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異種ネットワーク相互接続環 境下における最適情報通信 サービス

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異種ネットワーク相互接続環 境下における最適情報通信 サービス
Service
マルチレイヤ制御
防災
SOAP
異種ネットワーク相互接続環
境下における最適情報通信
サービス実現のための制御技
術の研究開発
なかつかさ
まさし あみたに
中務 雅史 /網谷
もりた
なおと しまや
すぐる いのうえ
しゅうじ おくだいら
優 /井上 秀治 /奥平
ただし 禎 /
あきら
森田 直人 /島谷
明
NTTコミュニケーションズ
NTTコミュニケーションズでは,
させられました.このことを背景に震
情報の共有・報告ができるかという観
独立行政法人情報通信研究機構の委
災時・緊急時における情報通信インフ
点に基づいた災害情報共有システムの
託研究を2005年度から2007年度の
ラの果たした役割や今後の課題などを
構築を行い,それをJGNⅡと新潟県情
3カ年にかけて実施しており,その
検証するとともに,全国のモデルとな
報ハイウェイ,各自治体ネットワーク
中で研究開発成果の実証実験に重き
り得る防災,減災に資するICT活用の
を通じて情報共有するというものです.
をおき,推進しています.ここでは
未来図を示すなど,新しいICT活用ス
今回,新潟県において,防災分野で
本研究開発の概要と3カ年の中間に
タイルを全国へ発信していくものとし
の実験を行った背景としては,実災害
あたる2006年度において成果を検証
て開催されました.
時には,各所からの膨大な照会や報告
した「地域ICT未来フェスタ2006in
にいがた」での実証実験の概要を紹
介します.
「地域ICT未来フェスタ
2006inにいがた」
防災アプリケーションを
使用した実証実験
クが大幅かつ急激に増大することから,
その対応策をあらかじめ検討しておく
NTTコミュニケーションズでは独立
行政法人情報通信研究機構(NICT)
の委託研究である「異種ネットワーク
地域ICT未来フェスタ2006inにいが
相互接続環境下における最適情報通信
(1)
た は10月27∼29日の3日間にわた
サービス実現のための制御技術の研究
り,新潟コンベンションセンター朱鷺
開発」の一環としてその成果発表を当
メッセ(新潟市万代島)をメイン会場
フェスタにおいて実施しました.
に開催されました.
業務によって,ネットワークのトラヒッ
デモンストレーションは,10月27日
必要があり,委託研究のテーマと一致
した点が挙げられます.
そこでまず,この委託研究について
簡単に説明します.
NICT委託研究
(1)
背景
新潟県では2004年10月23日,新潟
新潟市万代島の朱鷺メッセ会場を中心
我が国の公共ネットワークの整備
県中越大震災が発生,中山間地域に
に新潟県庁,柏崎市役所,三条市役
は,平成13年のIT戦略本部による
大きな被害をもたらしました.この震
所,長岡市役所,見附市役所,消防
「e-Japan戦略」以来,急速に進展し
災は,孤立集落における通信の途絶と
庁などを結び,午後1時30分から約2
ましたが,一方で,それらの公共ネッ
いった現在の情報通信基盤の災害時に
時間をかけて実施しました.
トワークの整備はそれぞれの施策の
実験の概要としては,新潟県におい
中で異なる時期に,異なる目的,異
地震発生直後から自治体のホームペー
て大規模な豪雨災害が発生したという
なるポリシー等に基づき設計・構築
ジや携帯電話の災害伝言板へのアクセ
前提の下,実際の災害対策を施すにあ
されてきたため,多種多様なネット
スが急増するなど,インターネットの果
たって,いかに迅速な被害情報収集が
ワーク仕様が混在する「異種ネット
たす今日的役割の重要性も改めて認識
できるか,関係機関において効率的な
ワーク」環境下にあるといえます.
おけるある種の弱点をみせつけた一方,
60
NTT技術ジャーナル 2007.2
G
これらの公共ネットワークにおいて
異種ネットワークを相互接続し,さ
とになり,ネットワークに障害が発生
提供されるサービスには,範囲は限定
まざまなアプリケーションの相互利用
した場合には甚大な影響を及ぼすこと
されるが非常に有用なものや重要な情
を可能とするためには,それぞれの環
が考えられます.また機密情報等につ
報を流通しているものが数多くあり,
境において相互に異なるネットワーク
いて,異種ネットワーク接続によって
自治体間および自治体と国の間での共
の物理的条件,性能や機能等の条件,
取り扱いポリシーの緩いネットワーク
同利用等による有効活用が求められて
アプリケーションの提供機能に関する
から機密情報が流出する可能性も考慮
います.しかし,現況の環境下におい
条件等について,下位層から上位層に
しておく必要があります.そこで本課
て,サービスの相互利用を行うために
至るマルチレイヤで,その制御を調整
題では,異種ネットワーク環境におけ
は,複数の課題を解決しなければなら
する必要があります.そこで本課題で
る信頼性,耐障害性,セキュリティの
ず,困難な状況にあります.
は,このような異種ネットワーク上で
向上を効率的に実現するためのサー
のアプリケーションの連携利用を実現
バ,クライアント制御技術の研究開発
するために必要な制御技術の研究開発
を行っています.
(2)
研究課題
前述の課題を解決し,異種ネット
ワークを相互に接続して,有効な連携
利用を実現できる技術の開発を目指し
を行っています.
③ 異種ネットワーク上での高度
② 高信頼ネットワークサービス環
ています(図1)
.
境構築技術に関する研究開発
具体的には,以下のような研究開発
マッチメイキング技術(仲介技術)
に関する研究開発
異種ネットワーク上に散在する
異種ネットワーク上に散在する
サービスを相互接続連携の下で統合的
サービスの中には,同様のサービスで
① マルチレイヤにまたがる環境情
に提供する場合,例えば災害時などに
ありながら個々のネットワークごとに
報に基づく最適通信制御技術に関
従来想定されていた範囲を越えて多く
違う用語によって説明されている場合
する研究開発
の地点からサービス要求が発生するこ
が多数存在すると考えられます.そこ
を行っています.
②−1.大量トランザクション処理および可用時間保障
を可能にする共有型クラスタリング・分散処理技術
②−2.サーバサイドでの効率的な情報一括管理による
機密情報持ち出し防止技術
iDC
ASPサービス
マッチメイキング
システム
共有クラスタリング
最適制御
システム
異種ネットワーク上に
点在するサービス提供者
サービス登録
③異種ネットワーク上での
高度マッチメイキング技術
①−1.サービス相互接続のた
めのネットワーク環境定義
①−2.マルチレイヤ環境情報
自動判定・動的制御技術
公共バックボーン
JGNⅡ等
サービス要求
サービス要求
アプリケーション
学校
サービス利用者
アプリケーション
情報ハイウェイ
サービス検索
最適制御された
サービス提供
サービス利用者
学校
病院
サービス利用者
アプリケーション 情報ハイウェイ
アプリケーション 情報ハイウェイ
アプリケーション
都道府県庁舎
病院
都道府県庁舎
病院
アプリケーション
学校
都道府県庁舎
図1 研究開発全体イメージ
NTT技術ジャーナル 2007.2
61
R
O
U
P
・
T
O
P
I
C
S
で本課題では,異種ネットワーク上で
市,長岡市,見附市にご協力をいただ
適通信制御技術の検証を行いました.
提供されるさまざまなサービスの中か
き,これらの自治体とJGNⅡとを結び
大規模災害などトラヒックが増大する
ら,利用者が真に必要とするサービス
実証実験の環境を構築しました(図
環境下において,サーバからデータや
情報のみを,普段使っているような自
2)
.
サービスを呼び出すためのプロトコル
然な文章により,容易に探し出すこと
ネットワークの構成としては,新潟
「 SOAP( Simple Object Access
を可能にする技術の研究開発を行っ
県庁を中心に情報共有を行うという仮
Protocol)」 に含まれる利用者や地域
ています.
定の下,同庁のテレメータ室に実証実
の通信環境の情報を判別し,特定利用
*
験サーバ群を設置,情報ハイウェイ
者からの通信を優先し,そのほかの通
で県内の実験参加自治体を接続しまし
信を一時的に抑制するなどの技術検証
上記①∼③により開発された技術を
た.そのうえで,災害情報共有システ
を行いました.デモの中では,大容量
実践的な環境の下で評価し,実用可能
ムにより収集情報を整理,県をはじめ
データである地図情報が,一部,カ
なレベルまで高度化することを目的
とする関係機関への報告や情報提供を
ラーからモノクロに自動変換されて送
に,複数の地方公共ネットワークとそ
行うと同時に,自らも閲覧用PCなど
られており,マルチレイヤにまたがる
の拠点を接続するかたちで,異種ネッ
を用いて,簡易に状況把握ができるよ
最適通信制御の様子が確認されま
トワークの相互接続利用環境を形成
うな仕組みとしました.
した.
④ 異種ネットワーク相互接続利
用基盤を評価する実証実験
今回は新潟県庁テレメータ室内に
上記の画像データ等の伝送が異種
「異種ネットワーク相互接続環境下に
ネットワーク間で最適に制御され,災
おける最適情報通信サービス実現のた
害情報の迅速かつ効果的な共有の実現
めの制御」を行うための最適制御シス
に有効であることが実証されました.
し,研究開発成果の実証実験を行い
ます.
マルチレイヤにまたがる
最適通信制御技術に関する実証実験
(2)
テムを設置し,被災地との十分な通信
実証実験のフィールドとしては,前
サービスレベルを確保するためのアク
述のとおり新潟県および柏崎市,三条
セス制御,優先制御や帯域制御等の最
他都道府県
消防庁
報告
*
情報ハイウェイ:光ファイバの通信ケーブ
ルなどによって構築される超高速情報通信
網のこと.
中央防災会議
内閣府
フィードバック
報告
JGN
新潟県
新潟県情報ハイウェイ
衛星回線・無線LANに
よるバックアップも想定
情報共有
活動報告
長岡市
被害状況
三条市
柏崎市
情報収集
水害発生
図2 実証実験イメージ
NTT技術ジャーナル 2007.2
防災アプリ
ケーション
のデモ
見附市
朱鷺メッセ:ICT未来フェスタ会場
水害発生
市町村
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ルータ
G
R
O
U
P
・
T
O
P
I
C
S
平常時の利用
災害時の利用例
災害情報等
アプリケーション群
アプリケーション群
SOAP
〈環境情報〉
・利用者情報
・地域情報
特定利用者
JGNⅡ
特定地域
異種ネットワーク
JGNⅡ
異種ネットワーク
公共サービス
公共サービス
情報ハイウェイ
情報ハイウェイ
非特定地域
非特定利用者
非特定地域
非特定地域
利用者の環境情報
などは考慮されず,
すべての利用者に
公平にサービスが
割り当てられる
非特定利用者
非特定利用者
利用者や地域等の環境
情報を判別し,状況に
応じた制御を行うこと
で,特定利用者はサー
ビスを優先的に利用で
きる
図3 利用イメージ
いて,普段は自由選択可能であるが,
利用イメージと期待される効果
災害発生時には本技術により,強制的
に特定の利用者のみに広帯域と高解像
全国規模の公共サービスを構成する
度なリッチコンテンツを提供し,そのほ
各 地 域 間 のサービス連 携 において,
かの利用者には例えリッチコンテンツの
SOAPメッセージ中に含まれる利用者
要求であったとしても低解像度のコン
や地域に関する環境情報を動的に判別
テンツを送信し,帯域を絞って提供す
して,ネットワークレイヤのみならずア
ることによって,最適な制御を実現す
プリケーションレイヤも連動してマルチ
ることができます.
奥平
レイヤにまたがる最適通信制御を行い
お わりに
ます.この技術により,災害時に特定
将来的には,財団法人全国地域情
(3)
者からの通信に対して,アプリケーシ
報化推進協会 で進める「地域情報プ
ョンを変更することなく通信内容を変
ラットフォーム」上での運用が可能と
えることにより,最適な通信制御が可
なるよう連携のあり方についても模索
能になります(図3)
.
を進めます.
例えば,動画などの配信において,
解像度やサイズ違いのコンテンツを用
意することが一般的ですが,災害時に
必要とされる災害映像コンテンツにつ
明/
禎
(前列左から)井上 秀治 / 網谷
優/
中務 雅史
の優先利用者からの通信に対しては広
帯域を割り当てながら,非優先的利用
(後列左から)森田 直人 / 島谷
■参考文献
(1) http://ict2006.jp/
(2) http://www.w3.org/TR/soap/
(3) http://www.applic.or.jp/
防災アプリケーション分野での実証実験
を紹介しました.引き続き,医療や教育な
ど他分野での実証実験を実施し,実用的な
仕組みづくりに取り組んでいきます.
◆問い合わせ先
NTTコミュニケーションズ
プラットフォームサービス部
PFエンジニアリング部門
TEL 03-6701-9240
FAX 03-5219-2980
E-mail [email protected]
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