...

(特集)学科改組

by user

on
Category: Documents
3

views

Report

Comments

Transcript

(特集)学科改組
仰岳会会報 第40号
特 集
《学科改組》
富山大学工学部はこれまで,電気システム工学科,知能情報工学科,機械知能システム工学科,
物質生命工学科の4学科から構成されていましたが,平成20年4月これまでの物質生命工学科が,
生命工学科,環境応用化学科,材料機能工学科に再編され6学科で構成されることとなりました.
このように,工学部においては社会のニーズの多様化,産官学の協力体制等にさらに柔軟に対応で
きるような体勢が整いつつあります.このような学科改組については,ご卒業生の皆様は富山大学
のホームページあるいはマスメディア等でご存知の方も多いと思われますが,仰岳会会報第40号に
おける特集として,新学科学科長の先生方から詳しい学科紹介の記事をお寄せいただきました.
環境応用化学科のご紹介
環境応用化学科 20年度学科長 北 野 博 巳 平成20年4月に発足した環境応用学科では、地球
環境を維持しながらも、人類の生活を豊かにする物
質を創造し、化学の基礎知識と理解力を駆使して環
境調和型社会で活躍できる、「ものづくり」のリー
ダーの育成を目指しています。限りあるエネルギー
資源の有効利用や、新たなエネルギー源の開発を行
うと共に、悪化し続ける地球環境の改善を図る革新
的な技術の開発をめざす未来志向型の人を育てたい
と考えています。
そのような目的のため、本学科では、化学、物理、
数学の基礎力を1、2年次で十分つけ、3年次にな
ると、より専門的な応用化学の知識や理解を高め、
実験技術を身につけます。4年次では、地球環境保
全を配慮した新しい物質づくり、その実用化や工業
化、さらに新エネルギーの開発といった最先端の研
究を行い、応用化学をいかにして未来社会に役立て
ていくかを学びます。
いくつかの研究についてご紹介しましょう。まず、
二酸化炭素の再資源化、廃プラスチックの化学的リ
サイクル、
新しい触媒を用いた天然ガスの有効利用、
石油代替エネルギーや燃料電池の開発といった研究
をとおして、エネルギー資源の枯渇や地球環境の悪
化という切実な問題の解決を試みています。また有
機合成化学の反応を応用して、電子授受、発光、電
導性などの機能をもつ新規な有機化合物の精密な合
成法を開発しています。同様に、生理活性物質を認
識できる金属錯体の開発、工業的に有用な新しい金
属錯体触媒の開発、重金属や貴金属を選択的に捕集・
センシングできる金属化合物材料の開発などをとお
−−
して、無機化学を社会に役立てるための研究を行な
っています。
さらに、タンパク質、糖質、脂質、核酸という生
命分子を駆使して、生体内の現象をモニターする機
能分子、人工酵素や分子認識材料、プラスチックに
替わる新素材などの設計をとおして、生命分子化学
を社会に役立てるための研究を行なっています。ま
た、人間の内外をとりまく『環境』をモニターし、
改善するための新しい方法論を開発し、それを実際
に広く社会に役立てる研究を行なっています。この
ほか、人工臓器に利用できる体にやさしい高分子材
料の合成や、AIDSやアルツハイマー病等に関係
する酵素のセンサー開発などにより、高分子を人々
の幸福な暮らしに役立てようとしています。
このほか、固・液・気の三相の接触により形成さ
れる界面の性質やコロイド粒子に代表される微小界
面に関する基礎理論を学び、微小界面をナノ・テク
ノロジーに応用し、社会に役立てる研究を行なって
います。さらに、新しい薬剤の開発や、天然の薬物
を大量に簡単に合成する手法の開発、物質・材料の
高機能化と環境保全をベースにした、物質・材料・
エネルギー利用の高効率化を目指す新技術開発につ
いて研究しています。
地球環境問題や資源エネルギー問題を解決するた
めの物質や材料の製造には、応用化学の知識と理解
は必須です。新機能性物質の創造・評価・物質変換
の研究をとおして、環境調和型社会の構築に貢献で
きる人材を育成する、それが環境応用化学科の目標
です。
仰岳会会報 第40号
特 集
《学科改組》
仰岳会会報第40号に寄せて
−物質生命システム工学科から3つの新学科へ発展−
生命工学科 20年度学科長 篠 原 寛 明 平成20年4月、これまでの物質生命システム工学
科の改組により、生命工学科、環境応用化学科、材
料機能工学科の3学科が新設され、新入生を迎えま
した。これまでの物質生命システム工学科では、化
学、物理を基盤とするものづくりに関心のある学生
さんが入学され、1年次で大学人としての教養と工
学の基礎を学び、2年次で応用化学、生命工学、プ
ロセス工学、材料工学の4つのコースに分かれて、
その専門的な教育を受けるというユニークな特長を
もち、学生にとって大きな魅力となっていました。
しかし一方でコース選択のとき希望に偏りができた
り、企業からは学科が大き過ぎて何が専門の学科か
良くわからないという声を頂くなどの課題も出てき
ました。このような内外の声を踏まえ、さらに在学
生、県内高校生、地域企業などにアンケート調査を
行い、どのような学科、教育(人材育成)がこれか
らの学生や社会・地域企業の要望を適えるものかと
2年以上かけて物質生命システム工学科教職員で相
談に相談を重ねて、この改組に至りました。物質生
命システム工学科をご卒業された同窓生の皆さんに
は、少しさびしくも感じられるかも知れませんが、
皆さんの卒業された研究室を含む3つの新学科に再
編発展したもの、さらに成長していくものとご理解
いただき、いつでも同窓の研究室に遊びに、また相
談にお寄りいただければうれしく思います。
この新3学科の中で、生命工学科は物質生命シス
テム工学科の生命工学コースとプロセス工学コース
の多くの教員の相談連携により生れました。“医薬
と連携して社会に寄与する生命工学” をキャッチフ
レーズに人々の健康維持にかかわる技術開発や生物
を利用するもの創りを通して社会に貢献できる人材
育成に当たります。2つのコースの融合連携と新し
い先生方の参加により、分子、細胞レベルのバイオ
サイエンス、バイオエンジニアリングから動物、人
体レベルでの医工学、さらに医薬品製造、食品、化
学、環境・エネルギー産業で重要なプロセス生産、
プラント設計までを学べるバイオ系総合学科となり
ました。その教育・研究に当たる教員も工学博士7
名、薬学博士4名、医学博士1名、理学博士1名、
学術(農学)博士1名と正に学際性に富んでいます。
また多くの教員が、医学、薬学、理学の先生方と一
緒に連携して大学院博士教育を担当する生命融合科
学教育部に参加して世界で活躍できる博士を育てて
います。卒業生の就職先も医薬品、医療機器器具、
食品、総合化学、化学製造、環境、分析機器などの
産業から大学教員、国立研究所研究員にまで広がっ
ており、益々広がっていくと期待されます。
ご存知の通り、“薬の富山” と言われるように製薬
産業は地元富山の基盤産業です。また高齢医療、地
域医療への取り組みも富山はたいへん活発です。こ
うした製薬産業や医療を支え、心身ともに健康で安
全な社会を築くために必要な生命工学力を身につ
け、展開できる人材を育てようと生命工学科の教職
員一同燃えています。どうぞ同窓生の皆さん、新し
い3学科に、生命工学科に注目してくださり、研究
室にお寄りください。心よりお待ちしています。
スタッフや教育・研究分野を初め生命工学科の詳細
は以下のHPに出ています。ぜひご覧下さい。
http://pse.eng.u-toyama.ac.jp/life/site7/site/
seimeikougakuka.html −−
仰岳会会報 第40号
特 集
《学科改組》
材料機能工学科のご紹介
材料機能工学科 20年度学科長 穴 田 博(金属 昭和40年度卒)
材料機能工学科は平成20年度の物質生命システム工学科の
改組により誕生しました。平成19年度の物質生命システム工
学科学科長として、今回の学科改組に深く関わりましたので、
改組理由も含めて学科紹介をさせて頂きます。
【物資生命システム工学科の沿革ならびに改組理由】 改組の理由は幾つかありますが、大きな理由としては
「物質
生命システム工学科」の名称と入学後の学生の処遇にありま
した。これらについては簡単な説明を要することと思います。
平成2年、富山大学工学部にバイオ系学科を増設すること
となり、これに関連し既存の「工業化学科」「化学工学科」
「金属工学科」の3学科を講座単位で再編成し、これにバイ
オ系講座を加えて「化学生物工学科」と「物質工学科」の2
学科に改組しました。この時金属工学科はまとまって物質工
学科に移行しましたが、旧工業化学科と旧化学工学科では講
座単位で2学科に移行することとなり、実際に運用してみる
と、カリキュラムの編成や教育・研究に対する弊害が予想以
上に大きいことが判明し、平成9年にこれら二つの学科を合
体した「物質生命システム工学科」が誕生しました。 この新学科では、2年生から「生命工学コース」「応用化学
コース(旧工業化学科)」「プロセス工学コース(旧化学工学
科)」「材料コース(旧金属工学科)」に分かれて専門教育を行
うシステムとなり、ほぼ平成2年度までの旧学科をコース制
により復活させる狙いがありました。ところが実行してみる
と、この新学科にも幾つかの問題があることがわかりました。
その一つは学科名称です。私の研究内容を知っている人に
自分の名刺を渡すと、一様に怪訝な顔をされます。生まれも
育ちも異なる4家族が妥協の産物のような表札を掲げて「物
質生命システム工学科」に住でいるわけで、富山大学の外部
評価委員会からは、早急に名称を改善するよう指摘を受けて
いました。
もう一つは学生のコース選択にかかわる問題です。151名
の入学者は1年間の教養教育を受け 所定単位を取得すれば
2年に進級し、この時にコース選択権を手にしますが、例年
コース別志望人数には大きな格差がある一方で、各コースに
は学生を均等配分する必要があります。希望者が定員オーバ
ーした場合、成績でコース配属を決定することになり、入学
時の志望コースに進学できず、学生のモチベーションにも大
きな影響が生じていました。今回の改組はこれまでの学生の
意向調査結果などを基にして、約2年間にわたって学科内で
慎重審議の末に、最終的にはプロセス工学コースを解体する
と同時に、物質生命システム工学科の教職員全員に所属希望
学科を募り、それぞれの所属学科を決定しました。
昭和40年に「化学工学科」が誕生して以来、長い歴史を持
ち、多くの卒業生を社会に送り出して来られましたプロセス
工学コースの教職員の方々にとって、今回の改組案の受け入
れを断腸の思いで決断されたことと拝察致します。改組時の
−−
責任者として厚く御礼申し上げます。
【材料機能工学科の紹介】
学科の目標と理念: 激動する昨今の社会にあっては、常
に新しい産業、機械プロセス、商品が要求されています。こ
のような社会の先頭に立って産業界をリードし、常に情報源
となっている工学部には、産業界から多種多様な多数の人材
が求められています。変動する時代に即応すべく、生きた工
学の知識・材料の創製、応用に関する高度な技術を身につけ
ることができ、また自らの研究開発プランを築く人間を育成
することを教育目標にし、
「材料機能工学科は「創造性豊か
で材料工学に関する専門知識と応用力を有する,ナノレベル
から学ぶ新機能素材ものづくり工学技術者を育成する」こと
を学科理念としています。
材料機能工学科の構成: 旧学科の材料コースの時代には5
講座でしたが、今回の改組ではプロセス工学コースの山本教
授、吉田准教授、高瀬准教授、山根助教、中村技官、本田技
官(7月退職)の6人。生命工学コースから小平教授に参入
頂き、
8講座となりました。紙面の都合で平成20年度の分野・
スタッフのみを以下にご紹介します。 「材料創製(穴田教授・古井准教授)
」
「組織制御(池野教授・
、
松田教授・川畑助手)
」
、
「粒粉体(山本教授・高瀬准教授)」
「移動現象(吉田准教授、山根助教・中村技官)
」
「機能材料
(寺山教授・佐伯准教授・橋爪助手)
」
「量子材料(西村教授)」
「生物材料(小平教授)
」
「環境材料(佐貫准教授・砂田助教)」。
JABEE認定の学科: 材料機能工学科の授業カリキュラム
は平成20年に日本技術者認定機構(JABEE)から再度認定を
受けました。物質生命システム工学科材料コースとしては、
平成16年に既に認定されており、今回は五年ごとの再審査に
見事合格したことになります。審査員からは、この5年間の
学生ならびに教員の意識改革はすばらしいものがあるとお褒
めにあずかりました。
JABEE認定が得られたことで、外部機関が公平に判断した
結果、我々の学科で行っている材料工学に関わる教育の質と
量、教育機関の施設設備が、社会の要求水準を満たしている
ことが証明されました。これにより本学科の卒業生には、
「技
術士」の一次試験を免除される特典が与えられます。
現在のところ社会におけるJABEEの認知度は宣伝不足のこ
ともあり、十分とは言えませんが、昨今の厳しい社会情勢の
もとでは、同じ採用をするならJABEE認定校から優先するこ
とにきっとなることと予想されます。 材料機能工学科に対する入学志望者は、平成20年度の入試
倍率が3.4倍、平成21年度は6.4倍となり、上々の船出となり
ました。今後とも材料機能工学科の動向に注目下さいますよ
うお願い致します。なお紙面の都合で省かせて頂きましたの
で、学科の詳しい内容については、富山大学のホームページ
(http://www.eng.u-toyama.ac.jp/ja/)をご参照下さい。
Fly UP