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PEN 第 20 号の発刊にあたり

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PEN 第 20 号の発刊にあたり
PEN
ISSN 2185 - 3231
Public Engagement with Nanobased Emerging Technologies
N E W S L E T T E R
November 2011
Volume 2, Number 8
PEN November 2011
1
Table of Contents
編集室より 情報とは何か ‐ PEN 第 20 号の発刊にあたり ‐………………… 3
寄稿 ナノテクノロジーは、 わが国最後の牙城 徹底したオープンイノベーションで、 アジアの盟主の座を堅持すべし…… 5
連載 生物規範工学 第三回 私が体験した驚愕の 「生物規範工学」 in アメリカ……………………… 8
海外動向………………………………………………………………………… 15
短期集中連載 李仁植氏語る ⑤……………………………………………… 22
国内動向………………………………………………………………………… 25
Cutting-Edge Technologies
プレスリリースより…………………………………………………………… 32
豊蔵レポートより…………………………………………………………… 49
PE ヘッドラインより………………………………………………………… 57
台湾 ITRI レポートより……………………………………………………… 61
韓国 NNPC より…………………………………………………………… 65
MEMS 関連情報より……………………………………………………… 68
イベント案内……………………………………………………………………… 70
編集後記………………………………………………………………………… 72
Column 窓付きの翅をもつウスタビガ……………………………………………………………………………… 14
Column 省エネに古代の知恵を活かす…………………………………………………………………………… 31
Column 街角の歩き方、 海外編…………………………………………………………………………………… 64
Cover:オオヒシクイ
オオヒシクイは赤い脚が特徴の大型の雁の仲間です。夏をシベリアのタイガやツンドラで過ご
し、冬の寒さを避けるために日本や韓国に渡ってきます。表紙のオオヒシクイは韓国金浦空港
近くの紅島坪の稲田に飛来した群です。秋が深まる 11 月には数百羽の単位で金浦空港周辺の湿
地や干拓地に飛来します。日本では千葉県や茨城県南部の水田地帯で観察することができます。
名前はヒシの実を好んで食べることに由来しますが、ヒシ以外にも落穂や稲のヒコバエなどを
食べます。冬のまだ暗い早朝 4 時ごろには食餌のために稲田にやって来る姿を見ることができ
ます。
2
PEN November 2011
編集室より
情報とは何か - PEN 第 20 号の発刊にあたり -
科学技術の研究開発と情報
一の道だ、という考え方もある。この二つの考え方は、そ
のどちらが正しいのかという二者択一論的な議論や、その
3 月 11 日の東日本大震災以降、情報伝達、情報開示のあ
バランスの議論に展開しがちである。要するに科学は科学
り方が大きな関心事となっている。必要な情報が得られな
のためにあるのか、科学は社会・経済的価値に結びつかな
いもどかしさは、情報発信元に対する不信感を増幅させて
ければ意味がないのか、あるいはそのバランスが大事なの
いる。たとえば放射線の影響に関して繰り返される「当面
か、我々はややもするとそういった議論をしがちである。
の間、影響はない」といった曖昧な表現に対して、では中
長期にわたってはどうなのか、子供や妊婦に影響はないの
知識としての学術論文や経済価値の追求以外に、科学技術
かといった懐疑的な見方が広まっている。科学者がもっと
の研究開発になにが出来るのか。Nature Editorial の意見
積極的に政策担当者と連携すべきという意見の反面、この
は、そのサブタイトルに端的に表現されている。
「科学研
ような不信感は、科学者がもっと政府や公的研究機関から
究は、単に研究論文だけでなく、公共の価値を創出すべき」
、
独立して行動や情報発信をすべき、という動きも加速させ
である。では公共の価値とは何か。
ている。
台風、地震、津波、火山の噴火など、古来日本は自然災害
昨今、科学技術の研究開発はどのような価値を社会に還元
の多い国で、二次の災害も含めて甚大な災害をたくさん経
すべきなのかが、科学技術の情報共有やコミュニケーショ
験してきた。今回の大震災と津波による福島原発の事故
ンの課題と共に議論されるようになってきた。5 月 12 日
は、まさにそういった事例だった。原子炉のメルトダウン
発 行 の Nature Vol.473 の Editorial は、”Value Judgments
と水素爆発といった事態は逼迫しており、そういった事態
- The scientific endeavor needs to deliver public value, not
への対処は危急であった。対処には様々な利害関係が絡む
just research papers-” と題して、科学技術の研究開発の
のだが、現実に現場で何が起きているのかを正確に把握で
価値について Nature 編集室の見解を述べている [1]。雑
きない状況が続いた。科学技術の事なのに科学技術で解決
誌 Minerva に 掲 載 さ れ た Ryan Meyer の 論 文 The Public
できない、Nature Editorial が引用して言及している Post-
Values Failures of Climate Science in the US [2] を引用し
Normal Science はまさにそういった事態のことを言う。そ
ながら、社会への還元が強く求められるようになってきた
のような状況のなかで大きな社会的損失を防ぐためには、
研究開発投資の価値についてコメントをしている。科学者
単に科学的価値観だけにとらわれず、より社会のニーズを
はいったいなにを社会に還元しなければならないのか、ど
取り込んで問題に対処していかなければならない、と指摘
のような手段で還元しなければならないのか。
する。
科学は新しい知識を創出するためにあり、それが社会に役
Nature Editorial は、どのような研究を優先すべきかを決
に立とうが立つまいが、優れた学術論文として発表すれば、
定するプロセスへの一般市民や利害関係者の参加を促した
科学者は社会に対する説明責任を果たしたことになるのだ
り、研究者の発する情報を政策担当者や企業をはじめとす
ろうか。研究開発のための大きな公的資金の援助を受けた
る情報を求めるユーザの必要とする形に沿うようにしなが
ものの、その目標が達成できなくとも、その中で得られた
ら、さらに研究成果の質とその妥当性を高めていく努力が
科学的知見を論文としてまとめることで説明責任を果たす
必要だとしている。そして、研究者は科学の利用に対する
ことが出来る、という考え方は科学者に依然として根強い。
市民の信頼を高める研究を推進すべきで、具体的には分野
一方、もっと社会の役に立つ研究をして、経済価値の追求
を超えた共同研究の推進やすべての利害関係者への有用な
をとおした社会価値の還元を行わなければならない、それ
情報の提供、透明性の確保、目標をしっかり見据えたコミュ
こそが科学者が科学技術研究の成果を社会に還元出来る唯
ニケーションといったことが科学の公共の価値を高める、
PEN November 2011
3
と結論する。
活動している。100 名を超えるスタッフがおり、ナノテ
クノロジー関連情報の取集、論文・特許データベース、
アメリカの物理学者 A. Weinberg が「科学に問えるが科
留学生や研究者による海外情報ネットワーク等の活動を
学では答えられない問題群」を Trans-Scientific Questions
行っている。また、韓国科学技術院(KIST)の Center for
と 言 い 表 し た の は 1972 年 の こ と で あ る。Post-Normal
Nanostructured Materials Technology(CNMT)等の機関
Science にしろ Trans-Science にしろ、科学と政治の両方
とも今後さらに緊密な情報の共有を図っていきたいと考え
が絡み、熟議に基づく合意を必要とする問題に対して、科
ている。
学の情報は如何ほどの重要視されてきたのだろうか。問題
に関わる利害関係者間の情報共有の重要さを強調しながら
韓国が科学技術国家戦略に基づいて、これだけの陣容で情
も、最終的には科学的判断ではなく、社会の要求や人間の
報配信の活動を行っていることは注目すべきことだが、実
価値観や主観、あるいは社会ニーズをも取り込んだ意思決
際にはナノテクノロジーの専門家や社会受容を専門に取り
定だとして、科学的情報の提供の重要性を科学者自身があ
組んでいるスタッフは少ないとのことである。台所事情を
きらめていた、そういった側面はなかっただろうか。
言うなら、我々の PEN の編集室も実質的には 3 人で編集
を行っており、厳しい状況のなかで毎月の配信を行ってい
ナノテクノロジーに関する新しい科学的知見や、ナノ粒子
る。だからこそ、より包括的な国際的枠組みでの情報共有
の人体に対する有害性評価といった科学的事実を、そのま
が大きな意味を持ってくる。少しずつ、しかし着実に、情
ま厳密に正しく利害関係者に届けることは、情報を必要と
報共有のネットワークを広げていこうと考えている。
する利害関係者の要求に答えているとはいえない。科学者
が発信すべき情報は、科学者と同じ知識のレベルを利害関
係者に要求するのではなく、利害関係者が知りたい情報を
善意に支えられて
できるだけわかりやすく正しく伝える努力に裏打ちされた
ものでなければならない。同時に、情報は双方向的で継続
最後に豊蔵レポートについて触れておきたい。PEN の最新
的でなければならない。その実践は容易ではないが、これ
技術動向のなかでとりわけ太陽電池や半導体プロセス、材
は我々が PEN を編集し配信する際に常に心がけているこ
料技術について包括的な情報を配信している豊蔵レポート
とである。
は、豊蔵信夫氏が全くのボランティアの活動として情報を
[1]
整理されたものである。企業で半導体の研究開発に携わっ
http://www.nature.com/nature/journal/v473/n7346/pdf/473123b.pdf
[2] http://www.springerlink.com/content/y51g45057072x28x/
てこられた豊蔵氏が、第一線を退かれた後もこのような善
意の情報を PEN にもお届け頂いていることに深く感謝す
るとともに、氏の一研究者としての生き様に共感を覚える。
韓国国家ナノテクノロジー政策センター(NNPC)との情
PEN 読者の皆様も、本誌の情報がこのような善意の活動
報共有
に支えられていることをご承知おきいただければ幸いであ
る。
より包括的でグローバルな情報の共有を目指して、PEN
は昨年台湾の Industrial Technology Research Institute of
豊蔵レポートに限らず、最近では企業の方からも有用な情
Taiwan(ITRI)との包括的な情報共有を開始した。毎月最
報が多く寄せられるようになってきた。また PEN の記事
新科学技術情報や政策動向に関する情報が共有され、台湾
に関連して、原稿も寄せられるようになってきている。こ
ITRI ナノテクノロジーセンターは我々の PEN の情報も含
のような善意に応えなければならないところだが、レポー
めて新しい情報誌 ”Nano Risk information” の配信を開始
ト配信のメールに込められた社会や技術に対する豊蔵氏の
した。
熱い思いや、読者の皆様の厚意に助けられ励まされながら、
PEN の編集作業を行っているのが実情である。
今 回 PEN 編 集 室 で は 韓 国 Korea Institute of Science and
Technology Information(KISTI)内でナノテクノロジー
20 回目の PEN の発行にあたり、読者の皆様をはじめ PEN
政策提言・関連プロジェクト・活動における実務的な業
の活動を支えていただいたすべてのお皆様に心よりお礼を
務を担当している National Nanotechnology Policy Center
申し上げる。
(NNPC)との包括的な情報共有の試みを開始した。NNPC
は KISTI 内の部門であるが、独立組織のセンターとして
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PEN November 2011
PEN 編集室 一同
寄稿
ナノテクノロジーは、わが国最後の牙城
徹底したオープンイノベーショ ンで、アジアの盟主の座を堅持すべし
株式会社三菱総合研究所 人間・生活研究本部 本部長 亀井信一
しばしば、わが国の国際競争力の低下が話題になる。世界
据えているのは、この技術が今世紀をリードするキーテク
経済フォーラムの世界競争力報告書では、今年の日本は 9
ノロジーと考えられており、材料、エレクトロニクス、機
位であり、昨年度より 3 つも順位を下げた。スイスのビジ
械、バイオ、創薬などのあらゆる分野で変革をもたらすと
ネススクールである経営開発国際研究所(IMD)のランキ
の強い期待が寄せられているからである。日本は、ナノテ
ングでは、わが国の競争力は実に 26 位。昨年の 27 位か
クノロジー分野の研究開発に関して、世界の最先端を走っ
らワンランク上げたが、一昨年は 17 位であったので、こ
てきた。2000 年代の初頭には世界のナノテクノロジーの
こからは 10 ランクも低下した。
特許出願の半数近くをわが国が占め、現在でも世界シェア
は約 40% である。
しかし、いずれのランキングでもわが国の技術力の評価は
きわめて高い。世界経済フォーラムのイノベーションは世
ところが、その位置づけが揺らぎだした。わが国の科学技
界 3 位、
IMD の科学分野インフラは 2 位という評価である。
術の基本政策は、5 年ごとに改訂される科学技術基本計画
確かに、技術立国日本は、長くわが国を標榜するキーワー
によって規定される。本年度から、第4期の科学技術基本
ドであった。ナノテクノロジー、ロボットなどモノづくり
計画が施行されたが、その基本計画からこれまで 10 年に
に関連した技術は、わが国が特に強い競争力を持つ分野と
わたって戦略的に取り組まれてきたナノテクノロジーの文
認識されている。なかでもナノテクノロジーは、わが国が
字が消えた。研究開発投資も伸び悩んでいる。
世界の最先端を走ってきた。世界最大のナノテクノロジー
国際展示会は、毎年、東京で開催され、世界中から関係者
一方、わが国を除く各国は、それぞれの戦略に則って、ナ
が駆けつける。
ノテクノロジー分野への研究開発投資を増大し続けてい
る。隣の韓国は、ナノテクノロジー予算をエレクトロニク
ナノテクノロジーの目標のひとつに、
「国会図書館の情報
スとディスプレイのみに選択投資することを決めた。これ
を角砂糖サイズのチップに納める」というものがある。こ
らふたつの分野にとって、ナノテクノロジーは高度化のた
れが出来るスーパーコンピュータの消費電力は 100 万ワッ
めの基幹技術である。さらに、国立研究所といえども徹底
トである。一方、角砂糖サイズの実用的な機械の消費電力
した競争原理と商業主義を導入し、産業化を加速させてい
(発熱量)は高々数ワットである。それでないと燃え出す。
る。韓国国内に 6 つのナノテクノロジー拠点が存在するが、
したがって、この目標を達成するためには、消費エネルギー
それぞれが立ち位置とミッションを明確化させ、独立採算
を 100 万分の1にしなければならない。ナノテクノロジー
に近い形で運営されている。韓国はナノテクノロジーで世
が究極の省エネを生むというゆえんである。
界第 3 位のグループの座を目指すことを明言しているが、
1 位 2 位は米国と中国であり、わが国ではない。結果とし
世界各国がナノテクノロジーを技術開発戦略の中で中核に
て、わが国の電子産業は韓国に後塵を拝し、追いつくこと
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すらあきらめているように見える。
は、アジアの力を積極的に受け入れるべきである。それぞ
れの得意分野の人材を受け入れる度量が求められる。
中国は、国家戦略的な中央集権的取り組みは北京、ビジネ
ス展開は上海・蘇州という分業体制を敷いている。北京は、
しかし、協力は競争力があってこそのもの。アジアの盟主
数多くの国と幅広く協力関係を構築し、国際標準化に向け
として、引き続きリードし続けるためには、世界をアッと
た多数派工作に走り始めた。かなり巧妙な国際戦略をとっ
言わせるようなナノテクノロジービジョンを提示する必要
ている。一方で上海・蘇州は、特定国からの外資導入によ
がある。日本にはまだその力は残っている。しかも、この
り、産業化の急成長を狙っている。蘇州工業園区の建設と
分野においてアジアで尊敬される存在は日本のみである。
いう一大プロジェクトに乗る形で、ナノテクノロジーの拠
連携戦略しか生き残る道はないことを肝に銘じるべきであ
点を設置し、巨大な投資の波に乗ろうとしている。この仕
る。
組みは、国際的なオープンイノベーションを実現するため
に有効に働きつつある。
台湾は、ナノテクノロジー分野でも徹底した実利主義を追
及している。基礎研究は他国に譲り、nanoMark という認
証制度により商品化を加速させている。商品化したもの勝
ちの精神をナノテクでも貫いている。その割り切り方がす
ごい。また、限られた研究資源を有効に活用すべく、海外
の施設設備を積極的に利用戦略も持ち合わせている。
一方で、東南アジアに目を向けると、シンガポールは、世
界のトップ人材をハンティングするとともに、世界中の企
業に門戸を開くという徹底したオープン戦略で飛躍を狙っ
ている。リソースの制約上、人材を育てるだけでは世界の
トップに伍すことは出来ないと見切っている。タイは、バ
ンコクに、ヒト・モノ・カネを一極集中投資し、なおかつ
ここでバイオ、金属・材料、電子工学、ナノテクノロジー
が一体となった研究開発を進めている。ナノテクノロジー
を新素材や医療にいち早く応用することが可能になった。
また、他国との競合を避けるべく日用品へのナノテクノロ
ジー応用に特化しつつあることも注目に値する。
資源に乏しいわが国は、エネルギーや資源を海外から輸入
しなければ直ちに立ち行かなくなるきわめて不安定な国で
ある。燃料、食料などを輸入するためには、相当分の外貨
が必要である。現在、日本の輸出製品の 90%は工業製品
である。したがって、モノづくりや競争力の確保は、わが
国の存在を左右しかねない極めて重要な課題である。
お世辞にも、IT やバイオはわが国が世界一とはいえない。
ナノテクノロジーは、世界のトップを走り続けることが出
来るわが国最後の牙城である。わが国が世界最先端であり
続けるためには、アジアとの戦略的な連携は不可欠である。
世界の経済や技術開発のステージは、欧米からアジアにシ
フトしつつある。先端技術のイノベーション分野でも、ア
ジアの位置づけが向上することは疑いがない。わが国がナ
ノテクノロジーのアジアの拠点と位置づけられるために
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連載 生物規範工学 第三回
私が体験した驚愕の「生物規範工学」in アメリカ
京都大学農学研究科応用生命科学専攻 森直樹
食者の攻撃を防いでいることは読者の皆さんもご存知で
1.はじまり
あろう。いわゆる物理的防御と化学的防御である。どち
1998 年 か ら 2000 年 ま で、 私 は 米 国 農 務 省 の Center
らも植物が植食者に対して直接作用するので、直接防御
for Medical, Agricultural, and Veterinary Entomology
反応である。これに対して、Tumlinson 氏らが報告した事
(CMAVE)に留学する機会を得た。研究所はフロリダ州
例は、寄生バチという介在者を通した植物の防衛反応で
のゲインズビルという人口約 11 万人の小さな都市にあ
あり、植物の間接防御反応と位置付けられた。トウモロコ
る。街では樫の枝から着生植物スパニッシュモスが垂れ下
シ、タバコやワタは、食害されると草引きの際に経験する
がり、郊外の州立公園にある川沿いのトレイルを歩くと
青臭い匂いに加えて、独特の花のような甘い香りを特異的
数百頭ものワニと遭遇できる。野生のワニにも仰天した
に放出する。食害された植物が放出する匂いを初めてかい
が、私を雇用するファンドがアメリカ国防総省の Defense
だ時は、その甘い香りに著者も驚いた。例えば、食害され
Advanced Research Projects Agency(DARPA) か ら 提 供
たアオイ科のワタからは α-pinene、β-pinene、myrcene、
されることにも驚いた。防衛省が農学系の研究に研究資金
limonene、α-humulene、β-caryophyllene、jasmone、
を拠出することは、日本では想像もできないことだった。
(Z )-3-hexenyl butyrate、(Z )-3-hexenyl isobutyrate、
しかし、それ以上に、研究のアイディアの斬新さに脱帽し
(E ) -2 -h exeny l b u ty ra te、 ( Z) -3 -h exen-1 -ol 、 (E)- 2-
た。少々長くなるが、その詳細を以下に紹介させて頂く。
hexenal、(E )-β-ocimene、linalool、(E ,E )-α-farnesene、
昆虫の触角を用いて、地雷を検出するバイオセンサーの開
(E )-β-farnesene、(E )-4,8-dimethyl-1,3,7-nonatriene、(E ,E )-
発が研究チームの目標の一
つであった。
1990 年、 前 述 の CMAVE
に 所 属 す る James H.
Tumlinson 氏 ら は 非 常 に 興
味深い現象を報告した。チョ
ウ目幼虫、いわゆるイモム
シに食害された植物が特有
の揮発成分を放出し、幼虫
の天敵である寄生バチがこ
の香りを利用して幼虫を見
つけ出したうえで、幼虫に
卵を産み付けるのである(図
1)[1]。植物がバラの様に棘
を生したり、タバコのニコ
チン、除虫菊の殺虫成分ピ
レスロイドやワサビやカラ
シの辛味成分シニグリンと
いった毒物質を生産し、植
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図1 植食者 - 植物 - 寄生バチを介した生物間相互作用と植物の間接防御反応
4,8,12-trimethyl-1,3,7,11-tridecatetraene、(Z )-3-hexenyl
比較的大型の寄生バチ Cardiochiles nigriceps はスペシャ
acetate、indole が放出される(図 2)
。オランダでは、リ
リストであり、鱗翅目ヤガ科の Heliothis virescens にしか
ママメ、植物の大害虫であるハダニ、そしてハダニの天敵
産卵しない。同じヤガ科の Helicoverpa zea に産卵しても、
であるカブリダニの間にも同様な関係が報告され [2]、植
H. zea の免疫機構を突破できず、C. nigriceps の幼虫は生
食者 - 植物 - 天敵間で働く情報化学ネットワークは一部の
育できない。しかしながら、外見上 H. virescens は H. zea
特異な例ではなく、一般的な現象であることが示唆された。
とほぼ同じで、少なくとも著者には区別出来ない。どの様
ワーゲニンゲン農科大学 Marcel Dicke 氏らの成果である。
にしてこの寄生バチは H. virescens と H. zea を区別するの
だろうか?
イモムシの幼虫やハダニの食害だけではなく、現在では、
昆虫の産卵や昆虫が植物の上を歩き回ったことさえも植物
ペンシルべニア州立大学の Consuelo De Moraes 氏による
は検出でき、種々の抵抗性が誘導される事実が報告されて
と、H. virescens または H. zea に食害されたワタは上述の
いる。
揮発成分を放出するが、その成分の比率が大きく異なる。
その違いを寄生バチは認識し、宿主と
なる幼虫が食害しているワタを識別し
ている [3]。C. nigriceps の宿主となる
H. virescens に 食 害 さ れ た ワ タ は (Z )3-hexenyl acetate、(E )-β-ocimene そ
し て (E )-4,8-dimethyl-1,3,7-nonatriene
を大量に放出する。一方、H. zea に食
害 さ れ た 場 合 に は、 別 の 成 分 で あ る
(E ,E )-α-farnesene、(E )-β-farnesene そ
し て (E ,E )-4,8,12-trimethyl-1,3,7,11tridecatetraene を放出する。同じ植物
でも異なる植食者に食害された場合、
比率の違う揮発成分を放出すること
は、トウモロコシやタバコでも確認さ
れた。現在、ハチは宿主が食害した植
物が放出する匂いを学習し、その匂い
を利用して効率的に自然生態系で自ら
の宿主を発見すると考えられている。
昆虫が学習することに驚く読者もいる
かもしれないが、昆虫は一般に考えら
れている以上に適応能力も高く、完成
された生物である。
図 2 植食者の食害によってワタから放出される揮発成分
1, α-pinene; 2, β-pinene; 3, myrcene; 4, limonene; 5, α-humulene; 6, β-caryophyllene;
7, jasmine; 8, (Z )-3-hexenyl butyrate; 9, (Z )-3-hexenyl isobutyrate;
10, (E )-2- hexenyl butyrate; 11, (Z )-3-hexen-1-ol; 12,(E )-2-hexenal; 13, (E )-β-ocimene;
14, linalool; 15, (E ,E )-α-farnesene; 16,(E )-β-farnesene;
3.驚愕の生物規範工学的発想の一例
17, (E )-4,8-dimethyl-1,3,7- nonatriene; 18, (E ,E )-4,8,12-trimethyl-1,3,7,11-tridecatetraene;
前置きが長くなったが、いよいよ本題
19, (Z )-3-hexenyl acetate; 20, indole
である。昆虫の触角ほど、感度の高い
センサーはない。この昆虫の「超能力」
2.自然の巧妙さ
を利用する手段はないだろうか? Tumlinson 氏や米国農
務省 Crop Management and Research Laboratory の Joe W.
自然は巧妙に出来ている。例えば、ナミアゲハをはじめと
Leiws 氏らはここで驚くべき発想の飛躍を行った。すなわ
するアゲハチョウ属の多くはミカン科植物を幼虫の食草と
ち、寄生バチが高い学習能力を持つならば、寄生バチに例
しており、他の植物を食べない。上述の植食者 - 植物 - 天
えば爆薬中の副生成物 2,4-dinitrotoluene の匂いを学習させ
敵間で働く情報化学ネットワークにも、厳格な区別がある。
れば、地雷探知の高感度センサーとしてハチが利用出来る
PEN November 2011
9
のではないかと考えたのである。国際空港で活躍する麻薬
せることに成功した [6]。
犬ならぬ、地雷バチとでも言えようか。このアイディアが
DARPA に認められ、本プロジェクトがスタートした。こ
の発想の柔軟さには非常に感心させられた。
4.害虫による食害のミミック
この研究で活躍した寄生バチは Microplitis croceipes であ
寄生バチが介在する植物の間接防御反応は驚くべき発見で
る。食餌や産卵可能なイモムシ宿主の提供といった報酬と
ある。そこではハチの学習能力が重要であった。一方、植
関連させれば、本種のハチはチョコレートやバニラの匂い
物はどの様なメカニズムで植食者から食害されたことを知
を学習し、匂い源へ飛んで来る [4]。それでは、学習でき
り、揮発成分を放出し始めるのだろうか?本研究テーマも
る化学物質の幅はどれほど広いのだろうか?実際に、ハ
興味深い。著者はこのメカニズム解明の研究に従事した。
チは自然界には存在しない 2,4-dinitrotoluene の匂いを学
習し、その匂いを選好することは出来るのだろうか?答
著者の同僚であったスウェーデン人 Hans T. Alborn 氏はヤ
えは、YES であった。産卵する雌蜂は見事に学習し、80
ガ科の一種シロイチモジヨトウ幼虫 Spodoptera exigua の
cm の風洞実験で匂い源に飛来した [5]。また、環状ケトン
唾液に着目した。興味深いことに、トウモロコシの葉に傷
cyclohexanone、脂肪族ケトン 3-octanone、脂肪族アルデ
をつけ、その部分に幼虫の唾液を塗りつけると、食害時と
ヒド octanal、脂肪族アルコール diisopropyl aminoethanol
同様な組成の揮発成分が放出された。植物に食害特異的な
も同様に学習した。これらの結果から、M. croceipes は非
応答を引き起こすエリシターという鍵物質が唾液中に存在
常に広い範囲の化学物質を柔軟に学習できる潜在能力を有
し、この物質が食害をミミックすることができる。Alborn
しており、ハチの生活史とはかけ離れた化学物質にも反応
氏らは、幼虫の唾液を大量に集め、唾液からトウモロコシ
出来ると結論した。自然生態系には多くの化学物質が存在
に揮発成分を放出させるエリシターを単離した。揮発成分
し、昆虫はそれらに晒されている。この化学物質から生存
volatile と誘導 elicit を融合させ volicitin と命名した(図
に有利な情報を取捨選択するために、昆虫の触角上のレセ
3)[7]。昆虫の唾液に注目した点が非常にユニークである。
プターは種々な官能基を持つ化学物質に対応出来るように
その構造は、17 位が水酸化されたリノレン酸とグルタミ
調整されているのかもしれない。
ンの縮合物であった。また、類縁体として、水酸基の無い
N -linolenoyl-L-glutamine も同定された。筆者らは、ハス
さらに、我 々 の 研 究 チ ー ム の メ ン バ ー で あ る Tomas C.
モンヨトウ・アワヨトウ・オオタバコガからも volicitin を
Baker 氏とペンシルバニア州立大学の Kye Chung Park 氏
同定し、その 17 位の立体化学を S - 体と決定した。揮発成
らは、上述の H. virescens 、H. zea 、M. croceipes に加えキ
分放出活性を調べると、17 位の立体化学は活性には影響
イロショウジョウバエ等の 5 種の昆虫の触角を切り取って
しないが、水酸基を除去すると、その活性は約 30%に減
集 め、 並 列 に ア ン プ
に連結し、ハンディー
タイプのハイブリッ
ド型の嗅覚バイオセ
ン サ ー を 開 発 し た。
このセンサーに 20 種
の揮発成分を検出さ
せ る と、 当 然 の こ と
か も 知 れ な い が、 そ
れぞれの揮発成分に
対 し て、 そ れ ぞ れ の
触角は大きさの異な
る電気信号を生じる。
これらの信号を再構
築 す る こ と で、 こ の
ハイブリッド型のバ
イオセンサーに 20 種
の揮発成分を識別さ
10
PEN November 2011
図 3 植物に揮発成分を放出させる昆虫由来エリシター
1a, volicitin; 1b, N -linolenoyl-L-glutamine; 2, inceptin; 3a, caeliferin A 16:1; 3b, caeliferin B 16:1
少した。また、グルタミン部分をアスパラギン、ロイシン、
それでは、H. virescens または H. zea に食害されたワタ・
プロリン、スレオニンなど他のアミノ酸に変換すると活性
トウモロコシ・タバコで異なる比率の揮発成分が放出さ
は消失し、volicitin のグルタミン部分が揮発成分放出の活
れるのは何故だろうか?残念ながら、この答えは未だに
性発現に必須であることが判った [8]。
解明されていない。H. virescens および H. zea の唾液中か
ら volicitin とその類縁体が同じ様に同定され [9]、両種の
Volicitin の同定以来、昆虫の唾液中のエリシター成分がに
唾液で処理したトウモロコシから放出される揮発成分の組
わかに注目されてきた。Eric A. Schmelz 氏らは、ハスモン
成には違いは見られなかった。二種のイモムシが直接トウ
ヨトウの近縁種 S. frugiperda に食害されたマメ科ササゲ
モロコシを食害した場合に見られた揮発成分の比率の違い
からトウモロコシと似た揮発成分が放出されることを見出
を in vitro 実験系では再現することは出来なかったのであ
し、その唾液からペプチド性のエリシター、inceptin を単
る。しかしながら、意外なことに糞中に含まれる volicitin
離・同定した。Inceptin は幼虫が食べた植物の葉緑体 ATP
類の量には大きな差があり、H. virescens の糞にはほとん
シンターゼの γ- サブユニットを構成するタンパク質の一
ど volicitin 類は含まれていないが、H. zea の糞中には大量
部分であり、1 枚の葉に 1 fmol(フェムトモル、10-15)と
に含まれていた [9]。タバコズズメガの糞にも volicitin 類
いう超微量の処理で、エリシター活性を示した。更に、
は確認されている。多くのチョウ目幼虫の中には、果実内
volicitin の発見者である Alborn 氏は、鱗翅目ではなく直
部や柔らかい海綿状柔細胞からなる髄の内部で生育する種
翅目 ( バッタ目 ) に属するアメリカイナゴの唾液から、ト
もいる。この様な場合には、植物内に糞中の volicitin 類が
ウモロコシに揮発成分を放出させる新しいタイプのエリシ
溜まり、結果として植物の反応に何らかの影響を与える可
ター、caeliferin 類を単離・同定した。構造を図3に示す。
能性も考えられる。
非常に興味深いのは、この揮発成分の放出は傷口周辺だけ
植物に抵抗反応を誘導するゆえ、volicitin 類は幼虫の生
でなく、食害を受けていない健全な葉からも放出される点
存に明らかに不利に働く。何故自分の生存に不利に働く
である。すなわち、volicitin が引き金となり、植物全身で
volicitin 類を昆虫は持つのだろうか?恐らく幼虫にとっ
揮発成分生合成が活性化され、インドールやテルペン類が
ても volicitin は何らかの重要な役割を果たしていると思
合成される。健全葉からも揮発成分が放出される本反応は、
われる。そこで、著者らは鱗翅目幼虫ハスモンヨトウ S.
まさしく植物の免疫反応とも言える。また、食害されたワ
litura を用いてその生合成経路を詳細に調べ、幼虫におけ
タから放出される揮発成分 20 種のうち、四角で囲んだ 8
る volicitin の生理的な役割の解明に挑戦した。結論から述
化合物は食害の刺激で炭酸ガスから新たに de novo 合成さ
べると、幼虫にとって、volicitin 類とは老廃物であるアン
れた(図 2)。食害の刺激で、植物の生理反応が活性化さ
モニアをグルタミンとして貯蔵し、幼虫の窒素代謝の効率
れていることが判って頂
け る と 思 う。 テ キ サ ス
工科大学の Paul W. Paré
氏らはトウモロコシ葉か
ら volicitin と 結 合 す る
タンパク質の存在を報告
している。著者の研究結
果と合わせると、この結
合タンパクの認識には
volicitin のグルタミン部
分が重要であると予想さ
れる。トウモロコシは昆
虫の食害に対して、巧妙
な応答反応の機構を持ち
合わせているのだ。トウ
モ ロ コ シ に 限 ら ず、 タ
バ コ・ ナ ス・ ダ イ ズ も
volicitin を受容して揮発
成分を放出する。
図 4 ハスモンヨトウ幼虫の生育を支える窒素代謝と volicitin
PEN November 2011
11
化に寄与する化合物であることを見出した [10]。植物に含
会において英語を自由に操り、外国人とのディベートに負
まれるタンパク質の量はそれほど多くはない。これに対し
けない日本人も必要である。しかし、それだけではないだ
て、ある種のチョウ目幼虫は卵から孵化後飛躍的に大型化
ろう。多様性が重要なのは、昆虫だけでは無いはずだ。流
することで、天敵からの攻撃を免れている(図4)。この
暢に英語が話せなくても、日本人らしい特徴・物の見方を
迅速な成長を可能にするには、幼虫体内の窒素の効率的利
磨くことも世界から期待される一つの日本人像ではないだ
用は不可欠なのであろう。この生理的な理由から、たとえ
ろうか。国際化、グローバルスタンダードが声高に叫ばれ
唾液中の volicitin 類が植物の間接防御反応を引き起こそう
るこの時代だからこそ、深く意識しておきたいポイントだ
とも、簡単には捨てられないのだ。
と思う。読者の皆さまは如何お考えでしょうか?
現在までに、volicitin 類は多くの鱗翅目幼虫から同定され
ているが [9,11]、全ての鱗翅目幼虫が持つわけではない。
References:
その一方で、著者らは直翅目コオロギ科のエンマコオロギ
[1] Turlings, T.C.J., Tumlinson, J.H.T., Lewis, W.J. (1990)
やタイワンエンマコオロギ、双翅目ショウジョウバエ科キ
Exploitation of herbivore-induced plant odors by host-
イロショウジョウバエ幼虫からも volicitin 類を同定した
seeking parasitic wasps. Science 250, 1251-1253.
[12]。この様に、volicitin 類は当初研究者が予想していた
[2] Dicke, M., Sabelis, M.W. (1988) How do plants obtain
よりも多くの昆虫が持つ。昆虫の食害に対して抵抗性が誘
predatory mites as bodyguards. Neth. J. Zool. 38, 148-
導される鍵化合物として、ある種の植物がたまたま幼虫唾
165.
液中の volicitin を利用するようになった。しかし、その背
[3] De Moraes, C.M., Lewis, W.J., Pare, P.W., Alborn,
景には進化的・生態学的に様々な淘汰を経たことが覗える。
H.T., Tumlinson, J.H. (1998) Herbivore-infested plants
selectively attract parasitoids. Nature 393, 570-573.
[4] Takasu, K., Lewis, W.J. (1993) Host- and food-foraging
5.おわりに
of the parasitoids Microplitis crocipes: learning and
physiological state effects. Biol. Control 3, 70-74.
以上、アメリカにおける著者の個人的な経験を書かせて頂
[5] Olson, D.M., Rains, G.C., Meiners, T., Takasu, K.,
いた。特に、ハチを用いた地雷の検出や昆虫の触角を利用
Tertuliano, M., Tumlinson, J.H., Wakers, F.L., Lewis, W.J.
した匂いの識別センサーシステムの構築に挑む研究は、昆
(2003) Parasitic wasps learn and report diverse chemicals
虫の多様性をうまく活かしながら、生物学者と工学者の協
with unique conditionable behaviors. Chem. Sense 28,
力によりはじめて為し得た研究であった。まさしく、生物
545-549.
規範工学の好例である。また、著者が直接関与した植物に
[6] Park K.C., Ochieng, S.A., Zhu, J., Baker, T.C. (2002) Odor
抵抗性を誘導する昆虫由来のエリシターに関する研究も、
discrimination using insect electroantennogram responses
昆虫の唾液に注目した点が非常にユニークであった。昆虫
from an insect antennal array. Chem. Sense 27, 343-352.
の食害をミミックする物質から、植物の免疫機構に迫る研
[7] Alborn, H.T., Turlings, T.C.J., Jones, T.H., Stenhagen, G.,
究は今後の発展が大きく期待される。この研究グループに
Loughrin, J.H., Tumlinson, J.H. (1997) An elicitor of plant
所属し、その進展を間近で見ていると、世界各国から人材
volatiles from beet armyworm oral secretion. Science 276,
を集め、オリジナリティー溢れる研究を展開するアメリカ
945-949.
のシステムの力強さ・底力を見せつけられた思いがした。
[8] Sawada, Y., Yoshinaga, N., Fujisaki, K., Nishida, R.,
実際、ヨーロッパや米国と比較すると、日本の生物規範工
Kuwahara, Y., Mori, N. (2006) Absolute configuration of
学的研究は周回遅れかもしれない。
volicitin from the regurgitant of lepidopteran caterpillars
and biological activity of volicitin-related compounds.
12
しかしながら、同時に、日本独自の視点を大切にし、欧米
Biosci. Biotechnol. Biochem. 70, 2185–2190.
よりも優れたチームワークを発揮すれば、日本人らしい生
[9] Mori, N., Alborn, H.T., Teal, P.E.T., Tumlinson, J.H.
物規範工学を確立できるとも強く確信した。幸い我々日本
(2001) J. Insect Physiol. 47, 749-757.
人は、四季によって育まれた自然に対する鋭敏な美的感覚、
[10] Yoshinaga, N., Aboshi, T., Abe, H., Nishida, R., Alborn,
物作りにおいては細部に至るまでの心配りなど、独特の文
H.T., Tumlinson, J. H., Mori, N. (2008) Active role of fatty
化を築き上げてきた。我々日本人が失ってはいけない大切
acid amino acid conjugates in nitrogen metabolism in
な長所であろう。世界に誇れる日本人らしさ、世界に期待
Spodoptera litura larvae. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 105,
される日本人とは何だろうか。勿論、現在の厳しい国際社
18058– 18063.
PEN November 2011
[11] Yoshinaga, N., Alborn, H.T., Nakanishi, T., Suckling,
D.M., Nishida, R., Tumlinson. J.H., Mori, N. (2010) Fatty
acid-amino acid conjugates diversification in lepidopteran
caterpillars. J. Chem. Ecol. 36, 319–325.
[12] Yoshinaga, N., Aboshi, T., Ishikawa, C., Fukui, M.,
Shimoda, M., Nishida, R., Lait, C.G., Tumlinson, J.H., Mori,
N. (2007) Fatty acid amides, previously identified in
caterpillars, found in the cricket Teleogryllus taiwanemma
and fruit fly Drosophila melanogaster larvae. J. Chem. Ecol.
33, 1376–1381.
PEN November 2011
13
Column 窓付きの翅をもつウスタビガ
ウスタビガは、翅を広げた大きさが 9 〜 10 センチメートル程度になるヤママユガの仲間です。ヤママ
ユガの仲間にしては小型で地味な蛾です。成虫になってからは交尾と産卵だけで食餌をしないため、口
は退化してしまいます。このガの特徴は、ぬいぐるみのようなもこもこした毛でおおわれた頭や胴体と、
それぞれの翅に一つずつある磨りガラスのような半透明の目玉模様です。
ウスタビガは漢字では薄手火蛾と書きます。手火というのは提灯のことで、木にぶら下がる薄緑色の繭
の姿からウスタビガと名づけられています。ウスタビガは別名をツリカマス、ヤマカマスともいいます。
カマスは藁のむしろを二つ折りにしてつくった袋状の入れ物の事で、これらの別名もその繭の形に由来
します。
ウスタビガは卵の状態で冬を越し、6 月ごろに繭を作ります。繭のなかの蛹が羽化するのは 10 月ごろで、
晩秋の落葉樹林でひときわ目立つ薄緑の繭は持ち主のいない空き家です。繭はきれいですが、空き家で
あってもウスタビガの卵が生みつけられていることがあるので、持ち帰ってはいけません。
ウスタビガなどのヤママユガの仲間は野蚕(やさん)と呼ばれ、繭から絹糸を採ることができます。野
蚕の絹糸は染色が難しく、また一つの繭から蚕の 3 分の 1 程度の長さの糸しか採れないため、産業用
途の流通はほとんどありません。しかし、蚕の糸よりも強く艶があるため、天然の絹として珍重されて
います。
14
PEN November 2011
【規制策、EHS、ガイドライン】
FDA、ガイドラインの企業への浸透
度を評価(2011.11.3)
米国の食品医薬品局(FDA)が公開
したナノテクノロジーの医薬品およ
び医療機器への応用に関する企業
向けのガイドライン案に対するパブ
リックコメント期間が終了し、FDA
は、現在、企業などから寄せられた
意見について検討を始めた。現時点
ではガイドラインの最終版の公表日
は決まっていない。
http://www.genengnews.com/keywordsandtools/
print/3/24829/
海外動向
【食品応用、コミュニケーション】
ナノテクノロジーの食品応用とコ
ミュニケーションの課題(2011.11.2)
ナノテクノロジーの食品分野への応
用が、基礎研究の進展に見合ったほ
ど進んでいない。この背景には、消
費者の反応がはっきりしないために、
企業が情報公開やコミュニケーショ
ンに積極的でないことがある。一方
で、消費者は技術の食品への応用が
どのように行われているのかよくわ
からないことに懸念を示している。
これまでに実施された意識調査で明
らかになっているように、市民のナ
ノテクノロジーへの理解は決して高
いとはいえない。また、様々な個人
的な要素がナノテクノロジーについ
ての認識の形成に大きく影響する。
さらに、これらの調査を基礎として
消費者のリスク判断について分析し
たところ、消費者のナノテクノロジー
製品の受け止め方は、消費者保護に
責任ある機関や政府への信頼度に影
響され、しかも日々変化している。
問題を早期に把握し、迅速な対応を
とることがナノテクノロジー製品が
受け入れられるかどうかを左右する
重要な鍵となる。
http://www.nature.com/nnano/journal/vaop/
ncurrent/full/nnano.2011.193.html
PEN November 2011
15
【政策、リスク管理、EHS】
NNI の新戦略へのコメント(2011.11.1)
て不可欠である。
http://www.nist.gov/mml/biochemical/cluster-102511.cfm
米国連邦政府は、製品開発から廃棄までをカバーする国家
ナノテクノロジー戦略(NNI)の新戦略を公開した。新戦
略は、ナノテクノロジーの環境・健康・安全(EHS)研究
【EHS、リスク評価】
と社会との情報の共有に一層の努力を求めるものとなって
ナノ粒子の環境影響で問題になるのは粒子のサイズではな
いる。具体的には、暴露評価、予測モデル開発、ナノ材料
い可能性(2011.10.25)
計測、ライフサイクルアセスメント(LCA)などに重点が
米国のオレゴン大学の研究グループが、ナノ粒子の環境や
置かれたものとなっている。新戦略に対しては、LCA の考
健康への影響について、一般にはナノ粒子のサイズが重要
えを取り入れたことなどが評価されている。
だと考えられているが、実はサイズなど問題ではない可能
http://www.newhavenindependent.org/index.php/archives/entry/feds_talk_nano_
性があると発表した。オレゴン大学で開発された最新の計
safety/id_41347
測機器を用いた観察で、銀食器や銅を使った宝飾品から意
図しないナノサイズの金属粒子が排出されているという。
【投資、市場化】
ロスナノ、バサルト繊維建材事業に出資(2011.11.1)
ロシア政府が直接出資するナノ産業振興のためのロスナノ
が、寒冷地での高耐久性建築材として注目される玄武岩(バ
サルト)繊維を用いた建材事業に投資を開始すると発表し
調査対象とした食器や宝飾品はナノテクノロジーやナノ材
料を用いたものではない。つまり人は今考えられているよ
りもはるかに昔からナノ粒子に暴露していたというのであ
る。本研究の成果は ACS Nano 電子版に掲載された。
http://uonews.uoregon.edu//archive/news-release/2011/10/nanoparticles-andtheir-size-may-not-be-big-issues
た。JSN ボストーク通信が伝えたもので、事業総額 9 億
5000 万ルーブルのうちロスナノは 4 億ルーブルを投資し、
サハ共和国に有限会社が設立される。
【化粧品、EHS、リスク管理】
http://www.jsn.co.jp/weekly/index.html
化粧品とナノテクノロジー(2011.10.24)
http://www.buytoletmortgagesite.org.uk/news/buy-to-let-mortgages/russian-
高機能なエイジングケア製品や日焼け止めを中心に、化
development-bank-and-the-bank-of-moscow-fund-innovative-projects-of-smallbusiness-891.html?PHPSESSID=00b822f60149714130f5fca0c2e4d073
粧品ではナノテクノロジーの応用が積極的に行われてい
る。しかし、皮膚科医や研究者を対象に行われた意識調査
で、皮膚科医はナノテクノロジーについてきちんと理解し
【研究開発】
ナノファイバーと CNT を用いて水から放射性物質を効率
的に除去する新素材を開発(2011.10.31)
オーストラリアのクイーンズランド工科大学の研究グルー
プが、チタン酸塩のナノファイバーとカーボンナノチュー
ブ(CNT)を用いて、放射性の廃水から放射性物質を取り
除くことのできる新素材の開発に成功した。新素材は廃水
中の放射性セシウムイオンを選択的に吸着し、除去するこ
とが可能とのこと。
http://www.qut.edu.au/about/news/news?news-id=37568
ているとはいい難い事実が明らかになった。調査に対し回
答をよせた皮膚科医のちょうど半数が、ナノテクノロジー
についてよく知っていると答えたが、同じ回答者が自分た
ちの患者がナノテクノロジーについて理解しているかどう
かわからないと答えた。回答者の多くがナノテクノロジー
の医薬品や診断機器への応用を期待しているものの、デー
タの少ない化粧品の安全性などについては懸念を持ってい
ることも明らかになった。サンプル数は少ないものの、あ
る程度の傾向は示されていると考えられる。調査結果は
Journal of Drugs in Dermatology に掲載された。
http://www.newhavenindependent.org/index.php/archives/entry/is_that_face_
cream_safe_your_guess_is_as_good_as_your_dermatologists/
【キャラクタリゼーション、EHS、医療品応用】
NIST、クラスター状のナノ粒子のキャラクタリゼーション
に成功(2011.10.26)
米国の国立標準技術研究所(NIST)の研究グループは、ク
ラスター状のナノ粒子のサイズ分布とサイズごとの吸光特
性を正確に計測する手法の開発に成功した。正確な吸光特
性を計測することはナノ粒子のバイオセンサー応用にとっ
16
PEN November 2011
【EHS】
生体内での持続性についての研究が CNT のリスク評価に
とって重要(2011.10.24)
繊維様物質の有害性は、長さ、生体内持続性、暴露量に影
響されると考えられている。最新の研究成果によれば、
カー
ボンナノチューブ(CNT)のような高アスペクト比の物質
も、形状や構造が生体内持続性に大きく影響すると推測さ
れるため、繊維様物質のパラダイムはが当てはまると考え
られている。ナノ材料の有害性やリスクを評価し、設計段
【政策、研究のガバナンス】
米 国、 ナ ノ テ ク ノ ロ ジ ー の EHS 研 究 戦 略 を 公 表
(2011.10.20)
階から安全な製品を作るためには、ナノ材料の生体での持
米国は、2010 年 2 月に発表した国家ナノテクノロジー戦
続性を明確にする研究が重要となる。
略(NNI)の戦略計画と調和するナノテクノロジーの環境・
http://www.safenano.org/KnowledgeBase/CurrentAwareness/FeatureArticles/
健 康・ 安 全(EHS) 研 究 に 関 す る 新 し い 研 究 戦 略 2011
BiodurabilityOfCNT.aspx
NNI EHS Research Strategy を公開した。連邦政府は、ナ
ノテクノロジーの研究から得られる社会的なベネフィット
【リスク管理、EHS】
持続可能なナノテクノロジー研究開発のためのガイドライ
ン(2011.10.21)
米国の環境保護庁(EPA)は、米国民の健康と環境を保護
しつつナノテクノロジーのベネフィットを最大限に引き出
すためのガイドラインを作成した。ガイドラインは、ナノ
テクノロジーの研究開発に関わるすべての関係者が活用で
きるものである。ナノテクノロジー製品を選択する際の評
価を助けること、また、研究の進展に応じ適切な判断を下
すための枠組みを構築するための基礎となることを柱とし
ている。
http://cfpub.epa.gov/si/si_public_record_report.cfm?dirEntryId=238589
を最大に、意図しない影響を最小に抑えるべく努めてきた。
このような目標の実現には包括的なリスク管理ベースの環
境・健康・安全(EHS)研究が欠かせない。新戦略により
の NNI に参加するすべての連邦政府機関が一貫した政策
の下で EHS 研究を進めることができる。これは 2008 年
に発表された第1版の改訂版で、最新の研究開発の動向が
反映されている。 各政府機関が連邦予算や施設を効率的
に活用できるようになるため、ナノテクノロジーによるイ
ノベーションを促しつつ、効果的に市民の健康や環境を守
ることができるようになる。2011 年版の中核には、2008
年版に引き続いてナノ材料計測、暴露評価、健康、環境、
リスク評価と管理が据えられているほか、新たに予測モデ
ルとインフォマティクスが追加された。
http://www.nano.gov/node/695
【リスク管理、政策、研究開発支援】
米国の新しい EHS 研究戦略の特徴についてのコメント
(2011.10.21)
Andrew Maynard 氏は、米国連邦政府が公開した国家ナノ
テクノロジー戦略(NNI)の枠組みで実施される環境・健康・
安全(EHS)研究戦略について、
内容は悪くないと断りつつ、
残念ながらパブリックコメントがあまり反映されていない
ようだと述べた。
http://2020science.org/2011/10/20/new-us-federal-strategy-for-nanotechnologysafety-research-released/
【化学物質管理】
REACH の ナ ノ プ ロ ジ ェ ク ト、 最 終 報 告 書 を 公 表
(2011.10.18)
欧州共同研究センター(JRC)の委託を受けた SAFENANO
などによって実施されていた 2 件の REACH のナノ材料プ
ロジェクト RIP-oN 2 および 3 の最終レポートが公開され
た。このプロジェクトでは、様々な関係者と意見を交換
し、REACH の枠組みでナノ材料に扱うための最適な方法
を探ってきた。
プロジェクトではナノ材料評価の最新のデータを集めて分
【化学物質管理】
析し、欧州委員会(EC)に対して REACH の「情報要件及
ECHA、REACH 加盟国が評価を実施すべき対象物質案を公
び化学物質安全性評価に関するガイダンス」をナノ材料の
開(2011.10.21)
取り扱いに向くようにどのように修正すべきかについて助
欧 州 化 学 物 質 庁(ECHA) は、REACH 規 則 の 枠 組 み で
言を行った。RIP-oN 2 プロジェクトでは、REACH でナノ
2012 年~ 2014 年の 3 年間に加盟国が評価を実施すべき
材料に対して要求する情報要件とナノ材料の安全評価のた
対象物質案を公開した。これは共同体ローリング・アクショ
めに必要なデータについて分析し、RIP-oN 3 プロジェクト
ン・プラン(CoRAP)の第 1 次提案の一部としてなされ
で、REACH に必要とされる暴露評価、有害性とリスクの
たもの。健康および環境に危険を及ぼすことが疑われる物
キャラクタリゼーションについて検討した。
質として評価対象にリストアップされたのは当初の予定よ
http://www.azonano.com/news.aspx?newsID=23606
りも大幅に少ない 91 物質。当初の予定よりも対象物質が
少ないのは、加盟各国のリソースの限界によるものである。
対象物質は今後の状況次第では変更される可能性が高い。
http://echa.europa.eu/news/na/201110/na_11_50_corap_en.asp
PEN November 2011
17
【リスク管理、標準化、規制策】
EC、ナノ材料の新定義を決定(2011.10.18)
欧州委員会(EC)は 10 月 18 日に、新興および新たに特
定された健康リスクに関する科学委員会(SCENIHR)と共
同研究センター(JRC)が作成し、1 年をかけて議論した
きたナノ材料の定義に関する勧告を採択した。新しい定義
はナノ材料を「1 ~ 100 ナノメートルの次元をもつ」物質
としている。EC は、新定義によって特別な取扱いが必要
な物質を明確にでき、欧州の競争力を損なうことなく、欧
生産的である」と述べた。
http://spectrum.ieee.org/nanoclast/semiconductors/nanotechnology/the-ec-definesa-nanomaterial-now-what
今後どのように新定義が使用されるのかが鍵(2011.10.18)
Andrew Maynard 氏は、EC の定義について少々利便性に
重きをおきすぎており、科学的知見を基礎とする規制の実
現を妨げるのではないかとの懸念を表明している。
http://2020science.org/2011/10/18/ec-adopts-cross-cutting-defintion-ofnanomaterials-to-be-used-for-all-regulatory-purposes/
州市民の健康と安全、環境を守る重要な基礎となるとして
いる。今回採択された定義は 2014 年 12 月には見直され
新定義は非常に限定的で管理には不十分(2011.10.19)
る予定である。
欧 州 の 140 の 環 境 保 護 団 体 の 連 盟 で あ る European
このほど EC によって採択された定義で「ナノ材料」とは、
Environmental Bureau は、新定義の採択を評価しつつも、
・天然、副次的、あるいは人工的に作られた物質で、
新定義は非常に範囲が狭く、産業界よりの内容で適切なナ
・非結合状態、一次凝集体、あるいは二次凝集体の粒子を
ノ材料の管理には不十分だと非難している。
含む
・個数粒度分布で 50% あるいはそれ以上の粒子で 1 つ以
http://www.eeb.org/EEB/index.cfm/news-events/news/nano-definition-too-narrowsays-eeb/
上の外部の次元が 1 ~ 100 ナノメートルである物質、
とされている。
新定義は産業界との妥協の産物と批判(2011.10.20)
http://ihcp.jrc.ec.europa.eu/our_activities/nanotechnology/what-is-a-nanomaterial-
欧州の国際標準化への積極的な発言を行っている
european-commission-breaks-new-ground-with-a-common-definition
European consumer voice in standardisation(ANEC) は
*本情報はシャープ株式会社山根秀信様よりご提供いただ
きました。
定義を採択できたことは評価するが、50% という閾値につ
いて期待したとおりではないとしている。
http://www.nanowerk.com/news/newsid=23117.php
【リスク管理、標準化、規制策】
EC のナノ材料の新定義への様々な反応
欧州委員会(EC)のナノ材料の定義は欧州の環境規制策の
基礎となるため、欧州の産業界や規制当局、そして様々な
市民団体によって長いあいだ議論され、その採択が待たれ
ていた。しかし、新しい定義は採択されたものの、今後、
加盟各国での実施にはさらなる困難が予想される。10 月
18 日の勧告の採択以降、さっそく様々な関係者からコメ
ントが相次いでいる。
フランス議会での法案審議への影響(2011.10.20)
フランスの議会では、
「ナノ粒子状態の物質」に関する法
【EHS、政策、リスク管理】
ナ ノ 材 料 の 安 全 性 に つ い て の EC の 最 新 の 研 究 成 果
(2011.10.18)
欧州委員会(EC)の共同研究センター(JRC)と欧州科学
アカデミー諮問委員会(EASAC)は、工業ナノ材料の健康
影響に関するレポートを公開した。レポートは最新の工業
ナノ材料の安全性に関するデータを分析したうえで、現時
点ではナノ材料が人の健康に何らかのリスクがあるとする
十分な科学的なデータはないと結論している。
http://ihcp.jrc.ec.europa.eu/our_activities/nanotechnology/safety-of-nanomaterialsjrc-easac-present-state-of-the-art-report
律について議論がされており、この法律に EC の新定義を
取り入れるか否か、が今後の最大の焦点になる。
http://www.nanowerk.com/news/newsid=23122.php
【グラフェン、研究開発】
スケールアップに耐える新しいタイプのグラフェンの開発
科学的不確実性が高い段階での定義は非生産的
(2011.10.20)
IEEE Spectrum の編集者である Dexter Johnson 氏は、定
義ありきではない柔軟な規制策を構築することこそが重要
であるとし、「ナノ材料の毒性については科学的な不確実
性が非常に高く、このような状況で定義を定めることは非
18
PEN November 2011
に成功(2011.10.15)
グラフェンの大規模生産と応用には、凝集して比表面積が
減ってしまうという困難がつきものである。米国のノース
ウェスタン大学の研究グループがこの欠点を克服する新し
いタイプのグラフェンを開発した。ノースウェスタン大学
の研究グループが開発したグラフェンは凝集しない。ゴミ
箱の中の丸められた紙のようにグラフェンを丸めてボール
【化学物質管理、食品】
状にして凝集を防いでいる。
フランスのビスフェノール A 規制策、食品包装材市場に大
http://www.sciencedaily.com/releases/2011/10/111014142619.htm
きな影響(2011.10.13)
フランスで 2014 年以降はすべての食品に接触する包装材
料からビスフェノール A(BPA)を追放する新しい規制法
【EHS】
が成立した。フランスの新しい BPA 規制法は、欧州の規
オーストラリア、2007 ~ 09 年の間に発表されたナノ材料
制策と矛盾する場合があり、欧州域内の食品包装材市場に
の毒性と健康影響に関する論文を調査(2011.10.14)
悪影響があるのではないかとの懸念が食品業界で表明され
オーストラリアの化学物質管理スキーム NICNAS は、6 種
ている。
の工業ナノ材料について 2007 年から 2009 年の間に発表
http://www-t.wrbm.com/r/?id=t23f1c861,917c8c8,917d73f&p1=0Flk0DMKh%2FP
された文献のレビューと分析を実施した。対象の工業ナノ
8ecP39EU3kw%3D%3D
材料は、オーストラリアで既に商業利用されているか、市
場に非常に近いところまできている物質という基準で選ば
れた。調査は重要な毒性や健康影響に関する科学的データ
を割り出すために行われた。調査結果は、今後 NICNAS が
リスク評価を実施し、管理策を構築する際の基礎的なデー
タとして用いられる。
http://www.nanowerk.com/news/newsid=23061.php
【政策、労働衛生、リスク管理】
カ ナ ダ 保 健 省、 実 用 的 な ナ ノ 材 料 の 定 義 を 公 開
(2011.10.13)
カナダ保健省は、ナノ材料の実用的な定義を公開した。本
定義は、保健省が 2010 年 3 月に公開した政策案に対する
29 件のパブリックコメントを反映させたものである。ま
た、最近の国際合意の進展や科学的知見の積み重ねも反映
【研究開発】
米国の研究者ら、CNT でパワフルな人工筋肉モーターを作
製 2011.10.14)
米国のテキサス大学、オーストラリアのウーロンゴン大
学、韓国の漢陽大学、そしてカナダのブリティッシュコロ
ンビア大学の共同研究グループが、カーボンナノチューブ
(CNT)で、象の鼻のような形状に捩じれた人工筋肉を作
製することに成功した。この人工筋肉は、CNT を寄り合わ
せて作られている。これまでの人工筋肉に比べて 1000 倍
以上の回転力があり、大型の電動モーターは小型化する際
に質の劣化を生じるが、この人工筋肉の出力は大型の電動
されている。保健省は、今後もこのような科学的知見の更
新や国際動向の進展に合わせて政策を柔軟に変更する予定
でいる。保健省は、人工的に作られた物質または製品、部
材、成分、装置あるいは構造で、
(a)一つ以上の外側の次
元がナノスケールかそれ以下、であるか内側あるいは表面
にナノスケールの構造をもつ場合、あるいは(b)すべて
の次元でナノスケールよりも小さいか、大きい場合であっ
て、一つ以上のナノスケールの特性・現象を示す場合には
ナノ材料と見なす、としている。
http://nanotech.lawbc.com/2011/10/articles/international/health-canadaannounces-policy-statement-concerning-working-definition-for-nanomaterial/
モーターに引けとらないという。
http://www.sciencedaily.com/releases/2011/10/111013141809.htm
【化学物質管理】
ECHA、2012 年の行動計画を採択(2011.10.11)
【バイオミメティックス、研究開発】
極彩色の鳥の羽からアイデアを得てレーザーを開発
(2011.10.13)
米国エール大学の研究グループが、鳥の羽のナノ構造がど
のように輝く色を作り出すのかを研究している。研究グ
ループは、発色に関わるナノ構造を真似た、新しいタイプ
の2種類のレーザーを開発した。レーザー開発の基礎とし
たのは、羽のβケラチンに閉じ込められた螺旋状の空洞と、
欧州化学物質庁(ECHA)は、9月末に開催された総会で
2012 年の行動計画を採択した。優先課題として、2013
年 5 月 31 日を期限とする REACH 規則第 2 期登録期限に
向けた準備、第 1 期登録物質の評価と認可、バイオサイド
新規制の導入準備、事前通報同意規則の見直しが挙げられ
ている。第 2 期の準備として先導登録者の支援や電子登録
システムの整備を行うことが予定されている。
http://echa.europa.eu/doc/about/organisation/mb/mb_44_2011_echa_work_
programme_2012.pdf
羽のβケラチンがねじ曲がった構造の中で作る相互接続す
るチャンネルである。
http://www.sciencedaily.com/releases/2011/10/111012113557.htm
PEN November 2011
19
【政策】
でなく、経済的に困難な状況のために企業が研究開発に及
ナノテクノロジー製品の適切な管理のために FDA の権限
び腰になっていることも原因となっていると指摘した。
を強化(2011.10.11)
http://www-t.wrbm.com/r/?id=t23ce11dd,90f0c9b,90f1bd4&p1=0Flk0DMKh%2FN
ア ー カ ン ソ ー 州 選 出 上 院 議 員 の Mark Pryor 氏 に よ っ
Jz7WmfAVUBA%3D%3D
て、 食 品 医 薬 品 局(FDA) の 権 限 を 強 化 す る 法 案
Nanotechnology Regulatory Science Act of 2011(S.1662)
が提出された。本法案は 2010 年 1 月 21 日に Pryor 氏に
よって提出された Nanotechnology Safety Act of 2010 に
修正を加えたものである。S.1662 により、FDA は公衆衛
生の観点からナノテクノロジーを用いた医薬品、医療機器、
化粧品、食品添加物等 FDA の管轄下にある製品類を、適
切に規制することができるようになると期待されている。
S.1662 には FDA 管轄下の製品類の毒性や有効性について、
科学的データを集めるためのプログラムの予算も組まれて
いる。実現すれば、FDA にはプログラム実施のために 3 年
間で 4800 万ドルの予算が配分される。
http://www.nanolawreport.com/2011/10/articles/the-nanotechnology-regulatory-
【コミュニケーション】
ナノテクノロジー研究開発とパブリックエンゲージメント
の 5 年間を振り返る(2011.10.7)
英国と米国で、過去 5 年間にナノテクノロジーの研究開発
の過程に市民の積極的参加を促すためにどのようなことが
試され、どのような成果があったのかについて専門家に聞
き取り調査を行った。その結果、市民が投票以外の方法で
政策決定の過程に参加するのは確かに難しいことではある
が、方法はいろいろ考えられ、ナノテクノロジーの研究開
発のパブリックエンゲージメントの取り組みが当初の期待
ほどの成果を挙げていないにしても、やはり専門家でない
science-act-of-2011/#axzz1aZgb8H3v
人々が科学政策の決定の過程に参加するこれまでにない試
http://arkansasnews.com/2011/10/06/pryor-bill-could-boost-nctr/
みであることには変わりはないとの分析がなされた。
http://www.nature.com/nnano/journal/v6/n10/full/nnano.2011.168.html
【EHS、暴露評価】
ドイツの研究機関、ナノスケールのエアロゾルへの暴露評
価に取り組む(2011.10.11)
ドイツの複数の研究機関が共同で、ナノ材料から排出され
たエアロゾルの作業環境での暴露評価および計測に取り組
み、対応策について検討し、多くの状況で利用可能な実際
的な階層型アプローチが提案された。共同研究の成果とし
て、安全な作業環境は既存の技術と労働衛生を確保するた
めの手順を守ることで達成できること、ナノ材料から排出
【EHS、政策】
環境 NGO など、ナノテクノロジーの環境・健康影響への
政府の対応を要請(2011.10.7)
欧州、米国、カナダ、中米の 14 の環境 NGO や消費者保
護団体などの代表 30 名がドイツ、ベルリンで会合を開く。
ナノテクノロジーを用いた消費者製品の規制、環境・健康
への影響へ政府に対応を求めることなどが議題にあがる予
定。
されるナノスケールのエアロゾルの計測と暴露評価は可能
http://www.eeb.org/EEB/index.cfm/news-events/news/global-activist-summit-on-
であるが手法は改良の余地が大幅にあること、現時点では
nanotech-calls-on-governments-to-protect-people-environment/
標準化されたエアロゾルの暴露計測法はないことなどが明
らかにされている。
http://www.nanowerk.com/news/newsid=23015.php
【EHS、リスク管理】
現 実 に 即 し た ナ ノ 粒 子 の 環 境・ 健 康・ 安 全 の 評 価 方 法
(2011.10.7)
【食品、コミュニケーション】
不況がナノテクノロジーの研究開発に悪影響(2011.10.10)
McCall 氏は、ナノ材料が用いられている製品のリスク評
食品業界に詳しい専門家が、食品関連分野の企業はナノテ
価は製品中の材料と製品から排出されるナノ材料の両方の
クノロジーの研究開発について十分に情報公開しないとい
影響を加味して行われなくてはならないと指摘した。
う批判を、企業秘密の保護ということをよく理解していな
http://www.nature.com/nnano/journal/v6/n10/full/nnano.2011.169.html
いとしてはねつけた。企業はきちんと情報を公開しており、
ナノテクノロジーの製品への応用が遅れているのは、企業
の秘密主義が消費者の不信感を招いているとの指摘は現状
を正しく把握していない、としている。消費者の不安だけ
20
オ ー ス ト ラ リ ア の 研 究 機 関 CSIRO の 研 究 者 Maxine J.
PEN November 2011
【規制策、EHS】
EC、化粧品中のナノ材料の安全性評価手引書の作成を要請
(2011.10.7)
【EHS】
ナノテクノロジーの家電製品への応用と環境規制
(2011.10.1)
欧州委員会(EC)は、消費者安全科学委員会(SCCS)に
米国では昨年ナノ材料の規制に環境保護庁が本格的に乗り
対して、2012 年 2 月をめどに化粧品中のナノ材料の安全
出した。背景には様々な分野でのナノテクノロジーの応用
性評価のための手引書を作成するよう要請した。EC は、
への期待は高いものの、製品の適切な管理がなされなけれ
一般的にナノ材料の安全性を評価する際に参照できる文書
ば環境への影響も大きいと考えられているからである。近
はあるものの、特定の材料の評価には不十分であるとして
い将来ナノ材料を使っていない製品はほぼないような状況
いる。EC は SCCS に対して、手引書は、たとえばキャラク
を迎えるのは間違いなく、家電分野も例外ではない。
タリゼーションや毒性などナノ材料の化学物質安全性デー
http://www.appliancedesign.com/Articles/Departments/BNP_GUID_9-5-2006_
タシート(MSDS)の要件について何らかの指針を示すも
A_10000000000001112944
のとするように求めている。EC は、手引書により 2013
年 1 月から施行される化粧品規則(No.1223/2009)の第
16 条(上市前の届出に関する規定)の円滑な実施、動物
試験の代替試験法の開発などを支援できるとしている。
http://ec.europa.eu/health/scientific_committees/consumer_safety/docs/sccs_
q_056.pdf
【政策、行動規範】
NanoCode プロジェクト、最新の情報を公開(2011.10.6)
欧州委員会(EC)の NanoCode プロジェクトは、EC が作
成した「ナノテクノロジーとナノサイエンスの責任ある研
究開発のための欧州行動規範」の加盟各国での円滑な実施
を目指している。このほど NanoCode が開催する会議の内
容、実施を支援するツール CodeMeter、そしてプロジェク
トが予定している EC に対する提言などについて最新の情
報をまとめ、公開した。支援ツールの CodeMeter につい
てはコメントを募集中である。
http://www.safenano.org/KnowledgeBase/CurrentAwareness/ArticleView/
tabid/168/ArticleId/103/Second-NanoCode-Newsletter-available-for-download.aspx
http://www.nanocode.eu/content/view/235/111/
【EHS】
ナノ材料の環境・健康影響研究の優先順付けに新手法を提
案(2011.10.4)
米国のアリゾナ州立大学やマサチューセッツ大学などの共
同研究グループが、ナノ材料の環境・健康影響の研究の優
先順位をつける手法として、リスク研究と意思決定を結び
付けた新しい手法を提案した。これにより、
限られたリソー
スを有効に利用し、不確実性の高いナノ材料の環境や健康
への影響を測るために必要なデータを得ることができると
いう。
http://www.merid.org/en/Content/News_Services/Nanotechnology_and_
Development_News/Articles/2011/Oct/03/framework.aspx
PEN November 2011
21
短期集中連載 李仁植氏語る ⑤
韓国におけるナノ融合技術 Ⅱ
知識融合研究所所長 / サイエンスライター 李仁植
韓国のサイエンスライター李仁植(イ・インシク)氏に
よるコラムをお届けします。韓国の研究開発の動向、政
策、国内での科学技術の認識など、科学技術を取り巻く
韓国の現状を数回に分けてお届けします。李仁植氏は、ソ
ウル大学電子工学科卒業後に国家科学技術諮問会議の委
員、韓国科学技術院(KAIST)の兼任教授等を歴任し、現
在は知識融合研究所の所長を務めています。韓国の新聞
や雑誌などに約 600 編のコラムを寄稿し、韓国の科学コ
ラムニスト第 1 号と呼ばれています。
「知識の大融合」、
「ナ
ノテクノロジーが世の中を変える」など約 30 冊の著書が
あります。
韓国のナノ融合技術において、ナノバイオ技術とナノ医療
このたんぱく質抗原のみに結合する抗体がある。心筋梗塞
の融合研究の成果は欠くことができない。たとえば、最
の抗原だけに結合する抗体を半導体に付着させ、抽出した
悪の場合には心臓が止まりかねない心筋梗塞が起きた時、
血液をバイオセンサーに流すと抗原と抗体の結合によって
現場でそれを診断できる携帯型の診断装置が開発された。
心筋梗塞の発病が確認できる。抗原と抗体は非常に小さく
2010 年 3 月に韓国電子通信研究院(ETRI)バイオセンサー
て、結合状態は肉眼ではなく、電流測定で把握する。
研究グループは、半導体バイオセンサーを発表した。通常、
胸痛を訴える人が心筋梗塞かどうかを診断しようとする
バイオセンサー研究グループの Sung GunYong 氏は、「抗
と、診察設備を備えた病院の救急室に搬送、採血し、その
原と抗体はいずれも電流が流れる導体物質である。半導体
後精密検査を受けなければならない。精密検診には 1 ~ 2
に付着した抗体に抗原が結合すると、半導体の電流の流れ
時間ほどの時間を要する。これに患者が救急室まで辿り着
が変わり、抗原と抗体の結合状態を容易に把握できる」と
く時間も含めると、心筋梗塞の診断に少なくとも 2 時間以
述べている。さらに半導体は微細な電流変化も感知できる
上は必要である。ただ心筋梗塞は、発症の後少なくとも 1
ので、心筋梗塞診断装置の軽量化も期待される。ETRI 半
時間以内に治療を開始しなければならず、現状では病院で
導体バイオセンサーは、家庭向けプリンターほどのサイズ
の診断に手間取り、後遺症に苦しむ患者も少なくない状況
で、救急車で移動しながら現場で心筋梗塞がすぐ確認でき
である。
るので、注目されている。本研究の成果は 2010 年 3 月に
Biosensors and Bioelectronics 誌に発表された。
ETRI バイオセンサー研究グループが開発した携帯半導体
22
バイオセンサーは、2 ~ 3 滴の血液を用い、20 分で心筋
ナノ医療分野でも注目すべき研究成果が出ている。がん発
梗塞かどうかが診断できる。研究グループは抗原と抗体が
病の診断手法からがん細胞の除去技術まで活発に研究され
組合わさり結合する特性を活かした。心筋梗塞が起きると
ている。2010 年 2 月、米国カリフォルニア州立大学バー
必ず血液中に発見されるタンパク質の抗原がある。また、
クレー校生命工学科の教授 Lee Luke 氏は、従来のがん診
PEN November 2011
断手法を改良した新たな手法を発表した。症状の代わりに、
に最適なオーダーメイド治療が、より低価格で可能になる
新陳代謝の基本単位である細胞を直接観察し、がんを見つ
と期待される。
ける手法である。この場合、細胞単位の治療も可能となり、
正常細胞を殺さずがん治療ができる。Lee 教授は細胞に付
ナノ粒子を用いたがん治療研究も進化している。2011 年
着して、がん発病など細胞の健康状態を外部に知らせるナ
に延世大学化学科教授 Cheon JinWoo 氏、慶煕大学歯医学
ノ宇宙船(Nano Space)を開発した。球型のナノ宇宙船は
専門大学院教授 Lee SangCheon 氏、ソウル大学医科大学
上下二つに分けられている。高分子化合物で作られた下の
教授 Cho NamHyuk 氏、Seong SeungYong 氏、高麗大学工
部分は細胞に付着することのできる物質が付けられ、上の
科大学 Kim YoungKeun 氏などがナノ粒子によってがん細
部分は金となっている。金粒子は細胞分子の健康状態を微
胞を除去する技術を発表した。
細な光で外部に発散する役割をする。ナノ宇宙船は細胞に
着陸すると、細胞分子の運動状態など健康状態を把握する。
延世大学の Cheon 氏は、ナノ粒子でがん細胞を探し、焼
健康な細胞とがん細胞の運動状態は異なるため、ナノ宇宙
き殺すことに成功した。このナノ粒子は磁性を帯びている。
船の金で出来た上部から発散される光の種類も変わる。し
外部からこのナノ粒子に電波を発すると、磁石と電気の相
たがって光の種類を分析すれば細胞の状態が診断できる。
互作用により発熱する。がん細胞は特に熱に弱いので、温
本研究の成果は 2010 年 2 月に Small 誌に掲載された。
熱治療法は以前から用いられている。Cheon 氏は人体の外
から熱を加えるのではなく、体内に入ったナノ粒子ががん
チップ一つで乳がんが診断できる技術も開発された。韓国
細胞に直接熱を加える新たな治療法を開発した。2011 年
では乳がん患者が急速に増加している。韓国乳がん学会に
6 月に米国 New York Times 紙と英国 BBC 放送は、熱を出
よると、1996 年に約 3,800 人であった乳がん発症者数は、
してがん細胞を殺すナノ粒子が、動物実験で既存の抗がん
2008 年には 14,000 人にまで増えた。1 年に 1 万人以上
剤より大きな治療効果を示したとの Cheon 氏の研究成果
もの人が乳がんを発症している訳である。乳がんは治療が
を報じた。
容易ではない。同じ乳がんでも種類が 4 つもある。自分の
タイプに合う治療を受けることによって副作用も少なくな
慶煕大学の Lee 氏はメソポーラスナノ粒子に抗がん剤を注
る。しかし乳がんの種類を把握するためには、相当の費用
入し、がん細胞まで移動させ抗がん剤を正確に投与できる
がかかるし、分析だけでも 16 時間くらいかかる。乳がん
知能型ナノドラッグデリバリシステム(DDS)を開発した。
の種類を把握するためには、組織を 4 回も採取しなければ
従来 DDS は目標地点に到達する前に、薬物が放出され薬
ならないし、分析にもそれぞれ 4 時間もかかるからである。
効が低下したり、安全性など問題があった。Lee 氏は酵素
反応を通じて穴の多いメソポーラスナノ粒子の穴に抗がん
2010 年 5 月、KAIST バ イ オ・ 脳 工 学 科 の Park JeKyun
剤を入れた後、天然ミネラルでナノ粒子を完全に覆うナノ
氏、Kim MinSeok 氏、高麗大学医科大学 Lee EunSook 氏
シェルを作製した。天然ミネラルで作られたナノシェルは
は、従来の診断方式の 1/14 の費用、1/10 の分析時間で
多空性ナノ粒子の気泡を血流の中で効果的に遮蔽し、薬物
できる新たな乳がん種類の診断手法を開発した。研究成果
放出の抑制能力を持っている。ナノシェルはがん細胞の中
は 5 月 3 日付 PLoS ONE 誌に掲載された。Park 教授のグ
の低い pH により分解される性質を持ち、がん細胞の近く
ループの乳がん診断手法は、Lab-on-a-chip を用いる。通
に到達すると薬物放出を促進する機能がある。
常がん診断には実験室レベルの検査施設が必要である。こ
弾丸のように正確にがん細胞を攻撃し、治療するナノ DDS
のような実験室(Lab)レベルの設備をチップ 1 個に集約
を開発した Lee 氏は、「酵素反応を用いたバイオミメティ
させた装置が Lab-on-a-chip である。乳がんの種類を判別
クスというオリジナリティを持っており、ナノ DDS のシェ
する Lab-on-a-chip を実現するため、Park 教授グループは
ルは人間の骨の成分とほとんど同じなので、薬物を安全か
マイクロ流体技術(microfluids)を用いた。マイクロ流体
つ効率的に伝達することができる」と説明した。研究成果
技術は数百ナノメートルの大きさの液体を制御する技術で
は 2011 年 8 月 8 日付 Angewandte Chemie の電子版に掲
ある。マイクロ流体技術を活用すると、極少量の血液や細
載された。
胞組織をチップの中の微小検診装置で自由自在に送ること
ができる。結局実験室レベルの検診施設の代わりに、親指
2011 年にソウル大学教授 Cho、Seong 氏、高麗大学教授
ほどのチップ一個だけを使って乳がん検診が可能となるこ
Kim 氏は、ナノ粒子を用いた大腸がんの治療技術を開発し
とである。Park 教授のグループは乳がん患者 115 人のが
た。大腸がん細胞から作られるタンパク質を付着したナノ
ん組織を診断してみたが、その結果 98% の精度を示した
粒子を通じて、患者の免疫細胞を訓練し、大腸がんを効率
と発表した。この Lab-on-a-chip により個別の乳がん患者
的に攻撃する技術である。人体内にはがん細胞を攻撃する
PEN November 2011
23
免疫細胞の T 細胞がある。がんとの戦闘で勝てるように T
細胞を訓練するのは樹枝状細胞である。研究グループは直
径 10 ナノメートルの粒子に大腸がん抗原を付着した後、
これを樹枝状細胞に注入し T 細胞を訓練させるようにし
た。研究結果は 9 月 11 日付 Nature Nanotechnology 電子
版に掲載された。
ナノ医療の究極の目標はナノロボットの開発である。ナノ
ロボットを人体に注入すると、潜水艦のように血流に乗っ
て回りながらウイルスを殺したり、細胞の中まで浸透し車
の整備士のようにがん細胞を修理するからである。
ナノロボットの開発に最も近づいているといわれるのが、
全南大学ロボット研究所の Park JongOh 氏である。その評
価は Park 氏のマイクロロボットの研究業績に裏付けられ
る。2001 年 9 月に大腸内視鏡ロボット(直径 20mm)を
開発し、世界初めて献体による実験に成功した。2003 年
1 月には世界で 2 番目のカプセル型内視鏡(直径 11mm)
の開発に成功し、商用化した。また 2009 年 10 月には、
Bacteriobot(直径 50mm)を開発し、
国際特許を出願した。
Bacteriobot はバクテリアと機能性マイクロ構造体を有機
的に結合し、がんなどの難治性疾患を診断、治療する医療
用マイクロロボットである。弾丸様のロボットの胴体に薬
物を入れ、胴体には多数のバクテリアを付け、体内を回る。
バクテリアがロボットの脚の役割をするわけである。研究
結果は 2010 年 3 月 10 日、英国王立化学協会誌 Journal
of Lab on a Chip に発表された。Park 氏は普通抗がん剤は
がん細胞の表面にだけ作用するが、バクテリアはがん細胞
の中まで浸透できることから、がん治療ロボットの作製
に取り組んでいる。2010 年 5 月には、血管治療用マイク
ロロボット(直径 1mm)を開発し、世界で初めて動物実
験に成功した。研究結果は 2010 年 8 月 14 日 Journal of
Sensors and actuators A: Physical に掲載された。
24
PEN November 2011
TPP 交渉に参加か
11 月 8 日からホノルルにおいて
ア ジ ア 太 平 洋 経 済 協 力(APEC)
の最終高級事務レベル会合、財務
大臣会合、閣僚会議が開催され、
12 ~ 13 日に首脳会議が開催さ
れる。この席で日本は環太平洋
戦略経済連携協定 (Trans-Pacific
Partnership、TPP) 交渉に正式に
参加を表明するとみられている。
正 式 に 参 加 す る こ と に な れ ば、
2015 年までに貿易額と品目数の
双方で関税を 100%撤廃すること
になる。対象 21 分野は、市場へ
の参入機会や条件、工業製品、農
業、環境、繊維、原産地規則、投資、
サービス、金融・税関協力、通信・
電子商取引、政府調達・競争、知
的財産権、労働、キャパシテイビ
ルデイング、救済措置 TBT、衛生
国内動向
植物検疫(SPS)など幅広い。こ
れまでの日本の TPP 交渉への参
加をめぐる議論において、製造業
とりわけ輸出産業は参加に前向き
だが、農林・水産業は非関税で海
外から安い農水産物が流入してく
ることで大きな打撃を受けるとし
て、参加に強く反対してきた。参
加することになれば、国内農水産
物の生産額が大きく低下し、食料
PEN November 2011
25
自給率が大幅に低下することが懸念材料である。8 日には
11 月 9 日の午前、直径 400m ほどの小惑星 2005 YU55
全国農業協同組合中央会などの生産者団体が、両国国技館
が地球のそばを通過した。地球との最接近距離は月よりも
で TPP 交渉参加の反対集会を開き、主催者発表で全国か
近い。7 日、米国航空宇宙局の Near-Earth Object Program
ら 6 千人が参加した。このようにその交渉参加を巡って意
Office は、この小惑星のレーダー望遠鏡写真を公開した。
見が国内を二分する状況をふまえ、日本政府は昨年来 TPP
http://www.nasa.gov/topics/solarsystem/features/asteroid20100429.html
交渉参加の判断を先送りしてきた。ただ、決断の先送りは
もはや許されない状況にあり、表向き議論が続いているも
のの、実際には今回は参加の方向で調整が進められている。
肝臓病の 0 歳児 ES 細胞で治療の方針
政府、首相からは APEC の会議が始まった本日 8 日まで明
11 月 8 日 Asahi.com は、国立成育医療研究センターが、
確な方針は示されていないが、これは国内の世論が二分さ
重症の肝臓病で治療法がなく、肝移植も難しい 0 歳児に、
れている状況に配慮したもの、交渉参加反対派への刺激を
ヒト胚性幹細胞(ES 細胞)からつくった肝細胞を移植す
避けたものと思われる。
る治療を計画している、と報じた。ES 細胞による治療は
11 月 8 日付日経エコロジーは、TPP 交渉への参加で、環
国内では例がなく、肝臓病への応用は世界初。
境条約への違反に対して制裁措置が加わる可能性が出てき
http://www.asahi.com/science/update/1107/OSK201111070175.html
たとして、国や企業が早急に環境リスクに備える必要が
あると指摘している。上で示したように、TPP 交渉の対
象 21 分野には環境が含まれており、ここで環境規制の基
科学技術イノベーション政策推進のための有識者研究会
準の見直しが議題として取り上げられる可能は否定できな
11 月 7 日、内閣府総合科学技術会議は、昨年 6 月 18 日
い。
に閣議決定された新成長戦略等において、「科学技術イノ
ベーション戦略本部(仮称)」の設置による科学技術とイ
ノベーションを一体的に推進する体制の整備が示されたこ
渡良瀬遊水地のラムサール条約登録、意見が割れる
とに基づき、内閣府特命担当大臣(科学技術政策)の下に、
栃木、群馬、茨城、埼玉の四県にわたり、3000 ヘクター
各界の有識者で構成される「科学技術イノベーション政策
ル以上の広大な葦原が広がる渡良瀬遊水地は野鳥の宝庫と
推進のための有識者研究会」を開催し、国家戦略として科
して知られており、環境省は来年ルーマニアで開かれる同
学技術イノベーション政策を推進する体制案について検討
条約の第 11 回締約国会議(COP11)に提案する候補地の
する。もともとこの方針は、民主党の科学技術推進調査会
一つとして検討を進めている。このラムサール条約登録を
が 7 月にまとめた報告書において、科学技術・イノベーショ
めぐる動きに対して、関係各自治体は周辺住民への説明会
ン政策の立案、資源の確保と配分を一元的に行う司令塔と
やアンケートなどを行ってきた。9 日付東京新聞によると、
して戦略本部の速やかな設置を盛り込んでいた。また、戦
地元栃木市藤岡市の住民の意見が割れている。この地域は
略本部は現在の内閣府総合科学技術会議の発展的改組を前
1947 年のカスリーン台風で大きな洪水被害を受けており、
提としたものである。有識者研究会は、科学技術の側の専
地元では治水事業を優先すべきとの意見も根強い。
門的な立場から科学技術イノベーション政策の推進体制等
http://www.city.tochigi.lg.jp/hp/menu000009000/hpg000008453.htm
について検討を行い、戦略本部に対して助言を行う役割を
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/20111108/CK2011110802000062.html
担う。構成員は、大西隆日本学術会議会長、中村道治 JST
理事長、野間口有産総研理事長、吉川弘之東大名誉教授ら、
小惑星、地球と月の間を通過
10 名。1 回科学技術イノベーション政策推進のための有
識者研究会は 11 月 11 日に、第 2 回目は 11 月 16 日に開
催の予定。
国民との科学技術対話
内閣府総合科学会議は 11 月 7 日、科学技術をより一層発
展させるためには国民の理解と支持を得ることが不可欠
で、そのために研究者が自身の研究活動を社会に対して分
かりやすく説明する双方向コミュニケーション活動を「国
民との科学・技術対話」として位置付け、その基本的取組
方針を決定した。この活動が一層活性化されるよう、平成
26
PEN November 2011
21 年度に 3,000 万円以上の公的研究費の配分を受けた研
ホウ酸水を原子炉に注入したと発表した。11 月 7 日にな
究者の所属する機関名と連絡先の一覧を掲載した。
り、経済産業省原子力安全・保安院は、放射性キセノンの
http://www8.cao.go.jp/cstp/stsonota/taiwa/taiwappt.pdf
検出された原因は核分裂の「臨界」ではなく、燃料の放射
http://www8.cao.go.jp/cstp/stsonota/taiwa/taiwa_honbun.pdf
http://www8.cao.go.jp/cstp/stsonota/taiwa/kikanlist.pdf
性物質で自然に起きる「自発核分裂」だったとの評価結果
を公表した。
サプライチェーンのリスク顕在化、今度はタイの洪水
東日本大震災に際し、サプライチェーンの自然災害による
アスベストによる死者 311 人に
リスクの顕在化が指摘された。今回タイで発生した洪水に
2 日、クボタは兵庫県尼崎市の旧神崎工場でアスベスト(石
より、日本企業のサプライチェーンにおけるリスクが再度
綿)が原因の死者が9月末で 311 人になったと発表した。
顕在化している。タイの洪水は 7 月にチャオプラヤー川流
http://www.kubota.co.jp/kanren/index16.html
域で甚大な被害を出し、メコン川周辺へ広がりつつある。
http://mainichi.jp/select/science/asbestos/news/20111103ddn041040012000c.
html
北部のチエンマイ県から、チャオプラヤー川流域の支流に
存在するタイ中部のバンコクまで、58 の県に浸水が及ん
だ。現時点で 400 人以上の死者を出し、被害総額は 4000
億円に達するという。日系企業が多数進出するアユタヤ県
などで工業団地が冠水するなど被害が深刻化しており、現
在までに生産の停止などの被害を受けた日本企業は、ホン
ダ、トヨタ、日産、三菱自動車、ダイハツ、日野自動車、
住生活グループ、マツダ、江崎グリコ、明電舎など多数に
上る。折からの円高が影響し、自動車産業、家電産業など
輸出主体の業種が軒並み業績を悪化させている。
B787 営業路線就航セレモニー
多くの日本企業が参加して開発が進められたボーイング
787 型機による国内の定期路線での営業運転が開始され
た。それに先立ち、11 月 1 日、羽田空港において全日本
空輸がセレモニーを開催した。一番機は早朝の羽田空港を
岡山空港へ向けて飛び立った。同社は来年までに 20 機、
2015 年までに 55 機の導入を予定している。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111028-00000900-reu-bus_all
展開著しい炭素繊維応用
赤外線でがん治療
11 月 7 日付各紙は、米国国立衛生研究所(NIH)の小林
久隆チーフサイエンティストらが開発した、赤外線を使っ
た新しいがんの治療法を報じた。がん細胞の表面で、赤外
線を照射すると熱を発生する化学物質をがん細胞の抗原に
結びつく抗体と結合させ、赤外線を当てることで熱に弱い
がん細胞を破壊する技術で、安全性は高いとのこと。
http://www.asahi.com/science/update/1106/TKY201111060396.html
http://mainichi.jp/select/science/news/20111107k0000m040119000c.html
帝人(株)の熱可塑性樹脂による炭素繊維複合材料量産技
術が、化学業界の有力専門誌である英国の ICIS 主催によ
る「ICIS イノベーション・アワード」の大賞および製品部
門賞を受賞したことをプレスリリースした。また、10 月
17 日付日経新聞は帝人と東京工業大学が共同で、断面積
が楕円形で細長いシートが積み重なったような特徴のある
炭素繊維の開発に成功したことを報じた。その構造から、
他の物質との反応性が高いことが予想されており、新しい
応用展開が期待されている。
10 月 28 日付化学工業日報は、大きなマーケットとして
注目される中国において、日系企業の炭素繊維の事業が大
三重大が CO2 を 24% 削減
きく展開し始めたことを報じた。自動車だけでなく、風力
11 月 7 日付共同通信は、三重大学が風力や太陽光、ガス
発電施設、船舶、工業用機器類、スポーツ用品といった様々
を使った発電システムの導入により、CO2 排出量を、現
な分野での応用が急展開しており、東レ、三菱レイヨン、
行の 24%、550,00 トン削減する事業を始めた。
クレハ、東洋テナックスといった炭素繊維の主要メーカー
http://www.47news.jp/news/2011/11/post_20111107184102.html
に加え、JX 日鋼日石エネルギー、スーパーレジン工業も
市場開拓を積極的に行っている。
企業だけでなく自治体も、炭素繊維を用いた軽量部材の開
福島第一原発 2 号炉で、放射性 Xe を検出
発に乗り出してきた。福井県は EV 用軽量部材開発のため、
11 月 2 日、東京電力は、福島第一原発 2 号炉で原子炉格
企業や大学との研究会を発足させた。ただ、軽量化が図れ
納容器内の気体から臨界核分裂の可能性を示唆する放射性
る半面、まだ鋼板に比べて炭素繊維複合部材は高価であり、
キセノンが検出された可能性を受けて、核分裂を抑制する
どこまでコストを下げることができるかが今後の展開のカ
PEN November 2011
27
ギになる。実際に鋼板メーカーも高強度鋼板の開発を急い
文部科学省による放射線量等分布マップ(線量測定マップ)
でおり、直ちに炭素繊維複合軽量部材が自動車部品を席巻
の作成について(平成 23 年 8 月 2 日)
するような事態には至らないとの観測が主流である。
http://radioactivity.mext.go.jp/ja/distribution_map_around_
http://www.teijin.co.jp/news/2011/jbd111018.html
FukushimaNPP/0002/5600_080218.pdf
8 月 2 日公表の「文部科学省による放射線量等分布 マッ
筑波大の大型加速器、14 年再稼働へ
東日本大震災で粒子加速器が崩落した筑波大学研究基盤総
合センターの大型加速器に対して、第 3 次補正予算の枠内
で修復費用 10 億円が盛り込まれた。これを受けて筑波大
学は、2014 年 10 月の加速器の再稼働を目指して修復作
業を開始する。
プ(線量測定マップ)の作成について」の修正について
http://radioactivity.mext.go.jp/ja/distribution_map_around_
FukushimaNPP/0002/5600_081218.pdf
文部科学省による放射線量等分布マップ(放射性セシウム
の土壌濃度マップ)の作成について(平成 23 年 8 月 30 日)
http://radioactivity.mext.go.jp/ja/distribution_map_around_
FukushimaNPP/0002/5600_081218.pdf
ベトナムの原子力発電所建設に協力
文部科学省による放射線量等分布マップ(ヨウ素 131 の
震災から半年、日本政府は原発の在り方に関する議論がす
土壌濃度マップ)の作成について(平成 23 年 9 月 21 日)
すむなか、ベトナムの原子力発電所建設を支援する方針を
http://radioactivity.mext.go.jp/ja/distribution_map_around_
明らかにした。さらに 10 月 30 日には野田首相とベトナ
FukushimaNPP/0002/5600_0921.pdf
ムのグエン・タン・ズン首相が、昨年日本とベトナムの間
で取り決めた日本・ベトナム原子力協定に基づいて、今後
ベトナムにおける原子力発電所建設を支援していくことを
再確認した。
文部科学省による、プルトニウム、ストロンチウムの核種
分析の結果について(平成 23 年 9 月 30 日)
http://radioactivity.mext.go.jp/ja/distribution_map_around_
FukushimaNPP/0002/5600_0930.pdf
http://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/s_noda/vietnam1110/pdfs/6.pdf
文部科学省による放射性物質の分布状況等に関する調査研
韓国における科学技術イノベーション政策の司令塔機能強
化への取り組み-国家科学技術委員会の改組-
10 月 17 日、科学技術振興機構研究開発戦略センター海
究(森林内における放射性物質の移行調査)の結果につい
て(平成 23 年 9 月 14 日)
http://radioactivity.mext.go.jp/ja/distribution_map_around_
FukushimaNPP/0002/5600_091412.pdf
外動向ユニットは、韓国におけるイノベーション政策の
背景を整理し、
「韓国における科学技術イノベーション政
文部科学省による、放射性物質の分布状況等に関する調査
策の司令塔機能強化への取り組み-国家科学技術委員会
研究(河川水・井戸水における放射性物質の移行調査)の
(NSTC)の改組-」と題する報告書を作成、10 月 27 日
結果について(平成 23 年 10 月 20 日)
に開催された内閣府総合科学技術会議の有識者議員懇談会
http://radioactivity.mext.go.jp/ja/distribution_map_around_
に報告された。
FukushimaNPP/0002/5600_102001.pdf
http://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20111027/siryocrds-1.pdf
「文部科学省放射線量等分布マップ拡大サイト」の一般公
開について(平成 23 年 10 月 18 日)
戦略推進費機動的対応(放射性物質の分布状況等に関する
調査研究)
http://radioactivity.mext.go.jp/ja/8849/8850/18184/1000_1018.pdf
10 月 27 日に開催された内閣府総合科学技術会議の有識
農地土壌の放射性物質濃度分布図の作成について
者議員懇談会において、文部科学省による放射性物質の分
http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/110830.htm
布状況、農林水産省による農地土壌の放射性物質濃度分布
等が公表された。
農地土壌の放射性物質濃度分布図(対象区域全体)
平成 23 年度科学技術戦略推進費「放射性物質による環境
http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/pdf/110830-06.pdf
影響への対策基盤の確立」
『放射性物質による環境影響へ
の対策基盤の確立』
(文部科学省分の概要)
http://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/20111027/siryobun-01.pdf
28
PEN November 2011
農地土壌の放射性物質濃度分布図(県(地域)別)宮城県
http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/pdf/110830-07.pdf
農地土壌の放射性物質濃度分布図(県(地域)別)福島県
ド、電気自動車、再生可能エネルギー等の領域で積極的な
http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/pdf/110830-18.pdf
連携を図るべきとしている。
農地土壌の放射性物質濃度分布図(県(地域)別)栃木県
http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/pdf/110830-19.pdf
産総研、福島に再生可能エネルギー研究所
10 月 25 日付福島民報は、産総研が来年福島県内に再生可
農地土壌の放射性物質濃度分布図(県(地域)別)群馬県
能エネルギーに特化した研究施設を新設すると報じた。最
http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/pdf/110830-20.pdf
有力候補地として郡山市を挙げ、ここに産学連携により太
陽光発電、風力発電などの再生可能エネルギー関連 6 研究
農地土壌の放射性物質濃度分布図(県(地域)別)茨城県
分野の研究開発を進めるとしている。
http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/pdf/110830-21.pdf
農地土壌の放射性物質濃度分布図(県(地域)別)千葉県
東北の最先端技術支援に 200 億円、経済産業省
http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/pdf/110830-22.pdf
10 月 24 日付東京新聞は、経済産業省が東北地方の大学
と企業が連携して進める最先端科学技術の研究開発に 200
福島県 農地土壌の放射性物質濃度分布図(参考)
億円の資金を拠出する方針であることを報じた。この資金
http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/pdf/110830-23.pdf
により、大震災の被害の大きかった東北地方が、先端科学
技術研究の拠点として再生することを支援する。参加企業
農地土壌等の放射性物質の分布状況等の推移に関する調査
の 600 億円と併せ、事業規模は 800 億円程度となる模様。
(第 2 次補正予算説明資料)
http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/pdf/110830-23.
化学物質管理体制の強化
シャープや OKI など国内企業が化学物質管理に関して独自
戦略的創造研究推進事業(CREST)における「生命動態の
の取り組みを開始した。13 日日経新聞は、シャープが自
解明と制御のための基盤技術の創出」研究領域の設定と研
社製品における化学物質管理強化のための独自のシステム
究総括の決定
を開発、原材料のサプライチェーンの中で直接取引のない
10 月 31 日、科学技術振興機構(JST)は平成 23 年度に
2 次取引先にも参加を求め、欧州の REACH 規則をはじめ
文部科学省が設定した戦略目標を受け、CREST、さきがけ
とする環境規制への対応を図ることを報じた。このシステ
において 6 つの研究領域を設定したが、これに加えて戦略
ムにより、中国で施行予定の環境規制や、インドやベトナ
目標「生命現象の統合的理解や安全で有効性の高い治療の
ムで検討されている環境規制への対応を強化する。また、
実現等に向けた in silico/in vitro での細胞動態の再現化に
10 月 24 日付日刊工業新聞によると、OKI は自社製品の化
よる細胞と細胞集団を自在に操る技術体系の創出」につい
学物質管理強化のために、調達先の化学物質管理体制の評
て、新たに CREST の研究領域を設定し、その研究総括を
価を開始する。これは事前に調達先に調査票を配布して記
決定した。
入してもらい、その結果を数値化することで調達先の化学
http://www.jst.go.jp/pr/info/info841/index.html
物質管理体制の評価を行うもので、サプライチェーン全体
http://www.jst.go.jp/pr/evaluation/problem/problem2/kisoken/h23/crest.html
アジアは連携して標準化の牽引を、サムスン電子副社長
10 月 25 日付日経新聞は、日経フォーラム世界経営者会
議に出席したサムスン電子副会長李潤雨へのインタビュー
を特集した。この中で李氏は、2020 年にはアジア経済圏
の総生産高が欧州連合や北米自由貿易協定を抜いて世界最
大になると予測し、アジア各国が連携を強めてグローバル
経済をけん引する One Asia Vision を提唱している。とり
わけアジアがグローバル標準化をけん引していかなければ
ならないとし、アジアの共存共栄のためにスマートグリッ
での管理体制の強化を図る。
あらゆる企業に門戸をひらく自由参加型オープン・イノ
ベーション TIA ナノグリーン、新たな研究の「場」におけ
る研究参画企業の募集を開始
つくばイノベーションアリーナ(TIA)6 つのコア研究領
域の一つである TIA ナノグリーンでは、参画を希望するあ
らゆる企業に門戸をひらき、会員制で運営するグローバル・
オープン・イノベーションの「場」を新たに設置すること
になり、参画企業を募集することを 10 月 18 日に公表した。
PEN November 2011
29
TIA ナノグリーンはナノテクノロジー・材料技術を核とし
の結果を取りまとめ、東日本大震災対策委員会の承認を得
て、革新的な環境・エネルギー技術の創出を目指している。
て、提言「東日本大震災被災地域の復興に向けて ―復興
http://www.nims.go.jp/news/press/2011/10/p201110180.html
の目標と 7 つの原則(第二次提言)―」を公開した。震災
発生 6 カ月後の現状を踏まえ、一向に進展しない復興事業、
そして放射性物質による汚染の拡大という深刻な事態に鑑
第 8 回江崎玲於奈賞、第 22 回つくば賞・第 21 回つくば
み、7 つの原則の骨子に沿って、いま最も必要とされる緊
奨励賞
急事項に焦点をあて、本提言とする、としている。
財団法人茨城県科学技術振興財団は、第 8 回江崎玲於奈賞
http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/shinsai/pdf/110930t-2.pdf
を大阪大学大学院工学研究科教授で理化学研究所基幹研究
所主任研究員の河田聡氏に贈った。河田氏の近接場ナノ光
学とプラズモニクス研究の開拓が評価された。また第 22
第 63 回生命倫理専門調査会の配付資料
回つくば賞は、糖鎖研究の基盤ツールの開発から実用化に
10 月 11 日、内閣府総合科学技術会議は 9 月 28 日に開催
至るまでの一連の戦略的研究を進めてきた産業技術総合研
した第 63 回生命倫理専門調査会の配付資料を公開した。
究所糖鎖医工学研究センター長の成松久氏に授与された。
産総研からはこのほかに、活断層・地震研究センター海溝
第 62 回生命倫理専門調査会議事概要(案)
型地震履歴研究チーム主任研究員の澤井祐紀氏に第 21 回
http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/life/haihu63/siryo1.pdf
つくば奨励賞(若手研究者部門)が贈られた。
http://www.i-step.org/
多能性幹細胞(ES/iPS 細胞)からの生殖細胞作成研究:
現状と展望
http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/life/haihu63/siryo2.pdf
エネルギーで中露が投資ファンド、ナノテクノロジーやバ
イオテクノロジーも
中国温家宝首相とロシアのプーチン首相は、資源エネル
ギー関連インフラ整備に向けて、2300 ~ 3000 億円規模
の投資ファンドを設立することで合意した。10 月 12 日
付日経新聞が報じたもので、両首相は今後協力関係を深め
多能性幹細胞と文明・欲望・テクノロジー ―ヒト ES/iPS
細胞等から生殖細胞を作製し、それによって胚 / 個体を作
出することに係る生命倫理―
http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/life/haihu63/siryo3-1.pdf
http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/life/haihu63/siryo3-2.pdf
http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/life/haihu63/siryo3-3.pdf
ていく領域としてナノテクノロジーやバイオテクノロジー
などを挙げている。
ヒト ES 細胞等からの生殖細胞作成研究に関する総合科学
技術会議における議論のあらまし
http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/life/haihu63/sanko1.pdf
ものづくり分野におけるスーパーコンピューティングの推
進
9 月 30 日、日 本 学 術 会 議の計算科学シミュレーション
平成 24 年度予算編成における「科学技術重要施策アクショ
と工学設計分科会は、
報告書「ものづくり分野におけるスー
ンプラン」に関するパブリックコメントへの回答
パーコンピューティングの推進」を公開した。この報告書
10 月 19 日、内閣府総合科学技術会議は、今年度 6 月末
は日本学術会議第三部総合工学委員会・機械工学委員会合
から 7 月初めにかけて行った平成 24 年度予算編成におけ
同 計算科学シミュレーションと工学設計分科会(第 21 期)
る「科学技術重要施策アクションプラン」に関する意見募
内に設置された、ものづくり分野におけるスーパーコン
集の集計結果と、パブリックコメントに対する見解を示
ピューティング技術推進検討小委員会における審議を反映
した。ライフイノベーションに関しては、
「このまま推進
して纏め、公表するもの。
すべき」と、
「改善・見直しをしたうえで推進すべき」と
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-h135-2.pdf
いう意見が 25 件:26 件という拮抗した結果だった。こ
れに対しグリーンイノベーションに関しては 2 件:44 件
と改善・見直しを求める意見が 96% を占めている。また、
東日本大震災被災地域の復興に向けて - 復興の目標と 7 つ
の原則(第二次提言)9 月 30 日、日本学術会議の東日本大震災対策委員会の被
災地域の復興グランド・デザイン分科会は、分科会の審議
30
PEN November 2011
復興・再生ならびに災害からの安全性向上に関しても、6
件:71 件と、改善・見直しを求める意見が 90% を超えて
いる。
http://www8.cao.go.jp/cstp/pubcomme/action24/taiou.pdf
なぜ日本の若い研究者は海外留学しないのか
ノーベル化学賞を受賞した根岸栄一氏はこの一年、日本の
若手研修者があまりにも内向きであると指摘、どんどん海
外に留学すべきと持論を展開してきた。氏は留学を志す若
い研究者の減少を「日本がカンファタブルだから」と指摘
している。この根岸氏の持論に対して、10 月 16 日付京
都新聞はコラムで、日本の研究者の就職状況などから判断
すると、実際には「行きたくても行きにくい状況が強まっ
ているためではないか」と指摘している。
http://www.47news.jp/47topics/e/182267.php
Column
省エネに古代の知恵を活かす
夏の電力需給の逼迫を個人や企業の創意工夫の節電でなんとか乗り切ることができ、ほっと一息つくことのできるよう
になった今、腰を据えて今後のエネルギー利用について考えることができそうだ。
屋内照明に関していえば、まったくエネルギーを使わない太陽光採光システムが注目されている。最近では、これまで
自然光を取り入れることが難しかった形や大きさの家屋や建物へも設置できるような、新しいシステムが次々と開発さ
れている。天井から採光用のパネルをつり下げたり、内側が鏡面のように磨き込まれた自在に曲がる円筒を用いるなど
それぞれに工夫が凝らされて、効率よく太陽光を屋内に取り込むようになっている。ほとんどの採光システムがメンテ
ナンスフリーで、太陽光を屋内に取り込むことで明かりを確保するので、昼間の使用エネルギーはゼロか非常に低く
なっている。太陽光発電システムと組み合わせることで、一日の使用エネルギーをぐっと抑えることができる仕組みだ。
太陽光を利用する採光システムの歴史は遥か昔にさかのぼることができる。紀元前 1540 〜 1220 年頃のエジプト新王
国時代には、王墓の内側の壁に墓の主の功績を讃える壁画を描いていた。墓は奥行きがあるため内部は真っ暗である。
そこで画を描く際にブロンズ製の鏡を用いて太陽光を暗い墓の内側に取り込んでいた。原理的にはこの古代エジプト
のシステムと最新の採光システムも大きく変わっている訳ではない。あるいはぐっと時代を下がって 紀元前 3 世紀頃、
エジプトのアレキサンドリア湾に作られていた人工島に、後に世界の七不思議の一つにも数えられるようになる大灯台
があった。ファロス島の大灯台は、残念ながら 14 世紀に起きた 2 度の地震によって全壊してしまい、今では見ること
ができないのだが、一説によるとこの大灯台が反射する光は、当時 35 キロメートル先からも見ることができたという。
まだまだ収束しない福島の原子力発電所の事故もあり、省エネ対策や代替エネルギー開発の重要性はますます高まって
いる。古代の文献や遺跡の中にも現代のエネルギー問題解決のヒントが埋もれているかもしれない。
PEN November 2011
31
【特許検索サービス】
世界各国の特許を簡単に検索できる
SaaS「ATMS/PATENTAN」 を 提 供 開
始(2011.11.9)
富士通(株)
同社は、企業の知的財産活動全般を
支援する知的財産ソリューション
「ATMS」シリーズにおいて、世界の
CUTTING-EDGE
TECHNOLOGIES
特許を簡単に検索できる SaaS 型特許
検 索 サ ー ビ ス「ATMS/PATENTAN」
を開発し、トライアル版として一部
機能を無料で提供開始する。本サー
ビスは、特許庁が公開している世界
各国の特許情報を、インターネット
プレスリリースより
上で検索・表示・出力できる。独特
な日本語表記が特長の特許文書を読
みやすく変換する読解支援機能や、
文章・キーワード・特許番号から簡
単に関連特許を調べられる検索支援
機能「SmartSearch」により、企業の
知的財産部門や研究者・開発者によ
る特許調査を効率化する。また、
日本、
欧米、中国のみならず、インド、ブ
ラジルなど新興国の特許情報も検索
できる。
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2011/11/9-1.htm
【モバイルビューアー】
世界初のシースルーモバイルビュー
アー MOVERIO(2011.11.9)
セイコーエプソン(株)
同社は、メガネのように装着でき、
いつでもどこでも大画面で映像、音
楽、ウェブコンテンツを楽しむこと
ができるシースルーモバイルビュー
アー、MOVERIO「BT-100」を 2011
年 11 月 25 日より発売する。映像デー
タはメモリーカードに保存すること
で再生機器への接続が不要であり、
また、約 6 時間のバッテリー駆動が
可能なことから、場所を選ばず、外
出先でも家の中でも自由な姿勢で視
聴することができる。シースルータ
イプであることから、映像を見つつ
周囲の状況を確認することができる。
http://www.epson.jp/osirase/2011/111109.htm
32
PEN November 2011
【タイ洪水、サプライチェーン】
タイ洪水被害の影響で引き続き北米地域での生産調整
(2011.11.9)
本田技研工業(株)
【クローン技術】
遺伝子改変なしにクローンマウスの出生率を 10 倍高める
技術を開発 畜産、医療、製薬分野への本格導入に期待
(2011.11.8)
ホンダの米国、カナダの 6 つの四輪生産拠点では、洪水に
理化学研究所(理研)
見舞われているタイからの部品供給の制約による影響によ
理研のグループは、遺伝子操作を施すことなく、短い RNA
り、11 月 2 日から 11 日まで生産調整をおこなうとして
鎖(siRNA)を注入して、クローンマウスの出生率を 10
いたが、米国では 11 月 23 日まで、カナダでは 11 月 25
倍高める技術を開発した。研究グループは 2010 年に、性
日まで引き続き生産調整を行う。
染色体の 1 つである X 染色体の不活性化が出生率の低下
http://www.honda.co.jp/
につながっていること、その原因が X 染色体上の遺伝子の
発現を抑制する Xist 遺伝子の過剰な発現であることを突
き止めていた。そこで、遺伝子の欠損や挿入といった遺伝
【タイ洪水、サプライチェーン】
子の改変を行わずに、特定の遺伝子の機能を抑えることが
タイの洪水に関する対応(2011.11.8)
できる「RNA 干渉法」という手法を使って、クローン胚
トヨタ自動車(株)
での Xist 遺伝子の一時的な発現抑制を試みた。その結果、
トヨタは日本の車両工場において、10 月 24 日から 11 月
クローン胚の発生能力は大きく改善し、通常の 10 倍(移
12 日まで稼動レベルの調整を行っているが、引き続き 11
植胚あたり 12 ~ 20%)の効率でクローン産子を作るこ
月 14 日から 11 月 18 日まで部品の供給状況に鑑み、ライ
とに成功した。さらに、この産子の肝臓での遺伝子発現を
ンごとの稼動レベルの調整を行う。
網羅的に調べたところ、通常のクローン産子で見られる遺
http://www2.toyota.co.jp/jp/news/11/11/nt11_1109.pdf
伝子発現の乱れも大幅に改善されていた。
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2011/111108/index.html
【可変抗体】
質量分析システムを用いた「血液 1 滴からの疾患早期診断」
につながる 画期的基礎技術を開発(2011.11.8)
(株)島津製作所
同社田中最先端研究所は、抗体のヒンジ部に人工関節のよ
うなバネ状構造を挿入することで、抗原結合部位に大幅な
自由度を与える「可変抗体」を、化学合成により作成する
方法を確立した。これにより、抗原であるタンパク質やペ
プチド等に結合する能力が 100 倍以上向上できることを
世界で初めて確認した。この技術により、
「フィッシング」
機能の大幅向上が期待され、
「フィッシング」等の前処理
【アルツハイマー病】
アルツハイマー病の解明と新規創薬標的の探索で共同研究
開始(2011.11.8)
理化学研究所(理研)、アステラス製薬(株)
理研脳科学総合研究センターとアステラス製薬は、
「アル
ツハイマー病の発症機構の解明と新規創薬標的の探索」を
目的とする 5 年間の共同研究契約を締結した。アルツハイ
マー病を含む認知症は、2020 年には国内の患者数が 325
万人に達すると予測されている。
http://www.astellas.com/jp/corporate/news/pdf/111108_jp.pdf
法と最先端質量分析装置との組み合わせで、血液1滴から
がんや成人病等を早期発見できる画期的診断システムの構
築に貢献することが期待される。さらに、最近注目されて
いる「抗体そのものを薬として用いる」抗体医薬の原料と
して使用することで、抗体医薬の能力向上などに役立つこ
とが期待される。
http://www.shimadzu.co.jp/news/press/miq5fd0000000xy0.html
【エネルギー・ハーベスト】
ナノパワー・エネルギー・ハーベスト向けに高効率の昇圧
型充電 IC を発表(2011.11.8)
日本テキサス・インスツルメンツ(株)
同社は、エネルギー・ハーベスト向けの次世代の電源管理
IC として bq25504 を発表した。この高効率の昇圧型充電
IC は、ソーラーパネル、熱電対、電磁力および振動をはじ
めとしたナノパワー(超低電力)のエネルギー・ハーベス
トで発生する、マイクロワットからミリワットの範囲の電
力を管理するとともに、それらのエネルギーを Li イオン
電池およびスーパー・キャパシタなどの蓄電池に充電する。
bq25504 は、過電圧および電圧低下など、蓄電池の保護
PEN November 2011
33
回路も内蔵しているほか、電池が深放電した場合のシステ
【戦略的国際共同研究プログラム】
ムのキックスタート機能も提供する。
国際科学技術共同研究推進事業(戦略的国際共同研究プロ
http://www.tij.co.jp/bq25504-prjp
グラム)JST(日本)と NSF(米国)が殺虫剤による汚染
http://www.tij.co.jp/battery
の削減やバイオ燃料の普及促進を目指す共同研究課題の平
成 23 年度新規採択を決定(2011.11.7)
【ロボティクス】
さ ら な る 進 化 を 遂 げ た「 新 型 ASIMO」 と、 ロ ボ テ ィ ク
ス研究および応用製品の総称「Honda Robotics」を発表
(2011.11.8)
科学技術振興機構(JST)、米国国立科学財団(NSF)
JST と NSF は低炭素社会の実現に寄与することを目指し、
新しい日米共同研究支援プログラムにて植物および微生物
に関する共同研究課題4件を採択した。
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20111107/index.htm
本田技研工業(株)
ホンダは世界初の自律行動制御技術を新たに搭載した、
ヒューマノイドロボット「新型 ASIMO」を発表した。新
【水素発電システム】
型 ASIMO は自律性がさらに高まり、人の操作を介在せず
電力を水素に変換して備蓄できる風力発電機利用水素発電
に連続して動き続けることが可能。また知能面、身体面と
システムを受注(2011.11.7)
もに状況適応能力が格段に向上したことで、多くの人が行
(株)日立製作所
き交うパブリックスペースや、オフィスといった環境での
日立は、大学共同利用機関 情報・システム研究機構 国立
実用化に、また一歩近づいた。このようなヒューマノイド
極地研究所より、風力発電機利用水素発電システム一式を
ロボット研究から生まれるロボティクス技術と応用製品の
受注した。今回受注した風力発電機利用水素発電システム
総称を「Honda Robotics」と定めた。
は、風力発電で得られた電力を水素に変換して備蓄し、必
http://www.honda.co.jp/news/2011/c111108a.html
要なときに電力として取り出すシステムで、発電電力の変
動が大きい再生可能エネルギーを安定的に供給することが
できる。
【グラフェン】
http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2011/11/1107.html
Si 基 板 上 へ の グ ラ フ ェ ン 多 機 能 デ バ イ ス の 開 発 に 道
(2011.11.8)
東北大学
【糖質のプロファイリング法】
東北大電気通信研究所は、シリコン(Si)基板の面方位に
細胞の種々のクラスの複合糖質のプロファイリング法の開
よる、Si 基板上に成長させた次世代電子材料グラフェン
発に相次いで成功「細胞の顔」を記述するユニークな情報
(GOS)の多機能化、金属性・半導体性の切り分けに成功し、
を提供(2011.11.7)
GOS を用いたトランジスタの集積化も可能であることを示
北海道大学
した。現在の半導体集積技術を用いてグラフェンの多機能
細胞表面には様々なクラスの複合糖質群が巧妙に配置され
化・集積可能性を示したことは、グラフェンの多機能集積
ていて、複合糖質糖鎖はしばしば細胞の顔に例えられる。
回路への道を拓いたという意味で、画期的な成果である。
しかし細胞表面に存在する複合糖質糖鎖の全容的な定性、
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2011/11/press2011108-01.html
定量情報は限られており、特に異なるクラスの複合糖質糖
鎖の相対的な比較に関する研究例はほとんどない。本研究
では、従来、複合糖質の中でも特に解析が困難であった糖
【EV】
脂質、グリコサミノグリカン、O- 結合型糖鎖の解析技術
中国・広州で電気自動車の実証実験を開始(2011.11.8)
を相次いで開発した。胚性腫瘍細胞などのモデル細胞を用
本田技研工業(株)
いた検証試験の結果、これらの方法が細胞の複合糖質の構
ホンダは、中国・広州市政府および広州汽車集団股 有限
成を詳細に明らかにすることを実証するとともに、細胞の
公司と共同で行う電気自動車(EV)実証実験の開始を記
有する固有の複合糖質プロファイルが高度に細胞特異的で
念する式典を、広州で行った。
あることがわかった。本研究成果は今後、再生医療や創薬
http://www.honda.co.jp/news/2011/c111108b.html
研究においてますます重要となる細胞の精密な記述や評価
法として大きく貢献することが期待される。
http://www.hokudai.ac.jp/bureau/topics/press_release/111107_pr_lfsci.pdf
34
PEN November 2011
【太陽電池、世界最高変換効率】
【スーパーコンピュータ】
太陽電池セルで世界最高変換効率 36.9%を達成 化合物 3
スーパーコンピュータ「PRIMEHPC FX10」を販売開始 接合型太陽電池で実現(2011.11.4)
世界最高レベルの性能を実現するスーパーコンピュータを
シャープ(株)
グローバルに提供(2011.11.4)
同社は、太陽電池を 3 つの層に積み重ねた化合物 3 接合
富士通(株)
型太陽電池で、世界最高変換効率 36.9%を達成した。す
同社は、最大 23.2 ペタフロップス(PFLOPS)の理論演
でに同社は化合物 3 接合型太陽電池で変換効率を 35.8%
算性能を実現可能なスーパーコンピュータ「PRIMEHPC
まで高めることに成功していたが、今回新たに各太陽電池
FX10」を4日より販売する。本製品は、本年 6 月に世界
層を直列に繋ぐために必要な接合部の抵抗を低減させるこ
一の性能を達成したスーパーコンピュータ「京」に適用し
とで、太陽電池の最大出力が向上し、変換効率アップを実
たスパコン技術をさらに向上させ、高性能、高拡張性、高
現した。本成果は、NEDO の「革新的太陽光発電技術研究
信頼性をあわせもち、かつ省電力性に優れたスーパーコ
開発」テーマの一環としてえられたもので、産総研におい
ンピュータ。プロセッサからミドルウェアまで、独自開
て、非集光時世界最高変換効率を更新する 36.9%の変換
発しており、高い信頼性と運用性を備え、ユーザーの要
効率が確認されたもの。
望にあわせて 1 ラック、2.5TFLOPS から、1,024 ラック、
http://www.sharp.co.jp/corporate/news/111104-a.html
23.2PFLOPS までの超高速、かつ高いスケーラビリティを
英語版
http://sharp-world.com/corporate/g_topix/solar_cell2/index.html
【遅延型アレルギー】
遅延型アレルギーを抑えるドレス細胞の発見(2011.11.4)
東北大学
東北大の研究者が、金属アレルギー、かぶれ、薬物過敏症
などの接触性皮膚炎や、移植免疫反応などに代表される遅
延型アレルギーを抑制する新たな細胞を発見し、その原理
にかかわる現象がドレスを身にまとうような反応であるこ
とから、ドレス細胞と名付けた。
http://www.idac.tohoku.ac.jp/ja/news/news111102.pdf
実現する。
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2011/11/7.html
【スマートハウス】
東京モーターショー 2011 に出展、EV とスマートハウス
の新たな関係を提案(2011.11.4)
積水ハウス(株)
同社は、2011 年 12 月 2 日~ 12 月 11 日まで東京ビッグ
サイトで開催される「第 42 回 東京モーターショー 2011」
に、住宅メーカーとして初めて出展することを決定した。
同社はスマートハウスのリーディングカンパニーとして、
先進のテクノロジーを駆使し、健康で快適に暮らしながら
地球温暖化の防止にも貢献する環境配慮型住宅「グリーン
【コンセプト EV】
次世代型コンセプト EV「“TEEWAVE” AR1」を東京モーター
ショーに出品(2011.11.4)
東レ(株)
ファースト」を提案してきた。今回の展示会では「グリー
ンファースト」から考える EV とスマートハウスの関係を
紹介する予定。
http://www.sekisuihouse.co.jp/company/newsobj1770.html
同社は、来る 12 月 3 日~ 11 日に東京ビッグサイトにて
開催される「第 42 回 東京モーターショー 2011」に、環
境配慮型先端材料や先端技術を駆使して完成させた次世代
型コンセプト電気自動車(EV)
「“TEEWAVE” AR1」を出品
する。
http://www.toray.co.jp/news/fiber/nr111101.html
【太陽電池】
化合物 3 接合型太陽電池で世界最高変換効率 36.9 を達成
(2011.11.4)
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、シャープ
(株)
NEDO の「革新的太陽光発電技術研究開発」の一環として、
シャープが太陽光を高い効率で電気エネルギーに変換する
化合物 3 接合型太陽電池で、世界最高変換効率 36.9% を
達成した。このプロジェクトは、新材料・新規構造等を利
用して太陽光発電の「変換効率 40% 超」かつ「発電コス
トが汎用電力料金並み(7 円 /kWh)」達成のための探索研
PEN November 2011
35
究を行い、2050 年までの実用化を目指すもの。本成果に
テルダイト(YbXFe4Sb12)が、強磁性を発生する新しい
よって、この目標の達成が大きく促進され、高効率太陽電
仕組みを発見した。これは、日本原子力研究開発機構、物
池の早期実用化が期待される。
質・材料研究機構、テキサス大学、富山大学、首都大学東
http://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100061.html
京による共同研究の成果。研究グループは、大型放射光施
設 SPring-8 の BL12XU 台湾ビームラインによる X 線共鳴
非弾性散乱(X 線共鳴発光分光)の測定法を用い、Yb の
【京速コンピュータ】
電子状態について温度と圧力との関係を調べた。その結
京速コンピュータ「京」が 10 ペタフロップスを達成 11
果、Yb の欠陥が引き起こす強磁性発生の原因が、Yb の電
月発表の TOP500 に LINPACK 性能 10.51 ペタフロップス
子と Fe の電子の強い相互作用にあることを発見した。ま
を登録(2011.11.2)
た、強磁性を発生しているのは Yb 側ではなく、Fe4Sb12
理化学研究所、富士通(株)
側にあることも分かった。これは、Yb が欠陥したカゴの
両者が共同で開発中の京速コンピュータ「京」において、
回りの Fe4Sb12 側で局所的に磁性が発生していることを
LINPACK 性 能 10.51 ペ タ フ ロ ッ プ ス( 毎 秒 1.051 京 回
示唆している。さらに、Yb は一般に低温で価数が下がるが、
=10,510 兆回の浮動小数点演算数)を達成した。今回計測
Yb 欠陥のスクッテルダイトでは、低温で急激に価数が上
に用いた「京」のシステムは、
864 筐体(CPU 数 88,128 個)
昇する現象を観測した。これらは、従来の理論モデルでは
をネットワーク接続した最終構成で、実行効率は 93.2%
説明できない全く新しい現象である。
と、2011 年 6 月に世界のスーパーコンピュータのランキ
http://www.riken.jp/r-world/research/results/2011/111102/index.html
ングである第 37 回 TOP500 リスト(第 1 位)で登録した
93.0% を上回った。まだシステムソフトウェアの整備・調
整など開発途上ではあるが、第 3 期科学技術基本計画に
おける国家基幹技術である「京」の性能目標として定めた
【風力発電、EV 実証実験】
八 丈 島 で 風 力 発 電 を 活 用 し た EV レ ン タ カ ー を 稼 動
LINPACK 性能 10 ペタフロップスを実現した。
(2011.11.2)
http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2011/111102/index.html
(株)JTB 法人東京
八丈町と NPO 法人八丈島産業育成会は、「電気自動車を活
用した自然エネルギーによる八丈島クリーンアイランド構
【離島型スマートグリッド】
想」を推進している。JTB 法人東京は、従来より EV(電
ハワイにおける日米共同世界最先端の離島型スマートグ
気自動車)レンタカーを活用した環境観光まちづくり事業
リッド実証事業の開始(2011.11.2)
を展開しており、今般、自然エネルギーと EV の導入拡大、
(株)日立製作所、
(株)サイバーディフェンス研究所、
(株)
ならびに環境と観光を組み合わせた街づくりを検証するた
みずほコーポレート銀行
めの実証実験を受託した。尚、実証実験は 2011 年 11 月
3 社は、(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構が実
から 2012 年 3 月末まで行われる。
施する「ハワイにおける日米共同世界最先端の離島型ス
https://www.jtbbwt.com/contents/docs/release087.pdf
マートグリッド実証事業」の委託先に選定された。本実証
事業は、マウイ島で離島型クリーン・エネルギー社会モデ
ルを構築することをめざし、日立が実証研究責任者とし
【全固体リチウムイオン二次電池】
て全体を取りまとめ、ハワイ州、ハワイ電力、ハワイ大
薄さ 0.17mm 全固体二次電池 実装・検査の生産性が飛
学、米国国立研究所などと共同で、事業規模約 30 億円で、
躍的に向上 IPS 社 THINERGY 使いやすさを向上させた
2014 年度末まで実施する予定。
MEC200 シリーズを新価格で提供(2011.11.1)
http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2011/11/1102c.html
東京エレクトロンデバイス(株)
同社は、薄さ 0.17㎜の超薄型全固体リチウムイオン二
次 電 池 THINERGY の 専 業 メ ー カ ー で あ る Infinite Power
【レアアース、強磁性発現メカニズム】
レアアースの欠陥が強磁性を発生させる仕組みを発見 レ
月 1 日に販売開始した。
アアースの電子と 3d 遷移元素の電子の強い相互作用が強
http://www.teldevice.co.jp/news_release/2011/press_111101.html
磁性を生む(2011.11.2)
理化学研究所(理研)
理研は、充填率が 100% に満たないカゴ状化合物のスクッ
36
Solutions, Inc. の新製品である MEC200 シリーズを、11
PEN November 2011
【化合物データベース】
【パーキンソン病、運動障害】
秘密計算による化合物データベースの検索技術 データ
パーキンソン病の運動障害の原因となる脳の電気信号異常
ベースや検索条件の情報を暗号化したまま類似化合物を検
に新発見(2011.11.1)
索できる(2011.11.1)
自然科学研究機構、京都大学
産総研、筑波大学、東京大学
両者は、パーキンソン病に関連する大脳基底核とよばれる
共同研究チームは、秘密計算による化合物データベースの
脳の部位で見られる神経の電気信号の “ 発振 ” 現象が、正
検索技術を開発した。これまで創薬などに用いられる化合
常な神経の信号を邪魔することで、手足が動かしづらいな
物の情報は企業秘密として厳重に管理されるため、外部
どの運動障害の原因となっていることを明らかにした。さ
データベースに情報を送って類似化合物の検索を行うこと
らに、研究グループは、パーキンソン病モデル動物(モデ
が難しかった。今回開発した技術により、
ユーザー側とサー
ルザル)の大脳基底核の中の特定の細胞集団(視床下核)
バー側の双方が互いに情報を開示することなく、互いの
に薬物を注入し、この発振を一時的に止めることで、運動
データを暗号化したままで比較し、検索結果だけを得るこ
障害を緩解させることに成功した。
とができる。この技術では、データを加法準同型暗号によ
http://www.nips.ac.jp/contents/release/entry/2011/11/post-193.html
り暗号化し、加算だけで検索を行えるアルゴリズムによっ
て、大量のデータに対して実用的な速度で検索を実行でき
る。今回開発した技術は、企業間での安全かつ効果的な情
【超高密度 HDD 用磁気抵抗素子】
報交換を促進し、創薬におけるオープンイノベーションに
超高密度 HDD 用極薄再生ヘッドのための反強磁性交換結
貢献すると期待される。
合 3 層磁気抵抗素子の開発(2011.10.31)
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2011/pr20111101/pr20111101.html
物質・材料研究機構(NIMS)
NIMS は、 次 世 代 の 超 高 密 度 ハ ー ド デ ィ ス ク ド ラ イ ブ
【糖鎖選択自動抽出】
生体試料から糖鎖を自動抽出する装置の実用化に成功
(2011.11.1)
システム・インスツルメンツ(株)
、北海道大学、科学技
術振興機構(JST)
JST 研究成果展開事業(先端計測分析技術・機器 開発プ
ログラム)の一環として、システム・インスツルメンツと
(HDD)のための極薄再生ヘッドに適すると考えられる反
強磁性交換結合 3 層磁気抵抗素子の実証に成功した。これ
は、コバルト基ホイスラー合金薄膜の反強磁性的な層間交
換結合を用いた素子で、従来のスピンバルブ素子に比べ半
分の厚さの 10 nm という極薄で高い磁気抵抗比を実現で
きるので、次世代の超高密度 HDD 用の超高分解能高感度
再生ヘッドとしての応用が期待される。
http://www.nims.go.jp/news/press/2011/10/p201110310.html
北海道大学は共同で、生体試料から糖鎖のみを自動で抽出
できる装置の実用化に成功した。この装置は、遊離の糖鎖
分子が持つヘミアセタールと呼ばれる部分とヒドラジド・
オキシアミン担持ポリマーが化学的に結合する反応を利用
して、様々な分子が混在した生体試料の中から糖鎖だけを
選択的に抽出するグライコブロティング法を自動化したも
の。捕捉した糖鎖は切り離したのちに質量分析で糖鎖を測
定するが、測定のためレーザーを当てイオン化する場合、
一部の糖鎖の脱落や他のイオンの付加などが起こり、定量
性が失われる事があるが、簡易な修飾法を検討した結果、
定量性を維持したまま種々の糖鎖の一斉解析が可能となっ
た。従来、糖鎖を分析するには手作業で糖鎖の抽出を行っ
ていたため、1 検体を分析するには 3 日間もの時間を要し
ていた。本装置では、96 検体を半日で処理できる上、従
来法と比較して 2 倍にのぼる種類の糖鎖を検出できる。
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20111101/index.html
【量子ドット、電子移送】
世界で初めて単一電子を周囲の電子から孤立させて移送・
検出する技術を開発(2011.10.31)
東京大学
東京大学はフランスの CNRS ネール研究所、ジョセフ・フー
リエ大学、ドイツのボフム大学との共同研究により、半導
体基板上で単一電子を量子ドットから取り出し、周囲の電
子から完全に孤立させたまま遠く離れた量子ドットへと移
送する技術を開発した。この技術により、固体物理学者の
長年の念願であった単一電子単位での干渉・散乱実験が可
能になる。また、この技術を利用して半導体基板上で量子
情報を長距離移送することにより、半導体量子情報素子に
拡張性を与えることができる。
http://www.u-tokyo.ac.jp/ja/todai-research/highlights/research-information/singleisolated-electron/
PEN November 2011
37
【有機磁性体】
【EV】
磁性を持つ有機分子 TDAE-C60 の電荷移動の新モデルを提
北米向け『i-MiEV』の生産を開始(2011.10.28)
唱 新たな有機分子磁石の開発が可能に(2011.10.31)
三菱自動車(株)
理化学研究所(理研)
新世代電気自動車は i-MiEV(アイ・ミーブ)の北米仕様
理研は岡山大学、京都大学、高輝度光科学研究センターと
車の生産を開始したことを発表した。同車は、本年 11 月
共同で、本来磁性を持たない有機分子が磁性を帯びる仕組
下旬に米国西海岸、カリフォルニア州、ワシントン州、オ
みを、電荷移動に基づく新モデルで示した。研究グルー
レゴン州、およびハワイ州で販売を開始した後、2012 年
プは、有機分子磁性体である TDAE-C60 の単結晶を、大
度末までには米国およびカナダの全域にその販売エリアを
型放射光施設 SPring-8 の軟 X 線ビームライン BL17SU を
広げる。
使って、光電子分光測定を行った。その結果、電子 1 個が
http://www.mitsubishi-motors.com/publish/pressrelease_jp/corporate/2011/news/
TDAE から C60 側に移動していることを確認した。また、
detail4514.html
理論計算からもこの実験結果を確認できたため、確かに電
子 1 個の移動が TDAE-C60 の磁性の起源であることを提
唱した。一般に有機分子が磁性を持つのは、電荷移動に
よって磁性の基となる孤立した電子スピンができるためで
ある。このためには、電子を放出しやすい分子と電子を受
け取りやすい分子が結合すれば、電荷移動が起きて磁性を
帯びやすくなる。今回明らかにした電荷移動のより正確な
モデルを用いると、磁石に有利な有機分子磁性体を自由に
設計できる可能性があり、磁石設計の強い指針になると考
えられる。次世代メモリーに用いられる高密度記録材料や、
医薬品にも使われる磁性体薬剤化合物作成への応用が期待
される。
http://www.riken.jp/r-world/research/results/2011/111025/index.html
【水素タウン】
ス マ ー ト ハ ウ ス in 福 岡 水 素 タ ウ ン の 開 所 停 電 時 の エ
ネファームによる電力復旧を体験できるモデルハウス
(2011.10.28)
JX 日鉱日石エネルギー(株)、(株)へいせい、西部ガス
エネルギー(株)
3 社は、福岡県と糸島市の協力を得て、11 月 7 日に、福
岡県糸島市・福岡水素タウン内に「スマートハウス in 福
岡水素タウン」を開所した。スマートハウス in 福岡水素
タウンは、SOFC 型家庭用燃料電池「エネファーム」
、屋
根組込型太陽光発電システム、蓄電池システムなどの最新
エネルギー機器を設置した環境対応型住宅のモデルハウス
で、一般公開される。
【ナノ粒子触媒】
http://www.noe.jx-group.co.jp/newsrelease/2011/20111028_01_0990036.html
金とコバルトなどを組み合わせたナノ粒子により様々なア
ミド化合物を合成できることを発見(2011.10.31)
東京大学
東大の研究チームは、貴金属触媒である金と、安価な金属
であるコバルト、鉄あるいはニッケルを組み合わせたナノ
粒子により、高い収率および選択性で様々なアミド化合物
を合成できることを世界で初めて明らかにした。アミド結
合は、カルボン酸とアミンから大量の縮合剤を用いて構築
する方法が最も一般的だが、今回の方法では、カルボン酸
のかわりにアルコールを原料として用いることができ、縮
合剤を必要としない。ナノ粒子の触媒作用により酸化反応
を経由して、アミド結合生成を一度に行うことができる。
また本技術においては、酸化剤として有害な金属酸化剤を
用いる必要がなく空気中の酸素を使用することができ、ま
たナノ粒子である触媒は反応後の再使用が可能であるた
め、環境にやさしいアミド化合物の生成方法であるといえ
る。
http://www.u-tokyo.ac.jp/
【ハイブリッドセラミックス材料】
割れにくい軽量ハイブリッドセラミックス材料を開発 新
幹線などの高速鉄道用ブレーキなどの開発につながると期
待(2011.10.27)
東京大学
(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によ
る「ナノテク・先端部材実用化研究開発」プロジェクトは、
東京大学、コバレントマテリアル(株)
、宇宙航空研究開
発機構、物質 • 材料研究機構の協働で、壊れにくい性質を
付与し、破壊抵抗に優れる炭素繊維強化 SiC セラミックス
材料と大きな力を負担できる強度に優れる SiC セラミック
ス材料単体の持つ長所を一つの部材に融合することを目指
して、ハイブリッド材料の開発を進めてきた。これまでの
セラミックスの成形プロセスとは異なる、省エネ・高速ネッ
トシェイププロセス、すなわち、①ナノ構造を持つハイブ
リッド予備成形体の製造技術、②高速ネットシェイプディ
スク成形技術、の確立により、大きな破壊抵抗を持つブレー
キディスクに適したハイブリッド構造をもつセラミックス
38
PEN November 2011
が実現できた。
http://www.rcast.u-tokyo.ac.jp/ja/rcast/report/2011/1027.html
【重イオンビームによる新酵母の開発】
重イオンビーム照射を利用した吟醸酒用の新しい酵母の開
発 香り高い華やかな清酒を製造(2011.10.26)
埼玉県産業技術総合センター、理化学研究所
【CNT 光熱発電素子】
両者は重イオンビーム変異誘発技術を用いて新たな清酒酵
生体内で発電できる光熱発電素子 光と熱のエネルギーに
母を開発した。この新しい酵母は、従来使用されてきた埼
よる体の中での発電を目指して(2011.10.27)
玉酵母を親株とし、理研仁科加速器研究センターの保有す
産総研
るリングサイクロトロンで発生させた重イオンビームを照
産総研は、光によって容易に発熱可能なカーボンナノ
射し、変異させた株。500 以上の変異株の中からよく発酵
チューブ(CNT)の光発熱特性を熱電変換素子に組み入れ
し香りのよいものなどを選抜し、さらに小規模の清酒製造
ることにより、生体内で発電できる新たな光熱発電素子を
試験により性質を確認したものから選んだ。
開発した。CNT は、ナノ炭素材料の一つとして大きな注目
http://www.pref.saitama.lg.jp/news/page/news111026-06.html
を集めているが、溶媒に分散しにくい点が応用上の制約と
なっていた。今回、ポリ (3- ヘキシルチオフェン )(P3HT)
を用いることで、CNT をシリコーン樹脂ポリジメチルシ
【気孔の数を増やす分子の構造】
ロキサン;PDMS 中に均一に分散できることを見いだし
世界で初めて植物の気孔の数を増やす分子の構造を解明 た。この CNT を分散させた樹脂は生体透過性の高い近赤
光合成に必要な二酸化炭素の取り込み能力向上が可能に
外レーザー光によって発熱する。この樹脂フィルムをビス
(2011.10.26)
マス - テルル型の固体熱電変換素子の表面に接合した光熱
科学技術振興機構(JST)
、北陸先端科学技術大学院大学、
発電素子は、近赤外レーザー光によって樹脂フィルムが発
石川県立大学
熱して熱電変換素子に温度差を生じ、それによって体内で
JST 研究成果展開事業の一環として、北陸先端科学技術大
効果的な熱電発電動作を示した。今回開発した光熱発電素
学院大学と石川県立大学は、植物の気孔の数を増やす働き
子により、心臓ペースメーカーなどの数多くの体内埋め込
をするペプチドホルモン「ストマジェン」の立体構造を解
み型やウエアラブル型医療機器などへの光による遠隔電力
明した。2010 年に発見されたストマジェンは、気孔の数
供給システムの実現が期待される。
を増やす生理活性物質として現在知られている唯一のも
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2011/pr20111027/pr20111027.htm
の。ストマジェンのアミノ酸配列は、すでに知られていた
気孔の数を減らすペプチドに似ており、ストマジェンの立
体構造を解き明かすことが、気孔の数を調整する仕組みを
【家庭用蓄電システム】
リチウムイオン蓄電システムの販売を住宅用にも拡充
(2011.10.27)
解明するための大きな手がかりとなる。研究チームは今回、
核磁気共鳴分光法(NMR)を用いて、ストマジェンの立
体構造を解明した。これは、世界で初めて植物のペプチド
パナソニック電工(株)
ホルモンの立体構造を明らかにしたもので、ストマジェン
同社は産業用リチウムイオン蓄電システムを 8 月 31 日か
分子中でホルモンの働きを持つ部位を特定できた。これは、
ら受注開始しているが、同システムから発生するノイズを、
ストマジェンとその変異体を本事業で開発した植物細胞と
VCCI で規定されている住宅環境の基準値未満にまで低減
ウイルスを用いる新技術で作製できたから。現在開発中の
したことで、住宅にも設置が可能となった。従来の産業用
この方法を用いると、遺伝子組み換え大腸菌や酵母を利用
途に加え、住宅用途にも販売対象を拡充し、11 月 15 日
した従来の技術では作製が難しかったたんぱく質やペプチ
から受注開始する。また同日、太陽光発電からの充電で停
ドも、本来の立体構造を保ったままで作製することができ
電時も継続的な電源供給が可能で、学校や公共施設などの
る。この成果により、分子レベルで植物の気孔の数を調節
災害時電源確保に適した公共・産業用リチウムイオン蓄電
する物質の「形」を明らかにした。今後、植物の気孔の数
システムの受注も開始した。
を制御する物質を設計することが可能になる。将来的には、
http://panasonic-denko.co.jp/corp/news/1110/1110-14.htm
大気の CO2 削減、食糧生産性の向上など、さまざまな応
http://panasonic-denko.co.jp/corp/news/1110/1110-13.htm
用展開が期待できる。
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20111026/index.html
PEN November 2011
39
【iPS、細胞状態変化デザイン】
照射することで発生するテラヘルツ波の検出に世界で初め
発生や iPS 化を表す「地形」を細胞内にプログラミング て成功。従来は確認できなかった、1 兆分の 1 秒という瞬
細胞内・細胞間の遺伝子相互作用で決まる高度な振る舞い
間的な太陽電池の発電状態の可視化を実現した。この現象
をデザインして、生きた細胞で実現(2011.10.25)
を太陽電池の発電効率向上につながる技術と考え、今後、
東京工業大学、科学技術振興機構
実用化に向けた研究をさらに進める、としている。
東京工業大学は、合成生物学の手法を用い、生命の発生や
http://www.screen.co.jp/press/pdf/NR111025.pdf
人工多能性幹細胞(iPS)化を表す「地形」を細胞内にプ
ログラミングし、細胞の状態変化をデザインする新規な手
法を打ち立てることに成功した。生きた細胞内に、人工的
に組み合わせた遺伝子のネットワークを導入し、この細胞
が細胞内・細胞間の遺伝子相互作用の結果により多様な細
胞へと、設計通りに分岐していくことを確認したもの。従
来、受精卵という1つの細胞から多様な細胞が生じる発生
の過程は「ワディントン地形」という、下るほど谷の数が
増えてゆく地形の上を玉が転がることで説明されてきた。
京都大学の山中教授は、iPS 細胞の概念を説明するために、
この地形上を玉が登っていく図を示している。しかし、こ
の「地形」モデルの実態は解明されていなかった。今回の
人工遺伝子ネットワークと同じ構造を生物の中から見つけ
だすことで、発生や再生過程に関する新たな知見を得るこ
とが期待される。また、今回開発したプログラミング法は、
微生物を活用した有用物資生産や再生医療への応用が予想
【遺伝子の機能解析】
ES 細胞において遺伝子機能を迅速に解析する方法を開発
(2011.10.24)
大阪大学、科学技術振興機構(JST)
大阪大学は、様々な遺伝子の機能解析を加速化するため
に、ES 細胞において多数の遺伝子を迅速に破壊する方法
を開発した。ES 細胞は、様々な種類の細胞に分化する「万
能細胞」であるため、種々の遺伝子機能を調べるための格
好のモデル。また、ES 細胞の万能性を調べる上でも、今
回の遺伝子破壊法は有用な方法であり、ES 細胞の医療応
用を目指した基礎的研究を推進する技術としても期待され
る。本研究は、JST 戦略的創造研究推進事業個人型研究(さ
きがけ)の一環として実施されたもの。
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20111024-2/index.html
される重要な方法論である。
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20111025/index.html
【再生医療】
マウスの骨再生に成功、新たな骨形成促進剤の開拓へ道 【超巨大ブラックホール】
銀河同士の相互作用で促進される超巨大ブラックホールの
成長(2011.10.25)
東京大学
多くの銀河の中心には超巨大ブラックホールがあることが
知られており、それらは実に太陽の百万倍から十億倍と
いった重さだが、一体どのようにしてそこまで巨大に成長
したのかは、いまだ謎である。東京大学数物連携宇宙研究
機構(IPMU)は、国際チーム COSMOS との協力で、チャ
ンドラ X 線衛星と欧州南天天文台の VLT 望遠鏡を用いた
観測により、銀河同士の重力相互作用が超巨大ブラック
ホールの成長を促進させていることを明らかにした。
http://www.ipmu.jp/ja/node/1160
骨粗しょう症や関節リウマチ、がんによる骨破壊などの新
たな治療へ(2011.10.24)
科学技術振興機構(JST)、東京医科歯科大学
JST 課題達成型基礎研究の一環として、東京医科歯科大学
の研究グループは、Sema4D と呼ばれるたんぱく質の働き
を抑えることで、骨を再生することにマウスの実験で成功
した。神経細胞が回路を作る過程や免疫反応に関わること
で知られる、Sema4D が、骨を吸収する破骨細胞から多量
に産生され、骨を形成する骨芽細胞に働きかけることによ
り骨形成を抑制する仕組みを、マウスにおいて明らかにし
たもの。さらに、Sema4D やその下流で働く遺伝子を破壊
したマウスでは、骨形成が促進して骨量が増加する。また、
骨粗しょう症モデルマウスに Sema4D の働きを阻害する
「抗 Sema4D 抗体」を投与すると、減ってしまった骨を再
生させることができた。従って、Sema4D の働きを抑える
【太陽電池効率化、テラヘルツ波】
太陽電池の瞬間的な発電の可視化に世界で初めて成功 光
と電波の性質を兼ね備えた「テラヘルツ波」により、太陽
電池の発電効率向上へ(2011.10.25)
大日本スクリーン製造(株)
、大阪大学
両者はこのほど、太陽電池に極めて短時間のレーザー光を
40
PEN November 2011
物質は、骨粗しょう症や関節リウマチ、がんの転移による
骨の破壊といった骨量減少性疾患に対する新薬の候補にな
ることが分かった。
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20111024/index.html
【Crown Jewel 触媒】
【超蛍光】
金原子の使用量を節約できる新しい高活性触媒を開発 触
極端紫外レーザーによる「超蛍光」を初めて観測 X 線領
媒設計に新概念、グリーンケミストリーの発展にはずみ
域での量子光学現象の応用に向けた第一歩(2011.10.21)
(2011.10.24)
理化学研究所
科学技術振興機構(JST)
、山口東京理科大学
通常の蛍光強度は、励起状態の寿命に特徴付けられる指数
金触媒は、ほかの金属触媒に比べ低温での酸化反応に優
関数的な減衰曲線を描く。しかし多数の励起原子が狭い空
れた活性を示すが、コストの点から、より少量でより高
間内に集まると、励起原子が集団として一斉に発光する量
い活性の触媒の開発が望まれていた。JST 課題達成型基礎
子光学現象「超蛍光」が生じる。超蛍光は、ある遅延時間
研究の一環として、山口東京理科大学の研究グループは、
後に最大強度となるパルス形状を持ち、レーザー光のよう
「Crown Jewel 触媒」と名付けられた新しいタイプの金原
に指向性が高いことが特徴である。放射光科学総合研究セ
子触媒を開発した。本研究グループは、パラジウムのナ
ンター XFEL 研究開発部門利用連携チームらの共同研究グ
ノ粒子集団の頂点の原子 12 個全てを金原子と置き換えた
ループは、理研 SCSS 試験加速器施設で、高強度・短パル
Crown Jewel 触媒を合成、金原子をこの特別な位置に配置
スの極端紫外レーザーを高濃度のヘリウム原子ガスに照射
すると、極めて高い触媒活性を示すことが明らかになり、
し、通常の蛍光よりも 30 億倍も明るい超蛍光の観測に成
実際に食品添加剤として最も多く使われている グルコン
功した。超蛍光は量子光学効果の 1 つとして古くから知ら
酸をグルコースの酸化反応で合成することができた。この
れ、可視光~赤外~マイクロ波領域の光照射では既に観測
反応で Crown Jewel 触媒は、
パラジウムナノ粒子に比べ 3.8
されていたが、極端紫外域の光照射による観測は今回が初
倍の高活性で、金単独のナノ粒子と比べても 3.1 倍という
めて。この成果は、X 線領域での超蛍光の発生を示唆する
高活性を達成した。さらに金原子のみに着目し、触媒の単
ものであり、新しい原理に基づいた量子光学デバイスの開
位時間あたりの反応性を示す指標であるターンオーバー頻
発、新しい X 線光源の要素技術、生体分子の構造解析、物
度でみると、Crown Jewel 触媒は1時間あたり 19 万回と
質計測手法などさまざまな応用へと発展していく可能性が
なり、金ナノ粒子の 6 千回をはるかに上回る。なお、この
ある。X 線領域での超蛍光の観測には、2012 年 3 月から
反応ではグルコン酸がほぼ 100%の選択率で生成する。グ
供用が開始される X 線自由電子レーザー施設 SACLA から
ルコン酸はグルコースの醗酵で作るため、時間がかかり副
の超短パルス光が欠かせない。SACLA が切り拓く新しい X
生成物も多いため精製にも手間がかかる。この触媒は、グ
線利用技術の一つとして、超蛍光現象の応用が期待される。
ルコン酸を高収率、高選択率で製造することを可能とした
http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2011/111021_2/index.html
もので、工業的にも注目される。
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20111024-3/index.html
【グラフェン、ナノチューブ】
電子輸送層とホール輸送層の 2 つの分子グラフェンを
【ナノドメインの応答観察】
画像診断装置の高性能化へ 世界初、圧電材料中ナノドメ
接合 飛躍的な高効率有機薄膜太陽電池の開発に期待
(2011.10.21)
インの応答をリアルタイムで直接観察(2011.10.24)
東京大学、理化学研究所、大阪大学
東京大学
共同研究チームは、電子を流す分子グラフェン層(電子
東大の研究グループは財団法人ファインセラミックスセン
輸送層)とホールを流す分子グラフェン層(ホール輸送
ターナノ構造研究所と共同で、代表的な圧電材料の1つで
層)が、ナノレベルの精度で真っすぐに接合した炭素ナノ
ある圧電セラミックス(PMN-PT)の単結晶に電圧を加え
チューブの開発に成功した。筒状の構造を持つこの炭素ナ
た際にドメインと呼ばれる微小な領域が応答する様子を、
ノチューブは、光を照射すると発生する電子とホールがき
「その場透過型電子顕微鏡法」によりリアルタイムで直接
れいに分離し、長寿命の電荷分離状態を実現することが分
観察することにはじめて成功した。今回得られた観察結果
かった。電子とホールの輸送層を精度よく接合した 1 本の
は圧電特性が発現するメカニズムの理解につながるだけで
炭素ナノチューブは、高効率な有機薄膜太陽電池にとって
なく、今後の材料開発に拍車をかけ医療分野の発展に貢献
理想的な構造を実現したもので、基礎と応用の両面で大き
することが期待される。
なインパクトを与えるもの。本研究成果は、米国の科学雑
http://www.t.u-tokyo.ac.jp/tpage/release/2011/102402.html
誌 Science 誌オンライン版に掲載された。
http://www.t.u-tokyo.ac.jp/epage/release/2011/102101.html
PEN November 2011
41
【メガソーラー】
による改質であり、原糸改質のように特殊ポリマーを必要
国内最大規模のメガソーラー建設(2011.10.21)
とせず、ポリエステルそのものを改質する汎用的な後加工
東レ(株)
技術であることが特長。従来、ユニフォーム市場では使い
東レは、愛知県田原市において、中部電力の協力のもと、
捨てが中心だったが、本加工技術を用いることにより、滅
再生可能エネルギーに関する知見・実績を有する他社と共
菌洗濯に対応でき、繰り返しの商品利用が可能となるため、
同で国内最大規模の太陽光・風力発電所を建設するため、
地球環境に優しく、需要が拡大するレンタルユニフォーム
各社と事業化検討を実施することにつき基本合意に達し
用途にも対応できる。
た。
http://www.toray.co.jp/news/fiber/nr111020.html
http://www.toray.co.jp/news/eco/nr111021a.html
【スピントロにクス、表面分析】
【遺伝子組換え生物、拡散防止措置】
最表面の “ スピン ” と “ 構造 ” の複合分析を世界で初めて
遺伝子組換え生物の不適切な使用(2011.10.20)
実現 新しいイオンビームで次世代の磁気デバイス開発を
農業・食品産業技術総合研究機構
加速(2011.10.18)
同研究機構は、「遺伝子組換え生物等の使用等の規制によ
物質・材料研究機構(NIMS)
る生物の多様性の確保に関する法律」に定められた拡散防
電子は電荷に加え、スピンという磁石のような性質を持っ
止措置が執られずに遺伝子組換え実験が実施されていたこ
ている。電荷とスピンの両方を利用するデバイスはスピン
とについて、文部科学省から厳重注意を受けた。
トロニクスと呼ばれ、電荷だけを利用する現在のデバイス
http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nics/016363.html
(エレクトロニクス)に比べて遥かに高い性能が期待され
また同日、文部科学書は農業・食品産業技術総合研究機構
ることから、現在、世界中でその開発が進められている。
及び第一三共(株)における遺伝子組換え生物等の不適切
スピントロニクス開発で鍵となるのは、最表面(表面第一
な使用に対して厳重注意を行った。
原子層)の「スピン」と、元素組成や原子位置に関する “ 構造 ”
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/23/10/1312355.htm
の分析である。このうち、スピンに関しては、最先端の分
析技術を用いてもその分析は極めて困難であり、この解決
がスピントロニクス開発での課題となっていた。NIMS は、
【水素貯蔵、メカニズム】
水素を大量に貯蔵したアルミニウムの結合様式を放射光で
の複合分析に世界で初めて成功した。本研究では、スピン
解明 アルミニウム水素化物の水素貯蔵性能を改良するた
偏極 4He+ イオンビームと呼ばれる新しいイオンビームを
めの指針を提供(2011.10.20)
用いて偏極 4He+ イオンと様々な原子を衝突させる実験を
日本原子力研究開発機構、高輝度光科学研究センター
系統的に行った。そして得られた実験データの詳細な解析
両者は共同で、水素貯蔵材料として注目されているアルミ
から理論モデルを構築し、
この相互作用の解明に成功した。
ニウム水素化物の放射光分光実験を実施し、水素原子とア
本研究によって、比較的小型の装置で、手軽に、最表面の
ルミニウム原子が、共通の電子を介して形成される共有結
スピンと構造の複合分析が可能になったことから、今後、
合で結合していることを明らかにした。
スピントロニクス開発の飛躍的な進展が期待される。
http://www.jaea.go.jp/02/press2011/p11102001/index.html
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20111019/index.html
【ナノ加工テキスタイル】
ナノスケール加工技術 “ ナノモディ ®” による商品化第 2
弾 後加工による滅菌洗濯対応素材・耐加水分解性ポリエ
ステル基本技術確立(2011.10.20)
東レ(株)
東レは、
ナノテクノロジーによる繊維改質技術 “ ナノモディ
®” を用いた新商品の第 2 弾として、滅菌洗濯に対応でき
る耐加水分解性に優れた後加工の基本技術を確立した。本
技術により滅菌洗濯における高圧水蒸気処理での布帛強度
低下を大幅に低減できる。今回確立した基本技術は後加工
42
最表面(表面第一原子層)のスピン・元素組成・原子位置
PEN November 2011
【プロクロロコッカス、光合成】
光合成の進化の再現に成功(2011.10.18)
北海道大学
ラン藻の中にプロクロロコッカスと呼ばれるグループがあ
り、海洋の一次生産者として重要な位置を占めている。プ
ロクロロコッカスは通常の光合成生物とは異なるクロロ
フィルを持っているため、光の少ない深海でも効率よく光
合成が行えると考えられている。北海道大学の研究グルー
プは通常のラン藻の遺伝子を二つ改変するだけでプロクロ
ロコッカスと同じクロロフィルを利用できるラン藻の作出
に成功した。
ターンの獲得」の関連性が裏付けられ、今後、リズムに関
http://www.hokudai.ac.jp/bureau/topics/press_release/111018_pr_lowtem.pdf
わる神経機構の仕組みや言語能力のメカニズムの解明につ
ながるものと期待される。
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20111017-2/index.html
【高分子アクチュエーター】
低電圧で駆動する高分子アクチュエーターの開発に成
功新規高分子材料で軽量化・高エネルギー効率を実現
(2011.10.18)
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
、豊田合成
(株)、アドバンスト・ソフトマテリアルズ(株)
【マンガン系リチウムイオン二次電池】
寿命を従来比 2 倍以上に向上するマンガン系リチウムイオ
ン二次電池技術を開発 家庭向けや電力系統向けなど、定
置用蓄電池での適用へ(2011.10.17)
NEDO の「ナノテク・先端部材実用化研究開発」の一環と
日本電気(株)
して、
新規高分子材料のスライドリング・マテリアル(SRM)
NEC は、マンガン系リチウムイオン二次電池において、寿
樹脂を用いたアクチュエーターの開発に取り組んでいる、
命を従来比 2 倍以上に向上する技術を開発した。本技術
豊田合成 ( 株 ) とアドバンスト・ソフトマテリアルズ ( 株 )
は、新開発の添加剤を電池の構成要素である電解液に加え、
(ASM)は、低電圧で駆動する誘電アクチュエーターを開
従来のマンガン系正極 / 炭素負極の電極と組み合わせるも
発、この誘電アクチュエーターを組み込んだ義手(プロト
の。本技術を利用して、容量 3.7Ah の積層ラミネート電池
タイプ)
の駆動に成功した。開発した誘電アクチュエーター
(65Wh/kg)を試作し、一般的な家庭のエネルギー消費パ
は、SRM 樹脂をフィルム状に形成し、直径 12mm、長さ
ターンに基づいて寿命予測を行った結果、充電可能な容量
60mm のロール状に巻き取った円筒形で、電圧を印加する
が初期の 70%に低下するまでの年数が、従来の約 5 年か
ことで駆動する。ASM が開発した SRM 樹脂と豊田合成の
ら約 13 年、同 50%では約 15 年から約 33 年となり、2
誘電アクチュエーター技術を組み合わせることで従来の直
倍以上の長寿命化を実現した。このたび開発した電池は、
動型モーターよりも軽量で静粛性が高く、高エネルギー効
添加剤に独自の有機硫黄化合物を用いることで、一回の充
率の誘電アクチュエーターを実現した。
放電で電極上へ強固な保護膜を形成し、溶媒の分解を抑制
http://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100055.html
する事が可能。開発した電解液の基礎評価を行なったとこ
ろ、抵抗上昇を従来比 1/2 以下、サイクル寿命を従来比 1.5
倍~ 3 倍とし、繰り返し充放電による容量の低下を大幅に
【テラヘルツデバイス】
抑制した。また、試作した電池を用いて耐久性評価実験を
光でデザインするテラヘルツデバイス(2011.10.18)
行ったところ、23,500 サイクルの充放電を行い初期容量
京都大学
の 83%(25℃)を維持することを実証した。
京都大学は、周期的なパターンをしたフェムト秒(10 兆
http://www.nec.co.jp/press/ja/1110/1702.html
分の 1 秒)パルスレーザーを半導体表面に照射することで
テラヘルツデバイスを作製した。さらにこのデバイスを用
いて、テラヘルツ光の広帯域変調を実現した。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/111018_1.htm
【共重合】
複数の異なるモノマーの精密共重合を希土類重合触媒の組
み合わせで実現 幅広い高性能高分子材料の開発に新しい
道を拓く(2011.10.14)
【リズムに合わせて運動する能力】
理化学研究所(理研)
インコがリズムに合わせて運動できることを確認 リズ
理研は、モノマーであるスチレン、イソプレン、ブタジエ
ムをとる行動と発声模倣能力に関連があることを示唆
ンそれぞれの立体制御に適した 2 種類の触媒を組み合わ
(2011.10.17)
せ、さらに 2 つの触媒間でポリマーの成長鎖を自由に行き
科学技術振興機構(JST)
、東京大学、理化学研究所
来させる試剤を使って、3 つのモノマーの立体構造を制御
JST 課題達成型基礎研究の一環として、東京大学と、JST
する共重合反応に挑んだ。この結果、耐熱性や耐薬品性に
戦略的創造研究推進事業 ERATO 型研究「岡ノ谷情動情報
優れたシンジオタクチックポリスチレン、天然ゴムの主成
プロジェクト」は、オウムの仲間の一種であるセキセイイ
分であるシス -1,4- ポリイソプレン、ブタジエンゴムとし
ンコがリズムに合わせてタッピング(机などを叩く)でき
て使われるシス -1,4- ポリブタジエンという 3 つの構造を
ることを世界で初めて確認した。本研究により、動物にお
持った「三元共重合体」の合成に成功した。この成果は、
ける「リズムに合わせて運動する能力」と「新たな発声パ
性質の異なる複数のモノマーの共重合における立体制御の
PEN November 2011
43
新しい手法となり、従来の触媒系では合成困難な新しい高
であり、母材であるゴムの物性をほぼ保っている。スーパー
分子材料の開発につながるものと期待される。
グロース法による単層 CNT および今回開発した添加方法
http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2011/111014_2/index.html
は、帯電防止や静電気除去のほか導電性を必要とするさま
ざまな樹脂材料への応用が期待される。
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2011/pr20111012_3/pr20111012_3.
【正極材料】
html
安価で高性能なリチウムイオン二次電池正極材料の開発に
成功 リチウムイオン二次電池用のコバルトやニッケルを
含まない正極材料(2011.10.14)
産総研
産総研は(株)田中化学研究所と共同で、酸化物中全遷
移金属量の 30% に、安価で資源的にも豊富な鉄を用い
た、二種のリチウムイオン二次電池用新規酸化物正極材
料 Li1+x(Fe0.3Mn0.7)1-xO2 と Li1+x(Fe0.3Mn0.5Ti0.2)1xO2)を開発した。 これらの正極材料は、化学組成を最
適化し、還元焼成を含む湿式化学製造法を用いて作製し
た。室温での初回充放電効率は、既存正極材料並みの約
80% にまで向上させることができた。 今回の開発品は、
約 250 mAh/g 以上の高い初回充放電容量を確保しており、
既存正極材料並みの性能でかつ希少金属のコバルトやニッ
ケルを含まないため、電気自動車などのリチウムイオン二
次電池の省資源化・コスト低減への貢献が期待される。
【GMR】
相変化固体メモリーから巨大磁気抵抗効果が出現 常温で
2000% を越える磁気抵抗比(2011.10.14)
産総研
産総研は、ゲルマニウム-テルル合金とアンチモン-テル
ル合金の薄膜を、配向軸を揃えて積層した超格子型相変化
膜が、室温から 150℃程度の温度範囲で 2000% を越える
磁気抵抗効果を示すことを発見した。この巨大磁気抵抗効
果はトポロジカル誘電性と呼ばれる物理現象に起因する。
また、この超格子型相変化膜は、可視光領域の円偏光に対
する反射率が磁場の方向に応答して変化する磁気光学効果
をもつことも発見した。 従来の相変化メモリー(PCRAM)
ではゲルマニウム-アンチモン-テルルからなる合金薄膜
を用いているが、この技術では、ゲルマニウム-テルル
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2011/pr20111012_2/pr20111012_2.
合金と、アンチモン-テルル合金とを、お互いの配向軸
html
を一致させながら積層する超格子型相変化メモリー構造
(Interfacial Phase-change Memory) を作製して、コバルト
や白金といった磁性元素を一切使わないで、室温以上の温
【導電性樹脂】
度で 2000% 以上の磁気抵抗効果を発現させた。PCRAM
極少量の単層カーボンナノチューブを添加して作った導電
による常温巨大磁気抵抗効果の発見は、将来的に次世代不
性樹脂 帯電防止や静電気除去など多様な応用に期待 揮発性メモリーとして開発が進められている PCRAM と磁
(2011.10.14)
気抵抗メモリー (MRAM) を融合あるいは統合して、多値機
産総研、技術研究組合単層 CNT 融合新材料研究開発機構
能を持った一つのメモリーデバイスとして全く新しい超高
両者は、単層カーボンナノチューブ(単層 CNT)を樹脂
密度メモリーが実現できると期待される。また、電界効果
中に分散させる新しい方法を開発し、母材としてゴムを用
による高速スイッチ動作も可能と思われ、不揮発性ロジッ
いた場合、わずか 0.01 重量 % の添加量で 10-3S/cm の体
クとしての応用も期待される。
積導電率を達成した。 帯電防止材やプリンターの帯電ロー
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2011/pr20111014/pr20111014.html
ルなどに広く用いられている導電性複合材料は、絶縁性の
樹脂やゴムに導電性の物質を添加して作製されている。し
かし、添加量が多いと樹脂やゴムとしての性質を失うため、
44
【がん発症タンパク質複合体の構造解明】
少量の添加で高い導電性が得られる材料が求められてい
大腸がん発症に関わる APC タンパク質複合体の立体構造
る。 今回、スーパーグロース法で合成した高いアスペク
を解明 がんを抑制するタンパク質複合体の形成において
ト比をもつ高純度の単層 CNT を
「単層 CNT を含む領域 ( 導
重要なアミノ酸が判明(2011.10.12)
電領域 )」
と
「単層 CNT が全く含まれない領域 ( 非導電領域 )」
理化学研究所、東京大学
ができ、しかも導電領域が連続して導電経路を形成するよ
共同研究グループは、X 線結晶構造解析法を用いて APC
うにゴムに混ぜ込んだ。この構造により、単層 CNT の添
タンパク質と Sam68 タンパク質の複合体の立体構造を
加量を少量に抑えながら高い導電率が得られた。この複合
決定することに成功した。詳細に調べると、大腸がん患
材料は、単層 CNT 添加量(重量 %)の等しい他の複合材
者から見つかった APC タンパク質の変異箇所の一つは、
料と比較した場合、もっとも高い導電性をもつ材料の 1 つ
Sam68 タンパク質との結合能を落とす変異箇所と一致し、
PEN November 2011
この変異は結果的に無制御な細胞増殖(がん化)を引き起
【PE、超微細配線】
こすと考えられた。この成果は、変異した APC タンパク
インクジェット方式による低抵抗な超微細銅配線の達成 質がどのようにがんの発症を導くのかという分子メカニズ
携帯電話や IC タグに利用される、次世代 IC 基板や超小型
ムの解明に1つの重要な知見を与え、大腸がんの治療の足
プリント基板などへ展開(2011.10.11)
がかりになることが見込める。また、決定した立体構造を
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
、(株)SIJ
利用して新しい抗がん剤や浸潤・転移抑制剤の開発につな
テクノロジ、
(株)イオックス、日本特殊陶業(株)
、
(地独)
がることも期待できる。
大阪市立工業研究所、産総研
http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2011/111012/index.html
NEDO の委託事業として、産総研をはじめとする共同研究
チームは、インクジェット方式による直接描画および極低
酸素還元技術を用いて、線幅 5 μm、配線抵抗率 8.1 μΩ・
【音声全文検索・書き起こし】
cm の超微細配線形成を実現した。将来的には、携帯電話
インターネット上の動画音声データの検索・書き起こしシ
や IC タグに利用される、次世代 IC 基板や超小型プリント
ステムを実現 動画中の発言内容を音声認識でテキストに
基板などへ展開が期待できる。
書き起こして全文検索が可能に(2011.10.12)
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2011/pr20111011_2/pr20111011_2.
産総研
html
産総研は、ユーザーに協力してもらうことで日々性能が向
上する音声情報検索技術を開発し、動画共有サービスや
ポッドキャストによって公開されているインターネット上
にある日本語と英語の動画音声データを対象とした音声全
文検索・書き起こしサービス「PodCastle(ポッドキャッ
スル)」を 2011 年 10 月 12 日に一般公開し、実証実験を
開始する。
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2011/pr20111012/pr20111012.html
日本語版 http://podcastle.jp
英語版 http://en.podcastle.jp
【食品包装材】
微小な傷なら自己修復する酸素ガスバリアフィルム 粘土
を用いた食品包装材の実用化へ(2011.10.11)
産総研、大和製罐(株)
両者は共同で、高い酸素ガスバリア性を持つ透明フィルム
を開発した。 産総研は、粘土膜「クレースト ®」の開発
以来、大学などの研究機関や民間企業との共同研究によっ
て、実用化に取り組んできた。2010 年 5 月には産総研コ
ンソーシアム「Clayteam」を設立し、産学官連携をさらに
推進し、開発を加速・展開している。大和製罐は、従来の
【強相関電子の閉じ込め】
世界で初めて強相関電子を 2 次元空間に閉じ込めることに
成功(2011.10.12)
東京大学
東京大学の研究グループは、世界で初めて、人工的に強相
関電子を2次元空間に閉じ込めることに成功した。成功の
鍵は、酸化物を原子一個レベルの非常に薄い層に「作る」
包装容器製品に加え、軟包材などへの展開を行う上で、産
総研の粘土膜技術に注目し、共同研究を開始した。 今回、
ガスバリア層に用いる粘土やプラスチックの種類、それら
の混合比、塗布厚み、塗布方法や条件などを検討し、さら
に、ガスバリア層の自己修復性という新しい現象を見いだ
して、食品包装用フィルムの開発に至った。
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2011/pr20111011/pr20111011.html
技術と、放射光による高精度の分光法で電子を「見る」技
術。研究グループは、半導体中の電子を量子化する手法と
して知られる量子井戸構造を酸化物において実現し、量子
井戸中に2次元的に閉じ込められた強相関電子の振る舞い
を調べた。これは、
強相関電子のコントロールが可能になっ
たことを意味する。今後、電子の豊かな性質が次々と見ら
れる可能性があり、室温超伝導体の実現や、半導体に代わ
る電子素子の開発に繋がる、新しいエレクトロニクスへの
第一歩。
http://www.u-tokyo.ac.jp/ja/todai-research/ut-top-ja/corralling-electrons-in-2d/
【糖尿病、再生医療】
成体の神経幹細胞を用いた、糖尿病の再生医療技術の開発
患者自身の幹細胞を疾患部位へ移植する再生医療を目指す
(2011.10.7)
産総研、米国ソーク研究所
両者は共同で、ラットを用いた動物実験により、成体の神
経幹細胞を膵臓に移植する糖尿病の再生医療に有効な方法
を開発し、その治療効果を確認した。 まず基礎研究過程で、
神経細胞は膵臓細胞と同じように、本来はインスリンを産
生する能力を持っていること、および、その活性化のメカ
ニズムを明らかにした。神経細胞の元となる成体の神経幹
PEN November 2011
45
細胞は、困難な手術を伴う脳内からだけでなく、比較的採
開発を行った。今後、試験販売およびモニタリングの結
取が簡単な鼻嗅球からも樹立・培養することができる。そ
果を踏まえ、オフィス・工場、学校などの法人を対象に、
こで、糖尿病ラットから成体神経幹細胞を採取・樹立し、
2012 年 4 月月より正式販売を行う予定。
インスリンを産生しやすい状態に導いてから糖尿病ラット
http://www.toyota-tsusho.com/press/2011/10/20111006-3855.html
の膵臓に移植すると、継続的な血糖値低下をもたらすこと
を確かめた。遺伝子導入などを行わずに、自家細胞を用い
て、
より安全で自然な再生医療へとつながる可能性がある。
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2011/pr20111007/pr20111007.html
【胆汁酸輸送体の構造解析】
コレステロールを調節するたんぱく質の立体構造を世界で
初めて解明 副作用の少ない、高脂血症や動脈硬化症の治
療薬の開発へ(2011.10.6)
【EV 用リチウムイオン電池】
EV 用リチウムイオン電池の供給契約を締結 4 年間で 8 万
JST 課題達成型基礎研究の一環として、京都大学と英国
台分以上を供給(2011.10.6)
オックスフォードシャーの放射光施設 DIAMOND の研究者
パナソニック(株)
、テスラモーターズ
らは、高脂血症の治療薬の標的である「胆汁酸輸送体」の
パナソニックとカリフォルニア州パロアルト市のテスラ
立体構造をX線結晶構造解析によって世界で初めて解明し
は、自動車用リチウムイオン電池の供給契約を締結した。
た。血液中での過剰なコレステロールは肝臓で胆汁酸に変
本契約に基づき、パナソニックは、今後 4 年間でテスラが
換され、脂肪の吸収を助けるために胆汁として消化器中に
生産する自動車 8 万台分以上のリチウムイオン電池を供給
分泌される。一部の胆汁酸は腸から排泄されるが、大半は
する。これにより、テスラは、既に 6,000 台を超える予約
小腸で吸収され、血液を通して肝臓に戻され再利用され
分を含め、2012 年に量産体制に入る「モデル S」の生産
る。胆汁酸の小腸での再吸収を行う膜たんぱく質が胆汁酸
に十分な電池供給量を確保するとともに、
「モデル S」の
輸送体で、本研究グループは今回、バクテリア由来の胆汁
目標とするコストと利益の実現に目処をつけることができ
酸輸送体の構造を胆汁酸の結合した形で解析し、胆汁酸が
た。パナソニックとテスラは、次世代電池の開発および
結合する結合領域を原子レベルで明らかにすることに成功
EV 市場の拡大を加速するため、これまで複数年に亘り協
した。
力関係を築いてきた。2009 年に両社は最初の供給契約を
胆汁酸輸送体と胆汁酸の結合を阻害すると、小腸から肝臓
交わし、2010 年には、協力関係の強化と EV 産業の成長
に循環する胆汁酸の量が減るために、コレステロールはさ
を実現するべく、パナソニックがテスラに対し 3,000 万ド
らに胆汁酸に変換され、血中のコレステロールの濃度が下
ルを出資した。パナソニックが供給するリチウムイオン電
がることが分かっている。このような阻害剤は血中に入ら
池は、ニッケル系正極を用いた独自技術により、高エネル
ないため、副作用の少ない高脂血症薬として注目されてい
ギー密度と、業界トップクラスの性能を実現している。な
る。今回解析したバクテリアの輸送体は、ヒトの輸送体と
おテスラは、自社の EV 生産に加え、EV 用の電池パック
アミノ酸配列が似ていて胆汁酸の結合特性も似ていること
とパワートレインをトヨタ自動車やダイムラーなど他の自
から、得られた構造情報をもとに、腸内のほかのたんぱく
動車メーカー向けにも製造している。
質の働きに影響しないような新しい高脂血症薬として開発
http://panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn111011-2/jn111011-2.
されることが期待される。
html
【窓用断熱フィルム】
ナノテク素材を使用した「窓用遮熱・断熱フィルム」を販
売 震災に伴う電力不足の軽減に貢献(2011.10.6)
豊田通商(株)
同社は、ナノテクノロジー素材を使用した世界初「窓用
遮熱・断熱フィルム」の試験販売を、11 月より開始する。
本製品は、同社が 2010 年 8 月に出資した、ナノテクノ
ロジーを活用した次世代光学材料の製造販売を行うベン
チャー企業、グランデックス株式会社と、機能性フィルム
の製造販売を行う東洋包材株式会社が製品化に向けた共同
46
科学技術振興機構(JST)、京都大学
PEN November 2011
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20111006-2/index.html
【X 線自由電子レーザー】
我が国初の X 線自由電子レーザー施設 SACLA で最初の利
用研究課題の募集開始(2011.10.5)
高輝度光科学研究センター、理化学研究所(理研)
理研が整備し、現在調整運転を進めている X 線自由電子
レーザー施設 SACLA(さくら)の利用者への供用を 2012
年 3 月より開始する。これに先立ち、高輝度光科学研究
センターは、SACLA 利用者の募集を 10 月 6 日より開始
する。SACLA は創薬をはじめとするライフサイエンス分
野や蓄電池や太陽電池開発などに代表されるナノテクノロ
ジー・材料分野といった幅広い科学技術分野において、革
新的な成果を諸外国に先駆けて創出することが期待される
研究基盤で、隣接する大型放射光施設 SPring-8 と同様「特
定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律」の対象に
位置づけられている共用施設。高輝度光科学研究センター
は、SACLA で行われる研究課題を公募するとともに、公平・
公正な審査を経て選定された課題の利用者が円滑に実験・
測定を行うことができるよう技術支援を行う。
http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/press_release/2011/111005
【たんぱく質による光エネルギー変換】
たんぱく質の光エネルギー変換の仕組みを解明 新エネル
ギー源の創出に期待(2011.10.5)
科学技術振興機構(JST)
、静岡大学
JST 課題達成型基礎研究の一環として、静岡大学は、生体
内で光エネルギー変換を起こす機能がないヒトの薬物輸送
たんぱく質(ヒト血清アルブミン)に着目し、低分子化合
物との複合体にして光照射することによって、電子伝達分
子を効率よく生成する機能を持つことを発見した。今回、
この人工のたんぱく質複合体を対象に、電子スピン共鳴法
を用いて電子伝達分子の磁気的な性質を観測した。その結
果、「生成した電子伝達分子の構造(立体配置)が、電子
軌道である電子雲の重なりを大きく抑制し、もとの安定な
分子に戻らないようにする」様子を捉えることに成功し、
たんぱく質で人工的に光エネルギー変換が起こる仕組みを
解明した。今回の成果は、安価で容易に手に入るたんぱく
質が、エネルギー生産源として新たな可能性を持つことを
示しただけでなく、たんぱく質の光エネルギー変換の仕組
みを初めて実証で明らかにしたもの。このような、電子を
伝達する機能を測定する新たな手法の登場が、多様な生体
機能の起源解明や次世代エネルギー変換システムの構築に
向けた重要な一歩になるものと考えられる。今後、人工光
合成の実現に必要な植物光合成のエネルギー変換の根源的
な仕組みの解明や、たんぱく質を材料とする太陽電池や光
触媒などのクリーンな新エネルギー源の創出につながるこ
とが期待される。
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20111006-1/index.html
PEN November 2011
47
【新型電界放出形走査電子顕微鏡】
日本電子株式会社
《主な仕様》
二次電子像分解能 0.8 nm(加速電圧 15kV 時)、1.2 nm(加速電圧 1 kV 時)
走査電子顕微鏡は、あらゆる業種の研究部門から製造現場
分析時 3.0 nm(加速電圧 15 kV、WD10mm、
まで多岐にわたり使用されています。JSM-7800F は新開
照射電流 5nA)
発のスーパーハイブリッド対物レンズを搭載することによ
倍率 × 25 ~ 1,000,000
り、高分解能での観察と高速・高精度の元素分析を両立し
像の種類 二次電子像,反射電子像
た、次世代型の電界放出形走査電子顕微鏡で、幅広いニー
加速電圧 0.01 ~ 30 kV
ズに対応可能な究極の解析ツールです。
照射電流 最大 200 nA
電子銃 インレンズサーマル電子銃
対物レンズ スーパーハイブリッドレンズ
試料ステージ 5軸モータ駆動ステージ
試料移動範囲 X - Y:70 mm × 50 mm、
Z:2.0 ~ 25 mm
傾斜: ‐ 5 ~ 70°
回転:360°エンドレス
http://www.jeol.co.jp/products/product/jsm-7800f/index.htm
《主な特長》
・究極の分解能
スーパーハイブリッド対物レンズにより、0.8nm (15kV)、
1.2nm (1kV) の高分解能を実現しています。
・高速・高精度元素分析
大電流でも常に最適な最小電子プローブ径が得られ、分
析精度や元素マップの品質を落とさずに短時間で分析が
できます。
・高安定の電子プローブによる安定した高性能データ
長寿命で安定した電子プローブが得られるインレンズ
サーマル電子銃を搭載、電子プローブが長時間安定して
いるため観察は勿論 EDS、WDS、EBSD や CL 等の各種分
析も、いつでも高性能データが得られます。
・試料の制約が少なく、どのような試料でも高性能
スーパーハイブリッド対物レンズは磁性材料を高倍率で
観察・分析でき、また非導電性試料の観察も容易です。
48
PEN November 2011
新材料:グラフェン類似物性、鉄ニ
クタイド構造、SrMnBi2、ドーピング、
ドレスデン高磁場研究所
Researchers Discover Material With
Graphene-Like Properties
http://www.sciencedaily.com/
releases/2011/10/111014095627.htm
Li イオン電池:充電時間短縮、液体
電解質、多孔質電極、機械化学技術、
低コスト電池、コンピテンス E プロ
ジェクト、カールスルーエ工科大学
Inspired by trees, researchers build
豊蔵レポートより
faster charging batteries
http://www.rdmag.com/News/2011/10/EnergyStorage-Chemistry-Inspired-by-trees-researchersbuild-faster-charging-batteries/
金属ナノ多孔質材料:ニッケル、触
媒材料、ブロック共重合体、自己組
織化、テンプレート化された無電解
メッキ法
Nanoporous metals: Straight from
the template
http://www.nanowerk.com/news/newsid=23073.php
シリコンナノ結晶:フォトルミネッ
センス、量子収率、キャリア増倍、
量子閉じ込め、バンド間遷移
Step-like enhancement of
luminescence quantum yield of
silicon nanocrystals
http://www.nature.com/nnano/journal/vaop/
ncurrent/full/nnano.2011.167.html
健康リスク:共同調査報告書、工業
ナノ材料の安全性、欧州委員会共同
研究センター(JRC)
、欧州科学アカ
デミー諮問委員会(EASAC)
Joint EASAC-JRC present state-of-theart report on safety of nanomaterials
http://www.nanowerk.com/news/newsid=23097.php
PEN November 2011
49
電子デバイス材料:研究進展レビュー、CNT、グラフェン、
米国国家ナノテクノロジー戦略:連邦政府機関向けガイダ
電子物性、電気デバイス特性
ンス、EHS 研究の戦略、科学的情報(リスク管理、製品使
Graphene Versus Carbon Nanotubes in Electronic Devices
用、アウトリーチ)
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/adfm.201101241/abstract;jsessionid=1
U.S. Government Releases Environmental, Health, and
C86FB1747AB6194AB822F0BDC9A32C0.d02t04
Safety Research Strategy for Nanotechnology
http://www.sciencedaily.com/releases/2011/10/111020122437.htm
http://www.nano.gov/node/695
ナノ材料の定義:EC、一貫性のある規制策、ハザードとリ
スクの考慮、定義の見直予定(2014 年)
Adoption of the new definition of nanomaterials by the
政府助成金支援:持続可能性、社会と自然界の統合システ
European Commission: first reactions and analyses
ム理解、NSF、研究調整ネットワークプログラム
http://www.nanowerk.com/news/newsid=23122.php
National Science Foundation Makes First Awards in
European Commission adopts common "nanomaterial"
Sustainability Research Coordination Networks Program
definition
http://www.nsf.gov/news/news_summ.jsp?cntn_id=122028&org=NSF&from=news
http://www.nanowerk.com/news/newsid=23094.php
http://ec.europa.eu/environment/chemicals/nanotech/pdf/commission_
recommendation.pdf
貿易訴訟:米国太陽電池メーカー(7 社)、米国市場、中
国非難、破産ソーラー企業への連邦政府の融資保証、政治
マイクロチップ:未来像、自己再配線、正(負)帯電粒子、
リダイレクト、デバイスの再構成、米国ノースウェスタン
大学
論争
U.S. Solar Panel Makers Say China Violated Trade Rules
http://www.nytimes.com/2011/10/20/business/global/us-solar-manufacturers-toask-for-duties-on-imports.html?_r=1&ref=energy-environment
Future computers could rewire themselves
http://www.bbc.co.uk/news/technology-15351071
CNT:ナノ材料製品、市場規模、市場見通し、技術集約型
ナノ材料のリスク: REACH 実施プロジェクト報告書、生
命科学、労働衛生、リスク評価、暴露評価、ハザード、消
製品(需要)、市場ドライバー
Global carbon nanotubes market - industry beckons
http://www.nanowerk.com/spotlight/spotid=23118.php
費者保護
REACH Implementation Projects on Nanomaterials
publishes final reports
シャープの太陽電池戦略:結晶 Si 型セル(5 年以内に効率
http://www.nanowerk.com/news/newsid=23106.php
25%)、技術で差別化
太陽電池メーカーに聞く、今後の戦略
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20111020/199583/
次 世 代 リ ソ グ ラ フ ィ: マ ス ク レ ス リ ソ グ ラ フ ィ、 サ ブ
20nm 技術、JSR Micro 、CEA-Leti、IMAGINE プログラム
JSR Micro Joins CEA-Leti in Project to Develop Sub-20nm
超微小密閉空洞:マイクロキャビティ、ナノ多孔質陽極酸
Next-Generation Lithography Materials and Processes
化アルミナ薄膜、円筒状ナノ細孔(直径 15-20nm、アス
http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=43661
ペクト比 100 以上)、IMEC
ナノ加工技術:生産コスト減、ポリマー、ガラススタンプ、
エッチング技術、ナノサイズパターン、超イオンガラス
New wafer-level MEMS packaging technology using
nanoporous alumina membranes
http://www.nanowerk.com/news/newsid=23135.php
Research use glass to imprint lab-on-chip sensors
http://www.eetimes.com/electronics-news/4229857/Researchers-use-glass-toimprint-lab-on-chip-sensors
ナノ粒子のリスク:ナノ材料、化粧品、治療法
Is That Face Cream Safe?
http://www.newhavenindependent.org/index.php/archives/entry/is_that_face_
cream_safe_your_guess_is_as_good_as_your_dermatologists/
50
PEN November 2011
食品貯蔵寿命:気密包装、品質管理、レーザービーム、保
センサー:カーボンナノスプリング、義肢、感圧、伸縮性
護ガス測定(酸素、二酸化炭素)
Skin-like sensor flexible enough for prosthetic limbs
Laser Makes Sure Food Is Fresh
http://news.cnet.com/8301-27083_3-20124878-247/skin-like-sensor-flexible-
http://www.sciencedaily.com/releases/2011/10/111020084821.htm
書籍:Steven P. Jobs 氏、伝記、サイモン&シャスター社
Jobs Tried Exotic Treatments to Combat Cancer, Book Says
http://www.nytimes.com/2011/10/21/technology/book-offers-new-details-of-jobscancer-fight.html?_r=1&ref=technology
enough-for-prosthetic-limbs/
ナノ粒子:セチルトリメチルアンモニウムブロミドの合成、
自己組織化、シード媒介成長、quasispherical 金ナノ粒子
(QAuNPs)、サイズ調整可能な単分散 QAuNPs(20 to 150
nm)
Synthesis and Self-Assembly of Highly Monodispersed
Quasispherical Gold Nanoparticles
プリンテッドエレクトロニクス:プリント強誘電性ポリ
http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/la203143k
マー、揮発性メモリ、プロトタイプ生産、スマートタグ
Thin Film, PARC tip printed 'CMOS' memory
http://www.eetimes.com/electronics-news/4229933/Thin-Film-PARC-printedCMOS-memory
スピントロニクス : 磁性酸化物の設計、反強磁性マンガン
酸化物超格子、ランダム分布元素(ランタン、ストロンチ
ウム)
、局所原子構造を制御、原子層堆積、アルゴンヌ国
人工光合成:植物・微生物、自然のプロセスに学ぶ設計原
理(光子の効果的な捕獲と電子励起エネルギーの移動)
、
自然光捕集アンテナ複合体、人工発色団、EU 第七次フレー
ムワーク計画(FP7)
立研究所、NIST
Spintronics interfaces subject of new NIST and Argonne
study
http://www.electroiq.com/articles/stm/2011/10/spintronics-interfaces-subject-ofnew-nist-and-argonne.html
Clean energy? Mother Nature still knows best
http://cordis.europa.eu/fetch?CALLER=EN_NEWS&ACTION=D&SESSION=&R
CN=33948
技術革新:欧州イノベーションサミット、経済危機からの
脱出、障害物(イノベーションシステムの断片化)
、真の
ナノ粒子のリスク:潜在的毒性、環境暴露、ハイパワー透
過型電子顕微鏡、銀ナノ粒子の動的挙動、バックグラウン
ドレベルの存在、環境衛生と安全性への懸念、定義
単一市場
Stronger innovation for a stronger Europe
http://cordis.europa.eu/fetch?CALLER=EN_NEWS&ACTION=D&SESSION=&R
CN=33952
Nanoparticles and Their Size May Not Be Big Issues
http://www.sciencedaily.com/releases/2011/10/111024133026.htm
CIGS 薄 膜 太 陽 電 池:MiaSole 社、 効 率( 大 量 生 産 品 で
13%)
CIGS 薄膜太陽電池:ニューヨーク州立大学オルバニー校、
CIGS PV manufacturer MiaSole claims 13% module
ナノスケール科学工学カレッジ(CNSE)
、太陽エネルギー
efficiencies in volume production
開発センター、CNSE グリーンエネルギーイニシアティブ、
http://www.pv-tech.org/news/cigs_pv_manufacturer_claims_13_module_
次世代薄膜太陽電池、パイロットラインの提供、官民パー
efficiencies_in_volume_production
トナーシップ
UAlbany NanoCollege launches Solar Energy Development
Center to accelerate commercialization of innovative
photovoltaics technologies
http://www.nanowerk.com/news/newsid=23162.php
政府助成金支援:DOE、6000 万ドル(3 年間)、SunShot
イニシアチブの一環、cutting-edge Concentrating Solar
Power (CSP) 技術、集光熱利用
Department of Energy to Invest $60 Million to Develop
Innovative Concentrating Solar Power Technologies
http://energy.gov/articles/department-energy-invest-60-million-develop-innovativeconcentrating-solar-power
PEN November 2011
51
評価技術:表面・界面、大気中環境下、XPS、セル窓、グラフェ
ロシアのハイテク開発:Sistema JSFC(ロシア最大の金融
ン酸化膜、機械的強度、極薄メンブレン
会社)
、国家原子力公社ロスアトム、契約締結、ハイテク
Graphene membranes open a new window into surface
クラスター、国家ハイテクイノベーションプロジェクト、
chemistry
Sarov テクノパーク、核技術、宇宙技術、エネルギー効率
http://www.nanowerk.com/spotlight/spotid=23167.php
と省エネルギー技術、ナノ製品開発
Sistema signs cooperation agreement for innovation
学会トピックス:環境発電、熱電ナノコンポジット材料、
programmes
http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=43724
静電振動エネルギー利用、RF エネルギー使用、超低消費
電力 CMOS 実装、IEDM
IEDM seeks to reap the energy harvest
量子ドット:安定性、蛍光発光、生物細胞画像、安定性、コー
http://www.eetimes.com/electronics-news/4227648/IEDM-seeks-energy-harvest
ティング
Quantum dots may be less stable than thought
http://nanotechweb.org/cws/article/tech/47653
形 状 記 憶 材 料 開 発: チ タ ン・ ニ ッ ケ ル、 銅 ベ ー ス、
EUREKA、ヨーロッパ
Cheaper alloy material in the pipeline
http://cordis.europa.eu/fetch?CALLER=EN_NEWS&ACTION=D&SESSION=&R
CN=33958
衣類組込み電子機器:綿繊維、有機電気化学トランジスタ、
金ナノ粒子、導電性ポリマー
Researchers create transistors from natural cotton fibers
http://www.nanowerk.com/news/newsid=23194.php
ソーラーグレード多結晶シリコン:米国の生産量(10,785
Metric Tons、Q2 of 2011)
、太陽エネルギー産業協会、ド
イツとイタリアの市場低迷、スポット価格下落(40 ドル
以下 /Kg)
Solar Grade Polysilicon Production in Q2: 10,785 Metric
Tons
超電導材料:イットリウムバリウム酸化銅、システム設計
パラメーター、コンピュータモデル、材料設計変数、普及
の障害、クエンチ保護
New Approach to Overcome Key Hurdle for Next-
http://www.greentechmedia.com/articles/read/Solar-Grade-Polysilicon-Production-
Generation Superconductors
in-Q2-10785-Metric-Tons/
http://www.sciencedaily.com/releases/2011/10/111027112901.htm
新生体材料:セルロースナノファイバー、高分子複合材料
学会トピックス:カーボン材料 Tr、40nm ゲート長、
RF 性能、
作成原料、生分解性、軽量構造材料、高い機械的強度
カットオフ周波数(280 GHz)、CNT、サブ 10 nmTr、電
Using nanocellulose to create novel composite materials
流密度(2.41 ミリアンペア / μ m)、IEDM
http://www.nanowerk.com/news/newsid=23179.php
IBM researchers to report carbon feats at IEDM
http://www.eetimes.com/electronics-news/4230162/IBM-researchers-to-reportcarbon-feats-at-IEDM
地熱発電:マッピング、Google Earth、設備容量(石炭発
電所の 10 倍)
、地熱資源調査会調査(2011 年)
、資源ポテ
ンシャル
Geothermal Mapping Report Confirms Vast Coast-To-Coast
Clean Energy Source in U.S.
http://www.sciencedaily.com/releases/2011/10/111025135936.htm
PV プロジェクト支援融資:米国エネルギー省、債務保証
プログラム、First Solar(21 億ドル)、Prologis and NRG(14
億ドル)、SunPower(12 億 3700 万ドル)
Down to the deadline: DOE awards final loan guarantees
of for 1.78GW of PV projects
http://www.pv-tech.org/news/down_to_the_deadline_doe_awards_final_loan_
guarantees_of_4.74b_for_1.78gw_o
52
PEN November 2011
ナノ流体:Fe3O4 ナノ粒子、シングルドメイン超常磁性、
グリッド:国営台湾電力、太陽光発電 5.92MW システム(高
コロイド懸濁液、磁界印加、磁性粒子の鎖状構造、冷媒、チッ
雄)、グリッド接続
プ冷却
Taiwan’s largest solar project connected to grid
"Intelligent" nanofluids could cool computer chips
http://www.pv-tech.org/news/taiwans_largest_solar_project_connected_to_grid
http://nanotechweb.org/cws/article/tech/47381
グリッド:研究開発コンソーシアム、東京大学、企業
オルバニー・ナノエレクトロニクスセンター:ニューヨー
東京大学、NEC など「デジタルグリッドコンソーシアム」
ク州立大学オルバニー校、ナノスケール科学工学カレッジ、
を設立、次世代電力網の実現へ第一歩
研究ハブ拡張、民間投資、TSMC 社、GlobalFoundries 社、
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20111004/198909/?ST=energytech
IBM、インテル社、サムスン
Nanocollege campus will grow to 3,300 workers
http://www.bizjournals.com/albany/print-edition/2011/09/30/nanocollegecampus-will-grow-to-3300.html
人材育成:交換留学・インターンシッププログラム、早稲
田大学と Suplec 大学、日産とルノー
日産、ルノー、日仏の大学など 6 者、10 月 1 日から新し
ナノメディシン:5 つの技術革新、肺癌の早期スクリーニ
い人材育成プログラム「ZCLP」を開始
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20111003/198889/
ング、金ナノ粒子のインフルエンザテスト、サンディア国
立研究所の癌ハンター、細胞内側のプロセス測定、脊髄の
修復
The Smallest Revolution: 5 Recent Breakthroughs in
Nanomedicine
http://blogs.scientificamerican.com/guest-blog/2011/09/30/the-smallestrevolution-five-recent-breakthroughs-in-nanomedicine/
ナノ加工技術:SPERISE、プラズマ反応性イオン、合成(ボ
トムアップ)
、エッチング(トップダウン)
、合成とエッチ
ングの統合、メカニズム解明、3D シリコンナノ構造配列、
高効率太陽電池
New nanostructure synthesis process set to boost solar
cell efficiency
量子ドット:太陽電池、スプレー式、低コスト生産、無機
http://www.nanowerk.com/spotlight/spotid=22931.php
配位子、不動態化
Quantum Dot Solar Cell Improvements Show Remarkable
Potential to Balance Solar Performance & Cost
グラフェン研究拠点:英国マンチェスター大学、工学物理
http://uk.ibtimes.com/articles/20110930/quantum-dot-solar-cell-improvements-
科学研究評議会、経済的ドライバ、科学への投資策
show-remarkable-potential-balance-solar-performance-cost.htm
UK creates GBP 50 million "Graphene Global Research and
Technology Hub"
http://www.nanowerk.com/news/newsid=22941.php
触媒:設計・テスト方法、数理的アプローチ、不斉触媒、
関連触媒ライブラリ
New method developed to design and test catalysts
プ ロ ジ ェ ク ト 成 果:MULTIFLEXIOXIDES プ ロ ジ ェ ク ト、
http://www.sciencedaily.com/releases/2011/09/110929144628.htm
FP6, 透明性と柔軟性、高性能透明ディスプレイ、ナノ構造
酸化物、セラミック薄膜、酸化亜鉛
Moving away from silicon technology
人工葉:太陽光、水分解、水素製造、シリコン薄層、コバ
http://www.nanowerk.com/news/newsid=22938.php
ルト系触媒、ニッケル・モリブデン・亜鉛合金
Artificial leaf’ makes fuel from sunlight
http://web.mit.edu/newsoffice/2011/artificial-leaf-0930.html
PEN November 2011
53
リスク:ナノテクノロジーの不確実性、ライフサイクル、
中国のエネルギー政策:中国のエネルギーと気候変動プロ
環境・健康影響、研究戦略、優先順位付け、意思決定モデ
ジェクト(CECP)
、MIT、清華大学、中国エネルギー・環
ル
境および経済研究所、中国のエネルギー経済モデル
A decision-directed approach for prioritizing research
Introducing the China Energy and Climate Project
into the impact of nanomaterials on the environment and
http://web.mit.edu/newsoffice/2011/china-energy-project.html
human health
http://www.nature.com/nnano/journal/vaop/ncurrent/full/nnano.2011.163.html
太陽光発電市場:成長率(年率 65%、2005 ~ 2010 年)、
自己修復材料:微小血管系、ポンピング機構、治癒剤圧送、
自己治癒反応、再現性拡張
Pressurized Vascular Systems for Self-Healing Materials
買手市場、優遇措置と補助金、低価格化、真実と事実の違
い、隠れた真実
Reality Check: The Changing World of PV Manufacturing
http://www.renewableenergyworld.com/rea/news/article/2011/10/reality-check-
http://www.sciencedaily.com/releases/2011/09/110929122904.htm
the-changing-world-of-pv-manufacturing
ポ リ シ リ コ ン 製 造:QSTec 社、 カ タ ー ル 北 東 部、 規 模
2011 年ノーベル化学賞:ダニエル・シェヒトマン氏(イ
8000 MT/Y、2013 年末完成予定
スラエル工科大学)、準結晶、原子配列、非並進対称性(非
Qatar Solar Technologies plans US$1bn polysilicon plant;
周期性)、秩序性
operations to commence in 2013
2011 Nobel Prize in Chemistry: 'Quasicrystals' Once
http://www.pv-tech.org/news/qatar_solar_technologies_plans_us1bn_polysilicon_
Thought Impossible Have Changed Understanding of Solid
plant_operations_to_commen
Matter
http://www.sciencedaily.com/releases/2011/10/111005080232.htm
圧電効果デバイス:バイオメディカルデバイス、ポリフッ
化ビニリデン(PVDF)
、呼吸気流利用、電気エネルギー生
成
Electricity from the nose: Engineers make power from
human respiration
http://www.nanowerk.com/news/newsid=22944.php
スーパーキャパシタ:導電性高分子、CNT 溶液、浸漬、充
電容量増加、スタンフォード大学
Dipping capacitors and batteries in nanotubes could
improve capacity
http://www.engadget.com/2011/10/06/dipping-capacitors-and-batteries-innanotubes-could-improve-capa/
ナノテクノロジーの倫理:責任ある開発、健全なガバナン
ス、哲学的・倫理的な観点、軍民併用、人権と責任、平和
Steve Jobs 氏死去:Apple 社、声明発表、米国時間 2011
と正義、対話と開発の断片化
年 10 月 5 日
Nanotechnology for Peace
Statement by Apple’s Board of Directors
http://www.nanoforum.org/nf06~modul~showmore~folder~99999~scc~news~sc
http://www.apple.com/pr/library/2011/10/05Statement-by-Apples-Board-of-
id~4249~.html?action=longview&
Directors.html
ナ ノ テ ク ノ ロ ジ ー 応 用 と 用 語: 医 療 診 断 と 治 療、ISO/
TS80004-7:2011
ISO releases Nanotechnolog y Vo cabulary Part 7:
Diagnostics and therapeutics for healthcare
http://www.nanowerk.com/news/newsid=22958.php
54
PEN November 2011
ナノ粒子:SiO2、窓用遮熱・断熱フィルム、グランデッ
クス社(光学材料)、東洋包材社(機能性フィルム)
SiO2 ナノ粒子を使った窓用遮熱・断熱フィルム、豊田通
商が試験販売
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20111007/199071/
CNT:垂直配列、三次元アセンブリ、CVD 法、非線形電気
Li イオン電池市場:中国、12 次 5 カ年計画、新エネルギー
的特性
技術促進、生産量(2010 年、世界の 30%)
、急成長、豊
Carbon nanotube junction arrays]
富なリチウム鉱石埋蔵(江西省宜春市、四川、青海、チベッ
http://www.nanowerk.com/spotlight/spotid=22982.php
ト)
China's lithium-ion battery growth trends
http://www.electroiq.com/articles/stm/2011/10/chinas-lithium-ion-battery-growth-
日本の半導体産業の競争力:主要な技術分野選択、再浮上、
trends.html
ルネサスエレクトロニクス元会長山口純史氏
Japan can rise again, says exec
http://www.eetimes.com/electronics-news/4229282/IEF-Japan-rise-again
人材育成 : ナノ安全性、タイ国立ナノテクノロジーセン
ター、UNITAR、共同契約
NANOTEC partners UNITAR to promote nanotechnology
太陽光発電市場:技術動向、c-Si PV、薄膜市場シェア減
少、生産拠点(中国、台湾)
、固定価格買取制度主導型市場、
safety awareness in Thailand
http://www.nanowerk.com/news/newsid=23004.php
低コスト化の弊害、競争的ダイナミックス
PV News Annual Data Collection Results: 2010 Cell,
Module Production Explodes Past 20 GW
http://www.greentechmedia.com/articles/read/pv-news-annual-data-collectionresults-cell-and-module-production-explode-p/
米国の太陽光発電市場拡大政策:州政府(再生可能エネル
ギー・ポートフォリオ基準)、連邦政府(投資税控除、キャッ
シュ・グラント、減価償却の優遇、融資保証)
多様性が支える米国の太陽電池市場、いつか欧州の主要国
に追い付く日が来る
太陽光発電の技術予測:結晶シリコン技術、薄膜技術、
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20111012/199198/?ST=PV
c-Si 太陽電池
($1.00/Wp ~ $1.50/Wp)
、
薄膜太陽電池(0.50
ドル /Wp ~ 1.50 ドル /Wp)
、c - Si の継続的優位性
PV technology forecast: Crystalline, crystalline, and more
ナノ材料リスク:EC、消費者安全科学委員会、化粧品、健
crystalline
康リスク評価、ガイダンス準備要請
http://www.electroiq.com/articles/pvw/2011/10/pv-technology-forecast-
European Commission requests guidance on the safety
crystalline-crystalline-more-crystalline.html
assessment of nanomaterials in cosmetics
http://www.nanowerk.com/news/newsid=23022.php
ナノ粒子:計測技術、形状、面積、凝集、コロイダルシリ
カ
薄膜シリコン太陽電池:シンガポール、南洋理工大学、
How to Count Nanoparticles
A*STAR マイクロエレクトロニクス研究所、アモルファス
http://www.sciencedaily.com/releases/2011/10/111010092858.htm
シリコン、ナノテクスチャ構造
Advanced nanostructure technology makes a highly
圧力センサ:IMEC、ポリ - SiGe、ピエゾ抵抗式圧力セン
efficient and yet cheaper silicon solar cell
http://www.a-star.edu.sg/?TabId=828&articleType=ArticleView&articleId=1537
サ、CMOS- MEMS モノリシック集積化、Cu- バックエンド
CMOS 技術、高感度化
Imec demonstrates CMOS integrated poly-SiGe
piezoresistive pressure sensor
http://www.nanowerk.com/news/newsid=22999.php
NSF 助 成 金: ナ ノ キ ャ ラ ク タ リ ゼ ー シ ョ ン 施 設、 イ ン
ディアナ州立大学ブルーミントン校、X 線光電子分光装置
(XPS)、表面化学
NSF grant to fund instrumentation for IU Nanoscale
Characterization Facility
http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=43602
PEN November 2011
55
大口径ウエハ対応:IMEC 450mm 径ウエハ、クリーンルー
分析評価技術:X 線ナノ蛍光分光法、MC- Si 太陽電池、粒
ム、UV 露光装置、経済の不確実性、資金調達
内転位、金属不純物、銅と鉄、クラスター、不均質分散ナ
IMEC plans 450-mm wafer fab module for 2015
ノスケール欠陥
http://www.eetimes.com/electronics-news/4229398/IMEC-plans-450-mm-wafer-
Small defects mean big problems for industrial solar cells
fab-module-for-2015
トンネル接合太陽電池:Silevo 社、Triex Technology 社、
ハイブリッド技術、Si 結晶基板、パッシベーション薄膜、
半導体酸化物、変換効率(20 ~ 21%)
Silevo comes out of stealth with “breakthrough” hybrid
crystalline, thin-film PV module technology
http://www.pv-tech.org/news/silevo_comes_out_of_stealth_with_breakthrough_
http://nano.anl.gov/news/highlights/2011_solar_cell_defects.html
量子ドット:発光ダイオード、高解像度 4 インチディス
プレイ、転写印刷技術、三星高度先端技術研究所(SAIT)、
ケンブリッジ大学
Quantum-dot LED display made via transfer printing
http://www.electroiq.com/articles/stm/2011/10/quantum-dot-led-display-madevia-transfer-printing.html
hybrid_crystalline_thin_film
技術移転:米国立研究所、技術移転オフィス、CRADAs(共
同研究開発契約)
、施設利用契約
Tapping Our Commercial Potential: Work with the
National Labs
セマテックの R&D:15nm ノード以降、単層ドーピング
技術、導電性フィラメント、ストレス誘起リーク電流、
BeO 薄膜( on Si and GaAs)、3 - D 相互接続、IEDM
Sematech researchers to probe 15-nm challenges at IEDM
http://www.eetimes.com/electronics-news/4229719/Sematech-researchers-to-
http://energy.gov/articles/tapping-our-commercial-potential-work-national-labs
probe-15-nm-challenges-at-IEDM
自己組織化:有機電子デバイス、共役ポリマー(CP)、単
イベント:台湾でアジア太平洋経済協力ワークショップ、
一分子分光法、電子のエネルギー輸送、CP チェーン
Underwriters Laboratories 、太陽光発電の信頼性と耐久
Self-assembly of highly ordered conjugated polymer
性
aggregates with long-range energy transfer
Asia’s solar industry leaders exchange views at APEC
http://www.nature.com/nmat/journal/vaop/ncurrent/abs/nmat3127.html
workshop
http://www.pv-tech.org/news/asias_solar_industry_leaders_exchange_views_at_
apec_workshop
多 層 グ ラ フ ェ ン: 電 子 特 性、 三 層 グ ラ フ ェ ン(ABA と
ABC)
、層の重なり順、バンドギャップ
Stacks open up bandgap
太陽光発電市場:需給バランスの崩壊、急激な価格下落、
http://nanotechweb.org/cws/article/tech/47464
高変換効率化で活路
厳しい市況が続く太陽電池業界
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20111014/199311/
米・韓の二国間協力:クリーンエネルギー R&D、協定(エ
ネルギー効率、再生可能エネルギー、スマートグリッド技
術、環境に優しい輸送、炭素回収貯留、エネルギー貯蔵シ
太陽光発電最適場所:高標高、寒冷地、ヒマラヤ山脈、ア
ステムなど)
ンデス山脈、南極大陸
Department of Energy Announces New Clean Energy
New Saudi Arabias of Solar Energy: Himalaya Mountains,
Partnership with the Republic of Korea
Andes, Antarctica
http://energy.gov/articles/department-energy-announces-new-clean-energy-
http://pubs.acs.org/stoken/presspac/presspac/full/10.1021/es200635x
partnership-republic-korea
56
PEN November 2011
No .31 (10 月 14 日 ) より
凸版印刷とサントリーフーズ、電子
ペーパー搭載の自動販売機を設置
(2011.10.5)
凸版印刷は、低消費電力の電子ペー
パーを活用した新しい情報配信サー
ビスである電子ペーパーサイネージ
「まちコミ」を 2008 年 12 月に商用
化。現在では仙台市地下鉄のホーム
の対向壁に設置した大型の電子ペー
パーサイネージに、地域に密着した
ニュースや天気予報などの情報とと
もに広告情報を配信し、運営してい
PE ヘッドラインより
プリンテッド・エレクトロニクス研究会が独自の視点
で集めたニュースをお届けします。
る。このほど凸版印刷とサントリー
フーズは、この「まちコミ」を搭載
する自動販売機を開発し、仙台市の
協力のもと仙台市内の仮設住宅 7 カ
所で、地域情報インフラとして活用
する。可能性を探る実証実験を 2011
年 9 月 26 日から開始している。
http://www.suntoryfoods.co.jp/pdf/news_111005.
pdf
http://www.toppan.co.jp/news/newsrelease1279.
html
産 総 研 の 徳 久 英 雄 ら、 結 晶 シ リ コ
ン太陽電池用の銅ペーストを開発
(2011.10.4)
産総研フレキシブルエレクトロニク
ス研究センターの徳久英雄らは、
(有)
ナプラが開発した、低温プロセス用
銅ペーストを利用して、低損傷印刷
製造技術による結晶シリコン太陽電
池の配線・電極の形成に成功した。
この銅ペーストは、ナプラが開発し
た偏析しない均一組成のナノコンポ
ジット構造粒子作製法によって作っ
た低融点合金粒子と銅粉末を混合し
て作製した。
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2011/
pr20111004/pr20111004.html
PEN November 2011
57
コニカミノルタ、世界最高レベルの発光効率をもつ有
南開大学の Yongsheng Chen ら、グラフェン有機太陽電
機 EL 照明パネル「Symfos」のサンプルキット発売開始
池の総説を発表(2011.9.29)
(2011.10.3)
中国の南開大学の Yongsheng Chen らは、グラフェン有機
コニカミノルタは、リン光発光材料のみを使用し、世界最
太陽電池に関する総説を発表した。グラフェンは、有機太
高レベルの発光効率を実現した有機 EL 照明パネルをサン
陽電池中の透明導電膜や活性層、接合界面として用いられ
プルキットとして発売すると発表した。今回発売するサン
ており、著者らは、グラフェンが有機太陽電池の開発の重
プルキット「Symfos OLED-010K」に合わせ、有機 EL 照
要な役割を担うとし、今後、グラフェンの研究開発すべき
明専用のウェブサイトを開設し、サンプルキットの私用や
分野などを提言している。
実績の紹介、注文受付を同ウェブサイト上で行う。
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/adma.201102735/abstract
http://www.konicaminolta.jp/about/release/2011/1003_02_01.html
デューク大学の Benjamin J. Wiley ら、銅ナノワイヤを用
シンガポール国立大学の Jianyong Ouyang ら、SWCNT の
ゲルコート法で透明・導電フィルムを作製(2011.9.30)
いたフレキシブル透明導電膜をプラスチック基板上に作製
(2011.9.23)
シンガポール国立大学の Jianyong Ouyang らは、単層カー
米国デューク大学の Benjamin J. Wiley らは、銅ナノワイ
ボンナノチューブ(SWCNT)を非イオン界面活性剤に分
ヤを用いたフレキシブル透明導電膜をプラスチック基板上
散させたゲルを、ガラス基板上にコートし、薄膜を作製し
に作製した。この銅ナノワイヤ透明導電膜は、銅ナノワイ
た。480-520 度で加熱した SWCNT フィルムは、シート抵
ヤ分散液をプラスチック基板上にバーコートして作製され
抗:250 Ω / □、透過率:80% であった。
た。この透明導電膜は、透過率:85%、シート抵抗:30
http://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2011/JM/C1JM12659H
Ω / □、さらに良好なフレキシブル性を示した。
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/adma.201102284/abstract
産総研の星野聰ら、印刷技術で作成した柔らかい熱電変換
素子を開発(2011.9.30)
北京分子科学国家実験室の Zhiliang Zhang ら、単分散銀
産総研フレキシブルエレクトロニクス研究センターの星野
ナノ粒子の合成法を開発(2011.9.22)
聰らは、フレキシブル基板上に熱電変換素子を印刷で形成
中国の北京分子科学国家実験室の Zhiliang Zhang らは、
する技術の開発に成功した。本技術は、
熱電変換素子をフィ
アジピン酸ヒドラジンとおよびデキストロースからなる新
ルム状素子とし高い柔軟性を付与することで、設置箇所の
たな還元方法で、単分散銀ナノ粒子を合成した。この銀ナ
形状に制約されずに設置できるようにするものである。ま
ノ粒子インクは、市販のプリンターでインクジェット印刷
た、印刷による製造プロセスの低コスト化、省資源化が可
し、160℃、30 分加熱すると、約 9 × 10^-6 Ω cm(銀
能となる。
バルクの 5 倍)を示した。
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2011/pr20110930/pr20110930.html
http://iopscience.iop.org/0957-4484/22/42/425601
NEDO と高知工科大学、ITO の代替材として酸化亜鉛を用
Holst Centre 社と n-Tact 社、ロール・トゥー・ロール技
いて鮮明画像の実現に成功(2011.9.30)
術で提携(2011.9.20)
NEDO は、ZnO を透明電極として実装した 20 インチ型
フレキシブルエレクトロニクスに注力しているオランダ、
LED バックライト液晶ディスプレイテレビを試作し、10
Holst Centre 社と、コーティング技術を専門とするアメリ
月 5 日から幕張メッセで開催された CEATEC2011 に出展
カ、n-Tact 社がフレキシブルエレクトロニクスの分野で提
した。この試作品は、インジウムの使用量を 50% 以上減
携すると発表した。n-Tact のロール・トゥー・ロール技術
らすと共に、より鮮明な画像を実現した。今後、インジウ
を用いて有機 EL 照明や有機太陽電池の製造を進めていく。
ムを全く使わない液晶ディスプレイテレビの実現を目指
http://www.ntact.com/press-releases/Final-Holst-Partnership-Press-Release-1.pdf
す。
http://www.holstcentre.com/en/NewsPress/PressList/nTact.aspx
http://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100052.html
G24i、8000 枚もの太陽電池をホテルに設置(2011.9.14)
大日本印刷、ジャックスと共同で、NFC 対応の携帯電話を
世界的なフレキシブル色素増感太陽電池メーカーである
用いた実証実験を開始(2011.9.21)
G24i ( イ ギ リ ス、G24Innovations) は、 世 界 的 に ホ テ ル
大 日 本 印 刷 は、 ジ ャ ッ ク ス と 共 同 で NFC(Near Field
チェーンを展開する Skyco シェーディングシステムズ社
Communication) 対応の携帯電話を用いて、国際標準規格
(アメリカ)と共同で、8,000 枚以上のホテルの窓に太陽
ISO/IEC14443「TypeA/B」に準拠した非接触型 IC 技術の
電池を設置することを発表した。集光された電力はワイヤ
関する実験を 2011 年 9 月 22 日から開始する。本番環境
レスで、屋内光に変換される。
における処理動作の検証、および利用面、運用面の検証を
http://www.g24i.com/press,g24i-and-skyco-providing-wireless-solar-power-
行う。
solutions,211.html
ソウル大の Young-Chang Joo ら、ハロゲンランプを用い
た銀ナノ粒子フィルムの焼結法を開発(2011.6.7)
韓国のソウル大学校の Young-Chang Joo らは、熱源とし
てハロゲンランプを用いた銀ナノ粒子インクの焼結方法
を開発した。ハロゲンランプは熱効率が非常に高いため、
短時間の照射でも銀ナノ粒子インクを焼結可能である。
300W の光を照射して作製した銀薄膜は、抵抗率:2.64
μΩ cm であった。
http://link.aip.org/link/?JESOAN/158/K165/1
No .30 (10 月 4 日)
より
韓国の技術標準院、IEC に TC を設立(2011.9.22)
韓 国 の 技 術 標 準 院 は、International Electrotechnical
Commission に Technical Committee(TC)を設立すると
発表した。今回設立する TC は、印刷電子分野での初 TC
であるため、非常に大きな意味がある。今後、印刷電子分
野国際標準化の加速化が期待される。
http://article.joinsmsn.com/news/article/article.asp?total_id=6273399&ctg=1105
http://www.dnp.co.jp/news/10011023_2482.html
東京大学の染谷ら、4V で作動するフレキシブル点字ディ
スプレイを開発(2011.9.19)
東京大学の染谷らは、有機 SRAM(Static Random Access
Memory)アレイと、有機 TFT で駆動するカーボンナノ
チューブのアクチュエータを組み合わせ、シートタイプの
点字ディスプレイを開発した。誘電体であるアルミニウム
酸化物の形成時間を調整することにより、有機 TFT のし
きい値電圧の体系的な制御が可能となる。
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/adfm.201101050/abstract
NanoMarkets 社、銀ベース透明導電体市場が 2016 年まで
に 5 億 4000 万ドルを上回る規模になると報告(2011.9.15)
米国の NanoMarkets 社は、銀ベース透明導電体市場に関
する報告書の販売を開始した。この報告書によると、
銀ベー
ス透明導電体市場は 2016 年までに 5 億 4000 万ドルを上
回る規模になる。本報告書では、タッチスクリーンディス
プレイ、有機発光ダイオード、電子ペーパー、有機太陽電
池、帯電防止剤などの開発につながる銀インクおよび銀薄
膜に対する需要を分析している。
http://www.nanomarkets.net/news/article/silver_based_transparent_conductors_
market_to_surpass_540_million_by_2016
Printed Electronics Europe 2012 が 4 月 3、4 日にドイツ
のベルリンで開催(2011.9.21)
IDTechEx が主催する Printed Electronics Europe 2012 が、
ケムニッツ工科大学の Arved Hubler ら、紙の上に有機太
4 月 3、4 日にドイツのベルリンで開催される予定。30 カ
陽電池を印刷(2011.9.14)
国以上の国々から 100 以上の出展と 1200 人以上の出席
ドイツのケムニッツ工科大学の Arved Hubler らは、グラ
者が来場する予定である。化学、ヘルスケア、軍事、広告
ビア印刷とフレキソ印刷を組み合わせて、紙の上に有機太
および出版といった多種多様なプリンテッドエレクトロニ
陽電池を作製した。作製した太陽電池の構造は、Paper/
クス技術が集まる。
接 着 層 /ZnO/Zn/ZnO/P3HT:PCBM/PEDOT:PSS で あ る。
http://www.idtechex.com/printed-electronics-europe-12/pe.asp
筆者らは、ITO、金、銀などの高価な物質を必要としない
太陽電池の作製に成功した。
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/aenm.201100394/abstract
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成均館大学の Young Hee Lee ら、グラフェンや CNT で作
リーズ大学の Ian Ward FRS ら、リチウム電池用高分子ゲ
製した電子デバイス特性を比較し、
総説を発表(2011.9.14)
ルを開発(2011.9.9)
韓国成均館大学のの Young Hee Lee らは、グラフェンや
英国リーズ大学の Ian Ward FRS らは、パフォーマンス
CNT(Carbon Nanotube) の総説を発表した。グラフェンや
を損なうことなく、安価なリチウム電池に使用できる
CNT の電気的特性および、それらの導電性材料で作製した
新しいタイプの高分子ゲルを開発した。特許取得済みの
透明導電膜や電界効果トランジスタの電子デバイス特性を
extrusion/lamination 法を用いて、従来必要であったセパ
比較している。低次元かつ同素体であるグラフェンや CNT
レーターを無くし、薄型化を達成した。
は、従来の半導体に比べ、電気的、光電子的および機械的
http://www.leeds.ac.uk/news/article/2409/polymer_batteries_for_next-generation_
特性に優れている。
electronics
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/adfm.201101241/abstract
科学技術研究院の Han ら、銅ナノ粒子インクのマルチパ
IIMAK 社、プリンテッドエレクトロニクス用導電性インク
を開発(2011.9.12)
米国の IIMAK 社は、銀の代価材料を用いた新しいタイ
プ の 導 電 性 ス ク リ ー ン イ ン ク「Dubbed Metallograph
conductive inks」を発表した。低温、短時間で導電性が発
現することから、フレキシブル回路、ディスプレイ、およ
びエレクトロルミネセンス照明など、いくつかのプリン
テッドエレクトロニクスのアプリケーションでの利用が期
ルス焼結方法を開発(2011.9.6)
韓国科学技術研究院の Han らは、白色光のマルチパルス
を用いて、粒子径 30nm の銅ナノ粒子インクを焼結させる
方法を開発した。必要以上のパルス光は、基板と銅インク
の薄膜にダメージを与えた。しかし、32J/cm^2 のパルス
エネルギーを銅薄膜に 3~4 msec 照射すると、電気伝導率
約 350kS/m の銅薄膜が作製できた。
http://iopscience.iop.org/0957-4484/22/39/395705/
待されている。
http://www.iimak.com/about-us/news-items/iimak-conductive-inks-for-printedelectronics-industry
ヘブライ大学の Shlomo Magdassi ら、銀ナノ粒子インク
をパターニングして透明導電膜を室温作製(2011.8.30)
イスラエルのヘブライ大学の Shlomo Magdassi らは、金
PlasticLogic、 電 子 ブ ッ ク を 用 い た 電 子 教 科 書「Plastic
属メッシュへ水性銀ナノ粒子インクを滴下して、塩化水素
Logic 100」を発表(2011.9.12)
へ短時間曝す室温焼結で、プラスチック基板上へ透明導電
米国の Plastic Logic は、軽くて、長寿命、大画面の電子
膜パターンを作製した。作製した透明導電膜は、シート抵
ブック媒体を中心とした教育支援システム「Plastic Logic
抗:9 ± 0.8 Ω / □、透過率:75% 以上である。
100」を発表した。ロシアの RUSNANO、英国の貿易投資
http://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2011/JM/c1jm13174e
総省が共催のイベントでの発表では、ロシア国内での試験
的な導入が濃厚となっている。
http://www.plasticlogic.com/news/pr_education_announce_sep122011.php
2010 年 9 月 16 日付 PE ヘッドライン記載記事参照
http://premier.gov.ru/eng/events/news/16215/
ウォータールー大学の Hu Anming ら、PVP で被覆された
銅ナノ粒子を用いた低温接合技術を開発(2011.9.9)
カナダのウォータールー大学の Hu Anming と中国の清華
大学の研究者らは、Polyvinylpyrrolidone(PVP)で被覆
された銅ナノ粒子を用いた低温接合技術を開発した。PVP
は空気中における銅ナノ粒子の酸化を防止する役割を果た
している。筆者らは、PVP で被覆された銅ナノ粒子を用い
て、170℃の低温で銅パッドと銅配線の強固な接合を得た。
http://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2011/JM/C1JM12108A
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PEN November 2011
ナノ材料
1. シンガポールの研究グループ、エ
ネルギー貯蔵が可能な薄膜を作製
http://www.gizmag.com/energy-storage-membranecreated/19996/
2. シ ン ガ ポ ー ル A*STAR の 研 究 グ
ループ、高性能太陽電池材料のシン
プルでスピーディーな作製方法を開
発
http://www.nano.org.uk/news/1617/
台湾 ITRI レポートより
3. MIT の研究者ら、植物の光合成プ
ロセスを真似た人工葉を開発
http://www.nanowerk.com/news/newsid%3D22916.
php
4. 米国ノースカロライナ州立大学の
研究グループ、バイオイメージング
用に金ナノロッドを配向させること
に成功
http://www.physorg.com/news/2011-08-align-goldnanorods-large-scale.html
5. ミシガン大学の研究グループ、原
子間力を用いて粒子サイズの揃った
スーパークラスターの作製に成功
http://www.physorg.com/news/2011-08-nanoscalemirrors.html
6. デンマーク、オランダ、中国の共
同研究チーム、チタン酸ストロンチ
ウム上に新しいヘテロ構造を発見
http://nanotechweb.org/cws/article/tech/47039
7. パシフィック・ノースウェスト国
立研究所など、ペロブスカイト構造
の複雑な相互作用を明らかにするこ
とに成功
http://www.physorg.com/news/2011-08-complexoxide-interfaces-previously-thought.html
PEN November 2011
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8. ペンシルバニア州立大学電気光学研究センター、ウェハ
ナノエレクトロニクス
上の電子のモビリティを飛躍的に向上させる新手法を開発
http://www.physorg.com/news/2011-09-hydrogenation-technique-triplestransistor-epitaxial.html
1. ハーバード大学の研究グループ、立体フォトニック結晶
を用いて複雑な濡れパターンを描くことに成功
http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/ja2053013?prevSearch=%255Bauthor%253A
%2BMishchenko%255D%2BNOT%2B%255Batype%253A%2Bad%255D%2BNOT%2B
9. ノルウェーの研究者ら、ナノスケールでシリコン結晶に
%255Batype%253A%2Bacstoc%255D&searchHistoryKey=
可塑性を持たせることに成功
http://www.nature.com/nnano/journal/v6/n8/abs/nnano.2011.118.html
2. UCLA の技術者ら、伸縮自在な有機 LED を開発
http://www.physorg.com/news/2011-08-ucla-fully-stretchable-oled.html
ナノバイオ・アグリ
1. バージニア州立大学の研究者ら、ガドリニウム内包フ
ラーレンを用いた新しい脳腫瘍の治療法を開発
http://www.physorg.com/news/2011-08-molecule-delivery-vehicle-image-brain.
3. シンガポールの南洋工科大学の研究グループ、タンパク
質をベースにしたメモリスタの作製に成功
http://www.nanowerk.com/spotlight/spotid%3D22762.php
html
4. スウェーデンの研究者、スイッチングが速いプリンタブ
2. ボストン小児病院の研究者ら、ゴールドナノワイヤを用
ルトランジスタ作製に成功
いた心臓組織の画期的な修復方法を開発
http://www.sciencedaily.com/releases/2011/09/110915083718.htm
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2011-09/chb-aho092211.php
5. 英国サザンプトン大学の研究グループ、ナノ構造の一枚
3. ポリエチレングリコール導入リポソームを用いてウマの
ガラスの光学式記録媒体の作製に成功
胸部や内臓疾患を的確に診断することに成功
http://www.physorg.com/news/2011-08-nanostructured-glass-imaging.html
http://www.nano.org.uk/news/1628/
4. シンシナティ大学の研究グループ、微量の腫瘍細胞の採
取が可能な慣性を利用したマイクロ流体ラボ・オン・ア・
6. Nokia 社とケンブリッジ大学の共同研究チーム、結合ナ
ノワイヤを用いたサイリスタ回路作製に成功
http://nanotechweb.org/cws/article/tech/47066
チップを開発
http://www.azonano.com/news.aspx?newsID=23513
7. 英国ケンブリッジ大学の研究者ら、グラフェンにプラズ
5. ナノテクノロジーと環境、最新の研究開発動向
http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=4355
6. 乳癌治療後の胸部インプラントの健康影響リスクを低減
するためのナノ材料開発
http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=43556
モニックナノ構造を組み合わせることでエネルギー変換効
率を大幅に向上させることに成功
http://www.nano.org.uk/news/1645/
8. スウェーデンのチャルマース工科大学の研究グループ、
電気めっきとコロイドリソグラフィを組み合わせた真空プ
ロセスを使わない手法を開発
http://nanotechweb.org/cws/article/lab/47233
7. シンガポールの A*STAR など、ヤモリの足裏の接着力を
真似た材料作成のための新たなプロセスを開発
http://www.nano.org.uk/news/1644/
62
PEN November 2011
9. 米国のタフト大学の研究グループ、単一分子モーターの
ナノ計測
作製に成功
http://www.physorg.com/news/2011-09-world-smallest-electric-motor-molecule.
html
1. コネチカット大学の研究者ら、高効率バッテリの作製を
支える新しい3D ケミカルイメージング手法を開発
http://www.physorg.com/news/2011-08-batteries-nanoscale-3d-chemical-imaging.
html
エネルギー・環境
1. トロント大学の研究グループ、量子ドットを用いて太陽
2. カリフォルニア州立大学サンディエゴ校の研究チーム、
電池のエネルギー変換効率の改善に成功
レンズレス X 線顕微鏡を開発
http://www.physorg.com/news/2011-08-tiny-tech-big-results-quantum.html
http://www.physorg.com/news/2011-08-superman-x-ray-vision-microscope-reveals.
html
2. コーネル大学の研究者ら、オプトフルイディクスによっ
て太陽光発電の効率向上が可能と指摘
http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=43382
3. ウィスコンシン大学マディソン校の X 線顕微鏡研究グ
ループ、ナノスケール・リソグラフィにおける構造変化の
物理特性を解明
http://www.nano.org.uk/news/1609/
3. シンガポールの A*STAR の研究グループ、薄膜シリコン
太陽電池のエネルギー変換効率を最大化する手法を開発
http://www.physorg.com/print234431378.html
4. 英国ノッティンガム大学の研究者ら、カーボンナノ
チューブ内壁の化学反応のイメージングに成功
http://www.nature.com/nchem/journal/v3/n9/full/nchem.1115.html
4. 台湾の国立交通大学と中央研究院の共同研究チーム、フ
ラーレンナノロッドを用いた信頼性の高いポリマーベース
の太陽電池を作製する手法を開発
5. シンガポールの A*STAR の研究グループ、コンビナトリ
http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=43410
アル手法を用いて癌診断のスピードアップを図る
http://www.nano.org.uk/news/1616/
5. カナダのトロント大学の研究グループ、量子漏斗を用い
て太陽電池のエネルギー変換効率を向上させることに成功
6. オランダとベルギーの共同研究グループ、コアシェルナ
http://nanotechweb.org/cws/article/tech/46971
ノ結晶の立体構造のイメージングに成功
http://nanotechweb.org/cws/article/tech/46974
6. UCLA の研究グループ、金ナノ粒子を用いて高性能な有
機太陽電池を作製
ナノリスク
http://www.physorg.com/news/2011-08-nano-gold-tiny-particles-boost.html
1. テキサス大学の研究グループ、食用作物中のナノ粒子に
関する疑問に答えるポッドキャスト配信
7. 韓国の崇実大学の研究者ら、採光率を自在に変更できる
http://www.nano.org.uk/news/1634/
高機能窓ガラスを開発
http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=43453
8. 米国国立ブルックヘイブン研究所、フラーレンをベース
にしたコロイド量子ドットを用いてナノサイズの発電装置
を開発
http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=42425
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国際動向
1. 米国のニュージャージー工科大学の研究者、ナノスケー
ルの電子プローブ作製手法の特許取得
http://www.physorg.com/news/2011-06-patent-arrays-nanoscale-electrical-probes.
html
2. JPK Instruments 社、 ド イ ツ の Institute of Photonic
Technology におけるフォトニクス研究に関するレポート
公開
http://www.nanowerk.com/news/newsid=22882.php
3. デンマークのコペンハーゲン大学の研究者ら、縮小プロ
セスにある分子の計測に成功
http://www.physorg.com/news/2011-09-world-danish-nano.html
4. 台湾の Taiwan Semiconductor Manufacturing Co.、次
世代半導体チップ製造に向けたリソグラフィ装置のテスト
開始
http://www.edn.com/article/519273-TSMC_ready_to_flip_the_switch_on_EUV.php
Column
街角の歩き方、海外編
交差点を歩いて横断する時、車が止まってくれるなどと期待してはいけません。車は止まってくれません。
もし誰かが車にぶつけられたとしても、助けてはいけません。怪我した人を助けると、損害賠償を求めて訴えられます。
もしあなたが車に轢かれて怪我をしたら、速やかにそこから脱出してください。あなたが怪我をして生きていれば、ド
ライバーはもう一度轢きに来ます。
病院に行ったらすぐ、治療を受けられるなどと期待してはいけません。袖の下を差し出さないと、まともな治療は受け
られません。
世界の街角が安心して歩けるように、物心両面の社会の成熟を待ちましょう。必ず変わってきます。そこに住む若者た
ちは誰もが、それではいけないと思っているのですから。
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PEN November 2011
韓国市民、
「ナノテクノロジーは聞い
たことがあるが、意味はよく知らな
い」
韓国環境部は 2011 年 5 月 9 日~ 24
日の間にソウルなど 6 市・道の一般
市 民(13 ~ 60 歳 の 男 女 1000 人 )
とナノテクノロジー関係者(アカデ
ミア、研究機関、企業、市民団体等
200 人)を対象として「ナノテクノ
ロジー国民認知度調査」を実施した。
その結果、一般市民の 75.1% は「ナ
ノテクノロジー」という言葉は聞い
たことがあると答えた。しかしナノ
テクノロジーに関する具体的な内容
韓国 NNPC より
韓国 National Nanotechnology Policy Center(NNPC)
が発行する Nano Weekly と各国動向レポート Global
Nano Trends より、韓国の最新動向を中心に関連情報
をお届けします。
については、87.4% がよく分からな
いと答えた。
ナノテクノロジーに対するイメージ
は、一般市民、関係者ともに、必要性、
性能および技術の優秀さについては
共感しているものの、安全性および
環境への影響については懸念してい
ることが分かった。
ナノ製品・情報に関しては、ナノ製
品に対する期待は高いものの、実際
に購入した経験は 21.0% で低いこと
が分かった。また消費者への情報提
供に対する不満は、一般市民 30.9%、
関係者 18.9% でやや高かった。特に
乳児製品と容器の購入意思が、一般
市民 47.7%、関係者 16.0% と最も低
かった。一般市民、関係者ともにナ
ノテクノロジー関連情報のなかで、
安全性に関連する情報が最も必要で
あると答えた。
ナノテクノロジー分野における韓国
の研究成果は高い- 2011 年上半期
のナノテクノロジーの国際特許動向
韓国国家ナノテクノロジー政策セン
タ ー(NNPC) に よ る 2011 年 1 月
~ 6 月のナノテクノロジーの世界の
特許動向の分析の結果、特許数にお
いては、米国、日本、中国、韓国の
順であることが分かった。2011 年
8 月 15 日 現 在、 世 界 93 の 特 許 庁
PEN November 2011
65
と世界知的財産権機構(WIPO)に公開された特許のう
2011 年から 2019 年までの 9 年間で総額 1727 億ウォン
ち、NNPC の調査の対象期間内に出願された特許の合計は
の政府資金による支援を予定。
1,649,771 件であった。そのうち、ナノテクノロジー分野
の特許件数は 75,761 件であり、全体の 4.59% を占めた。
ナノテクノロジー分野における特許発明者の国籍分布をみ
「韓国のナノテクノロジー、投資競争力が危うい」
ると、米国(18,324 件)
、日本(10,949 件)
、中国(5,435
「韓国は世界 4 位のナノテクノロジー強国」と度々言われ
件)、韓国(3,879 件)の順である(図 1)
。
ているが、投資競争力において赤信号が点滅していること
が確認されている。ナノテクノロジー産業のコンサルタ
ントの Cientifica による世界の主要国によるナノテクノロ
ジー投資の現状をまとめた報告書では、伝統的なナノテク
ノロジー大国である米国とともに、中国とロシアが新たに
浮上したと評価された。一方、韓国は、ドイツ、日本、欧
州よりも低いと評価された。
Cientifica は、2 つの側面からナノテクノロジー投資の現
状を分析した。まず、政府レベルの投資を米ドル基準と
購買力評価(PPP)を用いて比較した。これによると、現
在ナノテクノロジー研究に年間約 100 億ドルが投資され、
今後 3 年間で 20% 程度成長すると予想された。2000 年
から 2011 年末までのナノテクノロジーの研究開発に対す
る総累積投資額は、650 億ドル程度であり、2014 年まで
図 1 全特許における国籍別占有率
に 1000 億ドル以上の増加が見込まれている。2004 年か
ら企業などの民間投資が政府投資の規模を超えたことを考
出願人別では、
富士フイルム(806 件)
、
サムスン電子(799
慮すると、2015 年までにナノテクノロジーに対する総累
件)の順であり、国際特許分類コードにより分析すると、
積投資額は 2,500 億ドル近くになると予想される。
半導体装置(8,719 件)と医薬・歯科・化粧品(6,907 件)
欧州と北米の研究開発は小幅での伸びに留まるものの、ア
が全体の 20.7% を占めた。
ジアは急激に成長しつつあると評価した。アジアには中国、
日本、韓国、台湾、インドが含まれているが、最近では中
国以外に急速な投資増加を見せた国家はなかったというこ
66
地球温暖化の主犯、二酸化炭素削減に向けた「Korea CCS
とから、アジアの急伸は中国が主導したとみられる。
2020 事業」本格スタート
2011 年から米国政府のナノテクノロジー投資予算は小幅
国際的に温室効果ガスの排出削減に取り組んでいるなか、
ながら減少傾向を見せ、中国が初めて米国より投資が大き
韓国も 2009 年 11 月に、2020 年までに温室効果ガスの
くなると予想されている。2011 年のナノテクノロジーに
削減目標を 2020 年予想排出量(二酸化炭素(CO2)8 億
対する政府投資は、米国 21.8 億ドル、中国 13 億ドルで、
1300 万 t)の 30% にあたる 2 億 4400 万 t に設定し、気
絶対的な投資額は米国が中国より多い。しかし PPP を用
候変動への対応に向けた国際的な取組に参加している。
いた比較では、中国(22.5 億ドル)が米国(21.8 億ドル)
温室効果ガス削減技術の一つが二酸化炭素の回収・貯蔵
を抜いた。また、ロシアのナノテクノロジーに対する投資
(CCS)である。CCS とは、化学・工学的に CO2 を分離・
額も急増した。ロシアでは 2008 年以降、RUSNANO によ
回収し、それを貯蔵・利用する技術のことである。
る 15 億ドル以上の大規模投資が続いている。
国際エネルギー機関によると、CCS 技術は 2050 年 CO2
また報告書では、国際競争力、研究機関の質、イノベー
削減に 19% 程度貢献すると予測され、米国、日本など各
ションキャパシティ、企業の研究開発支出レベルなどマク
国で CCS 技術の開発に注力している。
ロ的なデータを踏まえて新興技術活用度という指標を開発
韓国政府も CCS 技術の重要性を認識し、CCS 技術を低炭
して、新技術の経済的な影響度を評価した。その結果、韓
素グリーン成長のための重点育成技術として取り上げ、
「国
国は米国、ドイツ、台湾、日本に次ぐ順位であったが、ナ
家 CCS 総合推進計画」を策定し、2020 年までの商用化
ノテクノロジー影響度では 7 位であった(表 1)。
および技術競争力の確保を目標とする CCS 技術開発推進
韓国のナノテクノロジー影響度が日本、ドイツとともに、
基盤を構築した。これを受け「Korea CCS 2020 事業」で
米国の 1/4 という評価は世界のナノテクノロジー強国とい
は、CO2 回収・貯蔵・転換の全分野の技術開発を目指し、
う第 3 期ナノテクノロジー総合発展計画(2011 ~ 2012 年)
PEN November 2011
のビジョンを達成するために解決すべき課題が少なくない
では、2008 年 12 月発効の環境部告示第 2008-198 号と、
ことを示す。しかし、現在、政府のナノテクノロジーへの
2009 年 6 月 30 日発効の水道法に水処理用分離膜の要求
総研究開発投資は下降している。2007 年には 2814 億ウォ
性能が明記されている。
ン台であった政府投資が、2011 年には 2570 億ウォンま
現在、水処理用の分離膜市場は米国、欧州、日本が主導し
で減少した。また総研究開発費に対するナノテクノロジー
ている。精密ろ過膜システムの世界の市場規模は 2001 年
投資の割合も 3.65%(2003 年)で一時は拡大したが、現
の 7 億 6900 万ドルから、2015 年には 15 億 6400 万ド
在は 1.73%(2012 年)と減少した。これは、最近になっ
ルに達する見込み。米国が 2001 年以降の世界市場の約
て中国とロシアの投資規模が急増し、ナノテクノロジーに
42% を占め、一番大きな市場となっている。欧州は世界市
おける「有力国」と位置づけられていることとは対照的で
場の約 25% を占め、米国に次ぐ 2 番目の市場である。日
ある。
本の市場占有率は 10% 前後。
限外ろ過膜システムの世界市場は持続的に成長している。
2001 年の限外ろ過膜システムの市場規模は 8 億 9000 万
ドル、2008 年には 15 億 9400 万ドルまで成長し、2015
年には 28 億 6100 万ドルに達する見込み。
韓国の水処理用の分離膜製造技術の開発は、少数の大学、
公的研究機関および中小企業を中心に行われてきた。中~
大型の浄水場に適用される商用分離膜の国産化は、2011
年 4 月竣工の日量 50000t 規模の永登浦(ヨンドンポ)モ
デル浄水場で実現された。水処理に分離膜工程の導入が遅
れたのは、以前の水道法に分離膜ろ過工程が含まれていな
かったからである。しかし 2009 年の改定水道法に分離膜
ろ過工程が含まれて、国内市場も第一歩を踏み出した。こ
表 1 各国における新興技術活用指数と影響力
れにより、政府の水産業育成方針と、世界の分離膜市場の
拡大などによって水処理用の分離膜に対する関心は急増し
References:
つつある。現在、国内の水処理規模は計画中の膜ろ過浄水
[1] Cientifica (2011.7), Global funding of nanotechnologies
場を含め 220,400t/ 日しかない。これは浄水処理工程に
& Its Impact
分離膜ろ過法が認められたのが 2009 年半ばで、技術開発
[2]
が遅れていたからとみられる。しかし関連技術の研究開発
http://cientifica.eu/blog/wp-content/uploads/downloads/2011/07/Global-
Nanotechnology-Funding-Report-2011.pdf
と永登浦モデル浄水場の運営が順調に進めば、今後 2 ~ 3
年の内には相当数の浄水処理工程が分離膜による水処理に
替わる可能性がある。
水処理用高分子分離膜-コア技術としてのスマート上水道
膜ろ過による水処理工程における分離膜の割合は全事業
の展開と今後の展望
費の 10 ~ 15% 程度で高くない。2007 年の精密ろ過およ
高度水処理産業は、2009 年の「新成長動力総合推進計画」
び 限 外 ろ 過 膜 の 世 界 市 場 は、GE22.4%、Siemens18.2%、
によって今後 5 年の間に政府から大規模な資金が投入され
旭化成 17.7%、Norit11.5% などの 4 大企業が市場全体の
る 17 大成長動力の一つである。スマート上水道は分離膜
69.8% を占めている。さらにこれらの企業は積極的に小規
を用いた浄水方法をベースにするため、水処理用の分離膜
模の分離膜企業を合併し、企業カルテルの形成により拡大
はスマート浄水のコアとなる製品である。分離膜による水
しつつある。
処理はエネルギー消耗が少なく、分離効率が高く、小規模
国内の場合、2004 年に環境部が水処理先進化事業団を発
のモジュールで工程を構成できる。また、必要に応じて比
足させたことにより、浄水用分離膜の開発が本格化し、水
較的簡単に拡張できるという長所があり、国内外の水処理
道法の改定により企業の関心が高くなった。現在、水処理
用の分離膜市場は拡大しつつある。分離膜は混合物から特
用分離膜を商業用途に生産・製造し、関連研究を行って
定物質を選択的に分離する半透過性隔壁である。分離膜を
いる国内企業は、Kolon、Woongjin Chemical、Hyosung、
構成する素材はセラミック、金属、ガラス、繊維など様々
LG 電子、第一毛織など大手企業と中小企業の H2L などで
であるが、よく使われるのは高分子である。
ある。
水処理用の分離膜は気孔のサイズによって精密ろ過膜、限
外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜などに分けられる。韓国
PEN November 2011
67
SEMI テクノロジーシンポジウム
①セッション 6:
マイクロシステム・MEMS(1)
世界における MEMS の新潮流
②セッション 7:
マイクロシステム・MEMS(2)
世界に拡がる日本の MEMS
日時:12 月 9 日
① 10:00 ~ 13:00 ② 14:00-17:00
場所:幕張メッセ国際会議場 MEMS 関連情報
東北大学原子分子材料科学高等研究機構教授江刺正喜
氏の MEMS 関連情報をお届けします。
①国際会議室 、② 301 会議室
主催:SEMI ジャパン
プログラムチェア:
東北大学 江刺 正喜
東京エレクトロン(株) 円城寺啓一
プログラム:
①世界における MEMS の新潮流
10:00-10:05 セッション紹介
10:05-10:25 Weileun Fang(Tsing
Hua Univ.、Taiwan)
10:25-10:45 TBA
10:45-11:05 Kwong Dim Lee
(Institute of Micro Electronics 、
Singapore)
11:05-11:25 Albert P. Pisano(UC
Berkeley、USA)
11:25-11:45 Peter de Dobbelaere
(LuxTera、USA)
11:45-12:05 Pierre Galarneau(INO、
Canada)
12:05-12:25 Magnus Rimskog(Silex、
Sweden)
12:25-12:45 Jean-C. Eloy(YOLE
Developpement、France)
12:45-13:00 オ ー サ ー ズ イ ン タ
ビュー
68
PEN November 2011
②世界に拡がる日本の MEMS
申 込 方 法:11 月 25 日 ( 金 ) ま で の お 申 込 は、 通 常
14:00-14:05 セッション紹介
42,000 円のとこと 34,000 円です!
14:05-14:25 髙橋敏幸(オムロン)
① http://www.semiconjapan.org/ja/sessions/sts/
14:25-14:45 山中浩(パナソニック電工)
ctr_040599
14:45-15:05 後藤崇(富士電機)
② http://www.semiconjapan.org/ja/sessions/sts/
15:05-15:25 丹羽大介(ローム)
ctr_040602
15:25-15:45 橋本研也(千葉大学)
15:45-16:05 前中一介(兵庫県立大学)
*前日の 12 月 8 日(木)昼に、SEMICON Japan 展示会
16:05-16:25 鈴木健一郎(立命館大学)
場内メインステージで MEMS 無料セッションの講演(講
16:25-16:45 南川明(I Suppli )
師 江刺)が開催されます。
16:45-17:00 オーサーズインタビュー
http://www.semiconjapan.org/ja/content/sts-spot3-mems
プログラムに関するお問い合わせ:
[email protected] 、03-3222-5993
PEN 購読のご案内
PEN の継続的な購読をご希望の方は、
・お名前
・ご所属
・メールアドレス
をご記入の上、[email protected] までご連絡ください。なお、PEN への登録・配信
は無料です。
PEN は原則月 1 回配信します。これまでに発行した PEN と、
【AIST-TOKYO ナノテク情報】
(PEN の前身)は、産総研ナノシステム研究部門ホームページにて公開しています。
http://unit.aist.go.jp/nri/nano-plan/index.html
PEN は皆さまとの情報共有を目的としています。お持ちの情報で共有すべきものがあれば、
[email protected] までお寄せ下さい。
*いただいた個人情報は産総研 個人情報保護方針(プライバシーポリシー)に基づき大切に管理し、情報誌
PEN の運営と私達のイベントのご案内のみに使用させていただきます。
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イベント案内
イベント案内へ掲載を希望される方は [email protected] までご一報ください。
Editor's Pick
第 2 回 2011 ネクスト・ネイチャー・プロダクツ
ジウム「私たちにとって科学技術とは何か ‐ 震災からの
~生物に学ぶ、次世代ものづくり技術展~
再生をめざして」が青山の国連大学ウ・タント国際会議場
~バイオミメティックス・ネイチャーテクノロジー、ロボッ
で開催されます。シンポジウムも含めて全日程で入場無料
ト~
です。
日時:2011 年 11 月 16 日(水)~ 18 日(金)10:00 ~
http://www.scienceagora.org/
17:00
場所:東京ビッグサイト展示場東 5・6 ホール ものづくり
サイエンスアゴラ 2011
NEXT 展示会場内
開幕シンポジウム「私たちにとって科学技術とは何か ‐
主催:
(社)日本能率協会
震災からの再生をめざして」
共催:バイオミメティクス研究会、ネイチャーテック研究
日時:2011 年 11 月 18 日(金)13:30 ~ 16:00
会、エアロ・アクアバイオメカニズム学会、バイオテンプ
場所:国連大学 ウ・タント国際会議場
レート研究会
主催:(独)科学技術振興機構
概要:生物多様性の保全と持続可能な利用の両立が強く求
概要:サイエンスアゴラ 2011 の開幕を兼ねています。入
められており、モノづくりにおいてもその要請は変わるも
場は無料です。
のではありません。生物多様性の保全と持続可能な利用を
http://www.scj.go.jp/ja/event/pdf/139-s-3-2.pdf
両立した、新たな発想での技術開発に資する「次世代バイ
オミメティクス」
、
「ネイチャーテクノロジー」
、
「ロボット」
等の研究成果や製品を展示、紹介します。
シンポジウム『東京電力福島原子力発電所事故への科学者
http://school.jma.or.jp/nbm/
の役割と責任について』
日時:2011 年 11 月 26 日(土)10:00 ~ 17:00
場所:日本学術会議講堂
サイエンスアゴラ 2011
主催:日本学術会議、(独)科学技術新興機構 研究開発戦
新たな科学のタネをまこう - 震災からの再生をめざして ‐
略センター
日時:2011 年 11 月 19 日(土)
、11 月 20 日(日)
後援:日本原子力学会、日本機械学会、日本化学会、土木
場所:日本科学未来館、産総研臨海副都心センター、東京
学会、日本原子力研究開発機構、日本医学放射線学会
都立産業技術研究センター(東京・お台場地域
概要:長期的な対応が必須の東京電力福島原子力発電所事
主催:
(独)科学技術新興機構
故への対応において今後科学者が果たすべき役割につい
概要:私達一人一人の生活に関わるサイエンスについて、
て、科学者を含む関係者とともに議論を深めます。参加費
議論し、体験し、共有し、学ぶことのできる場です。小さ
は無料、定員 300 名。下記ホームページよりお申し込み
いお子様から大人まで、皆でサイエンスを楽しみつつ、考
ください。
える試みです。180 以上の企画が予定されています。ぜひ
http://crds.jst.go.jp/sympo/kagakusya/
足を運んでください。11 月 18 日(金)には開幕シンポ
70
PEN November 2011
今回のセミナーは『試料作製装置への理解を深めたい』という方や、『日頃試料
䢢
作製装置を使用している方』を対象に実施いたします。䢢
䢢䢢
䢢
弊社試料作製装置を使用した基礎的な試料作製法や作製についてのコツを
䢢
ご紹介いたします。䢢
䢢䢢
䢢
弊社下記装置を既にご使用されている方や今後導入したい、または導入を検
䢢
討中という方もふるってご参加下さい。䢢
䢢䢢
䢢
セミナーの対象装置は次のとおりです。䢢
䢢䢢 䢢 䢢 䢢 ・クロスセクションポリッシャー(䣅䣒 シリーズ)䢢
㻌
䢢 䢢 䢢 䢢 ・䣈䣋䣄(䣌䣋䣄 シリーズ)䢢
䢢
䢢 䢢 䢢 䢢 ・イオンスライサー(䣇䣏䢯䢲䢻䢳䢲䢲䣋䣕)䢢
䢢
䢢
【会場】䢢
■日時・定員:䢴䢲䢳䢳年䢳䢴月䢳日䢪木䢫䢢䢳䢵:䢲䢲~䢳䢸:䢵䢲(受付䢳䢴:䢵䢲~)䢢 定員:䢳䢲䢲名䢢
■会場:総評会館≪東京都千代田区神田駿河台 㻟㻙㻞㻙㻝㻝㻌 㻜㻟㻙㻟㻞㻡㻟㻙㻝㻣㻣㻝(代)≫㻌
○䣌䣔 中央線・総武線䢢 御茶ノ水駅䢪聖橋出口䢫徒歩 䢷 分䢢
○営団地下鉄千代田線䢢 新御茶ノ水駅・営団地下鉄丸ノ内線䢢 淡路町駅䢢
○都営地下鉄新宿線䢢 小川町駅いずれも 䣄䢵 出口すぐ䢢
䢢
■参加費:䢢 䢳䢲䢮䢷䢲䢲円(消費税込)䢢 䢢 ※保守契約特典あり䢢
■申込方法:参加申込書に必要事項を記入の上、䣈䣃䣚:䢲䢶䢴䢯䢷䢴䢸䢯䢷䢲䢻䢻䢢 にてお申込み下さい。䢢
その他、䣙䣇䣄サイト(䣪䣶䣶䣲䢼䢱䢱䣹䣹䣹䢰䣦䣣䣶䣷䣯䢰䣬䣧䣱䣮䢰䣥䣱䢰䣬䣲)からも受付けております。䢢
■申込締切:䢴䢲䢳䢳年䢳䢳月䢴䢴日䢪火䢫䢢
■注意事項:お車でのご来場はご遠慮願います。䢢
䢢 䢢 䢢 䢢 䢢 䢢 䢢 䢢 䢢 ご昼食は各自でお取り願います。䢢
䢢
【䢢 セミナー内容䢢 】䢢
䢢
䢢
䢢
䢳.『イオンスライサー(䣋䣕)を用いた断面試料作製』䢢
・・・・・・・・・・・・・・・講師:日本電子株式会社䢢 䢢
䢢䢢 <イオンスライサーによる試料作製のコツや注意点>䢢
䢢
䢢
䣔䢨䣆䢢 河原䢢 尚䢢
䢢䢢䢢
䢢䢢
䢢
䢢
䢴.『収束イオンビーム加工観察装置(䣈䣋䣄)による試料作製の基礎』・・講師:日本電子株式会社䢢 䢢
䢢 <),% の基礎、及び 7(06(0 試料作成について>䢢䢢
䢢
䣔䢨䣆䢢 江藤䢢 義之䢢
䢢
䢢
䢢
䢢
䢵.『クロスセクションポリッシャー(䣅䣒)の試料作製テクニック』
䢢 ・・・・・・・・講師:日本電子株式会社䢢
䢢
<䣅䣒
の原理䢢
及び試料作製の留意点について>䢢
䢢
䢢
䣔䢨䣆䢢 増子䢢 聖弘䢢
䢢
䢢
䢢䢢
䢢
PEN November 2011
71
編集後記
PEN の配信は今号で丁度 20 回目を迎えることができまし
た。これも毎号 PEN を手に取ってくださる方あってのこ
とだと感謝しております。
PEN には様々な情報が盛り込まれていますが、情報は多様
な関係者のあいだで上手に共有し、活用してこそ生きてく
ると考えています。幸い、PEN へ情報を提供してくださる
方や、原稿をお寄せくださる方も増え、一方通行ではない
と日々実感できるようになってきました。
また、今号から新たに韓国国家ナノテクノロジー政策セン
ター(NNPC)と情報の共有を開始いたしました。NNPC は、
隔週で韓国国内の動向や世界の研究開発動向の紹介を分析
し、まとめたニューズレターを、さらに月に一度はアジア
や欧米のナノテクノロジープログラムを持つ国々からの最
新動向を配信しています。PEN では、これらの情報の中か
ら韓国の最新動向を中心にお届けする予定です。
今後も読者の皆様の期待に応え、また関係者のあいだでの
活用に足るものとすべく、PEN を一層充実、深化させたい
と考えています。
PEN 編集室 一同
2011 年 11 月 10 日
PEN 編集室
編集長 関谷瑞木
編集委員 安順花
外部編集委員 安宅龍明
伊藤正
Endo, Charles-Anica
亀井信一
下村政嗣
李精一
宋清潭
豊蔵信夫
ウェブ担当 木村美紀
Ireneusz Laszczyk
発行責任者 阿多誠文
(独)産業技術総合研究所 ナノシステム研究部門
ナノテクノロジー戦略室
〒 305-8565 つくば市東 1-1-1 産総研つくばセンター中央第 5 1 号館 3106 室
Email:[email protected]
Tel:029-860-5108、Fax : 029-861-4433
http://unit.aist.go.jp/nri/nano-plan/index.html
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