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概要集 - 和歌山大学

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概要集 - 和歌山大学
2007 年度
環境社会情報クラスター修士論文概要集
2008 年 2 月 19 日
和歌山大学大学院システム工学研究科
環境社会情報クラスター
2007 年度 修論発表会【環境社会情報】
日時:2008 年 2 月 19 日 10:00 ― 15:40
場所:システム工学部 A棟 104 教室
<修論発表スケジュール>
10:00 集合
10:05 ∼ 10:30 井上 治郎
美しい空間曲線の性質とそれを応用した曲線創成
10:30 ∼ 10:55 岩根 良和
紀ノ川流域のダム・堰で見られる植物プランクトンと各種イオンの関係
10:55 ∼ 11:20 北野 梓沙
酸素・水素安定同位対比による北海道東部の水循環の解明
11:20 ∼ 11:45 河野 正之
図面への適用を考慮した視覚言語を用いたラフスケッチの清書化
(昼休憩)
13:00 ∼ 13:25 小宮 信吾
粒子ベースのスキニング法
13:25 ∼ 13:50 崔 丹丹
廃棄物最終処分場の適地選定手法に関する研究
13:50 ∼ 14:15 重藤 大地
夏期の気温上昇がヒガンバナの開花に及ぼす影響
14:15 ∼ 14:40 高田 信一郎
DEM を用いた粉粒体シミュレーションの GPU 上への実装
(休憩・時間調整)
14:50 ∼ 15:15 水内 絢子
兵庫県蘇武トンネル周辺の地下水流動解析
15:15 ∼ 15:40 山田 悦明
判別分析およびラフ集合を用いたWEB販売システムの開発とその比較研究
美しい空間曲線の性質とそれを応用した曲線創成
Characteristics of Aesthetic Space Curves and Generation of the Space Curves
和歌山大学大学院 システム工学研究科 環境社会情報クラスタ
デザインシステム計画研究室
60070010 井上 治郎
要旨
現在,工業製品のデザインで用いられている3次元 CAD では,面の接合部やコーナー部などの空間曲線を美しく制御することが難し
く,そのデータをもとに削りだしたクレイモデルをさらにモデラーが玉成することで理想となる曲線(面)を作り出しており,その作
業は多大な工数を必要としている。そこで,本研究では,空間曲線の性質を定量化する手法の開発を行い,それを用いて,さまざまな
美しい空間曲線がどのような性質(曲率,捩率変化とボリューム)とその組み合わせでできているかを同定することを目的とした。具
体的には,まず,空間曲線の性質を分析するシステムの開発を行い,数学曲線や製品における空間曲線の曲率半径と捩率半径から,曲
率対数分布図と捩率対数分布図をそれぞれ作成した。次に,本システムを応用して曲面を構成する曲率線群の分析を行った。その結果,
曲面における曲率線の性質とその接続位置の変化,さらにその組み合わせを同定することができた。最後に,曲率対数分布図と捩率対
数分布図から美しい空間曲線を創成するシステムの開発を行った。
● Key Words : Aesthetic Space Curve, Characteristic of Curves, Logarithmic Torsion Graph
1.はじめに
現在,工業製品をデザインする際,既存の CAD を用いても,
ー
面の接合部などの空間曲線の制御は難しく,曲線(面)を玉成す
る作業には多大な工数を必要としている。なぜなら,デザイナも
モデラも作成した空間曲線や曲面がどのような性質であるのか分
horizontal
からないまま,
勘と経験のみで曲線(面)を作っているからである。
そこで,本研究では,曲線の性質(曲率変化とボリューム)を
定量化する既存研究[注1]を空間曲線へ拡張し,さまざまな空
+
間曲線がどのような性質とその組み合わせでできているかを解明
する技術の開発を目的とする。また,実際に空間曲線の分析を行
うことによって空間曲線の性質を明らかにし,その結果から美し
図1 体系化された曲線の性質とその視覚言語
い空間曲線の創成を行う。具体的には,まず,サンプル空間曲線
る捩率半径とその捩率半径が曲線上に現れる長さの関係を両対数
を収集し,収集した空間曲線を多次多項式により近似することで
座標系上に表現する捩率対数分布図を考案した。この捩率対数分
近似曲線を求める。求めた近似曲線の曲率半径と捩率半径から ,
布図に描かれる曲線を T curve と呼ぶ。この T curve が “ 捩率変化 ”
曲率単調曲線と捩率単調曲線ごとに曲率対数分布図と捩率対数分
と “ ボリューム ” を表しており,それらが曲線の捩率半径変化に
布図[注2]の作成を行い,空間曲線の性質(曲率,捩率変化と
よる性質といえる。これら C curve と T curve の傾きにより空間曲
ボリューム)を同定する手法を開発する。次に,本分析手法を応
線の性質の1つである曲率,捩率変化の仕方を同定する。
用して,曲面における曲率線群の性質を分析する。最後に,曲率
対数分布図と捩率対数分布図から空間曲線を創成するシステムの
3.数学曲線の分析
開発を行う。
空間曲線の分析方法を用いて,数式が与えられた数学曲線(常
螺旋,アルキメデスの螺旋,ベルヌーイの螺旋,Viviani の曲線)
2.空間曲線の分析方法
を分析した結果,曲率変化と捩率変化を持つ数学曲線は C curve
空間曲線の“性質(曲率,捩率変化とボリューム)
”を分析す
や T curve がある一定の傾きの直線となっていた。つまり,これ
るにあたり,分析手法として,原田らにより開発された,曲線の
らの数学曲線は曲率,捩率変化において自己アフィン性を有する
重要な性質である曲率変化の仕方とボリュームを同時に,そして
ことが明らかになった。また,空間曲線には曲率半径増加方向と
直感的に理解しやすく定量化する方法
[注1]
を用いた。本手法は,
捩率半径増加方向が同方向のタイプ(これを曲率捩率同方向曲線
曲線上の各構成点における曲率半径とその曲率半径が曲線上に現
と呼ぶ)と曲率半径増加方向と捩率半径増加方向が逆方向のタイ
れる長さの関係を両対数座標系上に表現するものである。この手
プ(これを曲率捩率異方向曲線と呼ぶ)があることが確認された。
法で扱える曲線は平面曲線でかつ,曲率単調曲線である。これよ
り描かれる図を曲率対数分布図と呼び,曲率対数分布図に描かれ
4. 多項式による空間曲線の近似
た曲線を C curve と呼ぶ。曲率対数分布図における C curve の
“傾き”
実際に工業製品に使われているさまざまな空間曲線を分析する
がその曲線の“曲率変化”を,
“曲率半径区間[注1]の最大値
には,計測点列から曲線を求める必要がある。そこで,本研究で
と最小値”がその曲線の“ボリューム”を表しており,それらが
は最小二乗法による多項式近似を行い,近似曲線を求める。しか
曲線の曲率半径変化による性質といえる。本手法を用いて様々な
し,多項式近似は次数によってその近似関数が変化するため,何
平面曲線の性質を分析した結果,図1のような5タイプにほぼ分
次の多項式近似によって得られた曲線がもっともよい近似結果と
類できることが確かめられている。実用上,シングル R 型(円弧)
なるのかの指標が必要となる。そこで,近似結果の評価関数とし
をそれらの5つのタイプに加え,6つの曲線タイプに分類できる。
て赤池情報量基準(AIC)とベイズ情報量基準(BIC)を設定し[注
本研究では,曲率対数分布図と同様に,曲線上の各構成点におけ
3]
,それら2つの情報量基準を比較検討した。その結果,BIC
を用いた近似曲線のほうが曲率単調曲線と捩率単調曲線のセグメ
性質同一面
ー
ント数が少なくなり,キーライン等の分析に適していると判断し,
性質同一面
発散型
ー
本研究における多項式近似の次数決定の評価基準を BIC とした。
性質同一面
発散型
これにより,各次数での近似関数の BIC を式1から求め,その値
山型
が最小になる次数の近似関数を選択した。
BIC = n log( RSS ) + (k + p + q ) log( n)
(式1)
性質混在面
n : 計測点数
RSS : 残差二乗和
k : 近似次数+1
p : 曲率単調曲線数 q : 捩率単調曲線数
性質遷移面
収束型
5. 工業製品における空間曲線(キーライン)の分析
ー
horizontal
+
発散型
定速型
(a) 曲率半径の分析
(b) 捩率半径の分析
図3 最小曲率線の分析結果
工業製品に使われている空間曲線のサンプルとして,自動車の
ボンネット部の曲線とコンピュータマウスに使われているパー
ティングラインを各2種ずつ,計4種の分析を行った。例として,
発散型
自動車(Domani, ホンダ)のボンネット部の曲線を分析した結果
ントで,捩率単調曲線に分割すると3セグメントに分割された。
各セグメントの性質は,曲率単調曲線の1セグメントは収束型を
示し,捩率単調曲線の 3 つのセグメントはすべて発散型を示した。
また,その曲線は曲率単調曲線であっても,その中に複数の捩率
単調曲線が含まれる空間曲線となっていた。
計4種の工業製品の曲線を分析した結果,C curve や T curve が
性質遷移面
を示す(図2)
。その曲線は曲率単調曲線に分割すると1セグメ
性質同一面
ー
性質混在面
性質同一面
ー
ー
発散型
発散型
山型
horizontal
定速型
+
収束型
性質同一面
性質同一面
ー
ー
発散型
発散型
(a) 曲率半径の分析
(b) 捩率半径の分析
図4 最大曲率線の分析結果
ほぼある一定の傾きの直線となっていた。つまり,これらの曲線
7.美しい空間曲線の創成
がほぼ自己アフィン性を有するということである。また,工業製
5,6章において空間曲線における性質(曲率,捩率変化とボ
品に使われる空間曲線は曲率捩率異方向型の曲線が多く見られ
リューム)を曲率対数分布図と捩率対数分布図で同定した。そこ
た。これは,空間曲線が長方形をベースにした工業製品の基本面
で,性質分析の応用として,曲率対数分布図と捩率対数分布図か
構造に依存するためであると考えられる。
ら美しい空間曲線を創成するシステムの開発を行った。まず,全
曲線長 Sall,最大曲率半径 ρκ_max,最小曲率半径 ρκ_min,C curve の傾
6.工業製品における曲面の曲率線分析
きα,最大捩率半径 ρτ_max,最小捩率半径 ρτ_min,T curve の傾きβ
コンピュータマウス(Pro Mouse,Apple)の曲面を構成する曲
の値から曲率対数分布図,および,捩率対数分布図を同定する。
率線群[注4]を分析した。その結果,
最小曲率線は一部うねり(曲
次に,それらの曲率半径と捩率半径の増加(減少)方向を指定す
率・捩率変化が複雑な曲線)はあるが,C curve の性質が多くの
ることで,空間曲線を創成するシステムの開発を行った。
部位で発散型の性質を示し,T curve の性質は発散型,山型を示し,
残りの部位は収束型→定速型→発散型と性質が遷移していた(図
8. まとめ
3)
。最大曲率線では,C curve の性質が発散型→山型→定速型→
本研究では以下に示す成果が得られた。
収束型と性質が遷移しており,残りの部位は性質に一定のルール
1)空間曲線の性質(曲率,捩率変化とボリューム)を分析する
がなかった。また,T curve の性質はすべて発散型の性質を示した
ための手法として曲率対数分布図と捩率対数分布図による分
(図4)
。これらの結果から,曲面を構成する曲率線群の性質によ
析方法を提案した。
り曲面は,①性質同一面(曲面を構成する曲率線群がすべて同じ
2)数学曲線4種,工業製品4種,および工業製品における曲面
性質を示す曲面)
,②性質遷移面(曲面を構成する曲率線群の性
の曲率線群の曲率対数分布図と捩率対数分布図を求め,それ
質が規則性を持って遷移する曲面)
,③性質混在面(曲面を構成
らの性質を同定した。
する曲率線群が一定のルールが無く不均質な性質を示す曲面)の
3)曲率対数分布図と捩率対数分布図から性質を制御した空間曲
線を創成するシステムを開発した。
3つに分類できると考えられる。
今後の課題として,空間曲線の性質を C curve と T curve で同定
Ⅰ
できることは確かめられたが,T curve の性質とその印象に関して
は未検証である。今後,性質ごとの空間曲線を用いてサンプルを
分析曲線
1
Ⅱ
Ⅲ
a) 分析曲線
1
Ⅱ
る。また,空間曲線創成システムの GUI の改善が必要である。
注および参考文献
b) 分析曲線の曲率半径・捩率半径
Ⅰ
作成し,アンケート等を行い性質と印象の関係を求める必要があ
Ⅲ
1)原田利宣,森典彦,杉山和雄:曲線の性質に関する定量化研究,デザイン学研究,
第 40 巻第 6 号,pp.9-16(1994).
2)原田利宣,井上治郎,河野正之:美しい空間曲線の性質とそれを応用した曲線創
成,日本精密工学会全国大会シンポジウム資料集,pp.96-97(2007).
3)Schwarz, G.:Estimating the dimension of a model, The annals of statistics,
c) 曲率対数
d) 捩率対数
e) 捩率対数
f) 捩率対数
分布図1
分布図Ⅰ
分布図Ⅱ
分布図Ⅲ
図2 自動車のボンネット部における空間曲線の分析
Vol.6,No.2,pp.461-464 (1978).
4)井上治郎,原田利宣,今井敏行:自然造形物・工芸品における曲面の曲率線抽出
とその性質分析,デザイン学研究,第 54 巻第 3 号,pp.39-46(2007).
紀ノ川流域のダム・堰で見られる植物プランクトンと各種イオンの関係
環境社会情報 60070013 岩根良和
1. はじめに
都市化や産業の発達に伴い,人々の生活は便利になっ
てきた.しかし,その一方で環境へ与える負荷も大きくな
ってきており,地球温暖化や砂漠化,大気汚染,水質汚染
といった環境問題が生じている.その中でも,水質汚染は
我々が身近に感じる問題のひとつである.水質汚染の一例
として富栄養化がある.富栄養化による水質の悪化は,停
滞水域において顕在化している.これらの水域における水
質の悪化は,その下流に位置する河川や海域の水質悪化に
もつながるため,積極的に取り上げられてきている.一方,
山地上流域に位置するダム・貯水池での水質変化に関して
は人為的な影響が少ないと考えられていたため,これまで
あまり着目されていなかった.しかし,近年人為的影響の
少ない山地上流の停滞水域においても淡水赤潮が発生す
るなど,水質の悪化が進んでいることが重要な問題として
注目を浴びてきている.紀ノ川上流部にある大滝ダムにお
いても2006年11月に淡水赤潮が発生した.そこで,本研究
では,大滝ダムや猿谷ダム,紀ノ川大堰などの停滞水域が
紀ノ川流域に与える影響を植物プランクトンの種構成や
数の変化と栄養塩,各種イオン濃度の変化から明らかにす
ることを目的とする.
2.現地調査の概要
調査対象地域を図-1に示す.大迫ダム直下,大滝ダムの
水質調査日は,2006年4月∼2007年10月のほぼ毎月行った.
猿谷ダムの水質調査日は,2006年7月∼2007年10月まで行
った.紀ノ川大堰上流,紀ノ川大堰の水質調査日は,2006
年4月から6月,8月から10月,12月から2007年1月,4月か
ら10月まで行った.
3.水質分析の概要
(1) 水質の調査方法
採水は表層のみ(水深0.25 m)で行った.採水は大迫ダ
ム直下,大滝ダムで表層,中層,底層の3地点,大滝ダム
下流部で6地点,猿谷ダムで表層,中層,底層の3地点,紀
ノ川大堰上流は左岸側で行った.また比色法でT-N (全窒
素)の分析を行い,採水サンプルは,研究室に持ち帰り,
0.45μmのフィルターを通した後,
溶存成分をイオンクロマ
トグラフィーで分析を行った.イオンクロマトグラフィー
は,(株)日本ダイオネクス社製を使用している.
総貯水容量
津風呂ダム
(1961)
25,650,000m³
津風呂ダム
(1961)
大滝ダム
(1998)
紀ノ川大堰
(2003)
5,100,000 m³
10
0∼5℃
5∼10℃
10∼15℃
15∼20℃
20∼25℃
25∼30℃
6000
N
5000
4000
3000
2000
0
阪本分水遂道
0
(2) 緑藻プランクトンの個体数と水質の関係
緑藻プランクトンの個体数と水温,T-Nとの関係を図-3
に示す.T-N濃度が0.5mg/lの時に緑藻プランクトンが増加
したが,それ以外では大きな増加が見られなかった.T-N
濃度が0.7mg/lでt検定を行ったところ,p = 0.010となり有
意差がみられた.その結果緑藻プランクトンはT-N濃度が
0.7mg/l以上だと増加しやすいことがわかった.
さらに水温
の平均温度である17℃でt検定を行ったところ,p = 0.009
となり有意差が見られた.その結果17℃以上だと増加しや
すいことがわかった.
1000
山田ダム
(1956)
10
(1) 珪藻プランクトンの個体数と水質の関係
珪藻プランクトンの個体数と水温,T-Nとの関係を図-2
に示す.T-N濃度が1.0∼1.2mg/lの時に珪藻プランクトンの
増加が見られたが,T-N濃度が1.2mg/l以上になると大きな
増加は見られなかった.T-N濃度の平均値である0.7mg/l
でt検定3)を行ったところ,p = 0.006となり有意差がみられ
た.その結果珪藻プランクトンはT-N濃度が0.7mg/l以上だ
と増加しやすいことがわかった.さらに水温の平均温度で
ある17℃でt検定を行ったところ,p = 0.010となり有意差
が見られた.その結果17℃以上だと増加しやすいことがわ
かった.
大滝ダム
(1998)
84,000,000m3
紀ノ川
0
4.植物プランクトンと水質との関係
珪藻(cell/ml)
ダムの名称
稼動年代(試験稼動含む)
N
(2) プランクトンの計数・同定方法
プランクトン観察用に採水したサンプルは,現地におい
て,サンプルの5%量に値するピクロホルマリンを入れ,
植物プランクトンを固定した1).固定したサンプルは静置
沈殿法により濃縮を行い1),500mlから10mlまで濃縮した.
10mlまで濃縮したサンプルは植物プランクトン分布を均
一にするために攪拌し,スポイトでとり,計算盤(改良ノ
イバウエル型)
の上に載せる.
そして,
測定する計算盤は,
位相差顕微鏡(ECLIPSE E200 ニコン株式会社製)に取
り付け,植物プランクトンの計数・同定を行った.また,
計算盤の枠内におさまるサンプルの容量は0.9mm3と決ま
っているため,規定の枠内で観察された植物プランクトン
数を計測することで,濃縮前の試料に含まれていた植物プ
ランクトン個体数を算定した.同定方法は,顕微鏡で観察
された形から(10×40倍),日本淡水産動植物プランクト
ン図鑑に従い分別した2).
20 km
猿谷ダム
猿谷ダム
(1957)
(1957)
23,300,000 m3
大迫ダム
(1973)
27,750,000m3
20 km
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
T-N(mg/l)
図-2 珪藻プランクトンの個体数と水温・
T-Nとの関係
図-1 調査対象地域
5000
4000
3000
2000
15000
10000
5000
1000
0.0
500
400
300
200
100
0
0
0.5
1.0
1.5
T-N(mg/l)
2.0
2.5
0∼5℃
5∼10℃
10∼15℃
15∼20℃
20∼25℃
25∼30℃
600
0∼5℃
5∼10℃
10∼15℃
15∼20℃
20∼25℃
25∼30℃
20000
渦鞭毛藻(cell/ml)
緑藻(cell/ml)
6000
藍藻(cell/ml)
0∼5℃
5∼10℃
10∼15℃
15∼20℃
20∼25℃
25∼30℃
7000
0
0.5
1.0
1.5
T-N(mg/l)
2.0
2.5
4
6
8
10 12 14 16 18 20 22 24 26
Ca(mg/l)
図-3 緑藻プランクトンの個体数
図-4 藍藻プランクトンの個体数
図-5 渦鞭毛藻プランクトンの個体数
と水温・T-Nとの関係
と水温・T-Nとの関係
と水温・Caとの関係
(3) 藍藻プランクトンの個体数と水質の関係
表-1 主成分分析の結果
藍藻プランクトンの個体数と水温,T-Nとの関係を図-4
主成分負荷量 主成分№1 主成分負荷量 主成分№2 主成分負荷量 主成分№3
T-N
0.850 渦鞭毛藻
0.885 珪藻
0.702
に示す.紀ノ川大堰ではT-Nの濃度が1.4∼2.0mg/lの時に藍
緑藻
0.846 Ca
0.687 水温
0.241
藻プランクトンの増加が見られた.藍藻プランクトンの増
藍藻
0.794 T-N
0.124 T-N
0.105
4)
加は他の種よりも高い水温を好み ,水の流れに影響され
水温
0.744 珪藻
-0.047 Ca
0.093
珪藻
0.605 水温
-0.127 渦鞭毛藻
-0.168
やすいが5)6),大迫ダム,大滝ダム,猿谷ダムではほとん
Ca
0.541 藍藻
-0.143 緑藻
-0.404
ど見られなかった.これはT-N濃度が原因と考えられる.
渦鞭毛藻
-0.133 緑藻
-0.146 藍藻
-0.533
T-N濃度が0.7mg/lでt検定を行ったところ,p = 0.007となり
かにすることを目的とした.t検定を行った結果,T-N濃度
有意差がみられた.そのため藍藻プランクトンはT-N濃度
が0.7mg/l以上であると珪藻,緑藻,藍藻プランクトンが増
が0.7mg/l以上だと増加しやすく,0.7mg/l未満では増加し
加しやすくなり,また渦鞭毛藻プランクトンにおいてCa
にくいことがわかった.さらに水温の平均温度である17℃
イオン濃度が15mg/l以上だと渦鞭毛藻プランクトンが増
でt検定を行ったところ,p = 0.029となり有意差が見られ
加しやすい環境であるということがわかった.さらに水温
た.その結果17℃以上だと増加しやすいことがわかった.
が17℃でt検定を行ったところ渦鞭毛藻プランクトンを除
く植物プランクトンの活動が活発になることがわかった.
(4) 渦鞭毛藻プランクトンの個体数と水質の関係
主成分分析を行った結果,T-N濃度と水温,緑藻,藍藻,
渦鞭毛藻プランクトンの個体数と水温,Caイオン濃度
珪藻プランクトンは正の相関が見られ,渦鞭毛藻プランク
との関係を図-5に示す.大滝ダムではこの種の大量発生に
トンとCaイオン濃度の正の相関が高かった.珪藻プラン
より淡水赤潮が発生した.一方,同じダムである猿谷ダム
クトンと藍藻,緑藻プランクトンとの間に負の相関が見ら
や紀ノ川大堰では渦鞭毛藻プランクトンはほとんど見ら
れた.そのためT-N濃度,水温が高いと渦鞭毛藻プランク
れなかった.そこでCaイオン濃度に着目した.渦鞭毛藻
トン以外の植物プランクトンが,Caイオン濃度が高いと
の鞭毛や殻などにはCaイオンが含まれておりCaイオンが
渦鞭毛藻プランクトンが増加しやすく,珪藻プランクトン
7)8)
渦鞭毛藻の増殖因子とも言われており
,Caイオン濃度
が増加すると藍藻,緑藻プランクトンが減少しやすいこと
の差により大滝ダムでは渦鞭毛藻プランクトンが多量に
がわかった.
発生したと考えられる.Caイオン濃度の平均値である
15mg/lでt検定を行ったところ,p = 0.043となり有意差がみ
参考文献
られた.そのために渦鞭毛藻プランクトンはCa濃度が
1) 気象庁 編:海洋観測指針(第1部),pp.109-111,(財)気
15mg/l以上で増加しやすく,15mg/l未満で増加しにくいこ
象業務支援センター,1999土木学会編: 土木工学における数値
とがわかった.さらに水温の平均温度である17℃でt検定
解析,流体解析編,サイエンス社,1974.
を行ったところ,p = 0.640となり有意差が見られなかった.
2) 田中正明:日本淡水産動植物プランクトン図鑑,(財)名古屋
(5) 主成分分析について
植物プランクトンと水質で主成分分析9)を行った.得ら
れた結果を表-1に示す.主成分1の寄与率は47.1%,主成分
2の寄与率は19.0%,主成分3の寄与率は14.9%であり,全
変動の81.1%が説明できた.主成分1を見るとT-N濃度と水
温,緑藻,藍藻,珪藻プランクトンは正の相関が見られた.
そのためこれらのプランクトンはT-N濃度や水温が高い
と増加しやすいと考えられる.次に主成分2を見ると渦鞭
毛藻プランクトンとCaイオン濃度の正の相関が高かった.
さらに主成分3を見ると珪藻プランクトンと他のプランク
トンとの間に負の相関が見られた.そのため珪藻プランク
トンが多いと藍藻,緑藻プランクトンが少なくなるという
結果が得られた.
5.おわりに
本研究は,大滝ダムや猿谷ダム,紀ノ川大堰などの停滞
水域が紀ノ川流域に与える影響を植物プランクトンの種
構成や数の変化と栄養塩,各種イオン濃度の変化から明ら
大学出版会,2002
3) 山田作太郎・北田修一:生物統計学入門,成山堂書店,p135-139.
4) 有賀祐勝:水界植物群落の物質生産Ⅱ,生態学講座8,(株)
共立出版,p.51,1973.
5) Takeshi Teramoto, Yoshikazu Iwane, Masahide Isizuka, Hiroyuki
Ii : INFLUENCE OF FLOW CONDITION AND TEMPERTURE
ON NUMBERS AND SPAECIES OF PHYTOPLANKTON IN
THE KINOKAWA RIVER, Journal of Hydroscience and Hydraulic
Engineering Vol. 25, No. 1 May, 2007, 89-97
6) Yoshikazu Iwane, Takeshi Teramoto, Hiroyuki Ii : RELATION
BETWEEN
NUTRIENT
AND
PHYTOPLANKTON
IN
STAGNATION AND CURRENT AREAS OF THE KINOKAWA
RIVER IN JAPAN, 9th International Riversymposium in Australia
7) 岩根良和・井伊博行・谷口正伸:紀ノ川流域のダム・堰におけ
る植物プランクトンと全窒素・カルシウムイオンとの関係,土
木学会水工学論文集,第52号,2008(印刷中).
8) 小島貞男・須藤隆一・千原光雄編:環境微生物図鑑,講談社サ
イエンティフィック,p.352.
9) 井上勝雄:パソコンで学ぶ多変量解析の考え方,筑波出版会,
p85-p103
2007 年度
修士論文
概要
酸素・水素安定同位体比による北海道東部の水循環の解明
水土環境研究室 60070029 北野梓沙
1.背景・目的
北海道東部の根釧台地は,パイロットファーム(実験農場)
や新酪農村を起点とする大規模酪農が盛んな地域である.こ
の畑地への施肥や家畜の排出するふん尿に由来すると考えら
れる浅層地下水の硝酸性窒素汚染が大きな問題になっている.
屈斜路カルデラにあるアトサヌプリ火山(硫黄山)では,大
規模に酸性の噴出ガスを排出し,周囲の樹木が枯れた光景が
広がっている.釧路湿原には,冬でも凍らない水域が存在し,
その周辺には湧水が無数に見られる.この湿原の湧水は,単
に水の供給だけでなく,冬場の水場を提供し重要な役割を果
たしている.更に,地下水は湿原全体を涵養しており,湿原
の乾燥化や植生の変化に直接的に影響する 1)ため,釧路湿原に
おける水循環は,湿原の保全・再生を行うためには重要とな
る.
これまでの研究では,釧路湿原内などの狭域での水循環や
地下水解析はなされてきた 1).しかしながら湧水や地下水の起
源は流出地点よりも上流域にあると考えられるので,湧水の
流出地点で保全を行うには,供給源を含めた広域な水循環の
把握が必要である.そこで本研究では,水の動きを把握する
上で理想的なトレーサーとして利用できる,酸素・水素安定
同位体比を用いて北海道東部の広域な地域における水循環を
把握することを目的とする.
2.調査地概要
調査地は,北海道東部に位置する釧路湿原を含めた根釧台
地と網走‐斜里地域である(図-1 参照)
.根釧台地は,年間を
通して寒冷な気候であり,パイロットファームや新酪農村が
建設され,酪農が盛んである.表層は摩周火山起源の厚い完
新世の火山砕屑物に覆われている.釧路支庁には,日本最大
の釧路湿原(総面積は 189.2km2)がある.湿原は標高が 3∼10m
と低く,表層は 1∼4m の泥炭で覆われ,釧路湿原全体の 8 割
が低層湿原である.根室支庁は厚さ 10m 以内の火山灰層で覆
われ,養分にとぼしい地層となっている.北海道東部にはア
トサヌプリや雄阿寒岳など 5 つの活火山が存在している 2).そ
のうち硫黄山は,屈斜路カルデラの中央にある活火山であり,
大規模に酸性の噴出ガスを排出し,その山の麓に川湯温泉が
ある.網走‐斜里地域は,網走市から斜里町にいたるオホー
ツク海に面した海岸地域で,標高 300m 以下の火砕流台地・河
岸段丘・氾濫原・海岸砂丘からなる平野部である.
3.研究方法
調査は 2005 年 6 月 13 日から 18 日(釧路湿原周辺で 184 地
点)
,10 月 7 から 8 日(釧路湿原周辺で 35 地点)
,2006 年 9
月 26 日から 28 日(根釧台地で 28 地点)
,2007 年 4 月 27 日か
ら 30 日(根釧台地から網走地域にて 63 地点)
,2007 年 7 月 9
日から 13 日(釧路湿原周辺で 61 地点)にかけて計 5 回行い,
北海道
神の子池
硫黄山
根釧台地
湿原内の調査地点
(ツルワシナイ川流域)
釧路湿原
×:湧水
図-1 調査対象地域
河川水,湧水,地下水及び温泉水を採水した.河川水は調査
地域において広域に,湧水と地下水は釧路湿原内のツルワシ
ナイ川流域で集中的に,温泉水は硫黄山周辺及び各温泉地帯
で採水した.サンプルは現地調査にて,水温,電気伝導度,
pH,酸化還元電位を,携帯用水質測定器を用いて測定した.
その後,速やかに実験室に持ち帰り 5℃以下の冷暗所で保存後,
孔径 0.45μm の親水性 PTFE メンブレンフィルターでろ過し,
主要溶存成分(Li+,Na+,NH4+,K+,Mg2+,Ca2+,F-,Cl-,Br-,
NO3-,PO43-,SO42-)をイオンクロマトグラフィーで測定した.
重炭酸イオンは 0.02 規定の硫酸を用いて硫酸滴定法によって
定量した.また,酸素・水素の同位体比は平衡法によって処
理された H2 ガス,CO2 ガスを質量分析計で測定した.
4.結果及び考察
(1)広域酸素同位体比分布とヘキサダイヤグラム平面分布
酸素・水素安定同位体比は,各元素について標準物質を定
め,標準物質の同位体比から試料の同位体比の線分偏差(‰:
パーミル)として次式(1)で,δ18O,δD として表す 3).
δ  R X / R ST - 1  1000 ‰  (1)
このときδは D/H,18O/16O,RX は試料 X の同位体比,RST
は標準物質 ST の同位体比を表す.天水における酸素同位体比
(δ18O)と水素同位体比(δD)の関係は Craig(1961)によっ
て求められた,天水線(δD=8*δ18O +10)上に分布する.
酸素同位体比の平面分布を図-2,ヘキサダイヤグラムによ
る水質結果を図-3 に示す.図-2 より,釧路湿原内の湧水は周
辺河川水に比べ δ18O が小さく,逆に屈斜路湖の周辺では屈斜
路湖水(-8.6‰)
,摩周湖の南側に位置する神の子池の湧水
(meq/L)
(meq/L)
2 3 1 1 24
2
1 0 0
1 1
2
3 2
4
SO4
Ca
HCO3
Cl+NO3
Mg
Cl
Na+K
川湯温泉
(-8.3)
神の子池
(-10.8)
×:湧水
硫黄山
(-3.3)
△
湿原の湧水
(ツルワシナイ
川流域)
図-2 酸素同位体比平面分布(2007 年 4 月)
(-10.8‰)
,川湯温泉水(-8.3‰)や硫黄山の水(-3.3‰)で周
辺に比べ δ18O が大きかった.これらの地点を除くと,屈斜路
湖周辺の山地を境にして南側の根釧台地では南東から北西,
北側の網走‐斜里地域では北東から南西にかけ同位体比が小
さくなっていた.山地の両側で標高が高くなると同位体比が
小さくなっており,同位体高度効果が見られた.
(2)阿寒湖∼釧路湿原
この地域の河川水及び湧水の水質は,Ca-HCO3 型を示して
いた.湿原の湧水は,周辺河川水に比べ δ18O が小さい値(-10‰
以下)を示し,湿原よりもさらに上流の河川水では-10‰以下
の値を示していた.このことから湧水の起源は,湿原に近い
河川ではなく,湿原よりさらに少なくとも 10km 以上も上流の
河川流域にあると考えられる.つまり,湧水の涵養域がツル
ワシナイ川流域よりも上流域にあると考えられる.
(3)硫黄山∼根釧台地
根釧台地では釧路湿原や網走地域に比べ NO3-濃度が高い地
点(最大 11mg/l)が見られた.これは,酪農などによる畑地
への施肥や家畜の排出するふん尿の影響であると考えられる.
18
釧路湿原では周辺よりも δ O の小さい湧水がみられたが,根
18
室地域では最下流に位置する風蓮湖の水は δ O が大きく,
18
δ O の小さい水は見られなかった.これは,両地域の地質構
造の違いによるものと考えられる.根釧台地は火山灰層,根
室層群(東西方向の走向と南にゆるく傾斜した同斜構造)に
よって形成されている 2).根釧台地では,降水は地下に浸透す
ることなく表層を流下していると考えられる.一方,釧路湿
原は溺れ谷を埋める形で形成された海岸平野である 2).つまり,
釧路湿原では盆地構造になっていることに加え,軟弱な地層
である泥炭層に覆われていることから,周辺からの水が流入
しやすいと考えられる.
(4)硫黄山∼網走地域
同位体比は屈斜路湖の南側に比べ,同一標高では δ18O は小
さい傾向がみられた.これは,気団が降水を連続的に降らす
とき,風上側の斜面の同位体比は高い降水,風下側の斜面で
は同位体比が小さい降水となる山陰効果(内陸効果)の影響
を示している.
図-3 ヘキサダイヤグラム平面分布(河川水)
(2007 年 4 月)
(5)屈斜路湖周辺
硫黄山周辺にある川湯温泉水はpH1.9の酸性のNa-SO4-Cl型
の水質で,それ以外の温泉水はNa-HCO3型の水質であった.
特に川湯温泉水は他に比べ高濃度成分(SO42-,Cl-,Na+)を
含んだ水であった.また,硫黄山のふもとの水はpH2.2の酸性
でSO42-濃度が高かった.硫黄山の水と川湯温泉水は天水線
(δD=8*δ18O +14)から大きく外れていた.高温の水と岩石が
反応することによる酸素同位体交換により,δ18Oが大きくなっ
たと考えられる.神の子池の湧水は,天水線(δD=8*δ18O +14)
上に分布していたが,屈斜路湖の湖水は天水から右側に外れ
ていた.屈斜路湖の湖水は,湖水面からの蒸発によって湖水
に重い同位体が濃縮されたと考えられる.一方,神の子池の
湧水は蒸発している摩周湖の影響は小さく,天水と十分に混
合が進んでいるため,δ18Oが大きくなったと考えられる.
5.結論
調査対象地域では①網走‐斜里地域,②釧路湿原,③根釧
台地の3つの異なった流域があることがわかった.釧路湿原内
の湧水は湿原よりもさらに少なくとも10km以上も上流の河川
流域(湧水の涵養域が湿原よりも上流域)にあることが推定
された.また,釧路湿原(盆地構造)と根釧台地(同斜構造)
では地質構造の違いにより,釧路湿原に周辺から水が流入し
やすいことがわかった.
参考文献
1) 工藤啓介・中津川誠:釧路湿原の水循環と動向について,北海道開
発土木研究所月報報文,No.626,pp.25-47,2005.
2) 小原常弘ほか:北海道水理地質図幅説明書,北海道立地下資源調査
所,昭和48年.
3) 多賀光彦・那須淑子:地球の化学と環境
(第2版)
,
三共出版,
pp.132-133,
2001.
発表文献リスト
・ 北野梓沙・井伊博行・今泉眞之・土原健雄・谷口正伸:酸素・水素
安定同位体比による釧路湿原内の湧水の起源推定,水工学論文集,
第51巻,pp.1099-1104,2007.
図面への適用を考慮した視覚言語を用いたラフスケッチの清書化
Development of Design Drawing System from Sketches Using Visual Languages
和歌山大学大学院 システム工学研究科 環境社会情報クラスタ
デザインシステム計画研究室
60070034 河野 正之
要旨
従来,製品形状設計に使用する曲線を創成する場合,デザイナは描いたスケッチ上の曲線を構成する点列データをコンピュータに入力し,
CAD上で曲線近似したのち,曲率変化を補正し曲線を創成する。しかし,多くの労力を必要とするこの一連の作業を効率化するシステ
ムはほとんど提案されていない。
そこで,本研究では図面に使用される曲線と同程度以上の美しい曲線をデザイナが描いたスケッチから直接創成するシステムの開発を
目的とした。具体的には,まずデザイナが描いた曲線における濃淡の中央線を求める。次に求まった濃淡中央線を曲率単調曲線に分割し,
視覚言語に置換する。さらに,その視覚言語間を美しく接続する。その結果,現状の図面化工程よりも効率よく美しい曲線を創成するこ
とが可能となった。
● Key Words : Design Drawing System, Fairing, Visual Languages
1.はじめに
工業製品の外形形状設計に使用する曲線を創成する際,まずデ
Ձ႕Ѕ
ザイナが描いたスケッチからデジタイザを用いてスケッチの主要
႕ጨ
1
な曲線を構成する点列データを抽出する。次に,得られたデータ
2
をもとに CAD システム上で曲線に近似する。最後に近似曲線に対
しフェアリング [ 注1] を行い,図面に利用可能な美しい曲線を創
ᴮႭȞɜ༟๽ʑ˂ʉɥ
ᬲඒӏአ
ศ፷
3
成する。ここで,フェアリングに多くの労力を必要とすることが
пႭհɁ༟๽ʑ˂ʉ
ӏአϏɁԡґ
問題点として挙げられる。フェアリング作業は膨大な時間を要す
ȻȽɞఊқɁཟ
る。しかし,フェアリングの効率化を図るシステムはほとんど提
n
案されていない。
そこで,本研究では,デザイナが描いたラフスケッチからフェ
༟๽˹‫܄‬ཟȻȬɞ
図 1 濃淡中央点の抽出
アリングされた曲線と同程度の美しい曲線を効率的に創成するシ
ステムの開発を目的とした。具体的には,まずデザイナが描いた
線化しただけでは,中心線が枝分かれしたり線群の形状を中心線
ラフスケッチ上の曲線における濃淡の中央線を求める。次に,求
がうまく捉えられない場合があるため,膨張・収縮処理 [ 注4] を
まった中央線を曲率単調曲線に分割し曲率対数分布図を作成する
用いてノイズを取り除いたのち細線化を行い中心線を抽出する。
[ 注2]。さらに,曲率対数分布図に示される曲率変化の規則性に
その後,中心線を多項式近似する。
基づいた視覚言語(説明は後述する)を創成し,各曲率単調曲線
2.2. 濃淡中央線
を創成した視覚言語に置換する。最後に,置換した視覚言語間を
前節で求まった中心線の近似多項式を利用して原画像から濃淡
美しく接続する。
データを抽出する。まず,近似曲線上に等間隔に点をとり,それ
らの点における法線を求める。その後,作成した法線を使用して
現状の図面化工程では,まずデザイナは外形形状を吟味するよ
原画像から濃淡データを抽出する。ある法線を近似曲線上に作成
し,法線によって切り取られる線幅上の画素数を n としたとき,
うに線を重ねながらラフスケッチを描き,それをもとに1本の美
切り取られた画素それぞれに対して順番に 1 ~ n 番まで番号をつ
しい曲線によりファイナルスケッチを描く。その後,ファイナル
ける。その後,一度全番号の画素が持つ濃淡データを加算し保存
スケッチ上をある間隔でピックしていき,得られた点列データの
する。次に再度1番から順に濃淡データを加算していき,先ほど
座標を CAD システムを用いて曲線へと近似する。それに対し,本
保存した値の半分を超えた位置での画素を濃淡中央点と名付け,
研究ではラフスケッチレベルのスケッチをコンピュータに入力し,
画素座標を保存する(図1)
。この操作を法線すべてに対して行い,
各画素の色を 256 階調のグレースケール画像に変換したのち
(以降,
求まった濃淡中央点の点列の近似曲線を濃淡中央線とする。
2.濃淡中央線の抽出
これを原画像と呼ぶ)
,画像処理手法ならびに提案手法を用いて1
本の曲線を抽出する。ここで,デザイナの描いたスケッチを観察
3.濃淡中央線の視覚言語への置換
した結果,ラフスケッチを構成する線群の濃く重なった部分をファ
現状の図面化工程では,コンピュータ上で曲線を創成した後,
イナルスケッチの線が通る傾向が見られた。そこで,線群の濃淡
ノイズを取り除くためフェアリングを行う。同様に,前章で創成
データを利用して曲線を抽出する。得られた曲線は濃淡中央線と
された濃淡中央線もノイズを含む可能性があるためフェアリング
呼ぶ。以下に濃淡中央線を抽出するフローを示す。
する必要がある。しかし,人の手でフェアリングを行うと前述の
1)ラフスケッチにおける中心線を抽出し,多項式近似する。
とおり効率が悪い。そこで,曲線創成における視覚言語を利用し
2)近似多項式を利用して濃淡中央線を抽出する。
フェアリングの代わりとなる手法を提案する。具体的には,濃淡
2.1. 中心線の抽出と多項式近似
中央線の持つ曲率変化の規則性を分析し,分析結果をもとに同様
中 心 線 を 抽 出 す る た め, 画 像 を 2 値 化 し た の ち Hilditch
の規則性をもつノイズのない視覚言語を新たに創成し,最後に濃
Thinning[ 注3] を用いて細線化する。しかし,単に2値化を行い細
淡中央線を創成した視覚言語に置換する。
創成した接続曲線
置換する曲率
単調曲線
フィッティング
距離差の二乗和を最小
にするCcurveの傾きα
を逐次探索する
曲率単調曲線
創成した曲線
曲率対数分布図
傾きα
置換前の視覚言語
創成された
視覚言語
図2 傾きαの探索アルゴリズム
3.1. 視覚言語とは
人は言語システムと同様に,外形形状に関しても単語に対応す
る形態要素を組み合わせ文章に対応する構成体を作り出してい
る。その単語に相当する形態要素のことを視覚言語は呼ばれてい
る。その中で,原田ら(1994)によって曲線における視覚言語と
それがもつ曲率変化の規則性,与える印象はすでに体系化されて
おり [ 注2],曲線における視覚言語が5タイプに分かれることが
確かめられている。今回は,この曲線における視覚言語を利用す
る。視覚言語にも言語システムと同様に統語法と意味が存在する
が,曲線における視覚言語の統語法および意味の全容は解明され
ていない。
3.2. 視覚言語の同定
前章で得た濃淡中央線を視覚言語に置換するにあたって,まず
濃淡中央線がどのタイプの視覚言語に該当するかを同定しなけれ
ばならない。該当する視覚言語のタイプは,その曲線がもつ曲率
変化の規則性を調べれば判別することができる。ここで,曲率変
化の規則性を図式化する方法はすでに開発されている。本研究で
は,その中で提案されている「曲率対数分布図」[ 注2] を用いて
曲線を分析する。分析結果に表れるヒストグラムの頂点を結んだ
線は C curve と呼ばれ,C curve の傾きαは分析した曲線における
曲率変化の規則性を示す。なお,この手法は曲率単調曲線(曲率
が曲線の端点からもう一方の端点に一様に増加[減少]するもの)
しか扱えない。
そこで,まず得られた濃淡中央線を曲率単調曲線に分割し,各
図3 接続曲線の創成 実行結果
件から直接ベジェ曲線を創成する手法は提案されていない。そこ
で,5次ベジェ曲線を利用して対話的に視覚言語を接続する曲線
(以後,接続曲線と呼ぶ)を創成し,曲率半径の変化の仕方を制御
する手法を考案した。今回は,G2連続 [ 注5] で接続し,かつ両
端点の曲率半径の大きさが一致する条件を付与した。接続曲線を
f (t)=[x(t) y(t)],視覚言語を g(s)=[x(s) y(s)] とし,t=t',s=s' の点で2曲
線が接するとする。また,2曲線の接点における曲率半径を r と
すると,r は式(1)で求まる。G2連続よりそれぞれの微分値を
式(2)とすると,この微分値を用いて算出される曲率半径 R の
a
値は式(3)となり,r が b 倍されていることがわかる。よって,
式(4)を満たすよう係数を設定すればG2連続かつ両端点にお
ける曲率半径の大きさが一致した接続曲線が創成できる。そこで,
この係数を対話的に変化させ接続前の曲率半径の変化の仕方に
則った接続曲線を対話的に創成することとした。その結果,視覚
言語間を曲率半径の大きさならびに曲率半径の変化の仕方を考慮
して接続できた(図3)
。
r
=
{ x´(s´)2 + y´(s´)2 }
3
式
(1)
{ x´(s´) y´´(s´) − x´´(s´) y´(s´)}
f (´t´) = a・g´(s´), f ´(´t´) = b・g´´(s´)
a ,b:係数
R=
a
=1
b
{ x´(s´)2 + y´(s´)2 }
3
a
b
式
(2)
・
{ x´(s´) y´´(s´) − x´´(s´) y´(s´)}
より, b
=
a
b
・r
= a2
式
(3)
式
(4)
曲率単調曲線における曲率対数分布図の傾きαと曲線が与える印
4.まとめ
象およぎ創成される視覚言語の体系化結果 [ 注2] を照らし合わせ,
本研究では以下に示す成果と今後の課題が得られた。
各曲率単調曲線を置換するのに最も適切な視覚言語を同定する。
1)ラフスケッチから図面に利用可能な曲線を創成できた。これ
3.3. 視覚言語への置換
前節での結果をもとに,各曲率単調曲線を視覚言語に置換し元
の位置に再配置する。視覚言語を創成する手法は既に提案されて
おり,発生させる視覚言語の曲線長,C curve の傾きα,曲率半径
の最大値と最小値を設定すれば創成することができる。その際,
曲線長は一意に定まるが,C curve の傾きαや曲率半径の最大値・
最小値は一意に定まらない場合が多い。そこで,まず曲率半径の
最大値・最小値をユーザで定義したのち,指定した傾きの範囲内
で逐次αの値を変化させ曲線を発生させる。その後,置換前の曲
率単調曲線と最も距離差の小さい曲線を創成したαの値を採用し
曲線を創成する(図2)
。尚,傾きの範囲は任意に指定できる。
3.4. 視覚言語の接続
最後に置換した視覚言語間を再接続する。単に曲線を滑らかに
接続する手法は既に提案されている。しかし,現状では接続の条
により作業効率が格段に向上すると考えられる。また,同条
件を与えれば簡単に実行結果を再現することも可能である。
2)現システムでは,視覚言語の同定,接続曲線におけるパラメー
タの決定などの判断に専門的な能力やノウハウを必要とする。
注および参考文献
1)フェアリングとは,測定誤差によって曲率半径が逆方向を向いている箇所の
曲率半径を,同一方向に修正する作業のことをいう。
2)原田利宣 , 森典彦,
杉山和雄:曲線の性質に関する定量化研究 , デザイン学研究 ,
Vol.40, No.6, pp.9-16, 1994
3)C.J.Hilditch:Linear Skeletons from Square Cupboards, Machine Intelligence,
Vol.4, 403-420, 1969
4)河野正之 , 原田利宣:図面への適用を考慮した視覚言語を用いたラフスケッチ
の清書化 , 2008 (accepted)
5)田澤義彦:曲線論・曲面論,株式会社ピアソン・エデュケーション,1999
粒子ベースのスキニング法
Particle-based Skinning
環境社会情報クラスタ
60070037 小宮信吾
概要
キャラクタアニメーションにおいてスキニングによる形状の変形を行う場合,表面の陥没やモデルの収縮などの意図し
ない結果が得られる場合がある.そこで本研究では,相互作用力の働く粒子群を用いたモデルにより,変形の前後で体
積を維持し,モデルの収縮を防ぐ手法を提案する.本手法では,粒子間に働く相互作用力によって,粒子は互いに一定
の距離を保つように振る舞う.骨格による粒子の制御は,粒子と骨格を対応付けして,粒子が骨格から作用力を受け骨
格に付着するように移動することで行う.本手法による変形結果と頂点ブレンディングによるスキニングの変形結果を
比較し,本手法の有効性を示す.
1 はじめに
キャラクタアニメーションでは,仮想的な骨格を形状
内部に定義し,この骨格を制御することにより表面形状
を変形するスキニングと呼ばれる手法が用いられる.こ
の手法において変形後の頂点位置を決定する方法として,
頂点ブレンディングという手法が用いられる.頂点ブレ
ンディングでは,複数の骨格からの影響力の重み付け和
によって表面の頂点位置を決定し,これにより,滑らか
な表面を保った変形が可能となる.しかし,一般的な頂
点ブレンディングでは,変形の際に関節部分において,
表面形状の陥没やモデルの収縮などの意図しない結果が
得られるという問題がある.この問題を解決するために,
Capell ら [1] は有限要素法を用いた弾性物体を骨格で制
御する方法を提案した.この手法では,物理シミュレー
ションの計算に格子を用いており,格子生成に多大な時
間と労力を要する.
本研究では,相互作用力の働く粒子群を用いたモデル
により,変形の前後で体積を維持し,モデルの収縮や表
面形状の陥没を防ぐ手法を提案する.粒子は相互作用力
によって互いに一定の距離を保つように振る舞い,これ
により体積を近似的に保存して変形を行うことができる.
その際,粒子を骨格で制御するために粒子と骨格を対応
付けして,骨格による制御の影響を外力として粒子に与
えることにより,粒子は骨格に付着するように振る舞う.
以上により,体積をほぼ一定に保つことができ,表面形
状がつぶれることなく骨格による変形を行うことが可能
である.また本手法は,与えられた形状に対して自動的
に粒子を充填することができるため,格子を用いた手法
に比べて任意の形状に対応することが容易である.
2 粒子ベースのモデル
粒子ベースのモデルでは,オブジェクト内に大きさが
一定の小さい球状の剛体を相互作用力の働く粒子として
敷き詰める.粒子間に働く相互作用力は,隣接している
と見なされる粒子間にだけ働くものとし,粒子が最密構
造となるように配置された場合,粒子の半径を r として,
√
粒子間距離が 2 2r 以上離れている粒子間には働かない
ものとする(図 1).
2r
√
2 2r
図 1 最密となる粒子の配置と粒子間の相互作用力が働く範囲
2r
図 2 粒子間の距離に応じた作用力
2.1 粒子間に働く相互作用力
各粒子には,粒子間の距離に応じた作用力 f d と,粒
子間の相対速度に応じた減衰力 fv が働く [2].粒子間の
距離に応じた作用力 fd は,粒子の変位に応じて,図 2 の
ように二つの粒子が接する距離(粒子の半径 r の二倍)
を安定状態として,斥力,引力が働く.
粒子間の相対速度に応じた減衰力 fv は,粒子間に働く
摩擦力であり,粒子間の相対的な運動を減少させるよう
に働く.
また,粒子間に働く作用力の影響範囲の大きさのセル
に空間を分割し,粒子が存在するセルと隣接している 33
個のセル内に存在する粒子とのみ作用力が働くかどうか
の判定処理を行うことで処理の高速化を図る.
2.2 粒子が骨格から受ける力
粒子を骨格で制御するために,粒子を骨格に対応付け
して,各粒子が従属する骨格上に基準となる点を設定す
る(図 3).粒子は,骨格上の基準点からの変位に応じ
て作用力 fb を受け,この力は図 3 のように自然長を安定
状態として,粒子が骨格から一定の距離を保つように働
く.また,骨格の軸周りの回転に対応するために,粒子
に骨格の回転方向の力 ft を加える(図 4).
頂点の位置 n
骨格
d2 p2
d3 p3
自然長
基準点
d1
図 3 粒子が骨格から受ける作用力
p1
図 5 粒子と頂点の対応関係
粒子に働く力
のベクトル ft
骨格の回転角
骨格の軸ベクトル
基準点から粒子の位置
へ向かうベクトル
(a) 頂点ブレンディン
グ
図 4 粒子が骨格の軸周りの回転から受ける力
粒子に働く力 f は前節で定義された各力の総和で表さ
れ,以下のように定義する.
(1)
粒子の運動は,次に示す運動方程式に従うものとする.
a = M−1 f(x, v)
(c) 提案手法における
粒子の状態
図 6 腕のモデルの変形結果
3 陰解法による数値積分計算
f = fd + fv + fb + ft
(b) 提案手法
(2)
ここで,a は粒子の加速度,f は粒子に働く力,x は粒
子の位置,v は粒子の速度,M は粒子の質量マトリクス
である.
式 (2) に Baraff ら [3] の陰解法を適用し,共役勾配法
[4] を用いて運動方程式を解いて,位置 x と速度 v を更
新し,アニメーションを行う.
4 任意の形状への適用
形状に沿った粒子モデルを構築するために,形状を包
むように粒子を整然と並べ,粒子から任意の方向へ光線
を飛ばし,形状を構成する面との交差判定を行う.光線
と面との交差回数が奇数であるならば,粒子は形状内部
に存在するとして粒子の有無を決定する.
また,粒子モデルの変形結果を形状へ反映させるため
に,頂点 n と近傍の粒子 p を,粒子から頂点へのべクト
ル d を用いて対応付ける(図 5).
頂点位置は,粒子の移動に伴い,対応する粒子からの
影響の重み付け和によって決定する [5].
5 実験結果
図 6 は腕のモデルに提案手法を適用させた変形結果と
頂点ブレンディングでの変形結果との比較である.提案
手法では,頂点ブレンディングで見られるような関節部
分の内側での表面の陥没は発生していない.
なお,実験に用いた計算機は,Pentium (R) 4 3.40GHz,
メモリ 1GB で,画面の解像度は 640×480 である.
6
おわりに
相互作用力の働く粒子群を用いたモデルにより,変形
の前後で体積を維持し,モデルの収縮を防ぐ手法を提案
した.提案手法を簡単な形状へ適用し,関節部分におけ
る表面形状の陥没が発生することがなく変形を行うこと
ができた.
任意形状への粒子モデルの構築は,形状に対する粒子
の内外判定を行い,自動的に生成することができた.
しかし,形状の特徴を保持した精密な変形を行うため
には,形状に対して粒子の大きさを十分に小さくする必
要があり,これにより粒子数が増大してしまう.
今後の課題として,形状の表面付近の粒子を小さくし,
形状変化に与える影響が少ない内部の粒子を大きくし,
粒子を階層的なモデルにすることで計算する粒子の数を
減らし,処理の高速化を図りたい.
参考文献
[1] Capell, S., et al., “Interactive Skeleton-Driven Dynamic Deformations”, In Proc. SIGGRAPH ’02,
pp.586–593, ACM Press, New York, 2002.
[2] 小田泰行,村岡一信,千葉則茂,“仮想粘土の粒子
ベース・ビジュアルシミュレーション”,情報処理学
会論文誌,Vol.42,No.5,pp.1142–1150,May, 2001.
[3] Baraff, D., and Witkin, A., “Large Steps in Cloth Simulation”, In Proc. SIGGRAPH ’98, pp.43–54, 1998.
[4] 藤野清次,張紹良,“応用数値計算ライブラリ 反
復法の数理”,pp.23–36, 株式会社朝倉書店,東京,
1996.
[5] Debunne, G., Desbrun, M., Barr, A., and Cani, M.-P.,
“Interactive multiresolution animation of deformable
models”, In Eurographics Workshop on Computer Animation and Simulation, pp.133–144, Sep, 1999.
廃棄物最終処分場の適地選定手法に関する研究
60070039 崔 丹丹
た資料を最大限活用することを意図して作成してい
1. はじめに
る(表1参照)。
廃棄物最終処分場の立地問題は総論賛成各論反対
のNIMBYの典型であり、合意形成な困難な問題で
表1 廃棄物最終処分場の評価指標と評価基準
ある。最終処分場は地下水汚染等の環境リスクがあり、
評価項目
評価指標
地すべりブロック、斜面崩壊跡の有無
また自然災害のリスクも併せ持つものであることを
認識するならば、これらのリスクを小さくするような
用地選定を行うことが合理的であるが、住民との合意
形成を考えれば、選定過程が住民に理解されることが
不可欠であると考えられる。そこで、本研究は、多数
の最終処分場候補地から、既存データをもとに立地条
件を評価し、複数の適地選定するに際して、論理的か
つ分かりやすく、実務的にも実行可能な用地選定手法
を構築することを目的とした。
自 地形・地質
リニアメントの有無
然
地質による地すべり素因の有無
条
件
動植物
候補地周辺の植生自然度8以上の面積比率
評価基準
△ (3点)
ー (5点)
表層崩壊地形がある
崩壊地形がほとんどない
リニアメントがある。但し不
ー
リニアメントがない
明瞭なものは(△) 4点
熊野層群または田辺層群 四万十帯または熊野酸
ー
の泥岩。砂岩の場合は4点 性岩類
候補地から200mの範囲のうち、自然度10・9・8(自然林、自然草原、自然林に
近い二次林)の占める面積の割合を、5∼1点に数値化する。
● (1点)
地すべり地形がある
洪水流出量を5∼1点に数値化する。
土砂流出発生面積を5∼1点に数値化する。
候補地からの距離を5∼1点に数値化する。ただし、500m以上は5点とする。
社 利水・地下水
ー
漁業権の設定がある。 漁業権の設定がない。
候補地からの距離を5∼1点に数値化する。ただし、500m以上は5点とする。
搬入道路に隣接する住宅 搬入道路に隣接する住宅 搬入道路に隣接する住宅
会
想定される搬入道路ルートに隣接する住宅戸数
等の戸数が10戸以上 等の戸数が1以上、10戸 等の戸数はなし
計画地に隣接・
近接する住宅等
計画施設と直近住宅等と
計画施設と直近住宅等と
計画施設と300m以内に
j条 への環境影響 直近住宅等と候補地との距離
の距離が100m以上、300
住宅等なし
の距離が100m未満
m未満
件
洪水流出量
溪床勾配15°以上の流域面積
下流農地と候補地の距離
漁業権の有無
未給水区域住宅と候補地の距離
水文
確保が困難
3,000m2から5,000m2未満 5,000m2以上
障害、懸案事項があり 障害、懸案事項があり 調
計画面(設計)、施工面での障害、懸案事項の有無
障害、懸案事項なし
適正に劣る
整を要する
熊野古道(世界遺産)、ラ 熊野古道(その他)、学校、
熊野古道、ラムサール条約登録区域等からの視
文化的景観
ムサール条約登録区域 保育園等から候補地が眺 問題がない。
認性
から候補地が眺望でき 望できる。
搬入車両走行による年間CO2排出量
環境負荷
年間温室効果ガス(CO2換算値)総排出量の結果を5∼1点に数値化する。
搬入道路建設に
候補地からの距離を5∼1点に数値化する。ただし、1000m以上は1000m
国・県道から新設・改修の必要な道路延長
伴う環境影響
として扱う。
関連施設用地として確保できる平坦部面積
施設配置の適性
2. 研究対象
廃棄物最終処分場用地選定の全体の手順は図1の
3段階で構成される。そのうち、本研究は候補地の絞
込みを行う第2段階を対象としている。第2段階の手
環
境
条
件
最終処分場用地選定のための評価指標と評価基準
順は図2に示すとおりである。
・除外地域の設定
② 評価基準の作成:各評価項目の評価結果を整理す
・候補地の抽出
る上で、有意な差が表現できるよう、評価基準を設定
第2段階
・候補地の絞込み
する。その方法として、平均を 3 点とし、評価点が1
第3段階
・詳細調査
第1段階
点から 5 点の範囲に分散させる方式を提案した。
図1 用地選定の全体の手順
評価項目の作成
評価指標の設定
③ 項目別の候補地の評価:既存資料から各評価指標
を読み取り項目別評価を行う。
評価項目の重み付け
4.
評価基準の作成
評価項目の重み付け
① 重み付け手法:評価項目間の相対的な重要度を設
項目別の評価
定するに際してAHP(Analytic Hierarchy Process)
等の手法を検討した。表2に示すように各方法とも一
総 合 評 価
長一短である。ここでは評価項目を階層化したことに
図2 第2段階の手順
より、同時に比較すべき項目は3つに限られることか
ら、最も簡便なすなわち説明容易な直接評価法を採用
3. 評価項目、指標、基準の作成
した。
① 評価項目と評価指標の作成:自然災害リスク、生
② 重み付けアンケートの集計方法:表3のように集
活環境影響等を考慮し最終処分場としての適性を示
団の意思決定問題に直接評価法を適用した手法とし
す9つの評価項目を作成した。この評価項目を、3つ
て、話合い法、算術平均法と意思決定ストレス法があ
の条件に整理し、表 1 のように階層化した。また、現
る。評価者間の対立が小さい場合には、算術平均法と
地調査を行わずに既存資料のみで評価するため、各評
話合い法が簡単に集団の意見を集約できる。これらの
価項目について評価指標を設定した。これらの指標は、
方法では、対立する意見を持ったグループが存在する
地形図、地質図、航空写真、植生自然度図等、得られ
場合や、重みが分散している場合には問題となる場合
がある。評価者間の対立が大きい場合には、計算が煩
なかった。しかし、重み付けは評価者属性によって変
雑でも、集団意思決定ストレス法で集団の意見を集約
化することが容易に推測できるから、重み付けの変化
することが受け入れやすいということである。
が評価結果にどう影響するかをファジィAHPを活
手法
話合い法
A
H 幾何平均法
P
の
一
対
比 区間AHP法
較
法
意思決定ストレス法
点数付け法
重
み
付
け
法 直接評価法
表 2 重み付け手法の比較
利点
欠点
話合いで納得やすい結果が得
・かなりの時間が必要
られる
・力の関係で不平、不満が生じる可能性
が高い
幾何平均値を取るとすべての
対称の位置の要素が逆数であ ・重み付けの分散に注意する必要がある
る
・メンバーの意見とも大きく離れる場合
が生じる点がある
・首尾一貫性のある結果を得 ・共通する区間が存在しない場合には、
ることができる
質の高い合意形成はあまり期待できない
・各メンバーが受け入れやす
い結果を作り出すことができ ・共通区間を決めることが難しい
る
・各メンバー不満の総合が最
・計算式が難しい
小にできる
・集団の中での個々人の評価
・理解することが難しい
位置を提示できる
理解することが容易である
評価者を格付けする方法
話合い法
し、総合評価することは、合意形成上、有意義である
といえる。
6. まとめ
本研究では以下に示す成果が得られた。
1)「問題の構造化」、
「各評価項目に関する代替案の評
価」、
「評価項目の重み付け」、
「代替案の評価値と評価
・重みを求めることが難しい
項目の重みを積算した総合評価」という階層化意思決
・大人数に質問する必要がある
定手法を構築した。
・評価項目間の関係が強いとき順位を決
めることが困難である
・重みの評価を直接的に反映 多数の評価項目の重みを同時に決定する
することができる
ことは一般的に困難である
・重み付け設定者の感覚に一
致した結果が得られる
表 3 集団の意思決定問題に直接評価法を適用した方法の比較
評価者を等価に扱う方法
利点
欠点
算術平均法
用して、感度分析を行って、その結果を総合的に考慮
集団版の一対比較行列の作成
を不要とし、かつ参加者を平等 対立グループがある時、単に間をとるでは、
に格付けようとする場合に有効 どちらも納得しない、不満を生じる。
である。
利点
欠点
時間がかかる。メンバー間の力の関係で集
話合いで納得やすい結果が得
団の意見が極端に左右されるため、不平、不
られる
満が生じやすい。
評価者の見解の保持と不満の
総合が最小にできる。
格付けの配分、すなわち評価者の「一票の
集団意思決定ストレス法 評価者の原始データを操作し
ないため、区間AHP法のよう 重み」を決めることが難しい。
に評価者に許容区間を申告さ
せる必要がない。
2) 候補地の評価において、代替案の平均値と分散を
利用する手法を導入することによって、評価を客観的
に、定量的に表現できた。
3) ファジィAHPを利用した総合評価では、感度分
析によって、問題がどのような構造を持っているのか
を考えるのに役立つ。その結果を総合的に考慮し、総
合評価することは、合意形成上、有意義であるといえ
る。
今後の課題として、建設コストなどの経済条件の考
慮、評価項目・指標・基準の充実、多人数での評価を
容易に行う手法の開発があげられる。
5. ファジィ AHP を利用した総合評価
参考文献
① 総合評価:通常のAHP法では「項目別の評価」
1) 木下栄蔵
に「評価項目の重み付け」によって得られた係数を乗
ク,日科技連, pp.92-104,2001
じ、指標すべてについて合計することで、候補地の総
2) 木下栄蔵
合点が算出される。総合点の大小で代替案の順位が決
−117,2000
定される。評価者の価値観は多様であり、評価者が変
3) 古市徹・田中秀和,海面埋立処分場の立地選定評価への
われば評価項目の重み付け結果も変化するから、重み
λファジィ測度法の適用,廃棄物学会論文誌、
付けを一意的に決定することは本来不可能であると
Vol9,No.6,pp246-255,1998
いえる。そこで、重み付けの変化が代替案評価にどの
4) 高橋富男・古市徹,廃棄物計画のための市民参加と住民
ように影響するかをファジィAHPにより分析し、そ
合意,廃棄物学会誌,Vol.13,No.3,pp.128-137,2002
の結果を総合的に評価する手法を検討した。ファジィ
5) 古庄香哉・樋口壮大郎・高橋富男・森孝信,最終処分場
AHPは、特長のある代替案を高く評価(代替的評価)
建設における第三者専門機関による住民合意支援について,
したり、欠点のない代替案を高く評価(相乗的評価)
第15回廃棄物学会研究発表会講演論文集,2004,A11-2
したりでき、多様な評価視点を考慮した評価が可能で
6) 高萩栄一郎,ファジィ測度―ショケ積分モデルによるA
ある。
HP,専修大学
② 感度分析:感度分析のケースは、ⅰ大項目(自然
7) 吉田登,都市環境計画, 講義資料, 2007
条件、社会条件、環境条件)の重みがすべて同じ場合、
http://www.wakayama-u.ac.jp/~yoshida/urb_env/index.ht
ⅱアンケートで求めた重みにより総合評価を行う場
ml
合、ⅲ大項目のうち、1つの重みを変化させた場合と
発表文献リスト
いう3つのケースを設定した。
1) 崔丹丹・金子泰純・井伊博行・廣畑賢一・白鳥寛,廃棄
この例では代替案の評価点差が小さいため、順位の
変化も少なく、AHP評価との結果に大きな差は生じ
著,入門数理モデル
評価と決定のテクニッ
編著,AHPの理論と実際,日科技連,pp.78
商学研究所報
第 116 号,1997
物最終処分場の用地選定手法に関する研究,第17回廃棄物
学会研究発表会
−2,2006
講演論文集Ⅰ,pp242-244,ポスター1 A9
ኚ᭿䛴ẴῺ୕᪴䛒 䝖䜰䝷䝔䝎䛴 㛜ⰴ䛱ཀྵ䜂䛟ᙫ㡢㻃
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DEM を用いた粉粒体シミュレーションの GPU 上への実装
Simulation of Granular Object using DEM on GPUs
環境社会情報クラスタ
60070056 高田信一郎
概要
粉粒体と呼ばれる物質のシミュレーションを行う手法の1つとして, DEM(Distinct Element Method) がある.DEM
は粉粒体を構成する粒子の振る舞いを,その粒子自身に作用する力を元に計算する手法である.本研究では,高速な粉粒
体シミュレーションを実現するために,DEM を GPU 上で実装する手法を提案する.GPU で汎用計算を行う場合,入
出力データをテクスチャとして扱う必要がある.そこで,必要となるデータをテクスチャとして用意し,それらのデー
タを GPU 上で効率よく利用することで粉粒体全体の振る舞いを計算する.
1
断方向を表し,I は慣性モーメント (= ρp πr 4 /2),ρp は
はじめに
コンピュータグラフィックスの重要なテーマに自然現
粒子密度,r は粒子半径である.
象の表現がある.近年,その中の1つである粉粒体と呼
式 (1) に対して,時間増分 ∆t でオイラー法を用いた
ばれる物質が注目されている.粉粒体は,砂に代表され
数値積分を行う.これにより変位増分が求まり,時刻 t
るような非常に多くの粒子を含む物質であり,その振る
での粒子の位置を計算できる.
上記の処理を全ての粒子に対して行うことで,全体の
舞いの表現に関する多くの研究が行われている [1][2].ま
た,コンピュータの高性能化やシミュレーション技術の
振る舞いを求めることができる.
向上に伴い,個々の粒子の挙動を計算することで全体の
3
振る舞いを求めることが可能となってきている [3].
GPU 上への実装方法の提案
本研究では,DEM を用いた粉粒体シミュレーション
本研究では,DEM(Distinct Element Method) という
粉粒体シミュレーションを行う.DEM は個々の粒子に作
の GPU 上への実装方法を提案する.
3.1 アルゴリズムの概要
本研究では,1 タイムステップ内で大きく分けて 4 つ
用する力を用いてその粉粒体全体の振る舞いを計算する
の処理を行う.
粉粒体の数値計算に利用される手法を用いて,2 次元での
手法であり,極めて並列的な処理である.この処理を並
列計算に特化した構造を持つ GPU(Graphics Processing
3 近傍領域に存在する粒子同士の接触力計算と各粒
°
子の作用力の計算
Unit) 上に実装することで,処理の高速化を図る.
2
DEM
DEM(Distinct Element Method) とは,砂に代表され
る非連続流体の振る舞いを,個々の粒子に働く力を考慮
して計算する手法である [4].
粒子に働く力は様々な方向に作用するため,計算の便
宜上,接触 2 粒子の中心方向 (法線方向) 成分とそれに
垂直なせん断方向成分にわけ,それぞれの成分に対する
運動方程式を求める.
質量 m の粒子に働く力を F ,並進変位を u,回転変位
を ψ ,バネの弾性係数を K ,ダンパの粘性係数を η とす
4 データテクスチャの更新
°
必要となる入力テクスチャは,
「座標」,
「速度」,
「粒
子−境界間に作用する弾性力 (法線方向)」,
「粒子−境界
間に作用する弾性力 (せん断方向)」,
「接触粒子間に作用
する弾性力 (法線方向)」,
「接触粒子間に作用する弾性力
(せん断方向)」,
「境界からの各粒子に作用する接触力」,
そして近傍領域に存在する粒子の番号を格納した「近傍
粒子番号」の計 8 枚で,すべてのテクスチャのサイズは,
粒子の総数と等しいピクセル数を持つ 2 次元テクスチャ
である.
3.2 近傍領域に存在する粒子の探索
GPU で各粒子に作用する力を計算する前に,計算の
ると,運動方程式は次式になる.
dun
d 2 un
+ ηn
+ Kn un = 0
dt2
dt
2
d us
dus
m 2 + ηs
+ Ks us = 0
dt
dt
2
d ψ
dψ
I 2 + ηs r2
+ Ks r 2 ψ = 0
dt
dt
1 近傍領域に存在する粒子の探索
°
2 境界との接触力の計算
°
m
対象となる粒子に衝突する可能性のある粒子 (近傍領域
(1)
ここで,添え字 n,s はそれぞれ法線方向およびせん
に存在する粒子) の探索を行う.この処理は CPU 側で
行い,近傍領域に存在する粒子の番号を,近傍粒子テク
スチャに格納する (図 1).各要素にはそれぞれ 1 つの粒
子番号を格納することができる (最大で 4 つ).粒子が存
在しない場合には,その要素に-1.0 が入る.
図 3 実行速度の比較結果と実行結果
4
図 1 近傍領域内の粒子を格納
実行結果
GPU を利用したプログラムとそうでないものとで実
行速度の比較を行ったグラフと,実行結果を図 3 に示す.
シミュレーションは,Pentium4 3.40GHz,メインメモリ
1.0GB,ATI RADEON X300(コアクロック:325MHz/
メモリクロック:200MHz) を搭載した PC で行った.粒
子の数は 4096 個,差分時間は 2.0 × 10−4 である.
GPU 上へプログラムを実装することで,処理全体を
より高速に実行できることを期待したが,処理速度の向
上には至らなかった.
5
おわりに
本研究では,2 次元での DEM を用いた粉粒体シミュ
レーションを GPU 上へ実装した.しかしながら,図 3
で示したように提案手法ではあまり良い結果を得ること
図 2 近傍粒子テクスチャを用いたサンプリング
ができなかった.提案手法では 8 種類のデータテクス
チャを使用する必要があり,効率のよいアルゴリズムで
3.3
接触力と各粒子の作用力の計算
はない.
粒子同士の接触力を計算する前に,全ての粒子に対し
今後,実時間でのプログラムの動作を実現するために
て境界との接触力の計算を行う.その結果を中間データ
は,計算精度をある程度落としてアルゴリズムの単純化
(境界からの各粒子に作用する接触力テクスチャ) として
を行わなければならない.また,最新の GPU へプログ
出力し,次の処理で利用する.
ラムを移行することも必要である.
境界との接触力計算の後,近傍粒子テクスチャを利用
参考文献
し,全ての粒子に対し,その粒子の近傍領域内に存在す
[1] K. Onoue and T. Nishita. “An Efficient Method
る粒子との接触力の計算を行う.まず,接触力計算の対
for Displaying Marks on Soft Grounds Created by
Objects”. IIEEJ 2003 (Jornal of IIEEJ), Vol. 32,
No. 4, 2003-7.
象となる i 番目の粒子を現在のフラグメントの座標から
求める.次に,i 番目の粒子の近傍領域に存在する粒子
の番号を,近傍粒子テクスチャからサンプリングする.
格納されている粒子の番号を利用して,計算に必要な値
[2] Y. Zhu and R. Bridson. “Animating Sand as a
をテクスチャからサンプリングする (図 2).得られた値
Fluid”. SIGGRAPH 2005, pp. 965–972, 2005-4.
を DEM に適応し,粒子間での接触力を計算する.
「粒子−境界間の接触力」,
「粒子間の接触力」,
「重力」
を合成した力が粒子に働く最終的な作用力となる.得ら
れた作用力と式 (1) を利用して加速度を求め,オイラー
法を用いた数値積分を行って粒子の位置を更新する.
[3] 越塚誠一. “粒子法による流れの数値解析”. 日本流
体力学会誌, Vol. 21, No. 3(20020625), pp. 230–239,
2002.
[4] 粉体工学会. “粉体シミュレーション入門”. 産業図
書, 1998.
2007 年度
環境社会情報クラスタ
修士論文
兵庫県蘇武トンネル周辺の地下水流動解析
環境社会情報クラスタ
1. 序論
60070095 水内
絢子
水 に 大 き く 影 響し て い る 流域 で あ る と い える . 比 流 量が
国道 482 号蘇武トンネルは兵庫県城崎郡日高町(現豊岡
1000mm/year/km2 以上 1400mm/year/km2 未満の流域は,トンネ
市)と同美方郡村岡町(現香美町)を結ぶ延長 3692m のトン
ル日高側坑口の南部の下流域や村岡側坑口北部で見られた.
ネルである.このトンネルは,両町の交通の不便を解消する
比流量が 2000mm/year/km2 以上の流域は,日高側坑口北部と
ために 1997 年 10 月から工事が着手された.
工事を進める中,
南部の流域であり,トンネル掘削による湧水の影響が少ない
1999 年 8 月 17 日に日高町側(工事区間 2478m)
,村岡町側(工
流域であると考えられる.
事区間 1214m)の両坑口から約 2km の地点で,約
8m3/min
の異常出水と天端崩落が発生した.トンネル掘削の進行に伴
3.2
降水量の推定
い切羽・側壁からの湧水が増大し,2000 年 11 月の貫通時に
降雨量は,流域内 7 地点で観測されており,この降雨量デ
は日高側坑口で約 20 m3/min,村岡側坑口で約 12 m3/min,
ータと積雪水量調査による積雪水量データを用いて流域の降
合計約 32 m3/min の湧水量となった.この持続的かつ膨大な
水量について考察した.村岡気象観測所(標高 220m)を基準
量のトンネル湧水は,周辺流域の河川の枯渇,流量減少を引
に降水量比をとり,流域の平均標高データをパラメーターと
き起こすと考えられた. そこで,環境同位体と流量データを
して流域の降水量を推定した(図 2).尾根部を含む上流域で
用いてトンネル湧水の起源推定を行い,トンネル湧水を含む
3600mm/year 以上,下流域で 2900mm/year と推定される.
蘇武地域全体の広域な地下水流動の解析を行うことを本研究
の目的とした.
3.3
蒸発散量の推定
2. 本研究対象地域概要
Thornthwaite 法は気象学・水文学の分野で広く適応されてお
流域の蒸発散量は Thornthwaite 法を用いて算出した.
本研究対象地域周辺は標高約 400m から 1000m 級の山々
り,気温と対象地点緯度(本研究対象地域:緯度 36 度)に対す
が連なる山岳地帯である.また,この地域は年間 2000mm を
る月別の可照時間を変数として算出する方法である.蒸発散
超える多雨地域であり,豪雪地域でもある.蘇武トンネルの
量は各流域ともあまり変化がなく,約 670∼700mm/year を
南南東にある調査付近最高峰である蘇武岳(標高 1074m)か
示している(図3).
ら北から北西へと伸びる尾根は,蘇武トンネルを中央部で横
切って北西の白菅山(標高 896m)へと連なっている.トン
3.4
ネル施工中に多量出水が発生した箇所は,断層破砕帯や鉱化
変質帯の背面,あるいは割れ目が発達した流紋岩やひん岩な
大量のトンネル湧水の出水によって渇水の影響が出
た流域を検討するために,地下浸透能の評価を行った.
どの硬質岩盤であり,この地域の地下水は割れ目タイプ(裂
求めた比流量・降水量・蒸発散量を用いて,各流域の地下浸
か水タイプ)であることが考えられる.
透量を算出した(図4).尾根部を含む標高 700m 以上の上流域
地下浸透能の評価
で地下浸透量が多いことがわかる.標高が高い流域は,降水
3. 流量測定による地下浸透量の推定
量が多くなる分,比流量が多くなるはずだが,比流量が低く
3.1
なっていることがわかる.一方で,下流域では,降水量が上
比流量
トンネル建設以前は,地下に浸透した水の一部が河川に流
流域よりも少ないことや,比流量が多くなっている.これは,
出していたが,建設によって地下浸透した水の一部がトンネ
地下浸透量が,標高の高い上流域で多く,下流域で少ないこ
ルへ供給されたために,河川流量が減少することが考えられ
とを意味する.つまり,標高の高い上流域は,トンネル掘削
た.そこで,分割した 21 の流域ごとに測定された流量データ
による湧水によって強く影響を受けた流域であると考えられ
を用いて比流量を算出した(図1).日高側坑口の直上の流域で
る.つまり,トンネル湧水は,標高の高い上流域から供給さ
1000mm/year/km2 以下の低い比流量となり,トンネル湧水の出
れている可能性が高いと考えられる.
3000mm/year
3000∼3200mm/year
600mm/year
1000∼1400mm/year/km2
3200∼3400mm/year
670∼680mm/year
3400∼3600mm/year
1400∼1600mm/year/km2
日高側
以下
500mm/year/km2 以下
500∼1000mm/year/km2
4000mm/year
2000mm/year/km
690mm/year
以上
以下
500∼1000mm/year
1000∼1500mm/year
1500∼1800mm/year
2000mm/year 以上
680∼690mm/year
3600∼3800mm/year
1600∼1800mm/year/km2
500mm/year
以下
以上
村岡側
図1
比流量分布
図2
推定降水量分布
図3
蒸発散量分布
図4
地下浸透量
3.5
年間を通して標高の高い上流域から山体を通って供給された
トンネル湧水量と地下浸透量
3
山全体への降水量は年間約 7000 万 m である(図 5).この
と考えられる.
うち,地下浸透能の評価を行った結果,流域全体での地下浸
透量は約 46m3/min であり,年間にすると約 2400 万 m3 にもな
5.結言
る.トンネル湧水の可能性が高い流域は低比流量流域であり,
流量データより地下浸透量を算出した結果,流域全体で約
低比流量流域の地下浸透量は約 1300 万 m3/year となる(図 6).
46m3/min あり,低比流量流域だけでも約 25m3/min もの浸透量
尾根を挟んで豊岡市側の低比流量流域の地下浸透量は約 760
がある.よって,低比流量流域だけでもトンネル湧水を十分
万 m3/year,香美町側は約 520 万 m3/year である.よって,低
に供給できることがわかった.地下浸透量が多い流域は,同
比流量流域の地下浸透量だけでトンネル湧水量を十分供給す
位体比の結果より,軽い同位体比に富む水が分布しており,
ることができる.図 6 に低比流量流域と地下浸透量の分布図
トンネル湧水の同位体比と類似していた.トンネル湧水の同
を示し,その分布図に断層を合わせたものを示す.トンネル
位体比が豊岡市側と香美町側で同じ値を示していることから,
と垂直に断層が走っていることから,断層を通って地下水が
同じ地域からの供給であることが分かる.トンネルと垂直に
流れトンネルの両側に湧水が流れ出たと考えられる.
断層が走っていることから,断層を通って地下水が流れトン
ネルの両側に湧水が流れ出たと考えられる.よって,蘇武ト
ンネルでは尾根部が地下水の涵養において重要であると考え
4.環境同位体によるトンネル湧水の起源推定
図 7 に本研究対象地域の水素・酸素同位体比の関係を示す.
られる.
トンネルの標高は 380m∼400m であり,トンネルとほぼ同じ
標高に位置する流域の沢水の同位体比と比較すると,トンネ
参考文献
ル湧水は全体的に軽い同位体に富む水であった(平均 δD=−
1) 水理公式集,平成 11 年版,土木学会,水理委員会,pp.37∼38,1999.
9.40‰,δ18O=−50.58‰)
.季節によってトンネル湧水の供給
2) 後藤大輔,井伊博行,平田健正,吉国孝成,大塚康範,金川正敏:
源に違いがあると考えられる(図 8)
.夏期(7∼10 月)は,標
環境同位体と流量測定によるトンネル湧水の起源推定, 環境工学
高 700∼1000m の流域とトンネル真上付近の流域がトンネル
研究論文集,第 41 巻,pp.665-674,2004.
湧水の同位体比と近い値を示した.しかし,トンネル真上付
3) 町田功,近藤昭彦:わが国の天然水における酸素・水素安定同位
近のデータは平均値であり,年間を通してばらつきがある.
体比−環境同位体データベースを用いた解析−,水文・水資源学
トンネル湧水の同位体比の値がほとんど変化しないことから
会誌,Vol.16,No.5,pp.556-569,2003.
トンネル真上付近はトンネル湧水の起源とはなりえないと考
4) 井伊博行:環境同位体を用いた河川水・地下水の物質起源の解析,
えられる.冬期(11∼3 月)においては標高 700∼1000m の流
地下水技術,第 42 巻第 4 号,2000.
域のみがトンネル湧水の同位体比に近い値を示した.従って,
3
降水量 7000万m /year
2123
874
1508
地下浸透量 46m 3 /min
2400万m 3 /year
低比流量流域 1300万m 3 /y ea r
1626
香美町側
豊岡市側
3
7m /min
3
11m /min
3
3
360万m /year
570万m /year
図5
-10.0
-9.5
δ18 O(‰)
-9.0
-8.5
図6
水収支の概略図
夏期(7 月∼10 月)
-8.0
-20
雪の天水線 δD=8×δ18O+34.8
低比流量流域と地下浸透量
冬期(11 月∼3 月)
冬期(11 月∼3 月)
-25
豊岡市
豊岡市
-30
-45
白菅山(896m)
白菅山(896m)
香美町
香美町
-9.0∼-9.3‰
-8.7∼-9.0‰
-8.4∼-8.7‰
-8.1∼-8.4‰
-8.1‰以下
δD(‰)
-40
-50
18
トンネルの天水線 δD=8×δ O+24.6
18
雨の天水線 δD=8×δ O+17.7
-55
沢水
雨
-60
雪
トンネル湧水
-65
(1074m)
蘇武岳(1094m)
(1074m)
蘇武岳(1094m)
本研究対象地域の水素・酸素同位体比
の関係
δ18O
-9.6‰以上
-9.3∼-9.6‰
-35
図7
2128
1446
520万m 3 /year
760万m 3 /year
1662
1447
図8
トンネル湧水と沢水の酸素同位体比分布図
トンネル湧水
沢水
判別分析およびラフ集合を用いた WEB 販売システムの開発とその比較研究
Development of online shopping systems using discriminant analyses and rough sets, and comparison of optimum solutions
和歌山大学大学院 システム工学研究科 環境社会情報クラスタ
デザインシステム計画研究室
60070114 山田 悦明
要旨
今日,WEB サイトを利用した商品検索・購入が一般化している。WEB には膨大な商品数があり,目的の商品に絞り込むためには多
数の検索項目を設定しなければならない。 したがって,現状の検索項目による検索では,ユーザが効率よく検索することは困難である。
そこで,本研究では,ユーザが直感的に選好した商品をもとにデータマイニングを行い,ユーザに適した商品を推薦する検索支援シス
テムの開発を目的とした。具体的には,中古車検索サイトをケーススタディとして,判別分析およびラフ集合を用いて,ユーザの選好
に影響する属性・属性値を推論し,その属性・属性値を含む商品を推薦するシステムを開発した。また,比較実験によって,分析用デー
タ構造が同じである判別分析(線形手法)とラフ集合(非線形手法)の両手法のうち,どちらが推論エンジンにおいて有効か検証した。
その結果,ラフ集合を用いた推論エンジンのほうが中古車検索において有効であることを示した。
● Key Words : discriminant analyses,rough sets,used cars retrieval sites,reasoning engine,data base
1.はじめに
今日,WEB サイトを利用した商品検索・購入が一般化している。
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ᴯ© ೫ጪፀ౓ɥ᚜ᇉ
WEB には膨大な商品数があり,目的の商品に絞り込むためには
多数の検索項目を設定しなければならない。特に中古車検索では,
車種,価格,年式などの項目(以下,判別分析では説明変数,ラ
フ集合では属性・属性値)があり,用語が難しく条件が複雑である。
したがって,現状の検索項目による検索では,ユーザが目的の商
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品を効率よく検索することは困難である。また,近年,推薦シス
テムとして,協調フィルタリングが注目されているが,過去のユー
ザの嗜好情報を多く蓄積しないと,商品は推薦されないという問
題がある。
そこで,本研究では,ユーザが特に検索項目を意識せずに直感
的に選好した商品をもとにデータマイニング(判別分析およびラ
フ集合)を行い,過去の嗜好履歴を必要とせずユーザに適した商
品を推薦する検索支援システムの開発を目的とした。具体的には,
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中古車検索サイトをケーススタディとして,判別分析およびラフ
集合を用いて,ユーザの選好に影響する属性・属性値を推論し,
その属性・属性値を含む商品を推薦するシステムを開発した。さ
らに,推薦された商品をユーザが再び選好し,システムが前回よ
りも評価が高い商品を推薦するという適合性フィードバック [1]
のインターフェースとした。次に,
比較実験によって,分析用デー
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図1 システムの概要とインターフェース
評価方法(3章で詳述)の上位 20 位の中古車を推薦する。
6) 終了条件(3章で詳述)を満たせば,その時点の推論解を最
タ構造が同じである判別分析(線形手法)とラフ集合(非線形
適推論解として検索を終了する。満たしていなければ,2)
手法)の両手法のうち,どちらが推論エンジンにおいて有効か
に戻る。
を示した。
3. 推論エンジンのアルゴリズム
2.システムの概要
3. 1.判別分析による推論エンジンの手順
提案するシステムの概要を以下に示す(図1)
。
前章2)で出力された結果をもとに中古車の説明変数と前章3)
1)ユーザが,価格,ボディタイプなどの属性6種を検索条件(以
でのユーザの評価をもとに目的変数を設定し,それらの関係を表
下,初期検索条件 Q0)として設定し,約 1 万台のデータベー
す行列(以下,星取り表)を作成する。
スの中から検索をする。ただし,設定していない属性があっ
一般に判別分析を行う場合,目的変数に寄与する説明変数を選
ても良い。
択した後に分析を行う変数選択法が用いられる [2]。変数選択法
2)該当する中古車から 20 台をランダムに表示し評価対象とする。
には,変数増加法,変数減少法,変数増減法,変数減増法があるが,
3)ユーザが2)の中古車を2段階(お気に入り [ 結論1],どち
ここでは説明変数がサンプル数の 20 サンプルよりも多いため変
らでもない [ 結論2])で評価する。
4)推論エンジン(3章で詳述)によって,ユーザが意識してい
数増加法を用いた。変数増加法とは説明変数が1つも含まれない
状態からスタートし,本研究では下記のような手順で変数を1つ
ない属性・属性値も含めユーザの選好に影響をあたえる属性
ずつ増加させる。
値を推論する。
1)目的変数と各説明変数との相関係数を求め,最も高かった説
5)4)の結果の属性値を含む中古車の中から,推論エンジンの
明変数を選択する。
2)すでに含まれた変数に加えて,残りの変数を1つずつ順番に
表1 比較実験で用いた中古車の属性・属性値
採用し,線形判別関数の係数に関する検定量 F を求める。そ
ᒓᛶ
して,F が最大となる変数を選ぶ。
3)残りの変数がなくなった場合,または取り込んだ変数がサン
౯᱁
プル数と等しくなれば終了する。そうでなければ2)に戻る。
次に,選択された説明変数をもとに線形判別式(以下,判別式)
を求める。選択された p 個の変量に対して,判別式は,
ᖺᘧ
となり,判別得点 z が z ≧ 0 正であれば [ 結論1] の群,z < 0 で
㉮⾜㊥㞳
あれば [ 結論2] の群に属することを意味する。したがって,判
別得点が高い中古車は,[ 結論1] 群に属し,選好される可能性
が高いため,初期検索条件 Q0 に該当する中古車を各々,式(1)
䝪䝕䜱ᙧ≧
に当てはめ判別得点を求める。そして,判別得点の値が高い上位
20 位の中古車を推薦する。
なお,分析回数 n 回目の分析結果の判別式を zn とすると,次の
ಟ᚟Ṕ
中古車を推薦する評価関数 z'n は,z'n=(zn+z'n-1)/2(n ≧ 2)となる。
そして,全属性うち 75%以上の属性の判別係数が定まったときの
ᒓᛶ್
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㻟㻜䡚㻣㻜୓෇
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㻞㻡㻜୓෇䡚
䡚㻝㻥㻥㻥ᖺ
㻞㻜㻜㻜䡚㻜㻞ᖺ
㻞㻜㻜㻟䡚㻜㻡ᖺ
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㻝㻙㻟୓㼗㼙
㻟㻙㻡୓㼗㼙
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㻤୓㼗㼙䡚
䝝䝑䝏䝞䝑䜽
䝉䝎䞁
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䝇䝔䞊䝅䝵䞁䝽䝂䞁
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䜽䝻䜹䞁䞉䠯䠱䠲
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ⓑ
㉥
㟷
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⥳
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Ⲕ
㔠
㖟
㯤
ᶳ
᱈
⣸
⅊
㍍⮬ື㌴
ᬑ㏻㌴
判別分析の星取り表と同様に,前章2)および3)の結果をも
表 2 終了時点の正解率・分析回数の平均値(各手法 50 回)
ṇゎ⋡䠄䠂䠅 ศᯒᅇᩘ䠄ᅇ䠅
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㻥㻣㻚㻜㻑
㻟㻚㻝
とに決定表を作成する。次に,決定表をもとにラフ集合を用いて,
まず,
初期検索条件は設定せず,
ランダムで 20 件表示した。次に,
極小決定ルール(以下,DR)を算出する [3]。算出した [ 結論1]
ユーザの目的中古車の属性値を「110 ~ 150 万円∧ 2006 年~∧~
の C.I. の値が 0.75 以上の DR を含み,かつ,[ 結論2] のうち C.I. の
1 万 km ∧ハッチバック∧修復歴なし∧トヨタ∧黒∧普通車」と
値が 0.75 以上の DR を含まないという条件を検索条件(以下,分
仮定し,推薦された中古車のうち目的中古車の属性値との一致率
析回数 n 回目の検索条件を Qn とする)に加える。
がもっとも高い中古車を全て選好とし,各手法 50 回ずつ最適推
次に,各中古車の評価得点を求める。評価得点の算出方法は,
論解を求めた。その結果,終了時点の正解率(推論解と目的中古
Qn に該当する中古車のうち [ 結論1] の DR を含む場合は,その
車の属性値の一致率)
・分析回数の平均値を求めた(表2)
。
DR の C.I. の値を評価得点に加算する。反対に,[ 結論2] の DR
その結果,判別分析の正解率のほうがラフ集合と比べ低くなっ
を含む場合は,その DR の C.I. の値を評価得点から減算する。そ
た。これは多重共線性によって正しく判別係数が求まらなかった
して,Qn に該当する中古車の評価得点を求め,上位 20 位の中古
ことや変数選択法によって選好に影響のある説明変数が選択され
車を推薦する。なお,推薦解が 20 台より少なければ,その時点
なかったことが原因と考える。また,ラフ集合の両手法の間で正
で最適推論解とし検索を終了する。以下,本節の方法を評価得点
解率の差が生じた理由として,ルーレット選択法では,多様性を
法と呼ぶ。
残し中古車を推薦することで,評価得点法よりも局所解に陥りに
3. 3.ラフ集合 ( ルーレット選択法 ) による推論エンジン
くくなったためと考えられる。
z'n の上位 20 位を推論解とし検索を終了する。
3. 2.ラフ集合 ( 評価得点法 ) による推論エンジン
ラフ集合の評価得点法では,ラフ集合の特徴である“組み合わ
せの効果”を活かせていないことから,次の方法を提案する。こ
5. まとめ
の方法は遺伝的アルゴリズムのルーレット選択の考えを参考にし
本研究では以下に示す成果および課題がえられた。
たため,ルーレット選択法と呼ぶ。以降に手順を示す。まず,前
1)判別分析1手法およびラフ集合2手法の計3手法の推論エン
節と同様に DR を算出する。さらに [ 結論1] の全 DR のうちに1
つでも含まれる属性値を求め,
これらの属性値の集合を Cn とする。
ジンのアルゴリズムを提案・開発をした。
2)3手法を比較実験することで,中古車検索の推論エンジンに
検索条件 Qn に該当し,[ 結論1] の各 DR を含む中古車の中から
は,ラフ集合のほうが有効であることを示した。
ランダムで C.I. の値の比率(各 DR の C.I. の値/ [ 結論1] の DR
今後の課題として,実際にユーザに使用してもらい,ユーザの
の C.I. の値の合計値× 20)に応じた数だけ推薦する。ユーザに再
複雑な選好方法にも有効かどうか検証したい。また,システムの
び選好してもらい,すべての選好中古車および Cn-1 に共通する属
インターフェースなどの改善が必要であると考えられる。
性値を A 1 , A 2 , …, A p とするとき,Qn=Qn-1∩(A 1 ∩A 2 ∩…∩A p )(n ≧ 2)
とし,DR 算出に戻る。なお,推薦解が全て同値関係になった時
謝辞
点で最適推論解とし検索を終了する。
本研究のシステム開発において株式会社リクルートより中古車
データベース等の提供を頂いた。ここに深くお礼を申し上げたい。
4. 各手法による推論解の比較実験
提案した3手法の比較実験Iおよび II を行った。ここでは紙面
の都合上,比較実験Iのみを記す。使用した中古車は,2007 年に
カーセンサー(出版:㈱リクルート)に掲載された約1万台の中
古車である。分析には,属性8種,属性値 48 種を用いた(表1)
。
参考文献
1)Meadow, C.: Text Information Retrieval Systems,Academic Press (1992).
2)田中豊 他:パソコン統計解析ハンドブック II 多変量解析編,共立出版 (1984).
3)森典彦,田中秀雄,井上勝雄:ラフ集合と感性,海文堂 (2004).
4)榎本雄介,原田利宣,水谷政夫:腕時計の選好分析におけるラフ集合と数
量化理論 II 類の比較研究,デザイン学研究,vol.53,no. 5,pp.6-11(2007).
環境社会情報クラスター スタッフ
クラスター主任 井伊博行
今井敏行
金子泰純
日下正基
坂間千秋
柴山健伸
谷口正伸
床井浩平
中島敦司
原田利宣
養父志乃夫
山田宏之
吉田登
発行 2008 年 2 月 15 日 第 1 版
和歌山大学大学院 システム工学研究科
システム工学専攻 環境社会情報クラスター
(編集:谷口正伸)
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