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肝臓病の診断と治療 ∼慢性肝炎・肝硬変・肝がんを
肝臓病の診断と治療 ∼慢性肝炎・肝硬変・肝がんを中心に∼ 鹿児島厚生連病院 平峯靖也 内科 肝臓のはたらき 日常診療における肝機能障害と原因 No. 原因 急性 慢性 主な治療 or 急性増悪 1 A型肝炎 + 対処療法 2 B型肝炎 + (成人) + (幼少期) 対処療法、拡散アナログ製剤 3 C型肝炎 + (血液) + 3剤併用療法 4 E型肝炎 + 対処療法 5 EB ウイルス + 対処療法 6 CMV ウイルス + 対処療法 7 薬剤 (市販薬、健康食品) + 肝庇護療法、ステロイド 8 アルコール + 禁酒、肝庇護療法 9 脂肪肝 + ダイエット 10 自己免疫性肝炎 + ステロイド 11 原発性胆汁性肝炎 + ウルソ 12 肝細胞癌 + 手術、抗がん剤 本日のテーマ 1) 慢性肝炎 ・C型慢性肝炎 ・脂肪肝 2) 肝硬変 3) 肝細胞癌 4) 肝移植 本日のテーマ 1) 慢性肝炎 ・C型慢性肝炎 ・脂肪肝 2) 肝硬変 3) 肝細胞癌 4) 肝移植 肝線維化の進展と発癌率の関係 肝癌 肝線維化の進行に伴い発癌率も上昇 年6∼9% 発癌率 肝硬変 ( F4 ) 年3∼5% 年1∼2% 年0.5% 線維化 高度 ( F3 ) 12∼14万 線維化 中等度 ( F2 ) 14∼17万 線維化 軽度 ( F1 ) 10万以下 血小板数 17∼20万 肝線維化は年率0.1ステージ進行 30∼40年で肝硬変に至る C型慢性肝炎に対する抗ウイルス療法と発癌率の関係 図2 インターフェロン C型慢性肝炎治療の変遷 1992年 インターフェロン 単独治療 2001年 インターフェロン と リバビリンの併用 2002年 インターフェロン 長期投与 2003年 ペグ−インターフェロン 単独治療 2004年 ペグ−インターフェロン と リバビリン併用 2005年 ペグ−インターフェロン と リバビリン併用の拡大 治癒率:50% 2011年 ペグ−インターフェロン +リバビリン+テラプレビル 併用 2013年 ペグ−インターフェロン +リバビリン+シメプレビル 併用 治癒率:90% 現在のC型慢性肝炎の治療法 治療開始 12週間 プロテアーゼ阻害剤 1日1回 内服 ペグインターフェロン 週1回 皮下注射 リバビリン 1日2回 内服 24週間 mRNA NS蛋白 IRES コア蛋白, E1/E2 エンベローブ蛋白 C型肝炎ウイルスに対する経口治療 HTA (host-targeting antivirals) ペグ−インターフェロン + リバビリン DAA (direct-acting antivirals) 構造蛋白 非構造蛋白 コア蛋白 プロテアーゼ 複製複合体 ポリメラーゼ NS5A NS5B エンぺロープ蛋白 Core E1 E2 p7 NS2 NS3A NS4 A NS4 B テラプレビル シメプレビル バニプレビル アスナプレブル ダグラタスビル ソホスブビル C型肝炎ウイルスに対する経口治療 DAA (direct-acting antivirals) コア蛋白 プロテアーゼ 複製複合体 ポリメラーゼ NS5A NS5B エンぺロープ蛋白 Core E1 E2 p7 NS2 NS3A NS4 A NS4 B テラプレビル シメプレビル バニプレビル 1型高ウイルス 日本が世界初 アスナプレブル ダグラタスビル ソホスブビル 薬剤耐性の問題 金銭的な問題 最も強力 現時点でのC型慢性肝炎の治療 1) インターフェロンのできる方 ペグ−インターフェロン+リバビリン+プロテアーゼ阻害剤 3剤併用療法が第一選択 2) インターフェロンのできない方 経口新薬に対する薬剤耐性を調べる! なし・・・経口剤を開始 あり・・・次世代の経口剤を待つ 本日のテーマ 1) 慢性肝炎 ・C型慢性肝炎 ・脂肪肝 2) 肝硬変 3) 肝細胞癌 4) 肝移植 鹿児島厚生連病院における肝細胞癌の発癌背景 アルコール B型 C型 NBNC 合計:1136例 JA 厚生連 健康管理センター Rate 300 Men DM 200 0 Fatty liver P < 0.001* (%) 100 Women Fatty liver P<0.001* P<0.001* P<0.001* HT P < 0.001* P < 0.001* Ob DL P = 0.441* 1991 1996 2001 2006 2011 DM DL P<0.001* HT P=0.1814** Ob P<0.001* 1991 1996 2001 2006 2011 鹿児島県厚生連健康管理センター人間ドック受診の統計解析より 比率 300 男性 (n=6882) 女性 (n=4271) 脂肪肝 脂肪肝 (%) 200 糖尿病 糖尿病 高血圧 100 肥満 高脂血症 0 1991 1996 2001 2006 2011 高脂血症 高血圧 肥満 1991 1996 2001 2006 2011 症 例 73歳 男性 2006年 (画像所見) 2006年より脂肪肝にて定期通院中。2010年7月 S4:HCCに対して部切 AST:63、ALT:66、HBc抗体:11.8(S/CO) 2008年 2010年 本日のテーマ 1) 慢性肝炎 ・C型慢性肝炎 ・脂肪肝 2) 肝硬変 3) 肝細胞癌 4) 肝移植 門脈と消化器系の臓器の関係 慢性的な肝障害が進行すると・・・・ 肝硬変や 肝癌 腹水 食道静脈瘤 脾腫 血小板低下 静脈瘤の概念 上部内視鏡検査 鹿児島厚生連病院における静脈瘤の治療成績 2008年8月∼2013年10月 合計:129症例 (5年2ヵ月) 年齢 (歳) 69.6±7.4 性別 (例) 男性 / 女性 95 / 34 背景肝 (例) B / C / アルコール / 他 21 / 84 / 21 / 3 肝機能 (例) Child A / B / C 50 / 56 / 23 静脈瘤の部位 食道静脈瘤:EV 噴門部胃静脈瘤:Lg-c 穹隆部胃静脈瘤:Lg-f 食道・胃静脈瘤の比率 全症例(129例) 食道静脈瘤:EV 106例(82.2%) 出血&緊急内視鏡例(34例) 26.4% 噴門部 静脈瘤 (13.2%) 穹隆部 胃静脈瘤 (4.6%) 静脈瘤の治療は? 1)内視鏡的治療(80∼90%) 内視鏡的硬化療法(EIS) 内視鏡的結紮術(EVL) 2)外科的治療 脾臓摘出+Hassab術 3)IVR療法 バルーン下逆行性径静脈的塞栓術 (B-RTO) 内視鏡的硬化療法:EIS:待期症例 針 EIS治療後 EISによる緊急止血症例 1週間後の内視鏡検査 本日のテーマ 1) 慢性肝炎 ・C型慢性肝炎 ・脂肪肝 2) 肝硬変 3) 肝細胞癌 4) 肝移植 がん年齢調整死亡率の年次推移 2 3 1 3 4 1 5 2 肝細胞癌の死亡率 (死亡数)と罹患率 (罹患数) の関係 肝細胞癌による死亡数は年間3万人を超えている。 肝細胞癌の罹患率は増加傾向である。 画像診断 腹部エコー ( 存在診断 ) 良性 悪性 肝のう胞 肝血管腫 前癌病変 高分化型肝癌 中∼低分化型 肝癌 ○ × × × △ 肝のう胞 肝血管腫 前癌病変 高分化型肝癌 中∼低分化型 肝癌 ○ ○ ×∼△ △ ○ 造影CT ( 質的診断 ) 造影MRI ( 質的診断 ) 動脈相 動脈相 肝のう胞 ○ 肝血管腫 ○ 平衡相 中∼低分化型 門脈相 平衡相 平衡相 門脈相 前癌病変 高分化型肝癌 肝癌 ○ ○ ○ 画像診断 腹部エコー ( 存在診断 ) 良性 悪性 肝のう胞 肝血管腫 前癌病変 高分化型肝癌 中∼低分化型 肝癌 ○ × × × △ 肝のう胞 肝血管腫 前癌病変 高分化型肝癌 中∼低分化型 肝癌 ○ ○ ×∼△ △ ○ 肝のう胞 肝血管腫 前癌病変 高分化型肝癌 中∼低分化型 肝癌 ○ ○ ○ ○ ○ 造影CT ( 質的診断 ) 造影MRI ( 質的診断 ) 画像診断 腹部エコー 造影CT 造影MRI 前癌病変 ぜn 高分化型肝癌 肝細胞癌の治療法 1)手術療法・・・・・癌を切り取る 2)ラジオ波焼灼療法(RFA)・・・・熱で焼く 3)肝動脈化学塞栓術(TACE)・・・・兵糧攻め 4)放射線療法(サイバーナイフ、重粒子線) 5)化学療法(肝動注療法、全身化学療法) 6)分子標的治療薬(ネクサバール®) 7)生体肝移植 七つ道具を駆使して治療を行います。 肝細胞癌治療のアルゴリズム2013 (日本肝臓学会) 肝細胞癌 肝外病変 肝外病変なし 肝予備能 Child-Pugh A/B 数 腫 瘍 径 治 療 単発 乏血性 早期肝癌 厳重観察 局所療法 1∼3個 3cm以下 肝切除 局所療法 Child-Pugh B/C Child-Pugh C 浸潤なし 脈管浸潤 個 肝外病変あり 浸潤あり 4個以上 浸潤 なし ミラノ 基準内 かつ 65歳以下 Child-Pugh A 浸潤あり ミラノ 基準外 かつ 65歳以上 3cm越 肝切除 局所療法 TACE+ 局所療法 TACE HAIC ソラフェニブ 肝切除 HAIC ソラフェニブ TACE 肝切除 肝移植 TACE 局所療法 緩和治療 または 化学療法 ソラフェニブ 1)手術療法 2)肝動脈化学塞栓術(TACE) 腹部血管造影による治療 肝細胞癌 栄養血管 の消失 癌を栄養 する血管 治療前 治療後 肝細胞癌 腹部造影CT 治療前 治療直後 治療後2ヶ月 本日のテーマ 1) 慢性肝炎 ・C型慢性肝炎 ・脂肪肝 2) 肝硬変 3) 肝細胞癌 4) 肝移植 世界の肝臓移植数 (2010年) 脳死ドナー 生体ドナー (人) (人) 臓器提供意思表示の方法 1.インターネットによる意思登録 https://www2.jotnw.or.jp/ 2.意思表示カードやシールへの記入 3.保険証・運転免許証の意思表欄への記入 まとめ 肝疾患の治療は急速に変化している. 治らない疾患から治る疾患へ変遷しつつある. 急性肝炎・慢性肝炎・肝硬変 (静脈瘤・腹水・肝性脳症)・肝癌 などすべての肝疾患に対応できる肝臓専門施設が必要. 肝臓専門医も非常に専門的知識が要求される時代 ! 選択される時代 ! ご清聴ありがとうございました。