...

十島村宝島海岸漂着物実

by user

on
Category: Documents
8

views

Report

Comments

Transcript

十島村宝島海岸漂着物実
Takarajima
Project
宝島クリーンアップ大学生プロジェクト
1
鹿児島県トカラ列島に浮か
ぶ七色の島、宝島。
この美しい海をこれからも
未来に残したい。
これは、そんな思いを胸に
はじまった小さな物語。
2
◆報告書目次◆
Ⅰ.プロジェクト発足の背景・・・・・・・・・・・・・4
①宝島の海岸漂着物問題・・・・・・・・・・・・・・4
②委託調査内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
Ⅱ.調査実施方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
①調査選定場所・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
②集計用紙参照・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
Ⅲ.調査結果報告・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
①海岸漂着物の内容別割合・・・・・・・・・・・・8
②海岸漂着物の排出国割合・・・・・・・・・・・10
Ⅳ.調査結果の分析・考察・・・・・・・・・・・・・・・12
①海岸漂着物の傾向・原因・・・・・・・・・・・・12
Ⅴ.海岸漂着物の問題点・・・・・・・・・・・・・・・・14
①経済活動・自然環境への影響・・・・・・・14
Ⅵ.環境ワークショップの開催・・・・・・・・・16
①宝島の子供たちとの環境学習・・・・・・16
Ⅶ.おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
①プロジェクトメンバー感想・・・・・・・・19
3
Ⅰ.プロジェクト発足の背景
①宝島の海岸漂着物問題
鹿児島県トカラ列島に実在する神秘の島、宝島。17
世紀のゴールドラッシュ伝説が残る宝島は、島全体が
サンゴ礁からできており、エメラルドグリーンの海と
いまだ手つかずの熱帯雨林が広がる美しい島。しかし、
その宝島の美しい海に危機が迫っていました。それは
ひとりの力だけではどうにもならない国境を超えたグ
ローバルな環境問題だったのです。
それは「海外からの漂着ゴミ問題」。昨今、宝島の
白い浜に打ち上げられるようになったのは隣国の中国
•韓国のプラスチックゴミ。2011年に日本列島を襲っ
た東日本大震災以降、徐々に注目を浴びるようになっ
た漂着ゴミ問題ですが、宝島で起こっている問題も同
様。あの津波で流された漂流ゴミと比較するとその量
は微々たるものかもしれません。しかし、宝島の美し
い海を後世に伝えていくために私たちはアクションを
起こす必要があります。
この海外からの漂着ゴミ問題解決への糸口を探るべ
くスタートしたプロジェクトこそが『宝島クリーン
アップ大学生プロジェクト』。本プロジェクトは、日
本の大学生が宝島の地元住民・行政とともに展開する
協同プロジェクトであり、その活動報告をここに記し
ます。
学生代表
山重哲也
4
②委託調査内容(仕様書より)
1. 委託業務名
十島村宝島海岸漂着物実態調査
2. 調査の目的
海岸物漂着の状況について調査し、その同定及び発生源
国等の分析並びに回収分の海上輸送準備までを行う。
3. 実施場所
十島村宝島前籠海岸の一部区画
4. 委託期間
平成25年8月27日から平成25年9月1 日まで間
5. 委託業務内容
選定した区画内の漂着物の収集調査を行い、その内容及
び同定、発生源国等の分析並びに回収分の海上輸送準備
までを行う。
6. 本業務の成果品
当該委託業務の終了後、成果品として調査報告書を作成
し、紙媒体で2部、電子媒体1 部を十島村住民課に提出。
5
Ⅱ.調査実施方法
①調査選定場所
十島村宝島前籠海岸、奥行10m×幅30mを調査場所として選定しました。
○調査前
全体状況
before
(※ 撮影 2013.8/28)
○調査後
全体状況
after
(※ 撮影 2013.8/29)
6
②集計用紙参照
長年、日本における海洋ゴミ問題の第一線で活動してきた「一般社団法人JEAN」
の公式調査データカードを集計用紙として利用しました。こちらの用紙の品目に
ない漂着物については、随時、別紙を用意し記入しました。
7
Ⅲ.調査結果報告(内容別編)
①海岸漂着物の内容別割合
21%
19%
1.プラスチック製フロート(960
2.発泡スチロール破片(851
14%
11%
10%
6%
4%
3.飲料用ペットボトル(629
4.硬質プラスチック破片(485
5.発泡スチロール製フロート(471
6.飲料用ボトルキャップ(247
7.サンダル(189
8.使い捨てライター(183
9.プラスチックシート破片(116
10.飲料ガラスびん(68
11.生活雑貨(歯ブラシ等)(39
12.ふた(プラスチック)(38
※その他の漂着物※
13.食品容器(プラスチック)(29
・くつ ・缶スプレー ・電球 ・布
・金属片 ・ホース ・ポット ・ワイヤー
・ベルト ・医療ビン ・固形薬剤 ・農薬
・飲料缶 ・食品容器 ・レジ袋
・洗剤、漂白剤ボトル ・タイヤ ・ルアー
・ロープ ・漁網 ・フォーク …など
14.ゴム破片(28
15.カキ養殖用パイプ(20
16.ガラスや陶器の破片(19
17.その他(101
1000 800 600 400 200
0
(単位:個)
8
plastic
プラスチック製ゴミ
=
92%
選定エリア内で収集した海岸漂着物の総量は「ドラム缶3.5個 収集ネット9枚」
分に相当し、種類にして41項目、総数4473個のゴミを分類・調査しました。
全体の内、約9割の海岸漂着物はプラスチック製のゴミであることが今回の調
査によって明らかになりました。
危険物
=
danger
あり
漂着物全体に占める割合は低いものの、危険物とされる漂着ゴミもたびたび発
見されました。「スプレー缶、ガラス破片、電球」など子供が触れてしまうと危険
と思われる物に加え、中には「農薬容器、未使用の薬剤、錠剤」などの農薬・
医療ゴミも発見されました。
9
Ⅲ.調査結果報告(排出国編)
①海岸漂着物の排出国割合
▼全分類における排出国割合▼
中国・
台湾
25%
日本
2%
韓国
2%
不明 71%
中国・台湾
日本
韓国
不明
全体の7割が排出国不明という結果でしたが、中国・台湾からのゴミが全体の
25%とアジア圏内で圧倒的に多いことが分かります。その他、数個単位で「ア
メリカ・タイ・ベトナム」のゴミを発見しましたが、全体に占める割合が微々たるも
のだったため、この表では項目を設けていません。
10
float
中国製フロート・ブイ
=
80%
収集したゴミ全体のうち約21%を占めていた「プラスチック製フロート」ですが、そ
の約80%が中国・台湾製のものであることが分かりました。
直径40cmの巨大なものから手のひらサイズのものまで様々な形のプラスチック
製フロートは、宝島の自然景観を悪化させる大きな要因のひとつです。
ペットボトル 国別割合 PET bottle
中国・台湾
50%
10%
韓国
3%
日本
37%
不明
(%)
0
50
100
収集した飲料用ペットボトルも同様に、排出国別だと中国・台湾が約50%を占
め、次いで韓国が10%、日本が3%という結果となりました。
中国・台湾製ペットボトルは多種多様なメーカー名が記載されていたため、その
排出元は一般の人々による海への投げ捨てではないかと推察します。
11
Ⅳ.調査結果の分析・考察
①海岸漂着物の傾向・原因
宝島の漂着物トップ10
全国の漂着物トップ10
1位
プラスチック製フロート
1位
硬質プラスチック破片
2位
発泡スチロール破片
2位
発泡スチロール破片(小)
3位
飲料用ペットボトル
3位
プラスチックシート破片
4位
硬質プラスチック破片
4位
タバコの吸殻・フィルター
5位
発泡スチロール製フロート
5位
カキ養殖用パイプ
6位
飲料用ボトルキャップ
6位
発泡スチロール破片(大)
7位
サンダル
7位
プラスチック類袋
8位
使い捨てライター
8位
飲料用ペットボトル
9位
プラスチックシート破片
9位
食品の包装・容器
10位
飲料用ガラス瓶
10位
ふた・キャップ
・・・
ランク外
・・・
ランク外
(※国際海岸クリーンアップ2012結果概要より作成)
宝島、2つの傾向
①漁具(フロート)が多い
②海外由来のゴミが多い
日本全国のデータと比較
すると、宝島の漂着物全
体に占める漁具の割合の
高さが分かります。
漁具・ペットボトルなど海
外由来のゴミが多く、宝島
から海へ直接流出したゴ
ミは少ないと考えられます。
12
industry
ゴミの排出原因①
=漁業・海運業
産業活動…
漂着物の多くは漁業に関係するもので、操業中の管理不足により海上から流
れてくると考えられます。また、海運業者の船舶から直接ポイ捨てされるゴミも世
界的に問題になっているようです。陸上の工場から排出されたと思われるプラス
チック製廃棄物も多数発見されました。
ゴミの排出原因②
=
daily life
日常生活
から。
一般に、海岸漂着ゴミの約7割は「川」から流れてくると言われています。日常
生活の中で無意識にポイ捨てされたゴミは、排水口などを通って海まで流れて
いくのです。宝島の場合、大陸(海外)に住む人々の日常生活で排出されたゴ
ミが漂着するケースが多いことが分かります。
13
Ⅴ.海岸漂着物の問題点
①経済活動・自然環境への影響
*環境汚染*
*生態系*
海は世界とつながり、そして循環する
ものです。現在、北太平洋上には日
本約4個分の面積に相当する「北太
平洋ゴミベルト」と呼ばれるゴミの墓場
が存在します。自然にかえらない人工
物はいつまでも海をさまよい続け、海
の環境汚染を引き起こします。
*観光業*
海中をただよう小さなプラスチックゴミ
は海の生きものにえさと間違われて誤
飲され、消化されることなく体内に残り
続け、死に至らしめることがあります。
場合によって、食物連鎖の流れで私
たち人間の体内に無意識のうちに混
入する危険性もあります。
海岸に漂着するゴミは、宝島の美しい
自然景観を損なう大きな要因です。
海ゴミは景観悪化を招くだけではなく、
危険物ともなるため、観光業への影
響は大きいと考えられます。
島の観光スポットは、定期的かつ重点
的にクリーンアップを実施する必要が
あると思われます。
*危険物*
*水産業*
今回の調査では「スプレー缶、ガラス、
電球、ポリ容器、農薬、未使用の錠
剤」などの危険物が発見されました。
最近では、注射器などの医療ゴミが
大量に漂着するケースが日本各地で
報告されており、浜辺を歩くときはい
つでも細心の注意が必要です。
漁業の場合、海中をさまようゴミが水
産品に混入するとその商品価値を下
げ、時には定置網や生簀等を損傷さ
せるおそれがあります。
また、台風時に発生する大型漂流ゴ
ミは船舶の航行中の妨げとなり非常
に危険です。
*処理費用*
漂着ゴミの処理費用は、そのゴミを回
収した場所の自治体によって負担さ
れます。拾っても拾っても流れ着く漂
着ゴミは回収するだけでもお金がかか
り、とくに離島の場合は処理施設を持
たないため、本土までのゴミの輸送費
がさらに財政の負担となります。
14
landscape
海岸漂着物
=景観の悪化
写真は2012年3月に宝島の大籠海水浴場で撮影されたものです。海岸漂着
物は、宝島の美しい自然景観を悪化させるだけでなく、島の観光業にも影響を
与える可能性があります。また、島のこどもたちの安全面への考慮から、定期
的・重点的な海岸クリーンアップを実施する必要があります。
海の生きもの
=
environment
影響あり
海岸漂着物は時間とともに紫外線や高温によって劣化し、細かい破片へと姿
を変えます。破片化したゴミは海のいきものたちに誤飲されるばかりか、その回収
はますます困難となります。自然分解されない微細な人工物は、食物連鎖の
中で私たちの体の中に入る危険性もあります。
15
Ⅵ.環境ワークショップの開催
①宝島の子供たちとの環境学習
~*海のごみについて考える環境学習ワークショップ*~
【日時】
【場所】
【参加】
【内容】
2013年9月1日 9:00~11:00
宝島コミュニティセンター
島の子どもたち、学校関係者、ほか大学生…
①海岸漂着ゴミの調査結果報告*
②海ごみクイズ**
③子どもたちとワークショップ***
「テーマ:ごみを減らすためにいま自分にできること」
16
今回の海岸漂着物調査で得られた結果をもとに、社会教育
学習の一環として、宝島の子どもたち・学校関係者の方々と
「海のごみについて考える環境学習ワークショップ」を島の
コミュニティセンターにて開催しました。
環境学習では、宝島に漂着する海のゴミの現状を子どもた
ちに知ってもらうことで「自然の素晴らしさ」「ものを大切
にすること」を学んでほしいという思いからこのような学習
の場を設けることとなりました。
今後も、この宝島という美しい島に生きる子どもたちのた
めに、大学生チームとして環境学習やそのほか様々なワーク
ショップを開催していきたいと思っています!
*ゴミを減らすためにわたしにできること*
~子どもたちのアイディア集♪~
★じぶんの水とうを使おう!
★エコキャップでワクチンを買う。
★葉っぱをふえにする!
★小さくなった服をともだちにあげよう!
★ティッシュは一枚ずつ使おう。
★ものを大事に使おう!
★生ごみをひりょうに。
★ずっと色がでるペンをつかう!
★いらなくなった紙のうらをつかおう。
★おさがりショップを作る!
★使わなくなったおもちゃを妹にあげる。
★ごはんを残さずたべる。
★じゃぐちからオレンジジュース!!!!
17
Ⅶ. おわりに
①プロジェクトチームの感想*
夏のたった一週間。
東京の大学生たちにとって、宝島で過ごした日々は毎日が奇跡の連続で
した。
宝島の海岸漂着物問題。委託調査を進める中で明らかになったことは、
漂着ゴミの内容や排出国のデータだけではありませんでした。それは、宝島に
流れ着くゴミが、めぐりめぐって自分たちの生活と関係している社会問題だった
ということです。
今回の委託調査は、これから社会へと羽ばたいていく大学生が、地域の
抱える問題と真剣に向き合うことができる「学び」にあふれた時間となり、この
ような機会を作っていただいた十島村役場・宝島の住民の方々に深く感謝
申し上げます。
18
今回の「宝島クリーンアップ大学生プロジェクト」では、宝島の現地の方にたいへんお世話になりました。いま、宝島ではこ
の美しい自然をいかしたエコロジーな取り組みがスタートしてます。アースデイ宝島の開催など、自然環境に配慮した島づく
りに向けて、私たち大学生もなにか貢献できたらと思っております。まだ「何色にも染まっていない」私たち大学生だからこそ、
この宝島のためにできることをこれからメンバー全員で模索していきます。
美しい自然にみちた宝島は、いわゆる「観光スポット」であると同時に、現代を生きる若者たちの人材育成の場として無限
の可能性を秘めた「教育スポット」なのかもしれません。
宝石のように輝く島。
宝島は、私たち若者にとって「学び」と「楽しさ」と「喜び」にあふれた素晴らしい島、
いわば「ダイヤの原石」です。
これからも、宝島のエコロジーな島づくりを私たちは全力で応援していきます!
宝島クリーンアップ大学生プロジェクト 一同
19
Fly UP