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連続測定による 揮発性有機化合物の大気中濃度の解析

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連続測定による 揮発性有機化合物の大気中濃度の解析
長野県環境保全研究所研究報告 8:1―5(2012)
<研究ノート>
連続測定による
揮発性有機化合物の大気中濃度の解析
村上隆一 1・佐々木一敏 1・細井要一 1
要旨
長野県では長野県有害大気汚染物質常時監視測定計画に基づき,1997 年以降有害大気汚染物質 (ベンゼン,
トリクロロエチレン, テトラクロロエチレン, ジクロロメタン, クロロホルム, アクリロニトリル,1,3- ブタ
ジエン,塩化ビニルモノマー及び 1,2- ジクロロエタン)を中心とした揮発性有機化合物の調査を継続している.
この調査では容器 (キャニスター) 減圧採取法を用いて 1 日分の大気を一つの容器に採取し 24 時間平均値と
して測定を行っているため, 個々の物質の日内変動をとらえることはできない. そこで直接大気を導入できる
ように分析装置を改良し,1 時間ごとの連続測定を行った. その結果ベンゼン等自動車起源の物質は朝晩の 2
回の濃度上昇が確認された. また, 盆地内で冬季に形成される逆転層により上下拡散が阻害され, 多くの物質
が盆地底部に滞留する現象についても把握することができた.
キーワード:長野県, 連続測定, キャニスター, 揮発性有機化合物, 有害大気汚染物質, フロン類
交通量の国道 117 号線が南北に走る.南 ( 約 300m)
には長安橋があり, 通勤時間帯には長野市南西部か
1.はじめに
ら の 自 動 車 の 流 入 に よ り 国 道 117 号 と の 交 差 点 を
先 頭 に 渋 滞 が 発 生 す る. 北 ( 約 250m) 側 に は 新 幹
環境大気の常時監視を目的とした揮発性有機化合
線の高架橋が走り, 西側には住宅地が広がる.
物 (VOCs) の 測 定 で は 有 害 大 気 汚 染 物 質 測 定 方 法 マ
に基づき, 容器 (キャニスター) 減圧採
取 法 を 用 い て 24 時 間 採 取 を 行 っ て い る。 長 野 県 に
おける常時監視測定もこれに基づいているため, そ
の 測 定 値 は 24 時 間 平 均 値 で あ る. そ の た め 季 節 変
測定地点
動についてはとらえることはできるが, 日内変動に
(環境保全研究所安茂里庁舎)
商業地
国道一一七号
裾花川
ニュアル
1)
ついては不明である. そこで, 日内変動の把握を目
住宅地
的として, 分析装置 (全自動大気濃縮装置+ガスク
住宅地
ロマトグラフ質量分析装置) に直接大気を導入でき
るよう改良し,1 時間ごとの連続測定を行った. 本
報告では, 連続測定の結果とその日内変動及び大気
長安橋
常時監視測定データとの関連性について解析した.
住宅地
工場等
図 1 測定地点(長野県環境保全研究所安茂里庁舎)
2.調査方法
2.2 試料の採取及び分析
2.1 測定地点
図 1 に測定地点を示す. 測定地点は長野市街地南
2.2.1 試料の採取
西 部 の 住 宅 地 に 位 置 し, 東 ( 約 250m) に 裾 花 川 を
全自動大気濃縮装置 (AUTOCan) のキャニスター
へだて平日昼間 12 時間の交通量が 35000 台余り(平
取り付け口にパッシブキャニスターサンプラーで使
成 17 年 長 野 県 道 路 交 通 セ ン サ ス) で 県 内 第 4 位 の
用している金属フィルターを経由してその先に長さ
1 長野県環境保全研究所 大気環境部 〒 380-0944 長野市安茂里米村 1978
1
Bull. Nagano Environ. Conserv. Res. Inst. No.8(2012)
約 2m の テ フ ロ ン 管 ( φ 4mm) を 取 り 付 け る. そ の
と指針値が設定され
テフロン管を直接屋外へ出し, 敷地境界にて固定し
た 5 物質を含む) と
大気を採取した. なお, テフロン管の先には積雪よ
長野県大気測定計画
けとして漏斗をつけた ( 図 2).
に基づきモニタリン
大 気 の 採 取 は AUTOCan 付 属 の ダ イ ヤ フ ラ ム ポ ン
グしている温室効果
プ を 利 用 し,1 時 間 毎 に AUTOCan の マ ス フ ロ ー セ
ガ ス, オ ゾ ン 層 破 壊
ンサーで 200mL 採取 ( 約 3 分間 ) した.
物質及び化管法関連
環境調査対象物質等
屋外
を 合 わ せ て 30 物 質
実験室内
壁
である. このうち m キ シ レ ン と p- キ シ
クラウイオフォーカス
レンは分離して測定
フィルター
することが困難なた
め, 二 つ 合 わ せ て 1
AUTOCan
試料大気採取部
GC/MS(QP5000) データ解析部
物質とみなして定量
を 行 っ た. 標 準 ガ ス
図 2 全自動連続測定装置の概要
は高千穂化学工業株
表2 測定物質と検出下限値
検出下限値
測定物質名
(μg/m3)
0.004
塩化ビニルモノマー
0.003
1,3-ブタジエン
0.007
アクリロニトリル
0.008
ジクロロメタン
0.007
クロロホルム
0.008
1,2-ジクロロエタン
0.007
ベンゼン
0.002
トリクロロエチレン
0.02
テトラクロロエチレン
0.005
塩化メチル
0.01
トルエン
o -キシレン
0.009
m,p -キシレン
0.03
0.007
スチレン
0.01
エチルベンゼン
0.01
HFC 134a
0.003
HCFC 22
0.005
HCFC 142b
0.008
HCFC 123
0.02
HCFC 141b
0.02
HCFC 225ca
0.03
HCFC 225cb
0.01
四塩化炭素
0.005
臭化メチル
0.005
ヨウ化メチル
0.005
硫化メチル
0.003
イソプレン
0.006
1,2-ジクロロプロパン
0.007
ブロモホルム
式 会 社 製 の 各 1ppm の 30 物 質 混 合 標 準 ガ ス (窒 素
ベース) を用いた.
AUTOCan 及 び ガ ス ク ロ マ ト グ ラ フ 質 量 分 析 計
(GC/MS) の測定条件を表 1 に示す.
並 行 し て、 あ ら か じ め 減 圧 し た 内 容 量 6L の キ ャ
2.4 測定日
連 続 測 定 は 2010 年 2 月 4 日 ( 木 )17 時 か ら 2 月
ニスター(Silco Can)を使用し,パッシブサンプラー
5 日 ( 金 )18 時まで行った.
( 約 3mL/min) にて 24 時間連続採取を行った.
並行して行った容器減圧採取法は 2 月 4 日 ( 木 )18
時から 2 月 5 日 ( 金 )18 時の 24 時間採取した.
2.2.2 分析方法
有害大気汚染物質測定方法マニュアル
1)
に 従 い,
AUTOCan が 接 続 し た GC/MS に 試 料 大 気 又 は キ ャ ニ
2.5 大気常時監視局
解析には環境保全研究所局 ( 環保研局 ) 及び大峰
ス タ ー 内 の 試 料 を 導 入 し, 表 1 の 測 定 条 件 で 分 析
を 行 っ た. 濃 縮 系 の 冷 却 に は 液 体 窒 素 を 使 用 し た.
局 の デ ー タ を 使 用 し た. 大 峰 局 は 標 高 822m(環 保
内標準物質にはトルエン -d8 を使用した.
研局との標高差は約 460m) で, 環保研局の北 5km
に位置する.
2.3 測定物質
調査は表 2 に示す物質を対象に行った. 対象物質
3.結果及び考察
は有害大気汚染物質の中で優先取組物質に指定さ
れ て い る 11 物 質 (環 境 基 準 値 が 設 定 さ れ た 4 物 質
3.1 連続測定と容器減圧採取による結果の比較
表1 連続測定及び容器減圧採取による分析装置の条件
試料濃縮部(Tekmar AUTOCan) 分析部(島津製作所 GC17A/QP5000)
試料大気濃縮量
200mL
分離カラム
DB-1
試料大気導入速度
65mL/min
分離カラム長さ
60m
濃縮トラップ管
Tenax
分離カラム内径
0.25mm
濃縮温度
-100℃
分離カラム膜厚
1μm
40℃(5min)-5℃/min加熱脱着温度
220℃
分離カラム温度
140℃-15℃/min-250℃
ドライパージ温度
-30℃
(昇温条件)
(12min)
ドライパージ時間
3分
インターフェイス温度 250℃
クライオフォーカス冷却温度 -180℃
検出方法
SIM
クライオフォーカス加熱温度 200℃
2
長野県環境保全研究所研究報告 8号(2012)
有害大気汚染物質常時監視測定において通常使用
25 している容器減圧採取法と連続測定結果を物質ごと
大気中濃度(μg/m3)
20 に 比 較 し 表 3 に 示 す. 容 器 減 圧 採 取 法 は 2 月 4 日
18 時から 2 月 5 日 18 時までの 24 時間捕集であり,
連続測定においても同様の時間帯の平均値を算出し
た. 連 続 測 定 で 2 月 5 日 13 時 に つ い て 測 定 時 間 が
15 10 5 0 17
20
23
2
5
8
11
15
ずれて測定できなかったため平均値の算出からは除
18
時刻(2月4日~5日)
図3 VOCs30物質総量の濃度変動
外した. 平均値の計算において検出下限値以下の値
60
30
NMHC 0.01ppmC
NO ppb
NO2 ppb
25
のみ平均値は不等号を用いた表記とした.
20
40
15
30
10
20
5
10
大気中濃度(ppmC)
いて算出した. 測定値が全て検出下限値未満の場合
両 者 の 結 果 を 比 較 す る と,19 物 質 が 測 定 値 差
10%以内にあった。30%以内でみると 25 物質がこ
の範囲にあり, 大部分の物質が並行測定時の許容範
1)
の濃度にあった.なお測定値差は(両者の差)
0
0
18
21
24
3
6
9
12
15
18
時刻
/(値 が 小 さ い 方 の 測 定 値) × 100 で 求 め た. 測 定
図4 環保研局の大気常時監視データ
(2010年2月4‐5日)
値差 30% 以上の物質は o - キシレン,m ,p - キシレン,
スチレン及びブロモホルムであり, その中ではスチ
14
6
レンが最も差が大きかった. ブロモホルムは連続測
気温(環保研局) ℃
4
12
気温(大峰局) ℃
2
気温(℃)
定で検出下限値未満の時刻があり, 容器減圧採取法
より低くなったと考える.
容 器 減 圧 採 取 法 に お け る 2008 ~ 2009 年 度 の 冬
季 (11 月~ 2 月 ) の測定結果を表 4 に示す. 本調査
10
風速(環保研局) m/s
0
8
‐2
6
‐4
4
‐6
2
‐8
結 果 を 表 4 と 比 較 す る と, 本 調 査 で は ト リ ク ロ ロ
風速(m/s)
囲内
50
大気中濃度(ppb)
が含まれる場合は検出下限値の 2 分の 1 の値を用
0
18
21
24
3
6
9
12
15
18
時刻
エ チ レ ン が 高 く,HCFC22 が 低 い も の の 他 の 物 質 は
図5 環保研局及び大峰局の気象データ
(2010年2月4‐5日)
ほとんど同じ濃度レベルにあり, 調査した期間は長
3
表3 連続測定及び容器減圧採取法の測定結果(μg/m )
連続測定 容器減圧
連続測定 容器減圧
物質名
物質名
平均
採取法
平均
採取法
塩化ビニルモノマー
0.014
0.012
トルエン
3.6
4.1
1,3-ブタジエン
0.12
0.11
o -キシレン
0.86
0.55
アクリロニトリル
0.075
0.061
2.6
1.4
m,p -キシレン注1)
ジクロロメタン
0.92
0.73
スチレン
1.0
0.38
クロロホルム
0.15
0.14
エチルベンゼン
0.95
0.99
1,2-ジクロロエタン
0.11
0.11
HFC 134a
0.33
0.36
ベンゼン
1.4
1.4
HCFC 22
0.99
1.05
トリクロロエチレン
0.66
0.80
HCFC 142b
0.11
0.11
テトラクロロエチレン
0.14
0.16
HCFC 123
<0.008
<0.008
塩化メチル
1.2
1.2
HCFC 141b
0.16
0.16
連続測定 容器減圧
平均
採取法
HCFC 225ca
<0.02
<0.02
HCFC 225cb
<0.03
<0.03
四塩化炭素
0.41
0.43
臭化メチル
0.039
0.039
ヨウ化メチル
<0.005
<0.005
硫化メチル
0.035
0.037
イソプレン
0.12
0.13
1,2-ジクロロプロパン
0.055
0.052
ブロモホルム
0.031
0.058
物質名
VOCs30物質総量
18
16
注1)
m,p- キシレンは2物質の合算値
3
表4 容器減圧採取法における2008~2009年度冬期(11月~2月)の平均値(μg/m )
冬期の
冬期の
物質名
物質名
平均値
平均値
5.2
0.019
塩化ビニルモノマー
トルエン
0.63
0.14
1,3-ブタジエン
o -キシレン
1.5
0.068
アクリロニトリル
m,p -キシレン注1)
0.18
0.88
ジクロロメタン
スチレン
1.1
0.17
クロロホルム
エチルベンゼン
0.47
0.11
1,2-ジクロロエタン
HFC 134a
2.1
1.6
ベンゼン
HCFC 22
0.14
0.29
トリクロロエチレン
HCFC 142b
0.22
<0.01
テトラクロロエチレン
HCFC 123
0.22
1.4
塩化メチル
HCFC 141b
物質名
HCFC 225ca
HCFC 225cb
四塩化炭素
臭化メチル
ヨウ化メチル
硫化メチル
イソプレン
1,2-ジクロロプロパン
ブロモホルム
VOCs30物質総量
注1)
m,p- キシレンは2物質の合算値
3
冬期の
平均値
<0.02
<0.03
0.56
0.051
0.012
0.031
0.12
0.053
0.083
17
Bull. Nagano Environ. Conserv. Res. Inst. No.8(2012)
野盆地における冬季の平均的な状況下にあったと考
1.80 平均値との比率
えられる.
3.2 大気常時監視局測定データとの比較
1.60 ベンゼン
1.40 HFC 134a
1.20 四塩化炭素
1.00 0.80 0.60 測 定 対 象 物 質 総 量 (30 物 質 ) の 時 刻 別 濃 度 変 動
0.40 17
を 図 3 に 示 す. ま た, 敷 地 内 に 併 設 さ れ て い る 環
20
23
2
5
8
11
15
18
時刻(2月4日~5日)
保 研 局 に お け る 非 メ タ ン 炭 化 水 素 (NMHC), 窒 素
図6 ベンゼン,HFC134a及び四塩化炭素の挙動
酸化物 (NO,NO2) 濃度を図 4 に,環保研局及び大
峰局の気象データを図 5 に示す.
2.20 る も の の 翌 5 日 11 時 に 最 高 値 (24 μ g/m3) と な り
1.80 平均値との比率
総 量 濃 度 は,4 日 21 時 か ら 上 昇 し, 途 中 減 少 す
そ れ 以 降 は 減 少 し た. な お 5 日 17 時 に い っ た ん 急
上 昇 し た が, そ れ は ジ ク ロ ロ メ タ ン 濃 度 (7.5 μ g/
m3) が一時的に高かったためである.
1.40 1.00 0.60
0.60 0.20 環 保 研 局 の 非 メ タ ン 炭 化 水 素 (HMHC) 濃 度 は 4
17
日 20 時 か ら 5 日 11 時 ま で 濃 度 が 高 く,12 時 以
20
23
2
5
8
11
15
18
時刻(2月4日~5日)
図7 トルエンの挙動
降 は 濃 度 が 急 激 に 低 下 し た. 窒 素 酸 化 物 (NO 及 び
NO2) に お い て も 同 様 の 傾 向 が み ら れ る こ と か ら,
自動車起源の大気汚染物質が 4 日夜間から 5 日午
ンゼン, 四塩化炭素,HFC134a 及びトルエン ) を図
前中まで高濃度で推移したと考えられる.
6 及び 7 に示す. なお, 図の縦軸は各測定値と連続
風 速 を み る と 2 月 4 日 21 時 に 1.4m/s で あ っ た
測定の平均値との比率で表記した.
が そ の 後 徐 々 に 弱 ま り,24 時 と 5 時 で 最 低 値 の
ベンゼンは, 東京都の星ら
2)
の調査では朝, 夕の
0.4m/s を 記 録 し た. そ の 後 6 か ら 7 時 に か け て や
そ れ ぞ れ 9 時 と 19 時 頃 に 濃 度 が 高 く な る こ と が 示
や 上 昇 す る が 8 時 に 0.6m/s と 減 少 し, 全 体 と し て
さ れ て い る. 本 調 査 で も 時 間 帯 は 若 干 遅 い も の の
4 日 夕 方 か ら 5 日 午 前 中 ま で は 弱 風 で あ っ た.12
4 日 24 時 と 5 日 11 時 に 濃 度 上 昇 が み ら れ, 東 京
時以降は南よりの風が強まりこれが図 3 に見られ
都 の 調 査 と 似 た 傾 向 を 示 し た.PRTR 制 度 に 関 す る
る 12 時 以 降 の 濃 度 減 少 に 反 映 し て い る と 考 え ら れ
大 気 へ の 排 出 量 調 査 (H21) 3) で は 測 定 地 点 の 周 囲
る. また, 環保研局と大峰局の気温差をみると, 鉛
400m 圏内においてこれらを排出しているのはガソ
直方向に気温の逆転はみられなかったものの 2 時と
リンスタンドで 6 店舗あるのみであることと環保
9 時において気温差がほとんどなく, また風速もそ
研 局 の デ ー タ 解 析 (3.2) か ら も 自 動 車 か ら 排 出 さ れ
の時刻より前は弱かったことから明確な逆転層は形
るベンゼンの挙動であると考えられる。 濃度の上昇
成されなかったものの盆地内にはそれに近い状況と
が数時間にわたって維持されたのは盆地特有の大気
なり大気汚染物質が盆地底部に滞留しやすい状態に
汚染物質の滞留と関係があると考えられる. 他にベ
あったものと推測される.
ン ゼ ン と 似 た 挙 動 を 示 し た の は 1,3- ブ タ ジ エ ン 及
以上のことから, 盆地内で発生した主に自動車起
びイソプレンであった. ただし, 日中大気中におい
源による大気汚染物質が 4 日夜間から 5 日午前中
て光化学反応による分解速度が大きい両物質は, 濃
に気象条件の影響を受けて長野盆地底部に滞留しや
度 上 昇 が ベ ン ゼ ン よ り 2 時 間 早 く, ベ ン ゼ ン が 高
すい状態にあり, 連続測定の濃度も上昇したと考え
く な る 11 時 に は 減 少 傾 向 が み ら れ, 光 化 学 反 応 に
る. ま た,12 時 以 降 の や や 強 い 風 に よ り こ の よ う
よる分解が進んでいるのではないかと推測される.
な状態も解消し, 濃度も急激に減少したと考えられ
HFC134a は,4 日 夜 間 か ら 5 日 午 前 中 ま で 濃 度
る.
が 高 く,12 時 以 降 は 濃 度 が 減 少 し た. 盆 地 特 有 の
大 気 汚 染 物 質 の 滞 留 が あ っ た と 考 え ら れ る.12 時
以降の濃度減少はやや強い南風によるものと考え
3.3 各物質の日内変動
測定物質のうち挙動が明確で, 代表的な物 質 ( ベ
ら れ る. 同 様 の 挙 動 を 示 し た も の は 他 に HCFC22,
4
長野県環境保全研究所研究報告 8号(2012)
HCFC141b 及び HCFC142b であった.
2 ベンゼン,1,3- ブタジエン及びイソプレンは朝
四塩化炭素はほぼ濃度が一定で気象条件等の影響
と晩の渋滞時以降に濃度が最も高くなった.
を受けなかった. これは現在製造及び使用が禁止さ
3 フ ロ ン 類 も 気 象 条 件 に よ り 盆 地 底 部 に 滞 留 し,
れ て い る た め, 盆 地 内 か ら の 発 生 は ほ と ん ど な く,
夜間から翌日の午前中にかけて濃度上昇があっ
大気中に均一に分布していると考えられる. 他には
た.
熱帯植物由来の塩化メチルも同じ挙動であった.
4 四塩化炭素及び塩化メチルの濃度はほぼ一定で
測定物質中最も濃度が高かったトルエンは,5 日
あった.
午前中はベンゼンと同じ挙動を示し, 自動車排出か
5 トルエン, キシレン及びエチルベンゼンは固定
らの影響と思われるが, 塗料溶剤等としての使用量
発生源と移動発生源の両方の影響がみられた.
も多いため,4 日については, 事業所等の固定発生
盆 地 の 多 い 長 野 県 で は 本 調 査 の 結 果 を 踏 ま え,
源の影響も受け, なだらかな濃度上昇であった. こ
今後も VOCs の挙動を調査していきたい.
のことはトルエンと同じ用途に使用されるキシレン
参考文献
及びエチルベンゼンも同様であった.
1) 有 害 大 気 汚 染 物 質 測 定 法 マ ニ ュ ア ル (平 成 20
年 10 月版, 平成 23 年 3 月版)
4.まとめ
2) 星純也・中浦久雄・石井康一郎・芳住登紀子・
渡 辺 の ぶ 子・ 松 田 初 弘・ 早 福 正 孝 (2002) 有 害
揮 発 性 有 機 化 合 物 30 物 質 に つ い て 1 時 間 毎 の 連
続測定を行い, 以下のことが明らかとなった.
大気汚染物質連続測定データを用いた大気中
1 冬季における VOCs30 物質の多くが, 気象条件
濃 度 分 布 の 特 徴, 東 京 都 環 境 科 学 研 究 所 年 報,
3-10
の影響により盆地底部に滞留し, 夜間から翌日の
3)PRTR デ ー タ 分 析 シ ス テ ム け ん さ く ん, 経 済 産
午前中にかけて濃度が上昇した.
業省 及び 独立行政法人製品評価技術基盤機構
Characteristics of Volatile Organic Compounds
concentrations from continuous measurement data
in Nagano basin
Ryuichi MURAKAMI1,Kazutoshi SASAKI1 and Youichi Hosoi1
1 Nagano Environmental Conservation Research Institute,Atmospheric Environment Division,
1978 Komemura,Amori,Nagano 380-0944,Japan
5
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