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抄録集(PDF)はこちら - 第450回 日本医学放射線学会 関東地方会定期
抄録集
セッション 1
脳
座長:国立精神・神経医療研究センター病院 放射線診療部 佐藤 典子
O - 01
O - 02
MRI で髄膜造影増強効果
を認め、脳生検により診断した原発性
中枢神経系血管炎(PCNSV)の 1 例
神経軸索スフェロイド形成を伴う
遺伝性びまん性白質脳症(HDLS)の一例
廣石 篤司 1)、松下 彰一郎 1)、新城 安基 1)、
森本 毅 1)、熊野 玲子 1)、八木橋 国博 1)、
今井 健 2)、山田 隆之 1)
前原 由美 1)、平澤 裕美 1)、岡内 研三 1)、
平戸 純子 2)、石川 大介 3)、池田 圭生 3)、
対馬 義人 1)
1)聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 放射線科
2)聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 神経内科
1)群馬大学医学部附属病院 核医学科
2)群馬大学医学部附属病院 病理部・病理診断科
3)群馬大学医学部附属病院 神経内科
20 歳代、女性。性格変化と左半身の筋力低下
症例は 70 代女性。当院入院の約 9 か月前から
を主訴に来院した。器質的疾患の否定目的で頭部
視野異常を自覚し、徐々に物をうまくつかめなくなっ
MRI 検査を施行したところ、両側大脳側脳室周囲
た。当院入院約 1 か月前に近医眼科を受診、右下
白質は FLAIR 像で高信号を呈し、矢状断像で脳
1/4 同名半盲を認めたため近医脳神経外科を受診
梁の菲薄化と両側側脳室の拡大を認めた。側脳室
した。その際撮影した MRI では左中大脳動脈狭
周囲深部白質や両側内包、大脳脚の一部は拡散低
窄を認めるのみであったが、その後も症状の改善が
下を呈していた。
なく、約半月後に再度撮影した MRI では、左中大
頭部 CT 検査では両側頭頂葉皮質下白質や両側
脳動脈狭窄に加え、左前頭葉に 2 か所の DWI 高
側脳室前角周囲白質に点状・数珠状石灰化を認め
信号、ADC map 低値の領域が出現し、脳梗塞と
た。
して加療を開始した。しかしその後も右上肢不全麻
経過観察目的に 1 か月後に施行された MRI 検査
痺や高次脳機能障害が進行し、病変の拡大や髄膜
でも側脳室周囲深部白質の FLAIR 像での高信号
の造影増強効果がみられたため、精査目的に当院
域は残存し、拡散低下も持続していた。
脳神経外科に紹介入院となった。開頭生検の結果、
以上の特 徴的な画像 所見から神経軸索スフェ
血管炎所見が得られ、二次性に中枢神経血管炎を
ロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症(以下
疑う疾患は除外されたため、PCNSV の診断となっ
HDLS)を疑い、診断基準として 5 項目を満たしたこ
た。
とから probable HDLS と判断された。
原 発 性 中 枢 神 経 系 血 管 炎(primary central
HDLS は常染色体優性遺伝性白質脳症であり、
nervous system vasculitis; PCNSV )は中枢神経
原因として CSF-1R の遺伝子変異が関与していると
系の中小血管に限局して生じる原因不明の稀な血管
される。画像所見として脳室周囲の白質病変や一
炎である。PCNSV に特異的な画像所見の報告は乏
部病変の拡散低下の持続、脳梁の菲薄化、白質の
しいが、ほぼ全例で MRI 上の異常がみられ、皮質
点状や数珠状の微小石灰化などを呈することが知ら
~皮質下梗塞、脳内出血、くも膜下出血、大脳白
れている。HDLS はまれではあるが、このような特
質の T2 延長病変、髄膜や血管壁の造影増強効果
徴的な画像所見から診断が可能な疾患である。
などを呈することが知られている。
今回われわれは髄膜の造影増強効果を伴い、脳
生検により診断した PCNSV の 1 例を経験したので、
文献的考察を加え、報告する。
16
O - 03
O - 04
術前診断が困難であった
右後頭葉の節外性
NK/T 細胞リンパ腫の一例
松果体腫瘍治療後、26 年の経過で
同部位に腺癌を生じた一例
足立 拓也 1)、鳥井原 彰 1)、大山 潤 1)、
立石 宇貴秀 1)、新井 文子 2)、工藤 琢巳 3)、
高瀬 博 4)、大西 威一郎 5)
小澤 茜 1)、鳥井原 彰 1)、大山 潤 1)、
立石 宇貴秀 1)、菅原 貴志 2)、小林 大輔 3)
1)東京医科歯科大学医学部附属病院 放射線診断科
2)東京医科歯科大学医学部附属病院 脳神経外科
3)東京医科歯科大学医学部附属病院 病理部
1)東京医科歯科大学医学部附属病院 放射線診断科
2)東京医科歯科大学医学部附属病院 血液内科
3)東京医科歯科大学医学部附属病院 脳神経外科
4)東京医科歯科大学医学部附属病院 眼科
5)東京医科歯科大学医学部医歯学総合研究科 包括病理学講座
症例は 70 代女性。X-6 年前から視力の低下を
症例は 30 歳代男性。X-26 年に嘔吐、眼振を契機
自覚していた。他院にて両側ぶどう膜炎の診断で加
に他院を受診した際、松果体腫瘍および水頭症を
療されていたが、X-5 年に右眼の硝子体手術を施
指摘され、右脳室 - 腹腔シャントを造設された。腫
行した。X-4 年当院眼科に紹介受診し、同年左眼
瘍マーカーの上昇、画像所見より胚細胞腫瘍と診断
の硝子体手術を施行した。確定診断には至らなかっ
され、化学放射線療法を施行された。X-18 年より
たが、臨床経過、病理所見からリンパ腫が第一に
月 5 回程度の痙攣発作が出現し、X-4 年の大発作
考えられ、メトトレキサート硝子体注射を複数回施
を契機に、当院脳外科を紹介受診した。同年に再
行し眼底病変は寛解した。X-2 年に右眼球癆が進
び水頭症を発症し、左脳室 - 腹腔シャントを造設さ
行したため右眼球摘出術を施行した。病理検体か
れた。
らはリンパ腫細胞は検出されず炎症の残存所見のみ
X-1 年の頭部 CT および MRI で松果体に、左視床
であった。X 年に定期検査の脳 MRI にて右後頭葉、
に浮腫を伴い、石灰化を含む多房性腫瘤を指摘さ
前頭葉に T2 強調像および FLAIR 像高信号域が
れた。11C-Methionine PET では腫瘤の一部にわ
出現した。同部位に拡散低下や明らかな腫瘤は認
ずかな取り込み上昇を認めるのみで、放射線壊死の
めなかった。FDG-PET/CT では集積亢進を認めな
可能性を考え、ステロイド投与にて経過観察とした。
かったが、MRI 再検時に右後頭葉の異常信号域の
その後、腫瘤の緩徐な増大を認めたため、X 年に
拡大を認め、11C-Methionine PET/CT にて病変
腫瘤摘出術を施行された。組織学的に腺管や嚢胞
部位の集積亢進を認めたことから悪性脳腫瘍が疑
状の構造を呈する異型細胞が粘液を産生しながら
われ腫瘍摘出術を施行された。病理診断は節外性
増生しており、病理診断は腺癌であった。全身検索
NK/T 細胞リンパ腫の脳浸潤であった。脳もしくは
で体幹部に明らかな悪性病変を指摘されず、転移
眼原発の節外性 NK/T 細胞リンパ腫の報告は少な
性脳腫瘍は否定的であった。
く、文献的考察を加えて報告する。
他院でγナイフを 3 回施行されたが、残存腫瘍はそ
の後も増大した。当院への通院が困難となり、X+2
年に在宅緩和ケアの方針となった。
頭蓋内に発生する転移以外の腺癌は極めて稀であ
る。今回我々はその一例を経験し、文献的考察を
加えて報告する。
17
セッション 2
セッション 1 脳
O - 05
O - 06
右中硬膜動脈分岐の
眼動脈を合併した右頸動脈
―奇前大脳動脈吻合の一例
松浦 紘一郎 1)、内野 晃 1)、齋藤 尚子 1)、
石田 穣治 2)、鈴木 智成 2)
頭頸部
座長:自治医科大学 前頭蓋底への進展を認め、
術前診断に難渋した
鼻腔発生神経鞘腫の 1 例
見越 綾子 1)、村上 和香奈 1)、須山 陽介 1)、
曽我 茂義 1)、新本 弘 1)、加地 辰美 1)、
古賀 絢乃 2)、加藤 貴美 2)
1)埼玉医科大学国際医療センター 画像診断科
2)埼玉医科大学国際医療センター 脳脊髄腫瘍科
1)防衛医科大学校病院 放射線科
2)防衛医科大学校病院 検査部病理
【症例】17 歳男子
症例は 73 歳女性。1 年程前より嗅覚低下を自覚
【経過】頭痛の精査目的に近位で施行した CT にて
していた。外出先で転倒し、その際他院で撮影し
松果体部腫瘍が指摘され、当院脳脊髄腫瘍科に紹
た頭部 CT で篩骨洞~前頭蓋底に及ぶ腫瘤性病変
介された。手術前検査の一環として、MRIおよび
を指摘され当院紹介受診となった。
MRAを施行した。腫瘍は手術されてジャーミノー
頭部 MRI で、鼻腔内より篩骨洞、前頭洞を経
マであった。
由し前頭蓋底に進展する分葉状の形態を示す比較
【MRA 所見】両側の前大脳動脈A1は欠損してい
的境界明瞭な腫瘤性病変を認めた。T1WI で低信
た。右内頸動脈の眼動脈分岐レベルから大きな異
号、T2WI で高信号、内部に隔壁が見られ、脳実
常動脈が内側へ分岐し、両側視神経間を上行する
質には浮腫性変化、mass effect を認めた。造 影
破格を認めた。A2は対を形成せずに1本の、奇前
後 T1WI では、隔壁成分が造影されており、嚢胞
大脳動脈であった。また、右眼動脈は内頸動脈か
性病変の集簇した腫瘍や腫瘍内部の嚢胞変性が示
ら分岐せず、中硬膜動脈から分岐していた。
唆された。浸潤傾向は見られず緩徐な発育形態を
【結論】前大脳動脈の破格として、内頸動脈の眼動
とる腫瘍を考える一方で、前頭蓋底への進展がみ
脈分岐部レベルから前大脳動脈A1が分岐している
られた事から、neuroblastoma や adenoid cystic
ように見える「頸動脈 - 前大脳動脈吻合」または「視
carcinoma を鑑別の上位に考えたが術前に診断を
神経下走行前大脳動脈」と呼ばれる破格が知られ
絞ることは困難であった。鼻腔生検で免疫組織化
ている。発生頻度は 0.086%とまれで、右側に優位
学的に S-100 蛋白に陽性で、desmin、α -smooth
に発生する。A1が欠損する例と存在する例があり、
muscle actin、EMA、GFAP、neurofilament、
欠損する例がより高度な破格である。本症例は両側
melan A は陰性で、神経原性腫瘍が疑われ、開頭
のA1が欠損している。さらに、A2が対を形成し
及び鼻腔内内視鏡での切除が行われた。腫瘍内に
ない奇前大脳動脈である。また、眼動脈の破格と
出血とヘモジデリン沈着、嚢胞変性性を伴う神経
して中硬膜動脈からの分岐が知られている。発生
鞘腫と診断された。
頻度は 1.45%と比較的に多く、やはり右側に多い。
神経鞘腫は schwann 細胞由来の良性腫瘍であ
今回、これらの動脈破格を持つ症例を経験したの
る。頭頚部領域では聴神経由来のものが最多であ
で報告する。
り、鼻副鼻腔由来は約 1%と稀である。一般的に、
良性腫瘍であり、腫瘍は緩徐に増大、骨破壊は認
めないため本症例のように骨破壊を伴い頭蓋内に進
展する例では悪性腫瘍との鑑別が困難となる。
今回、頭頚部原発としては稀な鼻腔由来の神経
鞘腫の1例を経験した。画像所見と共に若干の文
献的考察を加え報告する。
18
放射線医学講座 藤田 晃史
O - 07
O - 08
前額部皮下腫瘤や
全身性病変を来たした
多中心性網細組織球症の一例
硬膜下血腫を伴う
成人発症頭蓋骨ランゲルハンス
細胞組織球症の一例
菊地 俊介、
檜山 貴志、 原 唯史、 岡本 嘉一、
南 学
坂井
神山
能谷
吉儀
筑波大学付属病院放射線診断・IVR 科
洋 1)、池田 新 1)、青木 利夫 1)、
和俊 1)、辻 厳吾 1)、小山 新吾 1)、
雅文 1)、田中 良英 2)、津浦 幸夫 3)、
淳 1)
1)横須賀共済病院 放射線科
2)横須賀共済病院 脳神経外科
3)横須賀共済病院 病理診断科
症例は 40 歳代男性。2 年前に前額部腫瘤を自覚
40 歳男性。頭部違和感を主訴に近医受診。身体
し、増大を認めた。半年前から顔面・体幹・四肢
所見や神経学的所見には明らかな異常は認めず。精
に数 mm の多発する紅色丘疹が出現した。近医を
査目的に頭部 X 線写真、CT 検査を施行したところ、
受診したが原因特定には至らず、精査加療のため当
右頭頂骨に溶骨性腫瘤を認めた。腫瘍の疑いで単
院皮膚科に紹介受診となった。
純 MRI を撮像したが診断に至らず、当院脳外科に
前額部皮下腫 瘤に対して造 影 MRI を行った。腫
紹介。施行した造影 MRI では強い造影効果を伴う
瘤は長 径 2cm で、 境 界 明 瞭、 辺 縁 平滑であり、
腫瘤や嚢胞がみられ、硬膜下血腫も出現していた。
T1WI で骨格筋と等信号、T2WI でやや高信号を示
多血性腫瘍やランゲルハンス細胞組織球症(LCH)
し、均一に造影効果を認め、前頭骨へのわずかな
の疑いで、骨部分切除・血腫除去術を施行。多発
pressure erosion を示した。胸腹部 CT では胸部
性骨髄腫や髄膜腫などと鑑別を要したが、LCH と
を中心に大動脈周囲に軟部濃度がみられ、左優位
病理診断した。現在まで半年間、追加治療は行っ
の両側胸水貯留を認めた。当初は臨床的にサルコイ
ていないが、後遺症や再発なく経過している。
ドーシス等の肉芽腫性疾患、画像上は IgG4 関連
LCH は稀な疾患で小児に好発し、成人発症はさら
疾患が疑われた。精査中に四肢の関節痛が出現し、
に少ない。非腫瘍性疾患で全身に発症しうるが骨病
骨シンチを行ったところ、四肢関節骨幹端中心の多
変の頻度が最も高く、中でも頭蓋骨に発症しやす
発性対称性集積を認めた。
い。診断には X 線写真や CT、MRI が有用であるが、
顔面・背中の皮膚生検を行い、その病理所見 と臨
確定には組織診断を要する。治療は手術、化学療
床経過から多中心性網細組織球症と診断し、ステ
法、放射線治療であるが、自然軽快する例もある。
ロイド内服を開始した。内服開始後徐々に皮膚症
本例は硬膜下血腫のため、観察は不適切と考え準
状や関節痛は軽快し、前額部皮下腫瘤はほぼ消失
緊急的に手術治療を施行された。稀な症例と考え、
した。大動脈周囲の軟部濃度は著明に縮小し、胸
文献的考察を交えて報告する。
水は消失した。
多中心性網細組織球症は原因不明の希な全身性疾
患で、皮膚および粘膜の結節性病変と対称性多発
関節炎が特徴とされている。本疾患における全身性
病変の画像所見の報告は限られているが、本症例
においてはステロイドが著効し、画像上もそれらの
病変の改善所見を認め、同一疾患の spectrum の
一つと考えられた。
19
セッション 2 頭頸部
O - 09
O - 10
FDG PET/CT を施行した頭蓋底
chondrosarcoma の一例
Gradenigo 症候群の 1 例
松本 秀樹、樋口 順也、鈴木 和代、
伊東 伸剛、喜多 和代、伊東 良晃、
相馬 崇宏、松下 桃子
菊地 智博 1)、藤田 晃史 1)、藤井 裕之 1)、
國友 直樹 1)、任 燕 1)、杉本 英治 1)、
相原敏則 2)、坂口 優 3)、伊藤 真人 3)
東京医療センター 放射線科
1)自治医科大学附属病院 放射線科
2)自治医科大学とちぎ子ども医療センター 小児画像診断部
3)自治医科大学附属病院 耳鼻咽喉科
【症例】 83 歳女性
症例は 12 歳男児。3 か月前から右耳痛、2 か月
【経過】てんかんの精査の為、他院にて頭部単純
前から発熱が出現。解熱鎮痛薬にて対応するも、
MRI を施行され、頭蓋底に径 50㎜程度の腫瘤を
その後も発熱が遷延。1 か月前より頭痛、右眼瞼下
指摘された。上咽頭癌を疑われ、精査目的に当院
垂、複視も出現し、近医眼科を受診。近医脳神経
を紹介受診した。
外科を紹介され撮像された MRI で頭蓋底病変を
【画像所見】上顎・副鼻腔単純 CT では、頭蓋底
指摘されたため、精査加療目的に当院小児科に紹
正中部、蝶形骨洞から斜台を首座とする骨破壊性の
介、同日緊急入院となった。入院時身体所見では
腫瘤影を認めた。上咽頭の側壁、後壁は比較的保
右眼瞼下垂、右眼球外転制限、右耳からの膿性耳
たれ、病変内には石灰化が見られた。
漏を認めた。頭部 MRI では右乳突洞から錐体尖部
PET/CT に て 腫 瘤 性 病 変 の FDG 集 積 は 淡く、
の含気低下、錐体尖部周囲の斜台および咽頭後間
SUVmax は約 2.5 程度であった。
隙に液体貯留と造影増強効果を認めた。さらに斜
以上より、上咽頭癌とするには FDG の集積が淡
台後方の頭蓋内脳槽部に病変の波及を認めた。錐
く、chordoma、chondrosarcoma、giant cell
体尖炎を合併した急性中耳炎と診断され抗菌薬加
tumor、metastasis、adenocarcinoma な ど の
療が開始されるも、入院 4 日目の CT で錐体骨の
可能性が挙げられた。石灰化を伴う点から、特に
骨融解像を認め、保存的治療のみでは改善が難し
chordoma、chondrosarcoma が疑われた。
いと判断され、右乳突削開術および鼓膜チューブ留
置術が施行された。
【病理所見】鼻 内 内 視 鏡 に よ る 生 検 で
Gradenigo 症候群は、中耳炎、外転神経麻痺、
chondrosarcoma と診断された。
【考察】chondrosarcoma は軟骨腫が悪性化した
三叉神経痛を 3 主徴とする病態である。近年は抗
ものを含むまれな悪性腫瘍であり、頭蓋骨腫瘍の
菌薬治療の進歩によって、急性中耳炎が重篤な合
0.15%、頭蓋底腫瘍の 6% を占めるとされる。CT
併症を来すことは稀であるが、診断と治療の遅れに
上は腫 瘍内に石灰化を認め、MRI では T2WI で
より時に生命予後に関わることがあり、迅速な CT
高 信 号、T1WI で 低 信 号 を 示 す。PET/CT で は
および MRI による画像診断が重要である。今回、
SUVmax は約 1.3 ~ 3.3 程度とする報告がある。
遷延する中耳炎からの炎症波及による錐体尖炎およ
【結論】 FDG PET/CT を 施 行 し た 頭 蓋 底
び膿瘍を合併し、Gradenigo 症候群を呈して来院
chondrosarcoma の一例を経験したので、若干の
した 1 例を経験したため、若干の文献的考察を加
文献的考察を加えて報告する。
えて報告する。
20
セッション 3
O - 11
名川
渡海
高木
関谷
胸部
座長:聖マリアンナ医科大学 放射線科 小林 泰之
O - 12
悪性黒色腫の
多発脳転移治療前に、
FDG-PET/CT により偶発的に発見された
肺静脈内腫瘍塞栓の一例
造血幹細胞移植後に
複数の感染症と
肺胞蛋白症を発症した一例
恵太 1)、楊川
あや 1)、山本
康伸 1)、土岐
紀貴 3)、福島
哲代 1)、太田 義明 1)、
亜也 1)、鈴木 瑞佳 1)、
典子 2)、大橋 一輝 2)、
一彰 3)
今泉 雅博 1)、野崎 美和子 1)、渡邊 馨 1)、
三條 江美 1)、伊藤 悠子 1)、古田 雅也 1)、
中田 学 1)、柴田 裕史 2)、雫石 一也 2)
1)獨協医科大学越谷病院 放射線科
2)さいたまセントラルクリニック 放射線科
1)都立駒込病院 放射線診療科
2)都立駒込病院 血液内科
3)都立駒込病院 臨床検査科
症例は 51 歳女性。骨髄異形成 症候 群の経 過観
症例は 70 歳代女性。2013 年 12 月に左第1指
察中、急性骨髄性白血病に転化し同種骨髄移植を
の悪性黒色腫で左第 1 指末節離断術および腋窩リ
施行した。移植後経過観察中に咳嗽が出現し胸部
ンパ節生検が施行された。切除断端は陰性で腋窩
CT にて右肺下葉に空洞影を認め、抗生剤治療を
リンパ節転移はなかったが、病理組織で脈管浸潤
施行するも改善せず気管支鏡検査施行、肺ノカル
が認められたため術後化学療法(DAV-Feron)を
ジア症と診断された。同時期に上肢、体幹、大腿
5 クール施行した。
の皮下に複数の結節と頭部 MRI にて多発膿瘍が出
2015 年 11 月に頭痛が出現し、頭部 MRI にて多
現、皮膚生検にてノカルジアを確認し播種性ノカル
発脳転移が認められた。全身検索を目的に施行し
ジア症と診断した。治療開始後病変は縮小したが
た FDG-PET/CT で、脳転移巣ならびに右肺静脈
新たに右上葉多発結節とびまん性すりガラス影が出
内に FDG 集積を認めた。その他の部位に異常集
現、結節は経過からノカルジア以外の感染、すり
積は認められなかった。造影 CT では肺静脈内の
ガラス影はサイトメガロ肺炎や肺胞蛋白症を疑った。
FDG 集積に一致して増強不良域が認められた。呼
診断確定と今後の免疫抑制治療継続を考慮し右上
吸器症状はなく D- ダイマーが軽度上昇していた。
葉切除術を施行、病理学的に肺アスペルギルス症と
総合的に肺静脈腫瘍塞栓と診断した。多発性脳転
肺胞蛋白症と診断された。骨髄移植後患者は免疫
移に対する全脳照射(28Gy)を施行後、抗 PD-1
抑制下で感染を繰り返す、また重症化する場合があ
抗体ニボルマブ(ヒト型 IgG モノクローナル抗体)
り診断治療には苦慮する例が多い。今回の症例で
の投与を予定していたが、本人や家族の希望で積極
も診断の遅れから播種型ノカルジア症となった。ま
的治療は行わず、緩和ケア病院へ転院した。
たその後発症した肺アスペルギルス症では二次性肺
悪性黒色腫は表皮基底層に存在するメラノサイト
胞蛋白症を併発し感染以外の病態も考慮しなけれ
由来の悪性腫瘍である。皮膚や皮下組織の他、肺
ばいけなかった。今回問題となった肺ノカルジア症
や遠隔リンパ節など全身に転移し進行例に対する有
と二次性肺胞蛋白症について若干の文献的考察を
効な治療法は確立されていない。悪性黒色腫の遠
交え報告する。
隔血管内腫瘍塞栓の報告はきわめて稀で、腫瘍塞
栓と血栓との鑑別は造影 CT では困難なことが多
く、鑑別診断に PET/CT が有用であったことが報
告されている。今回、若干の文献的考察を加えて
報告する。
21
O - 13
O - 14 心不全を契機に診断された
Calcified amorphous tumor
of the heart の一例
心臓悪性リンパ腫の一例
−炭水化物制限プロトコール FDG-PETCT
による診断及び治療評価−
橋詰 典弘 1)、松成 一矢 1)、渡邉 孝太 1)、
児山 久美子 1)、藤澤 英文 1)、御子神 哲也 2)、
国村 利明 2)
平石
中島
篠原
長尾
坂井
1)昭和大学横浜市北部病院 放射線科
2)昭和大学横浜市北部病院 病理科
卓也 1)、福島
怜子 1)、神林
明仁 4)、田中
充展 1)、阿部
修二 1)
賢慈 1)、松尾 有香 1)、
敬悟 2)、菊池 規子 2)、
淳司 4)、百瀬 満 1)、
光一郎 1)、長嶋 洋治 3)、
1)東京女子医科大学病院 画像診断核医学科
2)東京女子医科大学病院 循環器内科
3)東京女子医科大学病院 病理診断科
4)東京女子医科大学病院 血液内科
症例は 70 代女性。下腿浮腫を主訴に当院受診。
80 歳 代 女 性。 下 腿 浮 腫の増 悪と労作 時息切
心雑音が聴取され、心臓超音波検査で I 度僧房弁
れを主訴に当院循環器内科を受診、単純 X 線で
閉鎖不全と左室後尖部に 34×20mm の腫瘤を認め
両側胸水貯留を認め心不全の診断で緊急入院と
た。腫瘤に明らかな茎、可動性、内部血流はみら
なった。胸部造影 CT で右房・右室腹側に後期相
れなかった。血液生理学的検査で特記すべき異常
で内部やや不均一に造 影効果を伴う不整形腫瘤
値はなく、術前の全身検索では脳梗塞や全身の血
を認め心腔内突出が疑われた。胸水細胞診では
栓塞栓症は認めなかった。胸部単純 X 線写真で心
class Ⅴ(hyperchromatic atypical cells、CD20,
陰影に重なる粗大石灰化が見られた。CT で僧房弁
CD79a;bcl2, Ki67 70%)であり、びまん性大細
後尖に約 25mm の粗 大な石灰化を認め、腫瘤は
胞型 B 細胞リンパ腫の診断となった。
MRI FIESTA cine 像で低信号を示した。組 織診
心臓の生理的集積を抑制する目的で炭水化物制
断目的に手術が施行された。腫瘤の完全切除は困
限プロトコールによる FDG-PET/CT を施行し、右
難で、可能な限り摘出した後に僧房弁輪形成術が
房・右室の腫瘤に SUVmax=36.63 と高度な FDG
施行された。摘出検体に石灰化と炎症細胞浸潤を
集積を認めた。また両側肺門・縦隔・鎖骨上窩にリ
認め、calcified amorphous tumor(CAT)
と診断
ンパ節腫大と FDG 集積(SUVmax=3.86 ~ 4.90)
された。
を認めた。また右肺底部の胸膜に FDG 集積がみら
心臓 CAT は石灰化を伴う稀な非増殖性の腫瘤
れ、胸膜播種を疑う所見で Stage II の診断となった。
で、僧房弁輪部が好発部位である。粘液腫などの
COP および R-COP 療法を施行し、
同様のプロトコー
心臓腫瘍、血栓塞栓子、弁疣贅、弁輪石灰化など
ルで FDG-PET/CT で再評 価した。腫瘍は縮小し
が鑑別に挙げられ、これらの疾患と類似した呼吸
FDG 集積も有意に改善を認めた
(SUVmax=1.95)。
困難感、意識消失、血栓症などの臨床症状を呈す
心不全を契機に診断された心臓悪性リンパ腫の
ることが報告されている。CT は腫瘤の特徴的な局
一例に対し炭水化物制限プロトコールでの診断及び
在同定と石灰化の把握に有用で、本疾患の診断に
治療効果評価を経験したので報告する。
は画像診断医による寄与が大きいと考える。
僧房弁輪部に生じた CAT の一例を画像所見を中
心に文献的考察を加えて報告する。
22
セッション 4
セッション 3 胸部
O - 15
O - 16
経カテーテル的動脈塞栓術
(TAE)により治療しえた
特発性肋間動脈出血の 1 例
中間 楽平、荒川 和清、笹沢 俊吉、
八神 俊明、河野 勲、薄井 広樹、
加藤 弘毅、谷村 慶一、本多 正徳
腹部1
甲状軟骨転移をきたした
肝細胞癌の一例
鈴木 健之 1)、関 智史 1)、川田 哲也 1)、
持田 智 2)、 楮本 智子 3)
1)埼玉医科大学病院 放射線腫瘍科
2)埼玉医科大学病院 肝臓内科
3)深谷赤十字病院 放射線科治療科
済生会宇都宮病院 放射線科
【はじめに】特発性肋間動脈出血はまれであるが、
軟骨は、本来血管やリンパ管に乏しく転移しにく
本邦でも報告が散見される病態である。
。今回、誘
い組織である。しかし軟骨は加齢とともに骨化する
因なく若年男性に発生した特発性肋間動脈破裂に
ことが知られている。骨化した軟骨では、血管新生
対し、経カテーテル的動脈塞栓術(TAE)により治
が認められるようになり、このため血行性転移をき
療しえた 1 例を経験したので報告する。
たす場合がある。我々は、多発性骨転移をきたし
た肝細胞癌で、甲状軟骨転移を伴った一症例を経
【症例】40 代の男性。某日、自宅で食事中に突然
の左背部痛・心窩部痛を自覚し、当院に搬入となっ
験したので、文献的知見とともに報告する。
た。バイタルサインは安定しているものの、疼痛が
症例は 59 歳、男性である。B 型肝硬変、肝細胞
強く安静が保てない状態であった。症状の強さから
癌。多発性骨転移に対する対症的放射線治療の経
大動脈解離を疑い、造影 CT を撮像し、大動脈の
過観察中に、頸部正中左側に腫瘤を認めた。単純
背側に血腫を認め、動脈相で一部血管外漏出像を
CT では骨化した甲状軟骨左側を破壊する腫瘍を認
疑う領域も認められた。肋間動脈からの出血が疑
め、造影 CT にて造影効果が認められることから、
われ、緊急 TAE 方針となった。
肝細胞癌の甲状軟骨転移と判断した。
【血管造 影 所見】右第 9 肋間 動脈を造 影し、著
明な血管外漏出像を認めた。出血点は大動脈より
7mm の箇所であり、NBCA の使用は困難と判断、
出血部位の遠位から離脱式コイルによる慎重な塞
栓を行う方針とし、血管外漏出像の消失を確認し手
技を終了とした。コイルの脱落などの合併症は認め
られなかった。
【まとめ】特発性肋間動脈出血の報告は少なく、治
療に関しては統一された見解はない。文献的考察を
加え報告する。
23
座長:済生会宇都宮病院 放射線科 本多 正徳
O - 17
O - 18
主腫瘍の塞栓術により
未治療域の肝内転移巣も退縮を示した
巨大肝細胞癌の 1 例
肝膿瘍と鑑別を要した
多発性骨髄腫の肝浸潤の一例
山根 拓郎 1)、松永 敬二 1)、菅原 暖斗 1)、
原 敏将 1)、藤井 馨 1)、ウッドハムス玲子 1)、
井上 優介 1)、魚嶋 晴紀 2)、田中 賢明 2)
鈴木 藍子、狩野 洋輔、神谷 勝、
寺崎 真理子、村上 瑞穂、日下部 将史、
白水 一郎、風岡 純一、赤羽 正章
1)北里大学医学部 放射線科学(画像診断学)
2)北里大学医学部 消化器内科学
NTT 東日本関東病院 放射線部
患者は 60 歳台男性で、近医で肝機能障害と肝腫
多発性骨髄腫加療中の 70 代女性。5 か月前よ
瘍を指摘され、当院を紹介受診した。造影 CT で
り BD(Bortezomib+Dexamethasone)療法を行
肝右葉に 12cm 大の巨大な多血性腫瘍を認めた。
われていた。基準値内であった AST が上昇(78IU/
この腫瘍の周囲や肝左葉にも肝内転移巣と思われ
L)したため腹部超音波検査が施行され、肝内に
る結節が散在していた。B 型慢性肝炎を有しており、
径 23mm 以下の低エコー結節や halo を伴った結
画像所見および腫瘍マーカー(AFP,PIVKA-II)の
節を多数指摘された。単純 CT では肝内に低吸収
上昇により肝細胞癌と診断した。右葉の巨大な腫
結節が多発していた。MRI では T1WI で低信号を
瘍を優先して治療することとし、複数回の治療を計
示し、chemical shift imaging で結節内に脂肪含
画した。血管造影で主腫瘍は肝動脈右葉前区域枝
有はなく、fsT2WI では脾臓に近い高信号で中心部
および後区域枝から造影された。また、右下横隔
はより高い信号を示す傾向があった。DWI では辺
動脈や肝動脈左葉枝から造影される結節も散在し
縁高信号で中心部はやや低信号であった。EOB・
ていた。後区域枝からマイクロスフィアおよびゼラチ
プリモビスト造影の門脈相から肝細胞相では、径
ンスポンジを用いて塞栓術を施行した。約 1 週間
1cm 程度までの病変は辺縁低信号で内部が増強さ
後の造影 CT で主腫瘍の背側部と周囲の小結節の
れる target sign が、比較的大きな病変では更に中
一部は壊死を示していたが、主腫瘍の腹側部、右
心部が低信号を示す double target sign がみられ
下横隔動脈から供血されると思われる右葉背側辺
た。真菌や抗酸菌による肝膿瘍を疑ったが転移性
縁の結節、および左葉の結節には早期濃染が残存
肝腫瘍や骨髄腫浸潤との鑑別は困難であり肝生検
していた。初回治療から約 1 か月後の 2 回目の血
が行われ、多発性骨髄腫の肝浸潤と診断された。
管造影で腫瘍濃染は不明瞭であった。肝動脈右葉
RB
(Rituximab+Bendamustine)に治療変更され、
前区域枝の造影でわずかな腫瘍濃染が認められた
2 コース終了時点の CT で肝腫 瘤は縮小し、AST
ため、マイクロスフィアおよびゼラチンスポンジにて
も改善した。
塞栓術を施行した。2 回目の塞栓術から約 2 か月
多発性骨髄腫肝浸潤の画像所見に関する報告
後の造影 CT で主腫瘍に加え転移巣も縮小し、早
は少なく、EOB・プリモビスト造 影 MRI で target
期濃染も消失していた。腫瘍マーカーも正常化して
sign を呈した多発性骨髄腫肝浸潤の一例を経験し
いた。主腫瘍に対する抗癌剤を用いない塞栓術に
たので、文献的考察を加えて報告する。
より、他の血管から供血されていた肝内転移巣も同
時に退縮したと考えられた。
24
セッション 4 腹部 1
O - 19
O - 20
膵頭十二指腸切除後の
門脈狭窄に伴う消化管出血に対する
門脈ステント留置の有用性
破骨細胞型退形成性膵管癌の 1 例
福田
池田
能谷
津浦
哲央 1)、小山 新吾 1)、辻 厳吾 1)、
新 1)、神山 和俊 1)、青木 利夫 1)、
雅文 1)、吉儀 淳 1)、野尻 和典 2)、
幸夫 3)
塩山 靖和 1)、稲村 健介 1)、池田 宏明 1)、
三須 陽介 1)、比氣 貞治 1)、安島 真悠子 1)、
楫 靖 1)、白木 孝之 2)、青木 琢 2)、窪田 敬一 2)
1)獨協医科大学 放射線科
2)獨協医科大学 第二外科
1)横須賀共済病院 放射線科
2)横須賀共済病院 外科
3)横須賀共済病院 病理診断科
症例は 50 歳代の男性。血性嘔吐を主訴に近医を
膵頭十二指腸切除(PD)後の門脈狭窄に起因する
受診、上部消化管内視鏡にて十二指腸球後部に狭
消化管出血に対し、門脈ステント留置で消化管出
窄と出血を伴う腫瘤性病変を指摘され、精査加療
血が改善した症例を 2 例経験したので報告する。
目的に当院外科紹介受診となった。
症例 1
US では膵頭部に 4cm 大の低エコー腫瘤、CT で
60 歳台男性、膵癌にて 2012 年 1 月 PD(門脈合
は膵頭部から十二指腸にかけて不均一に造影され
併切除)施行。3 年 9 か月後、下血にて緊急入院。
る軟部濃度腫瘤を認めた。MRI で同腫瘤は T1 強
CT で脾静脈合流部直上から門脈左右分岐直下ま
調画像で低信号、T2 強調画像で淡い低信号、拡
での約 1.2cm の門脈狭窄、挙上腸管に向かう側副
散強調画像で軽度の拡散低下が見られ、主膵管の
血行路の発達が見られた。門脈吻合部狭窄による
病的な拡張は認めなかった。
挙上空腸周囲静脈瘤からの消化管出血と診断。全
生検では良性であったが、有症状で悪性の疑いが
身麻酔下で開腹し経回腸静脈から狭窄部を同定し
強く、膵頭十二指腸切除術を施行した。肉眼的に
脾静脈の血流を温存する形でステントを留置した。
は十二指腸下行脚を主座とする 4×4×3.5cm 大の 1
留置後速やかに側副血行路は消失。術後 3 ヶ月で
型腫瘍で、組織所見および免疫染色にて膵原発で
下血が再発したが、バルーンカテーテルによる PTA
十二指腸に浸潤した破骨細胞型退形成性膵管癌と
を行い、以後下血は認めていない。
診断された。
症例 2
破骨細胞型退形成性膵管癌は稀な疾患であり、若
60 歳台男性、遠位部胆管癌で 2010 年 10 月 PD
干の文献的考察を加えて報告する。
を施行。術後膵液瘻に伴い、胃十二指腸動脈断端
に仮性動脈瘤がみられ予防的に動脈塞栓術施行。
術後 1 年ほど経過し、下血を認めるようになったが
上部下部消化管検査では有意な所見はなく、外来
で輸血を施行し経過観察。2015 年 10 月大量下血
を発症し緊急入院。CT 上脾静脈合流部から門脈
左右分岐部までの約 4cm の門脈狭窄を認め、、挙
上空腸に側副血行路が発 達。膵液瘻による炎症
性瘢痕による門脈圧亢進による消化管出血と診断。
経皮経肝門脈造影から狭窄部を同定ステントを留
置した。以後、下血は認めていない。
結語
PD 後門脈狭窄に伴う消化管出血に対し、門脈ステン
ト留置は安全に施行可能で有用であると考えられた。
25
セッション 5
腹部2
座長:昭和大学藤が丘病院 放射線科 竹山 信之
O - 21
O - 22
セフトリアキソンが
原因と考えられた偽胆石症の 1 例
結節性硬化症に
両側腎 oncocytoma を合併した 1 例
宗友 洋平、馬場 亮、山添 真治、
小橋 由紋子、最上 拓児
津田
中森
曽我
松原
東京歯科大学市川総合病院 放射線科
正喜 1)、見越 綾子 1)、村上 和香奈 1)、
貴俊 1)、冨田 浩子 1)、須山 陽介 1)、
茂義 1)、新本 弘 1)、加地 辰美 1)、
亜季子 2)、津田 均 2)
1)防衛医科大学校病院 放射線医学講座
2)防衛医科大学校病院 検査部病理
症例は 18 歳女性。発熱、嘔吐、下痢を主訴に
症例は 34 歳女性。幼少時より結節性硬化症によ
近医受診。その後改善を認めず当院救急外来を
るてんかんで他院に通院していた。遺伝的素因は未
受診。既往歴にダウン症を有する。身体所見では
調査であった。精神発達遅滞を認めていた。
39.8℃の発熱と臍上下部の叩打痛、圧痛を認めた。
子宮内膜症で当院婦人科入院中の胸部腹部骨盤
血液検査にて WBC 23400 /μl、CRP 16.4 mg /dl
部 CT にて偶発的に両側性の腎腫瘤を認めた。右
と炎症反応高値を認めた。初回の腹部非造影 CT
腎中部に 25mm 大、左腎下極に 26mm 大、左腎
では、有意所見は認めなかった。炎症反応高値と
門部近傍に 10mm 大の腫瘤があり、いずれも辺縁
食事摂取不十分にて入院加療となり感染性心内膜
整、境界明瞭、不均一な低吸収で、左腎下極腫瘤
炎予防目的にセフトリアキソン、バンコマイシンが開
には一部石灰化も認められ、内部は不均一な造影
始された。第6病日に上腹部痛が出現したため腹部
効果を有していた。当初は結節性硬化症に合併す
造影 CT を撮像。胆嚢内に初回 CT では確認でき
る AML を考えていたが、MRI dynamic study で
なかった結石様高吸収域の出現が確認された。セ
early wash in → wash out を示し、被膜様構造と
フトリアキソンに起因する偽胆石症と診断し、セフト
思われる T2WI 低信号域を伴っていることと、内部
リアキソンの投与を中止した。中止後に腹部症状の
に明らかな脂肪成分を認めないことから、AML よ
改善が見られた。
り RCC が疑われた。なお頭部単純 MRI では両側
セフトリアキソンは第 3 世代セフェム系抗生物質
cortical tuber と思われる皮質の高信号結節を複数
であり、良好な組織移行性を示すことから実臨床に
認めていた。
おいて呼吸器感染症、消化管感染症、髄膜炎など
RCC の術前診断の下、左腎部分切除術を行った。
の様々な感染症に対して使用されている。セフトリ
病理にて免疫染色で CK7 が斑状に陽性を示してい
アキソン投与により、一過性に胆嚢内に胆石様物質
たことから oncocytoma と考えられる所見だった。
が形成され、腹痛などの症状をきたすことが知られ
結節性硬化症の腎腫瘍は AML、RCC の頻度が高
ている。今回、治療経過にてセフトリアキソン投与
いが、oncocytoma を合併することはまれである。
による偽胆石と考えられた症例を経験したので、文
さらに両側の oncocytoma は非常に珍しい。
献的考察を加えて報告する。
oncocytoma は画像的には多血性で偽被膜も存
在し MRIT2WI でも等~やや高信号を呈するため
RCC と類似している。中心瘢痕や血管造影での車
軸様配列などの特徴はあるが、RCC との鑑別一般
に困難な事が多い。
結節性硬化症の女性で、婦人科疾患の精査中に
両腎腫瘍を発見され、組織学的に oncocytoma と
診された貴重な症例を経験したので報告する。
26
O - 23
O - 24
骨シンチグラフィで
原発巣に集積した膀胱癌 2 例
膀胱原発悪性リンパ腫の 2 例:
拡散強調像での検討
平山 麻利子 1)、齊藤 公彦 1)、阿部 礼 1)、
久保田 昭彦 1)、安藤 和夫 1)、中山 崇 2)、
鈴木 康太郎 3)
永藤
橋本
中島
中村
1)済生会横浜市南部病院 放射線科
2)済生会横浜市南部病院 中央病理部・病理診断科
3)済生会横浜市南部病院 泌尿器科
唯 1)、市川 珠紀 1)、風間 俊基 1)、
順 1)、小野 隼 1)、坂下 法子 1)、
信幸 2)、小川 吉明 3)、宮岡 雅 4)、
直哉 4)、今井 裕 1)
1)東海大学医学部付属病院 専門診療学系画像診断学
2)東海大学医学部付属病院 泌尿器科
3)東海大学医学部付属病院 血液腫瘍内科
4)東海大学医学部付属病院 病理診断学
【症例 1 】血尿、左背部痛を主訴とした 60 歳代女
膀胱原発悪性リンパ腫 2 例につき、拡散係数画
性。造影 CT では膀胱前壁に 28mm 大の隆起性
像(ADC map)による全腫瘍抽出領域のヒストグラ
病変を認めた。MRI では同部に、筋と比較し、T1
ム解析(ADC ヒストグラム解析)を用い評価したの
強調画像で等信号、T2 強調画像で軽度高信号を
で報告する。
呈し、拡散制限を示す充実性腫瘤を認めた。骨シ
症例 1 は 70 代女性、主訴は血尿。膀胱鏡で膀
ンチグラフィで骨転移は認めなかったが、原発巣へ
胱左側に非乳頭状腫瘤を認めた。MRI にて最大径
の集積を認めた。病理診断は腺分化を伴う尿路上
7.5cm の境界明瞭な腫瘤は T2 強調像で淡い高信
皮癌であった。また、組織学的に、炎症細胞浸潤
号、Ga 造影 T1 強調像で比較的均一な造影効果、
や石灰化を認めた。
拡 散 強調 像(b=0,800)で強い高 信号を示した。
【症例 2 】血尿、下腹部痛を主訴とした 60 歳代男
ADC ヒストグラム解析にて平均 ADC 値は 0.7±0.1
性。CT では膀胱前壁に壁肥厚を認めたが、石灰
×10-3mm2/s、 尖 度は 8.47 であった。 症例 2 は
化は認めなかった。MRI では、T2 強調画像で膀
80 代女性、不正性器出血の精査で施行した MRI
胱前壁右側を中心に不整な壁肥厚を認めた。内部
にて子宮と接する最大径 8.7cm の分葉状の膀胱腫
に 25mm 大の拡散制限域を認めた。骨シンチグラ
瘤を認め、T 2 強調像で低信号、Ga 造影 T 1 強調
フィで骨転移は認めなかったが、原発巣に集積を認
像で均一な造影効果、拡散強調像(b=0,800)で
めた。病理診断は尿路上皮癌であった。また、組
強い高信号を示した。ADC ヒストグラム解析にて
織学的に、炎症細胞浸潤を認めたが、石灰化は認
平均 ADC 値は 0.8±0.3×10-3mm2/s、尖度は 8.6
めなかった。
であった。LDH は各々症例 1:307U/ml, 症例 2:283
骨シンチグラフィでの骨外集積は多数報告されて
U/ml.であった。両者とも生検にて diffuse B-cell
いるが、膀胱癌原発巣への集積の報告は極めてま
lymphoma の所見を認めた。PET-CT 検査では症
れである。我々が調べた範囲では過去 3 例の報告
例 1 の SUVmax は 30, 症例 2 の SUVmax は 29
があるが、いずれも CT 上、膀胱癌原発巣に石灰
であり、膀胱腫瘍以外に明らかな異常所見を認めず、
化を認めていた。CT 上、石灰化のない報告例はな
最終診断は膀胱原発悪性リンパ腫となった。
かった。今回、骨シンチグラフィで膀胱癌原発巣に
膀胱原発悪性リンパ腫の平均 ADC 値の報告は
集積した 2 例を経験した。そのうち 1 例は CT 上も
ないが、移行上皮癌の平均 ADC 値は 0.84-1.40×
組織学的にも石灰化を認めなかった。若干の文献
10-3mm2/s と報告されている。一般に悪性リンパ
的考察を加えて報告する。
腫は細胞密度が高く、変性を起こしにくい。これら
を反映して平均 ADC 値は低く、尖度は高いと考え
られる。今回検討した膀胱原発悪性リンパ腫でも同
様な結果が得られ、拡散強調像での評価は癌との
鑑別の一助となる可能性が示唆された。
27
セッション 6
セッション 5 腹部 2
O - 25
その他
座長:国保旭中央病院 O - 26
MRI 施行中に
卵巣腫瘍破裂を来した 2 例
TAFRO 症候群の 1 例
山口 晴臣、佐野 勝廣、岡田 吉隆、
森阪 裕之、市川 智章
飯島
森田
德丸
古井
埼玉医科大学国際医療センター 画像診断科
健 1)2)、中井 雄大 1)、神田 知紀 1)、
茂樹 3)、高橋 芳久 4)、大田 泰徳 5)、
阿耶 2)、豊田 圭子 1)、大場 洋 1)、
滋 1)
1)帝京大学医学部 放射線科 2)東京都健康長寿医療センター 放射線診断科
3)東京大学医学部附属病院 病理部
4)帝京大学医学部 病理学講座
5)東京大学医科学研究所附属病院 検査部
MRI 撮像中に卵巣破裂を来した 2 例を経験した。
症例は 50 歳台女性。腹痛、発熱で当院を受診し、
症例 1 は 46 歳女性。卵巣腫瘍 術前の MRI 撮像
高度血小板低下、軽度腎障害、浮腫、全身性リン
中に腹痛、冷汗、血圧低下を認めた。前日 CT と
パ節腫大(短径 < 15 mm)が認められた。リンパ
比較して卵巣腫瘍の緊満感が消失していることから
節生検を含む精査がなされたが確定診断に至らず
卵巣腫瘍破裂が疑われ、同日緊急手術となった。
ステロイドとエルトロンボパグで加療された。その後
症例 2 は 51 歳女性。症例 1 と同様に術前 MRI 撮
も症状は改善せず、20 ヶ月の経過で胸腹水の著明
像中に嘔気、血圧低下を認めた。他院 CT と比較
な増加が認められた。リンパ節腫大の増悪や臓器
し、卵巣腫瘍の緊満感が消失していることから、卵
腫大はなく、心不全、肝硬変、腎不全も見られな
巣腫瘍破裂が疑われ、準緊急的に手術が施行され
かった。病理組 織の再検討が行われ、形質細胞
た。
型 の muliticentric Castleman's disease(MCD)
症例 1 では腹圧帯を使用しており、物理的な圧迫
の 所 見であり、TAFRO 症 候 群と診 断 され た。
による外力が原因と考えられ、それ以降当院では卵
TAFRO 症 候 群は 2010 年に Takai らによって報
巣腫瘍破裂の疑いのある方には腹圧帯を使用され
告された MCD の亜型とされる疾患であり、血小板
ていない。症例 2 では腹圧帯は使用されていないが、
減 少 (Thrombocytopenia)、 全 身 浮 腫・胸 腹 水
MRI 撮像中に卵巣破裂を認めており、偶発的な可
(Anasarca)、発熱 (Fever)、骨髄線維症 (Reticulin
能性もあるものの、ラジオ波の影響なども考えられ
fibrosis)、腎障害 (Renal failure)、軽度臓器腫大
た。本症例のように MRI 撮像中に卵巣腫瘍破裂を
(Organomegaly)、軽 度リンパ節腫 大を特 徴とす
来した稀な 2 例を経験したため、文献的考察を加
る。報告は国内で 28 例程度と比較的稀な疾患で
えて報告する。
あるが、2016 年に診断基準が提唱された。画像的
には浮腫や胸腹水を認め、臓器腫大はあっても軽
度で、リンパ節は短径 15mm を超えないとされる。
MCD との相違点も含め、若干の文献的考察を加え
て報告する。
28
放射線科 磯貝 純
O - 27
O - 28
仙骨前奇形腫より
カルチノイドが発生した
Currarino 症候群の一例
胸椎に発生した脊索腫の 1 例
伊藤 浩一 1)、田中 優美子 1)、藤本 佳也 2)、
高澤 豊 3)、松枝 清 1)
木村 慎太郎 1)、平澤 裕美 2)、倉林 剛巳 1)、
平戸 純子 3)、対馬 義人 1)
1)がん研有明病院 画像診断部
2)がん研有明病院 大腸外科
3)がん研有明病院 病理部
1)群馬大学医学部附属病院 放射線診断核医学
2)群馬大学医学部附属病院 総合診療部
3)群馬大学医学部附属病院 病理部
Currarino 症候群(CS)は、排便障害、仙骨奇
脊索腫は胎生期の脊索の遺残から発生する稀な
形、仙椎前部腫瘤を三徴とする常染色体優性遺伝
悪性骨腫瘍で、仙尾骨や頭蓋骨に好発し、椎体で
性疾患である。今回、我々は、仙骨前部の奇形腫
の発生は稀である。椎体の中でも胸椎の発生はさら
よりカルチノイドが発生した Currarino 症候群の一
に少なく、脊索腫全体の 1.6 ~ 6%と報告されてい
例を経験した。
る。今回我々は胸椎から傍胸椎にかけて認めた脊
症例は 40 歳代女性。尾骨周囲の痛みで近医を
索腫の 1 例を経験したので、若干の文献的考察を
受診し、仙骨前部に腫瘤を認め、当院紹介となった。
加えて報告する。
潜在性二分脊椎に加え仙骨の短 縮と変形があり、
症例は 60 代男性。近医で甲状腺腫瘤の精査目
仙骨下端左腹側の後腹膜組織に径 5cm 大の嚢胞
的の撮像した頸部 CT にて、偶然胸椎から傍胸椎
性腫瘤を認めた。嚢胞右前壁から壁外に発育する
に腫瘍を指摘された。病変は第 1、第 2 胸椎の椎
単純 CT で高吸収を示す軟部組織と嚢胞壁の肥厚
体を中心に右傍椎体領域、脊柱管内にかけて認め
を認め、後者には強い増強効果を認めた。CT ガイ
られ、MRI の T 2 強調画像では均一な高信号であっ
ド下生検にて神経内分泌腫 瘍(Neuroendocrine
た。CT では骨に溶骨性変化があり、周囲には軟部
tumor, NET)と診断され、腫 瘤摘出術が 施行さ
組織濃度の腫瘤を形成していた。転移性骨腫瘍が
れた。 術 後 病 理 診 断は , NET, G1(carcinoid 疑われたが、甲状腺腫瘤は細胞診にて良性であり、
tumor)であったが、画像的にも病理組織学的にも
他にも原発となり得る病変が認められなかった。血
直腸壁との連続性はなく、発生母地は不明とされた。
液検査でも可溶性 IL-2R 含め各腫瘍マーカーは陰
しかし嚢胞に脂肪や石灰化は認めなかったものの、
性であった。確定診断のため、CT ガイド下針生検
仙骨奇形に加え、馬蹄腎、左下大静脈を認め、仙
が施行され、病理診断にて脊索腫と診断された。
骨前奇形腫を伴った CS を疑った。
外科的切除は困難と判断され、現在当院の重粒子
CS における仙骨前部腫瘤は髄膜瘤が最も多く、
線センターにて重粒子線治療が行われている。
次いで奇形腫が挙がる。性腺をはじめ他領域の成
熟奇形腫同様、本症に合併した奇形腫からも NET
をはじめ種々の悪性腫瘍が発生しうる。よって奇形
腫を合併した本症の診断は生命予後の観点から重
要であり、画像的特徴や悪性腫瘍の発生頻度を中
心に文献的考察を交えて報告する。
29
セッション 6 その他
O - 29
O - 30
卒前画像診断教育に
おける e-learning material としての
「SYNAPSE Case Match」の
活用について
DISCO-Navigator 法を
用いた 鎮静下・小児上腹部
ダイナミックスタディの検討
荒井 絵美理、奥田 茂男、鈴木 達也、
松本 俊亮、陣崎 雅弘
佐久間 亨 1)、川上 剛 1)、太田 智行 1)、
渡辺 憲 1)、藤井 百合子 2)、渡嘉敷 唯司 1)、
福田 国彦 1)
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
1)東京慈恵会医科大学 放射線医学講座
2)JR 東京総合病院 放射線科
【背景と目的】上腹部造影ダイナミック MRI 検査は、鎮
目 的:自己 学 習 用 e-laerning material としての
静下の小児など呼吸停止が困難な症例では施行困難
「SYNAPSE Case Match」の有用性を、学生への
で あ る。Differential Sub-sampling with Cartesian
アンケート調査の結果を基に分析する。
Ordering(DISCO) は、view sharing を 併 用 し た
方法:医師国家試 験で単純X線、CT、MRI、超
SPGR シーケンスであり、時間および空間分解能の高い
音波像が出題された疾患、出題基準のうち画像に
脂肪抑制 3 次元 T1 強調像が得られる。今回の検討の
特徴のある疾患を選択した。key 画像と所見を整理
目的は、DISCO 法を呼吸ゲートと組み合わせた撮像法
し、個人情報を削除後、データベースに登録した。
(DISCO-Navi)の、鎮静下小児の上腹部ダイナミック撮
学内図書館に 8 台の参照専用端末を設置し、閲覧
できるようにした。登録した 152 症例を試験対象と
像における有用性を検討することである。
し、終了後アンケートを行った。
【方法】使用装置は 3T 装置(Signa Pioneer, GEHC)、
6 例(1 歳 ~5 歳 6 ヶ月、平均 2 歳 5 ヶ月)の鎮 静下・
結果:121 名中、81 名から回答を得た。76.5% が
上腹部ダイナミックスタディを、DISCO-Navi を用いてお
よかったと回答した。多くの画像を見ることができ
こなった。撮像パラメータは TR/TE = 5-5.5/1.7 msec、
たとする回答が多かった。key 画像については、他
Flip angle = 12°、FOV = 30 cm、スライス厚 = 3-4
の画像も参照したい、病理画像も添付して欲しいと
mm、Matrix 180×220 で、1 相あたりの 撮 像 時 間 は
する回答が多かった。また携帯情報端末や施設外
5-8 秒とした。鎮静下にガドリニウム造影剤 0.1 mmol/
からのアクセス整備の要望も多かった。
kg+ 生食 20ml を用手的に投与し、その直後から 90 秒
考察:卒前教育カリキュラム改革における臨床実習
程度撮像を続けた。後期相は LAVA-Flex をもちいて撮
の拡充により、講義時間が短縮されており、補完の
像した。画像を回顧し、DISCO-Navi 法において、①
ための自己学習環境の整備が必要である。今回我々
肝動脈および門脈の評価が何分枝まで可能か、②肝動
は医師国家試験を意識した自己学習システムを使用
脈 / 門脈の分離が可能か(容易 =3, やや困難 =2, 不可
し、良好な結果を得た。しかし読影に必要な異常
能 =1)検討した。また、③画質を、後期相で撮像した
所見を拾い上げる能力は養えず、スクロール等の操
LAVA flex と比べた(DISCO-Navi が優 =3, 同等 =2、
作性改善や、画像以外の情報添付、アクセス改善
劣 =1)。
が必要と考えられる。
【結果】①肝動脈、門脈の視認可能分枝はそれぞれ、
結 論:自己 学 習 環 境 整 備として導 入した Case
(右 1.6、左 1.2)、
(右 2.8、左 2.3)、② 動 脈 / 門 脈
Match は、講義以外で多くの画像に触れる機会を
生み、有用であった。
分離スコア平均 = 2.5、③画質比較スコア = 1.8 であっ
た。DISCO-Navi 法は動脈門脈の分離に優れ、LAVAFLEX とほぼ同等の画質が得られた。
【結論】DISCO-Navi 法による鎮静下小児の自由呼吸ダ
イナミックスタディは有用と考えられた。
30
ポスター
ポスター討論
1
座長:とちぎメディカルセンターしもつが 放射線科 藤栄 寿雄
P - 01
P - 02
脳膿瘍との鑑別に苦慮した
基底細胞癌頭蓋内浸潤の 1 例
一側性の三叉神経腫瘤を契機に
診断された悪性リンパ腫の 1 例
今村 由美 1)、野口 智幸 1)、和田 憲明 1)、
志多 由孝 1)、岡藤 孝史 1)、村上 佳菜子 1)、
伊良波 朝敬 1)、横山 幸太 1)、桃坂 大地 1)、
小川 悠子 1)、田嶋 強 1)、堀田 昌利 2)、
玉木 毅 3)、工藤 万里 3)、宮原 牧子 4)、
飯塚 利彦 5)
上原
渡辺
山野
土屋
崇弘 1)、清水 裕次 1)、大野 仁司 1)、
渉 1)、長田 久人 1)、西村 敬一郎 1)、
貴史 1)、高橋 健夫 1)、本田 憲業 1)、
一洋 2)
1)埼玉医科大学 総合医療センター 放射線科
2)東京逓信病院 放射線科
国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院
1)放射線診断 2)放射線核医学科
3)皮膚科 4)脳神経外科
5)病理診断科
症例は 60 代男性。10 年程前から後頭部にできも
症例は 69 歳男性。入院 1 年半前から左下奥の
のができていたが様子を見ていた。1 ヵ月前から体
歯茎に繰り返す痛みを自覚し、歯科にて抜歯・義
動困難となり、男性宅を訪れた知人が後頭部の皮
歯としたが痛みは改善しなかった。入院 1 年前から
膚潰瘍にウジ虫がわいていることを指摘。当院に救
左顔面の知覚異常を自覚したため、近医を受診し
急搬送された。来院時、構音障害、姿勢保持困難
たところ、MRI にて左三叉神経に造影剤増強効果
を認めた。頭部単純 CT では右小脳半球に 57mm
を認める紡錘状腫瘤をを認め、当院脳神経外科受
大の厚い壁を有する低吸収腫瘤、周囲に浮腫性変
診となった。左 V1-3 の全範囲で強い顔面痛を訴
化を認めた。後頭部には骨破壊を伴う軟部組織の
えたが、身体・神経所見では顔面の知覚鈍麻、顔
増生を認めた。造影 CT では腫瘤壁ならびに後頭
面神経麻痺、難聴、およびめまいは認めなかった。
部軟部組織の増強を認めた。血液検査で CRP の
FDG-PET/CT にて左三叉神経、左 Th6/7 椎間孔
上昇(11.7 mg/dL)を認めた。後頭部皮膚潰瘍に
外方および左 L4/5 神経孔外方に異常高集積を認
合併した脳膿瘍が第一に考えられ、緊急穿頭ドレ
めた。胸腰椎 MRI では腫瘤性病変は指摘できな
ナージ術が施行された。漿液性液体が採取され、
かった。血液生化学検査では IL-2R 3900 U/ml、
培養は陰性。脳膿瘍は否定的であった。その後の
LDH 571 U/l と上昇を認め、悪性リンパ腫が疑わ
頭部 MRI では、嚢胞内は T1WI で低信号、T2WI
れたが、骨髄検査では明らかな異常はなく、確証が
で高信号、DWI では低信号を呈し、ADC map で
ないため左三叉神経腫瘍に対し開頭生検の方針と
は拡 散 制限を認めなかった。造 影 FLAIR では、
なった。組織学的に形状不整な腫大核を有する N/
腫瘤壁の増強ならびに周囲硬膜の肥厚・増強を認
C 比の非常に高い異形細胞腫がびまん性に密に増
めた。皮膚生検の結果、基底細胞癌と診断された。
殖しており、LCA 陽性、CD3 陰性、CD20 陽性で
画像所見と併せて、頭蓋内浸潤と考えられ、右小
あり、びまん性大細胞 B 細胞リンパ腫と診断された。
脳半球の嚢胞性腫瘤は頭蓋内浸潤を生じた基底細
本邦で中枢神経原発悪性リンパ腫は 2.4% に過
胞癌が嚢胞変性を来たしたものと考えられた。全身
ぎず、さらに CNS-Lymphoma group の集計では
精査で脊椎転移を認め、来院 1 ヵ月半後に死亡し
35% が多発症例で、脳神経や頭蓋内単発はまれで
た。基底細胞癌は、皮膚悪性腫瘍の中で最も頻度
ある。特に視神経以外の脳神経単麻痺症状で発症
が高く、低悪性度であるが、ごく稀に頭蓋内浸潤
した悪性リンパ腫の報告はわずかである。多少の文
や遠隔転移を来たすことが知られている。文献的
献的考察を加え報告する。
考察を加えて報告する。
32
P - 03
P - 04
鼻副鼻腔原発の
Neuroendocrine carcinoma の
一例
シェーグレン症候群に
合併し、診断に苦慮した
結節性肺アミロイドーシスの 1 例
小野 貴史 1)、藤川 あつ子 1)、中村 尚生 1)、
中島 康雄 1)、土居 正知 2)、高木 正之 2)、
栗原 宜子 3)
田代
橋本
山口
野呂
1)聖マリアンナ医科大学 放射線科
2)聖マリアンナ医科大学 病理診断科
3)町田市民病院 放射線科
祐基 1)、竹山 信之 1)、堀 祐郎 1)、
東児 1)、鹿間 裕介 2)、松倉 聡 2)、
史博 2)、若林 綾 2)、林 誠 2)、
瀬朋子 3)、大池 信之 3)
1)昭和大学藤が丘病院 放射線科
2)昭和大学藤が丘病院 呼吸器内科
3)昭和大学藤が丘病院 臨床病理診断科
【症例】
症例は 30 歳台男性。既往に尿管結石があっ
症例は 70 代女性、既往歴にシェーグレン症候群
た。当院受診 1 か月前より鼻閉と鼻をかむ際の少量
がある。X 年に咳嗽を主訴に前医を受診した。胸
鼻出血が出現した。近医耳鼻科より感冒薬を処方
部単純 X 線上で異常陰影を指摘され、当院を紹介
されたが改善がなく、受診 1 週間前より嗅覚鈍麻、
受診した。当院で施行された胸部 CT 上では中葉
流涙、眼球奥の疼痛も出現したため当院耳鼻科を
舌区を中心に、気管支血管束分布を示す粒状影や
受診した。身体所見上右眼の軽度突出を認めたが、
結節影、気管支拡張性変化を認めた。右肺下葉に
脳神経所見を含め、神経学的異常所見は認めなかっ
認めた腫瘤影に対し TBLB、BAL、CT ガイド下生
た。鼻腔ファイバースコープにて鼻腔内に突出する
検が施行されたが有意な所見は得られず、過去に
白色調の腫瘤を認め、精査目的に頭部 CT、MRI
当院で施行された喀 痰培養から Mycobacterium
が施行された。
avium が検出されていたため、非定型抗酸菌症と
【画像所見】CT では右鼻腔天蓋領域優位に鼻腔
して加療された。経過中、右肺下葉の結節影に増
内を充満する軟部吸収値腫瘤を認め、病変の一部
大傾向を認めた為、悪性疾患否定のため、X+3 年
は脳頭蓋内へ進展していた。周囲骨では骨硬化と
に当院入院後、TBLB と CT ガイド下生検が施行さ
比し骨破壊像が優位に認められた。内部は概ね均
れた。CT ガイド下生検の結果は、Congo-Red 染
一な吸収値および造影効果を示していたが、病変
色や Dylon 染色陽性を呈する無構造硝子様物質が
辺縁にて嚢胞様の低吸収域を散見した。MRI では、
含まれており、肺アミロイドーシスの診断となった。
T1WI にて均一な筋組織と比し等信号、T2WI で淡
悪性所見は認めなかった。その後は治療の追加を
い高信号を呈していた。
せず、経過観察としている。
【病理 所見】N/C 比が高く、クロマチン凝集が顕
結節性肺アミロイドーシスはシェーグレン症候群に
著な小円形 腫 瘍 細 胞からなる腫 瘍であり、免 疫
合併することが報告されており、悪性疾患や感染症
組 織 学 的 には、CK(+)、CD56(+)、NSE(+)、
との鑑別が問題となる。典型的には病変に石灰化
Synaptophysin(+)であった。形態学的特徴と免
や嚢胞性変化を伴うことが知られており、本症例で
疫染色の結果より Neuroendocrine carcinoma と
はこれらの特徴を認めなかった為、診断に苦慮する
診断された。
こととなった。比較的まれな疾患であり、若干の文
献的考察を加えて報告する。
【 考 察 】Neuroendocrine carcinoma は 全 身 各
所より発生する腫瘍として知られているが、鼻腔原
発の症例は報告が少なく、画像検討も十分になさ
れていない。本例においては病理診断に至るまで、
Olfactory neuroblastoma を第一の鑑 別としてい
た。今回の症例について、画像的観点および病理
学的観点から文献的考察を交えて報告する。
33
P - 05
P - 06
MRI で偶発的に発見された
柿胃石の一例
Meckel 憩室内翻による
腸重積の 2 例
神谷 勝、鈴木 藍子、狩野 洋輔、
日下部 将史、寺崎 真理子、村上 瑞穂、
白水 一郎、風岡 純一、赤羽 正章
國友 直樹、佐々木 崇洋、藤井 裕之、
菊地 智博、任 燕、篠崎 健史、
藤田 晃史、杉本 英治
NTT 東日本関東病院 放射線部
自治医科大学附属病院 放射線科
症例は膵分枝型 IPMN にて経過観察中の 58 歳
症例 1 は 18 歳男性。2 年前から腹痛を繰り返して
の男性。MRI にて胃内に偶発的に腫瘤が発見され
いた。2 日前から腹痛と血便が出現し、他院の造
た。径 81mm × 31mm の楕円形腫瘤で胃壁から
影 CT で、厚い軟部組織に覆われた脂肪結節を先
は遊離しているように見え、脂肪抑制 T1 強調画像
進部とする腸重積が認められ、自治医科大学附属
では骨格筋と比較し低信号、T 2 強調画像で脾臓と
病院に紹介となった。入院後の小腸鏡では腸重積
ほぼ同程度の高信号の中に数 mm 大の点状の水に
は無処置で解除され、Meckel 憩室の内翻が疑わ
近い高信号が散在、拡散強調画像では正常肝とほ
れた。小腸 部分 切除術が施行され、病理学的に
ぼ等信号で均一であった。 臨床的には無症状で、
Meckel 憩室内翻と診断された。症例 2 は 40 歳男
3 ヶ月後の外来時に「半年前に家の柿をたくさん(50
性。10 日前から腹痛があり、他院の CT で厚い軟
個~ 100 個)食べた。
」と聴取され、柿胃石の診
部組織に覆われた脂肪結節を先進部とする腸重積
断となった。まずコーラ療法を施行し、消失しなけ
が認められたため当院紹介となった。整復と先進病
れば内視鏡的に破砕する方針となった。外来でコー
変の精査目的に施行された小腸鏡では腸重積は無
ラを 1.5L / 日飲んで頂いたところ、2 週間後の内視
処置で既に解除されていて、Meckel 憩室の内翻が
鏡とCTにて胃石は消失していた。経口摂取物が胃
疑われた。小腸部分切除術が施行され、病理学的
の中で物理的、科学的に変化し結石となる胃石症と
に Meckel 憩室内翻と診断された。Meckel 憩室内
して毛髪胃石、柿胃石、樹脂胃石、植物胃石、薬
翻に伴う腸重積が学童期を過ぎて生じるのは比較
物胃石などが知られている。柿胃石は胃石症の中で
的稀で、術前診断は難しい。今回、術前の CT と
も症状を有する頻度が高いが、コーラ飲用という簡
小腸鏡で Meckel 憩室内翻を疑われた2例を経験
便的な治療により縮小が見込める。柿胃石の MRI
したので、若干の文献的考察を加えて報告する。
所見の報告は見当たらなかったため報告する。
34
MEMO
ポスター討論 1
P - 07
絞扼性イレウスに対し
Dual Energy CT Imaging が
有用と思われた 2 例
阿部
山田
豊福
滝川
扇谷
亮介、宗近 次朗、山名 啓太、
愛弓、黑田 春菜子、村上 大軌、
康介、高濱 典嗣、溝渕 有哉、
明子、波多野 久美、石塚 久美子、
芳光、廣瀬 正典、後閑 武彦
昭和大学病院 放射線医学講座 放射線科学部門
Dual Energy CT による Dual Energy Imaging
は、物質の減弱が照射する X 線の平均エネルギー
に依存して変化することを利用した画像化の手法で
ある。
解析アプリケーションの一つである Liver VNC(肝
の濃染評価)は組織中の脂肪と軟部組織と造影剤
の 3 つの異なる組成の CT 値を識別し、ヨード造
影剤量を測定することができ、ヨード造影剤分布画
像(ヨードマップ)が作成できる。
今回我々は絞扼性イレウスに対しヨードマップ用い、
Dual Energy CT Imaging が有用と思われた2例
を経験したため、若干の文献的考察を加えて報告す
る。
症例 1、87 歳男性。近医より単純 CT 上、小腸イ
レウスが疑われ当院紹介となる。当院にて造影 CT
およびヨードマップにて解析したところ、絞扼性小
腸イレウスが疑われたため、同日緊急手術となった。
手術所見では上行結腸外側に小腸がはまりこむ傍
盲腸ヘルニアであり、虚血所見があったため、小腸
部分切除を行った。
症例 2、67 歳女性。胃癌術後腹膜播種に対し当
院にて化学療法され、横行結腸播種性狭窄にて横
行結腸切除術後の患者。 腹痛があり造影 CT およ
びヨードマップにて解析を行ったところ、絞扼性小
腸イレウスが疑われたため、同日緊急手術となった。
手術所見では虚血所見があったため、小腸部分切
除を行った。
35
ポスター討論
2
座長:自治医科大学附属さいたま医療センター 放射線科 大河内 知久
P - 08
P - 09
前立腺癌検索目的で行った
MRI で偶然発見された
直腸サルコイドーシスの 1 例
冠動脈肺動脈瘻に
複数の冠動脈瘤を合併した一例
宇田川 剛史、山城 雄貴、岡田 慎悟、
井上 達朗、白石 昭彦、桑鶴 良平
和田 達矢 1)、井上 秀昭 1)、小川 史洋 2)
1)彩の国東大宮メディカルセンター 放射線科
2)彩の国東大宮メディカルセンター 病理診断科
順天堂大学医学部 放射線医学講座
症例は 78 歳男性。黄疸を主訴に近医受診したとこ
症 例は 75 歳 男性。PSA 高 値のため 行った前 立
ろ、膵頭部癌の診断となり、精査加療目的に当院
腺 MRI で下部直腸に腫瘤性病変を認めた。腫瘤
紹介受診。術前に行われた造影 CT で、前縦隔に
は 15 ㎜大で 辺 縁不 整、境 界やや不明 瞭であり、
辺縁石灰化を伴う腫瘤性病変を認めた。冠動脈瘤
T1WI、T2WI のいずれでも正常直腸壁より軽度高
が疑われたが、血管との関係性評価が不十分であっ
信号を呈し、拡散制限を伴っていた。腫瘤は壁外
たため、MDCT による心電図同期造影を行ったと
に進展しており、近接する右肛門挙筋に腫大が見ら
ころ、右冠動脈と左冠動脈前下行枝が拡張・合流し、
れた。造影 CT では漸増性の増強効果を認め、石
直径 40 mm大、20 mm大の冠動脈瘤の形成を認
灰化等は見られなかった。内視鏡検査では、なだら
めた。二つの動脈瘤は異常血管で交通しており、冠
かな隆起を認めるのみで粘膜上皮に明らかな異常は
動脈瘤から肺動脈に瘻孔形成を認めたため、冠動
見られず、粘膜下腫瘍を疑う所見であった。FDG-
脈肺動脈瘻、冠動脈瘤と診断した。心電図や心臓
PET では SUVmax が early :14.75、delay :21.08
超音波検査で盗血症状を疑う所見はなく、瘤のサイ
と強い集 積 が見られた。以上の所見から悪性の
ズは大きかったが、膵頭部癌の治療を優先し、降
GIST、カルチノイド、悪性リンパ腫などが鑑別とし
圧管理の内服で経過観察となっている。
て考えられた。生検の結果、類上皮非乾酪性肉芽
冠動脈瘻とは先天性の冠動脈奇形の一種で、冠動
腫を認め、サルコイドーシスを疑う所見であった。
脈が心腔もしくは大血管腔との間に交通を持ってい
病理 所見からは Crohn 病や結 核も鑑 別に挙げら
る病態である。以前は稀な病態とされていたが、検
れたが、前者は内視鏡で所見がないこと、後者は
査技術の進歩により発見が増加しており、現在は冠
T-SPOT 陰性であり、また肺などの他臓器に結核
動脈奇形で最も多い疾患とされている。しかし、冠
を疑う所見がないことなどから否定的と考えられた。
動脈肺動脈瘻孔への嚢状冠動脈瘤の合併は一般に
サルコイドーシスにおいても CT 上は直腸以外に病
少ないとされており、今回我々は複数の嚢状動脈瘤
変は見られず、眼や心臓について今後評価される予
を合併した冠動脈肺動脈瘻を経験したため、文献
定である。現在まで無治療で経過観察されており、
的考察を加え報告する。
半年後の CT では縮小を認めている。
サルコイドーシスは全身諸臓器に病変を形成する
ことが知られているが、直腸に発生した症例は非常
に稀であり、文献的考察を加えて報告する。
36
P - 10
P - 11
FDG-PET が診断の契機に
なった卵巣子宮内膜症由来の
子宮体部類内膜癌の一例
中村
大彌
塩沢
角谷
真菜 1)、野中 智文 1)、藤田 顕 1)、
歩 1)、藤永 康成 1)、宮本 強 2)、
丹里 2)、浅香 志穂 3)、岩谷 舞 3)、
眞澄 1)
腟に髄外再発した
急性骨髄性白血病に対する
放射線治療の 1 例
小澤 由季子 1)、横内 順一 2)、太田 健 3)、
久保 恒明 3)、赤木 智昭 3)、 冨士井 孝彦 3)、
加藤 正子 1)、加賀 美芳和 1)
1)昭和大学 放射線治療科
2)青森県立中央病院 腫瘍放射線科
3)青森県立中央病院 血液内科
1)信州大学医学部 画像医学
2)信州大学医学部 産科婦人科学
3)信州大学医学部附属病院 臨床検査部
症例は 60 歳台女性で 1 経妊 1 経 産。約 X-20 年前か
症例は 41 歳女性。急性骨髄性白血病の診断で化
ら子宮筋腫、子宮内膜症性当院産婦人科に通院してい
学療法を施行、その後非血縁者間骨髄移植を施行
た。定期的に骨盤部 MRI および細胞診が施行されてい
した。その後分子再発をきたし、免疫抑制剤を中
たが悪性所見は指摘されていなかった。X-1 年 6 月頃よ
止し、移植片対白血病効果誘導を行っていた。発
り CA19-9 値が上昇傾向を示し、同年 12 月には CA125
熱が継続していたため CT を施行したところ、腟部
および CEA も上昇した。子宮内膜及び子宮頸部細胞診
~子宮頸部に腫瘤性病変を認めた。MRI において
で悪性所見はなく、不正性器出血などの症状も認めな
も同部に 8.8cm 大の腫瘤性病変を認めた。膀胱・
かった。胸腹骨盤部 CT では腫瘍マーカーの上昇の原因
直腸への浸潤は認めなかった。内診では膣から子
になりうる所見は指摘できなかった。X 年 3 月、全身精
宮頸部に易出血性の腫瘤を認め、生検を行い急性
査目的に施行した FDG-PET にて子宮後壁の筋層内に
骨髄性白血病の髄外再発と診断した。局所制御目
SUV max 16.7 → 20.4 (delay) の強い集積を認め、悪
的で放 射線治療を 24Gy/12 回施行した。急性期
性腫瘍の存在が疑われた。その他全身に悪性腫瘍を疑
の有害事象としては G1 程度の肛門痛・軟便を認め
う集積は認めなかった。遡及的には FDG-PET での集
たものの、中断なく予定通り照射は完遂した。治療
積部位は X 年 1 月の MRI にて、漿膜下から junctional
開始後 18 日の内診所見では腫瘤が消失しており、
zone 付近に至る緩徐な増大傾向を示す腫瘤性病変とし
スメアにおいても白血病細胞は確認されていない。
て認識可能であり、同部は脂肪抑制併用 T2 強調像で周
囲筋層とほぼ等~わずかに低信号、拡散強調像で淡い
高信号、ADC 低値を呈した。dynamic MRI では早期
から濃染し後期相まで濃染は持続した。腫瘤の背側部
分には右付属器内膜症性嚢胞が密に接し、また尾側部
分には脂肪抑制併用 T2 強調像で筋層より低信号で内部
に点状の高信号域を有する子宮腺筋症類似の所見を呈す
る領域を認めた。診断・治療目的に手術が行われた。摘
出標本では、子宮後壁漿膜側から筋層内に子宮内膜類
似の高円柱状上皮からなる異型腺管が浸潤増殖してい
た。右卵巣の内膜症性嚢胞と子宮漿膜側は癒着し、漿
膜側筋層内には島状の子宮内膜組織を認めた。一部は
front 形成を伴う上皮内癌を認め、卵巣子宮内膜症から
発生した類内膜癌と診断された。本症例は MRI では認
識困難であった子宮体癌が、FDG-PET を契機に診断・
治療に至った一例であり、文献的考察を加え報告する。
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P - 13
癌診療における
DWIBS の初期経験
救急における
過剰画像診断低減の試み
-頸椎のレイサム画像-
信澤 宏
三浦 剛史、水沼 仁孝
川崎幸病院 放射線診断科
那須赤十字病院 放射線科
【目的】当院では外傷パンスキャンおよび外傷頭頸
背景 当院には核医学装置がない。
目的 癌診療における diffusion weighted whole
部 CT の施行により、ルーチンの頸椎・頭部単純
body imaging with background body signal
撮影を省くよう指導しており、2015 年度現在、こ
suppression(DWIBS)の初期経験について実臨
れらが撮影されるのは 10.6%に留まっている。その
床ベースで後方視的に検討する。
83%は頸椎であり、そのなかで頸椎骨折は 5.6%と
対 象 2015 年2月から 2016 年1月に DWIBS が
少ない。2016 年 7 月より、整形外科医が見慣れて
施行され、6カ月以上の経過観察が行われ、かつ、
いない MPR 像の他に通常の頸椎単純撮影
(4 方向)
DWIBS の1ヵ月以内に体幹部 CT が行われた癌患
に近い再構成画像(レイサム画像)を提供すること
者の連続 62 症例。
でさらに頸椎単純撮影件数を減少させようと試みて
方法 DWIBS の画像と診断報告書、その1ヵ月以
いる。今回、その結果を報告する。
内に施行された CT 画像と診断報告書を検 討し、
【対象・方法】2016 年 7 月 4 日から 9 月 26 日まで
6ヶ月以上の経 過観 察結果を golden standard
に外傷パンスキャンおよび外傷頭頸部 CT が施行さ
として、実臨床での(誤診も含めての)診断成績
れた 160 例を対象に、CT 施行後に撮影された一
について検討した。PET-CT や骨シンチが施行さ
般撮影の種類、撮影部位の損傷の有無を調査した。
【結果】CT 施行後に撮影された一般撮影は頸椎 9
れた症例(各々3症例)ではそれらの結果も参照
した。診断結果はすべて original の診断 報告書
件(5.6%)のみで、他の撮影は行われていなかった。
による。検討項目は、肺転移、肝転移、骨転移、
CT にて頸椎骨折を診断したのは 11 例で、いずれ
リンパ 節 転 移、 腹 膜 播 種、 胸 膜 播 種、second
も追加の一般撮影は行われなかった。
【結論】レイサム画像の作成により一般撮影頻度は
malignancy 検索、DWIBS の撮像範囲外転移に
2015 年度の約半分となった。
ついてである。CT は非造影検査のみが 34 例、非
造影検査と造影検査の双方が行われたのが 28 例
であった。
結果 DWIBS と CT が共に正診であったのは 46
例、DWIBS が優れたのが 11 症例(骨転移5、原
発巣診断2、吻合部再発・腹膜播種・胸膜播種・
肺転移各1)
、DWIBS が劣ったのが3症例(肺転移
2、腹膜播種1)
、DWIBS と CT がともに誤診した
のが2症例(2例とも腹膜播種)であった。撮像範
囲外転移は認めなかった。 結論 DWIBS は CT での見落としを防ぐ可能性が
ある。
38
MEMO
ポスター討論 2
P - 14
胎児 4D 超音波から
3D 模型を作る方法と
技術的な問題点
橋爪 崇 1)、穴村 聡 1)、劉 清隆 1)、
寺田 光二郎 2)、浦野 晃義 2)、浦野 晴美 2)
1)菊名記念病院 放射線科
2)信育良クリニック 産婦人科
【目的】超音波装置から得られた DICOM 画像を利
用して 3D プリント模型を作製する手順を確立する。
近年超音波装置の進歩にともない 3 次元データだ
けではなく、時間軸を加えた 4 時空データの取得も
可能になっている。
国内では胎児健診では一般的に広く利用されてお
り、表在奇形などの評価に応用されている。
そこで、今回は胎児超音波 4D データを活用して
3D 模型を作成する手順をまず確立し今後の臨床応
用につなげたい。
また、データが取得可能な装置一覧を各メーカー
の協力を得てまとめる。
【方法】胎児超音波を撮影し 4D データから適切な
2D データを DICOM 形式で取り出す。ワークステー
ション で Volume Rendering 画 像を 作 成し STL
フォーマットに変換する。得られたデータに平滑化
などの処理を行い FDM 形式の 3D プリンタでの造
形に最適なデータを作成し造形する。
【考察】産科領域で用いられている 4D 超音波装置
は、各社 DICOM 画像での出力に対応していた。
2D 画 像として取り出しが 可能な形式は 1 ファ
イルに 100 から 250 枚 程 度 がまとめられている
Multiflame DICOM 形式でそれを扱えるワークス
テーションが必要であった。
最新のワークステーションでは 3D プリント形式
の STL フォーマット変換に対応しているが一部では
有償オプションであり、オープンソース ソフトウェア
との組み合わせで STL 形式を作成可能であった。
【結果】胎児超音波装置で得られた DICOM データ
から 3D プリント可能なデータを作成することは可能
であった。表在奇形などの評価に有用と考えられる。
39
MEMO
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指導者講習会
日本専門医機構と放射線科専門研修制度
楫 靖
獨協医科大学 放射線医学講座
(放射線科専門医制度委員会)
MEMO
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指導者講習会
座長:自治医科大学附属さいたま医療センター 放射線科 田中 修
必須講習会 医療の質:診断(品質管理・IT・遠隔画像診断)
座長:自治医科大学附属さいたま医療センター 放射線科 田中 修
放射線部門の医療情報システム : 構築の実際
必須講習会
井上 優介
北里大学医学部 画像診断学
現代医療では電子的な医療情報システムを活用して効率や安全性の向上を図っており、放射線診療も
その例に漏れない。中央部門であること、大量の画像データを扱うことから情報システムに依存する程
度は大きく、情報システムのよしあしは放射線診療の質に決定的に影響する。
情報ネットワークシステムの導入は単純なパッケージ商品の購入ではなく、病院毎に検討すべきことが
多い。診療の状況や将来展望を踏まえ、質・効率・安全性・費用のバランスを考慮して、優先順位をつ
けながら最適化を行うことになる。放射線科医が放射線診療に関連した情報システムの全体像や日常診
療での情報の流れを理解し、システム構築を主導することが求められる。本講演では、医療情報システ
ムの導入・更新に関わってきた経験から、基礎知識を確認しつつ、システム構築に関わる実践的な情報
を提供したい。
MEMO
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ランチョンセミナー
座長:自治医科大学 放射線医学講座 杉本 英治
心臓血管領域における超高精細 CT の初期使用経験
吉岡 邦浩
岩手医科大学 循環器放射線科
共催:東芝メディカルシステムズ株式会社
スも 1,024 ×1,024 となった。これにより、超高精細 CT の画素は 0.25 × 0.25 × 0.25 mm と、従来
CT の 0.5 × 0.5 × 0.5 mm よりも大幅に向上した。われわれの施設ではこの超高精細 CT を 2015 年
12 月から 2016 年の 8 月までの 9 ヶ月間、心臓血管領域を中心に 1,452 件の症例に対して使用する機
会を得た。本講演では、狭心症や大動脈解離、Adamkiewicz 動脈などの実際の症例の画像を供覧し
ながら超高精細 CT の可能性について考えてみたい。
MEMO
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ランチョンセミナー
超高精細 CT は、最小スライス厚 0.25mm を可能とした装置である。それに加えて面内のマトリック
定例講座
座長:新渡戸文化短期大学 学長 関谷 透
画像に見えないものを診る
1. 脳・脊髄
森 墾
東京大学大学院医学系研究科 生体物理医学専攻 放射線医学講座
共催:富士製薬工業株式会社
「画像に見えないものを診る」
とはどういうことでしょうか。見えないものが見える、あるいは見えてしまっ
たと言い張るのであれば、それは医学や科学ではなく、もはや単なるオカルトです。診断で通常行われ
る仮説演繹法は、可能性の高い鑑別診断を重点的に考える方法であり、予断的介入と問題設定を繰り
返す確率的推論によって除外診断や確定診断に至ります。つまり、状況に応じて疾患頻度や重要度を
加味した鑑別リストを作成するのです。ただし、この取り組み方のみでは病歴や現症で疑った疾患以外
定例講座
は漏れてしまう危険があります(あらかじめ想定していない疾患[=事前確率ゼロの病気]は容易に見逃
してしまうものです)。従って、
「画像に写っているものは総て見る」という泥臭い地道な方法も必要であり、
ここに放射線科医の存在意義があります。その場合は疾患分類や背景病理を念頭に注視する系統網羅
法が役に立ちます。画像診断には複眼的思考が不可欠です。
MEMO
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定例講座
画像に見えないものを診る
2. 胸 部
杉浦 弘明
慶應義塾大学医学部 放射線診断科
共催:第一三共株式会社
画像を見てどこまで患者背景に迫れるか? 画像所見と与えられた僅かな臨床情報を手懸かりに通常
の鑑別疾患のみならず背景に潜む病態まで推定することは画像診断の醍醐味の一つである。隠れてい
る全身疾患や患者の生活歴、既往歴、嗜好などを想像しながら画像を読むのも楽しみの一つである。
臨床的な手懸かりが乏しく臨床的に診断に苦慮している時に、放射線科が挙げた鑑別疾患から手懸か
りが得られて正診に至ることもしばしば経験される。臨床家が想像もしないような鑑別を挙げることで正
炎、気腫性変化など日常臨床でしばしば遭遇する代表的な画像所見を取り上げながら、肺、縦隔以外
に着目すべき画像所見や放射線科が指摘すべき鑑別疾患や病態を紹介する。
MEMO
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定例講座
しい診断に至ると臨床家の放射線科医に対する信頼も増す。本講演ではすりガラス状陰影や器質化肺
定例講座
画像に見えないものを診る
3. 骨軟部
藤本 肇
沼津市立病院 放射線科
共催:バイエル薬品株式会社
読影室で我々の眼に映る画像は、その患者さんの病態の一部に過ぎない。目の見えない人たちがゾウ
に触ったとき、脚を触った者は “ 木のようだ ” と言い、胴に触れた者は “ 壁のようだ ” と述べ、鼻を掴ん
だ者は “ 蛇のようだ ” と表現した。どれも間違いではないが、誰も全貌を把握していない。
画像診断においても類似の事例が多々ある。
例えば、単純 X 線写真に現れた骨の変化を見て周囲軟部の構造物を想像する、あるいはその骨の成
定例講座
長の軌跡を想起すれば、様々な正常変異を容易に理解することができる。外傷の診断においては常に
時間軸を意識し、受傷時の姿を推測することが重要である。奇異な所見に対峙した時には、ありふれた
疾患のちょっと変わった姿ではないかと発想を転換するのが確診への近道となる。さらに、全身性疾患
や薬剤・治療の合併症が思わぬ形で骨軟部病変として出現することもある。
MEMO
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