...

案件別事後評価(内部評価)評価結果票:無償資金協力 評価実施

by user

on
Category: Documents
7

views

Report

Comments

Transcript

案件別事後評価(内部評価)評価結果票:無償資金協力 評価実施
案件別事後評価(内部評価)評価結果票:無償資金協力
評価実施部署:ジブチ支所/エチオピア事務所(2014 年 2 月)
国名
ジブチ
タジュラ湾海上輸送力増強計画
Ⅰ 案件概要
事業の背景
事業の目的
実施内容
交換公文締結
事業費
相手国実施機関
案件従事者
関連調査
関連案件
Ⅱ
1
ジブチでは、首都と北部地域を結ぶ道路輸送網が山岳地帯のため発達していない。南北経済格差の是
正と北部住民の民生の改善のため、1981 年にドイツから供与されたフェリーボートにてジブチ港を基
点として北部のタジュラ、オボックへ週 2 回ずつの振り子配船が開始され、住民及び車両他貨物輸送が
行われてきた。
しかし、同フェリーは老朽化のため 2004 年 7 月に運航を停止し、南北間の輸送需要に応えられなく
なり、北部地域は深刻な水、燃料他の生活物資の輸送力不足に直面した。北部への輸送は、不定期で安
全性が低くかつ高価なダウ船等の民間運航船舶、及び非効率な道路輸送に依存せざるを得ない状況であ
った。ダウ船は到着順の乗船及び満載になり次第出航という運航方式であったため、旅客あるいは貨物
が水際で待機している状況が続いていた。
また、フェリーが運航していたジブチ、オボック、タジュラの各港の港湾設備は、タジュラ港の一部
を除き、開港以来の約 30 年間維持管理がされておらず、ラバーフェンダーの脱落や損傷、ランプウェ
イやヤード舗装部分のコンクリート剥離や洗掘等が見られ、安全性確保のため改修・補修の必要性があ
った。
ジブチ、タジュラ、オボック航路に 40m 型フェリー1 隻を建造・配備し、ジブチ港、タジュラ港、オ
ボック港向け防舷材を調達することにより、ジブチ-北部地域を結ぶ海上輸送能力の改善を図り、もっ
て地域間の経済格差是正に寄与する。
1. プロジェクトサイト:ジブチ、タジュラ、オボック
2.日本側の実施
40m 型フェリー1 隻の建造(予備品、初期操作指導を含む)とジブチ港までの輸送、現地における確認
運転の実施及び、ジブチ港、タジュラ港、オボック港向け防舷材(7 個)の調達
3.相手国側の実施
港湾施設改修(ジブチ港のスリップウェイ補修、ジブチ港・オボック港のヤード舗装、及び 3 港全ての
防舷材設置等)
、人材(フェリー乗組員、海事局運行管理者)、ローカルコスト(必要運行・維持管理に
係る経費(燃料費を含む)、ジブチ港、タジュラ港、オボック港フェリーターミナルの修復)
2008 年 1 月 16 日(詳細設計)、2008 年 5 月 19 日
事業完了
2009 年 10 月 17 日
交換公文限度額:15 百万円(詳細設計)、865 百万円 供与額:15 百万円(詳細設計)
、858 百万円
設備・運輸省海事局 (以下「海事局」)
㈱日本造船技術センター、㈱北浜造船鉄工/三協テクノ㈱共同企業体
基本設計調査:2007 年 5 月~12 月、詳細設計調査:2008 年 2 月~4 月
我が国の協力
・「港湾施設整備計画(1,2 期)」
(無償資金協力、1988-1989 年)
・「港湾施設整備計画」
(無償資金協力、1994-1996 年)
他ドナーの協力
・ドイツ「フェリーボート供与」(無償資金協力、1981 年)
評価結果
妥当性
本事業の実施は、事前評価時・事後評価時ともに貧困削減戦略ペーパー(1999 年)や国家社会開発イニシアティブ(2008-2012
年)、Vision 2035(2012-2035)で掲げられた、海上輸送部門の効率化、北部地域への海上輸送の強化というジブチの開発政
策、安全で割安な北部定期フェリー運航航路の重要性という開発ニーズ、及び、日本の援助重点分野として掲げられた基礎イ
ンフラ分野と合致しており、妥当性は高い。
2 有効性・インパクト
本事業の実施により、事業目的として掲げられた、ジブチ-北部地域を結ぶ海上輸送能力の改善について、ジブチ-タジュ
ラ間週 3 回、ジブチ-オボック週 2 回の定期運航が行われており、年間輸送乗客数は、目標値を達成している。年間貨物量に
関するデータは得られなかったものの、年間輸送車両数もほぼ想定どおりである。また、既存のダウ船や陸路に比べて輸送所
要時間、待機時間は減少し、定期運航が確保されたことで乗客の利便性は向上した。既存のダウ船や小型ボートは揺れが激し
く危険であったが、本事業により供与したフェリーは揺れもほとんどなく快適な輸送が実現されている。また、既存船は海洋
安全基準に達していなかったが供与船は同基準も満たしている。乗船料金は既存ダウ船に比べ上昇したが、フェリー利用者へ
のインタビューによれば、その利便性故に乗客は料金に対して満足している。また、陸路輸送と比較すると割安である。
インパクトについては、事前評価時に想定されていた北部からジブチへの魚介類・畜産品の搬入は、魚介類はジブチ港及び
フェリーに冷蔵施設がないため、また畜産品は旱魃の影響で家畜頭数自体が減少しているため、あまり活用されている状況に
ない。しかしながら、本フェリーの運航により、生活必需物資が定期的に入手できるようになり、北部住民の利便性は向上し
た。
よって、有効性・インパクトは高い。
定量的効果
2007 年
(実施前)
実値
2010 年
(目標年)
目標値
2010 年
(目標年)
実績値
2012 年
(事後評価時直近年)
実績値
指標 1
定期運航による年間輸送乗客数
0
26,021 人
n.a.
30,322 人
指標 2
定期運航による年間輸送車両数
0
1,169 台
n.a.
1,039 台
指標 3
定期運航による年間輸送貨物量
0
1,565 トン
n.a.
n.a.
指標
出所:海事局
3
効率性
本事業は計画どおりのアウトプットが確認され、事業費・事業期間ともに、計画内に収まり(それぞれ計画比 99%、99%)、
効率性は高い。
4 持続性
本事業で供与されたフェリーは海事局が運営・維持管理を行っている。事前評価時に想定されていたフェリー管理運航課の
新設は行なわれていないものの、フェリー運行に伴い新たに17名が新規雇用され(契約社員)、必要な人数が確保されている。
海事局内部に維持管理部門はなく、船上で実施する日常点検保守作業以外の大規模維持管理(船体の修理、機関の補修等)に
ついては、新フェリーの就航後もジブチ自治港(Port Autonomy International Djibouti, PAID)との契約により実施される
ことが事前評価時に想定されていたが、PAIDは2012年にPort of Djiboutiとして民営化しており、点検部門はオランダ系会社
Damenに全委託していることから、国保有の船舶に関する上架による点検についてもサービス料が発生し、サービス料負担軽
減のため、フェリー上架の際にPAID技術者の協力は得ず、フェリー運行管理者・技術者らによる点検となっている。
船員のフェリー運航能力には問題はなく、フェリー技術責任者により船員への技術移転がなされている。しかし、船員は運
航時の万が一の故障時の対応等に不安を感じており、フォローアップ協力による研修の実施を希望している。また、船員の給
与待遇が悪いため、船員のモチベーションが低く、継続して就業しにくいという問題がある。海事局は維持管理の技術強化と
して、大学等外部から今後の海事局の技術者候補となる研修生を受け入れ、受け入れ期間中にフェリー技術責任者及び技術担
当者により維持管理の研修を行なう他、同技術担当者が担当者間での職場内研修を実施している。
実施機関の財務に関するデータは入手することが出来なかった。海事局長の話では、設備・運輸省から海事局への予算配分
額は職員の給料が大半であり、維持管理費用への充当は出来ていない。一方で、同じく海事局長の話では、フェリーを含めた
海事関係の予算について、設備・運輸省内の財務部門の管理から海事局の管理に変更する方針が出されていることから、予算
措置には改善の兆しが見られる。また、2013年5月にフェリーの収益を管理する口座を開設しており、2013年9月以降のフェリ
ーの収益は適切な管理下におかれている。
維持管理状況については、フェリーの機能は現在のところ保たれている。フェリーの維持管理計画が策定され、週に一度の
運休日の定期点検、年に一度の定期的な上架による点検修理が行われている。しかし、維持管理計画に基づいた具体的な金額
を支出することができないため、必要な部品が十分購入できないという問題がある。例えば、主機関やジェネレーター関係の
部品についてはジブチでの購入が難しいことと海事局より購入する予算がないことから、予備の部品を装備することなく運航
しており、技術責任者は不安に感じているとのことであった。また、タジュラ港の防舵材が脱落したため新たに敷設する必要
がある他、ターミナル全体の維持管理も十分ではない。一方、維持管理状況に関しても、上述の方針変更に伴い予算措置が改
善されれば、適時・適切に交換部品の調達がされる見通しはある。また、民営化されたジブチ港の修理関連サービスについて
も海事局独自の予算措置を図り適切なサービスを受けることが期待される。
尚、ジブチ港の船着場の海事局所有の待合所が、沿岸警備隊施設の拡張工事に伴い取り壊された。新規沿岸警備隊施設が作
られることにより、乗船前の乗客の待合場所がなくなり、車両と混在する中での待機を強いられており、実際に乗客と車の接
触事故が起こるなど安全上好ましくない状態である。それに対し、海事局は柵を設け乗客と車を分離する方法を考案している
が、不十分と思われる。また、タジュラとオボックにおいては、子供たちが出航時に船のデッキの先端から海への飛び込みを
行なっており、事故が懸念される。これに対し、ジブチの待合所及び係留施設については、既に沿岸警備隊が整備計画を有し、
その図面についても準備されていることから、改善が見込まれている。
以上より、財務、維持管理状況には改善の兆しが見られるものの、現状では、体制面、技術面、財務面、維持管理状況に各々
問題があり、本事業によって発現した効果の持続性は低い。
5 総合評価
本事業は、事業目的として掲げられた、ジブチ-北部地域を結ぶ海上輸送能力の改善について、ジブチ-タジュラ間週 3 回、
ジブチ-オボック間週 2 回の定期運航が行われ、ほぼ想定どおりの年間輸送乗客数、年間輸送車両数が実現した。また、輸送
所要時間、待機時間の減少、安全性の向上も図られ、乗客の利便性は向上した。
持続性については、大規模維持管理の体制・技術にやや不備があるとともに船員の継続確保・技術の維持にも問題が見られ
る。また、維持管理予算の不足、およびそれにより十分な部品を購入出来ないという維持管理上の問題もあるなど、体制・技
術・予算・維持管理状況各々に課題が見受けられる。妥当性と効率性はともに高い。
以上より総合的に判断すると本事業の評価は高いと言える。
Ⅲ 教訓・提言
実施機関への提言:
フェリーの維持管理に関し、海事局は、部品の購入に必要な予算措置を取るよう設備・運輸省に働きかけ、事業効果の持続
性の確保のためのオーナーシップを取っていくことが必要である。また、船員の身分や給与待遇を改善し、船員の勤務意欲を
向上するための対策を早急にとる必要がある。同時に、乗船前に待機する乗客の待合場所を確保し、乗客の安全に努める必要
がある。
JICA への教訓:
本事業実施後の維持管理におけるジブチ側負担事項については、先方政府の資金繰りの問題及び支払いに関する財務
省との手続きの遅延より、履行が困難であることが多いことから、案件検討時には先方の負担能力を十分精査・協議し、
合意した事項については先方負担事項の履行の確証を取り付けることが必要。
オボック港到着時のフェリーの様子
タジュラ港到着時のフェリー
Fly UP