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POSデータを詳細に分析するシステムを構築 ASP形態で分析サービスを

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POSデータを詳細に分析するシステムを構築 ASP形態で分析サービスを
事 例 で 見 る
POSデータを詳細に分析するシステムを構築
ASP形態で分析サービスを提供
ユーザーの
課題
選んだ
解決策
小売企業向けASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)のジェ
イビートゥビー(JBtoB)は,POSデータを詳細に分析する,購買動
向分析システム・サービスを計画した。システムを新規開発する余裕
がない企業向けのサービスなので,低コストで提供する必要があった。
分析系システム用途に特化したサイベースのデータベース・サーバー
「Adaptive Server IQ」とWindows 2000 Serverを使い,大量のPOS
データを蓄積。多彩なクエリーや頻繁に発生する全テーブルへのアクセ
スに耐える仕組みを低コストで構築した。
ASP形態で低コスト化を図る
ジェイビートゥビー
(JBtoB)
は2001
年4月,このような売り上げ分析シス
テムをWindows 2000 Serverベースで
構築。その機能をインターネット経由
で小売企業に提供するASP(アプリケ
ーション・サービス・プロバイダ)事
業を開始した。システム開発の余裕が
ない企業向けのサービスなので,豊富
結果と
評価
当初の目的通り,低コストで実用的なシステムを構築できた。ユーザ
ーへの導入も始まったが,一般に小売企業のデータ分析に対する意識は
やや低く,この点が今後の課題となった。
な機能を
「低コスト」で提供することに
重点を置いた。
同社のASPサービスは,富士通の
流通・小売業向けソリューションとし
て採用された実績もある。特定品目の
「ポイント還元サービス」を実施して
いるスーパー・マーケットやカメラ量
1企業では抱えられない分析システム
しかし,多くの小売業者にとって,
売れ行きと顧客属性をクロス集計した
り,同一品目のメーカー別売上高や同
販店をよく目にするようになった。小
こういった分析システムを独自に構
一商品のパッケージ形態別売上高を集
売企業にとっては常連客を囲い込む以
築・運用することは容易ではない。
計したりできるなど,多彩できめ細か
外にも効果的な活用方法がある。顧客
「例えば売上高500億円のスーパー・
のプロフィールと商品購入履歴を詳し
マーケットなら,1年でおよそ2億件
く分析することで,売り場構成の改善
のPOS(販売時点管理)データがたま
や,顧客1人ひとりへの最適な働きか
る」
(JBtoBセールス アンド マーケテ
けに役立てることができるのだ。
ィング 担当部長 池田壮吉氏)
。これだ
なデータ集計機能を提供する
(図1)
。
けの情報を蓄積・分析するシステムを
会社プロフィール
企業名:ジェイビートゥビー
本 社:東京都中央区築地四丁目1番17 号
銀座大野ビル8F
社 長: 奥島 晶子
設 立:2000 年9月
資本金:2億50 万円
従業員数 :10 人
U R L :http://www.jbtob.com/
102 日経Windowsプロ 2001年12月(no.57)
構築するとなると,初期費用だけで数
千万円の投資が必要である。実際にポ
イント・サービスでデータを集めてい
る企業でも,マーケティングに役立て
るための詳細な分析にまでは手が回ら
ない例が多いという。
図1●JBtoBの購買動向分析クライアント画面
Webブラウザを使って,サーバーに蓄積したPOS デー
タを詳細に分析できる。
事例で見る Windows ソリューション
POSデータを詳細に分析するシステムを構築
○
×
ス
ー
パ
ー
NT食品
Point Card
顧客A
○×スーパー
店舗A
商品を購入
メーカーA
顧客属性付きの
POSデータを提供
日経フード
○×スーパー
Point Card
○×スーパー
顧客B
ポイント還元などの
優待サービスを提供 店舗B
顧客
提供データの詳細な
分析サービスを提供
顧客属性付き
POSデータ
小売企業
提供データの詳細な
分析サービスを提供
メーカーB
JBtoB
メーカー
図2●小売企業とメーカーの間でPOS データの蓄積/分析サービスを提供
POS データをベースにした売り上げ分析システムは一般に大規模な設備が必要になる。JBtoBは,メーカーに対して有料でデータの分析サービスを提供するとともに,小売企
業に対してもPOS データを提供してもらう見返りとして低料金で分析サービスを提供している。
ASP方式は複数のユーザーでシス
新処理を主目的とした一般的なデータ
は,データをテーブル単位で保持して
テムを共有するので,小売企業側のシ
ベース・サーバーでは,十分なパフォ
いる。例えば,売り上げのテーブル
ステム投資をある程度抑えられる。さ
ーマンスが得られないためだ。
は,日付や顧客ID,商品ID,金額な
らに小売企業の負担を減らすため,
通常,データベースのパフォーマン
どを組にした「レコード
(行)
」が大量に
JBtoBはメーカー/卸企業とPOSデー
スを改善するには,サマリー
(集計)
テ
タを共有するビジネス・モデルも採用
ーブルやインデックスと呼ばれる検索
一方,ASIQでは,テーブルをカラ
した。小売企業から預かったPOSデ
専用の補助データをあらかじめ生成し
ム
(列)
ごとに分割した「垂直パーティ
ータを元に,メーカー/卸企業に分析
ておく。これらのデータの分だけ必要
ショニング」
と呼ぶ手法で保持してい
サービスを提供する。この収益を一部
なストレージの容量は大きくなるが,
る。上の例では,日付のカラム,顧客
還元するような形で,小売企業に対す
定型的なクエリーが多いシステムなら
IDのカラム,商品IDのカラム,金額
る分析サービスを安価に提供できるよ
ば,せいぜいデータ原本の数倍程度の
のカラムといった具合にテーブルを分
うにした
(図2)
。
ストレージに収まる。
割して保持している。
詰まった表形式で保持される。
JBtoBによれば,ASP形態の分析サ
ところがJBtoBのようなシステムで
さらに,分割した各カラムの値を検
ービスを利用すると,小売企業が個別
は,データをあらゆる角度から分析す
索の容易なビット列に変換して保持す
にシステムを構築する場合に比べて,
るため,非常に多様なクエリーが発生
る
「ビットワイズ・インデックス」
と呼
3分の2程度のコストで済むという。メ
する。しかもその多くは,テーブルの
ぶ技術も用いている。
ーカー/卸とデータを共有すれば,実
データに対する全件検索を伴う。サマ
売り上げ分析のように,着目するカ
に6分の1程度までコストを下げられ
リー・テーブルやインデックスといっ
ラムは一部だけだが,その替わり全件
るとしている。
た高速化手法では,ストレージがいく
検索するような処理で垂直パーティシ
らあっても足りなくなってしまう。
ョニングは絶大な効果を発揮する。処
Sybase IQで多彩な処理に対応
JBtoBの売り上げ分析システムで核
理に関係ないカラムの読み込みを省け
データ全体を疑似インデックス化
るので,ディスク入出力を大幅に減ら
となっているのは,分析系システム用
ASIQはこうした非定型クエリーの
せるのだ。しかもビットワイズ・イン
途に特化したサイベースのデータベー
処理に適したアーキテクチャを採用し
デックスにより,簡単なビット演算で
ス・サーバー「Adaptive Server IQ
ている。ASIQの特徴はデータの保持
あらゆる検索ができる。ちょうど,あ
形態にある。
らゆるクエリーに対してインデックス
(以下,ASIQ)
」である。トランザク
ション・システムで発生する検索/更
一般的なデータベース・サーバー
を用意したのと同じような効果を期待
103
日経 Windowsプロ 2001年12月
(no.57)
事例で見る Windows ソリューション
POSデータを詳細に分析するシステムを構築
度,つまりCPUの動作周波数が処理
JBtoB
性能に大きな影響を及ぼすようになっ
ているためと考えられる。
そこでJBtoBでは,動作周波数の高
アプリケーション・サーバー
Windows 2000 Server
カスタム・アプリケーション
ストレージ・システム
いプロセッサを手に入れやすいIntel
ベースのプラットフォームとしてWindows 2000 Serverを選んだ。サーバ
ー・システムは群馬県のデータセンタ
データ・サーバー
Windows 2000 Server
Sybase Adaptive Server IQ
データ・サーバー
Windows 2000 Server
カスタム・アプリケーション
ーに設置し,Windows 2000 Server
のターミナル・サービスを用いて遠隔
Webサーバー
Windows 2000 Server
Internet Information Server
管理している。
プラグインとしてクライアントを実装
専用線
インターネット
小売企業のPOS
システムと専用線
で 結び,
P O Sトラ
ンザクション・デー
タを蓄積する
小売企業
Webサーバー経由で分
析サービスを提供。デー
タベース・アクセスは,
カ
スタム・アプリケーション
が処理
メーカー
小売企業のPOSシステムとは専用
線で接続し,定期的にPOSデータを
JBtoBのデータベースに吸い上げてい
る。
「データ・サーバー」
と呼ぶゲート
ウエイ・システムを経由して転送する。
分析サービス用
Webクライアント
POSシステム
分析サービス用
Webクライアント
ユーザーごとにPOSシステムの仕様が
異なるため,インターフェース部分は
小売企業ごとに作り込む
(図3)
。
図3●JBtoB のシステム
Sybase Adaptive Server IQをデータベース・サーバーとして,膨大な量のPOSトランザクション・データを蓄積
/分析する。POS データの収集には小売企業ごとに専用線で結んだデータ・サーバーを用意する。分析サービス
はWeb サーバー経由で提供する。
売り上げ分析システムの構成は,小
売企業とメーカー/卸企業でほぼ共通
している。アプリケーション本体はブ
できる。
「JBtoBのシステムのように
CPUのアーキテクチャが異なれば処
ラウザへのプラグイン形式になってい
非定型のクエリーを処理する場合,設
理能力は異なる。キャッシュ・メモリ
る。米Cincom SystemsのSmalltalk
計次第では一般のデータベース・サー
ー容量や入出力性能も重要だ。さらに
環境「VisualWorks」で開発した。ユ
バーと同等の性能を数分の1のコスト
全く同じハードウエアでも,稼働OS
ーザーがJBtoBのWebサーバーにア
で得られる」
(サイベース BI統括部 担
によってアプリケーションの処理性能
クセスすると,このプラグインがブラ
当部長 藤川泰洋氏)
という。
に差が出る。
ウザに読み込まれ,アプリケーショ
ところが,JBtoBでASIQのパフォ
CPUの動作周波数が選択のカギ
ASIQにはUNIX版もあるが,JBtoB
ーマンスをテストしたところ,CPU
のアーキテクチャやOSの種類よりも,
ン・サーバーを通じて様々な分析処理
を実行できるようになる。
既に小売業1社とその取引先数社が
がWindows版を採用した理由は処理
CPUの動作周波数そのものに大きく
JBtoBのASPサービスを利用してい
能力の高さだったという。しかも,意
依存しているという結果が出た。これ
る。一般に購買動向分析の効果を計り
外なことに決め手はCPUの動作周波
は垂直パーティショニングによってデ
かねている企業は多いが,今後,マー
数だった。一般にコンピュータ・シス
ィスク入出力性能の重要性が薄れるこ
ケティング手法の提案なども含めた営
テムの性能は,CPUの動作周波数だ
とや,ビットワイズ・インデックスに
業活動を展開していくという。
けでは計れない。同じ動作周波数でも
よって基本的なビット演算の処理速
104 日経Windowsプロ 2001年12月(no.57)
(斉藤 国博=[email protected]
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