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着衣の燃焼性に関する研究(第二報)

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着衣の燃焼性に関する研究(第二報)
消防科学研究所報 39号(平成14年)
着衣の燃焼性に関する研究(第二報)
小室修**鳥谷?享¥荻野恭久¥井上民子¥瀬戸裕治ホ
概 要
昨年、マネキンに 1
0種類の衣服を着せ着火した後の燃焼性状について報告を行った。その際、実験対
象とした衣服は単一繊維素材のものが中心であり、また、単独での着用を想定したものであった。
0
0
覧のパジャマに 7
今回は、混紡素材なとやのパ ジ ャマを着せた場合と、着火後の燃焼が激しかった綿 1
種類の素材の下着を重ね着した場合の燃焼性状について前回の実験との比較を行 った
。
更に、治衣着火火災の原因のひとつであるガステープ‘ルについて、いくつかの条件を設定した場合に炎
の状況がどのように変化するかについて観療を行った。
その結果、次の様な傾向が見られた。
①混紡素材は綿が高率であるほど燃焼が激しくなった。また、構成素材のそれぞれが単独で燃焼した場合
とは異なる燃焼傾向た、
った。
② 重 ね 着 の 場 合 、 パ ジャマの燃焼によって下着の燃焼が促進されることが観測された。
③ガステーブルの炎は、使用状況によって大きさなどに変化が現れることが観察された。
3 実験方法等
1 はじめに
前号では、「着衣の燃焼性に関する研究 j としてマ
(
J
)
う 体 表 面 付 近 の 温 度 変 化 に つ い て 報 告 を した
実験体の確認
0
選定した実験体は、マイクロスコープ(倍率 3
ネキンに着用させた衣類の燃焼性と燃焼の拡大に伴
。
倍 ) を 用 い て 、 生 地 表 面 及 び 断 面 の 観 察 を 行 った
。
1)
また、マネキンに着用させた状態での、身体との聞
市販されている衣服は、組成やデザインが多種多
様である 。 その中でデザインに着目すると、パジャ
に出来る空間やしわについて観察した。
0
0
%
マのようなゆとりのある衣服、また、素材は綿 1
(
2
)
実験体の前処理
各実験体は、 l 回 水 洗 い を し た 後 、 燃 焼 実 験 ま で
のものが着火後の燃焼が激しいことを確認した。
デシケーターに保存した。
そこで今回は、実験対象をパ ジ ャマに絞り、混紡
実験装置と実験方法
素材など前回の報告で取り上げなかった素材につい
(
3
)
0
0
覧のパジャマと素材の異なる下着を
て、及び、綿 1
マネキ ンに 着 用 さ せ た 燃 焼 実 験 に つ い て は 前 号 を
。
参照 1)
重ね着ーをした場合の燃焼性状と体表面付近の温度変
ガステーブノレは、市販品の三口型ビル卜イ ン コン
化について観測を行った。
ロ (13A用 ) を 実 験 室 内 に 設 置 し た 。 前 面 3 箇 所 の
また、着衣着火の原因として多く挙げられるガス
テ ー ブ ル 2) に つ い て 、 バ ー ナ ー の 炎 と 使 用 す る 鍋 の
温度変化を熱電対を用いて測定できるように配置し、
大きさなどとの関係について、観察を行った。
併 せ て 、 赤 外 線 熱 画 像 装 置 を 設 置 し た 。 ( 図 l参照)
80mmの鍋(以下大鍋とい
この装置を用いて、直径 2
40mm の鍋(以下小鍋という。)
う。 )もしくは直径 1
2 実験体選定等
組成、表面状態等を考慮し、
熱 量 の バ ー ナ ー (4.65kW) に乗
に 水 を 入 れ 、 最 高i
7種類のパジャマ、
せて最大出力にした状態での①ガステーブノレ前面の
及び、 7種 類 の 下 着 を 実 験 体 と し て 選 定 し た 。
ま た 、 ガ ス テ ー プ ノレは近年普及が進んでいる 三 口
I定 、 ② 側 面 か ら ガ ス テ ー ブ ル 周 囲 の 熱 画 像 撮
温度調J
P
影、@ノ《 ー ナ ー の 炎 の 状 態 観 測 を 行 っ た 。 バ ー ナ ー
のヒソレトインコンロの最大熱 量 のバーナーを選定し、
最高出力の状態で①大きな鍋を乗せた場合、②小さ
/
4 の穴を耐火パテで詰まらせた
は通常の状態と、 1
な鍋を乗せた場合、③ノくーナーを一部詰まらせた場
場合の二条件、更に鍋の位置について中央に乗せた
合、の三種類の条件を設定した。
5mm手 前 に ず ら し た 場 合 の 二 条 件 で 行 っ た 。
場合と、 2
*第二研究室
**水利課
75
ンヤーン
ポリエステ
ノ
レ
4
6 5見
レーヨン 3
5九
正面
側面
図 1
4
ガステーブル実験の設置概略図
平織
5
絹 100百
結果
(
1
) 着用状態など
衣服をマネキンに着用させた状態、並びに生地の
f
J
f
i別 に つ い て の 観 察 結 果 は 表
lの通り
o
ンャーン
表 1
(実験体番号
綿 6 0九
燃焼実験実験体一覧
6
1-7r
ま単独で、 8-14は綿 1
0
0%の
ポリエステ
ノ
レ
パジャマの下に着用)
実験体番号
状態
4 0出
種別・組成
ジャージ
など
ポリエステ
7
ノ
レ
65%
綿 3 5九
裏起毛
1
綿 70略
アクリ
ノ
レ
30九
起毛
ンヤーン
8
アクリノレ
ノfイノレ
100出
綿 40見
2
アクリ
ノ
レ
40九
つ
ポリエステ
起毛
ノ
レ 20%
アクリノレ 9
9
O九
毛 10判
綾織
3
綿 5 0 出ア
クリ
ノ
レ
5
O出
7
6
Z
寝起毛
自然に消えた。(写 民 1
)
ポリウレタ
ン
10
4 5覧
アクリノレ 4
O弘
綿 15弘
ジャーシ
綿
ポリエステ
11
100% (
3
0秒)
N
o
.
2 (1 分)
レ
ノ
100弘
ンヤーン
表ナイロ
ン
12
N
o
.
4(
5分 3
0秒)
10 0%
以
綿 10
N
o
.
5 (1 分 3
0秒 で
燃焼終了)
写真 1 パジャマの燃焼
O%
(
N
oは 実 験 体 番 号 を 表 す 。 時 間 は 着 火 し て か ら 炎 が
肩まで拡大するまで)
綿 の 符11 合
似
山
川
一O
ジ 0
ヤ 1
ジ綿
13
(1~ 紡素材で糾が 含 ま れ ているものは、
が 多 い 方 が 燃 焼 時 聞 が 短 かっ た。 (写 真 2)
ンャーン
綿 50拡
14
ポリエステ
レ
ノ
5 0弘
(
2
)
ア
N
o
.
6 (1 分 3
0秒)
N
o
.
7(
2分)
N
o
.
1(
1分 3
0秒)
N
o
.
3(
2分)
燃 焼 実験
パジャマの燃焼
糾 1 00%の パ ジ ャ マ で は 全 体 の 燃 焼 時 間 が 5
分程H
tであった 1)が、 j
昆紡 ポ 材 の 場 合 は 何れも 10
分 以 上 の 時 間 を 要 し 、 燃 焼 拡 大 の 様 子 な ど 構 成 素材
の い ず れ か が 単 独 で 燃 焼 し た 場 合と も、それ ぞ れ の
Jを 示 し
燃 焼 の 特 徴 を 合 わ せ た 場 合と も異 な る 挙
!
l
j
j
た 。 ま た 、 絹 100%の 場 合 は 燃 焼 が 継 続 す ること
がなく、右の脇付近 ま で燃 焼 すると(1分 30秒後)
7
7
写真 2 混紡素材のパジャマの燃焼
(上段 ・綿 と ポ リ エ ス テ ル の 混 紡 、 下 段 : 綿 と ア ク
まれた。 一 方 、 大 鍋 は 鍋 の 底 を 炎 が は っ て 大 き く 広
リルの混紡、左側が綿の割合が多いもの)
がった。
重 ね3
i
t
ーした場合の燃焼
イ
左腕
a
似
7種 類 の 実 験 体 共、途中 で 燃 焼 終 了 す る こと なく、
手
ー ー.、ベ
-
ーー
左背
ベ1
0
4
0
-
パ ジ ャ マ と 下 着 の 双 方 が 燃 え 尽 き た G 綿 100%の パ
M圃酬明
ジ ャ マ 単 独 で の 燃 焼 実 験 1)に 比 べ、 燃 焼 終 了 ま で に
)
要 す る 時 間 は 長 か っ た。(写真 3
晶
背部中央
右背
ζ
=鎚企
左胸
S
4
7一
一
胸部中央
4
9
2
右胸
4と
.
.
.
.
.
6
0
9
右腕
喧
昼
L
盟
主
:
:
:
.
.
∞ 2∞ 3∞
1
4
ω
日間
s
∞
時間/砂
左腕
3
3
9
-一 一 一一~-.,:-主?--抱一-一泊ー
--_../- ~
-t-.
一
ー
ー
ー
会主
主
N
O
.
1
1(
1 分)
左背
事 取 曲 噂 醐 監中 命 中
背部中央
ーー
ーーー
ー
ー
ー
ー
ー
ー
ー
.
-"
"
宮
=
・
・
同
ー
司
副
・
同
R
右背
題│
-At
N
O.
1
3(
1 分)
左胸
-一一.- ・ . . . . .:. :.......:..z .'、主,~~ ---...-世.
~-'"自由-司自由一
_~
写真 3 重ね着をした場合の燃焼
胸部中央
.
.
7
決
右胸
回
一 伊 三半エニ ー -
( 上 に 着 て い る の は 綿 100%の パ ジ ャ マ )
右腕
1_
..
.
A~一--ー~ -
o
胸 ポ ケ ッ トな ど の 生 地 が 何 枚 か 重 な っ た 部 分 な ど
:
m
∞2!xl
∞
4
5
0
0
岡
崎
,〆旬
は 下 着 が 一 部 燃 え 残 っ て い た 。(写真 4
)
左背
中背
206
世g
~~
こユー叩ムみ艶暫叫ふ
ぉj
左前
1
.
.
587
_____.<・
Jλ切 ,~ .,' 、叫
l
片 〈¥ 令 、
l
石前
札
7
O
燃焼後のパジャマを
100
200
石腕
300
時間/砂
グラフ 1 温 度 変 化 の 綴 子
外した状態
写真
i
中前
品 "... ..........., 榊..,....;.;訓 ""'"ヤ告智昏~話諒争問、"叫ぬ蝉波面必厳司
633
r
燃焼後
石首
N
o.
9
)
4 燃え残った下着 (
(上段 :N
O.
3、 中 段
N
O
.
9、 下 段 ・ 綿 100%の パ ジ ャ
マ 1))
ウ
燃焼に伴う体表面付近の混度変化
鍋をずらして乗せた場合、炎は鍋の大きさに沿 っ
今 回 の 実 験 体 は 、 綿 100%の パ ジャ マ に 比 べ て 炎
の拡大に長い時聞が掛かっているので、上半身を 8
また、バーナーを詰まらせた場合、炎が片側に大
部分に分けて測定した温度上昇までのの時間も長く
な っ て い る 。 最 高 到 達 温 度 は 綿 100%の パ ジ ャ
7
て 広 が った。
き く 片 寄 っ た 。 ( 写 真 5参 照 )
と
比較し てほ とんど 変 わ ら な か っ た 。
5 考察
(
3
)
(
[
) 着 衣 の 燃 焼 に ついて
ガステープルの燃焼状況
?
昆 紡 素 材 の パ ジ ャ マ の 場 合 、 綿 100%の も の と の
熱電対による温度測定結果は、顕著な変化が現れ
大 き な 違 い は 燃 焼 拡 大速 度 が 遅 く な った こ と と 、 燃
な か っ た。
焼 後 、 体 表 面 に 溶 け た 生 地 が 張 り つ い た こと であっ
鍋 を 中 央 に 乗 せ た 場 合 、 小 鍋 は 鍋 の周 囲 が 炎 で包
7
8
た。 ま た 、 綿 が 高 率 で あ る ほ ど 燃 焼 が 速 か っ た 。 し
(
2
) ガステープルについて
かし、最高到達温度や炎が身体の部位を拡大してい
鍋を乗せた状態では、視認できる炎の大きさより
く 様 子 、 更 に 大 き く炎が立ち 上 が る 場 所 に つ い て の
も鍋の周囲の温度が高かった o 加えて、炎は鍋の底
傾向は同ー であった。燃焼が遅い分 、衣服に着火し
な ど に 沿 って 考 え て い る 以 上 に 広 が っ て い た 。 この
た 場 合 に 適 切 な 対 応 が 取 り や す くなると 考え られ る
こ と か ら 、 気 が 付 か な い うち に 衣 服 が 着 火 し て し ま
が、火傷の危険性は免れられないといえる。
う可能性があると考えられた。
また、ふきこぼれなどでバーナーが詰まったまま
重ね着をした場合も同様の傾向が得られており、
着 火 し た 場 合 、 特 に ポ リ エ ス テ ル 100%の 下 着 を 着
使 用 す る と 、 炎 の 片 寄 り が 大 き くな り 、 衣 服 と 炎 と
て外側に綿素材のものを着た場合燃焼が促進されて
の 距 離 が 近 く な って しまう危険性が考えられた。
し ま い 、 ポ リ エ ス テ ル 100%の 衣 服 だ け を 着 た 場 合
6 まとめ
より火傷の危険性が 高 まることが考えられた o
(l)衣服に着火した場合、混紡素材や重ね着をして
いると燃焼拡大時聞が遅くなったが、他の傾向に大
降
臨遍│
皿
き な 差 は 認 め ら れ な か った。
(
2
) ガ ス テ ー ブ ル の 炎 は 、 鍋 の 乗 せ 方や詰 ま り 具 合
などによ って 変 化 し た 。ま た 、 肉 眼 で 分 か ら な い 領
域も高温になっていた。
--.圃圃圃司
7 おわりに
小鍋を最高火力のバーナー
左の赤外映像
に乗せた状況
様々な衣服の燃焼実験とガステーブルの炎の観察
を通して、 着衣 着 火 火 災 を 防 ぐ た め に は 、 火 を 使 用
す る 側 の 認 識 を 改 め る 必 要 性 を 強 く 感 じた o
一 連 の 研 究 か ら 、 次 の 3点 を 再 確 認 す る こ と が 草
要である と考 え られた。
①衣服は;燃えるものだということを忘れないこと
②ガステープ‘ルは適切な使用が大切なこと
③ 台 所 で は 「 火 の 側 に い る 」 こと を 忘 れ な い こ と
川大鍋を最高火力の
,¥ーナーに乗せた赤外映像
今回の研究が、資料などとして活用され、着衣着
火火災の減少につながれば幸いである 。
[参考文献]
1l平成 1
3年
消防科学研究所報
2
) 東京消防庁調査限「平成 1
3年 版
小鍋を詰まらせたバーナーに
左の赤外映像
乗せた状況
目。大鍋を詰まらせた
,¥-ナーに乗せた赤外映像
写真 5 ガ ス テ ー ブ ル の 炎 の 状 況
7
9
3
8号
p
p
1
4
4-1
5
2
火 災 の 実 態 Jp
p
9ー 1
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G (Part 1
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Abstract
Last yearwe reportedon the fire behavior on clothes,which wasmade clear i
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e experiment with t
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kindsofclotheson t
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emanikin Mostofclothesweremadeofsinglematerial andb
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clothes.
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10thes and the pajamas wit
h 7 kinds
Herewe show,as aresult
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rmade of different materials respectively. And we also showhow the gas flame changed l
l
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several conditions.
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n differently from any single material. The higher a cotton ratio, t
h
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faster s
l
l
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l
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2
: The l
a
s
t test proved that l
l
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l
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d wel1 with cotton pajamas
目
3
: Gas flames can develop under several conditions.
*Secolld L boratory ホ*Water Sources Section
昌
8
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