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平成21年版通商白書の問題意識 1 試練を迎えるグローバル経済の現状

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平成21年版通商白書の問題意識 1 試練を迎えるグローバル経済の現状
概 要
平成 21 年版通商白書の問題意識
◆世界的・歴史的経済危機の中で、我が国経済が進むべき道、いわば「ピンチをチャ
ンスに変える」方策を示す。
1 試練を迎えるグローバル経済の現状と課題
◆世界的な投資資金増大とその米国での運用の破綻が金融危機の背景
・先進諸国の年金基金、保険、投資信託や新興国の外貨準備等の世界的な投資資金が増大。
それらの投資資金は、主に米国の証券化商品とりわけ住宅ローン担保証券に流入し、バブ
ルを形成。
・2007 年までは、世界中から大量の資金が米国のサブプライムローン関連証券化商品等に投
資されていた。
・2008 年に入り、米国住宅バブルの崩壊に伴う証券化商品等の価格暴落及びリーマンショッ
クを受け、世界の資金フローは途絶、世界同時金融危機が発生。
◆金融危機が実体経済に波及し、先進国・新興国の双発飛行からアジア等新興諸国の
みの片翼飛行へ
・金融危機は、世界的な投資収縮による資産価格の下落・消費の減退・貿易の縮小等を通じ、
世界各国・地域の実体経済に波及。
・米国をはじめ、先進国は戦後初めて揃ってマイナス成長に陥る中で、中国、インド(及び
中東、アフリカ)は底堅い動き。
◆世界同時不況を乗り切るために
・主要国は、各国中央銀行の協調による流動性供給等の各種金融安定化措置のほか大型景気
対策を実施。今年 4 月のロンドン・サミットでは、参加国が 2010 年末までに総額 5 兆ドル
(約 500 兆円)の財政出動を確認。
・今回の景気対策は一時的な措置であり、中長期的には、アジア等の新興国での内需拡大や
優良な資産市場の形成が重要。
概 要
2 世界経済危機と我が国の採るべき針路
◆世界経済危機が我が国経済に与えた影響
・2002 年から 2007 年は、円安基調の下で輸出が戦後最長の景気回復過程を主導。
・金融危機発生後、輸出や生産が大幅に減少し、我が国の景気後退は金融危機の震源地であ
る米国等他の先進国以上に深刻化。その背景として、アジアを経由した間接輸出(日本の
部品・素材等をアジアで組み立て)を含め輸出依存度の高い米国向け輸出が急激に落ち込
んだこと、我が国の輸出に高付加価値品が多く、国内産業への生産波及効果も高かったこ
と、等が挙げられる。
・我が国経済の中長期的な回復には、今後の成長が期待されるアジア諸国、新興国市場への
進出等が課題となる。
◆アジア諸国・新興国市場を開拓
・中間層(ボリューム・ゾーン)人口が急速に拡大し、高い成長が期待されるアジア諸国等
新興国の市場は我が国企業にとって大きなチャンス。
・ただし、新興国市場では中国・韓国との競争が激しく、現地人材の登用、現地市場向けの
製品開発等が鍵。
◆日本の魅力の海外への発信
・日本の文化(アニメ、ファッション、観光資源等)を海外に発信し、日本の魅力を世界に
アピールしつつ、日本の優れた技術(環境、省エネ、水処理等)により世界の課題解決に
貢献。
◆保護主義的措置への警鐘と自由貿易体制の重要性
・昨年以降、関税引上げ、輸入許可制導入、強制規格の導入等、多岐にわたる保護貿易的措
置が世界各地で増加。必ずしも WTO 協定違反でないケースもあり、「不透明な保護主義」
が増加。
・1930 年代の世界恐慌時の経験を踏まえて、現在の世界経済危機下においても、各国の保護
的措置を防止することが重要。そのためにも、WTO ドーハ・ラウンドの早期妥結が必要。
概 要
3 我が国のグローバル経済戦略と対外経済政策
◆総論
・「未来開拓戦略」
(①低炭素革命、②健康長寿社会、③日本の魅力発揮)で内需の拡大を図
るとともに、内外一体の成長を図ることが必要。
・少子高齢化が進行する中、自国内に閉じて保護主義的になるのではなく、国境を越え、ア
ジア・新興国と共に成長することが必須。
◆各論
・内外一体の経済対策
―アジア経済倍増へ向けた成長構想(広域インフラ整備等による成長力強化、社会保障制
度 等 の 整 備 に よ る 内 需 拡 大、ERIA の 最 大 限 の 活 用 )、 ア ジ ア と の 経 済 連 携 推 進
(APEC2010 の活用を含む)による成長力強化、社会保障制度等の整備による内需拡大)。
―貿易投資自由化の推進:保護主義的動きの抑止(WTO における取組)と EPA/FTA の締
結推進。
―電力・交通・水道等のインフラ関連産業(システムで稼ぐビジネス)、サービス産業・
コンテンツ産業の国際展開を促進。
・「ボリュームゾーン・イノベーション」の推進
―現地生産化のための人材育成。
―ライセンス生産モデルの推進(投資協定、知的財産の保護、二重課税の排除 等)。
―潜在的需要としてのボリュームゾーン市場の拡大。
・低炭素革命の海外展開
― G8、
「国際省エネ協力パートナーシップ(IPEEC)
」等を通じたグローバルでの省エネ
国際協力の推進。
―「クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(APP)
」を通じた官民
協調によるセクター別の省エネ環境地域協力の推進。
―世界省エネルギー等ビジネス推進協議会を通じたビジネスベースでの環境協力の推進。
―「日中省エネ・環境フォーラム」、「日印エネルギーフォーラム」の枠組み等を通じた省
エネ環境技術協力の拡充。
―燃料電池、太陽電池、電気自動車等の先端的環境技術分野における日米協力の推進。
・資源国への産業協力等の重層的展開
―重点国を選定し、閣僚レベルのトップセールス、官民合同ミッションの実施、EPA や投
資協定の締結促進。
―我が国が持つ強い技術等と各国別の具体的ニーズとの Win-Win 関係の構築。
―観光客の呼び込み、教育協力等を通じた経済交流の基盤の強化。
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