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上智大学理工学部 分析化学研究室を訪ねて

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上智大学理工学部 分析化学研究室を訪ねて
をは じめ, 機 械 工 学科, 電 気 ・電子工学科 , 数 学科, お
。
●●
よび物 理学 科 で 構 成 され て い る。 分 析化 学 講 座 は 1 9 6 7
年 無機化学講 座 か ら独立す る形 でス ター トし, 歴 代 の佐
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藤 弦 先 生 , 清 水 都 夫 先 生 , 池 内温 子 先 生 の も とで ,
ポ ー ラ ログ ラフをツー ル とす る電気化学 , 溶 液化学 の研
究 が行 われて きた。 日本 の電気分析化 学 を リー ドす る研
究 室 と して , 発 足 当時 か ら 1 9 9 6 年 まで 約 3 0 年 にわ た
り 「
ポ ー ラ ログ ラフ懇 談会J ( 日 本 ポ ー ラ ログ ラフ学会)
を主催 した実績 が ある。 そ の 間, ポ ー ラ ログ ラフィー だ
けで な く, ボ ル タ ンメ トリー ヘ も研 究 が展 開 され て い
る。 さ らに, 電 気化学用 プ ロー ブ に端 を発 した金属錯体
上智大学理 工 学部分析化 学
研究 室 を訪 ね て
の 溶 液 内化 学 反 応 につ いて も精 力 的 に研 究 して い る。
2 0 0 5 年 に早下 隆士 先 生 が着任 した こ とで , 超 分 子 をプ
ロー ブ とす る 分 子 認 識 化 学 が新 た に研 究 領 域 と して 加
わ った。
( 研究 概 要 〉
くは じ め に〉
早下教授, 遠 藤准教授, 橋 本助 教, 佐 藤 助 手 のス タ ッ
2 0 0 8 年 1 月 1 5 日 小 寒 の 入 り とあ って , 都 心 で も多
少肌寒 い冬 の一 日に上智大学 四谷 キ ャンパ ス にある理工
4名 ,M1 7名
学 部化 学科 分析 化 学研 究 室 を訪ね た。J R 中 央線 四 谷駅
の男女 比が ち ょうど半 々 とな って いる。 パ ソ コ ン作業 を
を降 り, 信 号 を渡 る と立 派 な 教 会 に圧 倒 され そ うにな
して いた女子学 生 さんが 「
分析研 究室 は女子 に も人気 が
る。 聖イグナチオ教会 であ る。 隣 は も う, 上 智大学 四谷
あるんです」 と教 えて くれ た。 ス タ ッフの 先 生方 の 人柄
キ ャ ンパ ス で あ る。 駅 か ら徒 歩 わ ず か 5 分 足 らず と
と言 いたげで あった。
いっ た と ころだ ろ うか。都 心 にあ る大 学 の利便性 は, 栃
フ に加 え , 博 士 課 程 1 名
( 社会 人 ) , 修 ± 1 1 名 ( M 2
) , 学 部 1 0 名 の総 勢 2 6 名 で あ る。 学 生
分析化学研 究室 の メイ ンテ ー マ を早下 先生 に伺 った と
木 に住 む 筆 者 に とって は 羨 ま しい限 りで あ る。 キ ャ ン
ころ, 分 析化学研 究室 で これ まで続 け られ て いた錯体化
パ ス に入 り理 工 学 部 の あ る 3 号 館 に 向 か う途 中, 英 語
で 談 笑 しなが ら通 り過 ぎて い く学 生 さん達 の グル ー プ に
学, 電 気化学 の研 究 ( 遠藤 先 生 と橋本先 生が 中心 に進 め
す れ違 った。文 科 系 の キ ャンパ ス とい うのは こうい うも
が 中心 に進 めて いる) を 融合 させ た 「
分離 と計測 の ため
の か と妙 に感 心 して しまった。 それ で も, 3 号 館 に入 っ
の 新 しい方 法 論 創 出」 を 目指 して い ます , と の こ とで
て ほっ と した のは, 館 内 に理 工 系 の雰 囲気 が漂 って いた
あ つた。 各 々の研 究概 要 は以下 の とお りで あ る。
て いる) と 超 分子 分析化 学 の研 究 ( 早下 先 生 と佐 藤 先生
か らか も しれ な い。
訪 間 の約束 時 間前 に分析化学研 究室 に到着 した ので,
早下先 生 の お部屋 で 待 たせ て も らうことに した。 早下先
生のお部屋 には応 接 スペ ー スが 設 け られてお り, そ こで
待 たせ て も らうことにな った。応 接 スペ ー スは学 生 さん
のパ ソ コン作業 スペ ー ス も兼ね てお り, 極 めて 機能 的な
空 間 にな って いた。授 業 を終 えて戻 られ た早下 先生 に伺
うと, ス ペ ー スが 狭 い ことが 都心 の大学 の悩 みです , と
に こやか に説 明 して いただ いた。
( 研究 室 の 沿 革
*〉
今 回訪ね た 上 智大 学 理 工 学部 は 1 9 6 2 年 に創設 され ,
化学科 は創設時 に設 置 され た。現在, 理 工 学 部 は化 学科
* 2008年 4月 に,既 設の 5学 科 (機械 工 学,電 気 電 子工
学,化 学,数 学,物 理学),お よび生命科学研究所が 3学 科
(物質生命理工学 ,機 能創造理 工学 ,情 報理工学)へ と再編
された。それに伴 い,化 学科 と物理学科の一部 とそ して生命
科学研究所が融合 し,物 質生命理工学科に改組 されてい る。
ぶんせき 2008 5
写真 1
光 散 乱 測 定 の 指 導 を され て い る早 下 先 生 , 佐 藤 先 生
2イJ
1)超 分子 分析化学 :
超分子 とは ,複 数 の分子 が共有 結合 とは 異 な る弱 い相
互 作用 で 結 びつ いた集合体 の総称 で あ る。構 成分子 の協
同的な相互作用 によって ,超 分子 には構 成分子 だ けで は
発現 しな い機 能 の 発 現 が期 待 で き る。 前 任 の 東 北 大 学
(寺前研 究 室)に お られ た とき に早下 先 生 らが 開発 した
ク ラウ ンエ ー テル 型蛍光 プ ロー ブ/シ ク ロデ キ ス トリン
複合体 は有 名 で ある。 この超分子 は水 中で カ リウムイ オ
ンに選択 的 に応答 しピ レンダイ マ ー 蛍光 を発す る。 最近
早下 先生が着 目して いるのは ボ ロン酸 を用 いる糖認識化
学 との こと。 ボ ロ ン酸 とジオ ー ル との反応 に超 分子 が示
す 動的 な分子認識機能 を組 み合 わせ る ことで ,従 来 の 人
エセ ンサ ー で は得 られ な い高選択 的な グル コー ス認識 に
写真 2 サ ンプルの調製を指導されている早下先生,橋 本先生
も成功 して いる。
2)錯 体 分析化 学 :
ル テ ニ ウムは,架 橋配位 子 と複核錯体 を形成す る こと
が知 られ て いる。 これ らのル テ ニ ウム錯体 の 中には,糖
や アル カ リ金属イ オ ン,プ ロ トン といった小 さな 分子 ・
イ オ ンに応答 し,そ の分光 学 的 あ るいは電気化学 的性 質
を変 える ものが あ る。 この応答原理 に基 づ いた機能性ル
テ ニ ウム ニ 核 錯 体 の 合 成 開発 を行 って い る。 この研 究
は ,「 量子 ビ ッ トの可能 性 を 目指 した混 合原 子価 状 態 の
分子 認識 制御」 として物理学科 との学 内共 同研究 に発展
してお り,極 低温 多核 NMRに
よ る解 析等 も進 め られて
いる。
3)電 気分析化 学 :
硫黄原子や アル コキ シ ド等 で架 橋 されたル テ ニ ウム ニ
写真 3 合 成実験の指導をされている遠藤先生
核錯体 の持 つ 分析化学 的な機能 を引き出す た め に,電 気
分光 化学 を駆使 した研 究 を行 つて いる。 また ,反 応 場 の
寄 与 を巧 み に利用す る とい う観 点か ら,デ ン ドリマ ー 上
へ集積 させ たルテ ニ ウム錯体 の電 気化 学特性 につ いて研
究 を展 開 して い る。
1 2 時 にな った。 食堂 の 入 つて い る新 築 され たば か りの
2 号 館 に案 内 して い た だ き, 昼 食 を ご馳 走 にな った。 5
一
階 にあ る食堂 は , 見 晴 らしが 良 く 流 ホテル の ラウ ンジ
のよ うで あ った。 早下 先生だ けでな く遠藤 先 生そ して橋
一
本 先生, 佐 藤 先 生 に もご 緒 して いただ いた。研究 の話
これ まで着実 に積 み重ね て きた錯体 分析化学 と電 気分
題 だ けでな く, 研 究 室 の歴 史や 四年 生 の歓 迎会, ゼ ミ合
析化学 の研究 手法 に超分子分析化 学 の手法 を融合 させ る
宿 な ど研究 室 で行 われて いる年 間イ ベ ン トの話 に花が咲
ことで ,新 たな方 法論創 出 を 目指そ うとい う早下 先 生 の
いた。そ の 中で も研究 室が立 ち上が ってか らず っ と続 い
考 え方 に,超 分子化 学 のパ イ オ ニ ア と して活躍 して いる
"を
“
感 じた。
早下 先生 の らしさ
て いる 同窓会 は, 研 究 室 の皆 さん全員が最 も大切 に して
研 究 の 話 か ら教 育 の 話 へ と話 題 が 発 展 して い つた の
で ,早 下 先 生 に研 究 室 の モ ッ トー を何 つて み た。 す る
研 究室全体 に流れ て いる和気 あ いあい とした雰 囲気 が納
と,「 木 に登 らず して森 は見 えず 」 との答 え を頂 い た。
哲 学 的 ですね とい う筆 者 の 反応 に対 して ,「 どんなテ ー
マで もまず や り遂げ る ことが 大切 とい う方針 をモ ッ トー
昼食後, 研 究室 を拝見 させ て いただ いた。 卒論発表が
近 い こともあ り, 学 生 さん達 が実験 して い る と ころにお
として い ます」 と噛み砕 いて 説 明 して いただ いた。 大学
究 内容 を説 明 して くれ た。 学 生 さん の応対 に研 究室 のス
の研 究 の 自由度 の 高 さを武器 に,時 間はかか るか も しれ
タ ッフ の教育的 な配 慮が伺 えて とて も気持 ちよか つた。
な い けれ ど,少 しで も新 しい発見 とそ の感動 を見 いだせ
る確 率 の 高 い テ ー マ を考 え ,学 生 にチ ャ レン ジ させ た
実験室 は どこもきれ い に整頓 され て いた。そ の ことを早
ー
下 先生 に伝 え る と, 人 数 に対 して , ス ペ スが絶対 的 に
ー
不足 して いるので , 学 生 さん 自 らが 日頃か らス ペ ス の
い, と のお 話 をに こや か にされ た。
一 通 り,研 究 室 の 概 要 を伺 つた と ころで ,ち よ う ど
244
いるイ ベ ン トとい う ことで あつた。 この 説 明 を伺 って ,
得 で きた。
邪魔 した。 学 生 さん 自 らが実験 の手 を休 めて, 自分 の研
使 い方 を工夫 して いる との ことで あ った。実験 の 説 明 を
ぶんせ き 2008 5
記念 に とい うことで ,皆 さんの集合写真 をお願 い した
と ころ,実 験 を して いた学 生 さん達 も手 を休 めて集 まっ
て くれ た。研 究 室 の ま とま りの良 さを感 じさせ る一 幕 で
あ った。 化 学 科 が 入 って い る 4階 の ホ ー ル で 写 真 を撮
影 した。撮 影 の準備 が で きる問,ホ ー ルか ら眺めた都 心
の 景色 につ いて 説 明 を して い た だ い た。JR線 を挟 ん だ
す ぐ近 くに迎賓館 が見 え,遠 くに 目を移す と都庁 な ども
は っき りと見 られ た。新 た に,都 心 の大学 を実感 した。
(お わ
り に〉
早下 先生が着任 され新体 制 にな って ス ター トした分析
化学研究 室 を訪 問 させ て いただ い た。 若 い研 究 室 とい う
前列右か ら遠藤先生,筆 者,早 下先生,橋 本先生。
最後列右か ら二人目が佐藤先生。
写真 4 研 究室の集合写真 (奥が分析化学研究室)
こともあ り,ス タ ッフ,学 生全員 で 新 しい研 究 を展 開 し
よ うとい う雰 囲気 にあふれて い た。超 分子化 学 の研 究 に
適進 して いる早下先 生 の姿 は まば ゆ いば か りで あ った。
超分子化 学 の面 白さにつ いて ,早 下先 生 らが 編 著 され た
昨 年 12月 発 刊 の 「
分 子 認 識 と超 分子 」 (三共 出版 )を
伺 つて いて 驚 い た のは , 合 成や分析操作 に使 う有機溶媒
は非常 に厳 し く管理 され て いる ことで あった。使用す る
紹 介 して い た だ い た (新刊 紹 介 が 3号 に掲 載 され て い
"を
る)。 早 下 先 生 をは じめ研 究 室 全 員 の 方 に ,“ 元 気
溶媒 だ けでな く, 廃 液 もそ の 日ご とに保管 し, 定 期 的 に
頂 いて 帰路 につ いた。 最後 で はあ るが ,今 回 の訪 問 を快
廃棄 して いる との ことで あ った。都心 にあるので , 消 防
く引き受 けて いただ いた分析化学研 究 室 の 皆様 にお礼 申
法 の規 制 以 上 に 自主 的 な管 理 を行 って い る との こ とで
し上げ る。
あつた。 周辺環境 へ の配慮 も怠 らな い とい う大学 の方針
〔
宇都宮大学大学 院工学研 究科 上 原伸 夫〕
に共感 を覚 えた。
ぶんせき 2008 5
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