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アトピー性皮膚炎の新たなステージ :基礎と臨床の

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アトピー性皮膚炎の新たなステージ :基礎と臨床の
第43回日本皮膚アレルギー・
接触皮膚炎学会総会学術大会
イブニングセミナー4
イブニングセミナー
日時
2013年11月30日(土)16:50∼17:50
会場
ホテル日航金沢C会場(3F 孔雀の間C)
石川県金沢市本町2-15-1
座長
水谷 仁 先生
三重大学大学院医学系研究科皮膚科学 教授
島田 眞路 先生
山梨大学大学院医学工学総合研究部皮膚科学 教授
アトピー性皮膚炎の新たなステージ
:基礎と臨床の視点から
講演1
ダニ抗原とアトピー性皮膚炎の接点
佐山 浩二 先生
愛媛大学大学院医学系研究科皮膚科学 教授
講演2
アトピー性皮膚炎のタイプからみた外用療法の考え方
戸倉 新樹 先生
浜松医科大学皮膚科学講座 教授
共催:第43回日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会総会学術大会/鳥居薬品株式会社
ダニ抗原とアトピー性皮膚炎の接点
愛媛大学大学院医学系研究科
皮膚科学 教授
佐山 浩二
先生
表皮角化細胞は自然免疫機能を持ち生体防御に働いていると考えられるが、一方表皮角化細胞の自然免疫はアレルギーの
引き金を引いている可能性がある。アトピー性皮膚炎の発症・増悪要因は単一ではないが、近年フィラグリン遺伝子変異
からくる皮膚バリア機能異常が注目を浴びている。ダニ抗原は環境抗原の主役であり、アレルギー疾患の発症と増悪にと
って非常に重要な役割を果たしている。皮膚バリア機能異常があればダニ抗原は容易に角層を通過し、表皮角化細胞を直
接活性化する。NLRP3は細胞質内の受容体であるNLRファミリーに属し、活性化に伴いASC, caspase-1とともに分子複合
体インフラマソームを形成し、caspase-1を活性化する。活性化されたcaspase-1は前駆体のpro-IL-1β, pro-IL-18を活性型
に転換・細胞外に放出する。ダニ抗原でヒト角化細胞を刺激するとインフラマソームが形成されIL-1β, IL-18を産生する。
IL-18は樹状細胞、上皮細胞から産生されるIL-1ファミリーに属するサイトカインで、Th2型の反応を促進させる。ダニ抗
原による表皮角化細胞からのIL-1β, IL-18産生はアトピー性皮膚炎の発症・増悪に関わっていると考えられる。一方、ダ
ニ抗原はプロテアーゼの活性を持っており、皮膚バリア機能を低下させる。また、上皮のバリア機能に必須であるタイト
ジャンクションおよびその構成分子を破壊する。すなわち、ダニ抗原はバリア機能を破壊することにより体内に侵入しや
すくなる。同様のバリア破壊は、他の花粉などのプロテアーゼアレルゲンによっても起こりえる。さらに、ダニ抗原と同
様にブタクサ花粉は角化細胞のインフラマソームを活性化する。また花粉症においては、ブタクサ花粉が上皮細胞に直
接作用しIL-33を産生させ、発症の引き金になる。つまり、これらのプロテアーゼアレルゲンはそれ自身が上皮のバリアを
破壊し、上皮に対する直接作用によりアレルギーの引き金を引く性質を持っていることになる。
アトピー性皮膚炎のタイプからみた
外用療法の考え方
浜松医科大学皮膚科学講座 教授
戸倉 新樹
先生
アトピー性皮膚炎(AD)の治療は、歴史的に外用療法が主体に行われてきた。その中でステロイド外用薬は、AD治療
に欠かせないものとして、40年前も現在も第一に使用される薬剤である。他の薬剤比べ、ステロイド外用薬ほど無くては
ならないものは無い。部位別吸収の差と使用期間を考慮すれば、安全に使える薬である。ADは、病態、悪化因子、年
齢、性別が、一律な疾患ではない。従って一般に、各要素を考慮した上で、治療を選択する必要がある。抗ヒスタミン薬
内服、免疫抑制薬内服の選択に限らず、保湿剤、ステロイド外用薬、免疫抑制薬外用など、外用薬の選択も上記要素に
より影響を受ける。例えば、フィラグリン遺伝子変異に基づくバリア機能が破綻した患者では、保湿剤の外用が当然重
要となる。しかしバリア異常、掻破、TSLP産生、樹状細胞のTh2誘導性促進、アレルギー性皮膚炎、IL-4産生亢進、さ
らなるバリア異常、というバリア異常に始まる一連の皮膚炎惹起の悪循環を考えると、ステロイド外用薬もバリア異常を
主とするタイプのADに使用されるべきものである。また、細菌や真菌による皮膚炎の悪化は、コロナイゼーションを抗
菌薬で無くせばよいというものではない。ステロイド外用が、こうした微生物の感染を促す皮膚炎を絶ち、むしろ感染を
改善させることは多くの皮膚科医が経験している。皮膚バリアや増悪因子に関連して、最近、内因性ADの存在が注目さ
れている。これはバリア機能が正常で、血中IgE値が正常のADである。重症度は通常の外因性ADより軽いことが多い
が、治療は抵抗性である。内因性は金属などの接触皮膚炎的な要素もあり、原因の除去とステロイド外用は重要な対処
法となる。
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