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柱状型トランス・ポールトップ型鋼管柱の 風による累積疲労損傷度評価

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柱状型トランス・ポールトップ型鋼管柱の 風による累積疲労損傷度評価
電力中央研究所報告
電 力 輸 送
報告書番号: N 0 9 0 3 2
柱状型トランス・ポールトップ型鋼管柱の
風による累積疲労損傷度評価
背
景
市街地における配電柱整備事業として配電地中化の取組みがなされており、都市
景観に配慮した構造形式の 1 つに、柱状型トランス・ポールトップ型鋼管柱(以下、
柱状型トランス)が挙げられる。同設備は全質量の約 3 分の 1 を占める変圧器を鋼
管柱の頂部で支持するため、風や地震による振動が生じやすい。地震に対しては、
実機による振動台実験によりその耐震性が確認されている。一方、風に対しては、
風圧荷重による設計が一般的だが、疲労に関する規定はされていない。このため、
同設備については、風応答に起因する疲労き裂の発生やその進展状況などの疲労性
能を明らかにしておく必要がある。
目
的
柱状型トランスの風による発生応力を把握するとともに、風による疲労寿命を明
らかにし、それを踏まえた疲労に対する対策効果をあわせて検証する。
主な成果
風による疲労の照査では、発生応力と強度の評価が必要となる。本研究では、観
測と有限要素解析の結果から発生応力を評価し、また、強度は疲労実験の結果から
決定した。これらの結果に基づき累積疲労損傷度を算出し、疲労性能や対策効果を
評価した。
1.
風による発生応力の評価
柱状型トランスは、2 ヶ所の点検用開口部や種々の溶接継手形状を有し、疲労寿
命評価を行うには実機を対象として発生応力を把握することが重要である。このた
め、実機を当研究所内に設置し、風向・風速や曲げひずみ、変圧器固定用ボルトの
軸ひずみなどの経時変化を、7 ヶ月間にわたり観測した。観測の結果、片持ちはり
の 1 次モードが卓越した応答となることを把握した。また、一般に疲労では作用振
幅の繰返し回数と標準偏差が関係付けられるため、風向別に平均風速と曲げひずみ
の標準偏差との関係を明らかにした。さらに、変圧器固定用ボルトについては、軸
ひずみの標準偏差が曲げひずみのそれに比べて小さく、疲労損傷が生じる可能性が
低いことを確認した。
次に、観測した曲げひずみと応力集中箇所での局所応力との対応を明らかにする
ため、汎用構造解析コード ABAQUS を用いて 3 次元有限要素解析を実施した。局所応
力を Mises 応力注 1)で代表させ、解析結果に基づき曲げひずみからの換算式を求めた。
2.
疲労強度の評価
現行品、ならびに、疲労への対策として開口部の形状変更と溶接止端部の仕上げ
加工を施した対策品を対象とした実験を実施した。実験結果から、リブ溶接止端部
や開口部隅角部でのき裂進展と繰返し載荷回数の関係を求め、既往指針に示された
疲労強度等級注 2)と比べて該当する等級を決定した。その結果、上側開口部では、現
行品が G 等級、対策品が F 等級以上となった。
3.
累積疲労損傷度の算出
1、2 項の結果に基づき、まず修正マイナー則注 3)を用いて年間の累積疲労損傷度
を算出した。計算では、観測結果の平均風速と曲げひずみの標準偏差の関係と、解
析結果である応力集中箇所の Mises 応力の関係から、平均風速から応力集中箇所の
局所応力を評価した。一方、荷重条件には、事例として名古屋地区と静岡地区の気
象台での 10 年間の観測データから作成された平均風速の頻度分布をそれぞれ用い
た。次に、損傷度評価をしたところ、上側開口部で他の箇所より損傷度が 10 倍以上
大きくなり、名古屋地区では 0.282、静岡地区では 0.0735 となった。これに対して、
対策品では、名古屋地区と静岡地区のそれぞれで、損傷度が現行品に対して 10 分の
1 程度に低下し、対策の効果が確認できた。
注 1) Mises 応力:多方向から複合的に荷重が加わるような応力場において、1 軸の引張または圧縮応力へ投影
した応力。
注 2) 疲労強度等級:鋼構造物の疲労設計指針・同解説(日本鋼構造協会編)に規定された、疲労設計曲線の
区分。A∼H までの等級の区分があり、A 等級で一番疲労強度が高い。
注 3) 修正マイナー則:様々なレベルの応力振幅(疲労限以下のレベルも含む)が混在する場合の疲労寿命に
関する経験則。
研究報告
N09032
担 当 者
連 絡 先
[非売品・不許複製]
キーワード:柱状型トランス,鋼管柱,疲労損傷度,風応答観測,疲労実験
佐藤
雄亮(地球工学研究所
構造工学領域)
(財)電力中央研究所 地球工学研究所
Tel. 04-7182-1181(代)
E-mail : [email protected]
©財団法人電力中央研究所
平成22年4月
09−023
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