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vii) 入院後ーーCU、 病棟での対応

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vii) 入院後ーーCU、 病棟での対応
救急外来 (ER)・ 救急科 ・救命救急センターのス タッフのための手引き
ず1)1入 院後
=.lCり
.病 棟で│の 対応‐
___.‐ ― ―‐― ― ――― ‐― ― ――
、
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苺
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否・・ 。キーパーソンに対 し受診の必要性を説明
―
・・ 前医へ紹介状を作成 し退院後出来るだけ早く受診
かかりつ け医あり。
かかりつ け医なし、前医へ の受診拒否・・・ 具体的に新たな医療機関紹介
① lCU入 室後
1)意 識障害
多 くは意識障害、あるいは人工呼吸器管理のため鎮静下にある。その間は家族などからできる
限 り多 くの情報
[Ⅱ
‐i)(p.4)参 照]を 収集する。また、かか りつけの精神科医療機関から速
やかに診療情報提供書 を取得 し、診断、向精神薬の服薬内容などを把握す る。
2)不 穏 ・興奮
危険物 を排除 し、医療スタッフの安全確保お よび患者の保護を行う。 しか し、たとえば意識障
害下で不穏・多動が著しく、本人の身体的治療 の安全性が確保 できない と判断される場合は、家
族等へ の説 明 の後、徒手拘束する こと も検討す る。興奮症状 の大半は意識障害 によるものである
ため、鎮静 を強化 す ることで対応す る。 意識清 明 で ある場合 は、出来るだ け本 人の訴えに耳 を傾
け、実施可 能 な内容 で あれ ば応 じる。
3)有効 な 薬 物 治 療 法
鎮静薬 の減量 に伴 い、不 眠、せ ん妄、精神運動興奮、頻呼吸、頻脈 な ど力'出 現す るこ とも多 い
ため、 向精神薬 を 開始す る。
② iCU退 室後
1)意 識障害の改善後 に確認する事項
鎮静薬投与終了後まもな くは、表面的には意思の疎通が とれてスムーズに会話が進んでいるよ
うで も、患 者 は会話内容 も誰 と会話 したのか も記憶 していないことが実は多 い。下記の事項 につ
いては、退室直後 と半 日以上空けて再度患者 に質問 して確認す る必要があ る。必ず確認す ること
は以下の3つ である。
①今回の行為は自殺企図か否か
るのかt
②今回の行為を肯定 してしヽ
③希死念慮がいまだ存在するか ‐
ヽ
を五とも
乞ふ
機構ヽ 替 │ふを書をし
1高
││→
(注 )内 省 :自 分 の 心 を観 察す る こと。冷静 なふ りか え り。
2)自 殺 に 関す る話題の 聞き方 とタイ ミング
自殺未遂患者 と自殺の話題について話す ことは、医療者 にとって心理 的ハー ドルが高い。 しか
し、上記に示 した① ∼③ の項 目については遅滞 な く聞き出す ことが重要である。患者との コミュ
ニケーションが ある程度確立されていれば、それ らの質問によって患者 の精神状態が増悪する危
険性は低 い。一方で自殺企図そのものにまった く触れない対応 は不 自然 であ る。なお、 自殺 の話
題をする ときには、 自殺企図についていたず らに批判的になってはならない。 [Ⅳ .対 応 の注意
点参照]
3)帰 宅要求 の 強 い患者
自殺未遂患者は全例において、 自己判断で退院を要求する可能性があることを入院時にあらかじ
め家族などに説明 し対応を決めてお く。家族にはいつでも連絡が とれるようにしておいてもらう。
身体的 に入院加療 の継続が必要 と判断され る場合には、本人にその旨を説明 し説得 を試みる。
それで も、理解が得 られず退院を要求する場合 には家族に来院を求めt患 者 ―家族間で話 し合い
の上で、判断 して もらう。意識清明で、完全 に判断力が欠如 しているわけではない患者を、本人
の意志に反 して とどめ置 くことができない場合 もある。
12
救急外来 (ER)・ 救急科 ・救命救急センターのス タッフのための手引き
v“ )..退
‐
院1時 ‐
事‐
でに行うべきこ革=___.‐ ■
‐■―
十一‐■
‐‐‐
・ ‐‐‐‐■
1.確 認 す べ きこ と、 や るべ きこ と
1)自 殺の危険性の再評価
前述 したように、①今回の行為は自殺企図か否か、②今回の行為を肯定しているか後悔 してい
るか、③希死念慮がいまだ存在するかについて再確認する。今回の行為がЭ自殺企図であったと
してもt② 後悔 。内省があり、③希死念慮が消退または減少していれば退院は可能と考える。
2)キ ーパーソンと支援体制の確認
患者にとってのキーパー ソン (多 くは家族)に は原則的に来院を求める。ケースによ り家族以
外がその役割を担う場合 もある。内縁関係など患者と密接な関係にある人々には、状況を説明 し
て協力を求める。生活保護者 であれば役所の保護担当者 と連絡をとり、キーパーソンが存在しな
いケースは保健所や市町村等の障害福祉担当課など (精 神保健、難病、母子、児童、高齢者など)
と調整する。ソーシャルワーカー等 に連絡 し、ソーシャルワークにつ なげることも検討する。
3)か か りつ け精神科 との連携
かか りつけ精神科医がいる場合には、精神科医への診療情報提供書を作成する。主治医が失念
している場合は、医療チーム としてこれを促す。退院時にはこのような返信を忘れないことが重
要である。
2.退 院 の 判 断 に 慎 重 を 要 す る 患 者 とは
・ 自殺企図に対する後悔の念がなく、内省が得 られていない。
・ 精神疾患名にかかわらず、不安・焦燥感が強 く、不眠が遷延 している。
・ 統合失調症や気分障害
(う
つ病、躁 うつ病等)で その中核症状
(幻 覚 ・妄想、精神運動興奮、
自責の念、精神運動抑制、絶望感など)が 活発 に存在する。
・ 希死念慮が依然 として強い。
●キーパー ソンが不在か、居ても役割を果たすことが困難である。
・ 金銭面、居住地がない とい った問題で、退院後の生活に目処がまった く立たない。
・ 患者・家族がともに精神的な治療を目的とした治療を望んでいる。
・ 患者の抱える問題に対 し、なんら解決方法が示されていない。
・ 今後の精神科治療 の 目処 (通 院先など)力 S立 っていない。
・ 患者をサポー トす る関係機関に、まだ情報提供がなされていない。
13
3.精 神科へのコンサルテーション
自殺企図の場合、あるいは疑いに留まる場
合でも、身体治療 の 目処がたったら、できる
だけ早 く精神科医など専門家への コンサルテ
ー ションを検討す る。また、息者の意識がな
い場合 でも家族 の同意を得て、専門家 との相
談に結びつ けることを検討する。
また、消長を繰 り返す (強 くなった り弱 く
なった りす る)「 死 にたい気持ち
(自 殺念慮 :
希死念慮)」 、繰 り返 される自殺企図、強い不
安 や焦燥感 ・衝動性、生活上の問題やス トレス 、生活 の破綻 の ような危 険 因子 の存在 と、それに
'と りわけ 自殺 の危 険が高い状態 と考
不釣 り合 い な支援 の乏 しさなどとい った ものがあ る場合 は、
え られ る。
1.救 急 医 療機 関 に精 神科 医が い な い 場 合 の コ ンサルテー シ ョン
1)か か りつ けの 医療機関ヘ
2)精 神科救急 の基幹病院ヘ
3)身 近 な精神科 医療施設ヘ
2ご
精 神科 医 が い る場 合 の コ ンサル テー シ ョン
1)施 設内の精神科医ヘ
2)施 設 内の精神科医 を通 じて、かか りつ け医療機関や精神医療施設 ヘ
3.病 状説 明書 ,入 院診療計 画 ,退 院療 養 計 画 書
1)「 自殺企 図 のため、精神科 の診察 を受 け る」 な ど精神科 コンサ ル テー シ ョンに関す る説
明 と記載 :
2)情 報提供 の部分でも述べ たように、精神科医への コンサルテーシ ョンの上で、身体的治
療経過 とともに精神医学的に下記の情報 も非常に役立つ。
・ 年齢
。主訴
,性 別
・婚姻歴
。自発的受診の有無
。現病歴 ・精神科既往歴
・家族歴
`
4.紹 介 にあた って留意すべ きこと
・ 患者 と家族に診療結果や状態を説明 し、具体的 に紹介すべ き理由を伝える。
・ 患者 と家族の精神科受診への偏見 に配慮する。
14
救急外来
(巨 R)・
救急科・救命救急センターのスタッフのための手引き
・ 精神科治療 の有効性 を説明す る。
・ 患者が見捨て られた とい う感覚 をもたない ように配慮す る。
・ 可能な ら精神科 医に直接連絡 をとる。
・ かた くなに患 者 自身が拒否する場合、家族か ら受診 を促 してもらう。
・ 具体 的な受診 日や受診の方法を確認す る。
4.医 療 ソーシャル ワーカー、精神保健福祉士の役割
1)救 急スタッフがソーシャルワーク関連の業務として行うこと
(1)動 機にな りうる心理社会的な問題を抱えていた ら、本人または家族や支援者をソ
‐
ーシャルワーカーあるいは病院事務に紹介する。
│
(2)ソ ーシャルワーカニが不在の場合はt精 神保健福祉センター、保健所t関 連の相
談窓 口などを紹介する
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2)救 急医療現場 におけるソーシヤル ワークにつ いて
大塚 。
洒井 (2003)
,
経済問題や生活問題を抱えている人の相談 にの り、最適な社会資源のサービス を用いて、問題
解決をはかることをソーシャルワー クといい、それを実践するのがソー シャルワー カーである。
自殺未遂患者の多 くは医学的問題に加えて社会的問題 を抱え、それが自殺企図の背景 をなす精神
疾患の発症 、再発 にも関連 していることが多い。 したがって救急担当医は、患者 に対 してソー シ
ャルワー クが導入され るよう配慮 しなければならない。
くノ
3)ソ ーシ ャル ワー クの実践
たとえば、救急 センター における精神科対応ケースの多 くは自殺未遂患者であるが、その約半
数 は経済問題などの生活上 の問題や現実的な問題 を抱えているにもかかわらず、相談相手がいな
い状況にある。また、その ような相談者がいる場合でも、精神科外来や家族 というた限られた範
囲以外に有効な相談先がない とい うことがほとんどである。 したがって、周囲の支援体制、相談
機関の振 り分け、そ して個 々の抱える問題に関するケースマネー ジメン トが必要 となる。救急担
当医は身体的治療 と精神科救急的治療のマネジメ ン トを行いなが ら、看護師や ツー シャルワー カ
ァなどのコメディカルの力 を借 りて、患者の抱える心理的 。社会的問題やニー ドが明確化される
ように努力すべ きである。そ して、以下のソー シャルワニクの導入をサポー トすべ きである。
レワークの具体的内容
☆精神科関連 ソーシ ャリ
SWl.問 題点抽出
0患 者の心理社会 的問題に関する情報収集を行 う。
・ 現実に抱えてい る社会生活上の問題点を本人、家族、救急隊、付 き添いの支援者などか ら情
報収集する。
・
Linel‐ 2、
Line8の アセスメン トと並行 して行 う。
SW2.問 題点アセスメン ト
・ 心理社会的問題の緊急性、重大性の評価 を行 う。
・ 支援者、支援組織 などの確認を行 う。
SW3.介 入目標設定
・ ソーシャルヮー カー を要請す る。
・ 現実的で達成可能な目標 を設定す る。
・ 患者
)お よび支援者
(利 用者
(家 族など)と
一緒に設定する。
・ 前向きな目標設定 と動機づけを行 う。
SW4.介 入計画立案
0ア セスメン トと目標設定に基づいた介入方法 を提案する。
SW5.短 期的介入
・ 必要な情報の提供 を行 う。
・ 支援組織 (行 政、関連機関など)と の連携 をはかる。
・ 生活 。金銭 。その他 の問題の調整を行 う。
・ 家族、保護者、扶養義務者、後見人など支援者 との調整を行 う。
・ 精神保健福祉法に基づ く入院の場合の手続 きの調整を行 う。
SW6.ソ ーシャルワーク導入
・ 継続的な相談 。支援体制 を構築する。
・ 担当者の紹介を行 う。
・ 介入 目標 と介入計画 について確認する。
16
救急外来 (ER)・ 救急科 :救 命救急センターのス タッフのための手引き
自殺を図った後に救命救急 センター等に搬送された場合には、まず緊急の身体的治療が施され
る。多くの場合には身体的評価 と並行 して精神的評価も行われるが、その際に患者にもっとも身
近な存在 としてその役割を果たすのが看護職である。
1.自 殺につ いての話題か ら逃げない
対応にあたっては「TALK」 の原則が重要である。すなわち、
誠実な態度で話 しかける
自殺 についてはっきりと尋ねる (Ask)、 相手の訴えに傾聴する
s」e)、
(Lも ten)、
(Ten)、
安全を確保する (Keep
のそれぞれの頭文字をあててのTALKで ある。
「TALK」 の原翼1
■1111
●Tell:誠実な態度で話 しかける
.Ask:自 殺 について│ょ うき「
りと尋ねる
Listen:相 手の訴えに傾聴する
Kё ep
safe:安 全を確保する│
自殺 の話題を避けた り、刺激を与えない ようにしたりと、腫れ物に触れるかのような関わ り方
をしてしまうのが一般的な反応 であるが、自殺 の話題を避け、現実から目をそらしてはならない。
なぜ なら自殺企図をしたことは事実であ り、その結果、救急室に搬送されたことは現実のことだ
か らである。むしろ、真摯な対応 で自殺 と向き合 うことは危険なことではなく、再企図の予防に
なりうるものである。
具体的な関わ りとしては、徹底 して聞き役に回ることである。 いわゆる「傾聴」である。看護
師には、自殺未遂患者の評価が求められているのではな く、自殺 した気持ちに共感することが求
められているのであ る。そのためには受容的な態度で、訴えを全身で聴 くことが重要である。
また、沈黙 も有効に活用す る。沈黙 は愛情、同意、敵意、無視などさまざまな意味をもう非言
語的 コミュニケー シヨンの一つである。沈黙で患者が表現 したいことを察知す ることも重要であ
り、沈黙の時間を大切 にすることが コミュニケー ションの幅を広げる。
17
叫
ⅢⅢ■
IⅢ Ⅲ
│二
「とてもたいへん 思いをしたの
i■ ■││「丁
'
│な
2.逆 転移 の危険性
逆転移 とは、治療者が被治療者に対 して無意識に自分の感情 を向けて しまうことである。救命
救急医療の場面では、 医療従事者が 自殺未遂者 に対 して否定的な感情を向ける (陰 性逆転移)と
い うことがない よ うに留意 しなけれ ばいけない。不用意な態度や発言は、患者の 自殺念慮を助
長・再燃 させて しまうことがある。
やつて1ま いけない対応仰】
【
1言
語
■
│
■‐││
│
│ │‐
■
「 こん な方法 じゃ死ねないよ」
│‐
│
■■ │
「平■気になれば、な々でもできるでしょう」││││■ .│ │
、など
_:「 自殺1ま 、してはいけないことだ」
1態・ 度
│ │
・
│
││「 仲││,會 を助けたい人がいぅ9F」 年忙レ│`
│ ■ │
││ ││‐
り,す│■
││「 こと (救 急部)に 入うたから大文夫でしょ!Jと
`誉 相手にしない
│
3.こ ころの 病 む人 の 健 康 な部分 に注 目 して関 わ る
看護師は こころ を病 む人の健康 な部分 に注 目して、 そ の部分 を引 き出 し、そ の力 を支 えること
が重 要である。 た とえば、 統合失調症 で幻覚妄想状 態 を呈 す る場合、そ の幻覚 や妄想 の多 くは自
殺未遂患者 に不安 や恐怖 を もた らす。その不安 を軽 減す るために、現実 に 目を向 け ることがで き
るよ うに関わる こ とが 必要 である。 つ ま り、幻覚妄想 の世界である「病気 の部分」 ではな く、現
実的な生活 に直面 した F健 康 な部分」 に注 目して関 わることが重要で ある。
18
救急外来
E・
(巨 R)・
救急科 ・救命救急センターのス タッフのための手引き
●覚妄態状艦を呈する自殺企図書べの好ましい対応例1
■‐ ・ │
自瞳
│ │
予防する
救急の現場にある危険物から遠ざげる●‐ ‐│
安全を保証する
│ : │││
■‐
■
●:
‐
‐ │ ■
‐
│
│
「今ことにぃるのは1あ なたと私たけだから大丈夫ですよ」
現実に関心を向ける
.
■
│ │ │││ │
│
‐
│
│
‐
│ : ,
「私には聞こえたり感したりしま│せ ん│が t oOさ んにはそう感じるのですね」
幻覚妄想自:体への対応 ││‐ │:│‐ ●:■ │‐ ■│‐ ■
│ ‐■ ‐│.1‐ ■
幻覚妄想の否定も肯定もしない│:■ ■││■ ■‐
│
111■ ‐ │
常時、幻覚妄想の世界にいるわけではない (「 訴え」の意味を確認する)● │
■■‐1 1 11
妄想を発展させたり助長させたりしなt■ ││‐ │
│‐
4.看 護 におけるチームの連携 ・ 交渉・調整
救急医療 のなかで、 とくに常勤の精神科医がいない臨床現場に従事している看護師にとって重
要なのはt再 自殺の危険や予兆を察 した時に、その内容を精神科看護師や精神科医に報告 し、交
渉お よび調整する能力を強化することである。そのためには常 日頃から、自殺予防に関するカン
ファレンスや検討会を開催し、自分たちの知識および技能を高めるとともに、連携できる関係を
形成 してお くことが必要になる。
また、その連携は病院内だけにとどまらず、地域 の関係者 との連携を密にしてお くことが自殺
予防に寄与する。 自殺予防に必要な基本的知識及 び対応方法 (技 術)、 それぞれの専門性 を尊重
し、互いに学 び合 う姿勢 をもつ ことが重要である。
19
■ 対応の基本
1.).輛 ‐
市:ハ‐
医療
自殺未遂患者には身体・精神両面にまたがる多方面か らの治療的アプローチが必要 であるため、
必然的に多職種 (看 護師、 ソーシャル ワ
=カ
ー、薬剤師、救急医、精神科医、心理士など)が 関
わるチーム医療 の形態を とることになる。それぞれの職種が果たすべ き役割を速やかに遂行する
ことが 第一であるが、職種 によって患者への関わ り方、関わる視点お よび内容が異 なることや、
時 に患者の言動に巻き込 まれスタップが互いに振 り回されることを避 けるために、常にコミュニ
ケーションを欠かさず、必要時にはいつで も集合 し短時間の ミーテイングを開いて患者 に関す る
情報を共有 し、統一 した対応 の徹底 を図る。
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ー
晏‐
ニケT‐ ンー
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ン俊票嵐
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①基本的なことがら
・ 救急現場 での 医療従事者 に とって、 自殺未遂患者 。自傷行為者に対す る治療 は避 け て通れない
ことを肝 に銘ず る。 自 らの 中 に患 者 か らの逃避願望、患 者 に向けた嫌悪感や怒 りの感情 などが
生 じて も、決 して言動 にあ らわ さない。
・ 救急 医療 の現場 では、 コ ミュニ ケ ー シ ョンに充分 な時 間が とれない こ とが前提 と してあること
を心 に留 め る。 よって、「 また、今 度 に してお こ う」 とい う発想 は禁 物 であ る。 初 回の コンタ
ク ト時か らその場 で 聞け るこ と、 で きる こ とは遅 滞 な く行 う。 しか し、焦 って聞 き出そ うとし
てはな らない。
。
・ 希死念慮 の有無、今 回 の行為が 自殺企 図か否かにつ い て複数回確認す る。患 者が事実や本心 を
隠している場合や、軽 い意識障害の影響で返答が正確 でないことがあ る。
・ 自ら解決方法を提示で きない限 り、患者 と患者周辺 の問題に深 く入 り込みす ぎない。患者の訴
え (幻 覚 。妄想なども含め)に は無制限につ きあわず、時間を決めて対応する。
・ 違法行為、迷惑行為 (病 院内のルール違反など)、 脅迫行為 については、 自殺未遂患者 とその
家族 といえども毅然 とした対応を とる。
・ 患者の攻撃的、反抗的、医療者を無視するような態度がみ られて も、意識障害によるものであ
ることが多い。 “
性格が悪 いせい"な どと決めつ けず、家族に入院前 の本人の様子について聴
取 し現在の状態 と対比す る。
20
救急外来 (ER)・ 救急科 ・救命救急センターのスタッフのための手引き
②心構え
。医療者が もつ不安感、無関心な態度 を自殺未遂患者は敏感に感じ取 ることを知 ってお く。
・ 患者に対 して、医療者は適度な距離を置いて対応す る必要がある。近すぎても、遠す ぎてもい
けない。
・ 冷た く、無関心で、批判的な対応は、医療者が抱 く患者に対する不安のあ らわれであ り、自殺
再企図防上 にまった く貢献 しない。
・ 一方で、医療者 は自らが「なんとか しよう」 とい う思いを強 く持ち過 ぎず、患者を関係機関、
専門機関 (精 神科 も含む)に つなぐ役割を第一の立場 とす る。
・ 自殺未遂患者は「死にたい」 と言うが、同時に「生きていたい」と考えてい る。言い換えれば、
「生 きているには辛す ぎるから死を選ぶ しかない」 と感 じている。100%死 にたい人はいない。
口 すべ きこと
①対話の際にとるべき姿勢
・ 傾聴 ……黙 ってひたす ら患者 の言葉 に耳 を傾 け、真剣 に聞 く態度。
・ 共感 と受容 ……患者 の言葉 をまず 一度全面的に受け入れ、理解 しようとす る態 度 を示す。同時
に入院 中 の安全 を保証 す る。
・ ねぎらい ……来院 したことその もの、心 の 内を吐露 して くれたことをね ぎらう。
・ 両価性 …… 自殺未遂患者 は「死 にた い」「 生 きてい た い」 の両方をさまよっているぎ 白で も黒
で もな くグ レー ゾー ンにある患者 の気持 ちを理解す る。
・ 死以外の解決方法を考える ……患者 は「死 ぬ ことが唯一 の問題解決方法 である」と考 えてい る。
問題 を解決す るための他 の方法 につい て一緒 に考 え、探す努力をする。
・ 患者の気持 ちに焦点 をあてる …… 自殺企 図、自傷行為 によって生 じた身体面 の問題だけでな く、
そ こに及 んだ動機 。心理的背景 も積極的 に取 り上 げ る。
②忘れてはならないこと
。自殺企図の原因について必ず聞く……聞かずに退院させることは、
お腹が痛いと訴える患者に、
何も開かずに痛み止めの処方だけをするような態度に等しい。
・退院の可否判断に直接つながるた
・ 死の意志を伴つて行つた行為かどうかを聞く (複 数回 …・
)。
め、確実な情報を聴取する。
・ 本人と家族の両方から情報収集する…… 自殺企図につ ながる動機や最近の精神状態についての
情報が、双方で必ず しも一致 しない。正確な情報の共有 につ なげる。
・ 必ず精神医療に結びつける (非 受診者)… … 自殺未遂 ,自 傷行為患者のほとん どが精神的な問
題 を抱えてい る。そのため、すべ てについて精神科治療機関への受診 を促す。
「 どこかに受診
して くださいね」 とア ドバ イスするだけでは具体性 に欠け、その後患者 はまず受診 しない。で
きるだけ具体的に受診先 を選定 した り、行政 (保 健所等)を 紹介するとよぃ。
・
……
・ 自殺をしない約束
真摯 な態度で患者の話 に耳を傾 けた後 に、「同 じ行為 を繰 り返 さない」
約束をする。単なる日約束ではあるが一定の抑止効果がある。
日 してはいけないこと
・ 安易な激励 ……「がんばれ
!」
とい う激励 は非常に曖味で、具体性を欠 く。患者はその言葉か
ら「 自分のことを理解 して もらっていない」 と強 く感 じ取 る。何をどのように頑張ればどうい
った結果が得 られるのか を具体的に示 しつつ、励 ます ようにする。また、患者 と医療者が “と
もに頑張る"こ とを強調す る。
・ 自らの価値観で相手を説得する……人それぞれに置かれた立場や、取 り巻 く環境、育った背景
はまちまちである。体 の痛みが当事者 しかわか らないのと同 じで、心の痛み も当事者 しかわか
らない。自らの価値観で他人を説き伏せ ようとす ることは、患者に対 し「理解 されない」 とい
う感情を抱かせて しまう。
・ 患者に話をさせない、一方的に話 してしまう……傾聴 と逆の形。自殺未遂患者は医療者に何か
を教えてもらお うとはあ ま り思 っていない。少 しで も聞いて欲しい、感 じて欲 しい と思ってい
る。
・ 患者自身を批判 ・否定する (Goddamn syndrome)… … 自殺未遂患者・ 自傷行為患者に対 し
医療 スタッフが陰性感情 を抱 いて、患者に暴言 (例
:「 死 ぬ気なんか初めか らない くせに !」
「生 きたくない なら仕方 ないね」
「 自分でやったんだか ら我慢 しろ !」 )を 吐 いて しま うことを
い う。一般 に、 自殺未遂患者は自分自身が存在する意義を見いだせないことが多 いので、上記
の発言は、患者を一層追 い込み自殺既遂への リスクを高める。
・ カタルシスを精神状態の改善と勘違いする…… 自殺企 図 。自傷行為をきっか けに、それまで患
者 自身の中で極限まで高 まっていたフラス トレー ション、 ス トレスなどが一時的 に解消 され、
見かけ上精神状態が改善 しているようにみえる状況 を「 カタルシスが得 られた(注 )」 とぃ ぅ。
しか し、患者 を取 り巻 く環境 は本質的に変化 してい ないわけで、適切な対応 をしなけれは元の
精神状態にいずれは戻 って しまう。精神科、 のつ なぎを忘れない。
(注)「 カタル シス が得 られ る 」 とは、 抑 え られてい たス トレス や苦 痛 に よる感情 や葛藤 を言葉 や行 動 で 表出 さ
せて心理 的 な緊張 を解 くこ とで ある。
22
救急外来 (ER)・ 救急科 ・救命救急センターのスタッフのための手引き
よくある対応困難例
Q&A
。
「死にたい」と繰 り返す患者■ 。
同 じ行為 を決 して繰 り返さないよう約束す る。
「絶対 しな
ず しないよ―
い とは言 えない」「必ず同じことをす る」 とい う患者 には、
う努力す るFこ とを
:・
要請 。約束する。
■ │‐
│
・ 家族と会いた くないという患者……入院が患者と家族がお互いにじっ くりと向き合 う機会
となることがある。面会は可能な限 り行 つてもらう。拒否的な発言とは裏腹に一生懸命話
■ │
していることが多 い。
。いわ ゆる・ リピーター"・・…。
同一人物が頻回に繰 り返す 自殺企図 。自傷行為に対 して医療
1時
に怒 りの対象 となりがちであるが、できるだけ淡々 と対応す るよう努める。
者 も疲弊 し、
「何度繰 り返すのですか ?」 といらた言葉で患者を批判 しても、まらたく治療効果 はない。
23
1.基 本 的 姿 勢
・`家 族の言葉 に耳を傾け、誠意をもって聴 く。家族を評価 しない。
・ 傾聴 …・
・ 共感 と受容 ……家族の言葉や気持ちを認め、理解 しようとす る態度を示すも家族 も本人と同様
に苦悩 を抱えている場合が多 い。
・ ね ぎらい……家族が受診に付 き添ったこと、話 したことやこれまで支援 してきたことをねぎら
う。
・ 家族の苦 しみに焦点をあてる……起 きた出来事 の確認 だけでなく、家族の苦 しみや不安 も話題
として取 り上 げる。
・ 協力・支援体制 を一緒 に構築する…… 自殺企図患者の治療に対 して家族 としても支援 してい く
体制 を考える。家族だけの負担 ではな く医療機関も一緒に取 り組む姿勢 を伝 える。
・ 精神科治療やソー シャル ヮー クなどの心理社会的介入が、本人の自殺の危険性 を減 らす ことに
つ ながることを伝える。
2.家
族 の 動 揺 を落 ち着 け る
0治 療者側がゆっ くりと落ちついて応対す ることで、家族 も安心する場合が多 い。家族も動揺 し
てい る場合が多 く、ま くしたてるように一気 に説明することは望ましくない。
3.家 族 か ら情 報 を収 集 す る
・ 家族か ら患者 に関す る情報 を収集 し、病歴 を確認す る。
4 5
家族に病状、治療経過、方針を適切に伝える
家族か らも心理社会的問題を聴取 し、必要な場合、家族 と協力 しながらソ
ーシャル ワークにつなげる
6.地域で活用可能な救急対応の窓口に関する情報を提供する
24
救急外来 (ER)・ 救急科・救命救急センターのスタッフのための手引き
1)救 命 救 急 医 や 精 神 科 医 か らの 情 報 提 供 が な ぜ 必 要 か
○現場で患者、家族 に安心を与える
自殺企図で搬送 された現場では、患者や家族も大変混乱 している場合が多い。さまざまな心理
社会的な問題を抱えていても、す ぐに問題解決に向けて決定できない場合 も少なくない。
○患者、家族が適切 な医療や支援を選択できる
自殺企図で搬送された患者や家族は、自殺企図に対する治療や対応を知識 としてもっていない
場合 も少なくない。適切な情報が提供されることで、治療やその後のケアを患者や家族が選択す
ることが可能となる。
○ケアの導入や再企 図防止にとつて重要な心理教育的なアプ ローチである
自殺企図がなぜ起 こったのかとい うことに対 して本人や家族が理解することは、今後のケアの
導入や再企図防上の観点でも重要である。
2)提 供 で きる 情 報 の 種 類
・ 自殺企図のプロセス
・ 自殺の危険因子と防御因子
→参照.「 救急医療 における自殺未遂患者ケアの流れと対応
・ 精神医学的治療の導入と継続の重要性
→参照。「 I。 自殺未遂患者ケアの全体 の流れ
(p.1)」
(p.2)」
・
・ 経済問題や生活問題、病気に関連 した悩みを抱えている場合の相談窓 国の存在や医療相談室な
どを介 したケースワーキング対応の存在
)4.医 療 ソー シャルワーカー、精神保健福祉士の役割
。危機対応の窓口 (救 急医療施設,精 神科救急医療施設など)
→参照.Ⅱ
.― v面
(p.15∼ 16)
。
25
あとが き
わが国では平成 10年 (西 暦 1998年 )以 降、年間に約 3万 人の方が自殺 で亡 くなっている。ま
た、それ以上の数の 自殺企図者が存在 していることが想定される。 自殺企図による重症症例は救
急 医療機関へ搬送されるため、救急医療機関が自殺未遂患者 のケアに果たす役割 は大 きい。
自殺対策 として、平成 18年 6月 に「自殺対策基本法 (以 下、基本法)」 が成立 したことを受け、
平成 19年 6月 に策定された「 自殺総合対策大綱」で_も 、自殺未遂患者へのケアが具体的かつ重要
な項 目として位置づ け られて い る。 また、平成 18年 度か ら厚生労働科学研究「 自殺未遂者およ
び 自殺者遺族等へのケアに関す る研究」が開始 され、平成20年 3月 には厚生 労働省 による有識者
検討会 で「自殺未遂者ケアガイ ドライン作成指針」が公表された。本手引きもこの自殺対策の流
れ を うけて作成が開始 された。
自殺未遂患者ケアは身体的治療 と精神医学的治療 とを同時並行的に、′
しか も緊急的に実践 しな
ければならない。 これは非常に高度な医療であ り、
今後 も救急医療が担ってい くべ き領域である。
社会の救急医療へ の期待に応 えるために、救急医療 に従事す る我 々が自殺未遂患者 のケアについ
て理解 を深め、積極的 に実践 して い くことを祈念す る。
この手引 きに関する ご意見がござい ましたら、 日本臨床救急医学会
自殺企図者の ケアに関する検討委員会 までお寄せ ください。
〒 164-0001
東京都中野 区中野 2-2-3(株 )介 るす出版事業部内
日本臨床救急 医学会事務所
26
(耕 )
本書 の文章 お よび図の著作権 は 日本臨床救急 医学会に帰属
す る。 日本 臨床救急 医学会 の承 認 を得 た場合 を除 き、本書
に記載 されてい る文章お よび図版の転用や複製 を禁ず る。
救急外来
発
(ER)。
自殺 未遂 患 者 へ の 対応
救急科・救命救急センターのスタッフのための手引き
行 平成 21年 3月 31日
発行者
日本臨床救急医学会
東京都 中野区中野 2-2-3(株 )へ るす出版事業部内
27
埼精 診
自殺 調査 結 果
平成 19年 度 (平 成 19年 5月 T20年 4月
平成 20年 度 {平 成 20年 5月 -21年 4月
平成 21年 度 (平 成 21年 5月 -22年 4月
)
)
)
︲ ︲ ︲︲ ︲
一﹁ ﹁
3年 間 の 自殺報告 数 (144名 )一 覧
自殺報告診 療所数 (3年 間
)
・ 33診 療所 (60診 療所中55%)
1診 療所 当たりの 自殺者 数 (3年 間〕
・ 平均4.5人
,最 高値 17人
・ 標準偏 差値 4.1
3年 度分 の 自殺者 144人 の 年齢分布
人数
9
182■
平均値
45。
ア、中央値 43
242730333● 3942454851545750036659727578818487
年 齢
72
年度 毎 の報告数
5 m 5 0
5 。 5 神 ・
3 3 2
︲
平成19年 魔
男27人 .彙 32人
平成20年 度
男22人 、女22人
平成21年度
勇24人 .女 17人
3年 度分 の 自殺 者 144人 の 診 断
各年度毎 の 自殺者 の疾患割合
´″
″
´ど
1 ‐
… … …… … …漱燻 ―
____“
__…
… …
‐
通院状況
3年 度分 144人
E規則 的
菫不 mll
醸中 断
L2回 のみ
“
菫
不規則で中断 、転 院
3年 度分 144人 の 同居者 の有無
3年 度分 144人 の 身体 疾患 の有無
晰 、視力障害、高血 圧。高臓血症.糖 尿病。前立腺肥大 .そ の他
75
人数
3年 度分 144人 の 通院期間
│
―一¨
80 -… …
70
60
‐
‐
‐
50 -
一
―
―
―
―
―
一
…
…
“
30
‐
20
― ― ―
‐
‐
―
‐―
‐
‐
―
lヶ 月以下
‐
―
2・
6-10年
11ケ 月
11年 以上
6
・
終診 日からの 日数
想年度分144人 (不 明3人 )中 央値 11
4
・
2
・
Ю
8
6
4
2
0
o m to●
翠ョ田苺 、`
8需 83S響
等
=嵩
日数
お
8織
゛
E
0
0
76
自殺 の連 絡 方法 、3年 度分 144人
” 田 Ю
。 。 m
m ” 4
3
”
。
ずボ〆 ず
自殺 の手 段 、3年 度分 144人
…
70 -… ……
60
過量服薬関連 計 15人 (10.4%)
50
40
30
20
10
0
ψヾ
ずず
・
ら ポ
77
3年 度分 の 自殺者 144人 の
過量服薬 について
3年 度分 144人 の過量服 薬 の有無
過 量 服薬既往 者 38人 の 自殺 の手段
その他 4人
:入 水 、刃物 、硫 化水 素 、鉄道
過 量服 薬 の 既 往 のない 自殺者9二 人
の 自殺 の手段
E過 量服薬・練炭
■都市ガス
・実気
壼硫 化水 素
過量服 薬関連は、6人 (6.5%)
過量月
風薬 の既往と過量服 薬死 との 関係
過量服 薬 による自殺者 15人 の 診 断
過量 服薬 による自殺 者 15人 の性別
主 な 自殺 の 手段 の 男 女比
80
60
0
E E
20
男 女
40
過 量服薬 による自殺者 15人 の終診 日
か らの 日数 (中 央値 9)
人数
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 1112 3
■4151617 18 19 2●
212223
日数
過
期
量 服薬 による自殺 者 15人 の 通院期間
9
lヶ 月 以下
2-11ケ 月
1-5年
32
6二 1び 早
11年 以上
過量服 薬 による 自殺者 15人 の 年齢分
布 (平 均 年齢 45。 7歳 、27歳 二63歳
)
まとめ
自殺者 の男女比は、ほぼ同じ(警 察発表 では7割 が 男
性
自殺 の 手段 は、総首が 約4割 (警 察発表 では6割 )t他
は 多種 にわたる
する日事で、ほとんどが 一ヶ月以内。
髯 是嘗亀葉驚
にわた て定期的 に通院し、同居者 のいる者が
マ
テ釈
過量服薬による自殺は、約1割
の手段は、かならずしも過
F殺
墾尋巽 番
過量月
風薬による自殺者の診断で、F3は 、自殺者全体
べ
に比 やや少なく、F2を はじめ多種にわたる
)
●
●
員か らの
精神科診療所通院者の 自殺の特徴について
里村
3田
淳
1
恵
2
3
4
5
田代 厳
智彦
田上 聡
坂井俊之
1富
2ィ
ニ
ニ ック
士見メンタルクリ ック、 サォクリ`
5坂
代 ク リニ ック、`所 沢武蔵野クリニ ック、
井 メンタル ク リニ ック
キ=ワ ー ド :自 殺、精神科 クリニ ック 精神千
斗通院者
はじめに
I。 結 果
自殺 者全体 の統計 は警察庁 や厚労省人 口動態
1.報 告数および内訳
調査な どのデー タか ら明 らかにされてい るが 、精
(1)平 成 19年 度 は 、男 27人 (458%)、 女 32
神科診療所通院者の 自殺 につい てはまだ本格的 な
(54.2%)人 、計 59人 。平成 20年 度 は、男 22人
調査 は されておらず、その特徴 についてはあ ま り
(50%)、 女 22人 (5Cl%)、 計 44人 である。平成
知 られてな い。埼玉県精神神経科診療所協会 (埼
19年 度 と
精診 )は 、平 成 19年 5月 か ら、毎年会員診療所
女 54人
における自殺 の実態 を把握するために調査 を開始
度 をまとめる と、
男 49人 (476%)、
"年
(52.4%)、
計 103人 である。
(2)会 員か らの報告状況
し、精 神科診療所 (以 下 クリニ ック)通 院者の 自
平 成 19年 度 は、56会 員 中 24人 の 会 員 (約
殺者の実態把握 に努 めて い る。平成 19年 度 と20
43%)か ら計 59件 の報告があ ったが、20年 度 は、
57会 員中 17人 の 会員 (約 30%)か ら計 44件 の
年度 の調査の結果につい ては、 日精診総会で発表
した。 さらに、埼精 診 の活動 の状況 と調査 の概 要
につい ては 、埼玉県医師会雑誌 (平 成 21年
H月
報告があつた。報告 した一 会員あた りの報告件数
は、
20年 度が 2.6件 であつた。
平成・19年 度が 2.5件 、
号 )で 発表 した。今回は、 これ までの 2年 分 の調
査結果か ら、精神科診療所通院者 の 自殺 の臨床的
2:初 診時平均年齢
特徴 につい て報告す る。
平成 19年 度 は、男が 410歳 (18∼ 73歳 )、 女
41.0歳 (21∼ 87歳 )、 平成 20年 度 は、男
I.方 法
"0歳
(19∼ 65歳 )、 女、39Ю 歳 (21∼ 69歳 )で ある。
会員診療所で自殺が生 じるごとに、定め られた
用紙に必要事項を記入して委員会に郵送する。調
査の項 目は性別、自院初診日、終診日、初診時年
齢、死亡時年齢、身体疾患 の有無、診断
(lCD‐ 10
表 1 平成 19,20年 度 103人 の男女別 。年代別
死亡年齢分布
平成 19年 度
平 成 20年 度
男
による)、 通院状況、生活状況、自殺企図 の既往
10119歳
1
の有無、過量服薬 の既往の有無、自殺 の連絡、自
20‐
29歳
39歳
8
殺 の手段、自殺の場所 である。報告 した診療所名
は保護 され、調査結果には表れない。毎年 5月 か
ら翌年 4月 までを一年度分 とし、
結果 を公開する。
日精診ジャーナル 平成 21年度 第 4回 理事会号
30‐
4049爺を
59歳
60‐ 69歳
71‐ 79歳
80靭 歳
50‐
3
3
0
4
女
10
5
3
5
男
0
0
6
3
3
5
6
5
4
1
0 1
男女合計
1
5
21
21
7
6
2
女
0 0
0 0
20
3
4
18
5
16
165
投稿
12
10
8
6
4
2
08 36912
表
2
平成 19・
1
39歳
20‐ 29環
30‐
4049歳
59歳
69歳
70‐ 79歳
50‐
60‐
/1ヽ
騨成置鶴
犀
譲議 で
,暑栞
醸
網数
言[
0
20年 度 の F2、
F2
5
7
2
4
235712 20
146411
11481o
014000 5
12
16
3
F6の 男女別 。年代別年 齢分布
F3、
F3
F6
1
26
2
0
2
3
3.死 亡時平 均年齢
17
14
17
15
22
5
48
合計人数
2
8
89
13
5.診 断
平成 19年 度 は、男が 390歳 (19∼ 65歳 )、 女
(1)平 成 19年 度 は、F2に 属するものが 17人 、
39.0歳 (21∼ 65歳 )、 平成 20年 度 は 、男が 44.3
な 8%(統 合失調症
歳 (21∼ 69歳 )、 女 が 44.5歳 (23∼ 66歳 )で あ る。
平成 19年 度 と 20年 度 の男女別年代別死亡年齢分
が 27人 、458%(う つ 病 26、 躁 うつ 病 1)、 F6
が 7人 、H。 9%、 その他 6人 、10.2%(摂 食障害 2、
布 は、表 1の 通 りである。
社会不安 障害、不眠症、 アルツハ イマー型認知
12、
それ以外のもの 5)、 F3
・ (3)平 成 19年 度 お よび 20年 度 の 計 103人 の 最
症各 1)、 不明 2人 、33%で ある。平成 20年 度 は
終受診 日か ら自殺す る 日までの期 間を図 1に 示 し
F2に 属するものが H人 、25%(す べて統合失調
た。
症)、 F3が 21人 、
47.7%(う つ病 20、 躁 うっ病
4。
F4(神 経症性障害)力 'も 人、114%、 F5が 1人 、
2.3%、 F6が 6人 、‖Ю%で ある。
身体疾患の 有無
平成 19年 度 は、 身体疾患有 りが 6人 (102%)
(前 立腺肥 大 1人 、C型 肝炎 2人 、高月
旨血症
1)、
2人 、
糖 尿 病 1人 )、 無 しが 52人 (腱 1%)、 未記 入 が
平成 19年 度 と20年 度 の合計 103人 の診断 を表
2に 示す。
1人 であ る。 平 成 20年 度 は、 身体疾患 有 が 8人
(2)平 成 19,20年 度計 103人 の F2(28人 )、 F
3(48人 )、 F6(13人 )の 男女別 。死亡年代分
(182%)(乳 癌 と胆 管癌、網膜剥離、 パ ー キ ンソ
布を表 21こ 示す。F2は 、
全体 としては30代 が ピー
ン病、糖尿病 、高血圧症、網膜静脈 閉塞、顕部脊
クで、加齢 とともに減少 してい く。∞ 代 で男性
椎 管狭窄、脳梗塞 各 1人 )、 無 しが 36人 (818%)
一定 の傾向はみられ ない。
が突出 している以外 は、
で あ る。
F3は 全体 として、30代 か ら50代 にかけて働 き
盛 りの年代 に多いこ とがわかる。
男女別にみると、
166
日精診ジャーナル 平成 21年 度 第 4回
理亭会号
投稿
。 5 。 5 。 5 0 5 0
4 3 3 2 2 1 ︲
(40%)、 なしが 29人 (49.2%)、 不明が 7人 (11.8%)
である。平成 20年 度は、自殺企図の既往有 りが、
21人
人
(4■ 7%)、
なしが 21人 (477%)、 不明が 2
(46%)で ある。
9.過 量服薬の有無
1ケ 月以下
l‐ 5年 6‐ 10年
図 2 通院期間
平成 19,20年 度 103人
2‐
11月
H年 以上
(1)平 成 19年 度 は、過量服薬 の既往有 りが 14
人 (23.7%)、 なしが 38人 (646%)、 不明が 7人
平成20年 度は、
有 りが 15人 (34%)、
(110%)で ある。
なしが 28人 (636%)、 未記入が 1人 である。
男性 は 50代 を ビー クに山型 を描 くのに対 し、女
(2)過 量服薬の既往 と自殺 との関係について
性 は一 定の傾向はみ られ ない。
平成 19年 度過量服薬の既往者は 14人 (23.7%)で 、
F6は 女性 が 30代 を ビー クに山型 を描 く以外、
過量服薬 による自殺者 は 7人 (119%)で あった。
その うち、過量服薬の既往が確認 されたケースは
一定 の 傾向はみられない。
6.m
2人 であった。20年 度 の過量服薬 の既往者は 15
人 (34.1%)で 、
過量服薬による自殺者 は 4人 (9%)
・
(1)平 成 19年 度 は、 規 則 的 に 通 院 が 41人
1に 通院が 10人 (169%)、 不 明
(69.5%)、 不規貝
であ った。その うち、過量服薬の既往が確認され
たケースは 3人 であった。 したが って、平成 19
が 3人 、中断が 1人 、1回 だけの受診が 3人 、2
年度 と20年 度の 自殺者 103人 の うち過量服薬に
回 だけ受診が 1人 である。
よる自殺者は計 7人 であ り、そのうち過量服薬の
平成 20年 度 は、規則的 に通院が 37人
(84.1%)、
不規則 に通院が 3人 (6.8%)、 不 明が 3人 、中断
が 1人 である。
既往者は 5人 であ つた。 したがつて、過量服薬の
既往のある者は自殺の手段 としてはほかの方法 を
とることが多いが、過量服薬で自殺する者 は過去
(2)通 院期 間 は、平成 19年 度 は、1カ 月以下
が 7人 、2∼ H力 月が 10人 、1∼ 5年 が 22人 、
にも過量服薬の既往が多いことがわかる。
6∼ 10年 が 13人 、11年 以上が 7人 である。平成
10
20年 度 は、平成 20年 度 は、 1カ 月以下が 2人 、2
∼
H力
月が ll人 、1∼ 5年 が 14人 、6∼ 10年
が 7人 、H年 以上 が 10人 で あ る。平 成
19、
20
年度 103人 の通院期間 を図 2に 示す。
自殺の連絡
平成 19年 度 は、警察が 29人 (49.2%)、 家族
が 22人 (37.3%)、 警察 と家族 が 2人 (34%)、
医療機関、
その他が 5人 (保 険会社が 2人 、
救急隊、
知人が各 1人 )、 不明が 1人 である。平成 20年 度
は、
警察が 30人
7.生 活 状況
警察 と家族 が 3人
平成 19年 度 は、同居者 あ りが 54人 (91.5%)、
同居者 な しが 5人
(85%)で あ。平成
度 は、
"年
同居者 な しが 12
同居 者 あ りが 32人 (7η %)、
人 (27.3%)で ある。
8。
(68。
2%)、 家族が 10人 (2η %)、
(a90b)、
知人が 1人 (2.2%)
である。以上より、自殺の連絡は警察が主で、家
族がそれに次 ぐ:
11.自 殺の手段
自殺 企図の既往の有無
平成 19年 度 は、自殺企 図 の既往有 りが、23人
日精診ジャー ナル 平成 21年 度 第 4回 理
=会
号
(1)平 成 19年 度 は、縫 首 が 2人 (40″ %)、
投身が 9人 (15。 3%)、 過量服薬が 7人 (H9%)、
鉄道が 5人 (&5%)、 練炭が 3人 (内 一人は過量
167
投稿
11.自 殺の場所
3
4
7
0
1
3
2
1
6
3
0
0
5
2
0
0
6 H 9 7
︲
・
5
1
8
投身
過量服薬
鉄道
練炭
表 4 主 たる疾病 別 にみた 自殺の手段
2
12
1
5
7
(59.2%)、
高い
建物が 8人 (鶴 %)、 鉄道線路が 9人 (87%)、 車
の中が 5人 (49%)、 公園が 2人 (19%)、 河川が
2人 (19%)、 そ の他 が 4人 (3.9%)、 不明が 12
I。 考察
6
0
0
2
0
2
3
0
5
2
2
2
2
0
2
0
2
23
および自宅の マンションが 61人
人 (H′ %)で あ った。
1
投身
5
過量服薬
2
鉄道
4
練炭
4
焼死
0
入水
2
刃物 類
1
笑気 ガスと C0 0
不明
2
合 計人数
45
平成 19年 度 と20年 度の合計 103人 では、自宅
1
1
3
7
13
81
これまでの警察白書によるとt全 国の自殺者の
約 7割 が男性であ り、それ も働 き盛 りの年齢 と く
に 50歳 代 に多 く、それ も、 うつ病 の未治療者が
多 く、うつ病の早期発見・早期治療が強調されて
い る。今回の調査結果 では、男女差については、
あきらかな差はみ とめ られないが、クリニ ックに
服薬併用 )、 刃物、入水、笑気 ガスと都市 ガス併
通院 している 自殺者の場合、女性の割合力f高 いこ
用が各 1人 、不明が 8人 (13.6%)で あ る。
とが、第下の特徴 である。 クリニ ック通院者 の男
平 成 20年 度 は、絵首が 16人 (36.4%)、 投 身 が
7人 (15.9%)、 過量服薬が 4人 (9%)、 鉄道が 4
itiふ T五
人 (9%)、 練炭が 4人 (9%)、 焼死が 2人
また、自殺者 の年齢 は 50歳 代 が
刃物が 2人
(4.5%)、
(4.5%)、
硫化水素が 1人 、
入水が 1人 、
不明が 3人 である。
平成 19,20年 度 103人 の 自殺 の手段 を表 3に 示
す。
(2)自 殺 の手段 と自殺 の連絡方法 との関係 (平
成 19年 度 と 20年 度 103人 分)を 表 3に 示す。
自殺 の連絡は警察 が主体である ことがわかる。
ゝ
亀
ち
色
盤ち
鰤 1輩
ク
わ
キ
1言 分
ているが、調査 の結果 は 、全体 では 40歳 代 が ビー
クで、全国平均 よ りやや低 い。男女別では、男 で
は40歳 代 力ζピー クとなるが 、女では20歳 代 が ピー
クで年代 とともに減少 の傾向が み ら る。
←
診断 については、 うつ病 を主 とする気分障害 が
103人 中 48人
(466%)で 半数近 くを占め、外来
全体 の割合に比例す るカマ
、統合失調症を主とする
れる力 投身自殺 については、ほぼ同数み られる。
精神病性障害 は 28人 (27.2%)で ある。クリニ ッ
クの外来 に占める統合失調症の割合は 5%以 下で
(3)主 たる疾患 で ある、うつ病 (45人 )、 統合
あるところ力'多 いこ とを考 えると、クリニ ックに
失調症 (23人 )、 人格障害 (13人 )の 自殺 の手段
を表 4に 示す。 うつ 病 では 25人 (55.6%)が 組
通院する統合失調症 の 自殺の リス クは高い と言え
首 を選び、それ以外 は分散の傾向がみ られる。統
合失調症 、人格障害 で も分散の傾向が み られる。
通院者の 自殺 の時期 については、最終受診 日か
ら 1週 間以内に ピー クカぐ
み られ、1カ 月以内に集
練炭、焼死な どの手段 が うつ病、統合失調症だけ
で人格障害にみ られな いのは意外 である。
中している。投薬 日数が最大 1カ 月となっている
こ とを考 えると、興味深 い結果となっているが、
家族か らの連絡は、警察からの連絡 の約 半数み ら
!、
る。
個 々の患者の投薬 日数 との関係 は確認で きてない
ことと、警察や家族 か らの連絡が一カ月を過 ぎる
168
日猛診ジヤーナル 平成 21年 度 第4口 理●会号
投稿
と減 つてい くC)か 、これらの点については今後 の
調査 の結果 を待 たねばならない。
身体疾患 の合 併の有無、同居者の有無、通院の
規則性 について はどうか。身体疾患を有する者は
全体 で も 136%〕 であ り、多い とは言えない。疾病
を音に して自殺 する人が多いことが知 られている
が、 クリニ ツク 通院者に関しては、身体疾患を苦
にして 自殺す る 人は多い とは言えない。同居者の
有無 については 、いる人の方が多 く、孤独 との関
係 はあまり強 く ない と言える。通院も規則的にな
書によれば、自宅が約半数みられるが、調査の結
果でもほぼ同様である。
泊殺の連絡 は警察が主で、
家族力`
それに次 ぐが、
連絡 のない自殺の存在が十分考え られるので、今
後、警察の情報提供が期待される。
V。 まとめ
今回の調査 では、自殺者の男女比 、年齢、自殺
の方法 について、全国の 自殺者 と異 なる結果が示
されてお り、通 院の不規則が病状悪化につなが り
自殺 の リスクカ三高まるということは言えない。 し
された。 つ ま り、男女差 はあまりみ られず、年齢
たがって、 これ らの要素は自殺の背景 としての意
味合 い は高 くな いと言える。自殺 の背景 として知
は変 わ りがない力 多彩 な方法 が とられているこ
'、
・
となどであ る。
られる、経済、 家庭、職業などの問題については
チ ェックされて ないので、今後、 これ らの要素 も
調査 の結果 は、警察や家族か らの連絡 とさらに
会員 の 自主的な報告か ら得 られたデ ー タに基づい
考慮 して調査をする必要がある。
てい るが、自殺が発生 したとき、か ならず しもク
通院期間につ いては、年単位の通院者が多 く、
精神科 にちゃん と通院 していれば自殺 のリスクは
リニ ックに連絡があ るわけではない ことは、自殺
回避 で きるような幻想がみられるが、その ことを
否定す る結果 となっている。
自殺 の手段 は、警察白書によると約 6割 が続首
であ り都市 ガスがそれに次ぐ。調査の結果でも織
首が約 4割 でもつとも多いが、
都市 ガスは少 なく、
投身、過量服薬、鉄道、練炭がつ ぎ、絵首以外に
も若 く、自殺 の手段 は続首が い ちばん多 いことに
の連絡 のデー タより明 らかである。今後、警察 と
.
の協力 により、 クリニ ック通院者 の 自殺 の実態 の
解明 に努め る必要がある8
端
1)警 察庁編集 :警 察白書平成 21年 版tぎ ょうせぃ、
2009.
2)厚 生労働省編集 :平 成20年 度版 自殺対策白書、
2009.
分散す る傾向が みられる。自殺の場所 は、警察白
日覇診ジャーナル 平成 21年 度 第 4回 理事会号
169
見落 とされ てきた疾 患
:境 界性パTソ ナリティ障害 (BPD)
第6爾 自殺 Hう つ病等対策プロジェクトチームなアリング
2010。 7◆ 27
林 直樹 都 立 松沢病院精神料
発表 の 課題
(1)診 療 の 過程 で 自殺 の リスクをどのように評
価するか 。
(2)処 方 の 際 にどの ような工 夫を行 っているか 。
(3)投 与 日数 についてどう考 えるか 。
(4)医 師 へ の普及方法等 、医療 の 質 の 向上に
向けた取組としてどの ような方法 が 考 えられ
るか 。
パーソナリティ障害 の増加
:松 沢病院夜間休 日精神科救急における変化
この四半世紀 で入院患者 の性 比が 2:1か ら
1:1へ と変化。
1986-1993(時 期 l)と 2004-2006(時 期 :│)の 入院
患者 の比較 か ら,性 比の変化 は,依 存症 の
減少 とPDの 増加 によつて説明されると考 えら
れた。
でOdds比 が 1.6倍 に。
自殺関連行動も時期 ‖
│ヮ
松沢病院夜間休 日精神科救急 における
患者数 の 年次変化
600
500
400
300
200
100
性 比 ・男 /女
国
“﹂
灯卜00R
.灯OOON
国
Щ・
・
︲
駆 せЮooN
堅 ←ゴooN
熙 ← ∞oo銀
運← 一oON
―― 入院患者数 … … 性 比
駆 ← ︻ooa
駆せoooい
駆叶oo8
赳←”08
m
Щ﹂
qいいOH
悩十oo2
回←Oo曾
駆←寸08
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鷹
彎血
TR00﹁
悩←Ho8
悩←oo8
駆←oo8
駆#”∞曾
駆■卜∞8
熙せ0∞8
熙斗綸∽含
入院人数
0
2つ の時 期 における性 比 1年 齢 の違 い
1986-1993.5
2004,2006
男女 比
1248:659
450:383
女 性 の 比率
35%
46%
平均 年齢
35.6
37.8
総入院数
1907
833
2つ の 時期 における診断
時期 Iで
の比 率
時期 Hで
の比 率
女性 の
比率
5.3%
30.3%
時期 のオ
ッズ 比 a
FO器 質性精神障害
4。
Fl物 質使用障害
19.2%
11.8%
18.5%
0。
F2非 器 質性 精神 病
69.8%
58.0%
F20統 合 失調 症
61.8%
F3気 分 障害
F4神 経症性障害
FR
性 別 のオ
ッズ 比 b
0.883
0.860
605・
0.301・
40.0%
0.598。
1.356C
47.3%
38.0%
0.575。
1.044
4.1%
8.4%
43.2%
1.827・
1.103
7.7%
5,3%
52.9%
0.610C
2.024C
0.3%
0_6%
70_0%
2_138
3_431
3.8%
12.7%
60.9%
3.680C
2.403・
乙.ソ わ
0.0わ
0′ .0カ
1.303
0.94b
F8発 達 障害
0.3%
1.0%
14.3%
4.441
0.209
F9小 児 。青年期の行動・情緒障害
0.4%
0.5%
27.3%
1.809
0.513
淑肇イト腺当Jヨ ナぉガ
F6oパ ー ソナ リテ ィ障害 (PD)
「
′剤 円 厚 青
1%
2つ の時期 における入院時 間題行動 の変化
Iで
質
撃
自殺 関連行動
の
のオ
で 性の
比
率 時期
雰
配
業 女
ッズ 比 a
36.5%
37.5%
31.0%
17.7%
26.5%
3.0%
2.8%
性別 のオ
ッズ比b
118
0.608d
48.0%
1.629d
l.617d
29。 6%
0.959
0。 685
0.926
0。 825
999
0.41ld
2.4%
2.4%
36.4%
結婚経 験 な し
67.5%
65.3%
31.6%
単身 生活
41.0%
35。 8%
31.1%
1。
0。
O.841
0。 61ld
松沢病院入院SB患 者 の 実態
(林 ら(2009')}
‖
で20カ 月間 に入院した155人 の患者を
評価 。BPDが 56%。
SCID―
│′
自己切傷 41%,OD 32%フ 首絞め 15%。
BPDに 特 に 多 い の が OD{37%)。 BPDの OD経 験
率 は 76%。
フオロ∵アップ研究
BPDの SB再 発までの期間べ の影響
Survivai Fundons
﹃[
出
“> 一
”﹄コの E 5 0
一
齢
∞
,
印
B
S
S
Y
¨
A
,
D
,
∞
∞
,
フオローアップにおける(自 殺
● ●
107人 をフォロT。 2年 後 には94人
最初 の 2年 間 に5人 自殺 。Sc 3人 (不 審 死 1人 ),
BPD 2人 。
つぎの2年 間にさらにBPD.4人 が 自殺。
Scの 自殺者は全員が 男性。
BPDの 自殺者 は男女 同数。35歳 以下。
小規模 のフォロTア ップ研究であるが ,深刻
な事態であると考えぎるを得ない。
若者 の 自殺率低減 のためにBPD
対策 は不可 欠
重要なのは,治 療・対応 の普及可能性。安価
で、短 いトレニニング期間で展開可能な治
療・対応 の普及が 求 められ ている。
弁証法的行動療法 (DBT),メ ンタライゼーショ
ンベイスト治療{MB丁 )な ど効果が実証され て
いるもの がある。
しかし,重 厚壮大な精神療法 は、少なくともわ
が 国では高嶺 の花。
¬
BPD治 療「対応 の 変革 が 必要
課題は効率的な治療とスムーズな治療導入
の 2つ 。
広 い範 囲 の 現場 で実践可能な対策 が 求 めら
れている。
チームによる医療・対応 のセッティングが好ま
しい。当然 ,多 職種 チTム となる。
英国 の取り組み :NICEの ガイドライン{2009)
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