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Ⅰ 学校の概要
観音寺市立中部中学校
分かる授業づくり推進事業
◆児童数及び教員数
○児童数
第1学年
第2学年
第3学年
特別支援
5学級
5学級
5学級
3学級
18 学級
171 名
165 名
159 名
6名
501 名
○教員数
全 校
39 名
◆学校の特色
本校は昭和 34 年に設立された。設立当時は、広い校区全体に田園が広がっていたが、学校周辺はしだいに
県営住宅やマンション、一戸建て住宅等が立ち並ぶ住宅地へと変わってきた。その結果、農山村地域から市
街地近郊の住宅地域など多様な地域性を有することになり、校区に住む住民の価値観の多様化や地域の人の
つながりが薄れてきているなどの課題を抱えている。
平成 24 年度には、
「学力定着モデル校事業」でのモデル校指定を受け、ドリル学習や校内検定を計画的に
取り入れたり、教師からの肯定的な評価と支援を継続したりして、確かな学力を身に付け、学ぶ喜びを実感
する生徒の育成をめざした。
Ⅱ 研究主題等
研究主題
学ぶ喜びを実感し、主体的に学習する生徒の育成
~ユニバーサルデザインの視点を取り入れた授業改善~
◆研究主題設定の理由
本校は、平成 24 年度学力定着モデル校事業の指定を受け、実践研究に取り組んだ。その結果として、授業
中に、教師からの賞賛や承認、励ましなどの肯定的な評価と支援を続続的に行うことで、生徒が自分にもで
きたという喜びを実感した場面が数多く見られるようになった。また、教科担任相互の連携による宿題の量
の調整や学級担任が把握できるシステムづくりに取り組み、学習習慣の形成を図った。
しかし、本校の生徒の学力は、平成 25 年度県学習状況調査の結果を見ると、1,2年生とも全教科で県平
均正答率を下回っている。また、全問不正解生徒の割合、無解答率ともに県平均を大きく上回っている。ま
た、学習態度が受け身の生徒が多いのが現状であり、基礎的な学習内容の定着と学習意欲の向上を図るため
の、より具体的な方策を講じることが急務である。
そこで、学習の必要性を意識させ、ユニバーサルデザインの視点を取り入れてどの生徒にも「分かりやす
い」授業を展開することにより、生徒に分かる喜びを実感させ、学習意欲の向上を図りたい。また、授業改
善のための研修を充実させ、若年を中心とした教師の授業力の向上をめざしたい。
◆研究内容及び方法
(1) すべての生徒に分かる授業づくり
・ 授業の効果的な構造化を図り、原則として「復習ドリル→説明→思考→活動→まとめ」のサイクル
をとる。授業で生徒に身に付けさせたい力をよく吟味し、授業の「ゴール」とそれを受けての「めあ
て」を決め、生徒の実態に合わせた活動を考慮に入れた授業改善を図る。
(2) ユニバーサルデザインの視点を取り入れた授業改善
・ 「分かりやすい・・・」をめざして、ユニバーサルデザインの視点から発問・指示や板書のあり方
を見直したり、支援の仕方を工夫したりする。じっと聴くことの苦手な生徒や生徒指導面の配慮を要
する生徒も、すすんで授業に参加させ意欲を喚起する手立てとする。
(3) 授業力向上のための校内研修
・ 教員の授業力向上のために、指導者を招聘したり先進校視察を行ったりする。
・ 3部会の研修グループを組織し、授業研究を進める。
◆ 授業の構想を考える ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
学習内容を研究(教材研究)
教材・指導内容の選定
*教科書の内容を使って学習指導要領に示された力(能力)を
身に付けさせる。
どんな生徒を育成するか熟考 学習後の生徒像をイメージ
単元目標を設定
言葉でイメージの具現化=知的成長・技能的成長(能力の定着・育成)
*「~することができる」・「~が理解できる」・「~な思考ができる」
学習指導計画を作成
めざす生徒像に導くための段階的目標を設定
*単元の構造を吟味・段階的ストラテジーを構想する。
本時の指導目標を設定 指導計画に基づいて設定
*スモールステップ目標積み上げにより単元目標への到達をイメージし
習得のプロセスを明確にイメージする。
本時の課題を設定 生徒が学習後の自己像を明確に把握できる言葉で提示
*思考・判断を要求する具体的な課題設定が望ましい
授業後に「何ができればよいのか・何がわかればよいのか」生徒が分かる
ゴールの見える授業づくり
授業の構造(流れ)を考える 本時の学習目標達成のためのストラテジー・方法
*教材教具の精選、教室環境・学習形態の工夫
ユニバーサルデザインの視点を導入
実施(授業) 思考・判断・(スキル)が学習活動の中心になることが重要
*考えさせる、想像させる、気付かせる
評価(検証) 目標達成が成されたかの検証
*学習者によるナラティブアプローチ(物語化)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
生徒にゴールの見える授業づくり
授業の「ゴール」を設定→ゴールを受けて学習課題を確定→具体的な活動内容の組立て
ユニバーサルデザインの視点から効果的な支援や方法を工夫する。
Ⅲ 研究実践
◆指標設定と達成に向けた取組
1(生徒質問紙)勉強は好きですか
指標
「①好き+②どちらかといえば好き」の合計
H25-11 月調査
28%
目標値
50%
H26-11 月調査
25%
-3
指標の達成に向けた実践
(1) 生徒にゴールの見える授業づくり
学習の必要性を感じていない生徒を、やってみようという気にさせて意欲的に学習に向かわせる
ため 「こんな姿になれるから頑張ろう」と授業のゴールを言葉でイメージの具現化を図り、授業で
生徒に提示する。知的成長と技能的な成長(能力の定着)を意識して、授業の魅力と価値を示す。
① ゴールと学習課題についての共通理解 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
生徒にゴールの見える授業づくりをめざそう!
◆授業の組立ての考え方(毎時間 or 単現ごと)
Ⅰ 最初に授業の「ゴール」を設定する。「今日の学習を終えたら生徒はこうなる」
○ 生徒にこんな力がつきます!
よく教材を見つめて
○ 生徒は、こんなに賢くなります!
ここをしっかり練る
○ 生徒が、こんなことができるようになります!
授業づくりでここが一番大切
Ⅱ 授業の「ゴール」を受けてその授業の「めあて」(学習課題)を明確にする。
授業後「生徒がこんなことができるようになる」には、この授業で何をさせればいいか。
ゴール(生徒の姿で)を先に考えることで、その授業の学習課題がより明確に見えてくる。
Ⅲ 設定した「めあて」(学習課題)を達成させるためには、
グループ・ペア学習
どんなことを、どのようにさせればいいのか、具体的に考える。
調べ学習・・・
特に、学級の状況に応じて、効果的な活動内容や方法を決める。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ここで、ユニバーサルデザインの
視点を取り入れた支援や工夫
② 授業実践 国語
(内容)題材となる俳句からイメージをふくらませ、オリジナル物語を創作させる。
【ゴール】俳句から受けた感動を自分の言葉で豊かに物語として創作することができる。 (資料①)
【学習課題】読み手が涙を流して感動する物語を創作するために、徹底的に言葉を精選し練り上げよう。
・親から子への言葉だったら「怒る」より
「叱る」やろ。
・子どもが親に対して「厳しい口調」は違和感が
ある。 激しい口調の方が感情的になって怒る
子どもの様子が伝わるなあ。
生徒の言葉への気付き
(資料①) 研究授業 国語
(資料②)
【成果】ゴールを意識し、級友と相談しながら言葉を精選し練り上げる過程を生徒は楽しめた。
(資料②)
(2) 思考・活動の時間に、生徒の活動を活発に行わせ、考えを深める
実際の授業の流れを下のように運ぶことを全職員で共通理解して、授業研究を進めた。ゴールを達
成する手立てとして、
「思考」
・
「活動」の時間を大切に考え、生徒個人で思考を深めたり友達やものと
交流して思考を深めたりする活動を効果的に仕組み授業改善を進めてきた。
○集中させたり、レディネスを高めさせたりする時間
1
導入
・復習
・確認ドリル
○生徒に本時の課題を把握させる時間
・本時の「めあて」・「ゴール」を板書する。
2
説明
☆こんな力がつきます!
☆こんなことができるようになります
○生徒を課題に向き合わせる時間
3
思考
・一人で考えさせる、訓練する
・ユニバーサルデザインの視点からの発問・指示
○交流して考えを深める時間
・人と交流、材料と交流、実験 (資料③)
4
活動
・他の人やものと比較してみる。
・活発に活動させる。
・ユニバーサルデザインの視点からの板書・支援と援助
○何がわかるようになったか確かめる時間
5
まとめ
○何ができるようになったか実感する時間
(資料③)理科
英語
●パンやご飯が身体に吸収されると
●クラスの友達の
きにどのように変化するのだろう?
好みの傾向を調べ
てみよう!
*デンプン溶液にだ液(消化酵素)を
聞き取り調査実施
入れてみたよ。
「どちらが好き?」
と英語でインタビュー
音楽
●「テキーラ」のアクセン
トを楽しもう。
*グループでリズミックパ
フォーマンスを完成して演
奏するよ。乗れる曲に!
2(教員質問紙)ユニバーサルデザインの視点から、発問や指示の仕方を
工夫していますか
指標
+12
「①よくしている+②どちらかといえばしている」の合計
H26-5 月調査
56%
目標値
95%
H26-11 月調査
68%
指標の達成に向けた実践
・ユニバーサルデザインの基本に流れる意味は「~やすい」である。どの生徒にとっても分かり
やすく活動しやすいように、ユニバーサルデザインの視点から授業改善を図る。生徒の視点から指導
の方法を工夫したり、指導の内容を分かりやすく具体的に工夫したりして、本校の生徒の状態に寄り添
った手立てを講じる。
どの生徒にも「わかる」「できる」実感を味わわせるための工夫
◆ユニバーサルデザインの視点を取り入れた支援や工夫の例
【指導の方法】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
■ 指示・発問の工夫:速度 声の大きさ 声の抑揚 繰り返す 結論を先に言う
あらかじめ指示の数を提示
指示1文につき、動詞は1つのみ使用
■ 板書の工夫:
チョークの色分け(基調は白、黄色) 強調部分:アンダーライン(赤)
マークの工夫 内容の精選 いつも同じ形式で板書
ノートと同じ形式に配置
■ 黒板とその周辺:
掲示物の精選 簡素化 整頓 マグネットボード
教室前面の掲示物を必要最小限に
■ 視覚化の工夫:
見やすい工夫(資料⑥) 具体物 図 写真 カード等 通し番号
【指導の内容】
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
■ 見通しをもたせる:パターン化 「本時の予定」板書 手順や活動の順番の明示(資料④)
作業時間の提示 タイマーの活用
■ 環境の整備:
教具の開発 (資料⑤)
座席 グルーピング
■ つまずきへの支援: ヒントカード 板書 個に応じたサポート
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
資料④ 考えを表す言葉のヒント
・結果は○○なので
資
・前に習った○○を使って考えると
班ごとに意見を
・例えば/なぜかというと/
・同じ(違う)ところを見つけると
・分かったことをまとめると
・図・グラフ・表から考えると
資料⑤ スクリーンプレー
のポジションを相談
するのに使うボード
資料⑥ 班の話合いに
書いて意見を
まとめるボード
◆特徴的な取組
研修を深めた校内研修
(1) 指導者を多数招聘して研修することができた。
① 第1回研修会 研究主題、研究の方向性、研究の具体等を全教員で確認
② 第2回研修会 研究講話 (資料⑦)
「学力向上モデル校事業の推進について」
「ユニバーサルデザインを考えた授業づくりとは」
【講師1名】大学准教授 【指導者2名】県義務教育課
資料⑦ 指導者を迎えて
③ 第3回研修会 「研究授業」及び「研究討議」
第 1 部会 2年生 音楽科研究授業 【義務教育課主任指導主事】
第2部会 2年生 理科研究授業
【義務教育課主任指導主事】
第3部会 3年生 数学科研究授業 【県教育センター・市教委主任指導主事】
④ 第4回研修会 「先進校視察報告会」及び「部会別研究討議会」
「研究授業を振り返る」
【講師1名】大学准教授
【指導者2名】県教育センター主任指導主事・市教委主任指導
主事
⑤ 第5回研修会 「各部会の研究進捗状況確認」
「研究授業の最終確認及び研究内容の焦点化」
資料⑧ 研究討議
⑥ 第6回研修会 「研究授業」及び「研究討議」
(資料⑧)
「ゴールは適切か?」
「ゴール達成における課題は適切か?」
「活動は妥当か?」
第 1 部会 2年生 国語科研究授業
【大学准教授】
第2部会 3年生 保健体育科研究授業 【義務教育課主任指導主事】
第3部会 1年生 英語科研究授業
【義務教育課主任指導主事】
⑦ 第7~8回研修会 「2回の研究授業を振り返る」
「まとめと今後の課題」
(2) 先進校視察 (資料⑨)
ア 附属坂出中学校 【派遣1名】
イ 岡山県総社市立総社西中学校 【派遣2名】
ウ 京都府長岡京立長岡中学校 【派遣2名】
エ 埼玉県川越市立高階西中学校【派遣2名】
オ 福岡県朝倉市立十文字中学校 【派遣1名】
資料⑨ 視察報告会
(3) 教科の特色を考慮して分けた授業研究3部会
「ゴールの見える授業づくりのための研究推進部会」~チーフ・サブチーフを決めて研究推進
■ 第1部会 国語科 /美術科 /音楽科
■ 第2部会 理科 / 社会科/ 保健体育科
■ 第3部会 数学科 /英語科 /技術家庭科
(資料⑩)
資料⑩
第3部会討議会
│
Ⅳ 研究の成果と課題
研究の成果
○ 本校生徒の学力の実態を分析し、学力の向上をめざして「ゴールの見える授業づくり」につい
て全職員で研修することができた。ゴールについて話し合えば合うほど、研修すればするほど、
どのようにゴールを表現すべきか難しい。教科書を教えるのではなく、教科書を使って何を教え
るのか、ゴールは何かを深く考えるべきことに気付き、職員間で教材研究の大切さが実感された。
特に、若年メンバーが研究授業を率先して引き受けて研究実践したので、研究全体の活性化につ
ながったことがよかった。
○ ゴールは大切であるが、教師一人一人のとらえ方に差があり、まだまだ研修の余地がある。教
材研究を通して、生徒に付けたい力を具体的に描けると、授業をどう組立て、どのような活動を
通して何を育てていけばよいのか少しずつ見えてきた。生徒の学習態度が受け身で意欲が低い現
状に合わせて、目に見える具体的な手立てをしたり、ユニバーサルデザインの視点で授業改善の
工夫を意識したりすることができてきた。遅れて進む生徒や集中できない生徒の立場に立って授
業を考えるようになったと、今年度自己評価している教師が増えている。十の指標の中で、「児
童生徒の発言や活動の時間を確保して授業を進めていますか」の質問に、肯定的に回答した教員
の割合が今年の秋は昨年に比べ増えている。
一方、生徒の意識から考察すると、県学習状況調査において「普段の授業では、自分の考えを
発表する機会が与えられていると思いますか」の問いに、昨年の2年生と今年の2年生の意識を
比較する。下のグラフのように、昨年の2年生の意識に比べ今年の2年生の意識は、自分の考え
を発表する機会が与えられていると感じている割合が 22.0%向上している。これは、ゴールを定
め、授業の流れの「思考・活動」をいかに仕組むかの授業改善の成果が、少しずつ生徒の意識に
あらわれてきたのではないかと考える。
普段の授業では、自分の考えを発表する機会が与えられていると思いますか
0%
20%
H26-2年
H25-2年
思う
40%
80%
43.5%
32.9%
17.1%
60%
37.3%
どちらかといえば思う
あまり思わない
14.9%
36.7%
まったく思わない
100%
8.7%
8.2%
その他
○ 生徒の学力についての数値的な結果は、
成果として十分に得られるところまでは至っていない。
強いて言えば、ある学年では、県学習状況調査結果の昨年と今年の県平均との差が、5教科中4
教科において今年の方が伸びた。また、ある学年では、全問不正解の生徒の割合が昨年より3教
科ほど改善したり、無解答者の割合が少しではあるが減ったりした。今は、授業中の生徒たちの
つぶやきを通してのみ学ぶ意欲が上向いてきていることを窺うことができる。今後もあきらめず
に生徒にゴールの見える授業改善の取組を続け、本校の生徒の実態に合わせた授業研究を進めて
いきたい。
今後の課題
○ ゴールとして到達するべき姿をどのように明確に生徒に見せることができるか。
(教材分析と教材研究そして授業構想の立案力を付ける。)
○ 教員全体の授業力を向上させるために、各研究グループの研究実践を全体で共有化する。
○ ユニバーサルデザインの視点に立った授業の工夫とさらなる推進を行う。
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