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この事例の詳しい内容
トシダ工業株式会社
引抜鋼管専業メーカーが
生産管理パッケージで生産工程を可視化
管理業務を効率化し厳密な原価管理の基盤を構築
導入の狙い
変化に柔軟に対応できるシステムへ
移行したい
業務の重複を減らしたい
リアルタイムで進捗状況が把握でき
るシステムを構築したい
工場内の業務を可視化し、生産計画
の全体最適を実現したい
導入システム
繰返・量産型生産管理システム
『生産革新Ryu-jin』
基幹業務システム
『SMILE BS 販売/会計/人事給与』
統合型グループウェア
『eValue NS』
導入効果
システム一元化により、入力業務の
重複を解消できた
進捗状況のリアルタイムな把握を実現
ミルシート管理のシステム化ができた
生産性向上、業務改善の基盤が構築
できた
—USER
P R O F I L E ———————————————————
トシダ工業株式会社
●業種:製造業
引抜鋼管専業メーカーとして自動車産業をはじめ、幅広い業界のニーズに応える
トシダ工業株式会社は、鋼管引抜加工の専業リロールメーカー(受託圧延加工事業
者)
として、自動車業界を中心に製品を供給している。注射針製造から事業をスター
トし、長年にわたり蓄積されてきた引抜鋼管の技術力は、製造業界において高く評
価されている。長年運用してきたオフコンによる生産管理システムの老朽化、管理
業務の重複という課題に直面した同社は、生産管理パッケージシステムへの移行を
決断。これまで現場に委ねられていた作業プロセスの可視化は、管理業務を効率化
すると共に厳密な原価管理の実現という成果にもつながろうとしている。
●事業内容:引抜鋼管の製造、
加工
●従業員数:119名
(2016年2月現在)
生産管理システムをリプレースし、管理の効率化と
作業の可視化を実現したトシダ工業株式会社
2016年2月取材
自在に変化させる冷間引抜加工技術
引抜鋼管専業メーカーとして
自動車産業を中心に製品を供給
によって、製品を製造している。
トシダ工業株式会社は、自動車産業
プ引抜加工会社として、富士宮市内
をはじめとする産業界の多様な鋼管需
で産声を上げたのは1947年のこと。
要に1/100ミリという高い精度で応
1960年代に自動車産業向け引抜鋼管
える引抜鋼管専業のリロールメーカー
へと事業をシフトした同社の製品は、自
同社が注射針用のステンレスパイ
だ。高炉メーカーが製造する電縫鋼
動車メーカーの1次・2次サプライヤー
管を、ダイスとプラグの組み合わせに
を中心に、重機、建機、農機、家電など
よって鋼管の内径・外径を高い精度で
に幅広く供給されている。中でも強み
1
トシダ工業株式会社
を持つのが、自動車のショックアブソー
り上げのおよそ5割を占めている。
システムの全面見直しで
業務重複の解消を図る
構造を考えれば想像できるように、
トシダ工業は長年にわたり、オフコ
シリンダーチューブは表面の滑らか
ンによる生産管理システムを運用して
さが強く求められる。こうした顧客の
きた。しかし、老朽化したそのシステム
ニーズに、生産量において国内最長の
は拡張性に乏しく、操作・運用の煩雑
引抜メーター数を誇る同社の高度な
さといった課題を抱えていた。また、
技術力によって対応してきた。取締役
旧システムは払い出しと製品入庫のみ
鋼管部長の田村 浩之氏は言う。
を管理するものだったため、管理部門
「注射針製造から事業をスタートし
と工場現場部門での業務の重複とい
たという背景もあり、当社には、表面粗
う問題も生じていた。田村氏は言う。
度の精度向上を可能にする技術の蓄
「生産管理に関する業務を棚卸しし
積があります。それは特別なものでは
てみたところ、重複する業務が次々に
ありませんが、これから目指そうとする
浮かび上がってきました。全社を挙げ
場合、そのハードルは高いはずです」
てコスト削減に取り組む中、その無駄
同社が手掛ける引抜鋼管のサイズ
を見逃すわけにはいかないと判断した
は、外径は4~57mm、肉厚は0.7~
ことが、システムの再構築を決断した
8.5mmに収まる。大きいものは外径
最大の理由です」
100mmを超える引抜鋼管もあるが、
システムリプレースに向け、同社は
比較的小さなサイズで高い精度を必
部門横断型のプロジェクトチームを設
要とする製品を得意としているのは、
立。
「CHANGE」
と名付けられた同プ
注射針という極細パイプから事業をス
ロジェクトは、製造、販売、管理の各部
タートしたことも関係している。
門へのヒアリングを通して、業務の重
今日、日本の製造業は大きな転換
複を洗い出し、理想のシステムについ
期を迎えている。こうした中、同社は、
て考えていくという順序で進められた。
資本関係のある大手高炉メーカーの
品質保証部 品質管理課 課長の太田原
バー用シリンダーチューブで、同社の売
海外進出に伴い、タイ、中国、インドネ
竜氏は次のように当時を振り返る。
シア、インドへの進出も果たすほか、
「製造部門については、生産プロセス
引抜鋼管の各種加工まで手掛けはじ
の効率化よりもむしろ管理の容易さを
めている。
重視する形で検討を進めました。進捗
「リーマンショック後、自動車業界か
状況を確認するために工場まで足を運
らは、よりシビアなコスト管理が求め
ぶのではなく、状況が常にPC上で把握
られ続けています。最終製品に近い状
できるようにしたいと考えたことはその
態で納品してほしいという要望は、
こう
一例です。さらに生産計画の半自動化
した中で生まれたものです。汎用材か
など、実現が難しいと思われる項目を
ら専用材へ、という流れは今後より強
含め、要望をまとめていきました」
まっていくと見られる中、当社も引抜
興味深いのは、プロジェクトチーム
鋼管の切断・加工まで手掛けていく必
がまとめたシステム構築の理想論を
要があると考えています」
(田村氏)
そのままの形でベンダー各社に投げ
2
取締役 鋼管部長 田村 浩之氏
「『生産革新Ryu-jin』
を活用し、汎用材か
ら専用材へという流れをさらに推し進めてい
きたいと考えています。原価管理というもう
一つの課題も含め、大塚商会さんにはこれ
まで同様のサポートを期待しています」
品質保証部 品質管理課 課長 太田原 竜氏
「本稼働から約1年が過ぎ、データが蓄積さ
れていくことで、どの作業にどれだけ時間が
掛かっているのかが具体的な数字として見
え始めています。業務効率化を考える上で、
このデータが大いに役立つはずです」
鋼管部 鋼管業務部 課長 山本 智恵子氏
「大塚商会さんにはたびたび無理難題を押
し付けてきましたが、決してできないとは言
わずに、いろいろご提案いただき、とても感
謝しています。今後、システムの一層の活
用を進める上でも、
さまざまなアドバイスを期
待しています」
かけた点だ。
もらうことから始める必要がありまし
「高い要求は新たなコストを生みま
た。具体的には、生産実績、作業実績、
すが、導入の費用対効果をしっかりと見
不良実績など入力項目ごとに手順書
極めながら検討を進めたかったことが
を用意して勉強会を実施し、本稼働に
その第一の理由です。また、我々が直
向けた準備を進めました」
(太田原氏)
面する難題にどう対応するのか提案を
『生産革新 Ryu-jin』
では、複数製品
比較することで、ベンダーを見極めた
で共有する中間品や、加工途中の仕掛
いという狙いもありました」
(田村氏)
品を管理するための品番管理機能がポ
ベンダー選定は、各社の提案をプロ
イントとなる。しかし、当時のトシダ工
ジェクトメンバーがそれぞれ採点する
業では、引抜加工のプロセスにおいて
形で進められ、4、5社の中で最高点
払い出した原材料がそのまま製品にな
を得たのが、大塚商会の提案だった。
るため、払い出しと製品入庫のみを製
「当社の要望に対し、各社からは『で
番で管理する手法をとっていた事情も
きます』
という回答を得ました。評価の
あり、
『生産革新 Ryu-jin』の運用で求
ポイントはそれぞれ違うと思いますが、
められる品番管理という概念の理解も
その際に唯一大塚商会さんだけが、安
実は大きなハードルだったという。
易な『できます』だけでなく、
『が、しか
「ベテラン従業員ほどその理解に苦
し』
という現場に則した回答とその先の
労したというのが実情で、一時は違う
提案をしてくれて、そこを私は高く評価
選択肢もあったのでは、とまで考えま
しました。それは
『あまり固めすぎると、
した。しかし品番管理の機能があるこ
今後の業務体系の変更に対応しにくく
とで、システム導入後に本格化した引
なりますよ』
という、将来まで考慮した
抜鋼管の加工プロセスへのスムーズ
アドバイスでもありました」
(太田原氏)
な対応を実現できるという思わぬメ
リットにつながりました」
(田村氏)
製造現場での実績入力に向け
独自資料で勉強会を実施
日本に十数社あるリロールメーカーの中でも、加工した長
さの延べメーターでは日本で一番というところが同社の
強みだ
新システムの運用は、製造現場の課
題を浮き彫りにすることにもつながっ
た。旧システムでは、払い出しと製品
トシダ工業の新システムのベースに
入庫の管理だけを行い、途中のプロセ
なったのは、自動車・電気部品などを量
スの管理は現場に委ねられていた。そ
産加工する製造業に最適化された、繰
れにより、これまでは担当者が行う作
返・量産型生産管理システム『生産革
業の都合上、本来であれば今日行うべ
新 Ryu-jin』
だった。2014年3月の本
き作業が翌日に持ち越されることが少
稼働に向け、2013年1~3月にコン
なくなかったのだ。
サルティングを実施し仕様を決定、そ
「担当者は自身の作業効率だけを考
こから秋までカスタマイズ部分を設計
えてスケジュールを組むわけです。そ
する一方、同年夏からテスト稼働を開
れは後工程へのしわ寄せにつながり、
始するというスケジュールが組まれた。
生産計画そのものを無意味にします。
新システム稼働の最大のハードルは、
こうしたやり方ではいけないことを理
工場の現場での入力作業だった。
解してもらうことも、本稼働に向けた
「そのためにはP Cの操作を覚えて
苦労の一つでしたね」
(田村氏)
3
トシダ工業株式会社
新システムの本稼働は、関連販社と
鋼材検査証明書(ミルシート)発行のシ
の事業分野の見直しに伴い、計画から
ステム化が実現した点も効果の一つ
1年遅れた。顧客マスター再構築など
だ。これまで同社ではExcel等を使っ
の作業が生じたことも要因の一つでは
てミルシートの管理や発行をしてきた
あるが、実は目的である
「リアルタイム
が、ミルシート管理のシステム化は業
で進捗状況が把握できるシステムを構
務の省力化につながっている。
築」のための、工程マスターの構築およ
さらに会計システムと連携できた点
びテストのトライ&エラーも苦労の一つ
も見逃せない。
「従来は販売管理シス
だった。鋼管部 鋼管業務課 課長の山本
テムから経理システム側へ手動でデー
智恵子氏は次のように当時を振り返る。
タを取り込んでいましたが、移行後は
「新システムには、これまでの計画
『SMILE BS 販売』
から
『SMILE BS
の組み方と一致しない部分も少なくあ
会計』
へ自動的にデータが連携するよう
りませんでした。そもそも旧システム
になりました。経費も、
『eValueNS』
の
では工程管理を行っていなかったこと
ワークフローにおいて承認された伝票が
もあり、試行錯誤を繰り返しながら現
『SMILE BS 会計』
に自動的に取り込
場作業者と管理者の意見を調整し、落
まれるようになり、管理部門の業務効率
としどころを見つけていく作業は思っ
につながりました。また
『SMILE BS 人
た以上に時間が掛かりました」
工場側の入力実現によって、進捗状況のリアルタイムの
把握が実現
事給与』
によって、これまでアウトソーシ
ングしてきた給与計算が社内で行える
蓄積データが可能にする
原価管理の正確化
ようになり、マイナンバー対策という部
分でも大きな効果であったと考えてい
生産管理システムとSMILE BS販売/会計との連携も
効果の一つ
ます」
(山本氏)
導入効果として田村氏がまず挙げる
一方で製造現場の負荷増大は、当初
のは、データの蓄積とその抽出の容易
懸念されたほど大きくはなかった。
「む
さである。
「よりシビアなコスト管理が求
しろ求める情報が随時得られるように
められる中、当社も常にコストダウン要
なったことにメリットを感じる製造ス
請を受けていますが、その対応には正
タッフも多いようです。また業務改善
確な原価管理が不可欠です。新システ
の効果が、数字として示せるようになっ
ムによって各工程が管理できるようにな
た点も大きな効果です。業務改善に
り、その作業時間が蓄積されていくこと
は、現場スタッフの苦労が常につきま
で、今後は労務費まで含めたより正確な
といますが、効果は前後の過程に吸収
原価計算が可能になると考えています」
されてしまうことも多く、見えにくいの
また、リアルタイムな進捗状況の
が実情でした。効果が可視化されたこ
把握や、トレーサビリティの強化も大
とで、苦労した人に対し、効果を具体的
きな効果だ。
「これまでは紙資料を追
に示せるようになりました」
(田村氏)
うしか方法がなかった履歴のトレース
トシダ工業は、
『生産革新Ryu-jin』
が、PC上で即座に行えるようになった
に日々蓄積されるデータ分析を通し、
ことで、クレーム時の対応も確実にス
一層の効率化を推進すると共に、汎用
ピードアップしています」
(太田原氏)
材から専用材への転換にもシステム
また、今回のカスタマイズによって
を積極的に活用していく考えだ。
トシダ工業株式会社のホームページ
http://www.toshida.co.jp/
・会社名、製品名などは、各社または各団体の商標もしくは登録商標です。
・事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞等は取材当時のものであり、配付される時点では、変更されている可能性があることをご了承ください。
・この記事は2016年5月に作成されました。
Copyright©2016 OTSUKA CORPORATION All Rights Reserved.
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