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本文ファイル - 長崎大学 学術研究成果リポジトリ

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本文ファイル - 長崎大学 学術研究成果リポジトリ
NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE
Title
3D形状計測とホログラフィ干渉計測による膜・シェルの構造特性と
非破壊検査への応用
Author(s)
松田, 浩
Citation
Issue Date
2005-03
URL
http://hdl.handle.net/10069/14902
Right
This document is downloaded at: 2017-03-31T07:31:10Z
http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp
形状計測とホログラフィ干渉計測による
膜・シェルの構造特性と非破壊検査への応用
研究課題番号 平成 ∼ 年度科学研究費補助金
基盤研究 研究成果報告書
平成 年 月
研究代表者
松田 浩
長崎大学工学部構造工学科
形状計測とホログラフィ干渉計測による
膜・シェルの構造特性と非破壊検査への応用
研究課題番号 平成 ∼ 年度科学研究費補助金
基盤研究 研究成果報告書
平成 年 月
研究代表者
松田 浩
長崎大学工学部構造工学科
平成 ∼ 年度科学研究費補助金 基盤研究(
研究成果報告書
はじめに
本書は 平成 年度から平成 年度の 年間にわたって文部省科学研究費補助金 基盤研究 課題
番号 の補助を受けて実施した研究成果報告書である. 形状計測とホログラフィ干渉計測及
びその関連技術であるスペックル干渉計測を用いた計測法について述べるとともに,それらの計測法を用
いて,鋼,コンクリート, などの種々の材料で構成される膜・シェルをはじめとする種々の構造部材
の構造特性や破壊メカニズムの解明、およびこれらの技術の非破壊検査への適用性について得られた結果
をまとめたものである.
研究代表者は,ここ数年来,膜・シェル構造の形状計測のために,レーザ光と安価な カメラを用
いた可搬・非接触 次元計測装置を試作開発するとともに,計測により得られる膨大な 次元座標情報を
汎用非線形 コード ,, 大学より提供 に取り込み,大規模 ソリッド・シェル要素解析を実施してきた.さらに, 解析結果の信頼性と精度を検討するために,曲
かりかつねじれた曲面板の振動実験を行ない,共振周波数とホログラフィ干渉計測装置を用いた時間平均
法による振動モードと比較検討してきた.ホログラフィ干渉計測は,
大面積 数 物体の欠陥 接着切れ,き裂,不均一 の直接的・全体的な可視化が可能
被検査面に特別の処理を必要とせず,また被検査物体への作用がない
空間的高解像力,高感度,パルスレーザによる現場計測,自動化が可能
などの利点を有し, 線透視法,サーモグラフィ,超音波等の非破壊検査以上になるとも言われている.
しかしながら,現在の時間平均法では,乾板に写真を撮る必要があり面倒で時間がかかる.実時間で画
像データを取得する方法として,ホログラフィ関連技術であるスペックル干渉計測がある.受光器に高解
像度 カメラを使用するものである.ホログラフィに比べて機能的には劣るが,使用性状が極めて柔
軟で,煩雑でなく,実時間計測が可能であるという特長を有する.
非破壊検査は,超音波や 線を利用してこれまでも盛んに行われているが,構造材料に欠陥が有るか無
いかを調査するだけで,材料の破壊が何時起るかを予測できるわけではない.劣化の予測を行うためには,
材料が劣化へと至るまでの状態をリアルタイムに観察する必要がある.この目的のための非破壊試験とし
て,ホログラフィ干渉法やその関連技術であるスペックル干渉法が考えられる.特に,スペックル干渉法
は可視光線下での計測が可能で現場計測への適用が期待できる.
スペックルとは,レーザ光を材料に照射し,散乱された光をある面で観察した時に得られる斑点状のノ
イズパターン 干渉模様 であり,物体が変形するとこのスペックルパターンも変化する.スペックル干渉
計測により引張試験を観察すると,一定速度で引張っているにもかかわらず,局所的な干渉縞の脈動が観
察されることがわかっている.これは従来観察されていない新しい現象で,材料の劣化過程を予測するた
めの手がかりとなる可能性を秘めている.材料片の物理的な変化とスペックルパターンの変化とを結び付
けることによって,さらに計算力学とを組み合わせることによって材料の劣化過程や疲労現象の解明が期
待できるものと考えている.
!
研究課題
形状計測とホログラフィ干渉計測による膜・シェルの構造特性と非破壊検査への応用
研究課題番号
!
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研究組織
研究代表者
松田 浩
長崎大学教授 工学部構造工学科
研究分担者
川口 健一
東京大学助教授 生産技術研究所
〃
後藤 信行
長崎大学教授 環境科学部
〃
森田 千尋
長崎大学助教授 生産科学研究科(兼任:工学部構造工学科)
〃
才本 明秀
長崎大学助教授 生産科学研究科(兼任:工学部機械システム工学科)
〃
中村 聖三
長崎大学助教授 工学部社会開発工学科 〃
森山 雅雄
長崎大学助教授 工学部情報システム工学科
〃
崎山 毅
長崎大学教授 工学部構造工学科
〃
阪上 直美
長崎大学助手 工学部構造工学科
〃
黄 美
長崎大学助手 工学部構造工学科
〃
古賀 掲維
長崎大学講師 長崎大学大学教育機能開発センター
研究協力者
山下 務
長崎大学技術職員 工学部構造工学科
〃
仲村 政彦
"
テクノサイエンス 九州テクノセンタ
〃
山本 晃
"
テクノサイエンス 九州テクノセンタ
〃
岩佐 貴史
文部科学省宇宙科学研究所博士課程 〃
胡 夏夏
淅江工業大学教授 機電工程学院 〃
日比野 誠
九州工業大学助教授 工学部建設社会工学科
〃
合田 寛基
九州工業大学助手 工学部建設社会工学科
〃
松尾 一四
九州工業大学大学院工学研究科博士課程
〃
安東 祐樹
ショーボンド建設 補修工学研究所
〃
岡本 卓爾
計測リサーチコンサルタント
〃
吉田 教明
長崎大学教授 歯学部歯科矯正学講座
現:東京工業大学大学院理工学研究科研究員)
社長
交付決定額(配分額)
直接経費
間接経費
合 計
平成 年度
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千円
千円
##
千円
平成 年度
千円
千円
千円
平成 年度
千円
千円
千円
千円
千円
千円
合計
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研究発表
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学会誌等(新しいものからさかのぼって記載)
森田千尋,松田浩,崎山毅,下川一基,白濱敏行,黄美:片持ち積層板の自由振動特性に関
する研究,構造工学論文集,$%&!
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松田浩,下郡康二,山下務,岩佐貴史,川口健一、ほか 名:矩形張力膜のリンクル現象
の光学的全視野ひずみ・変位計測,構造工学論文集,$%&!
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松田浩,牧野高平,山下務,中島朋史:コンクリート打継部の表面粗度の計測・定量化と曲
げ・せん断付着特性に関する研究,構造工学論文集,$%&!
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(
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松田浩,崎村陽介,安東祐樹,鶴田健,林山豊,森田千尋,崎山毅: 板または鋼板で
補強された はりの鉄筋の付着領域を考慮した非線形 解析,応用力学論文集 土木
学会,$%&!#,''!( 松田浩,安東祐樹,杉原泰亮,山下務,神原天鳴,崎山毅,森田千尋:電子スペックルパ
ターン干渉法によるアルミニウム合金板の破壊挙動の全視野ひずみ計測,応用力学論文集
(土木学会),$%&!#,''!(
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出水享,松田浩,田口保男,上阪康雄:三次元非線形 によるディビエータ部におけ
る 外ケーブルの接触解析,コンクリート工学年次論文集,$%&!,%!,''!#
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松田浩,神原天鳴,下郡康二,崎山毅,阪上直美:スペックル干渉法による鋼部材の非接
触全視野ひずみ計測,鋼構造年次論文報告集,$%&!,''!
*(
,社 日本鋼構造協会,
楠原絵美,上阪康雄,高徳裕平,松田浩,出水享,阪上直美:外ケーブルおよび偏向部に着
目した鋼コンクリート複合橋の三次元 解析,土木学会,第 回複合構造の活用に関す
るシンポジウム講演論文集,''!(),
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-3 ++ $ 4 %- -&20 0 %5 ;1%%' 7 &+0 : 1 %-(- 5% 1 7/-+00 "%-&
%5 ''& +3 +71- 70 " $%&! ''!( 松田浩,神原天鳴,才本明秀,阪上直美,山下務,崎山毅:スペックル干渉による非接触全
視野ひずみ計測法,応用力学論文集,$%&!,''!)()),土木学会,
松田浩,本山祐三,森田千尋,古賀掲維:スペックルパターン干渉法を用いたコンクリート
構造物の非接触非破壊検査法,先端技術研究成果報告書,%!,''!
(,長崎先端技術
開発協議会,
古賀掲維,松田浩,林山豊,佐川貴光:鋼板・CFシートで補強されたRC梁の非線形挙
動解析,コンクリート工学年次論文集,%!,''!*(,日本コンクリート工学協会,
松田浩,出水享,田口保男,古賀掲維,上阪康雄: ケーブル偏向部のフレッチング現象
解明のための 解析,コンクリート技術シリーズ,
「 構造物の現状の問題点とその対
策」に関するシンポジウム論文集,''!(,土木学会,
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* !! <@ 4& 01+0
仲村政彦,山本晃,高口昇,松田浩:橋梁3次元形状モデル作成と設計・製作への利用土木
構造・材料論文集 九州橋梁構造工学研究会 @,第 ) 号
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松田浩,大石裕介,神原天鳴,仲村政彦,崎山毅:ホログラフィ干渉計測および3次元計測
による薄肉構造部材の非破壊検査に関する研究,応用力学論文集,$%&!
,''!)#()
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直交異方性有孔板の自由振動
''%+3 ;1%%' 7 6+ &+0 : 1 6+ ,%&+ 問題の一解析法,応用力学論文集,$%&!
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松田浩,大石裕介,神原天鳴:ホログラフィ干渉計測及び三次元計測に基づく 解析に
薄肉板の振動解析,日本実験力学会講演論文集,%!
#
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''!#(
松田浩,崎山毅,林山豊,平嶋健太郎,佐野正,岳尾弘洋 鋼板および
シートで補
強された はりの 次元弾塑性 解析,長崎大学工学部研究報告,第 巻,第 * 号,
,(#
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(*
)
松田浩,崎山毅,小嶋悟,山下幸生,佐野正 鋼コンクリートサンドイッチ床版の 次元
弾塑性 解析,長崎大学工学部研究報告,第 巻,第 * 号,''!*(*)
*
松田浩,崎山毅,森田千尋,北原隆,楠原絵美,倉方慶夫
連続鋼合成桁の 次元および
次元 解析,長崎大学工学部研究報告,第 巻,第 * 号,''!**(
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-3 79+3 72& -3 7& '-+&0 : 1 9 4&+ 1 7/-+00 "%-& %5 %-3 -3 $ 4 %-
$%&!
%! "&2 小嶋悟,大石裕介,神原天鳴,出口万里子,松田浩:3次元計測およびホログラフィ干渉計
測による鋼構造物の非破壊検査に関する研究平成 年度 土木鋼構造研究奨励事業,研究
奨励研究梗概集,鋼材倶楽部
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! ,- ! / 2 ,! 03 -3 ! % ++ 9 4 %- %5 7%00('&2 02+(
7&&2 & -+3 1 7- &+9+ -& '&+0 +'%0 %5 1+ 7&2 %5 - -++ -
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( !
口頭発表
下郡康二,松田浩,山下務,杉原泰亮:電子スペックル干渉法を用いた張力膜におけるリン
クル現象の全視野ひずみ計測,土木学会第 * 回年次学術講演会講演概要集,(,
下川一基,森田千尋,松田浩,崎山毅:積層板の自由振動特性に関する研究,土木学会第
*
回年次学術講演会講演概要集,(
杉原泰亮,松田浩,山下務,下郡康二:切欠きおよび孔を有するアルミ板の破壊挙動の全視
野ひずみ計測,土木学会第 * 回年次学術講演会講演概要集,()
崎村陽介,鶴田健,安東祐樹,松田浩: 版及び鋼板による補強 はりの 次元非線
形 解析,土木学会第 * 回年次学術講演会講演概要集,$()
9
中島朋史,松田浩,出水享,田口保男:三次元非線形 による 外ケーブルの移動・
変形性状解析,土木学会第 * 回年次学術講演会講演概要集,$(
牧野高平,松田浩,山下務,中島朋史:コンクリート打継部の表面粗度と付着強度特性に関
する研究,土木学会第 * 回年次学術講演会講演概要集,$(
#
下郡康二,松田浩,山下務,内野正和:電子スペックル干渉法を用いた張力膜のリンクル解
析,平成 年度土木学会西部支部研究発表会講演概要集,(,!
)
下川一基,森田千尋,松田浩,崎山毅:積層板の自由振動特性に関する実験的・解析的研
究,平成 年度土木学会西部支部研究発表会講演概要集,(,!
*
田中聡,森田千尋,松田浩,崎山毅:佐賀県における耐候性鋼橋梁の錆状況の調査,平成
年度土木学会西部支部研究発表会講演概要集,(,!
杉原泰亮,松田浩,山下務,神原天鳴:欠陥を有する鋼部材の全視野ひずみ計測,平成 年度土木学会西部支部研究発表会講演概要集,(
,!
峯弘樹,安東祐樹,松田浩,杉原泰亮:落橋防止構造におけるブラケットの支圧部に着目し
た解析的検討,平成 年度土木学会西部支部研究発表会講演概要集,)(),!
牧野高平,松田浩,山下務,中島朋史:コンクリートの表面粗度と付着特性に関する研究,
平成 年度土木学会西部支部研究発表会講演概要集,(,!
出水享,野島昭二,高橋亮,松田浩: シートによるコンクリート片の剥落防止効果
に関する三次元非線形 解析,平成 年度土木学会西部支部研究発表会講演概要集,
*(*
,!
崎村陽介,鶴田健,安東祐樹,松田浩:異種材料で補強された 構造物の 次元 解
析,平成 年度土木学会西部支部研究発表会講演概要集,*(*,!
神原天鳴,松田浩,山下務,崎村陽介:曲げを受ける はりの全視野ひずみ計測と破壊
モードに関する研究,平成 年度土木学会西部支部研究発表会講演概要集,
(
,
!
中嶋朋史,松田浩,出水享,田口保男:ディビエータ部におけるケーブルの移動・変形性
状に注目した三次元 接触解析,平成 年度土木学会西部支部研究発表会講演概要集,
(
#
#
,!
楠原絵美,上阪康雄,森田千尋,松田浩:連続合成 主桁橋の三次元応力解析,平成 年
度土木学会西部支部研究発表会,!
)
林山豊,古賀掲維,松田浩,安東祐樹:異種材料で補強された はりの非線形 解析,
平成 年度土木学会西部支部研究発表会,!
*
出水享,古賀掲維,田口保男,松田 浩 : 外ケーブル偏向部のフレッチング現象のFE
解析,平成 年度土木学会西部支部研究発表会,!
神原天鳴,松田浩,大石裕介,森田千尋:ホログラフィおよびスペックル干渉法による全視
野ひずみ計測,平成 年度土木学会西部支部研究発表会,!
神原天鳴,松田浩,崎山毅,森田千尋,大石裕介,下郡康二:スペックル干渉法による非接
触全視野ひずみ計測,土木学会第 ) 回年次学術講演会概要集,(
9
,!*
(;
出水享,林山豊,松田浩,古賀掲維,安東祐樹,佐川康貴:鉄筋の付着領域を考慮した異
種材料補強
(;
はりの非線形
解析,土木学会第
)
回年次学術講演会概要集,$(#
,!*
松田浩,崎山毅,森田千尋,荒田新吾,出水享:コンクリート打継部のせん断付着性状に関
する研究,土木学会第 ) 回年次学術講演会概要集,$(
平嶋健太郎,松田浩,佐野正,林山豊:鋼板接着補強した 梁の弾塑性挙動解析,平成
年度土木学会西部支部研究発表会,第 分冊,(
,!
''!(
小嶋悟,松田浩,山下幸生,佐野正:鋼コンクリートサンドイッチ床版の終局挙動解析,平
成 年度土木学会西部支部研究発表会,第 分冊,(
*
''!)(*
年度土木学会西部支部研究発表会,第 分冊,()
,!
,!
''!(
木下正幸,森田千尋,松田浩,崎山毅:繊維強化型複合積層板の弾塑性解析,平成 年度
土木学会西部支部研究発表会,第 分冊,()
*
,!
佐藤英一,森田千尋,松田浩,崎山毅:竹の組織構造から観た複合構造の力学特性,平成
)
''!)(*
林博樹,崎山毅,森田千尋,松田浩:三角形サンドイッチ板の曲げ振動解析,平成 年度
土木学会西部支部研究発表会,第 分冊,(
#
,!*
(;
''!(#
,!
大石裕介,神原天鳴,松田浩,崎山毅: 次元計測およびホログラフィ干渉計測による薄肉
構造物の非破壊検査に関する研究土木学会第 # 回年次学術講演会概要集,( (;
!*
林山豊,松田浩,崎山毅,平嶋健太郎,佐野正,岳尾弘洋:鋼板および シートで補強
された 梁の 次元弾塑性有限要素解析土木学会第 # 回年次学術講演会概要集,$()
(;
,!*
荒田新吾,小嶋悟,松田浩,崎山毅,蒋宇静:モルタル接合面の粗度とせん断付着性状に関
する研究土木学会第 # 回年次学術講演会概要集,$()
,!*
(;
山下幸生,小嶋悟,佐野正,松田浩,崎山毅:鋼コンクリート合成サンドイッチ梁の実験
及び
次元非線形
解析土木学会第
#
回年次学術講演会概要集,$(
,
(;
!*
北村匡範,和田眞禎,北田俊行,山口隆司,丹羽量久,松田浩:画像処理技術を用いた既設
構造物の終局状態に至るまでの現象を可視化するシステムの開発土木学会第 # 回年次学術
講演会概要集,(*
,!*
(;
木下正幸,森田千尋,松田浩,崎山毅,黄美
離散的近似解法による積層偏平シェルの弾
塑性曲げ解析土木学会第 # 回年次学術講演会概要集,(#
(;
,!*
佐藤英一,森田千尋,松田浩,崎山毅,有尾一郎竹の異方性組織構造に観る複合構造の力
学的特性土木学会第 # 回年次学術講演会概要集,())
9
(;
,!*
!
研究成果
本研究で得られた成果については前記の学会論文集やシンポジウムなどで既に公表済みであるが,そ
の概略は以下のようにまとめることができる.
! 次元形状計測
試作 次元計測器をはじめとして,レーザー光やデジタルカメラなどの技術を用いた 次元計
測技術についての研究を実施することができるようになった.
!
ホログラフィ干渉計測
これまで写真乾板で行っていたものをデジタルカメラで画像を取得することができるようになっ
た.この研究が次のスペックル干渉計測のきっかけとなった.
!
スペックル干渉計測
ホログラフィの関連技術としてスペックルパターン干渉計測装置を導入し,以下に示すような
種々の構造部材の構造特性や劣化メカニズムの研究にとりかかることができた.現在は面内計
測であるが,面外計測への拡張を含めての開発・改良も現在進めている.
!
薄肉曲面板の 次元形状計測と 自由振動解析
曲面板をいくつかの 次元形状計測器で計測し,そのデータを用いて 解析を実施した.解
析結果は振動実験での共振周波数とホログラフィ干渉計測による振動モードと比較し,よく一
致することを確認した.簡便で精度のよい 次元計測について検討することができた.
!
ホログラフィ干渉計測法の欠陥検知への適用可能性追及
切欠きや孔を有する平面板を対象としてホログラフィ干渉計測による振動モードの変化に注目
し,非破壊検査への適用可能性について検討した.共振周波数に変化がみられなくても振動モー
ドの変化に注目すると,欠陥検知が可能であることが確認された.
!
有孔板および切欠板の引張試験における 計測
有孔板および切欠板の引張試験で 計測を実施した.この計測でもホログラフィの振動モー
ドと同じように,全体的なひずみ分布の変化をとらえることができるので,非破壊検査に適用
できることが確認された.可視光線下で実施できるので適用範囲が広い.
#! はりのひび割れの発生・進展の可視化
せん断スパン比の異なる はりの載荷試験を実施し,曲げひび割れから斜めひび割れ,せん
断ひび割れに移行するひび割れの発生・進展状況を 計測により可視化することができた.
)!
解析での可視化はこれまで実績があるが,実験での可視化ははじめてであると考えている.
矩形張力膜のリンクル計測
矩形張力膜の引張試験を実施し,リンクル発生は 計測による最小主ひずみの緩和点とし
て定義できることが実験で明らかになった.また, 次元計測器や面外計測可能な により
膜のリンクル形状も計測することができるが,これについては今後の課題である.
*! 複合積層板の自由振動特性
積層板の自由振動解析とホログラフィ干渉計測との比較により,異方性材料に対しての
構造特性の検査に有効であることが確認できた.これのことは積層構造の層間はく離や剥れや
接着不良などの欠陥検知に対しても有効であることを示唆するもので,現在さらに実験を進め
ている.
9
!
レジンコンクリートの硬化過程の収縮ひずみ計測
計測によるフレッシュコンクリートの硬化過程における非接触全視野ひずみ計測の適用可
能性を確認することができた.コンクリートの自己収縮,乾燥収縮,温度応力・ひび割れなど
の研究に適用できることが予想される.
!
落橋防止構造の連結板の接触圧分布
落橋防止構造の連結板の接触圧分布を 計測と 解析で比較した. 解析は理想的な条
件であり,実験結果とは一致しない場合がある.実験を再現するために,境界条件などを実験
に合わせて正確に行うことができ, 解析へフィードバックすることができた.
!
圧縮せん断破壊メカニズムの解明
セメントモルタルや を用いた圧縮試験を実施するとともに,破壊力学に基づく数値解
析(体積力法,粒子法)を行い,圧縮せん断破壊のメカニズムに関して考察を行った.この研
究成果は地震の断層生成メカニズムの解明にも貢献できることが予想され,今後の重点研究課
題となり得ることが予想される.
!
溶接部に存在する内部き裂が鋼材表面のひずみに及ぼす影響
スペックル干渉法による溶接部内部き裂の検出の可能性を検討するため,その初期段階として
内部にき裂が存在するモデルの有限要素解析を行い,モデルサイズや内部き裂の位置・サイズ
が表面ひずみに及ぼす影響を明らかにした.今後,この結果を踏まえて実験を続行する予定で
ある.
!
平和祈念像の3次元形状計測とFE解析
レーザースキャナを用いて3D形状計測を行い,得られたデータを用いて3Dデジタル情報化
するとともに,そのデジタル座標データを用いて3DFEメッシュを作成しFE解析を行うシ
ステムを構築した.このシステムは歴史的構造物の3Dデジタルデータの保存するだけでなく,
構造物の地震応答解析も可能となるので,あらゆる構造物の耐震評価に応用することができ,今
後発展が期待される研究テーマである.
!
歯のCT画像から 次元FEモデルの構築
歯のCT画像データからFEメッシュデータの作成とFE解析を行うシステムを構築した.こ
の手法は,歯や骨などの生体材料のみならず,3D地質情報から3Dデジタル化も可能となる
ので,それに基づく3DFE解析も可能となり,今後の発展が期待されるテーマである.
B
【謝 辞】
本研究を遂行するにあたり,豊岡了先生(埼玉大学教授,大学院理工学研究科)にはスペックル干渉計
測について,非常に有益なご助言とご指導を賜りました.平成 ()年 月 # 日に土木学会のコン
クリート工学委員会の前日に埼玉大学を訪問させていただきました.
「夕方遅くでも構わない」というお言
葉に甘えて,初対面にもかかわらず夜 ) 時過ぎまで,ホログラフィ干渉計測,スペックル干渉計測につい
てご教示していただくとともに,実験室を案内していただきました.豊岡先生にお会いしたのを契機とし
て,日本実験力学会に入会し,和歌山大学でのシンポジウムにはじめて参加しました.そこで,福岡県工
業技術センター電子機械研究所の内野正和氏がスペックル干渉計測の研究を進めておられることを知りま
した.電子機械研究所がある福岡県北九州市までは車で 時間程度ですので,学生と一緒に訪問させてい
ただきました.それ以来,内野正和氏には,日本コンクリート工学協会九州支部の研究専門委員会「コン
クリートの硬化・劣化過程の全視野ひずみ計測」に参画していただくとともに,計測法全般にについてご
助言をいただいています.
また,平成 ∼ 年度の長崎大学工学部構造工学科の研究室の卒業生及び大学院修士課程修了生,大
石祐介君(現:株 エスイー),林山豊君(現:株 富士ピーエス,荒田新吾君,神原天鳴君 現:株
リョーセンエンジニアズ,楠原絵美君(現:長菱設計 株),出水享君(現:株 計測リサーチコンサル
タント),崎村陽介君(現:前田建設工業 株),下郡康二君(現:辻産業 株),牧野高平君(現:西松建
設 株),峯弘樹君(現:竹田設計工業 株),田島海渡君(現:日本電炉 株),村上和哉君(現:
情報システム 株),山口歩君(現:扇精光 株),後田恭孝君(現:株 菱熱),杉原泰亮君(),中
島朋史君(),前田陽君,松山直紀君(),森昌将君(),鶴田聡君(),浜岡広君(,日
高哲郎君(,宮本恵子君,森下喬君(,山根広知君( には,実験,計測,解析,そして本報
告書の作成に際して大変お世話になりました.
ここに記して感謝の意を表します.
平成 # 年 月 研究代表者
松田 浩 長崎大学工学部教授
B
目 次
序論
!
研究の背景
研究目的 ! !
!
当該分野におけるこの研究の学術的な特色・独創的な点及び予想される結果と意義
!
国内外の関連する研究の中での当該研究の位置づけ
!
本研究で実施した研究内容
!
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
! ! ! ! !
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
光学的計測装置
次元形状計測
次元計測の基礎
!
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
!
試作した 次元画像計測装置 !
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
!!
能動的ステレオ法
ハードウェア構成
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
!!
ソフトウェア構成
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
!!
触針式三次元スキャナを用いた三次元計測装置の概要
!!
計測環境および計測時間
3次元写真計測システム ! ! ! !
!!
!
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
#
!!
次元写真計測システムの特長
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
#
次元写真計測システムの機能
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
#
!!
基本操作のフロー
動作環境 ! ! ! ! !
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
)
3Dレーザースキャン
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
*
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
*
!!
3Dレーザースキャナの概要
!!
3Dレーザ計測のフロー
参考文献
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
*
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
ホログラフィ干渉計測
!
ホログラフィ干渉の原理 ! ! ! !
レーザホログラフィ装置の概要
!
実験方法概要
!
参考文献
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
電子スペックルパターン干渉計測の原理および性能照査
!
!
!!
!!
!
*
電子スペックルパターン干渉の原理
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
電子スペックルパターン干渉法による計測の概要
計測理論 ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
!!
#
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
)
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
)
目 次
レーザストレインアナライザーの仕様
!
計測性能の照査 ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
分布図 ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
!!
!!
応力・ひずみ照査 ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
参考文献 ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
!!
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
*
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
*
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
*
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
光学的計測による変形・ひずみ・応力計測
薄肉曲面板の三次元形状計測と 自由振動解析
!
!
!
!
!
!
!#
研究背景 ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
薄肉曲面板の三次元形状計測 !
形状計測概要 ! ! ! ! !
!!
!!
接触式計測概要 ! ! ! !
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
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#
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#
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
)
レーザ計測概要
カメラ計測概要
計測精度 ! ! ! ! ! ! ! !
解析概要 ! ! ! ! ! ! ! !
実験概要 ! ! ! ! ! ! ! !
解析及び実験結果 ! ! !
考察 ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
)
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
*
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
ホログラフィ干渉法の欠陥検知への適用可能性追及
!
!
!
研究背景 ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
試験概要 ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
!!
試験体および治具 ! ! ! !
!!
試験体 ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
!!
試験方法概要 ! ! ! ! ! !
解析概要 ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
!!
目視によるノイズの除去
!!
座標データの均一化 ! !
!
!
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! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
#
メッシュ分割図の作成 ! ! ! ! ! !
今後の課題 ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
!!
振動実験および固有振動解析結果の比較
!!
平面板試験体 ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
!!
切欠き試験体 ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
切欠き試験体 ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
!!
!!
切欠き試験体 ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
!!
切欠き試験体 ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
結論 ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
!!
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
#
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
#
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)
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)
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
*
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! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
有孔板および切欠板の引張試験における 計測
#!
#!
#!
単一孔を有するアルミ板 ! ! ! !
切欠きを有するアルミニウム板
複数の孔を有するアルミ合金板
#!!
ボルト継手の設計 ! ! ! !
ボルトの配置 ! ! ! ! ! !
#!!
#!!
まとめ ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
#
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
)
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
)
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
)
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
目 次
参考文献
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
はりのひび割れ発生・進展状況の可視化
)!
)!
)!
)!
)!
モルタル供試体を用いた 点曲げ試験 ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
供試体による曲げ試験 予備試験 ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
破壊形式に注目した 供試体の曲げ試験 ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
)!!
の 試験体
! ! ! ! ! !
)!!
の 試験体の実験結果
)!!
の 試験体 ! ! ! ! ! ! !
)!!
の 試験体の実験結果 !
せん断スパン比の異なる はりの載荷試験 ! ! ! ! ! ! ! ! !
)!!
試験概要 ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
試験結果 ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
)!!
)!!
せん断耐力算定式との比較・検討 ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
まとめ ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
#
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#
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
#
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
#
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
#
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
#
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
#
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
#
矩形張力膜のリンクル計測
*!
*!
*!
*!
はじめに ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
の膜材への適用性の検討
*!!
ひずみ値の照査 ! ! ! !
ひずみ分布照査 ! ! ! !
*!!
リンクル現象の面内変位計測 !
*!!
実験概要 ! ! ! ! ! ! ! !
*!!
実験結果 ! ! ! ! ! ! ! !
考察およびまとめ ! ! ! ! ! ! !
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
##
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
##
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
##
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
#)
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
#*
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
#*
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
#*
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
)
複合積層板の自由振動特性
はじめに ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
! 解析手法 ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
!! 積層板の基礎微分方程式 ! ! ! ! ! ! !
!! 離散化グリーン関数
! ! ! ! ! ! ! ! !
!! 積分定数と境界条件
! ! ! ! ! ! ! ! !
!! 固有振動数方程式 ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
! 実験および解析結果
!! 試験片 ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
!! アルミ合金板の結果
! ! ! ! ! ! ! ! !
!! クロスプライ積層板の結果 ! !
!! アングルプライ積層板の結果 !
! まとめ ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
参考文献 ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
!
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
)
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
)
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
)
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
)#
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
))
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)*
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*
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
*
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! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
*
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*
レジンコンクリートの硬化収縮過程のひずみの可視化
!
!
!
!
!
!
はじめに ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
コンクリートの硬化に伴なう収縮挙動 ! ! ! ! !
レジンコンクリート ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
レジンコンクリートに使用する複合材料,骨材
レジンコンクリートの硬化特性 ! ! ! ! ! ! ! !
実験概要 ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
*#
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
*#
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
*#
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
*)
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
**
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
**
目 次
!#
考察
参考文献
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! 落橋防止構造の連結板の接触圧分布
!
はじめに
!
予備解析概要
!
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !!
解析モデル
!!
予備解析結果
実験概要
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !!
実験方法
!!
実験および解析結果
!
本解析概要
!
破断状況
!
考察
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! *
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! *
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! *
圧縮荷重下におけるぜい性固体の巨視的せん断破壊メカニズム
!
はじめに
! !
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! を用いた単軸および二軸圧縮実験と考察
圧縮力を受ける平板内の平行き裂群の二次元解析
参考文献
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! 切欠試験片の圧縮せん断破壊挙動の粒子法に基づく数値シミュレーション
!
著言
! ,
!
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! #
の概要
基礎方程式
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! )
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! *
!!
質量保存則
!!
運動量保存則
!!
状態方程式
!!
構成式
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! *
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
平滑化関数
!
計算手順と時間積分
!
圧縮破壊試験と数値解析の結果
!#
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !!
圧縮破壊試験
!!
,
結言
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! による圧縮破壊のシミュレーション
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! 溶接部に存在する内部き裂が鋼材表面のひずみに及ぼす影響
!
はじめに
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! #
!
解析概要
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! #
!!
解析モデル
!!
表面ひずみの評価
!
解析結果と考察
!
まとめ
参考文献
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! #
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! *
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! *
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! 目 次
平和祈念像の3次元形状計測とFE解析
!
はじめに
!
3Dレーザースキャンによる実測
!
!
!
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !!
3Dレーザースキャナの概要
!!
現場計測から3Dレーザ計測データ活用の流れ !
計測データ処理ソフトウェア('
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! 3%
)
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! #
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! *
!!
特徴
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! *
!!
機能
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! *
!!
ワークフロー例
!!
動作環境
!!
パッケージ内容
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! 3D計測データの処理およびFEメッシュの作成
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !!
点群データの作成
!!
表面 次元点群データの作成(点群データの合成)
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !!
3次元サーフェイスデータから メッシュの作成
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !!
まとめ
参考文献
解析
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! #
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! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! )
歯のCT画像からFEモデルの作成
#!
はじめに
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! *
#!
歯の構成
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! *
#!
CTスキャンの原理
#!
CT画像からのモデル作成
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! #!
#!!
画像の取得方法
#!!
データからの 次元デジタル画像の作成
FE解析
#!
!
#!
!
#!#
あとがき
参考文献
解析モデルの構築
解析概要
考察
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! #!
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! *
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! 応力・ひずみ測定法
!
!
!
応力・ひずみ測定法の種類と特徴
!!
点測定
!!
全視野測定
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! #
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! #
電気抵抗線ひずみ計
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !!
電気抵抗ひずみゲージの原理と構造
!!
ひずみ測定の実際と特徴
結晶回折法
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !!
線応力測定の原理
!!
線応力測定の実際と特徴
!!
中性子応力測定法
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! #
放射光応力測定法 ! ! ! ! !
! 光学的測定
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
!! 光弾性法 ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
!! モアレ法 ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
!
熱弾性法 ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
!
! 熱弾性効果
! ! ! ! ! ! ! !
!
! 赤外線応力測定装置
! ! !
!
! 応力分布測定例 ! ! ! ! ! !
!
!
赤外線応力測定技術の進展
参考文献 ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
!!
欠陥検査法
欠陥の種類と検査法 ! ! ! ! ! ! !
!!
欠陥の種類 ! ! ! ! ! ! ! !
欠陥の検査法 ! ! ! ! ! ! !
!!
! ラジオグラフィ ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
! 超音波法 ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
超音波の伝播特性 ! ! ! ! !
!!
!!
電磁気的手法 ! ! ! ! ! ! !
! ! ! ! ! !
!!
渦流探傷法
!!
赤外線サーモグラフィ法 !
!!
プラント保守への適用
参考文献 ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !
!
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! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! )
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! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! *
! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! *
第章
序論
研究の背景
研究代表者らは,表 ! に示すように,膜・シェルからなる大空間構造,大規模 解析, 次元形状計
測,ホログラフィ干渉計測,非破壊検査法,メンテナンス技術などをキーワードとして研究を進めてきた.
∼ の奨励研究では,自重を支配荷重とする構造物の合理的設計を目的として, 形態抵抗による曲げ
応力の排除, 主部材へのプレストレスの導入, 高性能な構造要素や部材の使用,などの技術を応用し
た研究を実施した.アーチやシェルは上記 の形態抵抗による曲げ応力を排除した構造である.このよう
な形態構造をさらに合理的に設計するために,タイドアーチを対象としてプレストレスを導入した場合,お
よび積層偏平シェルの構造特性について検討しその有効性を明らかにした.
の基盤研究 では,前記 の「高性能な構造要素を使用して合理的設計法」を追求するために,新
素材,高耐久性材料を用いた 構造の力学的特性に関して検討した.実験・解析の結果,最適にひび割
れ誘導目地を設置することによりひび割れコントロール設計できることが確認された.また,この研究を
通して,? などの損傷診断などの新しい研究テーマが生まれた.この研究が耐久性,維持管理,非
破壊検査についての研究に着手するきっかけとなった.
表
!
本研究課題と関連する従来受けた科学研究費および財団助成費
年度
研究助成名
平成 年度
科研 奨励研究 研究テーマ
面内曲げと圧縮力を受ける矩形板の耐力と変形に関する研究
平成 年度
科研 奨励研究 偏平シェル構造の極限強度特性に関する研究
平成 年度
科研 奨励研究 プレストレストタイドアーチ構造の耐荷力特性に関する研究
平成 #∼* 年度
科研 基盤研究 展開
高耐久性埋設型枠接合部をひびわれ誘導目地とした 構造物のひびわれ解析
平成 ∼ 年度
科研 基盤研究 展開
平成 ∼
年度
科研 萌芽研究
スペックルパターン干渉法によるコンクリートの硬化・劣化過程の動的全視野ひず
#
平成 年度
科研 萌芽研究
)
平成 * 年度
長崎大学教育改善推進費
*
平成 年度
能村膜構造技術振興財団
次元形状計測による境界適合型 次元ソリッド・シェル複合解析システムの開発
み計測
3Dレーザ及びスペックル干渉を用いた光学的手法による全視野変位・ひずみ計測
構造解析技術の医学分野における骨粗鬆症の力学への応用に関する研究
膜構造の 形態測定装置の開発とニューラルネットワークを利用した複合膜構造
の構造特性推定法 平成 年度
海外研究開発動向調査
ロングスパン・スペース構造の設計法と橋梁構造物の耐久性及び補修・補強設計法
に関する調査研究
第 章 序論
以上のように,研究代表者はアーチ・シェル構造と新素材とを組み合せた構造解析を中心に研究を行っ
てきた 上記 ∼ が,土木学会・鋼構造委員会「ロングスパン・スペース構造研究小委員会」に参画して
ケーブルや膜構造に興味をもった.どちらも張力構造で初期張力の導入が前提条件となり,形状決定が最
重要事項である.現在,形状決定問題は数値解析的に最適形状が決定される研究が行われているが,ドイ
ツの !
;%
は模型実験により膜構造の研究を進め,ミュンヘンオリンピック膜構造を建設している.こ
のことに注目して,膜構造の最適形状を決定するために,写真測量技術と現在のコンピュータ周辺機器と
解析ソフトを組合せたシステムを構築する研究に着手した.
その成果として の基盤研究 では,レーザ光線と カメラを用いた可搬・非接触型の 次元計測
装置を開発した.また,その応用として,コンクリート表面粗度と付着特性,薄肉円錐曲面板の計測・解
析,張力膜のしわ計測,大規模建造物である平和祈念像などの 次元計測を実施した.膜構造の研究が進
んでいる建築分野の研究室 東京大学生産技術研究所川口研究室 を訪問したところ,張力膜のしわの発生
の研究が行われていたが,しわ計測に ∼ 時間かけて測定されていた.これを契機として,試作開発した
スリットレーザ三次元計測装置によりしわの発生の計測を行うべく共同研究を推進することにした.また,
長さ基準による校正手法を用いて長崎市平和祈念像の 次元計測を実施した.本法で大規模建造物の 次
元座標情報を取得できることを確認するとともに,その技術の有効活用法について検討することにした.
さらに,平成 * 年度に医学部放射線医学科の伊東昌子先生からラット骨のマイクロ スキャンデータ
の3次元画像化についての依頼を受けた.当時伊藤先生が,
「今後の医学部分野の研究のキーワードは 次
元化」と話しておられたことを克明に思い出す.断面積 × 長さ のラットの骨の スラ
イスの データを用いて3次元画像を作成し,この3次元データを有限要素解析のデータに修正して ソリッド要素を用いて応力解析を行った.この研究が大規模有限要素解析に取りかかるきっかけとなり,研
究室のコンピュータの高性能化を図ってきた.現在 万自由度のモデルを解析する能力を有するシステ
ムを所有しており, 次元立体非線形解析などに適用している.
画像
メッシュ作成
汎用コードによる解析のシステムを構築したが,立方体メッシュでは
ギザギザの処理に大容量メモリが必要となり,何らかの工夫が必要である.現在,構造解析においてソル
バーやポストプロセッシングはほぼ完全に自動化されており,計算機の急速な高速化と相俟って極めて短
時間でできるようになっている.有限要素解析において,現在最も労力を要するのが解析モデルの作成で
ある.ハードウェア, 汎用コードなどのソフトウェアの進歩にプリ処理技術が追いついていないよう
に思われる.平成 **) 年 月 * 日に東京大学工学部大坪英臣先生の特別講演会「三次元 解析
の最近の話題」を長崎大学で開催し, 次元ソリッド解析を行うのにボクセル情報を利用するときわめて
効率的であることを知った.この研究を契機として,3次元形状を直接計測して得られる座標データ,ま
たは, 次元データを重ね合わせて得られる三次元データをもとに 解析のための自動要素分割を行う三
次元構造解析システムの開発の研究に取りかかった.
コンピュータのダウンサイジング化に伴ない汎用構造解析ソフトウェアが比較的安価に購入できるよう
になり,それを用いて大規模な構造物や複雑な構造の非線形解析が行なわれ,実験の補填となり得るよう
にもなった.この傾向は,ハードウェアの向上がますます進歩する昨今の状況を鑑みると,コンピュータ
の高速化と大容量化はますます進歩していくと考えられる.このように,コンピュータのハードウェアや
ソフトウェアの進歩にはめざましいものがある.直線や平面,あるいは関数表示できる球や回転シェルな
どの曲面形状は, 解析のための要素分割は,汎用コードのプレプロセッサなどを用いて比較的簡単に
行うことができ,解析結果もポストプロセッサにより短時間にグラフ作成ができるようになった.しかし
ながら,任意曲面形状に対する要素分割は,前記の平面や曲面に比べるとそれほど簡単に作成することが
研究目的
できない.例えば,船の衝撃解析では,要素作成に ヶ月を要したと報告されている.
一方, 次元計測により得られた 次元座標情報を用いた 解析結果を検証するために,現有設備で
あるホログラフィ干渉計測装置を用いた時間平均法による振動モードと比較した.両者の結果はよく一致
することが確認された.また,ホログラフィ干渉計測は光の波長程度の小さな変形や変位・振動状態など
を精度よく測定することができることを再確認した.しかし,大変形やしわが発生する場合は,時間平均
法ではなくリアルタイムで計測する装置が必要となることが判明した.以上により,リアルタイムのホロ
グラフィ干渉計測法について再検討するきっかけとなった.
ホログラフィは古くから用いられているが,比較的規模の大きな装置を必要とすること,またホログラ
ムの記録媒体として写真フィルムを使用するため記録と再生の間に時間を必要としリアルタイム計測がで
きないなどの理由により,非破壊検査としてはあまり用いられていなかった.しかし,最近,コンピュータ
や周辺機器の高性能化と低価格化,およびホログラフィ像や高解像度の カメラによる画像の数値処
理技術の進歩により, 線透視法,サーモグラフィ,超音波などの非破壊検査法以上になるとも言われて
いる.なぜなら,大面積 数 物体の欠陥 接着切れ,き裂,不均一 の直接的・全体的な可視化,被検
査面に特別の処理を必要とせず,被検査物体への作用がないこと,空間的高解像力,高感度,パルスレー
ザによる現場計測,自動化が可能な容易な操作などの利点があるためである.最近,ホログラフィ技術が
自動車・航空機産業の分野で非破壊検査や振動計測に用いられるようになっている.
以上に鑑み,現有ホログラフィ装置のコンピュータ化・自動化・デジタル化を図り,実時間計測する方法
について検討した結果,実時間レーザホログラフィ装置に代わる技術として,ホログラフィの関連技術で
あるスペックル干渉計測に注目した.スペックル干渉計測は受光器に カメラを使用するもので,光
学系がホログラフィ干渉計測と比較して簡便であること,可視光線下での計測が可能なこと,リアルタイ
ムに近い計測が可能であること,などの特徴を有している.本研究では,レーザー光を用いた3D形状計
測,レーザーホログラフィ干渉計測,レーザースペックル干渉計測の光学的計測技術と大規模 解析を
用いて, などの複合構造,膜構造,鋼構造,およびコンクリート構造の欠陥検知と非破壊検査への応
用可能性について追求していくことにした.
研究目的
申請者らは,数年来,膜・シェル構造の形状計測のために,レーザ光と安価な カメラを用いた可搬
型・非接触 次元計測装置を試作開発するとともに,それにより得られる膨大な 次元座標情報を用いた
大規模 ソリッド・シェル要素解析を実施するために
,,
大学よ
り提供 の汎用非線形 コードを導入整備してきた.さらに, 解析結果の信頼性と精度を検討す
るために,曲かりかつねじれた曲面板の振動実験を行ない,共振周波数とホログラフィ干渉計測装置を用
いた時間平均法による振動モードと比較検討してきた.本研究ではこれまでの研究成果を踏まえ,以下の
点に注目した研究を行なった.
柔らかく変形しやすい膜構造の構造特性を解明のためには,時々刻々変化する形状や応力などを非接
触かつリアルタイムで計測する必要があるが,これまでこのような計測技術の不備が膜構造の研究の
発展を妨げてきたと考えられる.本研究では,まず,非接触 計測装置を用いて円形,矩形,三角
形張力膜のしわ計測実験を実施するとともに, による分岐座屈解析を行い,膜面のしわ発生の
メカニズムを解明する.
膜面のしわを考慮した面外振動特性の解明には,しわの高さや発生間隔の情報は不可欠である.しわ
第 章 序論
の高さや発生間隔は前記の非接触 装置で計測できる.さらに,本研究ではしわが発生した膜の振
動性状を解明するため,非接触計測の一つであるホログラフィ干渉計測を用いて,振動モードを計測
する.その際,現在の時間平均法によるホログラフィ干渉計測を実時間法ホログラフィ計測ができる
システムに改良する.
繊維強化プラスチック は,任意形状に成形でき,アングルプライ積層材など異方性を効率よ
く利用できるテーラーメイド材料である.本研究では,複雑な形状と異方性をもつ 構造材の構
造特性を明らかにするために,まず上記の《 次元計測
ソリッド 解析》とホログラフィ干渉
C
計測を用いて振動性状の解明を行ない,解析と振動実験結果の比較によりモデル化の妥当性を検証す
る.モデル化が妥当であれば,任意荷重,任意の境界条件を有する構造系の応力・変形解析へも容易
に拡張できる.
上記の実験を行なった後,試験片に人工的な欠陥を与え,ホログラフィ干渉計測により振動数,振動
モードの変化を調べ, 材などの付着切れ,鋼材の疲労き裂,コンクリートのひび割れなどの欠
陥を検知するための非破壊検査法として,ホログラフィ干渉計測の適用可能性について検討する.
大規模建造物に対する長さ基準を校正手法として用いて,効率のよい 計測アルゴリズムも構築
する.
当該分野におけるこの研究の学術的な特色・独創的な点及び予想される結果と意義
張力膜構造は大空間構造の一構造形式であるが,膜構造は薄く柔らかく,曲げおよび圧縮に抵抗しない
ため,しわが発生する.しわの発生は膜構造の力学性状および美観に影響を与えるため,しわ発生時の応
力状態および変形状態の解析,しわ発生の予防・制御問題が重要な課題となる.このような研究は,建築学
の大空間構造分野と構造軽量化が要求される航空・宇宙工学の分野で研究が進められている.しかし,非
接触で高速・高精度に計測できる装置がなかったため,柔らかく変形しやすい特性をもつ膜構造の形状や
応力計測を困難なものにしてきた.本研究は, 次元計測をレーザ光と カメラを用いた装置により,
また,振動モード計測をレーザホログラフィ干渉計測により,いずれも非接触計測法で行なうことが特色
である.本研究で開発製作する 次元計測装置C ソリッド・シェル解析,およびホログラフィ干渉計
測によると,膜構造だけでなく,上記 に記述したように,複雑な形状と異方性をもつ 構造材の
構造特性の解明にも有効となる.
また,現在,社会基盤構造物の維持管理・補修補強が技術・研究開発のキーワードとなっており,種々
の先端的な非破壊検査法の研究が進められている.ホログラフィ干渉計測は,光の波長程度の小さな変形
や変位,振動状態などを精度よく測定することができる.ホログラフィを利用した非破壊計測技術は,
大面積 数 物体の欠陥 接着切れ,き裂,不均一 の直接的・全体的な可視化が可能,
被検査面に特別の処理を必要とせず,また被検査物体への作用がない,
空間的高解像力,高感度,パルスレーザによる現場計測,自動化が可能,
などの利点があるため, 線透視法,サーモグラフィ,超音波などの非破壊検査法以上になるとも考えら
れる.
これまで非破壊検査技術として,放射線透過,サーモグラフィ,レーダー,超音波,衝撃弾性波, に
よる試験など多数開発されているが,トンネルのコンクリート片剥落事故や高速道路の鋼製橋脚溶接隅角
部の疲労き裂発生などを契機として,効率的な面探傷技術の開発が望まれている.非冷却型赤外線サーモ
グラフィはコンクリートの面探傷技術としては有望視されている.
国内外の関連する研究の中での当該研究の位置づけ
一方,構造物に生じる変位・ひずみ・応力などを測定するホログラフィ干渉法,スペックル干渉法など
の光学的測定法は,
高精度であること,
4
非接触計測が可能であること,
7
高速化が可能であること,
3 次元の面データとして全視野計測が可能であること,
など多くの利点を有している.また,画像処理技術などのデータ処理法の発達により,これらの光学的測
定法は,より使いやすく,信頼性の高いものとなっている.種々の構造物の複雑化が進む中で,これらの光
学的測定法を検査などの信頼性評価に用いるだけでなく,計算力学と組み合わせて用いることにより,よ
り信頼性の高い強度評価を行うことができる.
受光器に カメラを使うスペックル干渉計測は,今のところ カメラの記録媒体は ∼# 程度
の分解能で,ホログラフィには 以下の分解能を必要とするので使えない.しかし,将来的には高解像
度機器が開発され,微細なマトリックス状の感光媒体で実時間でホログラムを記録・消去が可能となるも
のと考えられる.そうなると,空間に 次元のホログラフィー像をコンピュータで作り出すことができる
ようになり,さらに精度の向上が図れる.
国内外の関連する研究の中での当該研究の位置づけ
ホログラフィ装置は航空機産業や自動車産業などの大規模な企業や研究機関で使われている.将来的に
は高解像度 カメラで実時間でホログラムを記録できるようになり,空間に 次元のホログラフィ像
をコンピュータで作り出すことが可能となるものと考えられ,中小の企業や研究機関でもホログラフィが
使われるようになってきている.土木工学の分野への適用可能性も大いにあるものと考えられる.
また,非接触 次元計測に関しては,今年度の土木学会年次大会において「土木分野におけるデジタル
画像の利用と可能性」というの共通セッションが取りあげられているように,この分野の関心は土木工学
の ∼$ 部門を問わず関心が高い.研究代表者らが試作開発した 次元計測装置に関して,大学や企業の
研究者からの問合せや訪問を受けている.
さらに,光学的実験計測法は,最近のイギリス機械学会 "!
での 金属
#(* #( -! -&! -! +0! ( **)
や金属
特集でも取り扱われている.また,欧米主導で光学的全視野応力・ひずみ計
測の国際標準化が進められており,わが国でもこれに対応するため, 年に日本実験力学会に全視野計
測法標準化分科会が設置されている.また,平成 年度の土木学会年次講演会での $ 部門では,
「非破壊
検査・診断」セッションが つ設けられており,活発な研究発表がなされていたが,光学的ひずみ計測法
による研究はなされていない.
本研究で実施した研究内容
本研究では以下のような研究を実施した.本報告書は,以下に示すように, 形状計測とホログラフィ
干渉計測及びその関連技術であるスペックル干渉計測を用いた計測法について述べるとともに,それらの
計測法を用いて,鋼,,コンクリートなどの種々の材料で構成される膜・シェルをはじめとする構造
部材の構造特性と非破壊検査への適用性について得られた結果をまとめたものである.
! 次元形状計測
第 章 序論
!
ホログラフィ干渉計測
!
スペックル干渉計測
!
薄肉曲面板の 次元形状計測と 自由振動解析
!
ホログラフィ干渉計測法の欠陥検知じへの適用可能性追及
!
有孔板および切欠板の引張試験における 計測
#! )!
はりのひび割れの発生・進展の可視化
矩形張力膜のリンクル計測
*! 複合積層板の自由振動特性
!
レジンコンクリートの硬化過程の収縮ひずみ計測
!
落橋防止構造の連結板の接触圧分布
!
圧縮せん断破壊メカニズムの解明
!
溶接部に存在する内部き裂が鋼材表面のひずみに及ぼす影響
!
平和祈念像の3D計測とFEメッシュ作成
!
歯のCT画像から 次元FEモデルの構築
第部
光学的計測装置
#
9
第 2 章 3 次元形状計測
第2章
3次元形状計測
本研究においては,対象物の表面形状を非接触で計測するにあたり,当研究室で試作開発したレー
ザ光を用いた3次元計測装置,デジタルカメラによる3次元写真計測システム,中長距離用レーザース
キャンシステムを使用した.
本章では,まず3次元計測の基礎について概説し,つづいて使用した3次元計測器について概要を
示す.
2.1
3次元計測の基礎1)
(1)三角測量
土木工学分野のの測量でごく普通に用いられるもので,三角形の原理を使って離れた地点との距離
を計測する手法を三角測量という.具体例として,ある 2 点間の正確な距離が分かっている場合,そ
の 2 点から離れた場所のある地点との距離は,その 2 点との角度が分かれば「三角形の一辺とその両
端角が分かれば三角形が確定する」という性質によって確定することができる(図 2.1).
例えば木の高さを測りたい時に(図 2.2 参照)
,木から少し離れた場所に立ち,その木との距離と,
その場所から木のてっぺんを結んだ線と地表の角度が分かれば,木の高さを計算できるが,これも三
角測量の応用である(木と地表の角度は 90°とする).
この三角測量の原理を利用することによって,離れた場所にある物体の三次元的な形状を測定する
ことが可能になる.
図2.1 三角測量の概念図
図2.2 木の高さの測量
10
第 2 章 3 次元形状計測
(2) ピンホールカメラの原理
ピンホールカメラは,針先のような小さい穴(ピンホール)を使って光を通し,一定距離の先にあ
るフィルムや印画紙などの感光材の上に像を映し出す仕組みのカメラである.
物体に太陽光などの光が当たると,いろいろな方向に光が反射される(散乱)
.ここで一つの箱を用
意し,その外側にピンホールを置くと,箱の外側から入射した光はピンホールによって一つの方向の
光だけが通され,それ以外の光は箱によって妨げられる.そして箱の内側に感光材を置くと,その一
つの方向の光が感光材上に結像することになる.これがピンホールカメラによって写真が撮れる原理
である.このとき,できあがる物体の像はちょうど 180°反転した像になる.
ピンホールカメラによって結ばれる像と実際の物体の座標の関係を示すと図 2.4 のようになる.
ピンホールカメラでは,平面Iが感光材のある面,距離 f はカメラの箱の奥行きとなり,平面 I と平
行な面 F にピンホールを空けて撮影を行う.
平面 I 上の座標 m=(x,y)と,注目している物体の座標 M=(X,Y,Z)から,つぎの関係が成り立つ.
x= −fY/X
この関係から,焦点距離fと物体の座標 M が分かれば,平面I上の座標mを計算することができる.
図 2.3 ピンホールカメラの模式図
図 2.4 ピンホールカメラを幾何学的に見た場合
(3) レンズによる像
一般のカメラでは,ピンホールの代わりにレンズを使って像を結ばせる.図 2.5 にレンズによって
結像する模式図を示す.光はレンズを通過する際に,入射角により決まった方向に屈折して曲がるが,
このときにレンズの形状によって曲がった光がレンズの先である一点に集中して結像する.この一点
が焦点である.ピンホールカメラの場合と同じく,結像された物体像は 180°反転した像となる.
第 2 章 3 次元形状計測
11
図 2.5 レンズを使ったカメラの模式図
(4) レンズの歪み
レンズを使って結像する場合,
「歪み」による問題が発生する.図 2.6 は,縦横等間隔に点を描いた模
造紙をデジタルカメラで撮影したものである.図 2.6 から分かるように,レンズ自体の歪みによって
直線が歪んで投影され,図中で現れているように四角の形状が樽型に歪みを生じている.これを「放
射歪み」といい,周辺になるほどその歪みが顕著になります.後述するカメラを用いた三次元計測の
際にはこの歪みが精度に大きく影響するため,予めこの歪みを補正する必要がある.
図 2.6 レンズによる歪み
(5) 複数のカメラの位置関係の決定
複数のカメラを使って 1 つの対象を異なる角度から撮影した場合,一定数以上の注目点がそれぞれ
にカメラに写り,その点の座標情報からカメラの位置関係を求めることができる(図 2.7)
ところで今,点が m 個,カメラが n 台(=写真n枚)の場合を考える(図 7 の場合).このとき,n
枚の写真上の m 個の点について上記の式を 2mn 個たてることができる.
また,未知の情報(未知数の数)は 6n+3m 個(カメラの位置+方向が 6n,点の位置が 3m)となる.
現時点では,座標系の取り方は任意であるので,一つのカメラの位置と方向を基準座標とすることで
未知数を 6 個減らすことができる.また,幾何学的にスケールが不定となるから,未知数はさらに 1
つ減らすことができる.このため,未知数は,計 6n+3m-7 個となる.したがって,2mn 個の連立方程式
を解くためには,式の数は未知数の数より多ければよい.すなわち
2mn ≧ 6n+3m−7
を満たせばよいことになる.
12
第 2 章 3 次元形状計測
例えば,写真が 2 枚(n=2)の場合で考えると,上記の条件は,m≧5となって,5個以上の点が2
枚の写真に共通に写っていれば,原理的には連立方程式を解くことができ,カメラの位置関係が決定
することができる.しかし,実際には非線形性がネックとなって5点で方程式を解くことは非常に困
難です.通常の3次元計測では,8 点の対応点を利用することで対応している.
図 2.7
カメラ位置の特定模式図
(6) 2台のカメラによる物体の座標の決定
複数カメラの位置関係の決定の方法に基づいて,2 台のカメラを用いて物体を撮影し,それぞれのカ
メラの位置関係が求められているとすると,物体上のある注目点とカメラに投影される画像の関係は
図 2.8 のようになる.
注目している点がカメラ 1 に写る点とそのレンズ中心を結ぶ直線と,カメラ 2 に写る点とそのレン
ズ中心を結ぶ直線が交差する点が,目的の注目している座標として得られる.ただし,ここではカメ
ラ 1,カメラ 2,注目点を結ぶ三角形の相対的な関係が求められるだけであるので,絶対スケールを求
めるためには最低 1 カ所の実寸スケールが判明している必要がある.
図 2.8 カメラを使った 3 次元座標特定模式図
(7) エピポーラ線(補助線)
カメラ 1 と注目している点を結ぶ直線は,カメラ 2 に直線として投影される.この直線をエピポー
ラ線と呼ぶ.カメラ 2 と注目している点を結ぶ直線も,同様にカメラ 1 に投影される.注目している
点の座標が分かっていない場合,カメラ 1 に写っている点はカメラ 2 ではこの直線(エピポーラ線)
上にあることが分かる.このエピポーラ線の性質を利用して,エピポーラ線を「補助線」として表示
し,座標を求める補助手段として利用される
第 2 章 3 次元形状計測
13
図 2.9 エピポーラ線
(8) 三次元画像計測の手法
立体物の形状や三次元位置の計測を「画像」から行うことを総称して「三次元画像計測」と呼ぶが,
その手法には様々なものがある.その手法を大きく分類すると,「受動型計測」と「能動型計測」の 2
つに分かれる.受動型計測は,対象となる物体に対して,計測の補助となる特定の光や電波等を照射
することなく行う計測である.それに対して能動型計測では,三次元計測をするために光,電波,音
波などを対象の物体に照射し,その情報を利用して計測を行う方法である.表 2.1 にいくつかの計測
手法を示す.
表 2.1 3次元画像計測手法
受動型計測
レンズ焦点法
一眼レフのカメラでフォーカスリングを操作して焦点を合わせるのと同様の原理で,物体の座
標とカメラとの距離を計測する方法.ある地点でピントを合わせ,合ったところのダイアル目
盛りで距離が求まる.焦点深度の非常に浅いレンズが必要となるので,距離のある測定にはあ
まり向いていない.
ステレオ法
カメラ等を左右に 2 台並べて,三角測量の原理で計測を行う方法.カメラの配置方法によって
「両眼視」「三眼視」「カメラ移動型」などの方法がある.本研究で用いた「Kuraves-K」では
この「カメラ移動型」を応用している.
能動型計測
光レーザー法
物体に光を当て,その光が戻ってくるまでの時間によって距離画像を得る方法.
アクティブ
アクティブステレオ法ではカメラを 2 台使う代わりに,1 台を光を発する装置に置換して計測
ステレオ法
を行う.投影光の種類によりスリット光投影法*など様々な手法に分類される.
*スリット光投影法:スリット光を物体に投影した状態で撮影を行い,その光の変化の度合い
を取り出して計測を行う方法.
照度差
対象の物体に対して複数の光源を使って,光源を切り替えながら写した複数の画像から面の方
ステレオ法
向を求める方法.光源に近い物体の面の面素が明るく写ることで光源方向に傾きを計測できる
ので,これを複数得ることで立体の計測を行うことができる.
14
2.2
2.2.1
第 2 章 3 次元形状計測
試作した3次元画像計測装置
能動的ステレオ法
ステレオ画像は,左右二つのカメラから得られる画像の間で対応点を見つけて,三角測量法を適用
するものであるが,この方法では二つの画像間の対応付けに問題点がある.このため,一方のカメラ
を光に置き換えた能動的ステレオ法の研究が活発に行われ,現在種々のタイプのレンジファインダ(カ
メラなどに用いられる光学式距離計を表す言葉)が用いられている.能動的ステレオ法は,投影される
光のパターンの形で分類されるが,ここではスポットレーザ投光法とスリットレーザ投影法について
概要を示す.
(1) スポットレーザ投光法
レーザビームを対象に投影してできる輝いたスポットを異なった角度からカメラでとらえ,スポッ
トの3次元位置を求めるもので,レーザ光源とカメラとスポット位置を直線で結んで三角形をつくると
いう,三角測量の原理に最も忠実なアクティブファインダである(図2.10).
受動的計測法であるステレオ画像法では特別なスポット像は得られない.しかし,能動的スポット
投光法ではスポット像の輝度がレーザ光源のため十分に高く,簡単なピーク検出で得られるので曖昧
さは伴わない.したがって,計測法としては,信頼性の高いものということができるが,実用上の問
題は処理時間である.しかし,スポットレーザ投光法では,計測時間を短縮するために,PSD (Position
Sensitive Detector),イメージディセクタ,CCDリニアセンサなどの利用の工夫がなされている.
(2) スリットレーザ投影法
別名,光切断法とも呼ばれる最も知られた三次元画像撮影法である.スポット画像法では1枚の画像
からただ1点しか3次元位置が求まらないため,データ入力に長時間を要する.それに対してこのスリ
ット画像法 (図2.11参照)では,1回の撮像で1本のスリット光,換言すれば1枚の光シートが物体を切
断する時の切断線像が得られる.そこでスリットプロジェクタの投影方法を少しずつ変化させつつ,
観測対象を走査すれば3次元形状データが得られる.今回の計測にはこのスリットレーザ法を用いた.
図 2.10 スポットレーザ投光法
2.2.2
図 2.11 スリットレーザ投光法
ハードウェア構成
3次元計測装置としては,針を落として計測する方法やシールを貼ってその点を計測する方法など
が用いられているが,非接触型計測を目的としてレーザ光線を用いる方法を採用した.また,ステレ
オ画像法では,左右の2台カメラを用いて対応点が抽出されるが,この作業がかなり面倒である.レー
ザを用いれば,簡単な画像処理(輝点検出)で対応点を抽出することができる.さらに,スリット状の
レーザ光線を用いることで,計測時間の迅速化が図れる.
計測装置の概要を図2.12に示す.計測システムは,スポットレーザ投光器,CCDカメラ,スリットレ
ーザ用制御装置,キャリブレーション用ボード,システムコントローラ(PC)から構成されている.ス
15
第 2 章 3 次元形状計測
ポットレーザ投光器(図2.13)は,12ビット分解能のスキャナーを2軸に装着し,その先端部でアルミ製
の鏡を回転させることによって,半導体レーザを対象目標点に照査することができる.CCDカメラは,
通常市販されているもの(Panasonic製WV-PB510,有効画素数:771$¥times$492)を用いた.また,計測性
能の向上のためにバリフォーカルレンズ(WV-LZ62-8)を装着している.キャリブレーション用ボード
(図2.14)は,カメラパラメータを求めるための基準座標を指定するものである.直角に配置された3枚
の板に5cm間隔で線を引き,その交点を基準点としている.スリットレーザ制御装置(図2.15)は,2.4576
Hzのパルス信号を250KHzのパルス信号に変換し,内蔵DA変換器によってアナログ信号に変換すること
でスリットとして出力している.パソコンは,CPUはPentium II 300 MHz,メモリ 256 MB,ハードディ
スク4GBの機能をもつ.また,鏡の角度を制御するモータコントロールユニット,画像処理ボード,お
よびDA変換ボードを取り付けている.DA変換ボードは,レーザ光を出力するにはアナログ信号を送ら
なければならないので,コンピュータから出力されるデジタル信号をアナログ信号に変換するための
ものである.
この計測システムを用いることによって,三次元計測が可能となる.本計測システムではステレオ
画像法,スポットレーザ投光法,スリットレーザ投影法の3つの計測が可能である.
図 2.12 三次元計測装置
図 2.14 キャリブレーション用ボード
図 2.13 スポットレーザ投光器
図 2.15 スリットレーザ制御装置
16
2.2.3
第 2 章 3 次元形状計測
ソフトウェア構成
計測作業を円滑かつ簡単に行うため,計測操作プログラムを開発した.
OSは Windows NT,プログラム開発言語はC++を使用し,データベースソフトはACCESSを使用した.
計測用プログラムとして,以下のものを作成した.
① 計測前処理プログラム:レンズによるラスタ座標の歪み補正プログラム
② キャリブレーション操作プログラム:既知点(C.B.上の9点)の画像からラスタ座標取得機能,レー
ザ光照射角取得機能により,カメラ・レーザ位置関係パラメータ算出するプログラム
③ 自動計測操作プログラム:計測操作プログラムで,差画像抽出しきい値,スポットレーザ光移動
ピッチ,照射範囲を設定し,レーザ光の画像座標値抽出から三次元座標算出までを自動的に行うもの.
④ 計測データ表示プログラム:計測データ3次元DXF変換,サーフェイス表示,表示画面からの指定
2点間距離算出,計測データのデータベース格納を行うもの.
2.2.4
触針式三次元スキャナを用いた三次元計測装置の概要
本計測装置と比較するために,図2.16に示す触針式三次元スキャナを用いた3次元計測装置を使用
した.触針式3次元スキャナを用いた3次元計測装置の仕様を表2.2に示す.
2.2.5
計測環境および計測時間
本計測システムの性能評価を比較するため,触針式三次元スキャナを用いた三次元計測装置を使
用している.触針式三次元スキャナを用いた三次元計測装置は,計測対象物に直接接触し計測を行う
ため,高精度な三次元座標を取得できるのが特徴であるが,4万点の計測に10∼12時間かかり,計測対
象物を持ち込み計測を行うので,対象物の大きさ・重量に制限がある.それに対し本計測システムは,
計測器を移動して計測を行うので,対象物のサイズ・重量に制限がなく,4万点の計測も80秒程度で行
える.以上のことから,本計測システムの実用性に関して十分有効であると言える.
本システムの計測速度は,5000点の座標値の計測時間は,自動スポット計測で40分以内,自動スリ
ット計測で10秒以内であった.なお,スリットライン移動ピッチは0.25mmである.
表 2.2 触針式3次元スキャナの仕様
最大スキャン領域
X軸方向304.8mm,Y軸方向203.2mm,Z軸方向60.5mm
テーブル積載最大荷重 5 kg
センサー
ローランドアクティブピエゾセンサー(R.A.P.S.)
プローブ長さ64 mm,先端球形半径 0.08mm
スキャン方式
接触型,メッシュポイント高さ検出方式
スキャンピッチ
X/Y軸方向0.05∼5.00mm(0.05mm刻みで設定),Z軸方向0.025mm
動作速度
XY軸は30mm/sec,Z軸は9mm/sec
書き出しファイル形式 DXF,VRML,STL,3DMF,グレースケール,BMP,点群.
外形寸法
重量(本体のみ)
478 mm (W) $¥times$ 465 mm (D) $¥times$ 341 mm (H)
11 kg
第 2 章 3 次元形状計測
17
図 2.16 触針式 3D 計測器
2.3
3次元写真計測システム
3次元計測の現場計測の適用性を追及するため,デジタルカメラを用いた3次元写真計測システム
を導入した.これはデジタルカメラから取り入れた2枚以上の画像データ(写真)をもとに,様々な
対象物を3次元デジタルデータ化できるソフトウェアである.近年,特に高解像度デジタルカメラの
普及とパーソナルコンピュータの高速化により,写真計測が身近なものになってきた.計測結果は3
次元データとして作成されるため,物体の長さや面積,体積,断面図など様々な目的用途で活用する
ことができる.
2.3.1
•
3次元写真計測システムの特長
計測専用カメラ不要
高価な計測専用カメラは必要なく,市販デジタルカメラが使用できる.レンズ歪み補正ツールを
標準装備しているため,どの機種でも計測可能.
•
計測点不要
撮影画像にスケールが写っていれば(写っていなくても撮影間距離や対象物までの距離でも可能)
,
スケール付きの3次元データが生成される. 撮影位置などの面倒な事前計測はまったく不要.
•
ユーザーフレンドリー
カメラ撮影やパソコンなど一般的な操作ができれば誰でも簡単に取り扱える.特殊な技術を必要
としない.
•
ビジュアル化
撮影画像をもとにした測定結果や,三次元シミュレーション機能の充実により,ビジュアル化が
可能.
2.3.2
•
3次元写真計測システムの機能
カメラレンズ歪み補正機能
市販デジタルカメラの場合,個々に持っているレンズ歪みを補正する必要がある.簡単に補正値
を求められる専用漂定用紙とカメラレンズ歪み補正ツールを付属してある.
•
自動対応点処理
必要なライン上や格子状に切った面を自動対応付けできる機能が充実. パターンパッチング手法
18
第 2 章 3 次元形状計測
を用いて自動的に対応点が生成されるため,数千点の三次元計測が瞬時に実施可能. 本システム
の最も自動化された機能の一つで,各種補助処理機能も充実している.
•
測量点登録機能
公共座標系に変換したり,変位計測の目的で定点を固定したりと,測量器など別装置で計測した
測量点を入力し,活用することができるように設計されている.
•
オルソ画像三次元表示機能
求積機能で三角網を生成した対象物は,三次元表示機能で回転,縮小,視点等を変更しながら自
由に観察することができる. 対象物の形状確認や対応点入力の間違い検出,GIS 等へのオルソ画
像出力,また,等高線等(DXF)の外部のデータをインポートし,写真との同時表示・出力も可能.
•
等高線・縦横断作図機能
等高線の高さや出力範囲設定をすれば,その場でコンタ図を作成することができる.また,そこ
に線を入れれば簡単に縦横断図が生成される.
•
体積計算機能
土砂量や,穴の容積など切り取る場所を指定すれば体積計算することが可能. また,計画図や前
況を入力すれば,現況と比較し,その盛り量や切り量を現地の切盛シミュレーションとともに確
認し,把握することもできる.
•
複数画像接続機能
作成されたデータ間を関連付け,複数の写真を接合するツールが準備されている.広域計測,立
体計測ほか室内計測などにも便利なツール.
2.3.3
基本操作のフロー
3次元写真計測システムの基本操作のフローは以下の通りである.
①
写真を撮る(2 枚以上)
②
写真をパソコンにセットする
③
対応点を取る
④
スケール等の入力
⑤
自動対応点処理
⑥
結果データ出力
①写真を撮る
③対応点を取る
⑤自動対応点処理
画面上で3D表示機能による確認作業を行い,位置座標データ(X,Y,Z)を CAD 出力する.
対応点を多数作成することでより細かな表面形状を表現できる.
図 2.17 3次元写真計測システムの基本操作のフロー
19
第 2 章 3 次元形状計測
表 2.3 3 次元写真計測システムの用途
用
必要項目
途
長さ,表面積,体積計算
縦断図,等高線,鳥瞰図
公共座標系
点間距離*1)
○
○
−
*2)
垂直水準
−
○
−
測量点
−
−
○
*1) 2 枚以上の写真に長さが特定できるものが写っていること.撮影間距離,対象物間距離でもよい.
*2) 2 枚以上の写真に垂直水準が写っていること.三脚でも良い.
2.3.4
動作環境
表 2.4 に 3 次元写真計測システムの動作環境を示す.
表 2.4 3 次元写真計測システムの動作環境
項目
動作環境
デジタルカメラ
200 万画素以上
OS
Windows*1) ME/XP/2000
CPU
Pentium
300MHz以上
メモリ
128MB 以上
画像解像度
800×600 以上
表示色
1670 万色
CD-ROM ドライブ
必須(インストール時)
プロテクトタイプ
USB キー
2.4 3Dレーザースキャン
2.4.1 3Dレーザースキャナの概要
3Dレーザースキャナは,レーザーによる計測対象物とセンサーの間をレーザパルスが往復する時
間を計測することで距離を計測し,同時にレーザービームを発射した方向を計測することで,計測対
象点の3次元座標を取得するものである.
測定原理は,レーザーが測定対象物で反射して帰ってくるまでの時間から距離を算出し,またレー
ザーの移動方向角度から角度を算出し,この距離・角度情報から3次元位置情報を求めている(図2.18).
3Dレーザスキャナの性能を表2.5に示す.また,3Dレーザスキャナで長崎市平和祈念像の計測風景
の写真を図2.19に示す.
現在,3Dレーザスキャナは,金型など工業製品の規格検査用には極めて精密な計測が可能な超短
20
第 2 章 3 次元形状計測
距離計測用から,やや精度の劣る長距離計測用など様々な機器が存在する.これらのうち,文化財計
測に有効と考えられる近・中∼長距離計測が可能なタイプの代表的な機器について,その諸元を表 2.6
に示す.現在,一般的に入手可能なこれらの3Dレーザスキャナの代表的な相違点は,①計測距離(数
m∼1000m 程度まで) ②計測精度(数 mm∼数 cm) ③スキャン範囲などである.3Dレーザスキャナ
を使用して計測を行う際には,対象までの距離,対象の規模・大きさ,必要な位置精度などを考慮し,
適切な機器を選択する事が必要である.
2.4.2 3Dレーザ計測のフロー
本研究で使用した3Dレーザースキャナーによる計測のフロー図を図 2.20 に示す.本計測器を用い
ると,極めて短時間に大型建造物の3次元デジタル座標情報を取得することができる.
図 2.18 3Dレーザースキャナの測定原理
図 2.19
3Dレーザースキャナによる平和祈念像の形状測定
21
第 2 章 3 次元形状計測
表 2.5
3Dレーザースキャナの性能
ILRIS-3D(オプテック社)
測定範囲
スキャンニング角
10∼350m(350mの反射率4%)
∼800m(800mの反射率20%)
垂直±20°×水平±20°
スキャンニング速度
2000 ポイント/秒
レーザー波長
1540nm(近赤外)
レーザー強度
クラス1
レーザー間隔
0.025°(最高0.0014°)
スポットサイズ
13mm(5m の時)
測定精度
標準±3mm(100m の時)
表 2.6 中長距離計測が可能な代表的な 3 次元計測器の種類と緒元
機 種 名
メーカー
イメージ
測定範囲
スキャニング角
/速度
レーザー波長
測定精度
測定温度条件
レーザー強度
本体重量
・サイズ
備
考
用途
ILRIS-3D
optech 社(カナダ)
Cyrex 2500
サイラ社
3∼350m(反射率 4%)
∼800m(反射率 20%)
垂直±20°
×水平±20°
2000 ポイント/秒
1540nm(遠赤外)
標準±3mm
(100m の時)
0∼40°
クラス 1
12kg
312×312X205 ㎜
3D距離画像のほかに
受光強度画像得ること
ができる。 GIS プログ
ラ ム ( 例 え ば
PolyWorks、3D スタジ
オ MAX、Terramodel、
AutoCAD、Isogen)と互
換性。 多角形の出力
(.dxf、.iv、.obj、VRML
フォーマット)が可能で
ある
文化財/土木一般/橋梁な
どの維持管理
最大 100m(最適距離 1.5
m∼50m)
垂直 40°×水平 40°最大
1000 ポイント/秒
LMS−Z210
リーグル社(ライカ)
2∼350m
(反射率 50%)
[ラインスキャン方向]
80° 1∼36 スキャン/
秒:20000Hz
532nm(青色)
905nm(近赤外)
空間単独点6㎜
標準±2.5 ㎝
(50m 以内)
最悪±10 ㎝
0∼40°
0∼40°
クラス 2
クラス 1
20.5kg
13kg
L15.8×W13.25×H16.9
435×210 ㎜
スキャニング密度を垂直 広角度で対象物をスキャ
及び水平方向それぞれに ニングし、距離や角度位
独自に設定可能。CGP 置(鉛直・水平の両軸)
ソフトウェアが内蔵さ を計測。3D距離画像の
れ、3Dモデル、点群、 ほかに受光強度画像、及
ワイヤメッシュ、シュリ び RGB も得ることがで
ンクラップ面のズームや きる。受光強度画像から
パンも自在で、自由回 地形の起伏や対象物の材
転・移動が操作中も可能。 質差などを読み取ること
が可能。
プラント、文化財他
土木一般(のり面他やや
精度が問題か?)
iQsun880
iQvolution
50cm? 76m
垂直 320°×水平 360°
120,000/秒
785nm(近赤外)
3mm/10m
0∼50°
クラス 3R/3A
13kg
w400×d160×h280mm
近距離、特に建築物の内
部を高速で計測。パルス
方式でなく、1 パルス 3
サイン波フェイスシフト
方式を採用し、1周4分
という速さ、かつ±3mm
(10m)という誤差内で
計測。陳腐化しないよう
に 4 つのパーツで拡張性
大
プラント、建物の中のよ
うなクローズドの空間を
計測
22
第 2 章 3 次元形状計測
長崎平和記念像
(基準点の設置)
3D レーザ計測(ILRIS-3D)
デジタル写真測量
現地調査
取得データの解析・処理
オルソ画像の作成
構成部材の形状・数量
損傷状況
その他痕跡など
現場作業
室内作業
点群データ
3DCG モデルの作成
面データ
(コンター図)
トレース図化
任意断面図
CAD 図
①側面図の作製
②平面図の作製
③破損図の作製
④全体平面図の作製
(高所の寸法形状抽出)
(亀裂他の抽出)
(周辺敷地形状の取得)
各項目毎に抽出が可能であったものを整理しまとめる.
側面図、断面図等の作製 写真合成図の作製
調査結果のまとめ
3Dデジタル情報の活
用
「補強工事」に向けた事前情報
補強工法検討その他
図 2.20 3D形状計測とその計測データ活用のフロー図
参考文献
1) 三次元計測の話,http://www.kurabo.co.jp/el/room/3d
2) 井口征士,佐藤宏介:三次元画像計測,昭晃堂,1990
第章
ホログラフィ干渉計測
ホログラフィ干渉法は粗面からの反射波面の振幅位相分布を記録する計測法である。粗面物体の変形前
の状態と変形後の状態を同じホログラムに記録し,これを同時に再生すると,記録された変形前後の つ
の波面間に干渉が起こり,物体変形の情報を持った干渉縞が得られる.また,振動している物体の状態を
一定時間記録すると,再生像には振動の振幅分布に対応した干渉縞が得られる.本研究では,対象物の固
有振動モード図を得る手法として,このホログラフィ干渉計測装置を採用した.
ホログラフィ干渉の原理
ホログラフィは,物体からの光の波面を記録し再生する手法である.ホログラムの記録に使用する感光
材料は,光の強度のみを記録するため,物体からの光を直接感光材料に記録するのでは位相の情報が損な
われる.そのため,レーザのようなコヒーレント 干渉性 の高い光源を用い,光を 方向に分割し互いに
干渉させ,発生する干渉縞の強度分布を感光材料に記録する.
ホログラムの記録
光源から発信されたレーザ光をビームスプリッターにより二分割し,それぞれをビームエキスパンダに
より光の幅を拡張する.一方を物体光として物体を経由した後に記録材料に照射する.もう一方を参照光
として,直接記録材料に照射する.ホログラムは二つの光の位相差をが記録されるので,光の反射によっ
て,物体光と参照光の位相がずれないようにする必要がある.
図 において,物体により回折した複素振幅の位相を持つ物体光とレーザ光の複素振幅の位相を持つ
参照光がそれぞ記録材料面上に到達する.それにより物体光と参照光が位相の重ね合わせによって記録材
料に干渉縞の強度分布として記録される.干渉縞は極めて細い周期構造をしており回折格子の作用をする.
ホログラムの再生
ホログラムとして記録された物体の像を再び再生させるためには,参照光と同一波長の光をホログラム
に照射する.この光を再生照明光と呼ぶ.ホログラムは細かい干渉縞を記録した回折格子なため,これに
光を照射すればそのまま直進する光の他に,別の方向に回折して進む光が生じる.この回折光は再生光と
呼ばれ,記録した物体光とまったく同じ形をしている.
第 章 ホログラフィ干渉計測
レーザ
ミラー
ミラー
ビームスプリッター
エキスパンダー
再生光
物体光
対象物
再生像
写真乾板
参照光
再生参照光
エキスパンダー
エキスパンダー
ミラー
図
ホログラム
ミラー
!
ホログラムの記録
図
!
ホログラムの再生
レーザホログラフィ装置の概要
レーザホログラフィ干渉計測装置の光学系を図 に,また計測風景を図 に示す.
ミラー
,+D+
レーザ
アンプ
ミラー
しぼり
スピーカー
参照光
ファンクション
シンセサイザー
シャッター
試験片
圧電素子
オシロスコープ
エキスパンダ
ビームスプリッター
物体光
ミラー
写真乾板
図
!
レーザホログラフィ干渉装置の光学系
図
!
ホログラフィ干渉計測風景
レーザホログラフィ装置の概要
表
防振台
!
レーザーホログラフィ干渉計測装置の光学系の備品
ホログラムの記録の際,明るい再生像を得るためには露光の間,干渉縞が静止し
ていることが必要である.そのため,使用する光学部品は床からの振動を防ぐ平
らなテーブル上に設置しなくてはならない.本実験は,台の足に空気の入ったゴ
ムチューブを設置することで,床からの振動を防いでいる.
ミラー
実験に用いる光学部品の配置に準じて,レーザの照射方向を反射によって変える
ためのもので,ガラス基板の面にアルミ蒸着したものを用いる.
ビームスプリッター
レーザからのビームを参照光と物体光に分るために用いる.参照光はミラーに反
射させて記録材料に照射するのに対して,物体光は被写体に反射させるため,反
射光が弱くなってしまう.そのため,ビームスプリッタで物体光を参照光に比べ
強くなるようにビームを分ける.
ビームエキスパンダ
参照光,物体光,両方のレーザの光を発散光 球面波 として広げるために焦点
距離の短い対物レンズを用いる.対物レンズの倍率や位置などで,ホログラムを
記録する際の焦点距離が変化する.通常のカメラのピントに相当する.
シャッター
記録材料の解像力,レーザ光の出力に合せて露光時間を調節するために用いる.
本実験ではシャッタースピードを 秒とした.
レーザ源
安定した出力が得られ長寿命であり,ホログラフィ用として広く用いられている
,+(+
レーザ 日本科学製 ;( 発振波長!) 出力 > を用い
る.
記録材料
<;
社製
+3
0+-0 9+
&+)#
, ,
スピーカー
1%&%'1 7
,? 社 製
'&+
,および ,;<;<#
,
,%&%'1 7
を使用
試験体の振動のために ; 社製 >) を使用した.詳細な規格はアル
ミダイキャストフレーム製の 7 ウーハー,インピーダンス )E,最低共振周
波数 ,A,入力 > である.
ピエゾ・フィルム
本実験は,試験体とスピーカーの振動波形が一致する振動数を固有振動数とし
た.試験体の振動波形を得るためにピエゾ・フィ ルム ()@ を使用し
た.<()@ は をプリントした 打抜ピエゾ・ポリマー基盤の両面に銀インク電極
の動作面積を持つ.
ファンクションシン
試験体を加振させるためのスピーカーの出力,周波数を手動で調節するための装
セサイザー
置.
オシロスコープ
試験体に貼付したピエゾ・フィルムから得た電気信号を波形として出力する.ピ
エゾ・フィルムとファンクションシンセサイザーからの波長が一致したところを
固有振動数とする.
参考文献
実験方法概要
実験は,ホログラフィ干渉計測の時間平均法を用いて撮影を行った.時間平均法とは変形前と変形後の
物体光を,同じ参照光で干渉させることにより記録できる変位分布を利用したものであり,振動の周期に
比べ十分長い時間にわたって露光させる.物体光は周期的に変化するので,記録材料には変形前と変形後
の変位分布が記録され,干渉縞を得ることができる.
振動実験を行うにあたり,治具に固定された試験体の上部後方より,スピーカーの音圧によって加振さ
せた.また,計測時の外乱を防ぐために撮影時には実験装置周辺に簡易的な壁を設置した.図 に試験
片の加振状況を示す.
図
!
固定された試験片およびスピーカー
参考文献
久保田敏弘ホログラフィ入門 (原理と実際(,朝倉書店,**
!
辻内順平ホログラフィ,裳華房
辻内順平 黒田和男最新光学技術ハンドブック,朝倉書店
高橋賞監修フォトメカニクス 工学的手法による応力・ひずみならびに変形の解析,山海堂
第章
電子スペックルパターン干渉計測の原理および性能照査
電子スペックルパターン干渉の原理
電子スペックルパターン干渉法 &+7%-
7 '+7/&+ +- -+5+%+2
以下 と略記 はホロ
グラフィ干渉法と同様に一定方向の変位等高線を観測する技術である. はレーザ光を物体の粗面に照
射すると,粗面の各点で乱反射した光波が,像面でランダムな位相関係で重ね合わさることによって,ス
ペックルパターンと呼ばれる独特の斑点模様が生じる.このスペックルパターンを参照光と重ね合わさる
と,やはりスペックルパターンが現れるが,これは物体が変形して干渉条件が変化すると,個々のスペッ
クルパターンが変化する.変形前後のスペッルパターンを カメラで撮像し,コンピュータ上で両者の
差の絶対値を計算すると,強度の相関が ,すなわち変形による位相変化が の整数倍に相当するスペッ
クルでは強度が となるのに対して,位相変化が の奇数倍のところでは相関が となり,強度差は最大
値をとる.このようにして,全視野にわたる変形分布を,光波長を基準とする等高線として描かせること
ができる.
には, 光波長を基準とする高感度全視野計測が可能であること, 非接触計測法であり,試験
片に対する前処理は一切不要であること, 光学系の選択により,面外変形,面内変形,これらの空間微
分などの解析が可能であること,などの特徴をもつ.
本研究で用いた の光学系は 光束法と呼ばれるもので,図 に示すような光学系である. つの
レーザから分けられる各照射光を,測定面の法線に対して対称な 方向から参照光,物体光として照射し,
法線方向から カメラで記録するとレーザ照射方向における変位分布を求めることができる.
図 に示すように,計測対象物の任意の点における参照光,物体光の位相差を と仮定する.対象
物に任意の変位 が生じたときの光の位相差は,図 に示すように C F に増加する.この変形前
後での光の位相差の増分 F と変位量 との関係は,レーザ光の波長を ,レーザ光の入射角を とする
と,式 ! のように表される.
F
G
0 -
!
図 に計測対象物が変位する前のスペックルパターンを示す.図 が変位した後のスペッ
クルパターンとなる.この二つは全体的には大差がないように見える.しかし,この変形前後の二つの差
画像をとると,図 に示すような干渉縞が現れる.図 は位相図である.差画像というのは,
各ピクセルにおける明るさの差であり,, の各ピクセル毎の明るさを 段階に評価し,変形前後
の同じ点における明るさの段階を単純に引き算し,その絶対値を取ると,その集合が干渉縞となる.つま
#
第 章 電子スペックルパターン干渉計測の原理および性能照査
)
り,明るさが全く変化しない点においては暗く,明るさが半波長変化すると明るくなり,一波長変化する
とまた暗くなるといった具合に縞が形成される.この原理から,変形前後で位相差の増分が となると縞
が一本発生する.上式の位相差の増分と変位量の関係から,縞一本あたりの変位は式 ! で表わされる.
G
!
レーザ光
変位 対象物
図
参照光
! の光学系
物体光
C F
変形前
図
変形前
カメラ
レンズ
!
物体光
変形後
4
二つの光の位相差
変形後
図
参照光
!
干渉縞
位相図
干渉縞の形成
電子スペックルパターン干渉法による計測の概要
計測理論
本研究で用いた電子スペックルパターン干渉計は 8 社製のレーザストレインアナライザー
(
を使用した 図 .
は,基本的に面内変位計測においてレーザ照射方向の面内変位分布しか求めることができず,最大
面内変位を求めるためには少くとも 方向から面内変位計測が必要である.( では図 に示すような方法で,変位が生じた時のスペックルパターンを,
軸方向, 軸方向個々に計測することに
より面内変位分布の計測が可能となる.
計測性能の照査
*
図
!
センサーヘッドおよび制御装置
(レーザ
(レーザ
(レーザ
(レーザ
(レーザ
(レーザ
(レーザ
(レーザ
軸方向の計測
4
図
!
軸方向の計測
方向の計測
レーザストレインアナライザーの仕様
センサーヘッドは,図 で解説した の光学系を一体化した計測装置である.内部にダイオード
レーザ発振装置とビームスプリッタ,ビームエキスパンダーを,外部中心に カメラを,また, 方向
にレーザを照射するためのアームを配しており,これにより 方向および 方向の変位を,互いの影響を
受けることなく計測することが可能となる.また,センサーヘッド内の全てを制御装置によってコントロー
ルし,内部シャッターにより 方向の切り換えを行うので,シャッターの切り換え時間 0 以内 で,対
象物の同一エリアを,ほぼ同時に計測できる.
計測性能の照査
本研究で使用した の計測性能を照査するために汎用 ソフトによる解析,ひずみゲージ法によ
るひずみ計測と とを比較した.計測性能の照査にはひずみ分布図とひずみ値の二面から比較を行った.
分布図
応力・ひずみ分布図の照査のために,試験体に微小変位を与えた際のひずみ分布,変位分布,応力分布
を により計測し,比較のために汎用 ソフトによる解析を行った.
実験の概要
試験体および寸法を図 に示す.試験体は簡便に変形を与るために側面から中央に向けて開口部を設け,
応力集中部,ひずみ集中部付近の応力,ひずみ分布を容易に測定できる形状とした.試験体は高さ
幅
,厚さ
,
のアルミ合金からなり,中心に幅 の開口部を有する.右側上端部にはボルト
第 章 電子スペックルパターン干渉計測の原理および性能照査
が貫通しており,ボルトを回転させることにより試験体の上部に上向き方向の変位を与えることができる.
アルミニウム合金の材料定数を表 に示す.
解析の概要
による応力・ひずみ分布の照査を行うために,汎用 ソフトを用いて弾性解析を行った.解析
モデルは による計測実験で使用した開口型試験体の寸法を測り,形状に応じたメッシュの分割を行っ
た.要素には 節点平面シェル要素を用いてモデル化し,要素分割には %
*
+01
機能を用いて分割数を
とした.解析モデルを図 に示す.計測実験の際の拘束条件と一致させるために,解析モデル下端
を完全固定とし,開口部の側面から の箇所の点に上向き方向の変位を与えた.
表
!
レーザストレインアナライザー仕様
計測感度
以上は分割して計測
∼!
!
計測レンジ
∼
計測範囲
計測距離
!
計測時間
約 秒
レーザ
表
外部レーザを使用すれば拡大可能
∼!
#) -
>
!
材料定数
ヤング率 ポアソン比 #
!
密度 !#H7
ダイオードレーザ
図
図
!
!#
解析モデル図
試験体および試験体寸法
解析および実験結果
方向変位 ,
方向応力 ,
方向ひずみ ,せん断応力 ,せん断ひずみ ,
最大主応力 ,最小主応力 ,最大主ひずみ ,最小主ひずみ の応力分布の比較照査のために,計測
および解析結果を図 に示す.図 の による分布図と 解析による分布図がほぼ一致してい
ることがわかる.これにより, による応力・ひずみの分布の信頼性が確認された. での分布図
において,載荷点は開口部下側であり,その点付近で他に比べ大きな応力,ひずみ集中が発生し,開口先
端付近での値が判別しにくくなる.そのため,分布図作成時に載荷点付近の画像を削除し,コンター図を
作成したため,解析結果に比べ開口付近以外の箇所での分布が異なる結果となっている.
応力・ひずみ照査
により出力される応力・ひずみの値の精度を確認するため,一軸引張り試験を行い,ひずみゲージ
法によるひずみ値と により得られたひずみ値を比較した.
計測性能の照査
解析
解析
方向ひずみ Ü 解析
解析
せん断ひずみ 解析
せん断応力 解析
最大主ひずみ 解析
最小主ひずみ 方向変位
方向応力 Ü 解析
最大主応力 図
!)
解析
方向変位
解析
方向ひずみ Ý 解析
方向応力 Ý 解析
最小主応力 変位,ひずみ,応力の分布図
参考文献
計測実験の概要
応力・ひずみ値の照査のために図 に示すようなアルミ合金製の試験体を作成した.試験体は厚さ のアルミ合金の板から,金属材料引張試験片
,幅
#
,つかみ部の幅
ゲージ部寸法
"
号の形状に従い,切り出して作製したものである.長さ
で,中心裏側にひずみゲージ 株 東京測器研究所製
,ベース寸法 !
料定数は表 と同一である.
<(
(
,抵抗値 E を貼付してある.アルミ合金の材
試験体とセンサーヘッドを一体化させるため,取付け治具を用いて双方を引張試験機に取り付けた.
では,計測可能な変位の上限が となっているので,モニタ上で干渉縞を確認し,縞が ∼ 本となっ
た時点で載荷を止め,その時の試験体の画像を測定した.また,同時にデータロガーによりひずみ値を計
測した.
ひずみ値の照査結果
によりひずみ値を取得し,その際の荷重値を ( レコーダにより算出する.また,データロガーに
結線したひずみゲージにより得られたひずみ値を と同様に ( レコーダにより算出する.以上の方
法で算出したひずみゲージ法および の荷重(ひずみ曲線を図 に示す.
荷重(ひずみ曲線において,一部ひずみ値が異なる部分があるが,これは ( レコーダに表示された出力
結果により,計測途中において試験体の塑性状況を観察したため,ひずみ値に若干の時間差が生じたため
であると思われる. においては次の計測ステップの算出時に,前ステップによる画像を用いて変位を
算出しているため,載荷を止めている間の変位の増加を無視できるが,ひずみゲージによる計測では載荷
を止めている間に刻々とひずみが進展するため,ひずみ値が変化する.この点を除いて比較しても,両者
のひずみ値がほぼ一致していることから, を用いて得られるひずみ値はひずみゲージによるひずみ値
と同程度の信頼性があることが確認できた.
)
荷重 #
ひずみゲージ
図
!*
一軸引張り試験片
図
!
ひずみ 荷重(ひずみ曲線
参考文献
久保田敏弘ホログラフィ入門 (原理と実際(,朝倉書店,**
!
辻内順平ホログラフィ,裳華房
辻内順平 黒田和男最新光学技術ハンドブック,朝倉書店
高橋賞監修フォトメカニクス 工学的手法による応力・ひずみならびに変形の解析,山海堂
第 部
光学的計測による変形・ひずみ・応力計測
第章
薄肉曲面板の三次元形状計測と 自由振動解析
研究背景
現在,汎用 解析ソフトの発展により データに基づいた解析モデルの作成はある程度容易に
なってきている.しかし,任意形状を有する複雑な形状の構造物に対しては,解析モデルの作成は,今日
においても時間のかかる困難な作業を伴っているのが現状である.本章では, 次元形状計測による メッシュ作成を統合化したシステムの構築を図るとともに, 次元計測の精度の確認するために振動実験を
実施した.すなわち,デジカメ写真計測,レーザー計測器,触針式計測器を用いて,曲がりかつねじれた
曲面板の 次元形状計測を行い,得られた座標データから メッシュを作成し,固有振動解析を実施し,
振動実験で得られる共振周波数とホログラフィ干渉法による振動モードの比較検討を行った.
薄肉曲面板の三次元形状計測
形状計測概要
試験片として,図 及び図 に示すアルミニウム合金製の円筒殻(ヤング率 #?,ポアソン比
!
,密度 !#H7)より,中心角 ゜の曲面板に対し円錐断面の中心をねじれの中心とする初期ねじれ
角 @G,, ゜を切り出し製作した 種類の試験片(図 参照)(2'+,(2'+,(2'+ を製
作した.これらの試験片に対して,触針式計測器,レーザー計測器,カメラ計測器による形状計測を行い
各計測方法による比較検討を行った.
!
)
!
)
図
!
図
アルミニウム合金製の円筒シェル
!
円筒シェルの寸法
第 章 薄肉曲面板の三次元形状計測と 自由振動解析
!
!
図
!
!
円筒シェルから製作した試験体
接触式計測概要
各試験片ともに,B 方向,2 方向ともに mm間隔のスキャンピッチで計測を行った.振動などによるず
れが曲がり角とねじれ角が大きくなるにつれ影響が大きいため,試験片の計測対象外の部分をテープで固
定しずれがおこらないようにして各試験片ともに形状計測を行った.図 に計測風景を示す.
レーザ計測概要
カメラ距離1mでのキャリブレーションを行い,各試験片とも形状計測を行った.レーザー光の直反射
を防ぐために,表面につや消しの白色のアクリルラッカーを薄く塗装した.曲がり角とねじれ角が大きく
なるにつれレーザーを試験片の表面にあてにくくなるために,各試験片ともにカメラに対して表面で捉え
らえられるようにして計測を行った.図 に計測風景を示す.
図
!
触針式計測風景
図
!
レーザ計測風景
計測精度
#
カメラ計測概要
各試験片ともにカメラ距離 !
mでの撮影をし形状計測を行った.組み合わせる画像の対応点を取りや
すくするためにキャリブレーションボードの中に,試験片を固定して撮影し対応点をとりやすくした.組
み合わせる画像の 枚目の画像が基準座標になるために,キャリブレーションボードから °方向からの
撮影をすることにより,対応点の基準座標の精度を上げる工夫を行った.また,色による影響が大きく一
様な色の部分は対応点が取りにくいため,各試験片の表面にデジタル処理された記事を貼り付けることに
より試験片の対応点を取りやすくする工夫を行った.図 に撮影風景を示す.
°方向
任意方向
図
!
カメラ計測風景
計測精度
触針式計測器,カメラ計測器,レーザー計測器の計測精度の比較検討を行った.計測対称物は,図 の 2'+( の試験片を計測した.各計測器の精度について表 に示す.実測値についてはノギスを用い
て計測を行った.各計測器ともに誤差が小さく精度が高いことがわかる.
図
!#
計測精度対象物
第 章 薄肉曲面板の三次元形状計測と 自由振動解析
)
表
計測精度算出
!
対象 実測値 触針式 レーザ カメラ !
!
!!)
!
#!
#!
#!
#!
!
!
!
!!
!
!
!
!!
!)
!#)!
!#)!
!#
!
単位7
内は誤差 I
解析概要
本解析を行うにあたりカメラ計測器,触針式計測器,レーザー計測器からモデル化を行ったが,カメラ
計測器,触針式計測器からは,計測したデータを
!0&
ファイルに変換することにより比較的簡単にモデル
化を行うことができた.レーザー計測器から得られるデータは,データ間隔が不均一な三次元座標データ
のみであるためにそのままではモデル化が困難である.そのために,今回は得られたデータを
!709
形式の
ファイルに変換してそのデータを読み込み,まずノイズと思われる点を削除し,面を貼ることでモデル化
を行った.
FEM解析では,3節点三角形シェル要素を用いており,境界条件は,下端を完全固定した.材料定数は,
弾性係数 #?,ポアソン比 !,密度 !#H7 である.要素数は触針式計測で
∼
,レー
ザー計測で ∼,カメラ計測で ∼ であった.
実験概要
図 に示すように,実験方法は,防振台上の固定金具に試験片を固定し,試験片の裏面から加振した.
スピーカーの加振力が不足する場合には小型電動加振機(加振力 /?)を用いた.試験片に貼付した圧
電素子出力の極大点の加振周波数を測定し,試験片の共振周波数とした.共振時の試験片の振動モードを
レーザーホログラフィ(,+(+ レーザー,出力 >)の時間平均法によって測定した.
図
!)
実験風景
解析及び実験結果
*
解析及び実験結果
図 ∼図 および表 ∼表 は,各計測器による解析結果と実験結果のグラフを示す.グラフ
の縦軸は振動数,横軸はモード数である.(2'+,(2'+,(2'+ ともに触針式計測,カメラ計測は
良好な結果を示しているが,レーザー計測は曲がり角やねじれ角が大きくなるにつれて精度が悪くなった.
これは,対象物から反射するレーザー光が曲がり角やねじれ角が大きくなるにつれてカメラが拾いきれな
いためだと思われる.カメラ計測では,各々の撮影画像から対応点を決めることができ,曲がり角やねじ
れ角が大きくなった対象物を局所的に正面に捉えることが可能なため,精度を保持することが可能であっ
たと思われる.
図 ∼図 の上から触針式計測,カメラ計測,レーザー計測の解析結果,またホログラフィ干渉
法による各モード図を示す.
3000
触針式計測
カメラ計測
レーザー計測
実験値
2500
振動数
2000
1500
1000
500
0
1
2
3
4
5
6
固有モード
図
!*
各計測法と実験の自由振動結果
表
解析および実験結果
!
2'+(
2'+(
実験
触針式
レーザ
カメラ
要素数 J(
##
)
#**
%3+ !
!
!)
(!
!*
)!
!!
!
)!#
)
!!
#!#
#
!!
)!
#!
#
!!
!
#(!
#!
!)
#
!
!
単位7
内は誤差 I
第 章 薄肉曲面板の三次元形状計測と 自由振動解析
3000
触針式計測
カメラ計測
レーザー計測
実験値
2500
振動数
2000
1500
1000
500
0
1
図
!
表
2
3
固有モード
4
5
各計測法と実験の自由振動結果
!
解析および実験結果
6
2'+(
2'+(
実験
触針式
レーザ
カメラ
要素数 J(
#
*
%3+ !*!
*#!
!
(!
#
!!
#!
!)!
!
!!
!
!(
!
*
#!*!
)*!
#!#!#
)
!(
!
*(!
)#!)(#!
*
)!!
#!
!!
単位7
内は誤差 I
3500
触針式計測
カメラ計測
レーザー計測
実験値
3000
振動数
2500
2000
1500
1000
500
0
1
図
2
!
表
3
4
5
固有モード
各計測法と実験の自由振動結果
!
解析および実験結果
6
2'+(
2'+(
実験
触針式
レーザ
カメラ
要素数 J(
)
*
%3+ *
)!
!
#))!
!
#!)!)
#)!
!
)
*)!*!
*
!)
*!
)
)!(!
)!
*#!#
*
)*!#!
!
!*
#
))
!!
*))!
#!*
単位7
内は誤差 I
解析及び実験結果
次
次
次
次
実験
触針式
レーザ
カメラ
図
! 2'+(
次
次
第 章 薄肉曲面板の三次元形状計測と 自由振動解析
次
次
次
次
実験
触針式
レーザ
カメラ
図
! 2'+(
次
次
解析及び実験結果
次
次
次
次
実験
触針式
レーザ
カメラ
図
! 2'+(
次
次
第 章 薄肉曲面板の三次元形状計測と 自由振動解析
考察
触針式計測,レーザー計測,カメラ計測から得られたデータによりFEMモデル作成を行い,固有振動解
析を行ったが,各計測法ともに実験値と比較して良好な結果を得ることができた.ただ,レーザー計測に
おいては,2'+( の試験片の高次モードでやや精度を欠いているがこれはレーザーの光を取り込む カメラにレーザーの反射の光量が足らないからだと考えられる.
レーザー計測の場合,試験片からの反射の光を取り込むために,レーザーの反射角は基本的に試験片の
法線方向に反射するために光量が少なくなってしまうという問題点があげられる.また計測を行う環境も
夜にしか行うことができないため,環境の状況にあわせて計測を行わなければいけないという条件と形状
計測の精度向上のためには,試験片の境界を捉える必要があるために座標点が増え結果的に要素数の増大
につながる.
触針式計測の場合は,計測精度解析結果ともに良好ではあるが,試験片のサイズに限りがあること,ま
た計測時間がかかることがあげられる.今回行った試験片にたいしても 試験片のデータ採取に ∼) 時間
かかった.この計測法は,B(2 平面を固定した状態での計測法であるために,球などの形状計測は不可能で
あり,対象物の形状に限りがあるという問題点があげられる.
カメラ計測の場合は,対象物の色による影響はあるものの,画像の練成による形状計測のために,対象
物を局所的に捉えて全体の形状計測ができること,また採取する点の数も任意に指定することができ,F
EMモデル作成の要素数をある程度指定できるという大きな利点がある.今回行った数値解析でも要素数
は ∼ という少ない状態で精度も良好であった.対象物のサイズや環境による影響もなくFEMモ
デル作成に対する有用性があると考えられる.
第章
ホログラフィ干渉法の欠陥検知への適用可能性追及
研究背景
ホログラフィ干渉法は粗面からの反射波面の振幅位相分布を記録する計測法である.粗面物体の変形前
の状態と変形後の状態を同じホログラムに記録し,これを再生すると,記録された変形前後の つの波面
間に干渉が起こり,物体変形の情報を持った干渉縞が得られる.また,振動している物体の状態を一定時
間記録すると,再生像には振動の振幅分布に対応した干渉縞が得られる.
本章では,切欠きを有するアルミニウム板を対象として,ホログラフィ干渉計測法を用いて振動モード
を計測するとともに,ホログラフィ干渉計測法の欠陥検知への適用可能性について検討した。
試験概要
試験体および治具
本実験では平面板試験体 種を使用した.振動モード図を明確に比較するために,これらの試験体には
健全な試験体の他に切り欠きをもたせている.また,アルミ合金の材料定数は以下の通りである.
弾性係数 ポアソン比 密度 "
試験体
平面板試験体の寸法は全て高さ
,幅
#
,厚さ
*
のアルミ合金であり,下端 )
の箇
所に ) 点の開孔を設け,ボルトにより治具に完全固定する.
平面板試験体の詳細な寸法を図 に示す.
試験体の切り欠き幅は ,孔の直径は である.
)
#
固定用孔
#
固定用孔
*
平面板試験体
固定用孔
固定用孔
*
切欠き試験体 図
#
#
*
切欠き試験体 !
固定用孔
*
切欠き試験体 平面板試験片寸法
#
*
切欠き試験体 第 章 ホログラフィ干渉法の欠陥検知への適用可能性追及
試験方法概要
本実験は,ホログラフィ干渉計測の時間平均法を用いて撮影を行った.時間平均法とは変形前と変形後
の物体光を,同じ参照光で干渉させることにより記録できる変位分布を利用したものであり,振動の周期
に比べ十分長い時間にわたって露光させる.物体光は周期的に変化するので,記録材料には変形前と変形
後の変位分布が記録され,干渉縞を得ることができる.
振動実験を行うにあたり,治具に固定された試験体の上部後方より,スピーカーの音圧によって加振さ
せた.また,計測時の外乱を防ぐために撮影時には実験装置周辺に簡易的な壁を設置した.図 に試験
片の加振状況を示す.
図
!
固定された試験片およびスピーカー
解析概要
ホログラフィ干渉計測によるモード図,固有振動数が一致していることを確認するために,汎用 プ
ログラム を用いて固有振動解析を行った.
モデル化を行うにあたって,レーザ計測により得られた座標値を用いて有限要素メッシュを作成した.座
標データから有限要素メッシュを作成するまでの手順を以下に示す.
目視によるノイズの除去
被計測物の形状が複雑になるにつれ,それに伴うノイズの削除の非常に難しい問題となる.ノイズは計
測状況により減らすことが可能であるが,ノイズを完全に取り払うことは困難である.現段階でノイズの
削除は目視によった行った.図 にノイズ除去のようすを示す.
削除前
削除後
4
図
!
ノイズの削除
解析概要
#
座標データの均一化
前項でノイズを削除した三次元データを B(2 平面に投影し, × の間隔で A 座標を均一かすることに
よりデータ数の軽減とデータ配列の整理を行い新たな三次元座標データを作成した.図 計測データ
均一化されたデータ
4
図
!
データの均一化
メッシュ分割図の作成
得られた三次元座標データから,実点を元に補間点を設けて三角形要素を作り,より実物に近い形状と
なるようにメッシュ分割図を作成する.
: 実点
: 補間点
補間点
4
図
!
メッシュ分割法
メッシュ分割図の作成
今後の課題
次元デジタルデータから 次元 メッシュを作成するには,上記のように実施すればいいのだが面倒
である。 データから メッシュ作成に関しては,平成 年度末に導入した 形状計測器の付属ソ
フト '
3 %
を使用すれば,極めて簡単に メッシュを作成することができるようになった。この
手法を長崎平和祈念像に適用した。詳細は第 章を参照されたい。
第 章 ホログラフィ干渉法の欠陥検知への適用可能性追及
)
振動実験および固有振動解析結果の比較
振動解析に行うに当たり, 種類の解析モデルを使用した.寸法が既知である平面板の座標値を直接入力
し作成したモデルを 2'+(,可搬型非接触三次元計測装置を用いて得られた座標値から作成したモデル
を 2'+( とした.
以下に実験および解析結果を示す.図 ,図 ,図 ,図 ,図 は実験や解析により得
られた振動モード図を示しており,図 ,図 ,図 ,図 ,図 は実験と解析における固
有振動数の比較および平面板と切欠き試験体との固有振動数の比較を行ったものである!
平面板試験体
次モード
次モード
次モード
次モード
次モード
!
ホログラフィ
!
図
!
モード図 平面板試験体
(Hz)
(Hz)
1750
1750
1500
1500
1250
1250
1000
1000
振動数
振動数
750
500
750
500
数値計算
2'+(
2'+(
250
2'+(
250
実験値
0
実験値
0
1
2
3
4
5
6
1
モード
2
3
4
モード
図
!#
固有振動数の比較
5
6
次モード
振動実験および固有振動解析結果の比較
*
切欠き試験体 次モード
次モード
次モード
次モード
次モード
次モード
!
ホログラフィ
!
図
モード図 切欠き試験体 !)
(Hz)
(Hz)
1750
1750
1500
1500
1250
1250
1000
1000
振動数
振動数
750
750
500
500
2'+(
2'+(
250
平面板
切欠き 250
実験値
0
0
1
2
3
4
5
6
1
モード
3
4
5
6
平面板との比較 実験値
実験値と解析値の比較
(Hz)
(Hz)
1750
1750
1500
1500
1250
1250
1000
1000
750
2
モード
振動数
振動数
500
750
500
平面板
切欠き 250
平面板
切欠き 250
0
0
1
2
3
4
モード
平面板との比較 #
5
6
1
!*
3
4
モード
!$
図
2
5
平面板との比較 #
固有振動数の比較
6
!$
第 章 ホログラフィ干渉法の欠陥検知への適用可能性追及
切欠き試験体 次モード
次モード
次モード
次モード
次モード
次モード
!
ホログラフィ
!
!
モード図 切欠き試験体 (Hz)
(Hz)
1750
1750
1500
1500
1250
1250
1000
1000
振動数
振動数
図
750
500
750
500
2'+(
2'+(
250
平面板
切欠き 250
実験値
0
0
1
2
3
4
5
6
1
モード
1750
1750
1500
1500
1250
1250
1000
1000
振動数
(Hz)
500
3
4
5
6
平面板との比較 実験値
(Hz)
750
2
モード
実験値と解析値の比較
振動数
750
500
平面板
切欠き 250
平面板
切欠き 250
0
0
1
2
3
4
モード
平面板との比較 #
5
6
1
!
3
4
モード
!$
図
2
5
平面板との比較 #
固有振動数の比較
6
!$
振動実験および固有振動解析結果の比較
切欠き試験体 次モード
#,A
次モード
),A
次モード
),A
次モード
#),A
次モード
,A
次モード
*,A
!
ホログラフィ
!
図
!
モード図 切欠き試験体 (Hz)
(Hz)
1750
1750
1500
1500
1250
1250
1000
1000
振動数
振動数
750
500
750
500
2'+(
2'+(
250
平面板
切欠き 250
実験値
0
0
1
2
3
4
5
6
1
モード
(Hz)
1750
1750
1500
1500
1250
1250
1000
1000
500
3
4
5
6
平面板との比較 実験値
実験値と解析値の比較
(Hz)
750
2
モード
振動数
振動数
750
500
平面板
切欠き 250
平面板
切欠き 250
0
0
1
2
3
4
モード
平面板との比較 #
5
6
1
!
3
4
モード
!$
図
2
5
6
平面板との比較 #
固有振動数の比較
!$
第 章 ホログラフィ干渉法の欠陥検知への適用可能性追及
切欠き試験体 次モード
次モード
次モード
次モード
次モード
次モード
!
ホログラフィ
!
!
モード図 切欠き試験体 (Hz)
(Hz)
1750
1750
1500
1500
1250
1250
1000
1000
振動数
振動数
図
750
500
750
500
2'+(
2'+(
250
平面板
切欠き 250
実験値
0
0
1
2
3
4
5
6
1
モード
1750
1750
1500
1500
1250
1250
1000
1000
振動数
(Hz)
500
3
4
5
6
平面板との比較 実験値
(Hz)
750
2
モード
実験値と解析値の比較
振動数
750
500
平面板
切欠き 250
平面板
切欠き 250
0
0
1
2
3
4
モード
平面板との比較 #
5
6
1
!
3
4
モード
!$
図
2
5
6
平面板との比較 #
固有振動数の比較
!
結論
結論
本研究結果は以下のようにまとめられる。
平面板試験体 ではモード図,固有振動数ともにホログラフィ干渉実験,三次元計測による座標デー
タによる解析モデル,試験体寸法の入力による解析モデルの結果は非常に類似した結果となった.ま
た,理論式により算出した固有振動数と比較しても大きなずれはなかった.
切欠き試験体 では実験,2'+(2'+( において固有振動数は一致した.しかし,平面板試験体
に比べ固有振動数は全モードにおいて減少していることがわかる.また,
次まではそれほど大きな
変化はないが 次から大幅に高くなっていることから,高次の固有振動数のほうが形状の変化に大き
く左右されるものと思われる.固有モードは 次モードでホログラフィ実験と解析においてモード図
の違いが表われた.このモード図は平面板における 次のモード図に近いが,切欠き において 次
のモード図は一致したことよりモー ド図に確認ミスがあったとは考えられにくい.
切欠き試験体 では固有振動数,固有モード図ともに大きな変化はない.平面板試験体と比べると固
有振動数は減少しており,実験,解析の結果タイプ , いずれの振動数を見ても 次モードから振
動数に変化があることがわかる.また,モード図に関しては切欠きを中心に平面板と比べ大きなモー
ド変化がみられる. 次,
次モードでは 2'+( では左右対象なのに対し 2'+(,実験ではずれ
が生じている.2'+( に関しては試験体作成にあたり誤差が生じたこと,実験に関しては試験体の
誤差に加え,加振方法が後方中央部ではなく後方左側に加振した為と考えられる.
切欠き試験体 では固有振動数,固有モード図ともに大きな変化はない.平面板と比較すると固有振
動数は 次∼ 次モードいおいて大きな変化は見られないが,固有モード図においては切欠きを中心
に平面板と比べゆがんでいることがわかる.また, 次モードに関しては完全に異なったモードを示
している.
切欠き試験体 では固有振動数,固有モード図ともに大きな変化はない.平面板と比較すると固有振
動数の変化は少ないが切欠き と比べると 次の固有振動数は大きな変化が見られる.固有モード図
は 次モードに平面板と明かな違いが表われているが固有振動数には表われていない.また,
次の
モード図は平面板における 次のモード図となり 次のモード図も平面板での 次のモード図と類似
した結果となった.
以上のことからホログラフィ干渉法による固有モードの変位分布計測は十分にモード図を得ることが出
来た.固有振動数に関しても解析による振動数と大きなずれはなく,十分な結果が得られたと考えられる.
平面板に関しては形状の変化が外郭に達した時にモード図,固有振動数が大きく変化するものとなった.切
欠き位置によって固有振動数の変化が顕著になくとも,モード図に変化が現われることがあり,固有振動
数のみで形状の変化は確認できない.したがって,ホログラフィ干渉計測を構造部材の切欠き検知へ応用
するのは価値があることと考えられる.
第
章
有孔板および切欠板の引張試験における 計測
∼ 計測の非破壊検査への適用可能性追求 ∼
き裂発生の要因として,不連続部における応力集中が考えられる.この応力集中を計測することにより,
疲労き裂などの欠陥の発見や,き裂の発生の予測可能性を調べるために, 計測を用いて非接触全視野
計測を行った.対象物は,鋼に比べ比較的加工が容易であるアルミニウム合金板を用いた.
単一孔を有するアルミ板
図 に示すような,矩形板に大きさの異なる円孔 直径 をアルミニウム合金板で製作
し引張試験を行った.試験体は厚さ ,高さ ,幅 であり,材料定数は前章において示し
た表 と同じである.引張試験と同時に,応力・ひずみ分布の比較のために 解析を行った.図 に解析モデルを示す.試験片 における実験・解析の結果を図 に示す.
次に円孔中央部の断面のおける応力・ひずみの分布をプロットしたグラフを図 に示す.
図 において,
方向変位と 方向変位の解析結果は左右・上下対称になっているのに比べ, に
よる結果は対称にはなっていない.これは, 計測のセンサーヘッドが試験体に対して傾いている,も
しくは,試験機に対して試験片が傾いて設置されていたことが原因であると考えられる.そのため,ひず
みも応力も対称な分布図になっていないが,値そのものは比較的解析結果と一致していると思われる.図
に示したグラフからも同様に,左右対称でないことがわかる.左右対称ではないが,円孔に向かってひ
ずみ・応力ともに集中を観察することができる.
孔
孔
試験片 試験片 図
#!
試験片寸法と解析モデル図
第 章 有孔板および切欠板の引張試験における 計測
方向変位
方向ひずみ Ü 図
#!
方向変位
方向ひずみ Ý 方向応力 Ü 方向応力 Ý 変位・ひずみ・応力分布図
解析値
実験値
解析値
実験値
応力 ひずみ 左端からの距離 左端からの距離 方向ひずみ Ý 分布
図
#!
中央断面における分布
方向応力 Ý 分布
切欠きを有するアルミニウム板
#
切欠きを有するアルミニウム板
前節において,不連続部に集中する応力・ひずみを 計測によって計測できることを示した.本節
では,応力・ひずみの集中の分布から,不可視の不連続部の位置を推測することを試みた.図 に示す
試験片を製作し,一軸引張試験を行った.試験片はアルミ合金からなり,高さ
板の裏側に幅
!
,長さ の切欠きを付けている.試験片の厚さ
!
,幅
の矩形
に対して切欠きの深さは
であるため,表側に貫通していない.図中の斜線に示す部分を計測範囲とし,切欠きの見えない表
側から計測を行った.
実験結果
図 に示す試験片で一軸引張試験を行い,その際に発生する応力・ひずみの集中を 計測によっ
て,全視野で行った.切欠きの外郭側 表面向かって右端 におけるの最大主ひずみの値をひずみ値とした,
荷重Dひずみ曲線を図 示す.
3
7
4
!
荷重 #
!
+
表面
裏面
図
#!
側面図
試験片
図
#!
)
ひずみ 図
#!
荷重D最大主ひずみ曲線
破断状況
最大主ひずみ分布の推移および破断状況
図 中の ∼+ の各点における最大主ひずみの分布,および最終的な破断状況を図 に示す.弾
性域である においては,ひずみの集中は斑点状に発生しているが,比較的中央右側に発生しているこ
とがわかる.そのひずみの集中は,弾性域から塑性域に移行する 4 の段階では,切欠きの位置に集中し,
7
の段階となると,ひずみの集中は切欠き位置に沿ってはっきりと現われている.このことから,ひずみ
の集中に注目することにより,不可視の切欠きのおおまかな位置が特定可能であることがわかる.3 の段
第 章 有孔板および切欠板の引張試験における 計測
)
階となると,ひずみは完全に切欠き位置に集中することがわかる.さらに載荷を続けると + のようなひ
ずみ分布が得られる.+ では切欠き先端から左下にひずみが集中していることが見られる.破断状況と比
較すると,このひずみの集中がき裂の進展方向を決定しているものと推測される.
複数の孔を有するアルミ合金板
前節で示した最大主ひずみの集中分布から,き裂の進展方向およびき裂の開始位置を推定できることを
さらに明確にすることを目的として,複数の孔を有するアルミ板の引張試験を行った.同時に,応力・ひ
ずみ分布を計測し,実際の破断状況と比較検討を行う.
ボルト継手の設計
実構造に用いられる部材において,複数の孔を有する板には,高力ボルト継手の継手部分がある.ボル
ト継手の設計には,継手の形式,所要ボルト本数など様々な要因を考慮する必要があるが,本研究では,連
結板の所要断面と母材強度に注目した.連結板の応力度はその材料の許容応力度を超えてはならず,また
板にあけたボルト孔の周辺の応力集中を考慮して設計する必要がある.この際の応力度の計算は,軸力に
対しては伝達する力 を断面積 で除して算出するが,引張力を受ける場合は孔の部分を差し引いた純断
面積 純断面幅 を用いなければならない.この場合,孔の径 はボルトの呼び径より まで大きいこ
とが許されており,控除すべき孔径は G
C とされている.図 に示すような,水平配置のボ
ルト孔に対する純断面幅は次式 #! で算定することができる.
G #!
ここに, 純断面幅,総断面幅, 孔径である。
¼
一方,図 のように比較的接近して千鳥状に孔がある場合には,着目断面にない隣接孔の影響を考え
なくてはならない.この場合,着目断面の最初のボルト孔については,その全幅 を差し引き,以下順次,
次式 #! の を各ボルト孔について差し引いた幅を純幅としている.
G
#!
ここに, 孔径,応力方向のボルト中間間隔, ボルトの応力直角方向の中間間隔である.
¼
図
#!#
水平配置例
図
#!)
千鳥配置例
ボルトの配置
ボルトの間隔
ボルトの間隔は,小さすぎると施工に困難をきたしたり,材質を損なうおそれがある.逆に間隔が大き
すぎると,板面間にすき間ができて腐食の原因となったり,圧縮材であれば材片の局部座屈を生じるおそ
れがある.そのため,表 のようなボルト中心間隔の最大値・最小値が定められている.
複数の孔を有するアルミ合金板
*
縁端距離
ボルト孔から材片の縁端までの距離についても,これがあまり小さいと,ボルトがその強度を十分発揮
する前に材片が図 のように破断してしまう恐れがある.逆に大きすぎると,材片が密着せず雨水が侵
入したりする.したがって,縁端距離 についても表 のような最大値・最小値が規定されている.
せん断が支配的な場合
図
表
#!
曲げが支配的な場合
#!*
縁端部の破壊
中心間隔および縁端距離 の制限
中心からの縁端距離 中心間隔 ボルト
最小
最大
の寸法
応力方向
最小
応力直角
#
)
#
方向
ただし千鳥
の場合は との小さいほう
圧延縁
最大
#
せん断縁
仕上げ縁
手動ガス
自動ガス切断縁
切断縁
)
ただし
#
≦ #
外側の板厚の
)
倍
ただし≦ ボルト孔を模擬したアルミ合金板の一軸引張試験
切欠きを有するアルミ合金板の引張試験結果から,き裂開始位置に発生するひずみ・応力の集中と,き
裂の発生時期,き裂進展方向の関係を明らかにする目的で,表 に示す縁端距離の制限を満足する,ボ
ルト孔の配置位置の異なる 種類 試験片 ,試験片 ,試験片 を製作し一軸引張試験を行った.
図 ,図 ,図 にボルト孔配置位置の異なる試験片ごとの寸法,試験片の任意の点における
荷重D最大主ひずみ曲線,また,荷重Dひずみ曲線の各点における最大主応力分布,理論計算から求まる破
断予測の図,破断状況を示す.試験片寸法に記された ! の点においての荷重Dひずみ曲線を描き,破断予
測の図に記す数字は,孔の呼称番号である.
ボルト孔の径,配置位置などから計算式によって予測される,き裂の発生位置,進展方向と,実際のき
裂の進展状況を比較した.また,き裂発生の前後における最大主応力の分布から,き裂の発生を事前に予
測することが可能であるかを検討する.
試験片 では, 孔が並列配置であるため,最小断面となる真横にき裂が発生することは容易に推定で
きる.実際の破断状況も真横にき裂が発生している.その際の最大主応力分布も孔の左右に集中している.
荷重Dひずみ曲線から弾性域と思われる の段階においても孔付近に応力が集中している.
試験片 では, の段階においては,孔 ,孔 の左側に応力の集中が発生している.塑性域に入ってい
ると思われる
の段階で,孔 DD の間に応力の集中が見られる.理論計算による破断予測および,実際
の破断状況もこのラインでき裂が発生している.このことから,応力分布を計測することで,弾性域にお
ける載荷でき裂の発生位置を特定する事の可能性が示せるものと考えられる.
試験片 ? では,理論計算による予測される破断面と実際の破断状況が異なる結果となった.
の段階で
は応力の集中はき裂位置に一致している.弾性域と思われる の段階では孔 ,孔 の間に応力の集中が見
られる.試験片製作時,および,引張試験時に何らかの不具合があったものと考えられる.
第 章 有孔板および切欠板の引張試験における 計測
c
b
荷重 !
a
#
ひずみ 試験片寸法 点における荷重!最大主ひずみ曲線
"
最大主応力分布図
図
#!
理論計算
破断状況
試験片 における実験結果
!
荷重 試験片寸法 ひずみ 点における荷重!最大主ひずみ曲線
"
最大主応力分布図
図
#!
理論計算
試験片 における実験結果
破断状況
複数の孔を有するアルミ合金板
b
荷重 #!
#
!
!
a
#!
!
c
*
ひずみ 試験片寸法 点における荷重!最大主ひずみ曲線
"
理論計算
最大主応力分布図
図
#!
破断状況
試験片 における実験結果
c
荷重 !
b
a
試験片寸法 )
ひずみ 点における荷重!最大主ひずみ曲線
"
最大主応力分布図
図
#!
試験片 における実験結果
理論計算
破断状況
参考文献
荷重 試験片寸法 ひずみ )
点における荷重!最大主ひずみ曲線
"
最大主応力分布図
図
#!
理論計算
破断状況
試験片 ? における実験結果
まとめ
複数の孔を有するアルミ板の引張試験において,孔近傍に応力集中が見られ,そこからき裂が発生して
いる.弾性域における荷重でも応力集中が認められるため,非破壊によるき裂進展位置の特定の可能性が
示唆される.理論計算による予測破断面と実際の破断面の異なる結果も得られたので,さらに,実験を行
う予定である.
不連続部に発生する応力・ひずみの集中を計測することができた.一般的な非破壊探傷試験と比較して,
計測は非接触・全視野計測が行えるため,欠陥を効率良く検知することができる. 計測は,表
面の変位分布のみが計測可能であり,内部のひずみを計測することは不可能である.しかし,裏側に切欠
きを有する試験片での引張試験結果に示すとおり,不連続部に発生するひずみ集中を計測することができ
たので,内部欠陥の検知の可能性が示唆される.今後は,奥行き方向に長さを持ち,内部に溶接割れのよ
うな欠陥を有する試験片に対して同様の試験を行い, 計測による内部欠陥の検知の可能性について検
討する予定である.
参考文献
三木千壽鋼構造,共立出版株式会社,
伊藤學改訂鋼構造学,コロナ社,***
第章
はりのひび割れ発生・進展状況の可視化
コンクリートの非破壊検査技術として,サーモグラフィ,レーダー,超音波, 試験など多数開発されて
いるが,コンクリート片剥落事故を契機として,効率的な面探傷技術の開発が鋭意進められている.本章
では,アルカリ骨材反応・塩害・凍結融解などを原因とするコンクリートの劣化過程における変形状態の
リアルタイムかつ全視野計測を実施し, 計測を用いた動的全視野ひずみ測定できる装置を構築するこ
とを目的とし,コンクリートはり供試体を用いて,ひび割れの発生から進展に至るまでのコンクリートの
劣化過程における全視野ひずみ計測を実施した.
モルタル供試体を用いた 点曲げ試験
コンクリート供試体での曲げ試験の予備実験として,モルタル供試体を用いた 点曲げ試験を行った.実
験に用いたモルタル供試体の寸法は図 に示すとおりであり,配合は水セメント比を Iとし,セメン
トと細骨材の割合を とした.打設後 時間で脱枠,水中養生し,養生期間を ) 日とした.曲げ試験
の載荷速度は変位制御で,!H - とし,曲げ破壊に至るまで載荷を行った.曲げ破壊を起こすまで
載荷を行ったところ,荷重 ),変位量 ! に至る時点でひび割れが発生し破断した.図 に供
試体の破断状況を示す.また,載荷実験の結果を,荷重を縦軸とし,ひび割れの発生した点における最大
主ひずみ値の荷重(ひずみ曲線を図 に示す.図中 ∼ の点における によって得られた最大主ひ
て,ひび割れが発生した後の
のひずみ分布図は,ひび割れの発生位置に高いひずみが発生している.
ずみ 分布図を図 に示す. におけるひずみ分布図は,支点部にひずみが集中しているのに対し
このことから, を用いた非接触全視野計測を行うことで,コンクリートの梁などにおけるひび割れの
発生箇所が特定できる.
)
図
図
)!
モルタル供試体寸法 )!
破断状況
第 章 はりのひび割れ発生・進展状況の可視化
2000
荷重 1600
1200
800
400
0
0
1
2
3
ひずみ
図
)!
4
5
6
荷重(最大主ひずみ曲線
図
)!
最大主ひずみ 分布図
供試体による曲げ試験 予備試験
曲げを受ける 部材の挙動
曲げを受ける 部材の挙動は,初期の段階では鉄筋とその周囲のコンクリートは一体となって変形す
る.荷重が増加していくと,スパン中央付近の下縁引張側コンクリートに最初の曲げひび割れが発生する.
このひび割れは荷重の増加とともに,上縁に向かって伸び,ひび割れ幅も広がる.さらに,同じようなひ
び割れが発生し,ひび割れ本数が増加していくが,ある荷重以上になるとひび割れ本数が増加せず,ひび
割れ幅のみが増加する状態 ひび割れ定常状態 に達する.このとき,コンクリートはほとんど引張力を負
担せず,鉄筋が引張力を負担する状態となる.
最終的には,引張側の鉄筋が降伏するか,圧縮側のコンクリートが圧壊するかのどちらかで,曲げを受
ける 部材は破壊する.すなわち,鉄筋量が少なければ,引張側の鉄筋が先に降伏し曲げ引張破壊とな
り,鉄筋量が多ければ,鉄筋が降伏する前に圧縮側のコンクリートが破壊し曲げ圧縮破壊となる.
せん断力を受ける 部材の挙動
部材にせん断力が作用すると,部材の挙動や破壊形式は,曲げモーメント作用下の挙動とはかなり
違ったものとなる.鋼のように弾性材料からなる梁が等分布荷重を受ける場合,梁には曲げモーメントだ
けでなくせん断力も作用するので,断面によっては曲げ応力 とせん断応力 が生じる.梁の圧縮側では
圧縮応力とせん断応力が,中立軸位置ではせん断力応力のみ,また引張側では引張応力とせん断応力の組
み合わせ応力状態となる.この組み合わせ応力状態によって,主圧縮応力 とそれに直交する主引張応力
が発生する.
部材の場合には,下縁の曲げ応力がコンクリートの引張強度に達し,曲げひび割れが発生しても,そ
の引張力は引張鉄筋が負担するので,曲げ応力に対してもさらに抵抗することができる.しかし,せん断
応力が作用している領域では,さらに荷重を増加させていくと,梁軸に直交する曲げひび割れは主引張応
力線に沿った斜めひび割れへと伸展していく.そのため,せん断を受ける 部材の場合,部材内部のつ
り合い機構に変化を生じさせるのは,斜めひび割れの発生であり,主引張力によるものである.
主引張応力の大きさや傾きは,曲げ応力とせん断応力の組み合わせ,近代的には曲げモーメントとせん
断力の相互関係に依存する.これらの相互関係は,集中荷重を受ける場合,せん断スパンと有効高さの比
破壊形式に注目した 供試体の曲げ試験
" が指標となることがこれまでの実験結果によって明らかにされている.
本節では, 供試体を用いて," を種々変化させて 点載荷による曲げ試験を行ない,ひずみの分布
の推移を により全視野計測し,そのひずみ分布と破壊モードとの関係について検討する.
供試体予備実験
供試体における, 点載荷試験を行うにあたり予備実験として,鉄筋の配置の異なる 種類の供試体
を製作した.鉄筋は全て 鉄筋を使用し, 鉄筋無配置 K(2'+L, 引張鉄筋 本配置 K(2'+L, 引
張鉄筋 本 フックなしK(2'+L, 引張鉄筋 本・圧縮鉄筋 本 K(2'+L の 種類とした. 種の試験
体の概要図を図 に,また,各供試体におけるひび割れ状況を図
に示す.
無筋である (2'+ においては,ひび割れは載荷点の真下に曲げひび割れが発生し,ひび割れ本数は増
加せず,ひび割れ幅が徐々に増加し破断に至った.引張鉄筋だけでなく圧縮鉄筋を有する (2'+ では,せ
ん断による斜めひび割れは発生せず,曲げひび割れだけが発生する結果となった.(2'+,(2'+ におい
ては,曲げひび割れと斜めひび割れが発生している.(2'+ では鉄筋にフックがないため,鉄筋とコンク
リートの付着強度が低く,鉄筋とコンクリートにずれが生じているため,ひび割れ幅が小さくなっている.
#$%&
#$%&
"#$%&
図
供試体概要
#$%&
#$%&
"#$%&
'#$%&
図
)!
'#$%&
)!
ひび割れ状況
破壊形式に注目した 供試体の曲げ試験
の 試験体
前節の予備実験によって,主鉄筋 本 フックあり を配置した供試体に斜めひび割れが発生し易いこと
が判明した.同じ鉄筋の配置でせん断スパン比 " を変化させて 点載荷の曲げ試験を行った.供試体
の寸法および概要は図 に示すように,
の寸法で,スパンは ,有効高
さ G# 一定とし,せん断スパン " を変化させることで " を変化させた.図 における斜線部を
計測範囲とした.予備実験と同様に,鉄筋は 鉄筋を使用し,スターラップは配置していない.配合は
水セメント比を Iとし,打設後 時間で脱枠し,水中で ) 日の養生期間をとった.また," を変化
させて実験を行った際に用いた供試体諸元を表 に示す.3(2'+ においては," が最大となるスパン
中央に 点集中荷重を載荷した.
図 に各供試体における載荷時の 計測によって得られた最大主ひずみの分布の推移およびひび
割れ状況を示す.載荷後のひび割れ状況と計測結果がよく一致していることがわかる.
第 章 はりのひび割れ発生・進展状況の可視化
"
表
)!# 供試体諸元
供試体 2'+
"
# (2'+
!
!
!
4(2'+
!
!
!
# #
図
)!
7(2'+
!
!*
!)
3(2'+
!
!*
!)
供試体寸法
)
)))
)))
))
))
))
()
())
))
)))
()))
)
)))
))
())
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)
)
)))
))
()
()
(2'+
4(2'+
7(2'+
3(2'+
図
)!)
最大ひずみ 分布とひび割れ状況
破壊形式に注目した 供試体の曲げ試験
#
の 試験体の実験結果
# !
の段階では,載荷点部分にひずみ集中が見られ,載荷点の右下の下端に小さなひずみの集中が見られ
る.下端に発生したひずみ集中は荷重を増加させた 4,7 の段階につれて上方に伸びてゆく.載荷後の
供試体を観察すると,このひずみ集中が見られた場所において,曲げひび割れが発生していた.3 の段階
になると曲げひび割れを発生させたひずみ集中の右側に新たなひずみの集中が見られる.この集中は,断
面中央から発生し下方に進展していく.ひび割れ状況の図を見てもわかるように,このひずみの集中が斜
めひび割れを発生させている.
# !
(2'+
と同様に,∼7 の段階においては載荷点から少し右側の下端から,ひずみの集中が発生し,曲
げひび割れが発生している.ひび割れ発生後,さらに荷重を増加させると,中央付近からひずみの集中が
発生する.このひずみは荷重の増加とともに斜め下方向に伸びてゆき,斜めひび割れを発生させる.(2'+
に比べ斜め方向のひずみの集中が小さい.ひび割れ状況からわかるように,斜めひび割れの幅が小さくなっ
ている.
# !
7(2'+
においては,はじめ載荷点の真下やや左よりの部分にひずみ集中が発生しているが,その集中は
それ以上は発展せず,4 の段階において断面中央部に新たな集中が発生する.7 の段階ではさらに別の
場所からひずみ集中が発生,このひずみがひび割れの原因.その後,3,+,5 において,ひび割れが
分岐していることがわかる.しかし,この集中によるひび割れは目視では発見できなかった.
# !
3(2'+
の供試体は," の値を最大にするために一点載荷としたため,斜め方向のひび割れは発生して
いない.中央右よりの下端からひずみ集中が発生し,荷重の増加とともに上方に進展した.+,5 の段階
になると,ひずみ集中は載荷点に向かって斜め方向に進展し,ひび割れの進展も同様の結果となった.
(2'+
の 試験体
から 3(2'+ の供試体は," が最大で ! 程度しかとれないため,図
試体を新たに製作し載荷実験を行った.寸法は に示すような寸法の供
である.また,鉄筋は 鉄筋一
本を,付着の効果を高める目的で,図に示すように楕円状に加工し,有効高さ が となるように配
置した.図 で示した供試体同様,配合は水セメント比を I,打設後 時間で脱型,水中養生をし養
生期間を ) 日とした.図 に示す寸法の供試体で載荷試験を行った際の諸元を表 に示す.
の 試験体の実験結果
各供試体の荷重D中央たわみ曲線,荷重Dたわみ曲線の各点における最大主ひずみ分布の推移とひび割れ
状況を図 ∼図
に示す.
!# !
初期ひび割れの発生する前の段階 , では,その主ひずみ分布には大きなひずみの集中は見られない.
ひび割れが発生した の段階ではそのひび割れ位置に大きなひずみの集中が発生している.その後,荷重
の増加に伴い,ひび割れ幅が増加してゆくが,ひび割れの本数には変化がない状態が続く.荷重が最大の
第 章 はりのひび割れ発生・進展状況の可視化
)
の段階では,ひび割れ発生位置より左に新たなひずみの集中がみられるが,鉄筋の降伏が起こり,新た
なひび割れ発生には至らなかった.
%# !
, の段階において,大きなひずみの集中は発生していない.荷重Dひずみ曲線が降下する の段階か
ら,中央縦方向にひずみの境界線が現れ, の段階では上部にひずみの集中が発生している.ひび割れ状
況を見ても,この部分にひび割れが発生している.縦方向のひび割れと別に斜め方向のひび割れが発生し
ているが,これは鉄筋が降伏した後のせん断ひずみ分布を見ると,斜めひび割れ発生位置に,せん断ひず
みの集中が発生していることがわかる.
&# !
ひび割れ発生前の の段階においては,大きなひずみ集中が見られないが,ひび割れが発生した の段
階では,ひずみの集中が発生している.荷重Dたわみ曲線の の段階において,ひび割れ発生位置から右
の位置にひずみの集中が発生するが,同位置ではひび割れは発生していない.ひび割れ位置のひずみの集
中は次第に載荷点に向けて斜め方向に伸びてゆき,ひび割れも同じように進展しており,載荷点において
は圧壊を起こしている.
'# !
1(2'+
における荷重Dひずみ曲線は 点までは直線的に伸びている.この 点における最大主ひずみ分
布において高さ方向の中央部分に斜めのひずみ集中が見られ,この集中部にひび割れが発生している.そ
の後 再び荷重Dひずみ曲線が上昇しはじめる の段階では,縦方向にひずみの集中が発生している.この
集中の値は,斜め方向のひずみ集中に比べ比較的大きいため,ひび割れ幅も縦方向のひび割れの方が大き
い結果となった.
(# !
(2'+
は " の値を としたため,中央一点載荷と類似した実験結果となった. の段階で中央左寄り
下部にひずみが集中し,同位置においてひび割れが発生している.その後荷重を増加させるが,ひずみ分
布には大きな変化がなく,そのまま鉄筋の降伏に至っている.ひび割れ状況を見ても,ひずみの集中が小
さいため,ひび割れ幅が小さい結果となった.
表
供試体 2'+
"
)!
供試体諸元
" # # +(2'+
!
!
!
!*
!
!
!
5(2'+
!
(2'+
!
1(2'+
!
#!)
!
)
(2'+
!
!
!
図
)!*
供試体寸法 破壊形式に注目した 供試体の曲げ試験
*
)
?
荷重 荷重 たわみ 荷重Dたわみ曲線
荷重Dたわみ曲線
* ))
* * (
* (
"* "* (
'* '* * * *
*)))
ひび割れ状況
ひび割れ状況
図
たわみ )! +(2'+
+ におけるせん断ひずみ分布
図
)! 5(2'+
第 章 はりのひび割れ発生・進展状況の可視化
#
荷重 荷重 )
)
たわみ たわみ 荷重Dたわみ曲線
荷重Dたわみ曲線
* * ))
* * ())
"* (())
"* (())
'* )))
'* (
* * ())
*
*)
ひび割れ状況
ひび割れ状況
図
)! (2'+
図
)! 1(2'+
破壊形式に注目した 供試体の曲げ試験
#
荷重 たわみ 荷重Dたわみ曲線
* * "* )))
'* * (
*
ひび割れ状況
図
)!
(2'+
第 章 はりのひび割れ発生・進展状況の可視化
#
せん断スパン比の異なる はりの載荷試験
試験概要
本研究では, はり試験体を用いて,せん断スパン比 H3 を様々に変化させ,二点載荷による曲げ試
験を行うことにより,せん断スパン比による破壊形態の違いについて検討した.供試体の寸法および概要
は図 に示すように の寸法で,スパンは ,有効高さ G# を一定
として,せん断スパン " を変化させることで " を変化させた.試験体の作製にはセメント,水,細骨材
の比を :!
: としたモルタルを使用した.鉄筋は 鉄筋を使用し,スターラップは配置していない.
また," を変化させて実験を行った際に用いた供試体諸元を表 に示す.さらに,試験により得られ
たせん断耐力の値と,既往の計算式を用いて算出された値との比較・検討を行った.
図
表
供試体 2'+
)!
)!
供試体寸法
供試体諸元
" # 2'+D
!
2'+D
!
2'+D
!
2'+D
!
#
!
# !))
試験結果
各供試体の荷重−変位曲線,各荷重段階における による全視野計測の最大主ひずみとせん断ひず
み分布,および破壊形態を図 ∼図
に示す.
破壊形態は,"G2'+ では,支点部でのせん断破壊!"G2'+2'+ では,曲げひび割れ
発生後,斜めひび割れによるせん断引張破壊およびせん断圧縮破壊."G2'+ では,曲げひび割れ
発生後に,曲げひび割れが発生していない箇所からのせん断ひび割れによる,斜め引張破壊であった.ま
た,試験時の のひずみ分布からも破壊形態を確認することができた.
せん断スパン比の異なる はりの載荷試験
#
25000
60000
⑤
④
50000
20000
③
④
荷重(N)
荷重(N)
40000
③
30000
②
15000
②
10000
20000
5000
①
10000
①
0
0
0
0.5
1
1.5
垂直変位(㎜)
荷重D変位曲線
2
2.5
0
0.5
1
1.5
垂直変位(㎜)
荷重D変位曲線
*))))
*()))
*)))
*)))
*)))
*)))
*(()))
*)))
最大主ひずみ分布
*)))
最大主ひずみ分布
*))))
*()))
*)))
*)))
*)))
*)))
*(()))
*)))
せん断ひずみ分布
*)))
せん断ひずみ分布
破壊形態
図
)! 2'+(
破壊形態
図
)!# 2'+D
2
2.5
3
第 章 はりのひび割れ発生・進展状況の可視化
#
16000
20000
14000
12000
⑤
③
12000
8000
荷重(kN)
荷重(N)
④
④
16000
②
⑤
③
10000
②
8000
6000
①
4000
4000
①
2000
0
0
0
0.5
1
1.5
2
2.5
垂直変位(㎜)
荷重D変位曲線
3
3.5
4
0
2
4
6
垂直変位(㎜)
荷重D変位曲線
*()))
*()))
*)))
*))))
*)))
*)))
*)))
*)))
*)))
最大主ひずみ分布
*)))
最大主ひずみ分布
*()))
*()))
*)))
*))))
*)))
*)))
*)))
*)))
*)))
*)))
せん断ひずみ分布
せん断ひずみ分布
破壊形態
破壊形態
図
)!) 2'+D
図
)!* 2'+D
8
10
せん断スパン比の異なる はりの載荷試験
#
せん断耐力算定式との比較・検討
せん断補強筋を用いないディープビームのせん断耐力算定式として,次式が提案されている.
$ G
¾¿ % ¾
¼
上式を用いて算定した値と,実験値との比較を表 に示す.また," と計算値および実験値との関係,
および実験値を計算値で除した値との関係を図 図 に示す.
全ての供試体において,実験値が計算値を上回る結果となった.しかし," が小さいほど,せん断耐力
が大きいという結果は一致した."G の供試体においては,実験値と計算値はほぼ一致したが," &
の供試体においては," が大きいほど,値が離れたため,他の算定式による検討が必要である.
表
供試体
)!
"
せん断耐力の実験値および計算値
実験値 $ "
計算値
(
!
)
)
(
!)
#
)
!
*##
!
!
)
(
*
!)*
*
(
!*
##
!
!
#
(
#
!)
#
!#
5
30000
25000
4
実験値
計算値
20000
Vmax/Vcal
せん断耐力(N)
!
)
(
(
!##
*)
!
(
(
$ "
$ "'
)
!
(
(
$ "'
15000
10000
3
2
1
5000
0
0
0
1
2
3
4
0
5
a/d
図
)!
実験値と計算値の比較
図
)!
1
2
a/d
3
" と $ "
$ "' の比較
4
5
第 章 はりのひび割れ発生・進展状況の可視化
#
まとめ
モルタル供試体の曲げ試験において,曲げひび割れ発生位置におけるひずみ集中を明瞭に観察すること
ができた.ひずみ集中が発生している位置,ひずみ集中が伸びる方向などから,ひび割れの発生位置が特
定可能であることが示せた.
供試体を用いた 点載荷曲げ試験において,せん断スパンD有効高さ比 " を変化させた載荷条件に
より,そのひび割れ発生形態の違いが確認できた.その際の 計測によって得られたひずみ分布図は
破壊形態と関連づけられるような結果が得られた.曲げひび割れを引き起こすひずみ集中と,せん断によ
る斜めひび割れを生じるひずみの集中は,その発生位置だけでなく,進展方向などに明瞭な違いがあるこ
とが確認された.
今回の実験に使用した 供試体では," の取り得る値に限界があること,また,寸法効果といった
影響が考えられることから,今後,より大きな寸法の供試体を用いた同様の実験を行うとともに,せん断
破壊耐力と曲げモーメントの比とせん断スパンと有効高さの比の関係,せん断ひずみ分布,せん断力とた
わみの関係に注目した研究を実施する予定である.
第章
矩形張力膜のリンクル計測
はじめに
膜材はその薄さ故に曲げ剛性をほとんど持たない.そのため,曲げや圧縮に対して抵抗力がほとんどな
く,曲げ応力や圧縮応力を受けるとすぐにリンクル(しわ)やスラッグ(弛み)などの変形問題を引き起
こしてしまう.リンクル現象は,膜構造物の美観を損ねるだけではなく,膜材の破断の原因となったり,雨
水や雪の影響でポンティング現象の原因になるなど,膜材の維持管理上好ましくない諸々の事柄を引き起
こす.このため,リンクル現象の挙動を把握することは膜構造物にとって重要な問題となっており,リン
クル発生や膜構造物の制御問題に関する実験的及び解析的な研究がこれまで多く行われている.現在,リ
ンクル現象に関する実験的研究では,膜材の変形能が大きく非線形性が強く,さらにリンクル発生箇所が
特定できないため,接触式定点計測のような従来使用されてきたひずみゲージ式計測手法では困難なもの
になっている.
本章では, 計測法を用いて非接触全視野での膜材の応力・ひずみ分布を計測し,張力膜のリンクル
現象の発生過程について考察するとともに,膜材の計測法への適用可能性を検討した.
の膜材への適用性の検討
ひずみ値の照査
実験概要
ひずみ値の照査では,膜材の一軸引張試験を行い, で計測した値と理論値を比較しその計測精度の
検討を行う.試験片はポリエステルフィルム(ルミラー)を使用し,アスペクト比 :(
× )
のものを作製した.その材料特性は表 *! に示すとおりである.試験片の下端を完全固定 上端に引張力を
加え,
× を計測範囲とした. 計測より得られるひずみ値は軸方向のひずみ,理論値
は載荷装置より得られる膜材の伸び量より算出するものとする.
表
弾性係数
ポアソン比
?
!
*!
材料定数
膜厚
μ
##
破断強度
破断伸度
#
%
第 章 矩形張力膜のリンクル計測
#)
実験結果
計測および理論計算による荷重(ひずみ曲線を図 *! に示す.図よりほぼ一致した結果を得ること
ができている.この結果より 計測より得られるひずみ値は十分有用であることが確認できた.
250
荷重(N)
200
理論値
ESPI
150
100
50
0
0
2
4
軸方向のひずみ(×0.001)
図
*!
6
荷重(ひずみ曲線
ひずみ分布照査
実験概要
ひずみ分布照査では,膜材の一軸引張試験時の 計測によるひずみ分布と,汎用 解析ソフト
による弾性 解析結果のひずみ分布を比較し,精度の検討を行った.試験片寸法を図 *! に示す.
また,解析モデルは図 *! に示すように, 節点平面シェル要素を用い,境界条件は下端を完全固定とし,
上端に引張力を載荷した.
6.00
150.00
150.00
図
図
*!
*!
解析モデル
試験片寸法
実験結果
計測及び 解析より得られた最大主ひずみ,最小主ひずみを図 *! に示す.これらの結果を比
較すると,ひずみ分布の形状,ひずみ集中の発生箇所がほぼ一致していることから,膜材に対して 計
測で得られたひずみ分布の信頼性を確認することができた.また,非線形性の強い材料である膜材におい
て,本実験方法の妥当性も証明することができたと考えられる.以上のことより,非線形性の高い膜材に
対しても 計測は有効であることが示せた.
リンクル現象の面内変位計測
計測
()最大主ひずみ
#*
図
計測
解析
()最小主ひずみ
*!
解析
ひずみ分布照査
リンクル現象の面内変位計測
実験概要
矩形張力膜のリンクル発生過程におけるひずみ値やひずみ分布の推移を 計測し,その挙動特性か
らリンクル現象について考察する.試験片にはポリエステルフィルムルミラーを使用し,表 *! に示す 種類の試験片を作製した.この試験片を用いて一軸引張試験を行いリンクル過程において, 計測測を
行った.計測範囲は幅 であるが,高さは試験片 , が , は とした.
表
試験片寸法
*!
アスペクト比
試験片 試験片 試験片 寸法()
:
× :
× :
× 実験結果
各試験片のリンクル発生荷重を表 *! に示す.試験片 ,, における荷重(ひずみ(最大主ひずみ,
最小主ひずみ,せん断ひずみ)曲線を図 *!∼図))に示す.なお,各ひずみ値は,図 *!
に示す試験片中
央の幅 ,高さ の計測領域の平均値を用いた.
表
10.00
*!
各試験片のリンクル発生荷重
リンクル発生の有無
リンクル発生荷重(目視)
試験片 〇
約 試験片 〇
約 試験片 ×
無し
150.00
図
*!
計測領域
第 章 矩形張力膜のリンクル計測
)
600
250
200
荷重(N)
荷重(N)
450
300
150
100
150
50
0
0
2
4
6
8
10
最大主ひずみ(×0.001)
12
0
14
0
()荷重!最大主ひずみ線図
2
3
4
5
最大主ひずみ(×0.001)
6
7
-12
-14
()荷重!最大主ひずみ線図
600
250
200
荷重(N)
450
荷重(N)
1
300
150
100
150
50
0
0
-0.5
-1
-1.5
-2
-2.5
最小主ひずみ(×0.001)
-3
-3.5
0
-4
0
()荷重!最小主ひずみ線図
200
荷重(N)
荷重(N)
-6
-8
-10
最小主ひずみ(×0.001)
250
450
300
150
100
150
50
0
0
0
0.5
1
1.5
せん断ひずみ(×0.001)
2
0
2.5
*!
荷重と各種ひずみの関係(試験片 )
-2
-4
せん断ひずみ(×0.001)
-6
-8
()荷重!せん断ひずみ線図
()荷重!せん断ひずみ線図
-4
()荷重!最小主ひずみ線図
600
図
-2
図
*!#
荷重と各種ひずみの関係(試験片 )
荷重と各種ひずみ線図の関係
図 *!∼図))の各試験片タイプの荷重(ひずみ曲線を比較する.
試験片 , では,最大主ひずみは荷重と共に滑らかに増大していくが,最小主ひずみは荷重が増大し
ていくと目視によるリンクル発生荷重直前に,ひずみ値が緩和するという特異な現象を確認することがで
きた.リンクル発生を確認できなかった試験片 においては,最小主ひずみのひずみ緩和は確認すること
ができなかった.
これより,以上のような初期条件での矩形張力膜の一軸引張試験において,最小主ひずみがもたらすひ
ずみ緩和はリンクル発生に依存するものと考えられる.
リンクル現象の面内変位計測
)
600
500
荷重(N)
400
300
200
100
0
0
5
10
最大主ひずみ(×0.001)
15
20
()荷重!最大主ひずみ線図 600
荷重(N)
450
300
150
0
0
-1
-2
-3
-4
最小主ひずみ(×0.001)
()荷重#最小主ひずみ曲図
600
500
荷重(N)
400
300
200
100
0
0
0.5
1
1.5
せん断ひずみ(×0.001)
2
2.5
()荷重#せん断ひずみ線図
図
*!)
荷重と各種ひずみの関係(試験片 )
なお,各試験片の荷重Dせん断ひずみ曲線の挙動は不安定であるのは,治具の微小なすべり,載荷中の微
小な回転,さらには初期不正などの影響により,このような不安定な挙動が生じたことが考えられる.
本試験の条件下において,張力膜のリンクル発生現象が最小主ひずみの緩和点と関係づけられることが
確認された.これは膜構造の分岐座屈理論に寄与するところ大であると考えられる.
次に,リンクル発生過程における膜面全体のひずみ分布の推移を調べるため,各試験片の計測範囲全体
および中央断面での最小主ひずみ分布を図 *!*∼図 *! に示す.
第 章 矩形張力膜のリンクル計測
)
600
(d)
荷重(N)
450
リンクル発生荷重:約310N
300
(b)
(a)
(c)
150
0
0
-0.5
載荷
-1
4
-1.5
-2
-2.5
最小主ひずみ(×0.001)
載荷
-3
7)
-3.5
-4
載荷
3
載荷
最小主ひずみ(×0.001)
2
1
0
-1
-2
-3
-4
-5
0
50
100
中央断面の幅方向距離(mm)
10N
図
*!*
110N
280N
150
400N
最小主ひずみの推移(試験片 )
最小主ひずみ分布に注目した考察
図 *!* および図 *! に示す試験片 , の最小主ひずみ分布図では,荷重が増加するにつれてリンクル
が発生していた箇所にひずみが縞状に局所的に集中して発生していることが分かる.
リンクルが目視により確認できた荷重より小さな荷重時でも その兆候を見ることができる.また,中央
断面におけるひずみ分布からでもそのことを確認することができる.
リンクル現象の面内変位計測
)
250
荷重(N)
200
リンクル発生荷重:130N
150
(d)
100
(c)
(a)
50
(b)
0
0
-2
載荷
-4
4
-6
-8
-10
最小主ひずみ(×0.001)
載荷
7
-12
-14
載荷
3
載荷
最小主ひずみ(×0.001)
5
0
-5
-10
-15
-20
-25
-30
0
20
図
*!
40
60
80
100
120
中央断面の幅方向距離(㎜)
30N
100N
150N
200N
140
最小主ひずみの推移(試験片 )
一方,図 *! に示す試験片 では,目視観察ではリンクル発生を確認することはできなかった.
計測によるひずみ分布も荷重が増加しても全体的にひずみが増大しているだけで試験片 および のよう
な縞状の分布は確認することができなかった.試験片 での中央断面におけるひずみ分布からは,全体的
にひずみは増加し小さな縞は確認できるものの,試験片 および のような縞状に大きくひずみが集中す
る箇所は確認することができなかった.これらの結果からも最小主ひずみ分布を観察することにより,リ
ンクル発生箇所と荷重を特定できるものと考えられる.
第 章 矩形張力膜のリンクル計測
)
600
リンクル発生荷重:無し
荷重(N)
450
(b)
(d)
300
(a)
(c)
150
0
0
-1
-2
-3
-4
最小主ひずみ(×0.001)
載荷
4
載荷
7
載荷
3
載荷
最小主ひずみ(×0.001)
1
0
-1
-2
-3
-4
-5
-6
0
50
100
中央断面の幅方向距離(mm)
30N
図
*!
200N
300N
150
500N
最小主ひずみ分布の推移(試験片 )
考察およびまとめ
本研究で得られた結果は以下のようにまとめられる. 矩形張力膜のリンクル計測では, 計測による荷重−最小主ひずみ曲線におけるひずみ緩和点
をリンクル発生荷重として捉えることができる.
計測による全視野最小主ひずみ分布図より,リンクル発生箇所の予測が可能である.
非接触可搬式3 計測装置を用いたリンクルの面外形状計測では,微小なリンクルも計測できる
ことが確認できた.
第 章
複合積層板の自由振動特性
はじめに
繊維強化型複合材料 は,比強度,比剛性および軽量性に優れており,航空機産業などの分野で発
達してきている.この材料は,樹脂と繊維を組み合わせることによって,単独では持ち得なかった性能を得
ることができ,組み合わせる種類によって幅広い性能が得られることから,
&%D3+
の材料とも言える.
土木工学分野においても,プレストレスコンクリート緊張ケーブルやグラウトアンカー,コンクリート
補強などへの用途が一般的なものとなりつつあり,さらに積極的な利用方法として,鉄やコンクリートに
代わる一次土木構造材料としての用途が注目されている .
繊維強化型複合材料の一次土木構造材料としての適用は,土木構造物の軽量化によるコストダウン,長
寿命化による維持管理労力の軽減などの利点が期待できる一方,土木工学分野では経験の少ない異方性材
料であること,土木での長期的耐久性データが少ないこと,弾性係数が比較的小さいことなど,解決すべ
き課題も多い.
繊維強化型積層板の自由振動問題に関する解析的な研究は,厳密解が得られる四辺単純支持された場合
を除けば,何らかの近似解法によらなければならないが,有限要素法 ,伝達マトリックス法 ,選点法
,スプライン帯板法 などによる検討が行われている.
実験的および解析的な研究は,水澤ら は周辺自由板の振動実験,音響実験から得られた振動数とスプ
ライン要素法を用いた解析結果と比較しているが,等質・等方性板のものであり,積層板の自由振動特性
に関する実験,解析の両面からの研究は,著者らの知る限り見当たらない.
そこで本章では,まず,グリーン関数を用いた固有値問題の解析手法 を,種々の積層順序および配向
角を有する片持ち積層板の自由振動問題に適用し数値解析を行う.さらに,レーザーホログラフィ干渉法
を用いた振動実験により,振動数および振動モードを求め,本解析結果と比較し,積層順序および配
向角などのパラメータが積層板の振動数および振動モードに及ぼす影響を調べ,片持ち積層板の自由振動
特性を明らかにすることを目的としている.
解析手法
積層板の基礎微分方程式
図$ に示す積層板は,( 層のラミナから成り,各ラミナは均質な直交異方性材料とし,密度および
厚さは同じであり,それぞれ完全に密着しているものと仮定する.図$ に示すように,材料の直交異
)
第 章 複合積層板の自由振動特性
)
+
(
*
)
)
)
+
%
)
)
"
図
!
積層板
方性主軸を で表わし,主軸 と はそれぞれ 軸と 軸に対し傾き プライ配向角 だけ傾いてい
るものとする.板厚中央面に対して面内変位成分を ,および垂直方向の変位成分を とし,面内力を
( ( および ( ,せん断力を , ,,ねじりモーメントを - ,曲げモーメントを - - ,たわみ角
を とすれば,横荷重 . を受ける積層板の曲げに関する基礎微分方程式は,一次せん断変形理論に基
づいて,次の連立偏微分方程式となる.
/( /(
C
G /
/
/( /(
C
G /
/
/, /,
C
G
.
/
/
/- /-
C
, G /
/
/- /-
C
, G /
/
/ / / / /
/
/
/
C
C1
C 1
C 1
C
- G 0 C 0 C 0
/
/
/ /
/
/
/
/
/
/
/ /
/
/
/ / - G 0 C 0 C 0
C
C1
C 1
C 1
C
/
/
/ /
/
/
/
/
/ / / / /
/
/
/
- G 0
C 0
C 0
C
C1
C 1
C 1
C
/
/
/ /
/
/
/
/
/
/
C C2
C , G 2
/
/
/
/
, G 2
C C2
C /
/
/ / / / /
/
/
/
( G C C C
C0
C 0
C 0
C
/
/
/ /
/
/
/
/
/
/
/ /
/
/
/ / ( G C C C
C0
C 0
C 0
C
/
/
/ /
/
/
/
/
/ / / / /
/
/
/
( G C C C
C0
C 0
C 0
C
/
/
/ /
/
/
/
/
!
!
ここで,.
!
!
!
!
!#
!)
!*
!
!
!
!
. 垂直方向荷重強度,2 G せん断修正係数であり, 面内剛性,0 カップリン
G
グ剛性,1 曲げ剛性は,積層順序,配向角などによって変化する積層板特有のもので次式で与えられる.
G
, 0
G
, 1
G
, 解析手法
)#
!
!
!
3!
%
3 !
!
%4
!
!
!
図
"5
!
#
!
!
!
!
!
!
!
!
!
"
積層板の離散点
なお,, は付録 に示すとおりである.
離散化グリーン関数
本章においては,グリーン関数を用いた固有値問題の解析手法を提案する.
まず,基礎微分方程式の積分方程式への変換と積分方程式の近似解法の応用とにより,積層板の基礎微
分方程式の離散解を求め,これに基づき離散化されたグリーン関数を求める.さらに,このグリーン関数
を用いて運動方程式を積分方程式に変換し,これに数値積分を適用して固有値解析を行う.次の無次元量
",
",
"-
"-
! G
! G
! G
1 1 1 1 "-
!
G ! G ! G ! G ! G ! G
1 "
"
"
" (
" (
" (
! G
! G
! G
1 1 1 ! G
および,
に関して,
"5 G %4 なる無次元量 5 4 を導入すると,無次元化された離散化グリーン
関数は,任意の点 G G " G 5 % G 4 に作用する単位荷重 により,次式で表される.
G
! 5 4 5 4 G
"
6 5 4 5 4 1
!
ここで,式 ! は,任意の点 5 4 に単位荷重 が作用した場合 . 5 4 G Æ 5
5 Æ 4 4
の垂直方向変位である.無次元化されたグリーン関数を求めるため,式 !
を無次元化する
!
と次式で表される.
/!
7 /4
C
7
/!
/5
C
7!
"
C
Æ Æ5
1 5 Æ 4 4
G G ここで,7 7 7 は断面力および変形にかかる無次元化された係数であり,Æ 5
ラックのデルタ関数,Æ クロネッカーのデルタである.
!
5 Æ 4 4
ディ
図$ に示すように,矩形板を横,縦方向にそれぞれ 等分し,これらの等分割線の交点の集合体
とみなす.ここで,任意の交点 3 に関連する矩形領域 5 5 4 4 に注目し,これを 3 と
K
L
第 章 複合積層板の自由振動特性
))
, G - G ( G , G - G - G ( G ( G , G , G - G - G - G ( G ( G ( G ++ !
- G ++ !
, G ++ !
- G ( G ( G &'+3 !
, - (
, - - ( (
図
!
, - (
積分定数と境界条件
表記することとする.また,◎印を付けた交点を任意領域 K 3 L の主要点,○印を付けた交点を内部従属点,
●印を付けた交点を境界従属点と称して区別する.
基礎微分方程式 !
における 7 7 7 が変数係数であることに注意し,領域 K 3 L において面
積分することにより積分方程式に変換し,次に積分方程式の近似解法を応用すると,板の縦横の等分割線
の交点に関する離散解は,次式のように整理される.
!
G
"! C
% !
.
C
!
8 G # ) * G # ) * 式 ! は板の離散表示された離散解である.この式中に含まれる境界従属点の諸量 ! ! はい
わゆる積分定数であり,境界条件によって決定されるべきものである.また,任意の領域 K 3 L の主要点に
おける諸量 ! を,この領域の境界従属点における諸量 ! ! に関係づける要素 " % は,格
間伝達マトリックスに相当するものである.なお,離散解の誘導過程の詳細は,文献 を参照されたい.
積分定数と境界条件
基礎微分方程式 !
ぞれ板の !
の近似解 ! に含まれる積分定数 ! ! は,具体的には,それ
G なる辺上における断面力および変形を表わす. G において , - ( ,
G に
おいて , - ( は積分定数として存在しないため,各等分割点において合計 個ずつの積分定数が存
G 在するが,板の境界条件に応じて,これらの中のいずれか 個の積分定数は,はじめから既知である.残
りの 個の未知なる積分定数は,
G
" G % の各辺の境界条件によって決定される.
図$ に,片持ち板の場合の積分定数と境界条件を示す.隅角点における積分定数および境界条件は,
その隅角点において, 境界辺上での諸量間の関係を考慮して定められ,
で囲まれている.
解析手法
)*
固有振動数方程式
積層板の自由振動を支配する運動方程式は,式 ! の荷重強度を単位面積当りの慣性力とすればよく,
次式となる.
+9
ここで, 積層板の材料密度,9 固有円振動数であり,, ( は前述の単位荷重を受ける場合の断面
/,
/
C
/,
/
G
!#
力および変形と区別している.
同様に次の無次元量 :
:
" ,
" ,
"- "- : G
: G
: G
1 1 1 1 "- :
G : G : G : G : G : G
1 "
"
"
"( " ( "( : G
: G
: G
1 1 1 : G
を導入すると,積層板の自由振動を支配する偏微分方程式は,次のように表わされる.
/:
; /4
C
;
/:
/5
C
;:
G G !)
まず,式 !# を無次元化し両辺に : を乗じ,全領域において面積分を行い, 重積分することによ
り順次展開する.周辺の境界条件を考慮するといずれの境界条件の場合も整理され,次式となる.
:5 4 G 6 5 4 5 4 :5 4 + 54
!*
ここで,
%
G "
G
+ 9 "
1
+
G
+5 4 +
である.
次に,式 !* に等間隔の数値積分を適用すると次式が求まる.
:
G
< < 6
: +
#
G G
!
ここで,< < は数値積分における重み係数である.
式 ! を整理すると積層板の固有振動数方程式は次式となる.
6
ここで,
K
6L
G
M
G
0 6 0 6
0 6 0 6
!
!
!
!
!
!
06 0 6
!
!
!
!
0 6
0 6 !
!
!
0 6
第 章 複合積層板の自由振動特性
*
アルミ合金板
図
!
クロスプライ積層板
アングルプライ積層板
アルミ合金板および積層板の試験片
表
!
試験片の材料特性
? ? ; ?
/H
アルミ合金
*!
*!
!
!
!
*
*!
!)
!
!)
0
G
< < + !
!
!
KML
G
+
!
!
!
!
!
!
!
!
!
!
!
!
+ 実験および解析結果
試験片
試験片の寸法は,アルミ合金板とアングルプライ 配向角を とすれば,C と
る 積層板の場合は,高さ #
,幅 *,厚さ ,クロスプライ Æ
G の組み合わせから成
と
Æ
G *
の組み合わせ
から成る 積層板の場合は,高さ ,幅 ),厚さ であり,図$))に示すようにどちらも下端
)
の箇所に ) 点の開孔を設け,ボルトにより治具に完全固定する.
実験に使用したアルミ合金,4%-
4+ + -5%7+3 &0 7
,以下
と略記 試験片を
図$ に,材料特性を表$ にそれぞれ示す.なお, 試験片には,東邦テナックス 株 製の材
料プリプレグ .D,>
H,I を使用している.
アルミ合金板の結果
はじめに,本解析法の精度およびホログラフィ干渉計測の実用性を検討するために,等質・等方性の材料
である片持ちアルミ合金板の振動解析および実験を行った.板の縦横の分割数 G
G ) とした場合
実験および解析結果
*
表
!
片持ちアルミ合金板の振動数
# ,A
G
0
-3
3
1
1
1
!
!
#!
**!
#
)#
)
!
#!)
)!
)#!*
*)!
#
!*
!
#!
)
!
*!)
#
!
!
!
)!
*)!
&00+-
!
!
!
)!
*!
B'+ +-
!
!
)!
)
!
)*!
B! 9!
B! 9 B'%&+3 9&+ K)DL!
解析結果
),-
実験結果
解析結果
実験結果
解析結果
)),-
(,-
(,-
(,-
次モード
次モード
(,-
,-
,-
図
の 次までの振動数および ),-
!
7130%-
),-
次モード
,-
次モード
( 次モード
実験結果
),-
次モード
アルミ合金板の振動モード
の補外公式によって求めた推定収束値 ) 分割と 分割,&00+-
による解 および実験値を表$ に示す.
本解析法による数値解析結果は,分割数の増加とともに一様に収束し,比較的粗い分割による解析にお
いても,実用上,十分の精度をもつ解が得られている.さらに 7130%-
の補外公式による推定収束値
は,比較解に極めて近づくことが示されている.なお,以後の解析結果では推定収束値 ) 分割と 分割
を用いることとする.
実験結果と解析結果を比較すると, 次の振動数においては多少の差があるものの,それ以外の振動数
はせいぜい数%の差である.これは,実験においては境界条件が完全に固定とはなっていないために,こ
の程度の差が出たものと考えられ,実験上の誤差もあることを考慮すると,妥当な結果が得られていると
考えられる.
図$ には, 次までの振動数と振動モードを示している.実験と解析では同様な振動モードが得られ
ており,レーザーホログラフィ干渉計測による実験結果は,十分妥当であると考えられる.
第 章 複合積層板の自由振動特性
*
表
! 積層順序
Æ
* *
Æ
* * K
K
Æ
K*
Æ
Æ
Æ
Æ
Æ
Æ
*
Æ
Æ
Æ
L
L
L
クロスプライ積層板の振動数
次数
0
-3
3
1
1
1
実験 ,A
#
)
*)
*
))
解析 ,A
#
*
)
#
)
))
実験 ,A
*
)
解析 ,A
*
*
#
#
)
実験 ,A
)
)
*)
)
#*)
解析 ,A
*
*
)
)
次モード
)(,-
(,-
(,-
),-
),-
,-
( 次モード
次モード
,-
次数
図
Æ
Æ Æ
Æ
! ,-
(,-
Æ
Æ
Æ Æ
Æ Æ Æ
Æ
積層板の振動モード
クロスプライ積層板の結果
つづいて,片持ち積層板の自由振動特性に及ぼす積層順序の影響を明らかにするために, クロス
プライ積層板の振動解析および実験を行った.用いた積層板は全て ) 層からなり,KÆ*Æ Æ *Æ L配向
角 Æ *
Æ
*
Æ
Æ
の積層順序を 層重ねた積層構造,KÆ
* * Æ
Æ
Æ
L
および K*Æ Æ Æ *Æ L の 種
類のクロスプライ積層板である.
表$ には, 次までの振動数を示している.いずれの積層順序においても,実験結果と解析結果はほ
ぼ一致した値を得ており,アルミ合金板の場合と同じように,実験による振動数は,全般的に解析結果を
若干下回る結果となっている.
振動モードにおいても,実験と解析では同様な結果が得られている. 次, 次および 次のモードは,い
ずれの積層順序においても同様なモードであるが, 次∼
次のモードは,図$ に示すように積層順序に
よって出現順序が変わっている.KÆ *Æ Æ *Æ L にすると,等質・等方性のアルミ合金板の振動モードと
同じ出現順序であるが,KÆ*Æ *Æ Æ L とすることで, 次と 次の出現順序が入れ替わり,K*ÆÆ Æ
*
Æ
L
とすることで, 次と 次の出現順序が入れ替わってくる.これは,これら 次∼
次の振動数には
実験および解析結果
*
表
積層順序
Æ
Æ
Æ
K
K
K
アングルプライ積層板の振動数
! Æ
L
Æ
L
Æ
L
次数
0
-3
3
1
1
1
実験 ,A
!#
*
##
*#*
解析 ,A
!
)
#
*
実験 ,A
))!
*
)*
###
*
解析 ,A
))!
*
#
*
実験 ,A
**
#)*
#*
)*
解析 ,A
)
*
*
)
解析結果
実験結果
解析結果
).),-
.,-
(,-
,-
(,-
,-
アングルプライ積層板 !#
解析結果
実験結果
,-
,-
次モード
),-
次モード
( 次モード
図
(,-
次モード
次モード
,-
実験結果
,-
次モード
Æ
G の振動モード
あまり差がなく,積層順序を変えることによって,出現順序が替わりやすい積層構造であると考えられる.
アングルプライ積層板の結果
さらに,片持ち積層板の自由振動特性に及ぼす配向角の影響を明らかにするために, アングルプ
ライ積層板の振動解析および実験を行った.用いた積層板は全て ) 層からなり,K
層のことである. とし,
表$ には,
Æ
G G Æ
*
Æ
Æ
Æ
Æ
Æ
Æ
L
添字 は対称積
の 種類の対称アングルプライ積層板である.
の場合の 次までの振動数を示している.いずれの配向角においても,
実験結果と解析結果はほぼ一致した値を得ている.
図$ および図$ には,それぞれ Æ
G および G Æ
の場合の 次までの振動数と振動モー
ドを示している.アングルプライ積層板では,繊維方向に角度があるため,左右対称の振動モードは出現
せず,繊維方向に影響された振動モードが出現している.このような積層構造においても,ホログラフィ
干渉計測は,解析結果と一致した振動モードを示している.
図$ に, を Æ きざみで解析した結果を示す.同図より,配向角を変化させることにより, 次,
次の振動モードに変化は見られないが,Æ で 次であったモードが *Æ では 次で現われ,逆に,Æ で
#
次であったモードが *Æ では 次で現われるように,振動モードは配向角に大きく影響される.
第 章 複合積層板の自由振動特性
*
解析結果
,-
実験結果
解析結果
実験結果
解析結果
,-
,-
,-
,-
次モード
(,-
次モード
,-
( 次モード
図
!)
),-
,-
次モード
),-
),-
次モード
アングルプライ積層板 実験結果
,-
次モード
Æ
G の振動モード
まとめ
本研究では,片持ち積層板の自由振動特性を明らかにするために,まず,グリーン関数を用いた固有値
解析法を片持ち積層板に適用した.本解析法は,基礎微分方程式の積分方程式への変換と積分方程式の近
似解法の応用とにより,積層板の基礎微分方程式の離散解を求め,これに基づき離散化されたグリーン関
数が得られ,このグリーン関数を用いて運動方程式を積分方程式に変換し,これに数値積分を適用した固
有値解析法である.本解析法を用いて,積層順序および配向角をパラメータとした片持ち積層板の自由振
動解析を行った.
さらに,レーザーホログラフィ干渉法を用いた振動実験により,振動数および振動モードを求め,本解
析結果と比較し,積層順序および配向角などのパラメータが積層板の自由振動特性に及ぼす影響を調べた.
得られた結果は次のとおりである.
本解析法による数値解は,一様に収束性を持つこと,また,)
分割程度の比較的粗い分割による
解析においても,実用上,十分の精度をもつ解が得られていることなどが確認された.
ホログラフィ干渉法を用いた振動実験では,振動数においては,解析結果と比べて全般的に若干下
回った結果であったが,ほとんどが数%の差であった.振動モードにおいては,一致した結果が得ら
れた.
積層順序および配向角は, 次, 次の振動モードにはあまり影響はないが, 次以降の振動モード
の出現順序に影響を与える.
以上のように,積層順序および配向角を変えることにより,振動モードの発現順序を変えることができる
ため,特定の振動モードを抑えることが可能である.このことを利用して,例えば超長大橋における,橋
梁桁断面の流線形化と同様に,上部構造部材にテーラリングできる複合材料を用いて,不利な振動を受け
る箇所に最適な積層順序および配向角を選ぶことにより,構造物の耐風安定性などを高めることができる
ものと思われる.
なお今回は,片持ち積層板に限った解析および実験であったが,本解析手法は,種々の境界条件にも適
用できることを確認している.しかしながら,レーザーホログラフィ干渉計測装置は,防振台上での実験
であり,現状では片持ち積層板しか取り扱えない.今後改良を行っていく予定である.
参考文献
*
振動数
K,AL
#
K
図
Æ
#
*
L
配向角の影響
!*
付録 , G , C , C ,
C , , G , C C , C ,
,
, G , C , C ,
C , , , , , , , , ,
,
, , ,
, ,
,
, , , , , , , , , , ,
,
G ,
,
G ,
G , G
, G
C
C
, G ;
C
G G
C
G
C
G
G 7%0
G 0 - ,
G ;
, G ;
参考文献
建設省土木研究所 繊維強化プラスチックの土木構造材料への適用に関する共同研究報告書 −一
次構造材料としての の適用事例調査−,**)!
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参考文献
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芳村 仁・三上 隆・朴 勝振
逆対称アングル・プライ積層板の自由振動解析 構造工学論文集
$%&!#
''!*D** **!
#
)
*
水澤富作・鬼頭博史 高次せん断変形理論に基づくスプライン帯板法を用いた積層複合板の振動解析
について 構造工学論文集 $%&! ''!#D) **!
水澤富作・近藤八重・木村健一・名木野晴暢 平板の振動モードの縮退と連成挙動について 応用力学
論文集 $%&! ''!D !
森田千尋・松田浩・崎山毅・佐治孝記・浦田英知・黄美 クロスプライ積層偏平シェルの自由振動問
題に関する一解析法 構造工学論文集 $%&! ''!D **)!
久保田敏弘 ホログラフィ入門 朝倉書店 **
!
& +&0/ 著 辻内順平 訳 ホログラフィによる計測と検査D工業で使われるホログラフィーD
新技術コミュニケーションズ ***!
崎山 毅・松田 浩 変厚矩形板の曲げの一解析法 土木学会論文報告集 第 ) 号 ''!D) *)!
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第 章
レジンコンクリートの硬化収縮過程のひずみの可視化
はじめに
コンクリート構造物を長期間にわたり供用していくと,コンクリートの乾燥収縮や自己収縮,急激な温・
湿度変化,使用材料または外部から侵入した腐食物質に起因する化学反応,といった種々の要因によって
局部的な引張応力が発生する.その引張応力の値が限界を超えるとひび割れが発生する.ひび割れはそれ
自体が美観を害するだけでなく,ひび割れからの漏水や気密性の低下など,コンクリート構造物に影響を
与える.また,ひび割れの上に施した仕上材のひび割れ発生やコンクリートと仕上材との接着不良を生じ
させる,といった問題点もある.
本章では, 計測を用いた動的全視野ひずみ測定できる装置を構築することを目的とし,コンクリー
トの硬化中の強度発現過程における変形状態のリアルタイムかつ全視野計測を実施した.
コンクリートの硬化に伴なう収縮挙動
硬化中のコンクリートは,水分が乾燥により逸散するため収縮する,これを乾燥収縮 32
- 01 -/+
とよぶ.この乾燥収縮は引張破断時のひずみ 伸び能力 と同程度以上に達するため,構造物が内的,外的
に拘束された場合,ひび割れ発生の原因となる.乾燥収縮は間隙水が水蒸気として空中に逸散するため,重
量減少を伴う.蒸気はコンクリートの表面から内部に向かって進むので,断面内で一様ではなく,大型部
材になると,乾燥収縮は表面だけに影響する要因となる.
コンクリートの硬化過程における収縮による表面ひずみの計測を非接触で計測が可能である 計測
装置を用いて行った.また,計測対象としたコンクリートには,計測時間の短縮を図るため,打設後,短
時間で強度が発現するレジンコンクリートを使用した.
レジンコンクリート
レジンコンクリートは結合剤にセメントなどの鉱物質材料を使用せず,熱硬化性樹脂を使用したコンク
リートである.合成樹脂を用いて骨材を結合硬化させたものであり,その結合と硬化の過程は,分子間の
重合反応である.これはセメントコンクリートにおけるOセメント+水Oの水和反応とはまったく異なる結
合形態であり,その硬化特性も違ったものとなる.また,骨材には砂利,砂,砕石を使用するが,砂より
も粒度の細かい充填材を併用するのが一般的である.
*#
第 章 レジンコンクリートの硬化収縮過程のひずみの可視化
*)
レジンコンクリートの特色として以下のことが挙げられる.
!
物理的強度のうち,特に引張強度と曲げ強度が大きい.
!
耐薬品性に優れている.特に耐酸性は強い.
!
耐磨耗性が大きい.セメントコンクリートと比較して結合剤の使用量が少なく,圧縮強度も
)
∼
程度と大きい.
!
不透水性で凍結融解による強度の劣化の影響を受けない.
!
硬化時の強度上昇が早い.
!
硬化時間を,人為的にかつ広範囲に制御可能である.
#!
電気絶縁が良好である.
一方,問題点としては以下のことが挙げられる.
!
物理的強度に対する温度依存性高い.
!
持続載荷による物理的強度への影響が大きい.
!
硬化時の体積変化が大きい.
!
結合剤として使用する樹脂,添加剤が高価である.
このようなレジンコンクリートの特徴を活かして使用される用途として,マンホール,パイプ,= 字溝,カ
ルバートなどのプレキャスト製品が作られている.現場施工の例としてはダム排水路の補修,温泉地の建
築基礎等が挙げられるが,試験施工の域を脱しておらず,また,品質が不安定であることや経済性といっ
た面から,まだ実用化には至っていない.
レジンコンクリートに使用する複合材料,骨材
レジンコンクリートの性質は,使用する樹脂の種類,使用量に起因する要素ならびに各種の複合材料,骨
材等との組み合わせにより変化する.これは現場施工の要求に柔軟に対応できる一方,複合材料,骨材の
性状に十分注意を払う必要がある.以下に今回使用した材料について説明する.
!
硬化剤:重合反応によりレジンコンクリートに硬化する機会を与える材料で,重合開始剤とも呼ばれ
る.一般には樹脂の I 前後を使用する.
!
硬化促進剤:常温硬化時に使用する.硬化剤と併用して相乗効果を発揮し,重合反応を促進させる.
!
低収縮剤:収縮の割合を低くするために樹脂に混ぜて使用する.液状の樹脂硬化に与える水分の害を
低減させる.
!
細骨材,粗骨材:洗浄,強硬,耐久的で適当な粒度を持ち,有機物の含まないものを使用する.今回
は大小 種類の粒径を使用する.また,骨材中に含有する水分は結合硬化に影響があるため,含有率
は !I以下のものを使用する.
!
充填剤:結合剤としての樹脂の使用量を少なくしてコストを引き上げるとともに成形性を改善,各種
性能の向上を付与する目的で加えられるものであり,今回はフェロニッケルスラグを使用した.
今回使用した添加剤を表 示す.
表
!
名称
主成分
硬化剤
メチルエチルケトンパーオキサイド
硬化促進剤
低収縮剤
エチルヘキサン酸コバルト
D
D
添加剤
密度 H7
!H
℃
!*H
℃
!*
商品名
カヤメック
外観
赤色透明液体
%D;;
青紫色液体
)(
白色液体
レジンコンクリートの硬化特性
**
レジンコンクリートの硬化特性
レジンコンクリートの硬化は使用する樹脂の硬化作用によって生じ,その特性は樹脂性状に依存する.一
般にレジンコンクリートの硬化方法は常温硬化法,熱硬化法がある.常温硬化法は樹脂,硬化剤,触媒の
種類それらの添加量によって硬化不良を起こすので最適配合を把握する必要がある.一方,加熱硬化法は,
環境条件の影響を受けることがなく,生産性が高いため製品の量産化を可能にする.しかし,欠点として,
硬化収縮が大きくひび割れを生じやすいことが挙げられる.
実験概要
今回の実験では,図 に示すモルタル試験体用 の型枠を使用した.同時に
体打設が可能であり,一つは参照のために打設したもので,残りの二つにはひずみゲージを配置した.型
枠下面から 7 の位置にゴム板を配置し,そのゴム板にひずみゲージを貼付した.ひずみゲージを配置し
た二つの試験体の一方に,拘束条件を変えるため,ひずみゲージを貼付した丸鋼を配置した. に示す
ように,2'+D,2'+D の 種類の試験体である.
計測はレジンコンクリート打設後,上方向から
を用いてひずみ計測を行った.前述したとおり,
計測は対象物の粗面に乱反射して発生するスペックルパターンを用いた計測であるため,計測対象が
粗面であることが必要条件である.レジンコンクリートを打設した後,表面を粗面にするため,高炉スラ
グの微粉末を散布した.
2'+D
ひずみゲージ配置
ひずみゲージ・鉄筋配置
2'+D
!
図
レジンコンクリート型枠
!
レジンコンクリート供試体呼名
(
ひずみ 図
(
鉄筋
内部
2'+( 内部
2'+( 表面
2'+( 表面
2'+(
(
打設からの経過時間 +
図
!
時間経過に伴うひずみ値の推移
参考文献
経過後
経過後
経過後
経過後
経過後
経過後
2'+D
2'+D
図
!
時間経過に伴うひずみ分布の推移
図 にレジンコンクリート打設からの経過時間とひずみ値の関係を示す.ひずみ値は,2'+D,2'+D
の内部に埋め込んだひずみゲージによる値, 計測によって得られるひずみゲージと同位置の表面ひず
み,および,2'+D に配置した鉄筋に貼付したひずみゲージによる値の 種類とした.また,図
に
計測で得られた表面の 方向のひずみ分布の推移を示す.
無鉄筋である 2'+D におけるひずみ分布図は,特に目立ったひずみの集中は存在していない.一方,鉄
筋を有する 2'+D におけるひずみ分布図は,供試体の左右端にひずみの集中が見られ,中央付近はほぼ一
定のひずみ値となった.
時間経過によるコンクリートの硬化に伴い,ひずみ値は全体的に圧縮方向に増加しており,打設後 時
間経過した後は,そのひずみ値がほぼ一定になっていく結果となった.鉄筋の有無を比較すると,内部・表
面ともに,鉄筋によって拘束される分,無鉄筋のものより圧縮ひずみが小さくなっている.
今回の実験では,内部ひずみと表面ひずみの値には差異がみられるが,その変化の推移はほぼ同じ傾向
にある.表面ひずみと内部ひずみの温度差を考慮して補正することにより内部ひずみ分布も推定可能であ
ると考える.これについては今後の課題としたい.
考察
従来,コンクリートの収縮挙動は,コンクリート中に埋め込まれたひずみゲージにより計測が行なわれ
ていた. 計測によりコンクリートの硬化過程におけるコンクリート表面の変形挙動を計測することが
可能である.コンクリート硬化時における収縮によるひずみの推移は,内部拘束の有無により,すなわち
鉄筋の有無により,ひずみ分布,ひずみ値に相違点を確認することが可能であった.しかし,鉄筋の有無
に関わらず収縮によるひび割れが発生していない.今後さらに,内部拘束を増加した試験体を製作し,収
縮によるひび割れとそのひずみの推移の実験を行なう予定である.
参考文献
小林和夫:コンクリート構造学,森北出版株式会社,!
宮野暢紘:レジンコンクリートの高温時における力学的性質の安定性に関する研究,九州工業大学 平
成 年度卒論
第 章
落橋防止構造の連結板の接触圧分布
はじめに
地震時における橋梁の上部構造の橋脚または橋台からの落下は,地震時の被害をいっそう深刻なものに
する.一般の橋梁上部構造には地震時の落橋を防止するため,桁と下部工を連結したり,桁と桁を連結す
る耐震連結装置が設置されている.この装置の構造には様々な形式のものが見受けられるが,鋼橋では連
結板 ブラケット とピンで構成された構造が一般的である(図 ! !).連結板は,地震時に地震力に
抵抗し落橋を防止することを目的とした部材である.落橋防止装置は,ピン,補強板,連結板から構成さ
れているが,その構造上,地震力には主として連結板によって抵抗するものである.このように落橋防止
装置の連結板は耐震構造上の主要な役割を担っているのもかかわらず,その力学的特性は詳細に検討され
ているとは言い難い面がある.それは,この構造の場合,連結板がピンによる支圧を受けるため,連結板
に発生する応力に乱れが生じ,設計時の想定応力状態が実際の応力状態にそぐわないなど接触圧分布が未
解明な部分が多いことが一因となっているものと考えられる.
そのため,現在のところ連結板の設計に関しては,道路示方書には明確な基準が示されておらず,団体
により独自に設計を行っている.その設計法はピンと連結板の接触によって生ずる応力をリングの接触モ
デルを用いて算定し,弾性変形の範囲で照査するものである.このような設計時は,力学モデルの妥当性,
適用範囲が必ずしも明確にされていない上に,地震力に抵抗するという.落橋防止装置の連結板の本来の
機能を考慮すると,弾性変形にとどまらず塑性変形をも考慮した終局強度を考慮するという点からは,合
理的設計とはいえず,検討の余地が残されていると考えられる.しかしながら前述したように,現状では,
落橋防止連結板に関する研究は少なく,塑性変形も含めた連結板の最大耐力や,変形能の特性に関する知
見は非常に少ない.落橋防止装置のような構造では,最大耐力や衝撃的な外力に対するエネルギー吸収能
などに基づいて設計を行うことがより合理的であると考えられる.耐震構造という性質上,衝撃荷重に対
する塑性変形を含めた力学・耐荷特性 が最も重要であるが,そのための第一ステップとして静的な特性を
詳細に検討しておくことが必要である.
そこで本研究では,塑性変形まで考慮した場合の連結板の強度特性をまず静的な問題に限定し,有限変
形の弾性解析によって解析的に求める.次に,アクリル樹脂で孔と孔径の比が違う形状を模擬した試験片
を製作し電子スペックルパターン干渉法による非接触全視野計測を行い,連結板にかかる接触圧分布や荷
重の偏心具合を計測する.そして連結板の形状,ピンと連結板の接触部などが,最大耐力,変形能などに
及ぼす影響を詳細に検討し,静的な荷重に対する連結板の破壊特性に関する基本的な性質を明らかにする
ことを目的とする.
第 章 落橋防止構造の連結板の接触圧分布
図
!
落橋防止緩和チェーン
橋台
橋脚
桁と下部工の連結
図
桁と桁の連結
!
落橋防止構造の連結方法
予備解析概要
解析モデル
による計測を行う前に,試験体の破壊挙動を把握するために 予備解析を実施した.今回の解
析では,破壊挙動が脆性的な所から構造物の破壊挙動を容易判定できるアクリル樹脂を用いた.連結板の
形状は,ピンと連結板円孔の直径比および連結板の抵抗長さが異なるモデル 2'+(,2'+(,2'+( の
種類を採用した.図 ! に試験片を示す. 解析において,供試体およびピン部全体をそれぞれモデ
ル化した.また,板厚は一律 とした.要素は 次元平面ひずみ要素を用いピンとピン孔との接触部
の応力・ひずみ状態を詳細に調べるために,接触領域を細分割したモデル化を行った.ピンと連結板の接
触部は,接触条件を付加して,実際の境界条件に近づくようにし接触モデルは,せん断摩擦モデルとした.
ピンが鋼材,ブラケットがアクリル樹脂であるため,材料物性値は,ピンの弾性係数は H,
ポアソン比は !,降伏応力は H,ブラケットの弾性係数は,H,ポアソン比は !,
降伏応力は #)!
H,引張強度は H とした.
本解析モデルは,変形能が大きいプラスチック材であり,非線形挙動が強くなり解析が不安定となる可能
性が高い.そこで荷重は弧長増分法を用いて増分載荷を行い,供試体が破断するまで載荷するものとした.
予備解析概要
*!
!
!#
#*!
#!#
!#
)!
!
!#
!#
!#
!
2'+(
2'+(
図
!
2'+(
各試験体の寸法図
予備解析結果
図 ! に解析により得られた 2'+(,2'+(,2'+( の荷重−変位曲線を示す.破断荷重は,2'+(
で ),2'+( で ),2'+( で # となった.
図)) に,各試験体の 接触方向の変位分布図,4 に最大主ひずみ分布図,7 に最大主応力分布図を
初期接触時,中間時,最大荷重時の順に示す.各図より接触領域の違いにより,集中の分布に違いが見ら
れ,試験体に対して対称に引っ張ると分布にも偏心が見られないことが分かる.
35
Type-A
Type-B
Type-C
荷重(kN)
30
25
20
15
10
5
0
0
0.025 0.05 0.075 0.1 0.125 0.15 0.175 0.2
変位(mm)
図
!
荷重(変位曲線
第 章 落橋防止構造の連結板の接触圧分布
初期接触時
中間時
2'+(
2'+(
2'+(
接触方向の変位分布
2'+(
2'+(
2'+(
4
接触方向の最大主ひずみ分布
2'+(
2'+(
2'+(
7
図
接触方向の最大主応力分布
!
予備 解析結果
最大荷重時
実験概要
実験概要
実験方法
ピンと鋼材の接触部は,ピンの支圧の影響により応力が乱れ,ひずみゲージでは正確に計測できない可
能性がある.そこで, を用いて,非接触による全視野計測を行い,接触部近傍のひずみ分布を計測し
た.図 ! に計測風景を示す.
試験は / 型の万能試験機により,図 !# に示すような治具を用いて,載荷試験を行った.まず,試
験治具をブルマン等で固定し,供試体をセットする.ピンはブラケットをボルトにて固定した.その後,供
試体に引張荷重を与え,供試体が破壊するまで試験を行った.なお,治具部のずれ止めとして,ピン部の
ボルトを溶接して固定した.
図
計測風景
!
ライナーブレード
引張ジグ
ピン部
ネジきり部
共試体
供試体
ずれ止め
図
!#
載荷試験概要図
実験および解析結果
図 !) に実験により得られた 2'+(,2'+(,2'+( の荷重−変位曲線を示す.各試験片の破断荷
重は,2'+( で *
,2'+( で *#
,2'+( で であった.いずれの試験片も比較的良
好な結果がでていることが分かる.図 !* に,各試験体の接触方向の変位分布図,4 に最大主ひずみ
分布図,7 に最大主応力分布図を初期接触時,中間時,最大荷重時の順に示す.2'+( で Æ ,2'+(
で Æ 程度の偏心がみられ,2'+( では偏心がみられなかった.図 !* の接触方向の分布図より明ら
かであるが,偏心があるときとない場合の変位分布図に大きな違いがみられた.
第 章 落橋防止構造の連結板の接触圧分布
解析を行った時点では,今回採用したピン孔とブラケットピン孔径の比が,2'+( が !,2'+( が
,2'+( が ! と異なり,それによるひずみの集中状態が変化することを想定して実験を行った.し
!)
かし,いずれの試験体においても,ピンの支圧によるひずみの分布幅は,初期接触時から最大荷重時まで,
概ね °から °であり,その明確な違いは認められなかった.また,解析では初期接触時から最大荷重
時までひずみの集中幅が広がっていたが,実験の分布ではそれは見られなかった. 計測では,計測感
度が !∼!,計測レンジが ∼,計測範囲が × である.計測レンジに限界がある
ため, 以上は分割して計測しなくてはならない.実験では,モニターで観察しながら荷重増分を行
うので,計測レンジを超える変位に対しても計測可能である.その為に,荷重速度による影響で得られた
分布図が乱れることがあるので,注意を払う必要がある.
25
12
解析
実験
35
20
荷重(kN)
荷重(kN)
8
40
6
4
解析
実験
25
20
10
15
10
5
2
解析
実験
30
15
荷重(kN)
10
5
0
0
0
0.01
0.02
0.03
0.04
変位(mm)
0.05
0.06
0
0
0.03
2'+(
0.06
0.09
変位(mm)
0.12
2'+(
図
!)
0.15
0
0.05
0.1
0.15
変位(mm)
2'+(
荷重(変位曲線
2'+(
初期接触時
中間時
最大荷重時
初期接触時
中間時
最大荷重時
初期接触時
中間時
最大荷重時
2'+(
2'+(
接触方向の変位分布
0.2
0.25
実験概要
#
2'+(
初期接触時
中間時
最大荷重時
初期接触時
中間時
最大荷重時
初期接触時
中間時
最大荷重時
2'+(
2'+(
4
接触方向の最大主ひずみ分布図
2'+(
初期接触時
中間時
最大荷重時
初期接触時
中間時
最大荷重時
初期接触時
中間時
最大荷重時
2'+(
2'+(
7
接触方向の最大主応力分布図
図
!*
実験結果
第 章 落橋防止構造の連結板の接触圧分布
)
12
25
10
解析
実験
本解析
予備解析
本解析
実験
20
荷重(kN)
荷重(kN)
8
6
4
15
10
5
2
0
0
0
0.01
0.02
0.03
0.04
変位(mm)
0.05
0.06
0
0.025
0.05
0.075
0.1
変位(mm)
0.125
0.15
/%&#
/%&#
図
!
荷重(変位曲線
2'+(
初期接触時
中間時
最大荷重時
中間時
最大荷重時
2'+(
初期接触時
接触方向の変位分布図
2'+(
初期接触時
中間時
最大荷重時
中間時
最大荷重時
2'+(
初期接触時
4
接触方向の最大主ひずみ分布図
2'+(
初期接触時
中間時
最大荷重時
中間時
最大荷重時
2'+(
初期接触時
7
図
!
接触方向の最大主応力分布図
変位分布図,最大主ひずみ分布図,最大主応力分布図
本解析概要
*
本解析概要
より実験に近い解析を行うために,予備解析で行った解析モデルに偏心を与えて再び解析をおこなった.
連結板への偏心の与え方は連結板の孔径の中心から連結板の解析モデルを 2'+( で Æ ,2'+( で Æ
回転させ解析を行った.2'+( では,偏心が見られなかったために,解析は予備解析のものを使用した.
図 ! に偏心を考慮した状態での荷重−変位曲線を示す.図 ! に,2'+(,2'+( の接触方向
の変位分布図,4 に最大主ひずみ分布図,7 に最大主応力分布図を初期接触時,中間時,最大荷重時の
順に示す.2'+( の接触方向の変位分布図を図 !* の分布図と比較すると類似していることが分かり,
偏心があると分布図に違いがあることが確認できる.
破断状況
図 ! に各試験体の破断状況,および 計測により得られた最大荷重時における最大主ひずみ,最
小主ひずみの分布図を示す.最小主ひずみと破断形状を比較すると,ひずみの集中箇所から連結板が破断
していることが分かる.
2'+(
破断状況
最大主ひずみ
最小主ひずみ
破断状況
最大主ひずみ
最小主ひずみ
破断状況
最大主ひずみ
最小主ひずみ
2'+(
2'+(
図
!
破断状況
考察
計測により得られた結果から,ピンの支圧分布幅は,初期接触時から最大荷重まで,概ね Æ ∼
Æ
であることが確認できた.これは,解析結果で想定されていたピン径比の違いによる応力の分布幅のよう
な大きな違いは見られなかった. 計測では,計測感度が !∼!,計測レンジが ∼,計
測範囲が × である.計測レンジに限界があるため, 以上は分割して計測しなくてはなら
ない.実験では,モニターで観察しながら荷重増分を行うので,計測レンジを超える変位に対しても計測
第 章 落橋防止構造の連結板の接触圧分布
可能である.そのために,荷重速度による影響で得られた分布図が乱れることがあるので,注意を払う必
要がある.また,固定治具や接触部の微小なずれが変位分布やひずみ分布に影響を及ぼした.連結板にか
かる偏心具合を計測することが可能であったため, 解析にも偏心を与えて行ったが,偏心角 Æ では
接触方向の変位分布に で得られたような分布が得られたが,偏心角 Æ では得ることができず,計測
装置の感度の高さが分かった.
今回の実験での問題点を以下に示す.
試験治具を片持ち構造としていたために,ピンが偏心して手前側
面外 に傾き,ひずみが精度よく
計測できないことがあった.
試験体の材料にアクリル樹脂を用いたため,試験装置から滑りが生じやすく,実際に滑った試験体も
あった.
試験体自体が, , の影響を受け,試験体が回転してしまうことがあった.
計測装置の計測感度が高く,試験体の接触のずれや滑りなどの微小なずれ変形の影響を受けた.
可視光線下で計測可能であるが,光明暗の影響をうけやすく,計測の際には,安定した光環境下での
計測が干渉縞を明確にとらえることができた.
実験室内において,本試験機から5
離れた所で疲労試験がおこなわれていたが,その影響を受け
やすいことが判明した.
このような問題点が明らかになったものの,2'+( では,良好な結果が得られ,精度よく計測すること
が可能であった.また,今回の全視野での計測を行うことにより,実験の状況に近い 解析を実験結
果からすることが可能となった.今後は,鋼材で形状を模擬した連結板の引張試験を実施し,解析との比
較をしてくことが課題である.
第 13 章
圧縮荷重下におけるぜい性固体の巨視的せん断破壊メカニズム
111
第13章
圧縮荷重下におけるぜい性固体の巨視的せん断破壊メカニズム
13.1
はじめに
圧縮力を受けるぜい性固体が圧縮軸と角をなす面で巨視的にせん断破壊する現象は良く知られてい
る.材料試験に関する従来の教科書[1]では,「円柱状の鋳鉄試験片を単軸圧縮すると,最大せん断応
力が生じる面で破壊するべきであるが,内部摩擦の影響により破面角度は 45 度より小さくなる.」と
解説されている(図 13.1).
この説により鋳鉄円柱の圧縮試験における破面角度が圧縮軸方向と約 30 度の角度であることが説明さ
れているが,せん断破面がき裂進展の結果生じたとすれば破壊力学で通常認められているき裂の伝ぱ
基準とは矛盾するように思われる.
圧縮軸から傾斜した破面内にき裂が生じるならば圧縮力のため巨視的なモード I(開口型)の特異性
は消失し,モード II 状態になるであろう.このような純粋なモード II き裂はその面内で拡大すると
は考えにくい.ぜい性固体に単独のき裂が存在し,き裂面にせん断応力のみが作用するような負荷を
与える場合,き裂は進展直後に湾曲して主応力と垂直な方向にモード I 伝ぱすることが普通である.
そこで本研究では,破壊挙動の観察が容易な透明材を用いた圧縮試験を実施して圧縮せん断メカニ
ズムの調査を試みた.また,試験中に観察された特徴的な損傷の発生を手がかりとして破壊力学に基
づく数値解析を実施し,圧縮せん断破壊の機構に関する考察を行った.
破壊面に沿うせん断応力:
τ ξη = −σ sin θ (cos θ − µ sin θ )
( µ :摩擦係数)
最大応力となる角度:
θ = 1 / 2 tan −1 (1 / µ )
図 13.1 従来のせん断破壊モデル(最大せん断応力の面で破壊する)
112
13.2
第 13 章
圧縮荷重下におけるぜい性固体の巨視的せん断破壊メカニズム
PMMA を用いた単軸および二軸圧縮実験と考察
厚み 6mm の PMMA 平板から幅 30mm,高さ 60mm の試験片を作成して万能型引張圧縮試験機により圧縮
試験を実施した.試験片中央部にはドリルで下穴をあけ,下穴に刃厚 0.15mm のメタルソーを挿入して
長さ約 12mm のスリット(試験片の長手方向から荷から約 45 度)を導入した.圧縮試験は矩形状の試験
片の長手方向とその直角方向から,単軸および二軸方向からの圧力を作用させる要領で実施し,試験
片の面外方向(厚み方向)への変形を拘束するため板厚 30mm のガラスブロックで挟んで荷重を負荷した.
幅方向の変形を自由な状態に保ちながら単軸圧縮試験を実施した際には図2のような,幅方向の変形
を拘束して二軸圧縮試験を実施した際には図 13.3 に示すような破壊形態が観察された.
図 13.2 単軸圧縮試験により観察された PMMA の破壊形態
図 13.3 二軸圧縮試験(試験片幅方向の変位を拘束)で観察された損傷
第 13 章
圧縮荷重下におけるぜい性固体の巨視的せん断破壊メカニズム
113
図 13.4 損傷部分の拡大
単軸圧縮試験では圧縮荷重の増加とともに,導入したスリット(人工き裂)先端から圧縮方向に湾
曲しながら進展するウイングき裂[2]が発生し,比較的遅い速度で安定成長して
試験片端部まで到達した.また,顕微鏡観察の結果,ウイングき裂の他にもスリット近傍にはクレー
ズと思われる損傷の発生が確認された.損傷領域は試験片表面にアセトンをスプレーした直後に圧縮
試験を実施した際に特に顕著に出現[3]し,はじめスリット先端からやや離れた位置から生じて圧縮方
向と約 30 度の角をなす方向に徐々に拡大した.
次にウイングき裂の進展を抑制し,損傷の発生を明確化する目的で試験片の幅方向への変形も拘束
した二軸圧縮試験を実施したところ,図3のように単軸圧縮試験とは全く異なる試験結果を得た.二
軸圧縮試験では単軸試験に比べウイングき裂の伝ぱが抑制され,200MPa 近くまで軸方向の圧縮応力を
増加しても試験片端までウイングき裂が到達しなかった.図3において low confining stress と示
した写真は試験片寸法と変形を拘束するために用いた冶具との間に若干の隙間が存在した場合の結果
であり,high confining stress と示した写真は試験片の寸法精度が高く,冶具との間で隙間が生じ
ず理想的な二軸圧縮が負荷できた結果である.low confining stress の場合,導入したスリット先端
からウイングき裂の発生が観測されたが,high co nfining stress ではウイングき裂は生じず,その
代わりに広い範囲で材料の損傷が認められた.損傷部分の拡大を図4に示す.損傷域内には互いにほ
ぼ平行な無数の表面き裂が生じており,これらの表面き裂の合体が巨視的せん断破壊を引き起こす可
能性が示唆される.そこで無数の表面き裂を二次元の平行き裂群とみなし,平行き裂群が圧縮応力下
で発生できる力学的根拠について検討した.
第 13 章
114
13.3
圧縮荷重下におけるぜい性固体の巨視的せん断破壊メカニズム
圧縮力を受ける平板内の平行き裂群の二次元解析
単独の二次元理想き裂を有する平板を一様圧縮する場合,き裂と x 軸のなす角度ψによらずモード I
の特異性は消失し,ϕ
= 0,90 °以外であればモード II の特異性のみが現れる(図 13.5A).一方,き裂
が複数存在して列をなすとき(図 13.5B),特定の配置条件を満たせばき裂同士の干渉効果によって互
いに開口して混合モード状態となる可能性がある.ぜい性固体は引張荷重に弱い特性があるため,列
をなすき裂先端のモード I の応力拡大係数の平均値 K Iave を最大とする配置条件は,平行き裂群の発
生位置に対応する可能性があると考えた.図5B においてき裂長さcを固定し,き裂数n,き裂中心間
距離p,き裂とx軸のなす角 ϕ ,およびき裂中心を結ぶ方向と荷重方向のなす角度θを系統的に変化
ave
させて全てのき裂先端に生じるモード I の応力拡大係数の平均値 K I を算出し, K Iave を最大化す
る配置条件を調査した.なお,応力拡大係数の計算に用いたのは特異応力場の解析に強力な体積力法
(Body Force Method, BFM)である.
図 13.5 数値計算モデル(圧縮力を受ける矩形板内の単独および複数き裂群)
計算結果の一例として,き裂数が5でき裂と x 軸のなす角度を ϕ
= 95 °に固定し,き裂間ピッチと
き裂中心を結ぶ方向と荷重方向のなす角度 θ の関数として,無時限化されたモード I の応力拡大係数
のき裂先端における平均値の分布を等高線図として図 13.6 に示す.図 13.6 の上段はき裂長さが小さ
い(c/W=0.05)の結果であり,下段は比較的き裂が大きい(c/W=0.05)の結果である.縦軸の値を最
大にするピッチには明確な違いが見られるが,き裂長さが異なっても K Iave を最大にする角度θには
大きな差がないことが理解される.すなわち,き裂長さが 5 倍異なるケースを比較したが,いずれも
θ ≈ 34 °の条件のとき,モード I の応力拡大係数の平均値 K Iave が最大となる.なお, K Iave を最大
にする p / c の値はき裂の角度 ϕ に応じて変化したが,き裂の中心を結ぶ方向 θ は,条件によらずほぼ
一定であった.θ ≈ 34 °の方向は図 13.2 および 12.3 で観察された損傷域の拡大方向とも良く一致し
ている.
図 13.7 に c / W = 0.3 でき裂の数が n = 5 および7の場合について K Iave を最大にするき裂配置条
件を与えた場合の板の変形状態を示した.板中央付近のき裂ほど大きく開口しており,き裂数が増大
第 13 章
圧縮荷重下におけるぜい性固体の巨視的せん断破壊メカニズム
115
すると板全体が大きな横たわみを生じるようになる.本計算はき裂群を有する弾性板の圧縮解析を行
ったものであり,降伏などの材料非線形性は考慮されていない.このような条件下においても,明ら
かに座屈変形とみなせる横たわみが解析結果に現れた点は興味深い.図 13.5B のモデルは,単独き裂
(図 13.5A)ではあり得ない圧縮応力下でのき裂開口が,多数き裂では生じ得る点で興味深い.ぜい性
固体には予めき裂と見なせる無数の欠陥が存在し得るので,複数の潜在き裂が圧縮応力下で開口でき
る可能性がある.
予き裂を有する試験片を二軸圧縮すると,はじめ進展したウイングき裂はいずれ停止することにな
り,ウイングき裂停止後の外力仕事は微小き裂群の発生とそれらの開口に伴う板全体の変形で消費さ
れている可能性がある.数値解析により得られた K Iave を最大にする角度 θ は PMMA 試験片で観察した
損傷域の発展方向や鋳鉄円柱を圧縮破壊する際の破面方向とほぼ一致している.以上の考察より圧縮
力下で生じる巨視的せん断破壊はモード I 変形する平行き裂群が連結した結果と予想される.
図6
き裂数 n = 5 ,き裂角度 ϕ = 95 度の条件における無次元化されたモード I の応力拡大係数
の平均値の等高線図
116
第 13 章
図 13.7
圧縮荷重下におけるぜい性固体の巨視的せん断破壊メカニズム
c / W = 0.3 , n = 5 および7の場合について K Iave を最大にする
き裂配置条件を与えた場合の板の変形状態
参考文献
[1] 水野正夫,塚巻進: 機械応用力学入門,オーム社.
[2] M.F.Ashby and S.D.Hallam: Acta Metall.,34-3,pp.497,1986.
[3] J.P.Petit and M.Barquins: Tectonics, Vol.7, No.6, pp.1243, 1998.
第 章
切欠試験片の圧縮せん断破壊挙動の粒子法に基づく数値シ
ミュレーション
著言
鋳鉄やコンクリートなどのぜい性固体が圧縮力を受けると,圧縮方向とといくらか角をなす方向に帯状
の損傷領域が発生し,損傷領域が起点となってがせん断型の破壊挙動を示すことがある. 地殻圧縮応力に
よって逆断層が形成されるメカニズムも同様の圧縮せん断破壊によるものと考えられ,過度の圧縮力がど
のようにせん断破壊を生じるのかを明らかにすることは重要である.ぜい性固体の破壊挙動は一般に破壊
力学で予測できると考えられているが,圧縮場に理想的な二次元き裂が存在する場合を想定すると,き裂
は圧縮力のために閉口してモード 開口型 の特異性が消失し,純粋モード の状態になる.破壊力学で
は,純粋モード 状態にあるき裂はその面内で伝ぱ・拡大することができす,屈折や湾曲を伴って成長す
ると考えられている.実際,このような予き裂先端から緩やかな湾曲を伴って圧縮方向に伝ぱするき裂は
ウイングき裂と呼ばれ,ウイングき裂自身の伝ぱ挙動は線形破壊力学で正確に予測することができる.逆
にこのことは,連続体力学に立脚した破壊力学では圧縮力のもとで圧縮軸と角をなす方向に破壊が生じる
圧縮せん断破壊のメカニズムの明確が困難であることを示唆している.
近年,連続体を多数の離散的な粒子で表現して変形や応力分布を数値的に解析する粒子法 が,コンピュータの高機能化を背景として盛んに用いられるようになってきた.
+1%3
や ,%%1+3
7&+ ,23%32- 70
7&+ +1%3
07++ &++-
などが粒子法の代表格として研究分野での利用も進
んでおり,これらの粒子法はメッシュ依存性がないことから連続体力学に立脚する手法では困難な超高速
衝突の問題や,超塑性を含む大変形問題などに適用されてきた.
圧縮せん断破壊の問題はき裂の伝ぱのみでなく,き裂の発生と発生したき裂によるひずみの局所化が重
要であり,このような問題に対してもメッシュ依存のない粒子法の利点を生かせば破壊解析が可能になる
ことが期待できる.そこで本研究では , の圧縮破壊問題に対する適用可能性を調査することを目的とし
て解析プログラムを試作し,切欠を導入した を用いた圧縮破壊試験結果との比較を行って計算方
法の有用性を検討した.
#
第 章 切欠試験片の圧縮せん断破壊挙動の粒子法に基づく数値シミュレーション
)
の概要
,
は *## 年に <72 によって超新星爆発に関する天体物理シミュレーションのために開発されたとさ
れている.その後,%-1-,?
-%&3
らの改良をうけ,星の形成や星間衝突,銀河の形成などを含むさ
まざまな天体物理学の研究に幅広くつかわれるようになった.近年
< 4+0/2
らが弾性粒子の運動を表現す
る拡張を行い,流体解析だけでなく固体物理の問題も計算できるようになってきた.
流体の記述法には固定された座標軸から流体粒子を眺めるオイラー型解法と,流体粒子とともに動く座
標系で粒子の運動を記述するラグランジュ型の解法があり,, は後者に属している.ラグランジュ型解
法では,流体を空間的に分割して流体素片とともに移動する座標系で流体力学方程式を差分化することで
解を求める.すなわち,流体素片を用いるため各種の勾配量を計算する上で物理量が節点間で連続である
必要があり,これは , にもあてはまる., も流体を粒子として扱い,その粒子の運動を追跡するが,
ある粒子に注目する時にはその粒子の近傍に点在する粒子をある広がりをもった粒子の影響の重ね合わせ
として勾配量を計算する点が個別要素法 とは異なっている.
xj
h
Q
h
xi
P
continus field
図
一般に領域 E 内の点 ,,
!
E
discrete field
粒子 とそのO 影響円O 内にある他の粒子 3
で連続的に分布している物理量 # のある点 における値は,物理量を
与える関数形が既知であるならば # で与えられることは自明である.つぎに,E に属する有限可算個の
点 , ,
, での関数値 # ,
のみが離散的に分っており,どの , とも一致しない E 内の点 にお
ける物理量を表す方法を考える.最も簡単な方法は, に比較的近い幾つかの点を , から選び出し,それ
らを平均したり,あるいは線形近似による内挿や点 の近傍点の関数値を指定した関数形に最小自乗近似
して物理量を近似的に求める方法が普通である., の基本は,まさにこのような関数値の近似に端を発
している.
図 ! に , の概念図を示す.物理量が連続的に規定されている 7%-0
物理量 # を次の積分形で表現できる.
# G
ここに 6 ,
# ,6 ,
はディラックのデルタ関数で,, G
-0 N+&3
では,位置 における
,
E
!
のときのみ をそれ以外ではゼロを与える.もし
物理量が連続的ではなく,限られた離散点でのみ分っているとすれば,式 ! の条件を若干緩和した
# G
# , 6 ,
を使うことになる.ここで 6 ,
E
, G
# , 6 ,
,
E
!
はデルタ関数の性質に近いが,デルタ関数ほど局所性がなく,
の近傍で大きくしかし空間的に広がりを持つ重み関数と考える.重み関数の広がりは点 を中心とする半
径 + の球 三次元 または円 二次元 と考え, 点を で,, 点を 3 で置き換えてそれらの座標を と
= は座標を表す 5++ -3+B で表現するならば,粒子 は半径 + 内にある粒子 3 からの影響は受けるが,
基礎方程式
*
半径 + の円外の粒子からの影響は受けず,各粒子の物理量は平滑化関数 6 により影響円内での重み付き積
分として表現される.すなわち,任意の粒子 における物理量 # を平均化された物理量 > # & と
して扱うことを仮定し,>
ここで平滑化関数 6 # & を次式のように定義する.
# G> # &G # 6 +E,
+
& 6 !
は次式を満たす離散的的デルタ関数である.
+
G
Æ 6 + E G !
粒子 3 の質量を ,粒子 3 の近傍の粒子密度を で表せば は粒子 3 の近傍体積 E を表すことに
なり,このことを用いて式 ! を影響円内の離散的積分で表すと,
> # &G
# 6 = +
!
となる.( は注目する粒子 の影響円内にある粒子の個数を表す.物理量を式 !
で表現したことで,
粒子 の持つ物理量が平滑化関数で表される分布をもって周囲の空間に広がっていると考えることができ
る.例えば式 !
に与える物理量として密度 を考えれば,
G G
6 +
G
6 +
!
となる.任意物理量の勾配は平滑化関数を微分することで以下のように表される.
> # &G> # &G
# 6 +
!#
このように , では物理量とその勾配を,平滑化距離内にある ( 個の粒子の持つ値の総和で近似している.
基礎方程式
質量保存則
,
は流体力学を基礎として質量保存則,運動量保存則,構成方程式,状態方程式の 方程式 あるい
は保存則 で構成されている.流体力学に用いられる質量保存則と運動量保存則は固体力学では自明である
が,通常の , の理論をそのまま適用することができないため若干の誘導が必要である.
流体力学における質量保存則は総和規約を用いて次式で表される.
/ / ? C
/
/
G !)
は座標を,? は流れの速度を表し,ギリシャ文字の反復はその指標のとる範囲についての和を表す.二
次元の , の場合には = G であり,質量保存則は次式を表すことになる.
/ / ? / $ /
/
/?
/
/$
C
C
G
C?
C
C$
C
G !*
/
/
/
/
/
/
/
/
ここに ? は 方向の,$ は 方向のそれぞれ流速を表す.物理量の時間変化を,非定常項と対流項との和
1
/
/
で表す流体力学では偏微分演算子
を用いて式 !* を書き直すことにより
G
C ?
1
/
/
1
1
/?
/? /$
C
C
G
C
G !
1
/
/
1
/
第 章 切欠試験片の圧縮せん断破壊挙動の粒子法に基づく数値シミュレーション
この式を , の流儀により平滑化関数で表現すると,
1
/?
C
1
/
G
1
/ ? C
1
/
/
?
/
1
1
C
?
6
?
6 G !
よって密度の時間変化の離散表現は
1
1
ここで
6
G
6 G
?
+ ? 6
6 G
!
/6 +
/
を表す.固体内の粒子密度は式 ! に基づいて時間発展するが,同時に式 ! は常に満たされていな
くてはならない.実際の数値計算では初期状態で与えられた密度分布と粒子速度から式 ! に基づい密
度を変化させるが,時間発展を繰り返しても質量の総和が変化しないように数回に一度の割合で式 !
を満たすよう修正することが必要になる.
運動量保存則
流体力学における運動量保存則は流体力学的偏微分演算子を用いて次式で与えられる.
1?
1
G
7 C
7 は単位質量の物体に作用する体積力であり,
/
/
!
はテンソルで表された応力 内力 の成分である.左
辺は単位質量の物体に生じる加速度を表すので,本式はいわゆるニュートンの運動方程式を表すものであ
る.簡単のため物体力が存在しない場合を考え,右辺を次のように変形する.
1?
1
G
/
/
G
/ /
C
/
/
右辺の空間微分を , の表示で表せば
1?
1
G
6 C 6 G
C
6
!
本式が , における運動量保存式 運動方程式 となる.
状態方程式
は,静水圧成分 と偏差成分 @ に分離できる.
応力 G @
Æ !
ここに Æ は @%-+7/+ のデルタ記号である.静水圧成分は密度との間に以下の関係を持つと仮定する.
G
A
!
ただし A は体積弾性係数であり, は初期の 一様な 密度である.なお,静水圧,偏差応力と応力成分
の関係から二次元では,
G @
となる.
A G @
A G @
!#
平滑化関数
構成式
偏差応力成分の時間微分は変形時の材料の回転運動を考慮した "--
@P
; P
G Æ P
+
が好んで用いられる.
@ 9P C @ 9P C
!)
はそれぞれ次式で定義される.
ここで ; はせん断弾性係数であり,粒子 のひずみ速度 P ,回転速度 9P P
G
/?
/
/?
/?
9P G
/
/
C
/?
/
!*
ひずみ速度と回転速度を , の表示式で表せばそれぞれ次式となる.
P
9P ,
G
G
?
? 6
?
? 6 ?
? 6
?
? 6
C
!
!
平滑化関数
において平滑化関数 6 +
は領域における離散点での物理量を求める上で本質的な役割を
果たしている.この関数を適正に選択することが重要であり,本研究では他の数値解析で実績が得られて
いるスプライン型の関数を用いることとした., 解析で良く用いられる三次 スプライン関数は以下の
ように定義される.
6 3 G 6 +
G
* + B B B > B > C
C
> B > > B !
ここで B は二つの粒子間の距離を平滑距離 + で除した無次元量で
BG
C
+
!
スプライン関数はある一定の範囲 B
> でのみ非ゼロの値をとり,注目する粒子 に影響を与える粒子 3
のみについての総和をとる計算に適している.これは,粒子 の位置における物理量の計算において,近
傍粒子 3 3 G ( についてのみの影響を考慮すれば良いことを意味する.ここで は解析次元と同
じ 今の場合は G の次元数で * は規格化のための定数である. 6 + G G BB を満
たすように * を定めれば * G # となるから,平滑化関数として次式を採用する.
B B > B > C
6 3 G
!
B C
> B > #+ > B なお,平滑化関数の広がりを表す平滑化距離 + に関しては,実際の計算プログラムを用いて解の安定性
等を考慮し,初期粒子間平均距離 F の 倍程の大きさが適当と判断した.
第 章 切欠試験片の圧縮せん断破壊挙動の粒子法に基づく数値シミュレーション
∆d0
∆d0
2∆d0
2∆d0
i
3∆d0
3∆d0
(a) 正方格子配列
図
i
(b) 正三角形格子配列
!
初期の粒子配列と平滑化距離
計算手順と時間積分
本 , 解析では時間軸を F の微小増分に分割し,各微小時間増分に対して修正オイラー法で数値積分
することで時間ステップを更新した.時間の関数となる対象は粒子点 における密度 ,位置 ,速度 ? および偏差応力 @ である.ある時刻におけるこれらの物理量に上添字 を,この時刻から F だけすす
んだ時刻における物理量に上添字 C をつけて表せば,修正オイラー法は次式で表される.
G
G
? G
@ G
F
C
C
C ? C ? F
? F
? C ? C @ F
@ C @ C !
!
!#
!)
修正オイラー法を用いて時間発展を計算する場合,, の計算アルゴリズムは以下の手順となる.
初期設定
解析領域に均等な間隔となるように初期粒子を配置する.扱う材料の密度と解析領域の大きさを考慮
して粒子数が決定され,同時に粒子の質量を設定する.なお,弾性係数は扱う材料のバルク値をその
まま与えることができる.この段階で粒子の平均距離 F を計算し,平滑化関数の形状が決定さ
れる.また,計算時間ステップ F を適当な値に設定する.
初期物理量の設定平滑化関数 6 3 を用いて各粒子点 における初期密度 を設定する.また,初期
状態では全ての粒子は速度成分と偏差応力がなく ?
G , @
,それらの位置 は で
G 定めた座標点であるとする.初期密度が設定されたため粒子点における静水圧 が計算できること
になるが,この状態では静水圧も存在しない.
境界条件の設定境界条件として,ある粒子は固定されて移動せず 速度が指定されている ?
G
G ,また,ある粒子は移動
? などの設定を行う.なお,現段階の数値解析では応力境界条件を
厳密に評価することは困難である.
応力成分の計算
粒子点 における静水圧を体積膨張率 A と設定された初期密度から
G
A !*
計算手順と時間積分
により計算する G では .また,偏差応力成分との和をとって時刻 における応力成分
G を次式から計算する.
Æ @
G
!
初期偏差応力をゼロと設定したため,時刻 G では全ての応力成分がゼロである.
全ての粒子 に関してその粒子の平滑化距離 + の内部にある影響粒子 3
G (
からの影響を
考慮し,以下の計算式に基づいて密度の変化速度,加速度,偏差応力の変化速度,ひずみ速度,回転
速度を計算する.
P
?P
G
G
? G
P
G
G
9P G
9
G
@
G
@P G
G
?
? 6
C
!
6
?
? 6
C
!
? ? 6 ? ? 6
?
?
6
P
P
;
Æ
C @ 9P C @ 9P !
!
!
!
と ! はひずみ速度と回転速度が過度に大きくならないようにするための人工粘性係数で,本計算
では初期粒子間距離と時間ステップに応じて試験的数値解析を実施し,解が安定するようにこれらの
数値を定めた.
修正オイラー法による時間更新
密度の変化速度,加速度,偏差応力の変化速度,ひずみ速度,回転速度がステップ で計算された
ため,この値を用いて時間積分を行う.修正オイラー法では現時刻 における物理量の勾配 変化速
度 と時刻
CF
における物理量の勾配の平均から時刻
に通常のオイラー法を用いて時間積分し,
CF
における物理量を試算する.すなわち、
G
G
G
G
C ? F
!#
? G
? G
? !)
@ G
@ G
G
@ G
G
!
!)
!
に適用して時刻 C
に代入することで時刻
CF
C
P F
C
@ A
!
?P F
C
@P F
Æ ここで上付きのバーは通常のオイラー法で求めた時刻
算値を式 !
における物理量を求めるので,最初
C F
C F
!*
!
!
での各種物理量の試算値である.試
での各種物理量の時間勾配を求め,最終的には式
における物理量を求めた.修正オイラー法は数値計算
時間とメモリの点でオイラー法に比べ不利であるが,時間刻 F を大きくとれるなどの利点が大きい.
第 章 切欠試験片の圧縮せん断破壊挙動の粒子法に基づく数値シミュレーション
圧縮破壊試験と数値解析の結果
圧縮破壊試験
図 ! に数値解析と実験に供した試験片の寸法を示す.試験片材料として市販のモルタル粉末の硬化物
と,透明度の高いパイレックスグラス とを用い,両材料の場合とも試験片幅を とした.モ
ルタル材では硬化時に切欠と同形状の突起を有する型枠内で硬化させることで,また, 材ではドリ
ルを用いた機械加工でノッチを導入した.万能型油圧式試験機にて上下端に静的な圧縮荷重を加え,破壊
の様子を観察した.本試験片は = 字切欠きの深さを変えることで,任意の最小断面角度 図中の = を設
定でき,破壊がこの断面で生じると予測されることから,単軸試験機で圧縮せん断試験が実現できる.す
なわち,破壊が切欠を結ぶ最小断面で生じるならば,この断面に生じているせん断応力と垂直応力の比は
G 7% = となり,角度 = のみを変えることで圧縮せん断比の破壊試験が実施できる.
図 ! にモルタル試験片 = G の,図 !
に 試験片 = G の破断後の様子を,
Æ
Æ
示す.モルタル試験片はノッチを結ぶ最小断面で破断したが,極めて遅い荷重速度のもとでも破壊が一瞬
で生じてしまい,せん断破壊の様子を観察するには適さなかった. 試験片では圧縮荷重の増加とと
もに切欠を結ぶ最小断面に沿って無数の表面き裂が発生して損傷領域が構成された後に破壊が生じた.損
傷領域に生じている表面き裂群はエチェロンき裂と呼ばれ,地殻変動を受けた断層面近傍の野外観察でも
その存在が確かめられている.
なお,試験に用いた の機械的性質は,縦弾性係数 C
,密度 G ?
であり,ポ
G /H
アソン比は ! である.試験片寸法はモルタルの場合と同じにし,ノッチ間角度 = が Æ と Æ の場合の
30
3
7.5
α
7.5
30
図
!
モルタル試験片の圧縮破壊
50
図
!
両側 = 字切欠試験片
図
!
試験片の圧縮破壊
圧縮破壊試験と数値解析の結果
種類を実施した.大気中にて予備実験を行ったところ予想以上に破壊荷重が大きくなることが分ったた
め,表面損傷が発生しやすい有機溶剤 アセトン の蒸気を満たしたベッセルの中で圧縮試験を実施した.
* による圧縮破壊のシミュレーション
の物性値を用い,初期粒子間平均間隔を F を !
に設定して領域内に仮想粒子を一様
分布させて
,
解析を実施した.=
G Æ
,=
Æ
G ,=
Æ
G の各場合の粒子数は,それぞれ
))*
,
および ))* であった.試験片下端に位置する粒子は変位固定とし,上端の粒子に圧縮方向 H0
の一定変位速度を与えて解析した.= G Æ の条件における解析結果を図 ! に示す.本図では各時刻に
おける粒子の配置がプロットされており,試験片の変形図に対応する.図 !4,7 に見られるように,
荷重の増加とともに転位に似た幾つかの滑べり線が現れる.これらの滑べり線は荷重の増大とともにその
数,密度とも増加してゆく.3,+ の状態になるとノッチ周辺から伸びた幅の広い帯状のすき間が観察
できるようになり,このすき間はき裂に対応すると考えられる. や 1 の状態に達すると,せん断面に
沿って明瞭なき裂群が現れている.図 !# に徐荷後の試験片の様子と数値解析 負荷中 の比較を示す.破
壊試験ではエチェロンき裂群を構成する最初のき裂はノッチ先端からわずかに離れた箇所から発生し,次
第にノッチを結ぶ帯状の領域に広がっていった.数値解析においてもノッチの近傍に生じたき裂が次第に
広い範囲に分布する様子が観察され,両者が良く一致していることが分る.図 !) に試験片内に生じた最
大せん断応力の分布図を示す.応力レベルは青から赤へ色分けされており,最も応力レベルの高い位置が
*
に相当する.最大せん断応力が高い値を示す位置は実験においてもエチェロンき裂群が生じてい
る箇所と対応している.
図
!
= G のモデルにおける , 破壊シミュレーション
第 章 切欠試験片の圧縮せん断破壊挙動の粒子法に基づく数値シミュレーション
図
!#
図
= G Æ
!)
の場合の試験結果と数値解析の比較
試験片内の最大せん断応力の分布
結言
離散体力学的手法でぜい性固体の圧縮破壊問題を解析して極めて良好な数値解析が可能であることが分っ
た. 試験片を圧縮した結果,最小断面を含む帯状の領域に極めて多数の平行き裂群が発生した.こ
の平行き裂群が圧縮力による巨視的なせん断破壊を引き起こしている可能性がある.通常の破壊力学解析
ではき裂の伝ぱは精度良く予測できるが,き裂の発生を含めた破壊解析の方法はまだ確立されていない.本
研究により , はき裂の発生を含む複雑な破壊問題にも適用できることが分った., には自由表面の
概念がないので,境界条件を考慮する際の困難が少ない.一般に通常の連続体モデルによるき裂解析では
き裂面の形成が重要であり,き裂の伝ぱ形状に合わせてメッシュを作り直すなどの作業が必要である.し
かし , では特別の条件を考慮することなく状況に応じて自動的にき裂が発生することから,破壊や損傷
の問題にも十分適用可能である.
127
第 15 章 溶接部に存在する内部き裂が鋼材表面のひずみに及ぼす影響
第15章
溶接部に存在する内部き裂が鋼材表面のひずみに及ぼす影響
15.1
はじめに
我が国における本格的な社会資本整備が始まった 1960 年代に製造された多くの鉄道橋や道路橋で
溶接部の疲労損傷が発見されているが,現在も補修・補強がなされ供用されている
1).これら膨大な
数のしかも多様な問題を抱えた既設構造物の疲労性能評価を行うためには,簡易でかつ精度の高い疲
労き裂の検出技術の開発が不可欠である.
従来,ひずみ測定には一般的にひずみゲージが用いられてきたが,対象物にゲージを直接貼り付け
る必要があり,測定できるひずみも定点だけのものであるなどの問題点を有する.そこで,近年スペ
ックル干渉法
2)など,非接触で面的なひずみ分布が取得できる各種測定法が注目されるようになって
きた.
本章では,このような測定法による溶接部内部き裂の検出の可能性を検討するため,その初期段階
として内部にき裂が存在するモデルの有限要素解析を行い,モデルサイズや内部き裂の位置・サイズ
が表面ひずみに及ぼす影響を検討するものである.
15.2
15.2.1
解析概要
解析モデル
解析モデルは図 15.1 に示すような,中心位置にサイズ α×β (板厚方向×板幅方向)で,幅 0mm の
き裂を挿入した幅 b,厚さ t,長さ L=2b の平板である.図 15.2 にき裂モデルを示す.本研究では,き
裂サイズの板厚および板幅に対する比(α /t および β /b ),板厚方向のき裂中心位置(h/t )に着目し,
これらのパラメータが表面ひずみに及ぼす影響を調査するため,表 15.1 および図 15.3∼15.6 に示す
ようなモデルを設定した.表 15.1 はき裂の板厚方向位置および同一幅厚比におけるモデルサイズの影
き裂
板厚 t
y
板 幅
b
b
L=2b
図 15.1 解析モデル
板 厚 α/
h
z
α 板 幅
β/2
b/
x
図 15.2 き裂モデル
β
128
第 15 章 溶接部に存在する内部き裂が鋼材表面のひずみに及ぼす影響
表 15.1 解析モデル諸元(幅厚比 b / t=6.00)
鋼材モデル
き裂モデル
t
b
h/t
α/ t
β/ b
(%)
(%)
(%)
(mm)
(mm)
30
15
90
50
70
40
80
30
35
210
50
70
響を検討するためのモデルである.また,図 15.3∼15.5 はき裂サイズの影響とき裂の検出可能サイズ
について検討するためのモデル,図 15.6 はき裂の面積(α×β)と鋼材の断面積(t×b)との比をき裂断
面積比とし,同一き裂断面積比でき裂形状の影響について検討するためのモデルである.なお,き裂
断面積比 12%で β /b =20%・α /t =60%のき裂モデルの解析は h/t =50%の場合のみとし,図 15.3∼15.6
のモデルサイズは t=35mm,b=210mm とする.
解析には汎用有限要素解析ソフトウェア MARC を使用し,8 節点アイソパラメトリック要素(No.7)で
モデルを作成する.要素分割数は,表−1 のモデルでは x 方向に 20,y 方向に 20,z 方向に 80 とし,
図 15.3∼15.6 のモデルでは x 方向に 10,y 方向に 40,z 方向に 80 とする.荷重条件は一軸引張とし,
一端に 70N/mm2 の等分布荷重を載荷し,もう一端は固定する.解析は弾性範囲のみを対象とし,弾性係
60
70
50
60
40
50
α/t(%)
α/t(%)
数は 200kN/mm2,ポアソン比は 0.3 とする.
30
20
40
30
20
10
10
0
0
0
20
40
β/b(%)
60
80
0
100
20
40
β/b(%)
60
80
100
図 15.4 き裂モデル諸元(h/t =50%)
図 15.3 き裂モデル諸元(h/t =30%)
35
30
α/t(%)
25
20
15
10
α/t(%)
70
60
50
40
30
20
10
0
5
0
0
20
40
60
β/b(%)
80
図 15.5 き裂モデル諸元(h/t =70%)
100
0
20
40
60
80
100
β/b(%)
き裂断面積比 12%
き裂断面積比 8%
図 15.6 き裂モデル諸元
129
第 15 章 溶接部に存在する内部き裂が鋼材表面のひずみに及ぼす影響
15.2.2
表面ひずみの評価
解析結果から,図 15.7 に示すき裂存在断面上端の A−A’に発生する z 方向ひずみを抽出し,次
式よりひずみ増加率を求める.
′
ひずみ増加率(%) =ε−ε × 100
ε′
ここに,ε :き裂がある場合の表面ひずみ,ε′ :き裂がない場合の表面ひずみ (3.5×10-4)
また,図 15.8 に示す斜線部の範囲について,z 方向ひずみ分布図を求める.
ひずみ測定位置
A
b
A’
き裂
2b
z
b
x
図 15.7 ひずみ測定位置
15.3
図 15.8 ひずみ分布図測定範囲
解析結果と考察
(1) 同一幅厚比でのモデルサイズの影響
同一幅厚比でサイズの異なる相似形モデルを解析した結果,発生するひずみの大きさは同一となり,
ひずみ分布も相似形となった.
(2) き裂位置の影響
図 15.9 は横 軸 に ひ ず み の 測 定 点 , 縦 軸 に ひ ず み 増 加 率 を と り , 各 き 裂 位 置 の板幅方向
のひずみ増加率の分布を示したグラフである.h/t =70%ではひずみ増加率は最大で 50.96%となったが,
h/t =30%ではひずみ増加率はマイナスとなり,最小で-10.52%となった.すなわち,き裂の位置が表面
に近くなるほど表面のひずみは大きくなり,深くなるほど小さくなる.また,h/t =70%では,き裂が
表面に近い(き裂先端が表面から板厚の 10%)位置にあり,き裂の影響によるひずみ変化はき裂部表
面に集中するため,図 15.12 のひずみ分布図のように局部的に大幅なひずみ増加が発生している.そ
のため,ひずみ分布図から表面の局部的なひずみの変化を明確に判断できる.しかし,き裂が表面か
ら深くなるほどき裂の表面ひずみに及ぼす影響は小さくなり,局部的なひずみの変化量も小さくなる
ため,表面局部のひずみ変化を判断することが困難になる.h/t =30%では,図 15.10 のようにき裂部
表面のひずみが周囲よりも低下していることが分かる.
第 15 章 溶接部に存在する内部き裂が鋼材表面のひずみに及ぼす影響
60.00%
ひずみ増加率
130
40.00%
h/t=30%
20.00%
h/t=50%
h/t=70%
0.00%
-20.00%
1
4
7
10 13 16 19
図 15.9 ひずみ増加率(α/ t =40%
β/ b =80%)
8.193e−04
6.663e−04
5.132e−04
3.602e−04
2.071e−04
5.407e−05
図 15.10 ひずみ分布図(h / t =30%,α/ t =40%,β/ b =80%)
6.711e−04
5.488e−04
4.266e−04
3.044e−04
1.821e−04
5.988e−05
図 15.11 ひずみ分布図(h / t =50%,α/ t =40%,β/ b =80%)
8.193e−04
6.663e−04
5.132e−04
3.602e−04
2.071e−04
5.407e−05
図 15.12 ひずみ分布図(h / t =70%,α/ t =40%,β/ b =80%)
第 15 章 溶接部に存在する内部き裂が鋼材表面のひずみに及ぼす影響
131
(3) き裂サイズの影響およびき裂の検出可能サイズ
図 15.3∼15.5 のモデルの解析を行い,各モデルのひずみ増加率の代表値を取り出し,き裂サ
イズとひずみ増加率の関係をまとめたグラフを図 15.13∼15.15 に示す.同一のひずみ増加率に
おけるき裂サイズの関係を比較すると,き裂の位置が表面から深くなるほど,β/b の減少に伴う
α/t の増加が大きくなっていることが分かる.き裂の位置が表面付近では,応力集中によるひず
み変化範囲が狭くなるため,β / b の影響はき裂上部の表面に集中するが,位置が深くなるほど応
力集中によるひずみ変化範囲が広くなるため,β / b の影響も表面の広い範囲に及ぶと考えられる.
また,図 15.13∼15.15 より,表面ひずみの測定精度がひずみ増加率 2%以上であれば,h/t =30%
の場合,β/b =80%では α/t =19.84%,β/b =20%では α/t =35.26%までのき裂サイズの検出が可能
である.h/t =50%の場合,β/b =80∼40%では α/t =20.41∼21.30%となり,α/t の検出可能サイ
ズにほとんど変化がないのに対し,β/b =40∼20%では α/t の検出可能サイズの変化は大きくな
っており,β/b =20%では α/t =32.03%までのき裂サイズの検出が可能である.h/t =70%の場合,
β/b =80∼20%では α/t =9.44∼11.75%となり,β/b の変化による α/t の検出可能サイズの変化は
ほとんどなく,β/b =40∼20%においても α/t の検出可能サイズの変化が小さくなった.
55.00
α/t(%)
50.00
45.00
-2.00%
-4.00%
-6.00%
-8.00%
-10.00%
40.00
35.00
30.00
25.00
20.00
15.00
0
20
40
60
80
100
β/b(%)
図 15.13 き裂サイズとひずみ増加率の関係 (h / t =30%)
65.00
2.00%
4.00%
6.00%
8.00%
10.00%
α/t(%)
55.00
45.00
35.00
25.00
15.00
0
20
40
60
80
100
β/b(%)
図 15.14 き裂サイズとひずみ増加率の関係 (h / t =50%)
30.00
α/t(%)
25.00
2.00%
4.00%
6.00%
8.00%
10.00%
20.00
15.00
10.00
5.00
0
20
40
60
80
100
β/b(%)
図 15.15 き裂サイズとひずみ増加率の関係 (h/t =70%)
132
第 15 章 溶接部に存在する内部き裂が鋼材表面のひずみに及ぼす影響
(4) 同一き裂断面積比でのき裂形状の影響
図 15.16∼15.18 に,き裂断面積比が 12%でき裂形状を変化させたモデルの解析から得られたひ
ずみ増加率を示す.h/t =30%では,β/b を小さくし α/t を大きくしたモデルほど表面のひずみ増
加率がマイナス側に大きくなっており,β/b =40%・α/t =30%のモデルではき裂上部のひずみ変化
が大きくなっている.h/t =50%でも,β/b を小さく α/t を大きくしたモデルのひずみ増加率が大
きくなり,β/b =20%・α/t =60%のモデルではき裂上部のひずみは大幅に増加し,最大で 9.60%と
なった.h/t =70%も同様に β/b を小さく α/t を大きくしたモデルほどき裂上部のひずみ増加率は
大きくなっている.β/b =40%・α/t =30%のモデルではひずみ増加率は最高で 19.22%になった.
以上の結果から 3 つのき裂パラメータ(h/t ,α / t ,β / b )の表面ひずみに対する影響力を比較する.
(2)の解析結果より,き裂の位置によって表面ひずみは大きく変化するため,h/t の影響力が最も
大きいと言える.また,(3)(4)の解析結果より,き裂のサイズではβ / b よりもα / t の方が表面のひ
ずみに対する影響力は大きくなることが分かる.
0.00%
ひずみ増加率
-0.50%
β/b=80%
α/t=15%
-1.00%
β/b=60%
α/t=20%
-1.50%
-2.00%
β/b=40%
α/t=30%
-2.50%
-3.00%
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10 11
図 15.16 ひずみ増加率 (き裂断面積比 12%,h/t =30%)
12.00%
β/b=80%
α/t=15%
ひずみ増加率
10.00%
8.00%
β/b=60%
α/t=20%
6.00%
4.00%
β/b=40%
α/t=30%
2.00%
0.00%
β/b=20%
α/t=60%
-2.00%
1
2
3
4
5
6
7
8
9 10 11
図 15.17 ひずみ増加率 (き裂断面積比 12%,h/t=50%)
ひずみ増加率
25.00%
20.00%
10.00%
β/b=80%
α/t=15%
β/b=60%
α/t=20%
5.00%
β/b=40%
α/t=30%
15.00%
0.00%
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10 11
図 15.18 ひずみ増加率 (き裂断面積比 12%, h/t=70%)
第 15 章 溶接部に存在する内部き裂が鋼材表面のひずみに及ぼす影響
15.4
133
まとめ
本研究では,鋼材の溶接内部に存在するき裂を対象に,その位置やサイズが表面のひずみに及ぼす
影響について弾性解析により検討した.今後は,今回得られた知見をもとに,スペックル干渉法での
内部き裂検出の可能性をより詳細に検討する必要がある.また,幅厚比やき裂の位置・サイズなどの
パラメータの組み合わせを増やした広範な解析を実施しデータベースを作成するなどして,き裂の位
置やサイズの推定方法を確立できればと考えている.
参考文献
1) 阿部英彦,谷口紀久,阿部允:鋼鉄道橋における疲労問題と補修・補強,橋梁と基礎,Vol.17,No.8,
pp.24-29,1983
2) 神原天鳴,松田浩,下郡康二,崎山毅,阪上直美:スペックル干渉法による鋼部材の非接触全視野
ひずみ計測,鋼構造年次論文報告集,Vol.11,pp.519-524,2003.11.
134
第 15 章 溶接部に存在する内部き裂が鋼材表面のひずみに及ぼす影響
第 16 章 平和祈念像の3次元計測とFE解析
135
第 16 章
平和祈念像の3次元形状計測とFE解析
16.1
はじめに
本章では,長崎平和祈念像の全体形状を把握するために,3Dレーザスキャナ他を用いた計測を実
施し,今後の補修・補強工事など維持管理の検討のための基礎的資料の収集を行ったものである.
補修・補強手法を検討するためには,管理者・設計者,施工者は補修・補強の計画段階でよりその
精度を高めておく必要があり,最低でもその損傷程度の把握が必要になるが,従来の測量には人手や
足場などの設備に費用,時間がかかっていた.
今回調査に用いた「3Dレーザスキャナ」は,離れた場所から計測できるため,足場が不要になる
ほか,作業時間の短縮,計測忘れなどの人的ミス解消,正確で客観的なデータ取得ができ,いわば(a)
非接触,(b)高精度,(c)高速,(d)全視野計測が可能など,多くの利点を有している.
またコンピュータ周辺機器や画像処理技術の進歩により,当該計測手法は,より使いやすく,信頼
性の高いものとなっている.例えば,取得した3次元データを側面図,平面図,断面図などさまざま
な図面に応用展開することもできる.また取得した3D データを基に,詳細なFEMモデルを生成し計
算力学的な解析と組み合わせて地震応答解析を行うことにより,耐震補強工事時の構造検討を行うこ
とも可能となる.その他当該敷地,仮設計画,耐震補強計画を事前に 3 次元で検討することも可能で
あり関係者間での事前合意形成にも寄与するものと考える.
16.2
16.2.1
3Dレーザースキャンによる実測
3Dレーザースキャナの概要
3Dレーザースキャナは,レーザーによる計測対象物とセンサーの間をレーザパルスが往復する時
間を計測することで距離を計測し,同時にレーザービームを発射した方向を計測することで,計測対
象点の3次元座標を取得するものである.
測定原理は,レーザーが測定対象物で反射して帰ってくるまでの時間から距離を算出し,またレー
ザーの移動方向角度から角度を算出し,この距離・角度情報から3次元位置情報を求めている(図 16.1)
.
3Dレーザスキャナの性能を表 16.1 に示す.また,3Dレーザスキャナで長崎市平和祈念像の計測風
景の写真を図 16.2 に示す.
現在,3Dレーザスキャナは,金型など工業製品の規格検査用には極めて精密な計測が可能な超短
距離計測用から,やや精度の劣る長距離計測用など様々な機器が存在する.これらのうち,文化財計
136
第 16 章 平和祈念像の3次元計測とFE解析
測に有効と考えられる近・中∼長距離計測が可能なタイプの代表的な機器について,その諸元を表 16.2
に示す.現在,一般的に入手可能なこれらの3Dレーザスキャナの代表的な相違点は,①計測距離(数
m∼1000m 程度まで) ②計測精度(数 mm∼数 cm) ③スキャン範囲などである.3Dレーザスキャナ
を使用して計測を行う際には,対象までの距離,対象の規模・大きさ,必要な位置精度などを考慮し,
適切な機器を選択する事が必要である.
図 16.1 3Dレーザースキャナの測定原理
表 16.1
3Dレーザースキャナの性能
ILRIS-3D(オプテック社)
測定範囲
スキャンニング角
10∼350m(350mの反射率4%)
∼800m(800mの反射率20%)
垂直±20°×水平±20°
スキャンニング速度
2000 ポイント/秒
レーザー波長
1540nm(近赤外)
レーザー強度
クラス1
レーザー間隔
0.025°(最高0.0014°)
スポットサイズ
13mm(5m の時)
測定精度
標準±3mm(100m の時)
図 16.2
3Dレーザースキャナによる平和祈念像の形状測定
137
第 16 章 平和祈念像の3次元計測とFE解析
表 16.2 中長距離計測が可能な代表的な 3 次元計測器の種類と緒元
機 種 名
メーカー
イメージ
測定範囲
スキャニング角
/速度
レーザー波長
測定精度
測定温度条件
レーザー強度
本体重量
・サイズ
備
考
用途
16.2.2
ILRIS-3D
optech 社(カナダ)
Cyrex 2500
サイラ社
3∼350m(反射率 4%)
∼800m(反射率 20%)
垂直±20°
×水平±20°
2000 ポイント/秒
1540nm(遠赤外)
標準±3mm
(100m の時)
0∼40°
クラス 1
12kg
312×312X205 ㎜
3D距離画像のほかに
受光強度画像得ること
ができる。 GIS プログ
ラ ム ( 例 え ば
PolyWorks、3D スタジ
オ MAX、Terramodel、
AutoCAD、Isogen)と互
換性。 多角形の出力
(.dxf、.iv、.obj、VRML
フォーマット)が可能で
ある
文化財/土木一般/橋梁な
どの維持管理
最大 100m(最適距離 1.5
m∼50m)
垂直 40°×水平 40°最大
1000 ポイント/秒
LMS−Z210
リーグル社(ライカ)
2∼350m
(反射率 50%)
[ラインスキャン方向]
80° 1∼36 スキャン/
秒:20000Hz
532nm(青色)
905nm(近赤外)
空間単独点6㎜
標準±2.5 ㎝
(50m 以内)
最悪±10 ㎝
0∼40°
0∼40°
クラス 2
クラス 1
20.5kg
13kg
L15.8×W13.25×H16.9
435×210 ㎜
スキャニング密度を垂直 広角度で対象物をスキャ
及び水平方向それぞれに ニングし、距離や角度位
独自に設定可能。CGP 置(鉛直・水平の両軸)
ソフトウェアが内蔵さ を計測。3D距離画像の
れ、3Dモデル、点群、 ほかに受光強度画像、及
ワイヤメッシュ、シュリ び RGB も得ることがで
ンクラップ面のズームや きる。受光強度画像から
パンも自在で、自由回 地形の起伏や対象物の材
転・移動が操作中も可能。 質差などを読み取ること
が可能。
プラント、文化財他
土木一般(のり面他やや
精度が問題か?)
iQsun880
iQvolution
50cm? 76m
垂直 320°×水平 360°
120,000/秒
785nm(近赤外)
3mm/10m
0∼50°
クラス 3R/3A
13kg
w400×d160×h280mm
近距離、特に建築物の内
部を高速で計測。パルス
方式でなく、1 パルス 3
サイン波フェイスシフト
方式を採用し、1周4分
という速さ、かつ±3mm
(10m)という誤差内で
計測。陳腐化しないよう
に 4 つのパーツで拡張性
大
プラント、建物の中のよ
うなクローズドの空間を
計測
現場計測から3Dレーザ計測データ活用の流れ
3Dレーザスキャナを用いた現場計測によって得られるによる3D形状データの活用法のフローは
図 16.3 に示すように,以下のようにまとめられる.
①
3Dレーザによる現場計測
土木構造物や建築物などの計測対象物にデータ合成用ターゲットを設置し(平和祈念像などの
ように特徴点がある場合は省略可能),3Dレーザスキャナにより複数箇所から3次元計測を実
施する.このとき,計測対象物の外観計測には長距離型(Optech 社 ILRIS-3D)
,室内計測には近
距離型(IQvolution 社 IQSun)の3Dレーザスキャナを使用する.従来の方法では 10 日程度か
かっていた計測作業が1∼3日程度の現場作業で終了することができる.
②
取得データの合成
外観計測,室内計測とも,現場において複数箇所から取得した3次元計測データを合成し,対象
計測物の3Dモデルを構築する.
138
③
第 16 章 平和祈念像の3次元計測とFE解析
データの解析と活用
➁で合成した3Dモデルは,計測対象物をありのままに再現するCGモデルである.移動回転,
拡大縮小など任意に操作することが可能で,さらに2点間の距離を計測したり,任意断面を抽出
したりすることができる.3Dモデルの活用事例として,実測図面の作成,リニューアルの検討,
足場などの仮設物の検討,耐震補強の検討などが行われている.
長崎平和記念像
(基準点の設置)
3D レーザ計測(ILRIS-3D)
デジタル写真測量
現地調査
取得データの解析・処理
オルソ画像の作成
構成部材の形状・数量
損傷状況
その他痕跡など
現場作業
室内作業
点群データ
3DCG モデルの作成
面データ
(コンター図)
トレース図化
任意断面図
CAD 図
①側面図の作製
②平面図の作製
③破損図の作製
④全体平面図の作製
(高所の寸法形状抽出)
(亀裂他の抽出)
(周辺敷地形状の取得)
各項目毎に抽出が可能であったものを整理しまとめる.
側面図,断面図等の作製 写真合成図の作製
調査結果のまとめ
3Dデジタル情報
の活用
「補強工事」に向けた事前情報
補強工法検討その他
図 16.3 現場計測から3Dレーザ計測データ活用の流れ
第 16 章 平和祈念像の3次元計測とFE解析
16.3
139
計測データ処理ソフトウェア(RapidForm)
本研究においては,3次元計測データの処理法として RapidForm2004(INUS Technology,Inc.)を導
入した.以下に RapidForm2004 の概要を示す.
16.3.1
特徴
RapidForm(ラピッドフォーム)は 3 次元スキャナでデジタイズした形状データを活用するためのソ
フトウエアである.主に2つの機能を有しており,3 次元測定データ活用ソフトのデファクトスタンダ
ードとなっており,以下のような特徴を有している.
„ 形状評価機能(インスペクション)
• CAD データと測定データを重ね合わせ
• 形状の違いを色表示にて分かりやすく評価
• 評価結果をレポート出力(PDF や Excel など)可能
„ データ変換機能(リバースエンジニアリング)
• 測定データを変換し,CAD,解析,NC 加工へ
• 点群データのノイズ除去やデータ欠損部分の補完など多彩な編集機能
• 点群,ポリゴン,NURBS サーフェスの相互変換可能
„ 2 通りの活用が 1 本のソフトで可能
RapidForm は上記の形状比較とデータ変換の 2 通りの活用が 1 本のソフトで可能である. 3
次元データの取り込み,データ変換等,3 次元での形状評価に最適である.
16.3.2
機能
RapidForm の豊富な機能はワークベンチ(WB)という概念でカテゴリー分けられており,作業工程に
応じて分けられた WB は以下のような操作性を提供している.
表 16.3 RapidForm の機能
Scan WB
点群を処理する WB.ノイズ除去やポリゴン化などの機能がある
Polygon WB
ポリゴン処理.穴埋め,ポリゴンの効率化,ポリゴン再配置など.データに厚み付
けも行える.
Color WB
テクスチャデータの 3 次元的な張り込み,バーチャルペイントなど色情報の取り扱
いをサポート.
Curve WB
NURBS カーブを作成する WB.カーブ作成方法は自由曲線やスライスなど多数.
Surface WB
NURBS 面に変換する WB.自動と手動の面張りが可能でトリムドサーフェスもサポー
ト.
Feature WB
測定データから幾何形状を認識して面貼り作業を強力にアシストする.またソリッ
ドデータへの変換をおこない,フィレット面の作成なども可能.
Inspection
測定点群データと設計 CAD データを比較検討する WB.色による全体評価,断面評価,
WB
レポート出力などサポート.
3D Imaging WB
CT スキャナの DICOM データをポリゴンデータへ変換する WB.
140
16.3.3
第 16 章 平和祈念像の3次元計測とFE解析
ワークフロー例
図 16.4 に RapidForm2004 のワークフローの例を示す.
図 16.4 RapidForm の入出力可能ファイル
16.3.4
動作環境
表 16.5 RapidForm の動作環境
OS:
Windows 98, Me, 2000, XP or NT 4.0(SP6 以上)
CPU:
Pentium プロセッサ
メモリ:
最低 512MB,1GB 以上推奨
※メモリは操作するデータ量に依存.
※10000 ポリゴンごとに 1MB のメモリを占有(演算にはその倍程度必要).
※例:500 万ポリゴンのデータは 500MB のメモリを占有し,演算時は 1.5GB.
HDD:
最低 800MB,1GB 以上推奨
グラフィックス
解像度 1280X1024,32bit カラー,OpenGL1.2 以上対応グラフィックスカード
カード:
推奨は下記の OpenGL アクセラレータチップ搭載ボード
- NVIDIA Quadro/GeForce シリーズ
- 3Dlabs Oxygen GVX1 シリーズ
- ATI
FireGL シリーズ
- 3Dlabs Wildcat シリーズ
※最新のドライバでの使用が望ましい.
パラレルポート: ドングル版の場合はパラレルポート(DB25)必須
第 16 章 平和祈念像の3次元計測とFE解析
16.3.5
141
パッケージ内容
RapidForm は,目的に応じたワークベンチ(WB)を選ぶことができ,必要な機能だけ購入可能である
(RapidForm の機能参照)
.一般的な使用目的に合わせて WB を組み合わせ,価格的にメリットを持た
せた「パック」も用意されている.
表 16.6 RapidForm のパッケージ
1
スキャン・パック
(点群をポリゴンに変換,複数スキャンの合成など)
2
カラー・パック
(スキャン・パックにテクスチャカラーの機能を追加)
3
リバースエンジニアリング・パック
(ポリゴンデータを NURBS カーブ,サーフェスに変換)
4
アドバンスド・リバースエンジニアリング・パック
(点群データからの変換,幾何形状の認識機能など追加)
5
インスペクション・パック
(CAD データとスキャンデータの形状比較,レポート出力機能)
6
アドバンスド・インスペクション・パック
(インスペクション・パックに各種変換機能も追加)
7
3D イメージ・パック
(CT スキャンなどで取得した DICOM データをポリゴンに変換,修正)
8
アドバンスド・3D イメージ・パック
(3D イメージ・パックに,NURBS カーブ,サーフェス変換機能を追加)
9
プレミアム・パック
(RapidForm の全機能を詰め込んだパッケージ)
142
第 16 章 平和祈念像の3次元計測とFE解析
❑
RapidForm が使用可能なデータ形式
第 16 章 平和祈念像の3次元計測とFE解析
16.4
16.4.1
3D計測データの処理およびFEメッシュの作成
点群データの作成
平和祈念像を図 16.5 に示すように 8 方向から計測し,対象物の 3 次元計測データを取得する.
計測時の写真風景および得られた点群データを図 16.6 に示す.
図 16.5 計測位置
計測風景①
計測風景②
点群データ①
点群データ②
図 16.6 計測風景および点群データ
143
144
16.4.2
第 16 章 平和祈念像の3次元計測とFE解析
表面 3 次元点群データの作成(点群データの合成)
得られた 8 つの点群データを重ね合わせ,合成することにより,平和祈念像全体の表面 3 次元点群デ
ータを得る.
得られた点群データの近い点同士を結び三角形(ワイヤフレーム)を作る.この三角形に面を貼るこ
とにより3Dモデル(サーフェイス)を作り上げる.
点
群
ワイヤーフレーム
サーフェイス
図 16.7 点群データから3Dモデル作成の流れ
第 16 章 平和祈念像の3次元計測とFE解析
図 16.8 3次元表示
145
146
16.4.3
第 16 章 平和祈念像の3次元計測とFE解析
3次元サーフェイスデータから FE メッシュの作成
3D計測データを元に3Dサーフェイス情報を作成し,そのデータを汎用有限要素コード Marc に取
り込んだ.レーザスキャナーで得られるデータのファイル形式は.XYZ であり,RapidForm で作成される
データのファイル形式は.STL である.Marc のプレポスト Mentat 環境で.STL ファイルを読み込んだも
のが図 16.9 である.メッシュ数は,(a)が 649,229 要素,(b)が 53,425 要素,(c)が 14,638 要素である.
線形解析に対しては(a)程度の要素数でも比較的短時間に解析可能であるが,地震応答解析などの動的
非線形解析を想定すると要素数は可能な限り少ない方が望ましい.(a)から(c)への変換は Mentat の
SWEEP 機能を用いて自動分割される.
(a)
(b)
649,229 要素
(c)
14,638 要素
図 16.9 FE メッシュ分割図
53,425 要素
第 16 章 平和祈念像の3次元計測とFE解析
16.4.4
147
FE解析
図 16.9 の(c)の 14,638 要素のメッシュ分割を用いて解析を行った.境界条件は下端部を完全固定と
し,平和祈念像の右腕先端に集中荷重Pを載荷した.解析結果を図 16.10 に示す.(a)図は変位分布で,
(b)は x 方向応力σx 分布である.
(a)
(b)
x 方向変位分布
応力分布σx
図 16.10 FE 解析結果
148
第 16 章 平和祈念像の3次元計測とFE解析
16.5
まとめ
大型建設構造物を想定して平和祈念像の3次元計測を実施した.得られた結果は以下のようにまとめ
られる.
(1)
長距離用のレーザスキャナを用いて高精度の3D計測が行われることが確認できた.
(2)
RapidForm を用いることにより,点群データからポリゴン分割,サーフェイス分割が容易に行え
ることが確認できた.
(3)
MARC のプリポストである Mentat 機能を用いることにより,FE メッシュ分割として利用できるこ
とが確認できた.
(4)
FE 解析を適当な時間で行うためには,最適な要素分割が必要であるが,SWEEP 機能を用いること
により最適メッシュ分割要素を得ることができる.
(5)
平和祈念像のFE解析は静的弾性解析しか行っていないが,ここまでできると動的荷重をも含め
て任意荷重を取り扱うことができるので,この方面の発展には計り知れない活用法があるものと
考える.
(6)
本研究では,平和祈念像を対象として,3D計測から,3Dデジタル化,3DFE解析の一連の
システムが簡単に構築できることを確認できた.この手法は,次章の医学や歯学の生体力学分野
においても有効活用ができるものと考える.
第 17 章 歯の CT 画像から FE モデルの作成
149
第17章
歯のCT画像からFEモデルの作成
17.1
はじめに
元来,ソリッドモデルとは,充実の円筒や直方体など基本的な立体要素の集合体で表現するモデル
であり,重心や慣性などの物理量を計算するなど,CAEにとって重要なモデルである.三次元物体
を,立体格子に細分割した三次元標本点をボクセル(voxel)と呼ぶ.CAEのようなシュミレーショ
ン分野で多く見かれられるが,その代表的なものはCT画像である.
本章では,CT画像からのFEMソリッドモデルの作成法に関して,その対象物を生体工学分野で
研究が行われている「歯」を取り扱い,2 次元 CT 画像から 3 次元モデルを作成し,さらに3DFE 解析
へ取り込む手法について述べる.
17.2
歯の構成
「歯」と一般的にいってもその周りには,顎の骨や皮膚等様々なものの集合体で成り立っている.
実際に,歯と顎の骨の間には,歯根膜とよばれる厚さ 0.2mm程度の薄い膜が存在しており,その膜に
より人間の歯と骨は連結している構造となっている.歯根膜に直接ひずみゲージを貼付し材料定数を
算定することは困難である.歯根膜の材料定数の概算値を得る手法としては,実験により得られた「歯」
の変位からの逆解析により歯根膜の材料定数を算定するのが主流となっている.
このような背景に鑑み,本研究では,
「歯」
,
「骨」
,
「歯根膜」をCT画像からのソリッドモデルを構
築しFE解析を試みた.図 17.1 に歯の構成を示す.
17.3
CTスキャンの原理
CTやMRI(磁気共鳴)装置は病院などに置かれている装置で,医用画像診断装置と呼ばれてい
る.このような装置を使用することにより,人間の体を切り開かなくても,体内にある臓器の状態を
観察することができるため,がんや腫瘍などの様々な病気を発見することが可能である.
図 17.1 歯の断面図
図 17.2 立体画像化
第 17 章 歯の CT 画像から FE モデルの作成
150
CTスキャンの原理は,人体に対して多方向からX線を照射し,人体を透過してきたX線を鋭敏な
検出器で検出し,その透過X線量の情報をコンピュータで処理して2次元(3次元も可能)画像とし
て構成するものである.これにより重なり合った組織,臓器の分離が可能である.CT画像は,水を 0,
空気を−1000 とするCT値から構成されていて,人体内の組織はこの範囲内で画像化されている.ヨ
ード系の造影剤を併用することで,微細な変化の描出も可能である.最近では,人体の周りを連続回
転するX線菅球と連動した寝台移動の組み合わせで広範囲な画像描出を可能にした螺旋状CTの出現
により,横断層の画像のみならず,冠状断層や矢状断層の画像描出が可能である.
レントゲンも医用画像診断装置の一種であるが,レントゲン装置との最大の違いは,レントゲン装
置では平面2次元の画像を取得するのに対して,CTやMRI装置は平面の写真では表すことができ
ない立体的3次元の画像を取得することができることである.すなわち,CTやMRIでは,多くの
デジタルスライス画像を高さ方向に積み上げて,コンピュータでボリュームレンダリングし3Dデジ
タル情報を作成されている.図 17.2 に立体画像概要図を示す.
17.4
17.4.1
CT画像からのモデル作成
CT 画像の取得方法
CT画像は,長崎大学歯学部歯科矯正学講座の吉田教明教授から仲介していただいた神奈川歯科大
学口腔外科第二講座の小林優教授に採取していただいた.CTの画像条件は,画像解像度が 325×325,
ピクセルサイズが 0.125mm,スライスピッチが 0.5mmである.
図 17.3 にある断面のCT画像,図 17.4 にCT値の変化のグラフを示す.図 17.4 は横軸は距離(mm),
縦軸はCT値である.CT値は,図 17.3 の前歯 2 本に直線を引いた部分の値であり,2000 から−200
の間を推移していることがわかる.CT値は 1mm 付近で急激に小さくなっているが,これは左側の歯
の内部の空洞部分である.また,2.5mm 付近からの上昇は歯の表面に近づいたからである.4∼8mm の
部分は,左と右の歯の空洞部分で,9mm 以降の減少と上昇は同じである.
次に,上から下までのCT画像を図 17.5 に左側から ue,naka,sita,saisyou という順序で示す.
図 17.6 に,
各断面の同じ歯を 2 本取り出した距離のCT値の推移を示す.
この図のCT値の推移より,
歯の上側ではCT値が高く,また下側では低いために,上側でのCT値に照準をあわせると下側の歯
が抽出できず,下側にあわせると歯の先端が抽出できなくなる.そのために,各断面において最適な
CT値を算出しモデル化を行った.
図 17.3 ある断面のCT画像
図 17.4 直線上のCT値
第 17 章 歯の CT 画像から FE モデルの作成
ue
naka
sita
151
saisyou
図 17.5 CT画像の変化
図 17. 6 各CT画像のCT値の分布
700
1000
1300
1600
(a)
(b)
(c)
(d)
図 17.7 CT 値を一定にしたときのモデル図
図 17.7 に CT 値を一定にした時に作成されるモデル図を示す.(a)では,骨と歯が共存する断面にお
いて骨が多く抽出されているが CT 値を大きくするにつれて,歯の下部部分で歯の表面の CT 値が高い
ために,歯の表面の形状がとれていないことがわかる.(d)では,歯だけしか抽出していないので,こ
れにより骨の CT 値は,おおよそ,700∼1000 の範囲内の CT 値であることがわかる.
第 17 章 歯の CT 画像から FE モデルの作成
152
17.4.2
CT データからの三次元画像の作成
上節で述べた方法で作成したモデルを図 17.8 に示す.この方法により実際の歯の形状に近いモデル
ができていることがわかる.図 17.8 は,歯だけの画像であるが,この計測装置は,骨と歯をわ分けて
抽出することができるため,骨と歯を一体としたデータから歯のデータを引くことにより骨だけのデ
ータを抽出することが可能である.
図 17.8 抽出した歯の3D形状モデル
17.5
17.5.1
FE解析
FE 解析モデルの構築
前記の方法で得られた3Dデータはソリッドデータではなく,歯の形状をした閉曲面のサーフェイ
スデータであるために,PATRAN(FE 解析のプリポストプロセッサ)のテトラヘッダーを用いてソリッ
ドデータへ変換した.CT画像からは,歯根膜を確認することはできないために,サーフェイスデー
タをソリッドデータに貼り付けることによりモデル化を行った.歯は4節点テトラ要素でモデル化し,
要素数は 3282 要素であった.歯根膜は,3節点シェル要素でモデル化し,要素数は 710 要素であった.
図 17.9 に解析モデル図を示す.
(a) 歯
(b) 歯根膜
図 17.9 歯の3D−FE要素分割図
第 17 章 歯の CT 画像から FE モデルの作成
17.5.2
153
解析概要
CT スキャンにより抽出したモデルが,FEM モデルとして適用可能であるかの検証のために,今回は,
歯,歯根膜だけのモデルと,また二つを接触させた時それぞれに,歯の上端のx方向に強制変位をか
けて変位分布が流れているかの検証をおこなった.境界条件としては,それぞれのモデルの下端を固
定した.材料定数としては,一般的に用いられる歯の弾性係数 20000(N/mm2),ポアソン比 0.3 とした.
図 17.10 に強制変位方向の変位分布図を示す.変位分布図より上端の変位が大きく下端までの変位の
分布がスムーズに流れていることがわかる.これにより本ソリッドモデルは,FE モデルとして,充分
適用可能であるといえる.
(a) 歯 0.5mm 変位時
(b) 歯 1mm 変位時
(c) 歯根膜 0.5mm 変位時
(e) 歯と歯根膜 0.5mm 変位時
図 17.10 変位分布図
(d) 歯根膜 1mm 変位時
(f) 歯と歯根膜 1mm 変位時
第 17 章 歯の CT 画像から FE モデルの作成
154
17.6
考察
CT 画像からのソリッドモデルの FE モデルは,本章で述べたフローで構築できることがわかった.CT
画像より得られるモデルは,サーフェイスモデルであるためにソリッドモデルにするためには,テト
ラヘッダーを用いる必要があり,その際得られるサーフェイスモデルが閉曲面であることが絶対条件
である.
本章においては,まだ骨のソリッドモデルの構築はしていないが,CT 画像から閉曲面を得ることが
できれば,骨のソリッドモデルも可能である.今後は,骨のソリッドモデルの構築と歯,歯根膜,骨
の接触を考慮した FEM 解析と実験値との精度比較を行っていくことが必要である.
17.7
あとがき
本章で述べたように,2 次元情報から 3 次元情報を構築する技術開発は,医学や歯学の分野で進めら
れ,既に医科歯科用に利用されている.土木工学分野でも地質調査図に基づいて3D デジタル化するこ
とも可能である.3D デジタル情報が構築できれば,3次元 FE 解析を行うことができる.例えば,静
的および動的地震応答解析を行い,地震時のがけ崩れや斜面崩壊の予測し,基礎データを蓄積するこ
とにより,ハザードマップの構築も可能となるものと考える.
参考文献
(1) 大島まり:身近なもので学ぼうCTスキャンのしくみ
(2) 峰村勝弘:フーリエ解析と断層写真
(3) 小林優:歯根膜のバイオメカニクス
第 部
付録 応力・ひずみ測定法
本章では,応力・ひずみ測定法について文献 を引用する.
応力・ひずみ測定法の種類と特徴
実験応力・ひずみ測定法として最も広く使用されているのは,電気抵抗ひずみ計と光弾性など光学的手
法である.このほかにも種々の測定法が目的によって用いられる.これらは,測定領域の大きさからは,点
測定 '%
-(42('% - +0++-
と全視野測定 5&&(N+&3 +0++- に分けられる.ひずみゲージ法
は前者であり,また光弾性は後者の代表的手法である.また近年,結晶回折法や熱弾性法などの手法の進
歩が著しい.表 ! と表 ! にそれぞれの測定法のうち,代表的な方法の原理,長所,欠点をまとめる.
本章ではまず,各測定法を概説した後に,抵抗ひずみゲージ法,結晶回折法,光学的手法,熱弾性法につ
いて説明する.
点測定
電気抵抗ひずみ計測
点測定法のうち,代表的なものが電気抵抗ひずみ計 +&+7
7 +0 0-7+ 0 - ++
である.金属抵抗
線または箔,半導体など,電気抵抗が作用するひずみによって変化する現象を利用したひずみ計である.被
測定物にひずみゲージを貼付し,物体のひずみと同じひずみがゲージに生じることによって,これを抵抗
変化として検出する.この手法は,手軽でかつ安価であり,ほとんどすべての場合に適用できるので最も
広く使用されている.ゲージ長は !
分解能は であり,その平均のひずみを測定する.測定されるひずみの
にもなるため,あまり大きなひずみの測定には適さないが,構造物に多くのひずみゲー
ジをつけることから同時多点しかも遠隔測定が可能である.さらに,軽量で応答性もよく,動的な測定も
容易である.ただし,表面での測定であり,また残留応力は直接的には測定できない.
伸び計
ひずみは, つの評点間隔の変化から求められる.この 点間変位を精度よく測定するために種々の変位
計があり,引張試験における伸び計 +B+-0%++ として使用されている.これには,差動変圧器や,渦
電流あるいは電気容量の変化をもとに変位を記録するものがある.変位計は大きなひずみまで測定可能で
あり,かつ繰り返し使用することができる.しかし,一般に質量が大きいため動的測定には適さない.こ
#
付録 応力・ひずみ測定法
)
れに対して,レーザを利用した精密寸法測定器は,評点間隔の変化の測定に利用でき,ひずみ計としても
使用されている.測定は非接触でかつ動的測定が可能である.
+ 線応力測定法
線応力測定法 (20+00+0++- は 線による結晶の回折現象をもとに,結晶格子面間隔の
変化よりひずみを測定するものである.格子間隔が評価間隔となっており,残留応力の非破壊測定が可能
であり,熱処理や表面処理の残留応力測定法として広く利用されている.この手法は,弾性ひずみを計測
しそれから応力を算出しており,塑性ひずみを受けた材料でも応力測定が可能である. 線が材料中へ侵
入する深さの領域におけるひずみを測定するので,高々数 の表面層の応力を測定する.
中性子応力測定法
線の代わりに熱中性子を使用して結晶回折を行うと, 線の場合と同様に応力測定が可能である.中
性子応力測定法 -+%-
0+00 +0++-
は,中性子が通常の 線に比較して材料中に 倍近く
深く入るため,材料内部の応力測定を可能としており,材料内部の残留応力測定法として使用されつつあ
る.しかし, 点の応力測定に比較的時間がかかること,非測定物を中性子源にもっていく必要があること
が欠点である.
磁気ひずみ応力測定法
鉄鋼,ニッケルなどの強磁性体を磁化したとき,その寸法が変化する現象が認められる.これを磁気ひず
み効果 -+%0
7 %-
という.この材料に応力を加えると,逆効果によって透磁率が変化する.この
透磁率の変化から応力を測定する方法が,磁気ひずみ応力測定法 -+%0
7 %- 0+00 +0++-
であり,主応力差が測定される.この手法では,残留応力の非破壊測定が可能であり,しかも簡便に短時間
での測定が行えるため,可搬の応力計ストレステスターが市販されている.しかしながら,材料の微視組
織によっても透磁率は変化し,これを分離して測定することは困難をともなう場合が多い.実際には,ひ
ずみゼロの同一材料との差から応力測定精度の向上を図っている.
音弾性法
物体中を伝播する弾性せん断波 横波 は,応力によって弾性体中に生じた力学的異方性のために複屈
折し,主応力方向に偏光した つのせん断波の音速差が主応力差に比例して変化する.この現象は音弾性
効果 7%0%+&0
+1%3
7+ +Q+7
と呼ばれており,この効果を利用する応力測定法が音弾性法 7%0%+&0
7
である.複屈折音弾性法則は次式で与えられる.
0
$½ $¾
$½ C $¾ G
0 C D" !
ここで,$½ と $¾ はそれぞれ,主応力方向に振動するせん断波の速度である.また,D" は音弾性定数,
0 が組織効果 組織音響異方性 を示す.音弾性において測定される量は左辺であり,波の伝播した距離の
平均的な応力を求める.力を決定するためには無負荷状態での 0# を知ることが必要であるが,現在,応力
効果と組織効果を分離する一般的な解法は見出されておらず,この問題に対して工夫がされている.組織
効果の分離が可能な場合には,数 の分解能を有しており,板厚平均の面内応力が簡便に測定できる.
応力・ひずみ測定法の種類と特徴
*
レーザ干渉法 被測定物に つのビッカース圧痕を打ち,その圧痕からの反射光の干渉を用いて 点間の変位を測定す
ることが可能である.この手法は干渉ひずみ変位計として,微小なき裂の開口変位などの測定に利用され
ている.
コースティクス法
き裂近傍にレーザ光を照射したとき,その透過光あるいは反射光がスクリーン上に集光して形成される
像をコースティクス 0
70
と称するが,その光がこない内側のシャドースポットの形状と大きさから
応力拡大係数が求められる.この手法は,応力拡大係数ばかりでなく,接触荷重の測定などにも利用され
ている.
光ファイバひずみ計測
光ファイバを,被測定物に貼付したり,埋めこんで,ファイバの伸縮を光干渉によって検出する.これ
には変位を検出するものと直接ひずみを検出するものとがある.複合材料のヘルスモニタリングのセンサ
としての利用が試みられている.
顕微レーザラマン分光法
レーザ光を炭素繊維などの高結晶性繊維やシリコン単結晶に照射したときにラマン散乱が生じる.この
散乱スペクトルにおけるピーク波数は引張りでは低い値に,また圧縮では高い値になる.移動量は応力に
比例している.この移動量から応力測定することが可能であり,顕微レーザラマン分光法
7%0'+7%07%'2
&0+ -
と呼ばれる.この手法は数 オーダ寸法の微小領域において応力測定が可能であり,
繊維強化複合材料中の繊維の応力測定,あるいは電子デバイス中のシリコンや切欠きを有するサファイア
単結晶における応力分布の測定に利用されている.しかしながら,応力成分を分離することが非常に困難
であり,被測定材料はラマン活性な材料に限られ,金属材料には利用できない.
収束電子線回折法
主透過電子顕微鏡を用いて,収束電子線回折によってて得られる結晶の電子線回折線 1
A%-+ & -+ ,;<R
1+ %3+ <+
をもとに格子面間隔の変化を求めることが可能で,これからひずみを測定できる.これ
を収束電子線回折法 7%-9++-
4+ +&+7%- 3 Q7 %- +1%3 +1%3
と呼ぶ.この場合,
測定領域は - オーダまで小さくすることが可能である.しかしながら,試料を薄膜にすることが必要
である.この手法によって,シリコン単結晶の研削面におけるひずみが測定されている.
残留応力測定法
構造物中の残留応力測定は重要であるが,機械的な測定法は破壊的である.そこで,構造物にひずみゲー
ジを貼りつけた後,解体してひずみゼロの状態まで戻したときのひずみを測定し,逆に構造物中でのひずみ
を求めてこれから残留応力を求める.この解放の方法は,円板,円筒,線材など,形状と応力分布の特徴を
考慮して種々の工夫がなされている.局所領域の残留測定のためには周囲にひずみゲージを貼付後,中央
付録 応力・ひずみ測定法
に円孔を導入し,そのときの解放ひずみから応力を求める孔あけ法 1%&+(3
&& - +1%3
がある.また,
薄膜の残留応力測定には,梁の曲げの程度から残留応力を求める %-+2 の方法がよく使用される.
残留応力の物理的な非破壊測定には, 線応力測定法が最もよく利用されている.しかし, 線法は表
面測定に限られる.これを補う手法として高エネルギーの放射光や中性子を利用すると,材料表面下ある
いは内部の応力測定が可能となる.また,そのほかの方法として磁気ひずみ法や音弾性法が測定の容易さ
から簡便法として利用されている.ただし,応力効果と組織効果を分離することが難しいため,定量性に
ややかける.
表
!
点測定による,実験応力・ひずみ測定法
測定法
原理
電気抵抗ひずみ計
金属,半導体の電気抵抗の抵変化
からひずみを測定
長所
欠点
ほとんどすべての場合に適
用可
精度,定量化ともよい.
安価で取扱いが容易
ゲージ長が長い
内部応力は測定できない
表面での測定である
測定ひずみの範囲が比較的小
さい
変位計
評点間の距離の変化を測定
材料試験に使用される
定量性に優れる
繰返し使用が可
質量があり,動的測定に不適
ゲージ長が長い
結晶回折をもとに格子面間の変化
残留応力の非破壊的測定
定量性に優れる
表面近傍の応力を測定
装置が高価である.
測定にやや時間がかかる
結晶材料しか適用できない
残留応力の非破壊的測定
定量性に優れる
材料内部の応カの測定可
測定に時間がかかる
中性子源が必要で,装置が移
残留応力の非破壊的測定可
短時間での測定可
ゲージ長が長い
組織効果の分離が必要
強磁性体のみに適用可
内部の応力が測定できる
残留応力の非破壊的測定可
不透明な材料の測定も可
ゲージ長が長い
組織効果の分離が必要
微小領域
ラマン活性材料のみに適用可
応力成分の分離ができない
差動トランス,渦電
流ひずみ計,電気容
量型変位計
線応力測定法
からひずみを測定
中性子応力測定法
結晶回折をもとに,格子面間の変
化からひずみを測定.原理は 線
と同一
磁気ひずみ応力測定
磁気ひずみの逆効果によって生じ
法
る透磁率変化から主応力差を測定
音弾性法
音弾性法効果による超音波の複屈
折より主応力差を測定
顕微レーザラマン分
結晶によるラマン散乱ピークの移
光法
動から応力を測定
オーダ の応
力測定が可能
動できない
結晶材料のみに適用可
応力・ひずみ測定法の種類と特徴
全視野測定
光弾性法
光弾性法 '1%%
+&0 7 2
は,応力によって複屈折を示す高分子材料を使用して,負荷応力を加えたと
きの主応力差および主応力方向を測定する手法であり,全視野測定法として全体の応力分布が一目でわか
る利点があり,最も広く使用されている.通常,モデルによる 次元測定であるが,応力凍結法を使用し
て 次元の応力分布の測定も可能である.ただし,モデル実験であるため,実物測定ではない.
表
!
全視野測定による,実験応力・ひずみ測定法
測定法
原理
モデル光弾性法
高分子材科の複屈折により,主応
力差および主応力方向を測定.
長所
欠点
全体の応力分布が一目でわ
かる
複雑な物体の内部応力も測
モデル実験である.
装置がやや高価で,実験が多
少難しい.
定可
応力集中の解析に最適.
光弾性皮膜法
光弾性樹脂を実物に貼りつけるも
ので,実物の主ひずみ差を測定
実物の特に塑性ひずみの全
感度が少々低い
体的分布がわかる
モアレ法
試料表面に細い線を描き,その変
形より生じるモアレ縞から変位を
ホログラフィ法
必要.
高・低温下でも測定可
大変形も測定可
縞の処理がやや複雑
光の干渉,回折により生じる縞か
振動モードの解析によい
表面を磨く必要がない.
実物でもモデルでもよい.
防振装置が必要
装置が高価である.
微小面内変位が測定できる
表面を磨く必要がない
点測定も可能
防振装置が必要
装置が高価である.
非接触で測定できる
応力集中部位の評価に有効
被測定物の材質制限が少な
静的ひずみが測定できない
繰返し荷重負荷が必要.
レーザ光の干渉により生じるスペ
ックル模様の移動から面内変位を
測定
熱弾性法
きる.
表面に格子を作成することが
測定.
ら主に面外変位を測定.
スペックル法
実物でもモデルでも測定で
固体の弾性変形にともなう温度変
化より,主応力和の変動分を求め
る
い
応力塗料法
脆性塗料を塗布し,応力により生
じたき裂の状態から応力の方向,
銅めっき応力測定法
実物でもモデルでも測定で
きる
ひずみを測定.
安価で取扱いも容易
試料に銅めっきし,繰返し応力に
疲れ試験における応力など,
より生じる黒い斑点の状態からひ
ずみを測定
動的応力測定によい.
実物の微小領域の応力測定
可
感度が少々低い
定量化が少々難しい
静的応カが測定できない
感度が少々低い
定量化が少々難しい.
付録 応力・ひずみ測定法
光弾性皮膜法
実物への測定を可能にするため,光弾性膜を実物に貼りつけることで実物の主ひずみ差の測定する光弾
性皮膜法 '1%%+0
7 7% - +1%3
がある.均一の厚さの膜をつくることは容易でなく,ひずみ感度
もやや劣る.
モアレ法
モアレ法 %
+ +1%3
は,非測定物表面に細い格子線を描き,その変形により生じるモアレ縞から変
位を測定する手法である.被測定物の格子と基準格子を重ねる幾何モアレ法と,回折光の干渉を利用するモ
アレ干渉法があり,後者のモアレ干渉法のほうが高感度である.実物でもモデルでも測定でき,また,高・
低湿環境あるいは大変形状態でも測定可能である.測定では,格子を表面に形成することが必要である.
格子法
被測定物に描いた格子の変彩をそのまま測定して,ひずみを求める方法であり,大変形に適している.
高・低温環境あるいは大変形状態でも測定可能である.疲労き裂近傍の大きな変形状態がこの手法によっ
て測定され,き裂進展速度を支配するパラメータが抽出されている.
ホログラフィ法
ホログラフイ法 1%&%'1
7 +1%3
は,光の干渉,回折により生じる縞から,主に面外変位を測定す
る手法である.変形前のホログラムを記録し,その再生画像と変形後を二重露光することから同時に再生
される物体間の干渉によって面外変位が求められる.あるいは,時間平均法と称される,正弦振動してい
る物体から等振幅線を得る方法で,変形前あるいは静止状態をホログラムに記録し,この再生像と振動状
態での物体光波面を直接干渉させることにより,実時間的に変化の状態を測定することができる.測定に
は防振装置が必要で,測定装置もやや高価である.
スペックル法
レーザ光を粗面に照射したとき,乱反射光の干渉により生じるスペックル模様の移動から面内変位を測
定する手法がスペックル法 0'+7/&+
+1%3
である.この移動量の測定法として,スペックル相関法とス
ペックル干渉法がある.いずれも固体の表面の変形とともに生じるスペックル移動を検出しひずみを求め
る方法であり,前者はスペックル移動の検出に変形前後のスペックルパターンの相関関係を利用する.こ
の相関法により点測定も可能で,き裂の開口変位の測定に利用されている.また,後者の干渉法には,変
形前後のスペックルを二重露光したときの干渉縞から変位量を求める方法 スペックル写真法 と,はじめ
と変形後のスペックルをコンピュータ画像入力し,その各画素の輝度の差をとり,干渉縞を求める方法 電
子スペックル干渉法 がある.
デジタル画像相関法
材料面の模様を利用して,変形前後の画像を カメラを通してコンピュータ画像入力して,画像相
関解析より面内変位を求める方法である.材料面の模様として,微細粒子を表面に吹きつけ,ランダムパ
ターンを使用する場合もある.なお,スペックル法における画像相関法もこれにあたる.
電気抵抗線ひずみ計
応力塗料法
脆性塗料をあらかじめ測定対象に塗布し,負荷により生じたき裂の数と方向から,応力の大きさと主応
力の方向を測定する手法である.これは,塗料膜に生じるき裂の方向が最大主応力に垂直な方向になるこ
とに基づいている.応力塗料法 4
&+ &76+ 7% -
は,実物に対して応力の大きさと方向の全体的な
分布が得られること,および実物に作用する荷重を測定する必要がなく簡単であることから,応力の概略
分布を求めるための簡便な方法として利用されている.ただし,感度が少々低い.
熱弾性法
固体に,引張応力を作用させると応力変動に比例した温度降下が,逆に圧縮応力を作用させれば温度上
昇を生じる現象を熱弾性効果 1+%+&0
7 +Q+7
と称する.この温度変化は主応力の和の変動分に比例
することから,温度変化をもとに主応力和の変動を計測する手法が熱弾性法 1+%+&0
7 +1%3
であ
る.この手法は,非接触で測定が可能で,被測定物の材質に制眼が少ない.測定には荷重の繰返し負荷が
必要である.
銅めっき応力測定法
測定対象に銅めっきし,繰返し応力により生じる黒い斑点の状態からひずみを測定する手法である.こ
の手法によると,複雑な形状をした部品に対しても表面の弾性応力を求めることができる.しかし,静的
応力は測定できないこと,感度が少々低いことなどの欠点を有している.
電気抵抗線ひずみ計
電気抵抗ひずみゲージの原理と構造
電気抵抗ひずみゲージは最も広く使用されているひずみゲージであり,単にひずみゲージといえばこれ
を意味する.金属抵抗体が伸縮することによって電気抵抗が変化することを利用する方法である.このひ
ずみゲージを測定物に接着して,測定物に生じるひずみを電気抵抗変化として取り出す.ひずみ測定器に
より,ひずみゲージの抵抗変化による電圧出力を増幅し,指示または記録させることによってひずみ測定
を行う.
ひずみゲージは抵抗体,形状,べ一ス材料,使用目的などにより多くの種類に分けられる.常温用の一
般ゲージでは,アドバンスあるいはコンスタンタンなどの銅 ニッケル
合金が抵抗材科として
用いられている.抵抗体が細線の場合を線ゲージ,エッチング加工された薄い箔の場合を箔ゲージと称す
る.図 ! には箔ゲージの構造例を示す.ひずみゲージは,プラスチックなどの絶縁フィルムに数 の
金属箔を接着剤で取り付けて,この抵抗箔をゲージパターンに合わせて,マイクロフォトエッチング技術
により製作する.ゲージ長とグリット幅がひずみ検出部である.測定されるひずみは,検出部における平
均的なひずみである.
このひずみゲージを測定物表面に接着しておくと,測定物に生じるひずみはべ一スを介して抵抗体に伝
達され,その電気抵抗が変化する.ゲージの電気抵抗を E,ゲージの感度軸方向 図 ! では左右方向 の
縦ひずみ とすると,生じる抵抗変化 FE とは次の関係にある.
FE
E
G
A
!
付録 応力・ひずみ測定法
ここで,A がひずみゲージのゲージ率 +
57%
で,その値は抵抗体の材質そのほかによって定められ
る定数である.市販のゲージは E のものが多く,ゲージ率は ! 前後である.したがって,A ,E が既
FE を測定すれぱ測定物のひずみが求められるが,このとき,ひずみ測定器では FEE に比
例する出力が生じ,A の値を設定しておけばひずみの値が直接読みとれるようになっている.
知のときに
図
!
図
箔ひずみゲージの構造
ホーイストンブリッジの結線法
!
ひずみ測定の実際と特徴
ひずみ測定器には,ゲージの抵抗変化を電圧に変換するホイーストンブリッジ >1+0%-+
4 3+
が
組みこまれている.ブリッジでのゲージ結線法は大別して図 ! に示す 種類がある. はプリッジの
辺だけにゲージを用いる ゲージ法,自己温度補償ゲージ,高温低温ゲージおよび大ひずみゲージなど
の場合に用いる.4 は ゲージ法に用い,隣り合う辺に同一の特性のゲージを用い,一方がひずみと温
度変化を受けるとき他方を同一の材料に接着して温度変化だけを受けるようにすれば,温度変化による影
響が打ち消される.この場合,前者をアクティブゲージ 7
32 +
9+ +
,後者を温度補償用のダミーゲージ
という.7 はすべての辺にゲージを挿入する ゲージ法に用いられる. ゲージ法は主に
荷重,変位,圧力などを測定する変換器で用いられ,変換効率と温度補償の目的を兼ねている.
ひずみゲージによる測定法は多くの特色をもち,現在最も広く利用されている.測定器が安価でひずみ
が直接測定できるばかりでなく,ゲージの質量,容積が小さく,応力状態を乱さずに測定もできるため,静
的のみでなく動的な測定もできる.また,多点同時測定や遠隔測定ができ,出力が電気量であるので,各
種データの処理が容易である.
ひずみゲージで測定されるひずみは,測定物の伸縮に対応するひずみであり,弾性ひずみとともに塑性
ひずみを加えた全ひずみである.弾性ひずみを測定したい場合,弾性力学の ,%%/+ の法則を用いて応力を
求める.単軸応力のときには単軸型ゲージで応力方向に接着すればよいが, 軸応力状態では 軸 *Æ 型
ゲージを使用しなければならない.また,主応力方向が未知の場合にはロゼットゲージを使用して 方向
の縦ひずみを測定することが必要である.特殊なゲージとして,高温ゲージを使用すれば,最高使用温度
は動的測定で )Æ 程度である.一方,低温ゲージでは,
Æ
# 程度まで測定可能である.ただし,ひ
ずみゲージで測定できる最大ひずみをひずみ限界というが,ゲージの形式,寸法,構造,接着法などに影響
され,I の非直線性,ヒステリシスで測定できるひずみ限界は 断,はく離などのひずみ限界は一般のゲージで がなされたひずみゲージは塑性域ゲージと呼ばれ,
I
程度である.また,破
である.抵抗体,べ一スに特別の考慮
のひずみに耐えられるようにつくられている.
半導体ゲージは,半導体結晶に力が加わると比抵抗が変化するピエゾ抵杭効果を利用しており,ゲージ率
がきわめて大きく A G)∼,また,正負のものが得られ,小型にもできるなどの優れた点がある.一
方,温度特性やひずみ限界などで一般ゲージに比較して劣っているが,衝撃ひずみや微小ひずみの測定な
どに用いればその特長を生かすことができる.
結晶回折法
結晶回折法
+ 線応力測定の原理
結晶回折法としては, 線応力測定法のほか,放射光応力測定法および中性子応力測定法があるが,い
ずれも結晶の回折現象を基礎としている.まず,従来から残留応力測定法として広く使用されている 線
応力測定法について述べる.この手法は,結晶の格子間隔を評点間距離として,その距離の変化を結晶に
よる回折現象を利用して測定し,弾性ひずみを求める.いま,図 ! に示すように一定の波長 の 線を
結晶に入射するとき,回折角 と回折面間隔との関係はブラッグ式で与えられる.弾性変形による格子面
間隔の変化は回折面方向の垂直ひずみに対応し,この値は回折角の変化から求まる.
F G G -
!
ここで, は無ひずみのときの回折角, がひずみを有するときの回折角である.同一ひずみに対しても
-
が大きいほど,つまり
*
Æ
に近いほど大きな角度変化となり検出感度が高い.材料が単相多結晶体
で, 線照射域中に十分多くの結晶があるとき,上述のようにして測定したひずみはマクロな弾性ひずみ
に対応する.いま, 線が試料表面より深く侵入しないことを考え,応力状態は平面応力とすると,回折
角と面内応力成分 , は次式で関係する.
G -
0 - G C
- !
ここで, はヤング率, はポアソン比で, は回折面法線の傾斜方向の面内垂直応力である 図 ! 参
照.上式が 線応力測定の 0 - G 法の基礎式である. つ以上の G に対して回折角
果を図 ! に示すような 0
- G 線図にプロットすると,回帰曲線の傾き
とすると が求められる.この手法は 0
を測定し,その結
- より, C を既知
G 法と呼ばれ,通常,傾斜角 G として つ以上の角度がとら
れる.このとき は次式で求まる.ただし,@ は応力定数と称され次式で与えられる.
-
G @@G
-
G
7%
C
/ / 0 - G !
!
!
)
!#
ここで の単位は 3+ で,) は 3 から 3+ への変換係数である.図 ! において @ は負数である
ので,右上がりの直線は圧縮応力,右下がりの直線は引張応カに対応する.0 - G の最大の特長は,
図
!
結晶による 線回折
図
! 0 -
G 線図
付録 応力・ひずみ測定法
回折角の 0 - G にともなう変化量を精度よく測定できると,応力が決定できることである.このとき,回
折角の絶対値 の厳密な値を必要としない. 線で計測するひずみは,回折現象が選択的に生じること
に起因して特定結晶群のひずみの平均値に対応するため,単相多結晶体においても,機械的なひずみとは
完全には一致しない.このため,上式の弾性定数も機械的な値とは必ずしも一致せず, 線的弾性定数な
いしは回折弾性定数と称される.ランダムな多結晶体の場合には,単結晶の弾性定数から @%-+ モデルに
よって計算される値が最も実測値に近い.簡便には , として機械的な値を用いてよいが,高精度測定
のためには 線的弾性定数の実測が望まれる.
以上は単相多結晶体の場合で,応力はマクロ応力である.一方,多相材料の場合,上述のようにして求
めた応力は測定している相の相応力に相当する.構成する各相の相応力を求めると,それから複合則を使
用してマクロ応力が求められる.また,それからの差がミクロ応力である.
+ 線応力測定の実際と特徴
線応力測定法の最大の特長は,残留応力が非破壊的に測定できる点である.また,表面層の測定であ
り,侵入深さは数 以下,測定領域は最小で ! 程度である.さらに,多相材料では各相の応力を
分離して測定することができるなどの特長を有している.実際の応力測定では,被測定材料に対して適切
なターゲットと回折面を選択することが必要であり,フェライト系とオーステナイト系鉄鋼材料およびア
ルミナや窒化ケイ素では,
「 線応加則定法標準」で定められている.
線応力測定装置は, 線発生部のほかにディフラクトメータと計数記録部よりなる.ディフラクトメー
タは計数管,スリットおよびゴニオメータより構成される.従来の分析用の 線回折装置に比較して,次
の つの特長を有する.特長の つは, 線入射角 G 角 を大きい範囲で,しかも自動的に設定し,回折
角を測定する工夫がされていることである. つ目の特長は, 線の入射側と受光側の両方にソーラスリッ
ト 発散角 !#Æ 以下 を用いた平行ビームを採用している点にある.平行ビーム法の利点は,試料の設定誤
差が
以内であれば応力値にあまり影響がないことである.近年,迅速な 線検出のために位置敏
感型検出器 が用いられているが,このときに検出器の走査の必要がない.
「 線応力測定法標準」で
は,回折プロフィルからの回折角決定に際して,ばらつきの小さい半価幅法を推奨している.
従来における測定の大多数の場合,
0 -
G 図は直線になり,系統的な非線形性は認められない.しか
し,特殊な場合であるが,系統的な非直線性が認められる場合として次の例が報告されている.これらは,
残留応力が表面の薄い層内で,急勾配を有する場合.
表面の薄い層内で, 軸応力状態となっている場合.
材料が強い集合組織を有する場合.
材科の結晶粒が粗大である場合.
成分濃度が表面の薄い層内で,急勾配を有する場合.
などで,各場合において非線形解析手法が提案されている.例えば,立方晶の多結晶薄膜が繊維配向した場
合に対して,等 軸の場合ばかりでなく,等 軸でない場合の測定も可能となっている.図 !
は > &
配向している 薄膜の軟鋼基材に 軸応カを負荷したときの膜中の応力を 線測定した結果である.
初期に ? 程度の圧縮残留応力を有しているが,負荷ひずみとともに線形的に増大していき引張りに
なった後,線形から外れる.これは膜中のき裂の発生によるものであり, 線法によって硬質膜の破壊応
力の測定が可能である.また,薄膜下の基板における応力測定の同時測定も可能である.さらに,ナノス
ケールの極表面の測定には,低角入射 線法 A
-
-7 3+-7+ (2 3 Q7 %-
が利用されている.
結晶回折法
#
表
!
0 線,放射光,中性子の侵入深さ(
)
被測定材料
&
+
熱中性子 )
放射光 /+$
#
!
放射光 /+$
!
!)
!
!
!
放射光 /+$
(@
=線
!
!
!
!
!
!#
!
!
!
H
/ 薄膜
図
!
0 線測定応力の負荷ひずみによる変化
残留応力測定箇所
残留応力
図
!
ソケット溶接継手の残留応力の中性子測定
中性子応力測定法
従来の 線法がごく薄い表面層の応力測定であるという欠点を補う測定法として,中性子応カ測定法が
ある.中性子応力測定法は, 線法と同様に結晶の回折を原理としているが,侵入深さは 線より非常に
大きく,材料内部の測定に適している.表 ! には強度が Iに減衰する深さを 単位で示す.中性子
は,通常の の管球を使用した場合に比較して,∼ 倍程度内部まで侵入する.しかしながら中性
子源の強度は強くないため,測定領域は数 以上に大きくとる必要があり,空間分解能が低い.さらに,
表面近傍では中性子が一部表面に抜けることにより誤差となるので,表面効果の補正が必要である.このた
め,表面近傍の数 領域の応力分布を決定するのには難点がある.中性子応力測定は材料内部の応力
測定であるため,ひずみの計測には無ひずみ状態での格子面間 を高精度に測定する必要がある.また,
主応力方向が既知の場合にも 方向の主ひずみの測定が必要であり,一般には 方向の垂直ひずみの測定
が必要である.中性子応力測定法は内部の残留応力が測定可能であるため,溶接部材の応力測定法として
利用されている.図 ! はソケット継手における ) か所での応力測定値である.この応力は,長手,半径,
円周方向の 方向のひずみ測定から求めている.溶接後およびひずみどり熱処理後の測定であるが,ひず
みどりによって残留応力が低下していることがわかる.
付録 応力・ひずみ測定法
)
放射光応力測定法
線光源として,実験室で使用される通常 線封入管に対し,放射光は,光源という観点から従来の管
球法に比較して次の特長を有している.
高輝度
高指向性平行性
広範囲のエネルギーレベル !
任意の波長を抽出可能
波長の高分解能 @= 線がない
/+$
特に,第 世代の放射光 02-71%%-
3 %-
である大型放射光施設 '
-()
では,高輝度,高指
向性に加えて,任意波長の高エネルギーの 線が得られる. 線のエネルギーが高くなるほど波長が短く
なり, 線の侵入深さは大きくなる.表 ! に示すように,高エネルギー 線は従来の管球法と中性子法
の中間の侵入深さを有しており,相補的な測定法と位置づけられ,従来にない成果が得られている.また,
第 世代の放射光である高エネルギー加速度研究機構 @@ のフォトンファクトり を利用した研究
も盛んである
光学的測定
光弾性法
次元光弾性法
エポキシ樹脂,ガラスなどの透明な等方等質体に荷重を加えると一時的に方解石のように異方性を示し,
光を入射させることで複屈折現象を呈するようになる.これを光弾性効果 '1%%+&0
7 +Q+7
といい,こ
の現象を利用して物体に生じる応力を求めるのが光弾性応力測定である.光弾性法の基礎となるのは次の
ブルースターの法則 +:0+S0
&:
である.荷重を受けている厚さ + の透明平板に垂直に波長 の偏光
を入射させれば,複屈折により各点の主応力 , の方向に分かれた光波は異なる速度で平板内を進み,
に比例している.
D+ 通過後に位相差 Æ を生じる.この位相差は主応力差 ÆG
!)
ここで,比例定数 D は材料によって異なる値をとり,ブルースターの定数または光弾性定数と呼ばれる.
また,= G D% を光弾性感度という.Æ を測定することから主応力差が求められることになる.図 !# は
実験法の基本原理図で,ここでは光源として単色光を考えている.単色光は偏光版 偏光子 を通過する
ことにより, の主軸 軸 方向だけに振動する平面偏光となる.ついで, 次元モデル
内の任意の
点での主応力 が 軸と角度 だけ傾いているとすると,この平板偏光はモデルを通過するとき に分かれるが,通過後に両偏光に位相差を生じる.いま,偏光子
検光子 の主軸 軸 方向を のそれと直交させておけば, を通過するのは のの 軸方向
の方向に振動する つの平面偏光
¼
¼
成分であり,それらを合成した光の強度は次式となる.
H G = 0 - 0 -
Æ
これは, が一定であれば明るさが Æ によって変化することを表しており,5
Æ G Æ G C H
H
G G
!*
"
G に対して
!
光学的測定
*
となる.さて,Æ は主応力差に比例するから,この明暗の縞は主応力差が一定の点を表しており,これを等
0%71% 7 & -+
という.この縞次数 5
-+ %3+
(
Æ ( G を数えることに
よって主応力差の分布を求めることができる.以上の方法では,Æ のいかんにかかわらず G のとき
にも H G となり,暗黒の縞を生じる.これを等傾線 0%7& - 7 & -+ と称する.主応力の方向が , の
色線 G
主軸方向が一致する点を表しており,主応力の方法を求めることができる.しかし,これは等色線だけを
求めるには不便である.これを除くには図 !) のように,波長の H の相対光路差 H の位相差 を生じ
る H 波長板 . ,. をモデルの前後において平面偏光を円偏光にするとよく,この場合,等色線,だけ
が現れる.図 !) はモデルに一様な平行偏光を通すための標準的な平行光弾性実験装置の配置である.光
弾性法の主な特長は, 次元の応力分布が縞として,全体的な分布が一目瞭然で求められる点にある.な
お,少なくとも自由縁では主応力の つは ; であるので,等色線からただちに主応力が求められるが,内
部で主応力の個々の値を求めるのは容易ではない.
<
光源, , コンデンサレンズ,フィルタ,
偏光子,. ,. H 波長板,< ,< 視野レンズ,
モデル, 検光子,カメラレンズ,;スクリーン
図
図
!)
平行光弾性装置の模式図
平面偏光を用いた 次元光弾性モデル
!#
応力凍結法
次元光弾性モデルに所定の負荷を加えたまま,炉内でモデル林料に特有な温度で,例えばエポキシ樹
脂では Æ
で数時間保持した後,荷重を加えたまま徐冷する.その後,荷重を除いても高温時の変
形および光弾性効果は消えずにそのまま残る.これが応力凍結法の原理である.冷却後,モデルを薄い平
板にスライスしても凍結された光弾性効果は保持されるので,このスライス片の応力分布を前述の 次元
平行光弾性法で測定することによって, 次元の応力状態を求めることができる.
光弾性皮膜法
光弾性皮膜法は,物体表面に接着した光弾性材料の薄い膜に偏光を入射させて反射光を観察するもので,
反射光弾性法とも呼ばれる.この場合,被測定物のひずみは光弾性膜のひずみと等しく,縞次数 ( は物体
表面の主ひずみ差に比例する.実験装置は物体表面で偏光を反射させる反射型となる.皮膜材料としてよ
く用いられるものは,この場合もエポキシ樹脂で,曲面の場合の皮膜接着にはまだ軟らかい半硬化状態の
エポキシ樹脂を表面に押しつけて硬化させた後,これをはく離し,改めて接着する方法が用いられる.皮
膜の厚さを一定にすることが重要である.実物にも適用可能であり,物体表面が弾性域を超えて塑性域に
入っても,皮膜が弾性域であればよい.
付録 応力・ひずみ測定法
#
モアレ法
モアレ %
O
とは,フランス語で「波形をつけた」などの意味であるが,間隔 ピッチ のわずかに
T
+O
異なる つの平行線群 以下,格子と呼ぶ を重ねたときに観察される干渉縞をモアレ縞 %
T
+ 5 -+
と
呼んでいる.これを利用して,物体面が平面である場合の面内変形 ひずみ を測定することができる.こ
れを得るには,物体表面に印刷,彫刻または接着された「ピッチG一定」の物体格子とフィルムまたは乾
板の参照格子 基準格子 を光学的に重ね合わせ,物体の変形にともなって生じるモアレ縞を観測する幾何
モアレ +%+
7 % T
+
法と,格子による干渉光を利用するモアレ干渉 %
T
+ -+5+%+2
法がある.
モアレ法には,そのほか物体の 次元形状を測定するシャドーモアレ法またはモアレトポグラフィと呼ば
れる方法もある.
幾何モアレの最も基本的な場合として,参照格子と物体格子は同じピッチの 次元格子とし,格子線と
直角方向に一様なひずみによってモアレ縞ができる場合を考える,いま,引張りひずみを ,変形しない参
照格子のピッチを とすれば,変形した物体格子のピッチは C であるから,モアレ縞の間隔を と
すれば次式より が求められる.
G
"
G
!
つまり,間隔 が ピッチ分,伸びたことになる.さらに, 次元の変形を測定するには直交格子を用い
ればよい.しかし,直交格子を平行に重ねて得られるモアレ縞は,水平格子によるものと垂直格子による
ものが入り乱れて,それらの区別が困難である.そこで,変形前の物体格子のピッチと少し異なるピッチ
の参照格子を用い,また参照格子を物体格子に対して回転させておき,最初から適当な間隔のモアレ縞を
生じるようにしておくと便利である.このような方法をミスマッチ法と呼び,特に回転だけのときをミス
アライメント法と呼ぶ.
モアレ法によると, 次元的ひずみ分布が全視野で求められるほか,高・低温下の測定でも,ひずみゲー
ジのような温度補償の問題がないなどの利点がある.しかし,モアレ法を適用するには何らかの方法で物
体面上に格子をつくらなければならない.普通は格子焼きつけ法が行われており,これには市販の格子原
板,感光剤 フォトレジスト を入手して焼きつければいいが,この場合は従来,∼ 本H 程度であっ
た.この程度の格子では特殊なデータ処理をしない限り !I 以下のひずみを精度よく測定することが困
難である.モアレ法の高感度化のために,物体格子の回折を利用して高感度の干渉縞から変位を求める手
法がある.高感度化の初期では,物体格子による高次の回折を利用していた.このとき,- 次の回折を観
察すると,物体格子の間隔が - になった場合に相当して,感度が - 倍になる.しかし,近年,モアレ
格子の間隔として数 から数 H が可能となってきたこともあいまって回折格子を物体に貼りつ
け,斜めから 光束を照射し,変形による干渉縞を観察する手法が開発されている.
この手法がモアレ干渉法である.また,干渉縞の位相を位相シフタを使用して検出することや,ある
いは干渉縞を輝度分布とみなしてこの位相を求めることにより,縞の線画像がすべての点で少数次の縞次
数を精度よく求められることになり,非常に高精度の解析が可能である.これが位相シフトモアレ干渉法
'10+(01 5 - % T
+ -+5+%+2
であり,輝度分布からの位相の決定にはフーリエ変換などを使用し,
高速で高精度の解析が可能となってきている.
図 !* に測定原理を示す. は変形前の状態で,物体表面には回折格子が貼りつけてあり,格子の方向
は紙面に垂直である.この格子に 束の平行レーザ光 0 を照射する.このときの照射角 = は 次の回
折光が垂直となるようにする.
光学的測定
#
変形後
変形前
図
!*
モアレ干渉法
ハーフミラー,ミラー,>?:くさびガラス板,フィルタ,楕円ミラー,被測定物,:回転台
, 図
図
!
位相シフトモアレ干渉装置の模式図
! 平板のき裂近傍のモアレ縞
!
ここで # は回折格子の周波数である.変形前は,回折光 0 が平行であるので一様な明るさとなり,干
渉縞は観察されない.物体が変形すると回折格子の空間周波数は # C F# となる.そのため, 次回析光
0 は平行でなくなり干渉縞が現れる.この干渉縞は 方向 上下方向 の変位 の等高線を表してお
り,干渉縞に沿って は一定である.干渉縞の次数を ( としたとき,変位 は次式で与えられる.
( (
G
G
!
#
これより,縞次数 ( を測定することにより,ある点の変位 を知ることができる.直角格子を用いると 0 -
= G #
G
次元変位分布が求められ,これからひずみ分布が算出される.この場合, 方向から,レーザ光を照射し
て,同時に 方向の変位を測定することも行われている.
付録 応力・ひずみ測定法
#
図 ! は測定装置の一例である. のようにして 光束平行レーザ光が物体に照射され, カメラ
で干渉縞を記録する.一方に位相シフタは取り付けられ,位相解析が可能となっている.図 ! は,モー
ド 荷重を受けるき裂近傍における荷重方向の変位分布を表すモアレ干渉縞である.
熱弾性法
近年の赤外線サーモグラフィの発展により,弾性変形の際に生じる物体の微小な温度変動,すなわち熱
弾性湿度変動の計測をもとに,物体の応力分布を計測する熱弾性応力測定技術は進歩を遂げてきている.
本項では,熱弾性法に基づく赤外線応力測定技術の基礎について解説する.
熱弾性効果
気体を断熱膨張させれば温度が降下し,断熱圧縮すれば温度が上昇する.固体に応力が急激に作用し変
形が断熱的に行われる準可逆状態では,このような温度変化は固体にもみられる.すなわち,固体に引張
応力を作用させれば応力変動に比例した温度降下が,逆に圧縮応力を作用させれば応力変動に比例した温
度上昇が生じる.
この現象は,熱弾性効果 1+%+&0
て定式化されている.@+&9
-
と呼ばれ,@+&9
7 +Q+7
-
によって可逆的熱弾性効果の理論とし
の埋論によれば,熱弾性効果による温度変動 FI は,等方均質な線形弾性体
に対して次式で与えられる.
FI
G
*I F D= I F
!
G
* は熱弾性係数であり,定圧比熱 D ,線膨張係数 = および密度 により与えられる.また,I は材料の絶
対温度,F は主応力和の変化量である.作用応力の変動にともなう熱弾性効果により物体に生じる温度
変化 FI を計測することで,主応力和の変動 F を計測することができる.
赤外線応力測定装置
前項 において,応力の変動にともない発生する熱弾性温度変動
応力和の変化
!
FI
を計測することにより,主
F が求められることを示した.しかしながら,* の値としては,例えば,軟鋼の場合で
H,アルミニウムの場合で )!)
H 程度の値であり,主応力和の変動値を仮に とした場合の FI の値は室温で軟鋼の場合,約 !@,アルミニウムの場合,!@ となる.熱弾性応力
測定では,@ オーダでの高い分解能および精度での温度計測が要求される.
これに対し,赤外線サーモグラフイによる温度計測分解能は @ 程度の値であり,赤外線センサで計
測された信号をそのまま温度に換算しただけでは,熱弾性応力測定に十分な分解能・精度を得ることがで
きない.
そこで,赤外線サーモグラフィによる熱弾性応力測定においては,図 ! に示すように,被測定物への
負荷荷重として繰返し変動荷重を与え,荷重信号に同期して変動する温度変動だけを,ロックインアンプ
と同様の相関信号処理により赤外線センサの出力から抽出し,さらにこれを荷重サイクルごとに積算・平
均化することにより,高分解能・高精度な温度計測を可能にしている.赤外線応力測定装置として市販さ
れているものがいくつかあり,赤外線センサ,画像構成方法,相関信号処理方法などにそれぞれの特徴が
あるが,熱弾性温度変動計測に関しては温度分解能 @,軟鋼の応力測定における応力測定分解能として
約 程度を達成している.
熱弾性法
#
図
図
!
!
赤外線応力測定装置の概要
赤外線応力測定例
円孔周りの主応力和分布
図
!
赤外線応力測定例
き裂周りの主応力分布
応力分布測定例
円孔を有する平板試験片に繰返し引張荷重を加えた場合に,円孔周りの主応力和の変動値分布を計測し
た結果を図 ! に示す.円孔の周りの応力は遠方で作用する応力に比べ大きな値となっており,円孔周辺
に応力集中が生じている状態が観察されている.さらに円孔の上下で圧縮,左右で引張りの応力集中が生
じていることがわかる.次にき裂による特異応力場の計測結果を示す.長さの異なる片側き裂を有する試
験片に,同じ大きさのモード 変動荷重を負荷した場合の,き裂周りの応力分布の測定結果を図 ! に示
す.き裂が長くなるほど,き裂先端近傍の特異応力場の強度が大きくなっていることがわかる.
赤外線応力測定技術の進展
赤外線応力測定技術は,
非接触による応力測定が可能.
応力分布が画像化されるので,応力集中部位の評価などに有用.
損傷による応力状態変化から非破壊評価ができる.
有限要素法などの数値計算を困難な問題へ適用することが可能.
被測定物の材質に制限が少ない.
参考文献
#
などの優れた特長を有する.しかしながら,
繰返し荷重負荷が必要.
4
撮像領域の変位によるエッジ効果.
7
計測される応力は主応力和の変動分であり,個々の応力成分の分離ができない.
などの問題点も有していた.近年,これらの問題点を解決するための新しい手法が多くの研究者によって
検討されている.
負荷荷重の多様化
赤外線応力測定においては,周波数,振幅一定の正弦波荷重が負荷されることが多いが,実構造物には
ランダム荷重や衝撃荷重が負荷されている場合が多い.<+0-
/
は,ランダム負荷および衝撃負荷が
作用する場合に,これらの荷重信号に同期する赤外線計測信号成分を最小二乗法により求め,応力の相対
的分布を可視化表示する機能を開発している.
エッジ効果と補正技術
赤外線応力測定では,変動荷重負荷時の変位に注意が必要である.被測定物の剛体変位あるいは変形が
大きく,応力が局所的に大きく変化している場合には,各画素の熱弾性温度変動の計測値には誤差が生じ
る.特に,変位により被測定物表面の赤外線放射量と背景放射との差を計測する輪郭部分の画素では大き
な計測誤差が生じる.これをエッジ効果 +3+
+5+7
と呼ぶ.被測定物の変位による計測誤差は,可能な
限り負荷荷重を小さくすることで軽減される場合もあるが,根本的に解決するためには,変位による計測
位置のずれを補正する必要がある.現在,計測視野が変位に追従するように光学的に補正する機能や,被
測定物の変位をソフトウェアにより補正する機能が開発されている.
応力成分の分離
応力成分を分離して直接計測できないことは,赤外線応力測定法の最大の短所であるとされてきた.こ
の問題を克服するために,さまざまなアプローチから応力成分の分離法が検討されている.最近では,逆
問題に基づく応力分離手法が注目されている.これらの手法では,まず主応力和に関する計測データに基
づいて解析領域に作用する負荷などの未知境界値を逆問題的に同定し,次に,求められた境界値に基づき
順解析を行うことにより各応力成分を分離計測している.実験的な応力分離手法としては,光弾性応力測
定法との併用による手法が検討されている.熱弾性計測による主応力和と光弾性計測による主応力差およ
び主応力方向から,応力成分の分離を行うことができる.
参考文献
矢川元基編:構造工学ハンドブック,''!(,丸善 , 付録 欠陥検査法
本章では,応力・ひずみ測定法について文献 を引用する.
欠陥の種類と検査法
欠陥の種類
構造材料に生じる欠陥には,製造工程で生じる欠陥 初期欠陥 と供用中に生じる欠陥がある.鉄鋼をは
じめとする金属材料に関して代表的な初期欠陥を表 ! に示す.鋳造では,主に凝固時の収縮応力,プロ
セス中に混入する非金属介在物が欠陥のもととなる.鍛造・圧延では,鋳塊の欠陥が十分に圧着されずに
残ったものに加えて,不適切な鍛造・圧延条件による欠陥が生じる.溶接では,溶接金属の凝固,および
熱影響部の硬化,延性低下によりき裂が生じる.また,供用中に生じる欠陥としては,疲労,応力腐食割
れ,クリープなどにより進行するき裂状欠陥が重要である.セラミックスでは,材料焼成時の気孔,異物混
入,結晶粒の異常成長などの欠陥があるが,強度上の観点からはき裂状欠陥が特に重要である.セラミッ
クスでは金属材料と比較して破壊靱性が 桁程度小さいため,破壊の起点となるき裂寸法も小さく,
∼
μ 程度のき裂が強度上,問題となる.
特性の異なる複数の材料で構成される複合材料では,繊維配列の乱れ,繊維破断,母材樹脂の割れ,気
泡空洞,異物混入,樹脂過多・過少部,層間はく離,接着不良など,製造時から多数の初期欠陥が存在す
る.また,使用中の過大負荷や疲労,衝撃により,繊維破断,界面はく離,樹脂き裂など複数の損傷が累
積的に進行することが特徴である.
コンクリート構造では施工不良による初期欠陥や鉄筋の腐食,アルカリ骨材反応などによる劣化がある.
また,腐食した鉄筋の膨張圧などによるひび割れはコンクリートのはく落をもたらすから,はく離欠陥に
対する検査が重要である.
欠陥の検査法
種々の物理原理に基づく非破壊的な欠陥検出手法を非破壊試験 -%-3+07
9+ +0 -
といい,引
張・疲労試験等の破壊的材料試験と対比される.また,非破壊試験結果から,試験対象に対する判定基準
に基づいて使用可能性を判定することを非破壊検査 -%-3+07
9+
-0'+7 %-
と称して区別するこ
ともある.さらに,構造物の負荷・環境条件と破壊力学の知識から,使用材料の安全性や寿命を予測し,構
造健全性を評価することまでを含めて非破壊評価 -%-3+07
#
9+ +9& %-
と呼ぶことが多い.
付録 欠陥検査法
#
表
プロセス
鋳造
鍛造・圧延
溶接
!
金属材料中の代表的な初期欠陥
名称
内容
ピンホール,ブローホール
溶湯中の水素などが凝固時に放出されてできた空孔
引け巣
押湯不足により生じる凝固時の収縮孔
砂かみ
注湯時に侵食されまきこまれた鋳型砂の介在物
のろかみ
溶融炉あるいは溶湯中のスラグがまきこまれた状態
熱間き裂 高温割れ
凝固時の体積収縮にともなう引張応力による粒界き裂
低温き裂 冷却割れ
冷却時の不均一な内部応力によるき裂
そのほか
すくわれ,しぼられ,焼きつき,差しこみ,湯境,湯回り不良など
砂きず
鋳造塊中の非金属介在物が変形されて残留したもの
ザクきず
凝固時欠陥の圧着不足による微小空孔
白点 偏析きず,毛割れ
水素,変態・冷却応力,偏析などによる冷却時のき裂
もみ割れ
不適切な加熱・圧力条件による内部き裂
ラミネーション
枚割れ, 枚板
非金属介在物・水素による薄い層状のき裂
折りこみ
前段ロールによるはみ出し部が畳みこまれた表面のきず
スケールきず
表面に圧着されたスケール
そのほか
線状きず,へげ,しわきず,はだ荒れ,ロールきずなど
高温割れ 凝固割れ,溶接金属割れ
溶接金属の凝固時に生じる粒界のき裂
低温割れ 遅れ割れ,熱影響割れ
残留・拘束応力,水素拡散・濃化環境下の熱影響部で生じるき裂
ラメラティア
T継手,かど継手部の板厚方向収縮応力による階段面上のき裂
再加熱割れ SR割れ
応力除去焼鈍時に止端部,熱影響部粗粒域に生じるき裂
そのほか
スラグまきこみ,溶けこみ不良,アンダカット,オーバラップなど
非破壊検査は主に製品,構造物の品質評価および寿命評価に用いられる.このうち品質評価は,素材や
製品の製造時あるいは供用前に行われ,規格または仕様を満たしていることを確認するためのものである.
非破壊試験とともに品質保証技術を構成するものに保証試験がある.これは,最大使用応力を超える負荷
を使用前に加えてスクリーニングを行い,その製品の使用を保証するものである.ただし,疲労や応力腐
食割れなどの負荷条件下では最大使用応力以下の範囲でもき裂成長が起こる可能一性があり,保証試験の
みで信頼性を確保することは難しい.
供用中あるいは稼働中に行われる非破壊検査は寿命評価を目的として行われることが多く,使用条件下
で新たに発生,成長した欠陥を検出し,補修あるいは廃却の必要性を判断することが主な内容である.寿
命評価を行うためには,検出された欠陥の種類,形状,寸法,位置と方向を正確に評価し,破壊力学的取扱
いに基づいて成長量を予測することが必要とされる.このため,欠陥の検出感度の向上とともに,より定
量的な評価を行うために各種の先端的な非破壊検査手法が研究されており,定量非破壊評価 6-
-%-3+07 9+ +9& %-.
9+
という分野を形成している.
欠陥の検査法は,利用する物理現象によって以下のように大別できる.
放射線による方法
放射線透過試験では,材質の違いにより 線,γ線,中性子線などの放射線の透過特性が異なることを
利用して,透過像から内部欠陥の検出を行う. 線およびγ線の透過特性は物質の原子番号,密度に依存す
ることから,内部の不均質部や欠陥の識別が可能である.中性子線は,水素,水など特定の物質に対して強
い吸収を示し,金属材料内部の水素化合物の検出などに適用される.また,全周方向から透過 線データ
を収集して,コンピュータにより断層画像を構築する 線 7%'+3
%%'12
も適用されている.
欠陥の種類と検査法
##
弾性波 超音波 による方法
超音波探傷試験では,欠陥からの超音波の反射波を検出することにより,欠陥の位置や寸法を推定する.
また,材料中を透過した超音波の波形は材料固有の性質を反映した情報を含んでおり,例えば,減衰特性
から結晶粒径や気孔率を評価することができる.
ほかの音響的欠陥検出法として,固有振動の振動数,モード,減衰率に基づく振動励振法 モーダル解析
法,打撃による発生音に基づく打音法 ハンマ法,コインタップ法,表面センサで受信した弾性波信号の
振幅,減衰,周波数特性に基づく衝撃弾性波法あるいは音響超音波法,表面と欠陥の間における弾性波の
共鳴を利用したインパクトエコー法などがある.
また,欠陥の検出を目的とする以上の方法に対して,アコースティックエミッション法では,欠陥の発
生,進展にともなって放出される弾性波を検出し,波形特徴解析による破壊モードの判別,複数センサに
よる欠陥位置の評定や, 原波形解析による破壊素過程の定量的評価が行われる.
電磁気現象による方法
強磁性材料を導電することなどによって磁化すると,表面にきずのあるところでは磁束線が乱れ,磁束
の一部が外部空間に漏洩する.磁粉探傷試験では強磁性体粉末粒子による磁粉模様観察により,一方,漏
洩磁束探傷試験では,ホール素子,磁気抵抗素子,サーチコイルなどを用いた漏洩磁束密度の分布測定に
より,表面欠陥を評価する.
渦電流探傷試験は導電性材料における電磁誘導を利用した欠陥検出法で,電磁誘導試験とも呼ばれる.高
周波の交流電流を流したコイルにより,導電性材料材部に誘導電流 渦電流 を発生させたときの欠陥や不
均質部による電流分布の乱れをコイルのインピーダンス変化として検出する.材料の表皮効果により渦電
流は表面層に集中するので,この試験法も表層部の欠陥を対象としている.
電位差試験法 電気ポテンシャル法 は,導電性材料を直流あるいは交流で通電し,電位分布を測定する
ことにより主に表層部の欠陥検出を行う方法で,電気抵抗法とも呼ばれる.
熱現象による方法
赤外線サーモグラフィでは,試験体に与えた表面温度場の欠陥による乱れを赤外線エネルギーの測定に
より画像表示して欠陥検出を行う.温度場を与える方法としては,通電,パネルヒータ,振動による内部
摩擦などが用いられる.材料の熱弾性効果を利用して,繰返し負荷での温度変化を検出する方法も用いら
れる.
そのほか
そのほかの欠陥検査法として,表面欠陥を対象とした浸透探傷試験がある.表面欠陥に対して,着色塗
料や蛍光塗料を含む液 浸透液 を塗布すると欠陥内部に浸透する.表面の余分な液を除去 洗浄 した後,
微粉末を含んだ現像剤を塗布すると,毛管現象により欠陥内部の浸透液が微粉末間隙に吸い上げられ,目
視観察できる欠陥の指示模様ができる.高価な設備が不要で簡単なため,定量性には劣るものの広く普及
している.
密封容器や配管などでは,流体の漏出や流入,流出を調べる目的でもれ試験が行われる.もれ試験には,
発泡により圧力差を観察する発泡もれ試験,加圧 減圧 後の圧力変化を計測する放置法,およびアンモニ
ア,ハロゲン化合物,ヘリウムなどのガスを封入しそのもれを検出する方法がある.
付録 欠陥検査法
#)
ラジオグラフィ
放射線の発生と吸収
放射線には 線,γ線,α線,β線,中性子線などがあるが,放射線透過試験には主に 線,γ線,中
性子線が使われる.以下にこれらの放射線の発生と吸収について述べる.
線は電磁波の一種であり, 極真空管 線管 の陰極 タングステンフィラメント から熱電子を陽
極 主に,タングステンターゲット に衝突させることにより発生する.図 ! にこの模式図を示す.陰極
フィラメントを通電加熱すると熱電子が放出,両極間の高電圧により加速され,陽極に衝突して運動エネ
ルギーの大部分は熱に変わるが 一部が 線となって放射される.発生する 線は広いエネルギースペク
トルをもつ白色 線で,スペクトル分布は加速電圧とターゲットの材質で決まり,波長の最小値λ は
加速電圧 と
C
K*$ L G
!
の関係にある.
線が物質中を伝わるとき,光電効果による吸収,トムソン レイリー 散乱 弾性散乱,コンプトン散
乱 非弾性散乱 により,直接透過線の強さは減弱する.強さ # の単色 線が物質中を距離 透過した後
の強さ は,
H
G
H
I !
と表される.線吸収係数 減弱係数 μは放射線のエネルギーが小さいほど大きく,また,物質の原子番号,
密度が大きいほど大きくなる.この関係は白色 線については厳密には成り立たないが,透過距離がある
程度長くなれば上式が近似的に用いられる.
図 ! のように厚さ の試験体中に大きさが F の中空な欠陥がある場合,この部分を透過した 線の
強さ は,
H
G
I H F
I
!
となり,健全部よりも強い透過線となる.これを試験体背後に置いたフイルムの濃度差によって検出する
のが直接撮影法の原理である.
γ線も 線と同様の電磁波であるが,放射性物質の原子核内で起こる壊変現象にともなって放出される
点が異なる.例えば,放射性同位元素の %コバルト を用いる場合,天然に存在する % に原子炉
内で中性子を吸収させてできる % を線源容器に収納する.
% は不安定なため,壊変してγ線を放射
する.放射性同位元素の線源の強さは時間とともに弱くなり,
% の場合,半減期は約 ! 年である.
このほかにγ線源としては,イリジウム *,0 セシウム # が用いられる.物質中でのγ
線の透過特性は 線と同様であるが,γ線は線スペクトルからなり,物質によって決まったエネルギーを
もつ.
中性子線にはエネルギーレベルにより,高速中性子線,熱中性子線,冷中性子線があるが,主に熱中性子
線が用いられ,原子炉炉心から出る中性子を減速材で減速するか,小型サイクロトロン,あるいは 5カ
リフォルニウム などの放射性同位元素を用いて発生させる.中性子線は水素,水,ホウ素などの特定
物質に対して吸収が非常に大きく,逆に,鉄,鉛などの金属では吸収が小さく透過しやすい.
ラジオグラフィ
#*
図
! 線発生の原理
図
! 線透過試験の原理
放射線透過試験
放射線透過試験の概要を図 !
に示す. 線装置は 線管を利用した低エネルギー 線装置と加速器を
利用した高エネルギー 線装置に分かれるが,一般には低エネルギー装置が用いられる.高エネルギー装
置は大型で重量が大きくなるため,適用は を超えるような極厚試験体などに限られる.γ線は小
型,軽量で特別の電源を必要とせず,放射線発生部が小さいため狭所での使用に適するが,一般には 線
のほうが実効エネルギーを低くでき,その結果,線吸収係数が大となって像質が向上することから優先し
て使用される.中性子線装置は原子炉,加速器など大型で現場での保守には適さないが,放射性同位元素
を用いるものは一部現場での検査に適用されている.放射線透過試験では,これらの放射線を試験体に照
射し,透遇線を検出・撮像する.図 ! は鋳鋼品の非破壊検査の例で,砂かみや介在物など,透過方向に
ある程度の厚みをもつ欠陥は容易に検出される.
放射線の検出方法として最もよく使われるのは 線フィルムで,感度を高めるためフィルムの両面に写
真乳剤を塗布し,さらに増感紙を密着させて用いる.像質を優先する場合には金属箔増感紙 主に鉛箔,露
出感度を優先する場合には蛍光増感紙が用いられる.中性子線は感光作用をもたないため,中性子との核
反応で 次電子を放出する蛍光板 コンバータ をフィルムに密着させ,蛍光発光によりフィルムを感光さ
せる.
上に述べたように,試験体中に欠陥があれば,透過写真上で健全部との間に濃度差 コントラスト を生
じる.コントラスト F は,
F
1G
C
FI
!
で与えられる.ここで はフィルムコントラスト, は幾何学的補正係数, は散乱係数である.この関係
から,高いコントラストを得るために,高コントラストのフィルムを用いる を大きくする,低エネル
ギーの 線を用いる 線吸収係数 を上げ,散乱係数 を下げる ことのほか, を最大値の に近づけ
るため焦点寸法を小さくすることなどが必要となる. 線の焦点寸法は,熱電子ビームがターゲットに衝
突するスポット径の大きさに比例し,通常の 線管では オーダである.これに対してマイクロフォー
カス 線管では,収束レンズ コイル の磁界を利用して電子ビーム径をしぼりこみ,
∼ の焦点寸
法となっている.
線フィルムのアナログ情報をデジタル化してコントラスト強調,輸郭強調などの画像処理を行う技術
も開発されている.また, 線フィルムに代わる撮像方法として,イメージングプレート,イメージイン
付録 欠陥検査法
)
テンシファイヤ, 線ビジコンカメラ,ラインセンサ,フラットパネルセンサなどを用いて放射線画像をデ
ジタルデータとして扱うデジタルラジオグラフィの開発,適用が進んでいる.このうち,イメージングプ
レートは,蛍光体をプラスチック板に塗布したものであり,放射線照射により蛍光を発し,照射後急激に
蛍光は減衰するが,これに可視光あるいは赤外線を照射すると再び蛍光が増加する性質 輝尽発光現象 を
利用する.この蛍光の強さは最初に照射された放射線量に比例するため, 線フィルムと同様の記録媒体
として使用でき,露出時間が短く,暗室が不要な手段として実用化されている.
図
!
放射線透過試験の概要
図
図
! 線による鋳鋼品の欠陥観察例
!
マイクロフォーカス
線
ターボチャージャモデルの欠陥観察例
による,
超音波法
)
+ 線 方向からの平面透過像を与える直接撮影法に対して, 線 では透過 線を多方向から撮影し,コ
ンピュータによる画像処理で内部の 線吸収値に対応した断層像を再構成する.一般の 線 では画像
分解能およびスライス厚みは数百μ 程度であるが,マイクロフォーカス 線 ではマイクロフォーカ
ス 線管を線源に用い,投影像を拡大することによって分解能,スライス厚みを ∼ μ 程度まで向
上させている.マイクロフォーカス 線 による窒化ケイ素製ターボチャージャモデルの観察例 図))
では,拡大率 ) 倍の 像で製造時のき裂が黒く映って検出されているとともに,タングステンワイヤに
よる人工欠陥 径 ∼ μ の 個 が検出できている.マイクロフォーカス 線 は,複合材料の
微視的な損傷の観察手段としても有力である.近年では, 線管に比べ桁違いに輝度が高い単色 線を取
り出せるシンクロトロン放射光を利用して,エネルギーを連続的に可変できる単色 線を用いた 技術
が複合材料中の微小欠陥の観察などに適用されている.
超音波法
超音波の伝播特性
固体材料を伝播する超音波 弾性波 の形態としては,縦波,横波,表面波が代表的である 図 !.縦
波と横波は,境界の影響を受けずに固体内部を伝播する弾性波で,バルク波 実体波 と呼ばれる.等方弾
性体中では縦波は振動方向が伝播方向と平行で,速度は
"
C G
横波は振動方向が伝播方向と垂直で,速度は
#
G
!
!
である ここに,<+ の定数,密度.一方,境界付近では超音波は縦波,横波の組合せによる特有
の波として伝播し,自由表面を伝播する表面波 レイリー波 がよく知られている.等方弾性体のレイリー
波速度 $ は横波速度よりもやや低く,近似的に
$ G
C
C C
)# C !#
と与えられる ポアソン比.縦波や横波と異なり,表面波は表面から 波長程度の深さまでにエネルギー
が集中しており,深さ方向に拡散しないことから遠方まで伝わる.複数の境界面をもつ固体中のほかの超
音波モードとして,板波 <4 波,円筒波なども欠陥評価に用いられる.
異なる媒質の境界に入射した超音波の音圧反射率は,両媒質の音響インピーダンスを R ,R として
EG
) )
) C )
!)
で与えられる R の媒質からの入射のとき.一般に,固体材料は空気よりも 桁以上高い音響インピーダ
ンスをもつから,固体と空気の境界での反射率は %に近く,固体中の欠陥による反射はきわめて大き
い.また,縦波あるいは横波が異種媒質界面に入射したとき,反射,屈折の方向は -+&& の法則により決ま
る 図 !#.このとき,縦波,横波どちらの入射に対しても一般に反射波,屈折波には縦波と横波の両者
付録 欠陥検査法
)
が生じる モード変換.しかし,臨界角を超える入射角に対しては屈折波が存在しない.また,臨界角で
の入射に際しては表面波が励起される.
超音波は媒質中を伝播する際に,微視構造 結晶粒,強化材 による散乱や媒質固有の粘性の影響で減衰
する.一般に減衰は周波数が高いほど顕著であり,このため超音波パルスの中心周波数は伝播とともに低
周波数側にシフトする.また,受信波形の振幅はビームの拡散や底面,異材界面での反射の際の損失によっ
ても低下する.高減衰材料や複合材料を伝播する波,および板波や円筒波では,伝播速度が周波数に依存
する分散特性がみられる.
図
図
!
代表的な超音波モード
垂直入射型
4
斜角入射型
!)
図
!#
等方弾性体における -+&& の法則
縦波型
4
横波型
超音波探触子
図
!* 図
熱弾性モード
4 アブレーションモード !
レーザ超音波の発生原理
の例
超音波の発生と検出
欠陥検査のための超音波の発生,検出の原理としては圧電材料を用いるものが最も一般的であり,R
などの圧電セラミックスや $ などの圧電高分子が用いられる.超音波送受信センサ 探触子,図 !)
は,圧電素子の両面に電極を貼りつけた構造が基本であり,これに電気的スパイクを加えると素子の振動
により超音波が発生し,逆に超音波振動を電気信号として検出する.発生 検出 する超音波の周波数は主
に素子の共振周波数で決まり,また素子の振動モードにより縦波型と横波型がある.裏側につけたバッキ
ング材 主に金属粉を樹脂で固めたもの は,素子の共振を抑えて広帯域パルスを発信する役目を果たす.
試験体に超音波を入射する方法としては,試験体を水中に浸し水中から縦波を入射する方法 水浸法 と,
探触子を直接接触させて励振する方法 接触法 がある.後者の場合,固体どうしの接触では伝達効率が悪
いことから,通常,グリセリンなどの接触媒質を介して密着させる.斜角探触子では,試験体の音響特性
に対して調節した角度のくさび 材質アクリルなど により,素子から発生した縦波をモード変換して横波
を試験体に入射する.
探触子から放射される音場は,干渉のため,複雑に音圧が分布する近距離音場と音圧変化が単調となる
超音波法
)
遠距離音場に分かれ,その境 近距離音場限界距離 はほぼ H λ で与えられる 振動子直径,λ波
長.また,超音波の指向性は,音圧が となる中心軸からの角度 指向角 φ # で表し,φ #
G#
λHK °L
である.したがって,周波数が高いほど 波長が短いほど,超音波は指向性がよく拡散しにくい.音響レ
ンズまたは球面形振動子を用いた集束型探触子を用いる場合,焦点のビーム幅はほぼ ! λ H で与え
られる 焦点距離.また,多数の振動子を配置し,個々の振動子の励振時間を適当にずらすことにより,
任意方向に超音波を放射したり,任意の点に集束させたりすることが可能なアレイ型探触子も開発されて
いる.
接触法や水浸法と異なり,試験体に対して非接触で超音波を発生,検出できる方法として,空気結合超
音波法,電磁超音波法,レーザ超音波法などがある.空気結合超音波法は,接触法における接触媒質や水浸
法における水を使わず,圧電型または容量型の探触子から空中を通じて超音波を入射,受信する方法であ
る.電磁超音波探触子 +&+7%-+
7 7%0 7 -037+ による超音波発生法には,高周波電
流を流したコイルによる渦電流と静磁場によるローレンツカを用いる方法 図 !* に例を示す,コイルの
誘導磁場による磁歪を用いる方法がある.ローレンツ型は磁性,非磁性を問わず金属材料に適用でき,磁
歪型は磁性材料が適用対象となる.いずれの場合にも電磁誘導でコイルに発生する起電力により超音波を
検出する.レーザ超音波法は,パルスレーザを試験体表面に入射して超音波を発生させるもので,熱弾性
モードとアブレーションモードがある 図 !.前者はレーザによる局部的な温度上昇と熱膨張を,後者
は高出カレーザからの,急激過熱による表面部の溶融,気化の反作用としての圧力を利用している.超音
波振動の検出にはレーザ干渉計測が適用されており,光ファイバを用いた遠隔測定法も開発されている.
超音波探傷試験
超音波探傷試験では,主に接触法か水浸法により試験体に超音波を送信し,欠陥からの反射波を計測す
る.試験体の超音波伝播速度を既知として,反射波の到達時間から欠陥までの距離が測定できる.探傷面
上で探触子を移動させながら反射波計測を行い, スコ一プ 深さ方向の反射波振幅の表示, スコープ
縦断面での断層像, スコープ 横断面での断層像 として映像化させるのが一般的である 図 !.鍛
鋼品などの探傷では,基準反射源からの反射波について距離 3
0-7+
,増幅感度 -
,寸法 0
A+
の関
係を整理した ? 線図 または,独語の頭文字で $? 線図 を用いて,反射波振幅から欠陥の寸法を評価
している.
試験体表面からモード変換を利用して横波を斜角入射することにより,き裂などの面状欠陥の検出を目
的とする斜角探傷法では,き裂先端部からの反射波に基づく端部エコー法が欠陥高さ測定法として代表的
である.また,高精度のき裂高さ測定法として ;
+(%5(N1 3 Q7 %-
法がある.; 法では,
試験体上に送信探触子と受信探触子を一定距離で対向配置して縦波を送信し,受信探触子で検出したラテ
ラル波 表面を伝わる縦波,き裂上端および下端からの回折波,底面反射波の到達時間差からき裂の位置
と寸法を評価する 図 !.
表層部の検査には表面波が,薄板や配管の検査には,それぞれ板波,円筒波などが用いられる.板波や
円筒波は被導波あるいはガイド波 3+3 :9+
の一種であり,表面波と同様に有限領域にエネルギーが
集中して伝播するため,長距離まで伝わり,広領域の検査を短時間で行うことができる.このほかに,ク
リーピング波 固体表層を伝わる縦波,表面 , 波 表面に平行に振動する横波 など,さまざまな超音波
モードが欠陥評価に用いられている.
付録 欠陥検査法
)
図
図
!
超音波による欠陥の画像化 スコープ,4 スコープ,7 スコープ
! ;
法による欠陥評価
図
!
超音波顕微鏡による $A 曲線の評価
透過特性に基づく欠陥評価
材料中の欠陥の状態が超音波の伝播速度や減衰特性に反映される場合には,試験体中を透過した超音波
の波形を解析することによって欠陥の情報が得られる.透過波形により与えられる超音波特徴量としては,
伝播速度,減衰特性,後方散乱強度などがあり,周波数依存性を解析する超音波スペクトロスコピーの適
用分野である.これによる評価対象としては,金属材料の結晶粒径,クリープ損傷,水素侵食,鋭敏化,熱
時効,疲労損傷,繊維強化複合材料やセラミックスの空孔率などがある.また,材料中の転位運動や微視
欠陥の開閉口にともなって生じる高調波の振幅が,音速や減衰などの線形特性量よりも早い段階で疲労な
どの損傷を検出する特徴量として研究されている.
超音波顕微鏡
超音波顕微鏡は高周波数の超音波により物質表面または表面下の微視構造や弾性特性を画像化する装置
である,レーザ走査型と機械走査型の 方式があり,後者のほうが広く普及している.欠陥検出用には ∼,A 帯域の超音波探傷映像装置が開発されている.超音波顕微鏡による画像計測では,音響レンズ
により集束させた超音波パルスを水を介して試験体に入射し,表面あるいは表面下からの反射波を検出し
て 次元映像化する.画像の方位分解能△ は
8G
F
7
1
!*
で与えられ 水中の波長,焦点距離,開口直径,例えば開口角 °のとき ,A で ,?,A
で の方位分解能となる.
超音波法
)
また,プローブと試験体との距離を変えながら反射波を計測すると,表面からの反射波と,モード変換
で生じる漏洩弾性表面波 &+/2
057+ 7%0 7 :9+ <>
から漏洩した縦波が干渉し 図 !,距
離 A に対して振動する出力 $A 曲線 が得られる.この振動周期 FA から <> 速度
%"&
G
!
が求められ 7 G水中の音速,5周波数,$A 曲線の包絡線から <> の減衰率がわかるので,表面弾性
特性の定量計測が可能となる.
アコースティック・エミッション
固体材料中で微視き裂が発生,進展する際に,弾性波が放出される現象をアコースティックエミッショ
ン 7%0
7 + 00 %-
という. を検出することにより,損傷の進展過程をリアルタイムで観察する
ことが可能である. はき裂発生,進展のほか,塑性変形,相変態,磁化などによっても生じる.通常
の 計測では /,A∼,A 程度の周波数帯に感度をもつ圧電センサを用い,プリアンプを通じて増
幅した後,しきい値電圧を超えた 波数の計数や 事象の持続時間,最大振幅の処理などを行う.塑
性変形による では,一度応力を負荷すると,その応力に再負荷するまで が観察されないカイザー
@ 0+
効果があり,応力履歴推定や構造健全性評価に用いられる.また,複数のセンサを設置し,到達
時聞差から損傷の発生位置を評定できる.
原波形解析では検出信号 $ を,き裂発生による弾性波 原波形,媒質内の伝播特性を表す動
的グリーン関数 ?,計測系の伝達関数 の,畳みこみ積分
$
G
1
; @ !
と考え,$ から原波形 を求めることにより,微視的なき裂の寸法や平均き裂生成速度など,破壊の
素過程に関する定量的データを提供している.
電磁気的手法
電磁気を利用した非破壊試験技術としては,物体を磁化させたときの欠陥による磁場の変化を検出する
方法,および物体に電流場を与えたときの欠陥による電場の変化を検出する方法がある.前者には磁気探
傷法があり,後者には電位差法および渦流探傷法がある.以下に,それぞれの試験法の概要について示す.
磁気探傷法
磁気探傷法は,鉄鋼など強磁性材料の試験体を磁化したとき,試験体表面あるいは表面近傍に存在する
欠陥により磁束が妨げられた結果,表面にもれ出てくる磁束すなわち漏洩磁束を検出する非破壊検査手法
である.磁気探傷法は,漏洩磁束の検出方法の違いによって,磁粉探傷法と漏洩磁束探傷法に分類される.
欠陥のない試験体を磁化したときには,内部には一様な磁束が発生する.しかし,図 ! のように表面あ
るいは表面近傍に欠陥が存在すると磁束線には乱れが生じ 磁束の一部は外部空間に漏洩する.磁粉探傷法
では磁粉を混ぜた液体を試験体に散布することにより漏洩磁束を可視化し,欠陥付近に付着した磁粉の模
様から欠陥を検出する.漏洩磁束探傷法では,磁気センサを用いて漏洩磁束密度の分布を計測し,欠陥の
検出を行う.
付録 欠陥検査法
)
試験体を磁化する方法にはさまざまなものがあり,対象物により使い分けられている.磁化するための電
流としては,直流および交流電流が用いられる.交流電流を用いた場合には,磁束が試験体表面に集中する
表皮効果を生じることに注意する必要がある.また,磁気探傷においては,欠陥の方向が磁場の方向と直角
のとき,最も欠陥が検出されやすい.したがって,磁化方法と試験体に生成される磁場の方向を理解して
おく必要がある.漏洩磁束探傷法において用いられる漏洩磁束の検出素子としては,ホール素子,磁気抵
抗素子,サーチコイル, 素子などがある.近年では,磁気光学素子や超電導量子干渉素子 .=
などを用いる方法も検討されている.漏洩磁束密度の計測においては,材料の磁気特性が同じ場合にも,
漏洩磁束密度は欠陥の幅および深さ,サーチコイルと試験体表面間の距離 リフトオフ の影響を受けるこ
とに注意が必要である.通常の漏洩磁束探傷法では,試験体表面に開口する欠陥による漏洩磁束すなわち
ニアサイド -+0
ファーサイド 50
3+
漏洩を検出する.これに対し,欠陥開口側と反対側に漏洩する磁束を検出するのが,
漏洩磁束探傷法である.ファーサイド漏洩磁束探傷法は,石油タンク底板の裏面腐
3+
食部の検出などに有効である.
図
!
磁気探傷法
図
!
交流電位差法における表皮効果とき裂長さ測定
電位差法
電位差法は,導電性を有する試験体に電流を負荷したときの試験体表面の電位分布をもとに,欠陥を検
出する試験法であり,電気ポテンシャル法,電気抵抗法とも呼ばれる.電位差法では,通常,き裂をはさ
んで配置した つの電極間の電位差を測定する.き裂長さに関する定量評価を行うためには,き裂長さと
電位差変化に関する較正関係を実験的あるいは数値解析的に求めておく必要がある.
電位差法は,直流電位差法および交流電位差法に分類される.直流電位差法は,き裂長さと電位差に関
する較正関係をもとに精度よくき裂長さを評価できることから,実験室レベルにおけるき裂進展試験にお
けるき裂長さ測定に実績を上げた.実験装置が簡単である,較正関係が境界要素法などの数値解析により
高精度に求められるなどの特長を有する一方,電位計測の際にプローブで発生する熱起電力の影響を取り
除く必要があるという問題もある.直流電位差法では,通常,計測に十分な電位差を得るために大電流を
負荷しなければならない.しかし最近では,小さな電流で高感度にき裂評価を行う,近接端子による直流
電位差法が提案されている.また,高温環境下などでは複数き裂が隣接して発生することがあるが,電位
差法により複数き裂を評価する手法が提案されている.一方,交流電位差法は,ロックインアンプを用い
た計測によりノイズの影響を軽減できる,表皮効果を利用して小電流で十分な電位差を得ることができる,
試験体の温度変化による熱起電力の影響がないなどの特長を有している.近年,交流電場解析技術が進歩
し,高精度に交流電流場の数値解析を行うことが可能となっている.
表面に開口しているき裂長さの計測には,図 !
に示すような表皮効果を利用した交流電位差法が用い
られる.表皮効果により,電流が試験体の表層に集中して流れるため,計測に十分な電位差を小さな負荷
超音波法
)#
電流で取り出すことができる.浸透深さ Æ に比べてき裂長さ が十分に大きい場合においては電流は欠陥
に沿って流れるため,欠陥形状を展開することにより,電流分布について 次元き裂は 次元問題として,
次元き裂は 次元問題として取り扱うことができる.図 !
に示したような 次元き裂の場合には,き
裂長さ = を次式により求めることができる.
"G
$
$
!
さらに, 次元表面き裂の場合には,表面き裂部分を展開してできる平面図形に対する 次元直流電流場
の解析により,き裂形状・寸法と電位場の較正関係を得ることができる.同様の方法を用いた誘導電流に
よる検査方法として,集中誘導型交流電位差法が開発されている.
近年,試験体に複数の電極を配置することにより多点の電位分布を計測し,これらから欠陥の位置,寸
法を定量的に計測する試みがなされている.また,多点の電位計測データを逆問題解析により処理するこ
とにより,欠陥の位置,形状および寸法に関する複数の欠陥パラメータ同定を行い,欠陥の定量評価を行
う電気ポテンシャル 法が開発されている.き裂パラメータが増えた場合に解の一意性を保障するため,
複数の電流負荷の下での電気ポテンシャル分布からき裂を同定する手法も開発されている.さらに,電流
負荷を必要としないピエゾ材料を用いたパッシブ電気ポテンシャル 法が提案されている.
渦流探傷法
高周波交流電流を負荷したコイルを,導電性材料の試験体に近づけると,電磁誘導により試験体内部に
は渦電流が発生する.試験体に欠陥が存在すると,渦電流分布には乱れが生じる.欠陥の存在による渦電流
分布の変化を,コイルのインピーダンス変化として検出する方法が渦流探傷法である.試験体上部にコイ
ルを置く上置コイル法,コイルの内部に丸棒,管などの試験体を挿入する貫通コイル法,および管などの
試験体の内部にコイルを挿入する内挿コイル法がある.励磁と検出を つのコイルで行う自己誘導形,励
磁コイルと検出コイルを別々にした相互誘導形がある.インピーダンス変化の検出方法としては,コイル
のインピーダンス変化そのものを検出する方法,および つのコイルを用いて各コイルのインピーダンス
変化の差を測定する方法がある.
渦電流分布の変化は,試験体の導電率,透磁率,試験体形状・寸法,リフトオフなどの影響を受ける.こ
のため,試験コイルのインピーダンス変化は,これら諸因子の影響が総合されたものとなる.コイルのイ
ンピーダンスを空心コイルのリアクタンスで除した正規化インピーダンスの実数成分を横軸に,虚数成分
を縦軸にとったインピーダンス平面に描く,コイルのインピーダンス変化を示すインピーダンス曲線を解
析することにより欠陥評価を行う.
近年,渦流探傷法に用いる新しいセンサの開発が進められている.原子力発電設備の蒸気発生器配管の
検査など,高速かつ高精度な探傷が要求される箇所には,マルチコイルプローブが用いられる.マルチコ
イルプローブは,周方向に複数の検出コイルを取り付けたものであり,周方向および軸方向の探傷を行う
ことができる.さらに,従来の上置コイルに代わるものとして,励磁コイルと検出コイルを組み合わせる
ことにより,欠陥から発生する渦電流信号のみを取り出すことができるプローブが開発されている.θプ
ローブは円環状の励磁コイルと励磁コイル内に設置された矩形の検出コイルから構成される.θプローブ
を用いることによりリフトオフの影響を受けない探傷を行うことができる.さらに,前述の交流電場解析
同様に,渦流探傷法における数値解析技術も進歩を遂げ,欠陥信号に関する高精度な数値シミュレーショ
ンを可能にしている.
付録 欠陥検査法
))
赤外線サーモグラフィ法
赤外線サーモグラフィは物体から放射される赤外線強度分布を計測し,物体の表面温度分布を画像表示
する装置である.本項では,赤外線サーモグラフィによる表面温度計測結果をもとに,物体に内在する欠
陥・損傷を検出,評価する非破壊試験法,すなわち赤外線サーモグラフィ法について解説する.
赤外線サーモグラフィ法の原理
赤外線サーモグラフィ法は,熱負荷を与えたときの欠陥による断熱効果のもたらす温度変化を検出する
方法,欠陥自体の自己発熱 吸熱 による温度変化を検出する方法,および空洞放射効果に基づく手法に分
けられる.
断熱温度場検出法
き裂やはく離などの欠陥部は通常,空気層を形成しているため,断熱効果により欠陥部では熱拡散が妨
げられる.その結果,被測定物表面には局所的な温度変化が現れる.例えば,被測定物内部にはく離欠陥が
存在するとき,表面から内部に向かう面外方向の熱移動を与えると,欠陥付近の被測定物表面には局所的
高温領域が現れる.この形状は内部に存在するはく離形状を反映したものとなるため,温度変化領域の形
状をもとに,はく離形状を推定することができる.熱負荷後の非定常温度変化に関するデータからは,欠
陥深さを同定することもできる.被測定物表面に開口するき裂の場合には,き裂と交差する面内方向の熱
移動を与え,き裂の断熱効果によるき裂面間の温度差を赤外線サーモグラフイで検出することによりき裂
の検出が可能となる.しかしながら,表面に開口するき裂に対しては,他にも有用な検査法があるため,あ
えて赤外線法を適用するとすれば,塗装膜下のき裂など,表面から目視などで確認できない場合であろう.
自己発熱温度場検出法
欠陥自身が発熱 吸熱 源となっている場合や,外的負荷により欠陥部位で発熱を起こさせた場合に,被
測定物の表面温度変化から欠陥を検出する方法である.
空洞放射効果に基づく手法
表面に開口する空洞状の欠陥が存在するとき,空洞部分における放射率は周囲に比べて高くなる.これ
は,空洞放射効果と呼ばれている.空洞放射効果による欠陥部分での赤外線計測値の差異を検出すること
により,表面欠陥を検出することができる.
赤外線サーモグラフィ法の特長
赤外線サーモグラフィ法の特長としては,次のような事柄を挙げることができる.
非破壊かつ非接触に,遠隔からの欠陥検査が可能である.
短時間に広範囲にわたる検査を行うことができる.
光学的計測法であるため,適当な広角,望遠,拡大光学系を選ぶことにより,検査対象の大きさによ
る制限を受けない.
欠陥の位置・形状が温度分布から視覚的に同定できる.
サーモグラフィと加熱装置以外には,特別な検査設備・環境を必要としない.
有害物質を使用しないので,人体と環境にやさしい試験法である.
検査対象の材質による制限を受けにくい.
表面下のはく離欠陥に対して,特に検出感度が高い.
超音波法
)*
建築・土木構造物への適用
赤外線サーモグラフィ法は,上述のように巨大な構造物の効率的な検査に特に有効に用いられる.その代
表例が建築・土木構造物である.建築・土木構造物では,日照や外気温変化によるパッシブ 受動的 に発
生する熱移動の下での断熱温度場検出法が,モルタルやコンクリートのはく離欠陥検出に用いられる.日
中は日照や外気温上昇により,構造物には表面から内部への熱移動が生じる.図 ! に示すように,構造
物にはく離が存在すれば,はく離部分の表面温度は健全部と比較して高温になる.逆に夜間には放射冷却
や外気温下降により,構造物には逆方向の熱移動が生じ,同図に示すようにはく離部分の温度は健全部分
に比べて低くなる.
経年劣化した構造物に多発したコンクリート片はく落事故により,赤外線サーモグラフィ法はコンクリー
ト構造物における第三者被害防止のための有効な構造物診断技術として注目されている.コンクリート高
架橋床版下面の検査では,従来の打音検査法と同等の検査精度を保ったまま,検査所要時間を H
以上に
短縮できるという試験結果が報告されている.また,トンネルなどパッシブ検査が適用できない構造物に
対しては,アクテイブな熱負荷による検査が可能である.ハロゲンランプによる強力な加熱装置と赤外線
サーモグラフイを搭載した,地下鉄トンネルの検査車両がすでに実用化されている.ただし,コンクリー
ト構造物に対するアクティブ加熱法の適用に際しては,コンクリートの低い熱拡散性に十分に注意する必
要がある.検出したい深さのはく離欠陥に熱移動が及ぶ十分な時間経過の後,測定を行う必要がある.ア
クティブ加熱の特性を活かした手法として,ロックインサーモグラフィ法によるはく離深さ測定法が提案
されている.加熱後の温度変動データを正弦波参照信号に同期信号処理した場合の位相情報をもとに,欠
陥深さの測定が可能となる.
昼間の温度分布画像
図
!
夜間の温度分布画像
タイル壁面のはく離検出結果
航空・宇宙構造物への適用
航空機のサンドイッチ構造における水浸入部の検出には,自己発熱 吸熱 温度場検出法が効果的に用い
られている.航空機の機体は飛行中,低温にさらされるため,浸入した水が氷結する.着陸後機体は徐々
に暖められるが,氷結した部位はしばらくの間低温を保ち,温度分布画像において水が浸入した欠陥部位
は局所的低温部として検出される.この技術はすでに実用レベルに達しており,試験法に関する認証を航
空機メーカから取得し,旅客機の定期整備に活用している民間航空会社もある.
赤外線サーモグラフィ法は,航空・宇宙構造物に多用されている先進複合材料の欠陥・損傷検出に有用
な検査法として注目されている.特に宇宙関連産業の先進国である米国においては,宇宙構造物の非破壊
付録 欠陥検査法
*
検査へ赤外線サーモグラフイ法の適用が早くから試みられてきた.図 !# は,赤外線サーモグラフィ法を
用いた宇宙構造物の検査の様子を示している.
炭素繊維複合材料 のように高い熱拡散性を有する材料に対しては,パルス状熱負荷を被測定物
に与えた直後の非定常温度分布をもとに欠陥を検出するパルス加熱サーモグラフィ法が有効である.パル
ス加熱によれば,高い熱流束を瞬時に被測定物に与えることが可能となるため,欠陥による温度変化が被
測定物表面に顕著に現れる.この非定常温度場を,熱拡散による温度変化の消失が起こらない短い時間内
に計測することにより,高精度な欠陥検出が可能となる.パルス加熱サーモグラフィ法では,熱が被測定
物を伝わり欠陥に到達する過程の被測定物表面の温度変動をもとに,欠陥の深さの推定が可能である.
図 !) は 衝撃により発生した のはく離損傷を検出した例である.キセノンフラッシュランプで
パルス状の熱負荷を与えてから,;!
秒後および ;! 秒後に取得した赤外線画像を示しており,白く見え
る部分がはく離損傷である.時間の経過にともない熱が深部に拡散するにつれて,深い位置にあるはく離
損傷が検出されている.
図
!#
赤外線サーモグラフィ法による宇宙構
造物の検査風景
図
!)
パルス加熱赤外線サーモグラフィ法に
よる の衝撃はく離損傷検出
正常な状態
図
!*
異常発熱を検知した状態
送電設備の保守点検への赤外線サーモグラフィ法の適用
参考文献
*
プラント保守への適用
導電性材料に対しては,欠陥部での抵抗変化に起因するジュール発熱検知も有用である.電力設備にお
ける送電・配電設備の異常発熱検知による保守検査法は,遠隔からの計測が可能な赤外線サーモグラフィ
法が成功を収めた事例の つである.図 !* は送電設備における異常発熱を検出した事例である.あらか
じめ正常時の温度分布を測定しておくことで,異常の発生のモニタリングが可能である.き裂の特異電流
場に起因するジュール発熱場の特異性に基づく検査手法も提案されている.
参考文献
矢川元基編:構造工学ハンドブック,''!(),丸善
, 
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