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ANSI/ISA-95 規格準拠の P2Bインターオペラビリティシステム

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ANSI/ISA-95 規格準拠の P2Bインターオペラビリティシステム
トピックス
ANSI/ISA-95 規格準拠の P2B インターオペラビリティシステム提案
P2B (Plant-to-Business) Approach to ANSI/ISA-95 Standards Based Interoperability
川 村 春 久 *1
KAWAMURA Haruhisa
1. は じ め に
れ,国際規格 ISO/IEC として採用されている。
一方で,WBF
(World Batch Forum)
の XML ワーキン
市場の変化に素早く対応するために,ERP
(Enterprise
ググループが,ANSI/ISA-95 に基づいた XML スキーマ
Resource Planning)
,SCM
(Supply Chain Management)
B2MML
(Business to Manufacturing Markup Language)
などの経営管理層と MES(Manufacturing Execution
の制定を行っている。このマークアップ言語B2MMLは,
System)
,PCS
(Process Control System)
などの工場管理
制御システム,MES,ERP の各システム間でプロセス
制御層を密結合させて,生産計画管理をリアルタイムに
データとビジネスデータを連携させるためのツールとし
行いたいという要望が高まっている。
て提供されており,プロセス産業で業界標準となりつつ
従来の ERP と MES との連携では 1 日に 1 回生産計画を
MESに落とし,生産実績をERPに上げるバッチ的なやり
取りがほとんどで,そのためのアプリケーションやイン
タフェースも都度開発する必要があった。
ある。
3. インタフェースツール MDX による ERP/MES
統合システムの構築
リアルタイム生産計画管理のためのシステム開発を短
ERP のトップベンダーである SAP 社は,mySAP ERP
期間でかつ低コストで行うために,ERPとMES間のイン
と B2MML スキーマをサポートする SAP NetWeaver に
タフェースの標準化と開発ツールの提供が望まれており,
より,企業管理領域と工場管理・制御領域をシームレスに
これがPlant-to-Business
(P2B)
インターオペラビリティの
結合するANSI/ISA-95準拠のプラットフォーム
(基盤)を
確保につながる。
提案している。同時に,この基盤上に構築されたインタ
国際標準ANSI/ISA-95規格はP2Bインターオペラビリ
フェースやアプリケーション製品の認定を行っている。
ティの標準化を目指しており,以下にその概要と規格に
当社は,SAP 社の SAP NetWeaver を用いて,ERP と
準拠した当社のインタフェース開発ツール MDX を紹介
する。
2. ISA-95 の標準化モデル
レベル5/4
経営計画と
ロジスティクス
製造に必要とされる機能は,図1に示すような階層モデ
ルで定義されている。この中で連続制御,バッチ制御,デ
スクリート制御などの製造方式に依存せず,同じ基準で
工場管理層
(レベル3)
と経営管理階層
(レベル4)
間の情報
交換が規定できるものとして,米国ISA
(The Instrumentation, Systems, and Automation Society)において S95
するとともに,機能モデルの定義を行っている。Part 2で
は,Part 1 のモデルを基に UML(Unified Modeling
Language)
のクラス図とテーブルを使い,ERPとMES間
のインタフェースデータ構造の定義を行っている。これ
らがANSI/ISA-95.00.01
(Part 1)
/02
(Part 2)
として制定さ
*1 IA事業部システム事業センター PAソリューション部
11
・SCM
95.01/02が取り扱う領域
レベル3
製造オペレーション
管理
規格が計画された。
その Part 1 では,規格で必要な用語とその意味を規定
経営管理層
・ERP
レベル2/1/0
バ
ッ
チ
制
御
連
続
制
御
デ
ィ
ス
ク
リ
ー
ト
制
御
工場管理層
・MES
・PIMS
機器・制御層
・制御監視(PCS)
・センサ/操作端
図 1 製造機能階層モデル
横河技報 Vol.50 No.4 (2006)
125
トピックス
SAPに対するYokogawa B2MMLアダプタ
mySAP
SAP NetWeaver
B2MML
生産計画
SAP Enterprise
Portal(SAP EP)
SAP 2CS
Web
Service
CS Batch
3000.dt
計画ファイル
CENTUM
CS Batch
3000
(PCS)
SAP exchange
Infrastructure
(SAP XI)
KPI XMLファイル
Alert XMLファイル
Exq2XI
Web
Service
Alert
SAPへのB2MML
生産実績
B2MML
生産実績
ファイル
KPI
Write
B2MML
file
Excel
パッチ
データ
Exaquantum
/Batch
(PIMS)
レポート
図 2 MDX を用いたインタフェース構築例
MES間のANSI/ISA-95準拠のインタフェース開発ツール
M D X を開発し,S A P 社から,P o w e r e d b y S A P
NetWeaver の製品認定を受けた。
MDXは当社のPIMS(Plant Information Management)
図 4 SAP Portal での PCS 運転画面の表示例
のカテゴリーに大別し定義している。
この中でも生産計画と生産実績は,市場の変化や生産
設備の制約に素早く対応するために ERP と MES 間で頻
繁にやり取りされるべき情報であり,特に KPI データや
製品である Exaquantum に搭載され,B2MML をサポー
PCS からのスケジュール遅延,生産設備の異常を伝える
トした mySAP ERP と PCS 間のオープンで標準ベースの
警告情報は,リアルタイムにERPのポータル画面上に表
双方向データ交換を可能にしている。また,XMLによる
示されるべきである。
メッセージ交換をサポートすることで,ERP の Portal に
図 3 に示すように,SAP Portal で KPI データを表示し
リアルタイムに PCS からの警告情報や PIMS からの KPI
達成度合いに応じてステータス色を変更したり,メッ
(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)
データ
セージエリアに PCS からの警告情報を表示したりするこ
を表示することが可能である。
図 2 に,MDX を用いた mySAP と PCS/PIMS 間のイン
タフェース構築例を示す。
とで,シングルウィンドウでリアルタイムに生産計画の
管理が可能になる。
上記の他,本システムでは ERP の Portal からリアルタ
ANSI/ISA-95 では ERP と MES 間のインタフェース情
イムにPCSの運転画面を見たり,MES領域の品質管理解
報として生産能力,製品定義,生産計画,生産実績の4つ
析画面を見たりすることも可能である。図 4 に,S A P
Portal での PCS の運転画面の表示例を示す。
このように,生産現場の運転画面を共有することによ
り運転サイドと密に連携を取って対応することができ,
真の ERP/MES 統合システムが実現できる。
4. お わ り に
P2B(Plant-to-Business)
インターオペラビリティを確保
しながら製造機能階層間の連携を深めることにより,生産
計画管理だけでなく急拡大しつつあるプラントの設備管理
(PAM)
の分野への対応も可能である。今後は,設備の予
知保全機能と連携した生産計画決定支援も可能である。
*‘mySAP’,‘NetWeaver’,‘Powered by SAP NetWeaver’は,
ドイツ S A P 社の商標または登録商標です。‘E x a q u a n t u m ’,
図 3 SAP Portal での KPI データや警告メッセージの
‘CENTUM’は,横河電機(株)の登録商標です。
表示例
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横河技報 Vol.50 No.4 (2006)
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