...

JP 2009-504172 A 2009.2.5 (57)【要約】 本発明は

by user

on
Category: Documents
19

views

Report

Comments

Transcript

JP 2009-504172 A 2009.2.5 (57)【要約】 本発明は
JP 2009-504172 A 2009.2.5
(57)【要約】
本発明は、向上したメチオニン合成効率を有する微生物の作製のための方法に関する。
本発明はまた、向上したメチオニン合成効率を有する微生物にも関する。さらに、本発明
はメチオニン合成に関して生物にとって最適な代謝流量を決定するための方法に関する。
【選択図】なし
(2)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
向上したメチオニン合成効率を有する生物を決定するための方法であって、以下のステ
ップ:
a.メチオニン合成に関与する既知の代謝経路に基づいて、当初のメチオニン合成生
物の代謝流量を複数のパラメータを用いてパラメータ表現するステップ;
b.前記当初のメチオニン合成生物と比較してメチオニン合成効率が向上するように
、前記複数のパラメータのうちの少なくとも1つを変更することにより、かつ/またはそ
のような少なくとも1つのさらなるパラメータを導入することにより、向上したメチオニ
ン合成効率を有する生物の理論モデルを決定するステップ
10
を含む、上記方法。
【請求項2】
向上したメチオニン合成効率を有する生物を決定するデバイスであって、以下の方法ス
テップ:
a.メチオニン合成に関与する既知の代謝経路に基づいて、当初のメチオニン合成野
生型生物の代謝流量を複数のパラメータを用いてパラメータ表現するステップ;
b.前記当初のメチオニン合成生物と比較してメチオニン合成効率が向上するように
、前記複数のパラメータのうちの少なくとも1つを変更することにより、かつ/またはそ
のような少なくとも1つのさらなるパラメータを導入することにより、向上したメチオニ
ン合成効率を有する生物の理論モデルを決定するステップ
20
を実行するようにつくられたプロセッサを含んでなる、上記デバイス。
【請求項3】
向上したメチオニン合成効率を有する生物を決定するコンピュータプログラムが格納さ
れたコンピュータ読み込み可能な媒体であって、該コンピュータプログラムは、プロセッ
サにより実行された場合に、以下の方法ステップ:
a.メチオニン合成に関与する既知の代謝経路に基づいて、当初のメチオニン合成生
物の代謝流量を複数のパラメータを用いてパラメータ表現するステップ;
b.前記当初のメチオニン合成生物と比較してメチオニン合成効率が向上するように
、前記複数のパラメータのうちの少なくとも1つを変更することにより、かつ/またはそ
のような少なくとも1つのさらなるパラメータを導入することにより、向上したメチオニ
30
ン合成効率を有する生物の理論モデルを決定するステップ
を実行するようにつくられている、上記媒体。
【請求項4】
向上したメチオニン合成効率を有する生物を決定するプログラム要素であって、プロセ
ッサにより実行された場合に、以下の方法ステップ:
a.メチオニン合成に関与する既知の代謝経路に基づいて、当初のメチオニン合成生
物の代謝流量を複数のパラメータを用いてパラメータ表現するステップ;
b.前記当初のメチオニン合成生物と比較してメチオニン合成効率が向上するように
、前記複数のパラメータのうちの少なくとも1つを変更することにより、かつ/またはそ
のような少なくとも1つのさらなるパラメータを導入することにより、向上したメチオニ
40
ン合成効率を有する生物の理論モデルを決定するステップ
を実行するようにつくられている、上記プログラム要素。
【請求項5】
出発生物と比較して向上したメチオニン合成効率を有する、原核生物、下等真核生物お
よび植物からなる群より選択される生物の作製方法であって、以下のステップ:
a.メチオニン合成に関与する既知の代謝経路に基づいて、当初のメチオニン合成生
物の代謝流量を複数のパラメータを用いてパラメータ表現するステップ;
b.前記当初のメチオニン合成生物と比較してメチオニン合成効率が向上するように
、前記複数のパラメータのうちの少なくとも1つを変更することにより、かつ/またはそ
のような少なくとも1つのさらなるパラメータを導入することにより、向上したメチオニ
50
(3)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
ン合成効率を有する生物の理論モデルを決定するステップ;
c.出発生物体内の少なくとも1つの既存の代謝経路を変更するように出発生物を遺
伝的に改変することにより、該生物の代謝流量を該生物の理論モデルに近づけるステップ
;および/または
d.出発生物に少なくとも1つの外来性の代謝経路を導入するように出発生物を遺伝
的に改変することにより、該生物の代謝流量を該生物の理論モデルに近づけるステップ;
および/または
e.ステップcで変更され、かつ/もしくはステップdで導入される代謝経路を通る
代謝流量を変えるのに十分な量の、少なくとも1つの外因的な代謝産物を与えるステップ
を含む、上記方法。
10
【請求項6】
以下のもの:
ホスホトランスフェラーゼ系(PTS)
ペントースリン酸経路(PPP)
解糖(EMP)
トリカルボン酸回路(TCA)
グリオキシル酸短絡回路(GS)
補充経路(anaplerosis)(AP)
呼吸鎖(RC)
硫黄同化(SA)
20
メチオニン合成(MS)
セリン/システイン/グリシン合成(SCGS)
グリシン切断系(GCS)
トランスヒドロゲナーゼ変換(THGC)
第1経路(P1)
第2経路(P2)
第3経路(P3)
第4経路(P4)
第5経路(P5)
第6経路(P6)
30
第7経路(P7)
第8経路(P8)
からなる群より選択される既存の代謝経路のうち少なくとも1つを通る代謝流量を、前記
生物の遺伝的改変により変更し、かつ/または
以下のもの:
グリシン切断系(GCS)
トランスヒドロゲナーゼ変換(THGC)
チオ硫酸レダクターゼ系(TRS)
亜硫酸レダクターゼ系(SRS)
硫酸レダクターゼ系(SARS)
40
ギ酸変換系(FCS)
メタンチオール変換系(MCS)
からなる群より選択される外来性の代謝経路のうち少なくとも1つを通る代謝流量を、該
生物の遺伝的改変により導入し、かつ/または
以下のもの:
スルフェート
スルファイト
スルフィド
チオスルフェート
ギ酸、ホルムアルデヒド、メタノール、メタンチオールもしくはその二量体であるジ
50
(4)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
メチルジスルフィドなどのC1代謝産物
からなる群より選択される外因的な代謝産物の存在下に該生物を培養する、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
出発生物と比較して向上したメチオニン合成効率を有する、原核生物、下等真核生物お
よび植物からなる群より選択される生物の作製方法であって、以下のステップ:
a.以下のもの:
ホスホトランスフェラーゼ系(PTS)
ペントースリン酸経路(PPP)
解糖(EMP)
10
トリカルボン酸回路(TCA)
グリオキシル酸短絡回路(GS)
補充経路(anaplerosis)(AP)
呼吸鎖(RC)
硫黄同化(SA)
メチオニン合成(MS)
セリン/システイン/グリシン合成(SCGS)
グリシン切断系(GCS)
トランスヒドロゲナーゼ変換(THGC)
第1経路(P1)
20
第2経路(P2)
第3経路(P3)
第4経路(P4)
第5経路(P5)
第6経路(P6)
第7経路(P7)
第8経路(P8)
からなる群より選択される代謝経路のうち少なくとも1つを通る代謝流量を、該生物の遺
伝的改変により変更するステップ、および/または
b.以下のもの:
30
グリシン切断系(GCS)
トランスヒドロゲナーゼ変換(THGC)
チオ硫酸レダクターゼ系(TRS)
亜硫酸レダクターゼ系(SRS)
硫酸レダクターゼ系(SARS)
ギ酸変換系(FCS)
メタンチオール変換系(MCS)
からなる群より選択される外来性の代謝経路のうち少なくとも1つを通る代謝流量を、該
生物の遺伝的改変により導入するステップ、および/または、
c.以下のもの:
40
スルフェート
スルファイト
スルフィド
チオスルフェート
有機硫黄供給源
ギ酸、ホルムアルデヒド、メタノール、メタンチオールもしくはその二量体であるジ
メチルジスルフィドなどのC1代謝産物
からなる群より選択される少なくとも1つの外因的な代謝産物の存在下に該生物を培養す
るステップ
を含む、上記方法。
50
(5)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
【請求項8】
請求項5∼7のいずれか1項に記載の方法により得られる、出発生物と比較して向上し
たメチオニン合成効率を有する、原核生物、下等真核生物および植物からなる群より選択
される生物。
【請求項9】
コリネバクテリウム属(Corynebacterium)微生物、ブレビバクテリウム属(Brevibact
erium)微生物、エシェリキア属(Escherichia)微生物、酵母および植物からなる群より
選択される、請求項8に記載の生物。
【請求項10】
向上したメチオニン生成効率を有するコリネバクテリウム属微生物の作製方法であって
10
、以下のステップ:
a.以下のもの:
ホスホトランスフェラーゼ系(PTS)および/もしくは
ペントースリン酸経路(PPP)および/もしくは
硫黄同化(SA)および/もしくは
補充経路(anaplerosis)(AP)および/もしくは
メチオニン合成(MS)および/もしくは
セリン/グリシン合成(SCGS)および/もしくは
グリシン切断系(GCS)および/もしくは
トランスヒドロゲナーゼ変換(THGC)および/もしくは
20
第1経路(P1)および/もしくは
第2経路(P2)および/もしくは
チオ硫酸レダクターゼ系(TRS)および/もしくは
亜硫酸レダクターゼ系(SRS)および/もしくは
硫酸レダクターゼ系(SARS)および/もしくは
ギ酸変換系(FCS)および/もしくは
メタンチオール変換系(MCS)
からなる群より選択される経路のうち少なくとも1つを通る代謝流量を、該生物の遺伝的
改変により出発生物と比較して増大させ、かつ/または導入するステップ、および/また
は
30
b.以下のもの:
解糖(EMP)および/もしくは
トリカルボン酸回路(TCA)および/もしくは
グリオキシル酸短絡回路(GS)および/もしくは
呼吸鎖(RC)および/もしくは
R19および/もしくは
R35および/もしくは
R79および/もしくは
第3経路(P3)および/もしくは
第4経路(P4)および/もしくは
40
第7経路(P7)
からなる群より選択される経路のうち少なくとも1つを通る代謝流量を、該生物の遺伝的
改変により出発生物と比較して少なくとも部分的に低減させるステップ
を含む、上記方法。
【請求項11】
以下のもの:
より多くのG6Pを生成するためのR1および/もしくは
より多くのGLC−LACを生成するためのR3および/もしくは
より多くの6−P−グルコネートを生成するためのR4および/もしくは
より多くのRIB−5Pを生成するためのR5および/もしくは
50
(6)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
より多くのXYL−5Pを生成するためのR6および/もしくは
より多くのRIBO−5Pを生成するためのR7および/もしくは
より多くのS7PおよびGA3Pを生成するためのR8および/もしくは
より多くのE−4pおよびF6Pを生成するためのR9および/もしくは
より多くのF6PおよびGA3Pを生成するためのR10および/もしくは
より多くのG6Pを生成するためのR2および/もしくは
より多くのH2SO3を生成するためのR55および/もしくは
より多くのH2Sを生成するためのR58および/もしくは
より多くのM−HPLを生成するためのR71および/もしくは
より多くのメチレン−THFを生成するためのR72および/もしくは
10
より多くのNADPHを生成するためのR70および/もしくは
より多くのNADPHを生成するためのR81および/もしくは
より多くのGluを生成するためのR25および/もしくは
より多くのOAAを生成するためのR33および/もしくはR36および/もしくは
より多くのMALを生成するためのR30および/もしくは
より多くのPyrを生成するためのR57および/もしくは
チオスルフェートをスルフィドおよびスルファイトに代謝するためのR73および/
もしくは
より多くの外因的チオスルフェートを細胞に取り込むためのR82および/もしくは
スルファイトをスルフィドに代謝するためのR74および/もしくは
20
より多くの10−ホルミル−THFを生成するためのR75および/もしくは
より多くのメチレン−THFを生成するためのR76および/もしくは
より多くのメチル−THFを生成するためのR78および/もしくは
メタンチオールを用いてO−アセチルホモセリンをメチルスルフヒドリル化(methyl
-sulfhydrylate)するためのR77および/もしくは
スルフェートをスルファイトに代謝するためのR80および/もしくは
R47および/もしくは
R48および/もしくは
R39および/もしくは
R46および/もしくは
30
R49および/もしくは
R52および/もしくは
R52および/もしくは
R54
からなる群より選択される酵素の量および/もしくは活性を、出発生物と比較して増大さ
せ、かつ/もしくは導入し、かつ/または
以下のもの:
より少ないF−1,6−BPを生成するためのR11および/もしくは
より少ないDHAPおよびGA3Pを生成するためのR13および/もしくは
より少ないGA3Pを生成するためのR14および/もしくは
40
より少ない1,3−PGを生成するためのR15および/もしくは
より少ない3−PGを生成するためのR16および/もしくは
より少ない2−PGを生成するためのR17および/もしくは
より少ないPEPを生成するためのR18および/もしくは
より少ないPyrを生成するためのR19および/もしくは
より少ないAc−CoAを生成するためのR20および/もしくは
より少ないCITを生成するためのR21および/もしくは
より少ないCis−ACOを生成するためのR22および/もしくは
より少ないICIを生成するためのR23および/もしくは
より少ない2−OXOを生成するためのR24および/もしくは
50
(7)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
より少ないSUCC−CoAを生成するためのR26および/もしくは
より少ないSUCCを生成するためのR27および/もしくは
より少ないFUMを生成するためのR28および/もしくは
より少ないMALを生成するためのR29および/もしくは
より少ないOAAを生成するためのR30および/もしくは
より少ないCITを生成するためのR21および/もしくは
より少ないCis−ACOを生成するためのR22および/もしくは
より少ないICIを生成するためのR23および/もしくは
より少ないGLYOXYおよびSUCCを生成するためのR31および/もしくは
より少ないMALを生成するためのR32および/もしくは
10
より少ないFUMを生成するためのR28および/もしくは
より少ないMALを生成するためのR29および/もしくは
より少ないOAAを生成するためのR30および/もしくは
R60および/もしくは
R56および/もしくは
R62および/もしくは
R61および/もしくは
R19および/もしくは
R35および/もしくは
R79
20
からなる群より選択される酵素の量および/もしくは活性を、出発生物と比較して少なく
とも部分的に低減させる、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
以下のもの:
より多くのGLC−LACを生成するためのR3および/もしくは
より多くの6−P−グルコネートを生成するためのR4および/もしくは
より多くのRIB−5Pを生成するためのR5および/もしくは
より多くのF6PおよびGA3Pを生成するためのR10および/もしくは
より多くのG6Pを生成するためのR2および/もしくは
30
より多くのH2SO3を生成するためのR55および/もしくは
より多くのH2Sを生成するためのR58および/もしくは
より多くのM−HPLを生成するためのR71および/もしくは
より多くのメチレン−THFを生成するためのR72および/もしくは
より多くのNADPHを生成するためのR70および/もしくは
より多くのNADPHを生成するためのR81および/もしくは
より多くのGluを生成するためのR25および/もしくは
より多くのOAAを生成するためのR33および/もしくはR36および/もしくは
より多くのMALを生成するためのR30および/もしくは
より多くのPyrを生成するためのR57および/もしくは
40
チオスルフェートをスルフィドおよびスルファイトに代謝するためのR73および/
もしくは
より多くの外因的チオスルフェートを細胞に取り込むためのR82および/もしくは
10−ホルミル−THFを生成するためのR75および/もしくは
より多くのメチレン−THFを生成するためのR76および/もしくは
より多くのメチル−THFを生成するためのR78および/もしくは
メタンチオールを用いてO−アセチルホモセリンをメチルスルフヒドリル化する(me
thyl-sulfhydrylate)ためのR77および/もしくは
R47および/もしくは
R48および/もしくは
50
(8)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
R39および/もしくは
R46および/もしくは
R49および/もしくは
R52および/もしくは
R52および/もしくは
R54および/もしくは
スルフェートをスルファイトに代謝するためのR80
からなる群より選択される酵素の量および/もしくは活性を、出発生物と比較して増大さ
せ、かつ/もしくは導入し、かつ/または
以下のもの:
10
より少ないF−1,6−BPを生成するためのR11および/もしくは
より少ないPyrを生成するためのR19および/もしくは
より少ないAc−CoAを生成するためのR20および/もしくは
より少ないCITを生成するためのR21および/もしくは
より少ない2−OXOを生成するためのR24および/もしくは
より少ないSUCC−CoAを生成するためのR26および/もしくは
より少ないSUCCを生成するためのR27および/もしくは
より少ないGLYOXYおよびSUCCを生成するためのR31および/もしくは
より少ないMALを生成するためのR32および/もしくは
より少ないピルベートを生成するためのR19および/もしくは
20
より少ないPEPを生成するためのR35および/もしくは
より少ないTHFを生成するためのR79
からなる群より選択される酵素の量および/もしくは活性を、出発生物と比較して少なく
とも部分的に低減させる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
以下のもの:
より多くのGLC−LACを生成するためのR3および/もしくは
より多くの6−P−グルコネートを生成するためのR4および/もしくは
より多くのRIB−5Pを生成するためのR5および/もしくは
より多くのF6PおよびGA3Pを生成するためのR10および/もしくは
30
より多くのG6Pを生成するためのR2および/もしくは
より多くのH2SO3を生成するためのR55および/もしくは
より多くのH2Sを生成するためのR58および/もしくは
より多くのM−HPLを生成するためのR71および/もしくは
より多くのメチレン−THFを生成するためのR72および/もしくは
より多くのメチル−THFを生成するためのR78および/もしくは
より多くのNADPHを生成するためのR70および/もしくは
より多くのNADPHを生成するためのR81および/もしくは
より多くのGluを生成するためのR25および/もしくは
より多くのOAAを生成するためのR33および/もしくはR36および/もしくは
40
より多くのMALを生成するためのR30および/もしくは
より多くのPyrを生成するためのR57および/もしくは
チオスルフェートをスルフィドおよびスルファイトに代謝するためのR73および/
もしくは
より多くの外因的チオスルフェートを細胞に取り込むためのR82および/もしくは
10−ホルミル−THFを生成するためのR75および/もしくは
メチレン−THFを生成するためのR76および/もしくは
メタンチオールを用いてO−アセチルホモセリンをメチルスルフヒドリル化(methyl
-sulfhydrylate)するためのR77および/もしくは
R47および/もしくは
50
(9)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
R48および/もしくは
R39および/もしくは
R46および/もしくは
R49および/もしくは
R52および/もしくは
R52および/もしくは
R54および/もしくは
スルフェートをスルファイトに代謝するためのR80
からなる群より選択される酵素の量および/もしくは活性を、出発生物と比較して増大さ
せ、かつ/もしくは導入し、かつ/または
10
以下のもの:
より少ないF−1,6−BPを生成するためのR11および/もしくは
より少ないPyrを生成するためのR19および/もしくは
より少ないAc−CoAを生成するためのR20および/もしくは
より少ないCITを生成するためのR21および/もしくは
より少ない2−OXOを生成するためのR24および/もしくは
より少ないSUCC−CoAを生成するためのR26および/もしくは
より少ないSUCCを生成するためのR27および/もしくは
より少ないGLYOXYおよびSUCCを生成するためのR31および/もしくは
より少ないMALを生成するためのR32および/もしくは
20
より少ないピルベートを生成するためのR19および/もしくは
より少ないPEPを生成するためのR35および/もしくは
より少ないTHFを生成するためのR79
からなる群より選択される酵素の量および/もしくは活性を、出発生物と比較して少なく
とも部分的に低減させる、
請求項11に記載の方法。
【請求項14】
請求項10∼13のいずれか1項に記載の方法により得られるコリネバクテリウム属微
生物であって、好ましくは、コリネバクテリウム・アセトアシドフィラム(Corynebacter
ium acetoacidophilum)、コリネバクテリウム・アセトグルタミカム(C. acetoglutamic
30
um)、コリネバクテリウム・アセトフィラム(C. acetophilum)、コリネバクテリウム・
アンモニアゲネス(C. ammoniagenes)、コリネバクテリウム・グルタミカム(C. glutam
icum)、コリネバクテリウム・リリウム(C. lilium)、コリネバクテリウム・ニトリロ
フィラス(C. nitrilophilus)またはコリネバクテリウム属亜種(C. spec.)からなる群
より選択され、好ましくはコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutam
icum)ATCC 13032、コリネバクテリウム・アセトグルタミカム(Corynebacteri
um acetoglutamicum)ATCC 15806、コリネバクテリウム・アセトアシドフィラ
ム(Corynebacterium acetoacidophilum)ATCC 13870、コリネバクテリウム・
サーモアミノゲネス(Corynebacterium thermoaminogenes)FERM BP−1539、
コリネバクテリウム・メラッセコラ(Corynebacterium melassecola)ATCC 1796
40
5、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)KFCC100
65またはコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)ATCC
21608およびコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)
DSM 17322からなる群より選択される、上記微生物。
【請求項15】
向上したメチオニン生成効率を有するエシェリキア属微生物の作製方法であって、以下
のステップ:
以下のもの:
ホスホトランスフェラーゼ系(PTS)および/もしくは
解糖(EMP)および/もしくは
50
(10)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
トリカルボン酸回路(TCA)および/もしくは
グリオキシル酸短絡回路(GS)および/もしくは
第1経路(P1)および/もしくは
硫黄同化(SA)および/もしくは
補充経路(anaplerosis)(AP)および/もしくは
メチオニン合成(MS)および/もしくは
セリン/システイン/グリシン合成(SCGS)および/もしくは
グリシン切断系(GCS)および/もしくは
トランスヒドロゲナーゼ変換(THGC)および/もしくは
チオ硫酸レダクターゼ系(TRS)および/もしくは
10
亜硫酸レダクターゼ系(SRS)および/もしくは
硫酸レダクターゼ系(SARS)および/もしくは
ギ酸変換系(FCS)および/もしくは
メタンチオール変換系(MCS)および/もしくは
セリン/システイン/グリシン合成(SCGS)
からなる群より選択される経路のうち少なくとも1つを通る代謝流量を、該生物の遺伝的
改変により出発生物と比較して増大させ、かつ/もしくは導入するステップ、および/ま
たは
以下のもの:
ペントースリン酸経路(PPP)および/もしくは
20
より少ないピルベートを生成するためのR19および/もしくは
より少ないPEPを生成するためのR35および/もしくは
より少ないTHFを生成するためのR79および/もしくは
第3経路(P3)および/もしくは
第4経路(P4)および/もしくは
第7経路(P7)
からなる群より選択される経路のうち少なくとも1つを通る代謝流量を、該生物の遺伝的
改変により出発生物と比較して少なくとも部分的に低減させるステップ
を含む、上記方法。
【請求項16】
30
以下のもの:
より多くのG6Pを生成するためのR1および/もしくは
より多くのF6Pを生成するためのR2および/もしくは
より多くのF−1,6−BPを生成するためのR11および/もしくは
より多くのDHAPおよびGA3Pを生成するためのR13および/もしくは
より多くのGA3Pを生成するためのR14および/もしくは
より多くの1,3−PGを生成するためのR15および/もしくは
より多くの3−PGを生成するためのR16および/もしくは
より多くの2−PGを生成するためのR17および/もしくは
より多くのPEPを生成するためのR18および/もしくは
40
より多くのPyrを生成するためのR19および/もしくは
より多くのAc−CoAを生成するためのR20および/もしくは
より多くのCITを生成するためのR21および/もしくは
より多くのCis−ACOを生成するためのR22および/もしくは
より多くのICIを生成するためのR23および/もしくは
より多くの2−OXOを生成するためのR24および/もしくは
より多くのSUCC−CoAを生成するためのR26および/もしくは
より多くのSUCCを生成するためのR27および/もしくは
より多くのFUMを生成するためのR28および/もしくは
より多くのMALを生成するためのR29および/もしくは
50
(11)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
より多くのOAAを生成するためのR30および/もしくは
より多くのCITを生成するためのR21および/もしくは
より多くのCis−ACOを生成するためのR22および/もしくは
より多くのICIを生成するためのR23および/もしくは
より多くのGLYOXYおよびSUCCを生成するためのR31および/もしくは
より多くのMALを生成するためのR32および/もしくは
より多くのFUMを生成するためのR28および/もしくは
より多くのMALを生成するためのR29および/もしくは
より多くのOAAを生成するためのR30および/もしくは
より多くのGluを生成するためのR25および/もしくは
10
より多くのH2SO3を生成するためのR55および/もしくは
より多くのH2Sを生成するためのR58および/もしくは
より多くのM−HPLを生成するためのR71および/もしくは
より多くのメチレン−THFを生成するためのR72および/もしくは
より多くのメチル−THFを生成するためのR78および/もしくは
より多くのNADPHを生成するためのR70および/もしくは
より多くのNADPHを生成するためのR81および/もしくは
チオスルフェートをスルフィドおよびスルファイトに代謝するためのR73および/
もしくは
より多くの外因的チオスルフェートを細胞に取り込むためのR82および/もしくは
20
スルファイトをスルフィドに代謝するためのR74および/もしくは
より多くの10−ホルミル−THFを生成するためのR75および/もしくは
10−ホルミル−THFからより多くのメチレン−THFを生成するためのR76お
よび/もしくは
メタンチオールを用いてO−アセチルホモセリンをメチルスルフヒドリル化(methyl
-sulfhydrylate)するためのR77および/もしくは
スルフェートをスルファイトに代謝するためのR80および/もしくは
より多くのO−Ac−SERを生成するためのR44および/もしくは
より多くのCYSを生成するためのR45
からなる群より選択される酵素の量および/もしくは活性を、出発生物と比較して増大さ
30
せ、かつ/もしくは導入し、かつ/または
以下のもの:
より少ないGLC−LACを生成するためのR3および/もしくは
より少ない6−P−グルコネートを生成するためのR4および/もしくは
より少ないRIB−5Pを生成するためのR5および/もしくは
より少ないXYL−5Pを生成するためのR6および/もしくは
より少ないRIBO−5Pを生成するためのR7および/もしくは
より少ないS7PおよびGA3Pを生成するためのR8および/もしくは
より少ないE−4pおよびF6Pを生成するためのR9および/もしくは
より少ないF6PおよびGA3Pを生成するためのR10および/もしくは
40
より少ないG6Pを生成するためのR2および/もしくは
より少ないHOMOCYSを生成するためのR49および/もしくは
より少ないピルベートを生成するためのR19および/もしくは
より少ないPEPを生成するためのR35および/もしくは
より少ないTHFを生成するためのR79および/もしくは
R56および/もしくは
R62および/もしくは
R61
からなる群より選択される酵素の量および/もしくは活性を、出発生物と比較して少なく
とも部分的に低減させる、
50
(12)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
以下のもの:
より多くのG6Pを生成するためのR1および/もしくは
より多くのF6Pを生成するためのR2および/もしくは
より多くのF−1,6−BPを生成するためのR11および/もしくは
より多くのPyrを生成するためのR19および/もしくは
より多くのAc−CoAを生成するためのR20および/もしくは
より多くのCITを生成するためのR21および/もしくは
より多くの2−OXOを生成するためのR24および/もしくは
10
より多くのSUCC−CoAを生成するためのR26および/もしくは
より多くのGLYOXYおよびSUCCを生成するためのR31および/もしくは
より多くのMALを生成するためのR32および/もしくは
より多くのGluを生成するためのR25および/もしくは
より多くのH2SO3を生成するためのR55および/もしくは
より多くのH2Sを生成するためのR58および/もしくは
より多くのM−HPLを生成するためのR71および/もしくは
より多くのメチレン−THFを生成するためのR72および/もしくは
より多くのメチル−THFを生成するためのR78および/もしくは
より多くのNADPHを生成するためのR70および/もしくは
20
より多くのNADPHを生成するためのR81および/もしくは
チオスルフェートをスルフィドおよびスルファイトに代謝するためのR73および/
もしくは
より多くの外因的チオスルフェートを細胞に取り込むためのR82および/もしくは
スルファイトをスルフィドに代謝するためのR74および/もしくは
より多くの10−ホルミル−THFを生成するためのR75および/もしくは
より多くのメチレン−THFを生成するためのR76および/もしくは
メタンチオールを用いてO−アセチルホモセリンをメチルスルフヒドリル化(methyl
-sulfhydrylate)するためのR77および/もしくは
スルフェートをスルファイトに代謝するためのR80および/もしくは
30
より多くのO−Ac−SERを生成するためのR44および/もしくは
より多くのCYSを生成するためのR45
からなる群より選択される酵素の量および/もしくは活性を、出発生物と比較して増大さ
せ、かつ/もしくは導入し、かつ/または
以下のもの:
より少ないGLC−LACを生成するためのR3および/もしくは
より少ない6−P−グルコネートを生成するためのR4および/もしくは
より少ないRIB−5Pを生成するためのR5および/もしくは
より少ないF6PおよびGA3Pを生成するためのR10および/もしくは
より少ないピルベートを生成するためのR19および/もしくは
40
より少ないPEPを生成するためのR35および/もしくは
より少ないTHFを生成するためのR79
からなる群より選択される酵素の量および/もしくは活性を、出発生物と比較して少なく
とも部分的に低減させる、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項15∼17のいずれか1項に記載の方法により得られるエシェリキア属微生物で
あって、好ましくは大腸菌(Escherichia coli)からなる群より選択される微生物。
【請求項19】
投入グルコースに対するメチオニンのモル比が、少なくとも10%、少なくとも20%
50
(13)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なく
とも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75
%、少なくとも80%または少なくとも85%で、メチオニンが生成される、請求項8、
9、14または18に記載の生物。
【請求項20】
メチオニンを生成するための、請求項8、9、14、18または19に記載の生物の使
用。
【請求項21】
以下のステップ:
a.請求項8、9、14、18または19に記載の生物を培養するステップ、
10
b.メチオニンを単離するステップ
を含む、メチオニンの生成方法。
【請求項22】
培養を、チオスルフェート、スルファイト、スルフィドおよび/またはギ酸もしくはメ
タンチオールなどのC1化合物を含んでもよい好適な培地中で行う、請求項21に記載の
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する分野
20
本発明は、生物によって生産される精製化学製品の分野に存する。特に、本発明は、向
上したメチオニン合成効率を有する微生物の作製のための方法に関する。本発明はまた、
向上したメチオニン合成効率を有する微生物に関する。さらに、本発明はメチオニン合成
に関して生物にとって最適な代謝流量を決定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
技術的背景
アミノ酸は種々の目的で使用され、一適用分野は、ヒトおよび動物の食物中の食品添加
物としての使用である。メチオニンは、食物とともに摂取する必要がある必須アミノ酸で
ある。タンパク質生合成に必須であることに加えて、メチオニンは、種々の代謝産物、例
30
えばグルタチオン、S−アデノシルメチオニンおよびビオチン(biotine)の前駆体とし
て働く。メチオニンはさらに、種々の細胞プロセスにおけるメチル基供与体として機能す
る。
【0003】
現在、世界中のメチオニンの年間生産量は約500,000トンである。メチオニンは
、家畜または養鶏飼料(livestock of poultry feed)の第一の制限アミノ酸であり、そ
れゆえに、飼料の補充物質として主に適用される。他の工業用アミノ酸とは対照的に、メ
チオニンは、ほぼ例外なく、化学合成によって製造されたラセミ化合物として適用される
(DE 190 64 05)。動物はメチオニンの両立体異性体を代謝できるので、化学的に製造さ
れたラセミ混合物の直接摂食が可能である(D'Mello and Lewis (1978) Effect of Nutri
40
tion Deficiencies in Animals: Amino Acids, Rechgigl (Ed.) CRC Handbook Series in
Nutrition and Food, 441-490)。
【0004】
しかし、既存の化学製造を生物工学的プロセスによって置き換えることに、依然として
大きな関心がある。このことは、低レベルの補充では、D−メチオニンよりL−メチオニ
ンが硫黄アミノ酸の良好な供給源であるという事実に起因する(Katz & Baker, (1975) P
oult. Sci., 545, 1667-74)。さらに、化学的プロセスは、やや危険な化学物質を使用し
、実質的な廃棄物の流れを生じさせる。効率的な生物工学的プロセスであれば、化学製造
のすべての前記不都合を回避することができる。
【0005】
50
(14)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
他のアミノ酸、例えばグルタミン酸、リシン、スレオニンおよびトリプトファン(tryp
tophane)では、発酵法を使用してそれらを製造することが知られている。これらの目的
では、特定の微生物、例えば大腸菌(Escherichia coli(E.coli))およびコリネバクテ
リウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum(C.glutamicum))が特に好適であ
ることが判明している。発酵によるアミノ酸の製造はまた、L−アミノ酸しか生産されず
、かつ、化学合成に使用される環境的に問題がある化学物質、例えば溶媒、等が回避され
るという具体的利点を有する。しかし、微生物の発酵によるメチオニンの製造は、化学製
造に匹敵する価格で商業規模でメチオニンの製造を可能にする場合にしか、化学合成の代
替法にならない。
【0006】
10
従来、一般に精製化学製品としても指定される硫黄含有化合物の製造に微生物、例えば
大腸菌およびコリネバクテリウム・グルタミカムを使用する試みが行われている。これら
の方法には、従来の突然変異誘発による株選択、ならびに培養条件、例えばステアリング
、酸素の提供、培養培地の組成、等の最適化が含まれた(Kumar et al. (2005) Biotechn
ology Advances, 23, 41-61)。
【0007】
微生物の発酵によるメチオニンの製造が未だ経済的に関心を引き起こすものになってい
ない理由の1つは、おそらく、メチオニンを導く生合成および代謝経路の特殊性に起因す
る。概して、生物、例えば大腸菌およびコリネバクテリウム・グルタミカム中でメチオニ
ン合成を導く基本的な代謝経路は周知である(例えばVoet and Voet (1995) Biochemistr
nd
y, 2
20
edition, Jon Wiley &Sons, Inc and http://www.genome.jp/kegg/metabolism.ht
ml)。しかし、コリネバクテリウム・グルタミカムおよび大腸菌中のメチオニン生合成の
詳細は集中的な研究対象であり、最近、Rueckert et al.(Rueckert et al. (2003), J.
of Biotechnology, 104, 213-228)およびLee et al.(Lee et al. (2003), Appl. Micro
biol. Biotechnol., 62, 459-467)でレビューされている。
【0008】
メチオニンの生合成における重要なステップは、炭素主鎖中への硫黄の取り込みである
。硫黄供給源は通常スルフェートであり、それは微生物によって摂取される必要がある。
そして微生物は、スルフェートを活性化し、還元する必要がある。前記ステップは分子メ
チオニンあたり7mol ATPおよび8mol NADPHのエネルギー入力を必要とす
30
る(Neidhardt et al. (1990) Physiology of the bacterial cell: a molecular approa
ch, Sunderland, Massachusetts, USA, Sinauer Associates, Inc.)。ゆえに、メチオニ
ンは、細胞が最も多量のエネルギーを提供しなければならない1つのアミノ酸である。
【0009】
その結果、メチオニン産生微生物は、メチオニン合成の速度および量に関して厳格なコ
ントロール下にある代謝経路を発達させている(Neidhardt F.C. (1996) E. coli and S.
typhimurium, ASM Press Washington)。これらの調節メカニズムには、例えばフィード
バックコントロールメカニズムが含まれ、すなわち、細胞が十分な量のメチオニンを生産
すると、メチオニン産生代謝経路はその活性に関して下方制御される。微生物による工業
規模のメチオニン製造に使用できる微生物を取得するための先行技術のアプローチは、主
40
に、メチオニンの生合成に関与する遺伝子を特定することによって前述のコントロールメ
カニズムを克服することに重点的に取り組んだ。そしてメチオニンの生産量を増大させる
最終目標を有して、これらの遺伝子が、それぞれの機能に応じて過剰発現されるか、ある
いは抑制された。この関連で、メチオニンの量は細胞集団量あたりの取得メチオニン量ま
たは時間および容量あたりの取得メチオニン量(空時収量)または細胞集団および空時収
量の両因子の組み合わせとして規定されている。
【0010】
例えば、WO 02/10209では、特定の遺伝子を過剰発現または抑制して、メチオニンの生
産量を増大させることが記載されている。最近、Reyら(Rey et al. (2003), J. Biotech
nol., 103, 51-65, )は転写リプレッサーMcbRを特定した。McbRは、メチオニン
50
(15)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
の生合成に関与する遺伝子、例えばmetY(O−アセチル−L−ホモセリンスルフヒド
リラーゼをコードする)、metK(S−アデノシル−メチオニンシンセターゼをコード
する)、hom(ホモセリンデヒドロゲナーゼをコードする)、cysK(L−システイ
ンシンターゼをコードする)、cysI(NADPH依存性亜硫酸レダクターゼ(sulphi
te reductase)をコードする)およびssuD(アルカンスルホナートモノオキシゲナー
ゼをコードする)の発現をコントロールする。
【0011】
前記アプローチは、野生型と比較して多量のメチオニンを生産する(メチオニン量は細
胞集団あたり、あるいは時間および容量あたり(空時収量)で算出される)微生物株の構
築を可能にしたが、それでもなお、現在まで、工業的に競合するメチオニン過剰産生生物
10
は報告されていない(Mondal et al. (1996) Folia Microbiol. (Praha), 416, 465-72,
(Kumar et al. (2005) Biotechnology Advances, 23, 41-61)。
【発明の開示】
【0012】
発明の要旨
1kgの細胞集団あたり、あるいは時間および容量あたりのメチオニンの量として典型
的に算出される、生物によるメチオニンの生産量が、メチオニン産生生物が経済的に関心
を引き起こし、かつこのアミノ酸の化学製造に対する商業的に実現可能な代替法であると
みなされるかどうかの十分な指標ではないことが発見された。むしろ、経済的に関心を引
き起こす化学合成法の代替法であるために、高い効率を有するメチオニン産生生物が必要
20
とされる。すなわち、メチオニンの生産に消費される炭素供給源、例えばグルコースの量
または入力によって示される産生系のエネルギー入力に基づいてメチオニンの高い空時収
量を提供する生物である。
【0013】
ゆえに、メチオニン産生生物が化学合成の代替法であるとみなされるかどうかを決定す
る場合、重要なパラメータは、細胞集団の重量あたりのメチオニンの生産量ではなく、効
率、すなわち系によって消費される、例えばグルコース形式のエネルギー入力量あたりの
メチオニンのモル生産量であるものとする。
【0014】
この関連で、微生物において高い効率でメチオニンを生産するために、直接または間接
30
的にメチオニン合成に寄与する生物の代謝経路をメチオニン合成に関して最適な方法で使
用する必要があることがさらに発見された。ゆえに、生物による効率的なメチオニン生産
のために、代謝経路を通る代謝流量を改変する必要がある。改変は、メチオニン主鎖の合
成に直接関与する経路に必要なだけでなく、追加の基質、例えば種々の酸化状態の硫黄原
子、還元状態の窒素、例えばアンモニア、追加の炭素前駆体、例えばC1炭素供給源、例
えばセリン、グリシンおよびギ酸(formate)、メチオニンの前駆体およびテトラヒドロ
葉酸(tetrathydrofolate)(N5およびまたはN10位が炭素で置換されている)の種
々の代謝産物を提供する経路の改変も必要とされるかもしれない。さらに、例えばNAD
H、NADPH、FADH2等の還元相当物(reduction equivalents)の形式のエネル
ギーはメチオニンを導く経路に関与しうる。ゆえに、非常に効率的にメチオニンを生産す
40
る微生物は、メチオニンの構築を導く経路およびその前駆体を提供する経路を通る高い代
謝流量を必要とするが、例えば他のアミノ酸の生合成経路を通る低い代謝流量しか必要と
しないかもしれない。
【0015】
したがって、本発明の目的は、メチオニン合成に直接または間接的に関与する経路を通
る最適な代謝流量を特定して、メチオニン合成が非常に効率的である潜在的な生物を特定
することである。
【0016】
別の本発明の目的は、効率的メチオニン生合成を達成するために、メチオニン合成に関
して、生物の種々の代謝経路を通る理想的な代謝流量を予測することを可能にする方法を
50
(16)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
提供することである。
【0017】
別の本発明の目的は、向上したメチオニン合成効率を有する生物を取得するための方法
を提供することである。
【0018】
本発明はまた、メチオニン合成に関して、より効率的な生物を目的にする。
【0019】
前記および他の目的は、後の説明から明らかになるように、独立請求項で規定される対
象発明によって解決される。従属請求項は、本発明によって意図されるいくつかの実施形
態に関する。
10
【0020】
本発明の取得時には、エレメンタリー・フラックスモード(elementary flux mode)解
析またはエクストリーム経路(extreme pathway)解析とも称される代謝経路解析を使用
して、メチオニン合成に関する生物の代謝特性を研究した。上記代謝経路解析は先行技術
において他の細胞系に関して報告されている(Papin et al. (2004) Trends Biotechnol.
228, 400-405; Schilling et al. (2000) J. Theor. Biol., 2033, 229-248; Schuster
et al. (1999) Trends Biotechnol. 172, 53-60)が、このタイプの解析は、コリネバク
テリウム・グルタミカムおよび大腸菌等の生物中のメチオニン生産の効率に関して検討さ
れていない。代謝経路解析は、一般に、代謝経路ネットワークのすべての可能な定常状態
流量分布を含有する溶液空間(solution space)の算出を可能にする。これによって、研
20
究対象の代謝経路ネットワークの化学量論、例えばエネルギー、前駆体ならびに補助因子
要求性が完全に考慮に入る。
【0021】
本発明では、このエレメンタリー・フラックスモード解析は、主要な工業用アミノ酸生
産者、例えばコリネバクテリウム・グルタミカムおよび大腸菌の代謝経路ネットワークを
比較することによってメチオニン生産の効率に関して初めて実行された。この目的で、コ
リネバクテリウム・グルタミカムおよび大腸菌に関して生化学反応モデルが構築された(
下記参照のこと)。該モデルは、硫黄代謝のすべての関連経路を含んでいた。それには、
メチオニン生産に関連しているすべての経路が含まれる。前記モデルは、調査対象の生物
についての現在の生化学的知識から構築された(下記参照のこと)。これらのモデルに基
30
づいて、メチオニン生産の効率を高めるためにどの経路がより高い集中度で、あるいはよ
り低い集中度で(more or less intensively)使用されるべきであるかを予測するために
、種々の経路を通る最適な代謝流量が算出された。
【0022】
これらのモデルを計算することによって、外因的な代謝産物、例えば炭素供給源および
硫黄供給源の存在を含めた一定セットの条件に関して、メチオニン生産に最適なモデル生
物が取得された。
【0023】
ゆえに本発明は、向上したメチオニン合成効率を有する生物を設計するための方法に関
する。この方法は、メチオニン合成に関与する既知の代謝経路に基づいて取得された、こ
40
れらの経路の反応を通る代謝流量に関する複数のパラメータを用いて、当初のメチオニン
合成生物を表現またはパラメータ表現するステップ、および次いで、当初のメチオニン合
成生物のメチオニン合成の効率と比較してメチオニン合成効率が向上するように、前記複
数のパラメータのうちの少なくとも1つを変更することにより、かつ/またはそのような
少なくとも1つのさらなるパラメータを導入することにより、向上したメチオニン合成効
率を有する生物を決定するステップを含む。ゆえに、この方法を使用して、効率的メチオ
ニン合成を可能にするはずであろう理論上の生物を予測することが可能である。該方法の
詳細な実行は追って記載される。
【0024】
本発明の目的で、これらのパラメータは、検討対象の代謝経路ネットワークの単一反応
50
(17)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
に関して規定された。ゆえに、最適化に関するパラメータは、使用される生物中の反応の
存在、反応の化学量論および反応の可逆性に関して規定された。結果として、該パラメー
タは該ネットワークの種々の反応を通る代謝流量に関する。
【0025】
本発明はまた、向上したメチオニン合成効率を有する当初の生物を設計するためのデバ
イスであって、向上したメチオニン合成を有する生物に関する最適化された経路を予測す
るための前述の方法ステップを実行するようにつくられたプロセッサを含むデバイスに関
する。
【0026】
本発明はさらに、向上したメチオニン合成効率を有する生物を設計するためのコンピュ
10
ータプログラムが格納されたコンピュータ読み込み可能な媒体に関する。該コンピュータ
読み込み可能な媒体は、プロセッサによって実行された場合に、向上したメチオニン合成
効率を有する理論的に最適化された生物を設計するための前述の方法ステップを実行する
ようにつくられている。
【0027】
本発明はさらに、向上したメチオニン合成効率を有する生物を設計するプログラム要素
であって、プロセッサによって実行された場合に、前述の方法ステップを実行するように
つくられているプログラム要素に関する。
【0028】
本発明はまた、向上したメチオニン合成効率を有する生物を作製するための方法であっ
20
て、野生型生物を遺伝的に改変し、前述の方法の予測に、より近づくように該生物の代謝
流量に影響を与えることによって、前述の予測を利用する方法に関する。これは、特定の
反応経路を通る代謝流量が増大および/または低減するように生物を遺伝的に改変するこ
とによって達成してよい。遺伝的改変は組換えDNAテクノロジーによって導入してよい
。さらに、これは、他の技術によって達成してもよく、該他の技術は、例えば、非限定的
に、突然変異および選択プロセス、例えば化学的またはUV突然変異誘発およびその後の
、向上した特性を有する耐性株を導く、基質アナログ(substrate analoga)含有培地上
での生育による選択である。
【0029】
本発明はまた、向上したメチオニン合成効率を有する生物を作製するための方法であっ
30
て、野生型生物でなく、好ましくは増大した量および/または時空収量でメチオニンを生
産するように以前にすでに遺伝的に改変されている生物を遺伝的に改変することによって
、前述の予測を利用する方法に関する。そのような生物は、メチオニン過剰生産者として
知られている生物であってよく、それには、例えば、硫酸固定に関する遺伝子、システイ
ン生合成に関する遺伝子およびメチオニン合成に関する遺伝子ならびにオキサロ酢酸から
アスパラギン酸セミアルデヒドへの変換に関する遺伝子が過剰発現されている生物が含ま
れる。すでに遺伝的に改変されているそのような生物では、向上したメチオニン合成効率
に関する前述の予測は、前述の方法の予測に、より近づくように該生物の代謝流量に影響
を与えるために実施してよい。これは、特定の反応経路を通る代謝流量が増大および/ま
たは低減するように生物を遺伝的に改変することによって達成してよい。遺伝的改変は組
40
換えDNAテクノロジーによって導入してよい。さらに、これは、他の技術によって達成
してもよく、該他の技術は、例えば、非限定的に、突然変異および選択プロセス、例えば
化学的またはUV突然変異誘発およびその後の、向上した特性を有する耐性株を導く、基
質アナログ含有培地上での生育による選択である。
【0030】
驚くべきことに、野生型生物に関して得られる理論的予測を使用して、例えばメチオニ
ン合成に関する経路または例えばそれに関する副経路にすでに突然変異を保持する生物に
おいてもメチオニン合成効率を高めることができることが発見された。ゆえに、それぞれ
の出発生物に基づいて理論的予測を算出することは必要でなく、野生型生物に関して得ら
れた理論的予測で十分であると考えられる。しかし、本発明はまた、もちろん、何らかの
50
(18)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
前述の突然変異をすでに提供している当初の生物に基づいて最適な代謝流量を算出し、該
予測を使用して該生物をさらに遺伝的に改変するようにする実施形態を考慮する。
【0031】
特に、本発明は、向上したメチオニン生産効率を有するコリネバクテリウム属(Coryne
bacterium)およびエシェリキア属(Escherichia)の微生物を作製するための方法であっ
て、前述のモデルを構築するために使用された経路を通る代謝流量を増大させ、かつ/ま
たは導入するステップを含む方法に関する。これらの方法には、さらに、前述の経路を通
る代謝流量を少なくとも部分的に低減させるステップを含ませてよい。
【0032】
本発明はまた、前述の方法のいずれかによって取得できる、向上したメチオニン合成効
10
率を有する生物に関する。
【0033】
さらに、本発明は、メチオニンを製造するための、そのような生物の使用、ならびに、
前述の生物を培養し、メチオニンを単離することによるメチオニンの製造方法のための、
そのような生物の使用に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
発明の詳細な説明
向上したメチオニン合成効率を有する理論的に最適化された生物を特定するために前述
の方法を実行する方法を詳細に説明する前に、以下、定義を挙げる。
20
【0035】
用語「微生物の合成効率」とは、メチオニンの炭素収率を説明する。この効率は、系に
入った炭素基質の形式のエネルギー入力のパーセンテージとして算出される。本発明の全
体を通して、特に指定しない限り、この値は、パーセント値((メチオニンmol)(炭
素基質mol)−1×100)単位で表記される。
【0036】
用語「向上したメチオニン合成効率」は、前述の方法によって理論的にモデル化された
、パラメータ化に使用された当初のモデル生物と比較して高いメチオニン合成効率を有す
る生物間の比較に関する。
【0037】
30
用語「向上したメチオニン合成効率」とは、例えば遺伝的に改変されている生物がそれ
ぞれの出発生物と比較して向上したメチオニン合成効率を提供する状況を説明することも
ある。
【0038】
用語「代謝経路」とは、改善したメチオニン合成を有する生物を設計するための前述の
理論モデルで使用される代謝経路ネットワークの部分である一連の反応に関する。
【0039】
用語「代謝経路」とはまた、現実の生物で生じる一連の反応を説明する。代謝経路は、
周知の反応系列、例えば呼吸鎖、グリコシル化、トリカルボン酸回路、等を含む。これら
は標準的な教科書から公知のものである。あるいは、本発明の目的で別々に代謝経路が定
40
義されることもある。
【0040】
用語「代謝流量」とは、例えばグルコース等の炭素供給源の形式で系にフィードされる
、生物の代謝経路ネットワークまたは前述の理論モデルの反応を通過するエネルギー入力
の量を説明する。該ネットワークの各反応は、通常、全体の代謝流量に寄与する。結果と
して、代謝流量を該ネットワークの各反応に割り当ててよい。エレメンタリー・フラック
スモードは、ネットワークモデルの種々の反応の化学量論に基づいて算出され、流量は、
典型的に、グルコースの形式で測定されるエネルギー摂取率に対して標準化された相対モ
ル値で表記され、すなわち流量はmol(物質)×(グルコースmol)−1×100)
で表記される。
50
(19)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
【0041】
用語「改変された代謝流量」とは、遺伝的に改変された生物の特定の反応または代謝経
路を通る代謝流量が出発生物と比較して増大または低減する状況に関する。この用語はま
た、メチオニン合成に関して最適化された生物を決定または設計する前述の理論的方法に
したがって、理論的代謝経路ネットワークのパラメータを変更することによって代謝経路
ネットワークの特定の反応または代謝経路を通る理論的代謝流量が増大または低減する状
況に関する。
【0042】
本発明の関連で、用語「代謝流量に近づける(approximating the metabolic flux)」
が使用される場合、この用語は、生物を遺伝的に改変して、前述の理論モデルの構築に使
10
用されたメチオニン合成の経路を通る代謝流量を増大および/または低減させ、かつ/ま
たは導入することに関する。遺伝的改変は前述のモデルの予測に基づいて選択されるため
、遺伝的に改変された生物の代謝流量は、それぞれの出発生物と比較して、前述の最適化
されたモデルの代謝流量により密接に近づくはずであろう。
【0043】
用語「発現する(express)」、「発現している(expressing)」、「発現された(exp
ressed)」および「発現(expression)」とは、遺伝子産物(例えば、本出願で規定およ
び記載される経路または反応の遺伝子の生合成酵素)についての発現であって、得られた
コード対象のこのタンパク質の酵素活性またはそれが参照する経路または反応が、この遺
伝子/経路が発現されている生物におけるこの経路または反応を通る代謝流動を可能にす
20
るレベルでの発現を表す。該発現は、出発生物として使用される微生物の遺伝的改変によ
って施しうる。ある実施形態では、微生物を遺伝的に改変(例えば遺伝子操作)して、出
発微生物によって、あるいは改変されていない同等の微生物において生産されるレベルと
比べて向上したレベルで遺伝子産物を発現させることができる。遺伝的改変には、非限定
的に、特定の遺伝子の発現に関連する調節配列または部位の変更または改変(例えば、強
力なプロモーター、誘導性プロモーターもしくは複数のプロモーター(multiple promote
rs)を付加するか、あるいは発現が構成的であるように調節配列を除去することによる変
更または改変)、特定の遺伝子の染色体上の位置の改変、特定の遺伝子に隣接する核酸配
列、例えばリボソーム結合部位または転写ターミネーターの変更、特定の遺伝子のコピー
数の増加、特定の遺伝子の転写および/または特定の遺伝子産物の翻訳に関与するタンパ
30
ク質(例えば、調節タンパク質、サプレッサー、エンハンサー、転写活性化因子等)の改
変、または当技術分野の習慣的手法を使用する、特定の遺伝子の発現を調節解除する任意
の他の慣用の手段(非限定的に、例えばリプレッサータンパク質の発現をブロックするた
めの、アンチセンス核酸分子の使用が含まれる)が含まれる。
【0044】
用語「過剰発現する(overexpress)」、「過剰発現している(overexpressing)」、
「過剰発現された(overexpressed)」および「過剰発現(overexpression)」とは、遺
伝子産物(例えば、本出願において規定および記載されているメチオニン生合成酵素また
は硫酸還元経路の酵素またはシステイン生合成酵素または遺伝子または経路または反応)
の発現であって、出発微生物の遺伝的改変前に存在するレベルより高いレベルでの発現を
40
表す。ある実施形態では、微生物を遺伝的に改変(例えば遺伝子操作)して、出発微生物
によって生産されるレベルと比べて向上したレベルで遺伝子産物を発現させることができ
る。遺伝的改変には、非限定的に、特定の遺伝子の発現に関連する調節配列または部位の
変更または改変(例えば、強力なプロモーター、誘導性プロモーターまたは複数のプロモ
ーターを付加するか、あるいは発現が構成的であるように調節配列を除去することによる
変更または改変)、特定の遺伝子の染色体上の位置の改変、特定の遺伝子に隣接する核酸
配列、例えばリボソーム結合部位または転写ターミネーターの変更、特定の遺伝子のコピ
ー数の増加、特定の遺伝子の転写および/または特定の遺伝子産物の翻訳に関与するタン
パク質(例えば、調節タンパク質、サプレッサー、エンハンサー、転写活性化因子等)の
改変、または当技術分野の習慣的手法を使用する、特定の遺伝子の発現を調節解除する任
50
(20)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
意の他の慣用の手段(非限定的に、例えばリプレッサータンパク質の発現をブロックする
ための、アンチセンス核酸分子の使用が含まれる)が含まれる。コリネバクテリウム・グ
ルタミカム等の生物における遺伝子の過剰発現の例はEikmanns et al(Gene. (1991) 102
, 93-8)に見出せる。
【0045】
ある実施形態では、微生物を物理的または環境的に改変して、出発微生物による遺伝子
産物の発現のレベルと比べて増加したレベルまたは低いレベルで遺伝子産物を発現させる
ことができる。例えば、微生物を、特定の遺伝子の転写および/または特定の遺伝子産物
の翻訳を増加させることが知られているか、あるいはそう疑われている物質で処理するか
、あるいは該物質の存在下で培養して、転写および/または翻訳が増強されるか、あるい
10
は増加するようにすることができる。あるいは、特定の遺伝子の転写および/または特定
の遺伝子産物の翻訳を増加させるよう選択される温度で微生物を培養して、転写および/
または翻訳が増強されるか、あるいは増加するようにすることができる。
【0046】
用語「調節解除する(deregulate)」、「調節解除された(deregulated)」および「
調節解除(deregulation)」とは、微生物中の少なくとも1つの遺伝子の変更または改変
を表し、その場合、該変更または改変によって、変更または改変の不存在下でのメチオニ
ン生産と比べて微生物中のメチオニン生産効率が向上する。ある実施形態では、変更また
は改変対象の遺伝子が生合成経路の酵素をコードし、微生物中の該生合成酵素のレベルま
たは活性が変更または改変されるようにする。ある実施形態では、生合成経路の酵素をコ
20
ードする少なくとも1つの遺伝子を変更または改変し、該酵素のレベルまたは活性が未改
変または野生型遺伝子の存在下でのレベルと比べて増強されるか、あるいは増加するよう
にする。ある実施形態では、該生合成経路はメチオニン生合成経路である。他の実施形態
では、該生合成経路はシステイン生合成経路である。調節解除にはまた、例えば、フィー
ドバック抵抗性であるか、あるいはより高い比活性またはより低い比活性を有する酵素を
生じさせるための1以上の遺伝子のコード領域の改変が含まれる。また、調節解除はさら
に、メチオニンおよび/またはシステイン生合成経路中の遺伝子の発現を調節する転写因
子(例えばアクチベーター、リプレッサー)をコードする遺伝子の遺伝的改変を包含する
。
【0047】
30
フレーズ「調節解除された経路または反応」とは、少なくとも1つの生合成酵素のレベ
ルまたは活性が変更または改変されるように、生合成経路または反応中の酵素をコードす
る少なくとも1つの遺伝子が変更または改変されている生合成経路または反応を表す。フ
レーズ「調節解除された経路」には、1以上の遺伝子が変更または改変されていることに
よって、対応する遺伝子産物/酵素のレベルおよび/または活性が変更されている生合成
経路が含まれる。ある場合には、微生物中の経路を「調節解除する」(例えば、特定の生
合成経路の2以上の遺伝子を同時に調節解除する)能力は、2以上の酵素(例えば、2ま
たは3つの生合成酵素)が、「オペロン」と称される連続片の遺伝物質上で互いに隣接し
て存在する遺伝子によってコードされている、微生物の特定の現象から生じる。他の場合
には、経路を調節解除するために、一連の連続操作ステップにおいて、いくつかの遺伝子
40
を調節解除する必要がある。
【0048】
用語「オペロン」とは、1以上の、好ましくは少なくとも2つの、構造遺伝子(例えば
、酵素、例えば生合成酵素をコードする遺伝子)に付随するプロモーターおよびおそらく
調節エレメントを含有する遺伝物質の協調単位を表す。構造遺伝子の発現は、例えば調節
エレメントに結合する調節タンパク質によって、あるいは転写のアンチターミネーション
によって、協調的に調節されうる。構造遺伝子の転写によって、すべての構造タンパク質
をコードする単一のmRNAが生じうる。オペロン中に含まれる遺伝子の協調された調節
に起因して、単一のプロモーターおよび/または調節エレメントの変更または改変によっ
て、オペロンによってコードされる各遺伝子産物の変更または改変が生じうる。調節エレ
50
(21)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
メントの変更または改変には、非限定的に、内因性プロモーターおよび/または調節エレ
メント(群)の除去、強力なプロモーター、誘導性プロモーターまたは複数のプロモータ
ーの付加または、遺伝子産物の発現が改変されるような調節配列の除去、オペロンの染色
体上の位置の改変、オペロンに隣接するか、あるいはオペロン内の核酸配列、例えばリボ
ソーム結合部位の変更、コドン使用頻度、オペロンのコピー数の増加、オペロンの転写お
よび/またはオペロンの遺伝子産物の翻訳に関与するタンパク質(例えば、調節タンパク
質、サプレッサー、エンハンサー、転写活性化因子等)の改変、または当技術分野で習慣
的な遺伝子の発現を調節解除する任意の他の慣用の手段(非限定的に、例えばリプレッサ
ータンパク質の発現をブロックするための、アンチセンス核酸分子の使用が含まれる)が
含まれる。
10
【0049】
ある実施形態では、本明細書中に記載の組換え微生物を遺伝子操作して、細菌由来の遺
伝子または遺伝子産物を過剰発現させている。用語「細菌由来の(bacterially-derived
)」および「細菌に由来する(derived-from bacteria)」とは、細菌中で天然に認めら
れる遺伝子または細菌遺伝子によってコードされる遺伝子産物を表す。
【0050】
用語「生物」とは、本発明の目的では、メチオニン等のアミノ酸の生産に一般に利用さ
れる任意の生物を表す。特に、用語「生物」は、原核生物、下等真核生物および植物に関
する。前述の生物の好ましい群には、アクチノバクテリア(actino bacteria)、シアノ
バクテリア(cyano bacteria)、プロテオバクテリア(proteo bacteria)、クロロフレ
20
クサス・アウランティアカス(Chloroflexus aurantiacus)、ピレルラsp.1(Pirell
ula sp. 1)、ハロバクテリア(halo bacteria)および/またはメタノコッカス(methan
ococci)、好ましくはコリネバクテリア(coryne bacteria)、マイコバクテリア(myco
bacteria)、ストレプトマイセス(streptomyces)、サルモネラ(salmonella)、大腸菌
、シゲラ(Shigella)および/またはシュードモナス(Pseudomonas)が含まれる。特に
好ましい微生物は、コリネバクテリウム・グルタミカム、大腸菌、バシラス(Bacillus)
属の微生物、特に枯草菌(Bacillus subtilis)、およびストレプトマイセス属の微生物
から選択される。
【0051】
用語「当初の生物」は、独立請求項1に記載の前述のモデルに関する初期セットのパラ
30
メータの割り当てに使用された生物および代謝経路ネットワークを説明するために使用さ
れる。
【0052】
用語「出発生物」とは、メチオニン生産の信用を向上させるための遺伝的改変に使用さ
れる生物を表す。出発生物は、野生型生物であっても、すでに突然変異を保持する生物で
あってもよい。出発生物は当初の生物と同一でありうる。出発生物は、例えば、メチオニ
ン過剰生産者であってよい。
【0053】
用語「野生型生物」とは、遺伝的に改変されていない生物に関する。用語メチオニン過
剰生産者とは、遺伝子操作によって、突然変異および選択によって、あるいは任意の他の
40
公知の方法によって改変されている生物であって、メチオニン過剰生産者の取得に使用さ
れた野性株より多くのメチオニンを過剰生産する生物に関する。
【0054】
しかし、本発明の生物は、酵母、例えばシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharo
myces pombe)またはセレビシエ(cerevisiae)およびピキア・パストリス(Pichia past
oris)を含んでもよい。
【0055】
植物もまた、アミノ酸の生産に関して本発明によって考慮される。そのような植物は、
単子葉植物または双子葉植物、例えば単子葉または双子葉の作物、食用植物または飼料植
物であってよい。単子葉植物の例は、アベナ属(avena)(カラスムギ)、コムギ属(tri
50
(22)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
ticum)(コムギ)、ライムギ属(secale)(ライムギ)、オオムギ属(hordeum)(オオ
ムギ)、イネ属(oryza)(イネ)、キビ属(panicum)、チカラシバ属(pennisetum)、
エノコログサ属(setaria)、モロコシ属(キビ(millet))、トウモロコシ属(zea)(
トウモロコシ)等に属する植物である。
【0056】
双子葉の作物には、とりわけ、綿、マメ類(leguminoses)例えばマメ科(pulse)およ
び、特に、アルファルファ、ダイズ、アブラナ、トマト、サトウダイコン、ジャガイモ、
観賞植物ならびに木が含まれる。別の作物には、果実(特に、リンゴ、セイヨウナシ、サ
クランボ、ブドウ、柑橘類、パイナップルおよびバナナ)、油ヤシ、茶の木、カカオの木
およびコーヒーの木、タバコ、サイザルアサならびに、薬用植物に関しては、ラウオルフ
10
ィアおよびジギタリスが含まれうる。穀物コムギ、ライムギ、カラスムギ、オオムギ、コ
メ、トウモロコシおよびキビ、サトウダイコン、アブラナ、ダイズ、トマト、ジャガイモ
およびタバコが特に好ましい。別の作物はUS 6,137,030から選ぶことができる。
【0057】
用語「代謝産物」とは、生物の代謝経路中で前駆体、中間体および/または最終産物と
して使用される化学物質を表す。そのような代謝産物は、化学的構築単位として働くだけ
でなく、さらに酵素およびその触媒活性に対する調節活性を発揮する。そのような代謝産
物が酵素の活性を阻害または刺激することが文献から公知である(Stryer, Biochemistry
, (1995) W.H. Freeman & Company, New York, New York)。
【0058】
20
本発明の目的では、用語「外因的な代謝産物」には、基質、例えばグルコース、スルフ
ェート、チオスルフェート、スルファイト、スルフィド、アンモニア、ホスフェート、金
属イオン、例えばFe2+、Mn2+、Mg2+、Co2+、MoO2+および酸素等が
含まれる。特定の実施形態では、(外因的な)代謝産物はいわゆるC1代謝産物を含む。
これらの後者の代謝産物は、例えばメチル供与体として機能することができ、それには、
ギ酸、メタノール、ホルムアルデヒド、メタンチオール、ジメチルジスルフィド等の化合
物が含まれる。
【0059】
用語「生成物(産物)」には、メチオニン、システイン、グリシン、リシン、トレハロ
ース、バイオマス、CO2、等が含まれる。
30
【0060】
本発明をその具体的実施形態に関して説明する前に、elementary flux解析による予測
が取得された方法に関する一般的概要を記載する。
【0061】
elementary flux解析は、生育およびメチオニン生産に関連するすべての代謝反応の組
織立ておよび具体化で出発する。必要な情報はKEGG(http://www.genome.jp/kegg/)
等の公的データベースから収集することができる。次いでモデルを相応にセットアップす
る。該モデルは、野生型生物の天然の潜在能力を反映し、メチオニン過剰生産モデル株の
さらなる開発のための出発点として役立つ。当初のモデルの取得では、メチオニン合成に
関する生化学反応モデルを構築した。この目的で、中枢炭素および硫黄代謝のすべての関
40
連経路を含むモデルを構築した。該経路には、メチオニン生産に関連しているすべての関
連経路が含まれる。それらの経路は文献から公知である。特定の生物、例えば大腸菌に関
する経路が別の生物、例えばコリネバクテリウム・グルタミカムに存在しないことが知ら
れていれば、該生物特異的経路反応は、当初の生物に関するモデルを構築する場合、該特
定の生物に関するモデルにおいてのみ考慮され、他の生物に関しては省略された。当初の
モデルが得られた後、さらなる最適化のために、モデル生物において存在しないことが知
られている他の生物に由来する経路を考慮、すなわち導入してよい。代謝経路ネットワー
クに寄与する種々の生化学反応は、例えば標準的な教科書、科学文献またはインターネッ
トリンク、例えばhttp://www.genome.jp/kegg/metabolism.htmlから取得してよい。
【0062】
50
(23)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
そしてエレメンタリー・フラックスモード解析を文献に記載されるように実施した(例
えばPapin et al. (2004) 上記, Schilling et al. (2000) 上記, Schuster et al. (199
9) 上記を参照のこと)。エレメンタリー・フラックスモードは種々の反応の化学量論に
基づいて算出される。各反応の特定の速度論は、通常、考慮に入れない。
【0063】
構築された代謝経路ネットワークは、典型的に、多くの経路回路および可逆反応を含む
。ゆえに、種々の経路を経由して、メチオニン等の化合物に到達しうる。ゆえに、どの経
路を経由するかに応じて、同一化合物の生産に関するエネルギー要求性が同一ネットワー
ク内で変化することがある。結果として、ネットワークの種々の反応をパラメータによっ
て表現し、METATOOLソフトウェア(Pfeiffer et al. (1999) Bioinformatics, 1
10
53, 251-257; Schuster et al. (1999) 上記参照のこと)等のアルゴリズムに入力すれば
、該ネットワークを改変および最適化して、最も効率的なメチオニン合成を可能にする経
路を特定することができる。
【0064】
本発明の目的では、プログラムMETATOOLを使用して代謝経路解析を実行した。
本発明に関して使用されたバージョン(meta 4.0.1_double.exe)はインターネット(htt
p://www.biozentrum.uni-wuerzburg.de/bioinformatik/computing/metatool/pinguin.bio
logie.uni-jena.de/bioinformatik/networks/)で入手可能である。該アルゴリズムの数
学的詳細は、Pfeifferら(Pfeiffer et al. (1999) 上記参照のこと)によって記載され
ている。METATOOLプログラムを使用して代謝経路解析を実行すれば、調査対象の
20
各状況に関して数百のエレメンタリー・フラックスモードが得られる。これらのフラック
スモードの各々に関して、上記のように、メチオニンの炭素収率を、基質として系に入っ
た炭素のパーセンテージとして算出した。種々のフラックスモードに関して、バイオマス
の炭素収率を、炭素基質の形式で系に入ったエネルギーのパーセンテージとして算出して
よい。ゆえに、このパラメータは((バイオマスmol)(基質mol)−1×100)
として算出してよい。グルコース以外の補基質、例えばギ酸、ホルムアルデヒド、メタノ
ール、メタンチオールまたはその二量体であるジメチルジスルフィドを相応に考慮しても
よい。そして、特定のネットワークシナリオに関して取得されるすべてのそのようなエレ
メンタリー・フラックスモードの比較解析によって、メチオニン合成に関する理論的最大
効率の決定が可能である。
30
【0065】
このように、最適なメチオニン合成効率を有するはずである生物の代謝経路ネットワー
クを通る最適な代謝流量の理論的予測が取得される。そのような理論的代謝流量解析の詳
細は実験セクションで記載する。
【0066】
そのような向上したメチオニン合成効率を有する生物を理論的に決定または設計する方
法は、独立請求項1の対象発明を構成する。
【0067】
そして、これらの方法によって取得される理論的予測は、それぞれの生物を遺伝的に改
変して、該予測モデルによって特定された経路を通る代謝流量を増大または低減させるこ
40
とによって実現してよい。驚くべきことに、理論的予測は、該モデルの予測にしたがって
、当初の生物と同一でない出発生物を遺伝的に改変することによって実現することもでき
る。ゆえに、そのような出発生物は、野生型生物ではなく、すでに遺伝的に改変されてい
る生物であってよい。一実施形態では、出発生物は、例えばメチオニン過剰生産者、すな
わちそれぞれの野生型生物より多くのメチオニンを生産することがすでに知られている遺
伝的に改変された生物であってよい。そのようなメチオニン過剰生産者に関する理論的予
測は算出されていないが、それらは、向上したメチオニン合成効率を提供する該メチオニ
ン過剰生産者に基づく遺伝的に改変された生物の構築をなお可能にする。
【0068】
例えば理論的予測によって、ペントースリン酸経路(PPP)を通る代謝流量が増大し
50
(24)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
た場合にメチオニン合成が最も効率的であると示されれば、生物を該目的で遺伝的に改変
する。これは、例えば、その他の点では厳密に同一の条件下で培養された遺伝的に未改変
の生物と比較して、この経路を通る、より多くの代謝流量を開通させるようにPPPの特
定のステップを触媒する酵素の量および/または活性を増大させることによって達成でき
る。PPP中への流量は、例えば該代謝流量をPPP中へ向け直す別の並行経路の不可逆
的反応中の酵素活性を下方制御することによって向上させてもよい。PPPを通る流量は
、ピルビン酸カルボキシラーゼ中の突然変異のようなPPP回路酵素に関与するタンパク
質をコードする遺伝子中に特定の突然変異を導入することによって向上させてもよい。そ
れは、Onishiら(Appl Microbiol Biotechnol. (2002), 58,217-23)によって記載されて
いる。これらの改変された遺伝子は、いわゆる野性型株に由来する遺伝子と比較して突然
10
変異を含有する。これらの突然変異は、改変された酵素活性または分子的フィードバック
インヒビターに対する感受性を生じさせる。
【0069】
相応に、理論モデルがペントースリン酸経路への代謝流量の低減を必要とすれば、この
経路の酵素の量および/または活性を低減させてよい。
【0070】
代謝流量解析を使用して、ある生物に関して作成された結果を別の生物に移転してもよ
い。ゆえに、エレメンタリー・フラックスモード解析によって、例えば大腸菌において、
向上した活性を有する特定の経路が効率的なメチオニン合成に重要であることが発見され
、かつ、この経路が別の生物、例えばコリネバクテリウム・グルタミカムにおいて明らか
20
に使用されていないか、あるいは存在しなければ、この経路の酵素活性をコードする遺伝
子をそれぞれの生物中に導入することによってこの経路をそれぞれの生物中に導入してよ
い。該アプローチによって、微生物を、その内因性の代謝経路を最適化することによって
、メチオニン合成に関して最適化することが可能であるばかりでなく、外来性の代謝経路
を導入して、さらにメチオニン合成を増強し、かつ/または合成効率を向上させることも
可能である。
【0071】
この状況を考慮して、本発明はまた、出発生物と比較して向上したメチオニン合成効率
を有する原核生物、下等真核生物および植物からなる群より選択される生物の作製方法で
あって、以下のステップを含む方法に関する:
30
a. 前述のエレメンタリー・フラックスモード解析を実行して、メチオニン合成に関
して最適化された生物中の最適な代謝流量分布についての理論的予測を取得するステップ
、および
b. 生物中の既存の代謝経路を改変するように生物を遺伝的に改変することにより、
出発生物と比較して該生物の代謝流量をステップ(a)の理論モデルに近づけるようにす
るステップ、および/または
c. 生物に外来性の代謝経路を導入するように生物を遺伝的に改変することにより、
出発生物と比較して該生物の代謝流量をステップ(a)の理論モデルに近づけるようにす
るステップ、および/または
d. (b)および(c)の代謝経路を通る代謝流量を開通させるのに十分な量の外因
40
的な代謝産物を提供するステップ。
【0072】
本発明の別の態様は、以下のステップによって原核生物、下等真核生物および植物から
なる群より選択される生物を作製することによって、メチオニン合成に関して最適化され
た生物中の流量分布の理論的予測を実現する方法に関する:
該生物の遺伝的改変により、少なくとも1つの以下の代謝経路を通る代謝流量を改変す
るステップ:
ホスホトランスフェラーゼ系(PTS)および/または
ペントースリン酸経路(PPP)および/または
解糖(EMP)および/または
50
(25)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
トリカルボン酸回路(TCA)および/または
グリオキシル酸短絡回路(GS)および/または
補充経路(anaplerosis)(AP)および/または
呼吸鎖(RC)および/または
硫黄同化(SA)および/または
メチオニン合成(MS)および/または
セリン/システイン/グリシン合成(SCGS)および/または
グリシン切断系(GCS)および/または
トランスヒドロゲナーゼ変換(THGC)および/または
第1経路(P1)および/または
10
第2経路(P2)および/または
第3経路(P3)および/または
第4経路(P4)および/または
第5経路(P5)および/または
第6経路(P6)および/または
第7経路(P7)、および/または
生物の遺伝的改変により、少なくとも1つの以下の外来性の代謝経路を通る代謝流量を
導入するステップ:
グリシン切断系(GCS)および/または
トランスヒドロゲナーゼ変換(THGC)および/または
20
チオ硫酸レダクターゼ系(TRS)および/または
硫酸レダクターゼ系(SARS)および/または
亜硫酸レダクターゼ系(SRS)および/または
ギ酸変換系(FCS)および/または
メタンチオール変換系(MCS)、および/または
以下のものの存在下で生物を培養するステップ:
a. スルフェートおよび/または
b. スルファイトおよび/または
c. スルフィドおよび/または
d. チオスルフェートおよび/または
30
e. 硫黄含有有機化合物および/または
f. ギ酸(formate)、ホルムアルデヒド、メタノール、メタンチオールもしくはそ
の二量体であるジメチルジスルフィド等のC1代謝産物。
【0073】
向上したメチオニン生合成効率を有するモデル生物に関する予測を実現するために遺伝
的に改変されている生物はまた、本発明の対象である。
【0074】
上述のように、メチオニン合成に関する代謝経路ネットワークを通る最適な代謝流量の
算出に関して、このアミノ酸を導く、該生物特有の代謝経路を使用する。さらにまた、特
定の生物の特定の化学量論を、構築対象の各代謝経路ネットワークに関して考慮する必要
40
がある。化学量論は前述の供給源から入手してよい。
【0075】
そのような代謝経路ネットワークは生物間で、例えば大腸菌とコリネバクテリウム・グ
ルタミカムで異なるかもしれないが、図1は、例としてコリネバクテリウム・グルタミカ
ムを使用して当初の代謝経路ネットワークの算出に使用された1セットの反応を示す。こ
のセットは、メチオニン合成に寄与する代謝経路ネットワークに関する最小セットの反応
でしかないので、追加の経路の存在が知られていれば、他の生物、例えば大腸菌に関して
該追加の経路を考慮した。ただし、以下、概して特定の代謝経路または具体的な酵素に言
及する場合、特に記載しない限り、これらの一般的言及はすべて、図1に示される反応に
関する。これは理にかなっていると思われる。その理由は、大腸菌およびコリネバクテリ
50
(26)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
ウム・グルタミカムにおいてこれらの反応の大部分が同一であったからである。本発明の
目的では、種々の反応を以下の経路群に分類する:
ホスホトランスフェラーゼ系(PTS)
ペントースリン酸経路(PPP)
解糖(EMP)
トリカルボン酸回路(TCA)
グリオキシル酸短絡回路(GS)
補充経路(AP)
呼吸鎖(RC)
硫黄同化(SA)
10
メチオニン合成(MS)
セリン/システイン/グリシン合成(SCGS)
グリシン切断系(GCS)
トランスヒドロゲナーゼ変換(THGC)
第1経路(P1)
第2経路(P2)
第3経路(P3)
第4経路(P4)
第5経路(P5)
第6経路(P6)
20
第7経路(P7)
チオ硫酸レダクターゼ系(TRS)
硫酸レダクターゼ系(SARS)
亜硫酸レダクターゼ系(SRS)
ギ酸変換系(FCS)
メタンチオール変換系(MCS)。
【0076】
単一の経路は、Rnで指定される酵素によって触媒される以下の反応に細分してよい。
略語を使用して、これらの反応を規定する。本発明の目的のためにこれらの規定を解すべ
き方式は、ホスホトランスフェラーゼ系に関して説明する。この説明は他の反応にも適用
30
される。
【0077】
本発明の目的では、ホスホトランスフェラーゼ系(PTS)は外因的なグルコース∼グ
ルコース−6−リン酸(G6P)の反応を含む。この反応は酵素R1によって触媒される
。R1はホスホトランスフェラーゼである。この酵素は、ホスホル基(phosphor-group)
供与体としてホスホエノールピルビン酸を使用する(図1を参照のこと)。本発明の目的
では、この反応は以下のように記載される:
より多くのG6Pを生成するためのR1。
【0078】
ゆえに、種々の前述の経路の単一の反応は、該反応を触媒する酵素および該反応から得
40
られる生成物に関して規定される。そのような反応がATP、NADHおよび/またはN
ADPHまたは他の補助因子の形式のエネルギー入力を必要とするか否かは示されていな
いが、図1から取得してよい。具体的な化学量論もまた示されていない。その理由は、そ
れが生物間で変動するからである。一般に、反応の抽出物およびエネルギー入力もまた示
されていない。これらのデータは、種々の生物に関する標準的な教科書または科学刊行物
から取得してよい。
【0079】
本発明の目的では、ペントースリン酸経路は以下の反応によって特徴付けられる:
GLC−LACを生成するためのR3
6−P−グルコネートを生成するためのR4
50
(27)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
RIB−5Pを生成するためのR5
XYL−5Pを生成するためのR6
RIBO−5Pを生成するためのR7
S7PおよびGA3Pを生成するためのR8
E−4pおよびF6Pを生成するためのR9
F6PおよびGA3Pを生成するためのR10
G6Pを生成するためのR2。
【0080】
本発明の目的では、解糖経路(EMP)は以下の反応によって特徴付けられる:
F−1,6−BPを生成するためのR11
10
DHAPおよびGA3Pを生成するためのR13
GA3Pを生成するためのR14
1,3−PGを生成するためのR15
3−PGを生成するためのR16
2−PGを生成するためのR17
PEPを生成するためのR18
Pyrを生成するためのR19。
【0081】
本発明の目的では、トリカルボン酸回路(TCA)は以下の反応によって規定される:
Ac−CoAを生成するためのR20
20
CITを生成するためのR21
Cis−ACOを生成するためのR22
ICIを生成するためのR23
2−OXOを生成するためのR24
SUCC−CoAを生成するためのR26
SUCCを生成するためのR27
FUMを生成するためのR28
MALを生成するためのR29
OAAを生成するためのR30。
【0082】
30
本発明の目的では、グリオキシル酸短絡回路(GS)経路は以下の反応によって規定さ
れる:
CITを生成するためのR21
Cis−ACOを生成するためのR22
ICIを生成するためのR23
GLYOXYおよびSUCCを生成するためのR31
MALを生成するためのR32
FUMを生成するためのR28
MALを生成するためのR29
OAAを生成するためのR30。
40
【0083】
本発明の目的では、補充経路(AP)は以下の反応によって規定される:
OAAを生成するためのR34
OAAを生成するためのR33/R36。
【0084】
本発明の目的では、呼吸鎖(RC)は以下の反応によって規定される:
2NADH+O2ex+4ADP=2NAD+4ATPを触媒するR59
2FADH+O2ex+2ADP=2FAD+2ATPを触媒するR60。
【0085】
本発明の目的では、硫黄同化経路(SA)は以下の反応によって規定される:
50
(28)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
H2SO3を生成するためのR55
H2Sを生成するためのR58。
【0086】
本発明の目的では、メチオニン合成経路(MS)は以下の反応によって規定される:
Aspを生成するためのR37
ASP−Pを生成するためのR47
ASP−SAを生成するためのR48
HOMを生成するためのR39
O−AC−HOMを生成するためのR40
CYSTAを生成するためのR46
10
HMOCYSを生成するためのR49
HOMOCYSを生成するためのR54
METを生成するためのR52
METexを生成するためのR53。
【0087】
本発明の目的では、セリン/システイン/グリシン合成(SCGS)経路は以下の反応
によって規定される:
3−PHPを生成するためのR41
SER−Pを生成するためのR42
SERを生成するためのR43
20
O−AC−SERを生成するためのR44
CYSを生成するためのR45
M−THFおよびグリシンexを生成するためのR38。
【0088】
本発明の目的では、第1経路(P1)は以下の反応を含む:
GLUを生成するためのR25。
【0089】
本発明の目的では、第2経路(P2)は以下の反応を含む:
OAAを生成するためのR33/R36
MALを生成するためのR30
30
PYR+CO2を生成するためのR57。
【0090】
本発明の目的では、第3経路(P3)は以下の反応を含む:
ATP=ADPを触媒するR56。
【0091】
本発明の目的では、第4経路(P4)は以下の反応を含む:
GTP+ADP=ATP+GDPを触媒するR62。
【0092】
本発明の目的では、第5経路(P5)は以下の反応によって規定される:
ATP+アセテート=ADP+アセチルPを触媒するR50。
40
【0093】
本発明の目的では、第6経路(P6)は以下の反応を含む:
アセチルP+HCoA=アセチルCoAを触媒するR51。
【0094】
本発明の目的では、第7経路(P7)は以下の反応を含む:
6231 NH3ex+233 SO4ex+205 G6P+308 F6P+879
RIBO−5P+268 E4P+129 GA3P+1295 3−PG+652 PE
P+2604 PYR+3177 AC−CoA+1680 OAA+1224 2−OXO
+16429 NADPH=BIOMASSex+16429 NADP+3177 H−
CoA+1227 CO2exを触媒するR61。
50
(29)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
【0095】
上記のように、化学量論は生物間で変動する。該化学量論は文献または前述のインター
ネットページから取得してよい。さらにまた、大腸菌またはコリネバクテリウム・グルタ
ミカム等の特定の生物の代謝経路ネットワークは、追加の反応経路を含んでよい。
【0096】
本発明の目的で使用されるように、そのような追加の経路には以下の経路が含まれる:
グリシン切断系(GCS)および/または
トランスヒドロゲナーゼ変換(THGC)および/または
チオ硫酸レダクターゼ系(TRS)および/または
硫酸レダクターゼ系(SARS)および/または
10
亜硫酸レダクターゼ系(SRS)および/または
ギ酸変換系(FCS)および/または
メタンチオール変換系(MCS)。
【0097】
本発明の目的では、グリシン切断系(GCS)は以下の反応を含む:
M−HPLを生成するためのR71
メチレン−THFを生成するためのR72。
【0098】
当業者は、R71およびR72の反応が少なくとも3つのタンパク質、すなわちgcv
H、PおよびTによって触媒されることを十分承知している(表1および2を参照のこと
20
)。gcvPは、グリシンをCO2およびアミノメチル基に脱炭酸する反応を触媒し、G
cvHはアミノメチル基の担体である(R71)。グリシン切断系の記述は、Neidhardt
F.C. (1996) E. coli and S. typhimurium, ASM Press Washingtonに見出せる。gcvT
は、H−タンパク質からテトラヒドロ葉酸へのC1単位の移動およびNH3の放出に関与
する(R72)。そして該反応は、典型的に、リポアミドデヒドロゲナーゼである第四サ
ブユニットによって完了する。lpdAによってコードされるリポアミドデヒドロゲナー
ゼはNADからNADHへの電子伝達として機能する。このデヒドロゲナーゼはマルチサ
ブユニットピルビン酸デヒドロゲナーゼから借用され、一般にlpdAと称される。ゆえ
に本発明の目的では、GCSは以下のようにまとめてよい:
メチレン−THFを生成するためのR71/72。
30
【0099】
本発明の目的では、GCSは場合により以下の追加の反応をさらに含みうる:
メチル−THFを生成するためのR78。
【0100】
厳密に言えば、R78はGCSに属さない。R78はメチル−THFを提供する働きを
するだけである。しかし、R78が存在しない生物では、R78はGCSの他の反応とと
もに実施されることがある。R78がすでに存在している生物では、これは必要でないか
もしれない。
【0101】
本発明の目的では、トランスヒドロゲナーゼ変換系(THGC)は以下の反応を含む:
40
NADPHを生成するためのR70。
【0102】
本発明の目的では、THGCは以下の反応を含んでもよい:
NADPHを生成するためのR81。
【0103】
R70は例えばサイトゾルのトランスヒドロゲナーゼであり、R81は例えば膜貫通型
のトランスヒドロゲナーゼである。
【0104】
本発明の目的では、チオ硫酸レダクターゼ系(TRS)は以下の反応を含む:
チオスルフェートをスルフィドおよびスルファイトに代謝するためのR73。
50
(30)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
【0105】
本発明の目的では、TRSは以下のものをさらに含んでよい:
細胞外H2S2O3を細胞に取り込むためのR82および/または
より多くのS−スルホシステインを生産するためのR45aおよび/または
より多くのS−スルホシステインを生成するためのR49。
【0106】
R45aおよび/またはR49はチオスルフェートをS−スルホ−システインに変換し
、ゆえにSRSに属する。
【0107】
本発明の目的では、硫酸レダクターゼ系(SARS)は以下の反応を含む:
10
スルフェートをスルファイトに代謝するためのR80。
【0108】
本発明の目的では、亜硫酸レダクターゼ系(SRS)は以下の反応を含む:
スルファイトをスルフィドに代謝するためのR74。
【0109】
本発明の目的では、ギ酸変換系(FCS)は以下の反応を含む:
10−ホルミル−THFを生成するためのR75
メチレン−THFを生成するためのR76
メチル−THFを生成するためのR78。
【0110】
20
本発明の目的では、メタンチオール変換系(MCS)は以下の反応を含む:
メタンチオールを用いてO−アセチル−ホモセリンをメチル−スルフヒドリル化(me
thyl-sulfhydrylate)するためのR77。
【0111】
本発明の目的では、第8経路(P8)は以下の反応を含む:
ホルミル−THFをギ酸およびテトラヒドロ葉酸に分解するためのR79。
【0112】
以下の表では、前述の酵素に関する具体例を挙げる。
【0113】
さらに下記の反応の総覧中には、追加の反応が見出せる。
30
(31)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
【表1】
10
20
30
40
【0114】
(32)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0115】
(33)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0116】
(34)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0117】
(35)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0118】
(36)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
【0119】
上記登録番号はGenbankの公式登録番号であるか、あるいはGenbankで相互参照されてい
る登録番号のシノニムである。これらの番号は、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/で検索し
、見出すことができる。
【0120】
本発明はまた、向上したメチオニン合成効率を有する生物を作製するための生物の理論
的または遺伝的操作によって、他の経路および反応を通る代謝流量をモジュレートするこ
20
とを想定し、それは、これらの反応が、例えば科学文献で、メチオニン合成に直接的また
は間接的に関与することが知られている限りにおいてである。これらの経路および反応は
、もちろん、理論的なエレメンタリー・フラックスモード解析に組み込んでもよい。これ
らの方法によって取得される(遺伝的に改変された)生物はまた、本発明の部分である。
【0121】
上述のように、本発明にしたがって、生物中の実際の代謝流量は、請求項1に記載のエ
レメンタリー・フラックスモード解析によって決定される向上したメチオニン合成を伴う
生物に関する最適な理論的流量に近づけることができる。本発明の目的では、「近づける
」とは、遺伝的に改変された生物の、遺伝的改変の結果としての代謝流量が、理論的予測
の代謝流量に対して、出発生物の代謝流量が類似するよりも、より類似していることを意
30
味する。
【0122】
すでに記載したように、出発生物の代謝流量のモジュレーションに、該生物の遺伝的改
変によって、例えば検討対象のネットワークの特定の反応を触媒する酵素の量および/ま
たは活性に影響を与えることによって、影響を与えてよい。さらに、特定の栄養素および
外因的な代謝産物、例えばスルフェート、チオスルフェート、スルファイトおよびスルフ
ィドならびにC1化合物、例えばギ酸 ホルムアルデヒド、メタノール メタンチオールお
よびジメチルジスルフィドの使用によって該代謝流量に影響を与えてよい。外因的な代謝
産物、例えばチオスルフェート、ギ酸またはメタンチオールの影響は、追って、さらに詳
細に説明する。生物の遺伝的改変に関する一般例を以下に挙げる。
40
【0123】
以下、具体的な反応に関して、特定の経路を通る代謝流量が生物の遺伝的改変によって
どのように開通されるかを説明する。これらの説明は、相応に、他の反応に適用される。
【0124】
例えば、本発明の方法にしたがって取得された理論モデルまたは設計されたモデル生物
において、効率的メチオニン合成に関して、PPP中への代謝流量が主に開通されるべき
であることが予測された場合、この経路を通る向上した代謝流量を有する実際の生物は、
PPPの部分である上述の反応の量および/または活性に遺伝的に影響を与えることによ
って取得してよい。ゆえに、PPP中への代謝流量は、R3の量および/または活性を増
大させて、より多くのGLC−LACを形成させることによって、増大させてよい。同様
50
(37)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
に、R4、R5、R6、R7、R8、R9またはR10の量および/または活性を増大さ
せて、PPP中への代謝流量を増大させてよい。G6Pの生成に向かうR2の活性を増大
させることによって、同結果を達成してよい。
【0125】
本発明の方法によって取得された理論モデルにおいて、TCAを通る代謝流量の低減が
予測された場合、以下の酵素:R21、R22、R23、R24、R26、R27、R2
8、R29またはR30の量および/または活性を低減させることによってこれを達成し
てよい。酵素の活性および/または量を増大または低減させる方法は当業者に自明であり
、さらに下記で例証される。
【0126】
10
しかし一般的目的では、例えば図1の代謝経路において、特定の反応が不可逆であると
みなされることに留意すべきであろう。生物学的ネットワークのほとんどの任意の反応は
、両方向に進行できる平衡反応であるが、不可逆反応は、概して、例えばエネルギーの入
力によって、反応が主に一方向に追いやられ、反応の平衡がほぼ例外なく該反応の片側に
ある反応であるとみなされる。
【0127】
PPPの場合、そのような不可逆反応は、例えば、R3およびR5によって触媒される
反応である。それらはいずれも、NADPHの形成を促進する。本発明の関連でこの用語
が使用される場合、他のそのような不可逆反応は、例えばEMPのR16、TCAのR2
4、等である。図1では、不可逆反応は一方向のみを指す矢印によって示される。
20
【0128】
本発明の関連で、該方向を触媒する酵素の量および/または活性を増大させることによ
って特定の反応経路を通る代謝流量が増大することが記載される場合、この記載は、該反
応がどのように上で規定されているかに照らして理解される必要がある。酵素の量および
/または活性の増大または低減は、該反応がさらに押し進められるか、あるいは開通され
るべき方向に関して理解される必要がある。本発明に記載の代謝経路ネットワークの種々
の経路の反応は、酵素および、該酵素によって形成される生成物によって規定されている
ので、酵素の量および/または活性に影響を与えて、より多いか、あるいは少ない生成物
が得られるようにするための該酵素の量および/または活性の増大または該酵素の量およ
び/または活性の低減は当業者によって明確に理解される。
30
【0129】
ゆえに、例えば酵素R6の活性を増大させると記載される場合、この反応についての前
述の説明を考慮して、このことは、R6の量および/または活性を増大させることによっ
てXYL−5Pの量を増大させることを意味する。同様に、R23の量および/または活
性を増大させると記載される場合、これは、R23の量および/または活性を増大させて
、より多くのICIを生成する状況を表す。相応に、例えばR29の量および/または活
性を低減させる場合、このことは、R29の量および/または活性を低減させて、より少
ないMALを生成することを意味する。
【0130】
向上したメチオニン効率を有する理論モデル生物が、例えば、特定の経路を通る代謝流
40
量の増大を必要とする場合、本発明の一実施形態では、該反応経路の1酵素のみの量およ
び/または活性を改変することで十分である。あるいは、この代謝経路の種々の酵素の量
および/または活性を改変してもよい。例えば、elementary flux解析によって得られた
理論モデルにおいて、例えば、PPPおよびTCAを通る代謝流量を増大させることが示
唆され、一方、RCを通る代謝流量を低減させるべきである場合、これは、PPPおよび
TCA回路の1酵素のみの量および/または活性を増大させることによって達成してよく
、一方、RCの1酵素のみの活性および/または量を低減させてよい。あるいは、これら
の経路の種々の酵素またはすべての酵素の量および/または活性に同時に影響を与えてよ
い。
【0131】
50
(38)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
当業者はまた、酵素反応が単一の酵素活性によって実行されると上で規定される場合が
、実際には、全体として指定の活性全体(例えば亜硫酸またはチオ硫酸レダクターゼ)を
提供する種々の酵素による一連の酵素(サブ)ステップであってよいことを十分承知して
いる。指定の酵素活性全体(上記Rナンバーを参照のこと)は種々のサブユニットから構
成されていてもよい。これらの場合、上で特定される反応を通る代謝流量に、単一(サブ
)ステップのうちの、あるいは少なくとも1つのサブユニットのうちの1つを実行する少
なくとも1つの酵素の活性および/または量の改変によって影響を与えてよい。したがっ
て、(サブ)ステップまたはサブユニットをコードする遺伝子は、それぞれの酵素活性全
体の部分とみなしてよい。
【0132】
10
グリシン切断系に関して、当業者は、遺伝子gcvT、および/またはH、および/ま
たはPおよび/またはL(lpdA)(表1および2を参照のこと)がこの系に関与する
ことを承知している。ゆえに、反応R71、R72およびR71/R72によって上で規
定されるこの系を通る代謝流量は、例えば少なくとも1つの上で特定される遺伝子または
そのホモログの過剰発現によって増大させるか、あるいは導入してよい。代謝流量の増大
は、これらの遺伝子の4つ全部またはこれらの遺伝子のうち2つもしくは3つだけの過剰
発現によって達成してもよい。該遺伝子は、例えば天然に存在するオペロンにおいて、あ
るいはプロモーターを使用して構築された人工オペロンにおいて、共同で過剰発現させて
よい。さらに、遺伝子gcvH、P、T(再び表1および2を参照のこと)とともに遺伝
子lpdAを過剰発現させることも有用でありうる。
20
【0133】
メチオニン合成系に関して、当業者は以下の反応を承知している:
R47、R48、R39、R40 R46、R49、R52、R53、R54がメチオ
ニンの合成に関与している。
【0134】
トランスヒドロゲナーゼ(R70およびR81)の過剰発現では、遺伝子udh、pn
tAおよび/またはpntBまたはそのホモログ(表1および2を参照のこと)の少なく
とも1つを過剰発現させてよい。該遺伝子もまた、例えば天然に存在するオペロンにおい
て、あるいはプロモーターを使用して構築された人工オペロンにおいて、共同で過剰発現
させてよい。もちろん、それに加えて、あるいはその代わりに、膜貫通型トランスヒドロ
30
ゲナーゼに関する遺伝子、例えばudhAおよびまたはpntA、Bを過剰発現させても
よい。
【0135】
チオ硫酸レダクターゼ(R73、R45a、R49および/またはR82)の過剰発現
では、チオ硫酸レダクターゼシトクロムBサブユニット、チオ硫酸レダクターゼ電子伝達
タンパク質および/またはチオ硫酸レダクターゼ前駆体の遺伝子を、例えば天然に存在す
るオペロンにおいて、あるいはプロモーターを使用して構築された人工オペロンにおいて
、単独で、あるいは組み合わせて過剰発現させてよい。これらの目的では、phsA、B
および/またはC遺伝子またはそのホモログを使用してよい(表1および2を参照のこと
)。同様に、ABC輸送体の遺伝子、例えばYP_224929を過剰発現させてよい。
40
【0136】
ペントースリン酸経路の過剰発現では、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、O
PCA、トランスケトラーゼ、トランスアルドラーゼ、6−ホスホグルコノラクトンデヒ
ドロゲナーゼまたはそのホモログの遺伝子(表1および2を参照のこと)を、単独で、あ
るいは2、3、4またはそれ以上の遺伝子の任意の組み合わせで、例えば天然に存在する
オペロンにおいて、あるいはプロモーターを使用して構築された人工オペロンにおいて過
剰発現させることができる。
【0137】
亜硫酸還元系(R74)の過剰発現では、嫌気的亜硫酸レダクターゼサブユニットA、
BおよびCの遺伝子を、単独または共同で、例えば天然に存在するオペロンにおいて、あ
50
(39)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
るいはプロモーターを使用して構築された人工オペロンにおいて過剰発現させてよい。遺
伝子dsrA、dsrBおよび/またはdsrCまたはそのホモログ(表1および2を参
照のこと)を前記目的で使用してよい。
【0138】
ギ酸変換系(FCS)に関しては、ギ酸−THF−リガーゼ、ホルミル−THF−シク
ロリガーゼ、メチレン−THF−デヒドロゲナーゼ、5,10−メチレン−THF−レダ
クターゼ、メチレン−THF−レダクターゼからなる群より選択される遺伝子の少なくと
も1つの量および/または活性を改変することによって、代謝流量を改変してよく、ある
実施形態では、増大させるか、あるいは導入してよい。そのホモログを使用してもよい(
表1および2を参照のこと)。前記遺伝子のいずれかの過剰発現によって、FCSを通る
10
代謝流量を増大させてもよい。
【0139】
硫酸レダクターゼ系(SARS、R80)は、ATP:硫酸アデニル酸トランスフェラ
ーゼを構成する硫酸アデニル酸トランスフェラーゼサブユニット1(NP_602005)および
硫酸アデニル酸トランスフェラーゼサブユニット2(NP_602006)、アデノシン5’−ホ
スホスルフェートキナーゼ(EC:2.7.1.25)、3’−ホスホアデノシン5’−ホスホスル
フェート(PAPS)レダクターゼ(EC:1.8.4.8, NCgl2717)および亜硫酸レダクターゼ
(EC: 1.8.1.2, CAF20840)からなると考えられる。
【0140】
好ましい改変の標的は、本発明の意味合いで、不可逆であると考えられる酵素の量およ
20
び/または活性であってよい。ゆえに、向上したメチオニン合成効率を示す生物に関する
代謝流量解析によって得られる理論モデルは、そのような最適化された代謝流量を有する
微生物を取得するために当業者がどの遺伝的操作を考慮するべきかについての明確なガイ
ダンスを当業者にもたらす。そして、当業者は、理論的代謝経路ネットワークを構築する
ことによって当業者にすべて周知である決定的な酵素を選び出し、該生物の遺伝的改変に
よってこれらの酵素の量および/または活性に影響を与える。そのような生物を遺伝的改
変によってどのように取得できるかは当技術分野の一般的知識に属する。
【0141】
本発明にしたがって生物を遺伝的に改変することによって、メチオニン合成効率を向上
させるためにこれらの生物中の代謝流量を改変して、これらの生物が、少なくとも10%
30
、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なく
とも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55
%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少な
くとも80%または少なくとも85%の効率でメチオニンを生産することを特徴とするよ
うにしてよい。
【0142】
実験セクションの理論部分では、向上したメチオニン生産効率を有するコリネバクテリ
ウム・グルタミカムおよび大腸菌の最適な代謝流量モード(様式)がどのようであるかを
説明する。これらのモデルがどのように算出されたか、どの反応が考慮されたか、および
どの化学量論が使用されたかをそこで詳細に記載し、これらのモデルから得られた一般的
40
結論を以下で列挙する。したがって、以下のセクションは、これらの経路を通る代謝流量
を理論モデルに関して得られる最適な値に近づけるためにどの代謝経路を遺伝的に改変す
るべきかを当業者に助言するものとして理解される必要がある。そして、実験セクション
の実施部分で作業計画を記載し、特定の酵素に関して、遺伝的操作のためにどの具体的手
段を施す必要があるかを例証する。
【0143】
コリネバクテリウム・グルタミカム
本発明の目的の1つは、出発生物と比較して、少なくとも1つの以下の経路を通る代謝
流量を増大させ、かつ/または導入するために遺伝的に改変されているコリネバクテリウ
ム属の微生物に関する:
50
(40)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
ホスホトランスフェラーゼ系(PTS)および/または
ペントースリン酸経路(PPP)および/または
硫黄同化(SA)および/または
補充経路(AP)および/または
メチオニン合成経路(MS)および/または
セリン/システイン/グリシン合成(SCGS)および/または
グリシン切断系(GCS)および/または
トランスヒドロゲナーゼ変換(THGC)および/または
第1経路(P1)および/または
第2経路(P2)および/または
10
チオ硫酸レダクターゼ系(TRS)および/または
亜硫酸レダクターゼ系(SRS)および/または
硫酸レダクターゼ系(SARS)および/または
ギ酸変換系(FCS)および/または
メタンチオール変換系(MCS)および/または。
【0144】
同時に、そのような最適化された微生物は、場合により、少なくとも1つの以下の経路
を通る少なくとも低減した代謝流量を有するべきであろう:
解糖(EMP)および/または
トリカルボン酸回路(TCA)および/または
20
グリオキシル酸短絡回路(GS)および/または
呼吸鎖(RC)および/または
第3経路(P3)および/または
第4経路(P4)および/または
第7経路(P7)および/または
より少ないピルビン酸を生成するためのR19および/または
より少ないPEPを生成するためのR35および/または
より少ないTHFを生成するためのR79。
【0145】
本発明は、向上したメチオニン生産効率を有するコリネバクテリウム属の微生物を作製
30
するための方法であって、以下のステップを含む方法に関する。
【0146】
生物の遺伝的改変により、出発生物(the starting)と比較して、少なくとも1つの以
下の経路を通る代謝流量を増大させ、かつ/または導入するステップ:
ホスホトランスフェラーゼ系(PTS)および/または
ペントースリン酸経路(PPP)および/または
硫黄同化(SA)および/または
補充経路(PA)および/または
メチオニン合成経路(MS)および/または
セリン/システイン/グリシン系(SCGS)および/または
40
グリシン切断系(GCS)および/または
トランスヒドロゲナーゼ変換(THGC)および/または
第1経路(P1)および/または
第2経路(P2)および/または
チオ硫酸レダクターゼ系(TRS)および/または
亜硫酸レダクターゼ系(SRS)および/または
硫酸レダクターゼ系(SARS)および/または
ギ酸変換系(FCS)および/または
メタンチオール変換系(MCS)および/または
生物の遺伝的改変により、出発生物と比較して、少なくとも1つの以下の経路を通る代
50
(41)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
謝流量を少なくとも部分的に低減させるステップ:
解糖(EMP)および/または
トリカルボン酸回路(TCA)および/または
グリオキシル酸短絡回路(GS)および/または
呼吸鎖(RC)および/または
第3経路(P3)および/または
第4経路(P4)および/または
第7経路(P7)および/または
より少ないピルビン酸を生成するためのR19および/または
より少ないPEPを生成するためのR35および/または
10
より少ないTHFを生成するためのR79。
【0147】
本発明の一実施形態は、向上したメチオニン合成効率を有するコリネバクテリウム属の
微生物を作製するための方法であって、以下のステップを含む方法に関する:
PTSに関して、出発生物と比較して、以下の酵素の量および/または活性を増大させ
、かつ/または導入するステップ:
a. より多くのG6Pを生成するためのR1;および/または
PPPに関して、出発生物と比較して、以下の酵素の量および/または活性を増大させ
、かつ/または導入するステップ:
a. より多くのGLC−LACを生成するためのR3および/または
20
b. より多くの6−P−グルコネートを生成するためのR4および/または
c. より多くのRIB−5Pを生成するためのR5および/または
d. より多くのXYL−5Pを生成するためのR6および/または
e. より多くのRIBO−5Pを生成するためのR7および/または
f. より多くのS7PおよびGA3Pを生成するためのR8および/または
g. より多くのE−4pおよびF6Pを生成するためのR9および/または
h. より多くのF6PおよびGA3Pを生成するためのR10および/または
i. より多くのG6Pを生成するためのR2;および/または
SAに関して、出発生物と比較して、以下の酵素の量および/または活性を増大させ、
かつ/または導入するステップ:
30
a. より多くのH2SO3を生成するためのR55および/または
b. より多くのH2Sを生成するためのR58および/または
APに関して、出発生物と比較して、以下の酵素の量および/または活性を増大させ、
かつ/または導入するステップ:
a. より多くのOAAを生成するためのR33および/または
MSに関して、出発生物と比較して、以下の酵素の量および/または活性を増大させ、
かつ/または導入するステップ:
a. より多くのAspを生成するためのR37および/または
b. より多くのHOMを生成するためのR39および/または
c. より多くのO−AC−HOMを生成するためのR40および/または
40
d. より多くのCYSTAを生成するためのR46および/または
e. より多くのASP−Pを生成するためのR47および/または
f. より多くのASP−SAを生成するためのR48および/または
g. より多くのHOMOCYSを生成するためのR49および/または
h. より多くのMETを生成するためのR52および/または
i. より多くのMETexを生成するためのR53および/または
j. より多くのHOMOCYSを生成するためのR54および/または
SCGSに関して、出発生物と比較して、以下の酵素の量および/または活性を増大さ
せ、かつ/または導入するステップ:
a. より多くのM−THFおよびグリシンexを生成するためのR38および/ま
50
(42)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
たは
b. より多くのO−AC−SERを生成するためのR44および/または
c. より多くのCYSを生成するためのR45および/または
CGSに関して、出発生物と比較して、以下の酵素の量および/または活性を増大させ
、かつ/または導入するステップ:
a. より多くのM−HPLを生成するためのR71および/または
b. より多くのメチレン−THFを生成するためのR72
c. より多くのメチレン−THFを生成するためのR78および/または
THGCに関して、出発生物と比較して、以下の酵素の量および/または活性を増大さ
せ、かつ/または導入するステップ:
10
a. より多くのNADPHを生成するためのR70および/または
b. より多くのNADPHを生成するためのR81および/または
P1に関して、出発生物と比較して、以下の酵素の量および/または活性を増大させ、
かつ/または導入するステップ:
a. より多くのGluを生成するためのR25;および/または
P2に関して、出発生物と比較して、以下の酵素の量および/または活性を増大させ、
かつ/または導入するステップ:
a. より多くのOAAを生成するためのR33および/またはR36および/また
は
b. より多くのMALを生成するためのR30および/または
20
c. より多くのPyrを生成するためのR57;および/または
TRSに関して、出発生物と比較して、以下の酵素の量および/または活性を増大させ
、かつ/または導入するステップ:
a. チオスルフェートをスルフィドおよびスルファイトに代謝するためのR73お
よび/または
b. より多くの外因的なH2S2O3を細胞に取り込むためのR82および/また
は
SRSに関して、出発生物と比較して、以下の酵素の量および/または活性を増大させ
、かつ/または導入するステップ:
a. スルファイトをスルフィドに代謝するためのR74および/または
30
FCSに関して、出発生物と比較して、以下の酵素の量および/または活性を増大させ
、かつ/または導入するステップ:
a. 10−ホルミル−THFを生成するためのR75および/または
b. 10−ホルミル−THFからメチレン−THFを生成するためのR76および
/または
c. より多くのメチレン−THFを生成するためのR78および/または
MCSに関して、出発生物と比較して、以下の酵素の量および/または活性を増大させ
、かつ/または導入するステップ:
a. メタンチオールを用いてO−アセチル−ホモセリンをメチル−スルフヒドリル
化するためのR77および/または
40
SARSに関して、出発生物と比較して、以下の酵素(群)の量および/または活性を
増大させ、かつ/または導入するステップ:
a. より多くのスルファイトを生成するためのR80および/または
EMPに関して、出発生物と比較して、以下の酵素(群)の量および/または活性を少
なくとも部分的に低減させるステップ:
a. より少ないF−1,6−BPを生成するためのR11および/または
b. より少ないDHAPおよびGA3Pを生成するためのR13および/または
c. より少ないGA3Pを生成するためのR14および/または
d. より少ない1,3−PGを生成するためのR15および/または
e. より少ない3−PGを生成するためのR16および/または
50
(43)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
f. より少ない2−PGを生成するためのR17および/または
g. より少ないPEPを生成するためのR18および/または
h. より少ないPyrを生成するためのR19;および/または
TCAに関して、出発生物と比較して、以下の酵素(群)の量および/または活性を少
なくとも部分的に低減させるステップ:
a. より少ないAc−CoAを生成するためのR20および/または
b. より少ないCITを生成するためのR21および/または
c. より少ないCis−ACOを生成するためのR22および/または
d. より少ないICIを生成するためのR23および/または
e. より少ない2−OXOを生成するためのR24および/または
10
f. より少ないSUCC−CoAを生成するためのR26および/または
g. より少ないSUCCを生成するためのR27および/または
h. より少ないFUMを生成するためのR28および/または
i. より少ないMALを生成するためのR29および/または
j. より少ないOAAを生成するためのR30;および/または
GSに関して、出発生物と比較して、以下の酵素(群)の量および/または活性を少な
くとも部分的に低減させるステップ:
a. より少ないCITを生成するためのR21および/または
b. より少ないCis−ACOを生成するためのR22および/または
c. より少ないICIを生成するためのR23および/または
20
d. より少ないGLYOXYおよびSUCCを生成するためのR31および/また
は
e. より少ないMALを生成するためのR32および/または
f. より少ないFUMを生成するためのR28および/または
g. より少ないMALを生成するためのR29および/または
h. より少ないOAAを生成するためのR30;および/または
RCに関して、出発生物と比較して、以下の酵素(群)の量および/または活性を少な
くとも部分的に低減させるステップ:
a. R60;および/または
出発生物と比較して、以下の酵素(群)の量および/または活性を少なくとも部分的に
30
低減させるステップ:
a. R19;および/または
出発生物と比較して、以下の酵素(群)の量および/または活性を少なくとも部分的に
低減させるステップ:
a. R35;および/または
P3に関して、出発生物と比較して、以下の酵素(群)の量および/または活性を少な
くとも部分的に低減させるステップ:
a. R56;および/または
P4に関して、出発生物と比較して、以下の酵素(群)の量および/または活性を少な
くとも部分的に低減させるステップ:
40
a. R62;および/または
P7に関して、出発生物と比較して、以下の酵素(群)の量および/または活性を少な
くとも部分的に低減させるステップ:
a. R61、および/または
P8に関して、出発生物と比較して、以下の酵素(群)の量および/または活性を少な
くとも部分的に低減させるステップ:
a. R79。
【0148】
本発明の別の実施形態は、向上したメチオニン合成効率を有するコリネバクテリウム属
の微生物を作製するための方法であって、以下のステップを含む方法に関する:
50
(44)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
出発生物と比較して、以下の酵素(群)の量および/または活性を増大させ、かつ/ま
たは導入するステップ:
1. より多くのGLC−LACを生成するためのR3および/または
2. より多くの6−P−グルコネートを生成するためのR4および/または
3. より多くのRIB−5Pを生成するためのR5および/または
4. より多くのF6PおよびGA3Pを生成するためのR10および/または
5. より多くのG6Pを生成するためのR2および/または
6. より多くのH2SO3を生成するためのR55および/または
7. より多くのH2Sを生成するためのR58および/または
8. より多くのM−HPLを生成するためのR71および/または
10
9. より多くのメチレン−THFを生成するためのR72および/または
10. メチル−THFを生成するためのR78および/または
11. より多くのメチレン−THFを生成するためのR76および/または
12. より多くのNADPHを生成するためのR70および/または
13. より多くのNADPHを生成するためのR81および/または
14. より多くのGluを生成するためのR25および/または
15. より多くのOAAを生成するためのR33および/またはR36および/ま
たは
16. より多くのMALを生成するためのR30および/または
17. より多くのPyrを生成するためのR57および/または
20
18. スルフェートをスルファイトに代謝するためのR80および/または
19. チオスルフェート(thiosulafte)をスルフィドおよびスルファイトに代謝
するためのR73および/または
20. スルファイトをスルフィドに代謝するためのR74および/または
21. より多くの外因的なH2S2O3を細胞に取り込むためのR82および/ま
たは
22. 10−ホルミル−THFを生成するためのR75および/または
23. 10−ホルミル−THF(10-forml-THF)からメチレン−THFを生成する
ためのR76および/または
24. より多くのメチレン−THFを生成するためのR78および/または
30
25. メタンチオールを用いてO−アセチル−ホモセリンをメチル−スルフヒドリ
ル化するためのR77および/または
出発生物と比較して、以下の酵素(群)の量および/または活性を少なくとも部分的に
低減させるステップ:
1. より少ないF−1,6−BPを生成するためのR11および/または
2. より少ないPyrを生成するためのR19および/または
3. より少ないAc−CoAを生成するためのR20および/または
4. より少ないCITを生成するためのR21および/または
5. より少ない2−OXOを生成するためのR24および/または
6. より少ないSUCC−CoAを生成するためのR26および/または
40
7. より少ないSUCCを生成するためのR27および/または
8. より少ないGLYOXYおよびSUCCを生成するためのR31および/また
は
9. より少ないMALを生成するためのR32および/または
10. より少ないPEPを生成するためのR35および/または
10. より少ないTHFを生成するためのR79。
【0149】
本発明の別の実施形態は、向上したメチオニン合成効率を有するコリネバクテリウム属
の微生物を作製するための方法であって、以下のステップを含む方法に関する:
出発生物と比較して、以下の酵素の量および/または活性を増大させ、かつ/または導
50
(45)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
入するステップ:
1. より多くのGLC−LACを生成するためのR3および/または
2. より多くの6−P−グルコネートを生成するためのR4および/または
3. より多くのRIB−5Pを生成するためのR5および/または
4. より多くのF6PおよびGA3Pを生成するためのR10および/または
5. より多くのG6Pを生成するためのR2および
6. より多くのH2SO3を生成するためのR55および/または
7. より多くのH2Sを生成するためのR58および
8. より多くのM−HPLを生成するためのR71および/または
9. より多くのメチレン−THFを生成するためのR72および/または
10
10. メチル−THFを生成するためのR78および/または
11. より多くのメチレン−THFを生成するためのR76および/または
12. より多くのNADPHを生成するためのR70および/または
13. より多くのNADPHを生成するためのR81および/または
14. より多くのGluを生成するためのR25および/または
15. より多くのOAAを生成するためのR33および/またはR36
16. より多くのMALを生成するためのR30
17. より多くのPyrを生成するためのR57
18. スルフェートをスルファイトに代謝するためのR80および/または
19. 10−ホルミル−THFを生成するためのR75および/または
20
20. 10−ホルミル−THFからメチレン−THFを生成するためのR76およ
び/または
21. メタンチオールを用いてO−アセチル−ホモセリンをメチル−スルフヒドリ
ル化するためのR77および/または
出発生物と比較して、以下の酵素の量および/または活性を少なくとも部分的に低減さ
せるステップ:
1. より少ないF−1,6−BPを生成するためのR11および/または
2. より少ないPyrを生成するためのR19および/または
3. より少ないAc−CoAを生成するためのR20および/または
4. より少ないCITを生成するためのR21および/または
30
5. より少ない2−OXOを生成するためのR24および/または
6. より少ないSUCC−CoAを生成するためのR26および/または
7. より少ないSUCCを生成するためのR27および/または
8. より少ないGLYOXYおよびSUCCを生成するためのR31および/また
は
9. より少ないMALを生成するためのR32および/または
10. より少ないPEPを生成するためのR35および/または
11. より少ないTHFを生成するためのR79。
【0150】
これらの方法によって取得される任意の生物もまた、本発明の対象である。
40
【0151】
これらの方法に使用されるコリネバクテリウム微生物は、以下の微生物からなる群より
選択してよい:
コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)ATCC 13
032,
コリネバクテリウム・アセトグルタミカム(Corynebacterium acetoglutamicum)A
TCC 15806,
コリネバクテリウム・アセトアシドフィラム(Corynebacterium acetoacidophilum)
ATCC 13870,
コリネバクテリウム・サーモアミノゲネス(Corynebacterium thermoaminogenes)F
50
(46)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
ERM BP−1539,および
コリネバクテリウム・メラッセコラ(Corynebacterium melassecola)ATCC 17
965,
コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)KFCC100
65および
コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)ATCC216
08
コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)DSM 173
22。
【0152】
10
略語KFCCはKorean Federation of Culture Collectionを意味し、略語ATCCはA
merican Type Strain Culture Collectionを意味し、略語DSMはGerman Resource Cent
re for Biological Materialを意味する。
【0153】
遺伝的に改変されて、以下の経路を通る代謝流量が導入されているコリネバクテリウム
属の生物は特に興味深い:
グリシン切断系
トランスヒドロゲナーゼ変換
チオ硫酸レダクターゼ系
硫酸レダクターゼ系
20
ギ酸変換系
メタンチオール変換系。
【0154】
メタンチオール変換系をコリネバクテリウムに導入する場合、チオ硫酸レダクターゼ系
およびギ酸変換系は退化するかもしれない。これらの前述の追加経路系は、大腸菌中の効
率的メチオニン合成に最適な代謝流量に大きく寄与することが発見されている(下記参照
のこと)。理論的予測にしたがって、これらの代謝経路をコリネバクテリウム・グルタミ
カムに含ませると、コリネバクテリウム・グルタミカムのメチオニン合成効率がさらに向
上するはずであろう。
【0155】
30
ゆえに、本発明の一態様は、前述の経路のいずれかを通る代謝流量を増大させるために
遺伝的に改変されている生物に関する。
【0156】
本発明にしたがってコリネバクテリウム・グルタミカムを遺伝的に改変することによっ
て、メチオニン合成効率を向上させるためにこれらの生物中の代謝流量を改変して、これ
らの生物が、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも35
%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少な
くとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも8
0%または少なくとも85%の効率でメチオニンを生産することを特徴とするようにして
よい。
40
【0157】
本発明は、コリネバクテリウム・グルタミカムに関する限り、Rey et al.(2003)(上
記参照のこと)に記載のΔmcbRノックアウト株に関連しない。
【0158】
大腸菌
本発明の一態様は、出発生物と比較して、少なくとも1つの以下の経路を通る代謝流量
を増大させ、かつ/または導入するために遺伝的に改変されているエシェリキア属()の
微生物に関する:
ホスホトランスフェラーゼ系(PTS)および/または
ホスホトランスフェラーゼ系(PTS)および/または
50
(47)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
解糖(glyoclysis)(EMP)および/または
トリカルボン酸回路(TCA)および/または
グリオキシル酸短絡回路(GS)および/または
補充経路(AP)および/または
メチオニン合成経路(MS)および/または
セリン/システイン/グリシン系(SCGS)および/または
第1経路(P1)および/または
硫黄同化(SA)および/または
グリシン切断系(GCS)および/または
トランスヒドロゲナーゼ変換(THGC)および/または
10
チオ硫酸レダクターゼ系(TRS)および/または
亜硫酸レダクターゼ系(SRS)および/または
硫酸レダクターゼ系(SARS)および/または
ギ酸変換系(FCS)および/または
メタンチオール変換系(MCS)および/または
セリン/システイン/グリシン合成(SCGS)。
【0159】
さらに、向上したメチオニン合成効率を有するこれらの微生物は、場合により、出発生
物と比較して、少なくとも1つの以下の経路を通る少なくとも低減した代謝流量(該低減
した代謝流量は遺伝的改変によって達成してもよい)を特徴とする:
20
ペントースリン酸経路(PPP)
メチオニン合成(MS)および/または
第3経路(P3)および/または
第4経路(P4)および/または
第7経路(P7)および/または
第8経路(P8)。
【0160】
ある実施形態では、PPPを通る代謝流量を低減させずに増大させてよい。
【0161】
エシェリキア属の前述の微生物に加えて、本発明はまた、向上したメチオニン生産効率
30
を有するエシェリキア属の微生物を作製するための方法であって、以下のステップを含む
方法に関する:
生物の遺伝的改変により、出発生物と比較して、少なくとも1つの以下の経路を通る代
謝流量を増大させ、かつ/または導入するステップ:
ホスホトランスフェラーゼ系(PTS)および/または
解糖(glyoclysis)(EMP)および/または
トリカルボン酸回路(TCA)および/または
グリオキシル酸短絡回路(GS)および/または
補充経路(AP)および/または
メチオニン合成経路(MS)および/または
40
セリン/システイン/グリシン系(SCGS)および/または
第1経路(P1)および/または
硫黄同化(SA)および/または
グリシン切断系(GCS)および/または
トランスヒドロゲナーゼ変換(THGC)および/または
チオ硫酸レダクターゼ系(TRS)および/または
亜硫酸レダクターゼ系(SRS)および/または
硫酸レダクターゼ系(SARS)および/または
ギ酸変換系(FCS)および/または
メタンチオール変換系(MCS)および/または
50
(48)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
セリン/システイン/グリシン合成(SCGS)および/または
生物の遺伝的改変により、出発生物と比較して、少なくとも1つの以下の経路を通る代
謝流量を少なくとも部分的に低減させるステップ:
ペントースリン酸経路(PPP)
第3経路(P3)および/または
第4経路(P4)および/または
第7経路(P7)および/または
R19および/または
R35および/または
R79。
10
【0162】
本発明の別の態様は、向上したメチオニン合成効率を有するエシェリキア属の微生物を
作製するための方法であって、以下のステップを含む方法である:
PTSに関して、出発生物と比較して、以下の酵素の量および/または活性を増大させ
るステップ:
a. より多くのG6Pを生成するためのR1;および/または
EMOに関して、出発生物と比較して、以下の酵素(群)の量および/または活性を増
大させ、かつ/または導入するステップ:
a. より多くのF6Pを生成するためのR2および/または
b. より多くのF−1,6−BPを生成するためのR11および/または
20
c. より多くのDHAPおよびGA3Pを生成するためのR13および/または
d. より多くのGA3Pを生成するためのR14および/または
e. より多くの1,3−PGを生成するためのR15および/または
f. より多くの3−PGを生成するためのR16および/または
g. より多くの2−PGを生成するためのR17および/または
h. より多くのPEPを生成するためのR18および/または
i. より多くのPyrを生成するためのR19;および/または
TCAに関して、出発生物と比較して、以下の酵素(群)の量および/または活性を増
大させ、かつ/または導入するステップ:
a. より多くのAc−CoAを生成するためのR20および/または
30
b. より多くのCITを生成するためのR21および/または
c. より多くのCis−ACOを生成するためのR22および/または
d. より多くのICIを生成するためのR23および/または
e. より多くの2−OXOを生成するためのR24および/または
f. より多くのSUCC−CoAを生成するためのR26および/または
g. より多くのSUCCを生成するためのR27および/または
h. より多くのFUMを生成するためのR28および/または
i. より多くのMALを生成するためのR29および/または
j. より多くのOAAを生成するためのR30;および/または
APに関して、出発生物と比較して、以下の酵素の量および/または活性を増大させ、
40
かつ/または導入するステップ:
a. より多くのOAAを生成するためのR33および/または
MSに関して、出発生物と比較して、以下の酵素の量および/または活性を増大させ、
かつ/または導入するステップ:
a. より多くのAspを生成するためのR37および/または
b. より多くのHOMを生成するためのR39および/または
c. より多くのO−AC−HOMを生成するためのR40および/または
d. より多くのCYSTAを生成するためのR46および/または
e. より多くのASP−Pを生成するためのR47および/または
f. より多くのASP−SAを生成するためのR48および/または
50
(49)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
g. より多くのHOMOCYSを生成するためのR49および/または
h. より多くのMETを生成するためのR52および/または
i. より多くのMETexを生成するためのR53および/または
j. より多くのHOMOCYSを生成するためのR54および/または
SCGSに関して、出発生物と比較して、以下の酵素の量および/または活性を増大さ
せ、かつ/または導入するステップ:
a. より多くのM−THFおよびグリシンexを生成するためのR38および/ま
たは
b. より多くのO−AC−SERを生成するためのR44および/または
c. より多くのCYSを生成するためのR45および/または
10
GSに関して、出発生物と比較して、以下の酵素(群)の量および/または活性を増大
させ、かつ/または導入するステップ:
a. より多くのCITを生成するためのR21および/または
b. より多くのCis−ACOを生成するためのR22および/または
c. より多くのICIを生成するためのR23および/または
d. より多くのGLYOXYおよびSUCCを生成するためのR31および/また
は
e. より多くのMALを生成するためのR32および/または
f. より多くのFUMを生成するためのR28および/または
g. より多くのMALを生成するためのR29および/または
20
h. より多くのOAAを生成するためのR30;および/または
P1に関して、出発生物と比較して、以下の酵素の量および/または活性を増大させ、
かつ/または導入するステップ:
より多くのGluを生成するためのR25;および/または
SAに関して、出発生物と比較して、以下の酵素の量および/または活性を増大させ、
かつ/または導入するステップ:
a. より多くのH2SO3を生成するためのR55および/または
b. より多くのH2Sを生成するためのR58;および/または
GCSに関して、出発生物と比較して、以下の酵素の量および/または活性を増大させ
、かつ/または導入するステップ:
30
a. より多くのM−HPLを生成するためのR71および/または
b. より多くのメチレン−THFを生成するためのR72および/または
c. より多くのメチル−THFを生成するためのR78および/または
請求項THGCに関して、出発生物と比較して、以下の酵素の量および/または活性を
増大させ、かつ/または導入するステップ:
a. NADHからより多くのNADPHを生成するためのR70および/または
b. NADHからより多くのNADPHを生成するためのR81および/または
TRSに関して、出発生物と比較して、以下の酵素の量および/または活性を増大させ
、かつ/または導入するステップ:
a. チオスルフェートをスルフィドおよびスルファイトに代謝するためのR73お
40
よび/または
b. より多くの外因的なH2S2O3を細胞に取り込むためのR82および/また
は
SRSに関して、出発生物と比較して、以下の酵素の量および/または活性を増大させ
、かつ/または導入するステップ:
a. スルファイトをスルフィドに代謝するためのR74および/または
SARSに関して、出発生物と比較して、以下の酵素の量および/または活性を増大さ
せ、かつ/または導入するステップ:
a. スルフェートをスルファイトに代謝するためのR80および/または
FCSに関して、出発生物と比較して、以下の酵素の量および/または活性を増大させ
50
(50)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
、かつ/または導入するステップ:
a. 10−ホルミル−THFを生成するためのR75および/または
b. 10−ホルミル−THF(10-forml-THF)からメチレン−THFを生成するた
めのR76および/または
c. より多くのメチル−THFを生成するためのR78
MCSに関して、出発生物と比較して、以下の酵素の量および/または活性を増大させ
、かつ/または導入するステップ:
a. メタンチオールを用いてO−アセチル−ホモセリンをメチル−スルフヒドリル
化するためのR77および/または
SCGSに関して、出発生物と比較して、以下の酵素の量および/または活性を増大さ
10
せるステップ:
a. より多くのO−Ac−SERを生成するためのR44および/または
b. より多くのCYSを生成するためのR45;および/または
PPPに関して、出発生物と比較して、以下の酵素(群)の量および/または活性を増
大させるステップ:
a. より多くのGLC−LACを生成するためのR3および/または
b. より多くの6−P−グルコネートを生成するためのR4および/または
c. より多くのRIB−5Pを生成するためのR5および/または
d. より多くのXYL−5Pを生成するためのR6および/または
e. より多くのRIBO−5Pを生成するためのR7および/または
20
f. より多くのS7PおよびGA3Pを生成するためのR8および/または
g. より多くのE−4pおよびF6Pを生成するためのR9および/または
h. より少ないF6PおよびGA3Pを生成するためのR10および/または
i. より多くのG6Pを生成するためのR2;および/または
PPPに関して、ある実施形態において、出発生物と比較して、以下の酵素(群)の量
および/または活性を少なくとも部分的に低減させてもよいステップ:
j. より少ないGLC−LACを生成するためのR3および/または
k. より少ない6−P−グルコネートを生成するためのR4および/または
l. より少ないRIB−5Pを生成するためのR5および/または
m. より少ないXYL−5Pを生成するためのR6および/または
30
n. より少ないRIBO−5Pを生成するためのR7および/または
o. より少ないS7PおよびGA3Pを生成するためのR8および/または
p. より少ないE−4pおよびF6Pを生成するためのR9および/または
q. より少ないF6PおよびGA3Pを生成するためのR10および/または
r. より少ないG6Pを生成するためのR2;および/または
P3に関して、出発生物と比較して、以下の酵素(群)の量および/または活性を少な
くとも低減させるステップ:
a. R56;および/または
P4に関して、出発生物と比較して、以下の酵素(群)の量および/または活性を少な
くとも低減させるステップ:
40
a. R62;および/または
P7に関して、出発生物と比較して、以下の酵素(群)の量および/または活性を少な
くとも低減させるステップ:
a. R61。
【0163】
出発生物と比較して、以下の酵素(群)の量および/または活性を少なくとも低減させ
るステップ:
a. より少ないピルビン酸を生成するためのR19;および/または
b. より少ないPEPを生成するためのR35;および/または
c. より少ないテトラヒドロ葉酸を生成するためのR79。
50
(51)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
【0164】
エシェリキア属に関する本発明の別の実施形態は、向上したメチオニン合成効率を有す
るエシェリキア微生物を作製するための方法であって、以下のステップを含む方法に関す
る:
出発生物と比較して、以下の酵素の量および/または活性を増大させ、かつ/または導
入するステップ:
1. より多くのG6Pを生成するためのR1および/または
2. より多くのF6Pを生成するためのR2および/または
3. より多くのF−1,6−BPを生成するためのR11および/または
4. より多くのPyrを生成するためのR19および/または
10
5. より多くのAc−CoAを生成するためのR20および/または
6. より多くのCITを生成するためのR21および/または
7. より多くの2−OXOを生成するためのR24および/または
8. より多くのSUCC−CoAを生成するためのR26および/または
9. より多くのGLYOXYおよびSUCCを生成するためのR31および/また
は
10. より多くのMALを生成するためのR32および/または
11. より多くのGluを生成するためのR25および/または
12. より多くのH2SO3を生成するためのR55および/または
13. より多くのH2Sを生成するためのR58および/または
20
14. より多くのM−HPLを生成するためのR71および/または
15. より多くのM−THFを生成するためのR72および/または
16. より多くのメチル−THFを生成するためのR78および/または
17. より多くのメチレン−THFを生成するためのR76および/または
18. より多くのNADPHを生成するためのR70および/または
19. より多くのNADPHを生成するためのR81および/または
20. スルフェートをスルファイトに代謝するためのR80および/または
21. チオスルフェートをスルフィドおよびスルファイトに代謝するためのR73
および/または
22. より多くの外因的なH2S2O3を細胞に取り込むためのR82および/ま
30
たは
23. スルファイトをスルフィドに代謝するためのR74および/または
24. 10−ホルミル−THFを生成するためのR75および/または
25. 10−ホルミル−THF(10-forml-THF)からメチレン−THFを生成する
ためのR76および/または
26. メタンチオールを用いてO−アセチル−ホモセリンをメチル−スルフヒドリ
ル化するためのR77および/または
27. より多くのO−Ac−SERを生成するためのR44および/または
28. より多くのCYSを生成するためのR45;
出発生物と比較して、以下の酵素(群)の量および/または活性を少なくとも部分的に
40
低減させるステップ:
1. より少ないピルビン酸を生成するためのR19;および/または
2. より少ないPEPを生成するためのR35;および/または
3. より少ないテトラヒドロ葉酸を生成するためのR79。
【0165】
前述の方法のいずれかによって取得できるエシェリキア属の微生物は、例えば大腸菌を
含む群より選択される。
【0166】
大腸菌およびコリネバクテリウム・グルタミカム等の生物に関する実施形態では、以下
の酵素活性:R37、R38、R39、R40、R44、R45、R46、R47、R4
50
(52)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
8、R49、R52、R53、R54および/またはR58の過剰発現によって代謝流量
を創出する。任意の組み合わせの前述のRナンバーまたはこれらの触媒活性の部分である
任意の遺伝子が過剰発現されている大腸菌およびコリネバクテリウム・グルタミカム生物
もまた、本発明の対象を形成する。
【0167】
R70、R81、R71/R72、R73、R82、R74、R75、R76、R77
、R78、および/またはR80の任意の組み合わせが、R37、R38、R39、R4
0、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R52、R53、R54および
/またはR58とともに、またはこれらの触媒活性の部分である遺伝子が過剰発現されて
いる大腸菌およびコリネバクテリウム・グルタミカム等の生物もまた、本発明の対象を形
10
成する。
【0168】
R70、R81、R71/R72、R73、R82、R74、R75、R76、R77
、R78、およびR80からなる群の1酵素活性が、R37、R38、R39、R40、
R44、R45、R46、R47、R48、R49、R52、R53、R54および/ま
たはR58のいずれかとともに、またはこれらの触媒活性の部分である遺伝子が過剰発現
されている大腸菌およびコリネバクテリウム・グルタミカム等の生物もまた、本発明の対
象を形成する。
【0169】
R70、R81、R71/R72、R73、R82、R74、R75、R76、R77
20
、R78、およびR80からなる群の2酵素活性が、R37、R38、R39、R40、
R44、R45、R46、R47、R48、R49、R52、R53、R54および/ま
たはR58のいずれかとともに、またはこれらの触媒活性の部分である遺伝子が過剰発現
されている大腸菌およびコリネバクテリウム・グルタミカム等の生物もまた、本発明の対
象を形成する。
【0170】
R70、R81、R71/R72、R73、R82、R74、R75、R76、R77
、R78、およびR80からなる群の3酵素活性が、R37、R38、R39、R40、
R44、R45、R46、R47、R48、R49、R52、R53、R54および/ま
たはR58のいずれかとともに、またはこれらの触媒活性の部分である遺伝子が過剰発現
30
されている大腸菌およびコリネバクテリウム・グルタミカム等の生物もまた、本発明の対
象を形成する。
【0171】
R70、R81、R71/R72、R73、R82、R74、R75、R76、R77
、R78、およびR80からなる群の4酵素活性が、R37、R38、R39、R40、
R44、R45、R46、R47、R48、R49、R52、R53、R54および/ま
たはR58のいずれかとともに、またはこれらの触媒活性の部分である遺伝子が過剰発現
されている大腸菌およびコリネバクテリウム・グルタミカム等の生物もまた、本発明の対
象を形成する。
【0172】
40
R70、R81、R71/R72、R73、R82、R74、R75、R76、R77
、R78、およびR80からなる群の5酵素活性が、R37、R38、R39、R40、
R44、R45、R46、R47、R48、R49、R52、R53、R54および/ま
たはR58のいずれかとともに、またはこれらの触媒活性の部分である遺伝子が過剰発現
されている大腸菌およびコリネバクテリウム・グルタミカム等の生物もまた、本発明の対
象を形成する。
【0173】
R70、R81、R71/R72、R73、R82、R74、R75、R76、R77
、R78、およびR80からなる群の6酵素活性が、R37、R38、R39、R40、
R44、R45、R46、R47、R48、R49、R52、R53、R54および/ま
50
(53)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
たはR58のいずれかとともに、またはこれらの触媒活性の部分である遺伝子が過剰発現
されている大腸菌およびコリネバクテリウム・グルタミカム等の生物もまた、本発明の対
象を形成する。
【0174】
R70、R81、R71/R72、R73、R82、R74、R75、R76、R77
、R78、およびR80からなる群の7酵素活性が、R37、R38、R39、R40、
R44、R45、R46、R47、R48、R49、R52、R53、R54および/ま
たはR58のいずれかとともに、またはこれらの触媒活性の部分である遺伝子が過剰発現
されている大腸菌およびコリネバクテリウム・グルタミカム等の生物もまた、本発明の対
象を形成する。
10
【0175】
R70、R81、R71/R72、R73、R82、R74、R75、R76、R77
、R78、およびR80からなる群の8酵素活性が、R37、R38、R39、R40、
R44、R45、R46、R47、R48、R49、R52、R53、R54および/ま
たはR58のいずれかとともに、またはこれらの触媒活性の部分である遺伝子が過剰発現
されている大腸菌およびコリネバクテリウム・グルタミカム等の生物もまた、本発明の対
象を形成する。
【0176】
R70、R81、R71/R72、R73、R82、R74、R75、R76、R77
、R78、およびR80からなる群の9酵素活性が、R37、R38、R39、R40、
20
R44、R45、R46、R47、R48、R49、R52、R53、R54および/ま
たはR58のいずれかとともに、またはこれらの触媒活性の部分である遺伝子が過剰発現
されている大腸菌およびコリネバクテリウム・グルタミカム等の生物もまた、本発明の対
象を形成する。
【0177】
R70、R81、R71/R72、R73、R82、R74、R75、R76、R77
、R78およびR80からなる群の少なくとも1つの酵素活性が、R37、R38、R3
9、R40、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R52、R53、R5
4および/またはR58のいずれかとともに、またはこれらの触媒活性の部分である遺伝
子が過剰発現され、かつ、R19、R35およびR79からなる群の少なくとも1つの酵
30
素活性が低減されている大腸菌およびコリネバクテリウム・グルタミカム等の生物もまた
、本発明の対象を形成する。
【0178】
R70、R81、R71/R72、R73、R82、R74、R75、R76、R77
、R78およびR80からなる群の少なくとも2つの酵素活性が、R37、R38、R3
9、R40、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R52、R53、R5
4および/またはR58のいずれかとともに、またはこれらの触媒活性の部分である遺伝
子が過剰発現され、かつ、R19、R35およびR79からなる群の少なくとも1つの酵
素活性が低減されている大腸菌およびコリネバクテリウム・グルタミカム等の生物もまた
、本発明の対象を形成する。
40
【0179】
R70、R81、R71/R72、R73、R82、R74、R75、R76、R77
、R78およびR80からなる群の少なくとも3つの酵素活性が、R37、R38、R3
9、R40、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R52、R53、R5
4および/またはR58のいずれかとともに、またはこれらの触媒活性の部分である遺伝
子が過剰発現され、かつ、R19、R35およびR79からなる群の少なくとも1つの酵
素活性が低減されている大腸菌およびコリネバクテリウム・グルタミカム等の生物もまた
、本発明の対象を形成する。
【0180】
R70、R81、R71/R72、R73、R82、R74、R75、R76、R77
50
(54)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
、R78およびR80からなる群の少なくとも4つの酵素活性が、R37、R38、R3
9、R40、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R52、R53、R5
4および/またはR58のいずれかとともに、またはこれらの触媒活性の部分である遺伝
子が過剰発現され、かつ、R19、R35およびR79からなる群の少なくとも1つの酵
素活性が低減されている大腸菌およびコリネバクテリウム・グルタミカム等の生物もまた
、本発明の対象を形成する。
【0181】
R70、R81、R71/R72、R73、R82、R74、R75、R76、R77
、R78およびR80からなる群の少なくとも5つの酵素活性が、R37、R38、R3
9、R40、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R52、R53、R5
10
4および/またはR58のいずれかとともに、またはこれらの触媒活性の部分である遺伝
子が過剰発現され、かつ、R19、R35およびR79からなる群の少なくとも1つの酵
素活性が低減されている大腸菌およびコリネバクテリウム・グルタミカム等の生物もまた
、本発明の対象を形成する。
【0182】
R70、R81、R71/R72、R73、R82、R74、R75、R76、R77
、R78およびR80からなる群の少なくとも6つの酵素活性が、R37、R38、R3
9、R40、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R52、R53、R5
4および/またはR58のいずれかとともに、またはこれらの触媒活性の部分である遺伝
子が過剰発現され、かつ、R19、R35およびR79からなる群の少なくとも1つの酵
20
素活性が低減されている大腸菌およびコリネバクテリウム・グルタミカム等の生物もまた
、本発明の対象を形成する。
【0183】
R70、R81、R71/R72、R73、R82、R74、R75、R76、R77
、R78およびR80からなる群の少なくとも7つの酵素活性が、R37、R38、R3
9、R40、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R52、R53、R5
4および/またはR58のいずれかとともに、またはこれらの触媒活性の部分である遺伝
子が過剰発現され、かつ、R19、R35およびR79からなる群の少なくとも1つの酵
素活性が低減されている大腸菌およびコリネバクテリウム・グルタミカム等の生物もまた
、本発明の対象を形成する。
30
【0184】
R70、R81、R71/R72、R73、R82、R74、R75、R76、R77
、R78およびR80からなる群の少なくとも8つの酵素活性が、R37、R38、R3
9、R40、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R52、R53、R5
4および/またはR58のいずれかとともに、またはこれらの触媒活性の部分である遺伝
子が過剰発現され、かつ、R19、R35およびR79からなる群の少なくとも1つの酵
素活性が低減されている大腸菌およびコリネバクテリウム・グルタミカム等の生物もまた
、本発明の対象を形成する。
【0185】
R70、R81、R71/R72、R73、R82、R74、R75、R76、R77
40
、R78およびR80からなる群の少なくとも9つの酵素活性が、R37、R38、R3
9、R40、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R52、R53、R5
4および/またはR58のいずれかとともに、またはこれらの触媒活性の部分である遺伝
子が過剰発現され、かつ、R19、R35およびR79からなる群の少なくとも1つの酵
素活性が低減されている大腸菌およびコリネバクテリウム・グルタミカム等の生物もまた
、本発明の対象を形成する。
【0186】
R70、R81、R71/R72、R73、R82、R74、R75、R76、R77
、R78およびR80からなる群の少なくとも1つの酵素活性が、R37、R38、R3
9、R40、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R52、R53、R5
50
(55)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
4および/またはR58のいずれかとともに、またはこれらの触媒活性の部分である遺伝
子が過剰発現され、かつ、R19、R35およびR79からなる群の少なくとも2つの酵
素活性が低減されている大腸菌およびコリネバクテリウム・グルタミカム等の生物もまた
、本発明の対象を形成する。
【0187】
R70、R81、R71/R72、R73、R82、R74、R75、R76、R77
、R78およびR80からなる群の少なくとも1つの酵素活性が、R37、R38、R3
9、R40、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R52、R53、R5
4および/またはR58のいずれかとともに、またはこれらの触媒活性の部分である遺伝
子が過剰発現され、かつ、R19、R35およびR79からなる群の少なくとも3つの酵
10
素活性が低減されている大腸菌およびコリネバクテリウム・グルタミカム等の生物もまた
、本発明の対象を形成する。
【0188】
好ましい実施形態では、本発明は、上記のように例えば遺伝的改変によって、以下の経
路:FCSまたはGCSまたはMCSまたはTRSまたはTHGCの1つを通る代謝流量
が導入され、かつ/または増大しているコリネバクテリウム・グルタミカム生物に関する
。本発明の別の好ましい実施形態では、スルフィド(Sulfid)またはチオスルフェートを
外因的な硫黄供給源として使用して、これらの生物をさらに培養する。
【0189】
別の好ましい実施形態では、本発明は、以下の経路:FCSおよびGCS、FCSおよ
20
びMCS、FCSおよびTRS、またはFCSおよびTHGCを通る代謝流量が導入され
、かつ/または増大しているコリネバクテリウム・グルタミカム生物に関する。本発明の
別の好ましい実施形態では、スルフィドまたはチオスルフェートを外因的な硫黄供給源と
して使用して、これらの生物をさらに培養する。
【0190】
別の好ましい実施形態では、本発明は、以下の経路:FCSおよびGCSおよびTRS
、FCSおよびGCSおよびTRS、またはFCSおよびGCSおよびTHGCを通る代
謝流量が導入され、かつ/または増大しているコリネバクテリウム・グルタミカム生物に
関する。本発明の別の好ましい実施形態では、スルフィドまたはチオスルフェートを外因
的な硫黄供給源として使用して、これらの生物をさらに培養する。
30
【0191】
別の好ましい実施形態では、本発明は、以下の経路:FCSおよびGCSおよびMCS
およびTRS、またはFCSおよびGCSおよびMCSおよびTHGCを通る代謝流量が
導入され、かつ/または増大しているコリネバクテリウム・グルタミカム生物に関する。
本発明の別の好ましい実施形態では、スルフィドまたはチオスルフェートを外因的な硫黄
供給源として使用して、これらの生物をさらに培養する。
【0192】
別の好ましい実施形態では、本発明は、以下の経路:FCSおよびGCSおよびMCS
およびTRSおよびTHGCを通る代謝流量が導入され、かつ/または増大しているコリ
ネバクテリウム・グルタミカム生物に関する。本発明の別の好ましい実施形態では、スル
40
フィドまたはチオスルフェートを外因的な硫黄供給源として使用して、これらの生物をさ
らに培養する。
【0193】
別の好ましい実施形態では、本発明は、以下の経路:FCSおよびMCSおよびTRS
、またはFCSおよびMCSおよびTHGCを通る代謝流量が導入され、かつ/または増
大しているコリネバクテリウム・グルタミカム生物に関する。本発明の別の好ましい実施
形態では、スルフィドまたはチオスルフェートを外因的な硫黄供給源として使用して、こ
れらの生物をさらに培養する。
【0194】
別の好ましい実施形態では、本発明は、以下の経路:FCSおよびMCSおよびTRS
50
(56)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
およびTHGCを通る代謝流量が導入され、かつ/または増大しているコリネバクテリウ
ム・グルタミカム生物に関する。本発明の別の好ましい実施形態では、スルフィドまたは
チオスルフェートを外因的な硫黄供給源として使用して、これらの生物をさらに培養する
。
【0195】
別の好ましい実施形態では、本発明は、以下の経路:FCSおよびTRSおよびTHG
Cを通る代謝流量が導入され、かつ/または増大しているコリネバクテリウム・グルタミ
カム生物に関する。本発明の別の好ましい実施形態では、スルフィドまたはチオスルフェ
ートを外因的な硫黄供給源として使用して、これらの生物をさらに培養する。
【0196】
10
別の好ましい実施形態では、本発明は、以下の経路:FCSおよびMCSおよびTRS
、またはFCSおよびMCSおよびTHGCを通る代謝流量が導入され、かつ/または増
大しているコリネバクテリウム・グルタミカム生物に関する。本発明の別の好ましい実施
形態では、スルフィドまたはチオスルフェートを外因的な硫黄供給源として使用して、こ
れらの生物をさらに培養する。
【0197】
別の好ましい実施形態では、本発明は、以下の経路:FCSおよびMCSおよびTRS
およびTHGCを通る代謝流量が導入され、かつ/または増大しているコリネバクテリウ
ム・グルタミカム生物に関する。本発明の別の好ましい実施形態では、スルフィドまたは
チオスルフェートを外因的な硫黄供給源として使用して、これらの生物をさらに培養する
20
。
【0198】
別の好ましい実施形態では、本発明は、以下の経路:MCSおよびTRS、またはMC
SおよびTHGCを通る代謝流量が導入され、かつ/または増大しているコリネバクテリ
ウム・グルタミカム生物に関する。本発明の別の好ましい実施形態では、スルフィドまた
はチオスルフェートを外因的な硫黄供給源として使用して、これらの生物をさらに培養す
る。
【0199】
別の好ましい実施形態では、本発明は、以下の経路:MCSおよびTRSおよびTHG
Cを通る代謝流量が導入され、かつ/または増大しているコリネバクテリウム・グルタミ
30
カム生物に関する。本発明の別の好ましい実施形態では、スルフィドまたはチオスルフェ
ートを外因的な硫黄供給源として使用して、これらの生物をさらに培養する。
【0200】
別の好ましい実施形態では、本発明は、以下の経路:TRSおよびTHGCを通る代謝
流量が導入され、かつ/または増大しているコリネバクテリウム・グルタミカム生物に関
する。本発明の別の好ましい実施形態では、スルフィドまたはチオスルフェートを外因的
な硫黄供給源として使用して、これらの生物をさらに培養する。
【0201】
GCSの場合の遺伝的操作では、R71および/またはR72の発現を増加させること
ができる。THGSの場合、R70および/またはR81の発現を増加させることができ
40
る。TRSの場合、R73、R45a、R49および/またはR82の発現を増加させる
ことができる。MCSに関しては、R77の発現を増加させることができる。FCSの場
合、R75、R76および/またはR78の発現を増加させることができる。
【0202】
本発明の好ましい一実施形態を図10に記載する。この実施形態では、例えば既述の遺
伝的操作を用いて、出発生物と比較して、以下の経路:FCSおよびGCSおよびMCS
およびTRSおよびTHGCを通る代謝流量が増大し、かつ/または導入されている生物
を示す。硫黄供給源としてスルフィドおよびチオスルフェートを同時に使用することも考
慮される。
【0203】
50
(57)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
本発明の生物には、好ましくは、コリネバクテリウム属の微生物、特にコリネバクテリ
ウム・アセトアシドフィラム(Corynebacterium acetoacidophilum)、コリネバクテリウ
ム・アセトグルタミカム(C. acetoglutamicum)、コリネバクテリウム・エフィシエンス
(C. efficiens)、コリネバクテリウム・ジェジェキ(C. jejeki)、コリネバクテリウ
ム・アセトフィラム(C. acetophilum)、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス(C. a
mmoniagenes)、コリネバクテリウム・グルタミカム(C. glutamicum)、コリネバクテリ
ウム・リリウム(C. lilium)、コリネバクテリウム・ニトリロフィラス(C. nitrilophi
lus)またはコリネバクテリウム亜種(C. spec.)が含まれる。本発明の生物にはまた、
ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属のメンバー、例えばブレビバクテリウム・ハー
モニアゲネス(Brevibacterium harmoniagenes)、ブレビバクテリウム・ボタニカム(Br
10
evibacterium botanicum)、ブレビバクテリウム・ディバラティカム(B. divaraticum)
、ブレビバクテリウム・フラバム(B. flavam)、ブレビバクテリウム・ヘアリル(B. he
alil)、ブレビバクテリウム・ケトグルタミカム(B. ketoglutamicum)、ブレビバクテ
リウム・ケトソレダクタム(B. ketosoreductum)、ブレビバクテリウム・ラクトファー
メンタム(B. lactofermentum)、ブレビバクテリウム・リネンス(B. linens)、ブレビ
バクテリウム・パラフィノリティカム(B. paraphinolyticum)およびブレビバクテリウ
ム亜種(B. spec.)が含まれる。エシェリキア属に関しては、本発明は例えば大腸菌(E.
col)に関する。
【0204】
上記のように、特定の反応または特定の代謝経路を通る代謝流量は、それぞれの反応を
20
触媒する酵素の量および/または活性を増大または低減させることによって改変してよい
。
【0205】
酵素の量および/または活性を増大させることに関して、前述の生物等の宿主中のタン
パク質の量および/または活性を増大させるための、当技術分野において公知のすべての
方法を使用してよい。
【0206】
量および/または活性の増大または導入
量を増大させることに関して、2つの基本的シナリオを区別することができる。第一の
シナリオでは、外来型のそれぞれのタンパク質の発現によって酵素の量を増大させる。他
30
のシナリオでは、プロモーターおよび/またはエンハンサー要素の活性および/または、
転写、翻訳または翻訳後レベルに対するそれぞれのタンパク質の活性を調節する他の調節
活性、例えばリン酸化、スモイル化(sumoylation)、ユビキチン化(ubiquitylation)
等に影響を与えることによって、内因性タンパク質の発現を増加させる。
【0207】
例えば表1の酵素の量を単に増大させることに加えて、該酵素の向上した活性を提供す
る特定の突然変異を保持しうる酵素を使用することによって、該タンパク質の活性を増大
させてよい。そのような突然変異は、例えば、フィードバック阻害を担う酵素の領域を不
活性化する。例えば非保存的突然変異を導入することによってこれらを突然変異させるこ
とにより、該酵素はもはやフィードバック制御を提供せず、ゆえに、より多くの生成物が
40
生産されても酵素の活性は下方制御されない。該突然変異は、内因性コピーの該酵素中に
導入するか、あるいは対応する突然変異型の外来性酵素を過剰発現させることによって提
供してよい。そのような突然変異には、点突然変異、欠失または挿入が含まれる。点突然
変異は保存的または非保存的であってよい。さらに、欠失には、それぞれのタンパク質の
2つまたは3つのアミノ酸のみ∼ドメイン全体が含まれる。
【0208】
ゆえに、タンパク質の活性および量の増大は、例えば転写、翻訳、およびタンパク質レ
ベルで阻害性調節機構のスイッチをオフにするか、あるいは例えば内因性R3遺伝子を誘
導することによって、またはR3をコードする核酸を導入することによって、出発生物と
比較してこれらのタンパク質をコードする核酸の遺伝子発現を増加させることにより、異
50
(58)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
なる道筋で達成してよい。
【0209】
一実施形態では、出発生物と比較した酵素活性および量のそれぞれの増大は、そのよう
な酵素をコードする核酸の遺伝子発現の増加によって達成される。それぞれのデータベー
ス、例えばNCBI(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)、EMBL(http://www.embl.or
g)、またはExpasy(http://www.expasy.org/)から配列を取得してよい。表1に
例を挙げる。
【0210】
別の実施形態では、表1の酵素をコードする核酸を生物、好ましくはコリネバクテリウ
ム・グルタミカムまたは大腸菌に導入することによって、表1の酵素の量および/または
10
活性の増大を達成する。
【0211】
原理上、表1に列挙されるタンパク質の酵素活性を有する異なる生物のすべてのタンパ
ク質を使用することができる。イントロンを含有する真核生物供給源由来のそのような酵
素のゲノム核酸配列の場合、宿主生物が、対応するmRNAをスプライシング可能でない
か、あるいはスプライシング可能にすることができない事例では、対応するcDNA等の
プロセシング済み核酸配列を使用することができる。この説明で既述されるすべての核酸
は、例えば、RNA、DNAまたはcDNA配列でありうる。
【0212】
向上したメチオニン合成効率を有する生物を作製するための本発明に記載の一方法では
20
、上で規定される機能的または非機能的な、フィードバック制御型またはフィードバック
に無関係の酵素の1つをコードする核酸配列を微生物、例えばコリネバクテリウム・グル
タミカムまたは大腸菌それぞれに導入(transfer)する。この導入によって、それぞれ酵
素の発現の増加が生じ、相応して、所望の反応経路を通る、より多くの代謝流量が生じる
。
【0213】
本発明では、タンパク質の量および/または活性の増大または導入は、典型的に、以下
のステップを含む:
a)以下の核酸配列、好ましくはDNA配列を5’−3’方向で含むベクターを製造
するステップ:
30
− 本発明の生物中で機能的なプロモーター配列
− それに作動的に連結されている、表1のタンパク質またはその機能的等価部分
をコードするDNA配列
− 本発明の生物中で機能的な終結配列
b)ステップa)で得られたベクターをコリネバクテリウム・グルタミカムまたは大
腸菌等の本発明の生物に導入し、場合により、それぞれのゲノム内に組み込むステップ。
【0214】
本発明の範囲内で酵素の機能的等価部分が既述される場合、表1の酵素をコードする核
酸配列の断片であって、その発現が依然としてそれぞれの全長タンパク質の酵素活性を有
するタンパク質を生じさせる断片を意味する。
40
【0215】
本発明では、非機能的酵素とは、それぞれ機能的酵素およびその機能的等価部分と、そ
れぞれ同一の核酸配列およびアミノ酸配列を有するが、ある位置で、非機能的酵素がそれ
ぞれの反応を触媒できないか、あるいは非常に限定された程度にしか触媒できない影響を
有するヌクレオチドまたはアミノ酸の点突然変異、挿入または欠失を有する。これらの非
機能的酵素を、それぞれの反応を依然として触媒可能であるが、もはやフィードバック制
御されない酵素と混同(intermixed)してはならない。非機能的酵素にはまた、核酸配列
レベルまたはアミノ酸配列レベルで点突然変異、挿入、または欠失を保持し、かつ該酵素
の生理的結合パートナーと相互作用できないか、あるいはそれにもかかわらず該パートナ
ーと相互作用できる、表1のそのような酵素が含まれる。そのような生理的結合パートナ
50
(59)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
ーには、例えば、それぞれの基質が含まれる。非機能的突然変異体はいずれも、該突然変
異体の派生元である野生型酵素が触媒できる反応を触媒できない。
【0216】
本発明では、用語「非機能的酵素」は、それぞれアミノ酸レベルおよび核酸レベルで、
それぞれの機能的酵素に対する必須の配列ホモロジーを有さないそのようなタンパク質を
含まない。それぞれの反応を触媒できず、かつ、それぞれの酵素との必須の配列ホモロジ
ーを有さないタンパク質は、したがって、明らかに、本発明の用語「非機能的酵素」が意
味する対象ではない。本発明の範囲内で、非機能的酵素は不活性化型酵素または不活性酵
素とも称される。
【0217】
10
したがって、本発明に記載の、前述の点突然変異、挿入、および/または欠失を保持す
る表1の非機能的酵素は、本発明に記載の表1の野生型酵素またはその機能的等価部分に
対する必須の配列ホモロジーによって特徴付けられる。
【0218】
本発明では、実質的配列ホモロジーとは、概して、それぞれDNA分子またはタンパク
質のそれぞれ核酸配列またはアミノ酸配列が、表1のタンパク質またはその機能的等価部
分のそれぞれ核酸配列またはアミノ酸配列と少なくとも25%、少なくとも30%、少な
くとも40%、好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも60%、さら
に好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも80%、特に好ましくは少
なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%および最も好ましくは少なくとも98
20
%同一であることを示すと理解される。
【0219】
2つのタンパク質の同一性とは、それぞれのタンパク質の全長にわたるアミノ酸の同一
性、特にCLUSTAL法(Higgins et al., (1989), Comput. Appl. Biosci., 5(2), 151)を
利用するLasergeneソフトウェア(DNA Star, Inc., Madison, Wisconsin (USA))を活用
した比較によって算出される同一性であると理解される。
【0220】
ホモロジーもまた、CLUSTAL法(Higgins et al., (1989), Comput. Appl. Biosci., 5(
2), 151)を利用するLasergeneソフトウェア(DNA Star, Inc., Madison, Wisconsin (US
A))を活用して算出することができる。
30
【0221】
DNA配列の同一性も相応に理解されるものとする。
【0222】
前述の方法を使用して、機能的または非機能的な、フィードバック制御型またはフィー
ドバックに無関係の表1の酵素またはその機能的等価部分をコードするDNA配列の発現
を増加させることができる。プロモーターおよび終結配列等の調節配列を含むそのような
ベクターの使用は当業者に公知である。さらに、当業者は、ステップa)で得られるベク
ターをどのようにコリネバクテリウム・グルタミカムまたは大腸菌等の生物に導入できる
か、およびベクターがそれらのゲノム内へ組み込み可能であるためにどの特性を有する必
要があるかを承知している。
40
【0223】
コリネバクテリウム・グルタミカム等の生物中の酵素含量を、例えば大腸菌等の別の生
物由来の酵素をコードする核酸を導入することによって増大させる場合、例えば大腸菌由
来の該核酸配列によってコードされるアミノ酸配列の導入を、該遺伝暗号にしたがって該
ポリペプチド配列を、生物特有のコドン使用頻度に起因して、より高頻度で使用されるコ
ドンを主に含む核酸配列にバックトランスレーション(back-translation)することによ
って行うことが賢明である。コドン使用頻度は、関連生物の他の既知遺伝子についてのコ
ンピュータ評価によって決定することができる。
【0224】
本発明では、表1の酵素をコードする核酸のそれぞれ遺伝子発現および活性の増加とは
50
(60)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
また、生物、特にコリネバクテリウム・グルタミカムまたは大腸菌の内因性のそれぞれの
内因性酵素の発現の操作であると理解される。これは、例えばこれらの酵素をコードする
遺伝子に関するプロモーターDNA配列を改変することによって達成することができる。
これらの酵素の改変された、好ましくは向上した発現率を生じさせるそのような改変は、
DNA配列の欠失または挿入によって達成することができる。
【0225】
内因性遺伝子のプロモーター配列の改変は、通常、該遺伝子の発現量の変化を生じさせ
、したがって細胞または生物中の検出可能な活性の変化を生じさせる。
【0226】
さらに、内因性遺伝子のそれぞれ改変された発現および増加した発現は、形質転換生物
10
中に存在しない、これらの遺伝子のプロモーターと相互作用する調節タンパク質によって
達成することができる。そのような調節因子は、例えばWO 96/06166に記載のように、D
NA結合ドメインおよび転写アクチベータードメインからなるキメラタンパク質でありう
る。
【0227】
内因性遺伝子の活性および含量を増大させるための別の可能性は、例えば過剰発現によ
って、該内因性遺伝子の転写に関与する転写因子を上方制御することである。転写因子を
過剰発現するための手段は当業者に公知であり、さらに、本発明の範囲内で表1の酵素に
関して開示されている。
【0228】
20
さらに、内因性遺伝子の活性の改変は、該内因性遺伝子コピーのターゲティング突然変
異誘発によって達成することができる。
【0229】
表1の酵素をコードする内因性遺伝子の改変は、該酵素の翻訳後修飾に影響を与えるこ
とによって達成することもできる。これは、例えば該酵素の翻訳後修飾に関与するキナー
ゼまたはホスファターゼ等の酵素の活性を、過剰発現または遺伝子サイレンシング等の対
応する手段を用いて調節することによって生じうる。
【0230】
別の実施形態では、酵素の効率を改善してもよいし、あるいはそのアロステリック調節
領域を破壊して、化合物の生産のフィードバック阻害を妨げてもよい。同様に、分解酵素
30
を除去または、置換、欠失、もしくは付加によって改変して、細胞の生存性を損なうこと
なく表1の所望の酵素に関するその分解活性が減少するようにしてよい。各事例で、これ
らの所望の精製化学製品の1つについての全体の収率または生産率を増加させてよい。
【0231】
表1のタンパク質およびヌクレオチド分子のそのような改変によって、他の精製化学製
品、例えばシステインまたはグルタチオン等の他の硫黄含有化合物、他のアミノ酸、ビタ
ミン、補助因子、栄養補給食品(nutraceuticals)、ヌクレオチド、ヌクレオシド、およ
びトレハロースの生産を改善することも可能である。任意の1化合物の代謝は、必然的に
、細胞内の他の生合成経路および分解経路と絡み合い、1経路中の必要な補助因子、中間
体、または基質は、おそらく別のそのような経路によって供給または制限される。したが
40
って、1以上の表1のタンパク質の活性をモジュレートすることによって、メチオニンを
生じさせる経路に加えて別の精製化学製品の生合成経路または分解経路の活性の生産また
は効率が影響を受ける可能性がある。
【0232】
酵素発現および機能はまた、異なる代謝プロセス由来の化合物の細胞レベルに基づいて
調節してよく、アミノ酸およびヌクレオチド等の基本的生育に必要な分子の細胞レベルは
大規模培養中の微生物の生存性に決定的に影響するかもしれない。ゆえに、表1のアミノ
酸生合成酵素をモジュレートして、それらがもはやフィードバック阻害に応答性でないよ
うにするか、あるいはそれらの効率または代謝回転が改善されるようにすることは、メチ
オニン生産の経路を通る、より高い代謝流量を生じさせるはずであろう。本発明の理論的
50
(61)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
方法は、これらの栄養素、代謝産物等の効果をモデル生物内に取り込むことを支援し、ゆ
えに、メチオニン合成の効率を向上させるために遺伝的に改変すべき代謝経路に対する有
益なガイダンスを提供する。
【0233】
表1の酵素の量および/または活性を増大させるか、あるいは導入するためのこれらの
前述のストラテジーは限定的であることを意図しない;これらのストラテジーに関するバ
リエーションは当業者に自明である。
【0234】
酵素の量および/または活性の低減
表1の任意の酵素の量および/または活性の低減に関して、種々のストラテジーが同様
10
に利用可能である。
【0235】
表1の内因性酵素の発現は、例えば、該遺伝子のプロモーター配列に特異的に結合する
アプタマーの発現によって調節することができる。刺激性または抑制性プロモーター領域
に対するアプタマーの結合に応じて、表1の酵素の量および、ゆえにこの事例では活性が
増大または低減する。
【0236】
アプタマーは、酵素自体に特異的に結合し、かつ例えばそれぞれの酵素の触媒中心に結
合することによって該酵素の活性を低減させるように設計することもできる。アプタマー
の発現は、通常、ベクターベースの過剰発現(上記参照のこと)によって達成され、なら
20
びに、当業者に周知の、アプタマーの設計および選択によって達成される(Famulok et a
l., (1999) Curr Top Microbiol Immunol., 243,123-36)。
【0237】
さらに、表1の内因性酵素の量および活性の低減は、当業者に周知の種々の実験手段を
用いて達成することができる。これらの手段は、通常、用語「遺伝子サイレンシング」の
下にまとめられる。例えば、内因性遺伝子の発現は、酵素またはその部分をアンチセンス
方向でコードするDNA配列を有する前述のベクターをコリネバクテリウム・グルタミカ
ムおよび大腸菌等の生物に導入することによってサイレンシングすることができる。これ
は、そのようなベクターが細胞で転写されるとRNAが生じ、該RNAは該内因性遺伝子
によって転写されたmRNAとハイブリダイズでき、したがってその翻訳を妨げるという
30
事実に基づく。
【0238】
アンチセンス方向でクローニングされた核酸に作動的に連結されている調節配列であっ
て、種々の細胞タイプにおいてアンチセンスRNA分子の継続発現を導く調節配列、例え
ばウイルスプロモーターおよび/またはエンハンサーを選択することができ、あるいはア
ンチセンスRNAの構成的、組織特異的または細胞タイプ特異的発現を導く調節配列を選
択することができる。該アンチセンス発現ベクターは、組換えプラスミド、ファージミド
または弱毒化ウイルスの形式でありうる。該形式において、アンチセンス核酸は高性能調
節領域のコントロール下で生産され、その活性は、該ベクターの導入対象である細胞タイ
プによって影響されうる。アンチセンス遺伝子を使用する遺伝子発現の調節についての考
40
察に関しては、Weintraub, H. etal., Antisense RNA as a molecular tool for genetic
analysis, Reviews-Trends in Genetics, Vol.1 (1) 1986を参照のこと。
【0239】
原理上、アンチセンスストラテジーはリボザイム法と連結することができる。リボザイ
ムは触媒活性のRNA配列であり、アンチセンス配列と連結されると、触媒作用で標的配
列を切断する(Tanner et al., (1999) FEMS Microbiol Rev. 23 (3), 257-75)。これに
よりアンチセンスストラテジーの効率を向上させることができる。
【0240】
植物では、RNA干渉または、同時抑制(co-suppression)として知られているプロセ
スによって遺伝子サイレンシングを達成してよい。
50
(62)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
【0241】
別の方法は、RNA/DNAオリゴヌクレオチドを生物に導入することによって、内因
性遺伝子中にナンセンス突然変異を導入する(Zhu et al., (2000) Nat. Biotechnol. 18
(5), 555-558)か、あるいは相同組換えを活用してノックアウト突然変異体を作製する
(Hohn et al., (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 96, 8321-8323.)ことである。
【0242】
相同組換え微生物を作製するために、欠失、付加または置換が導入されることによって
、内因性遺伝子が改変、例えば機能的に破壊されている、表1の酵素をコードする遺伝子
の少なくとも部分を含有するベクターを調製する。
【0243】
10
好ましくは、この内因性遺伝子はコリネバクテリウム・グルタミカムまたは大腸菌遺伝
子であるが、関連細菌由来のホモログであるか、あるいは酵母または植物供給源由来のホ
モログでさえあってよい。一実施形態では、相同組換え時に、内因性遺伝子が機能的に破
壊される(すなわち、もはや機能的タンパク質をコードしない;「ノックアウト」ベクタ
ーとも称される)ようにベクターを設計する。あるいは、相同組換え時に、内因性遺伝子
が突然変異されるか、あるいは別の様式で改変されるが、依然として機能的タンパク質を
コードするようにベクターを設計することができる(例えば、上流調節領域を改変するこ
とによって、表1の内因性酵素の発現を改変することができる)。相同組換えベクター中
では、内因性遺伝子の改変部分の5’および3’末端に該内因性遺伝子の追加の核酸が隣
接していて、該ベクターによって運搬される外来性遺伝子と該(微)生物中の内因性遺伝
20
子の間で相同組換えが生じることを可能にする。追加のフランキング内因性核酸は、該内
因性遺伝子との好結果の相同組換えに十分な長さを有する。典型的に、数キロベースのフ
ランキングDNA(5’および3’末端の両方において)をベクターに含ませる(例えば
、相同組換えベクターの説明に関しては、Thomas, K. R., and Capecchi, M. R. (1987)
Cell 51: 503を参照のこと)。
【0244】
ベクターを微生物に(例えばエレクトロポレーションによって)導入し、当技術分野に
おいて公知の技術を使用して、導入内因性遺伝子が表1の内因性酵素と相同組換えされて
いる細胞を選択する。
【0245】
30
別の実施形態では、宿主細胞中の表1の酵素に関する内因性遺伝子を破壊(例えば相同
組換えまたは当技術分野において公知の他の遺伝的手段によって)し、そのタンパク質産
物の発現が生じないようにする。別の実施形態では、宿主細胞中の表1の酵素の内因性ま
たは導入遺伝子は、1以上の点突然変異、欠失、または逆位(inversions)によって改変
されているが、依然として機能的酵素をコードする。さらに別の実施形態では、(微)生
物中の表1の酵素に関する内因性遺伝子の1以上の調節領域(例えばプロモーター、リプ
レッサー、またはインデューサー(inducer))が改変(例えば欠失、トランケーション
、逆位、または点突然変異によって改変)され、内因性遺伝子の発現がモジュレートされ
るようになっている。当業者は、表1の酵素をコードする2以上の遺伝子を含有する宿主
細胞およびタンパク質改変物が、本発明の方法を使用して容易に作成でき、それらが本発
40
明に含まれるものとされることを認識する。
【0246】
さらに、特異的DNA結合因子、例えばジンクフィンガー転写因タイプの因子を用いて
、遺伝子を抑制する(さらには遺伝子を過剰発現させる)ことが可能である。さらに、標
的タンパク質自体を阻害する因子を細胞に導入することができる。タンパク質結合因子は
、例えば、前述のアプタマーであってよい(Famulok et al., (1999) Curr Top Microbio
l Immunol. 243, 123-36)。
【0247】
別のタンパク質結合因子であって、生物中で発現されると、表1の酵素の量および/ま
たは活性を低減させる因子として、酵素特異的抗体を考慮してよい。モノクローナル、ポ
50
(63)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
リクローナル、または組換え型の酵素特異的抗体の製造は標準的プロトコルにしたがう(
Guide to Protein Purification, Meth. Enzymol. 182, pp. 663-679 (1990), M. P. Deu
tscher, ed.)。抗体の発現も文献から公知である(Fiedler et al., (1997) Immunotech
nology 3, 205-216; Maynard and Georgiou (2000) Annu. Rev. Biomed. Eng. 2, 339-76
)。
【0248】
上記技術は当業者に周知である。したがって、当業者はまた、例えばアンチセンス法に
使用される核酸構築物がどのサイズを有する必要があるか、およびそれぞれの核酸配列が
どの相補性、ホモロジーまたは同一性を有する必要があるかを承知している。用語、相補
性、ホモロジー(相同性)、および同一性は当業者に公知である。
10
【0249】
本発明の範囲内で、配列ホモロジーおよびホモロジーとはそれぞれ、概して、それぞれ
DNA分子またはタンパク質のそれぞれ核酸配列またはアミノ酸配列が、それぞれ既知の
DNAもしくはRNA分子またはタンパク質のそれぞれ核酸配列またはアミノ酸配列と少
なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、
さらに好ましくは少なくとも60%、さらに好ましくは少なくとも70%、さらに好まし
くは少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも9
5%および最も好ましくは少なくとも98%同一であることを意味すると理解される。本
明細書中のホモロジーおよび同一性の程度は、それぞれ、コード配列の全長を表す。
【0250】
20
相補性という用語は、2つの相補的塩基間の水素結合によって別の核酸分子とハイブリ
ダイズする核酸分子の能力を説明する。当業者は、2つの核酸分子が、互いにハイブリダ
イズ可能であるために、100%の相補性を有する必要はないことを承知している。別の
核酸配列とハイブリダイズできる核酸配列は、該他の核酸配列と、それぞれ、少なくとも
30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、好ましくは少なくと
も70%、特に好ましくは少なくとも80%、さらに特に好ましくは少なくとも90%、
特に好ましくは少なくとも95%および最も好ましくは少なくとも98または100%相
補的であることが好ましい。
【0251】
核酸分子は、同一のヌクレオチドを同一の5’−3’方向で有すれば、同一である。
30
【0252】
内因性mRNA配列とアンチセンス配列のハイブリダイゼーションは、典型的に、in
vivo細胞条件下で、またはin vitroで生じる。本発明では、ハイブリダイゼ
ーションは、特異的ハイブリダイゼーションを保証するために十分にストリンジェントな
条件下でin vivoまたはin vitroで実行される。
【0253】
ストリンジェントなin vitroハイブリダイゼーション条件は当業者に公知であ
り、文献から入手することができる(例えばSambrook et al., Molecular Cloning, Cold
Spring Harbor Pressを参照のこと)。用語「特異的ハイブリダイゼーション」とは、こ
の核酸配列が例えばDNAまたはRNA分子の複合混合物の部分である場合に、ストリン
40
ジェントな条件下で特定の核酸配列に対して分子が優先的に結合する事例を表す。
【0254】
したがって、用語「ストリンジェントな条件」とは、核酸配列が標的配列に優先的に結
合するが、他の配列には結合しないか、あるいは少なくともかなり低下した程度にしか結
合しない条件を表す。
【0255】
ストリンジェントな条件は状況に依存する。長い配列ほど、高い温度で特異的にハイブ
リダイズする。一般に、ストリンジェントな条件は、特定イオン強度および特定pH値で
、ハイブリダイゼーション温度が具体的配列の融解温度(Tm)の約5℃下であるように
選択される。Tmは、標的配列に相補的な分子の50%が該標的配列とハイブリダイズす
50
(64)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
る(特定pH値、特定イオン強度および特定核酸濃度での)温度である。典型的に、スト
リンジェントな条件は、0.01∼1.0Mの範囲のナトリウムイオン(または別の塩の
イオン)の塩濃度および7.0∼8.3の範囲のpH値を含む。該温度は、短い分子(例
えば10∼50の範囲のヌクレオチドを含むそのような分子)では、少なくとも30℃で
ある。さらに、ストリンジェントな条件は、例えばホルムアミド(form amide)等の不安
定化剤の添加を含みうる。典型的なハイブリダイゼーションおよび洗浄バッファーは以下
の組成を有する。
【0256】
プレハイブリダイゼーション溶液: 0.5% SDS
5×SSC
10
50mM NaPO4,pH6.8
0.1% Na−ピロリン酸
5×デンハート試薬
100μg/サケ精子
ハイブリダイゼーション溶液: プレハイブリダイゼーション溶液
1×106cpm/ml プローブ(5∼10分95℃
)
20×SSC: 3M NaCl
0.3M クエン酸ナトリウム
HClでpH7に調節
20
50×デンハート試薬: 5g フィコール
5g ポリビニルピロリドン
5g ウシ血清アルブミン
ad 500ml A.dest。
【0257】
典型的なハイブリダイゼーション手順は以下の通りである:
任意選択: 1×SSC/0.1% SDS中で65℃で30分間洗浄ブロット
プレハイブリダイゼーション: 50∼55℃で少なくとも2時間
ハイブリダイゼーション: 55∼60℃で一晩
洗浄: 05分間 2×SSC/0.1% SDS
30
ハイブリダイゼーション温度
30分間 2×SSC/0.1% SDS
ハイブリダイゼーション温度
30分間 1×SSC/0.1% SDS
ハイブリダイゼーション温度
45分間 0.2×SSC/0.1% SDS 65℃
5分間 0.1×SSC 室温。
【0258】
用語「センス」および「アンチセンス」ならびに「アンチセンス方向」は当業者に公知
である。さらに、当業者は、アンチセンス法に使用されるべき核酸分子がどれだけの長さ
40
である必要があるか、およびそれらがその標的配列に関してどのホモロジーまたは相補性
を有する必要があるかを承知している。
【0259】
したがって、当業者はまた、遺伝子サイレンシング法に使用される核酸分子がどれだけ
の長さである必要があるかを承知している。アンチセンス目的では、100ヌクレオチド
、80ヌクレオチド、60ヌクレオチド、40ヌクレオチドおよび20ヌクレオチドの配
列長にわたる相補性で十分である。さらに、より長いヌクレオチド長であれば確実に十分
である。前述の方法の併用も考えられる。
【0260】
本発明にしたがって、生物中で活性なプロモーターに5’−3’方向で作動的に連結さ
50
(65)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
れているDNA配列を使用すれば、概して、該生物の細胞への導入後に、コード配列の過
剰発現を可能にするか、あるいは内因性核酸配列およびその発現対象のタンパク質それぞ
れの抑制または競合および妨害を生じさせるベクターを構築することができる。
【0261】
特定の酵素の活性は、生物中でその非機能的突然変異体を過剰発現させることによって
低減させてもよい。ゆえに、目的の反応を触媒できないが、例えば基質または補助因子に
結合できる非機能的突然変異体は、過剰発現によって、内因性酵素を打ち負かし、したが
って該反応を阻害することができる。宿主細胞中の酵素の量および/または活性を低減さ
せるための別の方法は当業者に周知である。
【0262】
10
ベクターおよび宿主細胞
本発明の別の態様は、表1の酵素(またはその部分)をコードする核酸またはその組み
合わせを含有するベクター、好ましくは発現ベクターに関する。本明細書中で使用される
用語「ベクター」とは、自身が連結されている別の核酸を輸送可能な核酸分子を表す。
【0263】
ベクターの1タイプは「プラスミド」であり、プラスミドは、追加のDNAセグメント
をライゲートできる環状二本鎖DNAループを表す。別のタイプのベクターはウイルスベ
クターであり、ウイルスベクターでは、追加のDNAセグメントをウイルスゲノム中にラ
イゲートすることができる。
【0264】
20
あるベクターは、導入対象の宿主細胞中で自律複製可能である(例えば細菌複製起点を
有する細菌ベクターおよびエピソーム性哺乳類ベクター)。他のベクター(例えば非エピ
ソーム性哺乳類ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、そ
れによって宿主ゲノムとともに複製される。さらに、あるベクターは、自身が作動的に連
結されている対象の遺伝子の発現を指揮することができる。
【0265】
そのようなベクターは本明細書中で「発現ベクター」と称される。
【0266】
一般に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターはプラスミド形式であることが
多い。本明細書中では、「プラスミド」および「ベクター」は交換可能に使用することが
30
できる。プラスミドは最も一般的に使用されるベクターの形式であるからである。しかし
、本発明は、同等の機能を提供する、そのような他の形式の発現ベクター、例えばウイル
スベクター(例えば複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス
)を含むものとする。
【0267】
本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞中のそれぞれの核酸の発現に好適な形式の、
表1の酵素をコードする核酸を含んでよく、それは、組換え発現ベクターが1以上の調節
配列を含み、該調節配列は、発現に使用される宿主細胞に基づいて選択され、発現対象の
核酸配列に作動的に連結されていることを意味する。
【0268】
40
組換え発現ベクター内で、「作動的に連結されている」とは、目的のヌクレオチド配列
が、調節配列(群)に連結され、該ヌクレオチド配列の発現が(例えばin vitro
転写/翻訳系または、該ベクターが宿主細胞に導入された場合の宿主細胞において)可能
であるようになっていることを意味するものとする。用語「調節配列」には、プロモータ
ー、リプレッサー結合部位、アクチベーター結合部位、エンハンサーおよび他の発現調節
エレメント(例えばターミネーター、ポリアデニル化シグナル、またはmRNA二次構造
の他の要素)が含まれるものとする。そのような調節配列は、例えば、Goeddel; Gene Ex
pression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA (1
990)に記載されている。調節配列には、多数のタイプの宿主細胞におけるヌクレオチド配
列の構成的発現を導くものおよび特定の宿主細胞のみにおいてヌクレオチド配列の発現を
50
(66)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
導くものが含まれる。好ましい調節配列は、例えば、cos−、tac−、trp−、t
et−、trp−、tet−、lpp−、lac−、lpp−lac−、lacIq−、
T7−、T5−、T3−、gal−、trc−、ara−、SP6−、arny、SP0
2、e−Pp−または(ore)PL等のプロモーター(好ましくは細菌において使用され
る)である。追加の調節配列は、例えば、ADC1、MFa、AC、P−60、CYC1
、GAPDH、TEF、rp28、ADH等の酵母および真菌由来のプロモーター、Ca
MV/35S、SSU、OCS、lib4、usp、STLS1、B33、nosまたは
ユビキチン−もしくはファゼオリン−プロモーター等の植物由来のプロモーターである。
人工プロモーターを使用することも可能である。当業者は、発現ベクターの設計が、形質
転換対象の宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現のレベル、等の要因に依存しうるこ
10
とを理解する。本発明の発現ベクターを宿主細胞に導入することによって、表1の酵素を
コードする核酸によってコードされるタンパク質またはペプチド(融合タンパク質または
ペプチドを含む)を生産することができる。
【0269】
本発明の組換え発現ベクターは、原核細胞または真核細胞中で表1の酵素を発現させる
ために設計することができる。例えば、表1の酵素に関する遺伝子は、コリネバクテリウ
ム・グルタミカムおよび大腸菌等の細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウイルス発現ベクター
を使用)、酵母および他の真菌細胞(Romanos, M. A. et al. (1992), Yeast 8: 423-488
; van den Hondel, C. A. M.J. J. et al.(1991) in: More Gene Manipulations in Fung
i,J. W.Bennet & L. L. Lasure, eds.,p. 396-428: Academic Press: San Diego; および
20
van den Hondel, C. A. M. J. J. & Punt, P. J.(1991) in: Applied Molecular Genetic
s of Fungi, Peberdy, J. F. etal., eds., p. 1-28, Cambridge University Press: Cam
bridgeを参照のこと)、藻類および多細胞性植物細胞(Schmidt, R. and Willmitzer, L.
(1988) Plant Cell Rep.: 583-586を参照のこと)中で発現させることができる。好適な
宿主細胞は、Goeddel, Gene Expression Technology : Methods in Enzymology 185, Aca
demic Press, San Diego, CA (1990)でさらに考察されている。あるいは、例えばT7プ
ロモーター調節配列およびT7ポリメラーゼを使用して、組換え発現ベクターをin v
itroで転写および翻訳することができる。
【0270】
原核生物中のタンパク質の発現は、融合または非融合タンパク質の発現を指揮する構成
30
的または誘導性プロモーターを含有するベクターを用いて実行されることが最も多い。
【0271】
融合ベクターでは、該ベクター中でコードされるタンパク質にいくつかのアミノ酸が付
加される。該アミノ酸は、通常、組換えタンパク質のアミノ末端に付加されるが、C末端
にも付加され、あるいは該タンパク質の好適な領域内に融合される。そのような融合ベク
ターは、典型的に、以下の3つの目的に役立つ:1)組換えタンパク質の発現を増加させ
るため;2)組換えタンパク質の溶解性を増加させるため;および3)アフィニティー精
製におけるリガンドとして働くことにより組換えタンパク質の精製を支援するため。融合
発現ベクターでは、融合部分および組換えタンパク質の連結部に、融合タンパク質の精製
後に該融合部分から該組換えタンパク質を分離することを可能にするためのタンパク質分
40
解による切断部位が導入されることが多い。そのような酵素、およびその同系の(cognat
e)認識配列には、因子Xa、トロンビンおよびエンテロキナーゼが含まれる。
【0272】
典型的な融合発現ベクターには、pGEX(Pharmacia Biotech Inc; Smith, D. B. an
d Johnson, K. S. (1988) Gene 67: 31-40)、pMAL(New England Biolabs, Beverly
, MA)およびpRIT5(Pharmacia, Piscataway, NJ)が含まれ、それぞれグルタチオ
ンS−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質、またはプロテイン
Aと融合している。
【0273】
好適な誘導性非融合大腸菌発現ベクターの例には、pTrc(Amann et al., (1988) G
50
(67)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
ene 69: 301-315)、pLG338、pACYC184、pBR322、pUC18、p
UC19、pKC30、pRep4、pHSl、pHS2、pPLc236、pMBL2
4、pLG200、pUR290、pIN−III113−Bl、egtll、pBdC
l、およびpET lld(Studier etal., Gene Expression Technology : Methods in
Enzymology 185, Academic Press, San Diego, California (1990) 60-89; およびPouwel
s etal., eds. (1985) Cloning Vectors. Elsevier: New York IBSN 0 444 904018)が含
まれる。pTrcベクターからの標的遺伝子発現は、ハイブリッドtrp−lac融合プ
ロモーターからの宿主RNAポリメラーゼ転写に依存する。pET lldベクターから
の標的遺伝子発現は、同時発現されるウイルスRNAポリメラーゼ(T7gnl)よって
媒介されるT7 gnlO−lac融合プロモーターからの転写に依存する。このウイル
10
スポリメラーゼは、lacUV 5プロモーターの転写調節下にT7gnl遺伝子を宿す
常在性Xプロファージから宿主株BL21(DE3)またはHMS174(DE3)によ
って供給される。他の種類の細菌の形質転換に関して、適切なベクターを選択してよい。
例えば、プラスミドpIJ101、pIJ364、pIJ702およびpIJ361はス
トレプトマイセスの形質転換に有用であり、プラスミドpUB110、pC194、また
はpBD214はバシラス種の形質転換に適していることが知られている。コリネバクテ
リウムへの遺伝情報の導入に有用ないくつかのプラスミドには、pHM1519、pBL
l、pSA77、またはpAJ667が含まれる(Pouwels etal., eds. (1985) Cloning
Vectors. Elsevier: New York IBSN 0 444 904018)。
【0274】
20
組換えタンパク質発現を最大にする1ストラテジーは、組換えタンパク質をタンパク質
分解によって切断する能力が損なわれている宿主細菌中でタンパク質を発現することであ
る(Gottesman, S., Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academ
ic Press, San Diego, California (1990) 119-128)。別のストラテジーは、発現ベクタ
ーに挿入される核酸の核酸配列を改変して、各アミノ酸の個別のコドンが、発現に選択さ
れるコリネバクテリウム・グルタミカム等の細菌中で優先的に利用されるコドンにするこ
とである(Wada et al. (1992) Nucleic Acids Res. 20: 2111-2118)。本発明の核酸配
列のそのような改変は標準的DNA合成技術によって実行することができる。
【0275】
好適なコリネバクテリウム・グルタミカムおよび大腸菌シャトルベクターの例は、Eikm
30
anns et al(Gene. (1991) 102, 93-8)に見出せる。
【0276】
別の実施形態では、タンパク質発現ベクターは酵母発現ベクターである。酵母サッカロ
ミセス・セレビシエ(S. cerevisiae)中で発現させるためのベクターの例には、pYe
pSecl(Baldari, et al., (1987) Embo J. 6: 229-234)、2i、pAG−1、Ye
p6、Yepl3、pEMBLYe23、pMFa(Kurjan and Herskowitz, (1982) Ce
ll 30: 933-943)、pJRY88(Schultz etal., (1987) Gene 54: 113-123)、および
pYES2(Invitrogen Corporation, San Diego, CA)が含まれる。糸状菌等の他の真
菌での使用に適切なベクターおよびベクターを構築するための方法には、以下の文献で詳
説されるものが含まれる:van den Hondel, C. A. M. J. J. & Punt,P. J. (1991) in: A
40
pplied Molecular Genetics of Fungi, J. F. Peberdy, et al., eds., p. 1-28, Cambri
dge University Press: Cambridge, およびPouwels et al., eds. (1985) Cloning Vecto
rs. Elsevier: New York (IBSN 0 444 904018)。
【0277】
本発明の目的では、作動的連結とは、コード配列を発現する場合に、各々の調節エレメ
ントがその機能を、その決定にしたがって、果たすことができるような、プロモーター、
コード配列、ターミネーターおよび、場合により、追加の調節エレメントの連続配置であ
ると理解される。
【0278】
別の実施形態では、単細胞性植物細胞(例えば藻類)または高等植物由来の植物細胞(
50
(68)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
例えば、作物等の種子植物)中で表1のタンパク質を発現させてよい。植物発現ベクター
の例には、Becker, D., Kemper, E., Schell, J. and Masterson, R. (1992) Plant Mol.
Biol. 20: 1195-1197; およびBevan, M. W. (1984) Nucl. Acid. Res. 12: 8711-8721で
詳説されるベクターが含まれ、pLGV23、pGHlac+、pBINl9、pAK2
004、およびpDH51が含まれる(Pouwels et al., eds. (1985) Cloning Vectors.
Elsevier: New York IBSN 0 444 904018)。
【0279】
原核細胞および真核細胞の両細胞に関する他の好適な発現系に関しては、Sambrook, J.
et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 3rd ed., Cold Spring Harbor Labo
ratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 2003の16
10
および17章を参照のこと。
【0280】
本発明の目的では、作動的連結とは、コード配列を発現する場合に、各々の調節エレメ
ントがその機能を、その決定にしたがって、果たすことができるような、プロモーター、
コード配列、ターミネーターおよび、場合により、追加の調節エレメントの連続配置であ
ると理解される。
【0281】
別の実施形態では、組換え哺乳類発現ベクターは、特定の細胞タイプ、例えば植物細胞
において優先的な核酸の発現を指揮する(例えば、組織特異的調節エレメントを使用して
、核酸を発現させる)ことが可能である。組織特異的調節エレメントは当技術分野におい
20
て公知である。
【0282】
本発明の別の態様は、本発明の組換え発現ベクターが導入されている生物または宿主細
胞に関する。用語「宿主細胞」および「組換え宿主細胞」は本明細書中で交換可能に使用
される。そのような用語は、具体的な対象細胞だけでなく、そのような細胞の子孫または
潜在的子孫をも表すことが理解される。後の世代では、突然変異または環境影響に起因し
て特定の改変が生じるため、そのような子孫は、実際には、親細胞と同一でない可能性が
あるが、依然として本明細書中で使用される用語の範囲内に含まれる。
【0283】
宿主細胞は任意の原核細胞または真核細胞であってよい。例えば、表1の酵素は、コリ
30
ネバクテリウム・グルタミカムまたは大腸菌等の細菌細胞、昆虫細胞、酵母または植物中
で発現させることができる。当業者は他の好適な宿主細胞を知っている。
【0284】
ベクターDNAは、慣用の形質転換またはトランスフェクション技術によって原核細胞
または真核細胞に導入することができる。本明細書中で使用される用語「形質転換」およ
び「トランスフェクション」、「コンジュゲーション」および「形質導入」とは、外来性
核酸(例えば直線状DNAもしくはRNA(例えば直線化ベクターまたは、ベクターを伴
わない遺伝子構築物単独)またはベクター形式の核酸(例えばプラスミド、ファージ、フ
ァスミド(phasmid)、ファージミド、トランスポゾンまたは他のDNA)を宿主細胞に
導入するための、種々の当技術分野において認められている技術を表すものとし、該技術
40
には、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈、DEAE−デキストラン媒介性トラ
ンスフェクション、リポフェクション、天然コンピテンス(natural competence)、化学
媒介性導入、またはエレクトロポレーションが含まれる。宿主細胞を形質転換またはトラ
ンスフェクトするための好適な方法は、Sambrook, et al.(Molecular Cloning : A Labo
ratory Manual. 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Labora
tory Press, Cold Spring Harbor, NY, 2003)、および他の実験室マニュアルに見出せる
。
【0285】
これらの成分を特定および選択するために、選択マーカー(例えば抗生物質に対する耐
性)をコードする遺伝子が、概して、目的の遺伝子とともに宿主細胞に導入される。好ま
50
(69)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
しい選択マーカーには、G418、ハイグロマイシンおよびメトトレキセート等の薬物に
対する耐性を付与するものが含まれる。選択マーカーをコードする核酸は、表1の酵素を
コードする核酸と同一のベクターで宿主細胞に導入することができ、あるいは別個のベク
ターで導入することもできる。導入核酸で安定にトランスフェクトされた細胞は、薬物選
択によって特定することができる(例えば、選択マーカー遺伝子を取り込んだ細胞は生存
し、他の細胞は死滅する)。
【0286】
別の実施形態では、導入遺伝子の調節発現を可能にする選択系を含有する組換え微生物
を作製することができる。例えば、表1の遺伝子をベクターに含ませ、lacオペロンの
コントロール下に配置すると、IPTGの存在下でのみ該遺伝子の発現が可能になる。そ
10
のような調節系は当技術分野において周知である。
【0287】
一実施形態では、該方法は、メチオニン生産に好適な培地中で本発明の生物(例えば表
1の酵素をコードする組換え発現ベクターが導入されているか、あるいは野生型または改
変型酵素をコードする遺伝子がゲノムに導入されている生物)を培養するステップを含む
。別の実施形態では、該方法は、さらに、培地または宿主細胞からメチオニンを単離する
ステップを含む。
【0288】
上記のように、生物の代謝流量をモジュレートするために、代謝経路ネットワークの反
応を触媒する表1の酵素の量および/または活性を増大または低減させてよい。しかし、
20
生物の代謝流量を改変して、メチオニン合成がより効率的な生物を作製するために、酵素
の量および/または活性の変化は、表1に列挙される酵素に限定されない。表1の酵素に
相同的で、別の生物中で同一機能を実行する任意の酵素は、過剰発現によって代謝流量に
影響を与える目的で量および/または活性をモジュレートするために完全に好適である。
ホモロジーおよび同一性に関する定義は上で提供されている。
【0289】
以下の表では、表1の酵素R1∼R61のいくつかのホモログの例を挙げる。該ホモロ
グは、それぞれの酵素の量および/または活性を増大させるために、例えばそれらをコリ
ネバクテリウム・グルタミカムまたは大腸菌で過剰発現させることによって、本発明の目
的で使用してよいものである:
30
(70)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
【表2】
10
20
30
40
【0290】
(71)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0291】
(72)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0292】
(73)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0293】
(74)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0294】
(75)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0295】
(76)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0296】
(77)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0297】
(78)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0298】
(79)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0299】
(80)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0300】
(81)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0301】
(82)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0302】
(83)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0303】
(84)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0304】
(85)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0305】
(86)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0306】
(87)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0307】
(88)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0308】
(89)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0309】
(90)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0310】
(91)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0311】
(92)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0312】
(93)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0313】
(94)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0314】
(95)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0315】
(96)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0316】
(97)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0317】
(98)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0318】
(99)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0319】
(100)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0320】
(101)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0321】
(102)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0322】
(103)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0323】
(104)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0324】
(105)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0325】
(106)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0326】
(107)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0327】
(108)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0328】
(109)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0329】
(110)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0330】
(111)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0331】
(112)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0332】
(113)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0333】
(114)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0334】
(115)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0335】
(116)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0336】
(117)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0337】
(118)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0338】
(119)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0339】
(120)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0340】
(121)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0341】
(122)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0342】
(123)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0343】
(124)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0344】
(125)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0345】
(126)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0346】
(127)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0347】
(128)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0348】
(129)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0349】
(130)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0350】
(131)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0351】
(132)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0352】
(133)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0353】
(134)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0354】
(135)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0355】
(136)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0356】
(137)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0357】
(138)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
【0358】
大腸菌およびコリネバクテリウム・グルタミカムの培養−培地および培養条件
当業者は、コリネバクテリウム・グルタミカムおよび大腸菌等の一般的な微生物の培養
に精通している。ゆえに、コリネバクテリウム・グルタミカムの培養に関する概略の手引
きを以下に挙げる。対応する情報は、大腸菌の培養に関する標準的教科書から入手するこ
とができる。
【0359】
30
大腸菌株は、通常、それぞれMBおよびLBブロス中で培養される(Follettie, M. T.
, Peoples,0., Agoropoulou, C., and Sinskey, A J. (1993) J. Bacteriol. 175, 40964103)。大腸菌用の最少培地はそれぞれM9および改変型MCGCである(Yoshihama, M
., Higashiro, K., Rao, E. A., Akedo, M., Shanabruch, W G., Follettie, M. T., Wal
ker, G. C., and Sinskey, A. J. (1985) J. Bacteriol. 162,591-507)。グルコースは
1%の終濃度で加えてよい。抗生物質は以下の量(マイクログラム/ミリリットル)で加
えてよい:アンピシリン、50;カナマイシン、25;ナリジクス酸、25。アミノ酸、
ビタミン、および他の補充物質は以下の量で加えてよい:メチオニン、9.3mM;アル
ギニン、9.3mM;ヒスチジン、9.3mM;チアミン、0.05mM。大腸菌細胞は
、通常、それぞれ37℃で培養される。
40
【0360】
遺伝的に改変されたコリネバクテリウムは、典型的に、合成または天然培養培地中で培
養される。コリネバクテリウム用のいくつかの異なる培養培地はいずれも周知であり、容
易に入手できる(Lieb et al. (1989) Appl.Microbiol. Biotechnol., 32: 205-210; von
der Osten et al. (1998) Biotechnology Letters, 11: 11-16; Patent DE 4,120,867;
Liebl(1992) "The Genus Corynebacterium, in: The Procaryotes, Volume II, Balows,
A. et al., eds. Springer-Verlag)。
【0361】
これらの培地は、1以上の炭素供給源、窒素供給源、無機塩、ビタミンおよび微量元素
からなる。好ましい炭素供給源は、単糖類、二糖類、または多糖類等の糖である。例えば
50
(139)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、リボース、ソルボース、リボ
ース、ラクトース、マルトース、スクロース、ラフィノース、デンプンまたはセルロース
は非常に良好な炭素供給源として役立つ。
【0362】
糖精製から得られる糖蜜または他の副産物等の複合化合物によって培地に糖を供給する
ことも可能である。異なる炭素供給源の混合物を供給することも有益でありうる。他の炭
素供給源候補は、アルコールおよび有機酸、例えばメタノール、エタノール、酢酸または
乳酸である。窒素供給源は、通常、有機または無機窒素化合物、またはこれらの化合物を
含有する材料である。典型的な窒素供給源には、アンモニアガスまたはアンモニア塩、例
えばNH4C1または(NH4)2S04、NH40H、ニトラート、尿素、アミノ酸ま
10
たは複合窒素供給源、例えばコーンスティープリカー(corn steep liquor)、ダイズ粉
、ダイズタンパク質、酵母抽出物、肉エキス等が含まれる。
【0363】
異なる硫黄供給源を使用してメチオニンを過剰生産させることが可能である。スルフェ
ート、チオスルフェート、スルファイトおよびさらに還元された硫黄供給源、例えばH2
Sおよびスルフィドおよび誘導体を使用することができる。また、有機硫黄供給源、例え
ばメチルメルカプタン、チオグリコラート、チオシアナート、およびチオ尿素、硫黄含有
アミノ酸、例えばシステインおよび他の硫黄含有化合物を使用して、効率的メチオニン生
産を達成することができる。他のC1供給源、例えばメタノールまたはホルムアルデヒド
と同様にギ酸を補充物質とすることも可能である。メタンチオールおよびその二量体であ
20
るジメチルジスルフィドが特に好適である。
【0364】
培地に含ませてよい無機塩化合物には、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、コバ
ルト、モリブデン、カリウム、マンガン、亜鉛、銅および鉄の塩化物、亜リン酸塩または
硫酸塩が含まれる。金属イオンを溶液状態のまま維持するためにキレート化合物を培地に
加えることができる。特に有用なキレート化合物には、ジヒドロキシフェノール、例えば
カテコールまたはプロトカテキュアート(protocatechuate)、または有機酸、例えばク
エン酸が含まれる。培地には、他の成長因子、例えばビタミンまたは成長促進剤をさらに
含ませることが典型的である。その例には、ビオチン、リボフラビン、チアミン、葉酸、
ニコチン酸、パントテナートおよびピリドキシンが含まれる。成長因子および塩は、複合
30
培地成分、例えば酵母抽出物、糖蜜、コーンスティープリカー等が起源であることが多い
。培地化合物の厳密な組成は直接実験に強く依存し、各具体的事例に関して個別に決定さ
れる。培地の最適化についての情報は教科書「Applied Microbiol. Physiology, A Prac
tical Approach(Eds. P. M. Rhodes, P.F. Stanbury, IRL Press (1997) pp. 53-73, IS
BN 0 19 963577 3)から入手できる。市販の供給元の培養培地、例えばstandard 1(Merc
k)またはBHI(grain heart infusion, DIFCO)等を選択することも可能である。
【0365】
すべての培地成分は加熱(1.5バールで121Cで20分間)または滅菌ろ過によっ
て滅菌されるべきであろう。該成分は、一緒に滅菌することができ、あるいは必要であれ
ば別々に滅菌することもできる。
40
【0366】
すべての培地成分は培養の開始時に存在させてよく、場合により、連続的に、またはバ
ッチ式で加えることもできる。培養条件は各実験に関して別個に規定される。
【0367】
温度は15℃∼45℃の範囲であるべきであろう。温度は一定に保つことができ、ある
いは実験中に変化させることができる。培地のpHは5∼8.5の範囲、好ましくは7.
0付近であってよく、培地にバッファーを加えることによって維持することができる。そ
のための典型的なバッファーはリン酸カリウムバッファーである。合成バッファー、例え
ばMOPS、HEPES、ACES等を、代替的に、または同時に使用することができる
。培養中にNaOHまたはNH4OHを加えることによって一定培養pHを維持すること
50
(140)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
も可能である。複合培地成分、例えば酵母抽出物を利用する場合、多数の複合化合物が高
い緩衝能を有するので、追加のバッファーの必要性は低い。微生物の培養に発酵槽を利用
する場合、ガス状アンモニアを使用してpHをコントロールすることもできる。
【0368】
インキュベーション時間は、通常、数時間∼数日間の範囲である。この時間は、最大の
生成物量がブロス中に蓄積することを可能にするように選択される。開示される培養実験
は、種々のサイズのマイクロタイタープレート、ガラス管、ガラスフラスコまたはガラス
もしくは金属発酵槽等の種々の容器中で実行することができる。多数のクローンをスクリ
ーニングするために、マイクロタイタープレート、ガラス管または振とうフラスコ(バッ
フル付きまたはなし)中で微生物を培養すべきであろう。好ましくは10容量%の必要な
10
培養培地を充填した100ml振とうフラスコを使用する。該フラスコは、回転式シェー
カー(振幅25mm)で100∼300rpmの速度範囲を用いて振とうすべきであろう
。湿気の維持によって蒸発減を低減させることができ;あるいは、蒸発減の数学的補正を
実施すべきであろう。
【0369】
遺伝的改変クローンを試験する場合、未改変のコントロールクローンまたは挿入を全く
含まない基本プラスミドを含有するコントロールクローンを同様に試験すべきであろう。
30℃でインキュベート済みの寒天プレート、例えばCMプレート(10g/1グルコー
ス、2,5g/1 NaCl、2g/1尿素、10g/1ポリペプトン、5g/l酵母抽
出物、5g/1 肉エキス、22g/1 NaCl、2g/1尿素、10g/1 ポリペプ
20
トン、5g/1酵母抽出物、5g/1肉エキス、22g/1寒天、2M NaOHでpH
6.8に調節)で培養された細胞を使用して、0.5∼1.5のOD600まで培地に接
種する。
【0370】
培地の接種は、CMプレート由来のコリネバクテリウム・グルタミカム細胞の生理食塩
水懸濁液の導入またはこの細菌の液体前培養の添加によって達成される。
【0371】
以下、種々の実施例を挙げて本発明を例証する。しかし、これらの実施例は、いかなる
意味においても本発明を限定するものではない。
【実施例】
30
【0372】
本明細書中の実施形態は本開示内容の実施形態の例証を提供するものであり、その範囲
を限定すると解釈されるべきではない。当業者は、多数の他の実施形態が本開示内容に包
含されることを容易に認識する。本開示内容中のすべての引用刊行物および特許ならびに
登録番号(寄託番号)またはデータベース参照番号によって特定される配列は、参照によ
り、その全体が組み入れられる。参照によって組み入れられる材料が本明細書と矛盾する
か、あるいは不一致である範囲では、本明細書は任意の該材料に優先する。本明細書中の
任意の参考文献の引用は、そのような参考文献が本開示内容の先行技術であることの承認
ではない。
【0373】
40
特に記載しない限り、本明細書(特許請求の範囲を含む)中で使用される成分の量、細
胞培養、処理条件、等を表現するすべての数字は、すべての場合で、用語「約」によって
修飾されると理解されるものとする。したがって、特に別の指定をしない限り、数的パラ
メータは近似であり、本発明によって取得しようとする所望の特性に応じて変動する。
【0374】
特に記載しない限り、一連の要素に先行する用語「少なくとも」は、該系列のすべての
要素を表すと理解されるものとする。当業者は、本明細書中で記載される発明の具体的実
施形態の多数の等価形態を認識し、あるいは通常の実験法程度のものを使用して突き止め
ることができる。そのような等価形態は特許請求の範囲に包含されるものとする。
【0375】
50
(141)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
A)向上したメチオニン合成効率を有する生物のための最適な代謝流量の理論的予測
コリネバクテリウム・グルタミカムおよび大腸菌に関する代謝経路ネットワークの構築
コリネバクテリウム・グルタミカムネットワーク。コリネバクテリウム・グルタミカム
野生型の基本的代謝経路ネットワークは、炭素および硫黄供給源としての、それぞれ、グ
ルコースおよびスルフェートの利用に関して構成された(http://www.genome.jp/kegg/me
tabolism.html)。これには、ホスホトランスフェラーゼ系(PTS)によるグルコース
の取り込み、解糖(EMP)、ペントースリン酸経路(PPP)、トリカルボン酸(TC
A)回路、補充経路および呼吸鎖が含まれる。スルフェートの同化には、取り込みおよび
その後の硫化水素への変換が含まれる(Schiff (1979), Ciba Found Symp, 72,49-69)。
化学量論モデルでは、硫酸同化経路を以下の2反応にまとめた:スルフェートからスルフ
10
ァイトへの還元(2つのATPおよび1つのNADPHを必要とする)およびスルファイ
トからスルフィドへの還元(3つのNADPHを要求する)。モデル全体は59の内因的
代謝産物および8の外因的代謝産物から構成された。外因的代謝産物には、基質(グルコ
ース、スルフェート、アンモニア、酸素)および生成物(バイオマス、CO2、メチオニ
ン、グリシン)が含まれる。グリシンは外因的代謝産物とみなした。その理由は、副産物
として形成されると、コリネバクテリウムが再利用できないからである(http://www.gen
ome.jp/kegg/metabolism.html)。全部で、該代謝経路ネットワークは62の代謝反応を
含有し、そのうち19の反応が可逆的であるとみなされた。呼吸鎖におけるATP生産に
関して、2(NADHについて)および1(FADHについて)のP/O比を仮定した(
Klapa et al. (2003) Eur. J. Biochem., 27017, 3525-3542)。バイオマス形成のための
20
前駆体需要は文献から入手した(Marx et al. (1996) Biotechnol. Bioeng., 49 (2), 11
1-129)。バイオマス中の種々のアミノ酸の含量からバイオマスのためのスルフェートお
よびアンモニア需要を算出した。コリネバクテリウム・グルタミカムに関するモデルを図
1に示す。
【0376】
大腸菌ネットワーク。野生型の大腸菌の中枢代謝に関するモデル構築は、文献(Carlso
n et al. (2004), Biotechnol. Bioeng., 851, 1-19)およびデータベース(http://www.
genome.jp/kegg/metabolism.html)に基づいて行った。グルコースおよびスルフェートで
の増殖およびメチオニン生産に関するモデルは、PTSのグルコース取り込み、EMP、
PPP、TCA回路、補充経路、呼吸鎖および硫酸同化を含んでいた。該代謝経路ネット
30
ワークは64の代謝反応を含有し、そのうち20の反応が可逆的であるとみなされた。グ
ルコース、スルフェート、アンモニアおよび酸素を外因的基質とみなし、バイオマス、C
O2およびメチオニンを外部生成物とみなした。NADHおよびNADPHの相互変換に
関しては、可逆的トランスヒドロゲナーゼを考慮した(Yamaguchi et a. (1995), J. Bio
l. Chem., 27028, 166653-9)。さらに、大腸菌がアセチル化の代わりにスクシニル化に
よってホモセリンを活性化することを考慮した(R40)(Sekowska et al. (2000) , J
. Mol. Micorbiol. Biotechnol., 22, 145-177)。さらに、グリシン切断系を考慮した(
R71,R72)。呼吸鎖におけるATP生産に関して、2(NADHについて)および
1(FADHについて)のP/O比を仮定した(Carlson et al. (2004), 上記参照のこ
と)。バイオマス形成のための前駆体需要は文献から入手した(Edwards et al. (2000);
40
Weber et al., (2002))。
【0377】
ネットワーク改変。別のシミュレーションでは、上記化学量論ネットワークを改変した
。この改変には、メチオニン生産を改善するために潜在的に重要な、種々の反応および経
路の欠失または挿入が含まれた。さらに、炭素および硫黄供給源を変更して、メチオニン
生産に対するその影響を調査した。
【0378】
代謝経路解析。代謝経路解析はMETATOOLを使用して実行した(Pfeiffer et al
., (1999), Bioinformatics, 153, 251-7, Schuster et al. (1999) Trends Biotechnol.
, 172, 53-60)。使用されたバージョン(meta4.0.1_double.exe)はインターネットで入
50
(142)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
手可能である(http://www.biozentrum.uni-wuerzburg.de/bioinformatik/computing/ me
tatool/pinguin.biologie.uni-jena.de/bioinformatik/networks/)。該アルゴリズムの
数学的詳細はPfeiffer et al.(上記参照のこと)に記載されている。該文献は、MET
ATOOLソフトウェアの使用法に関して、参照により本明細書中に組み入れられる。
【0379】
代謝経路解析から、調査対象の各状況に関して数百のエレメンタリー・フラックスモー
ドが得られた。これらのフラックスモードの各々に関して、バイオマス(YX/S)およ
びメチオニン(YMet/S)の炭素収率を、基質として系に入った炭素のパーセンテー
ジとして算出した。作業全体を通して、該収率は%値((C−mol)(C−mol基質
)−1×100)単位で記載する。したがって、補基質、例えばギ酸またはメタンチオー
10
ルおよびその二量体であるジメチルジスルフィドをさらに考慮した。特定のネットワーク
シナリオに関して取得されたすべてのエレメンタリーモード(elementary mode)の比較
解析によって、理論的最大収率YX/S,maxおよびYMet/S,maxを決定する
ことができた。
【0380】
モデルについての結果および考察(Implications)
コリネバクテリウム・グルタミカムおよび大腸菌によるメチオニン生産の比較
メチオニンの生物工学的生産に関して最も有望な2種類の生物は、コリネバクテリウム
・グルタミカムおよび大腸菌である。これらの2種類の生物の潜在能力を評価するために
、上記のように代謝経路解析を実行した。
20
【0381】
最初に、野生型ネットワークを調査した。コリネバクテリウム・グルタミカムおよび大
腸菌の野生型に関して示されるように、バイオマスおよびメチオニンに関して異なる炭素
収率を有する多数のエレメンタリー・フラックスモードが得られた(図2A,B)。観察
されたモードのうちの大多数は、バイオマスまたはメチオニンのいずれかの生産にもっぱ
ら関連しているエクストリーム・モード(extreme mode)である。これらを2軸のプロッ
トで記載する。さらにまた、バイオマスおよびメチオニンの同時生産を伴うフラックスモ
ードが得られた。コリネバクテリウム・グルタミカムに関する最大の理論的バイオマス収
率は88.5%であり、ゆえに大腸菌で認められた収率91.7%よりわずかに低かった
。両生物はメチオニンを生産する高い潜在能力を有する。コリネバクテリウム・グルタミ
30
カムのメチオニンに関する最大の理論的炭素収率は48.6%であった(図2A)。大腸
菌はかなり高い値56.2%を示す(図2B)。大腸菌野生型の高い潜在能力は、その代
謝経路ネットワークの有利な特性を示すかもしれない。この側面については追加のシミュ
レーションで研究した(下記参照のこと)。
【0382】
さらに厳密に調査すると、2つの反応、すなわちグリシン切断系およびトランスヒドロ
ゲナーゼが指摘される。それらは向上したメチオニン生産に有益でありうる。実際、コリ
ネバクテリウム・グルタミカム野生型に関して認められる最適な解決策はグリシンの実質
的形成に関連している。グリシンは再利用できないが、大腸菌野生型による最適なメチオ
ニン生産では、グリシンは蓄積しない。メチオニンあたり8個のNADPHという高い需
40
要に関して、大腸菌におけるNADHおよびNADPHの相互変換に関するトランスヒド
ロゲナーゼの利用可能性も、観察された高い効率に寄与しうる。
【0383】
メチオニン生産に関するこれらの反応の重要性をさらに調査するために、根底にある代
謝経路ネットワークの種々の遺伝的改変を仮定する追加のシミュレーションを実行した(
下記参照のこと)。
【0384】
最適なメチオニン生産条件下でのコリネバクテリウム・グルタミカムおよび大腸菌中の代
謝流量
まず、どの利用可能な経路が最適なメチオニン生産に関与するか、およびどの経路が不
50
(143)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
必要であるはずかを特定するために、両生物の代謝経路ネットワークをさらに詳細に研究
した。そのために、コリネバクテリウム・グルタミカムおよび大腸菌の最適なエレメンタ
リーモード、すなわち最大の理論的メチオニン収率を有するモードに関する代謝流量分布
を算出した。ここで、すべての流量は相対的モル値として記載し、グルコース取り込み率
に対して標準化されている(代謝流量解析において通常行われる通りである)。留意すべ
きは、流量(mol(mol)−1×100で与えられる)は最大パフォーマンスを記載
するために使用される炭素収率(C−mol(C−mol)−1×100)とは異なるこ
とである。さらに、それぞれのモードで不活性であった基本モデルから得られる反応(図
1)を図3および4から消去した。2種類の生物中の最適なメチオニン生産に関する流量
分布は劇的に異なっていた(図3,4)。
10
【0385】
コリネバクテリウム・グルタミカムにおけるメチオニンへ向かう最適な流量は58.3
%であった。この目的で、コリネバクテリウム・グルタミカムはPPPの非常に高い活性
を示し、PPPの酸化反応を通る流量は250%であった。これは、おそらく、NADP
Hの需要のせいである。メチオニン合成に関して、主に硫黄還元に関して、8個のNAD
PHを供給する必要があるからである。PPPへの流量はグルコースの取り込み流量より
実質的に高い。糖新生方向で機能するグルコース6−リン酸イソメラーゼも、PPPへ向
かう炭素の供給に大きく寄与する。TCA回路は完全に遮断され、イソクエン酸デヒドロ
ゲナーゼがNADPH形成に寄与しないようになる。さらにコリネバクテリウム・グルタ
ミカムは2つの重要な代謝回路を利用する。第一の回路には、アンモニウムを同化し、必
20
要なアミノ化反応にそれを使用するために2−オキソグルタレートおよびグルタメートが
のみを含み、それらは高い流量で相互変換される。メチオニン自体の形成およびメチル−
THFの形成のためのメチル基の供与体であるセリンの形成が行われるため、この回路を
通る流量はメチオニン流量のちょうど2倍になる。第二の代謝回路はピルビン酸、オキサ
ロ酢酸およびリンゴ酸のプールを含む。それは2つの主な機能を示す:酸化的PPPにお
けるCO2減のほぼ半分はCO2の非常に活発な固定によって代謝経路ネットワークに再
び入る(125%流量)。さらに、該回路に関与する3つの酵素の組み合わせはトランス
ヒドロゲナーゼとして機能し、NADHを相互変換してNADPHにする(25%流量)
。これによって、コリネバクテリウム・グルタミカムは、ある程度まで、トランスヒドロ
ゲナーゼの不足を克服することができる。
30
【0386】
大腸菌における最適なメチオニン生産では67.5%のメチオニン流量が得られた。コ
リネバクテリウム・グルタミカムとは対照的に、PPPは活発でなく、一方、TCA回路
はほぼ100%の高い流量を示した。しかし、TCA回路は改変された様式で動作してい
た。スクシニル−CoAからコハク酸へのステップは、メチオニン生合成においてコハク
酸を生成する対応する反応によってブリッジされる。興味深いことに、最適なメチオニン
生産はグリオキシル酸短絡回路のかなりの活性を必要とした(31%流量)。NADHか
らNADPHへのトランスヒドロゲナーゼを通る574%の莫大な流量が最も顕著である
。このことは、大腸菌における効率的メチオニン生産に関するこの酵素の重要性を強調す
る。上記のように、この酵素が削除されると最大の理論的メチオニン収率がかなり低下す
40
る(図2D)。両生物において、ピルビン酸キナーゼは最適なメチオニン生産に不必要で
ある。したがって、PEPからピルビン酸への流量はPTSによってもっぱら提供され、
グルコースの取り込みとカップリングされる。明らかに、ピルビン酸キナーゼはATP生
産に必要とされない。この酵素のノックアウトは興味深い標的でありうる。その理由は、
それがピルビン酸およびTCA回路の関連する過剰代謝産物(related over-flow metabo
lites)に向かう流量を制限するかもしれないからである。
【0387】
概して、2種類の生物の最適な流量分布は基本的に異なっていた。メチオニン合成に関
するエレメンタリー・フラックスモード(elementary flux mode)解析を使用することに
よって、メチオニン合成効率を向上させるはずの遺伝的改変に関する予測を取得すること
50
(144)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
ができる。
【0388】
遺伝的改変によるメチオニン生産の改善可能性
いくつかの重要な反応の影響をさらに詳細に研究するために、改変された代謝経路ネッ
トワークを用いる追加のシミュレーションを実行した。コリネバクテリウム・グルタミカ
ムにトランスヒドロゲナーゼを導入すると、51.9%の向上した理論的メチオニン収率
が得られた(図2C)。大腸菌におけるトランスヒドロゲナーゼのノックアウトはそのメ
チオニン生産に関する潜在能力を大きく低下させた(図2D)。このことは、メチオニン
生産に関するNADHからNADPHへの活発な相互変換の有益な効果を強調する。
【0389】
10
コリネバクテリウム・グルタミカムにグリシン切断系を挿入すると、理論的最大メチオ
ニン収率が56.5%に増加した(図2E)。同様に、大腸菌中のグリシン切断系または
トランスヒドロゲナーゼをノックアウトすると、理論的最大メチオニン収率が低減した(
図2F,D)。留意すべきは、トランスヒドロゲナーゼは最大の理論的バイオマス収率に
も影響することである。それぞれ、コリネバクテリウム・グルタミカムにおける挿入は増
加を生じさせ、一方、大腸菌における欠失はYX/S,maxの減少を生じさせる。
【0390】
炭素収率に関して、すべてのフラックスモードは三角形のスペース内に位置し、該スペ
ースは、起点と、最大バイオマスおよびメチオニン形成をそれぞれ有する2つのエクスト
リーム・フラックスモードの間にわたっていた(図2A∼F)。ここで、2つのエクスト
20
リーム・モード(extreme mode)の間の連結は最適なラインを表し、該ラインは種々の培
養体制下で可能な最大メチオニン収率を提供する。このライン上のすべてのモードおよび
モードの一次結合は生産プロセスに関する興味深い解決策である。実際の生産プロセスは
、常に、特定のバイオマスの形成に関連しているであろう。
【0391】
メチオニン生産に対する硫黄供給源の影響
遺伝的改変の潜在的に好ましい効果を明確に特定することができた。理論的に可能なメ
チオニン合成効率をさらに向上させるために追加のシミュレーションを実行した。この関
連で、代替栄養素の影響を調査した。ここで、硫黄供給源は中心的役割を果たすかもしれ
ない。コリネバクテリウム・グルタミカムに関して得られた結果を例示する。
30
【0392】
慣用の硫黄供給源はスルフェートであり、野生型に関する上記経路解析においても適用
される。しかし、硫酸同化は2つのATPおよび4つのNADPHの高い需要に関連して
いる。特に、還元力に関する高い要求によって、硫黄供給源の還元状態が重要な点である
かもしれないことが示唆される。したがって、スルフェート、チオスルフェート、および
スルフィドを硫黄供給源として使用して代謝経路解析を実行した。チオスルフェートを利
用するために、チオ硫酸レダクターゼ(Schmidt et al. (1984) 上記参照のこと, Heinzi
nger et al. (1995) J. Bacteriol., 177: 2813-2820, Fong et al. (1993) J. Bacterio
l., 175: 6368-6371)をモデルに組み込んだ。この酵素は、チオスルフェートを切断して
スルファイトおよびスルフィドにすることを可能にし、ゆえにメチオニン生産に関するN
40
ADPHの総需要を約25%低減させる。留意すべきは、本発明者らの知識の限りでは、
コリネバクテリウム・グルタミカムにおいてチオスルフェートの両硫黄原子の消費が未だ
示されていないことである。より還元型の硫黄からスルフィドを生成するための別の候補
は、いわゆる嫌気的亜硫酸レダクターゼである(Huang et al. (1991) Journal of Bacte
riology. 173(4):1544-53)。
【0393】
硫黄供給源が生産プロセスの理論的炭素収率に関する重要な点であることが明らかにな
っている。スルフェート(図2A)と比較して、代替の硫黄供給源を利用すると、最大理
論的収率がかなり増加する(図3A,B)。スルフェート(48.6%)からチオスルフ
ェート(57.8%)からスルフィド(63.4%)への増加は、メチオニン生産に代替
50
(145)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
の栄養素を使用する高い可能性を印象的に強調する。さらに、該増加は、最適なメチオニ
ン生合成のための、還元力(NADPH)に関する高い重要性を実証する。コリネバクテ
リウム・グルタミカムでは、NADPHは、大半は酸化的PPPにおいて生成され、ある
程度はTCA回路においてNADP依存性イソクエン酸デヒドロゲナーゼを用いて生成さ
れる。スルフェートでの培養中に、野生型は、直接的スルフヒドリル化(direct sulfydr
ylation)によって合成されるメチオニン1モルあたりNADPH8モルを必要とし、か
つトランススルフレーション(transsulfuration)経路によってNADPH9モルを必要
とする(Hwang et al. (2002), J. Bacteriol., 1845,1277-86)。チオスルフェートネッ
トワークはメチオニン生産にNADPH6モルを必要とし、ゆえに25%少ない。スルフ
ィドを消費するネットワークは、スルフェートに関して50%のNADPH需要しか必要
10
としない。各25%のNADPH需要のこの段階的減少は、9.2%およびチオスルフェ
ートの代わりにスルフィドを使用することによるほんの5.6%のYMet/S,max
の段階的増加に関連している。このことは後のプロセス開発に重要でありうる。スルフィ
ドが非常に有毒で、かつ揮発性であるからである。
【0394】
メチオニン生産に対するC1供給源の影響
コリネバクテリウム・グルタミカムのメチオニン生産に関する改善の主な標的はC1代
謝である。メチオニンの最適な生産は等モル量のグリシンの蓄積に関連している。グリシ
ンは通常、再利用できない(図3)。示されるように、グリシン切断系の導入よってこれ
を克服しうる(図2E)。代案は、グルコースに加えてC1炭素供給源の使用によっても
20
たらされる。この関連で、ギ酸を調査した。それは代謝経路ネットワークの種々の拡張を
含む。これには、多数の生物、例えばバシラスに関して報告されている(E.C. 6.3.4.3)
ギ酸、ATPおよびTHFからの10−ホルミル−THFの形成を触媒する酵素の組み込
みが含まれた。さらに、10−ホルミル−THFからメチル−THFへの変換の異なるス
テップを導入した。すべての反応を、10−ホルミル−THFをメチレン−THFに変換
する全体の反応において一緒にまとめた。該反応は1個のNADPHおよび1個のNAD
Hの酸化に関連している。ギ酸とグルコースの利用により、グルコースが単独で使用され
る状況と比較して、3.3%の最大理論的メチオニン収率のわずかな増加が生じた。さら
に、ギ酸が供給された場合、グリシンはもはや蓄積しなかった。
【0395】
30
メチオニン生産に対する、異なる硫黄およびC1供給源の併用の影響
C1供給源および硫黄供給源はともに生物工学的メチオニン生産における最大理論的炭
素収率を最大にするために重要であることが上記で示された。したがって、C1および硫
黄供給源から得られる利益を組み合わせることができるかどうかを調べることが興味深い
と思われた。この研究には、チオスルフェートおよびギ酸の組み合わせならびにスルフィ
ドおよびギ酸の組み合わせが含まれた。チオスルフェートおよびギ酸の組み合わせでは、
最大理論的炭素収率は63.0%に増加した(図3D)。この収率は、依然としてスルフ
ィド消化の最大理論収率よりわずかに低い(図3B)。しかし、スルフィドとは対照的に
、ギ酸およびチオスルフェートは無害の化学物質であり、おそらくプロセスの安全性に関
する努力の低減に結び付く。スルフィドおよびギ酸を併用すると69.6%のYMet/
40
S,maxが得られた。これはスルフィド消費単独の最大理論収率より6.2%高い。
【0396】
メチオニン生産に対する、硫黄およびC1炭素の混合供給源としてのメタンチオールおよ
びその二量体であるジメチルジスルフィドの影響
硫黄の還元を提供し、グリシン蓄積の問題を解決する興味深い可能性は、メタンチオー
ルおよびその二量体であるジメチルジスルフィドの供給によって提供される。コリネバク
テリウム・グルタミカムは特定の条件下でメタンチオールを生産できることが知られてい
る(Bonnarme et al. (2000), Appl. Environ. Microbiol., 6612, 5514-7)。本明細書
中では、それはまた、メタンチオールおよびその二量体であるジメチルジスルフィドを消
費できると仮定する。上記生物、例えば非限定的にコリネバクテリウム・グルタミカムま
50
(146)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
たは大腸菌は該二量体ジメチルジスルフィドをメタンチオールに分解できるとさらに仮定
する。メタンチオールを用いるO−アセチル−ホモセリンの直接的メチルスルフヒドリル
化を使用する推定の反応を該ネットワークに加えた。この新たに提案された反応はホモシ
ステインをバイパスし、直接的メチオニンを生成する。メタンチオールおよびその二量体
であるジメチルジスルフィドを使用すると、メチオニンの最大理論収率が非常に増加し、
83.3%になった(図3F)。このことは、この基質が、潜在的に、生物工学的メチオ
ニン生産に非常に有用であることを示す。硫黄代謝およびMTHF形成に関与する経路は
メチオニン生産に不必要であろう。大腸菌では、メタンチオールおよびその二量体である
ジメチルジスルフィドに対する最大理論的メチオニン収率は71.4%であり、ゆえにコ
リネバクテリウム・グルタミカムと比較して実質的に低かった。その理由は、この生物に
10
おけるメチオニン生産のためのスクシニルCoA要求性である。これは、TCA回路の高
い活性および対応するCO2を介する炭素の減少を必要とする。コリネバクテリウム・グ
ルタミカムと比較して、これらの条件下での大腸菌におけるCO2形成はほぼ2倍高い。
最後に、最大理論収率は、メタンチオール代謝を含むコリネバクテリウム・グルタミカム
モデルにトランスヒドロゲナーゼを組み込むことによってさらに改善されうる。これらの
条件下で、コリネバクテリウム・グルタミカムはメタンチオールおよびその二量体である
ジメチルジスルフィドおよびグルコースからメチオニンを生成することができ、最大炭素
収率は85.5%であろう。
【0397】
ゆえに、上記解析では、コリネバクテリウム・グルタミカムにおいて、特にグリシンま
20
たは代替のメチル基供給源がメチオニン合成に使用されると、メチオニン生産を最適化す
るための重要な潜在能力が提供されることが示された。さらに、大腸菌におけるメチオニ
ン合成が、コリネバクテリウム・グルタミカムより、活性なトランスヒドロゲナーゼに依
存的であることが示されうる。
【0398】
B)メチオニン合成効率を向上させるためのコリネバクテリウム・グルタミカムの遺伝的
改変
以下の実験の目標は、向上したメチオニン合成効率を有するコリネバクテリウム・グル
タミカム生物を取得するために上記理論的知見の考察を適用することである。
【0399】
30
材料および方法
一般的方法に関するプロトコルは以下の文献中に見出せる:Handbook on Corynebacter
ium glutamicum, (2005) eds.: L. Eggeling, M. Bott., Boca Raton, CRC Press, Marti
n et al. (Biotechnology (1987) 5, 137-146 ), Guerrero et al. (Gene (1994), 138,
35-41), Tsuchiya und Morinaga (Biotechnology (1988), 6, 428-430), Eikmanns et al
. (Gene (1991), 102, 93-98), EP 0 472 869, US 4,601,893, Schwarzer and Puehler
(Biotechnology (1991), 9, 84-87, Reinscheid et al. (Applied and Environmental Mi
crobiology (1994), 60,126-132), LaBarre et al. (Journal of Bacteriology (1993),
175, 1001-1007), WO 96/15246, Malumbres et al. (Gene (1993), 134, 15-24), JP-A-1
0-229891, Jensen und Hammer (Biotechnology and Bioengineering (1998), 58,191-195
40
), Makrides (Microbiological Reviews (1996), 60, 512-538) および遺伝学および分子
生物学の周知の教科書。
【0400】
菌株、培地およびプラスミド
例えば以下のリストから菌株を選択することができる:
コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)ATCC 13
032,
コリネバクテリウム・アセトグルタミカム(Corynebacterium acetoglutamicum)A
TCC 15806,
コリネバクテリウム・アセトアシドフィラム(Corynebacterium acetoacidophilum)
50
(147)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
ATCC 13870,
コリネバクテリウム・サーモアミノゲネス(Corynebacterium thermoaminogenes)F
ERM BP−1539,
コリネバクテリウム・メラッセコラ(Corynebacterium melassecola)ATCC 17
965,
ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)ATCC 14067,
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)A
TCC 13869,および
ブレビバクテリウム・ディバリカタム(Brevibacterium divaricatum)ATCC 1
4020またはその派生株、例えばコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacteriu
10
m glutamicum)KFCC10065
DSM 17322または
コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)ATCC216
08。
【0401】
組換えDNA技術
プロトコルは以下の文献中に見出せる:Sambrook, J., Fritsch, E.F., and Maniatis,
T., in Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd edition (2001) Cold Spring H
arbor Laboratory Press, NY, Vol. 1, 2, 3, およびHandbook on Corynebacterium glut
amicum (2005) eds. L. Eggeling, M. Bott., Boca Raton, CRC Press。
20
【0402】
アミノ酸およびメチオニン中間体の定量
保護カートリッジおよびSynergi4μmカラム(MAX−RP 80Å,150*4.6
mm)(Phenomenex, Aschaffenburg, Germany)を備えたHPLC(Agilent 1100, Agil
ent, Waldbronn, Germany)による分析を行う。注入前に、o−フタルジアルデヒド(O
PA)および還元剤であるメルカプトエタノール(2−MCE)を使用してアナライトを
誘導体化する。さらにスルフヒドリル基をヨード酢酸でブロックする。極性相として40
mM NaH2PO4(溶出剤A,pH=7.8,NaOHで調整)および非極性相とし
てメタノール水混合物(100/1)(溶出剤B)を使用して流速1ml/分で分離を実
行する。以下のグラジエントをアプライする:開始時 0% B;39分 39% B;70
30
分 64% B;100% B 3.5分間;2分 0% B(平衡化)。室温での誘導体化は
下記のように自動化する。まずビシン(bicine)(0.5M,pH8.5)中の0.5%
2−MCE0.5μlを細胞抽出物0.5μlと混合する。続いて、ビシン(0.5M
,pH8.5)中の50mg/mlヨード酢酸1.5μlを加えた後、ビシンバッファー
(0.5M,pH8.5)2.5μlを加える。1/45/54 v/v/vの2−MC
E/MeOH/ビシン(0.5M,pH8.5)に溶解した10mg/ml OPA試薬
0.5μlを加えることによって誘導体化を行う。最後に混合物を32μl H2Oで希
釈する。上記各ピペッティングステップの間に、1分間の待ち時間を設ける。そして、3
7.5μlの総容量をカラムに注入する。留意すべきは、サンプル調製中(例えば待ち時
間中)およびその後にオートサンプラーの針を定期的に掃除すれば、分析結果を大きく改
40
善できることである。検出は蛍光検出器によって実施する(励起340nm,発光450
nm,Agilent, Waldbronn, Germany)。定量に関して、α−アミノ酪酸(ABA)を内
部標準とする。
【0403】
組換えプロトコルの定義
以下、どのように、向上したメチオニン生産効率を有するコリネバクテリウム・グルタ
ミカムの菌株を構築して、上記予測の知見を実現することができるかを記載する。該菌株
の構築を記載する前に、以下で使用される組換えイベント/プロトコルの定義を挙げる。
【0404】
本明細書中で使用される「Campbell in」とは、環状二本鎖DNA分子(例えばプラス
50
(148)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
ミド)全体が単一の相同組換えイベント(クロスインイベント)によって染色体に組み込
まれていて、直線化形式の該環状DNA分子が、該環状DNA分子の第一のDNA配列に
相同的な染色体の第一のDNA配列に効果的に挿入される、元の宿主細胞の形質転換体を
表す。「Campbelled in」とは、「Campbell in」形質転換体の染色体に組み込まれている
直線化DNA配列を表す。「Campbell in」は、第一の相同DNA配列の重複を含有し、
その各コピーは相同組換え交差点のコピーを含み、かつ取り巻く。該名称は、この種類の
組換えを最初に提唱したAlan Campbell教授に由来する。
【0405】
本明細書中で使用される「Campbell out」とは、「Campbelled in」DNAの直線化挿
入済みDNA上に含有される第二のDNA配列と、該直線化インサートの第二のDNA配
10
列と相同である染色体起点の第二のDNA配列との間で第二の相同組換えイベント(クロ
スアウトイベント)が生じている「Campbell in」形質転換体に由来する細胞を表し、該
第二の組換えイベントは組み込み済みDNA配列の一部分の欠失(放棄)を生じさせるが
、重要なことに、染色体中に残留する組み込み済みCampbelled in DNAの一部分(これ
はわずか一塩基でもよい)を同時に生じさせ、元の宿主細胞と比較して、「Campbell out
」細胞が染色体中に1以上の意図的な変化を含有するようにする(例えば、一塩基置換、
多塩基置換、異種遺伝子またはDNA配列の挿入、異種遺伝子または改変された相同遺伝
子の追加コピーもしくはコピー群の挿入、または2以上の上記で列挙されるこれらの前述
の例を含むDNA配列の挿入)。
【0406】
20
「Campbell out」細胞または菌株は、通常、必ずしもではないが、「Campbelled in」
DNA配列の一部分(放棄されることが望ましい部分)に含有される遺伝子、例えば枯草
菌(Bacillus subtilis)sacB遺伝子(約5%∼10%スクロースの存在下で培養さ
れた細胞で発現されると致死である)に対する対抗選択によって取得される。対抗選択を
用いても用いなくても、所望の「Campbell out」細胞は、任意のスクリーニング可能な表
現型を使用して所望の細胞に関してスクリーニングすることによって取得または特定する
ことができ、該スクリーニング可能な表現型は、例えば、非限定的に、コロニーの形態、
コロニーの色、抗生物質耐性の存在または不存在、ポリメラーゼ連鎖反応に基づく特定の
DNA配列の存在または不存在、栄養素要求性の存在または不存在、酵素の存在または不
存在、コロニー核酸ハイブリダイゼーション、抗体スクリーニング、等である。用語「Ca
30
mpbell in」および「Campbell out」は、上記方法またはプロセスを表すために動詞とし
て種々の時制で使用することもできる。
【0407】
「Campbell in」または「Campbell out」を生じさせる相同組換えイベントが相同DN
A配列内の一定範囲のDNA塩基にわたって生じうること、および該相同配列はこの範囲
の少なくとも一部分に関して互いに同一であるから、通常、クロスオーバーイベントが生
じた位置を正確に特定することは可能でないことが理解される。換言すれば、どの配列が
元々挿入DNA由来であり、どの配列が元々染色体DNA由来であったかを正確に特定す
ることは可能でない。さらに、第一の相同DNA配列および第二の相同DNA配列は、通
常、部分的に非相同性の領域によって分離され、「Campbell out」細胞の染色体中に残っ
40
たままになるのはこの非相同性の領域である。
【0408】
実用性に関して、コリネバクテリウム・グルタミカムでは、典型的に第一および第二の
相同DNA配列は少なくとも約200塩基対の長さであり、数千塩基対までの長さであっ
てよいが、該手順はもっと短いか、あるいはもっと長い配列に関しても機能するようにす
ることができる。例えば、第一および第二の相同配列の長さは約500∼2000塩基の
範囲であってよく、「Campbell in」からの「Campbell out」の取得は、第一および第二
の相同配列がほぼ同一の長さであり、好ましくは差異が200塩基対未満あり、最も好ま
しくは2配列のうちの短い方が長い方の塩基対の長さの少なくとも70%であるように設
計することによって促進される。
50
(149)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
【0409】
メチオニン産生株の構築
実施例1:メチオニン産生出発株であるM2014株の作製
コリネバクテリウム・グルタミカム株ATCC 13032をDNA A(pH273と
も称される)(配列番号1)で形質転換し、「Campbelled in」して「Campbell in」株を
得た。図6はプラスミドpH273の模式図を示す。そして「Campbell in」株を「Campb
elled out」して、「Campbell out」株M440を得た。該株はフィードバック耐性ホモ
セリンデヒドロゲナーゼ酵素(homfbr)をコードする遺伝子を含有する。得られた
ホモセリンデヒドロゲナーゼタンパク質は、S393がF393に変化しているアミノ酸
変化を含んでいた(Hsdh S393Fと称される)。
10
【0410】
次いでDNA B(pH373とも称される)(配列番号2)でM440株を形質転換
して、「Campbell in」株を得た。図6はプラスミドpH373の模式図を記載する。そ
して「Campbell in」株を「Campbelled out」して、「Campbell out」株M603を得た
。該株はフィードバック耐性アスパラギン酸キナーゼ酵素(Askfbr)(lysCに
よってコードされる)をコードする遺伝子を含有する。得られたアスパラギン酸キナーゼ
タンパク質では、T311がI311に変化していた(LysC T311Iと称される
)。
【0411】
M603株は約17.4mMのリシンを生成したが、ATCC13032株は測定可能
20
な量のリシンを生成しなかったことが分かった。さらに、ATCC13032株によって
は測定可能な量が生成されないのに比べて、M603株は約0.5mMのホモセリンを生
成した。それを表3にまとめる。
【表3】
30
【0412】
DNA C(pH304とも称され、その模式図は図6に記載される)(配列番号3)
によってM603株を形質転換して、「Campbell in」株を得た。そして該株を「Campbel
led out」して、「Campbell out」株であるM690を得た。M690株はmetH遺伝
子の上流のPgroESプロモーター(P497 metHと称される)を含有していた
。P497プロモーターの配列は配列番号11に記載される。M690株は約77.2m
Mのリシンおよび約41.6mMのホモセリンを生成した。それを以下の表4に示す。
40
(150)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
【表4】
10
【0413】
次いでM690株を以下のように突然変異させた:BHI培地(BECTON DICKINSON)中
で培養したM690の一晩培養を50mMクエン酸バッファーpH5.5で洗浄し、N−
メチル−N−ニトロソグアニジン(50mMクエン酸pH5.5中10mg/ml)で3
20
0℃で20分間処理した。処理後、細胞を50mMクエン酸バッファーpH5.5で再洗
浄し、以下の成分を含有する培地にプレートした:(すべての記述される量は500ml
培地に関して算出される)10gの(NH4)2SO4;0.5gのKH2PO4;0.
5gのK2HPO4;0.125gのMgSO4*7H2O;21gのMOPS;50m
gのCaCl2;15mgのプロトカテク酸;0.5mgのビオチン;1mgのチアミン
;および5g/lのD,L−エチオニン(SIGMA CHEMICALS, CATALOG #E5139)(KOH
でpH7.0に調整)。さらに、培地は以下の成分から構成される0.5mlの微量金属
溶液を含有していた:10g/lのFeSO4*7H2O;1g/lのMnSO4*H2
O;0.1g/lのZnSO4*7H2O;0.02g/lのCuSO4;および0.0
02g/lのNiCl2*6H2O(すべて0.1M HCl中に溶解)。最終的な培地
30
をろ過によって滅菌し、該培地に、40mlの滅菌50%グルコース溶液(40ml)お
よび滅菌寒天を1.5%の終濃度まで加えた。該最終の寒天含有培地を寒天プレートに注
ぎ、最少エチオニン培地とラベルした。突然変異株をプレート(最少エチオニン)にまき
、30℃で3∼7日間インキュベートした。培地上で生育したクローンを単離し、同一の
最少エチオニン培地上に再ストリークした。メチオニン生産解析のために数個のクローン
を選択した。
【0414】
メチオニン生産を以下のように分析した。菌株を30℃で2日間CM寒天培地上で培養
した。該培地は、10g/l D−グルコース、2.5g/l NaCl;2g/l 尿素
;10g/l バクトペプトン(DIFCO);5g/l 酵母抽出物(DIFCO);5g/l ビ
40
ーフエキス(DIFCO);22g/l 寒天(DIFCO)を含有していて、約121℃で20分
間オートクレーブされた。
【0415】
菌株の培養後、細胞をかき取り、0.15M NaClに再懸濁した。本培養では、か
き取った細胞の懸濁液を、0.5gの固形のオートクレーブ済みCaCO3(RIEDEL DE
HAEN)とともに、約1.5までの出発OD600nmで10mlの培地II(下記参照の
こと)に加え、該細胞を、軌道振とうプラットホーム(orbital shaking platform)(約
200rpm,30℃)上、100ml振とうフラスコ(バッフルなし)中で72時間イ
ンキュベートした。培地IIは、40g/l スクロース;60g/l 全糖(糖蜜由来)
(糖分に関して算出);10g/l (NH4)2SO4;0.4g/l MgSO4*7
50
(151)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
H2O;0.6g/l KH2PO4;0.3mg/l チアミン*HCl;1mg/l
ビオチン;2mg/l FeSO4;および2mg/l MnSO4を含んでいた。該培地
をNH4OHでpH7.8に調整し、約121℃で約20分間オートクレーブした。オー
トクレーブおよび冷却後、ろ過滅菌ストック溶液(200μg/ml)からビタミンB1
2(シアノコバラミン)(SIGMA
CHEMICALS)を加えて、終濃度100μg/lにした。
【0416】
サンプルを培地から採取し、アミノ酸含量に関してアッセイした。Agilent 1100 Serie
s LC System HPLC(AGILENT)でAgilentアミノ酸法を使用して、生成アミノ酸(メチオニ
ンを含む)を測定した。サンプルをオルト−フタルアルデヒド(ortho-pthalaldehyde)
でプレカラム誘導体化すると、Hypersil AA-column(AGILENT)での分離後に、生成アミ
10
ノ酸の定量が可能になった。
【0417】
M690の少なくとも2倍のメチオニン力価を示したクローンを単離した。追加の実験
で使用されるそのような1クローンはM1197と命名され、2005年5月18日にD
SMZ strain collectionに菌株番号DSM 17322として寄託された。この菌株に
よるアミノ酸生産をM690株による生産と比較した。それを以下の表5にまとめる。
【表5】
20
30
【0418】
DNA F(pH399とも称され、その模式図は図7に記載される)(配列番号4)
によってM1197株を形質転換して、「Campbell in」株を得た。次いで該株を「Campb
elled out」してM1494株を得た。この菌株はホモセリンキナーゼの遺伝子中に突然
変異を含有する。該突然変異は、得られるホモセリンキナーゼ酵素にT190からA19
0へのアミノ酸変化を生じさせる(HskT190Aと称される)。M1494株による
アミノ酸生産をM1197株による生産と比較した。それを以下の表6にまとめる。
(152)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
【表6】
10
【0419】
DNA D(pH484とも称され、その模式図は図7に示される)(配列番号5)に
よってM1494株を形質転換して、「Campbell in」株を得た。次いで該株を「Campbel
led out」してM1990株を得た。M1990株は、groESプロモーターおよびE
20
FTU(伸長因子Tu)プロモーターの両者を使用してmetY対立遺伝子を過剰発現す
る(P497 P1284 metYと称される)。P497 P1284の配列は配列番
号13に記載される。M1494株によるアミノ酸生産をM1990株による生産と比較
した。それを以下の表7にまとめる。
【表7】
30
40
【0420】
DNA E(pH491とも称され、その模式図は図7に記載される)(配列番号6)
によってM1990株を形質転換して、「Campbell in」株を得た。そして該株を「Campb
elled out」して、「Campbell out」株であるM2014を得た。M2014株はスーパ
ーオキシドジスムターゼプロモーターを使用してmetA対立遺伝子を過剰発現する(P
3119
metAと称される)。P3119の配列は配列番号12に記載される。M2
014株によるアミノ酸生産をM1990株による生産と比較した。それを以下の表8に
まとめる。
(153)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
【表8】
10
【0421】
実施例2:振とうフラスコ実験およびHPLCアッセイ
標準糖蜜培地を用いる振とうフラスコ実験を二重または四重で菌株で実施した。糖蜜培
地は1リットルの培地中に以下の成分を含有していた:40g グルコース;60g 糖蜜
20
;20g (NH4)2SO4;0.4g MgSO4*7H2O;0.6g KH2PO
4;10g
酵母抽出物(DIFCO);5mlの400mMスレオニン;2mg FeSO4.
7H2O;2mgのMnSO4.H2O;および50g CaCO3(Riedel-de Haen)
(ddH2Oで容量を補う)。20% NH4OHでpHを7.8に調整し、20mlの
連続撹拌培地(CaCO3を懸濁状態で維持するため)を250mlバッフル付きBellco
振とうフラスコに加え、該フラスコを20分間オートクレーブした。オートクレーブ後、
基本培地1リットルあたり4mlの「4B溶液」を加えた(または80μl/フラスコ)
。「4B溶液」は、1リットルあたり、0.25gの塩酸チアミン(ビタミンB1)、5
0mgのシアノコバラミン(ビタミンB12)、25mg ビオチン、1.25g 塩酸ピ
リドキシン(ビタミンB6)を含有していた。ビオチンを溶解するために該溶液を12.
30
5mM KPO4,pH7.0で緩衝化し、ろ過滅菌した。New Brunswick Scientificフ
ロアシェーカー中200または300rpmで、ゴムバンドで保護されたBioshieldペー
パーでカバーされたバッフル付きフラスコ中で、28℃または30℃で48時間、培養物
を増殖させた。24時間および/または48時間でサンプルを採取した。遠心分離によっ
て細胞を除去し、次いで上清を等容量の60%アセトニトリルで希釈し、そしてCentrico
n 0.45μmスピンカラムを使用して溶液をメンブレンろ過した。HPLCを使用して
、メチオニン、グリシンおよびホモセリン、O−アセチルホモセリン、スレオニン、イソ
ロイシン、リシン、および他の指定アミノ酸の濃度に関してろ液をアッセイした。
【0422】
HPLCアッセイでは、ろ過済み上清を0.45μmろ過済み1mM Na2EDTA
40
で1:100に希釈し、1μlの該溶液をホウ酸バッファー(80mM NaBO3、2
.5mM EDTA、pH10.2)中のOPA試薬(AGILENT)で誘導体化し、200×
4.1mmのHypersil 5μ AA-ODSカラムに注入し、G1321A蛍光検出器を備えたAgilent 1
100 series HPLC(AGILENT)上で分析した。励起波長は338nmであり、モニター対象
の発光波長は425nmであった。アミノ酸標準溶液をクロマトグラフし、それを使用し
て、種々のアミノ酸の保持時間および標準ピーク領域を測定した。Agilentによって提供
される添付ソフトウェアパッケージであるChem Stationを、機器コントロール、データ収
集およびデータ操作に使用した。ハードウェアはMicrosoft Windows NT 4.0(Microsoft
Service Pack (SP6a)でアップデート)をサポートするHP Pentium 4コンピュータであっ
た。
50
(154)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
【0423】
実施例3:脱調節された硫酸還元経路を含有する微生物の作製
プラスミドpOM423(配列番号7)を使用して、脱調節された硫酸還元経路を含有
する菌株を作製した。具体的には、大腸菌ファージλPLおよびPR分岐プロモーター(
divergent promoter)構築物を使用して、生来型硫酸還元レギュロン分岐プロモーターを
置き換えた。M2014株をpOM423で形質転換し、カナマイシン耐性に関して選択
した(Campbell in)。sacB対抗選択に続いて、形質転換体からカナマイシン感受性
誘導体を単離した(Campbell out)。次いでこれらをPCRによって解析し、硫酸還元レ
ギュロンのプロモーター構造を決定した。PL−PR分岐プロモーターを含有する単離体
をOM429と命名した。OM429の4つの単離体を、DTNBストリップ検査を使用
10
して硫酸還元に関してアッセイし、かつ振とうフラスコアッセイにおいてメチオニン生産
に関してアッセイした。DTNBストリップ検査を使用して相対的スルフィド生産を見積
もるために、ろ紙のストリップをエルマン試薬(DTNB)の溶液に浸し、試験対象の菌
株の振とうフラスコ培養上に48時間つるした。増殖中の培養物によって生産された硫化
水素はDTNBを還元し、H2Sの生成量におおよそ比例して黄色を呈する。ゆえに、生
じた色の強度を使用して、種々の菌株の相対的硫酸還元活性の概算を取得することができ
る。その結果(表10)は、4単離体のうち2つが相対的に高レベルの硫酸還元を示した
ことを表す。これらの同じ2単離体はまた、最高レベルのメチオニンを生産した。標準糖
蜜培地中で48時間、培養物を増殖させた。
【表9】
20
30
【0424】
40
実験4:大腸菌グリシン切断(gcv)オペロンを含有する菌株
グルコースからのメチオニン生合成に必要なGlyA酵素(R38)を介する、セリン
からのメチレンテトラヒドロ葉酸の生産は、同時に、副産物としてグリシンを生じさせる
。メチオニン過剰産生株では、グリシンの生産量はタンパク質合成の必要量より過剰であ
る。ゆえに、上記モデルにしたがって、コリネバクテリウム・グルタミカムにGCSを含
ませると、メチオニン合成効率が向上するはずであろう。
【0425】
大腸菌および枯草菌では、グリシンがタンパク質合成の必要量より過剰に存在する場合
、それはグリシン切断酵素系によって分解されて、第二の当量のメチレンテトラヒドロ葉
酸が生じる。大腸菌では、グリシン切断系には4つの異なるタンパク質を含む。これらの
50
(155)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
うち3つはgcvTHPオペロンによってコードされる。第四のサブユニットはリポアミ
ドデヒドロゲナーゼであり、マルチサブユニットピルビン酸デヒドロゲナーゼから援用さ
れる。コリネバクテリウム・グルタミカムはグリシン切断系を有さないと考えられる。コ
リネバクテリウム・グルタミカムは通常のマルチサブユニットピルビン酸デヒドロゲナー
ゼを実際有するが、大腸菌Gcvタンパク質のホモログはコリネバクテリウム・グルタミ
カムゲノム中に認められなかった。結果として、コリネバクテリウム・グルタミカムにお
けるメチオニン生産では、同時にグリシン生産が生じ、それは培養上清中に現れる。ゆえ
に、コリネバクテリウム・グルタミカムにGCSを導入し、大腸菌および枯草菌で行われ
るようにグリシンをメチレンテトラヒドロ葉酸に再循環することを試みた。
【0426】
10
この目標に向けての第一ステップとして、大腸菌gcvTHPオペロンを、その生来型
のプロモーターを用いずにPCRによって増幅し、pOM218中のP497プロモータ
ーの下流にクローニングした。pOM218は、コリネバクテリウム・グルタミカム中の
bioB位置に発現カセットを組み込むように設計された低コピーの大腸菌ベクターであ
る。ピルビン酸デヒドロゲナーゼ由来の必要な第四のサブユニットは、宿主生物コリネバ
クテリウム・グルタミカムから供給できると仮定した。得られたプラスミドpOM229
(図8,配列番号8)を出発生物であるM2014株に形質導入し、うまくCampbelled o
utして、OM212と命名される菌株を得た。そしてこれらの菌株を培養した。
【0427】
以下の培地を使用した:40g/l グルコース,60g/l 糖蜜(糖分45%),1
20
0g/l (NH4)2SO4,0.4g/l MgSO4*7H2O,2mg/l Fe
SO4,2mg/l MnSO4,1.0mg/l チアミン,1mg/l ビオチン。3
0% NH4OHでpHをpH7.8に調整し、培地を20分間オートクレーブした。オ
ートクレーブ後、培地20mlあたり200Mg/l B12,2mM L−スレオニン,
2mlの0.5g/ml CaCO3を加えた。リン酸バッファーpH7.2を、2Mス
トック溶液から200mMまで加えた。
【0428】
振とうフラスコ培養において、上で説明されるように1つの単離体OM212−1を分
析した。メチオニン生産の増加およびグリシンおよびホモセリンの減少を表す結果を表1
1に示す。
【表10】
30
40
【0429】
M2014株の炭素収率は0.0103Molメチオニン/糖1molであり、OM2
50
(156)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
12−1株は0.011Molメチオニン/糖1molの炭素収率を有することが観察さ
れた。
【0430】
別の実施形態では、リポアミドデヒドロゲナーゼをコードするlpdA遺伝子(配列番
号10)である、gcvTHPオペロンによってコードされないグリシン切断系のサブユ
ニットを、宿主である大腸菌からクローニングする。該遺伝子をその天然のプロモーター
を用いずに増幅し、P497プロモーターを代わりに加える。得られた断片を、gcvT
HPオペロンに加えて、大腸菌コリネバクテリウム・グルタミカムシャトルベクターpO
M229にクローニングする。
【0431】
10
実験5:機能的グリシン切断系に関するin vivoアッセイ
コリネバクテリウム・グルタミカムserA遺伝子をPCRによって作製し、Swa
IギャップpC INTにクローニングして、プラスミドpOM238を得た。次いで、
コリネバクテリウム・グルタミカムP497から発現されたグラム陽性スペクチノマイシ
ン耐性遺伝子(spc)を含有する平滑末端断片をAle IギャップpOM238にラ
イゲーションした。spc遺伝子をserAと同一方向で含有していた単離体をpOM2
53と命名した(図9,配列番号9を参照のこと)。pOM253を使用して、任意のコ
リネバクテリウム・グルタミカム株のserA遺伝子中の中断−欠失を作製することがで
きる。
【0432】
20
pOM253をコリネバクテリウム・グルタミカムM2014株に形質導入し、カナマ
イシン耐性に関して選択し、「Campbelled in」OM264K株を得た。スクロース耐性
(BHI+5%スクロース)およびスペクチノマイシン耐性(BHI+100mg/lス
ペクチノマイシン)によって選択することによってOM264Kを「Campbelled out」し
て、OM264株を得た。該株は、セリン、スレオニン、およびビオチン栄養要求体であ
る。
【0433】
OM264株を、プラスミドpOM229、またはグリシン切断経路(Gcv)を供給
する別のプラスミド(またはプラスミド群)で形質転換することができる。グリシン切断
経路が活性である場合、得られたserA−,Gcv+株は、グリシン、スレオニン、お
30
よびビオチンを含有する最少培地で増殖することができる。その理由は、メチレンテトラ
ヒドロ葉酸はグリシン切断系によって生成され、glyA遺伝子産物であるセリンヒドロ
キシメチルトランスフェラーゼ(SHMT)は、グリシンおよびメチレンテトラヒドロ葉
酸(methylene tetrahydrofolage)を基質として使用してSHMT反応を逆方向で実行す
ることによってセリンを生成できるからである。
【0434】
必要であれば、リポアミドデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、例えば大腸菌由来の
lpd遺伝子(lpdAとも称される;配列番号10)をクローニングし、上記株に形質
導入して、グリシン切断系に必要な第四のサブユニットを供給することができる。大腸菌
以外の生物由来のグリシン切断系をコードする遺伝子をPCRまたは相補性によって上記
40
のようにクローニングし、それを使用してコリネバクテリウム・グルタミカムに機能的グ
リシン切断系を供給することもできる。例えば、枯草菌遺伝子、gcvH、gcvPA、
gcvPB、gcvTおよびpdhD(これらはグリシン切断系の5サブユニットをコー
ドする(グリシンデカルボキシラーゼは枯草菌では2サブユニットから構成され、それら
はgcvPAおよびgcvPBによってコードされ、大腸菌では、これらの2機能は、g
cvPによってコードされる1サブユニットにまとめられている))、または任意の他の
好適な遺伝子のセットを使用しうる。唯一の要件は、該系が、コリネバクテリウム・グル
タミカム中で、過剰のグリシン(メチオニン生合成の結果として生産される)をメチレン
テトラヒドロ葉酸に変換するために十分なレベルで機能することである。
【0435】
50
(157)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
実験6:コリネバクテリウム・グルタミカムにおけるピルビン酸キナーゼのノックアウト
エレメンタリーモード解析では、ピルビン酸キナーゼ(R19)のダウンレギュレーシ
ョンによってメチオニン合成効率が向上することが示された(例えば図3を参照のこと)
。
【0436】
ピルビン酸キナーゼノックアウトの影響を調査するために、コリネバクテリウム・グル
タミカムのリシン産生株を分析した。リシン生産の増加が実際に観察されれば、このこと
は同時にメチオニン合成の増加を示しているはずである。リシンの形成は、アスパラギン
酸、アスパラギン酸リン酸、等の形成によって先行されるからである。リシン生産の増加
は、したがって、例えばアスパラギン酸の増加によって先行されるはずである。アスパラ
10
ギン酸はメチオニン生産の前駆体の1つでもあるため、アスパラギン酸の量が増加すると
、メチオニン合成も増加するはずである。
【0437】
コリネバクテリウム・グルタミカムlysCfbrとコリネバクテリウム・グルタミカ
ムlysCfbr Δpykの菌株比較を実行した。コリネバクテリウム・グルタミカム
lysCfbrは、アスパルトキナーゼをコードする遺伝子中に点突然変異を保持する突
然変異体である(Kalinowski et al. (1991), Mol. Microbiol. 5(5), 1197-1204)。そ
してこの菌株をピルビン酸キナーゼの欠失に使用した(コリネバクテリウム・グルタミカ
ムlysCfbr Δpyk)。
20
【0438】
振とうフラスコ中で最少培地で両株を培養し、バイオマス、リシンおよび副産物に関す
る炭素収率を測定した。2回の独立した実験の平均値に基づいて、ピルビン酸キナーゼノ
ックアウトに関するリシン収率が7.5∼12.1%に増加することが観察された。これ
は約62%の増加に相当する。
【0439】
結論として、ピルビン酸キナーゼノックアウトはリシンの合成を増加させ、対応してメ
チオニン合成も増加させるはずである。しかし、メチオニンを生産するためのピルビン酸
キナーゼノックアウトの使用が、メチオニン合成を増加させるとは予測されていなかった
。この代謝経路ネットワークについての一般的な知識を考慮すれば、メチオニン自体が活
性なピルビン酸キナーゼに依存するからである。
30
【0440】
実験7 異なる硫黄供給源の使用における取り込みの比較
エレメンタリーモード解析では、驚くべきことに、メチオニン合成効率が硫黄供給源の
還元状態に依存することが示されている。上記で説明したように、それぞれの節約された
(saved)NADPHに関して、メチオニン合成効率の4.6%の増加が予測される。し
かし、これまで、コリネバクテリウム・グルタミカムによる異なる硫黄供給源の使用およ
び増殖に関して、予備的かつ不完全なデータしか存在しない。
【0441】
異なる炭素供給源でのコリネバクテリウム・グルタミカムの培養が、実際に、メチオニ
ン合成効率のレベルを増加させるかどうかを試験するために、以下の実験を実施した。
40
【0442】
コリネバクテリウム・グルタミカム野生型株およびΔmcbR突然変異体を振とうフラ
スコ中でスルフェートおよびチオスルフェートで培養した。そのために、等モル濃度の対
応する硫黄供給源を、硫黄を含まないCG12 1/2最少培地に加えた。
【0443】
CG12 1/2培地(Medien)は1リットルあたり以下の成分を含む:20g グルコ
ース,16g K2HPO4,4g KH2PO4,20g (NH4)2SO4,300
mg 3.4−ジヒドロキシ安息香酸(3.4-dihydroxy benzo acid),10mg CaCl
2,250mg
MgSO4 7H2O,10mg FeSO4*7H2O,10mg Mn
SO4*H2O,2mg ZnSO4*7H2O,200μg CuSO4*5H2O,2
50
(158)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
0μg NiCl2*6H2O,20μg Na2MoO4*2H2O,100μg シア
ノコバラミン(ビタミンB12),300μg チアミン(ビタミンB1),4μg ピリ
ドキサルリン酸(ビタミンB6)および100μg ビオチン(ビタミンB7)。
【0444】
硫黄を含まないCG12 1/2培地の場合、すべてのスルフェートを塩素によって置
き換え、該塩素は、対応するカチオンの濃度が変化しないような濃度で使用した。以下の
塩を使用した:MgCl2*6H2O(SO42−<0.002%,Sigma);ZnCl
2−
2(SO4
<0.002%,Sigma);NH4Cl(SO42−<0.002%,Flu
ka);MnCl4*4H2O(SO42−<0.002%,Sigma)およびFeCl2*
4H2O(SO42−<0.01%,Sigma)。
10
【0445】
切込み付き振とうフラスコ中で30℃、250upmでシェーカーキャビネット(Mult
itron, Infors AG, Bottmingen, Switzerland)においてコリネバクテリウム・グルタミ
カムの培養を実行した。酸素制限を防ぐために、フラスコを最大10%まで培地で充填し
た。
【0446】
システインシンターゼCysK(R45およびR45a)およびシスタチオニン−γ−
シンターゼMetB(R46)はコリネバクテリウム・グルタミカムΔmcbRにおいて
過剰発現されることが知られている(Rey et al. (2003) 上記参照のこと)。
【0447】
20
両株はスルフェートおよびチオスルフェートで増殖できることがわかった。最高の生育
速度は野生型に関して観察され、スルフェートでμmax=0.44h−1であった。ゆ
えにスルフェートはコリネバクテリウム・グルタミカムにとって好ましい硫黄供給源であ
ると思われる。チオスルフェートもコリネバクテリウム・グルタミカムによって使用され
、低い生育速度μmax=0,31h−1が観察された。
【0448】
しかし、スルフェートをチオスルフェートによって置き換えた場合、野生型に関して0
.35gg−1から0.60gg−1へのバイオマスの増加が観察された。ΔmcbRノ
ックアウトの場合、スルフェートをチオスルフェートで置き換えると、バイオマス収率は
0.42gg−1から0.51gg−1にさえ増加した。これは13%および21%の収
30
率の増加に相当する。ゆえに、スルフェートをチオスルフェートによって置き換えると、
実際、ATPおよびNADPHが低減され、ひいては炭素収率に正の効果を有する。
【0449】
バイオマスの生産に低減した量の糖/グルコースしか必要でないため、より多くの糖/
グルコースがメチオニンの生産に利用可能である。ゆえに、スルフェートからチオスルフ
ェートへの変更は、実際に、メチオニン合成の収率を増加させ、この効果は、硫黄供給源
としてのチオスルフェートの使用を、遺伝的操作による好ましい代謝経路を通る代謝流量
の増大と組み合わせた場合に、さらにより顕著なはずである。
【0450】
図面の説明:
40
図1:エレメンタリーモード解析に適用されたコリネバクテリウム・グルタミカム野生
型の化学量論反応経路ネットワーク。両方向の矢印は可逆反応を表す。外因的な代謝産物
はグレーのボックス中に表示する。
【0451】
図2:メチオニン生産に関するコリネバクテリウム・グルタミカムおよび大腸菌の代謝
経路解析。コリネバクテリウム・グルタミカム野生型(A)、大腸菌野生型(B)、活性
なトランスヒドロゲナーゼを有するコリネバクテリウム・グルタミカム突然変異体(C)
、トランスヒドロゲナーゼを欠く大腸菌突然変異体(D)、活性なグリシン切断系を有す
るコリネバクテリウム・グルタミカム突然変異体(E)、グリシン切断系を欠く大腸菌突
然変異体(F)について取得されたエレメンタリーモードのバイオマスおよびメチオニン
50
(159)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
に関する炭素収率。記載される数値は、各シナリオに関するメチオニンの最大理論的炭素
収率を示す。直線(strait line)は最大バイオマスおよび最大メチオニン収率を有する
モードをつなぐ。
【0452】
図3:最大理論的メチオニン炭素収率を有するコリネバクテリウム・グルタミカム野生
型の流量分布。すべての流量はグルコース取り込みに対する相対モル流量として記載する
。
【0453】
図4:最大理論的メチオニン炭素収率を有する大腸菌野生型の流量分布。すべての流量
はグルコース取り込みに対する相対モル流量として記載する。
10
【0454】
図5:異なる炭素および硫黄供給源を用いるメチオニン生産に関するコリネバクテリウ
ム・グルタミカムの代謝経路解析:チオスルフェート(A)、チオスルフェートおよびギ
酸(B)、スルフィド(C)、スルフィドおよびギ酸(D)、ギ酸(E)ならびにメタン
チオールまたはその二量体であるジメチルジスルフィド(F)を利用するコリネバクテリ
ウム・グルタミカムについて取得されたエレメンタリーモードのバイオマスおよびメチオ
ニンに関する炭素収率。記載される数値は、各シナリオに関するメチオニンの最大理論的
炭素収率を示す。直線は最大バイオマスおよび最大メチオニン収率を有するモードをつな
ぐ。
【0455】
20
図6は、ベクターpH273、pH373およびpH304を示す。
【0456】
図7は、ベクターpH399、pH484およびpH491を示す。
【0457】
図8はベクターpOM229を示す。
【0458】
図9はベクターpOM253を示す。
【0459】
図10は、メチオニン合成に関して最適化された代謝流量についての好ましい一実施形
態を示す。
【0460】
30
(160)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0461】
(161)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0462】
(162)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0463】
(163)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0464】
(164)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0465】
(165)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0466】
(166)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0467】
(167)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0468】
(168)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0469】
(169)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0470】
(170)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0471】
(171)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0472】
(172)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
【0473】
(173)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
【図面の簡単な説明】
【0474】
【図1】図1は、エレメンタリー・フラックスモード解析に使用されたコリネバクテリウ
ム・グルタミカム野生型生物の化学量論(stochiometric)反応経路ネットワークを示す
。
【図2】図2は、メチオニン合成に関するコリネバクテリウム・グルタミカムおよび大腸
菌の代謝経路解析を示す。
20
【図3】図3は、メチオニンの最大理論収率を有するコリネバクテリウム・グルタミカム
野生型生物の代謝流量分布を示す。
【図4】図4は、メチオニンの最大理論収率を有する大腸菌野生型生物の代謝流量分布を
示す。
【図5】図5は、種々の炭素および硫黄供給源を用いるメチオニン合成に関するコリネバ
クテリウム・グルタミカムの代謝経路解析を示す。
【図6】図6は、実施形態の例において使用されるベクターpH273、pH373およ
びpH304を示す。
【図7】図7は、実施形態の例において使用されるベクターpH399、pH484およ
びpH491を示す。
【図8】図8は、実施形態の例において使用されるベクターpOM229を示す。
【図9】図9は、実施形態の例において使用されるベクターpOM253を示す。
【図10】図10は、追加の代謝経路が含まれている、コリネバクテリウム・グルタミカ
ム株の最適化された代謝流量分布の1つを示す。
30
(174)
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
JP 2009-504172 A 2009.2.5
(175)
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
JP 2009-504172 A 2009.2.5
(176)
【図9】
【配列表】
2009504172000001.app
【図10】
JP 2009-504172 A 2009.2.5
(177)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
【国際調査報告】
10
20
30
40
(178)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
(179)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
(180)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
(181)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
(182)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
(183)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
10
20
30
40
(184)
JP 2009-504172 A 2009.2.5
フロントページの続き
(81)指定国 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),
EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,
BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,
CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,L
C,LK,LR,LS,LT,LU,LV,LY,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG
,SK,SL,SM,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW
(72)発明者 ゼルダー,オスカー
10
ドイツ連邦共和国 67346 シュパイヤー,フランツ−シュトゥッツェル−シュトラーセ 8
(72)発明者 ヘロルト,アンドレア
ドイツ連邦共和国 67061 ルートビヒスハーフェン,ヴァン−ライデン−シュトラーセ 2
3
(72)発明者 クロップロッゲ,コリンナ
ドイツ連邦共和国 68239 マンハイム,ラスタッター シュトラーセ 10
(72)発明者 シュレーダー,ハルトヴィッヒ
ドイツ連邦共和国 69226 ヌスロッホ,ベンツシュトラーセ 4
(72)発明者 ハエフナー,シュテファン
ドイツ連邦共和国 67643 シュパイヤー,コルンガッセ 28
20
(72)発明者 ハインツル,エルマー
ドイツ連邦共和国 66123 ザールブリュッケン,セナトール−リヒャルト−ベッカー−シュ
トラーセ 48
(72)発明者 ヴィットマン,クリストフ
ドイツ連邦共和国 66127 ザールブリュッケン,アム カルコフェン 13
(72)発明者 クロエマー,イェンス
ドイツ連邦共和国 66292 リーゲルスベルク,シラーシュトラーセ 35
(72)発明者 ペロ,ヤニス
アメリカ合衆国 02420 マサチューセッツ州,レキシントン,ソロモン ピアース ロード
30
20
(72)発明者 ヨークン,ロジャーズ
アメリカ合衆国 02420 マサチューセッツ州,レキシントン,オーチャード レーン 4
(72)発明者 パッターソン,トーマス
アメリカ合衆国 02760 マサチューセッツ州,ノース アトルボロ,チャーチ ストリート
89
(72)発明者 ウィリアムズ,マーク
アメリカ合衆国 02151 マサチューセッツ州,レヴィア,スクール ストリート 58
(72)発明者 ハーマン,セロン
アメリカ合衆国 07405 ニュージャージー州,キネロン,チルホウィー ドライブ 18
Fターム(参考) 4B024 AA03 BA71 CA02 DA10 EA04 HA14
4B064 AE16 CA02 CA19 CC03 CC06 CC12 CC24 CD02 CD13
4B065 AA24X AA24Y AA26X AA88X AB01 BA02 BB02 BB03 BB12 BB20
BB29 BC02 BC03 BC09 CA17
40
Fly UP