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電力ロスの低減を徹底的に追求し エネルギー効率向上に貢献

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電力ロスの低減を徹底的に追求し エネルギー効率向上に貢献
NIKKEI ELECTRONICS
Summer
EXPRESS
2012
日経エレクトロニクス AD Special
日経エレクトロニクス エクスプレス
電力ロスの低減を徹底的に追求し
エネルギー効率向上に貢献
消費者の目に触れやすい機器の消費電力を抑えることだけが省エネではない。発電所で電力
が作られてから、送電網や電源回路を経由し、最終的に消費者が電気製品を動作させるまで
の間の電力ロスの低減も、省エネに与える効果は大きい。
電力が作られてから使われるまで一
貫した省エネ・ソリューションを提供できるのがインフィニオン テクノロジーズだ。
同社はパ
ワー半導体の分野で培ってきた技術を基に、エネルギー効率の向上を追求してきた。
未来に向
けた積極的な開発投資も推し進め、SiC(Silicon Carbide)などより高効率のパワー半導体の
実用化も進めている。
石油など限りある化石エネルギーの有効
ギーの普及促進にもつながることだろう。
理するために、さらに多くの電力を消費す
資を続けている。パワー半導体の将来像を
利用と、CO2 排出による地球温暖化の防止
エネルギー効率の向上が求められるのは、
るムダが行われているのだ。
具体的に見据え、全社で近年巨額の研究開
の観点から、エネルギー効率の向上は全世
エネルギー源から電力を作り出す発電時だ
電力の損失が小さければ、それだけ送る
発投資を行っている。
界が一丸となって取り組むべき課題となっ
けではない。発電所で作られた電気が、複
側の電力は小さく済むうえに、余計な熱の
その積極的な投資から生まれた技術の
ている。
雑な送電設備を経由して送られ、最終的に
発生も抑えられる。その損失低減のカギを
一 つが、同 社 が 2011 年 10 月 に 実 現 した
エネルギー問題は、太陽光や風力のよう
消費者が使う電気機器がユーザーに利便性
握るのが機器に組み込む電子デバイスであ
300mm 薄型ウエーハ上にパワー半導体を
な、化石エネルギーに変わる再生可能エネ
を与えるまでの過程での損失も看過できな
り、そこに注力しているのがインフィニオ
形成する技術である。電力損失を極限まで
ルギーの利用拡大を中心に語られることが
いほど大きい。例えば、60Wの電力を消費
ンなのだ。
抑えるためには、ウエーハを薄くすること
多い。もちろんこうした新エネルギーの開
する電子機器を動かすためには、220W 相
は不可欠である。
そして、製造コストを低減
発は必要不可欠であり、すぐに取り組むべ
当のエネルギー源が必要になる。発電する
研究開発への大規模な投資
き課題だ。しかし、再生可能エネルギーを、
時点で130W 分が、送電や電源回路などの
車載半導体やチップカードなどの分野で
ばならない。ところが、何の工夫もなくこの
既存のエネルギー源にすぐに置き換えるこ
各種変換で31Wも損失してしまうのだ。こ
世界トップクラスのインフィニオンが、事
2つを同時に行うと、ウエーハが反り返って
とはできない。天候などによって発電量が
のように、送電線の抵抗や、AC を DC に変
業の柱の一つとして掲げているのが、エネ
しまい製造できない。インフィニオンは、薄
変動し、安定供給が難しい再生可能エネル
換する際など、様々な要因による損失があ
ルギー効率向上のためのソリューションと
型化と大型化を同時に実現できる技術を確
ギーの欠点を補うために新たな技術開発が
る。このため、エネルギー効率の向上には、
して、民生機器から産業機器まで幅広い分
立した。
必要になり、加えて莫大な新規設備投資が
高度な技術が必要になる。
野に展開しているパワー半導体である。
必要になるからだ。このため、既存エネル
損失による発熱は様々な弊害をもたらす。
インフィニオンがエネルギー効率向上の
組織をアプリケーション単位に再編
ギーの利用効率を向上し、最大限に有効利
例えば、サーバなど熱に弱い電子機器は、
分野で評価を得てきた理由の一つが、パワー
さらに同社は、次世代のパワー半導体の
用できるようにするための技術も同時に必
電力を消費する時の副産物である熱を発散
半導体の分野で長年積み重ねてきた実績だ。
材料として期待の大きいSiCの活用も、既
要になる。こうした技術は、再生可能エネ
させるために冷却装置を電気で動かす必要
同社は、産業機器や電車、建機など大型の
に約 10 年前から続けている。SiCはパワー
ルギーの導入効果も高めるため、新エネル
がある。つまり、損失した電力を的確に処
機器や輸送機器の電力制御システムの分野
半導体のエネルギー効率向上の切り札とさ
において、世界中の先進的で事業規模が大
れる材料で、高温の環境にも強い。冷却機
きい顧客を相手にしてデバイスを供給して
構の単純化も可能になる。より高効率のパ
きた。電子機器のような弱電系機器に向け
ワー半導体を求める顧客へのニーズ拡大に
たデバイスを供給するメーカーが多い中、
備えて、同社はSiCの分野でも現在の4イン
インフィニオンが実績を積んできた分野は
チから今後は6インチへ、ウエーハの大口径
異彩を放っている。しかも、こうした産業機
を進めていく方針という。
器や建機の分野は、開発している機器が多
エネルギー効率向上を進めたい顧客を支
彩で、エネルギーの利用効率に関する要求
援するため、同社は組織の再編も行ってい
が厳しい分野でもある。同社は、ここで培っ
る。2012 年 1 月、産業用パワー半導体事業
たエネルギー効率向上技術やノウハウを、
を展開する事業本部を高エネルギー効率の
家電や情報機器などの分野から発電や送配
電源分野と産業用アプリケーションの電力
電などインフラ部分まで展開している。そ
駆動分野に分割。それぞれのチームも従来
の結果、エネルギーの上流から下流まで一
のデバイス単位からアプリケーション単位
貫したエネルギー効率向上ソリューション
に組み直し、顧客のニーズに最適化できる
を提供できる、稀有なデバイス・メーカー
体制を整えている。
となっている。
エネルギー効率向上は、もはやその必要
また、現在の半導体業界では、市場が不
性について論じられる時代は過ぎており、
安定なデジタル機器向けデバイスを供給す
ユーザーの関心は具体的にどうすればどの
るメーカーを中心に、1 社では賄い切れな
程度実現するかに移っている。パワー半導
いほど巨額な設備投資や開発投資が必要
体分野で長年の実績を持つとともに、積極
になり、次世代技術に向けた投資が困難に
的な開発投資を続けるインフィニオンの動
なっている。これに対しインフィニオンは、
向からは、そうした関心に対する明確な回
安定した事業実績と高度な技術を持つ人材
答を得ることができるだろう。
●エネルギーの損失は驚くほど大きい
電力の創出
石炭での
火力発電所
220W
(ca.value)
電力の伝送と分配
交流伝送
電力の消費(ノートパソコンの例)
電力の分配
AC/DC
DC/DC
電源
コンバータ
電源回路
60W
90Wの電力供給
大部分が
熱による損失
プロセッサ
1.4W
<1%
3.6W
∼2%
130W
(∼60%)
13W
∼6%
13W
∼6%
メモリー
ディスプレイ
など
損失 : 31W
Sources:Infineon,www.CO2-Emissionen-vergleichen.de
CO2 emission calculated for 24 hours at 100% load assuming 1000g CO2/kWh for coal power plant
●パワー半導体に向けた300mm 薄型ウエーハ
するためには、大口径化を推し進めなけれ
を背景にして、次世代技術への積極的な投
日経エレクトロニクス AD Special/日経エレクトロニクス2012 年 Summer ⓒ日経 BP 社 2012
1
編集・発行:日経BP社 〒108-8646 東京都港区白金1-17-3
【太陽光発電/蓄電システム】
高耐圧とスイッチング高速化を
SiCの活用で同時に追求
電力不安が高まる中、太陽光発電システムや蓄電システムには大きな期待が寄せられてい
る。
こうしたシステムのインバータには、大電力をカバーできるIGBTが使われている。
しか
し、エネルギー効率向上に不可欠なオン抵抗の低減には限度がある。
そこでインフィニオン
は、SiCを使ったジャンクションFETを開発、低導通損とスイッチング高速化を両立させた。
導体が求められている。
加えて太陽光のような再生可能エネル
ギーは、発電量が安定しないため、バッテ
リーと組み合わせて供給を平滑化すること
が理想とされる。そのバッテリーへの蓄電
スクリートの北爪昇氏)
。そのため、オン抵
そのオン抵抗の小ささは、具体的な数字
時に電力が熱に変わってしまうことによる
抗低減でエネルギー効率向上に大きな効果
にも表れている。オン抵抗低減が進められ
ロスを抑えるためにも、やはりオン抵抗の
を発揮できるのが特徴だ。
てきたMOSFETでも、900V 耐圧でさえ、オ
低いデバイスへの期待が大きい。
1200Vで35mΩを計画
ン抵抗は 100m Ωだ。これに対し 2013 年
エネルギー効率向上のニーズに応えるため
1200V のような 高 耐 圧 は MOSFET では
JFET は、
「35m Ωの製品をラインナップす
に、インフィニオンは5 月初め、SiCを利用
カバーできないため、通常は IGBT が使わ
る計画」
(北爪氏)という。
したジャンクション FET「CoolSiC 1200V
れる領域だが、IGBTはスイッチング速度で
太陽光発電やバッテリーは、今後も大電
再生可能エネルギーの固定価格買取制度
SiC JFET」ファミリを発表した。
同社は従来、
MOSFETに劣る。これに対しSiCでは、IGBT
力化が進むことは間違いないが、それを扱
がスタートし、太陽光発電設備の導入に拍
太陽光発電システムなどのインバータには、
が得意とする耐圧と、MOSFETが得意とす
うデバイスに制限があったり、電力ロスが
車がかかっている。家庭では3.3kwクラス、
SiCダイオードやIGBTやMOSFETを提供し
るスイッチング速度の両方を追求すること
大きかったりするようでは、大電力化の恩
工場では10kwクラスという大きな電力の
てきたが、ジャンクションFETでSiCを用い
ができる。大電力化が進む太陽光発電やバッ
恵にあずかることはできない。
インフィニオ
太陽光発電システムが使われるようになっ
た今回のデバイスは「スイッチングの“切れ”
テリーでも、スイッチングによる電力ロス
ンの取り組みは、太陽光発電やバッテリー
た今、こうした用途のインバータにもオン
が良い」
(パワーマネジメント&マルチマー
をIGBTやMOSFET 以上に抑えることができ
の技術の発展を、現実の利用シーンにより
抵抗が小さく、電力ロスの小さいパワー半
ケット事業本部パワーマネジメント&ディ
るわけだ。
適用しやすくするものと言えそうだ。
こうした太陽光発電や蓄電システムでの
● CoolSiC 1200V
【スマートメーター】
上半期から出荷予定のCoolSiC 1200V SiC
だ。しかしインフィニオンは、本
実は重要なセキュリティ機能
必要な機能をSoCで一体化
格的なスマートメーターの需要
エネルギーの生産や消費を地域レベルで最適化する「スマートコミュニティ」
。その実現の
カギを握るのは、エネルギー消費量をリアルタイムで収集するスマートメーターの普及だ。
消費電力の計測以外にもさまざまな機能が求められるスマートメータの開発に、インフィ
ニオンはSoCで一体化したソリューションを提供する。
ターの迅速な開発を支援してい
拡大を見越し、セキュリティの
機能を組み込んだSoCを提供す
ることによって、スマートメー
る。
同 社 のスマートメーター 用
SoC は、AES128/256 暗号化の
エネルギーを相互に融通し合うスマート
光発電システムなどで作った電力を電力会
機能をハードウエアで搭載。高
コミュニティは、スマートメーターの存在
社に売ることは、電力という商品を電力網
度で高速なセキュリティ機能を
抜きには実現し得ない。電力の需給状況に
で流通させていることを意味する。その商
実現しているのが特徴だ。
応じて消費電力をリアルタイムで収集し、
品価値を維持するためには、流通過程での
スマートメーターのような機器認証技術
SoCのセキュリティ機能で安全な通信の実
それを需給の平滑化に生かす必要があるた
電力の不正利用などを防ぐセキュリティの
の基盤になっているのが、同社の機器認証
現に取り組んでいる。
めだ。電力メーターの機能を拡張し、電力
仕組みが必要だ」
(パワーマネージメント&
用 IC「ORIGA」
。例えばバッテリーに搭載し、
量だけでなく時間管理や通信の機能を持た
マルチマーケット事業本部スマートグリッ
装着されたバッテリーが正規品であること
ガスメータへの適用も視野に
せなければならない。スマートメーターはそ
ド・コンピュータ&周辺機器のンー プーン
を認証することで、粗悪品装着による本体
同社のスマートメーター用 SoCはこの他
れら機能を提供するものとして、世界中の
フェイ ボブ氏)
の損傷防止などを可能にするICだ。シング
にも、16ビットのA/Dコンバータや、時間
国や地域で導入が始まっている。
スマートメーターのセキュリティを確保
ル・ワイヤ・インタフェースで、ID 確認や
帯別の消費電力収集を行うためのリアルタ
しかし実際の運用を考えると、それだけ
する手法としては、マイコンに周辺回路と
認証が可能である。こういった高度なセキュ
イムクロック、10 年間のバッテリー駆動を
では機能が足りない。
「例えば家庭の太陽
ソフトウエアを組み合わせる手法が一般的
リティ技術を生かしたスマートメーター用
可能にする電力制御などの機能を備える。
●ORIGA SLE 95050の認証プロセス
シングル・ワイヤ・インタフェースにてカスケード接続/各ノードのID確認や認証操作が可能
ホスト・システム
ホストCPU
乱数
ECC
通信線
公開
確認
送信データ
また電力用のスマートメーターだ
●スマートメーター向けSoC「UMF11xO」の典型的な応用例
シングルワイヤによる認証方法
AC
∼
電圧センサー
周辺機器
(バッテリなど)
ORIGA SLE 95050
ECC
秘密
受信データ
バッテリ・セル
認証プロセス
(1)ホスト:乱数を発生、
公開 とECCアルゴリズムに基づき送信データを生成
(2)ORIGA:秘密 、
ECCアルゴリズムに基づき返信データを生成
(3)ホスト:データを比較し認証処理
負荷
ADC
ディスプレイ・
コントローラ
UMF11x0
電流センサー
ADC
電流センサー
ユーザー・
ADC アプリケーション
汎用アナログ
ADC
電源回路
PMU
バックアップ用
バッテリ
2
ISO7816
ISO7816
電力の計測
データの蓄積
セキュリティ
RTC GPIO/PWM
I2C
UART
SPI/UART
SPI/UART
けでなく、ガス用のスマートメー
安全性が保証
されたデバイス
/スマートカード
ハードウエア・
セキュリティ・
モジュール
不正防止対策
機能/EEPROM
ターへの展開も視野に入れてい
るという。
スマートメーターは国家レベル
で普及の必要性が求められてい
るうえに、導入規模が大きく、市
場として有望だが、スマートメー
光インタフェース
ターを前提としたシステムの最
NANモジュール
適化はそれほど進んでいない。イ
HANモジュール
ンフィニオンはその最適化をいち
早く実行に移しているのだ。
【デジタル機器】
スーパージャンクション構造のMOSFETの
効率改善はまだまだ可能
SiCでのブレークスルーにも備える
提供だ。従来型のスタンダードな MOSFET
テレビやパソコンなどのコンシューマ向けデジタル機器は、一つひとつの消費電力こそ低
いが家庭の中に置かれる機器の数が多いため、そのスイッチング電源の機能向上は全体の
エネルギー効率向上に大きく寄与する。インフィニオンは大衆的なデジタル機器でも継続
的な機能改善を続けている。同時に将来を見据えて、SiCの活用も想定している。
てスイッチングロスを極限まで追い込んで
に比べて、オン抵抗の低さやスイッチン
グによる電力ロスの低減に効果がある
MOSFETである。
「パラメータの調整によっ
いくことができる」
(パワーマネジメント&
マルチマーケット事業本部パワーマネジメ
ント&ディスクリートの北爪昇氏)という。
業界ではここ数年、電源回路にスイッチ
ル機器は特にコスト要求の厳しいアプリ
ング特性に優れるSiCショットキー・バリア・
ケーションとされる。スイッチング電源の
ダイオードを活用するメーカーが増えてい
価格差縮まり現実的に
くなっている。熱に強いSiCならその不安は
機能向上で変換効率が90 数%にまで達し
一方、大きなブレークスルーを得るため
SiCを使ったダイオードは、Siのダイオー
る。インフィニオンは約 10 年前からいち早
ている現在、こうしたデジタル機器用スイッ
に、SiCの活用の検討も始まっている。
ドに比べてかなり高価な点がネックだった。
く量産化に着手。特性を作り込みながら発
チング電源の発展の方向性は、もはやコス
デバイスにSiCを使うことの大きなメリッ
ここにきて、その価格差はかなり縮まって
展を続け、現在は既に第 5 世代品を開発し
トしか残されていないようにも見える。
トは、熱に強いこと。デバイスの安定稼働を
きた。コスト重視のデジタル機器でもSiCの
ている。
しかし、エネルギー効率向上に対する意
維持するためには、効果的な放熱の仕組み
活用が現実化する時代が必ず到来する。こ
スイッチング電源が使われるさまざまな
識の高まりの中、インフィニオンは機能の
が必要になる。しかし、小型軽量化で高集
うした将来に備えて、インフィニオンは着々
機器の中でも、コンシューマ向けのデジタ
追求を続けている。その具体策の一つが、
積化が進むデジタル機器では、それが難し
と準備を進めているわけだ。
【照明】
かなり解消される。
同社は LED 分野では、こうした周辺
普及段階に入ったLED 照明には
ソリューションをパッケージで提供
機能を含めたワンパッケージ化のニー
省電力型のLED 照明は初期の導入期を過ぎ、本格的な普及段階に入ってきた。
それに伴い、
LED照明に求められる要素も変わりつつある。
インフィニオンはそのニーズの変化にいち早
く対応。
デバイスレベルで実現すべきポイントにフォーカスした品揃えを進めている。
その
ポイントとは「コントローラを含めたパッケージでの提供」だ。
ワーマネジメント&マルチマーケット
ズに、今後シフトとしていく方針だ。ワ
ンパッケージ化により、
「一つのリファ
レンスモデルで開発を進められる」
(パ
事業本部パワーマネジメント&ディス
クリートの中村光夫氏)ようになるた
め、開発期間の短縮化と、それによるコ
LED 照明も、インフィニオンが注力して
LED 照明が一般的になりつつある現在、
スト低減を一層追求できるとしている。
いため、普通のダイオードと比べた時の価
きたアプリケーションの一つだ。他のアプ
デバイスには単にLED 照明を点灯させる以
格差がそれほど大きくない点も、SiCを採用
リケーションと違い、LED 照明は必要とす
上の機能実現が求められている。
例えば明る
SiC採用で熱の問題解消
る電流が小さく、エネルギー効率向上のた
さをコントロールする調光機能は、LED照明
またSiCの採用も今後拡大していく方針
LED 照明はデバイスをカバーで完全に
めにオン抵抗をギリギリまで切り詰める意
の特徴の一つと言えるが、この機能を含め
だ。LED 照明の寿命を大きく左右するのは
覆ってしまうため、熱が照明内部にこもり
義は薄い。その代わり、特に家庭用はコス
て一つのパッケージにして提供することな
熱であり、現在は熱をどうやって逃がすか
やすく、放熱性を高めることが意外と難し
ト面の要求が厳しく、一定の性能を維持し
どだ。実際、パワーMOSFETと制御 ICを一体
に開発の焦点があたっている。これに対し
い。しかしデバイス一つ置き換えるだけで
ながら、リーズナブルなコストを実現でき
にした「CoolSET」は、照明専用ICとしても、
効率に優れるSiCの採用は、熱の発生を抑
済むなら、これほど簡単な課題解決方法は
るようなデバイスを提供する必要がある。
製品として発売している。
えることができる。LED 照明は電流が小さ
ない。
【白物家電】
しやすい理由である。
Diode
高いプロセス技術が可能にした
1チップ化と低コスト化
IGBT
Anode
Emitter
RC-IGBT
Gate
+
高い電圧を必要とする機器は、産業機器だけではない。エアコンや電子レンジなどのように、
家庭用の白物家電にも高い電圧を扱う機器は少なくない。産業機器以上に低コスト化が必
要な家電機器への搭載を想定し、インフィニオンはIGBTとダイオードの2チップを1チッ
プ化。
性能を維持しながらコスト低減を実現している。
●リバース・コン
ダクティングに
よって複数デバ
イスを1チップ化
Cathode
Emitter
Gate
=
Collector
Collector
チップ化を可能にしたのが、同社の高いプ
「TrenchStop」はその一つ。電流密度を高
一般家庭でも、エネルギー効率向上のた
炊飯器などは、1000V 級の高い電圧を必要
ロセス技術と、それを武器に確立した「リ
めるのに効果があり、この確立にも同社の
めの投資を惜しまない傾向が強まってる。
とする。使用するデバイスはIGBTが前提に
バース・コンダクティング」技術だ。
高いプロセス技術が背景にある。
とは言え、やはり家電、特に白物家電はコ
なる。IGBTを使いながら低コスト化をどう
リバース・コンダクティングによる1チッ
電子レンジやプリンタなどIHを使う機器
ストに対する要求は依然厳しい。コストと
やって進めるか。そこでインフィニオンが
プ化は、IGBTにダイオードを埋め込む形で
用のIGBTでは、
「ソフトスイッチング」によ
バランスをとりながら性能を追求していく
着目したのが、IGBTの素子とその周辺に配
実現している。両者で共用可能な部分を共
る省電力化も図られている。電力ロスを防
ことが求められている。
置されるダイオードの一体化だ。
用化しているのが1チップ化できた理由だ
ぐために、電圧や電流がゼロになるタイミ
家電の中でもエアコンや電子レンジ、IH
複数のチップを 1 つにすることにより、
が、正確に埋め込むためには高度なプロセ
ングでスイッチを行う技術だ。
チップサイズを低減し低コストをはかる
ス技術が必要だ。
それを実現できたのは、同
いかに高効率化が必要とは言え、コスト
ことは、特段珍しい手法ではない。しかし
社が培ってきた技術の効果にほかならない。
を度外視して技術開発を進めることは、特
IGBTとダイオードの一体化は「理論的に
省電力化のしかけも盛り込む
に白物家電の場合は非現実的。コスト要求
現はかなり難しいことと見られていまし
1 チップ 化 した IGBT には、省 電 力 化 の
た解決策を用意できるところに、多様な技
た」
(インダストリアルパワーコントロー
ためのしかけも 設 けられている。同 社 の
術を選択肢として持つインフィニオンの優
ル事業本部の藤森正然氏)
。その難しい 1
IGBT で 採 用 さ れ て い る ゲ ー ト 作 成 技 術
位性がある。
は可能なことは分かっていましたが、実
3
の強いアプリケーションには、それに合っ
【鉄道】
活用しながら鉄道を安定的に運行すること
パッケージ技術の高度化を図り
モジュールレベルの付加価値を追求
を支援している。
不具合少ないパッケージ技術
同社がこの分野で実績を上げてきた理
日本の高度な社会インフラの中でも、特に鉄道技術の正確性や安全性は世界的に評価が
高い。このため、新たな輸出産業として有望視されている。インフィニオンは、古くから鉄
道システム向けデバイスの分野で大きな実績を積み重ねている。
日本の高度な鉄道技術と、
同社が有する高度なパッケージング技術の相乗効果が期待できる。
由の一つは、素子だけでなくパッケージで
もバリエーションを広げてきた点だ。例え
ばはんだフリーで圧接するパッケージング
技術「PressFIT」は、製造プロセスの簡素化
経済発展を続ける新興国では、人口増と
題解決に加えて、経営面では新たな市場獲
だけでなく、素子がフレームで確実に保護
都市化の進展で、交通渋滞は深刻化する一
得にもつながるとあって、鉄道システムの
されるため、クラックなどによる不具合の
方。都市間の移動ニーズも急拡大しており、
輸出に積極的だ。
発生率の低下にも効果があるとされる。同
Interface Module)を採用したモジュール
それを解消する仕組みとして、先進国の成
しかし新興国は電力網が先進国に比べる
社はこのPressFITの導入を、業界に先駆け
を発売した。TIMは同社が専門メーカーに
熟した鉄道システムへの関心が高まってい
と依然不安定など、日本国内と違う事情が
る形でいち早く進めてきた。
「素子だけで
資金協力して開発した素材で、放熱性をさ
る。先進国のメーカーも、新興国の社会問
ある。日本の先進的なシステムを活用しな
なく、パッケージングの技術も一緒に提供
らに追求している。
がらも、新興国の市場に最適化しな
してきた」
(インダストリアルパワーコント
鉄道のような産業機器の場合、顧客が導
くてはならない。
ロール事業本部インダストリアルパワー・
入するパワー半導体はモジュール単位の場
インフィニオンはこの鉄道システ
BIPのガガン・ジェイン氏)ことが、モジュー
合が多い。つまり素子ではなくモジュール
ムの分野で、グローバルレベルで実
ルレベルでの高い評価につながっている。
レベルで、どれだけの付加価値を提供でき
績を持つ。高電圧高電流に対応した
モジュールの点では、新たな熱対策にも
るかが重要であり、同社のパワー半導体が
パワー半導体で、数MWクラスのモー
積極的だ。2011 年末には、ヒートシンクの
この分野で選ばれている理由もそこにある
タを効率的に制御し、電力を有効に
接合材料に熱伝導に優れた TIM(Thermal
ようだ。
● PressFITテクノロジーの構造
日本企業が持つ高度な技術力を
世界市場を攻略できる商品につなげる
市場として、製品の開発・生産拠点としての新興国の存在感が大きくなってきた。こうした中、世界市場で競争力のある
製品をいかにして開発したらよいのかが、さまざまな分野の日本企業に共通した課題となっている。
日本の技術はまだ強い
なれると考えております」と語っている。
かつて世界市場を席巻した日本製のテレ
は、日本市場ではセントラル・インバータ
ビは、
「厳しい価格競争の中で、もはや新興
による集中制御が一般的である。これに対
国で生産された製品に主役の座を奪われた」
し、世界市場では個別制御のマイクロイン
と指摘する声も聞かれるようになった。し
バータが好まれている。日本企業は、その違
かし、インフィニオン テクノロジーズ ジャ
いが世界市場攻略の鍵を握っていることを
パンで、主にインダストリアル・民生機器
認識しながらも、具体的な対応策に苦心し
向けアプリケーションを担当するパワーマ
ている。世界中の電機メーカーを顧客に抱
ネジメント&マルチマーケット事業本部 えるインフィニオンならば、パワー半導体
事業本部長の入山鋭士氏は、
「決して日本
の提供だけではなく、世界市場のトレンド
の電機メーカーの技術力が弱まったとは
を踏まえた商品開発を支援できるだろう。
思っていません。特にデジタルカメラやコ
日本の高度なインフラを世界に
ピー機、バッテリーなどの分野では依然強
例えば太陽光発電システムのインバータ
インフィニオン テクノロジーズ ジャパン パワーマネ
ジメント&マルチマーケット事業本部 事業本部長の
入山鋭士氏(左)と同インダストリアルパワーコントロー
ル事業本部 事業本部長の伊藤靖彦氏(右)
い力を発揮しています。日本企業は世界市
また新興国では、鉄道などのインフラや
靖彦氏は、こうした大規模な応用開発に向
同社には、鉄道などの分野で培われてき
場の攻略に必要な技術力は十分に保有して
メガソーラーのような大規模太陽光発電シ
けて、
「世界市場で事業を展開するインフィ
た産業機器用パワー半導体の高度なノウハ
います。
不足があるとすれば、世界の多様な
ステムの需要が、今後急拡大していく見込
ニオンのネットワークを生かして集めた
ウがある。SiC のような新材料の利用にも
市場のニーズにキメ細かく応える、商品開
みである。この分野でも日本企業の技術力
ニーズに関する情報を応用機器ごとにまと
果敢に取り組み、他社に先駆けて実用化に
発力でしょう。世界市場の動向を踏まえて、
の高さは際立っている。
め、当社のパワー半導体と併せて顧客に提
成功している。日本企業が保有する技術と
ニーズを先回りした先進デバイスを提供し
産業機器や重工業分野向けのパワー半導
供していきます。そして、ニーズを反映した、
インフィニオンが保有するデバイス技術と
ている当社の知見が、日本企業の技術力を
体事業を担当するインダストリアルパワー
トータルなソリューションを提案していき
市場に関する情報を合わせれば、競争力の
世界で通用する商品につなげるための力に
コントロール事業本部 事業本部長の伊藤
たいと考えています」としている。
高い製品が出来上がることだろう。
インフィニオン テクノロジーズ ジャパン株式会社
URL:http://www.infineon.com/jp
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会社名、商品名は、各社の商標、または登録商標です。
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