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KEKB LER ビ−ムの 13Hz 振動のTBTモニタによる長時間観測

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KEKB LER ビ−ムの 13Hz 振動のTBTモニタによる長時間観測
KEKB LER ビ−ムの 13Hz 振動のTBTモニタによる長時間観測
High Energy Accelerator Research Organization
Accelerator Laboratory
Noboru Yamamoto
DRAFT 1999 / 8 / 12
概要
KEKBのビ−ム振動をTBT(Turn by Turn) BPMシステムを使い観測した。f = 13Hz成分の変動をほぼ一日
の間観測した。時間帯による振動振幅や振動周波数の変化は観測されなかった。1Hz以上の振動で主要な振動は振動周
波数の顕著な変化も見えない。
1
始めに
Asymmetric colliderであるKEKBにおいては、二つのビ−ム軌道の変動は衝突点でのビ−ムのすれ違いを生じ、その
結果として衝突ビ−ムのルミノシティを減少させる要因となる。慎重な加速器スタディと調整の結果これらの振動による
ルミノシティの減少がKEKB加速器の最高性能達成を妨げる要因となる可能性が出てきた。
ビ−ム振動によるルミノシティ減少を議論するにはまず、この振動が実際にどのような影響をKEKB加速器にたい
して及ぼしているかを調査する必要がある。
KEKBに設置されたTurn by turnモニタ[1]はこの様な振動の調査には有効な測定装置の一つである。この装置は、
加速器を周回するビ−ムの位置を、周回周器に同期し観測するものである。この装置には、64k長までのビ−ム位置情報
を蓄えることができ、直接ビ−ムの振動をとらえる事が可能である。
今回の測定では、ビ−ム信号の時系列デ−タをFFTにより記録し、低周波の信号の振動成分の大きさをFFTにて求
めた。またこの測定を連続的に行うことにより長時間にわたる振動成分の強度変化を観測した。
2
測定方法
KEKBのTurn by Turnモニタシステム[1]はBPMシステムの内HER・LERそれぞれ四台のBPM電極を共有して
使っている。これらの電極の信号をD5およびD11の制御室に設置した回路で検波、蓄積しこれをKEKB制御システム
のVME計算機(IOCBMD05BおよびIOCBMD11B)で処理しビ−ム位置信号としている。検出回路は 4セット(各制
御室2セット)用意されており、HER/LERを切り替えて使うようになっている。
今回振動測定をおこなったLERリングでは、M323QEAP , M327QW8OP, M100QEAP, M104QWNPの四台
の電極が使われている。これらの電極位置でのLERのTwissパラメ−タなどを表1に示す。
表 1: TBTモニタ位置でのTwissパラメ−タ(LER). Optics=“28JAN99c”
βx
βy
ηx
νx
νy
M323QEAP
11 m
8m
0.7 m
201.747
198.527
D5
M327QW8OP
31 m
23 m
0
203.664
200.238
1
D11
M100QEAP M104QWNP
11 m
31 m
8m
23 m
0.7 m
0
62.0085
63.9254
59.4939
61.1593
200
180
160
140
Fourier Amplitude
120
100
80
60
40
20
0
0
10
20
30
40
50
Frequency (Hz)
60
70
80
図 1: TBT モニタによるビ−ム振動スペクトラムの一例。横軸は周波数 (Hz) 、縦軸は Fourier 係数で、おおよそ、
3µm/100 unitsとなっている。
TBTモニタは元来はビ−ムの周回毎の軌道位置を測定することができるが、夲測定では、ビ−ム周回のタイミング
信号(revolution signal)を1/8に分周することで、8周毎のデ−タを32768組記録した。これにより、周波数分解能は、
∆f =
508.5868MHz
= 0.38Hz
5120 × 8 × 32768
となる。
測定されたデ−タは測定時刻とそのFourier成分の低周波側を保存した。測定されたスペクトラムの例を図 1 に示す。
この様なスペクトラムの時間変化を図示したものが図 2 である。主なピ−クの中心周波数は、
∆f1 = 10Hz, ∆f2 = 13Hz
である。 50Hz、75Hzの信号はいずれも検出装置の信号から来る信号であると考えている(ビ−ムがないときにもこの
成分は観測されているので)
。
これら、デ−タ変換・収集・解析にはプログラム言語 Python[2] とそこで利用可能なツ−ル(NumericalPython,
gnuplot, Tkinterなど)を利用した。
3
測定結果
図 3は5 Hz - 15Hz のフ−リエ係数のほぼ一日にわたる長時間の時間変化を示している。各係数は指数減衰法による
平均を行って、短時間の変動成分は除いてある。この図はちょうど、図 2をz-y平面上に射影した様な図になっている。
縦軸の単位は、図 と同じく3µm /100 unitsである。この時のKEKBリングに蓄積されたビ−ム電流の記録を図示
すると、図 3 となる。
リングにビ−ムが無い時には、TBTの信号が発散してしまっていることがこれらの図からも見て取れる。
M104QWNPおよびM327QW8OPにおけるβy は同じであるので、図 3 と図 3 でほぼ同じ振幅が観測されること
は、観測されている振動信号は測定系の問題ではなく、ビ−ム由来の信号から来るものであることを示している。一方水
平方向のビ−ム振動のスペクトラムを見てみると、図 3 となる。
これらのデ−タから、これらの観測点でのビ−ム振動の大きさはおおよそ、
2
Fourier Amplitude
250
200
150
100
50
25
20
0
15
0
20
10 data number
40
60
Freqency ( bin number)
5
80
100 0
図 2: TBTモニタによるビ−ム振動スペクトラムの時間変化を3次元グラフとして表示。x軸は周波数に対応するビン番
号, Y軸は時系列デ−タのデ−タ番号である。
(’D11’, 2, ’Y’)
400
350
300
250
200
150
100
50
0
06/09
12:00
06/09
15:00
06/09
18:00
06/09
06/10
21:00
00:00
date/time
06/10
03:00
06/10
06:00
06/10
09:00
図 3: M104QWNP(D11-2)における鉛直方向のビ−ム振動スペクトラムの内低周波のフ−リエ成分の長時間変動を示す。
10Hz, および13Hzの成分が卓越していることがわかる。
3
(’D11’, 2, ’Y’)
50
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
-5
06/09
18:00
06/09
20:00
06/09
22:00
06/10
00:00
06/10
02:00
date/time
06/10
04:00
06/10
06:00
06/10
08:00
06/10
10:00
図 4: KEKBリングの蓄積電流の記録。上側がLER, 下側がHERである。
(’D05’, 2, ’Y’)
400
350
300
250
200
150
100
50
0
06/09
12:00
06/09
15:00
06/09
18:00
06/09
06/10
21:00
00:00
date/time
06/10
03:00
06/10
06:00
06/10
09:00
図 5: M327QW8OP(D5-2)における鉛直方向のビ−ム振動スペクトラムの長時間変化
4
(’D05’, 2, ’X’)
400
350
300
250
200
150
100
50
0
06/09
12:00
06/09
15:00
06/09
18:00
06/09
06/10
21:00
00:00
date/time
06/10
03:00
06/10
06:00
06/10
09:00
06/10
03:00
06/10
06:00
06/10
09:00
(’D11’, 2, ’X’)
400
350
300
250
200
150
100
50
0
06/09
12:00
06/09
15:00
06/09
18:00
06/09
06/10
21:00
00:00
date/time
図 6: a) M327QW8OP(D5-2)および、b)M104QWNPにおける水平方向のビ−ム振動スペクトラムの長時間変化
5
∆y = 300 × 3µ/100 = 9µ
∆x = 70 × 3µ/100 = 2.1µ
(1)
(2)
と見積もられる。これから衝突点での振動の振幅として、
r
1cm
× 9µ = 0.18µ
23m
r
1m
× 2µ = 0.04µ
∆x =
31m
∆y =
(3)
(4)
が推定される。
4
まとめ
KEKB-LERのビ−ム振動をTBTモニタで観測することで、10Hzおよび13Hzに振動成分が存在することがわかった。
この内13Hzの鉛直方向の振動成分は、おおよそ10µ程度の振幅をもつ。この振動は衝突点での振動に換算すると0.18µの
振幅の振動となる。
この振動は実行的なビ−ムサイズを大きくみせ、ルミノシティの減少につながる可能性がある。KEKB-LERのデザ
インビ−ムサイズは、σy∗ = 2µであるからこの振動によってルミノシティは,
s
σy∗ 2
= 0.998
σy∗ 2 + (0.18µ)2 /2
(5)
倍になる可能性がある。
6/9/1999のbeam-beamスキャンのデ−タによればIR付近のビ−ムサイズは4 − 5µと測定されている。この値
を使うと、13Hzのビ−ム振動によるルミノシティのリダクションファクタは、
s
σy∗ 2
σy∗ 2
= 0.999
+ (0.18µ)2 /2
(6)
程度になる。
このビ−ム振動が一ヶ所のQCSの振動から来ているとすると、その振幅はおおよそ
∆y
=
=
9µ
p
βy βy (QCS) k1 (QCS)
9µ
√
= 0.19µ
23m × 200m 0.7
(7)
(8)
と見積もられる。
謝辞
TBT装置を開発し、この測定に際してご協力をいただいた家入孝夫氏、EPICS環境下において、32Kdata長の測定結
果を容易に取り扱うために、comapctSubArrayレコ−ドを開発して下さった、小田切淳一氏に特に感謝します。
6
参考文献
[1] T. Ieiri, private communication.
[2] A.Watters, G. von Rossum, J.C. Ahlstrom, “Internet Programing with Python”, M&T Books, New
York, 1996; Mark Lutz “Programming Python”, O’Reilly & Associates, Inc., 1996 (邦訳「Python入門」
「Pythonプログラミング」,オライリ−ジャパン、Tokyo, 1998; M. Lutz & D. Ascher , “ Learning Python”,
Oreill & Associates, Inc, Sebastopol, USA, 1999
[3] N. Yamamoto “gnuplot.py の使い方”, KEKB メモ
7
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