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平成23年度の調査報告書(本編) (PDF形式, 2.46MB)

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平成23年度の調査報告書(本編) (PDF形式, 2.46MB)
名古屋テレビ塔の活用調査
平成 24 年 3 月
名古屋市
目
次
はじめに ------------------------------------------------------------------- 2
Ⅰ テレビ塔の概要整理 ----------------------------------------------------- 4
1.テレビ塔建設の背景、経緯 --------------------------------------------- 4
2.テレビ塔の概要 ------------------------------------------------------ 13
3.現状及び課題 -------------------------------------------------------- 17
Ⅱ 資産価値の検討 -------------------------------------------------------- 26
1.調査手法の概要 ------------------------------------------------------ 26
2.調査の概要 ---------------------------------------------------------- 27
3.調査結果要旨 -------------------------------------------------------- 29
Ⅲ 市民へのアンケート調査 ------------------------------------------------ 32
1.調査結果 ------------------------------------------------------------ 32
2.市民が考えるテレビ塔の意義 ------------------------------------------ 40
Ⅳ
有識者等へのヒアリング調査 -------------------------------------------- 41
Ⅴ 類似施設の調査 -------------------------------------------------------- 45
Ⅵ
テレビ塔存続の意義及び必要とされる施策の検討 -------------------------- 54
1.テレビ塔存続の意義 -------------------------------------------------- 54
2.今後取り組むべき必要な施策 ------------------------------------------ 57
Ⅶ
保有形態・運営主体別の比較検討 ---------------------------------------- 60
1.テレビ塔㈱による資金調達 -------------------------------------------- 60
2.想定される所有者 ---------------------------------------------------- 63
3.今後のテレビ塔の所有・運営形態 -------------------------------------- 66
Ⅷ
テレビ塔の活用可能性の検討 -------------------------------------------- 70
Ⅸ
まとめ ---------------------------------------------------------------- 72
付属資料(CVM調査報告書)
1
名古屋テレビ塔の活用調査
はじめに
調査目的
名古屋テレビ塔(以下「テレビ塔」という。)は、昭和 29 年に日本初の集約電
波塔1として建設された歴史的建造物であり、長年名古屋の都心のランドマークと
して市民から親しまれているが、平成 23 年 7 月のアナログ放送終了に伴い集約
電波塔としての役割を終えた。
本調査は、施設の現状及び課題、法令関係等について整理するとともに、今後
のテレビ塔の活用可能性について検討するものである。
調査事項
(A)テレビ塔建設の背景、経緯の調査
(B)施設の現状及び課題の検討
(C)類似施設、参考事例の調査
(D)有識者、市民等へのヒアリング、アンケート調査
(E)資産価値、今後の活用可能性等についての検討
調査期間
平成 23 年 6 月 8 日から平成 24 年 3 月 23 日まで
調査の流れ
本調査では、最初にテレビ塔の概要を整理したうえで、定量的評価手法による
テレビ塔の社会経済的便益を測定し、さらに類似施設との比較、有識者等へのヒ
アリング調査及び市民アンケート調査を通じてテレビ塔が直面する課題を抽出
し、テレビ塔の存続可能性と保有形態・運営主体別の比較、そして今後のテレビ
塔の活用可能性を検討する。
1
複数の放送電波を送信する塔のこと。
2
調査の流れのイメージ
Ⅰ
テレビ塔の概要整理(P.4~)
・ テレビ塔建設の背景、経緯
・ テレビ塔の概要
・ 施設の現状及び課題の整理
Ⅱ
資産価値の検討(P.26~)
Ⅲ
市民へのアンケート調査(P.32~)
Ⅳ
有識者等へのヒアリング調査(P.41~)
Ⅴ
類似施設の調査(P.45~)
Ⅵ
(P.54~)
・ テレビ塔存続の意義
・ 今後取り組むべき必要な施策
Ⅶ
保有形態・運営主体別の比較検討(P.60~)
・ テレビ塔㈱による資金調達
・ 想定される所有者
・ 今後のテレビ塔の所有・運営形態
Ⅷ
テレビ塔の活用可能性の検討(P.70~)
Ⅸ
まとめ(P.72~)
3
Ⅰ
テレビ塔の概要整理
ⅠⅠ テレビ塔の概要整理
テレビ塔の概要整理
本章では、調査の冒頭にあたり、テレビ塔の現状を把握することを目的として、建
設の背景、経緯と施設の概要をまとめ、施設の現状及び課題を整理する。
この章のまとめ
◆ 戦災復興が進む中、昭和 28 年のテレビ放送開始に伴い、名古屋における電波塔
建設に向けて名古屋テレビ塔株式会社が設立され、翌 29 年 6 月に当時「東洋一
の高さ」180mを誇るテレビ塔が完成した
◆ テレビ塔が立地する栄地区は、名駅地区の発展に伴い相対的に商業地としての
地盤沈下が顕著である
◆ テレビ塔は道路上及び都市公園上に立地するため、道路法及び都市公園法の適
用があり、現状は道路占用許可を受けている。また建築基準法上は「工作物」
であるが、空きスペースの改修をする場合、
「建築物」へと扱いが変わることと
なり、現行の法規定への適合化が必要となる
◆ アナログ放送の終了により、名古屋テレビ塔株式会社は収入の軸の一つである
放送事業者からの賃貸料が収受できなくなることに加えて、展望台の入場料収
入も減少しているほか、リニューアル工事には多額の費用が発生することから、
そのコストを同社のみで負担するのは極めて困難である
1.テレビ塔建設の背景、経緯
第二次世界大戦後、市域の約 23%が被災したとされる名古屋市においては、戦災
復興都市計画がいち早く公表され、昭和 21 年から戦災復興の一大事業が実行され
た。立案・推進に当たった名古屋市の田淵寿郎技監(後に助役)は、大規模な区画整
理計画を定め、地主との折衝を精力的に行っている。
戦災復興都市計画の核は久屋大通、若宮大通という 2 本の 100m道路であり、そ
4
れらにより市内中心部を四分割することで延焼を防止し、災害の拡大を防ぐことで
あった。
そのような折、郵政省(現総務省)は昭和 27 年 12 月に、京浜、京阪神、名古屋
の三大都市圏にテレビの周波数割当を決定し、名古屋にはNHKと民放の 2 つのテ
レビ電波が割当てられることとなった。
当時、東京では各放送局がそれぞれ別の場所に送信鉄塔を設置したため、場所に
よっては 1 つの住居に複数の受信アンテナを設置する必要があったことから、不経
済であるだけでなく、都市景観に与える影響も大きいといわれていた。この東京で
の状況を勘案し、名古屋では当初から日本放送協会(以下「NHK」という。)と
中部日本放送株式会社(以下「CBC」という。)が共同で鉄塔を建設することで
検討が進められ、日本初となる集約電波塔が誕生することとなった。
建設場所決定の経緯については記録が残っていないが、電波送信の目的達成のた
め都心に立地せざるを得なかったうえ、広い敷地の確保が必要であることもあり、
100m道路である久屋大通が候補地となったと考えられる。しかしながら、建築基
準法において道路上での「建築物」の建設は、現在はもちろん当時でも原則認めら
れておらず、「工作物」であるとの解釈により建設を可能としている。こうしたと
ころにも、官民一丸となってビッグプロジェクトを推進した当時の意気込みが見て
取れる。
【写真 1】テレビ塔と久屋大通公園(昭和 33 年頃)
5
Ⅰ
テレビ塔の概要整理
昭和 28 年にはテレビ放送が開始され、同年 7 月、名古屋においても電波塔建設・
運営のため、愛知県、名古屋市も出資する名古屋テレビ塔株式会社(以下「テレビ
塔㈱」という。)が設立された。テレビ塔㈱初代社長の神野金之助氏は「テレビ塔
は銭儲けで建設をするわけではなく、社会の役に立つ事業を行う。そのためにも銀
行からの借入をうけない。」という姿勢で、広く名古屋財界の支援を得たとされて
いる。
久屋大通は市管理地であったため、テレビ塔建設に向けて、昭和 28 年 8 月 26 日
にNHKとテレビ塔㈱より市に対して市管理地使用の申請がなされ、同年 9 月 22
日に条件付きで使用が承認されている。主な条件は以下の通り。
使用目的は、テレビジョンアンテナ用基礎鉄塔及び附属施設(展望施設等を
含む)建設のため
使用期間は、昭和 28 年 10 月 1 日から換地処分認可の日まで
市長の承認を得ないで上記の目的以外にこの土地を使用することはできない
外側には一切の広告物の塗付添加をしてはならない
将来、市が施行する高速度鉄道工事に支障のないよう施行すること
増改築又は模様替え等をしようとするときは、その都度市長の承認を得なけ
ればならない
【写真 2】工事の様子(昭和 28 年)
6
昭和 28 年 10 月 1 日、塔体の工事に着手。翌 29 年 6 月 19 日、工期 9 ヶ月という
突貫工事により、当時「東洋一の高さ」(180m)を誇るテレビ塔が完成した。
【写真 3】テレビ塔開業日の行列(昭和 29 年)
テレビ塔を設計した早稲田大学教授(当時。のちに名誉教授。)
・内藤多仲博士は、
大正時代に「耐震壁」という構造方式を編み出し、関東大震災(大正 12 年(1923
年)9 月 1 日発生)でも被害をほとんど受けなかったという日本興業銀行などの高
層建築も手がけており、「耐震建築の父」として日本の耐震構造理論を飛躍的に発
展させた。その後、日本でラジオ放送が始まった大正 14 年より昭和 8 年までに 60
基以上のラジオ放送塔を設計しており、こうした実績を買われてテレビ塔設計を依
頼されたとされる。テレビ塔設計後も、通天閣(昭和 31 年竣工)、別府タワー(同
31 年竣工)、さっぽろテレビ塔(同 32 年竣工)
、東京タワー(同 33 年竣工)、博多
ポートタワー(同 39 年竣工)も手がけたことから、
「塔博士」「昭和の塔つくり」
とも呼ばれる。
こうしてテレビ塔は、日本初の集約電波塔として、展望施設として誕生し、57 年
を経た今でも、名古屋都心のシンボルとして市民に親しまれ続けている。
7
Ⅰ
テレビ塔の概要整理
【写真 4】テレビ塔全景(昭和 33 年頃)
8
【表 1】テレビ塔年表
年
テレビ塔に関する出来事
6月1日
1953 年
(昭和 28 年)
7月1日
9 月 29 日
10 月 1 日
6 月 19 日
1954 年
(昭和 29 年)
6 月 20 日
8 月 22 日
10 月 18 日
1955 年
(昭和 30 年)
テレビ塔を取り巻く社会の出来事
名古屋テレビ塔株式会社 創立事務所設置
(名古屋商工会議所内)
中日スタヂアム プロ野球初ナイタ
ー
3月1日
NHK名古屋放送局 テレビジョン
本放送開始
11 月 7 日
12 月 1 日
中日ドラゴンズ 初の日本一に輝く
「名鉄百貨店」名古屋駅南で開業
2月1日
愛知県文化会館オープン
名古屋テレビ塔株式会社 設立
名古屋テレビ塔 建設予定地で地鎮祭
名古屋テレビ塔 建設工事に着工
名古屋テレビ塔 竣工・記念式典
名古屋テレビ塔 開業(展望料金:大人 50 円、
学生 30 円、小人 20 円)
NHKテレビジョン 名古屋テレビ塔から放
送開始
高松宮殿下 ご来塔
1月1日
1 月 17 日
1 月 27 日
展望台からNHKテレビ全国中継「初日の出」
展望台で初の空中結婚式「加藤達也夫妻」
映画ロケ 松竹映画「哀愁日記」
3 月 28 日
4月5日
6月3日
皇太子殿下(現在の天皇陛下) ご来塔
展望客 100 万人達成
秩父宮殿下 ご来塔
開業 1 周年記念事業 「日米こども大会」開
催
6 月 19 日
6 月 25 日
10 月 10 日
NHK名古屋放送会館 落成・運用
開始
第 1 回名古屋まつり開催
10 月 28 日
大阪・通天閣 開業
3 月 18 日
8 月 24 日
名古屋駅前「地下街」 開業
さっぽろテレビ塔 開業
7 月 15 日
1 月 19 日
4月1日
1956 年
(昭和 31 年)
6 月 24 日
12 月 1 日
1 月 11 日
1957 年
(昭和 32 年)
11 月 7 日
展望客 200 万人達成
清宮貴子親王殿下 ご来塔
地上から展望台まで「クライミング競争」開
催(優勝タイム 2 分 16 秒)
中部日本放送(CBC) 名古屋テレビ塔から
テレビジョン放送開始
展望客 300 万人達成
テレビ塔「五色の夜間カラー大撮影会」 フ
ラッシュ電球 15000 個一瞬の輝き
11 月 15 日
2月2日
1958 年
(昭和 33 年)
12 月 20 日
第 1 回 塔体塗装工事完了
12 月 23 日
12 月 24 日
3 月 31 日
名古屋初の地下鉄 東山線「名古屋
-栄」 開通
久屋大通公園(テレビ塔の足下南西
角)に「日時計」設置
東京タワー(日本電波塔会社) 開業
東海テレビ(THK) 名古屋テレビ塔からテ
レビジョン放送開始
展望客 500 万人達成
6 月 17 日
1959 年
(昭和 34 年)
9 月 26 日
10 月 1 日
9
NHK名古屋放送局 カラーテレビ
ジョン初公開(テレビ塔下広場)
伊勢湾台風来襲(東海地域で大規模
な被害発生)
名古屋城天守閣再建
Ⅰ
テレビ塔の概要整理
年
テレビ塔に関する出来事
テレビ塔を取り巻く社会の出来事
1960 年
(昭和 35 年)
4 月 23 日
7 月 31 日
展望客 600 万人達成
第 2 回 塔体塗装工事完了
1961 年
(昭和 36 年)
7 月 31 日
9月4日
NHK教育・名古屋テレビ用アンテナ工事完了
NHK教育テレビジョン放送開始
1962 年
(昭和 37 年)
4月1日
8月9日
12 月 24 日
名古屋テレビ(NBN)テレビジョン放送開始
第 1 回納涼茶会開催(以降毎年実施)
NHK FM実験放送開始
4月1日
東海ラジオ(SF)放送開局
9 月 10 日
NHKカラーテレビジョン放送開始
久屋大通が市道として認定を受ける
1963 年
(昭和 38 年)
2 月 16 日
9月1日
1964 年
(昭和 39 年)
2 月 22 日
3 月 15 日
展望客 1,000 万人達成
塔内に名古屋市大気汚染中央観測機器を設置
3 月 23 日
11 月 3 日
10 月 10 日
1965 年
(昭和 40 年)
11 月 16 日
1966 年
(昭和 41 年)
1967 年
(昭和 42 年)
1968 年
(昭和 43 年)
10 月 15 日
名古屋地下鉄名城線「市役所-栄」
開通
4 月 26 日
中日ビル完成
7 月 14 日
久屋大通公園 公園建設着手
名古屋テレビ塔が名古屋観光10選に選ばれ
る
8月1日
NHKテレビ放送所自動化運用開始(無人化)
4 月 20 日
6 月 20 日
CBC のテレビ中継用基地が完成
地上 100 メートルに展望バルコンが完成
久屋大通 一部を除き竣工
6 月 20 日
10 月 9 日
1 月 14 日
1 月 23 日
久屋大通公園に噴水「希望の泉」が
完成
民法初の愛知音楽エフエム放送(現
在のエフエム愛知)開局
久屋大通公園供用開始
展望客 1,500 万人達成
3 月 14 日
11 月 1 日
4 月 10 日
4 月 29 日
1971 年
(昭和 46 年)
8月6日
12 月 15 日
NHKFM放送の本放送を開始
中京テレビ放送開局
開業 15 周年記念式典・パーティを開催
12 月 24 日
1970 年
(昭和 45 年)
地下鉄名城線名古屋テレビ塔下の工
事に着工
愛知県体育館・名古屋市科学館開館
第 3 回 塔体塗装工事完了
3月1日
4月1日
1969 年
(昭和 44 年)
久屋大通(100m道路)完成
名四国道開通(名古屋市港区-四日
市)
地下鉄名城線工事着工
日本万国博覧会開会式(大阪・千里丘
陵)
愛知青少年公園オープン
久屋大通公園「セントラルブリッジ」
竣工
久屋大通公園でナゴヤフラワーショ
ー開催
第1回なごや納涼まつり開催(CB
C主催)
第 4 回 塔体塗装工事完了
12 月 20 日
4月1日
1972 年
(昭和 47 年)
8月1日
3 月 19 日
1973 年
(昭和 48 年)
3 月 31 日
10
地下鉄名城線「名古屋港-大曽根」
全線開通
猿投グリーンロード開通
名古屋テレビ塔下北に名古屋市営観
光バス駐車場(有料)運営開始
名古屋市「緑のまちづくり構想」発
表
名古屋市内の「屋台店」姿消す
年
テレビ塔に関する出来事
テレビ塔を取り巻く社会の出来事
6 月 30 日
1974 年
(昭和 49 年)
10 月 12 日
1975 年
(昭和 50 年)
10 月 22 日
1977 年
(昭和 52 年)
1978 年
(昭和 53 年)
12 月 20 日
7月2日
6 月 20 日
1979 年
(昭和 54 年)
9月9日
1980 年
(昭和 55 年)
1981 年
(昭和 56 年)
6月2日
10 月 30 日
名鉄瀬戸線栄乗り入れ開始
セントラルパーク開業
展望台上にテレビ中継用アンテナを設置(N
HK、CBC)
4 月 10 日
10 月 18 日
4 月 15 日
8月
9 月 29 日
12 月 20 日
12 月 20 日
3月
10 月 8 日
3月6日
1989 年
(平成元年)
7 月 11 日
1991 年
(平成 3 年)
3月2日
東山スカイタワー完成・開業
名古屋市制 100 周年事業「世界デザ
イン博」開催
名古屋テレビ塔「名古屋市イメージアップ賞」
を受賞
8 月 26 日
12 月 20 日
プロ野球 中日ドラゴンズ 4 回目
のリーグ優勝
福岡タワー完成・開業
ライトアップ開始
7 月 15 日
1990 年
(平成 2 年)
建設省日本の道路百選に久屋大通が
入選
久屋大通が都市景観整備地区に指定
展望客 2,500 万人達成
1988 年
(昭和 63 年)
6月1日
名古屋城博「25 年ぶりに金鯱が地上
に降りる」開催
第 6 回 塔体塗装工事完了
名古屋テレビ塔新航空障害灯完成(航空法改
正による)
8月8日
6 月 21 日
久屋大通公園セントラルブリッジ竣
工・除幕式・渡り初め
プロ野球 中日ドラゴンズ 3 回目
のリーグ優勝
東京ディズニーランド・オープン
久屋大通が都市景観整備モデル地区
第 1 号に指定
開業 30 周年記念式典を開催
1984 年
(昭和 59 年)
1987 年
(昭和 62 年)
8 月 20 日
11 月 2 日
開業 25 周年記念式典開催
NHK全国放送「名古屋テレビ塔上から下ま
で」
名古屋テレビ塔下広場で「身体障害者の店」
開店
名古屋テレビ塔が郵政大臣表彰を受賞
1983 年
(昭和 58 年)
1985 年
(昭和 60 年)
1986 年
(昭和 61 年)
5 月 14 日
10 月 1 日
第 5 回 塔体塗装工事完了
展望客 2,000 万人達成
1982 年
(昭和 57 年)
6 月 20 日
東名阪自動車道「蟹江-桑名」開通
名鉄瀬戸線「土居下-堀川」廃止(お
堀の中を走るローカル線)
名古屋テレビ塔下で地下街工事開始
名古屋市博物館がオープン
2 月 14 日
1976 年
(昭和 51 年)
名古屋地下鉄名城線「金山-新瑞橋」
開通
中日ドラゴンズ 2 度目のリーグ優
勝
NHK名古屋放送センタービル竣
工・オープン
第 7 回 塔体塗装工事完了
10 月 29 日
10 月 30 日
1992 年
(平成 4 年)
7月1日
1993 年
(平成 5 年)
10 月 1 日
11
名古屋水族館竣工・開館
愛知芸術文化センター竣工・開館
名古屋テレビ塔が市内定期観光バス
の観光ルートに入る
エフエム名古屋開局
Ⅰ
テレビ塔の概要整理
年
1994 年
(平成 6 年)
テレビ塔に関する出来事
6 月 20 日
テレビ塔を取り巻く社会の出来事
開業 40 周年記念イベント「写真コンテスト」
など
1995 年
(平成 7 年)
1996 年
(平成 8 年)
6月3日
1998 年
(平成 10 年)
12 月 21 日
1999 年
(平成 11 年)
11 月 20 日
阪神淡路大震災発生
3 月 13 日
「ナゴヤドーム」竣工・オープン
5月2日
「ランの館」オープン
11 月 7 日
CBC新館「放送センター」竣工・
運用開始
9 月 30 日
プロ野球 中日ドラゴンズ 5 回目
のリーグ優勝
名古屋テレビ塔展望台 夜の貸切パーティを
営業
1997 年
(平成 9 年)
7 月 18 日
1 月 17 日
展望客 3,000 万人達成
第 8 回 塔体塗装工事完了
名古屋テレビ塔 3 階「タイタニック引き上げ
品展」を開催(52 日間 主催:米国TITAN
IC財団)
12 月 23 日
2000 年
(平成 12 年)
3 月 15 日
12 月 1 日
2001 年
(平成 13 年)
7 月 19 日
2002 年
(平成 14 年)
7 月 20 日
7 月 20 日
4月3日
2003 年
(平成 15 年)
2004 年
(平成 16 年)
2005 年
(平成 17 年)
2006 年
(平成 18 年)
8月1日
12 月 23 日
6 月 18 日
6 月 19 日
7 月 12 日
12 月 31 日
6 月 14 日
名古屋テレビ塔まつり「放送スクエア」開催
名古屋テレビ塔まつり「放送スクエア 2002」
開催
展望台から 1 ドル紙幣ばらまき事件発生
開業 50 周年記念式典・祝賀パーティ
開業 50 周年記念事業「帰ってきたテレビジョ
ン展」開催
「国土の景観に寄与しているもの」として国
の登録有形文化財に指定
第 9 回 塔体塗装工事完了
リニューアルにより、レストランやギャラリ
ーが入居
2009 年
(平成 21 年)
6 月 20 日
NPO 法人地域活性化支援センターが指定する
「恋人の聖地」に認定
開業 55 周年記念でキャンドルナイト開催
2010 年
(平成 22 年)
2 月 13 日
12 月 17 日
ハグスポット 100 選第 1 号に認定
NAGOYA アカリナイト開催
2011 年
(平成 23 年)
7 月 24 日
アナログ放送終了
11 月 21 日
10 月 11 日
栄公園「オアシス21」オープン
12 月 1 日
名古屋地域地上デジタル放送開始
(瀬戸デジタル鉄塔から放送)
3 月 22 日
日本国際博覧会(愛・地球博)開催
(9 月 25 日迄)
1 月 27 日
3月6日
3月
名古屋ルーセントタワー竣工
ミッドランドスクエア商業棟開業
久屋大通が都市景観形成地区に指定
4 月 28 日
名古屋市長に河村たかし氏が就任
2 月 15 日
愛知県知事に大村秀章氏が就任
NHK ラジオ第 1 放送 展望台から生中継開始
(毎週木曜日)
テレビ塔ウオーキングを 47 年ぶりに開催
2007 年
(平成 19 年)
2008 年
(平成 20 年)
セントラルタワーズ展望台「パノラ
マハウス」開業
JR名古屋高島屋開店
BSデジタル放送開始
名古屋テレビ塔南「久屋大通公園警
察官詰所」運用開始
12
2.テレビ塔の概要
(1)テレビ塔の基本データ
【竣工】
昭和 29 年 6 月 19 日
【設計】
内藤多仲(構造)
、今井兼次(意匠)
日建設計工務㈱、NHK施設局建築課
【施工】
新三菱重工業㈱神戸造船所(鉄骨製作)
宮地建設工業㈱(鉄骨建方)
㈱竹中工務店(基礎・建物・内装) ほか
【建設費】
2 億 2,560 万円
【建物概要】
高さ 180m
(鉄塔 135m+アンテナ 45m)
展望台高さ地上 90m
延べ面積 約 3,600 ㎡
【図 1】テレビ塔現状立面図
(テレビ塔下 40m×40m)
鉄骨造、一部鉄骨鉄筋コンクリート造
【図 1】現状立面図(南面)
総重量(地中部分除く) 約 3,000 トン
鉄骨重量 約 1,000 トン
【用途】
電波塔、展望塔
【所有者】
テレビ塔㈱、NHK、CBC
【特徴】
【写真 5】テレビ塔とオアシス 21
日本初の集約電波塔
国の登録有形文化財(平成 17 年)
13
Ⅰ
テレビ塔の概要整理
【平面計画】
【図 2】テレビ塔現状平面図
14
(2)名古屋テレビ塔の立地条件
【図 3】テレビ塔の位置図
15
Ⅰ
テレビ塔の概要整理
テレビ塔は名古屋を代表する商業地域である栄地区の久屋大通公園の上に建っ
ており、オアシス 21 と一体となって名古屋中心地の景観を形成している。
栄地区は名駅地区の発展に伴い、地元有力企業の本社移転、乗車客数2の減少、
名古屋商業地価最高地の逆転現象等が見られ、地域の地盤沈下が顕著となってい
る(表 2)
。
【表 2】名駅地区と栄地区の対比
名駅地区
栄地区
東海地区を代表するオフィス・商業エリアであ
り、東京・大阪方面からの玄関口となっているほ
多くの百貨店が立地する名古屋を代表する商
地域性
か、東海三県からのアクセスも優れる。
業地域で、旧来から繁華性が高く、中心商業地
として栄えてきた。
JR 東海道新幹線
JR 東海道本線、関西本線、中央本線
主要
名古屋市営地下鉄(東山線、名城線)
名古屋市営地下鉄(東山線、桜通線)
アクセス
名鉄瀬戸線
名鉄線、近鉄線、あおなみ線
JR セントラルタワーズ、高島屋開業とともに
商業集積が進み、今後も再開発、建替等が控えて
いることから、発展的に推移することが予測され
近県在住顧客が利便性の高い名駅地区に流れ
最近の動向
からの商業地でインフラの改良が遅れている。
る。
・
アクセスに優れる
・
縦型の商業地で、効率性が優る
ており、百貨店の売上が下落傾向である。古く
長所
・
古くからの中心地でブランド性がある
・
南大津通を中心に面的なにぎわいがある
・
緑豊かな公園などの「癒し・憩いのインフ
ラ」に強みがある
・
土日の混雑により、滞留スペースが少ない
短所
地価調査基準地 名古屋中村 5-1
名古屋市中村区名駅 4-6-17
市外からのアクセスが劣る
・
インフラが古く、利用しづらい
地価公示標準地 名古屋中 5-17
地価動向
7,400,000 円/㎡(前年比±0%)
2
・
名古屋市中区栄 3-5-1
5,810,000 円/㎡(前年比-5.4%)
栄における乗車客数は、下表のとおり。
名古屋市営地下鉄(東山線・名城線)栄駅及び名鉄瀬戸線栄町駅の乗車人員の推移
年度
乗車人員(総数)
乗車人員(1 日当り)
平成 17 年度
47,550,413
130,275
平成 18 年度
46,928,202
128,570
平成 19 年度
46,309,391
126,875
平成 20 年度
45,902,255
125,760
平成 21 年度
44,246,950
121,225
出典:平成 22 年版名古屋市統計年鑑
16
(単位:人)
3.現状及び課題
久屋大通という道路上、かつ、久屋大通公園という公園上に位置するテレビ塔は、
さまざまな法令等の適用を受けるほか、築 57 年を経過した施設は、耐震性の不足
や設備の老朽化といった問題を抱えている。
一方、運営面においても、展望台利用客の減少、アナログ放送からデジタル放送
への完全移行による放送会社からの賃貸料収入の減少などから、今後の経営は苦境
に立たされることが予想される。
ここでは、以後の検討の前提とするべく、テレビ塔の施設面と運営面について現
状及び課題を整理する。
(1)施設面における現状及び課題
①施設の現状
【法令等の適用】
久屋大通は名古屋市道(幅員約 112m)であり、テレビ塔は道路法(昭和 27
年法律第 180 号)に基づき、
「放送電波発信」を目的として道路占用許可によ
り存立してきた。平成 23 年 7 月 24 日のアナログテレビ放送の終了により集
約電波塔としての役割は終了したが、その後、テレビ塔へのマルチメディア
放送3の送信局設置が決まり、引き続き電波塔として道路占用許可が継続され
ている。
久屋大通の中央部分は、道路であると同時に久屋大通公園という都市公園で
もあるため、都市公園法(昭和 31 年法律第 79 号)が適用されている。
屋外広告物条例(昭和 36 年名古屋市条例第 17 号)では、都市公園における
広告物の掲出を禁止しているうえ、テレビ塔は広告物掲出の禁止物件に該当
しており、広告物は掲出できない。
テレビ塔は建築基準法(昭和 25 年法律第 201 号)上の「工作物」として確認
を受けており、以後 8 回の増築等をしているが、当初確認の内容を逸脱しな
いものとして、現在も塔体本体の「工作物」としての扱いは変わっていない
3
アナログテレビ放送終了後の空き周波数帯を活用した、新たな国の基幹放送。多様なメディアを扱い、
蓄積型放送や高品質の動画配信等が可能となる。平成 24 年 4 月 1 日、全国 14 か所で開局予定。
17
Ⅰ
テレビ塔の概要整理
(表 3)。
【表 3】建築基準法による確認履歴
確認通知書(確認済証)
交付日
申請区分
増築等の内容
昭和 28 年 12 月 8 日
工作物
塔体の新築
昭和 33 年 9 月 30 日
工作物
3 階(現 4 階)屋上に事務所及び休憩室を増築。東海テレ
ビのアンテナ設置に伴う構造補強。
昭和 36 年 4 月 1 日
工作物
名古屋テレビのアンテナ設置に伴う構造補強。
昭和 37 年 3 月 26 日
工作物
地下 1 階機械室増築
昭和 47 年 12 月 20 日
昇降機
3 号機(現 3 階から展望台まで)の改修
昭和 50 年 10 月 24 日
昇降機
1 号機(現 1 階から現 4 階まで)の改修
昭和 53 年 4 月 25 日
工作物
地上階(現 1 階)の増築(約 320 ㎡)
。
平成 18 年 2 月 17 日
建築物
スタンドショップ 2 棟の新築
平成 18 年 4 月 10 日
建築物
スタンドショップ 2 棟の新築
【耐震性について】
上述のとおり、テレビ塔は建築基準法上の「工作物」である。昭和 28 年に最
初の確認を受けてから何度かの増築を重ねており、構造関係規定を含むその
時点における建築基準法の規定には合致させてきている。
建築基準法は昭和 25 年の制定以来、大地震の発生などの機を捉えて、幾度と
なく改正されているが、確認当時の基準に適合している施設については、改
正後の規定は適用されず、違法とはならない(いわゆる「既存不適格」)。テ
レビ塔においても、構造関係規定において既存不適格状態となっている可能
性が高い。
建築基準法の大きな改正としては、1978 年(昭和 53 年)に発生した宮城県
沖地震を受けて実施された 1981 年(昭和 56 年)の改正がある。ここで、耐
用年限中に数度発生する中地震に対して建物部材の許容応力度設計を行う 1
次設計に加えて、耐用年限中に 1 回発生するかもしれない大地震に対して建
物の保有水平耐力(終局耐力)を検証する 2 次設計を行うという「新耐震設
計法」が導入されている。すなわち、それまでは中地震に対して地震後も使
用可能な状態であることを検討すればよかったのが、改正後は、大地震に対
して建物が倒壊しないことを検討しなければならなくなった。
この改正を受けてテレビ塔㈱においても、昭和 60 年に、当初確認時の図面を
もとにした耐震調査を実施している(図 4)。結果は、「震度 5 弱程度では十
18
分な余力があるものの、震度 5 強相当では耐力に余裕がない」というもので
ある。2 次設計に相当する終局耐力までの検討はなされていないものの、現
行法規で求められている耐力を持ち合わせていない可能性は高いと考えられ
る。
【図 4】昭和 60 年の調査結果より
ただし、現状の耐震性を正確に判断するためには、現状の躯体状況等を考慮
した検証が必要となる。テレビ塔㈱では平成 22 年に躯体の劣化状況調査や地
盤調査等を行っているが、鉄骨の発錆は少なく、コンクリートの中性化も進
んでいないなど、躯体状況は概ね良好であるとの結果が出ている。また、加
振実験などの実施により詳細なデータも得られており、こういった現状躯体
の情報を反映した精度の高い解析が必要である。
【設備等について】
当初確認時には「工作物」扱いであったため、
「建築物」に適用される規定に
は適合させる義務はなかった。したがって、例えば、防火避難規定(防火区
画、2 方向避難、内装制限、排煙設備など)については不適合という状況で
ある。
3 機あるエレベーターは、2 号機(3 階から展望台まで)が 2000 年(平成 12
年)に改修されたほかは、1 号機(1 階から 4 階まで)が 1975 年(昭和 50
年)の改修以来 36 年を、3 号機(3 階から展望台まで)が 1972 年(昭和 47
年)の改修以来 39 年を経過しており、老朽化が著しい。
19
Ⅰ
テレビ塔の概要整理
【写真 6】エレベーター3 号機(内部)
外装サッシは平成 18 年のリニューアルにより、鋼製サッシからアルミサッシ
に取り替えられており、ガラス周囲のシーリング等も健全である。
昭和 39 年より市環境事業局(現環境局)は、環境観測機器(大気汚染測定器
1 式、風向・風速計 2 台、温度差計 5 台、湿度計 1 台)を設置している。
【写真 7】大気汚染常時監視測定局(2 階)
平成元年からは同年開催の「世界デザイン博」開催に合わせ、ライトアップ
をスタートさせている。そのための投光器(高圧ナトリウムランプ)は塔全
体で 52 台設置されている。
20
②施設の課題
【法令等の適用】
現状、道路占用許可を受けているが、今後、アナログテレビ放送終了により
空きスペースとなる送信機室等を別の用途で使用するなど、施設の機能を変
更させることとなった場合に、道路占用許可を継続することが可能であるか
どうかの判断は、現時点ではなされていない。道路上かつ公園上という立地
である以上、道路法に基づく道路占用許可又は都市公園法に基づく公園施設
設置許可が必要となるため、施設の機能を検討する段階で、道路管理者及び
公園管理者と協議することになる。
施設の機能を変更する場合、
「工作物」としての取扱いは難しいと考えられ、
「建築物」としての扱いとなった場合には、現行の建築基準法が適用される
ことになる。その場合、前述の耐震調査の結果次第ではあるが、現行規定に
おいて必要な耐震性がなければ、耐震改修は必須である。
【耐震性について】
「工作物」としての取扱いが継続された場合には、現行法規への適合化は、
法的には必要ない(既存不適格扱い)ということになるが、大地震に耐えら
れるだけの構造強度がない場合、高さ 180mの鉄塔が倒壊するとなると、周
辺の建物等に与える影響は甚大で、広域避難場所である久屋大通公園が多大
な被害を受ける可能性も高い。近い将来、東海・東南海地震等が発生し、震
度 6 弱の揺れが生じる可能性があるとされる本市において、巨大構造物であ
るテレビ塔の耐震性が不足する場合の改修は重要な課題と言わざるを得ない。
【設備等について】
「建築物」となった場合の対応は、耐震と同様、上述の防火避難規定や消防
設備について適合化を図る必要がある。
エレベーターの 1 号機と 3 号機は、前回の改修より 30 年以上を経過し、通常
25 年とされる耐用年数を超えているため、早急な改修が必要である。
ライトアップ用の投光器も設置から 20 年以上を経過していることから、機器
交換の時期に差し掛かっている。省電力化という観点からも、LED照明の
導入が望まれる。
21
Ⅰ
テレビ塔の概要整理
(2)運営面における現状及び課題
①運営の現状
【テレビ塔㈱の概要】
(平成 24 年 2 月末現在)
社
名
名古屋テレビ塔株式会社
取締役社長
大澤 和宏
所
在 地
名古屋市中区錦三丁目 6 番 15 先
資
本 金
8,000 万円
設立年月日
昭和 28 年 7 月 1 日
事業の概要
・テレビジョン放送の送信設備に関する鉄塔及び施設の賃貸管理
・鉄塔及び施設並びに観光事業に関する施設の利用運営
・観光事業等に関するイベントの開催並びに観光土産品等の販売
主な株主
愛知県(2,000 万円)、名古屋市(2,000 万円)
名古屋鉄道㈱、㈱三菱東京 UFJ 銀行、㈱大丸松坂屋百貨店
中部電力㈱、近畿日本鉄道㈱、トヨタ自動車㈱、東海テレビ放送㈱
CBC
役
員
(敬称略)
ほか(計 106 団体又は個人)
(取締役)
愛知県知事
大村
秀章
名古屋市長
河村
たかし
NHK名古屋放送局長
佐藤
幹夫
CBC代表取締役会長
夏目
和良
東海テレビ放送株式会社代表取締役会長
石黒
名古屋テレビ放送株式会社代表取締役社長 荒木
株式会社中日新聞社代表取締役会長
中部電力株式会社代表取締役会長
CBC常務取締役
伊藤
テレビ塔㈱常務取締役
白井 文吾
三田
敏雄
道之
若山
宏
(監査役)
株式会社名鉄百貨店代表取締役社長
東邦ガス株式会社特別顧問
22
清水
神野 重行
定彦
大山
高伸
設立主意
・広範囲の地方テレビ放送を可能とする
(抜
・名古屋市の観光の中心的呼び物とする
粋)
・名古屋市の進展に大きく貢献する
・当社の経営は公共的立場において行う
【テレビ塔㈱の収支概要】
【表 4】テレビ塔㈱の収支概要
H19 年度
H20 年度
H21 年度
(単位:千円)
H22 年度
入場料収入
119,315
118,573
114,934
109,288
賃貸料収入
185,957
183,625
177,273
156,179
売上総利益
305,272
302,198
292,207
265,467
販管費
228,028
233,224
247,767
213,039
営業利益
77,244
68,974
44,440
52,428
当期純利益
71,164
68,226
27,326
35,608
上記賃貸料収入のうち約 7,600 万円が放送事業者からの賃貸料である。した
がって、アナログ放送の停止により当該賃貸料収入がなくなることから、新た
にマルチメディア放送局設置による賃貸料収入が得られたとしても、全体収入
は大幅に減少することになる。
23
Ⅰ
テレビ塔の概要整理
【テレビ塔展望台入場者数の推移】
【図 5】展望台入場者数の推移
テレビ塔の入場客数は開業以来、上図の通り減少傾向にあったが、平成 18
年度のリニューアル以降若干の持ち直しを見せている。しかし今後はリニュー
アル効果が縮小していくことから、入場客数は減少することが予測される。
【営業状況】
(平成 23 年 12 月末現在)
・展望料金
【表 5】展望料金
シニア
大人
(65 歳以上)
(中学生以上)
個人料金
500 円
20 人以上
50 人以上
区分
小学生
幼児
600 円
300 円
無料
450 円
540 円
270 円
無料
400 円
480 円
240 円
無料
身体障害者は半額。他に社会見学等で割引あり。
・展望営業時間
土・日・祝日
:10:00~22:00
平日
:10:00~21:00
(年中無休)
24
②運営の課題
テレビ塔の入場客数が平成 18 年のリニューアルを機に若干の回復を見せ、経
常収支が黒字化したのはテレビ塔㈱の経営努力の成果であるが、アナログ停波
による放送局からの賃貸料収入の減少を補うまでには至っておらず、入場客数
の減少の影響は今後のテレビ塔運営に大きな問題となっている。
このような状況を打開するため、テレビ塔㈱は、耐震性能を現行法規に適合
させる耐震改修、設備の機能更新、放送設備撤去後スペースのテナント賃貸床
への転用、テナントスペースの増築(塔下部分の増床)などの計画を立て、そ
れに要する費用を以下のとおり試算している。
耐震補強工事
約 10 億円
機能更新工事
約 5 億円
増改築工事
約 20 億円
合
計
約 35 億円
現在、年間営業収益が 3 億円程度と小さく、今後の経営についてもさらに厳
しい状況が予測されるテレビ塔㈱にとって、これらの費用を単独で負担するこ
とは非常に困難な状況と言える。
25
Ⅱ
資産価値の検討
ⅡⅡ 資産価値の検討
資産価値の検討
テレビ塔の存続や活用可能性を検討するうえで、施設の価値を定量的に分析するこ
とは必要不可欠である。本章では、計測対象の価値が市場に反映されていない場合な
どに有用とされる手法(CVM4)を用いて、テレビ塔の資産価値を試算する。
この章のまとめ
◆ CVM調査により、テレビ塔が存在することに対する名古屋市民による経済的
価値(便益)は、年間 36 億円と推計された
◆ テレビ塔の価値別にみた支払い合意率は、テレビ塔を直接訪れて楽しむといっ
た直接利用価値などと比べて、テレビ塔のある風景を楽しむといった間接利用
価値のほうが高い
1.調査手法の概要
CVMは、1958 年にアメリカ合衆国において便益の計測に適用されて以来、主と
して環境経済学の分野で研究され発展してきた。わが国でCVMが本格的に適用さ
れたのは 1990 年代後半であり、農地の環境保全価値の試算、四万十川の環境価値
の試算等を始めとして活用され、現在ではさまざまな社会資本整備事業の費用便益
分析マニュアルにも採用され、多くの適用事例が存在する。
さらに近年では、スポーツ施設等の文化的施設整備の経済評価(新潟スタジアム
ビッグスワン、札幌ドームの便益評価)、ソフト的な政策やお祭り等の無形文化財
に対する便益評価(京都三大祭りの経済評価)も試みられている。
4
CVM(Contingent Valuation Method)
仮想的市場評価法。アンケート調査等によって回答者が表明した選好データを活用し、仮想市場にお
ける支払い意思額(Willingness to Pay:WTP)を用いて便益を測定する手法。顕示選好データでは便益
計測が不可能な場合、すなわち計測対象の価値が市場に反映されていない場合や、人々の行動を観測す
るだけでは評価できない場合に有用とされる。
26
2.調査の概要
テレビ塔は市内の代表的な景観の一つとして環境に影響を与えていると考えら
れるが、その便益は直接徴収可能な入館料や店舗賃料のみで把握できるものではな
いため、通常の利用価値などからは読み取りにくい。そのため、本調査においては
CVM調査で設定した仮想市場における支払い意思額を通じて、テレビ塔が地域に
与える経済価値を求めることとした。
調査は、名古屋市内及び東海 3 県に居住する住民を対象としたインターネット・
アンケートによるもので、結果の概要は以下のとおりである(詳細は付属資料「C
VM調査報告書」参照)。
なお本調査では、国土交通省「仮想的市場評価法(CVM)適用の指針」(平成
21 年 7 月公表)に準拠しているほか、調査票作成・集計・分析等の各段階において、
岐阜大学工学部社会基盤工学科・高木朗義教授の助言を得て実施している。
27
Ⅱ
資産価値の検討
【調査の趣旨】
テレビ塔の経済的価値を算定することを目的とした調査
【アンケート実施期間】
平成 23 年 8 月 26 日から平成 23 年 8 月 30 日まで
【モニター数・アンケート回答数】
有効回答数:1,343 人
名古屋市、愛知県(名古屋市を除く)
、岐阜県、三重県
居住者
なお、アンケート調査の標本(モニター対象者)は、住民基本台帳人口に基づき、
地域別人口構成及び年齢構成を考慮している。
【質問方式】
過大推定を回避し、推定精度を維持するため、テレビ塔の維持管理に対する支
払い意思額について、月額及び年額を併記し、ダブルバウンド二項選択方式5で回
答を求めている。
【調査主体】
一般財団法人日本不動産研究所、株式会社日経リサーチ
5
ダブルバウンド二項選択方式
WTP の回答において、提示金額に対して賛成/反対を選択してもらい、それを2回繰り返す方法。具体
的には、1回目の提示金額に対する回答が「賛成」の場合はより高い金額を再提示し、
「反対」の場合は
より低い金額を提示して賛成/反対を選択してもらう方法。
28
3.調査結果要旨
【利用目的と利用頻度】
利用目的について見ると、全体として「眺望」「観光」を来訪目的とする人が
多いが、利用頻度の高い回答者ほど「飲食」「デート」「カフェ」を目的とする割
合が高くなる傾向がある(図 6)
。このことから、利用頻度を高めるためには展望
以外の多様なニーズを取り込むための整備が必要であることがうかがえる。
【図 6】テレビ塔の利用目的と利用頻度
29
Ⅱ
資産価値の検討
【テレビ塔に対する支払い意思額】
自らがテレビ塔存続のために維持管理費を募金として支払うと仮定した場合
に、世帯としていくらの負担まで容認できるかをたずね、容認できる金額を集計
し、テレビ塔の利用頻度や居住地などのデータを勘案して、母集団の支払い意思
額を推計した。結果、テレビ塔に対して市内在住者の支払い意思額は年間 36 億
。
円6と算定された(表 6)
【表 6】テレビ塔に対する支払い意思額
世帯数
愛知県
年間支払い意思額
(円)
2,933,464
857,000,000
10,300,000,000
1,028,450
300,000,000
3,600,000,000
岐阜県
736,555
215,000,000
2,580,000,000
三重県
703,704
205,000,000
2,460,000,000
4,373,723
1,277,000,000
15,340,000,000
名古屋市
調査対象地域
6
月間支払い意思額
(円)
名古屋市民の年間支払意思額
1 世帯当りの支払い意思額(月額 292 円、年額 3,500 円)は、便益の総額を把握するため「平均値」を採
用しているが、民主的判断基準を捉えるための「中央値」
、すなわち賛同率が 50%になる場合の提示金額
を採用すると、1 世帯あたりの支払い意思額は月額 43 円、年額 516 円になる。
比較のため、愛知県が平成 21 年 4 月に施行したいわゆる「森林環境税(あいち森と緑づくり税)」の負
担額を考察すると、愛知県の森林環境税は、個人 1 人当り年間 500 円であり、名古屋市の 1 世帯(平成 23
年 9 月時点の統計では約 2.2 人/世帯)当り換算で年間約 1,100 円である。
30
【価値別の支払い合意率】
テレビ塔の価値別にみた支払い合意率は、直接利用価値を基準(100)とした
指数で比較すると、間接利用価値による支払い合意率指数が 106.4 と最も高いこ
とがわかる(図 7)
。
テレビ塔は名古屋都心の都市景観を作りだすシンボルであり、テレビ塔のある
「風景」が高く評価されている半面、その価値は間接的なものであるためテレビ
塔が収入として運営に取り込むことが難しい。市民は直接利用する以外にも、テ
レビ塔が存在する景観に一定の価値を見出しており、同時にこのことは周辺地区
に対して地域のステータス性や地価上昇等、間接的経済効果等を生じている可能
性も示唆している。
直接利用価値
間接利用価値
オプション価値
存 在 価 値
遺 贈 価 値
:現在の自分や家族が、テレビ塔を直接訪れて楽しむという価値
:現在の自分や家族が、テレビ塔のある風景を楽しむという価値
:将来の自分や家族のための、将来の観光スポットとしての価値
:テレビ塔が存在すること自体の価値
:自分たちのためではなく、他地域の人や将来の世代に楽しんでもらいたいと思える価値
【図 7】テレビ塔の価値別の支払い合意率
31
Ⅲ
市民へのアンケート調査
ⅢⅢ 市民へのアンケート調査
市民へのアンケート調査
築 50 年以上を経過し、名古屋のシンボルとして市民に親しまれているテレビ塔の
今後を検討するうえで、市民の意向は極めて重要である。ここでは、これまでに本市
が行ったテレビ塔に関するアンケートである平成 22 年度第 3 回ネット・モニターア
ンケート7と平成 23 年度第 3 回市政アンケート8より、テレビ塔にかかる設問を抜粋し、
市民が考えるテレビ塔の意義を検証する。
この章のまとめ
◆ 2 度の市民アンケートでは、7 割を超える市民がテレビ塔の存続を望んでおり、
そのうち 8 割前後の市民が「財政支援もやむを得ない」と回答している
◆ 市民はテレビ塔のある景観に親しみを覚えるといった情緒的価値を評価し、存
続に対する強い想いが見て取れるが、存続は望むものの財政支援には慎重な意
見もある
1.調査結果
(1)『名古屋の観光について』
(平成 22 年度第 3 回ネット・モニターアンケート)
【調査の趣旨】
本市の観光振興を図る上で、市民が観光についてどのように感じているかにつ
いて調査し、今後の施策を検討する上で参考とするもの。
【アンケート実施期間】
平成 22 年 8 月 20 日から平成 22 年 8 月 30 日まで
【モニター数・アンケート回答数】
対象モニター数:500 人
回答数:464 人
有効回収率:92.8%
【調査主体】
市民経済局
文化観光部
観光推進室
7
公募した 18 歳以上の市民 500 人(ネット・モニター)を対象としたインターネットによるアンケ
ート。
8
無作為抽出による 20 歳以上の市民 2,000 人を対象としたアンケート。
32
テレビ塔は 2011 年にデジタル放送への完全移行に伴い、テレビ放送を発信する
役割を終えますが、今後、テレビ塔はどのようなあり方が望ましいと考えますか
(人数 464)
② 役割を終えたので取
壊してもやむをえない
19.4%
その他
3.9%
① 役割を終えたが存続
したほうが良い
76.7%
【自由記載内容要旨】
①と回答した主な理由
・ 名古屋のシンボルだから
・ 日本初の集約電波塔だから
・ なくなると寂しいから
・ 壊すのにもお金がかかるから
・ イベント会場にいいと思うから
・ 名古屋の数少ない観光資源だから
②と回答した主な理由
・ 維持管理費がかかりそうだから
・ 魅力、集客力がないから
・ 新しくシンボルとなるものをつくるほうがよいから
33
Ⅲ
市民へのアンケート調査
「役割を終えたが存続をしたほうがよい」と回答した方へ
テレビ塔を存続する具体的手法はどれがよいと思いますか
(人数 337)
改修を行わず現状の
まま残す
22.3%
その他
5.3%
改修を行い、商業施
設の増設などよりにぎ
わいのある施設にリ
ニューアルする
72.4%
「役割を終えたが存続をしたほうがよい」と回答した方へ
民間の施設であるテレビ塔を存続させるために行政が財政支援することについ
てどのように思いますか
民間が独自に存続を
図るべきであり、財政
支援はすべきでない
13.3%
(人数 345)
その他
1.8%
必要最低限の財政支
援はやむをえない
60.3%
34
重要な観光施設なの
で積極的に財政支援
をすべきである
24.6%
(2)『名古屋テレビ塔に対する意識について』(平成 23 年度第 3 回市政アンケート)
【調査の趣旨】
本市では、地上デジタル放送への完全移行により、電波塔としての役割を終え
たテレビ塔について、今後の活用の可能性について検討しているが、市民の意見
をふまえ、テレビ塔に対する市の取り組み姿勢を決定していくうえでの参考とす
るもの。
【アンケート実施期間】
平成 23 年 10 月 4 日から 10 月 18 日まで
【モニター数・アンケート回答数】
対象モニター数:2,000 人
回答数:1,021 人
有効回収率:51.1%
【調査主体】
市民経済局
文化観光部
観光推進室
あなたにとってテレビ塔とは、何ですか(複数回答可)
0.0%
10.0%
20.0%
30.0%
40.0%
50.0%
19.0%
思い出の場所
68.0%
名古屋の風景の一つ
27.3%
名古屋の歴史
1.4%
4.9%
何の印象もない
テレビ塔を知らない
無回答
70.0%
46.2%
名古屋の観光名所
その他
60.0%
61.1%
名古屋のシンボル
つまらない場所
(人数 1,021)
1.8%
0.7%
1.2%
35
80.0%
Ⅲ
市民へのアンケート調査
テレビ塔をご存知の方へ
あなたは、これまでにテレビ塔を何回訪れたことがありますか
無回答
1.9%
一度も訪れたことがない
7.6%
11回以上
12.3%
(人数 1,002)
1回
10.8%
6~10回
14.4%
2~5回
53.1%
テレビ塔を訪れたことのある方へ
テレビ塔を訪れた際の行き先はどこですか(複数回答可)
0.0%
10.0%
20.0%
30.0%
40.0%
飲食店
27.1%
物販店
23.0%
展示コーナー
20.3%
6.9%
観光情報コーナー
テレビ塔下で行われるイベント
無回答
60.0%
70.0%
80.0%
90.0%
89.4%
展望台
その他
50.0%
(人数 907)
37.8%
3.3%
0.7%
36
100.0%
テレビ塔は、デジタル放送開始に伴いテレビ放送を発信する役割を終えました。
今後テレビ塔の存続についてどう思いますか
存続しなくてもいい
26.6%
(人数 1,021)
無回答
1.1%
存続させたい
72.3%
テレビ塔を存続させたいと思う方へ
テレビ塔を存続させるために、名古屋市が財政支援を行うことについてどう思い
ますか
(人数 738)
市が支援をするくらい
なら、存続ができなく
てもやむを得ない
22.4%
無回答
1.2%
市が支援することもや
むを得ない
76.4%
37
Ⅲ
市民へのアンケート調査
支援もやむを得ないと思う方へ
財政支援もやむを得ないと思う理由は何ですか(複数回答可)
0.0%
10.0%
20.0%
30.0%
40.0%
50.0%
60.0%
(人数 564)
70.0%
80.0%
78.4%
名古屋のシンボルであるから
46.5%
名古屋の観光名所だから
22.2%
国の登録有形文化財であるから
42.6%
歴史があるから
28.0%
取り壊すのはもったいないから
13.7%
取り壊しにお金がかかるから
18.1%
思い出があるから
39.9%
取り壊すのはなんとなくさみしいから
その他
無回答
90.0%
3.5%
0.5%
存続ができなくてもやむを得ないと思う方へ
存続ができなくてもやむを得ないと思う理由は何ですか(複数回答可)
(人数 165)
0.0%
10.0%
20.0%
30.0%
40.0%
60.0%
70.0%
80.0%
73.3%
市の予算を他の施策で使ってほしいから
36.4%
名古屋テレビ塔にそこまで予算をかけなくてもいいと思うから
18.8%
今後も支援を求められそうだから
26.7%
民間が独自で存続を図るものであり市が支援するものではないから
7.3%
その他
無回答
50.0%
1.8%
38
存続しなくてもいいと思う方へ
テレビ塔が存続しなくてもいいと思う理由は何ですか(複数回答可)
(人数 272)
0.0%
10.0%
20.0%
30.0%
40.0%
役割が終わったから
70.0%
80.0%
5.1%
75.7%
維持にお金がかかるから
取り壊して公園だけにした方がいいから
11.4%
取り壊して跡地を有効に活用した方がいいから
39.0%
新たな観光名所を作った方がいいから
17.3%
特に愛着もなにもないから
13.6%
9.6%
名古屋テレビ塔をよく知らないから
無回答
60.0%
55.9%
価値がないから
その他
50.0%
4.4%
1.5%
39
Ⅲ
市民へのアンケート調査
2.市民が考えるテレビ塔の意義
テレビ塔の存続については、平成 22 年度のネット・モニターアンケートと平成
23 年度の市政アンケートともに、7 割を超す市民が「存続したほうが良い(存続さ
せたい)」と回答しており、そのうち 8 割前後が「財政支援もやむを得ない」と答
えていることから、市民のテレビ塔存続に対する想いはかなり強いものがあると言
える。
また、テレビ塔の位置付けとして「名古屋の風景、シンボル、観光名所」を多く
選択している一方、過去にテレビ塔を訪れた回数は「2~5 回」とそれほど多くはな
いことから、直接利用することよりも、テレビ塔のある景観に親しみを感じるとい
った情緒的価値を見出していることが見て取れる。
一方で、3 割近くの市民が「存続を望まない」としており、その理由として「維
持にお金がかかる」ことを挙げ、「存続を望むが、市が財政支援するくらいなら存
続できなくてもやむを得ない」といった回答もある点にも留意する必要がある。
40
ⅣⅣ有識者等へのヒアリング調査
有識者等へのヒアリング調査
前章では、テレビ塔に対する市民の考え方を整理したが、専門的な立場から見たテ
レビ塔の価値も確認しておくべきものである。テレビ塔が有する価値としては、
・都市計画的意義(戦後の名古屋市都市計画を特徴づける 100m道路上に存在)
・文化財的意義(日本初の集約電波塔として国の有形文化財に登録)
・名古屋市のシンボル(戦後復興期に建設されデザイン性に優れた塔体)
・久屋大通公園と一体となったイベントスペース(高い認知度と視認性)
等が挙げられるが、それぞれの意義を検討するに当たり、学識経験者等へのヒアリン
グを行う。
この章のまとめ
◆ 有識者等へのヒアリングからは、テレビ塔は文化財的価値が高く、取壊しすべ
きではないが、現状のままではテレビ塔を目的とした集客は難しいため、久屋
大通公園との一体整備が課題であることが指摘された
飯田 喜四郎氏
建築史家、名古屋大学名誉教授、博物館明治村前館長
・ 「日本で一番初めの集約電波塔」という意義は大きい。
・ エッフェル塔を模しておりデザイン性に優れている。
・ タワーは見ていて飽きないことが大事で、平凡さが長持ちの秘訣である。
・ 100m道路と一体化した名古屋の大切な財産である。
・ 取壊しとなれば文化財の破壊になってしまう。壊すことは残すことより厳しい
ものがある。
・ テレビ塔は重要文化財になりうるものである。
・ 公園と一体として整備していくべきで、過去から来た物で良い物は残していか
なくてはならない(現地保存は、難しいが大切)
。
・ 市内中心部に同じような鉄塔を建てるのは不可能に近く、希少性が高い。本来
の機能を維持し、現役の電波塔として残していくべき。
41
Ⅳ
有識者等へのヒアリング調査
伊藤 滋氏
早稲田大学特命教授(都市計画専攻)、再開発コーディネーター協会会長
・ 久屋大通公園は暗く、道路により分断されており、非常に利用しづらい。
・ エッフェル塔の足元は遮るものがなく、視認性・シンボル性が優る。
・ オアシス 21 は斬新で特徴のある施設なので、リニューアルするならテレビ塔と
オアシス 21 との一体整備をしたらおもしろいのではないか。
・ 海外ではタワーは高さを競い合っており、デザイン性を重視したユーロマスト
(ロッテルダム)はお客が入っていない。持論としては、タワーは上ることに
価値があるもので、「上った」「写真を撮った」という感動が必要。
・ 展望台に神社を作るとか、通天閣のように広告塔にして派手に目立つようにし
てみても良いが、テレビ塔は立地上猥雑さに欠けている。
A社 地元不動産会社
名古屋市内にて投資用不動産の運用・管理を手がけており、久屋大通周辺の商業ビルオーナー
とのつながりも深い
・ テレビ塔の周辺は回遊性がなく、段差が多くて利用しづらい。東急ハンズも名
駅に出店して以来、ずいぶん客足が少なくなったと聞く。
・ 現状のテレビ塔がそのままで集客の軸となるのは難しい。久屋大通公園の整備
を優先させたほうが良いのではないか。
・ 公園及びテレビ塔下周辺には人がたまっていられるスペースが欲しい。
・ 世知辛い時代なので都心に癒し系の設備があると人が集まるのではないか(ウ
ッドチップをちりばめたようなオーガニックな遊歩道、バリアフリー)
。せっか
く公園に来たのにコンクリートで舗装された歩道を歩きたくはない。
・ 地元の人間としてはテレビ塔を中心に周辺の地域を盛り上げてもらいたい。
42
B社 広告代理店
テレビ塔及び久屋大通公園周辺における広告宣伝活動を手がけている大手広告代理店
・ テレビ塔と名古屋城は名古屋のシンボルである。
・ 現在の久屋大通公園は段差が多く、また公園自体が道路とともに東西を分断し
た構造になっているため、各種イベントを仕掛けるためにはインフラが適して
いない。また法令等においても、都市景観法や市屋外広告物条例等により広告
について制約が多い。集客施設としてテレビ塔を活用するためには、久屋大通
の整備は不可欠であり、同時に屋外広告物条例等についても「市長が認めた場
合の特例」を弾力的に運用するなどの対応に期待している。これらの制約が緩
和されれば、広告媒体やイベントスペースとして魅力は大きい。
・ ネーミングライツについては、かつてのようには実現しづらい状況にある。そ
もそもテレビ塔に名前を付けられるほどの企業であれば、既に知名度は高く、
名前を売る必要性は少ないと想定されるため、施設名称を媒体とした広告宣伝
効果よりも、企業の社会貢献・地域貢献を切り口とした媒体としてテレビ塔を
活用する方がよい。
・ 民間に売却するとしても現状では買い手はつかないだろう。
43
Ⅳ
有識者等へのヒアリング調査
C社 イベント企画会社
まちおこしや観光事業、商業施設などの企画開発・ プロデュースを行う地元企業
・ テレビ塔内にテナントを誘致することだけでは規模的に限界があるが、店舗を
誘致するなら集合型(モール、ギャラリア)にしたほうが集客は高まる。常設
でなくてもよいのでインパクトの強いテナントの誘致が必要。
・ テレビ塔の再生問題については、テレビ塔単体をどうするかというよりも久屋
大通地区をどうするかという問題として捉えるべき。
・ テレビ塔の魅力を高めるためには久屋大通の概念性、意味づけが必要であり、
大胆な条例改正等、行政の対応が必要となる。
・ 名駅地区は交通の拠点であり、顧客の滞留時間が短く、回転率が早いエリアで
ある。今、名駅地区に人が集まるということは「効率化」が優っているという
ことである。このまま何もしなければ、栄地区は埋没していく一方である。核
としていくための努力が必要である。
・ 栄地区では名駅地区にはない平面的なスペースがあるため、ゆったりとした空
間を設けて、市民の滞留時間の長い街(広場型)を作ることが名駅(高密度型)
との差別化になるのではないか。
・ 名古屋の人は古いものは残したいという意識が強いので、
「日本初のテレビ塔」
ということを情緒的に訴えかけ、助けようという機運を高めるのがよい。
・ みんなで育ててみんなで守るテレビ塔にしていく。
44
ⅤⅤ 類似施設の調査
類似施設の調査
テレビ塔は日本初の集約電波塔であり、テレビ塔に倣って建設された電波塔も多い
という。また電波塔以外のテレビ塔類似の展望塔も全国に多数あり、テレビ塔の今後
を検討するうえで大いに参考となるものと思われる。
本章では、塔体建築としての類似施設を調査し、テレビ塔との比較を行う。
この章のまとめ
◆ 類似施設として 5 つのタワー(さっぽろテレビ塔、五稜郭タワー、東京タワー、
横浜マリンタワー、通天閣)を抽出・調査した結果、地域と一体となった観光
集客力の向上、視認性の確保、安定した賃料収入、イベント・企画商品の開発、
官民連携手法などの特徴が見出された
現地調査及びヒアリング調査を行った類似施設は、テレビ塔も加盟する全日本タ
ワー協議会9加盟タワーから次表のとおり抽出した。
9
全国 20 のタワーで運営している組織であり、全国を 4 つのブロックに分けて、観光事業の強化等、新
たな収益策の確立のため意見交換を行っている。加盟タワーは以下の通り。さっぽろテレビ塔(北海道)
、
五稜郭タワー(北海道)
、横浜マリンタワー(神奈川県)
、銚子ポートタワー(千葉県)
、千葉ポートタワ
ー(千葉県)
、東京タワー(東京都)
、クロスランドタワー(富山県)
、ツインアーチ 138(愛知県)
、名古
屋テレビ塔(愛知県)
、東山スカイタワー(愛知県)
、東尋坊タワー(福井県)
、京都タワー(京都府)
、
通天閣(大阪府)
、梅田スカイビル(大阪府)
、神戸ポートタワー(兵庫県)
、ゴールドタワー(香川県)
、
夢みなとタワー(鳥取県)
、海峡ゆめタワー(山口県)
、福岡タワー(福岡県)
、別府タワー(大分県)
。
45
Ⅴ
類似施設の調査
【表 7】調査対象の抽出根拠
名 称
抽出根拠
さっぽろテレビ塔
おり、道路上に存する工作物という状況類似性が極めて高い。入場者数はテレビ
テレビ塔と同一設計者(内藤多仲氏)
。テレビ塔に倣って建設されたと言われて
塔を上回っており、商品開発を含め、今後の運営の参考となるため。
五稜郭タワー
観光用タワーとして高い集客力を有し、最新の来場者管理システムの導入、旧
タワー跡地のアトリウムへの転用等、経営面での工夫が参考となるため。
テレビ塔と同一設計者。全日本タワー協議会の事務局を有し、広範な情報収集
東京タワー
が期待できるほか、入場者数、売上とも協議会加盟タワー中最多となっており、
運営面で参考になるため。またデジタル放送移行の影響により、テレビ塔と問題
意識が共通しているため。
横浜マリンタワー
テレビ塔と同じく民間所有であった塔体を、市が取得した後、公募により民間
に運営委託をしており、今後のテレビ塔活用のあり方の参考となるため。
テレビ塔と同一設計者。道路上に存するという状況類似性が高いほか、観光用
通天閣
タワーとして高い集客力を有し、多様な商品開発など、今後の運営の参考となる
ため。
46
(1)さっぽろテレビ塔
【特徴】
・ 高い視認性とランドマーク効果
・ 積極的なイベント、物販等の企画開発
【課題】
・ 大通公園のイベント集客力と展望台収入との結
び付け
・ 経営の効率化、スリム化の必要性
【写真 8】さっぽろテレビ塔
さっぽろテレビ塔はテレビ塔と外形及び立地環境が最も類似する施設である。
市の主要道路である札幌大通上に位置しているが、テレビ塔とは異なり、都市公
園の区域からは外れている。それでもテレビ塔に比べ高い集客力を有する理由と
しては、公園内の施設がバランスよく整備されており、イベントが多く周辺の集
客力が高いこと、視認性が良く、電光時計とともに市民のシンボルとなっている
ことなどが考えられる。
また、札幌市は観光都市として広く認識されており、テレビ塔に比べ、全入場
者数に占める観光客の割合が高いこと(テレビ塔では愛知・岐阜・三重在住者が
7 割近くを占めているが、さっぽろテレビ塔では道外居住者が約 7 割10)もある。
イメージキャラクターである「テレビ父さん」は道外からも人気が高く、売上げ
も好調である。
しかし、高いイベント集客力を直接的に展望台収入に結びつけることができて
いないほか、手広く手がけていた観光事業の縮小等により、経営の効率化・スリ
ム化の必要性が出てきている。
10
テレビ塔㈱及び北海道観光事業㈱からのヒアリングに基づく割合。
47
Ⅴ
類似施設の調査
(2)五稜郭タワー
【特徴】
・ 五稜郭公園の安定した集客力に基づく好調な展
望台収入
・ 効率的な来場者管理システム
・ 企画展示、見せ方の工夫
【課題】
・ 施設入場者数が函館市の観光集客力に高く依存
・ 将来における日帰り客の増加に伴う入場者数減
少の懸念
【写真 9】五稜郭タワー
五稜郭タワーは純粋な観光用タワーであり、塔体を平成 18 年に建替え・高層
化したことから機能性に富み、五稜郭の全貌が見渡せるよう工夫された展望台の
設計、最新の来場者管理システム導入、旧タワー跡地に憩いの場であるアトリウ
ムの併設等各種の工夫が施されている。集客については函館を代表する観光スポ
ットである五稜郭が担っており、最近復元された函館奉行所の開館と相まって、
高い集客力を発揮している。また、五稜郭公園の眺望が得られる唯一の施設であ
り、高い集客力を展望台収入に反映できている。
一方で、施設としては函館市の観光施設(五稜郭公園、函館奉行所)の集客力
に高く依存しており、タワー単体での集客は見込みにくく、平成 27 年に予定さ
れている北海道新幹線の開業及び将来における延伸により、日帰り観光客が増加
することによる入場者数の減少が懸念されている。
48
(3)東京タワー
【特徴】
・ 圧倒的な知名度とテナント賃貸料を軸とした
安定した賃料収入
・ 全日本タワー協議会加盟の 20 タワー中最多の
展望台入場者数
・ 優れたイベント、物販等の企画開発
【課題】
・ 東京スカイツリーへのデジタル放送発信機能
移転後の収入の減少
・ 経営の効率化、スリム化の必要性
【写真 10】東京タワー
東京タワーは現在、日本一の高さを誇るタワー(333m)であり、東京という
立地、規模を活かした商業施設展開、はとバスツアーとの連携による集客等、他
のタワーを大きく引き離し、名実ともに日本一のタワーである。グッズ売上も好
調で、オリジナルキャラクターである「ノッポン」も子供を中心に好評を得てい
る。収入は不動産賃貸収入が約 26 億円、展望台収入が約 23 億円と底堅い収入を
得ている。
しかしながら平成 24 年 5 月以降、デジタル放送発信機能が東京スカイツリー
へ移転することに伴い、現在の不動産収入のうち、放送事業者への賃料収入が減
少することとなるため、デジタル放送の予備送信施設の設置、商業床への転用等、
別の収入源を模索中である。
49
Ⅴ
類似施設の調査
(4)横浜マリンタワー
【特徴】
・ 民間に運営委託することによる市の財政的な負
担軽減と、民間主導のにぎわい創出を実現
・ 地元と密接に結びついた集客力
【課題】
・ 施設の運営に関して制約が多く、収益性発揮が
不十分
・ 運営者が内装等を整備しているが、定期借家期
間内での償却は困難
・ 市で実施する塔体塗装などの大規模改修の財
【写真 11】横浜マリンタワー
源確保
昭和 36 年に世界最高点に位置する灯台として、また観光タワーとして開業し
た横浜マリンタワーは、入場客数の減少、施設の老朽化により、平成 18 年に閉
館された。平成 19 年 3 月に横浜市が塔体及び土地の一部を氷川丸マリンタワー
株式会社から取得し、耐震改修などの標準的な整備を行ったうえで、事業者を公
募、民間事業者の企画力・経営資源を導入した再生を図っている。
運営者である株式会社ゼットンの公共施設における事業展開の実績をもとに、
レストラン、カフェ、ギャラリー、展望台として利用されているほか、年間約 100
件のウェディングも行われ、週末には 1 階で地元の学生等によるコンサートを開
催するなど、地域に根ざした複合観光施設として魅力の高い施設となっている。
市が施設を所有し、民間に貸し付け運営を任せる形態により、民間の自由な発
想によるにぎわい創出が可能となっているものの、施設内には「公益床」とよば
れる商業行為をすることができない部分も多く含まれ、施設外部の使用にあたっ
ては市への届出手続きが必要であるなどの制約も多い。また、10 年間という短期
間の賃貸借契約期間で、多額の初期投資を回収する必要があることも運営者にと
っては課題である。
なお、概ね 10 年ごとの塔体塗装などの大規模改修は、施設所有者側で実施す
ることとなっており、財源の確保などが市にとっての課題となっている。
50
(5)通天閣
【特徴】
・ 大阪らしさ(面白さ)を追求したイベント力
・ 地元商店街と一体となった高い集客力
・ 広告掲出によって高められているシンボル性
(天気予報、ネオン)
・ 積極的なメディア露出とポジティブ思考
【課題】
・ 経営効率化のための株式会社組織のスリム化
・ 展望塔設備の老朽化対策、新規設備の導入
【写真 12】通天閣
明治 45 年、第 5 回内国勧業博覧会の会場跡地に初代通天閣が誕生したが、昭
和 19 年、近隣の火災による延焼と戦時下における金属献納運動等を契機に初代
通天閣は解体された。戦後、復興への思いから新世界町会連合会を中心として、
通天閣再建への機運が高まり、昭和 30 年、通天閣観光株式会社が設立され、昭
和 31 年には 2 代目となる通天閣が新築、開業した。
また当時、関西ではまだ知名度が少なかった株式会社日立製作所と主塔広告賃
貸借契約を締結し、ネオンを灯すなど、通天閣のシンボル性は高まり、大阪万博
が開催された昭和 45 年には最高の収益をあげた。
しかし、その後は客足の減少が進み、オイルショックによるネオンの停止、光
化学スモッグによる塔体の鉄骨錆化、展望台からの視界の悪化が追い討ちをかけ、
更に当時の経営陣の放漫運営により経営基盤が傾いた状態となった。
昭和 54 年、現経営陣の先代に経営権が委譲され、ネオン点灯再開、天気予報
表示装置の設置、ビリケン像の復活等、積極的な集客活動を行い、NHK朝の連
続テレビドラマ「ふたりっ子」人気や、「二度づけ禁止」をキャッチフレーズに
した串カツブームにより新世界の町が見直され、客足が復活していった。最近で
は、通天閣ロボットの製作や積極的なメディア露出、イベント戦略により経営の
安定化を継続しており、直近 5 期の有価証券報告書によると営業収入、経常利益
は右肩上がりで上昇している。
51
Ⅴ
類似施設の調査
【表 8】類似施設の比較
名称
名古屋テレビ塔
さっぽろテレビ塔
五稜郭タワー
札幌市中央区
昭和 32 年
平成 14 年リニューアル
設計:内藤多仲、日建設計
施工:大林組
電波塔、観光塔
函館市
昭和 39 年 12 月(初代)
平成 18 年新築(2 代目)
現在の機能
名古屋市中区
昭和 29 年 6 月
平成 18 年リニューアル
設計:内藤多仲、日建設計
施工:竹中工務店ほか
電波塔、観光塔
運営会社
テレビ塔㈱
北海道観光事業㈱
五稜郭タワー㈱
愛知県(25%)
名古屋市(25%)
地元企業、個人
180m
テレビ塔㈱、NHK、CBC
275,339 人
売上高
約 265 百万円
札幌市(17%)
地元企業
個人株主約 200 名
147.2m
北海道観光事業㈱、NHK
354,496 人
売上高
約 700 百万円強
外観
所在地
完成時期
改修等
設計・施工
主要株主
高さ
所有者
展望入場者数
入場料収入 約 109 百万円
賃貸料収入 約 156 百万円
収支概要
販売費及び一般管理費
約 213 百万円
【入場料収入】
入場者数は開業当初をピー
クとして徐々に減少しており、
平成 12 年頃には年間 20 万人を
割り込む状況となっていた。そ
の後、平成 18 年にリニューア
ルし、それ以降は 25 万人前後
で推移している。
【賃貸料収入】
NHK、民放各局に放送用機材
の設置スペースを貸すことに
より、賃貸料収入を稼得。また、
先のリニューアルに伴い、塔内
のレストラン等を賃貸スペー
スとしている。
【販売費及び一般管理費】
塔体塗装は 7 年に 1 度、
約 2.3
億円をかけて行われる。平成 22
年度の人件費率は約 30.7%。
展望台収入
物販収入
不動産賃貸収入
札幌ドームカフェ
旅行代理店収入
約 170 百万円
約 120 百万円
約 100 百万円
約 130 百万円
約 180 百万円
【展望台収入】
入場者数は昭和 33 年頃の 70
万人から、平成 22 年度には 35
万人と半減。観光客が中心。
【物販収入】
非公式キャラクター「テレビ
父さん」の販売が好調。粗利は
50%程度。
【不動産賃貸収入】
電光時計設置に月額 60 万円、
その他、飲食・物販店舗が入居。
2 階部分は貸会議室としてお
り、稼働率は 20%程度ながら年
間 2,000 万円程度売り上げ。
【旅行代理店収入】
一時は修学旅行等の代理店
として好況だったが、赤字が続
き札幌は 9 月末で撤退、東京事
業所についても撤退の見通し。
52
設計・施工:清水建設
観光塔
個人ほか
98m(避雷針含み 107m)
五稜郭タワー㈱
793,594 人
売上高(推定)
10 億円程度
入場料収入 全体の 6 割
売 店 収 入 全体の 4 割近く
【入場料収入】
五稜郭の眺望を目的とし、年
間 150 万人の観光客の取込みに
工夫を重ねており、歴史パネル
や模型等展示スペースが人気。
【賃貸料収入】
2 階部分は飲食店が入居し、
地元客を中心に売上は好調だ
が、全体の収入に対する寄与度
は相対的に低い。
【売店収入】
北海道、函館の土産物を多数
取り揃えており、観光客のほ
か、地元客も利用している。
【経営上の工夫】
チケットカウンター内部に
は基幹業務全般を担うシステ
ムを導入しており、建替えに伴
う効率化が図られている。
名称
東京タワー
横浜マリンタワー
通天閣
現在の機能
東京都港区
昭和 33 年 12 月
平成 16 年リニューアル
設計:内藤多仲、日建設計
施工:竹中工務店
電波塔、観光塔
大阪市浪速区
昭和 31 年(2 代目)
平成 8 年リニューアル
設計:内藤多仲、日建設計
施工:奥村組
観光塔
運営会社
日本電波塔㈱
横浜市中区
昭和 36 年 1 月
平成 19 年改築
改築設計:日建設計
改築施工:清水建設
観光塔
リスト㈱、㈱ゼットン
㈱TK スクエア
横浜エフエム放送㈱
―
現役員、地元商店主、企業ほか
106m
横浜市
318,738 人
売上高(目標)
800 百万円
103m
通天閣観光㈱
824,288 人
売上高
682 百万円
外観
所在地
完成時期
改修等
設計・施工
主要株主
高さ
所有者
展望入場者数
㈱東京タワーパーキングセンター
東映㈱、房総開発㈱
㈱マザー牧場 ほか
333m
日本電波塔㈱
3,295,000 人
売上高
約 5,489 百万円
売 上 原 価 約 3,376 百万円
売上総利益 約 2,112 百万円
収支概要
販売費及び一般管理費
約 565 百万円
【売上高】
売上高のうち、展望収入が約
42%、家賃収入が約 47%、物販
収入が約 9%、その他広告収入
等が約 2%。賃料収入はテナン
ト、放送局で半々位の割合であ
るが、アナログ停波の影響によ
り、放送局からの収入が減少す
る見込。
【販売費及び一般管理費】
販管費に対して、人件費が約
49%、広告宣伝費等その他費用
が約 44%、保守修繕費用が約
5%、借地借家料が約 2%。
塔体は 5 年に 1 度塗りなおし、
約 8 億円の費用、工期は約 1 年
間。耐震補強(制振化)は平成
16 年度に完了している。
展望台収入 140 百万円
【展望台収入】
展望台部分は公益床として利
用されており、収益活動は制限
されている。
【売上高】
目標売上高は 8 億円程度。収
益源は上記展望台収入のほか、
物販、飲食、婚礼等があり、中
でも婚礼は年間 100 件程度、売
上約 3 億円と収益獲得の大きな
柱となっている。飲食店舗につ
いてはゼットン直営の 3 店舗で
約 2 億円程度売上げ。
【運営上の課題】
10 年の定期建物賃貸借契約
であり、期間満了後は再度公募
により賃借人を選定するため、
初期投資額の回収が困難である
という課題を抱えている。
通天閣観光㈱
展望台収入
物販収入
貸室収入
広告収入
404 百万円
133 百万円
24 百万円
50 百万円
【展望台収入・物販収入】
昨年度の入場者数は約 82 万
人(前期比 3.5%増)、休日に
は 30~40 分待ちとなることも
あり、高い集客力を誇っている。
通天閣ロボットの製作や新世界
100 周年等、大阪らしさ、話題
性のあるイベントにより、今後
も安定した収入が見込まれる。
【貸室収入】
名産品店、貸店舗等からの安
定した家賃収入を得ている。
【広告収入】
日立製作所とネオン設置で、
年間 5,000 万円を得ている。補
修や電気料も賃借人が負担して
おり、大きな収入源となってい
るほか、通天閣自体のシンボル
性を高める要因となっている。
運営会社、主要株主、所有者は平成 23 年 12 月末現在、展望入場者数、売上高等は平成 22 年度実績
53
Ⅵ
テレビ塔存続の意義及び必要とされる施策の検討
ⅥⅥ テレビ塔存続の意義及び必要とされる施策の検討
テレビ塔存続の意義及び必要とされる施策の検討
本章では、これまでのテレビ塔の資産価値調査並びに市民アンケート、有識者等へ
のヒアリング及び類似施設調査を踏まえ、テレビ塔を存続させるべきか否かについて
結論を導き出すこととする。併せて、今後の活用を図るために必要とされる施策につ
いて検討していく。
この章のまとめ
◆ テレビ塔は文化財的価値、機能的価値、情緒的価値などの多様な価値を有し、
市民にとって極めて重要な施設であるため、存続に向けた方策をさぐるべきで
ある
◆ テレビ塔の存続のためには、名古屋を代表する観光集客施設に相応しい現行関
係法令に則した施設整備、塔体を景観として楽しむための周景整備、塔体を維
持するための安定的収入源の確保、オリジナル企画商品・地域と連携したイベ
ント等の観光魅力を高めるソフト事業の開発、電波塔機能の存続、市民参加の
場の提供が必要である
1.テレビ塔存続の意義
ここまでの調査により、テレビ塔には次のような価値が認められる。
① 文化財的価値
耐震構造理論を飛躍的に発展させた、構造設計の権威である内藤多仲博士が
手掛けた塔体建築として建築構造学的にも価値が高く、通天閣、さっぽろテレ
ビ塔、東京タワーなど、その後続々と全国に建設されたタワー建築の祖といえ
る存在である。
同時に、名古屋の戦災復興事業と連動して整備された経緯からみても、名古
屋の復興の歴史を物語る記念碑的な存在として、後世に残すべき文化財的価値
54
を有すると考えられる。
② 機能的価値
開業当時は東洋一の高さを誇ったが、その後の東京タワー誕生や高層ビル建
設で高さの優位性は失われたと言わざるを得ない。
反面、そうした高層ビルからの眺めは眺望の良さと引き換えに地上から乖離
した距離感を抱かせるのに対して、地上 90mの高さにあるテレビ塔展望台から
の眺めは、道行く人々や色づく木立、あるいはイベントで賑わう街の様子など、
移り変わる街の表情を程良い距離感を保ちながら観察するのに相応しいものと
もいえる。
また、電波塔として見ると、都心の区画整理事業という絶好の機会に合わせ
て建設されたため、濃尾平野の中心でかつ都心という広域電波送信施設として
の最適地を選ぶことができたが、仮に撤去となった場合、同様の好条件での送
信塔建設は難しい。
以上から、電波塔、展望塔としてのポテンシャルは今後も普遍性を有するも
のといえる。
③ 情緒的価値
昭和 29 年当時、名古屋市の中心部が戦災によって破壊され、初代名古屋城も
焼失した中での東洋一の高さを誇るタワーの誕生は、市民はもとより全国の
人々にとって戦災復興に対する情熱と新しい時代の幕開けの象徴であり、明日
への希望を与える存在であったことがさまざまな証言から読み取れる。
以来、テレビ塔は 57 年の長きにわたり、都心の空に屹立する名古屋を代表す
る心象風景となったことは論を待たない事実と言える。
市民アンケートでも「取り壊すのはなんとなくさみしいから」という回答も
多く、経済的価値では推し量れない情緒的価値を市民が重視していることが明
らかとなった。
④ 資産価値
CVM調査において、市民による年間支払い意思額は 36 億円と推計されたが、
実際に寄附等を実施した場合に同額を市民が支出するかどうかは、景気動向や
55
Ⅵ
テレビ塔存続の意義及び必要とされる施策の検討
社会的機運などさまざまな要因に左右されるため、一概には判断できない。
しかしながら、少なくともそうした価値を有する重要な施設として市民が認
識していることから、テレビ塔は周辺地域のステータス性の向上や都心ならで
はの景観形成といった間接的な価値も含め、維持活用する根拠として評価しう
る一定の資産価値を有するものと考えられる。
以上の価値分析から、テレビ塔は電波塔・展望塔という表層的な機能以外にも多
様な価値を有しており、市民にとっても極めて重要な施設であるといえる。したが
って、テレビ電波送信の役割を終えたことをもって拙速に取壊しという選択をする
ことは妥当ではなく、存続に向けた方策をさぐるべきであると考える。
56
2.今後取り組むべき必要な施策
テレビ塔には前述の多様な価値が認められており、テレビ塔の存続に向けては、
強みを生かし、弱みを改善していくことが求められる。特に維持管理に多額の経費
がかかることから、収益性の向上は大きな課題である。
もともと床面積が小さく、直接的な利用価値から得られる事業収益が限定的であ
るテレビ塔において、間接的な利用価値を可能な限り事業収益につなげていく工夫
をするなど、今後取組むべき施策を列記すれば次のとおりである。
① 名古屋を代表する観光集客施設に相応しい現行関係法令に則した施設整備
建設当時は当時の法令上必要な耐震性を有していたが、度重なる建築基準法
の改正に適合させることが法律上努力目標であることに加えて、直近の東日本
大震災の発生、東海・東南海地震等の発生確率の上昇などを考慮すると、耐震
性能の向上は現実的課題として無視できるものではない。
なお、アナログ電波送信機器等の空きスペースを有効活用する上では、現行
法令への適合が必須となる。
② 塔体を景観として楽しむための周景整備
テレビ塔は、内藤博士がエッフェル塔を意識して設計を行ったとも言われ、
その後の日本の塔体建築のモデルというべき普遍的景観を提供しているものの、
周囲の木立によってその優美な全景を見渡すことが困難となっている。
これは価値別支払い合意率調査で最高位となった間接的利用価値「テレビ塔
のある風景を楽しむ」ことが活かされていない原因のひとつとなっている。
これに対して、同様に道路上に建設されたさっぽろテレビ塔では、大通公園
周辺であればどこからでも容易に足元から塔頂まで一望にすることができ、そ
の姿を背景に記念撮影することが重要な観光資源となっている。
今後テレビ塔を活用する上で、景観形成価値は極めて重要であり、建物全体
を眺められる地点を整備することは観光集客力向上に寄与すると考えられる。
57
Ⅵ
テレビ塔存続の意義及び必要とされる施策の検討
③ 塔体を維持するための安定的収入源の確保
鋼材が露出しているテレビ塔においては、通常の施設管理に加えて 7 年に一
度の頻度で防錆を目的とした塔体塗装が行われている。
平成 22 年にテレビ塔㈱が行った調査では、構造体である鋼材及びコンクリー
トともに目立った劣化は見られず、引き続き塔体を使用することには支障がな
いとの結果が出ているが、塔体塗装を行わない場合、塗装の劣化部位から確実
に劣化が進行していくと考えられ、健全な施設の維持には定期的な塔体塗装は
不可欠である。
1 回の塗装にかかる費用は約 2 億円(テレビ塔㈱による実績)であり、その
費用の捻出のためにも、安定的な収入源を確保することが必要である。
④ オリジナル企画商品、地域と連携したイベント等、観光魅力を高めるソフト事
業の開発
かつて年間 100 万人を数えた入場者数も現在では 20 数万人と低迷しており、
観光入込客数でみると、市内観光施設のうち 18 位11という下位に甘んじている。
その原因として、他の展望施設や観光施設の開業、レジャーの多様化などさ
まざまな要因が考えられるが、そうした外的要因に加えて、施設の魅力を高め
る取組みの強化が必要である。
具体的には、来場、商品購入の動機付けとなる東京タワーにおける「ノッポ
ン」、さっぽろテレビ塔における「テレビ父さん」、あるいは通天閣の「ビリケ
ン」のようなユニークなキャラクターの設定や、あるいは、観光客のみならず
市民が日常的に訪れる動機づけとなる地域と連携した集客力のあるイベントの
開催が必要である。
⑤ 電波塔機能の維持
テレビ塔は本来的に電波塔として設計・整備された構築物であり、長年にわ
たりテレビ放送を媒体とした情報発信拠点としての役割を担ってきた。同様の
11
名古屋市観光客・宿泊客動向調査(平成 22 年度)
。
58
電波塔を都心部に建設することは、工事に伴う周辺環境への影響という点から
今となっては困難であり、テレビ放送のアナログ電波塔の役割を終えたものの、
その備わっている電波発信機能を活かすため、今後も、マルチメディア放送を
はじめさまざまな放送にかかる電波塔機能を維持すべきである。
⑥ 市民参加の場の提供
テレビ塔が多くの人に愛着を持って受け入れられ続けるためには、イベント
への参加や収益施設の利用といった、いわば受動的な関わり方だけでなく、自
らがそこでイベント等を企画し情報を発信するといった、主体的な関わり方も
検証に値する。その場自体は収益を生む部分とはならないかもしれないが、テ
レビ塔をより身近に感じ、訪問する機会が増えれば、収益へつながる可能性も
期待できる。
59
Ⅶ
保有形態・運営主体別の比較検討
ⅦⅦ 保有形態・運営主体別の比較検討
保有形態・運営主体別の比較検討
今後テレビ塔が存続する際の所有・運営主体としては、現運営者であるテレビ塔㈱
のほか、他の民間企業、地元自治体などさまざまな団体が想定される。本章ではそれ
ぞれの場合の実現可能性について比較検討を行う。
この章のまとめ
◆ テレビ塔㈱が自ら資金調達することは事業規模に比して多額の投資額となるこ
とから単独での解決は難しく、県・市や企業等からの資金提供も現状の経済情
勢などから主導的な対応は困難である
◆ テレビ塔の存続には、民間企業と行政との連携が必要である
◆ 施設の安定的維持と集客機能の向上を両立するためには、市が所有し、民間企
業が主体的に整備・運営を行う等、官民の連携を検討する必要がある
1.テレビ塔㈱による資金調達
まずは現所有者であるテレビ塔㈱が引き続きテレビ塔を運営していく可能性に
ついて検討すべきであるが、前述のとおりテレビ塔を引き続き運営していくために
は多額の耐震改修等の工事費用が必要となる。
しかしながらテレビ塔㈱は土地を保有しておらず、保有資産は塔体のみであるた
め、資金調達のための担保の設定が困難であり、また必要な投資額に比べ事業規模
が小さいことからも、現状の経営環境において市中銀行等の金融機関から融資を取
り付けることは極めて困難である。
そこで現運営者であるテレビ塔㈱が、金融機関以外から資金調達する可能性につ
いて考えることとする。資金提供者を、テレビ塔に投資的価値を見出す民間企業、
またナショナルトラスト運動に類する市民投資、さらにテレビ塔が立地する自治体
であり出資者でもある愛知県と名古屋市についてそれぞれのケースを検討する(表
9)。
60
【表 9】想定される資金提供者の比較
想定される
民間企業
市 民
社会貢献、宣伝効果への
名古屋のシンボルを残
期待もあるが、リスクも
したいという機運の高
民間企業の存続を図るため、行政が資金
高く、資金投入は期待で
まりはあるが、資金の原
を投入することに理解が得られにくい
きない
資が不明確
資金提供者
見 解
実現可能性
×
愛知県
×
×
名古屋市
△
(民間企業が資金提供する可能性)
民間企業による資金提供として、株式の増資による資本参加、企業買収、広告等
さまざまな形態が考えられる。
このうち、増資についてはテレビ塔㈱が非上場であるとともに平成 11 年度を最
後に無配当が続いており、企業に対する投機的価値は少ない。
同様に企業買収についても、同社の事業拠点はテレビ塔のみであり、なおかつ固
定資産として土地を保有していないことなどから、資産としての運用価値も極めて
低く、慈善事業的意味合いでの投資以外にはありえない。
一方で、広告媒体として塔体を活用することが可能であれば、広告事業を軸に資
金を得る可能性もある。
しかしながら、立地場所が道路・公園内にあり、景観形成地区内であること、さ
らには名古屋の都心の景観上、極めて大きな影響があることにより建設当時から広
告掲載禁止物件であることなどから、広告掲載にはさまざまな制約が存在する。
仮にこうした規制を緩和できたとしても、昨今の景気低迷に加え、ウェブサイト
やSNS(ソーシャルメディア・ネットワーク・サービス)等を活用した新たな広
告が急速に進展するなかで、塔体への広告掲載を主軸として運用に必要な収入を賄
うことは容易ではない。
このように、15 億円以上とも想定される設備改修を前提とする建物に対して投資
を行い、運営経費をねん出するとともに、一定の投資利回りを確保する事業を企業
活動として構築することは極めて難しいと考えられる。
(市民が資金提供する可能性)
先のCVM調査や市民アンケート調査の結果によれば、市民のテレビ塔存続への
61
Ⅶ
保有形態・運営主体別の比較検討
期待感は強く、資金提供の意欲もあることから、耐震改修など一時的な費用負担に
ついては多くの市民の賛同を得られる可能性がある。
一方で、継続的運営費を市民からの資金提供で賄うためには、賛同する方から恒
常的に資金調達を行うしくみづくりや、集まった資金を適正かつ効率的に運用する
ための事務局体制など、安定的な事業体制整備が不可欠である。
そうした点において、英国のナショナルトラスト等の先進事例に比べ市民ファン
ドが進んでいないわが国では、免税措置等の促進制度や信頼に足る十分な資金運用
実績を有しているとは言えず、市民による資金提供のみでは安定的な施設維持管理
は困難であると言わざるを得ない。
(愛知県又は名古屋市が資金提供する可能性)
行政が出資先であるテレビ塔㈱に多額の増資を行うことは、厳しい財政状況およ
び外郭団体改革の機運などに鑑みて容易ではない。
とりわけ愛知県に関しては、名古屋市と並びテレビ塔㈱の出資者である一方で、
立地場所が名古屋市の市道および市が管理する公園上であること、言い換えれば愛
知県内に多数存在する他の観光施設と比較して取り立てて支援すべき突出した存
在とは必ずしも言えないことから、テレビ塔㈱に主体的な支援を行うことに対して
県民理解を得ることは困難であると考えられる。
一方、名古屋市の資金提供に関しては、愛知県に比較し、増資などに一定の意義
は認めうるが、テレビ電波送信という公共事業を失った今、観光事業という民間主
体事業の一角を担う株式会社の経営支援を行うことに対しては、さまざまな議論が
必要である。
いずれにせよ、現在の事業活動を維持するためにテレビ塔㈱に対して行政が直接
的に公的資金を投ずることについては、公共性あるいは他の民間事業者との公平性
の観点からも慎重に取り扱うべきと考えられる。
62
2.想定される所有者
前記1においてテレビ塔㈱が自ら資金調達する可能性を考察したが、現状では実
現可能性についての詳細な検討が困難であると判断したため、次に、以下の 4 者が
テレビ塔の所有権を取得する可能性について検討する(表 10)。
【表 10】想定される所有者の比較
想定される
民間企業
市 民
手 段
投資
寄附金
実現可能性
△
×
所有者
愛知県
名古屋市
税金投入
税金投入
国の補助金
国の補助金
×
△
(民間企業が取得する可能性)
民間企業については、新たなビジネス機会として施設を取得する場合、投資規模
に見合う収益確保が可能かどうかにより事業を判断することが一般的である。そう
した判断材料の中には、収益源として活用可能な床面積、集客性、社会貢献、広告
価値等さまざまな要素がある。
ヒアリングの結果からも、名古屋の都心にあり、周辺に一定の人口が張り付いて
いるという立地条件や、市内はもとより県内・全国に認知された「テレビ塔」とい
うネームバリューについては一定の価値が見出されるものの、長期にわたる国内景
気の低迷や円高、さらには世界的金融不安に加えて、東日本大震災影響等、さまざ
まな要因により投資意欲は相当冷え込んでおり、現状において制約の多い同施設に
対して単独で 15 億円もの投資に踏み切る企業は期待できない。
社会貢献へのアピール等の観点から投資規模に見合った部分的な投資について
は検討可能性が残されていると言えるものの、現状は広告掲載が制限されており、
宣伝効果が限定的であることから、そのような点からも企業による投資は困難と考
えられる。
(市民が取得する可能性)
アンケート調査結果からみても、市民はテレビ塔問題について関心が高く、施設
63
Ⅶ
保有形態・運営主体別の比較検討
の存在意義を高く評価しており、テレビ塔を保存するための少額寄附金等を募る場
合には十分可能性があると予想される。
しかし景気低迷が続く社会環境下においては、先の民間企業による取得の検討と
同様に、市民の投資意欲も極めて低く、仮に英国におけるナショナルトラスト運動
のような大規模投資を想定したとしても、市民・民間のみによる資金調達は現実的
ではない。
仮に資金調達が可能となった場合においても、多額の資金の管理・運用は容易で
はなく、専門的なノウハウが必要となることからも、実現可能性は低いと考えられ
る。
(愛知県が取得する可能性)
1で検討したことと同様の理由により、県がテレビ塔に対し特別に支援する根拠
は弱く、取得は難しいと言わざるを得ない。
(名古屋市が取得する可能性)
上記の通り、民間企業、市民、愛知県による資金調達及び施設の取得可能性につ
いて検討を行ったが、現時点においては具体的かつ実現可能性の高いテレビ塔の活
用方策は見出せず、これらの者による取得を想定することは難しい。
一方、前述の通りアナログ放送終了によりテレビ塔㈱の経営環境は今後、一層の
厳しさを増すこととなり、さらに平成 24 年 1 月~4 月(予定)までの全館休業によ
る未収入期間等を考慮すれば、今後の活用可能性について早期に結論付けを行う必
要がある。
このような状況及びテレビ塔との関わりを勘案すると、名古屋市についてはテレ
ビ塔の取得を検討するにあたり以下の合理性が認められる。
市は県とともに、現所有・管理者であるテレビ塔㈱に 25%出資するとともに、首
長が取締役に就任している。市民アンケートの結果からテレビ塔の維持保存に対し
て 7 割以上が肯定的であり、またその約 8 割が市による支援を容認している。
また、CVM調査の結果によれば、市内だけで年間 36 億円の便益があると推計
されるなど、施設が直接的に受け取る対価としては多くないものの、施設が地域に
及ぼす価値についてみても、行政的には投資に対する十分な価値が得られるものと
言える。
64
テレビ塔の存在が周囲に与える影響についても、周辺地価や固定資産税等に対す
るプラス要因となり、間接的に市の財政に寄与することも考えられるため、市がテ
レビ塔を取得することは意義のあることと言える。
もちろん、本市の厳しい財政状況を鑑みるに、15 億円とも言われる改修工事費を
単独で負担することは難しいため、国からの交付金、県からの補助金、民間からの
寄附金等の取得を視野に、十分な検討を重ねる必要がある。
65
Ⅶ
保有形態・運営主体別の比較検討
3.今後のテレビ塔の所有・運営形態
前節において分析を行った結果、現所有者であるテレビ塔㈱以外による関与を想
定した場合、最も可能性が高いのは市による所有であると考えられる。
この場合において、市が指定管理者制度を導入し運営するほか、民間企業のノウ
ハウを活用した運営を行うケースも考えられる。
また実現可能性は低いものの、民間事業者が取得する可能性についても検討の余
地が残されている。
以下においては、民間が取得・運営する場合の長短の検討並びに市が所有する場
合について、市が単独で運営する場合及び民間企業と連携し運営する場合について
それぞれの長短について検討を行った。
66
【表 11】所有・運営形態の比較
区分
民間
市
市+民間
施設の所有者
民間企業
市
市
運営主体
民間企業
市
単独所有又は共同所有
スキーム
・
現所有者が民間企業
民間企業
(指定管理者)
指定管理方式
・
に施設を売却
公の施設として条例
PFI方式等
・
設置し、指定管理者を
民間企業が設計段階
から整備し運営
公募
ランニング
コスト
施設維持(塔体
・
塗装など)
保有者の安定性
△
△
○
民間企業が負担
市が負担
業務範囲に含める
収益悪化で維持経費
・
予算の平準化が困難
削減のおそれ
・
現状と同じ状態での
維持は困難
△
・
不採算となれば撤退
・
市が所有することで
・
わい創出)
・
収益性・運営の
高収益性ビジネスモ
経費圧縮の期待
・
予算の平準化が可能
○
・
市が所有することで
施設としては安定し
施設としては安定し
て存続可能
て存続可能
○
地域貢献(にぎ
民間ノウハウによる
◎
の可能性あり
事業の継続性
・
△
・
市が所有運営し、指定
○
・
PFIのメリットで
デルの実現可能性
管理者に維持管理を
ある民間のノウハウ
民間創意の活用の余
させることで制約が
の発揮が可能
地が大きい
多く、民間の創意の余
柔軟性
・
地は限定的
にぎわい創出へのイ
ンセンティブの作用
度合いは大きい
・
その他の課題
イニシャルコストが
・
期間は通常 4 年と短
・
業者選定までに時間
大きく、
買い手となる
く、合理的な管理が難
と行政コストがかか
企業が現れない可能
しい
る
性が高い
・
行政側の事務手続き
・
収益性によっては応
が煩雑(定期的な業者
札が望めない場合も
選定と引継ぎ)
ある
類似事例
通天閣、五稜郭タワー
東山スカイタワー
実現可能性
△
△
67
横浜マリンタワー
(普通財産の貸付)
○
Ⅶ
保有形態・運営主体別の比較検討
① 民間企業が所有・整備し、運営する場合
民間企業が、現所有者である放送事業者・テレビ塔㈱から塔体を取得し、整
備の上運営するケース。民間活力注入による地域活性化が期待されるが、収益
悪化により撤退の可能性もあるため、テレビ塔の存続性については不安が残る。
また耐震工事など収益性に寄与しない部分での初期投資額が大きく、単独企業
での取得はもとより、複数企業の共同投資によっても買い手を見つけることも
困難であるため、実現可能性は極めて低い。
② 市が所有・整備し、指定管理により運営する場合
安定的な運営が期待できる半面、民間による創意は難しい。市が整備運営す
ることにより、相当額の財政支出が必要となるほか、7 年に 1 度必要となる塔
体塗装に向け、予算の平準化が課題である。
③ 市が所有し、PFI 手法等により民間企業が整備・運営する場合
市が所有することで施設の存続性が確保できるほか、民間企業による整備・
運営により市の経費圧縮が期待できる。一方、企業にとっては、初期投資が抑
えられ、収入増加に向けた民間企業の積極的集客策が期待できる。
①において検討したとおり、民間企業が所有・整備する場合、耐震・設備更新工
事という直接には収益に寄与しない部分に要する費用が大きい半面、収益を生み出
すための床面積が小さいため、収支バランスをとることが難しく、買い手企業が現
れる可能性は低い。
仮に買い手企業が現れた場合でも、収益性の低さゆえ他の事業からの資金繰り入
れを前提とせざるを得ず、長期的に保有し続けることは相当な困難が伴う。結果と
して、短期間で撤退、転売といった末路をたどるおそれも払しょくできない。
一方、市が所有・整備する場合は、施設価値の中に景観形成などの外部経済性が
高く認められることからも公的機関が所有することの意義があり、安定的・永続的
な所有が期待できる反面、対価としての財政支出が必要となる。また、市が行政目
的を主軸として運営を行う場合、民間企業が持つ集客ノウハウや魅力向上のための
創意といった、観光魅力や都心の賑わいづくりという、テレビ塔が存続するうえで
68
求められる機能が不十分となることが懸念される。
以上の点から、施設の安定的維持と集客機能の向上を両立するための方策として、
今後は名古屋市をはじめとする公共団体と民間企業との連携を視野に入れ、民間事
業者からみた望ましい有効活用案を絞り込むとともに、官民が連携するための条件
を整理し、民間事業者の具体的な意向を把握することが必要となる。
69
Ⅷ
テレビ塔の活用可能性の検討
ⅧⅧ テレビ塔の活用可能性の検討
テレビ塔の活用可能性の検討
これまで考察してきたように、テレビ塔は名古屋の戦後復興の生き証人ともいうべ
き施設であり、その多様な価値を最大限活用していくことにより、施設の魅力が高ま
るだけでなく、同施設が立地する栄地区はもとより、名古屋市の魅力向上と賑わいの
創出にも寄与することが可能となる。
本章では、テレビ塔が有する価値を引き出し、ひいては地域の新たな魅力を創出し
ていくためのさまざまな活用可能性について検討する。
【表 12】活用例及び課題
活用例
内
容
課
題
ライフスタイル
ロハス、スローライフ、健康、スポ
限られた床面積での収益性の確
提案型アンテナ
ーツなど、テーマ性のある生活提案
保
ショップ
型ショップ
公園利用者の利
公園ランナー等、久屋大通公園利用
便向上施設
者が気軽に立ち寄れる便益施設(更
収益性
○
公園整備との連携
○
衣室、シャワー室等)
市民集会ホール
都心立地と抜群の知名度を活かした
利用料金と収益性のバランス
利便性の高い集会施設
常設型イベント
プロ、アマチュア問わず簡便にコン
テレビ塔下広場及び周辺の有効
スペース
サート等が開催できるイベント会場
活用の可能性検討
学生情報交流施
大学生等の若い世代が集い、交流す
大学との連携、民間企業との連
設
ることで創造性を高めあうための施
携による収入確保、収益不足分
設
の補完策
アートギャラリ
アート情報の発信を目的とした貸し
キュレーター機能の確保、収益
ー、クリエイター
ギャラリーや若手クリエイター育成
不足分の補完策
支援施設
のためのスペース
観光情報提供施
観光施設情報に加えて、栄地区等を
関係機関と連携した情報収集・
設
含め、市内・県内のイベント情報、
提供の仕組みの構築、民間企業
公園利用情報など、ゆとりある都市
との連携による収入確保、収益
生活に資する情報を提供
不足分の補完策
戦災復興、放送文
名古屋市の戦災復興及び放送関連資
展示内容の検討、既存施設との
化情報提供施設
料等を展示し、名古屋の歩みを確認
機能分担、放送関係機関との調
できる施設
整
防災情報提供、災
東海・東南海地震等に備えた各種防
地域防災計画等との整合性、防
害対策支援施設
災情報の提供、防災関係物品の備蓄
災無線等の設置にかかる技術的
検討
収益性:
○…一定の収益が見込まれる
△…ある程度の収益は期待できるものの、経費に見合う収益の確保は困難
×…収益は期待できない
70
○
○
△
△
△
×
×
上記の活用例はあくまで一例であり、具体的な活用に向けての必要経費、収益性、
施設整備及び法規上の制約等、さまざまな要素を考察すべきものである。
同時に、市民や有識者等から幅広い意見を聴取し、施設の整備内容と機能について、
並行して検討していくことが重要である。
71
Ⅸ
まとめ
ⅨⅨ まとめ
まとめ
テレビ塔は建設当時、
「テレビジョンアンテナ用基礎鉄塔及び附属施設(展望施設
等を含む)建設」を目的に市管理地使用の承認を受けていることから、電波塔及び展
望台としての機能は、テレビ塔存立の本旨と言える。以来、50 年以上を経過し、平成
23 年 7 月をもってアナログ放送は終了したものの、その存在は市民の記憶に深く刻ま
れ、名古屋にとってなくてはならない都心のランドマークとなっている。今回の調査
で、そうした機能的価値及び情緒的価値に加えて、文化財的価値、資産価値といった
さまざまな価値を有することが明らかになった。
また、テレビ塔は、電波送信という半ば公共的役割を担うため、官民連携により双
方の資源を駆使して建設されたものである。そうした経緯とともに、建物構造の特殊
性や立地場所の公共性などに鑑みると、民間企業が持つ経営技術や集客ノウハウを活
かすとともに、行政による安定性、公益性を確保する官民連携手法による施設整備が
望ましい。
平成 18 年度にテレビ塔㈱は 4 億円を投じ、1 階、3 階、4 階及び展望室等の大規模
改装を行った結果、同年度の入場者数は前年度に比べて 13 万人増、売上高は 7 千万
円増となった。しかし、4 年後の 22 年度には 18 年度より入場者 5 万人減、売上高も
3 千万円減となり、改修効果の約 4 割が失われていることから、テレビ塔を単独で再
整備したとしても、その効果は限定的と考えられる。「Ⅰ
テレビ塔の概要整理」で
考察したように、名駅地区に比べて栄地区の停滞傾向が懸念される中で、久屋大通公
園との連携のもとにテレビ塔の再整備を行うことは、栄地区の活性化に大きな効果を
生むことも期待できる。単にテレビ塔の文化的、歴史的価値を保持するための整備で
はなく、ランドマーク性や広大な久屋大通公園の中に存在する大規模施設であるとい
う特徴を最大限に活かし、周辺地域への波及効果が見込まれる事業を行うことが重要
である。
以上より、本調査の結論として、以下の 3 点を活用の方向性として提言する。
72
① テレビ塔は電波塔としての機能以外にも、名古屋を代表する観光施設、都心の
景観を形成するランドマーク、日本で最初の集約電波塔としての登録有形文化
財など多様な価値を有しており、アナログ放送終了後もその価値は維持される
べき重要な施設である。
② 施設の安定的維持と集客機能の向上を両立するための方策として、名古屋市が
所有し、民間企業と連携した整備・運営を行うことが有効である。
③ テレビ塔の活用は、久屋大通公園との連携を図ることにより栄地区の活性化に
大きな効果を生むと期待される。
今後、これらの方向性を踏まえ、効率的な耐震・設備更新工事と安定的な施設運営、
さらには都心の観光拠点に相応しい集客機能の実現に向けて、市による所有と民間活
力導入による施設整備及び久屋大通公園と連携した活用を軸とした事業スキームの
実現可能性等について、具体的に検討していくことが重要である。
73
【出 典】
『図説日本の歴史 23
図説愛知県の歴史』
責任編者 林 英夫、発行所 河出書房新社(1987 年 9 月 26 日)
『名タイ昭和文庫③ 僕らの名古屋テレビ塔』
編者 名古屋タイムズ・アーカイブス委員会
発行所 樹林舎(2010 年 12 月 20 日)
『名古屋テレビ塔 50 年の歩み』
発行・編集 名古屋テレビ塔株式会社
『タワー
(2010 年 9 月 1 日)
内藤多仲と三塔物語』
企画 INAX ギャラリー企画委員会
製作 株式会社 INAX
発行所 INAX 出版
(2008 年 9 月 30 日)
『名古屋テレビ塔再生基本構想』
名古屋テレビ塔株式会社
(2010 年 6 月)
『公共政策のための政策評価手法』
編著者 伊多波 良雄
『名古屋テレビ塔
発行所 株式会社中央経済社(2009 年 2 月 10 日)
テレビ塔総合整備に向けての基礎検討』
日建設計コンストラクション・マネジメント株式会社
『通天閣-50 年の歩み-』
発行
通天閣観光株式会社
(2007 年 2 月)
(2008 年 8 月)
付属資料
(CVM調査報告書)
1.アンケート調査の標本数
テレビ塔の社会経済価値を把握することを目的として、CVMによる調査を実施した。
調査対象地域は、愛知県、岐阜県、三重県とし、アンケート調査の方法はインターネット
調査とした。当該インターネット調査は、㈱日経リサーチによる協力を得て、平成 23 年 8
月 26 日から 8 月 30 日の5日間において実施した。
アンケート調査の標本は、住民基本台帳人口に基づいて、地域別人口構成及び年齢構成
(図表-2 参照)を考慮のうえ、図表-1 のとおり収集した。有効回答数として 1,343 件の標
本を得た。
図表-1 アンケート調査における標本構成比
男性
女性
都道府県
合計
20代
全体
30代
40代
50代
60代
20代
30代
40代
50代
60代
109
143
118
145
176
161
147
100
110
134
8.1%
10.6%
8.8%
10.8%
13.1%
12.0%
10.9%
7.4%
8.2%
10.0%
愛知県(名古屋市除く)
1,343
100.0%
50
58
43
65
72
70
63
34
39
46
540
3.7%
4.3%
3.2%
4.8%
5.4%
5.2%
4.7%
2.5%
2.9%
3.4%
40.2%
名古屋市内
33
40
39
36
53
43
40
28
33
44
389
2.5%
3.0%
2.9%
2.7%
3.9%
3.2%
3.0%
2.1%
2.5%
3.3%
29.0%
岐阜県
15
25
21
20
32
26
28
22
20
16
225
1.1%
1.9%
1.6%
1.5%
2.4%
1.9%
2.1%
1.6%
1.5%
1.2%
16.8%
三重県
11
20
15
24
19
22
16
16
18
28
189
0.8%
1.5%
1.1%
1.8%
1.4%
1.6%
1.2%
1.2%
1.3%
2.1%
14.1%
図表-2 住民基本台帳人口に基づく人口構成比
男性
女性
都道府県
合計
20代
30代
40代
50代
60代
20代
30代
40代
50代
60代
愛知県
6.2%
8.1%
6.9%
5.9%
6.8%
5.5%
7.3%
6.4%
5.8%
6.9%
65.8%
岐阜県
1.5%
2.0%
1.8%
1.8%
2.0%
1.4%
1.9%
1.8%
1.9%
2.1%
18.1%
三重県
1.4%
1.8%
1.6%
1.6%
1.8%
1.3%
1.7%
1.6%
1.6%
1.9%
16.1%
合計
9.1%
11.8%
10.3%
9.3%
10.6%
8.2%
10.9%
9.7%
9.3%
10.9%
100.0%
資料)住民基本台帳人口に基づく人口(平成 22 年 3 月 31 日現在)より算出
付-1
2.テレビ塔の利用頻度
テレビ塔の利用頻度は、
「過去に何回か利用したことはあるが、1 年以上利用していない」
とする回答が 52%と過半数を占める。次いで「これまでに 1 回もない」とする回答が 24.4%
を占め、4 人に 1 人はテレビ塔を利用した経験がない。年 1 回以上利用している回答者は、
全体の 5%未満である。
図表-3 テレビ塔の利用頻度
図表-4 テレビ塔の利用頻度別回答者数及び回答割合
利用頻度
回答者数
回答割合
これまでに1回もない
328
24.4%
過去に1回だけ
252
18.8%
1年以上利用していない
699
52.0%
年1回程度
46
3.4%
半年1回程度
13
1.0%
月に1回程度
1
0.1%
週に1回程度
2
0.1%
週に1回以上
2
0.1%
1343
100.0%
合計
付-2
3.テレビ塔の利用目的
テレビ塔を利用した経験のある回答者(1,015 件)の利用目的についてみると、
「眺望を
楽しむため」とする回答者が全体の 75%と最も多くを占めている。次いで、
「名古屋観光を
楽しむため」が 27.9%、
「デートを楽しむため」、
「子どもと一緒に楽しむため」が、それぞ
れ 14.6%を占める。
テレビ塔の利用は、現状において、眺望を楽しむための観光スポットとして位置付けら
れていることが明らかとなった。
図表-5 テレビ塔の主な利用目的
図表-6 テレビ塔の主な利用目的別回答者数及び回答割合
利用目的
回答者数
回答割合
眺望
761
75.0%
飲食
90
8.9%
デート
148
14.6%
観光
283
27.9%
カフェ
48
4.7%
子どもと同伴
148
14.6%
待ち合わせ
71
7.0%
イベント
57
5.6%
思い出の場
95
9.4%
話題作り
45
4.4%
非目的利用
104
10.2%
ショッピング
4
0.4%
28
2.8%
その他
テレビ塔利用経験者数
1,015
付-3
-
利用頻度別に利用目的の回答割合(図表-8 参照)をみると、利用頻度が高まるにつれて、
利用目的が「眺望を楽しむため」、「観光を楽しむため」から「飲食を楽しむため」
、「デー
トを楽しむため」、「カフェを楽しむため」等へと多様化していることが見て取れる。
利用者の利用頻度を高めるためには、目的の多様化に即応した整備が求められるものと
考えられる。
図表-7 テレビ塔の利用目的と利用頻度
図表-8 テレビ塔の利用目的及び利用頻度の回答者数と回答割合
利用目的
過去に1回だけ
1年以上利用なし
年1回程度
半年1回程度
眺望
62.3%
80.4%
65.2%
飲食
4.8%
8.9%
19.6%
61.5%
38.5%
デート
8.3%
16.6%
15.2%
23.1%
観光
23.8%
27.9%
39.1%
53.8%
カフェ
1.2%
4.3%
17.4%
30.8%
子どもと同伴
5.2%
17.2%
21.7%
23.1%
待ち合わせ
2.4%
7.3%
21.7%
15.4%
イベント
2.8%
5.2%
17.4%
23.1%
思い出の場
4.8%
10.4%
15.2%
23.1%
話題作り
4.4%
4.0%
6.5%
15.4%
非目的利用
9.1%
10.7%
8.7%
7.7%
ショッピング
0.0%
0.1%
0.0%
15.4%
その他
4.4%
2.1%
2.2%
0.0%
注)利用頻度別に利用目的の回答割合を算定した。回答割合が2割程度以上となる利用目的に
ハッチングを施した。なお、月単位及び週単位の利用頻度の回答数は、僅少であるため対象外
とした。
付-4
住民が重視するテレビ塔の役割について比較した結果(図表-9 参照)を見ると、
「観光集
客」に対するウェイトが 34.8%と最も高い。次いで「都市景観形成」に対するウェイトが
29.9%となる。
テレビ塔は、観光スポットであるとともに、都市景観を作り出すシンボルとしての役割
が期待されていることがわかる。
図表-9 住民が重視するテレビ塔の役割
テレビ塔の役割
内
容
①観光集客
テレビ塔は、名古屋に観光に訪れる人にとっての観光スポットの一つ
②都市景観形成
テレビ塔は、名古屋の都市景観を作り出すシンボルの一つ
③歴史文化維持
テレビ塔は、これまでの名古屋の歴史を刻んだ文化的施設の一つ
④レクリエーション
テレビ塔は、日頃から色々と楽しめる施設の一つ
付-5
4.テレビ塔の経済的価値
(1)支払い意思額の算定
テレビ塔を維持するための支払い意思額(WTP)は、1 世帯当たりの月額支払い額(年額
を併記)として収集した(図表-10 参照)。支払い意思額に対する合意率を示すと、図表-11
のとおりである。
図表-10 支払い意思額(WTP)のヒストグラム
図表-11 支払い意思額の合意率曲線
付-6
テレビ塔を維持するための支払い意思額の平均値は、図表-13 の示す面積に該当し、具体
的な算出過程については図表-12 に示すとおりである。
ノンパラメトリック法による支払い意思額の平均値は、1 世帯当たり月額 292 円と算定さ
れる。平均値は、総便益を捉えるために用いられる金額である。一方、支払い意思額の中
央値は、1 世帯当たり月額 43 円となる。ここで、中央値とは賛同率が 50%となる場合の提
示金額であり、住民意見の過半数に対するしきい値を意味し、民主的判断基準に相当する
金額であるといえる。
図表-12 ノンパラメトリック法による WTP(支払い意思額)平均値の推計
WTP
(円/月/世帯)
合意者
合意率
0円
462
50円
100円
WTP平均値
(円/月/世帯)
累積合意率
58.0%
100%
15.0 ≒(100%-42%)×(0円+50円)/2
①
29
3.6%
99
12.4%
42%
3.0 ≒(42%-38%)×(50円+100円)/2
②
38%
25.0 ≒(38%-26%)×(100円+300円)/2
③
300円
70
8.8%
26%
35.0 ≒(26%-17%)×(300円+500円)/2
④
500円
69
8.7%
17%
65.0 ≒(17%-8%)×(500円+1000円)/2
⑤
1000円
25
3.1%
8%
39.0 ≒(8%-5%)×(1000円+1500円)/2
⑥
1500円
17
2.1%
5%
37.0 ≒(5%-3%)×(1500円+2000円)/2
⑦
2000円
15
1.9%
3%
42.0 ≒(3%-1%)×(2000円+2500円)/2
⑧
2500円
10
1.3%
1%
31.0 ≒1%×2500円
⑨
796
100.0%
合計
-
292.0
≒ ①~⑨の合計
図表-13 ノンパラメトリック法による WTP(支払い意思額)平均値の該当範囲
付-7
なお、合意者合計は 796 件であり、有効回答数 1,343 件と 547 件の乖離がある。これは、
以下の理由から、547 件(①温情効果回答 21 件及び②抵抗回答 526 件)に該当する回答を
除外したことによる。
① 温情効果の排除
「社会にとって好ましいことだから」(回答数 21 件)に該当する回答は、公共のため
に支払うこと自体の満足感が支払い意思額に影響を与えている可能性が高い。いわゆる
温情効果とよばれる現象である。当該回答は過大評価となる可能性が指摘されている。
したがって、本調査では、温情効果に該当とすると思われる回答(21 件)を除外するこ
ととした。
② 抵抗回答の排除
「もっと低い金額であれば負担してもよい。」
(回答数 168 件)、あるいは「他の方法(税
金)で行うべきであるから」
(回答数 358 件)に該当する回答は、評価対象に何らかの価
値は持っているが、提示された調査シナリオに抵抗しているために 0 円を選択したもの
と捉えることができる。CVM においては、抵抗回答を含めて分析を行うと、財の評価とし
て過小評価になるとされ、抵抗回答は分析から除外すべきものとされる。したがって、
本調査では、抵抗回答(526 件)を除外して集計を行うこととした。
付-8
(2)経済評価額の算定
テレビ塔の経済評価額は、まず1世帯当たり月額支払い意思額(292 円)を年額に換算し、
次いで当該年額支払い意思額(292 円×12≒3,500 円1)に受益世帯数を乗じて算定する。
名古屋市内の受益額は、年間 36 億円であり、愛知県下の受益額は、年間 103 億円となる
(図表-14 参照)
。また、愛知県、岐阜県、三重県の 3 県においては、当該受益額は年間約
153 億円と見込まれる。
図表-14 テレビ塔の経済評価額
月額支払い意思額
(円)
世帯数
年額支払い意思額
(円)
2,933,464
857,000,000
10,300,000,000
1,028,450
300,000,000
3,600,000,000
岐阜県
736,555
215,000,000
2,580,000,000
三重県
703,704
205,000,000
2,460,000,000
4,373,723
1,277,000,000
15,340,000,000
愛知県
名古屋市
調査対象地域
資料)世帯数は平成 22 年国勢調査を使用。なお、名古屋市の世帯数は、
「統計なごや web 版」より、平成
23 年8月1日時点を採用。
1
1 世帯当りの支払い意思額(月額 292 円、年額 3,500 円)は、便益の総額を把握するため「平均
値」を採用しているが、民主的判断基準を捉えるための「中央値」
、すなわち賛同率が 50%にな
る場合の提示金額を採用すると、1 世帯あたりの支払い意思額は月額 43 円、年額 516 円になる。
比較のため、愛知県が平成 21 年 4 月に施行したいわゆる「森林環境税(あいち森と緑づくり税)」
の負担額を考察すると、愛知県の森林環境税は、個人 1 人当り年間 500 円であり、名古屋市の 1
世帯(平成 23 年 9 月時点の統計では約 2.2 人/世帯)当り換算で年間約 1,100 円である。
付-9
(3)価値別支払い合意率の比較
ロジットモデル2を用いて、テレビ塔の価値別にみた支払い合意率を算定した。当該合意
率を、直接利用価値を基準(100)とした指数によって表して比較すると、間接利用価値に
よる支払い合意率指数が 106.4 と最も高いことがわかる(図表-15 参照)
。
テレビ塔のある「風景」に対する経済価値が高く評価されている。この点、住民が重視
するテレビ塔の役割として「都市景観形成」29.9%が「観光集客」34.8%に次いで高いウ
ェイトを有する結果(図表-9 参照)とも整合する。
図表-15 テレビ塔の価値別にみた支払い合意率の比較
テレビ塔の価値
①直接利用価値
内容
現在の自分や家族が、テレビ塔に直接訪れて、楽しむために、テ
レビ塔を残したい。
②間接利用価値
現在の自分や家族が、テレビ塔のある風景を、楽しむために、テ
レビ塔を残したい。
③オプション価値
将来の自分や家族のために、将来の観光スポットとしてテレビ塔
を残しておきたい。
④存在価値
テレビ塔が存在すること自体に喜びや誇りを感じる。
⑤遺贈価値
自分たちのためではなく、観光や写真を通じて、他地域の人や将
来の世代の人のテレビ塔を残したい。
2
本調査におけるロジットモデルは、提示金額に対して「支払う」または「支払わない」の二肢選択のデ
ータを分析する統計手法をいう。
付-10
CVMアンケート調査票
付-11
付-12
付-13
付-14
発
行 名古屋市市民経済局文化観光部観光推進室
〒460-8508 名古屋市中区三の丸三丁目 1 番 1 号
電
話 052-972-2425(ダイヤルイン)
業務委託先 一般財団法人
日本不動産研究所
東海支社
この冊子は、古紙パルプを含む再生紙を使用しています。
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