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資料1‐4 ナノテクノロジー・材料分野の重点課題等の評価

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資料1‐4 ナノテクノロジー・材料分野の重点課題等の評価
資料 1-4
科学技術・学術審議会
研究計画・評価分科会
(第 24 回)
H19.8.28
ナノテクノロジー・材料分野の重点課題等の評価結果
平成 19 年 8 月
ナノテクノロジー・材料委員会
ナノテクノロジー・材料委員会
主査
構成員一覧
北澤
宏一
独立行政法人科学技術振興機構理事
井上
明久
東北大学総長
魚崎
浩平
北海道大学大学院理学研究院教授
潮田
浩作
新日本製鐵株式会社技術開発本部フェロー
遠藤
守信
信州大学工学部教授
大泊
巌
岡野
光夫
早稲田大学理工学部教授
東京女子医科大学先端生命医科学研究所長・教授
長我部信行
株式会社日立製作所基礎研究所長
片岡
一則
東京大学大学院工学系研究科教授
川合
知二
大阪大学産業科学研究所長
岸
輝雄
独立行政法人物質・材料研究機構理事長
栗原
和枝
東北大学多元物質科学研究所教授
小長井
誠
東京工業大学大学院理工学研究科教授
榊
裕之
豊田工業大学副学長
竹山
春子
早稲田大学先進理工学部生命医科学科教授
田島
節子
大阪大学大学院理学研究科教授
田中
一宜
独立行政法人科学技術振興機構研究開発戦略センター
上席フェロー/独立行政法人産業技術総合研究所フェロー
玉尾
皓平
独立行政法人理化学研究所フロンティア研究システム長
樽茶
清悟
東京大学大学院工学系研究科教授
横山
直樹
株式会社富士通研究所ナノテクノロジー研究センター長
1
先端研究施設共用イノベーション創出事業(ナノテクノロジー・ネ
ットワーク)の事前評価票
(平成19年8月現在)
1.課題名 先端研究施設共用イノベーション創出事業(ナノテクノロジー・ネットワーク)
2.開発・事業期間
平成19年度∼平成23年度
3.課題概要
先端的な機能を有する研究機関の施設・設備を共用化することで研究環境の整備を図り、イノベーショ
ンの創出を目指す「先端研究施設共用イノベーション創出事業」の中で、ナノテクノロジー関連の研究施
設の共用化を推進する。
若手研究者を育成し、その活動を支援することは、科学技術の持続的発展のために、また知識・技術を
世代間で連続的に継承していくために不可欠である。このため、長期戦略指針「イノベーション25」
(H19.6.1 閣議決定)で指摘されているように、ナノテクノロジー・ネットワークにおいても、若手研究者が先
端機器へよりアクセスしやすい環境を整備する必要がある。これを実現するために、ナノテクノロジー・ネッ
トワーク各参画機関の装置を拡充してマシンタイムの増加を図り、若手に優先的に割り当てる。
4.評価結果
(1)必要性
<ナノテクノロジー・ネットワークにおける若手研究者支援>
①第3期科学技術基本計画
・「若手研究者に自立性と活躍の機会を与えることを通じて、活力ある研究環境の形成を指向する」
・「国は、このための環境整備(スタートアップ資金の提供、研究支援体制の充実、研究スペースの確保
等)に組織的に取り組む大学等を支援する」
②分野別推進戦略(H18.3.28 総合科学技術会議)ナノテクノロジー・材料分野
・「研究拠点の整備は、ナノテクノロジー・材料分野の基礎研究の推進策とともに、実用化に繋げる展開
を図るための推進策としても重要な役割を担う。(中略)人材育成の場としても機能するよう運用に対する
配慮が必要である。」
③平成20年度の科学技術に関する予算等の資源配分の方針(H19.6.14 総合科学技術会議)
・「若手、女性及び外国人研究者の活躍促進のための取組を充実・強化」
④長期戦略指針「イノベーション25」(H19.6.1 閣議決定)
・「多数の研究者が利用する基盤的かつ共通的な研究設備、学生の教育研究に必要な設備等の大学
や研究機関における計画的な整備を図る。また、高額の研究設備等は不必要に重複して整備すること
のないようにするとともに、既存の研究設備等を含め、若手育成や民間利用の観点も含め積極的に共用
を促進する。」
2
<先端研究施設共用イノベーション創出事業(ナノテクノロジー・ネットワーク)>
①分野別推進戦略(H18.3.28 総合科学技術会議)ナノテクノロジー・材料分野
・戦略重点科学技術「イノベーション創出拠点におけるナノテクノロジー実用化の先導革新研究開発」
「ナノテクノロジーによるイノベーション創出を効率的に誘発するため、研究成果による試作拠点や共同
研究センターなどの拠点の整備を進める。」とされている。
②「ナノテクノロジー・材料に関する研究開発の推進方策について」(H18.6 科学技術・学術審議会研究
計画・評価分科会ナノテクノロジー・材料委員会)
「世界トップレベルの研究開発力を達成し、またそれを維持していくためには、最先端の研究環境を戦略
的に整備・充実していくことが必要である。平成18年度で終了するナノテクノロジー総合支援プロジェク
トで蓄積された設備・経験を効果的に活用し、研究分野の融合とイノベーションを推進するために、最先
端施設・設備、研究支援領域、多様な利用形態を促進する運営体制等に留意しつつ、新たな研究支援
体制の構築を図る必要がある。」と指摘されている。
(2)有効性
多くの学問領域において、先端機器等を用いた測定・評価が研究遂行に必要不可欠のものとなってい
る。特に若手研究者は資金や人脈の蓄積がまだ比較的少なく、ナノテク・ネットワークで共用に供される機
器に頼るケースも多い。しかし、現在共用に供されている非常に高度な先端機器は、既にオーバーフロー
の状態である。その一方で、必ずしもすべて非常に高度な先端機器でなければできないわけではなく、汎
用性が高い機器で通用するものも多い。
このため、汎用性の高い機器をより多くの若手研究者等が身近に利用しやすい環境を整備することによ
り、若手が機器の操作技術の習得を含めて様々な知見や経験を積む機会が増え、我が国が得意とするナ
ノテクノロジー・材料分野の研究者の裾野の拡大、層の厚みの増大が期待される。また、自らの研究分野と
は異分野の施設・設備にアクセスすることが容易になり、分野の融合が進展し新たなイノベーションが期待
できるなど、ナノテクノロジーが基盤を支える全ての科学技術分野の振興が進むものと考えられる。
(3)効率性
本事業は、オープンアクセス型の研究拠点の形成に当たり、大学等研究機関が既に保有する先端機
器・設備等のポテンシャルを最大限活用することにより、分野融合研究、イノベーションの創出に不可欠
な先端研究環境を幅広い研究者に提供するものであり、効率的・効果的であると期待される。
5.評価結果
上記必要性により着実に実施すべき課題と判断する。
また、有効性、効率性についても、現段階での計画として十分検討されているものと判断する。
なお実施にあたっては、支援員の負担軽減及びキャリアアップについても十分に配慮する必要があると
ともに、将来的な制度運営の在り方についても検討していく必要がある。
3
平成20年度概算要求予定 : (調整中)
( 平成19年度予算額 :
3,180百万円の内数 )
先端研究施設共用イノベーション創出事業
(ナノテクノロジー・ネットワーク/量子ビーム施設横断利用)
◆概要:大学、独立行政法人等の研究機関が有する先端的な研究施設・機器の共用を進め、イノベーションにつながる成果を創出す
るために実施。本事業を通じて、産学官の研究者による戦略的かつ効率的な研究開発や、研究機関・研究分野を越えた横断的な研
究開発活動を推進することにより、継続的に産学官の知の融合によるイノベーションの加速を目指す。
独法・大学等の先端研究施設の共用を進め、イノベーションを加速
共用促進
産学官の先端研究ニーズ
○我が国の先端研究施設の
ポ
テンシャルを最大限活用
イノベーションを加速
○ 産学官の知の融合
独法・大学等が有する
先端研究施設
4
施設共用総合窓口・エリアネットワークによる情報提供・情報共有(共用可能施設・設備一覧、利用条件・状況等)
産業戦略
利用
ナノテクノロジー・ネットワーク
量子ビーム施設横断利用
…ナノテクノロジー分野における多様な研究からの技術
シーズを伸ばし、イノベーションにつなげる
量子ビーム技術は産業応用可能性が非常
に高いが、産業界における利用は浸透して
いない
ナノテクノロジー研究の特性にふさわしい機器を配し、ナノテクノ
ロジー研究環境として求められる研究機能(「ナノ計測・分析」、
「超微細加工」、「分子合成」、「極限環境」)を有する機関(群)を
採択し、全国の産学官の研究者に最先端の研究環境を提供
支援内容
特に、異なる種類の量子ビームの横断的利用に
より、革新的な成果が期待できる施設の最適な
組み合わせを重視し、限られた資源を有効活用
①施設共用の運転実施に係る経費の支援(運転費及び施設共用を技術的に支援する「施設共用技術指導研究員」)
②産業界に対する共同研究・利用課題の提案・相談を担当する「共用促進リエゾン」を必要に応じ配置
ナノテクノロジー・ネットワーク施設一覧(平成19∼23年度)
◎:中核機関
○:連携機関
「北海道イノベーション創出ナノ加工・計測支援ネットワーク」
◎北海道大学
○千歳科学技術大学
ナノ計測・分析/超微細加工
「ナノテク融合技術支援センターによるイノベーション
創出支援事業」
◎東北大学
ナノ計測・分析/超微細加工/分子合成/極限環境
「京都・先端ナノテク総合支援ネットワーク」
◎京都大学
○北陸先端科学技術大学院大学、奈良先端科学技術大学院大学
ナノ計測・分析/超微細加工/分子合成
「阪大複合機能ナノファウンダリ」
◎大阪大学
ナノ計測・分析/超微細加工/分子合成
「NIMSナノテクノロジー拠点」
◎物質・材料研究機構
○東洋大学、埼玉県産業技術総合センター、
群馬産業技術センター
センター機能/ナノ計測・分析/超微細加工
/極限環境
5
「放射光を利用したナノ構造・機能の計測・解析」
◎日本原子力研究開発機構
○物質・材料研究機構、立命館大学、高輝度光科学研究センター
「ナノプロセシング・パートナーシップ・プラット
フォーム」
◎産業技術総合研究所
ナノ計測・分析
ナノ計測・分析/超微細加工
「早稲田大学カスタムナノ造形・デバイス評価支
援事業」
◎早稲田大学
ナノ計測・分析/超微細加工
「中部地区ナノテク総合支援:ナノ材料創製加工と
先端機器分析」
◎自然科学研究機構分子科学研究所
○名古屋大学、名古屋工業大学、豊田工業大学
「九州地区ナノテクノロジー拠点ネットワーク」
◎九州大学
○九州シンクロトロン光研究センター、佐賀
大学、北九州産業学術推進機構
ナノ計測・分析/超微細加工/分子合成
「超微細リソグラフィー・ナノ計測拠点」
◎東京大学
ナノ計測・分析/超微細加工
ナノ計測・分析/超微細加工/分子合成
「シリコンナノ加工と高品質真空利用技術に関する支援」
◎広島大学
○山口大学
超微細加工
「電子ビームによるナノ構造造形・観察支援」
◎東京工業大学
ナノ計測・分析/超微細加工
ナノテクノロジー・ネットワークを活用した若手研究者の重点支援策
〔背景〕
・ナノテク研究において、先端機器の活用が研究遂行上不可欠なものとなっている。
・ナノネットの共用研究機器は、既にフル稼働している。
⇒ 若手研究者支援の観点から、若手用の機器の増強が求められている。
【長期戦略指針「イノベーション25」(平成19年6月1日 閣議決定)】
・研究設備の整備と共用の促進
多数の研究者が利用する基盤的かつ共通的な研究設備、学生の教育研究に必要な設備等の大学や研究機関における計
画的な整備を図る。また、高額の研究設備等は不必要に重複して整備することのないようにするとともに、既存の研究設備等
を含め、若手育成や民間利用の観点も含め積極的に共用を促進する。
6
◎より多くの若手研究者が身近に先端計測機器を利用できる環境を整備することで、
若手研究者のアイデア
より多くの若手研究者が身近に先端計測機器を利用できる環境を整備することで、若手研究者のアイデア
実現の機会を増やす。
実現の機会を増やす。
◎研究者の融合・相互作用を通じて
我が国のナノテクノロジー研究のレベルを底上げし、更なる振興を図る。
興を図る。
研究者の融合・相互作用を通じて我が国のナノテクノロジー研究のレベルを底上げし、更なる振
【若手支援に重点化する機器の例】
・電子ビーム露光装置
感光性樹脂を塗布した試料に電子ビームで描画することにより、半導体等の超微細加工
を行う。フィラメント交換、ビーム調整等、年間保守契約
・集束イオンビーム(FIB) ガリウムイオンを電界で加速した集束ビームで、エッチング、蒸着、観察等を行う。ガリウ
ムイオン線源の交換、ビームライン調整
・低周波数NMR
タンパク質等有機物の構造を解析する。液体ヘリウム代、電子部品、プローブ等
「ナノテクノロジー・材料を中心とした融合新興分野研究開発
(元素戦略)」の事前評価票
(平成19年8月現在)
1.課題名 ナノテクノロジー・材料を中心とした融合新興分野研究開発(元素戦略)
2.開発・事業期間
平成19年度∼平成23年度
3.課題概要
物質・材料の特性・機能を決める元素の役割を解明し利用する観点から「材料研究のパラダイム」を変
革し、新しい材料の創製につなげる「元素戦略」を平成19年度から開始しており、①豊富で無害な元素か
らなる高機能材料で代替、②戦略元素の有効機能の高度活用、③元素有効利用のための実用材料設計
技術、の3つの切り口を提示して公募を実施、事業を開始するところである。
平成20年度はこれに加えて、環境・資源・エネルギーの観点から重要な課題について、その実現のた
めの最大の障害と考えられる要素技術にスポットを当て、リソースを集中して取り組む。
具体的には、貴金属触媒、熱電変換材料、二次電池、高機能材料(モーター用磁石)、極限材料(タービ
ン羽根用耐熱合金)、などを例とした、直接間接的にエネルギー問題に資する材料・技術の開発に向けた
基盤思想の構築に取り組む。
4.評価結果
(1)必要性
①分野別推進戦略(H18.3.28 総合科学技術会議)ナノテクノロジー・材料分野
・戦略重点科学技術「資源問題解決の決定打となる希少資源・不足資源代替材料革新技術」
「希少資源や不足資源に対する抜本的解決策として、それらの資源の代替材料技術の革新は必須であ
り、省資源問題の中でも、最も材料技術に期待されているところである。」とされている。
②平成20年度の科学技術に関する予算等の資源配分の方針(案)(総合科学技術会議)
・環境・エネルギー等日本の科学技術力による成長と国際貢献
「環境・エネルギー技術等、我が国の科学技術力を最大限に活用し、持続可能な社会の実現に向けた
世界の諸課題に積極的かつ継続的に取り組む」と指摘されている。
③長期戦略指針「イノベーション25」(H19.6.1 閣議決定)「研究開発ロードマップ」
・「4.世界的課題解決に貢献する社会:2010年頃までの研究目標(第3期科学技術基本計画期間):希
少金属の機能代替技術」
7
(2)有効性
本領域は、元素戦略の目指す目標を共有しつつ、平成19年度に設定した研究開発領域を補完するも
のである。元素戦略の実施課題と相まって環境・エネルギー問題に貢献することが十分に期待できるととも
に、将来的な発展の可能性があってもすぐには実用化に結びつきにくい中長期的な基盤技術の研究開発
について推進を図っていく。
(3)効率性
事業の効率性を確保するために、公募に基づいて審査を実施する競争的資金として実施することとし
ている。また、専門的知見を有する専門家をPD/POとして充て、研究計画や研究の進捗状況の妥当
性について研究グループを指導させることとしている。
また、元素戦略は経済産業省「希少金属代替材料開発プロジェクト」と公募段階から連携し、両省で情
報を共有してそれぞれのプロジェクトへの提案が相応しい課題については再提案を認めるなどの運用を
行っている。これにより、それぞれのプロジェクト間での重複が排除されるなど、研究開発の効率的な進
行に努めることとしている。
5.評価結果
上記必要性により着実に実施すべき課題と判断する。
また、有効性、効率性についても、現段階での計画として十分検討されているものと判断する。
なお、19年度は産業界との連携が条件とされるなどやや偏りが見られたため、今後採択課題の選定に
あたっては、産学連携という足枷を外して基礎的研究に力を入れるなどの検討を行う必要がある。
8
元素戦略
○元素の持つ特性を深く理解し活用する、元素多様性の発掘と物質創造
○物質・材料の特性・機能を決める元素の役割を解明し利用する観点から「材料研究のパラダイ
ム」を変革し、新しい材料の創製につなげる研究
○多様な基礎研究を結集し、希少元素・有害元素の代替技術等の開発による社会貢献を目指す
基礎研究を結集して、様々な具体的材料創製成果を目指す
元素戦略
9
ニッケル・フリー
ステンレス鋼
鉛や水銀を
使わない材料
白金の数10倍
インジウムを使わない
活性な触媒
液晶ディスプレー
高機能材料の追求
デ
ィ
スプ
レイ
材料
自動車
用触媒
有害物フリー
希土類磁 石
板
用鋼
構造
具
工
硬
超
タングステ
ンを使わな
い高信頼性
工具
希土類に
頼らない
磁性材料
元素戦略の背景
産業界と連携
し多様な応用
の可能性
・希少元素を添加した合金
・白金を使った触媒
希少元素の
使用量の増加
社会貢献
先端産業で求められる
新素材
・液晶ディスプレイ用透明電極
=インジウム
・モーター用磁性材料
=ディスプロシウム
環境負荷
需給リスク
元素戦略
資源の供給不安や偏在
価格の急騰
・採掘による環境破壊
・鉛など有害物質の使用
基礎学問領域
化学
金属学
電磁気学
結晶学
力学
物理
様々な学問領域
の研究力を糾合
ナノテクノロジーと材料分野の研究の蓄積を活用して
希少元素や有害元素を使わずに済む技術を開発
元素戦略
平成20年度概算要求額:(調整中)
(平成19年度予算額:
430百万円)
資源・環境・エネルギー問題解決に資する元素戦略
元素戦略の趣旨
◎一部の希少元素や有害元素は近年の先端技術に不可欠の存在である一方で、埋蔵量や地域偏在といった希少元素の需給バランスに
大きく影響を受けやすい、環境負荷が大きいなどの問題がある。そこでこれらを使用しない代替材料の開発を推進。
◎19年度は対象分野を限定せず、(ⅰ)希少元素代替、(ⅱ)有害元素代替、(ⅲ)構造制御による使用元素量の低減という観点から、亜
鉛メッキのアルミ代替、自動車用非貴金属触媒、非ビスマス圧電材料、非希土類磁石、インジウム代替技術など、主に材料シーズ追求
型の7課題を採択。なお、実施に当たっては、経済産業省と合同戦略会議を設置し、緊密に連携。
20年度の取組
◎ 20年度は「元素戦略」を拡充し、資源・環境・エネルギー問題の解決に資する技術開発に重点をおき、新たに課題を公募。
◎ 具体的には、貴金属触媒、熱電変換材料、二次電池、高機能材料(モーター用磁石)、極限材料(タービン羽根用耐熱合金)などを目標
とし、材料を構成する元素の役割とその機能発現のメカニズムを科学的に解明し、開発実用化を阻む障害を正確に認識し、解決。
考えられる研究課題例
環境に有害な元素の代替・削減
10
希少元素の代替・削減
希少元素フリー耐熱鋼・合金
貴金属フリー燃料電池
希少元素(W,Mo,Ni)に
よらず優れた耐熱性をも
つ耐熱合金・耐熱鋼
空気極 (正極)
Pt担持
カーボンブラック
固体高分子膜
(電解質)
燃料極 (負極)
Pt担持
カーボンブラック
普及の観点から、白金・貴金
属に代わるユビキタス元素
による触媒が求められる
ボイラ・タービン・発電機等の
使用限界温度向上による
熱効率向上
タービン排気
温度向上で
熱効率アップ
希土類元素フリー磁石
希土類元素(Dy, Nd)を
用いない高性能磁石
モータ・発電機・機械の小型化
低コスト化・効率向上
有害元素フリー熱電素子
照明
給湯
エアコン
ライト
オーディオ
カーナビ
電子制御系
電力
ボイラ
熱電変換
素子
排熱
有害元素
Bi,Teを
含有
エンジン
オフィスビル
集合住宅
自動車
コバルトフリー二次電池
燃料電池・太陽電池など新エネルギ源使用時の動作
安定化のため、二次電池使用は必須
電極にコバルトを用いない電池
ナノテクノロジー・材料を中心とした融合新興分野研究開発
中間評価 総合所見
課題名:
原子スイッチを用いた次世代プログラマブル論理演算デバイスの開発
項
目
要
約
1.全体評価
・ 新しく見出した現象をもとに、従来にないデバイスを実現しようとする
意欲的な内容であるが、まだ現象の理解が最重要な時期であるように思
える。我が国発の原子スイッチ技術の実用化を目指した研究の着実な進
展に大いに期待したい。
・ 困難なハードルを着実に越えながら、代表者のリーダーシップの下に研
究が進捗しており、非常に優れた成果が今後、一層期待出来よう。
・ 一方で、なぜこの材料がよいのか、今の材料で十分なのか、など基礎的
原理的研究の厚みが、もう少し欲しい。
・ 報告書には、
「予想以上に早い製品化が見込まれる」と記されているが、
その根拠が明確になっていない。その根拠となるデータを公表する必要
がある。
・ 企業で進めている材料と研究所で進めている材料が異なっている現状
を多少危惧している。材料系は単一に絞るかあるいは企業側が進めてい
る材料系について現象の徹底解明を研究所が責任をもって行うべきで
はないか。
2.個別評価
1. 目標達成度 :概ね達成された
・ 基盤となるメカニズム解明から光制御型原子スイッチの動作実証に至
るまで、当初計画の目標を概ね達成している。
・ 原子スイッチに関する基本メカニズム解明を進化させた点、そしてそれ
を素子開発設計の指針として活用できる点を評価。
2.進捗状況 :概ね順調に進捗している
・ 当初計画に沿って順調に進捗しており、現象の把握が進んでいるが、実
際の演算素子等に応用するにはまだハードルが高い。
・ 3端子型原子スイッチの動作の実証によって、構造と材料の最適化をは
かり、実用デバイスの基本技術の確立を目指せる見込みは大きいと思わ
れるが、この実証について未達である。
3.計画の妥当性 :妥当である
・ 原子スイッチの検証・メカニズムの解明、オンチップデバイスの試作・
製品化基盤技術の構築は、妥当と判断。
4.(1)科学的・技術的価値 :概ね高い
・ 原子の移動を利用した独創性の高いユニークな提案であり、世界をリー
ドしている。その信頼性、均一性等について不安が除かれれば、従来の
デバイスの概念を覆すことになる。
・ 金属原子架橋の形成と消滅に関するメカニズムは、材料探索に関する理
論的な設計という点では今一歩と感じた。今後は、偶然から必然への変
化を期待する。
11
4.(2)科学的・技術的波及効果 :概ね高い
・ 我が国独自の原子スイッチ技術によって次世代プログラマブル論理演
算デバイスが開発できれば、Beyond CMOSの一端として次世代高度情報
化社会の発展に極めて大きな波及効果をもたらすものと期待される。
4.(3)社会的・経済的波及効果 :概ね期待できる
・ 非常に新しい概念の電子デバイスを目指しており、最初の製品が成功す
るかどうかで、その後の波及効果が分かれる。実用化への目処が立てば
経済的にも大きな波及効果が期待できる。
・ 技術的・産業的優位性が競合技術に対して示されて初めてインパクトが
生じる。
4.(4)知的財産権の確保 :基本特許を出願した
・ 外国出願も含めて確実に知財権確保を進めているが、研究グループのメ
ンバーの数から考えて、更なる対応が求められる。
5.情報発信 :概ね行われている
・ 学会発表を通じての一般向け成果普及活動は十分であると言えるが、論
文誌への掲載は少なく、今後の伸びを期待する。
6.(1)研究代表者の指導性 :概ね発揮された
・ 研究計画、目標、進行に伴う対策や方向性の設定等代表者の指導力が発
揮され、産学の効率よい連携体制が構築されている。
6.(2)実施体制 :概ね確立している
・ 大学と企業の明確な役割分担の実行、共同作業、公開利用制度の活
用等、効率的な運営が行われている。
3.その他
評価責任者氏名:
北澤
宏一
12
○原子スイッチを用いた次世代プログラマ
ブル論理演算デバイスの開発
1 プロジェクトの概要と目的
非シリコン系材料を用いて、半導体トランジスタの微細化限界を超えた演算デバイス
開発を行うことを目的とする。
基盤材料として固体電解質を用い、電極間に金属ブリッジの形成と消滅を制御して動
作する原子スイッチは、半導体トランジスタと較べて、素子サイズが小さく、スイッチ
オン抵抗も小さい。さらに、半導体トランジスタと異なり、電源をオフしても状態が保
たれる不揮発性を備えている。
この特徴を利用すると、プログラム可能で、かつ、専用IC(ASIC)並の性能を
持ったプログラマブル論理演算デバイスの開発が可能になる。
本研究では、チップサイズ1/10以下、演算規模10倍以上、実現可能な機能数
(プログラム可能数)数万倍以上を実現するデバイスの製品化基本技術開発を行う。
非トレンド技術でブレークスルー
スイッチ抵抗(Ω)
原子スイッチ
10k
ソース
ゲート
GaAs-FET
MOSFET
1k
100
イオン伝導体 ドレイン
金属ブリッジの形成と消滅を
固体電気化学反応で制御
従来型半導体スイッチ
10
原子スイッチ
1
1nm
1µm
スイッチサイズ
金属だから
小さくても
抵抗が低い
1mm
1チップであらゆる機能を実現するデバイス
サイズ
オン抵抗
1/30に
1/40に
原子スイッチ
不可能 回路変更 可能
面積 = 120F2
ON抵抗 = 2kΩ
長い 開発期間 短い
低い
機能性・汎用性 高い
プログラマブルデバイス
従来型
次世代型
Logic
Cell
Logic
Cell
Logic
Cell
Logic
Cell
原子スイッチ
プログラム可能で
専用IC並の性能を
原子スイッチで実現
従来の
ASIC
低い
性能
高い
(処理速度、消費電力)
高い
チップコスト 安い
面積 = 4F2
ON抵抗 = 50Ω
13
2 研究期間と予算
平成17∼21年度
平成17年度
平成18年度
平成19年度
2.8億
2.5億
2.4億
3 プロジェクトの必要性と背景
回路変更によって様々な機能を実現するプログラマブル論理演算デバイスは、ユビキ
タス情報化社会を実現する上で、極めて重要、かつ不可欠なデバイスである。また、近
年、専用ICの開発コストも増大の一途を辿っている。容易に回路の再構成が出来るプ
ログラマブルデバイスを用いれば、開発コストの大幅削減と開発期間の大幅短縮を実現
できることから、専用ICに代わるデバイスとしても期待されている。
4 期待される効果
専用IC並の高い性能を持ち、かつ1チップであらゆる機能を実現可能なプログラ
マブル論理演算デバイスの開発が可能になる。
5 実施体制
プロジェクトリーダー
青野 正和(物質・材料研究機構)
日本電気(株)、東京大学、自然科学研究機構分子科学研究所
6 進捗状況
早期実用化に向けて、半導体デバイスとの混載を実現するための素子構造とプロセ
ス開発を行い、その動作と信頼性を確認した。
14
ナノテクノロジー・材料を中心とした融合新興分野研究開発
中間評価 総合所見
課題名:
ナノ構造磁性フォトニック結晶を用いた超光情報メモリ
項
目
要
約
1.全体評価
・ 我が国発の超光情報メモリ技術の実用化を目指した研究であり、研究目
標、研究体制、進捗状況のいずれの点についても優れており、今後の成
果が大いに期待できる。
・ 世界標準規格をとるなど優れており、申請者の独創的な発想による技術
に基づいて、研究が実施されている。
・ プロジェクト開始前の提案にもとづいた開発主体の内容となっており、
ナノ・テクノロジーという観点でみると、その課題があまり明確でない。
・ マーケットシェア確保のため大型企業との協力体制をとるべき。
・ 例えばエラー率やノイズ特性など実用化に向けての課題は多いが、最終
年度のデモンストレーションの際、具体的にどのような性能を有してい
れば開発が成功といえるのか、その指針を提示して欲しい。
2.個別評価
1.目標達成度 :概ね達成された
・ 現時点での進捗と計画をベースに考えると、平成20年3月には原理技
術の実証、試作システムの構築は完了していると予想され、中間評価目
標は十分達成している。
・ 特に、高分子の相分離性を巧みに用いたナノゲル構造記録材料の展開は
興味深い。
2.進捗状況 :順調に進捗している
・ 各研究項目ともに順調に進捗している。特に、原理技術を、超光情報メ
モリ構築のために利用可能なレベルまでに十分発展させている点、ホロ
グラムメモリの研究でコモンパス光学系を考案してノイズ低減を実現
している点など、当初計画以上の成果が得られている。
3.計画の妥当性 :妥当である
・ 次世代型ホログラムメモリとして意欲的な計画であり、原理の実証とデ
バイス試作をバランス良く進めている。
・ 計画全体における各研究項目の位置付けも明確であり、各項目の目標設
定と研究の進め方も適切である。高容量メモリに対する社会的要請は強
く、計画変更の必要は無い。
4.(1)科学的・技術的価値 :概ね高い
・ 新規性・独創性が高く、前半での研究成果も質・量ともにかなりレベル
の高いものになっており、究極的な光ディスクメモリの実用化を目指す
研究として世界をリードしている。原著論文、口頭発表及び特許のいず
れについても極めて高いアクティビティを保っている。
・ 磁性フォトニック結晶による大きな位相変調とコリニア方式によるホ
ログラムメモリはともに本研究実施機関のオリジナル技術である。中間
評価までの期間に一層の技術改良を達成しており、独創性が高い。
15
4.(2)科学的・技術的波及効果 :概ね高い
・ 独自のホログラムメモリ技術による光ディスクメモリは5∼10年後
の実用化を目指し、その発展型の本研究成果による超光情報メモリは1
0∼15年後の実用化を視野に入れたもので、次世代高度情報化社会の
発展に極めて大きな波及効果をもたらすものと期待される。
・ 特許取得も着実に行っており、また、論文発表を通じて波及効果も期待
出来る。
・ 磁性フォトニック結晶はホログラムメモリに限らず、高速空間光変調器
として広範な応用が期待できる。派生技術という観点では研究計画が高
容量メモリの実現に集中していることもあり、際だった派生技術が生ま
れたとは必ずしも言えない。
4.(3)社会的・経済的波及効果 :十分期待できる
・ 最終目標である高容量メモリの開発に成功し、実用化が達成されれば社
会経済への寄与は大変大きい。
・ メモリー分野全体を考えれば、半導体はじめ将来に向けての競合相手が
多く、相当の技術力と販売能力が必要な分野である。基本となる技術を
所有しているが、大手の電気メーカが加わっていないと、本格的な実用
化が困難になる可能性もある。
4.(4)知的財産権の確保 :基本特許を国内出願した
・ 独創性の高い世界初の要素技術およびシステム構築のためのノウハウ
技術からなっており、戦略的な行動をしている点は高く評価できる。多
くの関連企業も参画しており、波及効果は大きい。
・ 特許出願件数は少なく、実用新案も含めた今後の戦略的知財化検討が必
要である。
5.情報発信 :十分行われている
・ 論文及び口頭発表件数はプロジェクト全体としては十分である。今後は
シンポジウム等による成果普及も期待したい。
6.(1)研究代表者の指導性 :十分発揮された
・ 3つの研究項目は互いによく整合して進行し、また大学側の手あついサ
ポートも引き出しており、代表者の指導性が発揮された。
・ 大学を中核機関に挑戦的な多くの企業メンバーが参画し、産学官連携型
の趣旨に合った研究体制と判断できる。
6.(2)実施体制 :十分確立している
・ アドバイザーを含めて的確な研究推進体制が築かれており、大学のサポ
ートも含めて責任ある実施体制である。
・ 豊橋技術科学大での集中型研究開発実行、学長の積極的な支援も良い。
運営委員会や大企業が入った評価専門委員会も良い。
3.その他
評価責任者氏名:
北澤
宏一
16
○磁性フォトニック結晶を用いた
超光情報メモリ
1 プロジェクトの概要と目的
ナノ構造磁性フォトニック結晶を用いた超高速薄膜光位相変調デバイス、光フェーズ
ロック方式による多値階調ホログラム記録技術、ナノゲル構造を有するフォトポリマー
材料とを組み合わせることにより、究極的には40Tbits/inch2の記録密度と800Gbps
に達するデータ転送レートを具備する超光情報メモリの基礎技術確立のため、下記の3
つのテーマに焦点を絞り、拠点集中研究方式による強い産学連携体制でプロジェクトを
推進する。
①ナノ構造磁性フォトニック結晶を用いた薄膜光変調デバイス
②ナノゲル構造を有するハイレゾリューション・フォトポリマー
③光フェーズロック方式による多値階調ホログラム記録技術
超光情報メモリ
プロトタイプ
多値階調ホログラム技術
1.光フェーズロック方式
2.光体積記録
3.高セキュリティ
ナノ・技術活用デバイス技術
マルチフェロイック駆動型
超高速低電力光位
相変調デバイス
超低収縮ハイレゾリュー
ション多値ホログラム記
録メディア
磁性フォトニック結晶 ナノゲル・フォトポリマー
1.人為的光学特性制御
2.巨大磁気光学効果
3.薄膜プロセス技術
1.超低収縮
2.ハイレゾリューション
3.高ダイナミックレンジ
ナノスケール材料技術
2 研究期間と予算
平成17∼21年度
平成17年度
平成18年度
平成19年度
2.8億
2.5億
2.4億
17
材
材料
料技
技術
術
多階調ホログラム体積
記録システム
光情報技術
光情報記録技術
産
業
展
開
の
加
速
3 プロジェクトの必要性と背景
ホログラムメモリは、国内外を通じて、次世代光メモリとして注目されている。 す
でにコリニアホログラムメモリを開発し、世界で初めて連続回転する光ディスクに記
録再生できることを示した。またこの方式は、HVDとしてECMA International
で国際標準規格に採択された。
この成果をふまえ、本プロジェクトでは、ナノテクノロジー・材料と光メモリ技術
を組み合わせることで、世界に先駆けて次世代型超高密度光情報メモリを開発する。
4 期待される効果
従来の記録密度の100倍以上の記録を可能とする超光情報メモリ開発を行い、
光メモリ分野で次世代HVDとしての世界標準獲得を目指す。
5 実施体制
プロジェクトリーダー
井上 光輝(豊橋技術科学大学)
(株)オプトウェア、FDK(株)、メモリーテック(株) 、共栄社化学(株)
6 進捗状況
超光情報メモリの基本光学系(光フェーズロック方式)を開発し、原理実証に成功
した。また、ナノスケールで構造を制御した磁性フォトニック結晶を形成し、プロト
タイプMOSLM素子を構築した。さらに、ナノスケールで反応場を制御したナノゲ
ルフォトポリマーを形成し、ホログラム記録の精細度が極めて高いことを実証した。
18
ナノテクノロジー・材料を中心とした融合新興分野研究開発
中間評価 総合所見
課題名:
ナノバイオ・インテグレーション研究拠点
項
目
要
約
1.全体評価
・ 研究拠点側と大学トップマネジメント側とが強く協力しあって国際的
に優れたナノバイオ連携融合拠点ができつつある。
・ ナノバイオ・インテグレーション研究拠点としては他に類を見ない強力
な陣容であり、代表者の指導力のもと優れた成果が大いに期待できる。
・ 特任助教・准教授採用や若手融合研究制度等若手育成に力を入れている
点も評価される。
・ 拠点形成型プロジェクトのモデルケースとして社会還元できるまで自
助努力を前提に重点的な支援が必要と考える。一方で、このような拠点
が別の分野・領域においても発生するようなインキュベーションの仕組
みの検討も重要と考える。
・ 年間6億円から7億円という予算規模は、世界的な拠点形成としては小
額である。限られた予算内で健闘しているが、グローバルな競争という
視点で、今後こういった拠点プロジェクトにかける予算、また継続性と
いうものは、もっと議論があってしかるべきであろう。
2.個別評価
1.目標達成度 :所期の目標を十分達している
・ 3領域の研究及びこれらを融合した全体としての研究ともに、当初の中
間目標を十分達成していると評価。欧米の世界トップレベルの研究拠点
と競合できる拠点が形成されつつある。
・ ナノバイオセンシング・システムにおいては、早期に実用化に向かった
取組が必要であり、有機的な企業連携が求められる。
・ 異分野連携の効果が見られている部分もあるが、拠点内での一層の連携
が必要。
・ 本プロジェクトの予算による部分と他のプロジェクトの予算による部
分を切り分ける事も重要。拠点としては、全てのプロジェクトを包含し
て総合的に評価すれば良いが、この年間6∼7億円のプロジェクトで何
ができているのかを明確に示して、拠点形成に必要な投資の適正規模を
判断する材料にするのも必要。
2.進捗状況 :順調に進捗している
・ 現状ではまだ新機能の確認の段階であるが、一部はすでに実用化を視野
に入れたレベルまで進んでおり、順調に進捗していると評価。
・ リーダーの指導力を高く評価する。
3.計画の妥当性 :妥当である
・ 目標設定が明確で戦略的。
・ ナノテクノロジーの発展の基盤を整備し、十分に世界のリーダー的役割
を果たしながら研究を推進させている。
・ 生体機能の本質をナノ構造レベルにまで掘り下げて解明する分野融合
的科学技術体制の創成と知的基盤の確立をはかる研究拠点として、強力
な体制をとっている。
19
・
拠点形成費でカバーできない部分は、他の外部資金で研究が実施されて
いるが、他のファンドを含めた計画の全体観がわかると良い。
4.(1)科学的・技術的価値 :十分高い
・ 成果とファンドとの関係については精査が必要であるが、質・量ともに
十分。受賞数も多く、独創性が高いこと、及び異分野融合の効果がうか
がえる。
・ 論文、口頭発表、特許と目を見張る成果を挙げている。
・ 独創性も高く当初の研究計画が妥当であることが明確である。新規性の
点では、従来からの継続研究テーマが見られる。
4.(2)科学的・技術的波及効果 :十分高い
・ 新しい治療法を中心に、科学的・技術的波及効果は計り知れない。寄附
講座、産学連携も積極的に進められている。
・ 異分野融合の研究を奨励する意図がしっかり働いている。
・ 領域融合型の研究開発は独創性が高く、従って技術的波及効果も大き
い。要素技術のみならずシステム・ビジネスモデルという観点からの戦
略的特許出願が重要と思われる。
・ 今後は戦略的特許マップも作成し、客観的な評価を行うことが重要と考
える。また、バイオ医療研究は欧米でも多くの研究機関が見られること
もあり、戦略的な外国出願も必要。そのためには、特許に関する支援シ
ステムを体制の中に位置づけるよう検討することも重要。
・ 医工連携など、バイオロジーと工学テクノロジーの統合の整備が進めら
れ、今後世界に誇れる成果が期待される。今後も従来の枠組にとらわれ
ることなく、新領域の創出に挑戦することを期待する。
・ ナノ構造の設計、それを使った送達、無侵襲治療など大きな波及効果が
期待できる。
4.(3)社会的・経済的波及効果 :十分期待できる
・ 社会的要請の大きな研究領域を率いており、新医療法や新産業の創出と
いう点で極めてインパクトが大きい。
・ 既に多くの企業が参画し、技術移転も図られているが、さらに多くの企
業の参加を望む。
・ 非常に期待の高い分野であるが、経済インパクトは、今後の出口に向け
た取組に依存するところも大きい。
4.(4)知的財産権の確保 :基本特許を国内・外国出願した
・ 十分に特許を出願しているが今後大きなブレークスルーを達成するこ
とを期待したい。
・ 特に基本技術の独占が主張できるような大きな波及効果を持つ技術開
発と知的財産権の確保を期待したい。
・ 近年のグローバルな競争状況の中で外国出願が少ないように思われる。
企業では、国内出願数=国外出願数で考えている。今後の市場は海外の
伸びが圧倒的に高いという事実を踏まえ特許戦略を考える必要がある。
・ 特許に関する詳細が開示されていないのが残念である。3年という短い
期間であるため(未公開)と考えるが、今後十分な改善が期待できる。
・ 専門性に秀でた職員もいるので、ノウハウの文書化や実用新案の提案な
20
・
ども検討してほしい。
特許は量は十分であるが、海外出願特許の割合が低い。企業との共同研
究が多いが、どの程度特許の技術移管が行われているか示す必要があ
る。また、技術ロードマップは示されているが、特許戦略に関しての表
記も必要。後半の2年間で十分な戦略が立てられるであろう。
5.情報発信 :十分行われている。
・ 一般社会から専門家にいたるまでセミナー、レター、シンポジウム、論
文等の拠点としての情報発信に工夫がみられる。
・ 論文のみならずホームページ等が海外への発信も含め充実している。
・ 異分野連携に関する成果・苦労などに関しても今後発信されることが期
待される。
6.(1)研究代表者の指導性 :十分発揮された。
・ 高い志とリーダーシップを兼ね備えた拠点リーダーである。
・ 特任教授や職員の活用、情報の共有化、相互評価システムなど良い。
・ 大学が強力に拠点の発展を支援していることがわかるが、更に世界初の
プロジェクトを世界初の方法で支援して行くことを望む。
・ 自己評価、外部評価などPDCAをまわす努力が感じられる。
6.(2)実施体制 :十分確立している。
・ 大学トップマネジメントがこのプロジェクトに重点的にスペース、各種
予算、裁量権を与えて強力なサポートをしている。かつ、医学部と工学
部の双方に共同利用施設をおいて医工連携の実を上げている。
・ 産業総合研究所・物質材料研究機構・企業連携などサポート体制や共通
機器利用など十分である。
6.
(3)自立拠点の形成 :十分な連携効果を生かし、研究者が独自にフ
ァンドを得て存続しうる、当初予定の拠点は十分確立可能の見込み。
・ 当初計画を越える充実した研究拠点の確立がなされていると評価。企業
8社が拠点と共研を実施しており、拠点がハブ機能を発揮していること
も評価。拠点確立に向けたビジョンも明確であり、研究拠点形成型研究
の趣旨に合致する。
・ 終了後に「ナノバイオ・インテグレーション研究センター」設立を目指
している。その後も世界に突出した自己進化型研究拠点形成を目指して
おり、拠点形成は十分に期待できるが、存続に向けた具体的なビジョン
は後の2年間の人材育成により決まると考えられる。
6.(4)人材育成 :十分行われている。
・ 対象分野と層も広く、特に若手人材育成の良い場となっている。
・ 拠点に関わった学生の輩出が今後の日本の将来のナノバイオ産業を育
成するためにも学生への取組も重要。
3.その他
本プロジェクトは世界的拠点形成としては少額。本プロジェクトと他プ
ロジェクトの予算を切分け、この年間6∼7億円のプロジェクトで何がで
きたかを明示し、拠点形成に必要な投資の適正規模を判断する材料にする
21
ことが必要であろう。
拠点形成型プロジェクトのモデルケースとして社会還元できるまで自助
努力を前提に重点的な支援が必要。一方では、このような拠点が別の分野・
領域においても発生するようなインキュベーションの仕組みの検討も重要
と考える。
評価責任者氏名:
北澤
宏一
22
○ナノバイオ・インテグレーション
研究拠点の形成
1 プロジェクトの概要と目的
生体の高度なシステムを材料中に秩序立った形でナノレベルで創り込むナノバイオ・
インテグレーションの概念に基づいて次の3つの領域の研究を推進する。
①分子アッセンブリーとNEMS技術の融合によるバイオインスパイアード・ナノマシ
ンの創製
②多元生体情報の精密時空間分析を実現するナノバイオセンシングシステムの創製
③特異性に優れた高信頼性セル・セラピーを実現するナノテクノロジー・材料技術
の創製
2
研究期間と予算
平成17∼21年度
平成17年度
平成18年度
平成19年度
5.9億
6.0億
5.5億
23
3 プロジェクトの必要性と背景
バイオ医療の研究は欧米でも多くの研究機関で見られ、特に電子工学の参画が多い。
本拠点では、有機合成・ポリマー化学と生物化学、薬学に加え、産業機械工学や生産技
術研究所の機械工学の専門家が参画し、精密なナノスケールでの微細加工のベースによ
る研究を進めている。
4 期待される効果
ナノテクノロジー・材料技術を基盤として生体機能の本質をナノ構造レベルまで掘
り下げて解明する分野融合的科学技術体系の創成と知的基盤の確立を図り、ナノレベ
ルの時空間生体制御に基づく革新的「ナノ医療」の構築と未来を牽引するナノバイオ
新産業の確立を促す。
5 実施体制
プロジェクトリーダー
片岡 一則(東京大学)
6 進捗状況
拠点研究スペースを整備し、グループ内およびグループ間の連携研究の展開のため
の体制を構築。
研究成果としては、分子機械、光導電性ナノケーブル、人工DNAで金属イオン配
列を制御(ナノマシングループ)、アレイ化高感度検出系とマイクロ流路からなる細
胞機能制御システムの構築、ナノポリマーで人工関節の寿命を延長(ナノバイオセン
シンググループ)、ナノキャリアによる膵臓がんの標的治療、インクジェットプリン
ターによる人工骨(セルセラピーグループ)などが挙げられる。
また、国際シンポジウム「NanoBio Tokyo 2006」を開催するとともに、UCLAの
California Nano Systems Institute (CNSI)との合同シンポジウムや、チュー
リッヒ工科大ETH/ローザンヌ工科大EPFLとのジョイントシンポジウムを開催予定。
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