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2009 Vol.6 No.2

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2009 Vol.6 No.2
巻頭言
日本熱電学会の顧問として
松原覚衛(日本熱電学会
顧問)
この度,私は顧問に就任しました.
業を通して情報を交換する場を提供する,いわゆるコー
1994年(平成6年)に熱電変換研究会が発足してから
ディネータとしての役割があります.日本熱電学会は,
現在までの15年間,微力ながら初代会長の坂田亮先生
(慶応大学名誉教授)の補佐役の一人として活動してきま
熱電変換技術を加速的に躍進させる推進母体としての役
割も果たしています.
した.この間,学会の役員はじめ会員の皆さんに多大の
最近の10年間に,熱電素子の“効率”に関わる ZT(無
ご支援とご協力をいただきました.改めて,お礼申し上
次元性能指数)が1を超える新材料の発見が相次いで報告
げます.
されています.例えば,G.
A.Sl
a
c
kのフォノン・グラスの
学会の顧問とは? 相談役で,学会を側面からサポー
発想から生まれた格子熱伝導率κLが低い Yb
Co
b
4S
1
2系の
トする役目があると認識しています.現在,顧問には,
充填スクッテルダイト化合物や Ba
n
8Ga
16S
30系のクラス
上村欣一(熱電技術研究所所長),小川智哉(学習院大学
レート化合物です.この他にも,複雑な結晶構造をもつ
名誉教授),太田時男(元横浜国立大学学長),坂田亮
β‐Zn
b
T~1が実現されています.
4S
3系などの化合物で Z
(前会長,慶応大学名誉教授)の先生方がおられます.残
2次元構造をもつ薄膜や,超格子構造の量子井戸(QW)
,
念なことに,太田時男先生は本年の6月9日他界されま
量子細線,量子ドットなどの低次元化した熱電材料につい
した.太田先生は物理学者で,1960年代に熱電変換で水
ての研究が盛んです.例えば,Dr
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素を製造するシステムを考案された第一人者です.わが
らの論文(Na
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,413,p.
597,2001)によると,Bi
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2T
3/
国のエネルギー問題に対して多大の貢献をされました.
Sb
e
mの周期で積層した超格子で ZT~2.
4を実現
2T
3を5 n
生前の先生を偲び,心からご冥福をお祈りいたします.
しています.また,名大の太田裕道准教授らは,Sr
Ti
O3と
日本熱電学会(TSJ
)は,2004年(平成16年)4月に
Sr
Ti
T~2.
4を実現して
0.
8Nb
0.
2O
3との超格子で,室温で Z
熱電変換研究会から学会に移行して,事業を発展させな
います.(Na
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129,2007)
2
がら5年が経過しました.この間,学会誌,欧文誌の発
パワー因子(Sσ)が大きい Zr
Ni
Sn系のハーフホイス
行,学術講演会,研究会,シンポジウムなどの事業を通
ラー合金も期待されています.この合金は,多数キャリ
じて会員相互の情報交換を行っています.また,学術情
ヤーが金属で,少数キャリヤーが半導体である特異な性
報の海外への発信等,国際的な活動も活発です.
質をもっています.本質的に格子熱伝導率κLが大きい材
昨年(2008年),梶川武信先生(前湘南工科大学学長)
料であるので,組成の最適化,他元素の置換などで最適
2
が会長に選任され,新体制のもとで第3期がスタートし
化すれば,さらにパワー因子 Sσのアップが期待できそ
ました.
うです.
熱電材料研究に於けるわが国のアクティビイティは高
Na
Co
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2O
4や C
3C
4O
9などの層状酸化物が候補材料とし
く,毎年開催されている国際熱電学会(I
CT)での日本から
て注目されています.発見者である早稲田大学の寺崎一
の参加数は最多記録を維持しています.また,2003年から
郎教授によると,キャリヤー濃度が1
0 ~10 c
m と高
2006年までの3年間には,当時の国際交流委員会委員長
いのに100μV/
Kの大きな熱電能(ゼーベック係数)を
だった名古屋大学教授 河本邦仁先生(現在,副会長)が
もち,抵抗率はこれまでの常識を破って200μΩ c
mと低
国際熱電学会(I
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い.ただ,この金属酸化物は層状構造をもつので,高温
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ntを務められました.また,現会長の梶川武信先
度で Naイオンが結晶中に安定に留まるかどうか?
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の場合は,Naイ
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3(アルミナ)
イナ)の Vi
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nに就任されました.この
オンが高温で結晶の層間を高い移動度で動くこと知られ
ように,わが国は国際的にも重要な役割を果たしている
て お り,こ の 現 象 を つ か っ て ア ル カ リ 金 属 熱 電 発 電
ことも申し添えます.
第6巻
22
-3
同
(AMTEC)が実現しました.もし,そうであるならば,
本来,学会には学術講演会や研究会,講習会などの事
日本熱電学会誌
21
AMTECの新材料として期待できそうです.老婆心なが
第2号(平成21年11月)
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”の新分野を立ち上げて欲し
初です.
1990年より,米国の Hi
Z社が Bi
Te系モジュー
い.これが本音です.
ルでディーゼルトラック用の1 kW 級の熱電発電器の開
実用上の観点からは,埋蔵量の多い金属や半導体など
発を行っています.わが国では,1993年にシロキ工業が
をつかったβ‐
Fe
Si
Si
iなどの遷移金属ケ
2,Mn
1.
73,Mg
2S
Pb
Te系モジュールを自動車のマフラーに装着して発電
イ化物が有利です.しかし,ZT~0.
2と低い.そこで,
実験が行われました.また,1996年には,日産モーター
筆者らは,シラン(Si
H4)やゲルマン(Ge
H4)の r
f-プ
が Si
Ge系,Bi
Te系材料を用いた排熱発電スタックを試
ラズマ中でケイ化物の材料粉体の界面制御について実験
作して評価実験が行われています.
的検討を行いました.基礎研究の段階ですが,性能改善
筆者らは,1995年より産学官連携による山口県・国際
に有効な知見が得られています.
(2004年,フロンティ
共同研究事業(1999年までの5年間)として,新しい熱
ア賞を受賞)
電材料の開発と,自動車への適用を目指した技術開発を
2006年(平成18年)3月,科学技術基本計画が策定
行いました.その間,米国のジェット推進研究所(J
PL),
されました.この計画に,エネルギー分野とナノテクノ
フランスのナンシー国立材料研究所との共同研究を実施
ロジーによる新材料の研究開発があります.既に,民間
しました.また,2000年(平成12年度)・NEDO地域コ
企業と大学,公的研究機関の研究者・技術者が連携した
ンソシアム「自動車用エネルギー回収システム」,さらに
研究推進プロジェクトで研究開発が進んでいます.また,
2002~2003年度・NEDOエネルギー使用合理化技術実
同年の5月,将来のエネルギー安全保障の観点から新国
用化開発事業「高速バス排熱ガス利用熱電発電技術の研
家エネルギー戦略が策定されました.これによると,エ
究開発」の助成を受けて,自動車への導入効果を検討し
ネルギー消費量を2030年の時点で2
003年の30%に減
ました.自動車の排熱温度は,室温から約800℃ までの
らすこと,さらに運輸部門での石油の依存性を現在の
過酷な温度サイクルでつかうので,この条件に耐える熱
98%から80%に下げることになっています.
電モジュールが必要です.とくに,熱電材料と電極との
最近の話題では,2009年(平成21年)9月の国連気
接合強度,耐熱疲労などで苦労しました.その他,解決
候変動サミットにおいて,鳩山由紀夫首相は2020年時点
すべきいくつかの技術的課題が残されていますが,近い
での温室効果ガスの排出削減目標を「1990年比25%減」
将来には実現可能になると確信しています.
終わりにあたって,日本熱電学会(TSJ
)が,熱電変
と宣言しました.
このような社会的状況にあって,日本熱電学会が果た
換技術を飛躍的に躍進させる推進母体としての機能を果
す役割は甚大で,真価が問われる正念場だといえます.
たし,学術情報の海外への発信等,国際的なレベルでの
熱電変換の適用分野は利用する熱源の温度レベルやそ
活躍を期待しています.
の形態によっても異なりますが,その一つに自動車への
適用技術があります.その温度レベルは300~750℃ で
す.自動車のエンジン排熱を電力に変換して燃費の改善
に役立てる.この手法は,温度差を利用するのでランキ
ンサイクルとしてみると太陽電池,燃料電池などの変換
系に比べて効率が低いけれども,熱電変換技術の特徴が
最大に活かせる分野です.
わが国の自家用車の台数は約4000万台で,年間で約
7200万キロリットルの燃料(ガソリン)を消費していま
す.この燃料のうち駆動力となるのはわずか25%で,残
りの75%は熱になり,その半分はマフラーから排熱とし
て捨てられています.この排熱の5%が電力として回収
できるだけでも,石油換算で年間135万キロリットルの
省エネ効果になると云われています.地球規模でみれば,
その効果は甚大です.
この研究は,1988年にドイツのカールスルーエ大学で
β‐
Fe
Si
2系モジュールによる発電実験が行われたのが最
「註釈」このイラストは多摩美術大学教授の秋山
孝先
生の作品です.先生のご専門の分野はグラフィック・デ
ザインです.石の斧をもつ手が卵の殻を破って突き進ん
でいて,見事にブレークスルーのイメージが湧きでてい
ます.まさに,技術革新に向かって走っているわが日本
熱電学会の意気込みとぴったりなので,ついイラストの
空白の部分にメモ書きしてしまいました.秋山先生のご
厚意に感謝いたします.
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国際熱電学会会長からの日本熱電学会の会員の皆様へ
国際熱電学会会長
ティェリー・カヤ
熱電科学技術の分野は,エキサイティングな段階に移行中です.熱電国際会議 I
CT2009への出席者数は,新記録を達
成し,熱電関連研究論文の質も,今まで以上に高いレベルのものとなっています.
昨今の熱電科学では,革新的技術の進歩は著しく,新しいアプリケーションはあふれるように続出し,多くの熱電企
業が生まれています.
この状況の変化は,熱電変換技術が,環境へのインパクトや世界的気候変動の修復に大きな役割を果たすようになっ
てくるという認識を,更に強めることになるでしょう.
日本の科学者やエンジニアは,熱電科学技術の分野の最近の進展・成長に大いに貢献したといっても過言ではありま
せん.その中で,2004年以来の日本熱電学会のコミュニティは,長年に亘って,多く重要な科学的・技術的な貢献に強
い役割を果たしてきたと思います.私は,貴学会が,将来に亘り更なる熱電科学技術の発展に貢献されると確信してお
ります.
第6回日本熱電学会学術講演会の開会にあたり,国際熱電学会を代表して,皆様の会議が,実り多く,成功裡に進み,
楽しいものとなることを祈念いたします.
日本熱電学会誌
第6巻
第2号(平成21年11月)
― 3―
羽ばたけ若手研究者
2009年8月10,11日に東北大学で開催された第6回日本熱電学会学術講演会にて,若手研究者の講演に対して講演奨励賞の選考が
行われ,今年度は以下の4名の方が受賞されました(予稿集に掲載されている所属,題目を記載します).
n
・田中智雄(広島大学大学院)「アルカリ金属内包クラスレート K8Ga
8S
38単結晶の熱電物性」
・的場彰成(金沢大学大学院)「結晶性に対する Si
GeB単層膜の熱電性能の調査」
・中村大輔(ニッコー株式会社)「インプリント熱電変換モジュールの作製とその発電特性」
・林
慶(東北大学大学院)「ラビング基板上に成膜した TTF-TCNQ薄膜の膜構造と熱電特性」
今号では,受賞対象となった研究内容を紹介していただきます.
(編集委員会)
アルカリ金属内包クラスレート
n
K8Ga
8S
38単結晶の熱電物性
田中智雄(広島大学大学院)
この度は,200
9年度日本熱電学会講演奨励賞を賜り,
大変光栄に思います.高畠先生を始め多くの方々のご指
動がκLを抑制すると予想した.以下に結晶構造及び熱電
物性を示し,BGSと比較して議論する.
導のもと,受賞することができました.本稿では受賞対
象となった研究の概要を述べます.
試料作製と物性測定
構成元素の Ga及び Snを自己フラックスとして用いて
緒言
KGS単結晶を育成した.原料を Arグローブボックス中
Ⅰ型クラスレート A8ExX46-xは,高いゼーベック係数 S
n
GS)はその典
と低い熱伝導率κを示し,Ba
8Ga
16 S
30(B
1)
(水分濃度0.
06ppm以下)でステンレス管に封入した.
これを電気炉で加熱後徐冷し,最大5 mm角の単結晶を
型である .結晶構造の特徴は,E,X原子が共有結合に
得た.電子線プローブミクロ分析(EPMA)で得られた
より14面体と1
2面体のカゴを構成し,A原子を弱い結
元素組成はフラックスの種類に依らず8:8:38であっ
合で内包していることである.これまで,A原子が二価
た.
カチオン(Ba
,Sr
,Eu)の物質が主に研究されてきた.
粉末 X線回折データの解析により,格子定数11.
968Å
なかでもカゴが Gaと Geで構成される系では,ゲストの
のⅠ型構造をとることを確認した.また,単結晶 X線構
イオン半径が小さくなるに従いゲスト振動の特性温度が
造解析により14面体中のゲスト Kは中心の6dサイトに
26Kまで低下し,音響フォノンの散乱が増強され格子熱
位置することがわかった.これは,BGSで14面体中の
2)
14面体中のゲストは
伝導率κLが抑制される .さらに,
ゲスト Baが中心6dサイトから0.
4Å 離れた24kサイト
非中心である4つの24kサイト(分裂サイト)を占有し,
を占有することと対照的である .
3)
低温でのκLはプラトー領域をもつガラス的な温度変化
3)
を示す .
電気抵抗率ρと Sを4.
2Kから300K,κを4.
4Kから
300K,比熱 Cを1.
8Kから300Kの温度範囲で測定した.
n
本研究では,アルカリ金属の Kをゲストとした K8Ga
8S
38
(KGS)の単結晶を育成し,結晶構造及び室温以下での熱
結果と考察
電物性を調べた.その格子定数は,Ⅰ型クラスレートの
4)
なかで最も低いκLを示す BGSより大きく ,ゲストの
+
2+
図1に KGSのρ,S,κの温度依存性を示す.ρは昇
-4
温とともに増大し,室温で10 Ωmとなる.Sは昇温と
K は BGSのゲスト Ba と同程度のイオン半径をもつ.
ともに単調減少し,室温で-240μV/
Kに達する.Sの
このことからゲストは分裂サイトを占め,その非中心運
負の符合から電荷キャリアタイプは nタイプと判断され
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図2
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ド(E
1,E
2)を仮定した.
図1
K8Ga
n
,
8S
38単結晶の電気抵抗率ρ,ゼーベック係数S
及び熱伝導率κの温度依存性.
る.また,ρと Sの値はフラックスの種類(Ga
,Sn)に
ほとんど依らない.室温でのホール係数から求めた電子
19
3
c
m であった.これらρ,S,
キャリア密度 nは3×10 /
nの室温における値は,先に山口大学のグループが報告
5)
した多結晶の値 とよく一致する.また,ほぼ等しい n
の値をもつ BGSと比較すると,Sの大きさは同程度であ
るがρは4分の1程度しかない.これは,KGSのカゴ組
図3
K8Ga
n
(左)と
Ba
a
n
(右)の1
4面 体 中 の
8S
3
8
8G
16S
3
0
成における Gaの割合が BGSの半分であるので,易動度
ゲストイオンが感じるクーロンポテンシャルの計
が大きいためと考えられる.室温における電力因子は
算結果(上)とゲストサイトのイメージ図(下).
BGSに比べ3倍向上した.
κは14Kでピークを持つ結晶的な温度変化を示し,
150Kでの値は2.
0W/
Kmである.また,図2に示すよ
長が大きいだけでなく,カゴとゲストとの静電相互作用
が重要である.
うに Kゲストを Ei
ns
t
e
i
n振動子と仮定して比熱を解析し
以上の KGSと BGSの比較から,ゲストの低エネルギー
た結果,振動の特性温度θEは52Kと求められた.これ
非中心運動がフォノンを効果的に散乱し,κを強く抑制
らの結果は,同程度のゲストイオン半径をもつ BGSのゲ
すると結論される.
スト Baが低エネルギー非中心運動(θE=20K)をし,
そのκがガラス的な挙動をするのと対照的である.
結言
ここで,分裂サイトの発現機構について静電ポテン
n
室温で
本研究では K8Ga
8S
38単結晶の育成に成功した.
シャルを考察する.Snは電気的に中性で,Gaは負の一
の ZTは約0.
1であったが室温以上ではさらに増大する
価の点電荷と仮定する.三つのカゴサイトにおける Gaの
と期待できる.今後,フラックス量や結晶育成温度プロ
占有率は構造解析の結果を用いた.14面体単体で静電ポ
グラムを変えることにより p型試料も作製したい.さら
テンシャルを計算すると,図3のようにその極小は KGS
に,熱伝導率抑制に効果的である分裂サイトの発現機構
においては中心にあるが,BGSにおいては非中心に存在
を明らかにするために,K と Ba の混晶系の作製に取り
する.これは単結晶構造解析の結果に良く一致する.つ
組んでいる.
+
まり,分裂サイト発現のためには,ゲストイオンの可動
日本熱電学会誌
第6巻
第2号(平成21年11月)
― 5―
2+
参考文献
「田中君への励ましの言葉」
1)K.Sue
k
unie
ta
l
.
,Phy
s
.Re
v
.B77,
235119(
2008)
.
田中君は取り扱いの難しいカリウムを自在に扱えるよ
2)Y
.Ta
ka
s
ue
ta
l
.
,Phy
s
.Re
v
.B74,
174303(
2006)
.
うになり,単結晶育成に成功した.結晶構造解析や熱電
3)B.
C.Sa
l
e
se
ta
l
.
,Phy
s
.Re
v
.B63,
245113(
2001)
.
物性測定も主体的に行った.その研究に対する熱心な姿
4)R.Kr
ö
ne
re
ta
l
.
,Z.Kr
i
s
t
a
l
l
o
g
r
.NCS
213,
667(
1998)
.
勢が今回の成果につながった.今後は研究の楽しさをバ
5)林雅弘
ネとして世界で活躍する人材となってほしい.
他,日本熱電学会 TSJ
2008講演,p.
68.
広島大学大学院
先端物質科学研究科
高畠敏郎
結晶性に対する Si
Ge
B薄膜の熱電性能の調査
的場彰成(金沢大学大学院)
この度は,2009年度日本熱電学会講演奨励賞に選出し
実験方法
イオンビームスパッタ法により Si
Ge
B及び Geターゲッ
て頂き誠にありがとうございます.本稿では受賞の対象
トをスパッタし,貼り合わせ SOI
(100
)ウェハ上にそれ
となった研究についての概要を述べさせて頂きます.
ぞれ基板温度6
00,50
0℃で堆積して,Si
Ge
B及び Ge単層
膜を作製した.膜厚(~1
00nm)及び加速電圧(300~
緒言
2)
近年,超格子構造などのナノスケール薄膜構造で熱電
900V)を変えることにより歪量を変化させ ,格子定数に
性能が高まることが報告されている.格子定数の異なる
対する室温近傍での電気抵抗率及びゼーベック係数を測
薄膜同士を接合した場合,面内方向に応力が発生し格子
定した.XRDプロファイルから得られた Si
Ge及び Ge
歪みが生ずる.例として Si上に Si
Geを堆積した圧縮歪
(400)ピークより格子定数を求めた.さらにシェラーの式
みの場合を図1に示す.Siよりも Si
Geの方が格子定数
を用いてその半値幅より結晶子の大きさ Dを求めた.抵
が大きいため,面内方向の格子を整合させると Si
Geの垂
抗率測定には四探針装置,ゼーベック係数の測定には熱電
直方向の格子が伸びる.さらに膜厚を増加させると格子
特性測定装置(Ul
v
a
c
Ri
k
o
,ZEM2)を用いた.
ミスフィット転位により歪みが緩和しバルク Si
Geと同
様の格子定数となる.この熱電性能と歪みの関係につい
結果
て検討したものはない.また,適切な歪みを導入するこ
当初は Si
Ge
B単層膜において検討していたが,歪み及
とによりバンド構造の変化による移動度の向上が得られ
び結晶子の大きさに対する明確な相関性が得られなかっ
1)
ることが知られており ,この点からも熱電性能向上の
た.これは Ge濃度が低いために移動度の向上が得られな
糸口になるのではないかと考え今回調査を行った.同時
かったことが原因の一つだと考えられる .そこで,以
に垂直方向の結晶子の大きさ Dに対しても検討を行っ
下では Ge単層膜に関して議論する.
3)
図2に膜厚及び加速電圧を変えたときの Ge
(400)格子
た.
定数の XRDピーク位置を示す.ピーク位置が緩和 Geよ
り低角側にあるとき圧縮応力を受けている.膜厚依存では
膜厚増加に伴いピーク位置が高角側に近づいていること
から緩和していることが分かる(図2
(a
)
)
.40nm付近で
緩和しているのは島状成長しているためだと考えられる.
一方,加速電圧依存に対しては5
00Vにおいて最もピーク
が低角側にあった.これらの方法により膜の歪みと結晶子
の大きさを変化させ,その熱電性能を調査した.
図3に格子定数に対する抵抗率及びゼーベック係数を
図 1 圧縮応力による格子歪み
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pa
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.6No
.
2(
No
v
emb
e
r
,2009)
― 6―
示す.ここで格子定数の増加は圧縮応力によるものであ
考えられる.
る.膜厚及び加速電圧依存いずれに対しても格子定数が
図4に結晶子の大きさ Dに対する抵抗率及びゼーベッ
増加,つまり圧縮応力が増加すると抵抗率が減少し,ゼー
ク係数を示す.Dの増加に対しても抵抗率が減少し,ゼー
ベック係数が増加する傾向にあることが分かる.これは
ベック係数が増加した.抵抗率に関しては結晶子の大き
歪みによってバンド構造が変化したことが原因であると
さが大きくなると界面でのキャリヤの散乱が減少するた
図 2 Ge
(
400)
XRDピーク位置の変化
図 3 格子定数に対する熱電特性
○:膜厚依存
(
a
)電気抵抗率
日本熱電学会誌
第6巻
(
b
)加速電圧依存
(
b
)ゼーベック係数
□:加速電圧依存
図 4 結晶子の大きさ Dに対する熱電特性
○:膜厚依存
(
a
)膜厚依存
(
a
)電気抵抗率
□:加速電圧依存
第2号(平成21年11月)
― 7―
(
b
)ゼーベック係数
め移動度が向上し抵抗率が減少したと考えている.
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:(
2008)C
4.
4
結言
3)S.Ta
ka
g
i
: 応用物理 第74巻第9号 (
2005)
11581169
Si
Ge系薄膜の熱電性能に対する結晶性及び歪みの影
響を調査した.その結果 Ge単層膜において歪み応力を与
指導教員コメント
え,さらに結晶子の大きさを大きくすることにより,電
学部,大学院とこの研究に従事してきて,有終の美を
気抵抗率の減少とゼーベック係数の増加を同時に実現で
飾るにふさわしい賞を受賞できおめでとうございます.
きる可能性がある.
決して十分とはいえない研究環境の中で,興味津々の
データを眺めつつ,少しでも実験,研究の面白さを会得
参考文献
できれば将来の礎になりましょう.苦労は報われると念
1)M.
L.Le
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,E.
A.Fi
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e
r
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d
,M.
T.Bul
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,M.
T.Cur
r
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e
,
じて次の仕事にとりかかりましょう.
a
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l
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.Appl
.Phy
s
.
97(
2005)
011101
金沢大学
佐々木公洋
2)A.Ma
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b
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,K.Sa
s
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ki
,M.Kume
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.
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-
インプリント熱電変換モジュールの作製とその発電特性
中村大輔(ニッコー株式会社)
このたびは,2009年度日本熱電学会講演奨励賞に選出
価した膜熱伝導率は,p型,n型素子ともに0.
5W/
m・K
していただきましてありがとうございます.本稿では受
の低熱伝導率であった.図1の膜表面抵抗率からは p型
賞の対象となりました研究についての概要を述べさせて
は CuOの添加に伴い表面抵抗率の減少が見られたが,n
いただきます.
型は CuO添加5wt%時に最小の値を示した後は CuO添
加とともに表面抵抗率が増加した.
緒言
現状の熱電変換素子モジュールは主に焼結体素子を用
いており,モジュール作製にあたり焼結体素子を組み込
むプロセスは繁雑であるため高コストである.そこで環
境負荷の小さい酸化物系熱電変換材料に結着材・樹脂成
分を混合したペーストを開発し,熱電変換素子形成にお
図1
ける低コスト化・高集積化を目的としたインプリント熱
インプリント膜素子の表面抵抗率
1)
電変換モジュールの開発をおこなってきた .本研究で
はインプリント膜素子の微構造評価を踏まえ,膜素子の
酸化物熱電変換材料微粉末と結着材 CuOの反応性を
構成の最適化を図りインプリント熱電変換モジュールの
SPr
i
ng
8(BL
14B
2)により評価した.測定試料は主成分
発電特性評価をおこなった.
となる p型,n型酸化物熱電変換材料に対して結着材 CuO
を加えたインプリント膜素子を形成・剥離後に粉砕して
実験方法・結果
調製した.測定は Cu吸収端での XANESや EXAFS領域
a
o
酸 化 物 熱 電 変 換 材 料(p型 Ca
2.
7L
0.
3C
4O
9,n型
までの吸収スペクトル測定を行い,Cuの電子状態と結合
a
O3)に 結 着 材 CuO・ビ ヒ ク ル(樹 脂 成 分)
Ca
0.
9L
0.
1Mn
状態を評価した(図2)
.p型試料の EXAFS振動から得
を混合した熱電膜素子形成用ペーストを用いて,アルミ
られたχの動径分布からは,CuOの第二近接原ピークに
ナ基板上にインプリント膜素子を形成し膜熱伝導率・膜
おいて Cu濃度の依存性が明瞭に現れたので p型材料と
表面抵抗率の評価をおこなった.平板比較法を用いて評
CuOの反応性が示唆された.しかしながら n型試料に関
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.6No
.
2(
No
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r
,2009)
― 8―
図2
インプリント膜素子のχの動径分布関数
しては CuO濃度依存性はなく CuOとの反応性は見られ
図3
インプリントモジュール発電特性
なかった.
インプリント膜素子の微構造評価を踏まえて30mm
謝辞
角インプリント熱電変換モジュール(2 mm角素子50対
本研究の一部は中部経済産業局平成20年度地域イノ
直列)を作製した.モジュールは発電効率特性評価装置
ベーション創出研究開発事業「膜構造熱電変換素子によ
(PEM2アルバック理工製)により高温加熱温度800℃
る低密度廃熱回収型発電システムの開発」の助成を受け
において発電特性を評価したところ図3の結果が得られ
て行われました.開発におきましてお世話になった方々
た.今回作製したモジュールの最高出力は32.
5mW,最
にこの場をおかりして御礼申し上げます.また,XAFS
高出力時の電流90mAの発電特性を示した.
測定は J
ASRI重点産業利用課題を受けて行われました.
結言
「中村君への励ましの言葉」
結着材 CuOを加えたインプリント熱電膜素子の微構造評
中村君は入社まもなく本研究課題に取り組み,先行技
価から最適 CuO添加比を見出した.最適化した膜素子を用
術もない中,粘り強く膜構造熱電変換モジュールの開発
いてモジュールを作製し発電特性を評価したところ高温加
に取り組んできました.今後も事業化に向けて更なる
熱設定800℃において32.
5mWの発電特性を示した.
数々の課題が出てくるとは思いますが,粘り強く挑戦し
続け,活躍することを期待しています.
参考文献
ニッコー株式会社
滝本幹夫
1)豊田丈紫:日本熱電学会学術講演会予稿集,40,
(2008).
ラビング基板上に成膜した
TTFTCNQ薄膜の膜構造と熱電特性
林
この度は講演奨励賞を頂き,誠にありがとうございま
慶(東北大学大学院)
1.緒言
す.受賞の対象となった研究は Tr
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s工科大学から交換
無機物に替わる熱電材料として,安価で軽量化が望め
留学生として1年間研究室に滞在した Ef
r
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nTa
ma
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o君
る有機物が注目されている .本研究で取り上げた TTF-
とともに遂行したものであり,彼ともども今回の受賞を
TCNQ(Te
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no
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ha
ne)は,
大変喜んでおります.本稿では,紙面をお借りして,
「ラ
π共役電子系の平面分子である TTFと TCNQが各々 b軸
ビング基板上に成膜した TTFTCNQ薄膜の膜構造と熱
方向に積層した電荷移動錯体である(図1).擬一次元的
電特性」について,背景や結果を述べさせて頂きます.
な構造を反映して TTFTCNQ単結晶は表1のような異
1)
2,
3)
方的な物性を示す
.ゼーベック係数 Sは分子性導体の
典型的な値を示し,それほど大きくはないが,電気抵抗
日本熱電学会誌
第6巻
第2号(平成21年11月)
― 9―
率ρが b軸方向で低く,熱電材料としての可能性を秘め
はガラス基板にラビング処理を施すことで薄膜を高配向
ている.TTFTCNQ単結晶は小さくて脆く熱電デバイス
化し,熱電特性の向上を試みた.
に用いるのは困難であることから,本研究ではガラス基
板上に TTFTCNQの薄膜を作製し,その熱電特性を調べ
2.実験方法
た.
が
ガラス基板のラビングはレーヨン(Y
o
s
hi
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waChemi
c
a
l
,
TTFTCNQ薄膜は c軸配向することが知られている
YA20R)を巻きつけたローラー(直径45mm)で機械
41
0)
的に行った(ECH,RH50).押し込み深さは~0.
6mm,
,高い熱電特性を得るためには,図2(左)のよ
うに微小単結晶の結晶軸が面内で一方向に揃った高配向
ローラーの回転速度と基板の搬送速度はそれぞれ
膜を作製する必要がある.図2(右)のような膜構造で
500r
pmと0.
35c
m/
sに 設 定 し た.TTFTCNQ薄 膜 は
はρが高くなるとともに,a軸方向と b軸方向の正負の
TTFTCNQ粉 末(純 度98%;To
ky
oChemi
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nd
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r
y)
Sが打ち消しあうため,熱電特性は低くなる.本研究で
を真空中で蒸着して作製した.蒸着開始時の成膜速度は
0.
006nm/
sで,その後5分かけて0.
15nm/
sまで上げ,
以後その値を維持した.成膜時の基板温度は室温,真空
-5
度は5 ×10 Pa以下である.成膜後,膜表面を二次電子
顕微鏡(SEM;Ke
y
e
nc
e
,VK9700)を用いて観察し,X線
回折(XRD;Ri
g
a
k
u,RADX)により配向性を評価した.
熱電特性として,室温・真空中の条件下で,面内方向
(ラビング方向と平行)のρと Sをそれぞれ四端子法と温
度差起電力法により測定した.
図1 TTFTCNQ単結晶の結晶構造.
表1
TTFTCNQ単結晶のρと S.
a軸
1)
ρ
(Ωm)
2)
S
(μV/
K)
-2
b軸
c軸
-5
1×10
2×10
20
-28
-3
3×10
-
図3
図2
TTFTCNQ薄膜の SEM 像.
(上)ラビング有(膜
厚590nm),(下)ラビング無(膜厚600nm).
TTFTCNQ薄膜の構造.
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.6No
.
2(
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,2009)
― 10―
3.結果と考察
ρと Sから求めた出力因子(PF)の膜厚依存性を図6
図3にラビング基板上(上図)とラビングをしない基
に示す.PFは膜厚の増加に伴って上昇し,膜厚が300nm
板上(下図)に成膜した TTFTCNQ薄膜の SEM 像を示
以上の範囲では,ラビング基板上の TTFTCNQ薄膜の
す.ラビングをしない場合,薄膜表面は草のように生い
PFは,ラビングをしない基板上のそれよりも高くなっ
茂った短冊状の微小単結晶で構成されている.このよう
た.最大値はラビング基板上の590nmの薄膜で得られ,
10)
-7
2
な膜構造は過去の報告と一致する .一方,ラビング基
mKである.この値は,これまでに有機物
7.
8×10 W/
板上の薄膜は非常に平坦で,細長い微小単結晶で敷き詰
で報告された最大の熱電特性と比較して2桁低い .そ
められていることがわかった.ただし,微小単結晶の長
の原因は主に電気抵抗率が高いためで,今後さらに配向
軸の方向はランダムである.これらの薄膜の XRDパター
性を改善して図2(左)に示した膜構造を実現する必要
ン(図4)は,TTFTCNQ薄膜が c軸配向していること
がある.もしそのような薄膜が得られれば,a軸方向と
を示している.回折ピーク強度は,ラビングによる平坦性
b軸 方 向 で Sの 符 号 が 異 な る こ と を 利 用 し て,TTF-
の向上を反映して,ラビング基板上の薄膜の方が強い.以
TCNQ単独で熱電デバイスを作ることができると期待し
上の結果から,ラビング基板上では図2(右)のような膜
ている.
1
4)
構造が実現していることがわかった.ラビングによって平
坦性が向上した原因として,
(1)ラビング布に含まれて
4.結言
11,
12)
ラビング処理を施したガラス基板上に TTFTCNQ薄膜
(2)摩擦によって静電荷が基板上に誘起された ,といっ
を成膜し,その膜構造と熱電特性を調べた.作製した薄膜
いる高分子系の接着剤成分が基板上に転写された
,
13)
たことが考えられるが,現時点で結論は得られていない.
図2(左)のような膜構造は得られなかったが,平坦
性の向上は熱電特性の向上をもたらすと考え,ρと Sの
膜厚依存性を調べた(図5).ラビングの有無に関係なく,
膜厚の増加に伴いρは低下する傾向が見られた.これは
厚くなるに従って,薄膜を構成する微小単結晶間の間隙
が減少するためである.膜厚が300nmを超えると,ラ
ビング基板上の TTFTCNQ薄膜のρは,ラビングをしな
い基板上のそれよりも低くなった.最小値はラビング基
-4
板上の400nmの薄膜で得られ,
4.
0×10 Ωmである.一
方,Sの膜厚依存性にはラビングの影響があまりないよ
うに見えるが,最大値はやはりラビング基板上の薄膜で
得られ,その値は-20μV/
K(膜厚550nm)であった.
図5
図4
図6
TTFTCNQ薄膜の XRDパターン.
日本熱電学会誌
第6巻
第2号(平成21年11月)
― 11―
TTFTCNQ薄膜のρと S.
TTFTCNQ薄膜の PF.
は c軸配向しており,細長い微小単結晶で敷き詰められた
b
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ndW.Kno
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.Cr
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s
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.Li
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.Cr
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s
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.280,295
平坦な膜構造であることがわかった.ラビングをしない基
(
1996)
.
板上の薄膜と比較すると,ラビング基板上のそれの方が,
6)A.Fi
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.Ca
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nd V
.La
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n:
-4
ρは低く,Sも高くなった.ρの最小値は4.
0×10 Ωm
(膜厚4
00nm)
,Sの最大値は-20μV/
K(膜厚550nm)で
Sy
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102,
1611(
1999)
.
7)C.Ro
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f
.Sc
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.
ある.その結果,PFはラビング基板上の590nmの薄膜で
-7
最大となり,その値は7.
8×10
2
W/
mKであった.
482,
546(
2001)
.
8)J
.Fr
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sS.Mo
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nd M.Go
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ma
ny
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l
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d St
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e
謝辞
Chem.
168,
384(
2002)
.
本研究は科学研究費補助金(若手研究(B))の交付を
9)C.Re
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nha
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t
,W.Vo
l
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ma
nn,C.Ha
ma
nn,L.Li
b
e
r
a
,a
nd
受けて実施しました.また,ラビング処理については,
東北大学の内田龍男教授と石鍋隆宏助教に貴重な意見を
S.Tr
o
mpl
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r
:Kr
i
s
t
.Te
c
h.
15,
243(
1980)
.
10)W.Vo
l
l
ma
nn,W.Be
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g
e
r
,C.Ha
ma
nn,a
ndL.Li
b
e
r
a
:
頂きました.最後になりますが,筆者が有機薄膜の熱電
性能の研究を始めた契機は,上司の梶谷
剛先生が4年
Thi
nSo
l
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dFi
l
ms
11,
7(
1984)
.
11)M.Of
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,K.I
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,K.Omo
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,H.Ho
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,Y
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,K.
ほど前に「これからはやわらかい熱電材料の研究をしな
I
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ka
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,a
ndH.Ta
k
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:J
pnJ
.Appl
.Phy
s
.
42,
7520
くてはならない」とおっしゃったことによります.以来,
(
2003)
.
なかなか芳しい成果が出ない中,研究を継続させて下
12)M.Of
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,K.I
s
hi
ka
wa
,H.Ta
k
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z
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,K.I
na
b
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,a
ndK.
さったことに深く感謝致します.
Omo
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:Appl
.Phy
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.Le
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.
86,
062114(
2005)
.
13)I
.
H.Be
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,M.
P
.DeSa
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,J
.
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,E.
A.Ol
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-
参考文献
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,R.Ba
r
b
e
r
i
,a
ndT.Ra
s
i
ng
:Li
q
.Cr
y
s
t
.
30,
591(
2003)
.
1)日本熱電学会誌6,
314(
2009)
.の特集記事およびそ
14)Y
.Hi
r
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hi
g
e
,M.Oo
ka
wa
,a
ndN.To
s
hi
ma
:Sy
nt
h.Me
t
-
こに示された参考文献を参照 .
a
l
s
157,
467(
2007)
.
2)M.Sa
ka
i
,M.I
i
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,M.Na
ka
mur
a
,a
nd K Kud
o
:
Sy
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h.Me
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a
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s
153,
293(
2005)
.
「林君への励ましの言葉」
3)J
.
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.Kwa
k,P
.
M.Cha
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n,A.
A.Rus
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,A.
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,
大きな分子が配列した結晶が示す物性は従来の結晶で
A.
J
.He
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:So
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dSt
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t
eCommun.
16,
729(
1975)
.
は実現できなかったものになる可能性があります.高い
4)P
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,B.
A.Sc
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,R.
B.La
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,Y
.Tom-
弾性と結び付いた熱電性能,磁性,誘電性など夢が膨ら
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,a
ndJ
.
B.To
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nc
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:Appl
.Phy
s
.Le
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t
.
24,
439
みます.今回の研究成果が,最初の手がかりになること
(
1974)
.
を期待しています.
5)N.Ar
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,K.Ka
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,K.Ya
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,M.Ka
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,H.Sa
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東北大学
梶谷
剛
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,2009)
― 12―
研究紹介
環境低負荷型 Mg
iによる排熱発電モジュール開発の現状
2S
飯田
努(東京理科大学)
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1.はじめに
一般に半導体マイクロエレクトロニクスデバイスの分野
では,高性能が最重要視され,素材の有害性や資源枯渇の
議論があまりなされない,いわば性能第一主義の状態が続
いている.熱電変換材料の開発においても,高い熱電変換
効率の得られる材料系であれば,材料の使用に特段の制限
がない状態であった.しかし,EUにおける2
006年7月か
らの Ro
HS(Re
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)指令や
2007年 6 月 か ら の REACH(Re
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fChemi
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)規則に代表される,有害物質
あるいは有害化危惧物質の使用制限は今後さらに厳しくな
図1
ることが予想される.また稀少金属価格の高騰は,稀少金
Mg
i状態図
2S
属を含む熱電変換材料の低コスト排熱エネルギーリユース
システム構築において憂慮される.こうした観点から,資
従来は,汚染不純物が少なく,残留金属 Mgフリーの原
源豊富な元素より構成され,かつ有害化危惧物質を含まな
i
原料は市
料合成が難しかったために,半導体品質の Mg
2S
い熱電変換材料の開発ニーズは高まっている.
販されていなかったが,近年,結晶育成用や焼結用として
8)
溶融合成多結晶原料が昭和 KDE社 より供給され,それら
i
試料で実用上十分な熱電
市販原料を用いて作製したMg
2S
i
2.環境低負荷材料 Mg
2S
i系は Mg
i
xと Mg
i
nxを含め1960年
Mg
2S
2S
1−xGe
2S
1−xS
代より排熱発電温度領域500~800Kの熱電変換材料と
16)
911)
特性が得られている.
また,PLD
・スパッタ用ターゲッ
i
の薄膜試料
ト材が豊島製作所より入手可能になり,Mg
2S
現在までに報告さ
作製が可能となった.溶融合成原料以外では,従来,Mg
iの性能指数 ZTは,
900K付近で
れている実質的な Mg
2S
金 属 と Si
を 粉 末 放 電 プ ラ ズ マ 焼 結(pl
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ZT~1程度の値であるが,軽元素から構成される Mg
2S
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)法により合成する方法が主流であったが,未反
は,重量性能比で比較すると他材料を凌駕する熱電変換
応の残留 Mg金属が試料劣化の原因となり耐久性に問題が
iの結晶構造は c
ub
i
cで Ca
F
性能を有する.Mg
2S
2型構造
生じている.また近年,名古屋大学伊藤研究室や茨城大学
をもつ.
i単結晶および多結晶が合成さ
鵜殿研究室で良質の Mg
2S
して認知されてきた材料系である.
iは,他のシリサイ
半導体シリサイド材料の中で Mg
2S
れている.
7)
iの電気伝導は n形を示し,
アンドープ状態での Mg
2S
ドと異なり図1に示すように極めてシンプルな状態図
となっている.Mg
iは Mg
Si系において唯一のストイ
2S
p形を想定使用温度領域500~800Kにおいて安定的に
キオメトリックなシリサイド化合物であり1358Kに融
得ることは難しいことが知られている.その理由として,
iの融点である1358Kのわ
点を持つ.Mgの沸点が Mg
2S
i内電子状態の解析によ
近年,第一原理計算による Mg
2S
ずか5 K上にあり,Mgの高い蒸気圧と化学反応性ととも
り,格子間 Mg欠陥が n形電気伝導の起源であることが
に溶融合成プロセスには十分な注意が必要である.Mgの
iにおける代表的な n形不純物
明らかとなった. Mg
2S
融点が923Kであるので Mg
r
i
c
h側から合成が可能であ
は Al
,Sb
,Biで,Alは Mgサイトに,Sb
,Biは Siサイ
るが,合成試料中に Mg金属が残留すると劣化しやすく
トに置換してドナーとなることが知られている.既述の
なる.
第一原理計算による欠陥モデル形成エネルギー計算によ
日本熱電学会誌
第6巻
11)
第2号(平成21年11月)
― 13―
れば Sb
,Alの順に形成エネルギーが低く,Mg
i中での
2S
常に細かい廃シリコンスラッジが水とともに排出され
高温度動作時の安定性確保および固溶限界が高くなると
る.この廃シリコンスラッジ排水には不純物元素(例え
考えられる.p形不純物としては Agがよく知られてお
ば B,P,As
,Sb等)に加え,研削,研磨工程で混入す
iが高性能
り,多くの報告がなされているが,n形 Mg
2S
る W,Cr
,Ti
,Ga
,Fe,O等が多く含まれている.しか
を示す500~800Kの中高温領域において p形由来の熱
しながら,これらリユース Si特有の不純物は現在のとこ
電特性と n形の性質が相まって出力特性が大きく低下す
m を大きく超えないことから,Si原
ろ最大でも~10 c
るという傾向を示す.
料価格の高騰と膨大な環境負荷物 Siスラッジの処理問
18
−3
iの原料素材として実験室レベルで
題と相まって,Mg
2S
3.産業廃棄物 Si
スラッジ,リサイクル・Mg原料の利用
は良好な熱電変換特性が得られている.現在ではパー
Si半導体では,太陽電池用には9
9.
99999%(7N)程
カーエンジニアリング社製のリユース Siケーキを原料
度,LSIデバイス用途には9
9.
999999999%(11N)程度
8)
iが昭和 KDE社 より市販されている.
に用いた Mg
2S
の高純度 Si原料が要求されるが,熱電変換用材料である
系合金より軽量
また,近年,CO2削減の一環として Al
シリサイド系材料では特定の悪影響を与える不純物が混
な合金である Mg系
(Mg
Al
ZnMn)
合金
(AZ91,
AM50,
60
入しなければ,太陽電池用や LSI用 Si原料よりも低純度
等)が産業レベルで多用され一部リサイクル Mg合金の
のものが使用できると考えられる.高純度 Si原料は需要
フェーズに入っている.図3はリサイクル AZ91のフレー
の急速な伸びに慢性的な品不足の一方,LSIチップやパ
クを示す.昨年度より,これら AZ91,AM50,AM60等
ワートランジスタ・シリコン太陽電池等の素子への加工
i
の合成を行っている.
を Mg原料として導入し Mg
2S
i開発においては,放電プラズマ焼結プロ
現状の Mg
2S
工程において,インゴットの切断,バックグラインド,
ダイシング等により,およそ70%はスラッジとして使わ
セスでの各種焼結パラメータ制御がトータルな熱電性能
れずに無駄に廃棄されている.Si素材の製造では,1kg
の向上に不可欠であることが明らかとなってきているた
の Siウエハーを得るのに一般的には1000kWhの電気エ
め,弊研究室では近年,高い合成自由度を有するエレニッ
ネルギーが必要とされ大量のエネルギーを消費している
クス社製放電プラズマ焼結装置 Ed
PASI
I
I型(図4)に
にもかかわらず半導体産業全体で廃棄されている廃シリ
i素子の作製に使用している.
切り替え Mg
2S
コンスラッジの総量は膨大で,埋立て処理や CO2排出等
の環境負荷が近年大きなものとなってきており,大量の
4.熱電特性
廃棄物 Siスラッジを有効活用して環境負荷を低減する
図5は,母材原料として,
(1)リユース Si
,
(2)リサ
取組が行われている.その一つとして図2に示す廃棄物
イクル Mg合金,(3)ソーラーグレード Si
(純度:6N)
Siスラッジを純化処理したリユース Siケーキを,シリサ
iに,n形不純物として
を原料に用いて作製した Mg
2S
i
の原料開発を
イド系熱電変換材料の Si
原料に用い Mg
2S
Bi
,Sb
,Alをドープした粉末放電プラズマ焼結試料の性
行っている.
能指数 ZT値である.測定に使用した試料サイズはすべて
3
LSIや太陽電池などの製造では,Siウエハー,Siイン
t
%Biドー
2×2×10mm としている.参考値として1a
ゴットを研削,研磨する際に,粒度が0.
1~10μmの非
i
原料をブリッジマン
プのソーラーグレード Si
使用 Mg
2S
図2
図3
リユース Siケーキ
リサイクル Mg合金(AZ91)
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,2009)
― 14―
結晶育成した試料(ZT=1.
1a
t
873K)を示している.
今回は紙面の都合上記載していないが,Biに次いで
Biドープ Mg
i原料では,最大で850Kにおいて ZT=
2S
i中で熱力学的に安定な Sbの熱電特性としては,
Mg
2S
i原料でも同
0.
85を示している.また,アンドープ Mg
2S
ドーピング濃度及びプロセスパラメータの調整により
温度域で ZT=0.
60程度を示している.リユース Si
使用
Biドープ試料に近い値を得ることができる.Biドープ試
の1~2a
t
%Bi
ドープ試料は ZT値0.
6~0.
8を示している.
料が他より高い ZT値を示す理由は,全温度域に渡って示
1a
t% Bi
ドープのソーラーグレード Si
使用の結晶育成
す低い熱伝導率である.
i
と比較して低い値となっているが,これは(1)結晶
Mg
2S
図6に低温部373Kと高温部473~873Kにおける熱
育成と放電焼結,
(2)ソーラーグレード Si
原料とリユー
起電力測定結果を示す.熱起電力測定には,PAS焼結の
ス Si
の違いによる点の寄与が弊研究室内での検証実験で
際に Ni電極を同時焼結した試料片を用い,図7に示すユ
確認されている.Al
をドープした試料については,
Si
原料
ニオンマテリアル社 TE500型を使用している.測定に
およびドーピング濃度の違い等に大きくは依存せず,概ね
は各試料の最大電力がとれるよう外部負荷を調整して
873Kで0.
5~0.
6程度の ZT値を示している.
図6
図4
熱起電力測定結果
放電プラズマ焼結装置 Ed
PASI
I
I型
図5
日本熱電学会誌
Mg
i性能指数の温度依存性
2S
第6巻
図7
第2号(平成21年11月)
― 15―
熱起電力測定装置
TE500型
図9
耐久試験5,
600時間後の試料外観
圧低下は見られず,ほぼ一定の値を示している.Sbドー
図8
測定試料片
プ試料については,現在までのところ耐久試験を実施し
ていないため,今後早期に実施する予定である.
行った.図8に Ni電極付きの測定用試料片を示す.
i
試料が Al
ドー
熱起電力測定結果では,Bi
ドープ Mg
2S
6.おわりに
i試料より低い値を示すという傾向が観測されて
プ Mg
2S
iは熱電変換材料としては古い歴史を持ち,合成
Mg
2S
いる.Alドープ試料,特に原料としてリユース Siを用い
面では状態図的にきわめてシンプルな系でありながら高
た試料で大きな起電力が得られている.図6にすべての
品質結晶の作製においては難合成材料といわれ,他方,
試料のデータがプロットされているわけではないが,Si
合成された試料の期待される動作温度域での耐久性は著
原料としてリユース Siはソーラーグレード Siに比べ若
しく低いと言われていた.「資源豊富・有害性無し・エネ
干の出力低下が見られるものの,十分実用性を有するこ
ルギー変換材料」という安直なキーワードから取り組ん
とを示唆するデータが得られている.また,リサイクル
iは,もしかしたら CO2の削減技術として何らか
だ Mg
2S
Mg合金については,合金中に1~5a
t
%程度の Alを含有
の寄与ができるのでは?というところまで近づいてきた
i試料が作製されることに
することから,Alドープ Mg
2S
のかもしれない.図10に示すように,弊研究室で2
000
なるが,熱起電力測定結果を見る限り,今後十分実用を
iの研究は紆余曲折を経て本年発電モ
年に開始した Mg
2S
検討できるレベルにあると考えている.また,Mg合金
iモジュールを開
ジュールの試作に至った.図11は Mg
2S
の利用ではリユース Si原料との組み合わせにも十分な
発している日本サーモスタット社製である.これまで弊
可能性があるといえる.
i素材単体での特性向上ならびに環境
研究室では,Mg
2S
低負荷型原材料導入プロセス開発に注力し,素材レベル
では実用的な排熱発電が期待されるところが見えてき
5.耐久試験
測定試料試験片は,熱起電力測定の他に耐久試験にも
i排熱発電実用モジュールの開
た.しかしながら,Mg
2S
用いている.現在までに Biドープと Alドープの試料に
発という点においては,まだ緒についたばかりであり,
ついて耐久試験を行っている.耐久試験の条件は,(1)
今後モジュール向け要素技術開発が必要である.
大気中,(2)低温部373K高温部9
73Kとし,試料片の
発電モジュール開発では様々な熱源に対してのフィー
開放電圧をモニターしている.11月18日時点で耐久試
ルドテストが不可欠なことから,熱源マッチング─モ
験時間が6,
100時間となっている.このときの試料の写
ジュール開発─原料開発をリンクさせた開発環境の構築
真を図9に示す.この図に示されている試料はすべて Al
と,排熱発電─ CO2削減を志向する産業界との情報共有を
ドープ試料によるもので,Biドープ試料は当該条件で
積極的に推進していきたいと考えている.その一環とし
i
Ni電極
は,試料高温部での劣化が見られ,特に.Mg
2S
て,企業主導による排熱発電に関するシーズ─デバイス─
間の劣化が観測され,1,
000時間を越える耐久性は現時
アプリケーション分野の「出逢い・マッチング」を行うコ
点で得られていない.Alドープ試料については図9に見
ンソーシアムが設立され,企業間の活発な排熱発電─ CO2
られるような,高温部付近の焼け焦げは認められるもの
削減の取り組みが始まっている.今後,小職も一エンジニ
の,試料表面から内部への酸化腐食の侵攻は見られてい
i
排熱発電実用モジュール・アプリケーショ
アとして Mg
2S
ない.
ン開発に最大限の尽力をしていく所存である.
開放電圧については,試験開始時と比べて目立った電
i
の発表に
7月に開催された I
CT& ECT2009では Mg
2S
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,2009)
― 16―
i開発の流れ
図10 研究室での Mg
2S
4)T.Ka
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1998.p.
362.
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K.Ma
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845(
1992)
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K.Ma
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851(
1992)
7)T.
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k,
図11 日本サーモスタット社製 Mg
i試作モジュール
2S
OH,
2548(
1990)
.
対して弊研究グループに「Be
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rAwa
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」を頂いた.
8)ht
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www.
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1.
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誠に光栄なことであるが,これもひとえに,本邦において
9)M.Aka
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熱電変換技術の黎明期より今日まで立ち上げてくださっ
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た先導の皆様,熱電関連技術の啓発と普及に尽力されてい
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Ma
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1044)
,
る貴学会,ならびに駆け出しの弊研究グループに様々なご
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,
助言・ご協力をくださった皆様のお力添えの賜物と深く御
(
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,
2008)
,pp.
U
6.
15.
1U
6.
15.
6.
i
に関す
礼申し上げる次第である.さいごに,今回,Mg
2S
10)M.Fuka
no
,T.I
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,K.Ma
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,M.Aka
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,Y
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uni
,
る研究紹介の機会をいただいたことにたいして,日本熱電
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学会誌編集委員の皆様に心より深謝申し上げる.
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1958)
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日本熱電学会誌
第6巻
第2号(平成21年11月)
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205801(
2009)
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研究室紹介
東京工業大学 吉野研究室紹介
「新物質,新物性,新機能の創成に向けて」
吉野淳二(東京工業大学大学院理工学研究科)
学会誌の「研究室紹介」欄の原稿執筆の依頼をお引き
さてそれでは,現在の研究室のテーマを少し紹介しま
受けしてしまったあと,大変困ってしまいました.これ
しょう.原子配列を人為的に制御するとは言っても,我々
まで,熱電変換という分野に強い興味を持って,いろい
の容易に実現できることは,真空蒸着の蒸着物の厚みを
ろ勉強させて頂いてきたことも確かなのですが,研究と
原子レベルで制御する程度のことしかできません.構造
いえる程の仕事をして来なかったにもかかわらず日本熱
が全く同じ半導体であれば,そのような構造もある程度
電学会の重い役割を仰せ付かって来たことに大変申し訳
実現可能ですが,少し性質が異なる物質同士のヘテロ構
ないという思いがありました.まともな研究をしていな
造の形成は,多くの場合困難です.分子線エピタキシー
いのだから,雑用係くらいしてこの分野に貢献しなさい
法は,結晶成長中に電子線回折測定を初めとするその場
と言う意味だと理解して役割を果たしてきました.従っ
観察が行えるという特徴をもちますが,多くのヘテロ界
て,今回ここで紹介させて頂く私の研究室における研究
面の形成時には,うまくエピタキシャル成長ができたと
対象が,
「熱電現象に関するする研究を行っている機関の
言っているケースでも成長の初期には,回折像が消えて
紹介」というこの「研究室紹介」の欄の趣旨とずれてし
しまう場合がほとんどで,電子線回折だけからヘテロ界
まうことにまずお詫びさせて頂きます.
面の形成時に表面で何が起こっているかを理解すること
まず,研究室の研究テーマをご紹介する前に私が熱電
は困難です.新しい原子配列をもつ物質の創成のために
変換に係わるようになった経緯を少し述べさせて頂きま
は,ヘテロ界面での結晶成長の原子レベルでの理解が,
す.大学の頃,同じ炭素からできているにもかかわらず,
不可欠でありますが.それが,現在の研究テーマの柱の
原子配列が変わるだけで,全く性質の異なるダイヤモン
1つです.このために用いている実験設備が,図1に示
ドとグラファイトが生じるのだから,原子配列を人為的
す走査トンネル顕微鏡と分子線エピタキシー装置を真空
に制御できれば,全く新しい物性や機能を生むことがで
を介して接続した実験装置です.走査トンネル顕微鏡
きるはずであると教えられたことは,極めて説得力があ
(STM)は,ヘリウムデュワーを備えており,低温での
り,そんな研究に係わろうと思い,そしてそれ以来ずっ
STM 観測が可能です.特徴としては,ロードロックチェ
とその辺をうろうろ彷徨ってきました.
ンバーを含めて4室構成となっており,分子線エピタキ
当初,私は,発光素子用の新しい半導体材料を開発す
シー室で作製した表面をそのまま,真空中を搬送して
るという観点から,有機金属気相成長法などの新しいエ
STM 観測できることです.STM は,表面上で探針を走
ピタキシャル成長法の開発やそれらによる半導体超薄膜
中の作製とその物性の解明に関する研究に興味を持って
きました.当時は,光学的な特性に興味の中心があり,
物質中の輸送現象には,強い興味をもっておりませんで
した.従って,光電変換という側面を通して非常に偶然
に熱電変換との関わりをもつことができたことは,非常
に幸運だったと思っています.いつの間にか熱電変換と
のつきあいが,随分長くなってしまいましたが,当時,
ちょうどドレッセルハウス先生が,超格子構造中では熱
電能が大幅に増大するという論文が発表された頃で,自
分自身の興味の領域に強い関わりがあったことも,その
要因の1つなのかもしれません.
図1
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査する必要があるため,その場観察には不向きですので,
我々の実験室の主要設備は,上記のようなものですが,
反射電子線回折のその場観察の情報と STM の情報をつ
4結晶 X線回折装置や SQUI
D磁化測定は学内の共同利
きあわせることにより,成長中の表面で何が起こってい
用施設を利用させて頂いており,また,試料の微細加工
るかを推理する必要があります.現在の具体的な研究
では,文部科学省のナノテクノロジーネットワークプロ
テーマは,次に述べるもう一つの研究の柱との関係で,
グラムにより提供される電子ビームリソグラフィーによ
自然にない構造をもつ新しい磁性体の形成を目指して
るナノ構造の形成のための共用施設を利用させて頂いて
Ga
As基盤上の MnAsや Cr
As等の磁性体の成長初期過程
います.
を調べています.
最初にお断りしたとおり,これまで研究室に所属した
もう一つのテーマは,磁化と伝導電子の相互作用に起
学生さんには,熱電変換に直接関係するテーマを積極的
因して生じる磁気抵抗とその反作用としてのスピントル
に薦めてきませんでした.しかし,熱電性能とフェルミ
クの理解とそれらを巧みに利用することによって新しい
面における大きな状態密度の勾配は密接な関係をもちま
物性や機能を発現しようというスピントロニクスと呼ば
すので,フェルミレベル近傍の大きな状態密度がその発
れる研究領域に関するものです.現在,磁性体としては,
現に重要な意味をもつ強磁性や超伝導となる物質群とも
Ga
Asに磁性原子である Mnを添加した(Ga
,Mn)Asと
類似性がある可能性があること,さらに,本年度の学術
いう物質を用いています.
(Ga
,Mn)Asでは,Mnを僅
講演会の招待講演の斎藤英治先生の講演にありましたよ
か1~2%添加するだけで実現できる強磁性体であるた
うに,スピントロニクスの分野でも磁性体におけるゼー
め,キュリー温度は,液体窒素温度近傍と低いのですが,
ベック効果に注目が集まりつつあることから,我々も,
磁化が小さいという特徴を持っています.さらに,母体
遅ればせながら,熱電材料としての興味と同時に電子状
の Ga
Asと同じ構造を維持するため,原子レベルで界面
態を調べる手段という観点から現在,熱電能を調べる実
が制御された磁性体と絶縁体のヘテロ構造を作製できる
験に着手しようと準備を進めているところです.
という特徴も,もっています.図2は,その研究のため
さて,我々の研究室は,東京工業大学の大岡山キャン
に利用している試料作製用の分子線エピタキシー装置,
パスにあります.平成21年3月の春季金属学会学術講演
図3が,作製した試料の電気特性を測定するための設備
会の際にこのキャンパスを訪問された方も多いかもしれ
です.
ません.最近では,このキャンパスも新しい建物が多く
解析に用いる測定は,電気伝導測定が主となり,GM
なりましたが,私の研究室がありますのは,関東大震災
冷凍機を用いて室温から10Kにわたる温度領域の輸送
直後に建てられた本館(図4)にあります.平成4年頃
特性の測定を行っています.最近は,直流測定に加えて,
から3期に分けて改修が行われ,床や天井は少しきれい
磁化の動的な振る舞いを調べるため,高周波測定を実現
になりましたが,保存建物に指定したこともあり,外壁
するための装置の整備を進めています.現在の具体的な
研究テーマは,
(Ga
,Mn)Asの磁気異方性の起源の解明
とその制御,さらに磁性 /非磁性多層構造における電流
誘起の磁気抵抗揺らぎの機構解明等です.
図3
図2
日本熱電学会誌
第6巻
第2号(平成21年11月)
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現在,研究室のメンバーは,ポスドク1名,修士2年
2名,修士1年1名,卒研生3名という構成で,博士課
程に進学する学生が,少ないという悩みがあります.な
お,この学会誌が発行されるときには,既に締め切って
いるかもしれませんが,現在助教の公募を行っています.
最後に,学生の方に限らず,私どもの研究室にご興味
をもたれた方は,お近くにお越しの際には,是非お立ち
寄りいただければと思います.
**********研究室情報**********
〒1528551東京都目黒区大岡山2121
図4
東京工業大学大学院理工学研究科物性物理学専攻
は,そのまま,内壁もペンキで厚化粧しただけですので
TEL/
FAX:0357342076
建築当時の面影がほとんどそのまま残っています.
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読者コーナー
秋山孝ポスター美術館
長岡
武田雅敏(長岡技術科学大学)
今年度の学会誌の表紙は,昨年の5周年記念事業の T
発信していながら,ユーモアと優しさがあり,ほっとす
シャツで採用された図柄ですが,恐竜が自分で卵の殻を
ると同時に考えさせられる作品の数々を楽しむことがで
破っているイラストレーションは多摩美術大学の秋山孝
きます(私は専門家ではないので,間違っていたらご免
先生の作品です.表紙への使用許可をいただくために連
なさい).また,解説もありますので作品の背景などにつ
絡とった際,秋山先生が長岡市のお生まれで,7月12日
いても学ぶことができます.
に「秋山孝ポスター美術館
長岡」がオープンするとい
オープン当日に行ったので,秋山先生ご本人に会うこ
うことを伺いました.場所を調べてみると大学や私の家
とができました.これまで電子メールでのやりとりだけ
から車で10分程のところでしたので,早速行ってみるこ
でしたので,お目にかかるのは初めてでしたが,学会誌
とにしました.余談ですが,市町村合併で長岡市も広く
の仕事でたまたまコンタクトをとっただけの私に対して
なったため,同じ市内と言っても車で(田舎の道を)1
も,お忙しい中いろいろと説明してくださり,写真撮影
時間もかかる場所もあるので,注意が必要です.また,
にも快く応じてくださりました(写真3).その間にも,作
海に面した町とも合併したので「長岡にもついに海がで
品集にサインを求める人がひっきりなしに訪れ(写真
きた」と言っている人もいました.決して海が近くなっ
4),その一人一人と楽しくお話をされている姿が印象的
たわけではないのですが・・・
でした.ご本人にお会いして改めて作品を見ると,秋山
オープン当日はあいにくの小雨模様でしたが,大勢の
先生のお人柄が表れていることが良くわかりました.一
来館者で賑わっていました.J
R宮内駅(長岡駅の隣の駅
緒に行った家内共々,作品だけでなく秋山先生ご本人の
で,電車で5分ほど)から歩いて5分くらいの場所に美
ファンになりました.
術館はあります.美術館の外観は,写真1にあるように
この美術館は4月から10月までの開館で,冬の間は準
“蔵”を思わせるような建物です.大正時代に建てられた
備や研究調査のために閉館するそうです.「スキー・スノ
建物を改修したそうで,元は銀行として使われていたそ
ボのついでに立ち寄ろう」というわけには残念ながらい
うです.中に入ると銀行時代に使われていた金庫の扉が
きません.是非,気候の良い季節にいらしてください.
残っています(写真2).ちなみに(元)金庫の中はショッ
プになっていて,秋山先生の作品集やポストカードが買
えます.
美術館の中は天井が高く,壁一面に秋山先生の作品が
数多く展示してありました.明確で力強いメッセージを
写真1
秋山孝ポスター美術館長岡の外観
日本熱電学会誌
第6巻
写真2 銀行時代の金庫(現在はミュージアムショップ)
第2号(平成21年11月)
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写真3
秋山孝先生ご本人
写真4
冬でなくとも楽しめるところはありますので(長岡にも
気軽にサインに応じている秋山先生
のイベントに是非参加してみようと思っています.
海があります!).
秋山先生の様々な想いが具現化した美術館だと感じま
単に作品を展示するだけでなく,セミナーの開催など
した.長岡に,誇れる場所が一つ増えました.
教育という面にも力を入れていくようです.サポーター
ズ倶楽部という組織もあり,年会費を払えば誰でも入れ
秋山孝ポスター美術館長岡
ます.会報やイベントの案内,ショップでの割引が受け
〒9401106 新潟県長岡市宮内2108
られるなどの特典があります.少しでも生活に潤いをと
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思い,帰りがけに私も入会しました.機会があれば何か
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総会・各種会合報告
第6回通常総会(2009年(平成21年)8月)の報告
総務理事
鈴木亮輔
本学会の第6回通常総会が2009年8月11日(火)
10:30から11:30まで,東北大学青葉山キャン
パス青葉記念会館4階大研修室で開催されました.出席者数は,総会出席資格者総数288名中111名
(会場出席:42名,委任状出席:69名)であり,会則21条および25条に規定された定足数である58
名を越え,総会は成立致しました.
梶川武信会長より冒頭挨拶として,日本熱電学会創立以来6年になり,我が国のエネルギー事
情に鑑み本会が益々発展していることが述べられました.また,総会をはじめ,学術講演会,展
示会,各種会合の開催に至るには,東北大学の梶谷先生はじめ多くの方々の献身的ご協力の賜物の結果であり,それら
の方々に心から感謝の意を表したいと述べられました.
会則第2
2条に従い,議長は梶川会長,議事進行司会は鈴木総務理事とし,議事録署名人は議長,河本邦仁副会長,総
務理事の3名となりました.
引き続き,下記の議案を順に審議に入りました.総会資料は会に先立ち皆様にお届けしたと
ころですので,ごらんいただいておられると思いますが,議題と審議結果は以下の通りです.
「1号議案 2008年度(平成20年度)事業報告」は総務理事から資料に基づき報告され,承認
されました.
「2号議案 2008年度(平成20年度)収支報告・監査報告」は太田英二会計理事から収支報告
があり,福田監事による適正である旨の監査報告がなされ,承認されました.
「3号議案 2009年度(平成21年度)事業計画」は総務理事から説明があり承認されました.
「4号議案 2009年度(平成21年度)収支予算」は太田会計理事より説明がありました.梶谷理事から「総会前の理事
会で委員会活動に対し旅費支給を行うことが決められたが,どの予算から充当するのか」との質問があり,会計理事お
よび会長から,
「委員会活動で支えられている本会の活動をさらに活性化するため,予算案にある会合費と予備費をもっ
てまかなう」と説明され,議案は承認されました.
報告事項として,第3期役員名簿が報告されました.太田時男顧問の逝去が報告され,松原覚
衛前副会長が顧問に推挙されました.会員移動では正会員数の伸びが報告されました.新たに理
事会で定められた「本会細則6助成会員に関する細則」と「本会細則7日本熱電学会ホームペー
ジに関する細則」および取扱要領が報告されました.梶川会長から広報活動をホームページの改
訂と充実により強化する旨が報告されました.
以上により,すべての審議と報告事項を終え,総会が閉会しました.
続いて,理事会決定により故太田時男顧問に本会功績賞が授与されると報告され,梶川会長から賞状が披露されまし
た.賞状は後日ご遺族にお渡し致します.
日本熱電学会誌
第6巻
第2号(平成21年11月)
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日本熱電学会
第22回理事会報告
総務理事
鈴木亮輔
2009年6月28日(金)に第22回理事会が早稲田大学で第9回研究会終了後に開催されました.理事33名(出席23
名,委任状10名)及び監事2名,オブザーバー1名が出席しました.
議題は次の通りです.
(1)第6回通常総会の原案と資料を準備するため,執行部と各種委員会委員長から提示された
事業報告と事業計画,予算案,を,平成21年度事業計画,平成21年度予算,平成20年度事業報告,平成20年度決算,
平成20年度学会員異動,等に割り振りました.適宜修正がありました.(2)広報委員会提案のホームページの運営,
管理に関する規程案が審議され,幾つかの修正を加えて別掲のように承認されました.
(3)理事会,評議員会の旅費支
給の提案がありましたが,高額となることから見送りました.むしろ学会に貢献して下さる委員会メンバーの旅費支援
に回してはどうか,との意見があり,試算してみることになりました.
(4)表彰委員会提案の表彰規程修正案,学会賞
等選考規程案,栄誉会員規程案の提案がありましたが,幾つかの修正,再検討指示を付けて委員会に差し戻しました.
報告事項としては,平成20年度の活動現況の他,第6回日本熱電学会学術講演会の準備状況,予算執行状況,財産管
理状況,貸借対照表などの報告,会員名簿が本日発売となったこと,協賛した学会・
シンポジウム等の報告,国際熱電学
会I
TSと本会の連携報告,がありました.特に,欧文論文編集委員会からは特集号への積極的な投稿の呼びかけがあり
ました.また,学術講演会は第7回は東京地区,第8回は北海道地区,その後,東京地区,東京以外の地域,を交互に
繰り返す案が了承されました.第4回講習会の開催予定は現在のところ引き受け手がないことが報告されました.会計
関係では,会費未納者リスト,広告費未収金等を確認し,100万円を基本金引当資産に移すことが承認されました.
日本熱電学会
第23回理事会報告
総務理事
鈴木亮輔
2009年7月12日(日)
~7月17日(金)に第23回理事会が開催されました.メールによる議事の配布,修正意見は
メールにより総務理事に連絡し,一括して全構成員に連絡する形式を取りました.監事2名,理事39名全員が参加しま
したが,退会した理事は全ての案件に棄権されました.
議題は主として,前回第2
2回理事会の審議により修正した総会提出原案と資料を確定するもので,平成21年度事業
計画(案),平成21年度予算案,平成20年度の事業報告,平成20年度の決算,財産管理状況,貸借対照表,監事の監
査報告,平成20年度学会員異動,平成22年度以降の学術講演会の開催計画,がメールによる可否投票により全会一致
で承認されました.
報告事項では(1)粉体粉末冶金協会から平成21年度秋期講演大会企画セッション「熱電変換材料の新展開」への協
賛依頼,(2)本会学術講演会共催の熱・電気エネルギー技術財団関係の報告,がありました.
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日本熱電学会
第24回理事会報告
総務理事
鈴木亮輔
第6回学術講演会の前日である2009年8月9日16:00~18:30に仙台ホテルで第24回理事会が開催されました.
会長挨拶,定足数の確認,議事録署名人指定,前回議事録承認に続き,幾つかの協議事項を審議しました.
(1)維持会員の代表者の退社に伴う理事の欠員が生じましたが,理事数が会則規定の最低数を上回っていることから
補充しないことになりました.
(2)本会の旅費支給規程では委員会の年度内第1回目の会合は旅費を支給されません.これを改めて,学会に貢献し
て下さる委員会メンバーの旅費を第1回目から支援に回してはどうか,との意見が第22回理事会で提案され,協議
の結果,本会の活動の実態はボランティア的に動いている委員会活動に大きく依存しており,これを活発化するよ
う支援したいため,暫定的に「委員会会合の旅費を第1回目の対面会合から支給する」試行を行うことになりまし
た.1年後に費用対効果,総額規制の必要性,などを理事会で検証します.
(3)本会の表彰規程と細則について,昨年来,審議を続けてきましたが,中堅の研究者を褒賞するための研究奨励賞
を新設する他,従来別々にあった幾つかの表彰規程につき別掲のように表彰規程を再整理しました.この機会に幾
つかの手続き上の不備を正し,細則まで整備し直しました.従来からの賞の内容,価値は変わりません.
また,会則に規定の名誉会員の内容について議論が深められました.
(4)日本熱電学会功績賞の授与について審議しました.本会顧問,故太田時男先生(横浜国立大
学名誉教授)に功績賞を授与したいと梶川会長から提案があり,選考委員会から審査の結果,実
にふさわしい方であると報告がありました.別掲の通り,太田先生の熱電変換技術の黎明期にお
けるご尽力とご努力は大なるものがあり,理事会全会一致で太田先生に功績賞を授与することに
決しました.
(5)本会顧問に前副会長,松原覚衛先生(山口東京理科大学)をお迎えしたいと梶川会長から推
薦があり,審議の結果,全会一致で承認されました.
その他,報告事項として,(1)国際熱電学会 I
TSと本会の連携について7月26日ドイツで開催中の国際会議
I
CT2009の期間に梶川会長が I
TS会長等と意見交換の場を持ち,今後,本会との密接な協同を行っていくこと,
(2)
2010年夏の第7回学術講演会は東京大学で開催すること,一般に学術講演会開催時期は8月初旬か,8月下旬しか
可能でないこと,(3)予算執行がスムースに進んでいること,(4)表彰委員会は表彰状以外に盾や賞杯などの記
念の品を考慮していること,などがありました.
日本熱電学会誌
第6巻
第2号(平成21年11月)
― 25―
日本熱電学会
第 7 回評議員会報告
総務理事
鈴木亮輔
第6回学術講演会の期間中である2009年8月10日(月)12:00-12:5
0に東北大学青葉山キャンパス青葉記念館
7階特別室(和室)にて第7回評議員会が開催されました.出席者:12名,欠席者:2
5名うち委任状:1
4通,により
評議員会は成立しました.執行部側からは梶川会長,河本副会長,吉野副会長,太田会計理事,鈴木が出席しました.
会長挨拶の後,前回議事録を確認し,学会の現状と将来について総会提出予定資料を用いて総務理事および会計理事か
ら説明がありました.梶川会長兼広報委員長から今後,ホームページによる情報発信力を高めたいとの説明がありまし
た.
時間の関係上,議事に優先して,執行部,学会の現状や運営等に対する各評議員の意見の表明があり,順不同で以下
に纏めてみました.
1.遠隔地からは研究会や会議に参加し難いので TV会議などを考えて欲しい.
2.ホームページには技術ニュースなども掲載して欲しい.
3.欧文誌への投稿が少ないことは学会としてゆゆしきことで,てこ入れを.
4.学術講演会や研究会の日程や場所を十分考えて頂きたい.今回は会社では休日である.
5.研究会では,応用と共に基礎からの発信が重要.
6.学会運営がボランティアのみでは限度があり,広報,編集,講演会,広告収集等に渡り,プロ
としての事務局員の強いサポートが必要である.
7.事務局の体制強化が必要である.事務局長一人でかつ週1回勤務では連絡も遅い.
8.講演会や学術論文誌は紙ベースであるが,今後は脱却を考えてはどうか.
9.講演会に展示会併設は良いがフレックスに対応頂きたい.
10.若手のモーティベーションを上げるための施策が必要だ.
11.大学での公募情報の周知が重要.熱電関係のポジションはあるのか?
以上に対し,「いずれも重要な意見であり,執行部として出来ることから対応していきたい」と会長から返答があり,
閉会しました.
執行部は勿論,会員各位,委員会メンバー各位におかれましても貴重な意見を参考にして頂ければと思いました.
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日本熱電学会
表彰規程
(目的)
第1条
日本熱電学会表彰規程は,熱電科学と工学ならびに関連分野における発明,発見,研究と開発,並びに当学会
の発展に顕著な功績のあったと認められる本学会会員の表彰を目的として定めるものとする.
(名称)
第2条
表彰の名称は,日本熱電学会賞(以下,学会賞),日本熱電学会功績賞(以下,功績賞)日本熱電学会功労賞
(以下,功労賞),日本熱電学会研究奨励賞(以下,研究奨励賞),日本熱電学会欧文論文賞(以下,欧文論文
賞)および日本熱電学会講演奨励賞(以下,講演奨励賞)とする.
(表彰対象者)
第3条
各賞と各賞の表彰対象者を以下に示す.
1
学会賞は,熱電科学と工学の発展または当学会の発展に顕著な功労のあったと認められる本学会会員に授
賞する.
2
功績賞は,熱電科学と工学の発展に特に功績があったと認められる本学会会員に授賞する.
3
功労賞は,本学会の発展に功労があったと認められる本学会会員に授賞する.
4
研究奨励賞は,熱電科学と工学ならびに関連分野において卓越した業績を上げつつある会員(授賞時点で
満45歳以下とする)を奨励するために授賞する.
5
欧文論文賞は,熱電科学と工学の発展ならびに研究奨励のため,
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誌に掲載された原著論文で,本学会に著作権が帰属する優秀な論文ならびに著者に授賞する.
6
講演奨励賞は,本学会の学術講演会で,熱電科学と工学の発展に貢献しうる優秀な講演論文(ポスターセッ
ション論文を含む)を発表した本学会会員に授賞する.
7
1から6の条件を充たす物故者にも授賞,授与しうるものとする.
8
各賞の表彰対象者の詳細は理事会が別途定める細則に定める.
(選考方法)
第4条
各賞の選考方法の詳細は理事会が別途定める細則に定める.
(表彰)
第5条
表彰は,本学会学術講演会または総会において行い,表彰時点における本学会会長名の賞状を授与する.
(改廃)
第6条
本規程は,理事会の承認を経て改廃する.
附
則
1.本規程は,2009年(平成21年)8月9日理事会にて決定し,即日施行する.
日本熱電学会誌
第6巻
第2号(平成21年11月)
― 27―
日本熱電学会 表彰規程 細則 1
(日本熱電学会学会賞・功績賞・功労賞・研究奨励賞選考規程)
(目的)
第1条
日本熱電学会表彰規程第3条第1項に定める学会賞,第2項に定める功績賞,第3項に定める功労賞および第
4項に定める研究奨励賞の選考に関し,同規程第4条に基づき細則を定める.
(授賞候補者の資格)
第2条
授賞候補者は,本会会員であることを要しないが,授賞が決定された場合には受賞までに入会し本会会員であ
ること.
(推薦方法)
第3条
授賞候補者の推薦は,本会理事,評議員または3名以上の会員による連名とし,候補者の履歴書および推薦理
由書を付し本会会長に申し込むものとする.
(選考委員会)
第4条
授賞者の選考を行うため,表彰委員会のもとに学会賞・功績賞・功労賞・研究奨励賞選考委員会(以下,選考
委員会)をおく.
2
学会賞・功績賞・功労賞・研究奨励賞選考委員長(以下,選考委員長)は,表彰委員会委員長が兼ねるの
を原則とする.
3
選考委員長は,委員若干名を正会員の内から選任し表彰委員会に報告する.
4
選考委員は,欧文論文賞選考委員および講演奨励賞選考委員と重複する事を妨げない.
5
選考委員長と選考委員の任期は夫々1年とし,再任は妨げないが,連続する場合は4期を限度とする.
(選考方法)
第5条
選考委員会は,推薦された候補者中から適当と認める者を学会賞,功績賞,功労賞,研究奨励賞夫々の決定候
補者として選定する.
2
選考委員長は,決定候補者の履歴書,推薦理由書および選考報告書を添えて本会理事会にはかり,投票に
よって学会賞,功績賞,功労賞および研究奨励賞の授賞の可否を決定する.
3
前項の理事会は,有効投票の数が全理事の過半数に達したとき成立し,そのうち可とするものが3分の2
に達したとき授賞することが決定する.
4
学会賞,功績賞,功労賞および研究奨励賞のうちいずれかの賞を受ける適当な候補者がないときは,その
年度は授賞しない.
(表彰)
第6条
学会賞,功績賞,功労賞および研究奨励賞の授賞は,日本熱電学会表彰規程第5条の定めによる.
(規定改廃)
第7条
本細則は,理事会の議を経て改廃する.
2
附
本細則に定められていない運営上の細目は表彰委員会で決定する.
則
1.本細則は,2009年(平成21年)8月9日理事会にて決定し,即日施行する.
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日本熱電学会 表彰規程 細則 2
(日本熱電学会欧文論文賞選考規程)
(目的)
第1条
日本熱電学会表彰規程第3条第5項に定める日本熱電学会欧文論文賞(以下,欧文論文賞)の選考に関し,同
規程第4条に基づき細則を定める.
(表彰対象者)
第2条
表彰対象者は,定められた年度内(当該年度の論文は次年度の審査に回し,過去3年間)に Ma
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誌に掲載された論文で,著作権が日本熱電学会にある論文の内,優秀な原著論文を投稿した正会員,学生会員
および助成会員とする.
2
表彰対象者が当学会会員でない場合,内規で定めた日限内に筆頭著者が加入すれば,筆頭著者と他の加入
共著者のみを表彰対象者とする.
(欧文論文賞選考委員会)
第3条
表彰対象者を選考するため本表彰委員会に欧文論文賞選考委員会(以下,選考委員会)を置く.
(欧文論文賞選考委員長)
第4条
表彰委員会は,原則として欧文論文編集委員長を欧文論文賞選考委員長(以下,選考委員長)に選任し,理事
会に報告する.
2
表彰委員会は,欧文論文賞の選考の際は選考委員長を表彰委員会の一員として加える.
3
選考委員長は選考委員会を主導する.
4
選考委員長の任期は2年とし再任を妨げないが,連続する場合は2期を限度とする.
(選考委員数と任期)
第5条
選考委員長は,若干名の欧文論文賞選考委員(以下,選考委員)を選任し表彰委員会に報告する.
2
選考委員数は選考委員会内規(以下,内規)で定める.
3
選考委員の任期は1年とし,再任を妨げない.
(選考委員会内規)
第6条
選考委員会は,選考方法,選考基準等を内規で定め,これを理事会に報告する.
(表彰候補論文審査結果と授賞決定)
第7条
選考委員会は,表彰の対象となる欧文論文を審査した後,優秀な若干の論文と授賞者を決定し,審査結果を推
薦理由とともに表彰委員会に報告する.
2
表彰委員長は,これを表彰委員会で諮りその結果を理事会に報告する.
(授賞者への通知と氏名等の公示)
第8条
表彰委員会は,事務局を経て授賞該当者全員に授賞結果を通知する.
2
学会誌編集委員会は,授賞者全員の氏名等を学会誌に公示する.
(表彰)
第9条
表彰は,日本熱電学会表彰規程第5条の定めにより授与する.表彰文の中に欧文論文名,共著者全員の氏名,
所属,掲載論文誌名,年,巻,号,頁を記す.
(合同小委員会)
第10条 表彰委員長と表彰委員若干名,並びに選考委員長と選考委員若干名とで合同小委員会を形成し,適宜合同会議
を開き,本細則を検討する.
(改廃)
第11条 本細則は,理事会の承認を経て改廃する.
附
則
1
本規定は,2006年(平成18年)8月22日理事会にて改訂し,即日施行する.
2
本細則は,2009年(平成21年)8月9日理事会にて改訂し,即日施行する.
日本熱電学会誌
第6巻
第2号(平成21年11月)
― 29―
日本熱電学会 表彰規程 細則 3
(日本熱電学会講演奨励賞選考規程)
(目的)
第1条
日本熱電学会表彰規程第3条第6項に定める日本熱電学会講演奨励賞(以下,講演奨励賞)の選考に関し,同
規程第4条に基づき細則を定める.
(表彰対象者)
第2条
表彰対象者は,本学会の学術講演会で,熱電科学と工学の発展に貢献しうる優秀な講演論文(ポスターセッショ
ン論文を含む)を発表した正会員,学生会員あるいは助成会員であり,以下の資格を有する者とする.
1
発表年月日以降の4月1日時点にて,満35歳以下の者で,原則として,授賞までに本学会の講演奨励賞を
受賞した事の無い者.
2
講演論文の筆頭著者で,学術講演会参加登録された者であり,かつ口頭発表の場合は登壇発表した者.
3
講演申込み時に,本賞受賞を申請した者(各回1人1件のみ).
(講演奨励賞選考委員会)
第3条
表彰対象者を選考するため,表彰委員会に講演奨励賞選考委員会(以下,選考委員会)を置く.
(講演奨励賞選考委員長)
第4条
表彰委員会は,協議のうえ講演奨励賞選考委員長(以下,選考委員長)を選任し,理事会の承認をうる.選考
委員長は選考委員会を主導する.
第5条
選考委員長の任期は2年とし再任を妨げないが,連続する場合は2期を限度とする.
(選考委員数と任期)
第6条
選考委員長は,10人以上の講演奨励賞選考委員(以下,選考委員)を選任し,表彰委員会の承認をうる
選考
委員の任期は1年とする.
(選考委員会内規)
第7条
選考委員会は,選考方法,選考基準等を内規として定め,理事会に報告する.
(審査結果決定と通知および公示)
第8条
選考委員会は,表彰の対象となる講演論文を審査した後,選出して順位をつけ,推薦理由とともに表彰委員会
に提出する.
第9条
表彰委員会は,これら対象講演論文を審査し,順位をつけ,若干名の受賞者を決定し,その結果を理事会に報
告する.
(通知と公示)
第10条 表彰委員会は受賞該当者に通知する.学会誌編集委員会は,受賞者全員の氏名等を学会誌に公示する.
(表彰)
第11条 表彰は,日本熱電学会表彰規程第5条の定めにより授与する.表彰文の中に講演論文名と共著者全員の氏名,
所属,発表年月日を記す.
(合同小委員会)
第12条 表彰委員長と表彰委員若干名,並びに選考委員長と選考委員若干名とで合同小委員会を形成し,適宜合同会議
を開き,当規定を検討する.
(改廃)
第13条 本細則は,理事会の承認を経て改廃する.
附
則
1
本規定は,2004年(平成16年)7月22日理事会にて決定し,即日施行する.
2
本規定は,2004年(平成16年)8月19日理事会にて改訂し,即日施行する.
3
本規定は,2004年(平成16年)11月5日理事会にて改訂し,即日施行する.
4
本細則は,2009年(平成21年)8月9日理事会にて改訂し,即日施行する.
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日本熱電学会 細則 7
日本熱電学会 ホームページに関する細則
(目的と内容)
第1条
日本熱電学会(以下,学会という)の広報活動の重要な役割を持つ情報伝達媒体と位置付ける学会ホームペー
ジ(以下,学会 HPという)の運営,すなわち学会の情報発信と会員間の情報交流等の HPに関わる細則を定
める.
第2条
学会 HPの内容は,1)学会情報(学会自身の紹介,学会イベント会告,国際会議情報,学会資料の提供情報,
入会手続きのオンライン化),2)学会外への情報提供(熱電に関する教育的,啓蒙的解説や論説,Q& A),3)
学会会員相互の情報交流の支援,4)各種 I
T会議,5)広告等の場の提供(上記の内容であっても有料とするも
のすべてを含む),6)その他,学会 HPの目的に沿うと考えられるもの,とする.
(学会 HPのアドレス)
第3条
学会 HPのアドレスは,世界的な信用度から,/
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p/ドメインとする.
(運用責任者)
第4条
学会 HPの運用責任者は広報委員会委員長とする.実務責任者は学会事務局とする.
第5条
運用責任者が都合により任務を行うことができない場合に備えて,運用責任者は,運用責任者代行および実務
責任者代行をあらかじめ指名しておくことができる.
(掲載までの手順)
第6条
学会 HPの内容ごとに掲載に関する手順を,以下のように定める.
2
第2条1)および4)の内容に関する場合,情報発信者(主に,各種委員会委員長,会長,副会長,総務
理事,会計理事)は,学会 HPアップロード用原案(ワードファイル形式)(以下,HP情報原案という)
を学会 HP運用責任者に送付する.学会 HP運用責任者は,必要に応じて相互で協議の後,HP情報原案と
して決定し,速やかに実務責任者に送付する.実務責任者は速やかに学会 HPにアップロードする.実務
責任者は,HPアップロード要員を別に用意しておくことができる.原案提出からアップロードまで原則
1週間以内とする.情報発信者を通じ学会 HP運用責任者の許可を得た各種 I
T会議の参加者は,会議参加
者のみが読み書きできる会議室掲示板を使用することができる.
3
第2条2)および6)の内容に関する場合,情報発信者は,原則として広報委員会とする.委員会の必要
に応じて,広報委員長と会長・副会長・総務理事・会計理事とで協議する.
4
第2条3)の内容に関する場合,パスワード付き掲示板を会員は自由にアクセスできる.匿名投稿は認め
ない.学会の品位を著しく傷つけないこと,営利目的でないこと,個人の宣伝でないこと,特定個人・団
体を中傷しないこと,常識的な長さ・量であること.掲示板の管理責任は実務責任者にある.実務責任者
が,定期的に閲覧・管理し,問題があると判断される場合は,即時に学会 HP外に出し保留とする.実務
責任者は,保留した案件が発生した旨を,運用責任者に通知する.運用責任者はその良否を判断して,情
報発信者に学会判断により削除する旨通告するか,問題ないと判断された場合は,速やかに学会 HP上に
戻す措置をとる.
5
第2条5)に関しては,企業広告(場所,大きさ,期間),リンク,人事公募(結果報告を含む)などの内
容を含み,利用は会員に限定する.詳細は,「学会 HP取扱要領」として広報委員会が定める.その内容
は,理事会において,運用責任者が報告し,機会公平性の観点から,学会 HPおよび学会誌にその取扱要
領の内容を開示する.
(細則の改廃)
第7条
この細則は,理事会の承認を経て改定する.
附
則
この細則は,2009年(平成21年)6月26日から施行する.
日本熱電学会誌
第6巻
第2号(平成21年11月)
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日本熱電学会誌
第6巻
第2号(平成21年11月)
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日本熱電学会誌
第6巻
第2号(平成21年11月)
― 35―
日本熱電学会
第 4 回顧問会報告
総務理事
鈴木亮輔
第6回学術講演会の期間中である2009年8月11日(火)11:40-12:50に東北大学青葉山キャンパス青葉記念館
7階特別室(和室)にて第4回顧問会が開催されました.上村顧問,坂田顧問の出席があり,学会側から梶川会長,河
本,吉野両副会長,太田会計理事,鈴木総務理事,高木表彰委員長,武田学会誌編集委員長,舟橋国際交流委員長が同
席しました.会長挨拶の後,坂田顧問の発案により,議事に先立ち故太田時男顧問のご冥福を祈り黙祷しました.
坂田顧問から,40年の友人であり,昭和38,39年頃太田先生と懇話会のような研究会を
行ったことや,太田先生がフォノンドラッグの計算に先駆されたことが話されました.
上村顧問から,近況についてお話がありました.Ma
cパソコンの入れ替えにより Vi
ni
ng氏
より送られてくる I
TSニュースを音楽配信 I
Tuneと間違えて読み飛ばしていたとのエピソー
ドが紹介されました.ロシアの J
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s誌購読の日本担当の引き継ぎがうまくいっ
て喜ばれていました.
坂田顧問から以下のような話がありました.
「第6回総会に当たり,学会立ち上げ時の苦労が思い出された.特に第1
回総会では委任状が集まるかなどまで心配した」などのエピソードの紹介があり,
「会員数増加の現況は喜ばしい.会長
在任中にやり残したことのうち,1993年11月横浜での I
CTが本会発足の発端になったことから,近いうちに国際会議
を日本へ誘致して欲しい.会長交代で重責と緊張から解放されたが,分担と交代(会長任期1期を2年間とし,引き続
いては2期を限度とする)については今後もよく考えて欲しい.本の出版やテレビ出演などの広
報活動を良くやって下さっているが,PRビデオの作成などをさらに活発にやって欲しい.顕彰の
ために賞を作るのであれば協力させて欲しい.ZT>2となり,安価で安全な材料開発に頑張って
頂き,一期一会の精神で世界のトップを走って頂きたい」と期待が述べられました.
梶川会長から,大いに参考にさせて頂き,今後もご意見をいただきたいと,お礼が述べられま
した.
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学会報告
第六回日本熱電学会学術講演会報告
宮崎
譲(東北大学)
第六回学術講演会は,(財)熱・電気エネルギー技術財
して,懇親会が開かれました.懇親会には当初の予定を
団の共催をいただき,平成21年8月10日,11日の二日
大幅に上回る80名余り(学生アルバイトを含む)の方に
間,梶谷剛先生を現地実行委員長として,東北大学工学
参加をいただきました.宮城の特産を中心に,量より質
部の青葉記念会館において行われました.お盆前の時期
で用意したお酒と料理は瞬く間に無くなり,予定よりも
であることに加え,台風九号の接近による悪天候も重
早くお開きとなりました.その分,皆様には二次会で仙
なった中での開催となりましたが,二日間合計で151名
台の夜を満喫していただけたのではないでしょうか.
の参加がありました.参加者の内訳は,正会員79名,学
昨年に引き続き,今回も講演奨励賞の選出と表彰を会
生会員3
4名,一般33名,維持会員5名です.発表件数
期中に行うこととなりました.全講演の中で若手講演奨
は,口頭発表が37件,ポスター発表が28件の合計65件
励賞の候補となる講演の割合が71%と大変大きく,特に
でした.二日目に行われた特別講演では,東北大学の齊
ポスター発表では初日に審査が行われたため,ポスター・
藤英治先生より,
「スピンのゼーベック効果」と題するご
展示会場の狭さと効かない冷房の効果も加わって,大変
講演をいただきました.会場の定員は参加者の総数とほ
な熱気に包まれていました.閉会式では,講演奨励賞に
ぼ同じはずなのですが,椅子が足りなくなるほどの大盛
選出された4名の若手講演者に梶川会長から賞状が授与
況でした.初日の全講演終了後には,青葉記念会館の3
されました.次回の第七回学術講演会は,東京大学(現
階にあるカフェテリア「四季彩(しきさい)」に場所を移
地実行委員長:木村薫先生)で,また第八回学術講演会
日本熱電学会誌
第6巻
第2号(平成21年11月)
― 37―
は,北海道大学(現地実行委員長:鈴木亮輔先生)で開
はじめとする講演会委員の先生方,会計理事の太田英二
催される予定とのことです.
先生(慶應義塾大学),髙木研一先生(東京都市大学)な
二日間の会期中,キャンパスで始まった工事の進行状
らびに大瀧倫卓先生(九州大学)をはじめとする表彰委
況が読めずに,事前にお配りしたキャンパス地図と実際
員会の先生方,展示会を担当された三上祐史先生(産総
の会場までの順路が異なっていたり,足元が悪かったり
研),さらには,現地実行委員の先生方や前日から学生ア
と,参加者の皆様には大変ご迷惑をおかけいたしました
ルバイトとして活躍してくれました梶谷研究室の学生さ
ことをお詫びいたします.それでも,大きなトラブルも
ん達をはじめとする多くの方々によるご協力の賜物であ
なく,ほぼ予定通りに会議を進めることができましたの
り,ここに感謝申し上げます.
は,講演会委員長の山中伸介先生ならびに黒崎健先生を
学術講演会に参加して
齊藤広樹(長岡技術科学大学)
今回,第6回日本熱電学会学術講演会に初めて参加さ
大変勉強になった.クラスレート型化合物やホイスラー
せていただき,自分の知らない熱電材料や熱電材料を
合金については熱電の参考書等で読んだ程度知識しか無
使ったモジュールや新システムなど興味深いお話をたく
かったが,ポスターにおいてもかなりこれらの発表があ
さん聞くことができた.
り,今後さらに深く勉強してい必要があると感じた.特
私は1日目に新材料→クラスレート・ホイスラー→シ
別講演ではスピンによるゼーベック効果という新しい現
リコン系−Ⅰを,2日目にシリコン系−Ⅱ→モジュール・
象について知ることができ,大変勉強になった.機会が
新システム→特別講演の講演を聞いた.
あれば自分でもスピンゼーベック効果を確認する実験を
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,Si
C
シリコン系のセッションでは,βFe
Si
2,Mg
2S
行いたいと思う.
そして Si
Geといったよく知られたシリコン系熱電材料
ポスターでも,様々な熱電材料,モジュールについて
について研究報告がされていた.特に興味を引かれたの
見ることができた.焼結助剤を用いることによる希土類
は,“Na
Si融液を用いたβFe
Si
2多結晶体バルク体の合
ホウ化物の緻密化や,Na
,Agを添加した Mg
Si
2の熱電特
成と熱電特性”だった.Na
Si融液を用いることで,従
性など今後の私の研究の参考となりそうなポスターもあ
来法にくらべ低温でさらにアニール焼結等を必要とせず
り,大変勉強になった.私もポスター発表で今回の講演
にβFe
Si
2の合成が可能である.私見ですが,この方法
会に参加させていただき,たくさんの先生方から助言を
を用いると,熱処理条件次第では融液からの単結晶育成
頂いた.
も可能ではないかと考えている.モジュール・新システ
今回の講演会で,熱電材料について改めて深く勉強す
ムでは私の知らないような熱電を利用した高温用ヒート
ることができ,今後の私の研究に活かして生きたいと思
ポンプや太陽熱発電システムについて聞くことができ,
う.
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The28th I
NTERNATI
ONALCONFERENCE/
7th
EUROPEANCONFERENCEONTHERMOELECTRI
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(I
CT/ECT2009)参加報告
東京大学大学院
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ECT2009[C
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私自身は前回の国際会議には出席していませんが,本
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r氏]が,2009年7月26日か
国際会議でも,薄膜・超格子構造といったようなナノ構
ら31日までの日程で,
ドイツのFr
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gにある Co
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造を有する材料をキーワードとした研究が多く発表さ
にて開催されました.参加国36カ国,参加者はのべ500
れ,ZT=1を上回る材料が数多く報告されていました.
名を超え,発表件数も400件以上(内訳;Pl
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マテリアルでは,高温材料として期待されるシリサイド
2件,I
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:18件,Co
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:186件,Po
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のセッションが特に盛況でした.また,熱電材料やデバ
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:212件)と非常に規模の大きな国際会議と
イスの作製プロセスとして放電プラズマ焼結(SPS)が
な り ま し た.Or
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nは 3 つ の パ ラ レ ル セ ッ
有効であることを示す数多くの報告がありました.Y
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ションで行われ,また,Po
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nも2日にわ
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n氏の講演によると,本会議では45件もの SPSを用い
たり各100件の研究発表があり,活発な議論がなされて
た研究があったとのことです.今後もさらに SPSを使っ
いました.
た研究が増えていくものと思われます.本年の Go
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会場の1階には,AI
V社により実際に熱電素子を組み
賞は Ha
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氏,Y
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r賞は J
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込んだ試験自動車が展示されており,注目を浴びていま
そして Be
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r賞は Ka
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e氏とアジア圏の研
した.アメリカの BSSTグループらによるプロジェクト
究者の方々の活躍が目立ちました.
も Pha
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e4から5に移行する段階で,実際に自動車に熱
CT2010は,Sha
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次回の29 I
電素子を組み込み,試験走行を行った結果(最大発電量
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500W[ΔT=200℃])が報告されました.Fo
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d社での
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n氏が議長となり,中国の上海で2010年5月30日か
結果は,Hi
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ngで平均約350W,Ci
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ら6月3日の期間に開催予定であることが発表されまし
で平均90Wの発電量が得られたとのことです.アメリカ
た.
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におけるプロジェクトも実用化に向けて着実に進展して
写真1
会場となったフライブルグのコンサートホール
写真2
熱電発電ユニットを実装した実証車両が展示さ
れていました
日本熱電学会誌
第6巻
第2号(平成21年11月)
― 39―
日本金属学会2009年秋期(第145回)大会報告
太田道広(産業技術総合研究所)
日本金属学会2009年秋期(第145回)大会は,9月15
b
に検討しており,議論が残っているβZn
4S
3の熱電特性と
日から17日までの日程で京都大学吉田キャンパスを会
結晶構造の関係に多くの知見を与えている.また,リボン
場として開催された.筆者にとっては,初めての京都大
b
という特徴的な形状に成形できたことは,βZn
4S
3の応用
学訪問であり,数多くの個性的な立て看板から京都大学
範囲の可能性を広げることにつながる.
らしい自由な校風を垣間見た.熱電材料のセッションは
長岡技科大の萱村らからは,希土類金属六ホウ化物
17日に開催され,1件の学術貢献賞受賞講演を含む19
Yb
B6の熱電特性に関して報告があった.アルカリ土類金属
件の講演があった.この他にも,公募テーマシンポジウ
六ホウ化物は,n型の高い熱電出力因子を示すことが同グ
ム(金属間化合物材料の新たな可能性)やポスターセッ
ループなどの研究から明らかとなっている.今回の研究で
ションなどで,熱電材料に関する講演が7件程度あった.
は,B/
Yb組成比を制御した Yb
B6の単結晶を育成し,その
熱電材料のセッションでは,酸化物,ホウ化物,硫化物,
熱電特性を評価している.その結果,Yb
B6は p型の熱電特
n
b
ホイスラー化合物,タリウムテルライド,Yb
Al
3,Z
4S
3,
性を示すことが明らかとなり,さらに1×10 Wm K
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Si
C,Fe
Si
2,B
2T
3などの材料,および電子構造解析に基
を超える非常に高い熱電出力因子を示す可能性が見出さ
づく熱電材料の設計に関する報告がなされた.
れた.金属六ホウ化物には,熱伝導率が高いなどという
学術貢献賞受賞講演として,長崎大の羽坂から,
「液体急
−3
−1 −2
問題点が残っているが,高い熱電出力因子を示す nと p
冷 ZnSb系合金リボンの熱電的性質」と題した報告があっ
型のホウ化物熱電材料が揃ったことから,材料開発はも
た.この研究では,まず Znと Sbを高周波溶解し,次に片
ちろんモジュール開発への展開にも期待したい.
ロール法による液体急冷によって ZnxSb
3のリボンを作製し
紙面の都合上触れることができなかったが,ここで紹
ている.熱電特性に与える作製条件と Zn量の影響を,熱
介した以外にも興味深い講演が多くなされ,活発な討論
電物性の評価,組成の分析,微細構造の観察などから丁寧
が展開されたことを最後に報告しておく.
2009年秋の物理学会報告
小林
航(早稲田大学高等研究所)
日本物理学会2009年秋季大会は,熊本大学で2009年
黒木グループは中間スピン状態や高スピン状態における
9月25日から28日まで行われた.黒髪キャンパスは市
コバルト酸化物の低い熱起電力はそのアップスピンバン
街地にあるものの緑が多く,気温も天候も秋らしく変わ
ドとダウンスピンバンドの2キャリアモデルで定性的に
りつつあることが実感された学会となった.
説明できることを示した.
コバルト酸化物のセッションではいくつかの熱電変換
その他の話題としては,東北大の齊藤グループによっ
に関する報告があった.物質・材料研究機構の磯部らは
て酸化物磁性絶縁体に温度差を印加した時にスピン流が
)
Co
O2二重鎖を持つ擬1次元コバルト酸化物(Ca
1−x Na
x
生じるスピンゼーベック効果が報告され,熱電変換素子
熱起電力は80μV/
K程度と
Co
2O
4の熱電特性を報告した.
への応用の可能性が議論された.また産総研の福島らは
大きいが,電気抵抗率も数百 mΩc
mと大きく,試料の配
スピンバルブ構造におけるスピンペルチェ効果の可能性
向化が今後の特性向上の鍵となるだろう.また電通大の
をその解析によって示唆した.これらの効果が熱電変換
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技術にブレークスルーを引き起こすと面白い.また代表
なることが新潟大学の榮永らによって報告されており,
的な熱電変換材料である Bi
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a以上の高圧化で
2T
3が9GP
高効率熱電変換効果と超伝導の関連に興味が持たれた.
構造相転移を示し,それに伴い Tc=2.
8Kの超伝導体に
第70回応用物理学会学術講演会報告
滝口裕章(防衛大学校)
第70回応用物理学会学術講演会は,2009年9月8日
た.歪み Siは MOSFET等に使われるが,熱電特性と歪
から11までの4日間,富山大学で実施された.熱電変換
みの関連性については,報告が少ないため興味深かった.
のセッションは8日に行われ,発表は25件であった.私
Co
O2薄膜に
パナソニックの高橋らは,傾斜積層した Ca
x
の知る限り,熱電変換のセッション以外のシンポジウム
レーザーを用いて数十 nsという短時間,温度差とは直交
の中で,中部大の山口先生と名古屋大の太田先生が熱電
方向に60Vという大きな熱起電力を得ていた.センサー
に関する発表を行っていた.
としての応用を考えているようである.中部大の山口は,
熱電変換のセッションの中で材料としては,酸化物系
熱電変換材料の応用として自己冷却素子の有用性を報告
がもっとも多く,発表全体の1/
3以上であった.今回,
していた.自己冷却素子としては,通常の熱電変換材料
筆者特に興味深く感じた講演について述べる.金沢大の
と異なり,高い熱伝導率が求められることが興味深かっ
的場らは,Si
Geの多層膜と混晶膜の熱電特性について,
た.
その熱電特性の違いを歪みや超格子構造から考察してい
日本熱電学会誌
第6巻
第2号(平成21年11月)
― 41―
追
悼
顧問
太田時男先生のご逝去を悼む
去る2009(平成21)年6月9日,日本熱電学会顧問,
れ,水素エネルギー協会会長,国際水素エネルギー協会
横浜国立大学名誉教授,太田時男先生は癌のためご逝去
副会長などを歴任され,多数の優秀な門下生を育てられ
されました.享年83歳.昨年,ある会合で先生とご一緒
ました.
しましたとき,虫の知らせでもあったのでしょうか,稲
また,先生は千崎登季生のお名前で俳句を詠まれ,句
村ケ崎のご自宅に是非訪ねて来るようにと熱心に誘われ
集「草紅葉」を出版されましたほどの著名な俳人でもあ
ました.しかし,都合がつかずお訪ねしそこねたのが,
りました.
今となってはとても悔やまれます.
さて私と先生とのかかわりですが,1965(昭和40)年
先生の思わざる悲報に,本会会員はもとより,多くの
頃のこと,その数年前に発足したばかりの「エネルギー
教え子,学界,業界の方々と共に痛惜の念深く,人の世
変換懇話会,DEC(Di
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n)」でご一
の無情を感じている次第であります.謹んで先生の御霊
緒して以来のことで,40年を越える長いお付き合いで
に心から哀悼の意を表する次第であります.
す.我が家にも訪ねて来られて,盃を交わしたこともあ
顧みますと,先生は1
925(大正14)年11月3日金沢
りました.年齢も近く,心の底から信じ合える畏友でし
市でお生れになり,旧制の第四高等学校を経て,京都大
て,手紙を送るときは互いに宛名の下に「学兄」を添え
学理学部を1948(昭和23)年3月に卒業されたのち金沢
て送りあいました.私が日本熱電学会第1回会長のとき,
高師,防衛大学校,横浜国立大教授,同工学部長,同学
この会の顧問にお願いしましたところ快くお引受けいた
長を(2期,6年)歴任され1994(平成6)年3月退官
だき会の重石となっていただきました.
され名誉教授になられました.
また先生は,1964(昭和39)年には,既に「半導体熱
先生は半導体の理論的研究を始めとして,超電導,エ
電気」
(日刊工業新聞社)なる優れた啓蒙書を著わしてお
ネルギー変換,太陽・水素エネルギーシステムの提唱な
られ,その中で「フォノンドラッグ熱電能」についての
どで国際的に著名で「水素エネルギーの父」とまで慕わ
斬新な解説を世に先駆けてされていました.
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― 42―
その頃の熱電材料の ZTの値はまだ小さく,先生は熱電
4.ZTの改良が進めば太陽熱より上質な工場廃熱が回
発電から水素エネルギー問題に重点を移され,多くの研
究業績をあげられました.しかし,熱電と水素エネルギー
収できるだろう.
5.地熱や海洋温度差とのハイブリッドも有望になるだ
の両者を結ぶ研究もされ,例えば太陽集熱で熱電発電を
ろう.
行いこれで水を分解する(マーク V
1)などの研究は文部
6.ソフトで f
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eな物質で医用デバイスを開発する
省と通産省の特別エネルギー研究費でおこなわれまし
のは夢の一つである.フォノンを抑えるのは,わけ
た.
の な い こ と な の で,お そ ら く 低 温 で 機 能 す る
横浜国大での学長職の多忙さで,しばらくは熱電の研
AMTECの類を開発することになるだろうと思う.
究から遠ざかっておられましたが,しかし先生の「やむ
7.エネルギー貯蔵もかね,用途も広い水素エネルギー
にやまれぬ想い」から,横浜国大を退官後暫くして「熱
に変換するには,熱電が良く,熱電は出力が低圧の
電で水素を」の研究開発を振興するべく2006
(平成1
8)年
DCであり,かつ冷却水(電解液)を水素素剤に使
4月 Pur
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ue大学主催の国際シンポジウムで,
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えるので,是非開発を促進したいものだ.
この文献の最後に謝辞が書かれていますが,そのなか
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”なる論文を発表されました.それ以後はその論文の
で「ここに記した多くの方はすでに他界されたが,まこ
反応を待っている状態にありました.またこの研究を核
とに惜別の念に堪えない」と記されています.しかしそ
にして通産省から研究費を引き出すべく,私を伴って二
のように書かれたそのご当人が他界されたのは惜別の念
度ほど通産省に行き,その交渉を始めたところで先生が
もさることながら,残念至極と言わざるをえません.
発病され,この計画を頓挫せざるをえませんでした.
さて,先生の業績は嘖々たるもので,いろいろの賞を
ところで,先生は生前に色々の宿題や疑問を残して行
受賞されていますが調べ尽くせず,そのうちの二つのみ
かれました.その中のいくつかを先生の書かれた文献「熱
を代表的に記します.その一つは,2001(平成1
3)年春
電と水素に心酔-麗しく,懐かしき研鑽-」
:日本熱電学
に勲二等瑞宝章を受章されたものであり,もう一つは
会誌 Vo
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3,No
.
1,pp
25( J
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,2006)から順不同で抜
2009(平成21)年夏に先生没後,日本熱電学会より功績
き出してみましよう.これらの宿題や疑問は,日本熱電
賞を受賞されたものであります.
学会会員全員に投げかけられたものであり,先生の遺言
先生はお元気ならば益々,熱電と水素エネルギーの架
ともとれますので,煩雑さを恐れず転記しました.
け橋の研究を意欲的になされるであろうに,学会という
1.実績のある Si
Geベースで薄い層に重い半導体を工
よりも学界のためにまことに得難い人材を失ったもので
夫して重ね,ZTを温度700Kあたりで3にできない
あります.しかもご病気のことも知らず,逝去されまし
か?
たこともしばらくあとになって知りましたのは無念の一
2.高温 ZTの上限理論や技法は確立されているのだろ
うか?
高温 ZTの限界は na
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yとともに
言であります.もう一度,積もる話をしながら盃を交わ
したかったものです.
近づくのではないだろうか?
どうか先生,先生の残された宿題は会員一同で解決に
3.熱電研究は超電導状態の分野を除いて,もう基礎理
論で f
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sは残っていそうにもないの
邁進しますので,それを温かく見守って下さい.重ねて
先生のご冥福を心よりお祈り申しあげます.合掌
ではなかろうか?やはり効率的応用にこそ未来をか
けるべきだろう.
日本熱電学会誌
第6巻
日本熱電学会
顧問
坂田
亮
(慶応義塾大学名誉教授)
第2号(平成21年11月)
― 43―
太田時男顧問に功績賞を授与
日本熱電学会会長
梶川武信
我が国の熱電変換科学技術の草分け的存在であり,爾
来今日に至るまで,熱電材料科学分野で,ある時は,太
陽光エネルギーと水素エネルギーの接点に熱電を持ち込
んだ応用的分野やアルカリ温度差電池といった熱から直
接電力に変換する科学技術において,身をもってその発
展に尽力された故太田時男顧問(横浜国立大学名誉教授)
に対し,日本熱電学会が功績賞を授与することを,高木
研一表彰委員会委員長から,平成21年8月9日に開催さ
れた第24回理事会に提案され,全会一致で承認されまし
た.さる9月27日,太田陽子令夫人にお会いし,功績賞
の賞状を埋め込んだ楯を,ご仏前にお供えして,贈呈い
たしました.
太田時男先生の思い出
本会顧問・太田時男先生におかれましては,去る2
009年6月9日(火曜日)ご逝去されました.太田先生の
各方面にわたる多大な功績を偲ぶとともに,慎んでご冥福をお祈り申し上げます.
先生のご業績は,広い範囲に渡りますが,大きくまとめれば,エネルギー分野,特に,クリーンエネルギー分
野ということができます.中でも,現在でも次世代の主エネルギーとして研究されている水素エネルギーを,
1972
年当時から着目して研究されている事(「明日の燃料・液体水素」物性第13巻1972年7月号,3135頁)が,先
生の偉大さを表す大きな指標の一つであると思います.以前,私は先生とは直接の面識はなく,お名前を著書や
学術論文で拝見する程度でしたが,
2006年5月に先生のご自宅にお招きいただく機会がありました.そのとき先
生より,「現在の水素エネルギー研究開発は,水素応用に傾き,水素生産がなおざりにされている.高性能熱電
変換素子を作り,その発電電力で水の電気分解を行い,水素を生産するプロジェクトを立ち上げたい.」とのお
話をうかがった事が,今も大きな宿題として私の心に残っております.この大きな宿題をいただけた事を感謝し
つつ,心よりご冥福をお祈りいたします.
(防衛大学校・岡本庸一)
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一般論文
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2009)
日本熱電学会企画,熱電特集(第5回)
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日本熱電学会誌
第6巻
第2号(平成21年11月)
― 45―
日本熱電学会会員名簿の頒布
日本熱電学会は創立5周年を迎え,会員数も330名を越すに至りました.幾分遅きに失しましたが,この度,会員相
互の情報交換の便宜のため,会員名簿を刊行することになりました.会員各位におかれましては永久保存版の本名簿を
是非書棚にお備え下さいますようご案内申し上げます.なお,非会員には頒布を致しません.
記
名簿頒布価格:2,
500円(白黒両面印刷,A
4用紙にて36頁,個人名簿の頁はコピーすると「COPY」の文字が浮かび上
がる処理あり)
頒 布 開 始:6月下旬
名簿頒布先:個人情報保護のため厳密に本会会員(正会員,学生会員,維持会員,賛助会員)のみに限定
申
込
先:日本熱電学会事務局
〒2518511神奈川県藤沢市辻堂西海岸1125
湘南工科大学
工学部マテリアル工学科
眞岩研究室内
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費用振込先:日本熱電学会(送本時に請求書と共に費用振込先を連絡します)
以上
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日本熱電学会
事務局
年
___
月
___
日
御中
住所
〒
氏名
(署名又は押印)
日本熱電学会会員名簿注文書
私は日本熱電学会の会員であり,日本熱電学会会員名簿を1冊,頒布を受けたいのでここに注文致します.送本を受
けましたら別途,請求書によって代金をお支払い致します.なお,頒布を受けるに当たって下記の趣旨,注意を理解し,
遵守することを誓約致します.
記
この名簿は,会員相互の連絡を目的としており,この趣旨に賛同する会員から提出頂いた情報を基に作成されていま
す.従って,個人情報保護法の精神に則り,この名簿に掲載されている情報を,
1.上記目的外に使用しないこと,
2.掲載されているデータが,上記目的外に使用されることが無いように管理すること,
3.退会に際しては,名簿を再利用できない形で破棄すること,
を了解します.
以上
上記を理解し,遵守することを誓約いたします.
□ (←誓約される場合はチェックを入れてください)
送本先が上記と異なる場合は以下にご連絡下さい.
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― 46―
日本熱電学会誌
第6巻
第2号(平成21年11月)
― 47―
会員数(2009年10月26日現在)
正会員 278名
学生会員 57名
維持会員
アイシン精機(株)
アルバック理工(株)
SPSシンテックス株式会社
関西電力(株)
株式会社
コマツ研究本部
KELK
(株)テクノバ
株式会社トクヤマ
(株)デンソー
トヨタ自動車(株)
(株)豊田中央研究所
日産自動車(株)
(株)フェローテック
パナソニック電工(株)
株式会社
村田製作所
(株)ヤマハ
べテル
(株)ミツバ
賛助会員
株式会社
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― 48―
学会スケジュール
講演会・学会開催スケジュール (2010 年 3 月以降 )
開催日または会期および開催場所
主催学会 / 会合名および URL
2010 年 3 月 17 日(水)∼ 20 日(土)
応用物理学会/ 2010 年(平成 22 年)春季講演会
東海大学(神奈川県平塚市)
http://www.jsap.or.jp/activities/annualmeetings/regularmeeting.html
2010 年 3 月 20 日 ( 土 ) ∼ 23 日 ( 火 )
日本物理学会/「第 65 回年次大会」
【全領域】
岡山大学津島キャンパス
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jps/jps/bbs/future.html
2010 年 3 月 22 日(月)∼ 24 日(水) ( 予定 ) 日本セラミックス協会/ 2010 年年会
東京農工大学
http://www.ceramic.or.jp/csj/taikai.html
2010 年 3 月 28 日 ( 日 ) ∼ 30 日 ( 火 )
日本金属学会/春期大会
筑波大学
http://www.sendai.kopas.co.jp/METAL/INFO/info_256.html
2010 年 5 月 30 日(日)∼ 6 月 3 日(木) The 29th International Conference on Thermoelectrics
Shanghai, China
http://ict2010.its.org/
2010 年 9 月 14 日(火)∼ 17 日(金)
応用物理学会/ 2010 年(平成 22 年)秋季講演会
長崎大学 文教キャンパス
http://www.jsap.or.jp/activities/annualmeetings/regularmeeting.html
2010 年 9 月 23 日 ( 木 ) ∼ 26 日 ( 日 )
日本物理学会/秋季大会 [ 物性 ]
大阪府立大学
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jps/jps/bbs/future.html
2010 年 9 月 24 日 ( 金 ) ∼ 26 日 ( 日 )
日本金属学会/秋期大会
or 10 月 9 日 ( 土 ) ∼ 11 日 ( 月 )
http://www.sendai.kopas.co.jp/METAL/INFO/info_256.html
北海道大学
2010 年 11 月 14 日(日)∼ 18 日(木) ICC3 - 3rd International Congress on Ceramics
Osaka, Japan
Incorporating the 23rd Fall Meeting of Ceramic Society of Japan and
The 20th Iketani Conference
http://www.ceramic.or.jp/icc3/top.html
2011 年 3 月 24 日 ( 木 ) ∼ 27 日 ( 日 )
応用物理学会/ 2011 年 ( 平成 23 年 ) 春季講演会 ( 予定 )
(3 月 28 日 ( 月 ) 予備日 )
http://www.jsap.or.jp/activities/annualmeetings/regularmeeting.html
神奈川工科大学
2011 年 8 月 29 日 ( 月 ) ∼ 9 月 1 日 ( 木 ) 応用物理学会/ 2011 年 ( 平成 23 年 ) 秋季講演会 ( 予定 )
(9 月 2 日 ( 金 ) 予備日 )
http://www.jsap.or.jp/activities/annualmeetings/regularmeeting.html
山形大学 小白川キャンパス
2011 年 9 月 21 日 ( 水 ) ∼ 24 日 ( 土 )
日本物理学会/秋季大会 [ 物性 ]
富山大学
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jps/jps/bbs/future.html
2011 年 9 月 12 日(月)∼ 15 日(木)
Euromat 2011 - European Congress on Advanced Materials and
Montpellier, France
Processes
http://euromat2011.fems.eu/
詳細は各学会等の URL で確認願います.
日本熱電学会誌
第6巻
第2号(平成21年11月)
― 49―
編集委員会より
熱電変換に関する疑問・質問を募集しています
学会誌編集委員会では,熱電変換に関する疑問や質問に答える Q& Aコーナーを学会誌に設けております.熱電変換
の研究を始めたばかりの学生・大学院生の皆さんばかりでなく,何年も研究開発に携わっている方も,今更人に聞けな
い疑問をお持ちではないでしょうか?そんな疑問・質問をお寄せください.編集委員会でお寄せいただいた内容に詳し
い方にお願いし,誌面にて回答・解説をしていただきます.
質問は電子メールにて編集委員会へ送りください.メールアドレスは次の通りです.
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質問の形式は自由ですが,できるだけ簡潔に記述してください.匿名を希望する場合は,その旨ご指示ください.質
問は随時受け付けます.学会誌は3月,7月,1
1月末に発行しております.各号の発行2ヶ月前までに編集委員会に届
いた質問とその回答を掲載する予定です.ただし,内容によっては掲載までに時間がかかる場合,回答出来ない場合も
ありますことを予めご了承願います.
皆様からの疑問・質問をお待ちしております.
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日本熱電学会誌
第6巻
第2号(平成21年11月)
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日本熱電学会誌
第6巻
第2号(平成21年11月)
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編集後記
熱電学会誌編集委員会では武田雅敏編集委員長の下,会員の皆様に如何に興味を持って学会誌を読んで
頂けるかを合い言葉に,編集作業を行っています.その為に特集を組んだり,また新たな話題を探したり
と活動しておりますが,いかがでしょうか?編集作業は原稿依頼にとどまらず構成・校正もあり,素人集
団の我々としては大変ですが,編集委員会では新たな方々との出会いがあり,その意味で貴重な機会でも
あります.今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます.
武田(京)
日本熱電学会
会
副
会
役員一覧
長
梶川武信(湘南工科大名誉教授)
長
河本邦仁(名大)
吉野淳二(東工大)
総
務
鈴木亮輔(北大)
会
計
太田英二(慶大)
委員会委員長
監
事
欧文論文編集委員会
木村
学会誌編集委員会
武田雅敏(長岡技科大)
講演会委員会
山中伸介(阪大)
研究会委員会
小原春彦(産総研)
国際交流委員会
舟橋良次(産総研)
広報委員会
梶川武信(湘南工科大名誉教授)
表彰委員会
髙木研一(東京都市大)
福田克史(KELK) 小島
薫(東大)
勉(サレジオ高専)
日本熱電学会学会誌編集委員会
委 員 長
武田
雅敏(長岡技術科学大学)
幹
事
岡本
庸一(防衛大学校)
桑折
仁(工学院大学)
委
員
大杉
功(サレジオ工業高等専門学校)
太田
順子(株式会社小松製作所)
杉原
淳(杉原科学技術研究所)
武田
京三郎(早稲田大学)
山本
淳(産業技術総合研究所)
中津川
米田
博(横浜国立大学)
征司(神奈川大学)
日本熱電学会誌
第6巻
第2号
( 平成 21 年 11 月 )
The Journal of the Thermoelectrics Society of Japan, Vol. 6 No. 2 (November, 2009)
2009 年 11 月 30 日発行
編 集:日本熱電学会誌編集委員会
発 行:日本熱電学会 会長 梶川武信
連絡先:〒 251-8511 藤沢市辻堂西海岸 1-1-25
湘南工科大学工学部
マテリアル工学科 眞岩研究室内
事務局長 藤沢 登
TEL:0466-30-0236,FAX:0466-36-1594
E-mail:[email protected]
URL:http://www.thermoelectrics.jp
本号掲載の著作物の無断転載・複製は禁じられております.転載をご希望の方は事務局までご連絡ください
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