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≪季刊(年3回発行)≫ 新 緑 号 Vol.14

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≪季刊(年3回発行)≫ 新 緑 号 Vol.14
≪季刊(年3回発行)≫
新
緑
号
Vol.14
企画・編集:こどもとまち支援の専門ネットワーク
新学期も始まり、そろそろ新しい環境に慣れてきた頃ですね。
中学生になった特別支援学校に通う男の子は衣服の脱着が苦手です。
ボタンのあるシャツよりトレーナーを選び、ベルト仕様のズボンは穿かないと
決めています。入学前、母はそんな彼が学生服を嫌がるのは目に見えている。さてどうしたものか、
と思案していました。しかし、彼は入学式の朝さっさとズボンを穿き、上着を羽織りました。成長
に目を細め喜ぶ母。しかし、思わぬところに落とし穴が。家に帰ってくると制服を脱ぎ、洗濯機の
中へ。驚いた母は「洗わないの」とハンガーにかけましたが、彼は「汚い!」と納得いかない様子
です。母子の葛藤はその後も続き、3週間後ついに彼は成し遂げました。母がもうそろそろ大丈夫
だろうと思った隙を狙ってとうとう洗濯してしまいました。にっこりする彼に愕然とする母。彼は
着たものは「汚いから洗う。」と思っています。これは正しいことで、否定できません。「制服」の
特殊性をどう伝えるか、母の試行錯誤は今も続いています。
編集室長
岩谷直子
学童保育所 NPO 法人「なかよしクラブ」
積極的に手を挙げ発言する子どもたち。学童保育所「なかよしクラブ」では、
「自立心」
「積極性」
「協調性」
を育めるよう、日頃の活動の中でも、多彩に学ぶ機会を取り入れています。
春休み中のとある一日。デザインの仕事を手掛ける保護者が講師となり、
「オリジナルキャラクター」作りの
ポイントを伝授するワークショップを行っていました。各自がイメージを膨らませ個性の光るキャラクターを
生み出していました。
日頃は一輪車やサッカーなどの外遊びなどはもちろん、コマ回しやけん玉、将棋、竹馬など昔懐かしい遊び
を楽しみ、テレビやゲームなどでは得られない貴重な体験ができるよう、遊びにも趣向を凝らします。
活動の内容も指導者任せにせず、保護者や子どもたちが一緒になり主体的に考えます。特に年間活動の中で
もビッグイベントである夏のキャンプや祭り、クリスマス会などは保護者も参加し親子一緒に楽しんでいます。
保護者同士が親睦を深める交流会も盛んで、互いの子育てについて相
談し合い学びながら、親と子がともに成長できる学童保育所です。
*お問い合わせ先:92-7555(平日13時~19時)
*住所:岩成台10-8-5
~1~
石田 義忠:京都教育大学教育心理学科
私のはじまり
シリーズ3
発達の道すじ(出生から2歳)
卒業後、聖母学院教諭、愛知県心身障害者
コロニー心理判定員を経て、半田・一宮な
どの児童相談所長を歴任。現在、愛知県相
談支援アドバイザー、愛知県弥富寮コーディネイター
はじめに
発達心理学を勉強する人なら誰でも、ピアジェの発達理論に触れます。ピアジェは子どもの生活をつぶさに
観察し、それぞれの年齢における子どもの知覚、思考などの特徴を提示しました。これが有名なピアジェの発
達段階です。このピアジェの発達段階を骨子として、私の実践を付け加えながら、以下に子どもの発達の道す
じについて述べます。
感覚・運動を中心に姿勢と知覚の基本作り
1.<反射行為から随意行動へ>
生後間もなくの赤ちゃんは、乳首が触れるとそれを吸う、手に物が触れると握りしめようとするなど、
反射行為で環境に適応しています。生後6か月頃になると、反射行為は消失し、脳の指令による随意行動
に変わってきます。いつまでも原始反射が残るのは問題です。(脳性マヒなどの疑い)
2.<姿勢を整える(首のすわり→お座り→ハイハイ→歩行)>
身体発達には順序があります。頭部から足部への順序です。何故かと言うと、地球に重力があるからで
す。またそれは、長い人類の進化の過程で獲得してきたものです。この姿勢を整えていくのに重要な役割
を担っているのが、体性感覚です。前庭覚(平衡感、動き、重力などを感じる)と固有覚(関節の動きな
どを感じる)があります。重要なことは、この体性感覚を中心に、1歳頃、脳内に身体地図(ボディイメ
ージ)が形成されることです。
3.<循環反応>
この発達段階の特徴は循環反応(繰り返し動作)です。発達に応じて、1次循環反応(自分の身体の繰
り返し)
、2次循環反応(手に物を持っての繰り返し)、3次循環反応(物を落とすなど、変化を楽しむ)
があります。
4.<知覚を整え外界を認識する>
前庭感・固有覚・触覚>聴覚>視覚の順に整えられます。聴覚機能を整えるとは、音を聞き分けること、
音を記憶することです。それが、口の構音機能につながっていきます。視覚機能を整えるとは、見きわめ
ること、視覚記憶を育てることです。それは、手の操作につながっています。
5.<模倣>
他者を真似たり、新しいことを学習していくのに、模倣は重要な機能です。生後8か月頃から始まりま
す。(おつむテンテンなど)
模倣には、一方出し模倣(気分によって)
、即応模倣、道具操作模倣、音声模倣、延滞模倣(過去のこと
を思い出して)などがあります。
6.<発語>
1歳前になると、発語が始まります。発語のプロセスを簡単に述べます。まず標識です。生後6か月頃
になると、ある事柄から次の行動が予測できるようになります。
(帽子を被ったので、外に出ると分かる。)
次は、動作言葉が可能になります。
(バイバイなど)
言語には、理解言語と表出言語があります。身近な物の名前が分かって(理解言語)
、次にその言葉を発し
ます。
(表出言語)
7.<会話のはじまり>
発語と共に、指さしが起こってます。指さしは、会話の基本形です。子どもが車を指して「ブーブー」
と母親に言います。子ども、車、母親を3項関係と言います。会話は、自分と他者とで、共通の世界を持
つことです。
~2~
「遊んで・・・遊んで・・・(笑)」
理学療法士 石田
弘子
ハイハイでどんどん移動できるようになった赤ちゃんは、毎日が新しいことの連続です。
床のゴミを目ざとく見つけて口へ入れたり、引き出しから中身を出して散乱させたり、手の
届く台の上のものをみんな落とたり・・・と、とにかく目が離せない時期です。「静かな時は何
かしら悪さをしている時」と苦笑してしまいます。
「何だろう、知りたい、やってみたい」探
求心と「面白い、たのしい、嬉しい」プラスの感情から、人は成長していくのだな・・・と納得。
これから先は、安全を確保しつつもなるべく自由に活動できる環境を与えてあげましょう。
「自分でやってみる」ことを通して、赤ちゃんは頭と体をフル稼働し、知的さと運動の両面
を学習しているのです。そこへ大好きなママが参加してくれたら、もっと楽しいこと間違い
なし。「何かをさせよう」ではなく、
「一緒に楽しもう」という気持ちで遊ぶと、赤ちゃんと
のラブラブな時間になるでしょう。
もちろん情緒面にも働きかけることができ、「誰かと遊ぶって面白いな」という気持ちは、
他人とのコミュニケーションをとっていく基礎となっていくのです。おとなしく一人で遊ん
でくれているからいいや・・・とばかり思わず、ぜひこの「赤ちゃんらしいゴールデンタイム」
を一緒に楽しんでください。
まてまて・・・とハイハイを追いかけたり、目の前のおもちゃを服に隠して探したり。数回や
ってその遊びが理解できると、自分から真似をしたりできて、ビックリすることも増えてき
ます。どんな遊びが好きなのか・・・一緒に見つけていけるといいですね。
運動も、ハイハイからつかまり立ち、伝い歩き、そして手を持つと歩いてくれる・・・ように
なり、ついに一人歩きへとめざましく成長していきます。次は歩けるようになって広がった
世界へ GO!幼児期の始まりですね。
<プロフィール>
理学療法士。平成元年~平成 18 年愛知県コロニー勤務。平成 18 年 4 月~訪問リハビリ(小児担当)
。
二女一男の母。次女はダウン症。
~3~
ご存知ですか、
むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群 Restless Legs Syndrome)を。
小児科医・伊藤
淳(こどもゆめクリニック・白山町)
むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)の訴えは下肢の表面ではなく内側(深部)に不
快な感じがあり、
「むずむずする」
、「虫が這う」
、
「痛がゆい」、「ちくちくする」など患者さんによ
ってさまざまな言葉で表現されます。
また入眠時やじっと座っている時、横になっている時など安静状態で脚が「むずむずする」など
の不快感が増大しますが、何かに熱中して気持ちが紛れると症状は弱まります。脚を叩く、さする、
冷たい水に浸す、寝返りを繰り返す等の行為で不快感は軽くなります。
しかし重症になると、不快感からじっとしていられなくなり、歩き回らないとどうにもならなくな
ります。
症状は上肢にも出現することがあります。
病気の初期には、夕方から夜にかけて症状を感じますが、進行すると昼間も症状が現れるように
なることもあります。一般的には夕方から夜間に症状が増強することが多く、入眠障害や熟睡障害
(中途覚醒)のような睡眠障害も起こします。このため日中の強い眠気を引き起こし日常生活に大
きな影響を及ぼすこともあり、時には「うつ状態」の引き金になることもあります。
家族に同様の症状が出現することが多いことも診断の助けになります。最終的には血液検査や終
夜睡眠ポリグラフ検査(睡眠時の脳波や呼吸状態等を調べる検査)などで診断が確定することが多
いようです。
いくつかの調査によれば日本における「むずむず脚症候群」の有病率は 2~5%程度と考えられ
ており、決して珍しい病気ではありませんが、広く知られているとは言えない面もあり、診断がつ
かないまま様々な診療科を転々とされている患者さんも多いようです。
発病は中高年が多いようですが、小児の報告も散見されるようになりました。特に小児は独特の
不快感を表現することが難しく、
「成長痛」と言われたりして、かなりの数の患児が結果的に放置
されているのではないかとも思われます。
現在は原因に関しても解明が進み、保険診療の認可を受けた治療薬も使用が始まりました。
このような症状が思い当たる方は是非、医師に御相談ください。
<プロフィール>
1986 年、国立山口大学医学部卒業。名古屋徳洲会総合病院小児科で 25 年間勤務後、2012 年 6 月から
白山町の「こどもゆめクリニック」(旧片山こどもクリニック)勤務。
日本小児科学会認定医、日本医師会認定産業医、日本プライマリケア学会認定医。
~4~
“子育ては思い通りにいかないもの”
助産師 笠岡 直子(中央台)
妊娠中は「無事に産まれてきてくれるだけで幸せ!」と願っていたはずですが・・・。
日ごとに可愛さ、愛しさが増して「こうなってほしい」と期待することが増えていきます。母親と
しても「こうありたい!」という気持ちから「完全母乳で育てたいんです」、「母乳だけでなく、ミ
ルクも飲めるように育てたいんです」などという要求も出てきます。
しかし、母乳分泌も実際にやってみなければ、よく出るのか、いつまで出るのかも分かりません
よね。ましてや、赤ちゃんにも個性があり、哺乳瓶やミルクが苦手だったり、母乳の飲み方も上手
な子や、吸う力の弱い子もいたり、自分から卒乳してしまう子もいますね。
親は誰もが自分より能力の高い人間になってほしいと期待が大きくなるものです。が、能力が高
い子ども=人間的に素晴らしい人になるとは限りません。つらいことがあっても、頑張れる能力を
身に付けていくことや、生きていて楽しいと思える体験をさせたり、素晴らしい人との出会いや、
感動する経験をさせてあげることの方が大切ですよね。
今はネットで様々な情報を簡単に得ることが出来ますが、自分に合う情報かを見極めることが難
しいです。
「子どもは親の思い通りにはならない」ということを学ぶために赤ちゃん(子ども)は産
まれてきたのかも??と早めに覚悟を決めて子育てを始めると、自分の短所や長所も冷静に観察で
きて子育てを楽しむことが出来るようになる気がしますね。
<プロフィール>
昭和 47 年から名古屋大学病院で助産師として勤務。退職後は愛知県看護協会理事などの職を歴任後、平成 5 年に「かさ
おか母乳・育児相談所」を開所。現在は、母乳相談を中心に認定心理士、思春期相談士として、仲間と共に「性教育」や
「命」についての講演活動などを行う。
「見えない障がい」と向き合う
治郎丸 慶子
「学校コワイ」という自閉症啓発絵本がある。発達障害の小学校の女の子の視点で何
に生きづらさを感じているか、学校でどう困っているかを描いている。これは素晴らし
い絵本で、その女の子に共感できるように、素直な言葉で表現されている。黒板の字を
写せない、放課は何をしたらいいかわからない、
「今」何をしたらいいかわからない・・・
どれだけ苦しくて、理解を必要としていることか。
人と話すのが怖くなり、学校へ行けなくなる。彼女はこんなことも言っている。
「勉強の時間と休み時間がかわりばんこにくるって知らなかった。だって時間割には書
いてないんだもん。」
見えない障がいに気がついて欲しい。見てわからない障がいほど、理解するのに工夫
と寄り添う気持ちが欲しい。
分かり合えた時ほど感動する瞬間はない。この本は是非読んで欲しい。
★大阪市教育委員会 第13回「はーと&はーと」絵本原作コンクール奨励賞
「学校コワイ」文:まつばもこ 絵:かしだあゆみ
~5~
編集スタッフの
ちょこっとコラム
まちのお知らせ
講演会「発達障がいを生きる~生きる力を考える~」
*障がいをどう受容し、どう共に生きていくかについて考えます。大河ドラマ「平家物語」の題字
を書いたダウン症の金澤翔子さんの母親が、我が子とどう向き合ったのか、などをお話しします。
日
時 : 平成 26 年 7 月 13 日(日)13:00~15:30
場
所 :
春日井市東部市民センター 3 階 視聴覚室
講
師 :
石田
資料代 :
義忠(元・児童相談所長)
300 円
*要予約です。申し込みは、NPO法人まちのエキスパネット(☎0568-52-7315)まで。
★団体でお得なピッツァパーティーセット♪
3人以上のご来店でお一人様につき¥1,000♪
(お好きなピザ 1 枚、ドルチェ、ソフトドリンクフリー付)
営
業: 月曜日~金曜日 9:30~17:00
JR高蔵寺駅北口ロータリー西側
(青山駅前ビル1F)
[TEL] 090-3838-1662
(Pは店裏に 3 台分有)
★金曜日はピッツァの日
なんとピザがすべて¥500♪
<編集後記>新年度が始まって、しばらく経ちました。5 月病なんかに負けてませんか?
今回も、様々な専門家の方からの情報が満載です。簡単には手に入らない情報ばかりです。お役に立つ方が一人でもいらっし
ゃれば嬉しいです。ご意見ご感想お待ちしております。(浅)
*NPO法人まちのエキスパネット:高蔵寺ニュータウンとその周辺の活性化を目指して活動中。目指すは「インクル
ージョン=共生」支えあう地域です。
<事業内容> まちづくり支援事業―高蔵寺フォークジャンボリー・高蔵寺きてみん祭 in サンマルシェ
障がい児者就労支援事業―児童発達支援事業・放課後等デイサービス事業・地域活動支援センター事業
広報誌発行事業―まちツボニュース(毎月)
・こどもま~ち(季刊)
*NPO法人チームK・O・Z:少子高齢化・人口減少が著しいニュータウンを、チームK・O・Zの強みである不動
産知識などを活かし、多世代が住みやすい元気な〝まちづくり〟を目指します。
*
は、NPO法人まちのエキスパネットとNPO法人チームK・O・Zが協働で取り組んでいる事業です。
*
は、子育てとまちづくりの支援活動をおこなっています。
<発行元>子どもとまち支援センター(NPO法人まちのエキスパネット内)
(住所)春日井市大留町 5 丁目29-16
(TEL・FAX)0568-52-7315
(Mail)[email protected]
*「こどもま~ち」の印刷は、
(一社)あいち障がい者自立支援協会 就労移行支援事業所「ベスト」の訓練生が行いました。
~6~
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