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上武道路点検-自転車走行時の問題点-

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上武道路点検-自転車走行時の問題点-
上武道路点検-自転車走行時の問題点-
狩野
1高崎河川国道事務所
浩美1・中島
桐生国道維持出張所
2高崎河川国道事務所
前橋出張所
和子2
(〒379-2311 群馬県みどり市笠懸町阿左美1485-1)
(〒371-0846 群馬県前橋市元総社町335-8)
通常の道路パトロールでは、供用する道路における自動車の通行の支障となる落下物や落石、
ポットホール等の路面の異常・変状及び支障木や枯損木等を確認することを主な目的としてお
り、歩行者や自転車の通行の安全性、走行性及び利便性については確認をしていなかった。側
道や歩道のパトロールにおいても同様であり、点(場所)での確認であって線としての視点で
の確認はほとんどしていなかった。本レポートは、上武道路における自転車利用者の苦情を契
機に、今後の道路計画や管理に役立てるため、歩行者及び自転車利用者の視点に立った点検を
行い、その結果と課題をまとめたものである。
キーワード 苦情,自転車利用者,地域高規格道路,通行禁止標識,通行不能,迂回路
1. はじめに
国道17号上武道路は、地域高規格道路「熊谷渋川連
絡道路」の一部区間となる延
長40.5㎞のバイパスである。
前橋出張所の管理区間は前
橋市今井町~前橋市上細井町
間の9.6㎞である。
苦情メールの内容は、通常の道路パトロールでは確認
をしていなかった部分の指摘であった。
この苦情を寄せられた人は、上武道路の本線を自転車
走行した。そして、「何度もひき殺されそうになり、自
転車にとって道路は最悪 異常」となった。なぜ本線を
自転車走行してしまったのか、それは
① 側道はいたるところで、迂回や行き止まりの連続。
② 地上の交差点周囲では乗り入れ禁止標示もなかった。
と綴られている。
ここに書かれていることを確認するため、自ら自転車を
走らせ、この人と同一目線で点検を実施し、歩行者や自
転車の通行の安全性、走行性及び利便性についての検証
を行い、今後の道路計画や管理をしていく上で必要なデ
ータを得ておくべきであると考えた。
2. 上武道路点検の背景
点検のきっかけは、「苦情メール」である。
通常の道路パトロールでは、供用する道路における自
動車の通行の支障となる落下物や落石、ポットホール等
の路面の異常・変状及び支障木や枯損木等を確認するこ
とを主な目的としており、歩行者や自転車の通行の安全
性、走行性及び利便性については確認をしていなかった。
また、側道や歩道のパトロールにおいても同様であり、
点(場所)での確認であって線としての視点での確認は
ほとんどしていなかった。
【苦情メール】
3. 点検項目及び結果
前橋出張所の管理区間9.6㎞において、本線の点検は
自動車により行い、側道及び歩道は自転車利用者の目線
に合わせるため自転車と徒歩により行った。
点検は以下の4項目とし、点検結果及び確認出来た事
は次のとおりである。
(1) 側道及び歩道の連続性(自転車の通行は可能か)
(2) 迂回可能な道路
(3) 通行禁止標識の有無と視認性
a) 交差点
b) ONランプ
(4) その他改善が必要なところ
a) 誘導標示が必要な箇所
b) ドットラインが不適切な箇所
c) 見通しの悪い地下道
d) 路面に本線標示が必要な箇所
e) 休憩施設の必要性
(1) 「側道及び歩道の連続性」の確認
(自転車の通行は可能か)
亀泉高架橋下の上毛電鉄の線路で側道・歩道は不連続
となり、通過することは不可能であることが判った「図
1」。全線を通して通行不可能な箇所は、この1箇所の
みである。
【図 1 亀泉高架橋下の側道・歩道の不連続状況図】
(2) 「迂回可能な道路」の確認
側道・歩道が不連続となっている上毛電鉄の線路を越
えるためには、最短の道としては「図2」のルートがあ
る。この道は近隣住民の生活道路として利用されている
と思われるが、入口には「通り抜け出
来ない」との標示看板が設置されてい
て、途中で線路脇の柵の無い通路(鉄
道敷地内か)となり、迂回路として設
定するには、安全性に問題があること
が判った。
【注意看板】
【図 2 線路を越える最短ルート】
(3) 「通行禁止標識の有無と視認性」の確認
a) 交差点
当該区間における交差点は9箇所ある。信号機付き
の交差点は8箇所で、全てに「歩行者及び自転車」の通
行禁止標識が設置されている。しかし、標識は信号機位
置より数メートル先にあり、本線を走行する利用者向き
に設置されていて、市道から右左折で合流する場合には、
注意して見ないと見落とす可能性が高い。また、「図3」
の上武亀泉交差点においては、通行禁止標識はあるもの
の、交差市道側から東京方面に左折する場合には、歩道
橋が死角となり、市道の停止線位置から、通行禁止標識
を確認することは出来ないと判った。
これらの標識の設置目的は、本線に歩行者や自転車
が流入しないようにするためのものであるが、上武道路
には歩道や側道が設置されているものの、交差点部にお
いて歩道の位置がわかりにくいことや、遠回りになって
いることから、歩行者や自転車が本線を通行してしまう
ためではないかと思われた。
【東京側から見た不連続の状況写真】
【新潟側から見た不連続の状況写真】
【図 3 上武亀泉交差点】
また、信号機の付いていない「図4」の荒口町の平面
交差点においては、通行禁止標識は、そもそも設置され
ていない。交差道路から走行して来た自転車や歩行者は
進入することが可能であるため、大変危険な交差点であ
ることが判った。
b) ドットラインが不適切な箇所
「図7」の今井第一跨道橋においては、新潟方面の下
り分流部において、分流のドットラインが17号本線側
にあり、直進した場合50号に向かうOFFランプとなっ
ている。これは、上武道路の延伸部分が開通する前の状
態のままであり改善が必要と思われる。
【図 4 荒口町の平面交差点】
b) ONランプ
ONランプは、上り線に3箇所、下り線に4箇所存在す
る。そのうちの上り線1箇所、下り線3箇所では、通行
禁止標識が設置されていない。「図5」の亀泉のONラン
プ」においては、県道からの入口に通行禁止標識は有る
が、側道「←」から走行して来た自転車や歩行者には、
通行禁止標識が見えないため進入する可能性があること
が判った。
【図 5 亀泉の ON ランプ】
(4) その他改善が必要なところ
a) 誘導標示が必要な箇所
「図6」の上武鳥取交差点下り側道においては、直進
すると行き止まりになるが、現状では行き止まり標識は
無い。また、A地点からは、柵とガードレールが重なり
B地点に歩道があるように見えないため、路面に歩行者
や自転車の誘導標示や標識が必要と思われる。
【図 6 上武鳥取交差点下り側道】
【図 7 今井第一跨道橋】
c) 見通しの悪い地下道
「図8」の江木第一地下道においては、側道に対し地
下道が斜めで、しかも三連ボックスとなっているため、
中間支柱が視覚妨害となって、右側からの車両が見えず、
大変危険な状況であることが判った。
【図 8 江木第一地下道】
d) 路面に本線標示が必要な箇所
「図9」の亀泉ランプにおいては、本線がカーブして
いて、下りランプを本線と勘違いし、カーブの直前で気
付き、急ハンドルを切るドライバーがいるため大変危険
であり、案内標識は2箇所(歩道橋と直前)にあるもの
の、路面にも標示が必要と思われる。
【図 9 亀泉ランプ】
e) 休憩施設の必要性
前橋出張所管理区間内に休憩施設(道の駅等)が無い
ためONランプの本線合流部分に駐車して、仮眠をとって
いるトラック運転手が多く見受けられる「図10」。
ONランプからの本線合流時に加速しづらいことや、合流
時に支障となるなど危険であり休憩施設が必要と思われ
る。付近にはゴミも散乱している。
【図 10 ON ランプ本線合流部での駐車】
4.結論
点検を実施した結果、苦情にあるような実態であるこ
とが確認できた。通過不可能箇所は、上武道路を使用し
ての利用に大きな支障となる。迂回路については、案内
がほとんど無く、しかも大変危険な状態である。また、
通行規制標識については、死角が存在し、知らずに侵入
することが十分あり得る。この他にも改善が必要と思わ
れる箇所はあったが、この確認した案件だけでも、自転
車でこの区間を通過しようとした場合には、非常に困難
で危険な道路であることが判った。県外からの長距離自
転車利用者では、迷っても仕方がないと思われる。
5. 考察
今回の点検では、通常の道路パトロールのみでは気が
付かなかった問題箇所を発見することが出来た。道路は
造りっぱなしではなく、利用者の視点で自ら体験し確認
することも必要である。道路パトロールにおいても、常
に多様な利用者の視点で点検を実施し、厳しい予算状況
の中ではあるが、少しずつでも改善し、安全で利用しや
すい道路にしていくことが求められている。また、本苦
情の内容は辛辣だったが、今回の点検の契機となり、苦
情は大切なシグナルとして、しっかりと受け止めること
も、時には重要であることを知らされた。
最後に、この点検後に、事務所においてこの区間を再
度見直し、沿道住民及び道路利用者の要望の実現並びに
安全性、走行性及び利便性の向上に向け検討が始められ
ており、今後の対策に少しでも有効であれば幸いである。
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