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ベトナム・ホーチミン市環境調査概要
平成 19 年 9 月
APEC 環境技術交流促進事業運営協議会
1
Ⅰ
調査日程
月日
AM/PM
内容
9/23
PM
ホーチミン市到着
9/24
AM
ベトナム科学技術アカデミー(VAST)環境技術研究所(IET)ホーチミン市支局訪問
PM
ホーチミン市天然資源環境局(DONRE)訪問
AM
ホーチミン市工科大学環境工学部訪問
9/25
ホーチミン市工科大学化学工学部訪問
9/26
9/27
9/28
PM
ホーチミン市科学技術局(DOST)訪問
AM
Go Cat 廃棄物処分場視察
PM
Van Lang 大学環境技術管理学科訪問
AM
LE MINH XUAN 工業団地視察
PM
TAN BINH 工業団地視察
AM
HIEP PHUOC 工業団地視察
PM
TanThuan 工業団地視察
ホーチミン市出発
Ⅱ
調査団員
1.APEC 環境技術交流促進事業運営協議会 事務局長 濱崎 竜英(9/26 まで)
2.APEC 環境技術交流促進事業運営協議会 研究員 児嶋 英樹
3.大阪産業大学新産業研究開発センター 助手 谷口 省吾
*IET の Dr. Phan Do Hung 氏が調査期間中同行
Ⅲ
ホーチミン市内河川
サイゴン川
サイゴン川に流入する市内排水路
概況
サイゴン川はホーチミン市東部を北から南へ蛇行しながら流れている河川で、ドンナイ川に流入し、
海へと流れている。サイゴン川へは市内から複数の河川(排水路)が流入しており、それら支線の水
質汚濁は顕著である。明らかに COD や SS が高く、それらの影響で DO 値が低いため、魚介類の生
息は困難となっている。
2
Ⅳ
調査内容
次に示す調査内容については、聞き取り調査場所によって数値等の齟齬があるが、聞き取ったとお
りに記述することにする。
1.ベトナム科学技術アカデミー(VAST)環境技術研究所(IET)ホーチミン市支局
ホーチミン市支局環境・水質分析実験室を訪問し、ホーチミン市及び周辺の環境の現状及び問題点
について聞き取りをおこなった。以下のとおりである。
・ IET ホーチミン市支局では、ホーチミン市の環境モニタリング(市内河川も含む)をおこなって
いる。
・ 現在、日本の ODA による下水処理場建設(ビンチャイ)がおこなわれている。建設会社は西松建
設である。およそ 30 万トン/日である。
・ 日本(JICA や JBIC)以外にもスェーデェンの SIDA、フィンランドの FINNIDA、ベルギー、
世界銀行などが環境分野への援助をおこなっている。
・ ホーチミン市には 300 社にのぼる環境分野の企業(代理店など販売店も含む)があり、そのうち
10 社程度がエンジニアリング会社である。
・ ホーチミン市における工業の規模は大きくないが、居住地域と工場地域が重なっているところが
あり、問題となっている。
・ 3年ほど前より、工業団地への移転を推進しているが、財政的な問題などがあり、予想以上に移
転は遅れている。現在も市内に残っている。
・ ホーチミン市内の工場は、おもに家内工業レベルのものが多く、ビールなどのアルコール製造、
皮革工場、紡績・染色などの繊維業が盛んである。しかしいずれも未処理のまま排水されている。
・ 工業団地は15程度建設済み、建設中もしくは計画中である。工場排水処理施設についての必要
性は認識している。
・ ベトナムにおける排水基準は 1995 年に制定され、その後 2000 年及び 2005 年に改定された。現
在は 2005 年の基準が最新である。基準には A、B 及び C のランクに分かれている。
・ 工業団地では次のように排水処理対策を検討している。このように基準の低い C 基準まで各工場
で排水処理し、その処理水を共同の排水処理場に引き込む。共同の排水処理場では、1ランク上
の B 基準の排水基準に達成させた後、公共用水域に放流する。
工場
工場
工場
工場
処理場
処理場
処理場
処理場
C 基準
C 基準
C 基準
C 基準
共同処理場
B 基準
・ 排水基準が達成できなかった工場には罰金が科せられるが、およそ 7 百万ドン(4,000US$)で、
罰金を払って処理しない工場もある。
3
・ ホーチミンでは、サイゴン川の上流にあるドンナイ川(サイゴン川はドンナイ川の支流)から取
水して、生活用水としている。
・ サイゴン川の一部、またはサイゴン川の支流では、BOD が 40~50mg/L、COD が 80~100mg/L
と高く、SS や油分濃度も高く、DO は低い。ただし、重金属汚染はないようだ。窒素やリンも高
い。
・ ホーチミン市で発生するゴミは、回収され管理型衛生埋立地にて処分されている。焼却はしてい
ないが分別はしている。
・ 家庭ゴミなど一般ゴミは 5,000 トン/日発生しており、処分地の確保と減量化が問題となってい
る。
・ 処分場から発生する浸出水は、COD が 20,000mg/L、アンモニア性窒素が 2,000~3,000mg/L と
非常に高く、困難となっている。
・ 韓国がホーチミン市の処分場の使用権を購入することを検討している。これは CDM プロジェク
トの一環で、処分場でバイオガスを製造するというものである。
VAST ホーチミン支局入口
VAST-IET ホーチミン支局ラボ入口
2.ホーチミン市天然資源環境局(DONRE)
DONRE を訪問し、ホーチミン市の環境の現状と問題点について聞き取り調査をおこなった。
・ ホーチミン市は人口 8 百万人におよぶベトナム最大の都市であり、経済発展が著しい。
・ ホーチミン市は経済発展によって大きく3つの問題を抱えている。一つが工業生産に必要な工業
団地の整備、一つが都市生活によって発生するゴミや排水の問題、一つが交通問題である。
・ 工業生産においては、ホーチミン市内に小さな工場が存在し、現在、工業団地に移転することを
促進しており、2か所の輸出加工団地、13か所の工業団地が建設もしくは建設・計画中である。
・ 2002~2007 年の間に工業団地に移転する計画であったが、いまだ達成していない。企業数はおよ
そ 1,200 あり、実施促進のためには国際協力が不可欠である。また、ホーチミン市の企業にクリ
ーナープロダクションを推進中である(クリーナープロダクション:可能な限り安全な材料を最
小限利用して生産すること)
。
・ ホーチミン市では 5,000 トン/日のゴミが発生しており、回収方法や処分場の確保が課題となっ
ている。
・ ゴミ量の削減のため、ゴミの分別や再利用についてその可能性を検討し、一部実施している。
・ 新技術として、バイオガスによる発電やコンポストの生産など実験中である。
・ ホーチミン市には5系統の排水システム(排水路)が存在している。しかしながら、ゴミが堆積
したり未処理のまま排水したりしているが現状である。
4
・ 現在、JICA の援助で排水処理場(下水処理場)を建設中である。
・ JICA の開発調査が実施され、4か所の下水処理場の建設が推奨されている。排水対策のためには
援助が不可欠である。
・ ホーチミン市の最大の課題は交通問題である。環境問題の視点から、オートバイや車両による騒
音問題もその一つである。
・ 2020 年までに改善目標をあげ、地下鉄の建設などを進めると共に、郊外にビジネスセンターを4
か所建設して、中心地の拡散も計画に含まれている。
・ サイゴン川とドンナイ川を保全することはホーチミン市にとって重要な課題である。
・ 生活用水に関し、これを管理するのは、ホーチミン市交通局の役割で、生活用水の環境保全につ
いては DONRE の役割である。ホーチミン市郊外に位置する他の県はそれぞれの自治体の役割と
なる。
・ また、DONRE では排水処理に関して管理している。
・ ホーチミン市は都市化工業化の発展が著しく、10 年前は人口 5~6 百万人であったが現在は 8 百
万人に達成している(一部 12 百万人という話も聞く)。
・ ホーチミン市には 25,000 もの企業が存在し、排ガス、排水そしてゴミを発生させている。
・ ホーチミン市は歴史が長く、排水及びゴミ問題が発生しやすい。
・ ドンナイ川の環境保全及び改善をおこなうことは重要な水資源を確保する上で重要な政策である。
・ 2010 年及び 2020 年に向けた保全計画が存在しており、併せてホーチミン市内河川及び排水路を
改善していかなくてはならない。再利用についても検討していく必要がある。
・ ベトナムでは国家環境現状報告書が毎年発行されている。報告書の一部はインターネットでも確
認できる。
・ ホーチミン市では環境改善の資金確保のため、CDM プロジェクトを検討している。
・ ホーチミン市におけるこれからの環境対策として次のものが挙げられる。
1)水資源保全(河川及び地下水)
2)廃棄物管理(バイオガス、コンポストリサイクル)→CDM による処分場対策
3)環境啓発活動
4)排気ガス(車両(0.3 百万台)及びオートバイ(3 百万台))対策
5)発電所(石炭及び石油)対策
・ 2008 年 4 月(詳細日程は未定)に、ホーチミン市 DONRE と HEPZA(HCMC Export Processing
Zones Authority:ホーチミン市輸出加工団地委員会?)の主催で、環境展覧会を開催予定である。
ホーチミン市 DONRE 入口
ホーチミン市の地図
5
3.ホーチミン市工科大学環境工学部
環境工学部を訪問し、環境工学部の概要及びホーチミン市の環境の現状、問題点、施策などについ
て聞き取り調査をおこなった。
・ 環境工学部では、環境管理及び環境技術に関する研究をおこなっており、大気、水質、廃棄物な
どの分析・研究をおこなっている。
・ JICA が大学内に事務所をおき、魚介類の生態調査を実施している。
・ 東京大学が養殖池に関する共同研究をおこなっている。
・ IGES が下水管理の共同研究をおこなっている。
・ AUNSEEDNET は学生交流をおこなっている。
・ AIT(アジア工科大学)は環境管理の共同研究をおこなっている。
・ DONRE より、2000 年に環境総合管理戦略が提案され、その戦略に基づいて様々な施策が取り組
まれている。
・ JICA と下水計画について検討している。
・ ホーチミン市では 1~2 百万 m3/day もの生活排水が排出されている。
・ 現在、
一つの下水処理場がベルギーの援助によって稼働している。
処理量は 3,300m3/day である。
・ 現在、もう一つの下水処理場が計画されていて、その処理量は 14,000m3/day である。
・ JICA 開発調査によって、2015 年までに9つの下水処理場を建設することが提案され、マスター
プランに示されている。
・ ホーチミン市には 15 もの工業団地があり(2010 年までに計画されており)
、そのうち、2 つの工
業団地では、台湾の支援によって排水処理設備が設置されている。排水量 はそれぞれ 4~
5,000m3/day である。
・ 工業団地内の業種は、自動車、繊維(染色を含む)、食品加工(シーフードやビール)、電子部品
などである。
・ ホーチミン市の住居地域に 3,000 以上もの工場が存在している。業種は、繊維(染色を含む)、食
品加工などである。
・ ホーチミン市はこれら住居地域にある工場を工業団地に移転させることを計画している。
・ 工場の具体的な例としては、
タピオカ工場で排水量は 1,000m3/day から 5,000m3/day を超えてい
る。
ゴム製造工場は高濃度のアンモニア性窒素排水を 2,000m3/day 以上排水している。
そのほか、
砂糖製造工場(さとうきび)や製紙工場などがある。
・ 廃棄物処分場の浸出水対策も重要である。浸出水は、COD が 10,000mg/L、全窒素が 1,000mg/L、
アンモニア性窒素が 400mg/L と種々の水質項目が非常に高い。
・ オランダの支援で浸出水処理を行っている。浸出水を集水し、UASB 法、A2O 法、凝集沈殿法そ
してナノろ過法で処理している。ただし、TDS が 10,000mg/L と高いため、その対策も求められ
ている。
4.ホーチミン市工科大学化学工学部
化学工学部を訪問し、化学工学部の概要及びホーチミン市の環境の現状、問題点、施策などについ
て聞き取り調査をおこなった。
・ 化学工学部は、化学工学、食品工学及び生物工学の3コースがある。
6
・ ホーチミン市内の工場には財政的な問題から適切な排水処理施設はない。
・ 工場の業種として、化学工場、食品工場などがあり、工業団地に移転する場合には、工業団地に
排水処理施設を設計・建設していく必要があり、化学工学部としてもその用意がある。
・ ホーチミン市内などの工場を郊外の工業団地に移転する計画はあるが、移転速度は遅い。その原
因は主として財政問題である。移転速度が遅いため、政府により強制的に移転させる計画もある。
・ 工業団地においては、廃棄物の再利用計画があるが、実施はまだおこなわれていない。
・ 環境リスク管理はその必要性は認識されているが、まだまだおこなわれていないのが実情である。
そのため、環境への影響が懸念されている。
・ 全企業が環境リスク管理について把握しておらず、管理が徹底されていないようである。
5.ホーチミン市科学技術局(DOST)
DOST を訪問し、ホーチミン市の環境問題などについて聞き取り調査をおこなった。
・ ホーチミン市における環境問題については、基本的には DONRE が把握している。
・ DOST は、現在、15 プロジェクトを実施しており、それらの中には海外や国内資金によって実施
している。環境関連のプロジェクトもある。
・ ホーチミン市の環境問題としてまず挙げられるのが、排水の問題である。DOST として「サイゴ
ン川の汚染」について下水や雤水などによる影響を含めたプロジェクト提案している。
・ 水資源確保のため、地下水開発についても関わっている。計画的に管理していく必要がある。
・ ホーチミン市には15の工業団地があり、そのうち50%が排水処理されている。
・ 医療排水も問題になりつつある。およそ 500~1,000L/bed/day の排水量である。
・ 医療廃棄物については、一部ベルギーの援助で 10 年前より焼却処分されている。処理量は
7ton/day である。
・ ホーチミン郊外の病院に焼却炉がある。処理量は 20~25kg/day である。
・ ホーチミン市には 20 社の廃棄物処理会社があり、焼却炉技術を保有している会社もある。
・ 工業廃棄物や生活廃棄物は埋立処分されている。
・ 工業団地の工場内における大気測定機器が必要であるが、2,500US$と高いため、ベトナムで生産
することも検討している。
6.Go Cat 廃棄物処分場
ホーチミン市内から 18km 離れたところに建設されている Go Cat 廃棄物埋立処分場を見学し、職
員から概要を聞き取り調査した。
・ Go Cat 処分場の処分地面積は、25ha で実際には 17.5ha である。
・ 地表に対して 7m 下、地上に 15m、よって 22m 高さに廃棄物を埋立処分している。
・ 処分は、2000 年に開始し、2007 年 8 月に埋立処分を終了した。当時は 2,000~3,000ton/day 搬
入されていた。
・ 処分場は、底に遮水シートを張り、廃棄物に覆土し、現在は最上部に遮水シートを張る予定であ
る。
・ 現在、Phouc 処分場が稼働しており、そのほかに Da Bhuoc 処分場があるが、現在のところ未実
施である。
・ Go Cat 処分場はオランダの援助によって建設され、運営されてきた。現在はオランダ側は引き上
7
げている。
・ Go Cat 処分場には浸出水処理設備やバイオガス発電システムがある。
・ 浸出水処理は、高濃度のアンモニア性窒素と COD 成分が含まれており、UASB 法、A2O 法、膜
分離などによって処理し、処理水は処分場に循環している。
・ バイオガス発電システムは、3基あり、現在は1基が稼働している。24時間稼働で 2.3MW の
発電能力がある。
・ Go Cat 処 分 場 の 管 理 は 、 DONRE が ホ ー チ ミ ン 市 環 境 会 社 ( CITENCO; HCM City
Environmental Company)に委託している。
Go Cat 処分場入口
処分場模型
処分場全景
バイオガス回収管
バイオガス発電設備
浸出水処理施設
8
7.Van Lang 大学環境技術管理学部
環境技術管理学部を訪問し、ホーチミン市における廃棄物処分の現状と問題点を中心に聞き取り調
査をおこなった。
・ ホーチミン市においては、30 年前以前については環境についてほとんど歴史がない。
・ ホーチミン市の廃棄物管理については、技術的な問題以上に管理が大きな問題となっている。
・ ホーチミン市では第一に廃棄物管理、第二に環境管理、第三に都市管理が重要課題である。
・ ホーチミン市は人口 8 百万人、面積 2,093.7km2、市内は 24 区に分かれ、ホーチミン市中心には
14 区ある。11 の工業団地、3 の輸出加工地区、その他 1 つの地区がある。
・ ホーチミン市には大規模工場が 4,000 工場、中小規模が 12,000 工場ある。
・ 市内に小規模の病院が 13 件、クリニックレベルが 12,000 件ある。またマーケットも複数存在す
る。
・ ホーチミン市で発生する一般廃棄物は 5,700~6,000ton/day、危険な廃棄物は 150~200ton/day
である。
・ ホーチミン市には現在廃棄物処分場が 2 か所ある。一つが Phuoc Hiep 処分場で、ホーチミン市
内から 50km、処分地面積は 880ha である。もう一つが Da Phuoc 処分場で、ホーチミン市内か
ら 20km、処分地面積は 680ha である。
・ 廃棄物の 60~90%は有機物である。
・ 浸出水は、2,000m3/day 発生しており、COD が 5,000~6,000mg/L、アンモニア性窒素が
2,200mg/L である。
・ ポリ袋やプラスチックの再生利用について検討している。生分解性有機物については、コンポス
トやバイオガス生成などを検討している。
・ その他、浄化槽対策や廃棄物処理のモニタリングシステム構築が問題となっている。
・ 工業団地からの排水は、15 年間排水基準を達成していない。すでに処分が終了した Go Cat 処理
場の浸出水も未達成である。
・ Go Cat 処分場の建設費は、24 百万 US$で、そのうち 18 百万 US$がオランダの支援、
6 百万 US$は
ベトナム側の負担である。
・ Phuoc Hiep 処分場ではバイオガス生成はなく、浸出水処理を実施している。
・ Phuoc Hiep 処分場の管理は、現在 3 社の民間会社が提案している。
・ Phuoc Hiep 処分場は 880ha あるが、分割して処分を実施しており、現在は 45ha 分から始めてい
る。この 45ha に対し、CDM が検討されている。
・ Da Phuoc 処分場は、Go Cat 処分場と同様の設計で米国が関わっており、コンポストなどのリサ
イクルが含まれている。
・ 1991 年から 2002 年までに運用された Dang Thanh 処分場が市内より 22km 離れたところにあり、
およそ 3.2 百万 ton の廃棄物が埋め立てられている。ここで発生するバイオガスについて韓国か
らホーチミン市人民員会に CDM プロジェクトして提案されている。
・ 各家庭では、建築法により浄化槽を設置する義務があるが、同法施行前に建設された建物には浄
化槽が設置されていないところがある。
・ ホーチミン市には 2~3m3 のし尿を回収できるバキュームカーが 200 台あり、300~400m3/day
が処分されている。これらし尿のコンポスト化が提案されている。
・ その他にゴム工場の排水なども問題となっている。
9
・ 現在、第6区で家庭でのゴミの分別を試験的に実施している。
・ Go Cat、Phuoc Hiep 及び Da Phouc 処分場の浸出水処理、リサイクル、コンポストなどについて
3 社から提案がされている。
・ 廃棄物の再利用については、準備金を日本、台湾、韓国などから募っている。
・ プラスチックの再利用として、魚油、植物油から BDF 化することなどがある。
・ 韓国からの CDM プロジェクトの提案に対し、DOST が責任をもっている。
8.LE MINH XUAN 工業団地視察 (LE MINH XUAN INDUSTRIAL PARK)
ホーチミン市の4ヶ所の工業団地の視察については、HEPZA(HCMC EXPORT PROCESSING &
INDUSTRIAL ZONES AUTHORITY)の仲介と同行によって視察を行った。
(1) 概要
工業団地の規模は面積 100ha で 148 の企業が参入している。中小の企業が多い。また、工業団地近
郊に小企業の団地もある。規模は 17ha 内に 130 社入居しており、もとはホーチミン市内にあった企
業が移転したものである。
(2)環境問題
工業団地での環境問題は排ガス、排水と騒音である。水源は地下水とホーチミン市内の水道を用い
ている。各企業に独自で井戸を掘ることは禁止している。
各企業に排水の規制を課せているが管理が十分ではない。企業が団地に入る前に生産方法や排水、
廃棄物処理方法などを DONRE および HEPZA に登録を行うが、実際に登録した方法で処理を行って
いない場合がある。
工業団地には 2 系統の排水処理場があり、処理能力はそれぞれ 2000m3/日で合計 4000m3/日の処理
が可能である。実排水量は 2500~3000 m3/日である。工業団地内の排水管は企業からの排水と雤水
の 2 系統の設備がある。ただし、企業が排水管と雤水管に正しく配管していない場合もあり排水と雤
水が混合している状況である。
排水処理場は 24 時間運転が必要であるが各企業から集めている排水処理費用が尐ないことから運
転が難しい。水の再利用はない。
工業団地内の企業の主な業種は織物、機械、皮革、メッキ、農薬の詰め替え工業である。皮革工業
からの排水が問題となっている。また、農薬の詰め替え工業の排水量は尐ないが有害な排水が出てい
ると考えられる。
各企業の排水は月 1 回測定しており監視している。また、その結果を工業団地事務所の掲示板に掲
示している。企業の排水データの資料を入手した。
(3)皮革工場見学 Dang Tu Ky Co.,Ltd.(鄧四記皮革有限公司)
台湾の皮革企業である。牛皮の加工を行っている。比較的十分な排水処理設があり、嫌気-好気処理
を行っていた。皮なめしに使用するクロムは凝集沈殿によって除去している。小規模ながら水質分析
室を持っており COD など水質も独自で測定を行っているようで対策は十分に取っている企業であっ
た。
10
排水については原水の COD が 2000mg/L で処理水が 340~370mg/L であると社長から聞いたが、
工業団地事務所で入手した資料では 844.8mg/L で工業団地の規制値である 400mg/L を大きく超過し
ており、
十分に処理できていないことがわかる。
皮革工場からの排水処理は課題が多いと考えられる。
LE MINH XUAN 工業団地事務所
工業団地総合排水処理場流入水
皮革工場排水
皮革工場排水処理施設
9.TAN BINH 工業団地視察 (TAN BINH IMPORT-EXPORT CORP.)
(1)概要
1997 年にスタートした工業団地である。150ha の敷地のうち 123ha を使用している。インスタン
ト麺で日本企業のエーコックが入居している。企業数は 134 社で環境対策を行っているクリーン企業
で構成しているが、排水基準を満たしていない企業もある。
(2)環境問題
団地内の排水処理を行う総合処理場がある。2006 年 6 月から稼働している。容量は 2000 m3/日で
2 槽式のバッチ処理方式であった。各企業がベトナムの排水基準の C 基準で排出した排水を B 基準ま
で浄化する。各企業の排水処理施設はベトナム国内の環境企業が設置している。工業団地からの排水
は河川に放流しており、排水は放流先の河川水より水質が良い。排水処理は十分に対応しているとの
ことであった。水の再利用の計画はない。
11
工業団地副社長の希望では環境への影響を尐なく、経済的にも成り立つ環境管理を行いたいことか
ら団地内企業の環境管理のノウハウを知りたいとのことであった。
TAN BINH 工業団地事務所
会談風景
TAN BINH 工業団地排水処理場
2 槽バッチ式排水処理システム
1 0 . HIEP PHUOC 工 業 団 地 視 察 (HIEP PHUOC INDUSTRIAL PARK JOIN STOCK
COMPANY)
(1) 概要
1997 年 1 段階目開発を行った。工業団地内の主な企業は皮革、めっき、機械、海産物加工、電気製
品、セメント、火力発電(680kW)である。
(2) 環境問題
排水処理場は建設中で 2007 年 12 月から始動する計画である。皮革工場で東南アジア最大の工場を
有しており、工業団地内の排水のなかで最大の汚染源である。また、農薬の詰め替え工場から臭気が
問題である。
臭気の測定方法や臭気対策を行いたいことから臭気対策技術の情報提供の希望があった。
また、小規模の皮革工場の見学し運用が容易な(薬剤添加など)処理方法を教えて欲しいと依頼があ
った。
12
HIEP PHUOC 工業団地図
工業団地内企業
11.Tan Thuan 工業団地視察 (Tan Thuan Export Prosessing Zone Development Corp.)
(1) 概要
ベトナム発の工業団地で成功している工業団地である。面積 300ha の工業団地で 60%の面積に企
業が入居している。企業数は 115 社である。
(2)
環境問題
1996 年に総合排水処理場を建設した。処理量は
10000 m3/日で今回訪問した 4 ヶ所の工業団地のなか
で最大である。工業団地内に下水管が 32km 敷設され
ている。処理方式は物理処理後に生物処理を行う 2 段
で処理するシステムであったが、現在は凝集沈殿の物
理処理のみ行っており生物処理はせずに放流している。
十分に浄化できているかは不明である。
工業団地の説明では、環境保護は正しく行われてお
り、工業団地から環境汚染は 15 年間なくホー
Tan Thuan 工業団地
チミン人民委員会から表彰されたほど管理は行き届い
ているとのことであった。コストが高いことから水の再利用の計画はない。
Ⅴ
まとめ
ホーチミン市の市内河川であるサイゴン川の水質改善を推進するためには、次の対策を実施するこ
とが求められる。
1.汚濁発生源(工場、家庭)での排水処理
(1)工場
ホーチミン市では皮革工場や化学工場など一部工場では有害物質を含む排水が発生していると思わ
れる。そのような工場では、工場内で適切に処理することが求められる。また、食品加工やゴム製造
工場など、高濃度有機排水を排出しているところが多く、生物処理によって有機物濃度を低減させて
いくことが求められる。しかしながら、財政的な問題に加え、排水基準に伴う罰則が緩いため、処理
しないほうが安価という逃げ道がある。そのため、工場における排水対策は遅れ、水環境保全が滞っ
13
ている。排水基準の効果的な運用のため、罰則の強化、排水処理設備設置の優遇策、環境保全先進企
業に対する表彰や対策が遅れている企業名の公開など、技術的な対策と併せて、法などの整備が必要
である。
(2)家庭
浄化槽が建築法によって義務付けられているが、義務以前の家庭からの排水が問題となっている。
下水処理場の整備が JICA のマスタープランによって提言されているが、浄化槽の整備なども併せて
推進していく必要がある。
2.工場内での製造プロセスの見直し
今回の調査では、多くの工場を視察することはできなかったため、市内河川保全に重要な課題であ
るものの、現状を把握するまでにはいたらなかった。製品の洗浄方法の見直しなどにより、使用水量
の削減や水質改善につながることから、直接的に企業の損益につながる課題である。このようなこと
から、企業成長に伴い、企業自らが取り組んでいくものと思われる。
3.工場の集中化(工業団地の移転)と工業団地での適切な排水処理
ホーチミン市政府は、住居地域にあるような工場を工業団地に移転する計画を立て、実施している
ところであるが、財政的な問題などの諸事情により、滞っているようである。工業団地に高濃度有機
廃水、強酸・強アルカリ廃水、有害物質含有廃水などを排出する工場を集中させ、工業団地内で一括
処理していくことは、財政的に困難な中小企業にとっても比較的安価で処理できる方法である。
Ⅵ
商談会に向けて
以上のことから、サイゴン川の水質改善のために役立つ大阪府内企業の想定される環境シーズは次
のとおりである。
1.皮革工場で発生するクロム等有害物質処理技術
2.食品加工工場などで発生する高濃度有機排水処理技術
3.工場から発生する臭気対策技術(本調査では皮革、農薬詰替)
4.家庭雑排水を処理する浄化槽技術
5.工業団地の排水処理施設の施設設計と運転・維持管理技術
以上が具体的な課題であるが、環境保護技術は開発途上にあり排水、排ガス、固形廃棄物処理およ
びリサイクルなど多くの分野で環境企業のビジネスチャンスがあると思われる。しかしながら、ホー
チミン市の現状としては環境保護の意識はそれほど高くはなく、環境保護よりも経済性を優先させて
いることから企業が環境対策にコストをかける姿勢ほとんど見られない。その一方で、ホーチミン市
の行政機関や企業を抱える工業団地では環境汚染が深刻であることを認識しているが効果的な指導が
できない状況にある。そのため、環境ビジネスでの参入では企業へ環境対策についての啓発を行うこ
とでニーズを掘り起こせる可能性があると考えられる。
そこで、商談会では上記に示した課題などについて大阪府の環境における行政指導や大阪府下の企
業が行った環境対策の実例を紹介し、環境保護についての啓発をする情報を提供し、併せてビジネス
ミーティングを行うことによりベトナムでの環境保護技術でのビジネスチャンスが生まれてくる可能
性があると考えられる。
以上
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