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5. クレジットカード (1)中国銀聯による国内カード利用

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5. クレジットカード (1)中国銀聯による国内カード利用
5. クレジットカード
(1)中国銀聯による国内カード利用環境の大幅改善
2002 年は、今後の中国のクレジットカード産業の大幅な発展を予感させる動きのある 1
年であった。中国銀聯株式会社(China Union Pay Co., Ltd)が、2002 年 3 月、正式に設
立され、同社を中心に、国内のカード利用環境が大幅に改善された。
同社は、人民銀行を中心に組織された国内の各カード発行銀行が参加する、メンバーバ
ンクの発行するカードが全ての加盟店カード端末、ATM で利用可とするネットワーク運営
会社であり、今後のカード業界の指針などを決定していく機関でもある。
2002 年には、「3,1,4」を目標として、国内の各銀行の発行するカードが、各メンバーバ
ンク間でのネットワーク化を推進。メンバーバンクは 2001 年より、17 行増加し、81 行と
なり、基本的に中国国内のカード業務を行なう全ての金融機関が参加することとなった。
「3,1,4」を基本的に達成し、2003 年末までに、全国の大・中都市すべてで、銀行・地域間
相互開放を実現すべく推進中である。
「3,1,4」目標
2002 年末までに、「3(百)、1(百),4(十)
」を目標とする。
・全国 300 都市で国有商業銀行(中、工、農、建)銀行内ネットワーク完成
・全国 100 都市で銀行間相互開放実現
・全国 40 都市で銀行間・地域間相互開放実現
また、中国銀聯は、国内ブランドの統一だけでなく、国際クレジットカードブランドの
提携も積極的に行なった。2002 年には、ビザ、マスターと提携。
JCB とも 2003 年 1 月に提携調印し、近々、中国以外で発行された JCB、ビザ、マスタ
ーカードが銀聯のメンバーバンクの加盟店、ATM で利用できるようになる。AMEX などと
も交渉中のようである。
また、香港の ATM ネットワークである銀通(JETCO)とも提携し、銀通カードへの中
国 大 陸 内 の 銀 聯 メ ン バ ー バ ン ク の ATM 開 放 、 ま た 逆 に 銀 聯 カ ー ド へ の 香 港 で の
JETCOATM の開放を実現。銀聯カードがそのまま香港で ATM が利用できるようにした。
これらの動きに見られるように、銀聯は単なる中国国内の統一カードブランドにとどまら
ず、第 6 の国際ブランドになろうという動きが見られる。
(2)国際カード発行元年∼外資系銀行の参入で、さらに競争激化
国家観光局の統計によると、2002 年の海外渡航者数は 1,500 万人を超えた。法務省入国
管理局の統計によると日本人の海外出国者数は、平成 13 年度の統計で約 1,600 万人であり、
ほぼ日本の水準に近づきつつある。
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年 3 回の 7 連休、渡航先制限の緩和、国民所得の増加に海外旅行ブームが起こっている。
一般に国民 1 人あたりの GDP が、5,000 米ドルを超えるとカードが飛躍的に普及すると言
われているが、上海、北京、広州、深センはこれに近づきつつある。
このような状況下で、国際カード戦争とも言える競争が発生している。人民元が自由交
換通貨でないため、海外でも利用できるカードを申し込む場合、JCB、ビザ、マスターな
どの国際ブランドと提携した外貨決済カードを申込必要がある。従来から、中国銀行、工
商銀行、広東発展銀行が国際カードを発行していたが、最近の統計でも 50 万枚程度と、カ
ードの総発行枚数約 5 億枚と比較すると、非常に少ない発行枚数であった。
しかし、昨今の状況の変化への対応、また海外旅行に行くような富裕層の囲いこみを目
的として、2002 年には、農業銀行(デビット)
、交通銀行(デビット)
、中国建設銀行(デ
ビット、クレジット)などが相次いで国際カードの発行を開始した。12 月には、招商銀行
が、ダブル通貨カード(国内利用分は人民元決済、海外利用分は外貨決済のカード)を発
行。もともとサービスの良さで定評のあった同行だが、従来の担保やデボジットが必要な
擬似クレジットカードとは異なり、
「先に利用し、後で支払う」本当の意味でのクレジット
カードであることから、毎月 5 万枚ほどのペースで、会員が増加しているようである。
現状では、海外渡航で実際に必要なため、国際カードを申込む場合が多く、平均利用額
は 1,100∼1,200 ドルとかなり高い金額となっており、収益的にも魅力のある商品である。
2003 年には、新しいカード業務に関する法令「銀行カード条例」が発布される予定であ
るが、同条例では、外資系銀行の外貨決済国際カードの発行が正式に認められる(人民元
カードは、2006 年以降)。すでに、香港系の HSBC、東亜銀行や CITI BANK などが人民
銀行に発行認可の申請を行なっており、新条例発布後、認可が取れ次第、発行を開始する
ようである。
(3)収益性の向上
∼デビットカードからクレジットカードへ、カードセンター設立による独立採算制
2002 年末現在、約 5 億枚のカードが発行されているが、そのほとんどがデビットカード
である。デビットカードは、預金残高以上には利用できない、利用時に暗証番号が必要な
ため、発行銀行にとってリスクは少ない。しかし、即時決済のため、会員からの利息収入
は発生せず、加盟店手数料が主な収入源だが、平均 1∼2%というローカルカードの低い加
盟店手数料では収益性が良いとは言えない。
ある統計によると、現在、本当の意味でのクレジットカードは 40 万枚程度。しかし、ク
レジットカードはリボルビングなどで、会員からの利息収入が見込めるため、各銀行とも
クレジットカード発行の動きが加速しつつある。
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また、2002 年 6 月の中国工商銀行の牡丹カードセンター設立を初めとして、建設銀行、
広東発展銀行、招商銀行、民生銀行など各発行銀行のカードセンター設立が相次いだ。従
来は、カード業務は、銀行業務の一部であり、銀行内の一部門としてのカード部門が担当
していた。また、歴史的経緯により、各分行(支店)のシステムなどが統一されておらず、
問題にとなっていた。カードセンターを設立し、収益性向上、統一管理をすすめるのが主
流となりつつある。
(4)政府主導でのカード利用推進策
2003 年 1 月に開催された人民銀行工作会議でも、銀行カードのネットワーク推進が指示
されたように、現在、カード産業は、中国の金融政策の中でもっとも力を入れている産業
の一つである。
その中でも特に、中国のカード産業の中心地である北京市と上海市では、カードの利用
促進、加盟店での利便性向上について、政府主導で推進策を実施している。はじまったば
かりなので、成果はまだよく見えないが、同様に政府主導でカードの利用率が大幅に高ま
った韓国の例もあり、将来的に中国がカード大国になる可能性は十分にあると思われる。
<北京市>
北京市人民政府が、1 月 3 日に「北京市銀行カード応用発展動員大会」を開催。北京市政
府の孟学農副市長、中国人民銀行の科技司の陳静司長などが出席。会議において、「北京市
銀行カード応用発展実施企画要領」と「バリアフリーカードショッピング(カード消費障
害無し)」プロジェクトの発足を公布、北京市各関連機構にオリンピックに向けて、北京市
でのカード使用を促進し、カードの使用環境を改善しようと呼びかけた。
同「要領」によると、今後の計画は以下のとおり。
①2004 年までに以下を実現
a. 固定の店舗を持つ、年間売上高 50 万元以上の店の 50%で、カード受理。
b. 朝陽区 CBD、商店街、星つきホテル、観光地、オリンピック施設周辺地区などの店
舗全てで、カード受理。
c. ATM 3,000 台設置。
d. カード利用額の対全消費金額比を 2001 年の 5%から 20%に増加。
e. 市民の 40%がカードを所持。
②2008 年(オリンピック)までに以下を実現
a. 北京市内の店舗の 90%以上で、カード受理。
b. カード利用額の対全消費金額比を 25%に増加。
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加盟店の増加を推進すると同時に、カードホルダーの利用促進も政府主導で大体的に行
なっている。
カード利用促進策として、北京市内の 16 の銀行が参加する賞金総額 1,500 万元の抽選キ
ャンペーンを実施。2003 年 1 月 18 日∼2004 年年末まで約 2 年間に渡る長期キャンペーン
で、北京市政府の意気込みが感じられる。抽選は毎月、1 回行なわれ、2003 年 2 月の第 1
回の当選発表では、特等 1 名(乗用車の 5 年間使用権)、1 等 10 名(5,000 元のデジタルビ
デオ)、2 等 200 名(1,000 元の MP3)、3 等 2,000 名(100 元の現金)の当選者が出た。
<上海市>
上海市政府が、上海を中国のカード産業の中心地と位置付け、市政府主導の各種施策を
実施している。政府関係機関に法人カードを導入し、経費支払にカード利用を義務づけた
り、2005 年までに、上海市内の全店舗の 50%でカード取扱い、カード利用額の対全消費額
比率を 25%にという目標を掲げている。
また、各金融機関の上海への誘致を積極的に行なっており、上述のカードセンターも、
ほとんどが上海に設立されている。
従来は、四大商業銀行の人民元デビットカードを中心に発展してきた中国のカード産業
だが、今後は、政府、中国銀聯主導のカード利用環境改善、外資系を含む各商業銀行の外
貨決済国際クレジットカード発行と、ビジネスモデルが大きく変革していくと予想される。
2003 年は、今後の中国のカード産業発展を占う大きな変革への元年とも言える年となるで
あろう。
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