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プログラム・抄録集 - 東北大学病院産婦人科

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プログラム・抄録集 - 東北大学病院産婦人科
第131回東北連合産科婦人科学会
(旧 日本産科婦人科学会東北連合地方部会)
総会・学術講演会
プログラム・抄録集
会 期:平成23年6月4日(土)・5日(日)
会 場:ベストウェスタンホテルニューシティ弘前
〒036 8004
弘前市大町1 1 2
TEL 0172 37 0700
学会長 佐藤 重美(下北医療センター むつ総合病院 副院長)
事務局
弘前大学医学部産科婦人科学教室
〒036 8562 青森県弘前市在府町5 TEL 0172 39 5107 FAX 0172 37 6842
第 131 回東北連合産科婦人科学会を開催するにあたって
学会長 佐 藤 重 美
このたびの東日本大震災での津波のもの凄さは,まるで CG 映像を見ているかのように
強烈であり,その惨状にはただただ見入るのみで言葉もありませんでした。この震災で犠
牲になられた多くの方々,また被災されました多くの方々に心からのご冥福とお見舞いを
申し上げます。
このような状況の中,本学会を開催するか否かにつきましては随分悩みました。しかし
各県地方部会にご相談を申し上げましたところ,とくに大きな被害を受けられました福島
県,宮城県,岩手県の会長様から自粛ムードを打破するためにも是非とも開催すべきであ
るとのご意見をいただき,予定通り開催することと致しました。逆に皆様から励ましをい
ただきましたことに感謝申し上げます。
また本学会の開催場所につきましては,交通の利便性から私の勤務地であるむつ市でな
く,40 余年在住しております弘前市としました。東北新幹線の青森開通が弘前には好影
響に,逆にむつ市には悪影響に働くと考えたからですが,事実その通りとなり,皆様から
ご批判を受けずに済んだのでは思っております。
さて本学会では腫瘍,周産期,生殖,ヘルスケアの各部門の比較的身近で日常的な話題
をとりあげました。特別講演 1 題,招請講演2題,教育講演 4 題はこのような趣旨から計
画しました。講師の先生方はその分野におけるリーダーの先生方でございますが,専門的
な立場から最新の知見をお話しいただけるものと期待しております。さらに学会の「産婦
人科外来診療におけるガイドライン」の作成に直接携われました先生方にワークショップ
形式で解説をお願い致しました。活発な意見交換が行われることを希望しております。ま
た,関連各社の協賛を受けモーニングセミナー,ランチョンセミナーを設けました。各界
を代表する先生方のお話でありますので,必ず皆様のご参考になると確信しております。
なお,特別講演は HPV ワクチンが他科との関連もあり県医師会所属医師にオープンに,
モーニングセミナーは Pill が話題でありますので看護師,薬剤師にオープンとしました。
どうぞご理解をお願い申し上げます。
最後になりましたが,未曾有の災害の中,一般演題を提出していただきました先生方,
とくにその被災の中心である三陸地区の病院の先生方には心からお礼を申し上げます。
−1−
第 131 回東北連合産科婦人科学会(旧 日本産科婦人科学会東北連合地方部会)
総会・学術講演会のご案内
●会 期
平成 23 年 6 月 4 日(土),5 日(日)
●会 場
ベストウェスタンホテル ニューシティ弘前 3F
〒 036-8004 青森県弘前市大町 1-1-2
TEL 0172-37-0700 FAX 0172-37-1229
第1会場 サファイアの間
第2会場 エメラルドの間
総懇親会会場 サファイアの間・エメラルドの間
交見室 ダイヤモンドの間・オパールの間
学会本部 トパーズの間
●参加登録受付
第 1 日 6 月 4 日(土)
8:15 から
第 2 日 6 月 5 日(日)
8:00 から
●参加費
学術講演会(総懇親会費を含む)12,000 円
※初期研修医・学生の学術講演会及び総懇親会への参加は無料です。受付でお申し出
ください。
●参加者へのお願い
・事前登録制ではありません。当日総合受付で参加登録をお願いいたします。
・学会参加証を必ず着けてください。
・専門医シールは参加登録時に受付にてお受け取りください。
●総懇親会
平成 23 年 6 月 4 日(土)18:30 開宴
会場:ベストウェスタンホテル ニューシティ弘前 3 F サファイアの間・エメラルドの間
●総会・役員会および関連委員会など
○東北連合産科婦人科学会総会
日時:平成 23 年 6 月 5 日(日) 13:20 − 13:50
会場:ベストウェスタンホテル ニューシティ弘前 3F
第 1 会場 サファイアの間
○東北地区産科婦人科学会・医会連絡会
東北連合産科婦人科学会役員会
日時:平成 23 年 6 月 5 日(日) 8:00 − 9:30
会場:ベストウェスタンホテル ニューシティ弘前 12F
スカイバンケット
−3−
○ TGCU 世話人会
日時:平成 23 年 6 月 4 日(土) 9:30 − 10:40
会場:ベストウェスタンホテル ニューシティ弘前 12F
スカイバンケット
○第3回胚細胞呼吸機能研究会(東北トランスレーショナルリサーチ拠点形成ネットワーク協議会分科会)
日時:平成 23 年 6 月5日(日) 7:00 − 8:00
会場:ベストウェスタンホテル ニューシティ弘前 12F
スカイバンケット
●第 8 回東北連合産科婦人科学会研修医会
日時:平成 23 年 6 月 4 日(土) 9:00 − 10:40
会場:ベストウェスタンホテル ニューシティ弘前 3F
第 1 会場 サファイアの間
●講演発表
1.座長へのお願い
(1)座長は担当されるセッション開始10 分前までに会場内次座長席へご着席ください。
(2)プログラムに定められた時間内に終了するよう,時間厳守に努めてください。
(3)一般講演座長担当の先生には各演者の評価用紙を予めお渡ししますのでよろしくお
願いいたします。
2.演者の方々へのお願い
(1)一般演題は全て口頭発表で,口演時間6 分,討論時間3 分です。
(2)本学術講演会の発表は,PCデータを用いての発表のみとなっております。スライ
ドやビデオは使用できませんので,ご注意ください。
(3)当日は,第2会場(エメラルドの間)横にPCセンター(PC受付)を設けております。
発表データ収録メディア(USBメモリまたはCD-R,ただしCD-RWは不可)
,また
は持込みPCをご持参の上,講演開始 40分前までに直接おいでいただき,受付と動
作確認を行ってください。なお,2日目の一般演題
「第Ⅶ群 内視鏡手術2/演題番
号30∼34」の発表者は,できるだけ前日のうちに受付と動作確認を行っていただき
ますようお願い致します。
(4)
PC受付のパソコンは台数が限られておりますので,受付用PCを独占しての長時間
データ修正はご遠慮願います。データ修正等は事前に済ませてから会場へお越しく
ださいますようお願い致します。
(5)
PowerPointの発表者ツールはご利用いただけません。
(6)
演者は発表開始10分前までに会場内次演者席へご着席ください。
【データ持参の場合】
(1)発表データはWindows 版のPowerPoint
(Office2000/2003/2007)までが使用可能
です。ただしMacの場合,または動画ファイルをご使用の場合は先生ご自身のパソ
コンでの発表をお願いしております。その際はプロジェクター出力のための専用映
像出力アダプター,及びAC電源アダプターも忘れずにご持参ください。
(2)
Mac版 のPowerPointで 作 成 さ れ た デ ー タ を ご 持 参 の 場 合,Windows 版 の
PowerPointでは一部データが表示されなかったり,文字化け,改行ズレなどの不
具合を生じる場合がございますので,必ずWindows 版のPowerPointで試写・確
−4−
認したデータをお持ちください。
(3)発表データ収録にあたっては,保存ファイル名を「演題番号(半角)+筆頭演者名」と
してください。
(4)
フォントはOS標準のモノのみご使用ください。
(5)
会場スピーカーに音声を流す事は出来ません。
(6)
画面の解像度はXGA(1024×768)
でお願い致します。
(7)CD-R(CD-RWは不可)への書き込みはISO9660 方式をお使いください。
※パケット方式ですと会場のPCで読み込めない場合がございます。
【PC 持参の場合】
(1)バックアップとして必ずメディアもご持参ください。
(2)会場スピーカーに音声を流す事は出来ません。
(3)画面の解像度はXGA(1024×768)
でお願い致します。
(4)
PC受付の液晶モニターに接続し,映像の出力チェックを行ってください。
※PCの機種やOSによって出力設定方式が異なります。
(5)プロジェクターとの接続ケーブルはD-sub15 ピンです。持込みのPCによっては専用
の映像出力アダプターが必要になりますので,必ずご持参ください。
※特にVAIO,iBookなどの小型PCは別途付属の映像出力アダプターが必要な場合が
ございますので,くれぐれもご注意ください。
(6)スクリーンセーバー,省電力設定は事前に解除願います。
内蔵バッテリー駆動ですと,ご発表中に映像が切れたりする恐れがございますので,
コンセント用電源アダプターを必ずご持参ください。
(7)PCは発表開始15分前までに会場内オペレーター席へ先生ご本人様でお持込みくだ
さい。
●優秀演題の表彰
各群の座長に評価していただき優秀演題を選びます。表彰は総懇親会,総会の時に行
う予定です。
●事務局
弘前大学医学部産科婦人科学教室
第 131 回東北連合産科婦人科学会事務局
〒 036-8562 青森県弘前市在府町 5 TEL 0172-39-5107 FAX 0172-37-6842
−5−
学会会場案内図
田町1
禰宜町
亀甲町
●津軽藩ネプタ村
護国神社
森
青
至
小人町
仲町伝統的建造物群保存地区
森
青
至
馬喰町
若党町
田茂木町
蔵主町
長坂町
緑の相談所●
土
淵
川
山王町
●弘前総合保健センター
弘前医師会
野田2
野田1
大浦町
東照宮
笹森町
文
弘前中央高⃝
弘前公園
●
県合同庁舎
●NHK
7
文
⃝
第一中
北横町
東長町
茶畑町
●弘前城資料館
(天守閣)
東和徳町
下白銀町
徳田町
元寺町
●NTT
弘前教会●
弘前城植物園
●博物館
鉄砲町 百石町
弘前市役所◎
塩分町
●観光館
●図書館
●消防署
中三デパート
●
元大工町
本町
●五重塔
卍最勝院
北新寺町
銅屋町
川
寺沢
新寺町
院街
●
弘南バス
弘前営業所
代官町
弘前プリンスホテル
中瓦ヶ町
駅前2
北瓦ヶ町
●
東北女子
短期大学
南瓦ヶ町
弘前国際ホテル
●イトーヨーカドー
弘前バスターミナル●
駅前町
弘
前
駅
駅前3
吉野町 山道町
ベストウェスタンホテル
ニューシティ弘前
弘前パークホテル
住吉町
南
川
端
町
7
東横イン弘前駅前
●
みちのく銀行
ホテルルートイン弘前駅前
●
昇天教会
中央弘前
南塘町
文 朝陽小
⃝
黒石IC
植田町
東北自動車道
桶屋町
萱町
弘前郵便局
ドーミーイン弘前
新
鍛 北
冶 川
町 端
町
北
大
通
り
緑町
坂本町
土手町
鍛冶町
●NTT
相良町
在府町
南横町
元長町
●弘前大学医学部
附属病院
覚仙町
徒町
山下町 中央
通り
田代町
一番町
●裁判所 ●
青森銀行
親方町
税務署● ●東北電力
弘前プラザホテル
弘前グランドホテル
追手門通り
上白銀町
和徳町
ホテル
ニューキャッスル
鞘師町
102
学会会場
弘前東栄ホテル
大町3
大町2
大町1
上土手町
文 弘前高
⃝
町寺
新寺
紙漉町
大鰐弘前IC
東 京( 上 野 )
青森上野号・パンダ号/9時間30分・9時間00分
東京(品川・浜松町)
ノクターン号/9時間15分
ノクターン号/9時間45分
横
浜
仙
台
キャッスル号/4時間20分
盛
岡
ヨーデル号/2時間20分
京
新大阪
はやぶさ
3時間10分
はやぶさ
3時間10分
新青森
東
特急つがる
33分
青
森
奥羽本線
約45分
秋
田
特急/約40分 普通/約50分
■学会会場までの交通機関
−6−
徒歩
(1分)
学会会場
弘前駅・
弘前バス
ターミナル
青森空港
バス
(60分)
至大鰐
鰐
至大
■弘前へのアクセス
−7−
東北地区産科婦人科学会・医会連絡会
東北連合産科婦人科学会役員会
本部
TGCU世話人会
第3回胚細胞呼吸機能研究会
12F
ダイヤモンド・オパール
クローク
講師
控え室
交見室
21
クローク
総合受付
2
20
1
3
4
9 10 11 12
13 14 15 16
17 18
MBL
総懇親会場
サファイア
8
エメラルド
7
第1会場
6
第2会場
5
製品・機器展示会場
19
3F
会場案内図
ベストウェスタンホテルニューシティ弘前
PC受付
学会プログラム
第1日 6月4日(土)
第1会場
第2会場
(サファイア)
(エメラルド)
8:55 開会式・会長挨拶
9:00
8:55
第8回 東北連合産科婦人科学会研修医会
10:40
10:50
一般演題
第Ⅳ群 周産期2
演題番号 16-21
座長:佐藤 朗(秋田大学)
座長:尾崎 浩士(弘前病院)
一般演題
第Ⅰ群 腫瘍1
演題番号 1-4
座長:本田 達也(岩手医科大学)
11:30
12:00
13:00
13:10
14:10
15:10
15:50
16:50
ランチョンセミナー1
ランチョンセミナー 2
「ここまでできる腹腔鏡,
こうしてできる腹腔鏡」 「子宮内膜症のホルモン療法」
講師:安藤 正明(倉敷成人病センター)
講師:原田 省(鳥取大学)
講師:金尾 祐之(倉敷成人病センター)
座長:水沼 英樹(弘前大学)
座長:寺田 幸弘(秋田大学)
共催:持田製薬株式会社
共催:ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
招請講演1
「妊娠高血圧症候群をめぐる最近の話題」
講師:山崎 峰夫(神戸大学)
座長:佐藤 秀平(青森県立中央病院)
一般演題
第Ⅱ群 周産期1
演題番号 5-10
座長:星合 哲郎(東北大学)
座長:利部 正裕(岩手医科大学)
一般演題
第Ⅲ群 術前診断・周術期
演題番号 11-15
座長:高橋 一広(山形大学)
11:30
11:50
12:00
13:00
13:10
14:10
招請講演2
「最近の放射線治療の進歩−高精度放射線治療−」
講師:高井 良尋(弘前大学)
座長:水沼 英樹(弘前大学)
教育講演1
「婦人科術後患者のヘルスケア」
講師:倉智 博久(山形大学)
座長:鈴木 博(岩手県立中央病院)
10:50
教育講演2
「細胞骨格系に演出されるヒト命の始まりにお
ける女と男の美しい営み」
講師:寺田 幸弘(秋田大学)
座長:和田 裕一(仙台医療センター)
一般演題
第Ⅴ群 不妊・異所性妊娠
演題番号 22-25
座長:高橋 俊文(山形大学)
一般演題
第Ⅵ群 内視鏡手術1
演題番号 26-29
座長:佐藤 直樹(秋田大学)
共催:東北内視鏡懇話会
15:10
15:50
16:30
17:10
17:40
18:30
18:30
総懇親会
−8−
学会プログラム
第2日 6月5日(日)
第1会場
第2会場
(サファイア)
(エメラルド)
7:45
7:45
モーニングセミナー *
「確実な避妊法の普及を目指して∼緊急避妊
(EC)や中絶を繰り返させないために∼」
講師:北村 邦夫(家族計画研究センター)
座長:倉智 博久(山形大学)
共催:バイエル薬品株式会社
8:45
8:45
一般演題
第Ⅶ群 内視鏡手術2
演題番号 30-34
座長:志賀 尚美(東北大学)
共催:東北内視鏡懇話会
一般演題
第Ⅸ群 周産期3
演題番号 39-43
座長:野村 泰久(福島県立医科大学)
一般演題
第Ⅷ群 腫瘍2
演題番号 35-38
座長:渡辺 尚文(福島県立医科大学)
一般演題
第Ⅹ群 周産期4
演題番号 44-48
座長:田中 幹二(弘前大学)
9:30
9:30
10:10
10:20
10:20
教育講演3
教育講演4
「卵巣癌治療∼世界のコンセンサスに基づいた 「妊娠と悪性腫瘍−婦人科腫瘍を中心に−」
今後の展開∼」
講師:藤森 敬也(福島県立医科大学)
講師:熊谷 晴介(岩手医科大学)
座長:平野 秀人(秋田赤十字病院)
座長:山田 秀和
(東北大学・宮城県立がんセンター)
11:00
11:00
特別講演**
「HPVワクチンの最新情報と将来展望」
講師:吉川 裕之(筑波大学)
座長:佐藤 重美(むつ総合病院)
12:00
12:10
12:10
ランチョンセミナー 3
「重篤な胎児形態異常を見逃さないために」
講師:馬場 一憲(埼玉医科大学)
座長:藤森 敬也(福島県立医科大学)
共催:GEヘルスケア・ジャパン株式会社
ランチョンセミナー 4
「再発卵巣癌の薬物療法∼標準治療とその周辺∼」
講師:松本 光史(兵庫県立がんセンター)
座長:八重樫伸生(東北大学)
共催:ヤンセンファーマ株式会社,TGCU
13:10
13:20
13:10
総 会
13:50
ワークショップ
「産婦人科診療ガイドライン−婦人科外来編−
の発刊を受けて」
パネリスト:
横山 良仁(弘前大学)
藤井 俊策(むつ総合病院)
高橋 一広(山形大)
武田 卓(東北大)
座長:八重樫伸生(東北大学)
蓮尾 豊(弘前女性クリニック)
15:50 閉会式・会長挨拶
* 看護スタッフ,薬剤師の方々も聴講できます。
** 青森県医師会会員の希望者は聴講できます。 −9−
特 別 講 演
第 2 日 6 月 5 日(日) 第 1 会場(サファイア) 11:00 ∼ 12:00
「HPV ワクチンの最新情報と将来展望」
講 師:筑波大学大学院 人間総合科学研究科 婦人周産期医学講座 教授 吉川 裕之
座 長:下北医療センター むつ総合病院 副院長 佐藤 重美
※ 青森県医師会会員の希望者は聴講できます。
招 請 講 演
招請講演 1 第 1 日 6 月 4 日(土) 第 1 会場(サファイア) 13:10 ∼ 14:10
「妊娠高血圧症候群をめぐる最近の話題」
講 師:神戸大学大学院医学研究科 地域社会医学・健康科学講座 総合臨床教育・育成学分野 特命教授
山崎 峰夫
座 長:青森県立中央病院 総合周産期センター部長 佐藤 秀平
招請講演2
第 1 日 6 月 4 日(土) 第 1 会場(サファイア) 14:10 ∼ 15:10
「最近の放射線治療の進歩 ―高精度放射線治療―」
講 師:弘前大学大学院医学研究科 放射線科学講座 教授 髙井 良尋
座 長:弘前大学大学院医学研究科 産科婦人科学講座 教授 水沼 英樹
− 10 −
教 育 講 演
教育講演 1 第 1 日 6 月 4 日(土) 第 1 会場(サファイア) 15:10 ∼ 15:50
「婦人科術後患者のヘルスケア」
講 師:山形大学 医学部 産科婦人科学講座 教授 倉智 博久
座 長:岩手県立中央病院 副院長 鈴木 博
教育講演 2
第 1 日 6 月 4 日(土) 第 2 会場(エメラルド) 15:10 ∼ 15:50
「細胞骨格系に演出されるヒト命の始まりにおける女と男の美しい営み」
講 師:秋田大学大学院医学系研究科 産婦人科学講座 教授 寺田 幸弘
座 長:仙台医療センター 院長 和田 裕一
教育講演 3
第 2 日 6 月 5 日(日)第 1 会場(サファイア)
10:20 ∼ 11:00
「卵巣癌治療 ∼世界のコンセンサスに基づいた今後の展開∼」
講 師:岩手医科大学 医学部 産科婦人科学講座 講師 熊谷 晴介
座 長:東北大学大学院医学系研究科がん医科学連携講座婦人科腫瘍学分野 教授・
宮城県立病院機構宮城県立がんセンター 医療部長 山田 秀和
教育講演 4
第 2 日 6 月 5 日(日)第 2 会場(エメラルド)
10:20 ∼ 11:00
「妊娠と悪性腫瘍 ―婦人科腫瘍を中心に―」
講 師:福島県立医科大学 医学部 産科婦人科学講座 教授 藤森 敬也
座 長:秋田赤十字病院 総合周産期母子医療センター長 平野 秀人
ワークショップ
第 2 日 6 月 5 日(日) 第 1 会場(サファイア) 13:50 15:50
「産婦人科診療ガイドライン ―婦人科外来編の発刊を受けて」
講 師:東北大学大学院医学研究科 婦人科学分野 教授 八重樫伸生
弘前大学 医学部 産科婦人科学講座 准教授 横山 良仁
むつ総合病院 産科部長 藤井 俊策
山形大学 医学部 産科婦人科学講座 准教授 高橋 一広
東北大学 医学部 先進漢方治療医学講座 准教授 武田 卓
座 長:東北大学大学院医学研究科 婦人科学分野 教授 八重樫伸生
弘前女性クリニック 院長 蓮尾 豊
− 11 −
モーニングセミナー
第 2 日 6 月 5 日(日) 第 1 会場(サファイア) 7:45 ∼ 8:45
「確実な避妊法の普及を目指して ∼緊急避妊(EC)や中絶を繰り返させないために∼」
講 師:㈳日本家族計画協会 家族計画研究センター所長 北村 邦夫
座 長:山形大学 医学部 産科婦人科学講座 教授 倉智 博久
共 催:バイエル薬品株式会社
※ 看護スタッフ,薬剤師の方々も聴講できます。
ランチョンセミナー
ランチョンセミナー 1
第 1 日 6 月 4 日(土)第 1 会場(サファイア)
12:00 ∼ 13:00
総合テーマ「ここまでできる腹腔鏡,こうしてできる腹腔鏡」
講演 1:婦人科腹腔鏡の最前線とその将来像
講 師:倉敷成人病センター副院長・理事 同内視鏡手術センター長 安藤 正明
講演2:婦人科腹腔鏡の最前線を目指して∼現状を breakthrough するための秘策(トレーニング)
講 師:倉敷成人病センター 婦人科 医長 金尾 祐之
座 長:秋田大学大学院医学系研究科産婦人科学講座 教授 共 催:ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
寺田 幸弘
ランチョンセミナー 2
第 1 日 6 月 4 日(土) 第 2 会場(エメラルド) 12:00 ∼ 13:00
「子宮内膜症のホルモン療法」
講 師:鳥取大学 医学部 産科婦人科学講座 教授 原田 省
座 長:弘前大学大学院医学研究科 産科婦人科学講座 教授 水沼 英樹
共 催:持田製薬株式会社
− 12 −
ランチョンセミナー 3
第 2 日 6 月 5 日(日) 第 1 会場(サファイア) 12:10 ∼ 13:10
「重篤な胎児形態異常を見逃さないために」
講 師:埼玉医科大学総合医療センター 総合周産期母子医療センター 母体胎児部門 教授
座 長:福島県立医科大学医学部 産科婦人科学講座 教授 共 催:GE ヘルスケア・ジャパン株式会社
馬場 一憲
藤森 敬也
ランチョンセミナー 4
第 2 日 6 月 5 日(日) 第 2 会場(エメラルド) 12:10 ∼ 13:10
「再発卵巣癌の薬物療法 ∼標準治療とその周辺∼」
講 師:兵庫県立がんセンター 腫瘍内科 医長 松本 光史
座 長:東北大学大学院医学研究科 婦人科学分野 教授 八重樫伸生
共 催:ヤンセンファーマ株式会社,TGCU
− 13 −
一 般 演 題
第1 日 6月4日
(土)
第1会場 サファイア
第Ⅰ群 腫瘍1 10:50 ∼ 11:30
座長 本田 達也(岩手医科大学)
1.再発し治療に苦慮した uterine tumor resembling ovarian sex cord tumor
(UTROST)の一例
岩手県立中央病院 ○岩間 英範,名取 徳子,坂本 翼,高田 杏奈,
畑山 伸弥,葛西真由美,鈴木 博
2.境界悪性傍卵巣腫瘍の2症例
福島県立医科大学 ○鈴木 聡,古川 茂宜,若木 優,安田 俊,
添田 周,高橋 秀憲,渡辺 尚文,西山 浩,
藤森 敬也
3.腹膜原発中皮腫の1例
福島県立医科大学 ○古川 茂宜,若木 優,添田 周,渡辺 尚文,
西山 浩,藤森 敬也
4.HCG マーカーが非典型的な推移を示した臨床的絨毛癌の一例
岩手県立中部病院 ○藤澤 夏行,黒澤 靖大,松田 尚美,小泉 俊光
第Ⅱ群 周産期1 15:50 ∼ 16:50
座長 星合 哲朗(東北大学) 利部 正裕(岩手医科大学)
5.当院における妊娠と薬カウンセリング外来の試み
宮城県立こども病院 ○佐藤聡二郎,小澤 克典,宮下 進,室月 淳
同 薬剤部 山本 枝美,二木 彰
6.当院における腟及び外陰血腫の検討
山形県立中央病院 ○齋藤 彰治,高橋可菜子,渡邉 憲和,小篠 隆広,
阿部 祐也,小田 隆晴
7.当院における過去 5 年間の骨盤位症例の検討
健生病院 ○齋藤 美貴,橋本吏可子
− 14 −
8.宮城県における未受診飛び込み分娩の現状
宮城県産婦人科医会:仙台赤十字病院 ○谷川原真吾
東北大学 崔 佳苗実
東北公済病院 上原 茂樹
仙台医療センター 和田 裕一
中川産婦人科 中川 公夫
9.当院における母体搬送の現状と問題点
白河厚生総合病院 ○阿部 雄悟,中村 聡一,清水 孝郎,山内 隆治
10.当院における胎児消化管閉鎖症例の検討
福島県立医科大学 ○安田 俊,若木 優,鈴木 聡,浅野 仁覚,
高橋 秀憲,藤森 敬也
第Ⅲ群 術前診断・周術期 16:50 ∼ 17:40
座長 高橋 一広(山形大学) 11.術前診断が困難であった後腹膜発育子宮筋腫の一例
東北大学 ○佐藤いずみ,黒澤 大樹,大槻 健郎,吉永 浩介,
永瀬 智,伊藤 潔,八重樫伸生
12.子宮筋腫捻転による急性腹症で手術となった 2 症例
由利組合総合病院 〇田村 大輔,大友めぐみ,齋藤 史子,
木村菜桜子,軽部 彰宏
13.術後創傷治癒遷延に対し陰圧閉鎖療法が奏功した第 X Ⅲ因子低下症の一例
岩手県立宮古病院 ○千田 英之,児玉 秀夫,細谷地 昭,善積 昇
同 形成外科 鈴木 偉彦
14.婦人科がん周術期における肺血栓症高リスク患者に対する抗凝固薬の有用性に関する検討
山形大学 ⃝清野 学,高橋 俊文,前川 絢子,小島原敬信,
高橋 一広,倉智 博久
15.女性クリニックにおける禁煙治療の試み
さとこ女性クリニック ○井上 聡子
第2会場 エメラルド
第Ⅳ群 周産期 2 10:50 ∼ 11:50
座長 佐藤 朗(秋田大学) 尾崎 浩士(弘前病院) 16.妊娠中の MMI 内服で新生児頭皮欠損を発症した一例
岩手県立中部病院 ○戸草明日香,藤澤 夏行,黒澤 靖大,松田 尚美,
小泉 俊光
− 15 −
17.歯肉炎を初発とした母体敗血症,胎児機能不全の一症例
岩手医科大学 ○寺田 幸,杉山 徹
岩手県立二戸病院 中里 権恵,永沢 崇幸,安達 信博,秋元 義弘,
佐藤 昌之
18.Acinetobacter baumannii による敗血症から DIC(播種性血管内凝固症候群)に
至った重症妊娠悪阻症例
大館市立総合病院 ○平川 八大,葛西亜希子,葛西剛一郎,冨浦 一行,
高橋 秀身
弘前大学 松下 容子,山本 善光,田中 幹二,尾崎 浩士,
水沼 英樹
19.胎内輸血療法を施行した妊娠 18 週先天性パルボウィルス B19 感染性胎児水腫の一例
秋田大学 ○長尾 大輔,森 耕太郎,鎌田久美子,佐藤 恵,
佐藤 朗,小川 正樹,寺田 幸弘
20.妊娠後期の抗精神病薬大量服薬により,母児共に離脱症候群・横紋筋融解・腎機能障
害をきたした一例
岩手県立中部病院 ○新沼 花恵,藤澤 夏行,黒澤 靖大,松田 尚美,
小泉 俊光
21.潰瘍性大腸炎大腸全摘術後に妊娠 33 週で消化管穿孔を発症した 1 例
東北大学 ○佐藤 孝洋,星合 哲郎,菅原 準一,八重樫伸生
第Ⅴ群 不妊・異所性妊娠 15:50 ∼ 16:30
座長 高橋 俊文(山形大学) 22.卵管留症に対し卵管切除を行った後,IVF-ET を施行した 16 症例の検討
秋田大学 ○白澤 弘光,木藤 正彦,熊澤由紀代,河村 和弘,
熊谷 仁,寺田 幸弘
同 保健学科 児玉 英也
23.男性不妊に対する Maca 摂取の有効性について
秋田大学 ○熊谷 仁,白澤 弘光,熊澤由紀代,河村 和弘,
寺田 幸弘
同 保健学科 児玉 英也
24.不妊と月経困難症を機に発見された腟横中隔の一例
岩手県立中部病院 ○菅原 千裕,藤澤 夏行,黒澤 靖大,松田 尚美,
小泉 俊光
25.子宮温存が可能であった子宮頸管妊娠の 1 例
むつ総合病院 ○山内 愛紗,松倉 大輔,重藤龍比古,藤井 俊策,
佐藤 重美
− 16 −
第Ⅵ群 内視鏡手術1 16:30 ∼ 17:10
座長 佐藤 直樹(秋田大学) 共催 東北内視鏡懇話会 26.腹腔鏡下に診断された異所性皮様嚢腫の一例
岩手県立中部病院 ○黒澤 靖大,藤澤 夏行,松田 尚美,小泉 俊光
27.腹腔鏡下性腺摘出術後,エストロゲン補充療法を行った AIS の 2 症例
弘前大学 ○千葉 仁美,福井 淳史,大澤 有姫,福原 理恵,
木村 秀崇,水沼 英樹
28.子宮鏡下子宮中隔切除術時の子宮腔造影併用が有用であった2例
弘前大学 ○大澤 有姫,福井 淳史,千葉 仁美,福原 理恵,
木村 秀崇,水沼 英樹
29.当科における腹腔鏡手術のあゆみ(2002 年から 2010 年までの腹腔鏡手術の検討)
大館市立総合病院 ○冨浦 一行,平川 八大,葛西剛一郎,葛西亜希子,
高橋 秀身
弘前大学 福井 淳史
第2 日 6月5日
(日)
第1会場 サファイア
第Ⅶ群 内視鏡手術 2 8:45 ∼ 9:30
座長 志賀 尚美(東北大学) 共催 東北内視鏡懇話会 30.腹腔鏡下子宮筋腫核出術における V-Loc180 の有用性について
仙台医療センター ○早坂 篤,渡邊マリア,島 崇,石垣 展子,
千葉由美代,牧野 浩充,朝野 晃,明城 光三,
小澤 信義,和田 裕一
31.当科における単孔式腹腔鏡下子宮付属器手術 36 例の検討
仙台医療センター ○早坂 篤,渡邊マリア,島 崇,石垣 展子,
千葉由美代,牧野 浩充,朝野 晃,明城 光三,
小澤 信義,和田 裕一
32.単孔式腹腔鏡下手術における新 Glove 法の紹介
大館市立総合病院 ○葛西剛一郎,平川 八大,葛西亜希子,冨浦 一行,
高橋 秀身
33.当院での単孔式による腹腔鏡下手術症例の検討
気仙沼市立病院 ○重田 昌吾,宇賀神智久
− 17 −
34.Single incision laparoscopic surgery
(SILS)ポートの導入による婦人科腹腔鏡
下手術の質的向上
むつ総合病院 ○山内 愛紗,松倉 大輔,重藤龍比古,藤井 俊策,
佐藤 重美
第Ⅷ群 腫瘍 2 9:30 ∼ 10:10
座長 渡辺 尚文(福島県立医科大学)
35.初経前の女児に発症した卵巣粘液性腺癌の一例
弘前大学 ○松村由紀子,柳田 毅,熊坂 諒大,松下 容子,
阿部 和弘,谷口 綾亮,横山 良仁,樋口 毅,
水沼 英樹
36.高カルシウム血症と白血球増多を呈した PTHrP・G-CSF 産生卵巣明細胞腺癌の 1 例
弘前大学 ○熊坂 諒大,谷口 綾亮,柳田 毅,松村由紀子,
阿部 和弘,横山 良仁,樋口 毅,水沼 英樹
37.当科における再発卵巣癌症例におけるペグ化リポソーマルドキソルビシンの治療効果
秋田大学 ○赤平沙恵子,佐藤 直樹,三浦 康子,清水 大,
河村 和弘,藤本 俊郎,寺田 幸弘
38.腸管合併切除を行った卵巣がん 19 例の検討
青森県立中央病院 ○和田 潤郎,室本 仁
青森市民病院 三浦 理絵,湯沢 映,佐藤 秀平,森川 晶子
弘前大学 松村由紀子
第2会場 エメラルド
第Ⅸ群 周産期 3 8:45 ∼ 9:30
座長 野村 泰久(福島県立医科大学)
39.帝王切開術後の循環動態管理に苦慮した Fontan 術後妊娠の 1 例
弘前大学 ○松下 容子,山本 善光,田中 幹二,尾崎 浩士,
水沼 英樹
40.周産期心筋症の一例
大崎市民病院 ○佐々木 恵,三浦 伶史,湊 敬廣,松本 大樹,
吉田 祐司,我妻 理重
同 循環器科 岩渕 薫
41.Osler-Weber-Rendu 病合併妊娠の一例
太田西ノ内病院 ○経塚 標,片倉真輝帆,菅野 成子,山口 明子,
田中 幹夫
− 18 −
42.妊娠初期に肺血栓塞栓症を発症し,一時心肺停止に陥った一例
岩手県立中央病院 ○坂本 翼,名取 徳子,畑山 伸弥,高田 杏奈,
岩間 英範,葛西真由美,鈴木 博
同 循環器科 加賀谷裕太,高橋 徹
43.早期の新鮮凍結血漿輸血が必要と考えられた産科危機的出血の二例
青森市民病院 ○船水 文乃,工藤 香里,橋本 哲司,小田 得三
五所川原市立西北中央病院 山口 英二
青森県立中央病院 和田 潤郎
第Ⅹ群 周産期 4 9:30 ∼ 10:20
座長 田中 幹二(弘前大学) 44.切迫子宮破裂を伴った癒着胎盤の一例
青森市民病院 ○三浦 理絵
弘前大学 松村由紀子
青森県立中央病院 室本 仁,湯沢 映,和田 潤郎,森川 晶子,
佐藤 秀平
45.術前に診断されていなかった穿通胎盤に遭遇したときにどう対応すべきか?
山形大学 ○漆山 敬子,清野 学,前川 絢子,網田 光善,
堤 誠司,倉智 博久
46.帝王切開後の前置胎盤症例
盛岡赤十字病院 ○林 理紗,高取恵理子,船越 真生,畑山 寿緒,
菅原 英治,藤原 純,松田 壯正,利部 輝雄
同 麻酔科 佐藤 龍昌
47.子宮筋腫による後屈妊娠子宮嵌頓症に対し帝王切開術を施行した一例
大館市立総合病院 ○葛西剛一郎,平川 八大,葛西亜希子,冨浦 一行,
高橋 秀身
48.弛緩出血に対し,compression suture を施行し,子宮温存し得た1例
スズキ記念病院 ○阿部 有香,田中 耕平,藤井 調,野田 隆弘,
橋本志奈子,岩本 充,飯田 修一,森 滋,
鈴木 雅州
− 19 −
第 8 回東北連合産科婦人科学会研修医会
9:00 ∼ 10:20 シンポジウム 1
東北 6 県の産科婦人科専攻医プログラム (発表各 10 分 ディスカッション 20 分)
シンポジスト 秋田大学 :菅原 和江
岩手医科大学 :未定
東北大学 :石橋ますみ
弘前大学 :松村由紀子
福島県立医科大学:未定
山形大学 :漆山 敬子
司 会 弘前大学 :飯野 香理
10:20 ∼ 10:40 シンポジウム 2
より働きやすい環境へ≪男性医師の立場から≫ (発表各 5 分) シンポジスト 岩手医科大学 :未定
東北大学 :佐藤 孝洋
弘前大学 :田村 良介
司 会 弘前大学 :福山 麻美
− 20 −
特 別 講 演
招 請 講 演
教 育 講 演
ワークショップ
特別講演
第2日 6月5日(日)第1会場(サファイア)11:00 ∼ 12:00
座長:佐藤 重美(下北医療センター むつ総合病院 副院長)
「HPVワクチンの最新情報と将来展望」
講師:吉川 裕之(筑波大学大学院 人間総合科学研究科 婦人周産期医学講座 教授)
人工的に作成した HPV16 と HPV18 のウイルス様粒子をワクチンとして用いた子宮頸
癌予防戦略が本邦でもスタートしている。2009 年 10 月に承認された HPV16/18 の 2 価ワ
クチン(グラクソスミスクライン社のサーバリックス)以外に,MSD 社の HPV16/18 に
尖圭コンジローマの原因ウイルスである HPV6/11 を加えた 4 価ワクチン,Gardasil があ
るが,この承認も間近である。数万人の臨床試験で持続感染予防効果と CIN2/3 や AIS の
発生予防効果がほぼ 100%であり,重篤な有害事象はきわめて少ない。
ヨーロッパ,カナダ,オーストラリアなど先進 26 か国では,9-16 歳のうち数歳の巾で
対象を選択し,公費補助(大多数は全額)での接種が行われている。アジアではマレーシ
アで公費負担の接種が始まった。本邦でも中学一年生から高校一年生(または小学校六年
生から中学三年生)の女子に対する公費補助での接種が,昨年度末から始まっている。子
宮頸癌の減少を確実とするには,一定の年代で 100%近い接種率となる方策が必須である。
本邦ではワクチンタイプの HPV16/18 は,子宮頸がんの 67%に検出されるが,20-30 歳
代のがんに限ると 80%に検出される。腺癌では 90%である。期待される最終的効果は,1)
子宮頸がんの罹患を年 6000 名減らし,2)子宮頸がんによる死亡を年 2300 名減らし,3)
生存できても治療により生殖機能を失う女性を年 1000 名以上減らし,4)その生殖機能で
誕生する数百名以上の児の命を救い,5)前がん病変などの円錐切除術を年 5000 名減ら
し,6)同時に円錐切除による流早産を減らす。さらに 7)がん検診での効率性,経済性
を向上させる。8)子宮頸がん以外の HPV 関連がん(中咽頭,肛門,膣,外陰,陰茎のが
ん)を減少させることが期待できる。これらの効果はすぐに出るものではなく,10 年ほ
どで次第に出始め,30-50 年ほどで達成される見込みである。
21
招請講演1 第1日 6月4日(土) 第1会場(サファイア)13:10 ∼ 14:10
座長:佐藤 秀平(青森県立中央病院 総合周産期センター 部長)
「妊娠高血圧症候群をめぐる最近の話題」
講師:山崎 峰夫(神戸大学大学院医学研究科地域社会医学・健康科学講座 総合臨床教育・育成学分野 特命教授)
古代より知られていた子癇の前段階としての母体異常は,18 世紀以降になって浮腫,
蛋白尿,高血圧の順に認知された。妊娠中毒症の疾患概念が定着したのは 20 世紀初頭で
あるが,その後,母児予後の解析から本症の中心的病態は高血圧と推定され,米国産婦人
科学会は 1972 年に hypertension in pregnancy の定義分類を発表した。この基本骨格は現
在まで国際的に広く採用され,日産婦学会の妊娠高血圧症候群(pregnancy induced
hypertension: PIH)の定義分類(2005 年)もほぼこれを踏襲した。70 年代後半より妊娠
高血圧腎症(preeclampsia)の病態研究が発展し,昇圧物質への血管感受性亢進,血管内
皮細胞障害,絨毛外 trophoblast 浸潤不全による胎盤形成不全,が次々に明らかにされた。
2003 年以降,血管新生因子(angiogenic factor)とその拮抗物質(antiangiogenic factor)
の バ ラ ン ス が 重 要 視 さ れ て い る。vascular endothelial growth factor(VEGF) や
placental growth factor(PlGF)は胎盤形成維持過程の血管新生に重要な役割を持つが,
胎盤 hypoxia がそれらの拮抗因子である VEGF receptor 1 の可溶化ドメイン(soluble
FMS-like tyrosine kinase 1=sFlt1)を過剰産生させる。すると angiogenic 作用が抑制さ
れ,血管内皮細胞障害や hypoxia の助長が起こる。この悪循環の中で病態が進行するとい
う考え方が preeclampsia の発症予知,重症度判定,あるいは治療につながるものとして
注目を集めている。ところで,日本の PIH 管理ガイドラインには今後の検討を要するい
くつかの点がある。1)蛋白尿の診断とその意義について我々が検討したところ,
(a)随
時尿の試験紙法による蛋白尿スクリーニングは,その精度を考慮すれば蛋白尿(300㎎以
上/日)診断の基準は 2 +以上とすべき,
(b)尿比重により試験紙法の成績は左右され
るため,低尿比重例の±や 1+ は注意が必要,
(c)高血圧患者では±,+であっても蛋白
尿の可能性を除外せず,24 時間蓄尿か,少なくとも随時尿蛋白クレアチニン比測定が望
ましい,と判明した。なお,正常血圧妊婦が蛋白尿を示す妊娠蛋白尿の頻度は低いが,将
来の血圧上昇や腎疾患潜在の可能性に注意を要す。2)高血圧合併妊婦 42 症例についての
我々の検討では,高血圧が重症化した 9 例は,加重型妊娠高血圧腎症を発症した 11 例,
軽症高血圧にとどまった 22 例に比べ,児予後に問題のあった(周産期死亡,早期早産,
重症 IUGR)頻度が高かった(56% vs 18% vs 4.5% , p=0.005)
。つまり,高血圧合併妊婦管
理上の注意を喚起するためには,蛋白尿を伴わない高血圧重症化例は加重型妊娠高血圧腎
症発症例と同等以上のリスクとして扱うべきである。3)緊急に降圧が必要な場合は従来
ヒドララジンの経静脈投与が頻用されてきたが,近年ヒドララジンの効果発現の遅さと血
中半減期の長さによる過度の降圧の危険性が指摘されており,ニカルジピン経静脈投与の
有用性を考慮すべきと考えられる。
22
招請講演2 第1日 6月4日(土) 第1会場(サファイア)14:10 ∼ 15:10
座長:水沼 英樹(弘前大学大学院医学研究科 産科婦人科学講座 教授)
「最近の放射線治療の進歩 ―高精度放射線治療―」
講師:髙井 良尋(弘前大学大学院医学研究科 放射線科学講座 教授)
放射線治療においては,ターゲットである腫瘍とそれを取り囲む正常組織の時間的・空
間的不安定性が治療失敗の大きな原因となる。特に,定位放射線治療や強度変調放射線治
療(Intensity-modulated Radiotherapy: IMRT)などの最新の放射線治療技術を用いると
きには,極めて高度な位置精度が要求される。近年,照射装置に患者をセットアップした
状態で,腫瘍の位置を画像で確認しながら照射する画像誘導放射線治療(Image-Guided
Radiotherapy: IGRT)と呼ばれる放射線治療が可能となった。患者セットアップエラー
の補正や照射中の臓器移動への対応が可能となり高精度の放射線治療が安全に施行できる
ようになっている。
Ⅰ.新放射線治療技術
1.定位放射線治療法(Stereotactic Radiotherapy : SRT)
一回大線量の放射線を局所に集中させることによって,腫瘍の局所制御率の向上を図る
とともに,合併症の軽減をはかる放射線治療法である。ガンマナイフ照射装置によって,
頭蓋内病変に対して行われた治療が始めであるが,1990 年後半には直線加速器を用いた
体幹部腫瘍に対する定位放射線照射が行われるようになり,転移性脳腫瘍の他,早期肺癌
でも優れた治療成績が得られるようになった。T1 2 の早期肺癌の局所制御率は 80−90%,
5 年生存率で 75−85%で手術療法に匹敵する治療成績が達成されている。
2.強度変調放射線治療法(Intensity-modulated Radiotherapy: IMRT)
すべての方向からの照射野において,照射線量に強弱をつけ(強度変調)
,ターゲット
の3次元的形状に対する線量集中度を格段に高め,従来の方法では構成不可能であった任
意の線量分布を得るための方法である。腫瘍に高線量を照射しつつ,周囲の正常組織線量
を低線量に押さえることができる。IMRT を用いることによって,前立腺癌に対して線量
増加が安全に行えるようになり,81Gy/45 回 86.4Gy/48 回の照射が可能となった。線量
増加によって,5 年生化学的非再発生存率は中等度∼高度悪性群で 20−50%から 80−85%
と劇的に改善している。また,直腸障害発生率であるが,従来の方法の 70Gy 照射での発
生率 15−20%から,線量増加しているにも拘わらず数%に減少している。
Ⅱ.画像誘導放射線治療(Image-Guided Radiotherapy: IGRT)用機器
近年,IGRT 用に多くの画像取得装置が開発されている。X線透視装置を治療室に設置
したりやライナックガントリに搭載して腫瘍内に植え込んだメタルマーカの位置を確認し
ながら照射する装置やガントリ搭載 kV- X線透視装置を用いての CT(Cone-beam CT:
コーンビーム断層撮影法)での位置確認する装置などがある。また,特殊な装置として
IMRT 専用装置のトモセラピー,ロボットライナックのサイバーナイフがある。
Ⅲ.婦人科領域癌に対する IMRT の応用
子宮頸癌の放射線療法は,全骨盤に対する外部照射と腔内照射療法とを併用して行われ
る。全骨盤照射を IMRT で行うと,腸管障害や骨髄抑制の低減が可能となる。骨髄抑制
の低減は化学放射線療法を行う際の重要因子である。現在まで,婦人科領域癌に対する
IMRT の報告は数編有り,いずれもその優れた可能性について述べられている。
23
教育講演1 第1日 6月4日(土) 第1会場(サファイア)15:10 ∼ 15:50
座長:鈴木 博(岩手県立中央病院 副院長)
「婦人科術後患者のヘルスケア」
講師:倉智 博久(山形大学 医学部 産科婦人科学講座 教授)
「閉経」が女性の健康や QOL に大きなインパクトを与えることはよく知られていま
す。閉経によるエストロゲンの低下は,更年期障害,泌尿器・生殖器の萎縮のみならず,
骨粗鬆症や心血管系疾患の重要なリスク因子です。
最近,自然閉経よりも手術による人工的な閉経の方が,とくに,心血管系疾患の増加に
より大きなインパクトを及ぼすことが,相次いで報告されています(Atsuma F etal.
Menopause 2006; 13: 265; Parker WH et al. Obstet Gynecol 2009; 113: 1027)
。
婦人科悪性腫瘍の手術では,しばしば両側卵巣摘出(BSO)を余儀なくされますし,
閉経間近の患者には,卵巣がん予防目的で BSO が行われることもあります。
このような事実から,婦人科術後患者のヘルスケアは非常に重要な課題だと考えられま
す。本年 3 月まで 2 年間にわたって,日本産科婦人科学会の生殖内分泌委員会(委員長:
久保田俊郎東京医科歯科大学教授)の小委員長として「婦人科術後患者のヘルスケア」を
担当させていただきました。この研究にあたっては,東北地方の多くの先生方にもアン
ケートなどでご協力いただきありがとう存じました。この場をお借りして厚く御礼申し上
げます。
閉経後には心血管系疾患が急増することが知られていますが,閉経や卵巣摘出は,私た
ちのデータでも血管機能の指標である血流依存性血管拡張反応(FMD)や脈波伝播速度
(PWV)などに大きな影響を与えていました。また,本題である,
「婦人科術後患者のヘ
ルスケア」について上記の生殖内分泌委員会の調査結果を紹介いたします。本調査で明ら
かとなった点は,①閉経年齢に近い患者に対しては約 73%の高い率で BSO が行われてい
ること,② 50 歳以下,とくに 45 歳以下で BSO が行われると,更年期障害や脂質異常症
の頻度が増すこと,さらに,③前方視的研究では BSO の影響が最も顕著であったのは骨
代謝で,BSO 後 1 年間で約 7%と,自然閉経の場合の 2 倍近い骨塩量の減少が観察された
こと,でした。
本講演では,われわれのデータを含めて,婦人科術後,とくに,BSO 後の患者のヘル
スケアの重要性について discussion させていただきたいと考えています。残念ながら,何
歳以上の患者ならば BSO が真にメリットになりうるのかは明確ではありませんので,将
来の重要な課題と考えています。
24
教育講演2 第1日 6月4日(土) 第2会場(エメラルド)15:10 ∼ 15:50
座長:和田 裕一(仙台医療センター 院長)
「細胞骨格系に演出されるヒト命の始まりにおける女と男の美しい営み」
講師:寺田 幸弘(秋田大学大学院医学系研究科産婦人科学講座 教授)
体外受精から始まるヒトの誕生にかかわってすでに20年以上経過した。ヒトの始まりで
ある不妊治療からその終着である女性(老年期)医学までてがける私が最近常日頃感じて
いるのは,命とは配偶子や体という入れ物(世代)は替えてゆくが亡くならない流れであ
るということである。命の流れのそれぞれの美しいシーンに毎日のように巡り合うことが
できる産婦人科学は大変素晴らしい仕事であると私は確信している。
多様性の獲得はそれぞれの生命が存続するために必要なことがらの一つである。現存す
る生命の多くは有性生殖という方式をみいだし,命に多様性をふきこむことに成功し現在
の繁栄を築いた。産婦人科医療では,この多様性を創造するために求めあう男女の営みに
関する種々のシーンに遭遇する。男女の命は配偶子の段階からお互いが近づきあう強い力
を持っていることが理解できる。
ヒト受精をタイムラプスビデオで観察すると,精子侵入部位より卵子内に波状の細胞質
の動きが広がってゆくのが観察される。精子頚部に存在する精子中心体が細胞の微小管形
成中心として機能して,放射状の微小管の束(精子星状体)が卵子細胞質内に広がってい
る状態である。この精子の構造を起点とする構造は雌性前核(卵子の核)に到達する。雌
性前核表面には微小管というレールの上をあたかもトロッコ列車のように移動する,ダイ
ニンなどのモータータンパクが存在し,それらの働きによって,雌性前核と雄性前核(精
子核)が卵子細胞質内で接近する。接近した雌雄の前核はしばらく見つめあい(DNA合
成期)最終的に融合(syngamy)し,
第一分裂紡錘体が中央に形成される。男女が接近し,
愛し合うところより始まる「多様性の創造のために引き寄せあう雌雄の命」の最終ゴール
がこの卵子細胞質内の雌雄前核の融合であり,それは受精のゴールでもある。これらの能
動的なアクションを作り出すのは卵子だけでもなく,精子だけでもない双方の配偶子がも
つ種々の機能の精華であることは非常に興味深い。すなわち,配偶子とは雌雄それぞれの
ゲノムに引き寄せあい,融合するために必要な種々の機能が備わった素晴らしい生命の英
知であるということができる。
東北大学から秋田大学に迎えていただきはや半年が過ぎました。まだまだ試行錯誤の
日々で主任教授職の責務の重さを思い知る毎日を送っています。本学会では2009年に性分
化異常に関しての教育講演をさせていただきましたが,東北連合の皆様に私の研究に関し
ての話をまとまった時間でお伝えできるのは初めてで,私自身もとても楽しみです。たく
さんの動画や蛍光写真をみていただき,楽しい時間をすごしていただきたいと思っていま
す。
(3月23日記)
Terada Y.
Essential roles of the sperm centrosome in human fertilization: developing the therapy for
fertilization failure due to sperm centrosomal dysfunction.
Tohoku J Exp Med. 220:247-58. Invited Review for 90th Anniversary,2010
25
教育講演3 第2日 6月5日(日) 第1会場(サファイア)10:20 ∼ 11:00
座長:山田 秀和(東北大学大学院医学系研究科がん医科学連携講座婦人科腫瘍学分野 教授)
(宮城県立病院機構宮城県立がんセンター 医療部長)
「卵巣癌治療∼世界のコンセンサスに基づいた今後の展開∼」
講師:熊谷 晴介(岩手医科大学 医学部 産科婦人科学講座 講師)
杉山 徹(岩手医科大学 医学部 産科婦人科学講座 教授)
1.最近の動向
paclitaxel(TXL)/ carboplatin(CBDCA)療法(TC 療法)に第 3 の抗がん薬や維持療法の併用
では生存は改善されない。国際コンセンサスは,dose-denseTXL と腹腔内化学療法である。初
回手術にて切除不能と考えられる進行がんでは術前化学療法後に,interval debulking surgery
(IDS)を行うアプローチがオプションの 1 つとしてあげられる。再発がんに対する化学療法で
はプラチナ感受性症例で TC 療法に比べて pegylated liposomal doxorubicine(PLD)
/CBDCA
併用療法の非劣性が示され,毒性に基づく選択が可能となった。分子標的薬では bevacizumab
を TC 療法と併用し,さらに維持療法を行うことで生存の改善が示されたが,費用対効果が課
題である。また,PARP 阻害剤の BRCAness への有効性が期待されている。
2.初回化学療法
初回化学療法では TC 療法が標準化されているが,TXL を weekly に投与する dose-dense TC
療法(TXL 80mg/m2, day1,8,15 + CBDCA AUC 6, day1, 3 週毎,6 サイクル)は保険適応外だ
が,有効性が高い投与法として推奨できる。国際コンセンサスが得られているのは dose-dense
TXL と腹腔内化学療法(IP)であり,これに分子標的薬を加えた検討が加速している。
・dose-dense TC(dd-TC)療法:JGOG 3016 試験の結果,dd-TC 療法が通常の TC 療法に比べ
有意に無増悪生存期間(PFS)が延長し,毒性は貧血の増加以外に差は認めなかった。さらに
3年生存率も有意に優れており,最終的な全生存期間(OS)の解析が待たれる。過去の RCT
の中で最長の PFS が認められた dd-TC 療法は,世界で追試験が進行中である。
・腹腔内化学療法(IP)
:GOG172の結果と meta-analysisにより,IPも positive dataである。しか
し,IPを推奨する NCIからのクリニカルアナウンスメントが出されて5年以上が経過したが,依
然として標準的治療法になり得ていない。その大きな原因は GOG172の winner armの変則的なレ
ジメンが大きな壁となっている(iv TXL, day1 + ip CDDP, day2 + ip TXL, day8)
。JGOG3016
結果の発表後,GOG172 では dd-TXL をすでに用いていると突然主張を始めたが,結局この試
験では生存が延長した理由は iv/ipTXL(彼らが主張する dd-TXL)の効果なのか ip CDDP で
得られたのか謎のままである。毒性が強く投与完遂率が極めて低いため,大規模な追試験が
必要になったわけである。現在 CBDCA も含めて GOG やカナダで追試験が進行中で,日本で
も高度医療評価制度での先進医療下に第 II/III 相試験が開始された(JGOG3019)
。これらの試
験においても dd-TXL が control あるいは reference arm に導入されている。
・TC 療法に第 3 の抗がん薬を加えることで生存の改善が得られるか?: TC 療法に gemcitabine
(GEM)や PLD などの第 3 の抗がん薬を加えた 3 剤併用療法として TC+GEM,TC+PLD,また,
sequential doublet として CBDCA/topotecan → TC 療法と CBDCA/GEM → TC 療法の 5 群間
RCT(GOG182/ICON5 試験)が行われた。4312 例が登録された大規模試験であったが,その
結果 PFS, OS とも有意差は認められなかった。TC と TC+GEM を比較したヨーロッパでの
intergroup study でも median PFS は TC+GEM が劣り,OS では差がない結果が示された。
すなわち TC 療法を凌駕する結果が得られず,TC 療法に第 3 の抗がん薬を加えた3剤併用療
法や CBDCA 併用療法と TC 療法との sequential doublet は生存に寄与しないことが明確にさ
れた。
・第 3 の薬剤を長く続ける維持化学療法は有効か?:これまで行われた 4 つの RCT のうち,
GOG178 のみ PFS の改善が認められたが,その他の試験では negative で,さらに OS の改善
は全ての試験で認められなかった。GOG178 と類似した試験として,初回 TXL/Platinum 療
法後の完全奏効例を対象に6サイクルの TXL 維持療法を行った After-6 試験が Conte らに
よって発表された。250 例予定であったが登録が不良なため,200 例の時点で中間解析が行わ
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れ,2 年 PFS にて有意差は認められなかった。OS 解析はできなかったが生存曲線は維持療法
群が下回った。これらの結果により,初回治療終了後臨床的無病症例への抗がん薬を用いた
維持(地固め)化学療法の意義は,科学的には否定された。安易な長期投与は抗がん薬の蓄積
毒性の増加や新たな薬剤耐性を誘導する可能性がある。現在分子標的薬を用いた検討が加速
しているが,現時点ではほとんどのがん種で分子標的薬を用いた維持療法での有効性は認め
られていない。その中で,卵巣がんに対して TC 療法群と TC+bevacizumab(BEV)併用療
法,TC+BEV 併用療法+BEV 維持療法群とを比較検討した GOG 主導の RCT(GOG218)の結
果が ASCO 2010 で報告された。卵巣がん領域で初回化学療法に分子標的薬を用いた初の大規
模 RCT の報告ということもあり注目が集まったが,その結果 TC 療法群と TC+BEV 併用療
法間には有意差はなく,TC+BEV 併用療法+BEV 維持療法群でのみ有意な PFS の改善(3.8 ヶ
月の延長)が報告された。発表者や discussant は BEV の副作用に関しては問題ないと述べた
が,腸管穿孔や,高血圧には注意が必要と考えられる。さらに BEV 維持療法の治療期間が約
15 カ月におよぶこととそれに伴うコストが問題視されている。その後,ヨーロッパで行われ
た類似の試験(ICON7)が ESMO2010 で報告されたが,GOG218 同様 TC+BEV 併用療法+
BEV 維持療法群が TC 療法より有意に PFS を改善(1.7 ヶ月, suboptimal の subset では 5.3ヶ月)
した。ヨーロッパ EMEAは BEVの認可へ動いているが(アメリカ FDAは OSの mature data を
待つ),費用対効果も重要な課題であることが浮き彫りになった。今年の ASCO では,プラチ
ナ感受性再発症例を対象にした RCT(OCEANS)でも positive data として発表される予定で
あ る。 一 方, 国 際 RCT と し て JGOG も 参 加 し た 維 持 療 法 と し て の pazopanib(AGOOVAR16/VEG11065)では何故か投与期間が 1 年から 2 年に延長され解析される。分子標的薬
を用いた維持療法の有用性に関しては,もうしばらく今後の動向を見ていく必要があると思
われる。分子標的薬に関する臨床試験はバイオマーカーに基づいた対象で行われるのが理想
だが,その肝心なバイオマーカーが創薬の時点で明確にならないジレンマがある。効率的,
機能的に開発を進めていくには試験の国際グローバル化が必須であり,ここに日本も速やか
に参加することで,いわゆる drug lag の解消に役立つと考えられる。
・III/IV 期がんに対する術前化学療法(NAC)と IDS : IIIc/IV 期がんを対象に TXL/Platinum
を用いた NAC の RCT(EORTC 55971)の結果,NAC 後に IDS を行う群と標準治療群の PFS
と OS 共に差はないが,IDS では手術の安全面で優れていることが示された。この結果より,
現時点では初回手術で optimal に出来ないと考えられる進行がんでは NAC 後の IDS が 1 つの
オプションとして選択できる。本邦でも,臨床的に選別した対象に対する NAC の RCT が行
なわれている(JCOG0602)
。
3.再発がんに対する化学療法
・PLD:CALYPSO 試験は 1st/2nd ラインの TXL/platinum 療法後 6 ヶ月以上経過して再発した
プラチナ感受性症例をランダム化し,TC 療法を対照として PLD/CBDCA(CD)療法の効果と
毒性を検討した非劣勢試験である。976 例が登録され,その結果 CD 群に有意に PFS の延長
が認められた(11.3 ヶ月 vs 9.4 ヶ月 , HR 0.823, p=0.005)
。非血液毒性全体は TC 群が高率で,
早期中止の割合も TC 群で高かった。特に神経毒性は TC 群で高く,CD 群では手足症候群,
悪心,口内炎などが高かった。血液毒性は TC 群で好中球減少が,CD 群で血小板減少が高率
に発現した。この結果,プラチナ感受性再発症例に対して PFS における PLD/CBDCA(CD)
療法の非劣勢が証明された。CD 群で治療期間が長く(4 週毎)
,TC 群の方が 2nd 再発や早期
中止例が多いことなどの問題点が指摘されており,今後の OS の解析が待たれる。しかし,再
発がん治療には多くの選択肢が必要であり,毒性の違いを見極めて TC 療法と CD 療法を同
列で使い分けることは推奨できるだろう。PLD が CBDCA の過敏反応を抑制する可能性も示
唆されており興味深い。今後 PLD や GEM を用いた CBDCA 併用療法について,TC 療法を対
照としてその効果・毒性の科学的な検証が必要と考える。
・ポリ ADP リボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤:腫瘍細胞の DNA 相同組換え修復能が欠損
している BRCA1/2 変異(BRCAness)保有者で選択的に腫瘍細胞効果が得られる。プラチナ
ベースの化学療法による奏効は DNA 相同組換え修復能と関連している。この試験は 50 例を
対象にした小規模なものであるが,PARP 阻害剤である Olaparib は BRCA1/2 変異卵巣がん
に対する抗腫瘍効果が認められ,その効果はプラチナ感受性と関連することが示された。漿
液 性 腺 癌 は BRCAness を 有 す る 確 率 が 高 く, 日 本 も 参 加 し た 再 発 漿 液 性 腺 癌 に 対 す る
Olaparib の国際第 II 相試験等 2 つの試験が終了し,positive data で(ASCO 2011 で発表予定),
次の段階に進むことが期待されている。
・Trabectedin:海洋生物ホヤ(Ecteinascidia Turbinata)から単離された新規抗がん薬である
が,PLD と併用することで PLD 単剤より奏効率や PFS を改善されることが報告された。毒性
も許容できると考察されているが,肝機能障害が高頻度であることは留意が必要であろう。我
が国でも治験が行われるかもしれないが,毒性に加え,薬剤低温保存など課題がある。
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教育講演4 第2日 6月5日(日) 第2会場(エメラルド)10:20 ∼ 11:00
座長:平野 秀人(秋田赤十字病院 総合周産期母子医療センター長)
「妊娠と悪性腫瘍−婦人科腫瘍を中心に−」
講師:藤森 敬也(福島県立医科大学 医学部 産科婦人科学講座 教授) 悪性腫瘍は生殖年齢の女性における死亡原因の第 2 位を占め,約 0.1%の妊娠に合併す
ると報告されている。妊娠に多く合併する悪性腫瘍としては,子宮頸癌,乳癌,悪性リン
パ腫,悪性黒色腫があげられ,それらで全体の 70 ∼ 80%を占める。さらに本邦では,そ
れらに加え,胃癌が好発する。一方,白血病や卵巣癌,大腸・直腸癌は比較的稀と報告さ
れている。
妊娠中に認められる悪性腫瘍の取り扱いの基本方針としては,妊婦(母体)の生命を第
一に考え,母体の悪性腫瘍の治療が優先されなくてはならないことは言うまでもない。そ
の上で,胎児・新生児への可能な限り影響が少ない診断方法,治療方法が選択されるべき
である。さらに,可能な限り将来における母体への妊孕力温存も考慮されるべきである。
それらを決定していく上で,妊娠が悪性腫瘍の進展に及ぼす影響,ならびに悪性腫瘍およ
び診断方法・治療が妊娠に及ぼす影響を正確に評価することが重要である。妊娠中期以降
胎児生存が可能となる妊娠週数の場合,胎児成熟を期待しある程度の妊娠延長をはかり,
その後に悪性腫瘍の治療の開始が考慮される場合があるが,この場合,患者,その家族へ
の十分なるインフォームド・コンセントが必要となる。
妊娠中の悪性疾患では母体の最善の治療と胎児の安全の間に隔たりがあることが多く,
患者も医師も治療法を選択する際には非常に大きなストレスにさらされる。多くの悪性疾
患では,妊娠中はそのホルモン環境のために腫瘍の進行を促進するという報告がみられて
いたが,近年では妊娠そのものが予後を悪化させる因子とならないとする報告もある。妊
娠中に悪性疾患が見つかった場合,妊娠を中断するというのではなく,母児ともに生存で
きるあらゆる可能性をさぐり,治療法,児の娩出時期・方法を選択することが必要である。
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ワークショップ 第2日 6月5日(日) 第1会場(サファイア)13:50 ∼ 15:50
「産婦人科診療ガイドライン-婦人科外来編の発刊を受けて」
座 長:八重樫伸生(東北大学大学院医学研究科 婦人科学分野 教授)
蓮尾 豊(弘前女性クリニック 院長) 「婦人科腫瘍分野」
講師:横山 良仁(弘前大学 医学部 産科婦人科学講座 准教授)
産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編はオフィスギネコロジーに従事する医師,看
護師を対象としている。婦人科腫瘍分野では,すでに子宮頸がん,子宮体がん,卵巣がん
の治療ガイドラインが刊行されているものの,ベセスダシステムの導入と HPV ワクチン
が承認されたことにより煩雑さを増した細胞診の取扱いあるいは異形成のフォロー,
HPV ワクチンの対象者,HPV-DNA 検査の意義といった従来のガイドラインや取り扱い
規約にないテーマが産婦人科診療ガイドラインには掲載されている。また良性腫瘍の取り
扱い指針も示され,日本における標準的な診断,治療が明記されたことは大いに評価され
るべきである。一方で,HPV ワクチンの接種方法や子宮頸部初期病変の取扱い等につい
ては,以下に示すようにまだ議論の余地があり広く意見の集約を行い今後の改訂につなげ
ていくことが必要と思われる。
HPV ワクチン接種の対象者には推奨レベルの違いはあるものの 10 歳から 45 歳までの
女性とされた。接種の際には,治療ではなく予防ワクチンであること,スケジュールと費
用,子宮頸がん検診の必要性,有害事象を説明する事が義務化された。対象年齢は,生殖
年齢でもある。ワクチン接種中に妊娠した場合には,残った回数は出産後に行う事で解決
されるが,ワクチンが流産や先天奇形に及ぼす影響の説明は不足している感がある。また
アナフィラキシーの可能性には言及されているがその頻度については詳細なデータがある
にもかかわらず明記されていない。
HPVDNA 検査の臨床的意義については,ASC-US の場合,コルポ診の必要性を判定す
るためハイリスク HPV の有無の検査を行うことは保険診療にも収載されコンセンサスは
得られているものの,細胞診にハイリスク HPV 検査を併用すること,CIN1-2 の進展評価
のために HPV タイピング検査を行うことは,コスト高,検査数の増加,偽陽性の増加,
精密検査の増加といった問題点が示唆される。
組織診で確認された CIN3 について,病変の全範囲が可視できる場合にはレーザー蒸散
術が考慮されている。一方,子宮頸がん治療ガイドラインでは,CIN3 と診断されたもの
の中に少なからず微小浸潤癌や浸潤癌が含まれことがあるためCIN3 にはグレードBで子宮
頸部円錐切除術が推奨されている。産婦人科診療ガイドラインではレーザー蒸散術はあくま
でも円錐切除の代用法として記述されていることを注意深く読み解くことが必要である。
その他,細胞診の検診間隔,内膜細胞診の取扱い,内膜病変の取扱い,良性卵巣腫瘍の
フォロー・治療といった日常診療で遭遇する場面を本講演では解説する。
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ワークショップ 第2日 6月5日(日) 第1会場(サファイア)13:50 ∼ 15:50
「産婦人科診療ガイドライン-婦人科外来編の発刊を受けて」
「内分泌・不妊分野」
講師:藤井 俊策(むつ総合病院 産科部長)
今回のガイドラインでは「内分泌・不妊分野」において 14 の CQ が示された。そのう
ち,特に不妊と関係がある以下の 10 の CQ について,ガイドライン作成委員会,評価委
員会,さらにコンセンサスミーティングで議論されたことを踏まえて解説する。
CQ304 無排卵性の月経周期異常はどう管理するか?
CQ306 高プロラクチン血症の診断は?
CQ307 高プロラクチン血症の治療は?
CQ308 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の診断・治療は?
CQ309 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の発症や重症化の予防は?
CQ310 早発卵巣不全(POF)の取り扱いは?
CQ311 不妊症の原因検索としての初期検査は?
CQ312 配偶者人工授精(AIH)を行ううえでの留意点
CQ313 男性不妊治療は?
CQ314 不育症に関する染色体異常の取り扱い
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ワークショップ 第2日 6月5日(日) 第1会場(サファイア)13:50 ∼ 15:50
「産婦人科診療ガイドライン-婦人科外来編の発刊を受けて」
「女性ヘルスケア分野」
講師:高橋 一広(山形大学 医学部 産科婦人科学講座 准教授)
「女性のヘルスケア分野」には,「緊急避妊法(emergency contraception: EC)
」,
「経
口避妊薬(oral contraceptives: OC)
」にはじまり,「思春期」,「更年期障害」,「閉経後骨
粗鬆症」など女性の様々なライフステージにおける問題点とその対処法が記載されている。
EC の項で特記すべきことは,2010 年 12 月にレボノルゲストレル(LNG)が緊急避妊薬
として厚生労働省で承認されたことである。今までは EC として中用量ピルを使用する
Yuzpe(ヤッペ)法が一般的であったが,中用量ピルは緊急避妊に対する薬剤として承認
されておらず,医師の判断と責任の下に行われてきた方法である。
「緊急避妊薬はあくま
で最後の避妊手段であり,確実な避妊の習慣こそが求められる」との意見がある。そのた
め,日本産科婦人科学会は「緊急避妊法の適正使用に関する指針」を作り,条件によって
緊急避妊薬を処方するものの,その後は低用量ピルによる避妊などを指導して,緊急避妊
薬を繰り返し使用することを抑える方針を掲げている。LNG 法は Yuzpe 法に比べると,
悪心・嘔吐の発現率がより低くなり,また,妊娠阻止効果はより優れている。さらに
LNG 法は内服が 1 回のみであり,患者コンプライアンスも高まると思われ,今後は LNG
法が経口の EC として第一選択として推奨される。EC を行っても「妊娠する可能性があ
る」ことを必ず説明し,必要に応じて来院させ妊娠の確認を行うことが必要である。ま
た,EC を施行後に重要なことは,妊娠が回避された後の避妊指導を徹底することである。
経口避妊薬(OC)は可逆的避妊法の中で最も避妊効果が高く,原則的にすべての生殖年
齢の女性に処方可能な薬剤である。OC に対する CQ は 2005 年 12 月に改訂された「低用
量経口避妊薬の使用に関するガイドライン」を参考に記述されている。OC は 1999 年 6
月に承認されて以来,その服用者は 2001 年 20 万人,
2009 年 65.7 万人と近年増加している。
OC 服用により満足している点として,1. 月経が周期的になった,2. 避妊効果が高い,3. 月
経痛の軽減,4. 月経量の減少など,がアンケートで明らかになっており,OC は避妊効果
のみならず,月経コントロールによる QOL 向上に寄与している。OC 服用前に不安であっ
た点として,1. 副作用,2. 毎日の服用,3. 太ること,などがあげられている。OC の最も重
要なリスクである静脈血栓症(VTE)は,OC 服用によりそのリスクが 3 ∼ 5 倍に増加す
ると言われている。しかし OC を服用しなくても,妊娠でも VTE のリスクは 12 倍に増加
することを説明し,一般的に OC は「妊娠・出産」よりも安全であることを認識させるこ
とが大切である。また OC 服用で太ることはないことも教えておきたい。
その他,本講演では,EC 施行時や OC 投与時の注意すべき点に加え,思春期女子の診察
と治療上の留意点,閉経後骨粗鬆症の予防と治療についても解説する。
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ワークショップ 第2日 6月5日(日) 第1会場(サファイア)13:50 ∼ 15:50
「産婦人科診療ガイドライン-婦人科外来編の発刊を受けて」
「更年期障害・漢方療法分野」
講師:武田 卓(東北大学先進漢方治療医学講座 准教授)
女性ヘルスケア編のなかから「更年期障害の診断・治療」「女性心身症」「漢方治療」を
中心に概説したい。
「更年期障害の診断」については世界的にも確定的なものはなく,日
本における更年期医療での現状を考慮し定義をおこなった。内容的には日本更年期医学会
発刊の「更年期医療ガイドブック」に従い,自律神経失調症状だけでなく精神症状やその
他の腰痛・関節痛といった運動器症状,泌尿生殖器症状もふくめた広い範囲での定義をお
こなった。
「更年期障害の治療」については,自律神経失調症状が中心のものにはHR
T,不定愁訴の多いものには漢方治療,精神神経症状の強いものには抗精神薬・カウンセ
リングを用いるといった,それぞれの治療法の使い分けを示した。HRTについては
2009 年に発刊された「ホルモン補充療法ガイドライン」との整合性をはかるとともに,
2009 年以降の最新のEBMに基づく文献を追加し,さらにこれまで記載のなかった肺癌
のリスク上昇の可能性についても新たにアンサーにしめした。また,各疾患別の詳細なリ
スクは解説に書くのにとどめ,アンサーには「マイナートラブル」
「頻度は少ないが重篤
な合併症」
「相対禁忌となる疾患」の3つに大きく分けて記載することにより,実際の外
来診療での利便性を考慮する内容とした。さらに,有害事象については投与方法・投与期
間・年齢等で個別化して減らすことが可能であることを明示し,有害事象により不必要に
HRT施行を躊躇することがないよう留意した。「女性心身症」については,「更年期うつ
病」と「月経前症候群」の2疾患を中心に記載した。精神科・心療内科と婦人科の境界領
域となる疾患であり,どちらも女性のプライマリーケアを担う婦人科医での診断・治療を
制限するものではないが,症状の強い場合や治療による症状の改善のない場合には心療内
科・精神科へのコンサルテーションを行うことを勧めた。
「月経前不快気分障害・PMD
D」については「月経前症候群」の重症として示すのみにとどめ,診断基準についても
「月経前症候群」の診断基準のみを示した。「漢方治療」については基幹学会が発行するガ
イドラインとしては推奨度をつけて記載するのは初めてとなる。更年期医療の現場では漢
方治療が広く使用されていること,ある程度のEBMも報告されていることから「更年期
障害における漢方治療・代替医療」としてCQを独立させた。漢方治療・代替医療ともに
薬物有害事象に対する注意喚起をアンサー中に明示した。
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一 般 演 題
1 .再発し治療に苦慮したuterine tumor resembling ovarian sex cord
tumor(UTROST)の一例
○岩間 英範,名取 徳子,坂本 翼,高田 杏奈,畑山 伸弥,葛西真由美,
鈴木 博
岩手県立中央病院
uterine tumor resembling ovarian sex cord tumor(UTROST)は子宮体部に発生す
る,卵巣の性索間質性腫瘍に類似した腫瘍であり,子宮体癌取扱規約では,性索様成分が
大部分を占める稀な子宮腫瘍としてその他の腫瘍に分類される。稀なため長期予後に関
しては不明であるが,多くは予後良好とされており,悪性の経過をたどった報告は数少な
い。よって,その場合の治療方針は定かでない。今回我々は子宮筋腫の術前診断で手術を
行い,術後組織診にて本疾患と診断され,術後約 1 年で骨盤内に再発を認め,腫瘍摘出術
と術後化学療法を行ったが無効であった症例を経験したので,若干の文献的考察も加えて
報告する。
【症例】54歳。 7 妊 4 産。50歳閉経。約 1 カ月間持続する閉経後不正出血と腹
部腫瘤感を主訴に近医を受診し,貧血と変性子宮筋腫の診断で精査加療目的に当院紹介初
診となった。同診断で腹式単純子宮全摘術・両側付属器摘出術を施行し,術後組織診にて
UTROSTと診断された。術後のCT上明らかな遠隔転移やリンパ節腫大は認めなかった。
3 カ月毎に外来で経過観察を行ったが,術後12カ月でエコーにて骨盤内腫瘍と腹水貯留を
認め,翌月には腫瘍の増加,増大を認めた。術後13カ月で腫瘍摘出術(不完全摘出)を
行い,組織診にて再発と診断した。薬剤感受性試験(PTX,DTX,GEMのみ中感受性)
の結果,および文献的考察を加味してTC療法を行ったが, 1 クールで腫瘍の急激な増大
を認めた。GEM単剤療法に切り替えたが, 1 クールで腫瘍は更に増大した。以後はbest
supportive careに切り替え, 3 カ月経過した現在も対処療法中である。
2 .境界悪性傍卵巣腫瘍の 2 症例
○鈴木 聡,古川 茂宜,若木 優,安田 俊,添田 周,高橋 秀憲,
渡辺 尚文,西山 浩,藤森 敬也
福島県立医科大学産科婦人科
【緒言】傍卵巣腫瘍はWolff管,Müller管ときに中皮由来で付属器腫瘍の10∼20%に見ら
れる。そのほとんどが良性腫瘍であり,境界悪性の報告は自験例も含め文献上本邦で11
例,海外で40例と極めて少ない。今回我々は境界悪性傍卵巣腫瘍を 2 例経験したので報告
する。【症例 1 】38歳, 0 妊 0 産。近医にて 2 年前より右卵巣腫瘍を指摘されフォローさ
れていたが,内部にわずかに充実性病変を認め当科を受診した。経腟超音波上右付属器腫
瘍は45∼50mm,充実部分は 7 ∼ 9 mm,腫瘍マーカーは陰性であった。腫瘍の増大傾向
を認め手術の方針となった。術中迅速病理診断でserous borderline tumorと診断され,右
付属器切除術+大網部分切除を施行された。術後病理診断でも同様の診断で大網には転移
を認めず,stageⅠc(b)の診断。現在当科外来にて再発なく経過観察中である。【症例
2 】30歳, 1 妊 1 産。続発性不妊症にて前医通院中,経腟超音波上右卵管水腫および卵管
内の充実性部分を認め精査目的に当科を受診した。経腟超音波上腫瘍は46×46mmの嚢胞
性病変で内腔に14× 9 mmの充実性病変を認めた。腫瘍マーカーは陰性。腹腔鏡下手術を
施行し,右傍卵巣腫瘍を認め腹腔鏡下にこれを核出した。術中腫瘍が破綻し無色透明の内
溶液が流出した。術後病理診断にてmucinous borderline tumorと診断された。追加手術
は施行せず現在当科外来にて経過観察中である。【考察】境界悪性および悪性傍卵巣腫瘍
は稀な症例であるが,付属器腫瘍にわずかでも充実性部分を認めた際にはこれらの疾患も
鑑別に入れるべきである。文献上予後は良好とされているが,症例数も少なく治療法は統
一されていない。主に生殖年齢の女性に発生するため妊孕性の温存など患者のライフスタ
イルに合わせた治療が必要と思われる。
33
3 .腹膜原発中皮腫の 1 例
○古川 茂宜,若木 優,添田 周,渡辺 尚文,西山 浩,藤森 敬也
福島県立医科大学 腹膜原発中皮腫は体腔表面の漿膜組織より発生する稀な疾患であり,症例が少なく,治
療や予後に関して一定した報告はない。今回腹膜原発性高分化型乳頭状中皮腫の 1 例を経
験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。44歳, 1 経妊 1 経産。腹部膨満を主訴
として近医を受診した。CT上大量腹水を認めたため当科を紹介された。当科診察上子宮
卵巣は正常大であり,骨盤腔内には多量の腹水を認めた。癌性腹膜炎が疑われたため,術
中迅速病理検査をおいて当科で開腹術を施行した。子宮および卵巣は肉眼的に正常であ
り,腹腔内には腸管表面・大網に粟粒大の広汎な播種性病変を認めた。腹式単純子宮全摘
術,両側付属器切除術,大網部分切除術を施行した。術後病理組織診で腹膜原発性高分化
型乳頭状中皮腫の診断であり,術直後も腹水の再貯留を認めた。再開腹を施行し,腹腔内
温熱療法および抗癌剤(シスプラチン+マイトマイシンC)の腹腔内投与後,腹腔内ポー
トを造設した。術後 3 カ月現在,パクリタキセル点滴静注+カルボプラチン腹腔内投与に
よる化学療法を施行中であり,腹水は著減傾向である。
4 .HCGマーカーが非典型的な推移を示した臨床的絨毛癌の一例
○藤澤 夏行,黒澤 靖大,松田 尚美,小泉 俊光
岩手県立中部病院
【症例】全胞状奇胎のためH20年 7 月に子宮内容掻把術を 2 回施行。その後血中HCG定
量値は感度以下まで低下し,いわゆる経過順調型であった。H21年12月HCG-βサブユニッ
トは陰性であったが,HCG定量値が13mIU/mLと陽転化し,その後も18mIU/mLと上昇
傾向を示した。H22年 2 月のCTでは明らかな転移巣は指摘されなかった。その後もHCG
定量値はわずかながら上昇傾向であったが,HCG-βサブユニットは陰性のままであった。
生理的LHとの交差反応を除外すべく,GnRHaを使用してみたが,HCG定量値はわずかに
低下したのみであり,その 1 ヶ月後のH22年 7 月には97mIU/mLまで上昇した。H22年 7
月のCTで右肺に14mmの病巣が出現し,PET-CTでも同部位に集積を確認した。HCG定
量とHCG-βサブユニットとの乖離があるため,H22年 8 月にHCG-β-CTPを導入したとこ
ろ,93.3mIU/mlと高値であることより肺転移と診断した。この時点で絨毛癌診断スコア
が 9 点のため,臨床的絨毛癌と診断し,H22年 9 月からH23年 2 月までにMEA化学療法 7
コース施行中である。【考察】絨毛性疾患のフォローアップとしてはHCG定量が基準値以
下になった後に,HCG検出精度の高いHCG-βサブユニットまたはHCG-β-CTPを用いて
のフォローが推奨されているが,どちらのマーカーを用いるかは施設ごとに異なり,現状
では一定の基準は設けられていない。今回我々はHCG検出精度の高いHCG-βサブユニッ
トに先行し,HCG定量が上昇するという非典型的なマーカー推移を示した臨床的絨毛癌
の一例を経験した。絨毛性疾患の早期診断のためには,血中HCG定量,HCG-βサブユ
ニット,HCG-β-CTP三者でのフォローが万全であると考えられた。
34
5 .当院における妊娠と薬カウンセリング外来の試み
○佐藤聡二郎 1 ),小澤 克典 1 ) 3 ),宮下 進
山本 枝美 2 ),二木 彰 2 )
1 )宮城県立こども病院産科, 2 )同薬剤部,
3 )東北大学大学院医学系研究科胎児医学分野
1)3)
,室月 淳
1)3)
,
【目的】妊娠中に使用した薬剤が胎児に及ぼす影響を心配する妊婦に対し,エビデンス
に基づいた情報提供と心理的ケアを行う目的で「妊娠と薬カウンセリング外来」を設置し
た。今回これまでに実施した事例を検討しその意義と今後の方向性を検討する。
【方法】
当院または他院通院中で妊娠に気づかず薬剤を使用した妊婦,合併症を治療中もしくは内
科治療中で妊娠希望ある女性10例を対象とした。国立成育医療センター(東京都世田谷
区)の「妊娠と薬情報センター」と協力して得られた薬剤情報を,当院薬剤部と協議の上
カウンセリング資料として作成し産科医師と担当薬剤師でカウンセリングを行った。相
談前後で患者の心情を数値化して自己評価も行った。
【結果】当院での症例は 8 例,院外
からの紹介症例は 2 例であった。相談を受付したときの妊娠週数は15± 9 週,実際のカ
ウンセリングを行ったのは18± 8 週であった。相談された薬剤は催眠鎮静薬・抗不安薬
(69.5%)や精神神経用薬(11.7%)が多く,その他は気管支拡張薬・副腎皮質ステロイ
ド薬・抗ウィルス薬・漢方薬などであった。カウンセリング前後における自己評価では,
薬剤使用に対する不安(45% vs.14%,p=0.043),胎児影響に対する不安(47% vs.
17%,p=0.042)でいずれも有意な改善を認めた。
【結論】エビデンスに基づいた最新情
報とカウンセリングは妊婦の薬剤使用時の不安除去に有用であることがわかった。催眠鎮
静薬・抗不安薬や精神神経用薬の相談事例が多かったのは近年の社会環境を反映したもの
と考えられ,今後とも妊婦のニーズに対応するために最新のデータに基づいたカウンセリ
ングの充実が必要であると考えられた。
6 .当院における腟及び外陰血腫の検討
○齋藤 彰治,高橋可菜子,渡邉 憲和,小篠 隆広,阿部 祐也,小田 隆晴
山形県立中央病院 産婦人科
平成15年11月から平成23年 5 月まで 7 症例の腟及び外陰血腫を経験した。妊娠中の外傷
による外陰血腫が 1 例で,他は分娩時の血腫であった。保存的に経過をみられた症例が 4
例,切開縫合止血を行った症例が 1 例そして選択的動脈塞栓術を施行した症例が 2 例あっ
た。血腫が腟の頭側にあって切開縫合止血が困難な位置であり,血腫も大きくてショック
状態にあった症例には動脈塞栓術を選択した。血腫が腟の尾側に位置して経過観察が容易
であり,血腫の増大がなく全身状態の安定している症例には保存的治療を選択した。既に
血腫の破裂があり,出血点の検索が容易であった症例には切開縫合止血を選択した。分娩
経過は自然分娩が 2 症例で,吸引分娩が 4 症例であった。母体年齢は27歳から36歳で平均
30.3歳であった。初産婦は 3 症例で,経産婦は 4 症例であった。陣痛促進剤の使用は 2 症
例で 4 症例では使用していなかった。児の体重は2,860gから3,344gで平均3,167gであった。
会陰切開は 5 症例で施行し, 1 症例では施行していなかった。会陰切開と同側であったの
が 4 症例で,対側であったのは 1 症例であった。出血点が同定できたのは 3 症例で,閉鎖
動脈が 1 症例,閉鎖動脈と子宮動脈が 1 症例,会陰動脈が 1 症例であった。
腟及び外陰血腫は出血性ショックになることも多く,発生部位や血腫増大速度などを的
確に判断し対応していく必要がある。
35
7 .当院における過去 5 年間の骨盤位症例の検討
○齋藤 美貴,橋本吏可子
津軽保健生活協同組合健生病院
【目的】 2000年にLancetに発表された論文,「正期産単胎骨盤位においては,選択的帝
王切開を選択した方が経腟分娩を選択するより児の周産期予後がよい」とする報告をもと
に,骨盤位経腟分娩は減少している。しかし帝王切開既往は次回妊娠時のリスクを上昇さ
せ,VBACにも骨盤位経腟分娩と同様に適応と分娩管理能力が求められる。このため当院
では2003年から外回転にも取り組み始めた。現在の骨盤位症例への対応の基本は妊娠34週
で骨盤位だった場合には骨盤位の分娩方法についてと外回転について説明し,妊娠35週で
胎位を確認し,外回転を希望される場合には妊娠36週で施行している。今回我々は過去 5
年間の当院での分娩症例を対象に,骨盤位症例を後方視的に検討したので報告する。
【方法】 2006年 1 月 1 日より2010年12月31日までの 5 年間の当院での総分娩数から双胎
ならびに30週以前のIUFDを除外した1418件を対象とした。
【結果】 里帰りやtermでの転院・飛び込みなど妊娠30週での胎位が不明なのは290件で,
1128件中妊娠30週での骨盤位は182件16%であった。そのうち妊娠36週でも骨盤位のもの
は36件と 1 / 5 となっていた。また妊娠36週では頭位でその後再び骨盤位となったものが
2 件あった。外回転施行症例は1418件中28件2.0%でうち成功と不成功は丁度半々 14件ず
つであった。分娩時骨盤位症例は35件2.5%で,初産21件60%・経産14件40%,選択帝王切
開19件54%・緊急帝王切開 9 件26%・経腟骨盤位分娩 7 件20%であった。
【結論】
今後とも,母にとっても子にとっても侵襲が少なく尚且つ将来につながる診療
を目指したいと考えている。
8 .宮城県における未受診飛び込み分娩の現状
○谷川原真吾 1 ),崔 佳苗実 2 ),上原 茂樹 3 ),和田 裕一 4 ),中川 公夫 5 )
宮城県産婦人科医会: 1 )仙台赤十字病院 2 )東北大学 3 )東北公済病院,
4 )仙台医療センター 5 )中川産婦人科
【目的】宮城県における未受診飛び込み分娩の現状と問題点を明らかにし,未受診妊婦
を減らすための対策を講じる。
【方法】宮城県産婦人科医会に所属し分娩を取り扱う47医
療機関に郵送によるアンケート調査を行い,結果を集計分析した。
【成績】アンケートの
回収率は100%であった。未受診飛び込み分娩数は,平成21年は 8 施設20件,平成22年は
13施設40件であった(最近の宮城県の年間総分娩数は約19000件)。我々が平成16年に行っ
た調査では22施設61件であったので,今回は施設,件数とも減少していた。初産経産別で
は,初産婦の割合が21年は35%,22年は65%であった。分娩時の妊娠週数では,36週未満
の早産が21年は20%,22年は25%と高い割合で,2500g未満の低出生体重児もそれぞれ 6
人と 9 人であった。患者の社会的背景では,未入籍者が21年は45%,22年は67.5%で,全
体では36名(60%)が未入籍であった。健康保険の未加入者もそれぞれ 2 名, 5 名で,分
娩費の未払いが 5 件と 7 件,計12件(20%)に発生していた。【結論】今回の調査では平
成16年に比べ未受診飛び込み分娩は減少していたが,22年は21年より大幅に増加しており
(特に初産婦)今後も推移を見ていく必要がある。また患者は産科的にハイリスクなだけ
でなく社会的にもハイリスクで,保険の未加入や未収金の発生など多くの問題が明らかに
なった。今後未受診妊婦を減らすためには産科医の努力だけでは不十分で,行政の関与を
求めていくことが必要である。
36
9 .当院における母体搬送の現状と問題点
○阿部 雄悟,中村 聡一,清水 孝郎,山内 隆治
白河厚生総合病院
【目的】福島県は県内を大きく 6 地域に区分し,総合周産期母子医療センター(福島県
立医大)
,地域周産期医療センター 5 施設及び周産期医療協力機関 5 施設と共に福島県周
産期医療ネットワークを構築している。当院は周産期医療協力機関であり,当院におけ
る母体搬送の現状を分析し,地域のネットワークの問題点を検討した。
【方法】平成15年
から 5 年間における当地域分娩施設からの母体搬送例を対象とし, 1 )搬送依頼の理由
2 )分娩様式 3 )管理 4 )ネットワークの問題点について検討した。【成績】検討期間に
おける母体搬送例は38症例であった。 1 )前期破水を含む切迫早産20例(40%)が最も多
く,ついで骨盤位 6 例(12%),妊娠高血圧症候群 4 例( 8 %),子宮内胎児発育遅延 4
例( 8 %),双胎,前置胎盤などその他の理由が16例あった。なお,一次施設の多くが緊
急帝切に対応できないといった社会的要因により当院に搬送されている。 2 )搬送母体の
58.3%が24時間以内の分娩であり, 1 週間以内では86.1%であった。搬送母体の帝王切開
率は52.6%と,全分娩の帝王切開率24.1%に比して高かった。 3 )NICU管理を必要とした
症例は21例,55.3%であった。 4 )円滑な母体搬送を行うために福島県では決められた医
療情報提供書を使用し搬送してくることになっているが,決められた医療情報提供書を使
用し搬送された症例は14例(37%)と少数であり,正確な医療情報を知りえないという問
題点がある。
【結論】周産期医療ネットワークの啓蒙と一次施設も含めた周産期医療ネッ
トワークの連携も密にする必要があると思われた。
10.当院における胎児消化管閉鎖症例の検討 ○安田 俊,若木 優,鈴木 聡,浅野 仁覚,高橋 秀憲,藤森 敬也
公立大学法人福島県立医科大学産科婦人科学講座
【目的】超音波診断技術の進歩による種々の胎児形態異常が出生前診断されるように
なった。消化管閉鎖の胎児超音波診断においては1975年にLovedayらによって十二指腸閉
鎖の超音波診断が報告されて以降,食道,幽門,十二指腸・小腸,結腸,直腸肛門閉鎖が
診断されるようになった。消化管閉鎖症は出生後外科的介入が早期に必要である疾患群で
あり,出生前の診断・紹介は患者側の心理的準備を含めた安定した医療につながること
が考えられる。当科におけるこれまでの消化管閉鎖症例を顧みることとした。
【方法】当
科における2000年∼2010年までの症例(総分娩数4365件)を対象とし,この間における消
化管閉鎖疾患(先天性食道閉鎖,先天性十二指腸閉鎖,先天性空腸∼回腸閉鎖,鎖肛)に
関して,当科および当院小児外科の記録をもとに妊娠中,新生児期,その後を可及的に追
跡し個々の症例における診断時期,管理方法,治療介入時期,その後に関して後方視的に
検討した。
【成績】同期間における当院先天性消化管閉鎖疾患として先天性食道閉鎖(14
症例)
,先天性十二指腸閉鎖( 9 症例)
,先天性空腸∼回腸閉鎖(17症例)
,鎖肛(35症例
(うち 2 例は総排泄腔遺残))が挙がり,同期間の症例数は延べ73であった。当科への出生
前紹介率は先天性十二指腸閉鎖(67%),先天性空腸∼回腸閉鎖(58%),先天性食道閉鎖
(33%)
,鎖肛( 0 %)の順であった。各消化管閉鎖疾患における文献上の出生前診断率や
羊水過多の合併率との比較を行い,当施設を含めた福島県での消化管閉鎖疾患の診断,管
理の問題点を考察した。【結論】先天性十二指腸閉鎖が最も出生前診断率が最も高いもの
の,出生後に診断される先天性消化管閉鎖疾患は多い。鎖肛の出生前診断率は低く 0 %で
あった。消化管閉鎖性疾患は出生後早期に発見できれば予後は悪くなく,出生前のみなら
ず出生後においても診断における産科医の役割は大きい。
37
11.術前診断が困難であった後腹膜発育子宮筋腫の一例
○佐藤いずみ,黒澤 大樹,大槻 健郎,吉永 浩介,永瀬 智,伊藤 潔,
八重樫伸生
東北大学病院 産婦人科
術前診断に苦慮した巨大な後腹膜発育の漿膜下筋腫を経験したため報告する。
症例は31歳, 0 妊 0 産で, 1 年ほど前より腹部膨満感を自覚していた。急性腸炎のため
近医受診した際に腹部腫瘤を指摘された。腹部超音波検査を施行したところ腹部に巨大な
腫瘤を認めたため総合病院内科を紹介受診となった。CTにて長径30cm大の巨大腫瘤を認
め,同院産婦人科を紹介受診したところ,卵巣腫瘍,腹膜偽粘液腫を疑われ,精査加療目
的に当科紹介となった。視診触診上は骨盤から剣状突起までおよぶ表面平滑な比較的や
わらかい腫瘍であった。超音波検査,MRIでは充実部分を含む不均一で多房性の腫瘍を認
めた。術前の腫瘍マーカーはCA125 9.9U/ml,CA19- 9 <2.0U/ml,AFP 3.00ng/ml,SCC
0.7ng/ml,LDH 181IU/lであった。開腹所見では,両側卵巣は正常大で腹水や癒着は認め
なかった。後腹膜腔に腫瘍を認め,その栄養血管を含む茎部は子宮体部背側に付着してい
た。腫瘍を核出し,後腹膜を縫合して閉腹,手術終了した。腫瘍の総重量は6150g,出血
量は427gであった。術後の経過は良好で術後 8 日目に軽快退院となった。病理組織診断
の結果は子宮平滑筋肉腫であった。本症例の場合,術前の画像診断では腹腔内がほぼ腫瘍
で占拠されていたため骨盤内臓器の同定が困難であった。若年者の巨大な腫瘍の場合には
神経組織や軟部組織由来などの後腹膜腫瘍も念頭において手術に臨む必要があると考えら
れる。
12.子宮筋腫捻転による急性腹症で手術となった 2 症例
〇田村 大輔,大友めぐみ,齋藤 史子,木村菜桜子,軽部 彰宏
JA 秋田厚生連 由利組合総合病院
【緒言】女性の急性腹症は子宮筋腫に関連した病変が原因となることがある。今回我々
は,付属器を巻き込んだ有茎性漿膜下筋腫の茎捻転の 1 例と子宮底部に発生した有茎性漿
膜下筋腫に伴う子宮捻転の 1 例を経験したので報告する。
【症例 1 】89歳女性, 0 妊 0 産。介護老人福祉施設入所中,突然の腹痛,嘔吐を伴い外
来受診。CTにて子宮筋腫の茎捻転が疑われた。筋腫内部の出血・壊死に伴う貧血,凝固
異常,腹膜刺激症状の増悪のため,緊急手術を施行された。子宮底部より発生した新生児
頭大の子宮筋腫が左付属器を巻き込み捻転,壊死しており,周囲組織と炎症性変化を伴い
ながら癒着していた。
【症例 2 】42歳女性, 0 妊 0 産。臍上 4 横指に及ぶ子宮筋腫に対し,手術前処置として
前医にてGnRHa療法が施行された。その治療中に腹痛が増強し,当院へ紹介受診となっ
た。急性腹症の診断で,緊急手術を施行された。子宮底部より発生した漿膜下筋腫が子宮
体部とともに子宮峡部を軸とし,捻転していた。子宮体部の捻転を整復し,子宮筋腫核出
術を施行された。
【考察】急性腹症には腫瘍の茎捻転,腫瘍内出血が関連することが多い。症例 1 は,子
宮筋腫捻転に伴う貧血,凝固異常,腹膜刺激症状が増悪し,手術となった。症例 2 は,子
宮筋腫の捻転あるいは変性による腹痛で手術となり,漿膜下筋腫に伴う子宮捻転が認めら
れた。子宮筋腫は,臨床の現場において頻繁に遭遇する疾患であるが,茎捻転や腫瘍内変
性,出血に伴う病変が原因となる急性腹症は稀である。巨大有茎性漿膜下子宮筋腫は茎捻
転の可能性も考慮し,手術療法を念頭に置くべきである。
38
13.術後創傷治癒遷延に対し陰圧閉鎖療法が奏功した第XⅢ因子低下症の一例
○千田 英之 1 ),児玉 秀夫 1 ),細谷地 昭 1 ),善積 昇 1 ),鈴木 偉彦
1 )岩手県立宮古病院産婦人科 2 )岩手県立宮古病院形成外科
2)
【緒言】術後創傷治癒に難渋した第XⅢ因子低下症の一例を経験したので報告する。【症
例】37歳女性【主訴】下腹部痛,挙児希望【既往歴】 0 妊 0 産。21歳頃腰椎,胸椎骨折。
【現病歴】平成22年 9 月14日近医産婦人科で子宮筋腫指摘され 9 月15日当科初診。多発子
宮筋腫を認め,挙児希望あり筋腫核出術の方針,また術前スクリーニングで糖尿病を指摘
され,当院内科に周術期の血糖コントロールを依頼。【経過】10月22日,全麻下に下腹部
正中縦切開で腹式子宮筋腫核出術施行。術後創に沿って壊死を認め,創洗浄とスルファジ
アジン銀クリームで壊死部の融解と除去を反復。肉芽形成良好になり11月30日脊麻下に壊
死創除去・ドレーン留置術を施行するも,約 1 週間で壊死部分が出現し開放創となった。
デブリドマンと白糖・ポビドンヨード塗布行うも壊死進行し,12月20日当院形成外科依
頼。創洗浄とスルファジアジン銀クリーム塗布で壊死部除去・肉芽形成を促進し,平成23
年 1 月 6 日から陰圧閉鎖療法を開始。 1 月25日まで継続し創の閉鎖傾向認め同日退院,ト
ラフェルミンスプレーとアルプロスタジルアルファデクス軟膏を使用し外来経過観察中。
なお平成22年12月20日に測定した凝固第XⅢ因子が64%と低下を認め,入院中にヒト血漿
由来乾燥血液凝固第XⅢ因子の補充を行った。【考察】陰圧閉鎖療法は,難治性の外傷,
裂開創,術後創傷等に有効な物理療法である。特に良性疾患術後は,合併症としての術後
創傷治癒遷延は,精神面への影響も無視できない。本症例は創傷治癒を阻害し得る糖尿病
や第XⅢ因子低下症を合併し,陰圧閉鎖療法のよい適応であった。【結語】難治性創傷に
対する陰圧閉鎖療法は,患者のQOL向上にも資するものであり,その普及が望まれる。
14.婦人科がん周術期における肺血栓症高リスク患者に対する抗凝固薬の有用
性に関する検討
⃝清野 学,高橋 俊文,前川 絢子,小島原敬信,高橋 一広,倉智 博久
山形大学 産婦人科
【目的】婦人科悪性腫瘍根治術は,静脈血栓症である肺塞栓症(PE)発症のリスク因子
である。今回,PE発症の高リスク患者に対する抗凝固薬の有用性について検討した。【方
法】過去16ヶ月に手術を行った子宮頸癌,体癌,卵巣癌患者113例を対象とした。調査期
間を前半の 8 ヶ月間(A群)と後半 8 ヶ月間(B群)に分けた。A群はPE発症の高リスク
患者に対してその発症予防として主に間欠的空気圧迫法(IPC)を行い,B群はIPCに加
えて術後に抗凝固薬を積極的に使用した。両群におけるPE発症率について後方視的に検
討した。
【結果】両群間で子宮頸癌,体癌,卵巣癌患者の割合に差はなかった。また,両
群間で患者のBMI,手術時間,手術時出血量などPE発症のリスクとなりうる因子に差は
なかった。PE発症の最高リスクに分類されるのは,A群 8 例,B群 5 例のみであった。高
リスク患者は,A群で41/53(77%),B群で49/60(82%)であった。PEの発症はA群で
4 /53(7.5%)
,B群で 1 /60(1.7%)であった。PEを発症した 5 例は術後 1 日目の発症が
2 例,術後 2 日目の発症が 3 例であった。PEによる死亡例はなかった。【結論】PE発症
高リスク患者に対してIPCに加えて術後抗凝固薬を行うことによりPEの発症は減少した。
しかし,術後早期のPE発症例が多く,その予防には術前からの抗凝固薬が必要であると
考えられた。
39
15.女性クリニックにおける禁煙治療の試み
○井上 聡子
さとこ女性クリニック
【目的】喫煙による弊害は女性にとって,より大きい。生殖年齢であれば本人のみなら
ず胎児および新生児の健康被害を引き起こし,閉経以降は生活習慣病,特に急性心筋梗塞
に対する危険因子としては男性の4.0に対し女性は8.2倍と重大である。しかし男性の喫煙
率が低下している一方,女性は横這いである。禁煙の必要性が高い女性が,取り組みやす
い環境を整えるため,当院では2009年 5 月より禁煙治療を開始した。その成果と今後の課
題について報告する。【方法】2009年 5 月から2010年12月までにニコチン依存症管理料を
算定した患者50人(27∼55歳,平均39.9歳)について,患者背景,ニコチン依存度から成
功と失敗の要因を探る。当院では禁煙補助薬としてバレニクリンを用いた。【結果】 4 週
以上の禁煙に成功した者38人(平均41.0歳)失敗12人(36.3歳)
。バレニクリンの副作用出
現率は両者で差はなく最も多いのは嘔気,ついで体重増加,便秘であった。失敗者は禁煙
治療を自ら希望して開始した割合,ニコチン依存度(TDS,呼気CO濃度,ブリンクマン
指数)とも高かった。失敗理由の半数が通院の継続困難であった。成功者のうち10人は 4
回以内の治療で終了していた。【結論】初回診察において治療プログラムの見通しを明確
に提示し,治療者と患者が共通認識を持つ事が重要である。目的はあくまで禁煙であり,
管理料を 5 回算定し補助薬を内服させる事ではない。したがって患者のニーズに合わせ
た,きめ細かい指導が必要である。日常診療の中で禁煙治療を行うには,指導に費やせる
人的時間的労力は限られているが,女性の生涯を通じた健康を担う婦人科の役割として,
禁煙支援に関する情報を常に発信していく必要がある。
16.妊娠中のMMI内服で新生児頭皮欠損を発症した一例
○戸草明日香,藤澤 夏行,黒澤 靖大,松田 尚美,小泉 俊光
岩手県立中部病院 産婦人科
【緒言】Basedow病に対する抗甲状腺薬としてはチアマゾール(以下MMI)とプロピオ
チオウラシル(以下PTU)がある。妊娠初期のMMIの投与では催奇形性の報告があるた
め,PTUを選択するほうが無難である。ただしバセドウ病薬物治療のガイドライン2006
では,妊娠 8 週を過ぎていれば必ずしもPTUに変更する必要はないとされている。今回
我々は,妊娠前から妊娠期間中にかけてMMIを内服していたBasedow病合併妊婦の児に
MMIの副作用としての先天性の頭皮欠損が見られた症例を経験した。
【症例】34歳, 1 妊
1 産。32歳時からBasedow病に対してMMIを内服。他にもてんかんや気管支喘息などの
合併症があるため,妊娠24週時に近医から当科に紹介。当科の妊婦健診では,児の推定体
重は−1.0SDほどで小さ目でも成長を認めていたが,妊娠後期の成長はほぼ横ばいであっ
た。MMIの母乳移行を考え,妊娠40週からPTUに内服を変更。予定日超過にて妊娠41週
0 日より入院し,分娩誘発開始。子宮口全開大前に変動一過性除脈が頻発したため,緊急
帝王切開術施行。男児,出生体重2410g,Apgar score 8 / 9 点( 1 分/ 5 分)であった。
出生時の診察で約 2 cm大の頭皮欠損が数か所指摘された。欠損底は皮下脂肪で,頭蓋骨
欠損や頭蓋内との交通はなかった。日齢 1 に院内形成外科へ紹介し,処置していただき,
欠損部は徐々に上皮化するに至った。
【考察】確かにMMIの副作用としての新生児の先天
性頭皮欠損の記載はあるが,製薬会社への報告とともに得た情報では,MMI内服妊婦の
児が頭皮欠損を発症した例はMMI発売後54年間で11件のみであるとのことであったため,
本症例は非常に稀な一例ではあったが,Basedow病合併妊婦への抗甲状腺薬選択は慎重に
行う必要があると考えられた。
40
17.歯肉炎を初発とした母体敗血症,胎児機能不全の一症例
○寺田 幸 1 ),中里 権恵 2 ),永沢 崇幸 2 ),安達 信博
佐藤 昌之 2 ),杉山 徹 1 )
1 )岩手医科大学産婦人科 2 )岩手県立二戸病院産婦人科
2)
,秋元 義弘
2)
,
【緒言】歯周病では歯周病原菌が血管内に入り菌血症を生じ,敗血症に移行する例もあ
る。今回われわれは妊娠35週で歯肉炎から敗血症を発症し,胎児機能不全に至った 1 症例
を経験したので報告する。
【症例】29歳 2 妊 2 産,妊娠29週 6 日切迫早産として管理入院,子宮収縮抑制剤点滴投
与された。入院のまま経過していたが,34週 6 日子宮収縮増強,対応したが呼吸苦,発
熱,胸部不快感が出現。切迫早産,急性上気道炎,頻脈の診断にて35週 0 日前医に母体搬
送。頻脈・呼吸苦は対症的に改善。体温38.4℃,口腔内は歯肉が黒色化,咽頭に白苔が付
着していた。NST : variabilityに乏しく,accelerationを認めず。胎児機能不全として当院
に母体搬送となった。到着時BP : 104/86mmHg,P : 110/min,経腹エコーにて羊水過少。
NSTにてsevere variable decelerationを認めた。CRP 29.78,WBC 10800。敗血症,胎児
機能不全として全身麻酔下に緊急帝王切開術を施行した。術後は抗DIC治療を行い,母児
ともに経過良好で13日目に退院となった。
【結語】歯周病は重篤な全身性感染症を引き起こすことがあり,また妊娠中は歯周病を
生じやすくなる。妊娠中,突然増悪し敗血症に至る場合,その原因が歯周病であることが
あり得ることを知っておくべきである。
18.
による敗血症からDIC(播種性血管内凝固症
候群)に至った重症妊娠悪阻症例
○平川 八大 1 ),葛西亜希子 1 ),葛西剛一郎 1 ),冨浦 一行 1 ),高橋 秀身
松下 容子 2 ),山本 善光 2 ),田中 幹二 2 ),尾崎 浩士 2 ),水沼 英樹
1 )大館市立総合病院 産婦人科 2 )弘前大学医学部 産科婦人科
1)
,
2)
【はじめに】Acinetobacterは日和見感染の起炎菌として知られており,健常者に重症感
染症を引き起こすことは稀である。妊娠悪阻の治療中に急激な発熱からDICに至り,血液
培養でAcinetobacterが同定された症例を経験したので報告する。
【症例】23歳, 0 妊 0 産。自然妊娠で妊娠成立。妊娠 7 週より重症妊娠悪阻で当科入
院。入院12日目に40℃の発熱が出現,さらにその翌日には41.8℃まで上昇を認めた。採血
でDICと著明な炎症反応を認め,感染症のスクリーニングを行い,抗生剤(メロペナム)
とトロンボモジュリンによる抗DIC療法を施行しながら地域周産期センターへ搬送となっ
た。搬送時,体温は37℃台と解熱傾向で血液データも改善傾向であり,当院での治療が継
続された。翌日からは平熱となり血液データも急速に改善したが,胎児心拍は消失してい
た。搬送 6 日目に子宮内容除去術を施行し, 8 日目に退院となった。当科で施行した血液
培養 2 セットの両方よりAcinetobacter baumanniiが同定された。
【まとめ】本症例では発熱 3 週間前から摂食困難であり,妊娠悪阻による免疫力低下が
Acinetobacterによる感染症を引き起こしたことが推察された。
41
19.胎内輸血療法を施行した妊娠18週先天性パルボウィルスB19 感染性胎児水
腫の一例
○長尾 大輔,森 耕太郎,鎌田久美子,佐藤 恵,佐藤 朗,小川 正樹,
寺田 幸弘
秋田大学医学部附属病院産婦人科
【はじめに】伝染性紅班は,国立感染症研究所によれば,2010年末頃より増加する傾向
にあり,本年の夏にはそのピークとなることが予想されている。妊婦における抗体保有率
は約40%程度であると考えられており,母子感染への対策が必要とされる。今回われわれ
は,妊娠18週に胎児水腫を来たした胎内パルボウィルス感染症の一例を経験し,高容量免
疫グロブリン療法および胎内輸血療法により管理し,良好な結果が得られたので,文献的
考察を含めて報告する。
【症例】35歳の初妊婦。2010年 4 月上旬を最終月経として妊娠し,近医にて妊婦健診を
受けていた。妊娠18週での健診時に,超音波検査上の胎児腹水を指摘され,精査目的に
当院を紹介となった。パルボウィルスIgM抗体陽性であり,胎内感染と診断した。充分な
informed consentの結果,胎児輸血および高容量免疫グロブリン療法の方針となった。妊
娠20週 2 日に濃厚赤血球18mlの腹腔内輸血を施行し,献血ヴェノグロブリン : 5g/日を 3
日間施行した。また妊娠21週 3 日に濃厚赤血球20mlを胎児腹腔内に輸血した。以後,胎
児中大脳動脈の最高血流速度から,貧血は改善されたと判断された。外来にて妊婦健診を
継続し,妊娠38週 3 日に2272gの女児をAp8/ 9 で経腟分娩した。
【まとめ】パルボウィルスB19感染による胎児水腫は,妊娠20週以前に発症することが
多く,自然寛解率は40%程度である。胎児輸血は最も効果的な治療法であり,施行例の
84%の寛解率であるとの報告もある。また妊娠13週 0 日で胎児輸血を施行した症例もあ
り,有効な治療法である。パルボウィルス感染に伴う胎児水腫に対しては,積極的に胎児
輸血を施行すべきであると考えられた。
20.妊娠後期の抗精神病薬大量服薬により,母児共に離脱症候群・横紋筋融解・
腎機能障害をきたした一例
○新沼 花恵,藤澤 夏行,黒澤 靖大,松田 尚美,小泉 俊光
岩手県立中部病院 産婦人科
【患者】23歳
【現病歴】不安神経障害,睡眠障害にて内服加療中であった患者が,他院Aで妊娠の診
断を受け,その後未受診。推定週数21週 6 日に他院Bを受診し,通院開始した。胎児への
リスクを説明されながらも抗精神病薬・抗不安薬の内服を継続しており,分娩時の精神状
態管理と新生児管理が困難を要すると予想されたため,34週 2 日に当院に紹介となった。
検診で胎児に異常所見は認めなかったが,母の尿蛋白と浮腫が経過とともに増悪。妊娠高
血圧症候群と診断したが,高血圧や随伴症状は認められないため外来経過観察となった。
38週 2 日に陣痛発来で入院となった。
【入院後経過】入院時は頚管開大度4cmで, 1 時間後のCTGで胎児機能不全と診断。さ
らに患者が興奮状態で経膣分娩を行うのは困難と判断し緊急帝王切開を施行。術後,尿量
低下と腎機能障害が認められた。出産数日前から抗精神病薬・抗不安薬を通常の 2 ∼ 3
倍量服用しており,さらに水分摂取不十分であったことが判明。CKの上昇も認めたため,
妊娠高血圧症候群と大量服薬による横紋筋融解により生じた急性腎不全と考え,加療を
行った。さらに産後血圧は140∼170/80∼100mmHg台で推移し,頭痛症状も出現したた
め,ヒドララジン塩酸塩・メチルドパ水和物の内服開始したところ,コントロール良好と
なった。術後25日目に退院し,当院泌尿器科で腎機能精査を行う予定となった。児は出生
時より気胸・横紋筋融解・腎機能障害・離脱症候群が認められ,小児科で加療を受けた。
精神疾患合併で大量服薬リスクの高い妊婦は,新生児管理の可能な施設で初期より管理
し,精神科と連携し病状に応じた適切な服用を指導・管理することが重要であると考えら
れた。
42
21.潰瘍性大腸炎大腸全摘術後に妊娠33週で消化管穿孔を発症した 1 例
○佐藤 孝洋,星合 哲郎,菅原 準一,八重樫伸生
東北大学病院 産婦人科
【諸言】妊娠中期以降に腹痛を呈する疾患は多岐にわたり,診断に苦慮する場合が少な
くない。今回,潰瘍性大腸炎による大腸全摘術後,妊娠中に消化管穿孔を発症した症例を
経験したので報告する。
【症例】40歳女性, 0 妊 0 産。既往歴:31歳潰瘍性大腸炎大腸全
摘術,32歳腹腔鏡下胆嚢摘出術。現病歴:潰瘍性大腸炎は,術後症状再燃はなし。40歳に
て自然妊娠,妊娠33週 1 日腹痛にて救急受診。頻回の子宮収縮を認めたが,諸検査では
常位胎盤早期剥離は否定的で,切迫早産の外来診断にて入院管理となった。入院時38.2度
の発熱あり,検査所見ではCRP1.0μg/ml,白血球14500/dlと炎症性疾患の可能性が示唆
された。その後徐々に腹膜刺激症状出現したため,腹部単純CT施行。腹腔内にfree airを
認めたため,消化管穿孔を疑い上部内視鏡検査を施行したが所見なく,下部消化管穿孔を
疑い,緊急手術となった。術後癒着と妊娠子宮による術野確保困難となる可能性あり帝王
切開術を先行する方針となった。開腹時所見では,回腸側側吻合盲端部にpin hallの筋層
菲薄を認め穿孔部位と推察され,吻合盲端部を切除縫合し終了。病理検査結果は,潰瘍性
大腸炎など強い炎症所見は認めないが,粘膜下層が浮腫様で慢性的な循環不全が示唆され
た。術後経過良好で術後14日目に退院となった。【考察】本症例は腹痛の原因として妊娠
関連疾患を疑われたため,消化管穿孔を診断されるまでに時間を要した。妊娠中の放射線
検査は倦厭されがちだが,消化器系疾患を疑う場合には考慮すべきである。また,本症例
の術後消化管穿孔の原因は,吻合部の循環不良による脆弱化と妊娠による腹腔内圧の上昇
と推察される。したがって,腹痛を呈する妊婦を診察する際には消化管穿孔などの救急疾
患を念頭に置くことが肝要である。
22.卵管留症に対し卵管切除を行った後,IVF-ETを施行した16症例の検討
○白澤 弘光 1 ),木藤 正彦 1 ),熊澤由紀代 1 ),河村 和弘
児玉 英也 2 ),寺田 幸弘 1 )
1 )秋田大学医学産婦人科 2 )秋田大学医学部保健学科
1)
,熊谷 仁
1)
,
【緒言】卵管留症ではその貯留液の存在が,ARTを行う際に問題となる。卵管留症のあ
る不妊症患者に対し,IVF-ETを施行する前に卵管切除を行うことで妊娠率が増加すると
いう報告もある。今回我々は,卵管留症に対し卵管切除を施行した後,IVF-ETを行った
16症例を後方視的に検討した。
【目的】当院で卵管留症に対し卵管切除を行った患者の,
手術後のIVF-ETの成績を明らかにする事。
【方法】対象は当院を挙児希望で受診した患者
の内,2005年 1 月から2010年 8 月までの間に片側または両側の卵管切除を施行された後,
少なくとも当院で 1 周期以上のIVF-ETを受けた16症例とした。年齢,不妊期間,手術後
の妊娠の有無,病理所見を検討した。また16症例を手術施行前にIVF-ET歴のあるA群 7
例と,治療歴のないB群 9 例に分け検討した。
【成績】平均不妊期間は4.7年,手術施行時
の平均年齢は32.9歳だった。手術後のIVF-ETで妊娠した症例は11症例(68.8%)で, 5 症
例(31.2%)が妊娠していない。妊娠した11症例では,全例が 2 回までの移植周期で妊娠
した。妊娠に至っていない 5 症例では平均3.2回の胚移植が行われていた。16症例の内 3
例で,摘出卵管に卵管子宮内膜症の病理所見を認めた。この 3 例は全例手術後の移植で妊
娠した。A群では術前に平均4.7回の移植が行われており,術後に57.1%が平均1.5回の移植
で妊娠した。B群では77.8%が平均1.6回の移植で妊娠した。
【結論】卵管留症のある不妊
症患者で,卵管切除後のIVF-ETの妊娠率は70%弱と良好だった。術前に移植歴のある患
者でも,術後早期の妊娠例を認めた。また手術を先行した患者では,術後に80%弱が早期
に妊娠した。ART中の卵管留症を有する患者に対して,積極的な卵管切除術を考慮して
も良いと考える。
43
23.男性不妊に対するMaca摂取の有効性について
○熊谷 仁,白澤 弘光,熊澤由紀代,河村 和弘,児玉 英也,寺田 幸弘
秋田大学大学院医学系研究科 医学専攻機能展開系産婦人科学講座
【目的】男性不妊症例に対する薬物療法は,これまで漢方,抗酸化剤ならびに循環改善
薬など種々の報告がなされてきたが,有効性の確立には及んでいない。ARTの進歩によ
り男性不妊に対する薬物療法の重要度は低下していると考えられるが,自然妊娠を目指す
上で必要と考える。今回,当科で経験した症例からヒントを得た,Maca摂取による精液
所見の改善効果を検討した。
【方法】当科を受診し,乏精子症または精子無力症と診断さ
れた男性不妊症例で臨床研究参加の同意得られた14例を対象とした。乾燥Maca3000mg/
日を内服し,開始前と摂取後 3 ヶ月毎の各種ホルモン値と精液所見を比較した。なお本研
究は当院倫理委員会の承認を得ている。【成績】対象の平均年令は35.3歳。診断は乏精子
症12例,精子無力症 2 例であった。 3 ヶ月以上の観察期間後に, 8 例で精液所見の改善を
認められた。改善を認めなかった 6 例は全て治療開始時のFSHが10以上の症例であった。
全ての症例で摂取前後におけるFSH,LH,DHEA-SおよびTestosterone値に変化を認め
なかった。
【結論】Maca摂取によりFSHが10以下の症例では精液所見の改善を認めた。そ
の作用機序に関しては今回測定したホルモン値では変化を認めなかったため,内分泌因子
以外の因子への作用が推測された。
24.不妊と月経困難症を機に発見された腟横中隔の一例
○菅原 千裕,藤澤 夏行,黒澤 靖大,松田 尚美,小泉 俊光
岩手県立中部病院
〈緒言〉腟横中隔は尿生殖洞とミュラー管の癒合障害によって生じる腟の先天奇形で,
腟の上方 1 / 3 の場所に多いとされているがその他の部位にも発生する。頻度は40,000か
ら84,000例に 1 例といわれている稀な疾患である。今回不妊と月経困難を機に発見された
腟横中隔の症例を経験したので報告する。
〈症例〉32歳 0 妊 0 産〈主訴〉不妊,月経痛〈臨床経過〉不妊と月経痛を主訴に平成22
年 1 月下旬に近医産婦人科を受診。腟は盲端で腟閉鎖症の疑いにて当科紹介。当科初診時
の内診,クスコ診上腟は盲端で,子宮頸部は視認できず。経肛門超音波検査上,子宮は前
屈で内膜肥厚はなく,正常大の右卵巣が確認された。また,経腹超音波検査上,両側腎臓
は正常であった。肉眼上は完全に腟が閉鎖していたが,月経はあるということより月経時
に再受診を指示。月経時診察の際に腟閉鎖部尿道口左下端に 2 ∼ 3 mmの小孔が確認され
た。小孔からは約7cmゾンデ挿入が可能であった。手術に備えて小孔にマーキングを行っ
た。MRI上は子宮,両側卵巣は正常に認められ,DIP上尿路奇形は認めなかった。全身麻
酔下に腟開口術を施行。腟閉鎖部位は腟口より約4cmの部位に認め,小孔をモスキートペ
アンで拡張後に子宮鏡(軟性鏡)を挿入し,腟の奥に子宮頸部の存在を確認。小孔よりゾ
ンデをフック状に挿入し,腟内側から腟横中隔にテンションをかけながらアプローチ。腟
横中隔をすべて切除し,解剖学的にはほぼ正常の状態とした。この段階で本症を腟横中隔
と診断。術後癒着を防ぐため,プロテーゼを留置した。術後の経過は良好であり,癒着も
なく経過している。
44
25.子宮温存が可能であった子宮頸管妊娠の 1 例
○山内 愛紗,松倉 大輔,重藤龍比古,藤井 俊策,佐藤 重美
むつ総合病院産婦人科
頸管妊娠は全異所性妊娠の中での発生頻度は約0.15%で,極めてまれな疾患である。頸
管妊娠は,不用意な頸管内掻爬等により止血困難な大出血を起こすことが多く,子宮全摘
を余儀なくされることもまれではない。しかし,近年早期診断が可能となり,メトトレ
キセート(MTX)などを用いた薬物療法や子宮動脈塞栓術(UAE)の導入などにより子
宮温存が可能となっている。今回われわれは,集学的治療により子宮温存し得た頸管妊
娠の 1 例を経験したので報告する。
【症例】19歳 1 経妊 0 経産【主訴】下腹部痛【現病
歴】平成22年11月初旬最終月経の後に妊娠成立。12月初旬に近医を受診し,妊娠 5 週相当
と診断された。妊娠初期より少量の性器出血を認めていた。12月中旬,腹痛を主訴に当院
救急外来を受診した。経腟超音波検査にて頸管内に胎嚢および卵黄嚢を認め,胎児心拍を
確認。頸管妊娠の診断で当科入院となった。
【経過】本症例では,年齢も若く未経産であ
り,妊孕性の温存が可能な方法として,MTXの動注療法を選択した。左右子宮動脈にそ
れぞれMTXを25mgずつ動注。さらに,子宮動脈の造影で胎嚢への血流がほぼ右子宮動脈
からのものであることが確認され,右子宮動脈塞栓術(UAE)も行った。術翌日性器出
血を認め,診察にて外子宮口から胎嚢が一部脱出していることを確認した。さらに出血量
が増加し,経腟超音波を施行したところ胎嚢は子宮頸部から腟内に存在し,依然胎児心拍
が認められた。胎嚢の自然剥離を期待するのは不可能と判断し,胎嚢除去術を行った。開
腹下に両子宮動脈を結紮し,経腟的に胎嚢を除去した。出血が少量持続しており,止血目
的に子宮口を結紮して手術終了とした。胎嚢除去後,順調にhCGは低下し,第21病日退院
となった。
26.腹腔鏡下に診断された異所性皮様嚢腫の一例
○黒澤 靖大,藤澤 夏行,松田 尚美,小泉 俊光
岩手県立中部病院
【症例】52歳女性 5 妊 3 産 50歳閉経 特記すべき既往歴,家族歴,アレルギー等な
し。子宮癌検診にて子宮筋腫および卵巣腫瘍を指摘され近医婦人科を受診し,精査加療目
的に当科紹介となった。内診にて子宮は鵞卵大で可動性良好。子宮底頭側に鶏卵大の腫
瘤を触知した。経腟超音波にて子宮後壁に35㎜大の筋層内筋腫および長径 7 ㎝大の右皮
様嚢腫が疑われた。CEA : 2.0ng/ml,CA19- 9 : 38.1U/ml,CA125 : 10.3U/ml,SCC : 1.4ng/
mlと腫瘍マーカーはCA19- 9 の軽度上昇を認めるのみであった。MRIにて右卵巣に接する
60mm大の内部に鏡面像を呈した脂肪抑制条件にて抑制される嚢胞性腫瘤を認めた。左正
常卵巣が指摘できないことから左皮様嚢腫と判断し,腹腔鏡下手術の方針となった。術中
腹腔鏡にて観察すると両側付属器とは独立した鶏卵大の嚢胞性腫瘍を認め,小腸,回盲
部,大網,前腹壁と癒着していた。特に前腹壁とは強固に癒着していることより腹膜原性
の腫瘍と思われた。腫瘍内容は脂や毛髪を含んでおり,病理組織診においても同様の組織
を認め,成熟嚢胞性奇形腫の診断であった。腫瘍内に正常卵巣組織も指摘されず,悪性所
見も指摘されなかった。
今回我々は腹腔鏡下に診断,摘出された腹膜原性と思われる異所性皮様嚢腫の一例を経
験した。術前診断に至らない症例も多く,付着部位や癒着によって思わぬ多臓器損傷の原
因ともなりうる疾患である。本症について文献的考察を加えて報告する。
45
27.腹腔鏡下性腺摘出術後,エストロゲン補充療法を行ったAISの 2 症例
○千葉 仁美,福井 淳史,大澤 有姫,福原 理恵,木村 秀崇,水沼 英樹
弘前大学産婦人科教室
【緒言】アンドロゲン不応症(androgen insensitivity syndrome : AIS)はアンドロゲン
受容体の異常によって引き起こされる疾患である。染色体は46XYであり,全く男性化の
認められない完全型と部分的な男性化を伴う不完全型に分類される。患者の多くは思春期
以降に原発性無月経を主訴に産婦人科を受診し,恥毛の欠損,盲端の膣,女性内性器の無
形成などの所見でAISが疑われることが多い。なお,性腺が悪性化するリスクがあるため,
性腺摘出が考慮される。しかし性腺からのテストステロンは末梢でエストロゲンへと変換
され,二次性徴に必要であるため,性腺摘出は思春期以降に行われることが多い。また骨
粗鬆症予防のため,術後はエストロゲン補充を必要とする。今回,腹腔鏡下性腺摘出術を
行い,術後エストロゲン補充療法を行ったAISの 2 症例を経験したので報告する。
【症例 1 】18歳 0 妊 0 産。163cm,53kg。 2 才時に右鼠径ヘルニアの手術を受けた。
無月経を主訴に前医を受診し,AIS疑いにて前医から紹介となった。染色体検査では
46XY。腟は盲端で子宮は確認できず。平成20年12月23日,腹腔鏡下両側性腺摘出術を施
行した。術後ディビゲル1g/日で開始し,乳房の発育を認めた。
【症例 2 】18歳 0 妊 0 産。154cm,48kg。原発性無月経にて前医を受診。腟は盲端で
子宮は確認できず。染色体検査では46XY。平成22年12月24日,腹腔鏡下両側性腺摘出術
を施行した。術後エストラーナテープ 1 / 2 枚/ 2 日毎で貼付開始し,1cmほど身長が伸びた。
【考察】AISに対する性腺摘出術後のエストロゲン補充療法は,骨量減少予防だけでは
なく,乳房の発育,身長の伸びといった効果があり,積極的に行うべき治療法である。
28.子宮鏡下子宮中隔切除術時の子宮腔造影併用が有用であった 2 例
○大澤 有姫,福井 淳史,千葉 仁美,福原 理恵,木村 秀崇,水沼 英樹
弘前大学医学部産婦人科教室
【緒言】中隔子宮は不育症の原因となることが知られており,外科的介入を行う場合,
以前は腹式子宮形成術が行なわれていた。最近では子宮鏡を用いた子宮中隔切除術が行な
われるようになり,その有用性が報告されている。子宮鏡下子宮中隔切除術では子宮穿孔
等の合併症や中隔の残存が問題となり,その安全性や確実性が検討されている。今回我々
は中隔子宮に対する子宮鏡下中隔切除術における術中子宮腔造影が有用であった 2 例を経
験したので報告する。
【症例】症例 1 は31歳女性。 1 妊 0 産。挙児希望あり当科紹介受診した。 3 年前に腟中
隔切除術既往があるものの,今回の術前診断は完全中隔子宮であった。症例 2 は41歳女
性。 0 妊 0 産。挙児希望あり,前医より子宮中隔の手術を勧められて当科紹介受診した。
術前診断は完全中隔子宮および腟中隔であった。
中隔子宮の診断は経腟超音波断層法あるいはMRIを用いて行った。手術は 2 例とも全身
麻酔下に施行した。腟中隔はハーモニックスカルペルを用いて切除し,続いて子宮鏡下に
子宮中隔を切除した。鏡視下で十分な切除がされたと判断した時点で子宮腔造影を行い,
中隔の残存及び子宮腔形状を確認し追加切除を行った。術中透視回数は症例 1 で 2 回,症
例 2 で 3 回であり,手術時間は症例 1 で47分,症例 2 で 2 時間 4 分であった。 2 例とも術
中の子宮穿孔はなく,術後の子宮卵管造影にて正常な子宮形態を得られた。また,術後の
子宮腔癒着も認められなかった。
【考察】術中子宮腔造影は,十分な中隔切除,および子宮穿孔の回避ために有用な方法
であると考えられた。
46
29.当科における腹腔鏡手術のあゆみ(2002年から2010年までの腹腔鏡手術の
検討)
○冨浦 一行 1 ),平川 八大 1 ),葛西剛一郎 1 ),葛西亜希子 1 ),高橋 秀身
福井 淳史 2 )
1 )大館市立総合病院産婦人科 2 )弘前大学医学部付属病院産科婦人科
1)
,
【目的】近年,産婦人科領域では腹腔鏡手術が多く行われるようになっているが,依然
として腹式手術が多い。当科でも漸く,良性疾患の腹腔鏡手術を多く行うようになったの
で,導入までの経緯や手術について振り返ってみることにした。
【方法】2002年から2010
年までに実施した腹腔鏡手術227症例について検討してみた。【成績】①2006年までは年
間10件未満であったが,2007年以降は14例件, 14例, 58例, 107例と増加した。②227例の
内訳は子宮全摘術23例, 子宮付属器手術が99例,子宮内膜症手術34例,子宮外妊娠手術16
例,子宮筋腫核出術13例である。このうち10例が開腹移行となっている。 ③子宮全摘術
を初めて腹腔鏡補助下で行った2006年以降で術式ごとにみると,2006年が腹式15/腟式11/
腹腔鏡1(3.7%)例,2007年が27/16/1(2.3%)例, 2008年が42/11/0(0.0%)例, 2009年が
36/6/14(28.0%)例, 2010年が18/7/38(60.3%)例であり,腹腔鏡術式の内訳は2009/2010
年には腹腔鏡下補助腟式子宮全摘術(LAVH)10/7例, 腹腔鏡下子宮全摘術(LH)2/21例,
全腹腔鏡下子宮全摘術(TLH)2/10例であった。開腹移行は 3 例であり,重大な合併症は
みられなかった。
【まとめ】①腹腔鏡手術の適応症例を徐々に拡大し,良性疾患の多くで
腹腔鏡手術を実施してきた。②腹腔鏡手術をスムーズに行うには,術者だけでなく麻酔科
医や術場スタッフの理解,協力が不可欠である。③今後は,さらに症例を積み重ねて安全
で侵襲の少ない手術を目指したい。
30.腹腔鏡下子宮筋腫核出術におけるV-Loc180の有用性について
○早坂 篤,渡邊マリア,島 崇,石垣 展子,千葉由美代,牧野 浩充,
朝野 晃,明城 光三,小澤 信義,和田 裕一 仙台医療センター 産婦人科
【目的】子宮筋腫核出術は,その低侵襲と整容性のために,現在腹腔鏡下で行われるこ
とが多い。しかし,その摘出筋腫の大きさや,数により手技が困難となり手術時間が延長
することも多い。V-Loc180は末端にループがあり,縫合開始時に結節が不要で,バーブ
と呼ばれる棘状突起が糸自体にらせん状に配置されているため,運針を行うだけで創を閉
鎖して,ゆるまず,助手がテンションを保持する必要もない優れた縫合糸である。今回わ
れわれは,手術時間の短縮のため,結紮操作を必要としない合成吸収糸V-Loc180を腹腔
鏡下子宮筋腫核出術に使用したので報告する。【方法】腹腔鏡下子宮筋腫核出術において,
1 層目は通常通りバイクリルで結節縫合し, 2 層目を 2−0V-Loc180使用し,無結紮連続
縫合とした。
【成績】無結紮連続縫合であるが,バーブがしっかりと組織を保持してくれ
るので,通常の連続縫合よりしっかりとした感じがあり,また縫合中テンションを必要と
しないので,手技が単純で,手術時間が短縮できた。【結論】V-Loc180は優れた縫合糸で,
腹腔鏡下子宮筋腫核出術など縫合の多い手術においては,その手術時間の短縮に,おおい
に有用であると考えられた。
47
31.当科における単孔式腹腔鏡下子宮付属器手術36例の検討
○早坂 篤,渡邊マリア,島 崇,石垣 展子,千葉由美代,牧野 浩充,
朝野 晃,明城 光三,小澤 信義,和田 裕一
国立病院機構 仙台医療センター
【目的】子宮付属器手術の術式ごとに単孔式手術と従来式手術を比較し,単孔式手術の
適応とその安全性の検討を目的とした。
【方法】平成22年 8 月 1 日より平成23年 2 月15日
までに当科で単孔式腹腔鏡下子宮付属器手術を施行された36例を対象とした。対照群は平
成21年11月 1 日より平成22年 7 月31日までに当科で従来式腹腔鏡下子宮付属器手術を施行
された36例とした。両群で年齢,BMI,緊急手術数,最大腫瘍径,手術時間,術後在院
日数などを比較した。全例multi trocar法で行った。
【成績】両群の年齢,BMI,緊急手術
数,腫瘍径に有意差は無かった。全体では手術時間が単孔式群に長い傾向があったが有意
差は無かった。両側付属器摘出術では,有意差は無かった。片側付属器摘出では,単孔式
群で手術時間が長い傾向があったが,有意差は無かった。腫瘍核出術では単孔式群で手術
時間が長く,在院日数が短い傾向があったが,いずれも有意差は無かった。単孔式群に
ポート追加例が 3 例,創部治癒遅延例が 2 例,開腹移行例が 1 例あった。【結論】単孔式
群に手術時間の長い傾向が認められたがいずれも有意差は無かった。単孔式腹腔鏡下手術
は従来の腹腔鏡下手術に比較し手術操作性は劣るが,今回子宮付属器手術では手術時間な
どに有意な差が認められなかった。このため整容性に優れているこの術式の有用性は高い
と思われた。
32.単孔式腹腔鏡下手術における新Glove法の紹介
○葛西剛一郎,平川 八大,葛西亜希子,冨浦 一行,高橋 秀身
大館市立総合病院 産婦人科
【緒言】単孔式腹腔鏡下手術は臍窩 1 カ所の切開創からスコープや鉗子を挿入し行われ
る手術であり,従来の多孔式腹腔鏡下手術と比較し整容性に優れた低侵襲手術である。
SILSポート等の専用プラットフォームを使用するmulti-channel port法と筋膜を露出し複
数のトロッカーを直接穿刺するmultiple trocar法が術式に応じ用いられる。multi-channel
port法で使用される専用のポートは一般に高価であり,さらに特殊な屈曲鉗子やベッセ
ルシーリングシステムを用いるためコストがかさむ。Glove法はmulti-channel port法に含
まれるのだがwound retractorと手術用手袋を用いるため,安価であり材料も入手が容易
である。しかしプラットフォームが無く支点が定まらないため鉗子操作性が悪く,鉗子
やスコープの出し入れの際にも創部が見えず腹腔内に到達しにくいといった手術操作上
の難点があり敬遠されている。そこで我々は 1 本のフォーリーカテーテルを用い固定す
る新Glove法を考案したので紹介する。【方法】臍部2cmの縦切開で開腹しAlexis Wound
Retractor(XS)を装着。手術用手袋の指 3 本を切り落としそこに5mmトロッカーを絹糸
で固定した物を準備する。それをRetractorに巻き込み装着気腹。 2 本の操作鉗子用トロッ
カーを先端が腹腔内に入る程度におさえ,8Frのフォーリーカテーテルを巻き付け,カ
テーテル両端はRetractorに直接ペアン鉗子で挟鉗固定し手術を行う。【結語】本法により
従来のGlove法で感じる鉗子のずれは生じず,トロッカー先端が腹腔内へ挿入固定されて
いるため鉗子類の出し入れに問題もない。また専用ポートのような厚さが無い分,鉗子の
可動域が広がり手術操作性が向上するため手術時間の短縮も認めた。本法は単孔式腹腔鏡
下手術において有効であると思われた。
48
33.当院での単孔式による腹腔鏡下手術症例の検討
○重田 昌吾,宇賀神智久 気仙沼市立病院 【緒言】当院では従来気腹式による 3 ∼ 4 ポートでの腹腔鏡手術を行ってきたが,平成
23年より単孔式手術を取り入れている。導入後の 2 症例について検討を行った。
【症例】
〈症例 1 〉33歳, 3 妊 2 産。特記すべき既往歴なし。検診にて骨盤内腫瘍を指
摘された。6cm大の左皮様嚢腫の診断となり,SSL(Single Site Laparosccopy)にて核
出術を行った。手術時間105分,出血量少量で術後経過に特記事項なく第 4 病日に退院し
た。
〈症例 2 〉47歳, 3 妊 2 産。特記すべき既往歴なし。下腹部痛を主訴に当院初診した。
膀胱子宮窩に7cm大の卵巣腫瘍を認め左皮様嚢腫の診断でSSLにて左付属器切除術を行っ
た。手術時間78分,術中出血量少量であった。術後経過良好にて第 4 病日に退院となった。
【考察】単孔式にはSILS(Single Incision Laparoscopic Surgery)やSSL,吊り上げ式
によるアプローチ等がある。従来法と概ね同じ機材で実施でき手技的に差異が少ないこと
から,当施設ではSSLを導入した。筋膜切開が小さいことも低侵襲手術の観点からは利点
と思われる。今回の 2 症例に限れば手術時間,出血量,術後合併症等に従来法との有意な
差は認めなかった。しかし症例 2 では皮膚切開が小さく操作鉗子の距離が近接してしま
い,症例 1 と比較して手術操作が明らかに困難であった。SSLではポート間の干渉が術中
操作の妨げとなり得る。導入期は症例を慎重に選定するとともに,臍輪の皮膚切開を若干
大きめにとりポート間の距離を十分保つことも重要かと考えられた。引き続き数症例を予
定しており,それらを含めた考察を行う予定である。
34.Single incision laparoscopic surgery(SILS)ポートの導入による婦
人科腹腔鏡下手術の質的向上
○山内 愛紗,松倉 大輔,重藤龍比古,藤井 俊策,佐藤 重美
むつ総合病院産婦人科
【目的】我々は2010年 9 月から腹腔鏡下手術にSILSPortを導入した。手術の所要時間,
術後の疼痛,手術器具にかかる経費などについて,従来の多孔式腹腔鏡下手術とSILSポー
トを用いた腹腔鏡手術とで比較し,婦人科腹腔鏡下手術におけるSILSの有用性について
検討した。
【方法】2010年 9 月から 6 ヶ月の間に当院において,良性婦人科疾患に対して
腹腔鏡下または腹腔鏡補助下手術を施行した35例を対象とした。所要時間については,気
腹までの時間を従来の多孔式手術とSILSポートを用いた手術との 2 群間で比較した。術
後の疼痛の評価は,術後48時間以内における鎮痛薬の使用回数を指標として,classic
(n=10),DILS(n= 8 )
,LAC/LAM(n= 9 )
,SILS(n=11)の 4 つの方法について比較
した。経費については主な術式に必要な器具について定価を調査し,各術式にかかる経
費と診療報酬点数とを対比した。【成績】気腹までに要した時間は,従来術式群の2.3±
1.5分に対し,SILSポート群の6.3±2.6分の方が有意に長かったが数分の違いであった。鎮
痛に関してはClassicとSILSのほとんどがペンタゾシンの投与を必要とせず,LAC/LAM
と比較して投与回数が有意(それぞれ =0.0157, =0.0192)に少なく,DILSと比較して
少ない傾向を認めた。また,ClassicとSILSではLAC/LAMと比較してジクロフェナク坐
薬の投与回数が有意(それぞれ =0.0189, =0.0273)に少なく,DILSと比較して少ない
傾向を認めた。経費についてはどの術式においても診療報酬点数を超過しなかった。
【結
論】気腹までの時間の多少の延長はあったが,術後疼痛の軽減と整容性の改善が見込める
SILSは適応症例には積極的に施行していくべき術式と考えられた。
49
35.初経前の女児に発症した卵巣粘液性腺癌の一例
○松村由紀子,柳田 毅,熊坂 諒大,松下 容子,阿部 和弘,谷口 綾亮,
横山 良仁,樋口 毅,水沼 英樹
弘前大学大学院医学研究科産科婦人科学講座
【緒言】16歳以下の女児での卵巣腫瘍の発生頻度は同年代の全腫瘍の 2 %以下である。
同年代の卵巣腫瘍は胚細胞腫瘍の占める割合が高く,上皮性腫瘍は約15%の頻度と言われ
る。初経前の上皮性腫瘍の発生は稀であり,初経前の女児に発症した卵巣粘液性腺癌はこ
れまで 3 例の報告がされているのみである。今回我々は初経前の女児に発症した卵巣粘液
性腺癌の症例を経験したので報告する。
【症例】12歳 女児。右側腹部痛,腹部膨満感が
あり前医を受診。超音波検査にて約17cm大の多房性の嚢胞性腫瘤を認めた。腫瘍マーカー
はCA125が10 U/ml ,CA19- 9 が17U/ml,CEAが0.5ng/ml,AFPが 5 ng/ml以下と正常範
囲であった。精査と加療を目的に当科を受診し,腹部症状の増悪があったため同日入院と
なった。MRI検査にて骨盤内に多房性で一部不整な充実性成分を伴う腫瘤を認めた。隔壁
には造影効果を認めた。CT検査にてリンパ節の腫大や遠隔転移を認めなかった。卵巣腫
瘍の診断にて開腹術を施行した。腫瘍は右卵巣由来で右付属器切除を施行した。腹腔内に
粘稠性の腹水を認めた。子宮,対側付属器,リンパ節,大網,肝等いずれへも転移を疑う
所見を認めなかった。腫瘍重量は1400g,割面は大小不同の多房性の嚢胞とゼラチン状の
充実性部分を認めた。永久標本で粘液性嚢胞腺腫,粘液性境界悪性腫瘍,粘液性腺癌が混
在する病理像を認めた。術中の腹水細胞診は陰性で,粘液性腺癌Ⅰa期相当と診断した。
追加手術,化学療法は施行せず外来にて慎重に経過観察中である。
【まとめ】本症例では,
母親の妊婦健診時に撮影された胎児超音波像を精査したが腹部腫瘤を示唆する像は確認で
きなかった。本症例は,新たな卵巣上皮性悪性腫瘍の発生機序を考える上で貴重な材料と
思われる。
36.高カルシウム血症と白血球増多を呈したPTHrP・G-CSF産生卵巣明細胞
腺癌の 1 例
○熊坂 諒大,谷口 綾亮,柳田 毅,松村由紀子,阿部 和弘,横山 良仁,
樋口 毅,水沼 英樹
弘前大学大学院医学研究科産科婦人科学講座
【緒言】高カルシウム血症は悪性腫瘍の10∼15%に見られる。明細胞腺癌は卵巣悪性腫
瘍の中で高カルシウム血症の頻度が高く,一般的に高カルシウム血症を合併した卵巣癌は
予後が悪い傾向にある。また,一部の悪性腫瘍では白血球増加症を伴い,腫瘍組織から
G-CSFを産生しているものが認められる。今回我々は,高カルシウム血症と白血球増加症
を同時に認め,その原因が卵巣明細胞腺癌であった症例を経験したので報告する。【症例】
64歳,女性,全身倦怠感,食欲不振,嘔気,便秘を主訴に前医を受診した。腹部CT検査
で骨盤内腫瘍を認めたため,当院紹介。初診時の血液検査は,WBC:21060/µl,Ca:18
mg/dlと白血球増加と高カルシウム血症を認めた。腫瘍マーカーでは,CA19- 9 が1611
IU/mlと著明な上昇を認め,PTHrPが21.1pmol/l,血清G-CSFも73pg/ml(正常値:38未
満)と上昇していた。腫瘍からのPTHrP産生による高カルシウム血症であり,原因疾患
の治療が必要と考え,入院翌日に腹式単純子宮全摘術,両側付属器切除術,大網部分切除
術を施行した。腫瘍は右卵巣由来で表面平滑な腫瘤であった。腫瘍は約2kgで,充実性部
分の割面は乳白色で軟らかかった。術後一日目に血清Ca値は速やかに11.1mg/dlまで戻っ
た。PTHrPは手術翌日正常値まで低下した。卵巣明細胞腺癌1a期として,術後化学療法
を行うこととした。CPT-P療法を 6 クール終了し,現在も再発兆候なく外来での経過観察
中である。
【結語】PTHrPとG-CSFを同時に産生する婦人科腫瘍については,我々が検索
した限りでは,今回が初めての報告と思われる。同時に産生している二つの物質の相互作
用は不明であるが,慎重な経過観察が必要であると思われた。
50
37.当科における再発卵巣癌症例におけるペグ化リポソーマルドキソルビシン
の治療効果
○赤平沙恵子,佐藤 直樹,三浦 康子,清水 大,河村 和弘,藤本 俊郎,
寺田 幸弘
秋田大学
【目的】卵巣癌および卵管癌の再発・再燃例に対するペグ化リポゾーマルドキソルビシ
ン(以下PLD)を含む化学療法の有用性を検証すること【方法】当院で治療した卵巣癌
もしくは卵管癌症例の中で,再発・再燃に際してPLDを含む化学療法を施行した17症例
(内10例はプラチナ抵抗性)を対象とした。化学療法はPLD(50mg/㎡)単剤療法[15例]
もしくはPLD(30mg/㎡)+カルボプラチン(AUC= 5 )併用療法[ 2 例]である。対象
症例の病状や治療経過は各々であり,画一的な評価は困難であったが,臨床所見や経過
を基に総合的に治療効果を判定した。
【成績】手術療法後の寛解維持を含めるとCRは 3 例
(17.6%)
,PRが 3 例(17.6%)
,SD4例(23.5%) 7 例PD(41.2%)であった。全症例にお
いての無増悪生存期間中央値は 4 か月であり,最終治療がPLDを含む化学療法であった14
例では生存期間中央値が18か月であった。
【結論】再発卵巣癌に対する化学療法において
PLD単剤療法の有効性は示されてきた。今後はPLD単剤療法を選択するカテゴリーの設
定およびPLDを含む併用療法の効果について検証を深めてゆく必要がある。
38.腸管合併切除を行った卵巣がん19例の検討
○和田 潤郎 1 ),三浦 理絵 2 ),松村由紀子 3 ),室本 仁
佐藤 秀平 1 ),森川 晶子 1 )
1 )青森県立中央病院, 2 )青森市民病院, 3 )弘前大学
1)
,湯沢 映
1)
,
進行卵巣がんの予後規定因子として初回開腹手術における残存腫瘍径が 1 ㎝未満にでき
た場合は予後の改善が図れることよりoptimal surgeryと呼ばれ我々婦人科医の 1 つの手
術目標をされている。しかし,結果的に腹腔内に再発を来し,必ずしもその予後がいい結
果を生むとは限らないのが現実である。
今回,我々は卵巣癌の直腸浸潤やダグラス窩播種,または卵巣癌の腹腔内再発症例に対
し腸管合併切除を施行した19症例をもとに,初回手術症例と,再発あるいは不完全手術ゆ
えに二次的腫瘍減量目的に開腹下に腸管合併切除を行った症例に分けて検討をおこなっ
た。
その内訳は初回手術症例が 9 例,二次的に腸管合併切除を行った症例が10例。術式
の詳細は腫瘍合併のまま行った低位前方切除が11症例,全結腸切除術 1 例,小腸合併
切除 1 例,回盲部切除 1 例,結腸と小腸合併切除 4 例,その他が 3 例であった。組織系
は Endometrioid adenocarcinoma 10例,serous adenocarcinoma 7 例(含 papillary),
mucinous adenocarcinoma 2 例。初回手術で胸水貯留などの理由により NAC を施行して
から手術に導入した症例が 4 例であった。現在,初回手術症例 9 例のうち 8 例がCR, 1
例がPR。再発あるいは腫瘍残存のため腸管合併切除をおこなった10症例のうちCRが 2
例, 4 例が死亡,担癌状態が 4 例であった。
(観察期間: 1 年 7 か月∼ 6 年 9 か月)観察期
間に差はあるものの,初回手術より一期的に腸管合併切除まで行った症例のほうが予後良
好である傾向を認めた。文献的考察をふまえて報告する。
51
39.帝王切開術後の循環動態管理に苦慮したFontan術後妊娠の 1 例
○松下 容子,山本 善光,田中 幹二,尾崎 浩士,水沼 英樹
弘前大学大学院医学研究科産婦人科学講座
【緒言】心血管疾患合併妊娠は,近年増加傾向にあり周産期管理上ハイリスクである。
Fontan術後妊娠は,以前は禁忌と考えられていたが,最近では正常分娩の報告も散見さ
れる。今回,Fontan術後妊娠に対し帝王切開術を施行し,術後の循環管理に苦慮した症
例を経験したので報告する。
【症例】24歳, 1 妊 0 産。19歳時に単心房・単心室・大血管転位に対して当院心臓外科
にてFontan術を施行。頻拍発作にて電気的除細動施行の既往もある。妊娠前NYHA分類
Ⅰであり,妊娠は許可されていた。他院にてhMG-hCG療法にて妊娠成立。里帰り分娩を
希望し,妊娠25週当科初診。妊娠30週,切迫早産として入院管理となった。ウリナスタチ
ン腟錠・安静にて経過観察していたが,NYHA分類ではⅡ度と増悪を認め,SpO2 80%前
半と低値であった。切迫早産が徐々に進行したため,陣痛の母体負荷を考慮して妊娠33週
帝王切開術を施行した。児は1724 gの女児(Ap. 4 / 7 )で早産低出生体重児としてNICU
入院。母体の術中血行動態は安定していたが,術後座位にてもSpO2 60%台で離床進まず,
酸素投与を開始。心エコー上心不全兆候はなかったが,術後 1 週間経過しても改善せず,
分娩後の循環動態適応不全と判断され小児科に転科となり,結局退院まで 6 週間を要し
た。
【考察】Fontan術後症例では容量負荷の影響を受けやすく,妊娠中はもちろん産褥期も
厳重な管理を要する。またこれらのリスクについて妊娠前に十分に説明したうえでの計画
的妊娠が必要である。
40.周産期心筋症の一例
○佐々木 恵 1 ),三浦 伶史 1 ),湊 敬廣 1 ),松本 大樹
我妻 理重 1 ),岩渕 薫 2 )
1 )大崎市民病院産婦人科, 2 )大崎市民病院循環器科
1)
,吉田 祐司
1)
,
【症例】30歳女性。 2 妊 0 産。既往歴に,29歳時に両側卵管水腫にて手術施行されてい
るが,特に心血管系の異常を指摘されたことはなかった。凍結胚移植を受け,二絨毛膜性
二羊膜性双胎妊娠成立。初期より当院で妊婦健診していた。HTLV-Ⅰキャリアである以
外は特に異常を認めず。25週の妊婦健診で頸管長短縮,胎児心拍陣痛図上,規則的な子宮
収縮を認め,切迫早産の診断にて入院となった。入院後,塩酸リトドリンを100 200μg/
分で持続投与し,子宮収縮は落ち着いていたが,心拍数は100 120/分程度で経過。自覚
症状はほとんどなく,息切れ・下腿浮腫も正常妊娠に伴うものの範囲内であった。34週に
帝王切開術の術前検査のための心電図で異所性心房調律,左室由来期外収縮頻発,T波平
坦化を認め,精査のため35週 1 日に心エコー施行したところ,EF38.4%,diffuse hypokinesisを認め,周産期心筋症が疑われた。循環器科コンサルトし,症状がないため,塩酸
リトドリンは継続しながら,注意深く経過観察の方針であったが,同日,陣痛発来した。
双胎,児頭骨盤不均衡の適応にて,同日腰椎・硬膜外麻酔下に緊急帝王切開施行。出生体
重はⅠ児2534g,Ⅱ児2366g,Apgar scoreはⅠ児 9 /10,Ⅱ児 8 / 9 ( 1 分値/ 5 分値)で
あった。術後,ICU入室となったが,EFは48%と改善を認め,術後第 1 病日には一般病棟
転室,第 7 病日に退院となった。しかし,産褥 3 カ月の時点でもEF40%台であり,当院
循環器科で経過観察中である。周産期心筋症に関する文献的考察も含めて報告する。
52
41.Osler-Weber-Rendu病合併妊娠の一例
○経塚 標,片倉真輝帆,菅野 成子,山口 明子,田中 幹夫
太田西ノ内病院 産婦人科
【 緒 言 】Osler-Weber-Rendu病( 遺 伝 性 出 血 性 毛 細 血 管 拡 張 症 Hereditary Hemorrhagic Telangiectasia HHT)とは,1865年にBenjaminにより初めて報告され,常染色体
優性遺伝をとり,発症頻度は 1 /5000-8000人である。粘膜,肺等の毛細血管形成不全によ
り反復出血をきたし,肺,脳,肝臓等に動静脈奇形を形成することがある。中でも肺動静
脈奇形は15-30%に合併する。今回我々は妊娠経過中の反復性の鼻出血を契機にHHTと診
断し,肺動静脈奇形を合併した症例を経験したので報告する。
【症例】32歳,初産婦。家
族歴:母は肺動静脈奇形にて手術歴あり。姉は脳膿瘍の既往あり。既往歴:19歳時大腸ポ
リープ切除術。26歳時卵巣チョコレート腫瘍にて手術【現病歴】25週 5 日貧血指摘あり近
医より当院紹介。その後鼻出血を繰り返し,家族歴からHHTを疑い精査した。脳血管に
はMRI上特に異常は認めなかったが,胸部Xpにて肺左舌区領域,腹部超音波検査にて肝
臓内に動静脈奇形を疑う所見をみとめた。35週 5 日血圧上昇,尿蛋白出現を認め管理目的
入院となった。入院後腎機能の悪化,尿酸値の上昇を認め36週 3 日選択的帝王切開術施行
し2255gの生児を得た。術後 6 日目経過良好にて退院。術後腹部造影CTにて肝内に動静
脈奇形,胸部MRAにて左肺舌区領域に動静脈奇形を認めた。術後11カ月目に肺動脈塞栓
術を施行し,現在外来経過観察中である【まとめ】当症例ではHHT合併妊娠にて妊娠高
血圧症候群を来たしたが,適切な時期にTerminationしたことで母児とも良好な経過を得
ることが出来た。HHTについて,またHHT合併妊娠について若干の文献的考察を加え報
告する
42.妊娠初期に肺血栓塞栓症を発症し,一時心肺停止に陥った一例
○坂本 翼 1 ),名取 徳子 1 ),畑山 伸弥 1 ),高田 杏奈 1 ),岩間 英範
葛西真由美 1 ),鈴木 博 1 ),加賀谷裕太 2 ),高橋 徹 2 )
1 )岩手県立中央病院 産婦人科 2 )岩手県立中央病院 循環器科
1)
,
【はじめに】妊娠,分娩は,それ自体が,静脈血栓塞栓症の危険因子である。妊娠後期,
産褥期には発生頻度が高まるが,妊娠初期においても,脱水等の危険因子がくわわると,
発症する危険性がある。今回われわれは,妊娠初期に基礎疾患のない妊婦が,肺血栓塞栓
症を発症した一例を経験したので報告する。
【症例】24歳女性,未経産【主訴】意識消失【既往歴】特記すべきことなし【現病歴】
近医にて妊娠と診断されて以後,検診では特に異常を指摘されていなかった。しかし,悪
阻症状がひどく食事が取れていなかった。妊娠 7 週時に自宅で突然意識消失し,当院救急
外来へ搬送された。来院時は心肺停止状態であったが,蘇生に反応して自己心拍再開し
た。しかし,自発呼吸は微弱なため気管挿管をおこない,造影CTを施行した。CT上,右
肺動脈の完全閉塞と左肺動脈の大部分の閉塞を認め,肺血栓塞栓症と診断。ICU入室し,
血栓溶解剤,低体温療法開始した。経過は順調で,第 7 病日に一般病棟へ転棟した。その
後,ヘパリン持続点滴施行,神経学的にも後遺症なく第44病日に退院となった。退院後は
ヘパリンカルシウムの自己注射を継続し,現在,妊娠継続中である。経過を通じて切迫流
産の兆候は見られていない。
【結語】妊娠初期に,肺血栓塞栓症を発症し一時心肺停止に
陥ったが,血栓溶解剤,低体温療法などにより後遺症無く救命しえたので報告した。
53
43.早期の新鮮凍結血漿輸血が必要と考えられた産科危機的出血の二例
○船水 文乃 1 ),工藤 香里 1 ),橋本 哲司 1 ),小田 得三 1 ),山口 英二
和田 潤郎 3 )
1 )青森市民病院 2 )五所川原市立西北中央病院 3 )青森県立中央病院
2)
,
【緒言】早期の新鮮凍結血漿輸血が必要と考えられた産科危機的出血の二例を経験した
ので報告する。 【症例 1 】42歳女性, 2 妊 2 産,既往歴や妊娠経過は異常なし。近医に
て吸引分娩後,2000mlの大量出血を認め当科へ救急搬送された。子宮収縮良好,腟壁よ
りoozing多数あり,予防的に蛋白分解酵素阻害剤を投与しながら縫合止血した。しかし
出血が持続し,一時ショック状態となった。赤血球製剤,新鮮凍結血漿を投与したとこ
ろ,出血が軽快し,状態も安定した。 【症例 2 】20歳女性, 1 妊 0 産,既往歴,妊娠経
過は異常なし。妊娠38週 0 日,胎盤早期剥離,子宮内胎児死亡にて近医より救急搬送され
た。母体救命のため緊急帝王切開を施行した。術後出血が持続し,出血性ショックをきた
したため,蛋白分解酵素阻害剤,赤血球製剤,血小板製剤,新鮮凍結血漿を投与したとこ
ろ速やかに軽快した。 【考察】症例 1 では,吸引分娩による産道裂傷で出血が過多とな
り,徐々に凝固消費状態となったものと考えられる。症例 2 では,常位胎盤早期剥離によ
る子宮内出血が発生し,児死亡となるほど重篤な状態で,来院時はすでに凝固消費状態に
あったものと考えられる。いずれの症例でも,処置後も出血は持続し,突然ショック状態
に陥ってしまった。産科危機的出血への対応ガイドラインでは,ショックインデックス1.5
以上,産科DICスコア 8 点以上,バイタルサインの異常のいずれかが認められた場合は直
ちに輸血を開始し,新鮮凍結血漿も投与することとなっている。産科危機的出血では凝固
因子,特にフィブリノゲンが低下しやすく,早期に新鮮凍結血漿などを補充することが重
要と考えられた。
44.切迫子宮破裂を伴った癒着胎盤の一例
○三浦 理絵 1 ),松村由紀子 2 ),室本 仁 3 ),湯沢 映 3 ),和田 潤郎
森川 晶子 3 ),佐藤 秀平 3 )
1 )青森市民病院 2 )弘前大学付属病院 3 )青森県立中央病院
3)
,
【はじめに】前置胎盤では約 5 ∼10%に癒着胎盤が合併する。既往帝切回数と癒着率は
比例する。今回, 2 回の既往帝王切開瘢痕部が菲薄化し,切迫子宮破裂と癒着胎盤となっ
た一例を経験したので報告する。
【症例】症例は26歳 2 回帝王切開既往ある経産婦。前医
で前置胎盤の診断,妊娠21週で当科紹介となった。初診時の超音波診断にて胎盤付着部の
子宮筋層が菲薄かつ不明瞭で,胎盤と膀胱筋層の間に怒張する静脈をみとめた。警告出血
等はなく妊娠30週 2 日に周産期管理のため入院。妊娠32週での骨盤MRI撮影で既往帝切創
部の菲薄化は確認されたが,MRIでは明らかな癒着や䮄入所見は認めなかった。自己血貯
血をしながら,癒着による二期的手術の可能性も考慮し子宮動脈塞栓の準備もしたうえ
で,妊娠37週 1 日に選択的帝王切開術を施行した。術式は子宮底部横切開にて児を娩出,
胎盤剥離は試みずに子宮切開創を縫合した。既往帝王切開の瘢痕部分は菲薄化し,胎盤が
透見できたが,膀胱と子宮壁の剥離は可能と判断し子宮全摘術に移行した。手術時間 3 時
間15分,出血量は全行程2297gで,自己血400mlを返血した。術後胎盤病理では瘢痕部筋
層の欠如所見と子宮体部筋層への癒着胎盤であった。【考察】本症例では帝王切開瘢痕部
に胎盤が付着し,さらに伸展し菲薄化した後での紹介でもあったため,癒着の診断は困難
であった。既往帝切の場合,癒着胎盤の診断の時期や診断方法の確立に向けた検討が必要
と思われる。
54
45.術前に診断されていなかった穿通胎盤に遭遇したときにどう対応すべきか?
○漆山 敬子,清野 学,前川 絢子,網田 光善,堤 誠司,倉智 博久
山形大学 産科婦人科
【緒言】癒着胎盤はまれな疾患ではあるが,近年発生頻度が増加していると報告されて
いる。しかし,分娩前の診断は容易でなく,帝王切開時に大量輸血の準備や子宮全摘術
など緊急の判断が必要になる。今回,膀胱との癒着剥離困難な穿通胎盤の一例を経験し
たので報告する。【症例】39歳, 7 経妊 2 経産( 2 回帝王切開術と 3 回人工妊娠中絶術)。
IVF-ETで妊娠が成立した。前医(常勤医 2 名,第 2 次医療機関)にて妊娠34週 5 日に多
量の性器出血が出現した。超音波検査にて前置胎盤はないが,胎盤肥厚を認め,常位胎盤
早期剥離を疑い,20時に緊急帝王切開術を施行した。子宮下節の漿膜面に胎盤血管の突出
を認め,穿通胎盤が強く疑われたため,子宮底部を横切開し児を娩出し,胎盤を残したま
ま閉腹し,当院へ救急搬送された。23時,搬入時外出血は少量,腹腔内出血もなく,保存
療法で経過観察とした。翌日腹腔内出血が出現し,子宮全摘術を決定した。胎盤突出部は
膀胱と左尿管を巻き込んで癒着し,これらを剥離時,膀胱と左尿管が損傷し,修復術を要
した。術中出血量は14,090ml,MAP 40単位,血小板40単位,FFP 34単位を投与した。術
後経過は良好で,術後26日目で退院した。病理検査でも帝王切開瘢痕部の穿通胎盤が確認
された。【結語】開腹時に初めて認識された穿通胎盤症例で,大量出血に備えた輸血の確
保や子宮全摘術,膀胱癒着部の泌尿器科医による剥離や修復術などの可能性も考慮される
場合は,可能な場合は手術を中止してでも医療資源(物や人)が余裕をもって投入可能な
高次医療機関への搬送を考慮すべきであると考えられた。
46.帝王切開後の前置胎盤症例
○林 理紗,高取恵理子,船越 真生,畑山 寿緒,菅原 英治,藤原 純,
松田 壯正,利部 輝雄,佐藤 龍昌(麻酔科)
盛岡赤十字病院
帝王切開後の前置胎盤は比較的まれな疾患であるが,帝王切開数の増加とともに症例報
告が見られるようになった。今回,帝王切開後に発症した前置胎盤例を経験したので報告
する。症例 38歳 女性【既往歴・妊娠歴】 2 妊 2 産,重症妊娠高血圧症候群のため 2 回
とも帝王切開。
【主訴】無月経【現病歴】最終月経 1 月15日から一週間その後,無月経。
3 月 1 日初診。妊娠 6 週相当胎嚢あり,帝王切開瘢痕と思われる子宮壁が拡張し周囲に
hyperechoicな部が観察された。
3 月 8 日性器出血あり受診,頭殿長4.3mm,胎嚢の成長が観察された。 3 月23日頭殿長
18mm,妊娠 8 週 6 日相当で心拍動が観察された。エコーで絨毛は子宮前壁にあり帝王切
開瘢痕部妊娠と考えた。その後出血なく,妊婦健診を継続した。 7 月16日妊娠25週のエ
コー検査で胎児成長は順調で,胎盤は子宮前壁にあり帝王切開瘢痕をカバーし前置胎盤
の所見があった。 9 月10日妊娠33週のMRI検査では,前置胎盤で穿通胎盤の所見はなかっ
た。エコーでも子宮下壁に血流が目立つが穿通胎盤の所見は確認できなかった。自己血貯
血を開始。
妊娠37週 1 日で帝王切開とした。子宮下部は膨隆し菲薄化し胎盤が透見される。胎盤を
さけて子宮を縦切開し胎児娩出,♀2,703gアプガー 8 / 9 。直ちに子宮摘出とした。出血
量5,00mlで自己血を含み輸血を行った。著変なく退院した。摘出子宮の病理所見では,子
宮頸部壁は薄く,胎盤はendocervixにも存在し前置胎盤に矛盾しない。本症例では前置胎
盤に特有とされる予告出血もなく,初期の出血だけであった。また穿通胎盤所見は見られ
なかった。
55
47.子宮筋腫による後屈妊娠子宮嵌頓症に対し帝王切開術を施行した一例
○葛西剛一郎,平川 八大,葛西亜希子,冨浦 一行,高橋 秀身
大館市立総合病院 産婦人科
妊娠初期の子宮は約15%が後屈であるが,妊娠16週頃にはほとんどの場合自然に整復さ
れ前屈となる。妊娠中期以降も整復されない場合を後屈妊娠子宮嵌頓症というがその頻度
は 1 /3000∼ 1 /10000とまれであり分娩は帝王切開が必要となる。術前診断可能な場合も
あるが,術中に診断される場合も多く手術の難易度は高い。今回我々は子宮底部に存在す
る子宮筋腫のため後屈妊娠子宮嵌頓症となり,帝王切開術を施行した一例を経験したので
報告する。
【症例】30歳 0 妊 0 産,無月経を主訴に平成22年 1 月(妊娠 6 週時)当科初診,
子宮内胎嚢と共に 3 ∼ 5 cmの多発筋腫を認めた。妊娠12週頃から子宮筋腫と一致した疼
痛及び子宮収縮を認めた。妊娠16週から20週,妊娠22週から35週まで切迫流・早産のため
入院加療を要した。妊娠中期からはダグラス窩に7cmの子宮筋腫を認め,当時はその圧排
と考えていたが子宮頚部が確認できずMRIでも子宮頚部は不明であった。児頭下降を期待
し待機したが,児頭下降が見られず妊娠40週で帝王切開術を施行した。児娩出後に診断が
ついたのだが子宮底部にある筋腫が骨盤でひっかかりダグラス窩にはまり込み,子宮が反
転した状態となる後屈妊娠子宮嵌頓症であった。腟は臍高付近まで引き延ばされていたた
め児娩出は 2 時から 4 時方向の腟をわずかに残し大部分の腟管と子宮後壁を切開し行われ
ていた。子宮温存は可能であったが,腟動脈からの出血が多く手術途中からDICとなり出
血量は羊水込みの4045g,濃厚赤血球10単位,新鮮凍結血漿 9 単位輸血を要した。
【結語】
後屈妊娠子宮嵌頓症はまれな疾患であるが,術前診断なされなかった場合胎児死亡や子宮
摘出を必要となったケースもあり,その疾患が存在するという知識を持っていることが必
要であると思われた。
48.弛緩出血に対し,compression sutureを施行し,子宮温存し得た 1 例
○阿部 有香,田中 耕平,藤井 調,野田 隆弘,橋本志奈子,岩本 充,
飯田 修一,森 滋,鈴木 雅州
スズキ記念病院
弛 緩 出 血 に 対 す る 外 科 的 治 療 法 と し て は,1997年 にChristpher B-lynchが 報 告 し た
B-lynch法が知られている。今回我々は,帝王切開時,双手圧迫法,子宮収縮剤に反応し
ない弛緩出血に対し,compression sutureを施行し,子宮温存し得た 1 例を経験したので
報告する。
【症例】33歳 1 妊 0 産。妊娠経過に特記事項なし。41週 0 日オキシトシンによる分娩誘
発を施行し,同日回旋異常,児頭骨盤不均衡の診断で,帝王切開を施行した。3950g女
児Ap8/ 9 児および胎盤の娩出後,子宮収縮は不良で,双手圧迫法と同時に子宮収縮剤の
全身投与や局所投与を施行するも無効であり,子宮全摘術を考慮しつつ,compression
sutureを施行した。同時に輸血の準備を行った。子宮体下部前壁から後壁に 1 号吸収糸を
通しZ縫合を数針施行した。子宮収縮傾向出現し,同手法を繰り返したところ,出血が減
少し,子宮を温存し得た。総出血量1600g,MAP1000ml,FFP200mlの輸血を施行した。
術後は軽度貧血を認めるのみで,術後14日目に退院となった。その後 1 カ月健診時も異常
所見は認めなかった。
【考察】当院では年間1000件を超える分娩を取り扱っており,過去10年間で弛緩出血に
より子宮摘出を余儀なくされた症例は 2 症例であった。帝王切開時の弛緩出血に対する
治療法はさまざまであり,止血のために子宮全摘術を施行せざるを得ない場合もあるが,
compression suture(B-lynch法やその変法)は非常に有用な止血法である。合併症に関
しては,子宮壊死,子宮内感染などの報告があるが,いまだ検討する必要がある。今後も
症例に応じて,必要であれば迅速に実践していきたい。
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スポンサードセミナー
モーニングセミナー
第2日 6月5日(日)第1会場(サファイア)7:45 ∼ 8:45
座長:倉智 博久(山形大学医学部 産科婦人科学講座 教授)
「確実な避妊法の普及を目指して∼緊急避妊(EC)や中絶を繰り返させないために∼」
講師:北村 邦夫(㈳日本家族計画協会 家族計画研究センター 所長)
長年の悲願であった緊急避妊薬(以下「EC」
)が本年 2 月 23 日に承認された。しかし,3 月 4 日付
け医薬食品局審査管理課長名で「適正使用への協力依頼」を関係学会に送るなど,新薬としては異例
の措置がとられている。課長通知には「本剤がコンドームや低用量経口避妊薬等に代えて計画的な避
妊に使用されないよう適正な使用を確保すべきである」と強調し,さらに「本剤は,避妊措置に失敗
した場合などにおいて,緊急的に用いるものであり,通常の経口避妊薬のように計画的に妊娠を回避
するものではないことについて特段の留意を願いたい」と繰り返している。ここには,
「医療機関及び
薬局において,本剤の適切な管理を願いたい」と,処方する医師と直接的指導にあたるコメディカル
への警告とも受け取られかねない内容さえも明記されている。
これに先立ち,日本産科婦人科学会はいち早く「緊急避妊法の適正使用に関する指針」を作成し,
EC 処方のアルゴリズム(図)には,EC を繰り返すことがないように低用量経口避妊薬(OC)や子宮
内避妊具など確実な避妊法選択を促すように推奨している。
同様なことは人工妊娠中絶(以下「中絶」
)についても言える。演者が昨年 9 月に厚生労働科学研究
の一環として実施した「第 5 回男女の生活と意識に関する調査」の結果によれば,16 歳から 49 歳の
女性における中絶経験率は 15.5%,そのうち中絶を繰り返している女性は 35.6%と高率であった。
100%確実な避妊法がこの世の中に存在しない以上,性交が行われる誰でも妊娠する可能性がある。そ
の妊娠が仮に意図しない,あるいは予定外の場合,やむを得ぬ理由で中絶を選択せざるを得ないこと
があることをリプロダクティブ・ライツ(性と生殖に関する権利)として捉えることが重要である。
しかし,
「繰り返すこと」についてはどうだろうか。中絶手術を担当した医師やコメディカルの責任が
問われているとは言えないだろうか。中絶が行われた日を月経の初日としてなぜ OC や子宮内避妊具/
子宮内避妊システムなど確実な避妊法を提供できなかったのだろうか。
本学会では,EC 処方や中絶手術の機会に直接関わる婦人科医として,なぜ確実な避妊法選択へと女
性の行動変容を求めることが必要か,どのようにして効果的な行動変容を促すことができるかについ
て,日頃考えていることをお話させていただきたい。
共催:バイエル薬品株式会社
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ランチョンセミナー1 第1日 6月4日(土)第1会場(サファイア)12:00 ∼ 13:00
座長:寺田 幸弘(秋田大学大学院医学系研究科産婦人科学講座 教授)
総合テーマ「ここまでできる腹腔鏡,
こうしてできる腹腔鏡」
講演1:婦人科腹腔鏡の最前線とその将来像
講師:安藤 正明(倉敷成人病センター副院長・理事 同内視鏡手術センター長)
「背景」腹腔鏡が臨床応用されて 20 年以上が経過し,当初検査として始まった腹腔鏡
も,この間の光学機器や操作器具の発達と手術技術の向上により,複雑な手術手技を行う
のが可能となってきています。適用は拡大されつつあり,当初不可能と思われた婦人科癌
の手術や深部あるいは非特異部位の子宮内膜症などの radical excision への適用も可能と
なりつつあります。また一方では,さらなる低侵襲化をめざした単孔式腹腔鏡手術や
NOTES な ど の 新 た な ア プ ロ ー チ 法, ま た master slave 型 ロ ボ ッ ト da Vinci を 用 い た
robotic surgery など新たな潮流も現れつつあります。本会においてはこれらの流れに視
点をおいて,我々が行ってきた腹腔鏡手術と,新たに導入した低侵襲アプローチ法などを
紹介し内視鏡手術の今後の展望を示したいと思います。我々の腹腔鏡手術の導入は機器が
充実してきた比較的最近(1997 年)であるため,従来から言われていた鏡視下手術の限
界をあまり意識することなく,また周囲からの制約を受けることなく,腹腔鏡手術を開始
できました。従来の開腹手術がどこまでこの低侵襲な腹腔鏡下に再現が出来るか,また深
部への到達能や拡大能などの利点を活かした内視鏡ならではの手術手技が確立できないか
などを課題として,これまで手術に取り組んできました。今,13 年が経過し 8,500 例余り
に腹腔鏡手術を施行しましたが,現在では良性疾患手術のほとんどは鏡視下に行うことが
可能と考えています。例をあげれば,最も高頻度の子宮全摘術(年間 400 例以上)は,ほ
とんどが腹腔鏡下(total laparoscopic hysterectomy)あるいは膣式であり,ここ 5 年間
開腹で行われたのは 1.7%となっています。また,この低侵襲手術で最も恩恵を受けるの
は最も radical な手術を受ける症例であると考え,良性疾患のみならず,婦人科悪性腫瘍
手術にも積極的に内視鏡手術を導入してきました。術後の回復は極めて早く,痛みが軽度
で,社会復帰も早く,また悪性疾患では特に術後治療が必要な際 , その遅れを防ぐことに
もつながります。さらに,直腸子宮内膜症や尿路子宮内膜症など良性ではあっても広範囲
の剥離や切除再建術を必要とする場合にも適応を拡げ,腸管子宮内膜症では double
stapling technique や functional end to end anastomosis,尿路子宮内膜症では Boari flap
法,psoas hitch 法などの再建法を腹腔鏡下に再現しました。また最近は minimal access
surgery の新たな潮流として注目を集めつつある単孔式腹腔鏡手術や NOTES(経管腔的
内視鏡手術)も導入しており,これについても触れたいと思います。腹腔鏡下手術はその
拡大能と深部到達能などの優位性から骨盤深部で繊細な操作が要求される骨盤内手術には
合理的な手法です。困難な作業環境の下に複雑な手術を可能とするのは骨盤局所解剖の知
識と正確な鉗子操作や腔内縫合であると考えています。効果的なトレーニング,電気機器
の知識,新たなエネルギーデバイスの導入,新たな低侵襲アプローチ法やロボット手術の
導入などにより,さらに低侵襲手術の適応が拡大され,また更なる低侵襲手術が開発され
ることが期待されます。
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講演2:婦人科腹腔鏡の最前線を目指して∼現状をbreakthroughするための秘策(トレーニング)
講師:金尾 祐之(倉敷成人病センター 婦人科 医長)
Learning curve
ある技術を習得する過程における技術の習熟度とそれにかかる期間とをグラフ化したもの。
腹腔鏡手術においても安全に手術を施行する技術を習得するまでに一定の症例数の経験
が必要とされ,技術習得までの手術時間や出血量など手術の質の進歩の過程を表現するた
めに用いられる…。
しかし実際の臨床においてはどうであろうか?
Learning curve の初期に見られるような発展途上の段階だからといって手術のミス,合
併症が許されるであろうか?
言うまでもないことであるが,術者として手術を行う以上,第一例目からすでに技術を
習得し,安全に手術を遂行しなければならない。そこで術者となる前に,すでに高い技術
を習得した諸先輩(エキスパート)からの直接的な手術指導が必要となるのである。しか
しまだまだ発展途上の婦人科腹腔鏡手術においてそのようなエキスパートに出会うチャン
スは限られているといえよう。婦人科腹腔鏡のすそ野を広げるためにもだれでも安全に腹
腔鏡を習得するトレーニング法,すなわち learning curve を変えるトレーニング法を確
立する必要がある。
我々はトレーニングのコンセプトを明瞭化することで,最前線といわれるハイレベルな
腹腔鏡技術でさえ実際の手術の経験なしに,誰でも,安全に習得可能であると考える。
今回の発表では我々が考える2つのトレーニングコンセプトを中心に発表する。
①技術的トレーニング
いわゆる hand eye coordination を鍛えるトレーニングである。もっともイメージしや
すいものとして縫合,結紮のトレーニングがあげられるが,これもただ漫然と行うので
は不十分でさまざまな状況(鉗子(hand)とカメラ(eye)の相互関係)を設定し,克
服するような工夫が必要である。
また危機的状況を想定し,回避する技術を身につけるために animal training は必須で
あると考える。animal training を効率的に行う工夫についても述べる。
②思考的トレーニング
手術手順を理解すること,これももっとも基本的な思考のトレーニングであろう。しか
し我々が最も重要と考える思考のトレーニングは骨盤解剖を立体的に構築することであ
る。
さらに立体構築された骨盤解剖をいろいろな角度から頭の中で観察できればまずどのよ
うな状況でも対応可能な思考(解剖学的理解)が構築されると考える。
そ の た め に 我 々 が 行 っ て い る ト レ ー ニ ン グ の 一 例 と し て fresh cadaver を 用 い た
training を紹介する。
以上のトレーニングを行うことで手術第一例目から安全な質の高い手術を行うことが可
能である。
すなわち learning curve は変えることが可能と考える。今回の発表では一般的腹腔鏡
手術についてのトレーニングばかりでなく,悪性疾患に対する腹腔鏡手術,単孔式手術の
トレーニングについても時間が許す限り触れたい。
共催:ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
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ランチョンセミナー2 第1日 6月4日(土)第2会場(エメラルド)12:00 ∼ 13:00
座長:水沼 英樹(弘前大学大学院医学研究科 産科婦人科学講座 教授)
「子宮内膜症のホルモン療法」
講師:原田 省(鳥取大学医学部 産科婦人科学講座 教授)
子宮内膜症は生殖年齢女性に好発し,疼痛と不妊を主症状とすることからリプロダク
ティブヘルスを損なう疾患として社会的にも注目されている。患者のおよそ9割が月経痛
を訴え,月経時以外の骨盤痛や腰痛の頻度も高く,排便痛や性交痛といった本症に特徴的
な症状もみられる。
本症患者は若年や未婚女性が多く,治療は薬物療法あるいは保存的手術療法が選択され
る。なかでも,腹腔鏡下手術の有効性が最も高い。一方で,術後の再発・再燃の頻度も高
く長期の薬物療法が必要となることも多い。薬物療法としては GnRH アゴニストの有用性
が認められており繁用されてきたが骨量低下の副作用が問題となっていた。近年,プロゲ
ステロン剤であるディナゲストや低用量エストロゲン・プロゲスチン合剤(LEP 製剤)
が発売され広く使われている。両薬剤ともに,副作用が少なく長期間の使用が可能である
ことが特徴と言える。
昨年には日産婦の子宮内膜症取り扱い規約が改定され,子宮内膜症の疼痛に対しては,
腹腔鏡下手術療法,LEP 製剤およびディナゲストが有用であることがクリニカルエビデ
ンスとともに述べられている。本症患者の治療にあたっては,薬物療法と手術療法を組み
合わせて,患者のライフステージとライフスタイルを考慮した選択が必要となる。本講演
では,ホルモン療法を中心に子宮内膜症治療の現状についてお話します。
共催:持田製薬株式会社
60
ランチョンセミナー3 第2日 6月5日(日)第1会場(サファイア)12:10 ∼ 13:10
座長:藤森敬也(福島県立医科大学 医学部 産科婦人科学講座 教授)
「重篤な胎児形態異常を見逃さないために」
講師:馬場一憲(埼玉医科大学総合医療センター 総合周産期母子医療センター 母体胎児部門 教授)
はじめに
埼玉医科大学総合医療センターは,人口 720 万人弱の埼玉県で唯一の総合周産期母子医療センター
を有し,数多くの胎児形態異常の症例が紹介されてくる。その中には,適切な周産期管理と新生児治
療で救命できたり予後を著しく改善させたりできる症例や,胎児治療が有効な症例も少なくない。し
かし,中には現在の医学では治すことができない異常も存在する。本講演では,当センターでの経験
から考案された,1次施設でも簡単に行うことができ,かつ,高次周産期センターでの出産が望まし
い異常や生命予後に関係するような重篤な胎児形態異常をできるだけ見逃さないための超音波検査法 1)
を中心に概説する。
妊娠 10 ∼ 11 週頃
(CRL計測)
と胎児の数のチェックを行うのと同時に,
次の3つの項目をチェックする。
妊娠週数の確認
1)胎児頭部が半球状か 2)胎児全体が羊膜腔の中にあるか
3)四肢は4本確認できるか
妊娠 12 週∼ 15 週
次の3つの項目をチェックする。
1)頭部横断面で左右対称に脳や脈絡叢があるか
2)胸部横断面で拍動する心臓がやや左寄りに位置しているか
3)腹壁外に突出した臓器を認めないか
妊娠 18 週∼ 20 週
下記の項目をチェック 2)することが望ましい。慣れれば,3 ∼ 5 分で行うことができる。
1.頭部
・BPD は妊娠週数相当か
・頭部横断面で内部は左右対称で頭蓋内に異常像がないか
・頭蓋外に突出する異常像がないか
2.上唇
・口唇裂はないか
3.胸部(四腔断面)
・心臓の位置と軸は左に寄っているか
・左右心房心室の大きさのバランスは良いか
・胸腔内に異常な像がないか
4.胸部(大血管)
・大動脈と肺動脈がラセン状に走行しているか
・大動脈と肺動脈の太さは略同じか
5.腹部
・胃胞は左側にあるか
・胃,膀胱,胆嚢以外に大きな嚢胞がないか
・腹壁(臍部)から臓器の脱出がないか
6.脊柱,臀部
・椎体と棘突起が欠損無く並んでいるか
・背中,臀部に異常な隆起がないか
7.
四肢
・十分な長さの四肢が確認できるか
8.羊水
・羊水過多も過少もないか
妊娠 20 週以降
妊娠 20 週頃に異常が無くても,それ以降に胸水,腹水,卵巣嚢腫などが出現することがある。その
ため,妊婦健診時の心拍動確認には超音波診断装置を用い,頭蓋内,胸腔内,腹腔内に異常な液体貯
留や腫瘤像がないかを一瞬でもチェックすることが望ましい。
まとめ
本講演で紹介する方法は簡略化されており,一般の妊婦健診中に行うことも可能である。毎年生ま
れる 100 万人の新生児のすべてに胎児形態異常の可能性があるため,すべての胎児が超音波検査で
チェックされることが望ましい。
参考文献
1)
馬場一憲:妊娠中の胎児診断
(形態異常のスクリーニング)
.日産婦誌,No.59
(6)
,N162-N167,2007
2)
馬場一憲:妊娠 20 週前後の簡易胎児スクリーニング.基礎から学ぶ産婦人科超音波診断(馬場一憲
編)
,東京医学社(東京)
,P74-80,2010
61
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62
ランチョンセミナー4 第2日 6月5日(日)第2会場(エメラルド)12:10 ∼ 13:10
座長:八重樫伸生(東北大学大学院医学研究科 婦人科学分野 教授)
「再発卵巣癌の薬物療法 ∼標準治療とその周辺∼」
講師:松本 光史(兵庫県立がんセンター 腫瘍内科 医長)
再発卵巣癌は,非常に Heterogenous な疾患である。初回治療から 3 年近くたって CA125
が上がり始めたような,再発治療開始から数年単位,初回治療からであれば優に5年以上
の生存が期待できそうな患者もいれば,初回治療中に症状が出現して画像評価で PD が確
定し,再発治療から数ヶ月,初回治療開始からでも半年程度の極めて厳しい予後を想定せ
ざるを得ない患者もいる。用いられる治療手段も,手術療法,放射線治療,薬物療法,緩
和療法という,いわゆる「がんの 4 大治療」は全て検討の対象になり得る。
再発卵巣癌を大きく「プラチナ感受性」と「プラチナ耐性」に大別し,かつ薬物療法に
絞って,現時点のエビデンスを整理し,現在の標準治療とその周辺,具体的には,
① 標準治療が複数あり得る場合,何をどう選ぶか
② 高齢者や臓器機能が低下している場合など,標準治療の実施が困難な場合どうするか
について,現在の標準治療が成立した経緯を踏まえてお話ししたい。
以下,再確認の意味も含め,使用するいくつかの用語の定義と,「標準治療」の例を示す。
「プラチナ・フリー・インターバル(PFI)」
初回治療でのプラチナ製剤最終投与から二次治療でのプラチナ製剤投与開始日までの間隔。
通常 6 ヶ月未満を「プラチナ耐性」,6 ヶ月以上を「プラチナ感受性」と区別する。
「プラチナ耐性再発」
PFI6 ヶ月未満の場合を指す。一般的には治療の目標は症状緩和と月単位の延命である。
リポゾーマルドキソルビシン(PLD)
,トポテカン,ゲムシタビンいずれかの単独投与が標準。
「プラチナ感受性再発」
PFI6 ヶ月以上の場合を指す。一般的には治療の目標は年単位の延命である。
プラチナ系薬剤,通常はカルボプラチンに,パクリタキセル,ゲムシタビン,PLD のい
ずれかを併用投与するのが標準である。
共催:ヤンセンファーマジャパン株式会社
TGCU(東北婦人科腫瘍研究会)
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共催企業
モーニングセミナー:バイエル薬品株式会社
ランチョンセミナー:ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
GEヘルスケア・ジャパン株式会社
持田製薬株式会社
ヤンセンファーマ株式会社
広告掲載企業
製品・機器展示企業
あすか製薬株式会社
アトムメディカル株式会社
コヴィディエン ジャパン株式会社
キッセイ薬品工業株式会社
グラクソ・スミスクライン株式会社
大塚製薬株式会社
株式会社シバタ医理科
ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
GEヘルスケア・ジャパン株式会社
大正製薬株式会社
東洋メディック株式会社
中外製薬株式会社
日本イーライリリー株式会社
バイエル薬品株式会社
日本新薬株式会社
バイエル薬品株式会社
メルクセローノ株式会社
久光製薬株式会社
ファイザー株式会社
ファイザー株式会社
富士製薬工業株式会社
久光製薬株式会社
メルクセローノ株式会社
持田製薬株式会社
科研製薬株式会社
旭化成ファーマ株式会社
アステラス製薬株式会社
アトムメディカル株式会社
エーザイ株式会社
株式会社八光
株式会社エスアールエル
株式会社大塚製薬工場
日本化薬株式会社
小野薬品工業株式会社
科研製薬株式会社
日本サムスンメディソン株式会社
協和発酵キリン株式会社
タカラベルモント株式会社
サノフィ・アベンティス株式会社
塩野義製薬株式会社
トーイツ株式会社
第一三共株式会社
大鵬薬品工業株式会社
株式会社ナカメディカル
武田薬品工業株式会社 ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
株式会社ツムラ
帝人ファーマ株式会社
富士製薬工業株式会社
日本化薬株式会社
株式会社ビー・エム・エル
MBL株式会社医学生物学研究所
ビーンスターク・スノー株式会社
(順不同) ブリストル・マイヤーズ株式会社
森永乳業株式会社
ヤンセンファーマ株式会社
ジェクス株式会社
MSD株式会社
大正富山医薬品株式会社
株式会社明治
(順不同)
持田シーメンスメディカルシステム株式会社
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