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設計事例
携帯ゲーム機(PSP)
にも使われているフルカラーTFT液晶を制御する
FRマイコン基板を使った
ディジタル・フォト・フレームの
設計事例
ハードウェア編
飯島 幸太
関連データ
本誌2008年5月号付属FRマイコン基板を使用しディジタル・フォト・フレームを製作した.480×272ピクセル表示が
可能なフルカラーTFT液晶の制御を,FRマイコンだけで行っている.また,汎用入出力ポートを利用し,画像表示してい
る.今回はハードウェアを,次回はソフトウェアを解説する.
(編集部)
本誌 2008 年 5 月号付属の FR60 基板を用いた応用例と
ケーションで行います.もちろん FR60 の特徴である USB
して,24 ビット・フルカラー・ディジタル・フォト・フ
ターゲットの通信機能を利用し,画像データを DPF に転
レーム(Digital Photo Frame.以降 DPF)を製作しました
送しています.家族・恋人・ペットなど,お気に入りの画
いや
(写真 1)
.携帯ゲーム機にも採用されている横 480 ×縦 272
像で癒されてください(笑).
ピクセルの表示が可能な,フルカラー TFT(Thin Film
全ソース・実行ファイル一式は,本誌の Web サイト
Transistor)液晶を使用しています.本来ならば,液晶ド
(http://www.cqpub.co.jp/interface/)からダウン
ライブ用の IC や FPGA(Field Programmable Gate Array)
ロード可能です.また,ダウンロード・サイトでシステム
を利用してドライブするのですが,液晶の制御方法の勉強
の動画も公開するので,興味のある方は液晶表示を確認し
も兼ねて,マイコンのみで制御することにしました.FR60
てみてください.
には,OSDC(On Screen Display Control)機能があります
が,表現力は 512 色です.簡単なアニメーションやメール
1.システムの概要
などの表示には十分ですが,フルカラー画像は表示させら
れません.そのため,汎用入出力ポート(GPIO : General
Purpose Input/Output)を利用して表示させました.
表 1 に,ディジタル・フォト・フレームの仕様を示しま
す.内蔵フラッシュ ROM(以降フラッシュ)に書き込まれ
システム構成を図 1 に示します.DPF 本体と,画像を
た 24 ビット・フルカラー画像を液晶へ転送注 1 し,画像を
書き換え可能な Windows アプリケーションの二つで構成
表示するのが一番の仕事です.保存された 2 画像(A 面・
されています.DPF のフラッシュ ROM はフルカラー・
B 面)の表示切り替えは,物理的な手動スイッチで切り替
データを 2 画像分保持でき,書き換えを Windows アプリ
注 1 :液晶ドライバを利用していないので,表示し続けるためには,転送し
続ける必要がある.
DPFアプリケーション
Digital Photo Frame
USBケーブル
Windowsパソコン
写真 1 製作した Digital Photo Frame
図 1 システム構成図
アクリル・フレームを利用し,見た目も意識した.写真内の映像は
イラストだが,24 ビット・フルカラー表示可能なので,デジタル・
カメラで撮影したお気に入り画像の表示も可能.
Digital Photo Frame は,Windows パソコンとの USB 接続を想定して開発した.専用アプリケーションを
介し,仮想 COM ポートもしくは USB 経由での画像の書き換えが可能.もちろん,DPF アプリケーション
なしでも DPF 本体の動作が可能.
Sept. 2008
KEYWORD ―― FR60 基板,TFT 液晶,汎用入出力ポート,USB,フラッシュ ROM
139
えます.A 面は,フラッシュの書き換え手順が公開されて
つの領域(フラッシュ 1 とフラッシュ 2)に分かれています.
いるので,USB のバルク通信,もしくは UART 通信機能
画像サイズが 480 × 272 × 24 ビット(RGB 各 8 ビット)
を利用して書き換えます.
=382.5K バイトであることから,それらに別画像を格納す
表 2 に,DPF アプリケーション(以降 DPF アプリ)の仕
る十分な領域があります.フラッシュ 1(A 面)は,DPF ア
様を示します.汎用 USB ドライバを経由して書き換え指
プリからの指示で書き換えを行い,フラッシュ 2(B 面)は,
示を行います.お気に入りの画像が格納されたフォルダと
フラッシュ ROM プログラマで書き換えます注 2.DPF アプ
時間を指定しておけば,スライドショーで表示させること
リに,フラッシュ ROM プログラマで書き込むことができ
もできます.まるで RAM のようにフラッシュ ROM を頻
る B 面用のファイル生成機能を実装したので,間接的に書
繁に書き換えることになりますが,付属 FR マイコンのフ
き換えが可能です.
ラッシュは,1 万回程度書き換え(実際には消去)が行える
ので,このような使い方も可能です.1 日 8 時間の利用で
2.ハードウェアの設計
30 分に 1 回書き換えと仮定すると,約 20 ヵ月利用できま
す(コラム 1 参照)
.
●(割と)簡単な回路で表示できる?
図 2 に,フラッシュ配置イメージを示します.マイコン
には,合計 1M バイトのフラッシュが搭載されており,二
図 3 は,システム・ブロック図です.
『付属 FR60 基板』
,
『DC-DC コンバータ』,『TFT 液晶』が主な部品です.実
は,それほど多くの部品を必要とせずに表示できました.
端子割り当てを表 3 に,回路図を図 4 に示します.
注 2 :フラッシュ 1 は書き換え方法が公開されているので変更できるが,フ
ラッシュ 2 は公開されていないので,提供ツールによる書き換えになる.
表1
Digital Photo Frame の仕様
項 目
電源
表示領域サイズ
保存可能画像枚数
通信方式
リフレッシュ・レート
内 容
USB バス・パワー駆動
横 480 ピクセル×縦 272 ピクセル
2 枚(スイッチによる A/B 面切り替え)
USB : 12Mbps / COM ポート: 57,600bps
約 6 フレーム / 秒
備 考
5V 単一電源
−
A 面は直接書き換え可能
−
−
表2
DPF アプリケーションの仕様
項 目
開発環境
動作環境
転送可能ファイル形式
画像転送
画像ファイル作成
ライブラリ
内 容
Visual Studio 2008 Express Edition
.Net Framework 2.0
JPEG,BMP
フラッシュ1へ画像転送
B 面用モトローラ S ファイル生成
汎用 USB ドライバと DLL
備 考
VC++
Windows XP を推奨
−
USB で約 10 秒(消去含む)
フラッシュ ROM プログラマ専用
Uusbd.sys,Uusbd.dll
コラム 1
なぜフラッシュ ROM を利用するのか?
画像表示目的には,本来なら高速に読み書きできる RAM
ト× 2 領域)と,1 チップ・マイコンとしては比較的大容量
を利用するべきです.内蔵 RAM は 16K バイトと,VRAM と
だったこと,また書き換え用の手順が公開されていたことか
しては容量が足りません.次に,外部 RAM の追加を検討し
ら,今回の仕様に落ち着きました.もちろん,書き換え可能
ましたが,MB91310 シリーズは外部バスが MPU 内部で閉じ
回数が 1 万回という,比較的回数の多い製品だったのも理由
ているため追加できませんでした.
の一つです.
しかし,フラッシュ ROM の容量が 1M バイト(512K バイ
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Sept. 2008
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