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触媒(無機材料化学)の分野で電力技術研究所員に

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触媒(無機材料化学)の分野で電力技術研究所員に
2011 May Vol.462
R&D
R&D NEWS KANSAI
◆巻頭言
輝く星のエネルギーを地上へ
◆研究紹介
熱音響技術を活用した廃熱利用に関する研究 他
◆社内案内
触媒(無機材料化学)の分野で電力技術研究所員に
博士(工学)の学位授与
情報通信の分野で電力技術研究所員に
博士(情報学)の学位授与
5
平成 23 年 5 月 462 号
CONTENTS
5
2011 May Vol.462
巻 頭 言
輝く星のエネルギーを地上へ‥ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
1
研究紹介
研究開発室 電力技術研究所 電力基盤技術研究室(系統)
分散電源(太陽光発電)のシミュレーションモデル作成
~分散電源導入拡大時のシミュレーションに向けて~‥ ‥‥
2
研究開発室 電力技術研究所 電力基盤技術研究室(系統)
需要変動を考慮した電圧無効電力制御の開発研究
~短時間先需要予測と最適制御アルゴリズムの開発~‥
‥‥ 4
研究開発室 技術調査グループ
ステレオカメラを用いた
侵入監視システムに関する研究‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
6
研究開発室 電力技術研究所 電力基盤技術研究室(発電)
熱音響技術を活用した廃熱利用に関する研究‥ ‥‥‥‥‥‥‥‥
8
研究開発室 電力技術研究所 環境技術研究センター
発電所に来襲するミズクラゲ群の発生源特定
および対策に関する研究Ⅱ‥ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
10
研究開発室 エネルギー利用技術研究所 商品開発研究室
世界初の「軸流式水冷媒冷凍機」の開発について‥ ‥‥‥‥‥
12
社内案内
触媒(無機材料化学)の分野で
電力技術研究所員に博士(工学)の学位授与‥ ‥‥‥‥‥‥‥‥
14
SAI
N
A
K
S
情報通信の分野で電力技術研究所員に
D NEW
&
R
博士(情報学)の学位授与‥ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 15
II
R&D NEWS KANSAI
R&D NEWS KANSAI
巻 頭 言
輝く星のエネルギーを地上へ
大阪大学レーザーエネルギー学研究センター
センター長 疇地 宏
「熱い冬」
「燃える夏」という言葉が生まれる
ほど、地球温暖化の影響を体で感じるように
なってきました。夏には多くの方が暑さで亡く
なるという非常事態も起き、まさに地球温暖化
対策は待ったなしとなっています。この問題に
対処するには、生活スタイルを地球に優しくす
る程度の変革ではとても足りず、温暖化ガスを
排出しない大規模なエネルギー源が必要不可欠
です。現時点では原子力発電の割合を増やす以
外に解決策はありませんが、原子力発電で排出
される放射性廃棄物を出し続けることには、お
のずと限界があります。
これに対して核融合は、
温暖化ガスを排出せず、なおかつ放射性廃棄物
の排出量が原子力にくらべて圧倒的に少ないこ
とから、多くの人が人類の最終エネルギー源と
して期待を寄せています。
この期待に応えるべく、国際熱核融合実験炉
である ITER(イーター)の建設がフランスの
カダラッシュで始まりました。レーザー核融合
については、米国の国立点火施設 NIF(ニフ)
が完成し、人類初の制御された核融合点火によ
り核融合利得 10 - 20 を目指す実験が始まりま
した。これをエンジンのように繰り返してレー
ザー核融合炉を早期に実現するとの計画が発表
され、大変な注目を集めています。
一方、大阪大学レーザーエネルギー学研究セ
ンターは、全国の研究者の方々との共同利用・
共同研究により、星の内部にしか存在しないよ
うな高温で高密度の極限状態をつくりだし、実
験室宇宙物理、テラヘルツからガンマ線までの
光・量子発生と応用、相対論核科学などの「高
エネルギー密度状態の科学」を開拓するととも
に、最先端のレーザー技術により半導体製造技
術などの先端産業の発展に貢献しています。
これらの学術・技術基盤の上に、核融合科学
研究所と協力して新方式の
「高速点火」
レーザー
核融合を推進し、従来の方式の 10 分の1の規
模で、コンパクトで経済的な核融合炉の開発
を目指しています。この計画は「高速点火実証
実験 FIREX(ファイアーエックス)計画」と名
付けられており、全世界の電力の 1000 倍もの
レーザーパワーを核融合燃料に瞬時につぎ込む
ことにより、高速点火方式が本当に実用になる
のかを実証します。
これから数年の間に NIF による核融合点火
の実証と、FIREX による高速点火の原理的実
証の2つがそろいます。
これらの成功の暁には、
宇宙開発におけるアポロ 11 号が人類初の月面
着陸に成功したときと同じように、世の中の実
験室宇宙物理などの関連研究に対する見方を大
きく変えるものと思われます。またかつてアイ
ゼンハワー大統領が「原子力の平和利用」を宣
言し、世の中の流れが原子力発電の実用化に向
かったように、今後は核融合発電を目指す動き
が大きく加速することになるのではないでしょ
うか。
地球温暖化という問題は、個々の研究者の努
力で解決できるほど易しいものではありませ
ん。磁場核融合の研究者もレーザー核融合の研
究者も、
さらには他の科学技術に携わる方々も、
人類の直面する問題に力を合わせて立ち向うべ
きであると思います。関係者は「もっと光を」
を合い言葉に最善を尽くしますので、これまで
にも増して皆様のご指導、ご支援をお願い申し
上げます。
またこのエキサイティングな分野に、
一人でも多くの方が参入されることを期待して
おります。
略 歴
昭和 54 年大阪大学大学院工学研究科博士課程修了。昭和 55 年
大阪大学助手、昭和 56 年イェール大学助手、平成元年大阪大学
講師、平成3年助教授、平成 11 年教授を経て、平成 21 年より
大阪大学レーザーエネルギー学研究センター長。
2011 May No.462
1
研究紹介
研究開発室 電力技術研究所 電力基盤技術研究室(系統)
分散電源(太陽光発電)のシミュレーションモデル作成
~分散電源導入拡大時のシミュレーションに向けて~
電力系統の安定度や電圧安定性の解析に際しては、系統の電圧や周波数が変化した時に負荷供給系統
(以下、負荷)の有効電力と無効電力がどのように変化するかを模擬(モデル化)する必要があります。
これについては、従来、系統事故時等の観測データをもとに数式モデルを統計的に求めてきました。
今回、分散電源の導入拡大時のシミュレーションにおける負荷モデル構築に向けて、分散電源(家庭
用太陽光発電)モデルを作成しましたので紹介します。
1.研究の背景
電力系統の安定度や電圧安定
性の解析に際しては発電機・送
電線・負荷などを忠実に数式で
模擬(モデル化)する必要があ
ります。発電機や送電線に関し
ては機器・設備毎にかなりの精
度でモデル化できています。一
方、負荷については、系統の電
圧、周波数が変化した時に、負
荷の有効電力と無効電力がどの
ように変化するかを数式モデル
で表現する方法がとられてお
り、系統故障など大擾乱時の観
測データをもとに、そのパラ
メータ(数式モデルの定数)を
統計的に求めていました。
今 後、分 散 電 源の導 入 拡 大
による、安定度や電圧安定性へ
の影響を評価するには、負荷に
ついても分散電源が多数連系し
αP
⎛V ⎞ ⎛
β
⎞
P = Pi ⎜⎜ ⎟⎟ ⎜ 1 + P Δ f ⎟
100
V
⎝
⎠
⎝ i⎠
⎛V
Q = Q i ⎜⎜
⎝ Vi
⎞
⎟⎟
⎠
αQ
β
⎛
⎞
⎜⎜ 1 + Q Δ f ⎟⎟
100
⎝
⎠
た場合の特性を知る必要があり
ます。
これには、従来行っていた、
実系統の観測データから特性を
得ることが出来ないため、シ
ミュレーションにより負荷の特
性を求める必要があります。
2.研究概要
電力系統の解析時には、系統
の電圧・周波数が変化した時の
負荷の有効電力と無効電力の変
化を、第1図の数式モデルで表
現しています。
数式モデルの電圧特性定数
(αP、αQ)および周波数特性定
数(βP、βQ )は、従来、系統
故障などによる電圧・周波数変
化時の観測データから算出して
いました。
本研究は、シミュレーション
により、様々な種別の負荷機器
と分散電源が混在した系統の電
圧・周波数変化時の有効電力と
無効電力の変化を算出し、これ
をもとに特性定数を算出しよう
とするものです。
第2図は概念図であり、系統
に負荷の種別(抵抗負荷、誘導
電動機、インバータ負荷、分散
電源)毎のモデルを連系し、そ
の連系量を変えながらシミュ
レーションすることで上位系統
からみた負荷の特性を知ること
が出来ます。
今回は、
作成した分散電源(太
陽光発電)モデルについて紹介
します。
3.分散電源モデルの作成
(1)実機による測定
モデル作成にあたり、実機の
構成比率
系統
~
計測回路
パラメータ
V,F
電圧低下率
出力
P,Q,V,F
抵抗負荷モデル
構成比率
誘導電動機モデル
P, P:有効電力
,有効電力初期値
i
Q, Q:無効電力
,無効電力初期値
i
V ,V:電圧値,電圧初期値
i
Δf:周波数偏差
α P , α Q:電圧特性定数
β P , β Q:周波数特性定数
第1図 負荷の数式モデル
2
R&D NEWS KANSAI
構成比率
負荷特性
定数算出
インバータ負荷モデル
構成比率
分散電源モデル
第2図 シミュレーションによる負荷特性定数の算出概念図
R&D NEWS KANSAI
研究開発室 電力技術研究所 電力基盤技術研究室(系統)
分散電源(太陽光発電)のシミュレーションモデル作成~分散電源導入拡大時のシミュレーションに向けて~
特性を把握するため、当所所有
の分散電源(太陽光発電)実機
で系統の電圧が変化した時の有
効電力・無効電力の出力変化を
実測しました。
測定は、当所の 瞬 低 等 発 生
試験装置(写真1)を用い、第
3図の試験回路により行いま
した。
実機の測定結果の一例を第4
図に示します。
(測定風景を写
真2)
太陽電池模擬
直流電源
太陽光発電
パワーコンディショナ*1
DC
(単相200V)
PCS
瞬低等発生
試験装置
(三相200V)
↑
↑
↑
入出力及び内部
電圧電流計測
~
三相負荷
調整用抵抗
* 1:パワーコンディショナ(PCS)
太陽電池の直流電力を系統の交流電力
に変換する装置
第3図 実機試験回路
(2)モデル作成
シミュレーションツールとし
て電力中央研究所開発の瞬時値
解析プログラムである XTAP を
用いて分散電源モデルを作成し
ました。
作成したモデルは実機の測定
結果をもとにモデル内の制御回
路を設定し、モデルの特性(第
5図)が実機と同等であること
を確認しました。
第6図に作成したモデルとそ
の試験回路図を示します。
分散電源モデル
直流電源
交流系統
写真1 瞬低等発生試験装置
昇圧チョッパ
インバータ
第6図 分散電源モデル試験回路
4.まとめ
今回作成したモデルは分散電
源導入拡大時のシミュレーショ
ンに活用していく予定です。
また、今回のモデルは当所所
写真2 実機測定風景
電圧低下復帰
電圧低下発生
3500
有効電力
3000
有の太陽光発電をもとに作成し
ましたが、今後、特性の異なる
分散電源でも対応できるように
していく予定です。
P(W) Q(Var)
2500
2000
1500
無効電力
1000
500
0
-0.10
0.00
0.10
0.20
0.30
0.40
時間(sec)
第4図 実機の負荷特性例
執筆者
電圧低下復帰
電圧低下発生
3500
3000
有効電力
P(W) Q(Var)
2500
2000
1500
1000
無効電力
500
0
-0.10
0.00
0.10
0.20
0.30
時間(sec)
第5図 モデルの負荷特性
0.40
執 筆 者:小稲 智徳
所 属:研究開発室 電力技術研究所 電力基盤技術研究室(系統)
主な業務:電力系統解析業務に従事
連絡先
社用:97-7072
外線:050-7104-2537
研究に携わった人
研究開発室 電力技術研究所 電力基盤技術研究室(系統) 柴田 勝彦
2011 May No.462
3
研究紹介
研究開発室 電力技術研究所 電力基盤技術研究室(系統)
需要変動を考慮した電圧無効電力制御の開発研究
~短時間先需要予測と最適制御アルゴリズムの開発~
関西電力の電力系統における電圧制御は、事前に定められた調相設備のスケジュール運転により調整
しています。しかし今後、分散型電源の大量連系により運用が高度化・複雑化し、現在の制御方法で
は対応できなくなる可能性があります。そういった将来系統に対する対策として、短時間先の需要変
動を予測し、リアルタイムで電圧を最適制御する手法の研究開発を行っています。本稿では、新しい
最適制御手法を開発しましたので、長時間電圧シミュレーションの結果を含めて紹介します。
1.研究の背景とねらい
電力系統の電圧制御は、調相
設備や変圧器タップ等の電力設
備を制御することで系統の無効
電力(消費されない電力)バラン
スを調整して行います。
分散型電源の連系に伴い、将
来の電圧制御は複雑になること
が想定されますので、その対策
として系統状況の変化に柔軟に
対応できる電圧無効電力制御
(以
下、VQC といいます)手法の研
究開発を行っています。
2.基本的な制御方法
今回開発した VQC 手法の概要
を第1図に示します。電力系統
からの入力情報を元に計算機上
で電力系統を模擬し、その電力
系統の電圧制御に最適な制御量
を算出します。この際には計算
機の計算時間遅れや電力設備の
動作時間遅れを考慮し、時々刻々
と変化する電力系統の短時間先
の需要を予測して制御量を算出
します。この制御量を電力系統
にフィードバックして調相設備
や変圧器タップを制御すること
でリアルタイムに最適な電圧制
御が可能になります。
3.短時間先需要予測
時々刻々と変化する電力需要
には、短時間先(ex.10 分後)の
需要を予測し、先行制御するこ
とで対応が可能です。
4
R&D NEWS KANSAI
第1図 基本的なVQC手法
短時間先需要予測の方法とし
て、自己回帰モデル(以下、AR
モデルといいます)を用いること
にしました。AR モデルとは過去
と現在のデータから未来への傾
向が決まるという統計モデルで、
計算時間が短くリアルタイム制
御に適した方法です。しかし通
常の AR モデルは時間によって
統計量が変化しない定常過程に
用いられる手法のため、朝や正
午に需要が急変するという特徴
を持つ電力需要の予測にそのま
ま適用するのは難しいという問
題がありました。
この問題を解決するため、今回
AR モデルに階差処理を組み込む
ことにしました。すなわち予測に
用いるデータに、需要値そのもの
を用いるのではなく、前の時間か
らの需要変動値を用いることで、
次の時間で現在からどれだけ需
要が変動するかを予測する手法
となります。これにより需要の急
変による影響をある程度緩和する
ことができ、予測精度を向上させ
ることが可能になります。
階差処理を用いた AR モデル
による短時間先需要予測結果を
第2図に示します。青線がある
変電所の需要を24時間分予測し
た結果で、赤線が実際の需要を
表しています。予測結果は、朝
や正午の急変にも対応しており、
精度の高い需要予測が出来てい
ることが分かります。
⿒✢䋺ታ㓙䈱㔛ⷐ
⿒✢䋺ታ㓙䈱㔛ⷐ
㕍✢䋺੍᷹䈚䈢㔛ⷐ
㕍✢䋺੍᷹䈚䈢㔛ⷐ
0ᤨ
12ᤨ
24ᤨ
第2図 短時間先需要予測結果
4.最適制御アルゴリズム
VQC は離散的な変圧器タップ
や調相設備の制御量を最適に組
合わせることで、電圧を一定の
運用制約範囲内に維持する有制
約非線形混合整数計画問題に分
類されます。電力系統には複数
の変圧器や調相設備が存在する
ため、その組合せ数は膨大にな
り、組合せ問題を解くのに通常用
いられる数理計画法では対応が
難しいという問題がありました。
この問題を解決するため、今
回理論ではなく生物の動き等を
ルール化し、反復的に用いて解
を求めるメタヒューリスティクス
手法を VQC 問題に適用しました。
メタヒューリスティクス手法
として、代表的な PSO(Particle
Swarm Optimization)
とTS
(Tabu
Search)
を用いることにしました。
PSO の探索イメージを第3図に、
R&D NEWS KANSAI
研究開発室 電力技術研究所 電力基盤技術研究室(系統)
需要変動を考慮した電圧無効電力制御の開発研究~短時間先需要予測と最適制御アルゴリズムの開発~
f(x)
f(x)
PSO探索イメージ
PaLSCO探索イメージ
局所的最適解
1
2
局所的最適解
1
2
2
3
4
3
3
4
54
5
x
x
局所的最適解
局所的最適解
大域的最適解
第3図 PSO探索イメージ
f(x)
第5図 PaLSCO探索イメージ
TS探索イメージ
局所的最適解
1
5
4
3
2
x
局所的最適解
大域的最適解
大域的最適解
第4図 TS探索イメージ
TS の探索イメージを第4図に示
します。PSO は鳥や魚の群れの
行動をヒントに開発された多点
型解探索アルゴリズムで、お互
いの情報を共有しながらランダ
ムに飛び回ることで局所解に陥
ることなく組合せ最適解を算出
できます。対して TS は人間の記
憶過程にアナロジーを持つアル
ゴリズムで、近傍探索しつつ一
度記憶した解を選ばないことで
スムーズに組合せの解を算出で
きます。
しかし反面、PSO は電力設備
の動作回数が増え機器寿命に悪
影響を与えてしまう問題、TS は
一度局所解に陥るとリアルタイ
ム制御時間内での算出が困難と
いう問題があります。
そこで今回、
双方の長所を組合せることで問
題を解決する PaLSCO(Particle
Swarm Local Search Combined
Optimization)という手法を考案
しました。
PaLSCO の探索イメージを第
5図に示します。PSO と TS を用
いて同時に組合せ解を探索し、
TS の次回探索時には PSO と TS
のどちらか良い解から再び近傍
探索を行うという手法になって
います。これにより PSO のラン
ダム性を活かした局所解に陥ら
ない長所と、TS の近傍探索を生
かした組合せ最適解へスムーズ
に収束できる長所を両立させて
います。TS の近傍探索は機器動
作回数が少ないという特徴があ
るため、先に述べた問題を解決
することが出来ます。
VQC 問題にこれらの手法を適
用して第1式に示す目的関数の
値を最小にする組合せ最適解を
算出します。これにより VQC の
目的である電圧の運用制約違反
を解消しつつ、送電ロス削減や
調相設備・変圧器タップの動作
回数削減による経済的な電力系
統の運用も可能になります。
F ( xt ) = w0 Rerror ( xt ) + w1Ploss ( xt ) + w2 ΔN sc ( xt )
制約違反箇所数
送電ロス
調相動作回数
+ w3ΔNtap ( xt ) + w4 ΔVCentral ( xt )
Tap動作回数
電圧中央値偏差
(但し、w0~w4は重み係数)
第1式 VQC問題目的関数
5.長時間電圧シミュレーション
開発した VQC 手法の有効性を
検証するため、関西電力の基幹系
統モデルを用いて長時間電圧シ
ミュレーションを行いました。
検証のための指標として第2
式に示す運用制約違反率を策定
しました。違反率が0%に近い
ほど電圧維持性能が高いことを
示します。
運用制約違反数×100[%]
系統の運用制約箇所数×12※×24時間
※5分間隔(VQC制御周期)にて確認(60分/5分)
第2式 運用制約違反率
第1表 に 長 時 間 電 圧 シミュ
レーション結果を示します。従
来研究で開発した調相設備多断
面スケジュール適用時の運用制
約違反率は8%で、今回考案し
た PaLSCO 適用時の運用制約違
反率0.12%は、従来に比べ電圧
維持性能が高いことが分かりま
す。また送電ロス削減率も2%
以上あり、経済的な電力系統運
用の可能性を示せました。
第1表 電圧シミュレーション結果
VQC 手法
運用制約違反率[%]
送電ロス削減率[%]
PaLSCO
0.12
2.55
6.まとめ
今回、短時間先の需要を予測
することで、リアルタイムに最適
電圧制御可能な VQC 手法を開
発しました。
今 後は短時間先需 要予測手
法の改良により、VQC 手法の更
なる精度向上を図っていく予定
です。
執筆者
執 筆 者:下根 孝章
所 属:研究開発室 電力技術研究所 ‥
電力基盤技術研究室(系統)
主な業務:電圧無効電力制御に関する研究に従事
連絡先
社用:97-7071
外線:050-7104-2446
研究に携わった人
研究開発室 電力技術研究所 電力基盤技術研究室(系統) 矢壷 修
2011 May No.462
5
研究紹介
研究開発室 技術調査グループ
ステレオカメラを用いた侵入監視システムに関する研究
ステレオカメラとは単眼カメラ2台を一定の間隔で設置し、対象物を一定視差で捉えるステレオ方式
により、対象物の奥行き情報を取得することが可能なカメラです。本研究では、ステレオカメラの特
徴である人・物の高精度検出機能を活かし、電力設備の監視業務に適用可能なステレオカメラの構成、
および関連システムを研究しています。今回、昼間および夜間における侵入者検出性能を実証試験に
て確認しましたので報告します。
1.研究背景
ステレオカメラは3次元カメ
ラとも呼ばれ、撮影した写真か
ら立体像を再現できることか
ら、主にアミューズメント用途
で使用されてきました。近年で
は画像処理技術の発達を背景
に、安全面の用途に向けた研究
が活発に進められています。
安全に関わる技術に、ステレ
オカメラが研究され始めた理由
は、画像中の特定対象物を検知
する性能が優れている点にあり
ます。ステレオカメラでは、対
象物の奥行き情報が取得できる
ため、対象物の大きさ・形状を
高精度に検出できます。
本研究では、ステレオカメラ
の高精度検出機能を活かし、電
力設備用監視システムに適用す
るため、そのニーズに合致した
最適なカメラの組合せ、および
画像処理システムの研究に取り
組んでいます。
2.ステレオカメラを用いた侵
入監視システムの概要
本研究で用いたシステムの概
要を第1図に示します。ステレ
オカメラとして、垂直方向に約
1mの間隔で2台のカメラを設置
します。各々のカメラの撮影範
囲はほぼ同じであり、範囲内に
侵入した対象物を2台のカメラ
で捕らえます。対象物は、後に
説明する人物検出フローに従い、
人物であるか否か判断されます。
人物であった場合、片方のカメ
6
R&D NEWS KANSAI
第1図 ステレオカメラを用いた侵入監視システム概要図
ラはその人物を追跡する機能に
移行し、検出後の軌跡を平面図
上に記録します。また、もう片
方のカメラは人物の顔写真を取
得するため自動的にズームし、
得られた顔写真をデータベース
に蓄積します。侵入者への警告
手法、および関係各所への情報
伝達手法は、各所のニーズに合
わせ、柔軟な対応が可能です。
3.侵入監視システムの構成
(1)ステレオカメラ
本研究では、昼間監視用とし
てドームカメラ2台をステレオ
カメラに選びました。ドームカ
メラは夜間に対応できません
が、昼間時の高精度な人検知が
期待できます。また、夜間も含
めた監視用として、赤外線カメ
ラ1台とドームカメラ1台をス
テレオカメラに選びました。赤
外線カメラは昼間・夜間とも使
用可能で、昼間時はステレオ方
式による人検知を行い、夜間時
は赤外線カメラのみで人検知を
行います。用いたカメラの仕様
を第2図に示します。
(2)人物検出
ステレオカメラ監視エリア内
に対象物が現れると、第3図の
フローに従い人物か否か判定さ
れます。まず、背景差分法によ
り対象物をシルエットで検出
します。そして、シル エ ッ ト
領 域 で、HOG(Histograms of
Oriented Gradients)と 呼 ば れ
る画素の輝度勾配の特徴量を求
め、人物らしさを特定します。
次にステレオカメラの特徴を活
かし、人物らしき領域において
奥行き情報を計算し、立体物判
定を行います。立体的かつ人物
らしき画像であると判断された
場合に、その画像を人物として
認識します。
(左)ドームカメラ
製造元
品番名
解像度
ズーム
質量
ドームカメラ
日本ビクター
TK-S576B
640×480
光学10倍
2.4kg
(右)赤外線カメラ
赤外線カメラ
FLIR SYSTEMS(米国)
SR-19
320×240
デジタル2倍
2.7kg
第2図 カメラ外観および仕様
R&D NEWS KANSAI
研究開発室 技術調査グループ
ステレオカメラを用いた侵入監視システムに関する研究
第1表 実証試験概要
背景差分法により侵入対象物を検出
実証試験
HOG(輝度勾配)により人物らしさを特定
平面ステレオ法により立体物判定
人物検出
第3図 人物検出処理フロー
(3)人物追跡と軌跡の記録
検出した人物を追跡するには、
人物および近傍背景における色
分布の時間変化から、両者の境界
を識別する必要があります。この
処理は1台のカメラからの情報で
十分であるため、ステレオカメラ
のうち片方の1台が、人物追跡用
に使用されます。また、キャリブ
レーション設定により、画像上の
人物位置から、構内(x,y)座標
が求まるため、移動軌跡を構内平
面図に記録することが可能です。
評価項目
・人物検出性能
昼間性能試験 ドームカメラ 2台 ・人物追跡性能
・顔情報取得性能
夜間性能試験
ステレオカメラ構成
ドームカメラ 1台 ・人物検出性能
赤外線カメラ 1台 ・人物追跡性能
物の軌跡を良好に再現できるこ
とを確認しました。
次に、
(a)の写真左側の人物に
対して自動的にズームし、顔写真
を取得した画像を写真2に示しま
す。写真2では拡大率を抑えてい
ますが、性能試験にて、人物特
定が可能な顔情報を取得できる
ことを確認しました。
以上の個別性能について、連
続1週間の稼動状況を調査した結
果、人物は漏れなく検出できてお
り、奥行き50mまでの監視エリア
内の正常動作が確認できました。
(4)顔写真の取得
追跡用ではない方のカメラが
(x,y)座標に対して自動的に
ズームし、人物の顔を捕らえて
撮影します。得られた顔写真は
データベースに蓄積され、遡っ
て参照することが可能です。
(2)夜間性能試験
赤外線カメラによる人物検出
性能の結果を写真3に示します。
単眼カメラとしての性能ですが、
監 視エリア内の2人に対して、
適切に検出・追跡していること
を確認しました。なお、昼間条
件下でも同様の性能であること
も確認しています。
4.実証試験結果および評価
共同研究先の事業所にて実施
した試験概要を第1表に示しま
す。今回は平面図の代用として
航空写真を使用し、軌跡を描く
ことにしました。
5.まとめと今後について
実証試験にて、開発システム
が人物検知の基本性能を満た
すことを確認しました。一方で、
人物以外の鳥・小動物・草によ
る誤検知や、構造物の光反射・
(1)昼間性能試験
はじめに、人物検出性能なら
びに人物追跡性能の試験結果を
写真1に示します。
(a)の監視エ
リア内の2人に対して、的確に
検出し、追跡していることが分
かります。また、航空写真上に
軌跡を記録した結果、実際の人
(a)人物検出および人物追跡
(b)軌跡の記録
写真1 人物検出および追跡性能
写真2 顔写真取得(自動ズーム)
写真3 赤外線カメラによる人物検出
局所熱による誤検知を完全に回
避するに至っておらず、従来の
センサシステム等との組合せ検
討が必要と考えています。
執筆者
執 筆 者:山陰 大亮
所 属:研究開発室 技術調査グループ
主な業務:新エネルギー、情報通信に関する研究に従事
連絡先
社用:92-4647
外線:050-7104-0501
研究に携わった人
大阪観光コンベンション協会(出向) 井元 孝史
電力流通事業本部 工務・系統運用部門 送電グループ 室谷 真一
2011 May No.462
7
研究紹介
研究開発室 電力技術研究所 電力基盤技術研究室(発電)
熱音響技術を活用した廃熱利用に関する研究
低炭素社会実現に向けた取組の1つに未利用廃熱の有効活用があります。本研究では、近年注目され
ている熱音響技術を用いて、未利用廃熱から冷熱を取り出す技術に注目しました。そこで、ループ管
熱音響冷却システムの実験装置を製作し、その基礎特性の調査を行っています。
ん。しかし狭い流路を音波が伝
播する時は、音波は流路壁との
間で等温圧縮・膨張を行い熱と
の変換が行われます。熱音響現
象とは、このような熱エネル
ギーと音エネルギーが相互にエ
ネルギー変換される現象を言い
ます。
この熱音響現象は古くから知
られており、日本では吉備津
神社の鳴釜神事がそれにあた
り、
雨月物語に登場しています。
ヨーロッパではレイケ管やソン
ドハウス管が 19 世紀に報告さ
れています。
1.背景
地球温暖化を防止するため
に、全世界的に低炭素社会実現
に向けた様々な取り組みが行わ
れています。それらの1つに工
場等からの未利用廃熱の有効利
用があります。発電所では各種
燃料から取り出した熱を最大限
発電に利用していますが、利用
できない熱は廃熱として放出さ
れます。この未利用の廃熱を有
効活用することができれば、発
電所の低炭素化に貢献すること
ができます。
本研究では、近年注目されて
いる熱音響技術を用いて、未利
用廃熱から冷熱を取り出す技術
の検討を行っています。
3.ループ管熱音響冷却システ
ムについて
熱音響現象を利用したシステ
ムは数種類ありますが、本研究
ではその中からループ管熱音響
冷却システムに注目していま
す。その概略図を第1図に示し
2.熱音響現象とは
自由空間中を伝播する音波
は、断熱圧縮・膨張を行うため
外部との熱の変換はありませ
音
→
熱交換器2-1
(基準温度)
↑
音
熱⇒音
ます。本システムは、 ル ー プ
状に配したパイプに、2組のス
タックと呼ばれる蓄熱体と、ス
タックと熱交換を行うための熱
交換器からなる、非常にシンプ
ルな構成となっています。ス
タックは微細流路の集合体であ
り、ステンレスメッシュやセラ
ミックスハニカム(第2図)が
用いられます。第2図 の セ ラ
ミックスハニカムの流路径は
1mm 以下です。スタック1に
おいて、高温熱源として外部か
らの入熱を、低温熱源として常
温のような基準温度を、それぞ
れスタックの両端に与えます。
すると、スタック内に温度差が
設けられることにより、ループ
管内に熱音響現象による自励振
動が発生します。ここで熱から
音へのエネルギー変換が行われ
ます。発生した音波はループ管
を伝播して、スタック2に到達
スタック2
熱交換器1-1
入熱
→ 冷熱
熱交換器2-2
→
スタック1
熱交換器1-2
(基準温度)
音
↓
音⇒熱
←音
第1図 ループ管熱音響冷却システム概略図
8
R&D NEWS KANSAI
第2図 セラミックスハニカム
R&D NEWS KANSAI
研究開発室 電力技術研究所 電力基盤技術研究室(発電)
熱音響技術を活用した廃熱利用に関する研究
25
温度 [℃]
20
15
10
5
0
-5
-10
0
1
2
3
4
時間 [分]
第3図 実験装置外観
します。スタック2では、逆に
音から熱へのエネルギー変換が
行われ、上流側を基準温度に設
定すると、下流側は基準温度か
らの温度低下が生じることから
冷熱が得られます。この現象は
パルス管冷凍機と同じ原理で生
じています。このように、高温
の熱から低温の熱が得られるシ
ステムとなります。
本システムの特徴として、以
下のような利点があります。
・外燃機関であるため熱源を自
由に選択できる
・機械的な可動部がないため信
頼性が高い
・冷媒が不要
特に1つめの特徴から、本シス
テムは工場廃熱の有効活用に期
待されています。
4.実験装置と結果
ループ管熱音響冷却システム
の基礎特性を調査するため、実
験装置を製作しました。完成し
た実験装置の外観図を第3図に
示します。基本的な構成は、第
1図に示す概念図と同様です。
ループ管は全長約3mのステン
レス製のパイプです。高温熱源
第4図 ループ管冷却特性
としては、熱交換器1-1の代
わりにヒーターを用いて、ス
タックを加熱します。また、冷
熱を取り出す熱交換器2-2は
設置せずに、熱電対でスタック
の温度を計測しました。基準温
度は、恒温水槽で温度を調整し
た水を循環させることにより、
約 20℃に設定しました。ルー
プ管内はヘリウムとアルゴンの
混合ガスを大気圧で充填しま
した。
本装置の冷却特性を調べるた
めに行った実験結果を第4図に
示します。ヒーターのスイッチ
を入れた時からの、スタックか
ら得られる冷却温度の時間変化
を示しています。ヒーターの
出力は 200 Wに設定しました。
ヒーターからの入熱を受け始め
た後 30 秒前後すると、熱音響
自励振動が生じたことによる温
度低下が開始しています。その
後3分程度経過すると約-6℃
に到達し、それ以後も安定し
た冷却状態が得られています。
以上のように、基準温度から
26℃の温度差の冷熱を得るこ
とに成功しています。
5.今後の予定
今回製作した実験装置を用い
て、ループ管熱音響冷却システ
ムの基礎特性を把握するととも
に、性能向上についての検討を
行う予定です。また、本システ
ムは発電所への適用を目指して
開発を行っていますが、そのほ
かの適用先についても幅広く調
査したいと思います。
執筆者
執 筆 者:友田 俊之
所 属:研究開発室 電力技術研究所 電力基盤技術研究室(発電)
主な業務:燃焼技術・エネルギー関連技術に関する‥
研究に従事
連絡先
社用:97-7122
外線:050-7104-2484
2011 May No.462
9
研究紹介
研究開発室 電力技術研究所 環境技術研究センター
発電所に来襲するミズクラゲ群の発生源特定および対策に関する研究Ⅱ
発電所に来襲するミズクラゲによる取水制限事故対策として、平成 17 年から平成 20 年の4年間に
わたって来襲クラゲの主要発生箇所の特定とその対策を試行した結果を紹介いたします。瀬戸内海に
おけるミズクラゲの発生状況は年変動が大きく、その生態は未解明な部分が多いものの、成長期は大
きく付着期(ポリプ)と海遊期(エフィラからクラゲ)にわかれます、大量発生の要因となるポリプ
の増殖・発生期を抑えることにより発電所来襲量を減少できないか検討したものです。
1.はじめに
瀬戸内海は、潮汐による約6
時間周期の往復流が卓越し、上
げ潮流の流向は紀伊水道と豊後
水道からの満潮が出会う備讃瀬
戸西部を境に逆方向となる、な
お、播磨灘の恒流は、北部に時
計回り、南部に反時計回りの還
流が顕著で安定しているといわ
れています。沿岸のポリプ群か
ら発生したエフィラ幼生が厳し
い生存競争を生き抜きミズクラ
ゲ成体と成長する際、海域に成
長のためのエサが充分あれば上
下に泳ぐことのできるクラゲは
広い範囲を移動せずに繁殖可能
とも推定し、発電所周辺のポリ
プ群駆除が、来襲対策につなが
る可能性があると考え研究を進
めました。
2.沿岸調査結果
(1)ポリプ群
(コロニー)
の発見
H14 ~ 17 年の若狭湾の調査
においてポリプ群は漁港の護岸
や桟橋等の光のあたらない裏面
に存在することが判明していま
したが、瀬戸内海でも同様で、
護岸の裏面、ヨットハーバーの
桟橋や廃船、作業台船の裏面に
存在することを沿岸潜水調査等
により確認しました。結果を第
1図、第2図に示します。
H18 年 に 沿 岸 部 を 加 古 川 河
口周辺から牛窓沿岸まで調査し
た結果、約 10m2 以上のポリプ
群を9ケ所発見しました、その
10
R&D NEWS KANSAI
注:円内の数値はポリプ面積を示す
◎ 発電 所
ポリ プ採取 地点
ポリプ 無生 息地点
8月 8日
相生 野瀬
ボー トパー ク
揖
保
川
市
川
飾磨港フェリー乗場
壺根港
赤穂発電所
日生港
穂浪漁港 2 0 m
2
千
種
川
◎
5m 2
1 0m 2
◎
100m2
網干 浜
ボー トパーク
400m
5 0m 2
坂越漁港
姫路第二発電所
加
古
川
3 0m 2
2
室津漁港
赤穂港 松の鼻
妻鹿漁港
200m2
牛窓ヨットハーバー
播磨新島
ヨットハーバー
2 0m 2
第1図 H18瀬戸内海東部ポリプ調査結果
第2図 クラゲポリプ付着場所と付着例
なかで 50m2 以上の箇所を追跡
した結果、ポリプ群の面積は年
により若干変動することがわか
りました。
(第1表参照)
ンが連続運転となった時期を捕
らえて発電所に来襲した成体を
採取しました。サンプリング状
況等を第1表に示します。
(2)発電所へ来襲するクラゲの
採取
平成16,
17年度に姫路地区発
電所に頻繁に来襲したクラゲは、
沿岸調査を開始した H18年以降
来襲頻度が減少したものの、調
査期間中にロータリースクリー
H17年度
H18年度
H19年度
クラゲ採取
発電所名 採取日 個体数 採取日 個体数 採取日 個体数
7/5
37 6/29
20 9/12
41
姫二
※8/3
25 6/30
33 9/19
44
※は大量来襲 7/1
16
(補完)
AK6/30
40 H1 7/5
45
ポリプ群 H17年度(m 2)
H18年度(m2 ) H19年度(m 2)
室津
廃船 約100 廃船 約100強
妻鹿台船
台船 約400 …h18.12回収
妻鹿桟橋
(参考:新規約10)
播磨
桟橋 約200 桟橋 約200弱
第1表 クラゲ採取量とポリプ面積
注:ポリプ調査はH18,H19のみ実施
R&D NEWS KANSAI
研究開発室 電力技術研究所 環境技術研究センター
発電所に来襲するミズクラゲ群の発生源特定および対策に関する研究Ⅱ
第2表 H18年度 瀬戸内海播磨灘沿岸海域等CO1遺伝子型
平成17年度:姫 路第二発電所
採取日
タイプ
a
1
23
24
29
7月5日
2
1
1
1
平成18年度:赤穂・ 姫二発電所来襲クラゲ
8月3日
採取日
タイプ
a
1
1
b
1
23
24
29
41
43
平成18年度:姫路沿岸海域 ポリプ
赤穂
060630
3
姫二
姫二
姫二
060911 060912 060913
1
1
1
1
1
1
1
1
採取日
坂越
060809
壺根
室津
飾磨
060808 060810 060810
妻鹿
060811
2
1
1
1
23
24
29
41
43
播磨
060811
1
日生
060825
1
1
2
1
b
c
1
6
d
1
2
3
14
19
20
28
33
総合計
22
2
3
1
1
1
1
c
1
15
1
3
d
1
2
3
4
9
10
14
20
25
28
41
43
44
47
1
1
36
23
1
25
2
2
4
10
2
1
3
1
17
3
1
4
10
2
1
1
1
1
1
2
3
4
9
10
14
20
25
28
41
43
44
47
1
7
2
1
6
5
9
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
9
1
1
1
6
3
2
10
1
1
1
1
1
1
1
1
e
総合計
38
19
29
12
16
10
12
15
15
15
第3図 平成19,20年度 播磨灘沿岸ミズクラゲDNA(CO1)解析結果
3.成体とポリプの遺伝子比較
平成 18 年度の成体とポリプ
の CO-1 部位遺伝子解析による
遺伝子型一覧表を第2表に、平
成 19,20 年度解析の遺伝子組
成分布図を第3図に示します。
遺伝子型をタイプ分けした結
果、播磨灘では大きく4グルー
プ(a, b, c, d)に分けられること
がわかりました、その組成をみ
ると比率の違いやa、c型が出
現する箇所としない箇所があ
ることがわかりました。また、
H18,19 年度いずれにおいても
成体、ポリプと も、 当 海 域 で
最も優占種する種は d-1 型であ
一の遺伝子型が多くみられるポ
リプコロニー群は、室津と妻鹿
地点で、組成比の比較において
も妻鹿地点との類似がみられた
ため、妻鹿地点が姫二に来襲す
るクラゲの発生源の一部の可能
性が高いと推定されました、こ
のため、妻鹿漁港にある台船の
回収を行いました。
り、第2優占種は、成体の来襲
時期やポリプの場所により異な
る傾向があることがわかりまし
た。遺伝子型の表をみると姫路
第二発電所に来襲する成体と同
15
4.まとめ
本研究により、沿岸各地にミ
ズクラゲの繁殖棲家(ポリプ群)
が数多く存在すること、遺伝子
データをさらに蓄積することによ
り成体とポリプの遺伝子突合せ
により、おおまかなポリプの地域
分類が可能になるものと推定さ
れました、今後、国プロ等他の
研究により、ミズクラゲの海遊
時の生態等が更に解明されれば、
発電所に来襲したミズクラゲの
主要発生源を特定して、定期的
に駆除したり、付着予防を施す
ことにより来襲量を削減する対
策が有効になるものと示唆され
ました。
最後に、本研究を共同で実施
した中国電力㈱エネルギア総合
研 究 所、現 地 調 査の実 施にあ
たりご協力いただいた発電所お
よび地元漁協、㈱セシルリサー
チなど多くの方々に感謝いたし
ます。
*1 CO-1はmitochondrial cytochrome c oxidase subunit one の略として用いた。
執筆者
執 筆 者:渡邊 郁夫
所 属:研究開発室 電力技術研究所 環境技術研究センター
主な業務:環境保全・リサイクル関係の研究に従事
連絡先
社用:83-4071
外線:050-7104-9180
研究に携わった人
研究開発室 電力技術研究所 環境技術研究センター 宮坂 均、原 昌久
2011 May No.462
11
研究紹介
研究開発室 エネルギー利用技術研究所 商品開発研究室
世界初の「軸流式水冷媒冷凍機」の開発について
当社は、このたび、神戸製鋼所、東京電力、中部電力と共同で、デンマークエネルギー庁の支援と、
財団法人電力中央研究所、デンマーク政府から認可された非営利研究所である DTI、および、デンマー
クの冷凍機メーカーであるジョンソン・コントロールズ・デンマークの技術協力を得て、ビルや工場
の空調や冷却プロセスなどに使用される冷凍機として、自然冷媒である「水」を採用した「軸流式水
冷媒冷凍機」の試作機を世界で初めて完成させ、実用化に向け大きく前進いたしました。以下に、そ
の概要を紹介します。
1.はじめに
地球温暖化問題を背景に、近
年開発された空調用冷凍機や冷
蔵庫等の冷媒には、主に「フロ
ン系冷媒の中では環境に優しい
HFC 冷媒」や自然冷媒である「二
酸化炭素」
、
「アンモニア」
、
「イソ
ブタン」等が採用されています。
しかし、
「二酸化炭素」を冷媒と
して用いると作動圧力が高く、
「アンモニア」については毒性が
あるという課題があり、また、
「イソブタン」については可燃性
があるという課題があります。
「水」を冷媒として使用するとこ
れらの課題が一気に解決でき、
また、性能的にもフロン系冷媒
と同等であるため、水は究極の
自然冷媒であるといえます。
2.開発のポイント
(1)水冷媒冷凍機専用の軸流
式圧縮機の開発
「水」を冷媒とした冷凍機は、
ことにより軸流式圧縮機を用い
た水冷媒冷凍機の試作機を世界
で初めて完成させました。
これまでも遠心式圧縮機を搭載
した冷凍機がありましたが、大
容量機においては圧縮機の構造
上、装置全体の小型化が困難と
いう課題を有しておりました。
そこで、水冷媒冷凍機専用の
軸流式圧縮機の開発を試み、世
界で初めて実用化レベルまで開
発し、大幅なコンパクト化を達
成しました。
水冷媒冷凍機の冷媒である
「水」すなわち、蒸発した水蒸気
を大量に圧縮するためには遠心
式圧縮機よりも軸流式圧縮機の
方が大幅なコンパクト化が達成
される事は知られていました。
しかし、これまでは、この軸流
式圧縮機を冷凍機に採用可能な
レベルまで低コスト化を図るこ
とが非常に困難でした。そのた
め軸流式水冷媒冷凍機の開発は
行われていませんでしたが、今
回、水冷媒冷凍機専用の新たな
軸流式圧縮機の開発に成功した
(2)軸流式圧縮機の特徴
軸流式圧縮機は、気体を回転
翼の軸方向から吸込み、軸方向
に昇圧させる仕組みを持つ圧縮
機で、ジェット機のエンジンと
類似の構造を有しており、以下
のような特徴があります。
a.遠心式圧縮機に比べ、同一
外径の場合は、より多くの風量
を処理することができコンパク
トで大風量処理に適している。
b.遠 心式圧縮機に比べ1段当
たりの翼負荷(差圧)が小さく、
高い効率が得られ動力の節減
にもなる。
c.各 段の間に、遠心式圧縮機
のような特別な流路が不要で
あり、構造が簡素で、各段当
たりの軸方向長さが短くなり
コンパクトとなる。
蒸発器
凝縮器
(間接熱交換器)
(間接熱交換器)
冷水(入口)
12℃
軸流圧縮機
冷却水(入口)
32℃
冷却搭
モータ
冷水(出口)
7℃
写真1 軸流式水冷媒冷凍機(間接熱交換器タイプ)
12
R&D NEWS KANSAI
冷水循環ポンプ
冷却水循環ポンプ 冷却水(出口)
37℃
第1図 システム概略図(間接熱交換器タイプ)
R&D NEWS KANSAI
研究開発室 エネルギー利用技術研究所 商品開発研究室
世界初の「軸流式水冷媒冷凍機」の開発について
蒸発器
凝縮器
(直接熱交換器)
(直接熱交換器)
冷却水(入口)
冷水(入口)
軸流圧縮機
12℃
32℃
冷却搭
モータ
写真2 軸流式水冷媒冷凍機(直接熱交換器タイプ)
冷水(出口) 冷水循環ポンプ
冷却水循環ポンプ
冷却水(出口)
37℃
7℃
3.開発機の特徴
(1)圧縮機の軸受潤滑剤として
も水を採用
通常の軸受では潤滑剤として
油を使用する事が一般的です
が、本試作機では、システム内
への油の混入を防止する観点か
ら、水を潤滑剤として採用した
新たな専用軸受を開発しました。
(2)多様なニーズに対応可能
他の冷凍機と併用できる「間接
熱交換器タイプ」と単独運転用の
「直接熱交換器タイプ」の両タイ
プの開発により、多様なニーズに
対応することが可能となりました。
「間接熱交換器タイプ」とは、
従来のフロン冷媒冷凍機に採用
されている熱交換器と同様に、冷
媒である「水」の流路と冷水、冷
却水の流路が分かれている(伝熱
管の管壁によってお互いが隔てら
れている)熱交換器を使用したタ
イプの水冷媒冷凍機のことです。
冷媒としての「水」は、
「蒸発器~
軸流圧縮機~凝縮器~蒸発器」
を循環しています。この部分が従
来のフロン冷媒から「水」に代わ
りました。
(写真1、第1図)
「直接熱交換器タイプ」とは、
冷媒である「水」の流路と冷水、
冷却水の流路を分離する必要が
ないため同じ空間内で混合させ
て熱交換させる熱交換器を使用
したタイプの水冷媒冷凍機のこと
です。冷媒としての「水」は、
「蒸
第2図 システム概略図(直接熱交換器タイプ)
発器~軸流圧縮機~凝縮器~蒸
発器」を循環していますが、冷水・
冷却水と混合されながら循環さ
れます。
(写真2、第2図)
(3)大幅なコンパクト化
水冷媒冷凍機専用の軸流式圧
縮機の開発により、デンマーク
の LEGO 社のオモチャ工場に設
置されている同容量の冷凍機(外
形寸法は、長さ12.2m、幅5.2m、
高さ10.9m)と比べ、現時点にお
いて設置面積が直接熱交換器タ
イプで約3分の1、間接熱交換
器タイプで約2分の1と大幅なコ
ンパクト化を達成しています。
(4)フロン冷媒冷凍機並みの
高性能化
目標冷房・冷却性能(COP)は、
間接熱交換器タイプで約4.8、直
接熱交換器タイプで約5.4を達
成見込みです。また、インバー
タ制御により部分負荷性能向上
を実現する予定です。
「軸流式水冷媒冷凍機」の仕様
は第1表の通りです。
4.今後の予定
今後、試作機の更なる改良と
信頼性確認運転を継続し、本開
発機の平成 25 年4月頃の市場
投入を目指してまいります。
第1表 「軸流式水冷媒冷凍機」の仕様
熱交換器タイプ
間接熱交換器タイプ
直接熱交換器タイプ
目標冷却能力
約 1,600k W
約 1,800k W
目標COP※ 1
約 4.8
約 5.4
現状寸法※ 2
長さ 7.0m×幅 3.9m×高さ 4.2m
長さ 6.6m×幅 2.8m×高さ 3.5m
圧縮機
高圧ガス保安法
に基づく手続き
冷凍保安責任者
水冷媒冷凍機用軸流式圧縮機
不
要
不
要
※1 冷水入口/出口水温12℃/7℃、冷却水入口/出口水温32℃/ 37℃の条件における値。 (設計上の目標値であり、今後、性能試験で確認していく予定となっています。
)
※2 現状の試作機寸法であり、実際の量産機では更なるコンパクト化を目指す予定です。
執筆者
執 筆 者:菅野 啓治
所 属:研究開発室 エネルギー利用技術研究所 商品開発研究室
主な業務:業務産業用機器開発に従事
連絡先
社用:97-7252
外線:050-7104-2630
2011 May No.462
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社内案内
研究開発室 電力技術研究所 プロジェクト研究室
触媒(無機材料化学)の分野で電力技術研究所員に
博士(工学)の学位授与
電力技術研究所 プロジェクト研究室の渡邊研究員は、平成 23 年3月、京都大学から博士(工学)の
学位を授与されました。学位論文のテーマは「メタンによる一酸化窒素の選択的接触還元用ガリア-
アルミナ触媒」であり、京都大学大学院工学研究科物質エネルギー化学専攻 井上正志 教授のご指導の
もとに行われ、脱硝触媒の構造などの解析・評価について研究成果を取りまとめたものです。
学位論文「メタンによる一酸化窒素の選択的接触
還元用ガリア-アルミナ触媒」の概要
現在、火力発電所などから発生する窒素酸化物
の除去はアンモニアを還元剤とする脱硝反応によ
り行われています。このアンモニアに代えてメタ
ン(天然ガスの主成分)を還元剤に用いることが
出来れば、天然ガスは火力発電所の燃料の一つで
あるため、アンモニアの貯蔵設備が不要となるう
え、アンモニアに比べ天然ガスの方が安価である
ことなどの利点が考えられます。
私が在学した井上研究室では、有機溶媒を用い
て反応物を圧力容器中で加熱処理することを特徴
とする無機材料の合成法(ソルボサーマル反応)
により調製したガリア-アルミナ複合酸化物が、
メタン脱硝反応に高い活性を示すことをすでに見
出しています。
本研究では、実用化に向け、より簡便な触媒調
製法を開発するという観点から、無機原料を用い
る共沈法および噴霧熱分解法によりガリア-アル
ミナ触媒を調製し、得られた触媒の活性や物性を
検討しました。その結果、触媒の結晶構造や細孔
構造に関する新しい知見を数多く見出し、触媒活
性との因果関係を突き止めました。たとえば、共
沈法で調製した場合、ある特定の調製条件で得ら
れた触媒が高い活性を示しますが、その触媒の前
電気炉
フィルター
空気
空気
アルミニウム原
料などの水溶液
超音波振動子
H2O
H2 O
霧(ミスト)
H2 O
H2 O
(乾燥)
NOx
NOx
NOx
NOx
粒子(この粒
子を別途、高
温で焼き、触
媒に用いる)
(熱分解)
第1図 噴霧熱分解装置の模式図
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R&D NEWS KANSAI
駆体の段階でガリ
ウム原子とアルミ
ニウム原子が結晶
中に均一に分散し
ていることを新た
に見出し、それが
高い触媒活性を示
す要因のひとつで
あることを突き止
め ま し た。 ま た、
噴霧熱分解法(第
1図)で調製した
場合、アルミニウ
ム由来の特殊な粒
子構造を形成することを見出し、それが触媒活性
に与える影響などを示しました。
噴霧熱分解法は、
燃料電池(SOFC)の電極材料の合成などで利用さ
れている手法で、これまでに触媒を調製した報告
が少ないことから、本研究により貴重な実験結果
を発表したと考えています。また、このような触
媒開発とは異なり、触媒に吸着するガス種を分析
して、メタン脱硝の反応機構を提案しました。さ
らに、プロピレンを吸着させた触媒に紫外可視光
を照射した際の特定の吸収波長強度を把握するこ
とで、触媒表面に存在するガリウム原子の周辺の
酸素数を評価する、これまでにない新しい物性評
価手法を確立しました。
このように、本研究において、ガリア-アルミ
ナ触媒の高い活性を示す要因を把握し、メタン脱
硝の反応機構を解明できたことは、今後の触媒性
能の改良や経年劣化対策の検討に大きく寄与し、
メタン脱硝の実用化に大きな進展をもたらしたと
考えています。
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社内案内
研究開発室 電力技術研究所 IT サービス研究室
情報通信の分野で電力技術研究所員に博士(情報学)の学位授与
電力技術研究所 IT サービス研究室の金岡泰弘研究員は、平成 23 年3月、京都大学から博士(情報
学)の学位を授与されました。学位論文のテーマは「光ファイバを用いた電力通信網の高度化の研究」
であり、京都大学大学院情報学研究科通信情報システム専攻 吉田進教授のご指導のもと、波長分割
多重を用いた大容量光ファイバ伝送および光電波融合技術を用いた無線システムについて研究成果を
取りまとめたものです。
重伝送による大容
量伝送を実現する
ために必要とされ
る、波長間隔や光
電力会社の通信網において、
光ファイバ通信は、
ファイバ入力信号
現在でも拠点間の情報伝送において非常に重要な
強度等を伝送実験
役割を担っていますが、今後光ファイバで伝送さ
によって検討しま
れる情報量はますます増加すると考えられます。
した。
次に無線通信は、今後、情報収集・配信の多様化
次に、光ファイ
など、活用機会の増加や利用分野の拡大が予測さ
バ通信と無線通信
れます。
の長所をあわせ持
そこで研究では、変電所や発電所等の拠点間を
つ光電波融合技術
既存の光ファイバで伝送される情報量の増大に対
(第1図)を用いた
応するため、波長分割多重伝送を用いた光ファイ
無線システムとし
バ通信の大容量化と、今後の無線通信の利用拡大
て、無線 LAN に対応する装置を試作するととも
を想定した光電波融合技術による無線システムに
に、低コスト化の検討を行いました。その結果、
関する成果を取りまとめました。
長距離伝送ができるなど、光電波融合技術のメ
はじめに、大規模な発電所や変電所等の重要拠
リットは活かしながら低コストにシステムを構築
点間は電力会社に固有の光ファイバ設置形態であ
する方法を開発しました。
る OPGW(Optical Ground Wire:光ファイバ複
最後に、光電波融合技術を利用して無線システ
合架空地線)で結ばれています。OPGW は送電線
ムを効率的に構築できるマルチセルシステムの検
と同じルートに敷設されるため、通信拠点が少な
討を行いました。この場合にはマルチセルにより
い上に拠点間の距離は長くなります。また、途中
無線機のサービスエリアを拡大できますが、セル
での中継は難しく、張替による芯線数増加も容易
の重なり部分での干渉が発生するという課題があ
ではありません。このような電力会社の通信網の
ります。この問題を解決するため MIMO(Multi特徴を考慮した伝送モデルにおいて、波長分割多
Input Multi-Output)技 術 を 適
用する手法を提案し、実際に屋
外で伝送実験を行い、提案した
【従来の方法】
【光電波融合技術】
手法が有効であることを確認し
無線機からアンテナまでを、光ファイバとし、
無線機を必要箇所に設置する
無線機からの無線信号をそのまま伝送する。
ました。
アンテナ
アンテナ
アンテナ
研究成果や研究途上で得られ
光ファイバ
無線機
無線機
た知見は、今後の通信網の高度
変換器
変換器
伝送装置
(光電気変換)
分岐可能
延ばせる
無線機
化に関する研究開発を推進して
アンテナ
伝送装置
いく際に、様々な形で貢献でき
無線機
無線機集中配置
無線信号
るものと考えています。
無線信号
学位論文「光ファイバを用いた電力通信網の高度
化の研究」の概要
の区間
の区間
第1図 光電波融合技術を用いた無線システム
2011 May No.462
15
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2011年5月号 No.462 2011年5月31日発行
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