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第1章 自閉症の理解・定義・症状・特性理解

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第1章 自閉症の理解・定義・症状・特性理解
第1章 自閉症の理解・定義・症状・特性理解
3
Ⅰ
自閉症を正しく認識しましょう
自閉症を正しく認識することは、特性を理解することと同じくらい大切
です。なぜ、このような特性があるのか?なぜ、このような行動をするの
?なぜ、このような行動をするの
か?という問いかけに対し、表面的な部分しか見ずに対応すると
か?という問いかけに対し、表面的な部分しか見ずに対応すると児童生徒
に多くの負担を強いたり、学校生活を送る上で様々な困難が生じたりする
場合があります。自閉症を正しく認識した上で、
自閉症を正しく認識した上で、特性を理解するというこ
とは、学校での「学び」を支えるための重要な土台となるものです。
1
自閉症の歴史的背景を知りましょう
を知りましょう
自閉症はこれまで多くの医師、研究者によって研究結果
自閉症はこれまで多くの医師、研究者によって研究結果が発表されてい
ます。温故知新、歴史的背景を含めて自閉症を認識
認識しましょう。
1943年
レオ・カナー
論文により11例を
論文により11例を最初に報告
彼女は自分の中に閉じこもり、他人と隔たる
たる自分だけの世界に住
み、自分が自由にできる興味の中心以外には
には気がつかぬようであ
る。自己満足しており、他人に依存しない。言語発達
言語発達はおそく、言葉
には興味がないようだった。体験をめったに語
語らなかった。未だに代
名詞を混同し、適切な抑揚を持った疑問形で
で質問することはなかっ
た。同じ日課を繰り返すことに固執し、その妨害
妨害は、かんしゃくを起こす
多くの原因のうちの最大のものであった。彼女自身
彼女自身の行動は単純で
反復的だった。
図①
(11名の自閉症児童に関する追跡調査研究「幼児自閉症の研究」所収)
この文章を見ると、今日の目からみても自閉症に固有のすべての症状が
記載されています。翌年の1944年には、ハンス・アスペルガー(図①)
により、言葉の数の面で遅れがない自閉症の報告があります。
マイケル・ラター
「言語-認知障害説」
カナーの報告からおおよそ20年間、自閉症は
自閉症は精神分析的な家族因仮説
に基づいていました。アメリカではブルーノ・ベッテルハイムがこの家族
因仮説に基づいて「自閉症・うつろな砦」を報告、その中で「冷蔵庫マザ
ー」という表現が用いられています。つまり、自閉症は愛情不足、子育て
が原因とされてきていた時代がありました。
しかしラターは、家族因仮説に関して次のように批判しました。
次のように批判しました。
4
①自閉症は幼児期早期に発症するが、そうであるためにはきわめて
そうであるためにはきわめて
重篤な家族病理が存在するはずなのに実際
実際は軽微なものしかない
②家族の振る舞いは、おそらく原因というよりも
というよりも、子どもの異常に対す
る結果である
③家族因による一群があるとするなら、脳器質因
脳器質因による一群と異な
っていいはずなのに、何ら異なる臨床特徴がない
がない
図② サリーとアンの課題
(高岡 健:自閉症論の原点~定型発達者との分断線を超える~引用)
これらにより、自閉症家族因仮説を否定します。そして、ラターが打ち
立てた仮説が「言語-認知障害説」です。ラターは、情緒的交流の障害が
言語機能の欠陥に基づくものではないかと推測します。
言語機能の欠陥に基づくものではないかと推測します。そして、この言語
機能の障害は、認知の機能の障害と関連していると示唆
機能の障害は、認知の機能の障害と関連していると示唆します。その根拠
①サリーはカゴを、アンは箱を持っています。
を次のように述べました。
①自閉症は音に対する反応欠損、オウム返
返しの返答、<あなた>
と<私>を間違えるといった、様々な言葉の
の特徴が観察されている
こと
②言葉の遅れの程度と予後が相関すること
③記憶力はきわめて良いのに、言語を概念的
概念的、抽象的・象徴的に
用いることが不得手であること
④自閉症児の言語喚起が、聞こえたものの意味
意味とは無関係に行わ
れていることを示す検査結果があること
②サリーはビー玉を自分のカゴに入れました。
その後、サリーは散歩に行きました。
(高岡 健:自閉症論の原点~定型発達者との分断線を超える~引用)
③サリーがいない間に、アンはサリーのビー玉
をカゴから出すと、自分の箱に入れました。
現在では中枢神経系の機能障害又は機能不全が原因とされ、その結果と
して能力障害や社会的不利を起こしているとされています。
④さて、サリーが帰ってきて、自分のビー玉で
2
自閉症を認識するための研究からの
研究からの知見
遊びたいと思いました。
質問:サリーがビー玉を探すのはどこでしょう
バロン・コーエン/ウタ・フリス「心の理論障害」
「心の理論障害」
両者は「心の理論障害」という研究結果を報告しています。これは図
両者は「心の理論障害」という研究結果を報告しています。これは図②
図③
にあるような「サリーとアンの課題」を行うと、ほとんどの自閉症は誤答
課題」を行うと、ほとんどの自閉症は誤答
するという結果から、自らを他人に置き換えて、
他人に置き換えて、相手の心を推量したり、
予測したりすることが難しいとしました。
このことは1歳6ヶ月までにほとんどの定型発達の幼児が成立する三項
1歳6ヶ月までにほとんどの定型発達の幼児が成立する三項
関係(図③)が未成熟なために起こることとされています。また、表面的
)が未成熟なために起こることとされています。また、表面的
な三項関係は成立していても、対象とする相手(大人)の中に存在する他
己(他人の心)というところまでは理解できず、言動
言動に移してしまうため、
時には誤解を招いてしまうことも多いのです。
(徳永豊:三項関係形成モデル2003)
5
具体的な実行機能とは
アレキサンドロ・ロマノビッチ・ルリア「実行機能障害説」
①プランニング
~物事を順序立てる能力をプランニング
私たちは毎日の生活を送る上で、実行機能というシステムを使用してい
といいます。段取りや、見通しを立てる
ます。この実行機能とは、目的を遂行するという心理的な心構えを維持す
能力ともいえます。
る能力のことです。例えば、食事の準備をしているとき、途中でお風呂の
お湯を止めに行きます。その後、食事の準備に戻ると、先ほどまで行って
②ワーキングメモリ
~必要な記憶を一時的に保持しながら、情
報を処理することを同時に行う機能で
いた途中から引き続き始めることができます。これは、実行機能が働いて
いるから成し得ることなのです。
学習上における実行機能とは次の4つの内容があります。
す。ワーキングメモリは、日常生活の
様々な場面で働いています。
③思考の柔軟性
~問題を解決する時に、必要に応じて自分
①望ましい目標を設定する
②目的を達成する合理的な手順を考える
③他のものに気を取られず、物事に専心する
④その結果が最初の目標とどこまで一致しているのかを検討する
の枠組みを変えていく力です。一つの方
法でうまくいかないときに、様々な方法
つまり、これらの部分に障害があるのです。しかしこれらの部分を様々
を工夫したり、発想の転換を図ったりす
な支援方法を使って補うことができます。その代表的なものはスケジュー
る能力のことです。
ルや指示書でしょう。目標や手順などを分かりやすく伝えることは、自閉
症にとってとても重要なことなのです。
④抑制
~衝動性を抑える、必要のない反応を抑え
て必要な反応だけするといった機能で
脳科学の進歩から
す。行動の抑制が弱いと、早とちりや勘
違いをいつもしてしまいます。
現代では脳科学の進歩により、様々な活動を行う際に脳のどの部分を使
用しているのかということがCTスキャンやMRIを通して少しずつ解明
されてきています。
ラマ・チャンドラン
「ミラーニューロンシステムの低下」
人間が他者の意図を理解できるのは、五感から取り込まれた情報を分析
し、過去の記憶と照らし合わせて推論するからだと考えられています。脳
では、他者が行っている行為を観察するときに反応するニューロン(神経
細胞)があります。それは、まるで自分が行っているかのように反応をし
ているので、これを「ミラーニューロンシステム」と言います。このシス
テムは、他者の感情を理解するときにも働いています。
このように、ミラーニューロンの働きにより、脳内で同じように体験す
ることができるので、他者の行為や意図、感情などを直観的に理解できる
のです。このことは、模倣や観察学習にもかかわっている可能性があると
考えられているため、ミラーニューロンの機能障害が他者の意図の理解を
困難にさせている可能性、および共感の欠如にかかわっている可能性があ
るとされています。
6
図④ 障害の捉え方(ICF関連図)
Ⅱ
1
自閉症を理解しましょう
自閉症は発達障害
自閉症を理解するためには、前項でも触れましたが、環境や親の養育態
度が原因ではなく、発達期に何らかの中枢神経の機能障害が起こり、その
結果として能力障害や社会的不利が生じます。つまり、
「自閉症は発達障害
であり、機能障害を基盤とした発達の歪み」との共通理解が必要です。ま
た、適切な方法に基づく教育により、状態が改善する可能性が大いにある
という認識をもつことが大切です。現在の障害の捉え方について、ICF
現在の障害の捉え方について、ICF
のモデルが用いられています(図④参照)
2
自閉症の定義
(1)医学的理解
自閉症は行動の特徴から定義される症候群です。現在の国際的な診断基
準であるDSM-Ⅳ-TR(米国精神医学会の精神疾患の診断・統計マニ
(米国精神医学会の精神疾患の診断・統計マニ
ュアル第4版)では次のように定義しています。
1.対人相互作用における質的な障害
(非言語性行動や相互関係の困難さなど
さなど)
2.意思伝達の質的な障害
(話し言葉の獲得の遅れ偏り、言葉遣いの
いの奇妙さなど)
3.行動、興味及び活動の限定された反復的
反復的で常同的な様式
(強いこだわり、固執、常同行動など)
これらの3つの行動特徴を併せ持つ症候群
症候群で、生後3歳以前か
ら認められること
国立特別支援教育総合研究所「自閉症
国立特別支援教育総合研究所「自閉症教育実践ガイドブック参照」
これらの行動特徴は、狭義の自閉症だけでなく、高機能自
これらの行動特徴は、狭義の自閉症だけでなく、高機能自閉症、アスペ
ルガー症候群についても言及されています。このような広義の概念は、
「自
閉症スペクトラム」あるいは「自閉症スペクトラム障
閉症スペクトラム」あるいは「自閉症スペクトラム障害」と呼ばれること
が多くなりました。
この「自閉症スペクトラム」とは、ローナ・ウイングが発表したもので
すが、自閉症とは「つながり合っているけどどこか違う」
「だれ一人、同じ
人はいない」と述べています。また、この3つの症状を「自閉症の三つ組
。また、この3つの症状を「自閉症の三つ組
の症状」とも呼ばれます。
(2)ローナ・ウイングによる4つのタイプ分け
イギリスのローナ・ウイング女史は、自閉症の行動的特徴から4つのタ
イプに分けました。
①孤立群
②受動群
③積極奇異群
積極奇異群
④形式的で
で大袈裟な群
7
①孤立群~周りに人がいないかのように振る舞います。自分の目的がある
場合は他者に対しての反応もありますが、人を物のように扱う
ような場面が見られます。
<様子>
<教育的対応>
・学級内やプレイルームにおいて一人で
過ごしている。
・教師から関わりを求めようとすると、
その場から立ち去ってしまう。
・比較的、自分の身の回りのことができ
るが、自分のやり方にこだわり、その
やり方を訂正しようとすると怒り出
す。
・自分のやり方で、何でも取り組もうと
するので、はじめから正しいやり方を
身につけておく必要がある。
・1対1の場面や、教材や道具を介して
のやり取りで、やり直しや教師の指示
に応じることが多く見られる。
・自分の思い通りに、学校生活を送ろう
とするので、待つことができる、周り
・やり直しやもう1回繰り返すなどは、
とても嫌がる。
・感覚的な遊びは、一緒にすることがで
きる。(トランポリンで手をつなぐ等)
の友達を意識するなどの行動が難しい
場面がある。
・30歳くらいまで伸びるので、認知の
学習を大切にする。
②受動群~社会的に全く孤立しているわけではなく、人の接触も受け入れ
たり、他人を避けたりすることもしません。しかし、自分から
かかわりを持とうとすることが多くありません。
<様子>
<教育的対応>
・小さい頃は、人の指示に従い、とても
育てやすい子どもの場合が多い。
・指示に従うため人からの介入を受け入
れやすい、または受け入れるのが得意。
・思春期になると自我が芽生え、活動が
停滞していく。そのため、停滞するこ
・自我が芽生える前に、スケジュールを
使用し、自らスケジュールを確認しな
がら、主体的に日課を過ごすように指
導する。
・人から介入を受けて行動が生起するこ
とを理解し、必要以上の介入をしない。
とを気にする人からの介入を受けるた
・毎日取り組む活動を通して、確実に一
め他傷する。
(指示がないと行動が生起
人で行うようにする。
(一人で分かり、
しないから、介入する)
行動することを前提とする)
・人からの介入を受け入れたくないため
・活動に停滞が見られた場合は、じっく
に、自分の世界に入りたい→自己刺激
り、ゆっくり介入をし、早期に行動を
行動へ没頭する場面が見られてくる。
元に戻すことをしない。
8
③積極奇異群~他人との接触を活発に行います。しかし、同年代の人より、
大人や世話をしてくれる人に対して接触します。とりわけ、
自分の要求や、関心ごとは、相手の感情や事情へ注意を払
わず一方的に話したり、不適切なスキンシップをしたり
することが見られます。自分の思い通りに関心を示さな
いと、扱いにくくなったり、攻撃的になったりします。
<様子>
<教育的対応>
・自分のやりたいことや、要求を、大人
との関係で解決しようとする。
・自分で、課題解決を図ることはしない
ので、常に大人へ依存しようとする。
・依存することで、要求を満たすので、
満たされない場合は、注目行動(自傷
や物を投げる、人をたたく)などが見
られる。
・大人への依存を、スケジュールを使用
し、自ら行動管理できる力を完璧にす
る。
(個人別の課題学習で行う)
・大人への介入を求め、注目行動が出た
時には、スケジュールを確認するよう
な方法を取り、介入の求めに応じない。
・大人の介入がなく、行動することがで
きた場合に、大人からのポジティブな
・注目行動により教師が注意する行動が
賞賛をする。
(ありがとう、助かった等)
刺激となり、さらに依存したい時に、
・すぐに大人へ依存するため、教材も易
同じように余計なことをする。これが
→難とする。
(教材の中に興味を持たせ
ルーティーンとなってしまう
る工夫)
④形式的で大袈裟な群~コミュニケーションが良好で、意思の疎通もで
きるタイプ。細部にこだわる傾向があり、きま
りや約束ごとを頑なに守ろうとする。
<様子>
<教育的対応>
・家族に対して、見知らぬ人に対するの
・比較的、人からの指示を適度に受け入
と同じように、丁寧なあいさつをして
れられることから、毎日の生活で困難
しまう。
をきたすことは少ない。
・雑誌に書かれた「積極的に主導権を取
・几帳面で決まったことやルールをきつ
るように」の記事を読んでから、見知
く守ろうとするので、大人になってか
らぬ女性に礼儀正しく「キスしていい
ら精神疾患や統合失調症などになりや
でしょうか」と尋ねるようになった。
すいので注意する。
・人に親切にしたり、援助したりする気
・予定やスケジュールを自ら確認したり、
持ちが、他人の考えや感覚への理解が
変更したりすることに対応できる力を
欠けているような行動をする。
小さい時から身につけておく。
これらの4つのタイプを基本として、自閉症を理解することは、より具
体的な支援方法のヒントになることと考えられます。
9
Ⅲ
自閉症の特性を理解しましょう
自閉症の特性を踏まえて、教育内容を充実させていくことが求められて
います。この特性とは、自閉症の「苦手」としていることを「強み」と捉
としていることを「強み」と捉
えなおすことで、積極的に活用できるという考え方が必要です
えなおすことで、積極的に活用できるという考え方が必要です。
「強み」と
図⑤
して捉えなおし、新たな指導方法や手だてを講じることが
して捉えなおし、新たな指導方法や手だてを講じることができるようしっ
かり理解を進めましょう。
自閉症教育実践マスターブックに紹介されている
自閉症教育実践マスターブックに紹介されている(1)から(11)ま
での特性から見られる様子をチェックします。そして「強み」となるよう
に考え方をチェンジしてみましょう!(図⑤参照)
参照)
(1)対人相互反応における質的な困難
□相手を意識したやり取りができない
□教師からのガイドを受け入れることができない
Check!
□やり遂げたことを、一緒に共有することができない
図⑥
□集団での活動に参加することが苦手
乳児期は,対人関係が発達する時期
□「社会性に課題がある生徒だ」とよく言われる
月齢3ヶ月・・物よりも人間に注目する
該当するところに✓をしてみよう!
月齢4ヶ月・・あやすと声を出して笑う
月齢8ヶ月・・周りの人間も自分と同じよう
に,見たり,感じたり,意図し
たりするものである親の視線
を追ったり,特定の人に選択的
に愛情を持つ
この特性は自閉症の三つ組の症状の1つです。別な言い方で「社会性の
障害」とも言われています。対人相互反応の基盤は、注意や注目を
。対人相互反応の基盤は、注意や注目を相手と
同じものへ合わせていくことが大切です。そのためには、
「自己―対象物―
乳児期に築けるはずである
他者」という三項関係の中で形成することを通して
を通して、注意を調整し、他者
「人を意識する」
「人の意図を理解する」
の意図を理解することにつながるような、機会を設定し、発達全体に働き
が不完全であるために,長期にわたり
かけることが大切です。
(図⑥、図⑦参照)そのためには、大きな集団より
そのためには、大きな集団より
対人関係を築きにくくしているのです
も小さな集団、さらに1対1で向き合える学習に取り組みましょう。
図⑦
自己-対象-他者の発達
□1対1のやり取りからはじめよう!
□教師と一緒に課題に取り組むことをはじめよう
□教師と一緒に課題に取り組むことをはじめよう!
二項関係
Change!
□興味の持っている遊具や教材教具を媒介に活動を組もう
媒介に活動を組もう!
k!
□特定の人とのやり取りを通して、参加しよう
□特定の人とのやり取りを通して、参加しよう!
三項関係
□役割活動やルールを伴うゲームを計画的に行おう
□役割活動やルールを伴うゲームを計画的に行おう!
二項関係
取り組めそうな部分に✓をしよう!
10
(2)意思伝達の質的な困難
図⑧
□相手の言っている言葉を繰り返す
□大人の手を引いて要求することがある
□表出言語を伝える手段や機会がない
Check!
□不適切な行動で要求を伝えることがある
該当するところにチェックをしよう!
この特性は自閉症の三つ組の1つです。コミュニケーションのつまずき
は、対人的な発達や特定のものに強い興味を示すこだわりが関係している
図⑨
こともありますが、コミュニケーションだけの指導ではなかなか表出する
ことはありません。コミュニケーションは認知の発達、関係性の発達、伝
達手段の発達が情緒の調節と安定に導かれることで「コミュニケーション
ることで「コミュニケーション
したい」という表出にあらわれます。
(図⑧参照)
参照)
したがって、生活全体の中で表出できる機会を設定し、コミュニケーシ
ョンがしたくなるような働きかけが必要です。そのためには、適切なコミ
ュニケーションツールを用意して、代替手段を用いることも検討しましょ
ションツールを用意して、代替手段を用いることも検討しましょ
う。表出言語が良好な場合でも、言葉そのものや文脈に含まれている意味
表出言語が良好な場合でも、言葉そのものや文脈に含まれている意味
が分からず、字義通りに表面的に受け止めてしまうことがあります。
が分からず、字義通りに表面的に受け止めてしまうことがあります。伝達
する方法にも視覚的情報を合わせて提示すると効果的です。
(図⑨
(図⑨参照)
□視覚的情報を使って、伝えてみましょう!
□適切なコミュニケーションツールを用意しよう!
を用意しよう!
□1日20回以上の表出する機会を設定しよう
□1日20回以上の表出する機会を設定しよう!
一般的に自閉症の子供は、状況の変化に対
応する力に乏しいので、心理的な混乱や不安
Change!
k!
□なぜそのような行動をするのか観察し、これに替わる代替手段を
身につけよう!
に陥りやすく、さらに窮地に陥っていること
取り組めそうな部分に✓しよう!
に対して、援助が必要であることを求めよう
と意図することが困難であり、意図したとし
ても、伝達することに困難性がある。また、
些細な刺激でも想像以上の苦痛を感じるこ
とを周囲が理解できないため自傷等の原因
を理解することができず、援助も不適切にな
りがちである。しかし、教師などがきめ細や
かな観察等により、それらの状態が生じる背
景や原因を理解することが可能であり、かつ
適切な教育により状態が改善されることも
ある。
就学指導資料:平成18年7月 文部科学省
11
(3)行動や興味が限定され、反復的で情動的な様式
反復的で情動的な様式
□ある特定のものに著しく執着することがある
□突然の予定変更や突発的な出来事を嫌がる
□手をひらひらさせたり、体を左右に動かしたりする
Check!
□一定時間の間に何度も唇を教材や机につけたりする
教材や机につけたりする
該当するところにチェックしよう!
この特性は自閉症の三つ組みの1つです。このこだわり行動は自閉症の
ある人に多く見られる行動的特徴です。この行動は、外界からの刺激が変
化することで、自身がより混乱することを嫌い、
嫌い、避けるために、できるだ
け物事を常に一定に保とうとするために生じる行動です。
に保とうとするために生じる行動です。(図⑩、⑪参照)
また、常同行動とは、外界からの刺激をうまく処理できないために、自ら
刺激を作って楽しむことで、
、外界から自身を遮断していることが多いです。
また、刺激が少ない(何もすることがない)状況下でもこのような様子を
見せることがあります。また、こだわり行動の1つ
見せることがあります。また、こだわり行動の1つで、儀式的な様式(行
図⑩
動)を見せることもあります。
このこだわり行動は、著しく興味関心が強いということが言えます。つ
西田 1977
まり、この強い部分を「活かす」という考え方が必要です。なぜならこだ
同一性保持症状
わり行動を禁止すると、パニックなどの反応を見せたり
わり行動を禁止すると、パニックなどの反応を見せたり、放っておくと行
動は拡大したりするなど生活全体を混乱させることが
生活全体を混乱させることがあるからです。した
認知系の同一性保持症状
感覚系の同一性保持症状
・認知機能障害(抽象理解の
困難さ)ゆえに、抽象的状
況への展開を阻まれたから
である。
・感覚異常(過敏性)から派生
した不快刺激の回避を目的
とする。
常同行動
・不快刺激を遮断して、自分自身であるという感覚を作り出す
がって、禁止するだけではなく場所や回数を決める、適切な行動ができた
時に強化する、こだわっているものを係活動、余暇活動、作業に取り入れ
る、ご褒美として活用するなど、こだわりを活かした指導が大切です。
常同行動などは、なぜそのような行動をするのか、生活全般あるいは環境
などから考え見直していく必要があります。
図⑪
□こだわりを活かして指導しよう!
□予定を正確に提示して、スケジュール通り行動しよう!
予定を正確に提示して、スケジュール通り行動しよう!
□自己刺激行動する時間を見直そう!
Change!
□儀式的な行動を保証して、スムーズに生活を送ろう
□儀式的な行動を保証して、スムーズに生活を送ろう!
k!
取り組めそうな部分にチェックしよう!
12
(4)感覚の過敏、または鈍感
□子どもの泣き声や騒々しい場所で耳ふさぎをしている
□特定の場面で学習したり、場所に入ったりすることが
難しい
□同じ肌着や洋服しか着ようとしない
Check!
□傷口をかきむしりしたり、身体をぶつけたりしても痛がらない
図⑫
該当するところにチェックしよう!
感覚の調整機能(フィルター)
刺激
脳のフィルター
感覚受容器
この特性は、自閉症の感覚特性から生じるものであり、第4の特性と言
必要な刺激
の選択
われるほど支援や工夫が必要な問題です。感覚については、聴覚、視覚、
適切な刺激の
量に調節
不快
嗅覚、味覚、触覚が過敏であったり、逆に鈍感であったりする場合が多く、
快適
これらの原因についてはよく観察して、しっかり配慮する必要があります。
特に過敏性の問題は、周囲の人から理解されにくく、適切な支援や配慮が
受けられないことがあるために、いつまでも同じような状況が続き、不安
と苦痛、恐怖から、その場にいたくない=逃避行動、状況を何とかしてほ
しい=自傷行動として表れることもあります。また、同じような経験を過
去にすることで、エピソード記憶によるフラッシュバックにより、同様の
行動が見られることもあります。人によって感覚の受け取り方は違います。
(図⑫参照)つまり「感覚に慣れなさい」
「我慢しなさい」という対応では
なく一人一人にあった配慮や支援を行います。それらの配慮のもと、安心
して生活できるようにすることで、刺激への対応の仕方を学ぶ必要があり
ます。
□イヤーマフの使い方を指導しよう!
□どんなことに過敏なのか、調べて配慮しよう!
Change!
□ケガなどした時は、悪化しないように配慮しよう! k!
□どんな素材の生地が大丈夫なのか確かめよう!
取り組めそうな部分にチェックしよう!
13
(5)手続き的な記憶の仕方が得意
□衣服の畳み方等、登校後の準備の順序がいつも決ま
っている
□箸や鉛筆の持ち方が間違っている
Check!
□不適切な取り組みをやり直しさせると、怒り出してしまう
□新しい課題などに取り組むと、すぐに自己流で取り組みはじめ、
教えたとおりに実行できない
該当するところにチェックしよう!
行動の順序や作業の手順などを覚えるとき、その方法を規則的に機械的
に学習する方法を「手続き記憶」といいます。私たちが自転車に乗ったり、
水泳ができるようになったりする場合も、この手続き記憶があるからです。
自閉症の児童生徒に何かを教えたり、習得させたりする場合、この手続き
記憶に働きかける指導が必要です。手続きとは、正しくても正しくなくて
も手続きとなってしまうため、最初から最適な方法で教えていかなければ
なりません。また、一度、身についてしまった手続きは、変更することが
苦手なこともあるため、いつまでもその方法を用いてしまいます。これら
のことは、時には「こだわり行動」へ変化してしまい、家庭や学校での生
活に困難が生じることがあります。したがって、正しい方法ややり方で、
一つ一つていねいに正しい学びを重ねることが大切となります。支援者は、
その正しい方法を用いて指導を積み重ねることが大切です。
□「一度、身につけたやり方をしっかりと守れる」
児童・生徒だからしっかり教えよう!
□このまま続けていても大丈夫かどうか考えよう! Change!
□やり直しがないように、取り組み方を工夫しよう!
k!
□正しいやり方を統一して、誰でも同じように指導
できるように共有しよう!
取り組めそうな部分にチェックしよう!
14
(6)短期記憶より、長期記憶に働きかける
(6)短期記憶より、長期記憶に働きかける学習方法が有効
□毎日違う課題学習に取り組んでいる
□日替わりで係活動などの当番活動に取り組んでいる
日替わりで係活動などの当番活動に取り組んでいる
□学習の後、正しくできているか確認せずに
に終えている
Check!
ことが多い
□1度きりで終わるような学習計画をすることが多い
1度きりで終わるような学習計画をすることが多い
図⑬
該当する部分にチェックをしよう!
学習を進めるにあたり、様々な知識を一時的に保持する記憶を短期記憶
といいます。この短期記憶は、容量が少なく覚えていられる時間も短いた
め、何度も繰り返し取り組んだり、読んだり、書いたりすることで
め、何度も繰り返し取り組んだり、読んだり、書いたりすることで知識と
して保持することができます。この知識として保持される記憶を長期記憶
(意味記憶)といいます。長期記憶に固定化されると、視覚的、聴覚的な
手掛かりによって働きかけることで想起が可能になります。(図⑬参照)
したがって、教育内容を適切に選択し、繰り返しの学習によって、基礎
となる知識を確実に定着させることが大切になります。また、一度学んだ
知識を活用し、日常生活の中で繰り返し活用したり、発展的に学習を計画
したりすることで、様々な場面でも学んだ知識が発揮できるよう意図的に
で、様々な場面でも学んだ知識が発揮できるよう意図的に
設定することも大切です。
□同じ課題に取り組むことを基本とし、少しずつ内容を
Change!
k!
□確実に定着するまで、同じ係活動にしっかりと取り組もう
□確実に定着するまで、同じ係活動にしっかりと取り組もう!
変化させよう!
□取り組んだ学習が確実に定着しているか、しっかりと確認
確実に定着しているか、しっかりと確認
しよう!
□教育内容を精選し、何度も繰り返し取り組むことができる
何度も繰り返し取り組むことができる
学習計画を展開しよう!
取り組めそうな部分にチェックしよう!
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(7)聞きながら学ぶより、動作・操作を伴った学習方法が得意
□先生の説明や話しをする時間が長い
□「分かりましたか?」
「できましたか?」と質問
することが多くある
Check!
□椅子に座っている時間が長い
□視覚情報のみ用いて学習を展開している
該当する部分にチェックしよう!
図⑭
認知機能の特徴として、言葉や課題の意味を理解しながら取り組む学習
より、見ることで課題の内容が分かりやすく、操作することで達成できる
学習の方が得意なことが多くあります。
具体的には、見本に合わせる、組み合わせる、マッチング、型はめなど
が考えられます。また、書字ができる場合は、書いたり、写したりするこ
とも考えられます。これらのことから、
とから、説明や教示といった進め方よりも、
視覚的な方法を用いながらも、同時に操作や動作を伴った学習を進めるこ
とが大切です。これらの学習を進めるためには、これら
とが大切です。これらの学習を進めるためには、これらの特性を活かすよ
うな教材を作成したり、日常生活の中で実体験を通して
うな教材を作成したり、日常生活の中で実体験を通して指導する機会を設
定したりすることが必要です。
(図⑭)
ただし、言語理解が優れている高機能やアスペルガーの児童生徒には、
聴覚的な方法を用いることも有効となります場合があるため、一人一人の
法を用いることも有効となります場合があるため、一人一人の
認知発達に合わせた学習方法を検討することが重要です。
□簡単な説明で取り組める学習活動を考えよう!
□生徒の学習活動に取り組んでいる時間や
様子を行動で確認しよう!
□活動することで学習を支えよう!
Change!
k!
□視覚的な情報を書いたり、写したりできるような
いたり、写したりできるような
教材を工夫しよう!
取り組めそうな部分にチェックをしよう!
16
(8)聴覚より、視覚的な情報処理が得意
□行動を促す時は、繰り返し言葉かけを必要としている
□指示を出すと、エコラリア(反響言語)する
Check!
□教室移動の時、次に学習する教室を間違えていることがある。
□構造化とは壁に向かって学習することだと思っている
□視覚的な情報とは写真を使用することだと思っている
該当するところにチェックしよう!
多くの自閉症にとって、視覚的情報処理が得意なことは、すでにご存じ
の方も多いと思います。これまで多くの当事者の方からの話しや、自叙伝
などでも明らかになってきている特性です。ドナ・ウイリアムズは自らの
ことをビジュアル・シンカー(visual thinker)と呼び、
「絵で物事を考え
る」とまで言っているほどの特性です。そのため、情報の提示には、可能
な限り視覚的な情報を使用することが有効だと考えます。
本人の認知特性に合わせて、具体物からシンボルまでどのように使用する
か、一人一人に応じて必要な視覚的支援を行うことが重要です。
視覚的な情報とは、絵カードや写真を使用することだけではありません。
「学習の予定(スケジュール)
」「どのように取り組むのか(手順書)
」
「時
間(リミッター)
」「回数(カウンター)」
「大きさ(ものさし)」
「意思の伝
達(コミュニケーションツール)
」など多くの工夫が考えられます。つまり、
画一化されたものは存在せず、指導にあたっては個別化されたもので、児
童生徒本人にとって役に立つ視覚的支援を見つけることが大切です。
□言葉かけで通じないときは、見せるとよく分かる
視覚情報を活用しよう!
□エコラリアは「伝えたことが分かりません」と
Change!
□視覚的情報を用いて、予定や学習する場所、内容k!
解釈しよう!
を分かりやすくしよう!
□オーダーメイドのいろいろな構造化を考えよう!
□視覚的情報の種類はたくさんあります。活用を工夫しよう!
取り組めそうな部分にチェックしよう!
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(9)特別な能力(独特な思考方法等)を有する
□教師や友達の生年月日を覚えている
□長時間、取り組み続けている活動がある
Check!
□過去に起こった出来事や、友達の様子などを
正確に伝えてくることがある
□どこで見たことがあるのか分からないが、同じような絵を
何枚も繰り返し描いていることがある
該当するところにチェックしよう!
カレンダーの日付や曜日の記憶力に優れていたり、複雑な計算を簡単に
やり遂げたり、一度聞いた音楽を弾くことができるなど、予測できない能
力や技能、知識を持つ人がいます。
(図⑮参照)
これは優れた記憶力や瞬間ごとの意識集中(注意)が高く、優れている
ことが上記のようなことにつながります。また、興味の局限化、脅迫的性
格、常同行動など特性(3)でも触れた、こだわり行動と密接に関連して
いることがあります。
これらの能力は、時と場合によって弾力性がなく、切り替えが難しいな
ど扱いの難しさが伴う場合がありますが、これらの強い関心や事柄は、大
切な学習の手掛かりとなります。どんなことに特別な能力があるのか、見
逃さず生かしていくことが大切です。
上田豊治作
図⑮
特別な能力を有する場合
出会ったことはないですか?
カレンダー
計算が得意
で曜日や日
付を言い当
てる人
数回聞い
ただけでそ
の曲が弾
ける人
一目しただ
けで瞬時に
書いてある
ことを読む
読みの達人
一度見たも
のを見た通
りに細部ま
で精密に描
くことができ
る人
記憶と
独自の計
算方法
聴力記
憶と再生
技術
視覚性弁別と
想起力、書記
素から音素へ
の転換
記憶力と
手指の
巧緻性
No,
Change!
どのように生かしたらよいか、考えましょう!!k!
□すべてが特別な能力となる場合があります!
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(10)同時に複数の情報を処理することが難しい
(モノトラック/シングルフォーカス)
□写真を見せると、見てほしい部分と関係のない
部分について指さしすることが多い
Check!
□「形」「色」など、2つの属性に注目して、課題を同時に
マッチングすることが難しい
□たくさんの先生から言葉かけされると、動きが止まってしまう
□手順書通り、順番に物事を進めることができない
図⑯
該当するところにチェックしよう!
自分のライン
モノ・トラックな
状態
相手のライン
相手や何か
に合わせたり、
注意しながら、
そのことと自
分の行動を
関連づける
写真などで情報を提示しても、注目してほしい部分ではなく、背景に写
っている建物やお店の看板などの方に注目してしまうことがあります。こ
のことを「刺激の過剰選択性」と言い、教材などを作成する時に注意が必
要になります。また、1つの事柄に過剰に意識が集中してしまうことをシ
ングルフォーカスと言います。シングルフォーカスすると、2つ以上の物
モノ・トラックとマルチ・トラック
事に対して、両方に注意や意識を向けるということが難しくなり、どちら
かの情報のみが認知されてしまいます。その結果、片方は無視されてしま
うのです。この、どちらかの情報に意識を向けてしまうと、もう一つの情
報が分からなくなってしまうことをモノトラックと言います。(図⑯参照)
これらの認知特性から、児童生徒に何かを伝える時、注意がしっかり向
いたことを確認してから指示を伝えることが大切です。また、一度に複数
の指示や情報を提示しても、伝える側の意図とは違う部分に注意が向いた
り、手順などの順序がバラバラに認識したりすることもあることから、
「一
度にひとつ」の指示を心がけることが必要です。そのために教材やスケジ
ュールなどの工夫をすることも必要です。
□提示する写真を見てほしい部分だけ注目できる
ように工夫しよう!
□全体像が分かりやすくイメージさせながら、
継次的に処理できるよう提示しよう!
Change!
k!
□言葉かけする教師を一人に決めるなど、しっかり
役割分担を決めよう!
□手順や工程を1つずつ分かりやすく提示しよう!
取り組めそうな部分にチェックしよう!
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(11)情報をまとめて全体像をつかむことが難しい
□学校生活全般にわたり頑張りすぎて、突然、体調を
学校生活全般にわたり頑張りすぎて、突然、体調を
崩して休んでしまうことがある
□教室内では、休憩時間と学習時間の区別ができず、Check!
いつまでも机に向かうことができないことがある
図⑰
□教室移動を始めても、周りの様子に気を止めず、自分の
も、周りの様子に気を止めず、自分の
過ごしたいことを従事していることがある
該当するところにチェックしよう!
いろいろな情報を組み合わせて判断することや、状況に応じて行動する
て判断することや、状況に応じて行動する
など、情報をまとめて全体像をつかむ力のことを「セントラルコヒーレン
をつかむ力のことを「セントラルコヒーレン
ス」と言います。情報を統合するためには、どの部分の情報が必要で、ど
ます。情報を統合するためには、どの部分の情報が必要で、ど
の情報が不必要かを取捨選択する必要があります。
(図⑰参照)しかし、認
図⑱
知上、部分的な認知を行う傾向が強いので、細部知覚には優れていますが、
全体をまとめてつかむ全体知覚が苦手なことがあり、その結果、情報をま
とめて統合することに困難さがあります。
(図⑱、⑲
(図⑱、⑲参照)
このことにより、頑張りどころが分からなかったり、常に全力で成し遂
げようとしたりする思いのあまり、自己の体調の変化に
げようとしたりする思いのあまり、自己の体調の変化に気付きにくく、突
然、体調を崩すこともあります。このような特性から、時にはスケジュー
ルなどを活用し、休むことを教えることが大切です。また、学習で頑張る
ところを分かりやすく伝える工夫をしたり、視覚的情報提供を行った
ところを分かりやすく伝える工夫をしたり、視覚的情報提供を行ったりし
た上で、活動に見通しを持たせ心理的に安定する中で学習を進めることが
上で、活動に見通しを持たせ心理的に安定する中で学習を進めることが
大切です。
図⑲
□スケジュールを使用して、頑張ることだけでなく、
休むことも教えよう!
Change!
k!
□学習するときに机や教材の配置を変えて、学習を
始めることを視覚的に伝えよう!
□視覚的な情報を伝え、次にするべき行動を分かりやすく
しよう!
取り組めそうな部分にチェックしよう!
な部分にチェックしよう!
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【自閉症の特性に関する説明について】
これらの11の特性は、自閉症を理解する上で必要な知識となります。
このほか、
「自閉症等への対応ガイドラインVer.3」にも、自閉症の特
性に関する記述、太田のステージについても紹介されていますので、併せ
て参考にして下さい。
【自閉症の特性に関する実態把握について】
自閉症の児童生徒の特性を把握するためには、アセスメントが大切です。
アセスメントについても「自閉症等への対応ガイドラインVer.3」で説
明、紹介されていますので併せて参考にして下さい。
【まとめ】
自閉症教育は個人の取り組みだけでは解決できない事項も多く、学部や
学校全体で取り組む必要があります。その基本となるのがこの後に述べる
構造化などの教育環境の整備と、これまでご紹介してきた特性の理解と活
用です。多くの実践から自閉症教育を行うためのエチケットと言われるま
で一般的になりつつあります。
特性の理解にあたっては、自閉症教育に携わる教職員自らが、意識上の
バリアを低くすることが普及への第一歩だと考えています。
「今までのやり
方を変えたくない」
「これまでのやり方で問題ない」
「知的障害教育はこう
あるべきである」
「学校は集団を基本とするものである」
「障害があっても
児童生徒同士の自然なふれあいの中で成長していくものである」など様々
な次元での意識がバリアとならぬように、学校全体で共有化することが大
切です。
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