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これからの緩和ケア

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これからの緩和ケア
市立函館病院 第37回市民公開がん講座
これからの緩和ケア
緩和するのは
体の痛みだけではありません
市立函館病院 緩和ケア科・緩和ケアチーム
山崎 裕
2012年のアンケート
• 全国の20歳~89歳の男女
1000名
• もしあなたががんになったら事実を知りたいで
すか?
• 余命が限られているなら、自宅で過ごしたいで
すか?
• ホスピス/緩和ケア病棟を知っていますか?
• 医療用麻薬のイメージについて
• 死期が近づいた時の心配ごと、不安について
• 理想の死に方はぽっくりですか?
もしあなたが がん になったら
事実を知りたいですか?
余命が限られているなら、
自宅で過ごしたいですか?
ホスピス/緩和ケア病棟を
知っていますか?
医療用麻薬のイメージについて
死期が近づいた時の心配ごと、
不安について
理想の死に方は
“ぽっくり”ですか?
市立函館病院
緩和ケアチーム
•
•
•
•
•
•
身体症状担当医師
精神症状担当医師
緩和ケア認定看護師
チーム専任薬剤師
ソーシャル・ワーカー
臨床心理士
緩和ケアチームとは?
• がん患者のかかえるつらさは多種多様です
o 体のつらさ
o 心のつらさ
o 家族の心配
o 社会的心配(経済、任されている仕事のこと
など)
• そして、患者さんだけでなく、ご家族も様々な
つらさをかかえています
緩和ケアチーム
• 「緩和ケアとは、生命を脅かす疾患によ
る問題に直面している患者とその家族に
対して、疾患の早期より痛み、身体的問
題、スピリチュアルな問題に対してきち
んとした評価を行い、それが障害となら
ないように予防したり対処したりするこ
とで、クォリティ・オブ・ライフ(生活
の質)を改善するためのアプローチであ
る」(WHOによる定義 2002年)
The New England
Journal of Medicine
2010年
非小細胞肺がんに対する
早期からの緩和ケアの効果
• がん治療医による治療開始と同時に緩和ケアチームが関
与したグループ
• がん治療医による治療のみのグループ(希望があった場
合は緩和ケアチームが関与)
• 早期関与グループのほうが、クォリティ・オブ・ライフ
(生活の質)が優れていた
• 精神的ストレスも低かった
• 生存期間も
ヶ月 対 8.9ヶ
ヶ月)
生存期間も長かった(
かった(11.6ヶ
• 全米のテレビで放送されるくらい注目を集めた
日本人の死因 2011年
• 1位
• 2位
がん
心血管疾患
o 心筋梗塞、心不全、大動脈の病気など
• 3位
肺炎
• (2010年までは3位は脳血管疾患)
日本人の3人に1人はがん
で死亡している
今後高齢化社会を迎え、
2人に1人はがんで死亡す
ると考えられている
理想の死に方は
“ぽっくり”ですか?
ぽっくり?
• 心筋梗塞
o 最初の発作の死亡率 20%
o 手術、冠動脈ステント治療など
o 安定期に入っても継続的な治療が必要
• 脳血管疾患(
脳血管疾患(くも膜下出血
くも膜下出血)
膜下出血)
o 最初の発作で33%が死亡
o 後遺症が残りやすい
o 治癒できるのは20%程度
大往生したければ・・・
• 医療と関わるな?
• 「死」から目をそむけない
• 「死」をじぶんのこととして引きうける
• そのために平時から準備をする
「死ぬのはがんに限る」
• ①周りの人々に、自分が死にゆく姿を見てもら
うことが出来るから
• ②救急車を呼ばない、入院しないため、最後ま
で意識が保たれているがんが良いから
• 「早期発見の不幸」
• 「手遅れの幸せ」
大往生したければ・・・
• 「死」から目をそむけない
• 「死」を自分のこととして引きうける
• そのために平時から準備をする
平時からの準備
• エンディング・ノート
•
•
•
•
•
•
•
病気になったときの延命措置を望むか望まないか
自身に介護が必要になった際に希望すること
財産・貴重品に関する情報
葬儀に対する希望
相続に対する考え方
プロフィール・自分史
家系図
• リビング・ウィル
• 遺書
アドバンス・ケア・プランニング
• 将来の状態変化に備えて、患者・家族とケア全体の目標
や具体的な治療・療養の方法を話し合うプロセス
o 現在の気がかり
o ケア全体の目標
o 治療や療養の選択肢
o 病状や予後
o アドバンス・ディレクティブ
• 延命について
• 蘇生処置について
アドバンス・ケア・プランニング
(ACP)
• つまり、ACPは患者・家族とそれを支援する医療チーム
の共同作業です
• ACPを行うことで
o 患者さんの自己コントロール感が高まります
o 最期の療養の場所を考えることで、結果的に病院での死亡率が
減るという報告があります
o 患者-家族-医療チームの協力関係が強化され、満足度が上昇
ちなみに、アドバンス・ディレクティブ(=リ
ビング・ウィル、延命医療の有無や蘇生処置の
有無の事前決定)だけでは、満足度は上昇しな
かったそうです
最期の時を自宅で
家族と共に過ごしたい
がんとインターネット
• インターネットにはあらゆる情
報があります
• 本当のことも書いてあるし、明
らかな嘘もあります
• しかし、専門分野の情報では嘘
を見抜くのは難しい(森口氏の
iPS発表を思い出してください)
• その気になれば、自分がそうし
たいと思っている情報にたどり
着くことも出来るでしょう。
大往生するために必要な
平時からの準備
自分ひとりで作成できる
医療チームと共に作る
エンディング・ノート
リビング・ウィル
(アドバンス・
ディレクティブ)
遺書
アドバンス・ケア・
プランニング
日本人とがん
部位別の死亡順位
2010年度
男性
女性
1位
肺がん
大腸がん
2位
胃がん
肺がん
3位
大腸がん
胃がん
4位
肝臓がん
膵臓がん
5位
膵臓がん
乳がん
男性~約21万人ががんで死亡
女性~約14万人ががんで死亡
がんと痛み
がんの種類
がんの種類
骨のがん
痛みがある割合
みがある割合(%)
割合(%)
85
口腔内のがん
80
泌尿器科のがん
75
乳がん
52
肺がん
45
胃、腸、肝臓などのがん
40
リンパ腫
20
白血病
5
がんと痛み
• 日本人に多いがんのうち、4割~5割は痛くないかもしれ
ません
• しかし、検診で見つかった場合以外では、“痛み”がでて
病院を受診して、がんが見つかることもよくあります
がんの痛みの治療
がんの痛みの治療
③強い麻薬系鎮痛薬+①
②弱い麻薬系鎮痛薬+①
①非ステロイド系鎮痛薬
なぜ麻薬が必要?
よくある誤解
•
•
•
•
中毒になる/依存になる
寿命が縮む/最後の手段である
体に悪い/副作用がある
痛みが和らぐ
中毒になる
依存になる
• 痛みに対して、医師の指導のもとで、決められた用量を使う
限り、中毒/依存にはなりません
• 中毒/依存は「痛みがない人が、医師の指導なしに」乱用した
場合に生じます
• ちなみに医学的には
o 中毒~特定の薬物が体内で過剰になり有害な症状を示して
いる状態(アルコールを飲み過ぎて、意識を失ってしまっ
た)
o 依存~薬物の作用による快楽を得るため、有害であること
を知りながらその薬物を使用してしまう状態(いけないと
思いながら仕事中にアルコールを飲んでしまった)
寿命が縮む
最期の手段である
• この誤解には 痛みが出てきた=がんが進行している、
という“誤解”も含まれています
• “大昔”には、がんの末期にしか麻薬が使われていません
でした。ですから、麻薬を使うとすぐに亡くなってしま
うというイメージがあるかもしれません
• 実際には、がんの早期から痛みがある患者さんがいるこ
とがわかっています
• 実際には、麻薬をたくさん使った人とそうでない人で寿
命に差がないことがわかっています
体に悪い
副作用がある
• 大前提として、副作用がない薬はありません。これは事
実です。
o 漢方薬にも副作用はあります!
• 例えば、痛みの第一段階で使用される非ステロイド系鎮
痛薬(某ロキソニンなど)には、胃腸障害、腎障害など
の体に悪い副作用があります
• ですから、患者さんにとってその薬を使う利点が、これ
ら欠点を上回るときにだけ薬を使います
体に悪い
副作用がある
• 麻薬の代表的な副作用は
• 眠気
• 吐き気
• 便秘
• しっかり説明して、予防処置を講じてから使っています
安心して使ってください!
痛みがやわらぐ
• 誤解ではありません
• しかし、実際には医療用麻薬だけでは痛みが抑えきれな
い患者さんも1割強います
• その場合、鎮痛補助薬を使用したり、神経ブロックを
行ったりします
• 痛みの専門チーム(緩和ケアチー
ム)にお任せください
気持ちのつらさ
• 気持ちのつらさとは
• 感情面における不快な体験全般
• 主なものとして、抑うつ・不安がある
通常
悲しみ
心配
恐れ
重症
うつ病
不安障害
気持ちのつらさの悪化因子
• 進行がん
• 再発がん
• 痛み、吐き気など体のつ
らさのコントロールが不
十分
• 全身状態が悪い
意識の混乱
• 医学的には【せん妄】と言います
•
•
•
•
•
•
場所や時間の感覚が鈍くなる
昼と夜の感覚が逆転する
話のつじつまが合わなくなる
幻覚が見える
落ちつきがなくなる
怒りっぽくなる
意識の混乱
• 原因がある場合
o
o
o
o
o
神経に影響する薬
体の電解質バランスの乱れ
脱水
貧血
ほかいろいろ
• 神経が落ちつく薬を使います
• 環境を整備します
• ご家族に協力をあおぐこともあります
原因の
治療
ホスピス
緩和ケア病棟
在宅緩和ケア
転院・退院支援
• 治療早期からの意思確認
• 在宅医療希望
o 介護保険申請
o 自宅の状況確認(設備、バリアフリーなど)
o 在宅医、訪問看護ステーション
o 在宅での輸液、酸素投与の準備
o 患者、家族の不安のサポート
• 退院前カンファレンス
o 退院後の病態悪化時の対応を患者家族と病院、
訪問看護ステーションで話し合う
転院・退院支援
• 治療早期からの意思確認
• ホスピス転院希望
o ホスピス見学,面談の設定
• 本来患者さんも実際に見学、面談するのが理想的
• 体力が衰えている場合はご家族にお願いします
o 患者家族の理解を確認
o 不足している情報や疑問点のサポート
• 道南地区のホスピスベッド数には限りがある
• 患者および家族が希望するタイミングで転院できないこ
ともあります
まとめ
• 元気なうちから、自分の死についてイメージしておくこ
とは、自分の生き方を見つめ直すひとつの機会になるの
ではないでしょうか
• エンディング・ノート
• アドバンス・ケア・プランニング
• 緩和ケアチーム、病棟のスタッフに気軽に相談してくだ
さい
まとめ
• 痛みのケア
o 医療用麻薬を必要以上に恐れる必要はありません
o 緩和ケアチームではさらに専門的治療を提供するこ
とができます
• こころのケア
o がん治療で不安になるのは当たり前のことです
o 早め早めに相談してください
• 最期を過ごす場のケア
o 元気なうちにご家族と話し合うのが理想的です
o 希望に沿ったプランをみんなで話し合いながら作り
上げましょう
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