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2.三相誘導電動機

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2.三相誘導電動機
2. 三相誘導電動機
目的
1
構造が簡単で堅牢、かつ保守の容易な誘導機は、もっともよく使われている交流機の 1 種で、巻
き線型と篭型がある。本実験では特性算定のために円線図に必要な試験と実負荷試験を行い、特性
の実測値と計算値を比較検討する。
原理
2
2.1
巻線抵抗測定
1. 星型結線の場合
端子間の測定抵抗 R は相抵抗 R1 の2倍であり、三相としての等価抵抗 R0 は 3R1 となる。
各相抵抗が異なるときは平均値を求め、75 ℃に換算する。
R = 2R1
(1)
R0 = 3R1
(2)
R = (2/3)R1
(3)
R0 = (3/2)R1
(4)
2. 三角結線の場合
3. 篭型回転子の場合
拘束試験での線電流と入力 Is と入力 Ws から、わずかな鉄損を無視して、固定子側に換算し
た回転子相抵抗 R2 を求める。
Ws = 3Is2 (R1 + R2 )
2.2
∴ R2 =
Ws
− R1
3Is 2
(5)
無負荷試験と鉄損
無負荷状態で端子電圧 V に対する入力電力 W0 を測定する。W0 は、鉄損 Wi 、励磁銅損 Wc 、機
械損 Wm からなり、Wm は (V − W0 ) なる無負荷損失曲線の V → 0 にして求める。
Wc = R0 I0 2
(6)
Wi = W0 − (Wm + Wc )
(7)
1
2.3
拘束試験と銅損
拘束試験で得られた端子電圧 V 対線電流 I1 と入力電力 W の曲線を、定格電圧 Vn 点まで延長
し、インピーダンス電流 Is とインピーダンス電力 Ws を求める。拘束試験は低電圧ゆえ、Ws 中の
鉄損と励磁銅損は無視し、R0 による銅損と見る。
2.4
円線図
大容量誘導機の場合、実負荷試験では不経済かつ困難のため前述の 3 試験より円線図を作成し諸
特性を算出する。
1. 抵抗測定
固定子巻線抵抗を 75 ℃に換算する。
R1t75 = R1
234.5 + 75
234.5 + t
(8)
2. 無負荷試験
定格電圧 Vn に対する電流 I0 と入力 W0 から、その有効成分 I10 と無効分 I02 を求める。
I0 = I01 + jI02
√
I01 = W0 /( 3Vn )
√
I02 = I0 2 − I01 2
(9)
(10)
(11)
3. 拘束試験
定格電流 In に近い実測電流 Is0 に対する入力電力 Ws0 と供給電圧 Vs0 より、定格電圧 Vn に対
する電流 Is と電力 Ws を求め、有効分 Is1 と無効分 Is2 に分ける。
Ws = Ws0 (Vn /Vs0 )2
(12)
Is = Is0 (Vn /Vs0 ) = Is1 + jIs2
√
Is1 = Ws /( 3Vn )
√
Is2 = Is 2 + Is1 2
(13)
4. 作図法
OH = I0 1 OJ=Is1 HA=I02 //OX JS=Is 2//OX
K ; AS の垂直二等分線と HA の交点
ASB ; 半径 AK からなる半円
√
SD⊥AB, DE= 3R1 I2s 2 /Vn
(I2s ; 拘束時の一次側に換算した二次電流 [AS の長さ])
任意の出力 P2 に対する特性作図
2
(14)
(15)
√
F ; AS と OX との交点、FT=Po / 3Vn = I1 の有効分
TP//AS,OL//PX
N1 N2 //OX(FN1 ; 任意 ⊥OX),N;FP と N1 N2 との交点
G1 G2 //AE(AG1 ; 任意 ⊥OX),G;AP と G1 G2 との交点
mn; 任意の半径 om の円弧
n;OP と mn との交点、 n1 n//OX
作図と特性の関係
固定子電流 I1 =OP
固定子銅損 Wc1 =UV
回転子電流 I2 =AP
鉄損 W1 =VW
出力 Po =PR
全入力 P1 =PW
回転子銅損 W2c =RU
2次入力 P2 =PU
効率 η =(PR/PW)× 100 (%)
すべり s =(RU/PU)× 100 (%)
力率 cos φ =(OL/OP)×100 (%)
2.5
実負荷試験
直流電気動力計により負荷をかけながら測定する。なお、すべり s は速度 nr を回転計で実測し
て次式で求める
ns − nr
ns
ここで、ns は同期回転数を表し、極数と周波数で決まる。
s=
(16)
1. 電気動力計 (Electric Dynamometer,ED)
構造は直流発電機と同様であるが、継鉄が回転方向に少し動きうる。図 2-2 にて、電気子巻
線には FR なる力が働き、この反作用が継鉄にかかり、回転方向に力を受ける。この力を測
定し、トルクを求める。
T = 9.8F R = 9.8W L
(N m)
(17)
実験
3
3.1
巻線抵抗測定
3.2
無負荷試験
誘導電圧調整器 (IR) により低い電圧で起動、定格電圧の 120%まで増加した後、減少させながら
回転が不安にならぬ程度まで、各入力電圧 V1 に対する測定を行う。電流 Io は各層電流 Ia , Ib , Ic
の平均値をとる。
3.3
3.3.1
拘束試験
拘束位置の決定
固定子と回転子の相対的位置でインピーダンスが異なるから、低電圧を印加し回転子を等分移動
させ、線電流を読み取る、これより平均電流の得られる位置で回転子を拘束する。
3
拘束試験
3.3.2
拘束状態で低電圧を印加し、定格電流程度まで想定する。
3.4
実負荷試験
直流電動力計 (ED) により負荷を調整し、端子電圧 V1 を定格に保って、定格電流の 120%までに
対する測定を行う。
実験結果
4
4.1
巻線抵抗測定
R = 0.677Ω であるので R1 = R/2 = 0.3385。75 ℃に換算すると
R1t75 =
R0t75 = R1t75 × 3 = 1.236
[Ω]
無負荷試験
V1 [V]
I0 [A]
W0 [W]
Wc [W]
Wm [W]
Wi [W]
N [rpm]
240
5.85
300
42.3
116.4
141.3
1783
220
200
180
4.95
4.3
3.7
260
240
210
30.29
22.85
16.92
116.4
116.4
116.4
113.31
100.75
76.68
1779
1778
1773
160
140
3.23
2.7
200
180
12.9
9.01
116.4
116.4
70.7
54.59
1769
1766
120
100
80
2.42
2.1
1.9
160
152
140
7.24
5.45
4.46
116.4
116.4
116.4
36.36
30.15
19.14
1759
1759
1730
60
1.81
130
4.05
116.4
9.55
1695
(b) V1 - W0, Wc, Wi characteristic
350
(a) V1 - I0, N characteristic
W0
Wc
Wi
2
W0=a*V1 +Wm
300
7
1800
6
1750
5
250
a=3.097000e-03
Wm=116.393
200
I0 [ A ]
W0 [ W ]
[Ω]
150
1650
3
100
2
50
1
0
1700
4
1600
1550
I0
N
0
0
50
100
V1
150
[V]
200
250
1500
0
4
50
100
150
V1 [ V ]
200
250
N [ rpm ]
4.2
234.5 + 75
R1 = 0.412
234.5 + 20
拘束試験
4.3
拘束位置
1
2
3
4
5
6
7
8
ave.
I[A]
8.45
8.70
8.65
8.52
8.75
8.70
8.50
8.62
8.611
拘束位置は 6 番、I = 8.7A を選んだ。
Vs - Is, Ws characteristic
16
1000
Is
Ws
14
Vs [V]
Is [A]
Ws [W]
800
37
8.8
240
600
38.5
42
9
10
260
320
45.5
49.5
53
11
12
13
388
440
500
56
59
14
14.7
560
620
Is [ A ]
10
Ws [ W ]
12
8
400
6
4
200
2
0
0
35
4.4
40
45
50
Vs [ V ]
55
60
実負荷試験
V1 [V]
T [Nm]
s[%]
N [rpm]
I[A]
P1 [W]
Po [W]
P2 [W]
cos φ[%]
η[%]
200
200
200
0.14
5.34
9.55
1.63
3.33
3.67
1770
1740
1734
4.4
6
8
360
1400
2240
26
972
1734
26.5
1005
1800
23.6
67.4
80.8
7.23
69.5
77.4
200
200
13.06
16.15
4.44
5.22
1720
1706
10
12
2960
3584
2352
2885
2462
3044
85.4
86.2
79.4
80.5
200
200
200
19.38
20.22
22.05
6.11
6.33
6.89
1690
1686
1676
14
14.7
16
4240
4480
4880
3430
3570
3870
3635
3812
4156
87.4
88
88
81
80
79
(a) s - cos ,
(a) s - T, Po, cos ,
characteristic
100
characteristic
35
cos
4
T
Po
30
3.5
80
T [ Nm ]
[%]
60
cos ,
40
2.5
20
2
15
1.5
10
1
20
5
0
0.5
0
8
7
6
5
4
s [%]
3
2
1
0
5
0
8
7
6
5
4
3
s [%]
2
1
0
Po [ kW ]
3
25
(b) Po - Ia , n characteristic
16
(b) Po - P1 , P2 ,
1800
Ia
N
14
characteristic
4
100
3.5
1780
80
12
3
Ia [ A ]
10
1740
8
6
1720
4
1700
2
2.5
60
2
40
1.5
1
1680
20
P1
P2
0.5
0
0
0
0.5
1
1.5
2
2.5
Po [ kW ]
3
3.5
4
0
0
0.5
1
1.5
2
2.5
Po [ kW ]
3
3.5
4
考察
5
5.1
円線図から負荷特性を求め、実負荷試験の結果と比較せよ
無負荷試験より、定格電圧に対する電流と入力から、その有効分 I01 と無効分 jI02 を求める。
I02
W0
240
I01 = √
=√
= 0.693 [ A ]
3Vn
3 × 200
√
√
= I0 2 − I01 2 = 4.32 − 0.6932 = 4.24 [ A ]
拘束試験の結果より、定格電圧に対する短絡電流を有効分 Is1 と無効分 jIs2 にわける。
Ws = Ws 0
(
Vn
Vn 0
)2
(
= 620
200
59
)2
= 7124
Is = Is 0
[W],
200
Vn
= 14.7
= 49.8
59
Vn 0
√
Ws
7124
Is1 = √
=√
= 20.6 [ A ] ,
3Vn
3 × 200
Is2 =
Is 2 − Is1 2 =
[A]
√
49.82 − 20.62 = 45.3 [ A ]
これから、2.4.4 の作図法に従い円線図を作図し、I = 14.7A の定格時の電動機の負荷特性を求め
る。円線図は別途添付。
円線図より求めた特性を実験値と比較した表を下に示す。(括弧内は実負荷試験以外の結果)
ほぼ等しい結果となっているのがわかる。
I1
I2
Po
W2c
W1c
円線図
14.4
12
3570
284
187
実験値
14.7
5.2
3570
Wi
P1
P2
η
s
cos φ
240
4297
3882
83.1
7.32
86.7
(101)
4480
3812
80.0
6.33
88.0
P2 , Po の関係を実験ならびに理論的に考察せよ
実験結果の P2 -Po のグラフから両者は比例関係にあるものと予想される。
回転子がすべり s で回転しているときは、回転磁界と回転子の相対速度が Ns − N = sNs とな
る。従って回転子は Ns の速度で回転磁束を切ることになり、、二次誘導機電力 E2 は停止時の s 倍
6
[%]
N [ rpm ]
P1 , P2 [ kW ]
1760
の sE2 となる。同様に二次周波数 f2 も sf1 となる。このとき二次漏れリアクタンス x2 も sx2 と
なる。従って二次電流 I2 は次のように表される。
I2 = √
sE2
2
r2 + (sx2
)2
=√
E2
(r2 /s)2 + x2
ここで r2 /s を次のようにすれば回転状態において停止時の二次回路に (1 − s)r2 /s という負荷抵抗
が等価的に接続されたとみなすことができる。つまりこの抵抗による消費電力が機械出力 Po に相
当する。
r2
1−s
= r2 +
r2
s
s
よって二次入力 P2 との比は
P2 : Po =
r2 1 − s
:
r2
s
s
∴ P2 = (1 − s)Po
となり二次入力 P2 はすべりが一定ならば Po と比例関係にあることが理論的にもわかる。実負荷
試験ではすべりは 1∼7%程度で (1 − s) はほぼ一定と見なすことができ、実験値でもほぼ直線の特
性が得られている。
7
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