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インテリア産業の今後の方向について
資料7 H19.12.20 インテリア産業の今後の方向について 社団法人インテリア産業協会 Ⅰ 現状と課題 1.社会的背景の変化 今日の社会動向は、少子高齢化、地球環境問題への対応など大きな変動期を迎 え、住宅・インテリアに関しても、シックハウスに代表される健康・安全問題、 地球環境保全に向けた省エネ問題など環境は大きく変わりつつある。 近年、住宅ストックの活用が注目される中で、長寿命で良質な住宅へのニーズ が一層高まってきた。特にライフスタイルの多様化に応じ、インテリアを容易に 変更できるスケルトン・インフィル(SI)住宅の拡大が期待されている。 2.住まい手側の変化 (1) ライフスタイルの多様化 長寿社会が進行する中で、住まい手は様々なライフステージに応じて多様な ライフスタイルを持つようになってきた。特に昨今では‘健康と環境、持続可 能な社会生活を心がける生活スタイル(LOHAS)’を目指す傾向も増加してき ており、それとともに、自身のライフスタイルや感性にマッチした快適な住環 境への欲求が高まってきている。 例えば、画一的な間取りの新築や中古マンションを入居前にリフォームし、 自分好みに仕立てるなどの事例が増えてきたこともその現われであろう。 (2) ユーザーニーズの変化 インテリア商品に対するニーズにも変化が現れ、これらのコーディネートに 関しても専門性が求められるようになってきた。 例えば、 ・収納家具: インテリア全体の調和を重視した‘造り付け収納’が主流 ・カーテン: 好みのインテリアスタイルや装飾性を重視し、種類も多様化 ・ 照 明 : 日常生活シーンによって照明を使い分ける多灯照明が中心 (3) 住まいに対する意識の変化 現状住宅に対する不満については、高齢者への配慮、住宅の防犯や省エネ対 応、収納スペース、住宅の広さ・間取り等の調査結果もあり、リフォームは大 きなビジネスチャンスとなってきている。 また、リフォームについての意識も変化してきている。従来は古くなったり 使い勝手が悪くなった等が主な理由であったが、最近では、インテリアを充実 しライフスタイルにマッチしたより快適な住環境を目指すようになってきた。 1 3.課題 これらの背景変化を踏まえ、インテリア産業界の課題を整理すると次のような 事柄が挙げられる。 (1) 住環境の向上・・・トータルコーディネートの推進 (2) 長寿命で良質な住まい(SI住宅の推進) ・・・快適な住まいとして住み継ぐためのメンテナンス・リフォームの実施 (3) 住まい手が満足するインテリアエレメントの提供 (4) 住宅の資産価値の維持・向上に向けたインテリアの充実 Ⅱ 今後の方向と対応 1.長寿命住宅の維持管理・改修等の必要性 (1) メンテナンス・リフォームへの配慮 長寿命住宅では、長期にわたり住み継ぐことが前提であり、そのため内装 やインテリアのメンテナンス・リフォームが必要不可欠であり、新築計画段 階からその必然性を想定した配慮が重要となってくる。 (従来の住宅は寿命が短く、リフォームよりは建替えを推進してきたため、 リフォームへの配慮の必要性はそれほど大きくはなかった。) (2) SI住宅の進展 SI住宅のリフォームにおいては、ライフステージ、ライフスタイルの変 化に応じて、インフィルのみを変更することで快適な住環境が得られるので、 合理的で住まい手にとっても好都合であり、今後更なる進展が期待される。 2.インテリアコーディネーターによるトータルコーディネート (1) インテリアコーディネーターの職能 顧客のライフスタイル、要望等を踏まえ、総合的に調和のとれた住み心地 のよい住環境をコーディネートするのは、インテリアに関する幅広い知識と 高い技術を備えたインテリアコーディネーターの領域である。 *インテリアコーディネーターとは、住まい手と産業界の接点に立って、 インテリアに関するコンサルティングを行ったり、新築やリフォーム時 に総合的なインテリア提案を行う専門職である(有資格者:約5万人)。 昭和58年に通産省の資格認定制度として発足し、その後インテリア産 業協会が引き継ぎ現在に至っている。 活動分野:住宅・インテリア業界、家具業界、ファブリックス業界、 照明器具業界、設備機器業界、フリーランス等 (2) トータルインテリアコーディネート 新築計画やインテリアリフォームにおいては、顧客の漠然とした要望を踏ま え、総合的かつ具体的なインテリア計画(トータルインテリアコーディネート) を策定するため、インテリアコーディネーターが最も必要とされる。 新築住宅では住宅メーカー等に所属するインテリアコーディネーターが関 与することが一般的になっているが、長寿命住宅の増加に伴いリフォームにお いても活躍機会の拡大が期待される。 2 *トータルインテリアコーディネートとは、顧客のライフスタイル等を勘 案しつつ、住空間の機能・美観等を総合的に調和させることをいう。 (3) コーディネーターの育成と認知度の向上 しかしながら、現状では有資格者が全て高いレベルある訳ではなく、また、 誰もがその存在を十分認識している訳でもない。今後、インテリアへの関心が 益々高まる中で、真に住まい手の期待に応え得るレベルの高い専門家の育成と 社会的認知度の更なる向上に向け効果的な啓発・広報活動が重要である。 3.ユーザーニーズの把握と良質なインテリアエレメントの提供 (1) ライフスタイルにマッチした快適な住環境についての啓発活動の推進と住 まい手の要望や不満をフィードバックするシステムを構築し、質のよい商品・ 部材の提供に資することが重要である。 (2) 住まい手のニーズに応える優れたインテリア商品・部材等を開発・提供しな ければならないが、特にメンテナンス・リフォーム関連品については互換性・ 共通性に乏しいのが現状であり、今後、規格化・共通化を積極的に推進する必 要がある。 (3) 併せて、インテリア関連商品・部材に係る商流の整備も重要である。 (4) これらを推進するため、関係機関、学識経験者との連携強化が重要である。 Ⅲ 具体的な取組み 1.長寿命住宅のメンテナンス、リフォーム 一般に、長寿命住宅といえどもメンテナンスが不可欠であり、また、必要に応 じてリフォームを実施して快適な住環境を維持することが重要であり、住宅の資 産価値の維持につながることが期待される。 特にリフォームに関しては、新築計画段階からメーターモジュール化や配線・ 配管の自在化等、将来、効率的なリフォームが実施できるように配慮しておくこ とが重要である。 2.インテリアコーディネーター育成と認知度向上等に関する具体的方策 (1) インテリアコーディネーターの育成 ① インテリア産業界としては自らの責任において、真に住まい手の期待に応 え得るレベルの高い専門家の育成を図ることが重要である。 ② インテリアコーディネーターは、顧客の信頼を得ることが肝要であり、そ のためのコミュニケーションの重要性を認識しなければならない。専門知 識・技術とともにコミュニケーション技術の習得は必要不可欠である。 ③ トータルコーディネートの実施にあたっては、専門知識と共に実務経験も 重要な要素であるが、インテリアリフォームに関しては工務店等のインテリ アコーディネーター活用意識が低く、これまで実務機会が少なかったことか ら「経験豊富なインテリアコーディネーター」が不足している状況にある。 インテリア産業界としては、業界版インターンシップの創設やショールー ムを幅広く活用した実務研修等を通じ、経験を積める機会を提供し、即戦力 3 となるインテリアコーディネーター育成に取り組むことが重要である。 (2) 社会的認知度の向上とユーザーニーズの把握 ① インテリア関係展示会やインテリア雑誌、インターネット等を活用し、イ ンテリアコーディネーターが実施した多くの質の高いコーディネート事例や 様々なライフスタイル提案情報等を提供し、社会的認知度の向上に資する。 ② 気鋭のインテリアコーディネーターのテレビ、インテリア雑誌等メディア への露出を拡大するなど効果的な啓発・広報活動を展開し、住まい手が積極 的に活用する環境を整備する。 ③ インテリア業界団体のウェブサイトを活用し、企業・住まい手・インテリア コーディネーターの3者が双方向に情報交換できる情報ネットワークを整備 し、啓発・広報活動の充実を図ると共にユーザーニーズの把握に努める。 ユーザーニーズの把握が困難なのはいうまでもないが、日常的に顧客との コミュニケーションを図っているインテリアコーディネーターが持っている 多種多様なユーザー情報を収集・整理し、活用度の高いデータに加工して関 係者にフィードバックするネットワークシステムの構築が重要である。 3.住まい手の期待に応えるインテリア商品・部材等の供給 (1) 「感性価値」の高いインテリア商品 インテリア商品に関しては、欧米製の洗練されたデザインの高級品、中国等 アジア製中心の低価格品の狭間で国産品は苦戦を強いられており、商品の付加 価値を高める以外に道はないものと思われる。ユーザーが期待する付加価値と しては、 「感性価値」の向上が大きな要素のひとつとなってきている。これまで のわが国におけるインテリア商品は、品質性能面では既に世界水準を凌駕して いるが、感性面(デザイン)に関しては欧米に遅れをとっている。住まい手の 心に響く洗練された「感性価値」の高い商品の供給に努めなければならない。 そのためには世界に通用するデザイナーの育成への取組みが重要であり、国 際競争力向上の視点からも、各方面から大いに期待されているところである。 (2) インテリアリフォーム関連商品・部材・工法 ① 長寿命住宅においては、インテリア構成材や内装等の寿命が長い訳ではなく、 継続的なメンテナンスが必要不可欠である。また、必要に応じて(キッチン設 備の更新等の)リニューアル、(大小さまざまな規模の)リフォームを行い、 快適な住環境を維持することが住宅の資産価値の維持につながる。 そのための費用と施工技術等の負担軽減の視点からもインテリア構成材、設 備機器・部品、施工方法等の規格化・共通化を図ることが望ましい。 ② 一方では、ライフスタイルの個性化や多様化が進展する中で、インテリア構 成材の共通化が困難になる面も少なからず顕在化してこよう。つまり、ロング ライフ製品志向とデザイン重視の多品種少量製品志向の二極化やマス・カスタ マイズ志向が進み、インテリア関連市場がさらに活性化するものと思われる。 ③ 環境保全・省エネ推進の視点から、エネルギー消費効率のよい住宅設備・機 器、家電製品等の開発や高効率な断熱材の開発、省資源の視点から、3R(リ デュース・リュース・リサイクル)を配慮した商品・部材の開発、更には安全 4 性確保の視点から、経年変化に起因する劣化にも配慮した‘フェイルセーフ’ 商品・部材等の開発に取り組み、住まい手の期待に応えるものを供給する。 ④ その他、住まい手がお気に入りで生涯大切に使い続けたい「耐久製品」につ いては、使用過程で破損等の不具合が生じた場合、専門技術者による迅速かつ リーズナブルな修理体制を構築する。 また、ライフステージのある局面でのみ用いたい(例えばベビーベッド等)、 あるいは日常生活のある段階だけで用いるようなもの(ホームパーティ用の大 型テーブル等)については、レンタル・リースの活用を推進する。 ⑤ インテリアリフォームについて、多くの場合、施主が住み続けながら工事を 実施することになり、日常生活に支障をきたさない配慮が必要となってくる。 具体的な例として、環境に配慮した部品・部材・工法の開発、極力音をたて ずに工事可能な部材・工法等の開発、乾式工事が実施できる素材の開発、搬入・ 搬出が容易な商品の開発・供給に取り組む。 4.総合的なインテリアマートと流通形態の整備等 (1) インテリアマートの整備 近年、車社会進展の側面もあり、各地域のショッピングモール(アウトレッ トモールや娯楽施設・レストランと一体になったもの等)が活況を呈している。 消費者はインテリアエレメント毎にショップを巡るよりも、インテリア商品 の集積地で必要なものを総合的に、一挙に選べる利便性を強く感じており、新 たな供給システムの整備に取り組む必要がある。 (2) 流通チャンネルの変化に対応した流通形態の整備 インテリア計画の提案に伴って顧客が望むインテリア商品を入手する場合、 インテリアコーディネーターがメーカーから直接買い付け顧客に納入する流 通チャンネルを構築することは、商品取引全体の拡大にもつながり、ユーザー にとっても歓迎されよう。ただし、クレジット取引の場合はメーカーからの与 信の付与が前提となり、システム構築の必要がある。 (3) コーディネートフィーに関するガイドラインの公表 コンサルティングやコーディネート業務に対するフィーに関して、公的機関 がガイドラインを策定し公表することにより、顧客が安心して依頼できるよう になり、コーディネートビジネスの活性化につながるものと思われる。 5. 関係機関等との連携 (1) 長寿社会対応住宅 高齢化社会が進展する中で、バリアフリー住宅から一歩進んで、世代・壮老 等を問わず誰でも使いやすい‘ユニバーサルデザイン’住宅が求められてきて おり、住空間を自由に変更することが可能なSI住宅もそのひとつであろう。 インテリア産業界は他の関係業界とも連携を強化し、誰もが住みやすい良質 な住環境を創造すべく努力する。 (2)「感性価値」を育む活動 中長期的な視点に立ち、感性を育み住生活リテラシーを高めるような学校教 5 育・社会教育など官民一体となって豊かな感性を持った生活者・国民を育て、 日本人の住文化の意識を高めていく活動が望まれる。 6