在、韓国の課税機関は、関連規定を法令として制度化する機関である企画財政部と、関
連規定によって税制を執行する機関である国税庁に二元化されている。当然のことながら、国
会が立法機関としての役割を担っているが、立法予告、関連規定の有権解釈等を含め、租税
政策及び制度の企画・立案及び総括・調整して実際に制度化する業務については、企画財政
部の税制室が主管している。
今回、特定研究開発費の税制支援対象技術を選定し、この法令化を推進した主体も企画財
政部の税制室であり、教育科学技術部、知識経済部等の関係省庁との協議過程を含めた税
制支援対象技術の選定に関連する諸般手続を行った。一方で、国税庁は税制を執行する機
関であり、立案機能を有していないため、特定研究開発費の税制支援対象技術の選定過程で
は大きく関与していないと考えられている。
2.4.
分野は標準産業分類等に基づいているのか
新成長動力の 17 産業は、民間主導の新成長動力企画団による需要調査、及び国民からの
アイディア公募により選定した 6 大分野 22 産業の新成長動力を出発点として、関係省庁との
協議を通して最終的に選定された。源泉技術についても国家科学技術委員会が定義した源泉
技術の概念に基づいて選定されたもので、標準産業分類に基づいて選定されたものではない。
したがって、標準産業分類上において、特定研究開発費の対象となる技術に該当するかを
判断するのではなく、租特法施行令別表 7 及び別表 8 で詳細に規定している技術に対して概
要が合致するかどうかを検討しなければならないと考えられている。
ただし、 新成長動力に該当する産業と標準産業分類による産業が対応していないものの、そ
れぞれの新成長動力に該当する産業を標準産業分類による産業として分類することは、可能
であるとされている。
71
外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 2 節 研究開発税制に関する個別確認事項に係る調査結果
第 2 款 韓国 / 新分野及び新技術の研究開発に係る特例に関する実体調査
2.5.
通常研究費と特定研究費の区分方法について(分野毎に専門部署を新設すること、会計処理
を区分すること等)
(1) 当該要件の具体的規定について
租特法施行令第 9 条第 1 項、第 2 項及び第 7 項によると、特定研究開発費に対して税額控
除適用を受けようとする内国法人は、新成長動力及び源泉技術分野の研究開発専任部署を
新設し、新成長動力研究開発費、源泉技術研究開発費、及び一般研究・人材開発費をそれぞ
れ個別の会計に区分経理するように規定されている。
(i)
研究開発専任部署
特定研究開発費に対する税額控除は、租特法施行令別表 7 及び別表 8 による新成長動力
産業研究開発業務と源泉技術研究開発業務のみを専任とする部署から発生した研究開発費
が対象となり、その研究開発費の一定金額を税額控除することができる。租特法施行規則第 7
条第 2 項では、専任部署を以下のように定義している。

技術開発促進法施行規則第 7 条により認められた企業付設研究所、及び同規則第 8 条
により教育科学技術部長官に申請を行った企業内の研究開発専任部署

文化産業振興基本法施行規則第 11 条の 6 により認定された企業付設創作研究所で、文
化体育観光部長官の推薦を受けて企画財政部長官が告示する研究所または専任部署
ただし、一般研究開発専任部署がある場合で、その専任部署内に新成長動力産業研究開
発業務と源泉技術研究開発業務に関する個別の組織を区分して運営する場合であっても、新
成長動力産業・源泉技術研究開発専任部署があるものとして認められる。
(ii) 区分経理
特定研究開発費に対して税額控除を申請するためには、新成長動力研究開発費、 源泉技
術研究開発費及び一般研究・人材開発費をそれぞれ個別に会計処理(区分経理)を行うように
規定されているものの、現行法令上、この会計処理に対する具体的な方法については規定が
なされていない。ただし、租特法施行令第 9 条第 9 項によると、税額控除を申請する場合、研
究開発費明細書等、証拠書類を提出するように規定しているため、実務的には専任部署から
発生する研究開発費に対して、客観的な証憑により確認できる水準で区分経理されると判断さ
72
外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 2 節 研究開発税制に関する個別確認事項に係る調査結果
第 2 款 韓国 / 新分野及び新技術の研究開発に係る特例に関する実体調査
れている。仮に、特定研究開発費が一般研究・人材開発費と共通で取り扱われる場合には、該
当費用の全額を一般研究・人材開発費として取り扱うよう規定されている。
(2) 控除対象となる研究開発費の範囲について、通常控除と特定控除でその対象範囲は異
なるか
租特法施行令別表 6 によると、一般研究・人材開発費の税額控除対象となる費用は、以下
の通りとされている。

自社研究開発費用
-
研究開発のために専任部署で勤務する職員の人件費
-
専任部署で研究用に使用する見本品、部品、原材料及び試薬類の購入費
-
専任部署で直接使用する研究・試験用施設の賃借及び利用に関する費用

委託及び共同研究開発費用

職務発明補償金

技術情報費

専門生産技術研究所の技術指導を受けて支出した費用

固有デザインの開発費用

中小企業に対してデザイン開発指導のために支出した費用

科学技術関連図書及び刊行物の購入費
一方で、特定研究開発費は、上記の費用のうち、自社研究開発費用として専任部署の研究
員及び研究開発業務を直接支援する職員の人件費と新成長動力産業研究開発業務及び源
泉技術研究開発業務に使用する見本品、部品、原材料と試薬類の購入費に限定されている。
つまり、特定研究開発費と一般研究・人材開発費の範囲は異なり、税額控除対象となる特定研
究開発費の範囲は、一般研究・人材開発費より狭くなっている。
(3) 特定控除は、人件費(研究スタッフ及びその直接的な支援者)及び原材料費だけなのか、
減価償却費も入るのか
上述のとおり、特定研究開発費は 専任部署の研究員及び研究開発業務を直接的に支援す
る職員の人件費と専任部署で使用する見本品、部品、原材料と試薬類の購入費に限定されて
いるため、減価償却費は控除対象とならない。
73
外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 2 節 研究開発税制に関する個別確認事項に係る調査結果
第 2 款 韓国 / 新分野及び新技術の研究開発に係る特例に関する実体調査
(4) 共通的経費(光熱費等)を特定と一般で分けている場合、その按分方法
光熱費等の経費は租特法施行令別表 6 で規定していないため、研究・人材開発費の税額
控除対象費用に該当しない。また、上述のとおり、特定研究開発費用が一般研究・人材開発費
と共通で取り扱われる場合には該当費用の全額を一般研究・人材開発費に区分する。
(5) 会計処理の区分に関し、人件費、材料費、設備費等に対する課税当局の事後チェックは
どのように行うのか
現行の法令上、区分経理の正確性に係る事後検討については、明示的に規定されていない。
実務的には、納税者が税額控除を申請する場合、課税当局は納税者に対して、申請内容に
対する証明資料の提出を要求するか、税務調査時にその内容の適正性について確認を行うと
考えられる。
また、特定研究開発費に対して税額控除を申請する場合は、研究開発費明細書と共に以下
の書類を添付書類として提出するように規定されている。したがって、事前に税額控除対象で
あるか、及び区分経理の適正性に対して確認が可能と考えられる。

新成長動力産業及び源泉技術分野別の 対象技術研究開発計画書

専任部署の組織・職員現況及び研究要員の資格を証明する書類

研究要員等の専任部署の勤務時間が確認できる書類(一般研究開発業務と新成長動力
産業・源泉技術研究開発業務を区分して表示)

研究要員等の給与支給明細書

研究開発業務で使用する見本品、部品、原材料、試薬類の購入明細書及び税金計算書
の写し

一般研究・人材開発費と新成長動力産業・源泉技術研究開発費の区分経理の明細

その他、新成長動力産業及び源泉技術分野別の 対象技術である事実を証明する書類
2.6.
特定技術に対象となるかどうか不明な場合には、新成長・基礎固有技術研究開発審議会(企
画財政部税制室長を委員長とし、教育科学技術部、知識経済部及び民間専門家で構成)で
決定されている様であるが、その決定タイミングはいつか(申告の後か、申告の前か(事前確認
制度の様なものが存在するのか。)、審議会の設置根拠規定は何か。
租特法施行令第 9 条第 10 項によると、内国法人が支出した研究開発費が、新成長動力研
究開発費及び源泉技術研究開発費に該当するかどうかを判断するため、企画財政部長官所
属で新成長動力産業及び源泉技術研究開発審議委員会(以下、審議委員会)を設置し、該当
74
外主要国の研究開発税制に関する実態を踏まえた国内事業環境整備等調査
第 2 章 調査結果
第 2 節 研究開発税制に関する個別確認事項に係る調査結果
第 2 款 韓国 / 新分野及び新技術の研究開発に係る特例に関する実体調査
の是非について審議を行うことができるように規定されている。また、同条第 11 項によると、審
議委員会の構成及び運営等に必要な事項は企画財政部長官が定めると規定されている。た
だし、現在のところ、審議委員会にて具体的に決定された事項はないものとされている。
2010 年 2 月 9 日の企画財政部の報道資料によると、審議委員会は企画財政部の税制室長
を委員長として関係省庁(教育科学技術部、知識経済部等)及び民間専門家等で構成されると
されているが、現在まで具体的に決定されていないとされる。これは新成長動力産業及び源泉
技術の種類が多様であり対象技術別に該当産業の専門家が異なるため、審議委員会の委員
を特定することができず、審議委員会も常設設置機関の形態で設立することができないためと
考えられている。
ある技術が特定研究開発費の税額控除対象となる技術に該当するか否かが明確ではない
場合、納税者はその技術に対して具体的かつ詳細な説明資料を添付して企画財政部に審議
を要請することが可能とされる。企画財政部は、このような審議要請を受けた場合、関連産業の
専門家で審議委員会を構成し、当該技術が税額控除対象であるかどうかを審議を行うとされる。
ただし、調査時点において、このような事前確認制度が制度化されているわけではない。
75
付録1 研究開発税制概要に係る各国比較表
最近の動き
対象国
税額控除率と計算式
過去の動き
中小企業向けの特例
控除限度額
法人税率
(参考情報)
税収(減収)効果 ※12
最新動向
①試験研究費総額に係る控除
控除ベース額 x 10% (試験研究費割合が10%以上)、又は
控除ベース額 x (8% + 試験研究費割合x0.2) (同割合が10%未
満)
②試験研究費増加額に係る控除
増加額 x 5%、又は
(売上高 x 10%を超過する額) x 税額控除割合
試験研究費割合 = 試験研究費 ÷ 平均売上高
税額控除割合 = (試験研究費割合 - 0.1) x 0.2
①
控除ベース額 x 12%
②
特にない
①
原則、法人税額の20%
ただし、2012年3月31日までに開始す
る事業年度においては、割増措置が適
用され、30%となっている)
②
法人税額の10%
日本
(参考)
2011年3月31日につなぎ法案、及び2011年6月30日に
税額控除限度額の割増措置の廃止を含めた
新法案が施行され、税額控除限度額の割増措置の適
修正法案は、引き続き審議されている。
用が2012年3月31日まで延長された。
米国
研究開発税額控除に係る制度は、1981年に導入され
てから恒久法として制定されたことはなく、時限立法の
失効、復活を幾度となく繰り返してきた。当制度は2009
年12月31日に適用期限切れとなったが、2010年12月
17日に施行となった税制改正により時限立法の期限
が2011年12月31日に延長されている(2010年1月1日
から施行日までに係る期間について遡及適用される)
カナダ
2010年改正:
税額控除申告書及びそのガイダンス等、手続きにつ
現時点で、制度変更は予定されていない
いて改善がなされたが、制度自体の変更はなされてい
ない
控除ベース額 x 20%
税
額 フランス
控
除
2011年改正:
・ 新設法人等への優遇税額控除率の引き下げ(初年
度:50%⇒40%、次年度:40%⇒35%)
・ 研究開発税制の対象となる営業費用及び比率の変
更(人件費:75%⇒人件費:50%、及び研究開発に係る 現時点で、制度変更は予定されていない
資産の減価償却費:75%)
・ 外注委託費の制限(民間に対する研究開発委託費
は、その他の研究開発費の3倍を限度額に設定)
・ アドバイザリーサービスに係る成功報酬費の制限
1億ユーロ以下の部分:控除ベース額 x 30%
一定の条件の下、2006年1月1日から2009年1月1日に開
1憶ユーロ超の部分:(控除ベース額 - 1億ユーロ) x 5%
始する事業年度について直ちに還付請求することができ 特にない
新設法人等に対する優遇控除率(1億ユーロ以下の部分につき、
たが、現在は中小企業に対する優遇措置はない。
初年度40%、次年度35%)を使用可能
スペイン
2011年改正:
・イノベーション技術税額控除率が8%から12%に引き上
げられた
現時点で、制度変更は予定されていない
・研究開発及びイノベーション技術税額控除の額が、
法人所得税額の10%相当額を超える場合の控除限度
額が50%から60%に引き上げられた
①研究開発
控除ベース額 x 25%
(※但し、平均超過額部分について x 42%)
専任研究員人件費 x 17%
固定資産(不動産除く)の購入原価 x 8%
②イノベーション技術
控除ベース額 x 12%
韓国
2010年改正:
重点産業に係る研究開発費(新成長動力研究開発費
及び源泉技術研究開発費)に対する税額控除規定が
追加された。また、中小企業が大企業の認定を受けた
際に、一般研究・人材開発費に係る税額控除率を段
階的に引下げる規定が導入された(控除ベースx
現時点で、制度変更は予定されていない
25%、 ⇒ 15% (1~3年目)、⇒ 10% (4~5年目))
2011年改正:
新成長動力研究開発費及び源泉技術研究開発費に
ついて、それぞれ16の技術、3つの技術が新たに対象
技術として追加された
①新成長動力開発研究等
控除ベース額 x 30%
①新成長動力開発研究等
②一般研究等
控除ベース額 x 20%
下記のいずれかの大きい金額
②一般研究等
(a)控除ベース額 x 25%
下記のいずれかの大きい金額
特にない
(b)増加費用 x 50%
(a)控除ベース額に6% 又は(3% + 費用 ÷ 売上高 x 50%)のいず
大企業認定を受けた後、②(a)について、初年度から3年
れか小さい方の割合を乗じた金額
度目までは控除ベース x 15%、4年度目及び5年度目に
(b)増加費用 x 40%
ついては控除ベース x 10%の優遇税率を段階的に適用
することができる
2011年2月、オバマ大統領は2012年予算教書
(Budget Proposal)の中で、研究開発税制を維
持する方針を示した。また、併せて、簡便法に
よる控除率を14%から17%に拡大する提案を
行った。しかし、本予算教書に対して議会はア
クションを起こしておらず、法案等の起案もなさ
れていない。したがって、時限立法の期限
(2011年末まで)を延長するかどうか、現在のと
ころ、議会ではまだ議論されていないとされて
いる
2011年改正:
従来までの追加損金算入型の制度から、還付付き税
オーストラリ
額控除へ制度変更された(制度変更に係る法案は
現時点で、制度変更は予定されていない
ア
2011年8月24日に可決され、2011年7月1日より適用さ
れている)
損
金
算
入
繰越し・繰戻し
①原則法
(控除ベース額 - ベース金額) x 20% ※1
②簡便法
簡便法:(控除ベース額 - ベース金額) x 14% ※2
特にない
ただし、いずれの場合にも、上記により算出した金額について、 (2010年に開始する事業年度のみ、未使用の税額控除
下記のいずれかの調整が行われるため、実質的には算出金額の 額の5年間の繰戻しが可能とされていた)
65%相当額が控除対象額となる。
(a) 研究開発費の額から算出金額を減額
(b) 算出金額から算出金額の35%相当額を減額
控除ベース額 x 10% ※8
英国
2008年改正:
大企業及び中小企業が、追加の研究開発費用として
計上できる金額が増額された(大企業:25%⇒30%、中
小企業:50%⇒75%)。中小企業の要件が緩和されたた
次回の改正は早くとも2012年以降になると予想
め、より優遇度の高い中小企業向けの特例を適用す
控除ベース額 x 7.8% ※3
されている
ることができる企業の範囲が拡大された
2011年改正:
中小企業の追加損金算入額(75%→100% / 2011年4月
1日~、100%→125% / 2012年4月1日~)が増額された
中国
2008年に追加損金算入できる研究開発費8項目が定
現時点で、制度変更は予定されていない
義された以降、特に改正は行われていない
①研究開発
控除ベース額 x 12.5% ※6
②先進的・新技術
10% ※7
注記:
当比較表は、各国の比較という観点から、原則論を中心に記載している。したがって、各項目における詳細事項や例外事項については調査報告書を参照のこと。
※1 前4課税期間の総収入 x 固定比率 = ベース金額
※2 前3課税期間の平均適格研究費 x 50% = ベース金額
※3 控除ベース額の30%を追加損金算入。標準法人所得税率26%として計算。(30% x 26% = 7.8%)
※4 控除ベース額の100%を追加損金算入。標準法人所得税率26%として計算。(100% x 26% = 26%)
※5 控除ベース額の125%を追加損金算入。標準法人所得税率25%として計算。(125% x 25% = 31.3%) 英国の法人税は2012年から引き下げられ、25%になるとされている
※6 控除ベース額の50%を追加損金算入。標準法人所得税率25%として計算。(50% x 25% = 12.5%)
※7 優遇法人所得税率15%を適用。(25% - 15% = 10%)
※8 控除ベース額の10%相当額が税額控除額となる。40% - 30%(標準法人所得税率) = 10%
※9 控除ベース額の15%相当額が税額控除額となる。45% - 30%(標準法人所得税率) = 15%
※10 控除ベース額とは、研究開発税制の対象となる費用の金額をいう。
※11 円計算の為替レートは以下のとおり。(1米ドル=80円、1加ドル=80円、1ユーロ=110円、1ウォン=0.07円、1ポンド=130円、1豪ドル=80円)
控除ベース額 x 35%
特にない
①
原則、1年繰越し
ただし、2009年度に発生した繰越額は3
法人税収額 約7.8兆円
年、2010年度に発生した繰越額は2年
減収額 約3,044億円
を、それぞれ暫定措置により繰り越すこと
(2011年 出典:2011当初予算、主税局)
ができる
②
繰越し・繰戻しなし
下記のいずれか小さい金額
①法人税額の75%
②法人税額から暫定ミニマム税額
20年繰越し、1年繰戻し
(Tentative Minimum Tax)を差し引いた (中小企業向けの特例参照)
金額
中小企業向けの優遇税額控除率35%が
適用可能な適格研究開発費は300万
20年間繰越し、3年繰戻し
加ドル(=税額控除額105万加ドル)が
(中小企業は一定の条件の下、還付可
上限とされ、それを超える研究費につ
能)
いては、通常の控除率(20%)の適用を
受ける。
3年繰越し、その後還付
(他の税額控除と合わせて)法人所得
税額の35%
ただし、研究開発及びイノベーション技
15年繰越し
術税額控除の額が法人所得税額の
10%以上の場合は、法人所得税額の
60%
5年繰越し
無期限繰越し
法人税収額(繰越損失還付後) 約1,914億
米ドル (約15.3兆円)
減収額 約57億米ドル (約4,560億円)
(2010年)
約41%
(法人住民税、事業税
等を考慮した実効税
率)
約40%
(州税を含めた実効税
率。州により税率が異
なる)
26.5%~32.5%
法人税収額 約304億加ドル (約2.4兆円)
(2012年1月1日から
減収額(予測額) 約40億加ドル (約3,200億
25%~31%に引き下
円)
げ予定。州により税率
(20009-2010年)
が異なる)
法人税収額(純額) 約443億ユーロ (約4.9
兆円)
減収額 約21億ユーロ (約2,310億円)
(2011年予測)
33.33%
法人税収額(純額) 約311億ユーロ (約3.4
兆円)
減収額(研究開発及びイノベーション技術) 30%
約3.2億ユーロ (約352億円)
(2008年)
法人税収額 約35兆ウォン (約2.5兆円)
減収額 約1.5兆ウォン (約1,050億円)
(2010年)
24.2%
(2012年から22%に引
き下げ予定)
法人税収額 約579億豪ドル (約4.6兆円)
減収額(現行研究開発税制) 約16.5億豪ド
ル(約1,320億円)(2011年予想)
30%
法人税収額 約746億豪ドル (約6.0兆円)
減収額(新研究開発税額控除制度 約17.1
億豪ドル(約1,368億円)(2012年予想)
控除ベース額 x 45%(売上高が2,000万豪ドル未満、欠
損時に還付可能) ※ 9
特にない
控除ベース額 x 26% (2011年4月1日~) ※4
控除ベース額 x 31.3% (2012年4月1日~) ※5
750万ユーロ(中小企業がプロジェクト
毎において優遇税制を適用することが 無期限繰越し、1年繰戻し
できる研究開発費の上限金額)
法人税収額 約430.7億ポンド (約5.6兆円) 26%
減収額 約9.4億ボンド (約1,222億円)
(2012年4月1日から
(2008-2009年)
25%に引き下げ予定)
特にない
特にない
入手可能な公開データはない
5年繰越し
25%
付録2 適格研究開発費及び適格研究開発活動の取り扱いに係る各国比較表
日本
米国
カナダ
フランス
英国
スペイン ※3
研究開発
人件費
○
○
○
○
○
イノベーション
○
韓国
新成長動力/源泉 一般研究開発/人
技術研究開発
材開発
○
○
直接費
○
○
○
○
×
(従業員の研究開発活動割合に応 (従業員の研究開発活動割合に応
×
(従業員の研究開発活動割合に応
○
「専ら要件(※1)」等の制限がなく、
(従業員の研究開発活動割合に (専任部署で研究開発活動を
(専門知識をもってその業務に専ら じる。ただし、80%以上が研究開発 じる。ただし、90%以上が研究開発
(従業員の研究開発活動割合に応 じる。通常勤怠表等で管理。勤怠表
人件費を適格費用とできるか
応じる。ただし、プロジェクト毎に区 行う従業員の人件費のみが対
従事する者に係る人件費に限られ 活動によるものである場合に、その 活動によるものである場合に、その
ない場合は、最良推定による算出も
じる)
(制限される場合は×)
別して記録しておく必要がある)
象)
従業員に係る賃金の全額が対象と 従業員に係る賃金の全額が対象と
ている)
可)
なる)
なる)
追加損金算入制度
追加損金算入制度
新・税額控除制度
×
○
○
×
×
(研究開発活動の専任従業員に係
る人件費が対象)
○
(従業員の研究開発活動割合に応じる)
○
○
○
×
(ただし、一定比率で算出される業
務費で一部賄われるとされる)
○
(実際に研究開発活動に消費され
た原材料費のみ)
○
○
○
×
○
○
減価償却費
○
×
×
○
×
○
×
×
×
○
○
x
×
○
(2年間に50%以上が研究開発に使
用される設備は50%、専用設備の場
合は100%が対象となる)
×
○
(研究・人材開
発のための設
備税額控除に
より、投資額の
10%が控除)
○
△
(認められる可能性もある)
○
○
(支払費用の65%相当額が対象とな
る)
○
○
(下記on own behalf要件を満たす場合において対象とな
る。具体的には、委託者が研究開発プロジェクトに関する
経済的なリスクを負担、及び管理をすること、及び研究開
発プロジェクトの結果を実質的に保有すること)
×
(委託側のみにて対象となる)
×
(委託契約上、委託者がon own behalf要件を満たす場合
には、受託者側では対象とならない。ただし、受託者がon
own behalf要件を満たす場合には、委託者に代わり受託
者側にて対象となる。ただし、この場合委託者側では対象
とならない)
(資本支出)
受託研究開発活動に生じた費用
間接費
その他
原材料費
委託費
適格研究開発活動に該当するか
オーストラリア
中国
△
(委託者から受領した委託料につい
ては控除しなくてはならないため、
×
(委託者から受領した委託料につい 実質的に受託側では対象とならな
ては控除しなくてはならないため、 い。ただし、一定の支配関係があ
実質的に受託側では対象とならな り、かつ委託者が委託費につき研
究開発税制の適用を受けないる場
い)
合、受託者は受領した委託料につ
いてを控除する必要がない)
○
△
(委託者から受領した委託料につい
ては控除しなくてはならないため、
実質的に受託側では対象とならな
い。ただし、海外からの委託費につ
いては受託者側で対象となる)
×
○
(全額を発生年度に一括損金算入)
○
×
△(※4)
○
△
○
(租特法施行
×
(公的機関に対する委託は2倍相当 (中小企業が支払う委託費は対象と (研究開発そのものが外部委託業
令別表6に定
額が対象となる。民間組織への委 なる。非関連者への委託は65%相当 者に行われるのではなく、調査費 (委託は認めら
める機関が受
託は、受託先が当局から特別に承 額が対象となる。大企業は法人を除 用等が第三者に支払われる場合、 れていない)
託先の場合の
対象となる)
く一部の委託先のみ対象)
認を受けた場合にのみ対象となる)
み対象)
△
(委託者が下記に該当する場合は
受託側で対象となる。委託者が本制
度を適用しない、法人税の非課税
法人である、又は、税務上のフラン
ス居住者でない場合)
△
(大企業が委託者の場合、受託側で
△
対象となる(中小企業が委託者の場
合、委託側で対象となるため)。ただ (委託者が税務上のスペイン非居
し、中小企業が受託者の場合は 住者の場合に限り、受託側で対象
となる)
130%損金算入となり、中小企業向け
優遇措置(200%損金算入)が適用で
きない)
×
×
(委託側のみ
にて、上記条
件を満たす限
り、対象となる)
×
×
×
×
×
×
(原則的には、上記記載のとおり、
○
専任研究員のみが対象となるが、実
務上、他の従業員が合理的に研究 (その費用が研究開発に寄与していると認められるもの、
活動に寄与していることが証明でき 又はその費用の支出を行わない場合、研究開発活動に
支障を来すと認められるもの)
れば、認めらる場合もある。ただし、
当局のケースバイケース判断とな
る)
人件費
×
×
○
○
○
(原則的には適格間接活動として適 (人事部、IT部門等の間接人件費
×
(ただし、一定比率で算出される業 用可能。ただし、適格間接活動の範 の一部を対象とすることができる。
囲については不明瞭であり諮問の ただし、その配賦割合について妥
務費で一部賄われるとされる)
当性を証明する必要がある)
対象となっている)
減価償却費
○
×
×
×
(ただし、一定比率で算出される業
務費で一部賄われるとされる)
×
○
(配賦割合について適切性を証明
する必要がある)
×
×
×
×
(原則的には、研究開発活動のみ
に使用される機械装置や設備の減
価償却費用のみが対象となる)
○
(上記同様)
(資本支出)
×
×
×
×
×
○
(配賦割合について適切性を証明
する必要がある)
×
×
×
×
○
(上記同様)
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
○
事務能率・経営組織の改善
×
×
×
×
△(※2)
(例えば、IT設備の開発によって事
務能率が向上した場合ば認められ
る可能性もあるが、単なるリソースの
再配分によって成し得た効率化は
認められない。)
販売技術・方法の改良
×
×
×
×
×(※2)
(可能性は低い)
△
(研究開発活動の定義、又はイノ
ベーション活動の定義を満たし、
除外規定に該当しない活動につ
いては、対象になる可能性がある)
販路の開拓
×
×
×
×
×(※2)
(可能性は低い)
単なる製品のデザインを考案
×
○
○
×
△(※2)
(可能性はある)
×
○
(固有デザイン
の開発につい
て対象となる)
×
既存製品に対する特定の表示の
許可申請のために行うデータ集積
等の臨床実験
×
×
×
×
△(※2)
(可能性はある)
×
×
×
△
△
(multiple sales testを満たす (社内管理目的でない場合
のみ)
場合のみ)
○
○
△
○
(研究開発がCatalogueに該当する
研究活動であり、それに付随する実 (適格研究開発活動として認められ、その活動を成し得る
ために必要である場合)
験である場合には認められる可能
性がある)
※1 (日本) 我が国の試験研究費税額控除制度の対象となる試験研究費に含まれる人件費については、「専門的知識をもって当該試験研究の業務に専ら従事する者に係るものに限る」とされているが、「専門的知識をもって当該試験研究の業務に専ら従事する者」とは、試験研究部門に属している者や研究者としての肩書を有する者等の試験研究を専属業務とする者や、研究プロジェクトの全期間中
従事する者のほか、要件を満たす者もこれに該当するものとして取り扱われている(平成15年12月25日:課法2-27、課審5-25 通知)
※2 (英国) 実際のどのような研究開発活動が行われたかによって適格/非適格が判断されるため、一概には判断できない。ただし、一般的に、デザイン及びテストに係る活動は適格として認めらる可能性があり、販売及びマーケティングに係る活動については可能性が低いとされている。
※3 (スペイン) スペインにおける研究開発税制・イノベーション技術税制は、プロジェクト単位で適用され、適格活動の中で生じる費用は、直接的に関連する費用、かつ他のプロジェクト費用と明確に区分して管理・記録されている必要があるとされている。
※4 (韓国) 受託先が租特法施行令別表6に定める機関の場合にのみ、対象となる。(大学または専門大学、国・公立研究機関、政府研究機関、科学技術分野を研究する国内外の非営利法人及び国内外企業の研究機関または専担部署、産業技術研究組合、韓国デザイン振興院、産学協力団体等)
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